説明

コンクリート構造物の防汚及び劣化防止剤並びに防汚及び劣化防止方法

【課題】特許第2808087号は勿論、各参考特許文献に記載のものも、ニッケル等特定の金属の有害性に着目したコンクリート構造物の劣化防止剤及び防藻効果のある組成物は見あたらない。すなわち、従来の技術では、抗菌剤を入れても1年位で溶出することが多く、コンクリート中に大量に入れて長期間持たせようとすると、コンクリート物性を劣化することが知られている。
【解決手段】本発明は、少なくともフッ素樹脂と、銅粉末、珪藻土粉末、酸化チタンと、未硬化のポルトランドセメントもしくはモルタルとを水に分散させたことを特徴とするコンクリート構造物の防汚及び劣化防止剤、及び防止方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、護岸ブロック、冷却導入水路、養殖用水槽、上下水道のコンクリート管路、貯水槽等の水処理施設等に使用して、コンクリートの微生物による汚染や環境雰囲気による汚染を防止し、酸化劣化もしくは微生物等の付着繁殖による防汚及び劣化防止剤並びに防汚及び劣化防止方法防汚及び劣化を防止する劣化防止剤及び劣化防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、上下水道等水処理施設においては、コンクリートの腐食・劣化が問題となっているが、これらの原因は、下水処理施設においては、下水や下水汚泥中に嫌気性の硫酸塩還元細菌と硫黄酸化細菌が関与する硫酸による進行によること及びこの腐食過程で発生する硫化水素が主な原因となっていることが知られている。また、浄水場や魚介類の養殖場では、水藻や甲殻類の発生、付着により、その代謝物によって生成される有機酸によるものが多い。
このような現状に鑑みて日本下水道事業団からコンクリートの腐食・劣化を防止する対策として、次のことが提案されている。
(1)水の腐敗を防止して硫化物の生成を抑制する方法。
(2)発生した硫化物の大気中への放散を防止する方法。
(3)硫化水素を基に硫酸を生成する硫黄酸化細菌の活動を抑制する方法。
(4)防食性塗料をコンクリートや鉄の表面に塗装ライニングする方法。
(5)コンクリートの耐酸性を向上する方法。
(6)コンクリートに抗菌剤を配合して硫黄酸化細菌の活動を抑制する方法。
(7)水藻や甲殻類の付着を防止する方法。
【0003】
上記(1)の方法では、下水には汚泥が含まれているため、その汚泥を完全に除去することは不可能であり、満足すべき効果が得られていない。
(2)の方法は、酸化剤(過酸化水素等)の薬剤添加による硫化水素の固定化があるが、この方法は薬剤が高価であり、取扱に専門的注意が必要なため、経済的に問題がある。
(3)の方法では施設内の空気の吸、排気を行い、硫化水素を希釈処理する方法が知られているが、硫化水素ガスは悪臭防止法で定められている悪臭8物質のうちの一つであるために、公害問題があり、作業環境としても10ppm以上あると健康に問題があり、さらに高濃度になると、中毒の発生や爆発の危険性があるため、実施が困難である。
【0004】
(4)の方法としては、塗料としてエポキシ樹脂やポリエステル樹脂等が用いられているが、耐酸性と耐アルカリ性を兼ね備えることは困難で、コンクリート構造物や鉄にピンホールやクラックを発生したり、付着強度が不十分なため、腐食防止の効果が不十分となる問題がある。また更に沈澱槽内面のライニングに用いる場合、FRPやフレークライニング、シートライニングが知られているが、施行性が悪く、(例えば高温、高湿環境や含有水量の多いコンクリート構造物に施工しがたい等)しかも施工が高価であるので経済的にも問題がある。
(5)の方法は、下水汚泥溶融スラグ粉と珪酸ソーダを主構成材料とした耐酸セメントを用いたコンクリートを使用する方法であるが、現場打ちコンクリートとしての利用については課題が残されている。
(6)の方法は、種々のものがあるが、これのみで満足すべき成果を収めることは困難であり、低コストで効果のあるものを採用する必要がある。また、毒性についても配慮する必要がある。
(7)の方法は、藻類や甲殻類の付着を防止する手段として燐酸塩等の毒性のある薬剤をコンクリート等に混入させて、例えば船底に塗布し、徐々に毒物を溶出させる塗料が知られているが、近年は海洋汚染防止の見地から使用が控えられている。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−16072号公報
【特許文献2】特開平1−55493号公報
【特許文献3】特開平2−265708号公報
【特許文献4】特開平4−149053号公報
【特許文献5】特開平11−189449号公報
【特許文献6】特開2001−106607号公報
【特許文献7】特開2004−331422号公報
【0006】
特開昭63−16072号公報や、特開平2−265708号公報にはエポキシ樹脂やポリエステル樹脂のライニングによりコンクリートを保護する方法が記載されている。特開平1−55493号公報には、ガラス材のライニングによりコンクリートを保護する方法が記載されている。これらの方法は、長期のうちにピンホールを通じて剥離し寿命が短い。特開平4−149053号公報には銅、ニッケル、スズ、鉛等の金属および/またはこれらの金属の酸化物をコンクリートに含有させてコンクリートの腐食を防ぐ方法が記載されているが、長期間の使用を目的とする場合金属の使用量を多く用いる必要があり、金属イオンの溶出が多過ぎて水質汚染の恐れがある。特開平11−189449号公報には、金属錯体特にフタロシアニン化合物とチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン等の金属及び/金属酸化物との混合物を混合したものをコンクリートに含有させてコンクリートの腐食を防ぐ方法が記載されているが、特殊な錯体を用意するのでコスト高になる。また、ニッケルは発癌性があり、バナジウムは生化学的作用で急性、慢性の刺激症状があり得ること、クロムは化学活性が強く、生体への影響力も強く、潰瘍や、発癌性の危険があること、コバルトは人体への中毒症状、呼吸器疾患のおそれがあり、好ましくない。
【0007】
また、特開2001−106607号公報にはチタン酸アルカリ金属のアルカリ金属イオンの一部ないし全部が、硫黄酸化細菌に対する防菌作用のある、銀、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン等等の各イオンとされた抗菌剤を用いたものであるが、効果を実証する記載はない。
【0008】
特許第2808087号は上記各種の問題点を解決し、コンクリートの腐食劣化の原因となる下水や汚泥中で発生する硫化物や、硫酸塩還元細菌・硫黄酸化細菌の代謝作用によって発生する硫化水素、この硫化水素から生成される硫酸、この硫酸とコンクリートの主成分である水酸化カルシウムの反応による硫酸カルシウム化によるコンクリートの膨張収縮による劣化等の問題を解決し、長期にわたる微生物、藻類、甲殻類、貝類等の悪影響を防止できた。
【0009】
しかしながら、近時はニッケルが皮膚障害や肺癌などの発生の原因となる疑いが提起されており、ニッケルを用いないで前記従来の技術の問題点を解決することが求められているが、前記特許第2808087号は勿論、各参考特許文献に記載のものも、ニッケル等特定の金属の有害性に着目したものは見あたらない。
【0010】
更にまた、特開2004−331422号公報記載の発明は、発癌性の点から忌避されるニッケルを使用せずに、しかも長期間前記のコンクリートの劣化防止効果、生物の繁殖防止効果を発揮できる劣化防止剤を鋭意検討の結果生みだされたものであり、請求項1の発明は、少なくともフッ素樹脂と、銅粉末、チタン、亜鉛もしくは錫から選択された金属粉末の中の3成分と、未硬化のポルトランドセメントもしくはモルタルとを水に分散させたことを特徴とするコンクリート構造物の劣化防止剤である。
銅粉末、チタン、亜鉛もしくは錫から選択された金属粉末を用いているので、導電性があり、使用場所によっては電気装置による影響あるいは、水中でのイオン化傾向の相違による電気的腐食が考えられるので、この点を留意する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、コンクリートの腐食劣化の原因となる下水や汚泥中で発生する硫化物や、硫酸塩還元細菌・硫黄酸化細菌の代謝作用によって発生する硫化水素、この硫化水素から生成される硫酸、この硫酸とコンクリートの主成分である水酸化カルシウムの反応による硫酸カルシウム化によるコンクリートの膨張収縮による劣化等の問題を解決し、長期にわたる微生物、藻類、甲殻類、貝類等の悪影響を防止できた。
本発明は、下水道処理施設のみならず、一般建造物に用いても、低コストの配合物で、コンクリート構造物に塗装したときに、長期にわたり接着性がよく、しかも酸化による腐食環境でも酸化防止効果が十分で、微生物、藻類、甲殻類、貝類等の悪影響を受け難く、しかも発癌性がなく電気伝導性のないコンクリート構造物の防汚及び劣化防止剤並びに防汚及び劣化防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明はこのような観点からなされたもので、フッ素樹脂に、銅粉末、珪藻土粉末、酸化チタン粉末の3種類の殺菌、防汚作用のあるものを併用し、セメント、モルタルと水とによりコンクリート構造物の防汚を低コストで達成しようとするものである。
【0013】
具体的には、請求項項1の発明は、少なくともフッ素樹脂と、銅粉末、珪藻土粉末、酸化チタンと、未硬化のポルトランドセメントもしくはモルタルとを水に分散させたことを特徴とするコンクリート構造物の防汚及び劣化防止剤であり、請求項2の発明は、少なくともフッ素樹脂と、銅粉末、珪藻土粉末、酸化チタン粉末と、未硬化のポルトランドセメントもしくはモルタルとを水に分散させてなる、防汚及び劣化防止剤をコンクリート構造物の表面に塗布し、硬化させることを特徴とするコンクリート構造物の防汚及び劣化防止方法である。
【0014】
上記において、各成分の好ましい配合比は以下のとおりである。
フッ素樹脂10〜25重量部、銅粉末5〜10重量部、珪藻土粉末10〜20重量部、酸化チタン粉末5〜10重量部。
水及びポルトランドセメントもしくはモルタルを塗布硬化に必要な量を適宜使用する、
また、硅砂、シラン系撥水剤、スチレン系水溶性高分子、界面活性剤等の添加剤は要求される硬化皮膜の性状あるいは硬化速度など必要に応じて添加が許される。
【0015】
本発明の実施にあたり使用されるフッ素樹脂は特に限定はないが、通常水でエマルジョンとしたものが容易に使用することができ、例えば旭ガラス社の商品名ルミフロン(モノクロロトリフルオロエチレンポリマー)、ダイキン社のゼッフレ(ジフルオロエチレンポリマー)、ISR社のフローレン(ポリフッ化ビニリデン)等が適用可能である。
また、銅粉末は、イオン化により、防菌、防藻効果を長期に発揮することができる。特にコンクリート構造物の劣化防止に効果があり、ここに用いられる銅粉末は例えばチタン、亜鉛および錫の金属間化合物であってもよい。
同時に用いられる酸化チタンは光触媒作用で、活性酸素により有機物を分解し、抗菌、防カビ、臭気分解、防汚作用や大気、水質の浄化作用、劣化防止に長期間触媒効果を発揮できる。従って酸化チタンは表面側に存在することで効果が顕著であり、下地層に酸化チタンを含まないか、極めて少量含有するようにし、その表面層に酸化チタンの含有量の多いものを用いた塗布構造とするときは、酸化チタンの光触媒作用を効果的に活用することが出来る。しかし、本発明では珪藻土を用いているので、その微細孔を有する塗膜性質のゆえに前記酸化チタンは内部に存在するように見えても外部雰囲気との接触があり、触媒作用を発揮することが出来る。
なお、銅は、純粋な金属を粉末にして使用してもよいが、金属間化合物は勿論、自然状態において表面が酸化された酸化皮膜を有するものであってもよく、更には錯体を構成したものでもよい。
【0016】
珪藻土はガラスと同じSiOの殻で覆われており、この殻には無数の孔が開いているが、好ましく用いられるのは、自然乾燥し、食塩とソーダ灰を数%添加し、約1000℃で焼成し、不純有機物を除去したものが用いられるが、ホルムアルデヒド等の有害化学物の分解に寄与し、また、同時に配合された銅及び酸化チタンの防汚作用を効果的にする効果を有する。
【0017】
本発明において、フッ素樹脂はコンクリート構造物に塗装した場合、銅粉末、珪藻土粉末、酸化チタン粉末、それぞれ耐食性があるが、これらの3成分の粉末が優れた防腐効果を発揮すると共に、塗布面の外観がよく、生物の付着がなく、酸化状況での変化もないことが確認された。
特に銅粉末を含む場合は、銅粉末を含まないものの組み合わせよりも水藻の付着が少なく、水藻除去に要する水圧も小さくて済むことが判った。
また、上記のように銅粉末を含む場合は勿論、比較的低い水圧で水藻を除去することができ、塗膜の付着強度も試験の前後で余り変化がなく、硫黄が塗膜内に侵入する程度が極めて少ないので、硫黄細菌による劣化を防止する効果があることが理解される。
好ましい銅粉末の配合量は前記したように5重量部〜10重量部であり、5重量部未満では溶出する銅イオンが少ないため殺菌効果が不十分となり目的とする防食効果が得られにくく不利で、10重量部を越えて多いと銅イオンの溶出量が多くなり過ぎ、水生生物の環境破壊となり、またコスト面で不利である。また、二酸化チタンが好ましい量は5重量部〜10重量部であり、5重量部未満では活性酸素の発生が少なく防汚、抗菌効果に不利で、10重量部を越えて多いと活性酸素が活発となり過ぎ、フッ素樹脂の組織を分解させ樹脂が劣化して耐久性に不利である。更に珪藻土は好ましい量は10重量部〜20重量部であり、10重量部未満では防藻効果が少なく、また、コスト面でも不利である。20重量部を越えて多いとコンクリートに塗布したときに付着強度が著しくわるくなり不利である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少なくともフッ素樹脂と、銅粉末と、酸化チタン粉末と、珪藻土粉末の3成分からなる粉末を、ポルトランドセメントもしくはモルタルとを水に分散させたことを特徴とするコンクリート構造物の劣化防止剤を用いることにより、低コストで、地球環境を汚染することなく、また、発癌性の成分を含むことなく、しかも長期にわたり、金属粉末とフッ素樹脂の好ましい皮膜構成効果により、セメント構造物の表面に塗布したときに強固に接着しながら、プールや護岸コンクリート等の水と接する場合のコンクリート建造物において、汚染状態で発生し易い硫酸菌等の酸基を中和し、毒性を消滅させるとともに、長期にわたり藻類など生物の付着や繁殖を防ぎ、コンクリートが劣化するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施例1
銅粉末1.5Kg,酸化チタン粉末1.5Kg,珪藻土粉末5Kg
フッ素樹脂6Kg
適量の水を加えてエマルジョン状組成物とし、これに硅砂、シラン系撥水剤、スチレン系水溶性高分子、界面活性剤計15Kgを適量の水とともに添加し本発明の組成物を得、これをコンクリート表面に塗布した。
【0020】
実施例2
銅粉末3Kg,酸化チタン粉末3Kg,珪藻土粉末3Kg
フッ素樹脂6Kg
適量の水を加えてエマルジョン状組成物とし、これに未硬化のポルトランドセメントと水とを適量加えて本発明の組成物を得、これをコンクリート表面に塗布した。
【0021】
実施例3
銅粉末2Kg,酸化チタン粉末2Kg,珪藻土粉末5Kg
フッ素樹脂6Kg
適量の水を加えてエマルジョン状組成物とし、これに硅砂、シラン系撥水剤、スチレン系水溶性高分子、界面活性剤計10Kgを適量の水とともに添加し本発明の組成物を得、これをコンクリート表面に塗布した。
【0022】
実施例4
銅粉末3Kg,酸化チタン粉末3Kg、珪藻土粉末5Kg,フッ素樹脂6Kg
適量の水を加えてエマルジョン状組成物とし、これを適量のモルタルを加えてコンクリート表面に塗布した後、その表面に銅粉末2Kg、酸化チタン粉末2Kg、フッ素樹脂4Kgを適量のモルタル及び水とを加えた組成物を塗布して本発明の塗装物を得た。
【0023】
実施例5
銅粉末3Kg,酸化チタン粉末3Kg、珪藻土粉末4Kg,フッ素樹脂6Kg
適量の水を加えてエマルジョン状組成物とし、これを適量のモルタルを加えてコンクリート表面に塗布した後、その表面に銅粉末2Kg、酸化チタン粉末2Kg、フッ素樹脂4Kgを適量のモルタル及び水とを加えた組成物を塗布して本発明の塗装物を得た。
【0024】
比較例1
銅粉末3Kg,ニッケル粉末3Kg,チタン粉末3Kg,フッ素樹脂6Kg
適量の水を加えてエマルジョン状組成物とし、これにセメント、硅砂、シラン系撥水剤、スチレン系水溶性高分子、界面活性剤計15Kgを適量の水とともに添加し比較例の組成物を得、これをコンクリート表面に塗布した。
【0025】
比較例2
白炭7Kg,酸化チタン粉末2Kg,フッ素樹脂6Kg
適量の水を加えてエマルジョン状組成物とし、これにセメント、硅砂、シラン系撥水剤、スチレン系水溶性高分子、界面活性剤計15Kgを適量の水とともに添加し比較例の組成物を得、これをコンクリート表面に塗布した。
【0026】
比較例3
銅粉末3Kg,チタン粉末3Kg,亜鉛粉末3Kg,フッ素樹脂6Kg
適量の水を加えてエマルジョン状組成物とし、これにセメント、硅砂、シラン系撥水剤、スチレン系水溶性高分子、界面活性剤計15Kgを適量の水とともに添加し比較例の組成物を得、これをコンクリート表面に塗布した。
【0027】
比較例4
銅粉末3Kg,亜酸化銅粉末3Kg,緑青粉末3Kg,フッ素樹脂6Kg
適量の水を加えてエマルジョン状組成物とし、これにセメント、硅砂、シラン系撥水剤、スチレン系水溶性高分子、界面活性剤計15Kgを適量の水とともに添加し比較例の組成物を得、これをコンクリート表面に塗布した。
【0028】
比較例5
銅板
【0029】
比較例6
フッ素樹脂6Kg
これにセメント、硅砂、シラン系撥水剤、スチレン系水溶性高分子、界面活性剤計15Kgを適量の水とともに添加し比較例の組成物を得、これをコンクリート表面に塗布した。
【0030】
比較例7:実施例1に対して珪藻土を配合しない場合
銅粉末3.5Kg,酸化チタン粉末2Kg
フッ素樹脂6Kg
適量の水を加えてエマルジョン状組成物とし、これに硅砂、シラン系撥水剤、スチレン系水溶性高分子、界面活性剤計15Kgを適量の水とともに添加し比較例の組成物を得、これをコンクリート表面に塗布した。
【0031】
比較例8:実施例1に対して酸化チタンのない場合
銅粉末3.5Kg,珪藻土粉末2Kg
フッ素樹脂6Kg
適量の水を加えてエマルジョン状組成物とし、これに硅砂、シラン系撥水剤、スチレン系水溶性高分子、界面活性剤計15Kgを適量の水とともに添加し比較例の組成物を得、これをコンクリート表面に塗布した。
【0032】
・・・・・以下の文案でよいか検討してください
比較例9:実施例1に対して銅粉末の銅のない場合
酸化チタン粉末1.5Kg,珪藻土粉末6Kg,フッ素樹脂6Kg
適量の水を加えてエマルジョン状組成物とし、これに硅砂、シラン系撥水剤、スチレン系水溶性高分子、界面活性剤計15Kgを適量の水とともに添加し本発明の組成物を得、これをコンクリート表面に塗布した。
【0033】
本発明において好ましい配合量は先に述べたように、フッ素樹脂10〜25重量部、銅粉末5〜10重量部、珪藻土粉末10〜20重量部、酸化チタン粉末5〜10重量部であるが、水及びポルトランドセメントもしくはモルタル塗布硬化に必要な量を適宜使用する。
また、硅砂、シラン系撥水剤、スチレン系水溶性高分子、界面活性剤等の添加剤は要求される硬化皮膜の性状あるいは硬化速度など必要に応じて添加が許される。
フッ素樹脂100重量部に対して、銅粉末及び酸化チタン粉末が上記範囲より少ない場合は、金属相互の金属間結合の生成が少な過ぎて、遊離するイオンが少ないために殺菌効果が不十分となり、目的とする防食効果が得られない。逆に銅粉末及び酸化チタン粉末が上記範囲より多すぎる場合は、水中における分散性が悪く、コンクリートに塗布したときに付着性が悪くなり、取扱が困難となり、更に塗布膜に亀裂が入り易く、殺菌効果の点では過量であるためコストの上昇を来たし、実用効果が少なく、いずれにしても目的とする防食効果が得られない。珪藻土粉末が上記範囲を越えて少ない場合は、銅粉末及び酸化チタン粉末が硬化したコンクリートにおいて、銅粉末及び酸化チタン粉末の防食効果を発揮させるに十分な気孔を有せず、防藻、防菌効果が劣り好ましくない。
フッ素樹脂は勿論この配合範囲で他の成分を程よく分散させて、好ましい防食効果、防菌効果を奏するものである。
【0034】
なお、本発明で特定された銅、酸化チタン、珪藻土の組み合わせは、いずれも公害問題を発生せず、殺菌、生物の付着防止、硫化物の生成防止に効果があるが、銅粉末はその銅イオンの殺菌効果と、下水処理施設の硫化水素対策、硫黄酸化細菌対策の点から、低コストで優れた効果を奏するので好ましい。珪藻土は、銅のみの場合よりも、防食防藻効果に加えて粗い気孔の存在で、酸化チタンの効果を高度に発揮させる作用を有し、これにより雰囲気中の汚染有機物を分解する防菌、防藻効果が向上し、好ましいことが判る。
【0035】
また、銅粉末及び酸化チタン,珪藻土配合比は、先に述べた配合比が好ましいが、特に限定するものではない。なお、何れか一つを欠いても本発明で目的とするような殺菌効果や防食効果が得られがたいことは比較例から理解できるであろう。また、本発明で特定した各粉末を前記した所定の範囲で配合した場合、均一な分散塗布膜を得られやすく、常温でそれらの各成分が容易に結合して、軽くて堅牢な、結合体が構成され、安定した耐食性の皮膜を形成する。
【0036】
また、本発明では、組成の一つでも欠くときは調和の取れたコストではなくなり、発癌性、環境対策、防藻効果、防菌効果等の点からも好ましい結果を得がたいので採用することは困難である。
【0037】
なお、フッ素樹脂は本来化学的に安定で、これに水溶性ポリマー例えばゴムラテックス、樹脂エマルジョン、混合ディスパージョンのほか、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩などを添加することが出来る。
水溶性ポリマーを添加したものは、耐水性自体は低下することなく、粒子間では空気や水の存在を許すので、同時に配合するセメント、モルタル等の硬化性成分の硬化を進め、接着性を向上し、フッ素樹脂と水溶性ポリマーの協調した被膜により、腐食防止機能を高めることができる。すなわち、本発明における組成中、各金属粉末は水中で容易にイオンに遊離して金属酸化物が得やすく、塗膜が防食効果を挙げることと、藻類の付着や甲殻類の付着を防止し、併せて、嫌気性の硫酸塩還元細菌の作用により、発生する硫化水素によるコンクリートの劣化を防止できる。このことは一番効果が期待される銅、もしくは銅酸化物のみの殺菌作用では、前記の種々の効果を総合して発揮することはできないことを考えると、正に画期的な効果である。
【0038】
また、その他のシラン系撥水剤、水溶性高分子、界面活性剤の中の少なくともいずれか1種を添加配合することは、コンクリートやモルタル塗装の場合、常套手段であるが、シラン系撥水剤は硬化後の耐水性を増強し、水溶性高分子は、ワーカビリティー、保水性、ブリーディングに対する抵抗性を改善し、界面活性剤(AE剤)は陰イオン系、陽イオン系、両性系等種々のものがあるが、気泡効果があるので添加には十分検討して使用する。
【0039】
その他使用されるポルトランドセメントもしくはモルタル構成成分はセメント以外に例えば砂では粒子径は0.15〜1.2mm程度のものが使用されるが、微細な石や硅酸質材料も適用することができる。
上記のセメントおよび各種配合剤の配合量はフッ素樹脂10〜30重量部に対して70〜80重量部が作業性及び塗布膜の硬化性等の点から好ましい。
一方水は、フッ素樹脂として水分散塗料を使用するが、実際にはセメントの他各種の配合剤を添加し、均一にしてコンクリートに塗布するために、相当量の水が必要であるが、その量は混合塗装が容易な程度に適宜の量を添加すればよいことは通常のモルタルと同様である。
【0040】
本発明は、上記の組成物により構成された組成を有するのでセメントの硬化により強固にコンクリート構造物に接着すると共に、フッ素樹脂の強固な網目状被膜により構造物を保護するものである。また、銅は水中に溶出して、イオンを生成し、これが水中に発生している硫化物のイオンと反応して不溶性の銅化合物を生成することおよび生物の発生や細菌の発生を防止もしくは抑制して、例えば、上記金属のイオンにより殺菌して毒性のある硫化物の生成を防止することができる。また、同時に用いられるフッ素樹脂は水に難溶性で、セメント膜に強固な耐水防汚性を与える。
この場合、銅を含有する場合が他の金属よりも最も効果のあることは周知である。
【0041】
また、フッ素樹脂は本来化学的に安定で、これに水溶性ポリマーを添加することができるが、添加したものは、耐水性自体は低下することなく、粒子間では空気や水の存在を許すので、同時に配合するセメント、モルタル等の硬化性成分の硬化を速め、接着性を向上し、フッ素樹脂と水溶性ポリマーの協調した被膜により、腐食防止機能を高めることができる。
すなわち、本発明における組成物において、銅を用いた所以は、発癌性がなく、しかも水中で容易にイオンに遊離して金属酸化物が得易く、塗膜が長期にわたり防食効果を上げることと、藻類の付着や甲殻類の付着を防止し、併せて嫌気性の硫酸塩還元細菌の作用により発生する硫化水素によるコンクリートの劣化を防止できる点にある。
このことは従来技術のフッ素樹脂と、銅粉末とチタンとニッケル粉末とを併用した防食塗料に比べて、発癌性がなく、しかも長期にわたり、コンクリートの劣化を防止し、生物の付着をも防止するというものである点で、全く相違するものである。
【0042】
上記の実施例および比較例の各試料を以下の方法による比較試験を行なった。
実施例および比較例に示した各配合物を、下水処理場の最初沈澱池に12ヵ月懸垂し、
・塗膜外観の評価は目視と指触とにより判断した。
・付着強度試験は、国土交通省建研式引張接着強さ試験法により測定した。
・コンクリート中性化進度は、EPMA(電子マイクロアナライザー)を用いて測定した。
・表面からの硫黄の侵入範囲を観察した。
・水藻の付着状況は肉眼で観察した。
・水藻除去の難易度および除去後の状況は、水圧洗浄機により水藻を除去し、その状態を肉眼で観察した。
なお、最初沈澱池に曝す試験体は、塗装後30日間乾燥させ、硫化水素濃度の5〜30ppm下の気相部へ試験片の試料を懸垂した。
最終沈澱池に曝す試験体は、水面下30cmの所に浸漬して12ケ月経過させた。
その結果は、最初沈澱池は表1、最終沈澱池は表2に示すとおりである。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
この試験結果から判るように、本発明によるものは最初沈澱池に曝す試験に於いて、塗膜が黒色化したが異常は認められず、付着強度も試験の前後で余り変化はなく、コンクリート中性化進度(硫黄侵入範囲)も0.3mm以下と極めて小さく、最終沈澱池に曝す試験では、水藻の付着が極めて少なく、水藻除去も水圧5kg/cm程度で完全に除去され、付着強度は試験前と殆ど変わらないという成果を得た。これに対して、比較例のうち、ニッケルを使用するものは、藻の発生の防止等には有効であるが、毒性があるので、使用することはできない。
これに対して比較例1に示したように、銅粉末、ニッケル粉末、珪藻土粉末、フッ素樹脂粉末を用いたものは、ニッケルの存在で発癌性があり、水藻の除去には効果があるが、硫黄により黒色化するので、劣化が早いものと思われる。
比較例2は白炭、酸化チタン、、フッ素樹脂粉末を用いているので、防藻効果が不十分で、塗膜は硫黄により侵される。
比較例3は銅、チタン、亜鉛、フッ素樹脂を成分とするが水藻の付着が多いという問題がある。
比較例4は、銅、亜酸化銅、緑青、を含有するが、硫黄に侵されることと水藻の付着が多いという問題がある。
比較例5は、銅板のみであるから水藻の付着が多く、硫黄にも侵されるので、好ましくないことを示している。
比較例6は、フッ素樹脂のみで、格別防汚、防菌剤を含有していないので、水藻の付着が多く、硫黄にも侵されるので、好ましくないことを示している。
比較例7は、実施例1に対して、珪藻土を配合していないので、硫黄に対する作用はよいが、水藻の付着が多く適当でない。
比較例8は、実施例1に対して、酸化チタンを配合していないので、水藻の付着は少ないが、実施例1に対して、酸化チタンを配合していないので、水藻の付着は少ないが、硫黄に対する作用の性能が劣る。
比較例9は、実施例1に対して、銅を配合してないので、殺菌性が著しく劣り、硫黄に対する性能は劣悪である。
勿論本発明における各金属は毒性がなく、環境上も好ましいもので、しかも低コストで実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、低コストで、地球環境を汚染することなく、また、発癌性の成分を含むことなく、しかも長期にわたり、金属粉末とフッ素樹脂の好ましい皮膜構成効果により、セメント構造物の表面に塗布したときに強固に接着しながら、プールや護岸コンクリート等の水と接する場合のコンクリート建造物において、汚染状態で発生し易い硫酸菌等の酸基を中和し、毒性を消滅させるとともに、長期にわたり藻類など生物の付着や繁殖を防ぎ、コンクリートが劣化するのを防止することができる。また、建造物に使用しても酸化チタンの効果により環境汚染の影響が少なく、珪藻土を用いたことで低コストの劣化防止を実現できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともフッ素樹脂と、銅粉末、珪藻土粉末、酸化チタンと、未硬化のポルトランドセメントもしくはモルタルとを水に分散させたことを特徴とするコンクリート構造物の防汚及び劣化防止剤。
【請求項2】
少なくともフッ素樹脂と、銅粉末、珪藻土粉末、酸化チタンと、未硬化のポルトランドセメントもしくはモルタルとを水に分散させてなる、防汚及び劣化防止剤をコンクリート構造物の表面に塗布し、硬化させることを特徴とするコンクリート構造物の防汚及び劣化防止劣化防止方法。

【公開番号】特開2008−100880(P2008−100880A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285782(P2006−285782)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(591213014)株式会社スナミヤ (5)
【Fターム(参考)】