コントラストを増強した錐状ビームX線撮像、画像化、評価、監視、および、治療の付加
X線錐状ビーム電算断層撮像法およびX線錐状ビームディジタル断層撮像法を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の身体領域を画像化する方法は、有効量の造影剤を興味の対象である非圧平状態の身体領域に導入する段階を含んでいる。錐状ビーム電算断層撮像法(CBCT)または錐状ビームディジタル断層撮像法(CBDT)を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の領域を画像化するシステムは、X線を興味の対象である非圧平状態の領域に伝達するX線源と、複数の2次元投射画像データを獲得して、35ミリ秒のうちに獲得された投射画像のうちの少なくとも1枚についてCBCTデータセットまたはCBDTデータセットを得るようにした画像獲得システムと、互いに直交する少なくとも2つの方向に広がる0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する、3次元電算断層撮影画像データセットを生成するプロセッサとを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、コントラストを増強したX線画像化に関するものであり、特に、人間または動物の癌を発見し、診断し、病期判定し、監視し、治療するのに有用な、コントラストを増強した錐状ビーム電算断層撮影(CBCT)または錐状ビームディジタル断層画像合成(CBDT)に関連する。
【背景技術】
【0002】
乳癌などのような癌を有効に治療するには、早期発見および早期診断が要となる。従来のX線マンモグラフィーは乳癌の早期発見に好適な経費効率のよい器具であることが分かっている。しかしながら、3次元解剖学的構造を2次元画像に投影するせいで、さらに、造影検出能力がお粗末なせいで、X線マンモグラフィーの予測値と詳細指定性能は限られている。従来のマンモグラフィーによって看破することができる人体の癌の最小寸法は直径にして約10 mmであり、重量に換算して約1グラム、含有細胞数にして約10の9乗個であった。癌が1個の細胞から始まった場合は、直径10 mmの寸法に達するまでに倍量化を約10回程度繰返すことになる。そこから更に倍量化を10回程度繰返せば腫瘍の重量は約1 kgになり、その時の寸法は直径にして約8 cm から10 cmで、この寸法では致死的となる場合もある。現在のところ、倍量化を10回繰返した後に更に10回繰返されるうちに、漸く人体で観察可能となるのが通例である。倍量化が最初の10回程度までの初期状態で診査するのに必要なのは非観血処置であり、それは、初期潜伏期間の後に急速な指数関数的成長期が続き、その時期になって最終的に病巣の寸法の直径が約10 mmになり、そうなると成長率は衰え始めるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
乳癌の発見にはガドリニウム(Gd)造影剤を磁気共鳴画像化法(MRI)と併用して画像コントラストを増強することが実施されているが、そのために、良性期の構造すなわち良性期の病巣よりも高感度で、ガドリニウムを取入れた癌病巣のプロファイルとガドリニウム洗浄後のプロファイルとを経時的に検出する方法が採られている。Gdコントラスト増強MRIは高感度で、従来の検体圧平式X線断層撮影法によって見逃されてきた、すなわち、不顕性の乳癌病巣の大半を検出することができる。しかしながら、Gd−MRIは詳細指定がお粗末で、良性組織が誤って悪性組織として識別されたといったような誤った陽性所見を生じていた。これは、従来の圧平式X線投射式マンモグラフィーに共通する問題であり、マンモグラフィーで疑わしいと識別された領域の生検事例の約75パーセントが良性であったと判明している。
【0004】
錐状ビームCTは、患者の乳房の3次元画像を生成するために利用されている。従来の錐状ビームCTについての1つの問題点は、乳房の癌病変部はCT断層画像のX線吸収係数とコントラストレベルが良性の腺構造のものとほぼ同じであり、このことが原因で悪性病巣部を良性構造と区別するのを困難になっているが、特に、悪性病巣部が腺組織に隣接している場合、または、腺組織と結着している場合にはそのことが言える。このことは、腺組織の含有率の高い高密度の乳房を持つ若い女性では特に問題となる。
【0005】
従って、人間または動物の全身くまなく、高い空時的分解能でがんを早期発見し、早期診断し、早期治療するための向上した方法およびシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの観点では、X線錐状ビーム電算断層撮像法または錐状ビームディジタル断層撮像法を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の身体領域を画像化する方法が提示されるが、この方法は、有効量の造影剤を興味の対象である非圧平状態の身体領域に導入する段階を含んでいる。
【0007】
また別な観点では、X線電算断層撮像法またはディジタル断層撮像法を利用して、患者の非圧平状態の乳房を画像化する方法が提示されるが、この方法は、有効量の造影剤を非圧平状態の乳房に導入する段階を含んでいる。
更に別な観点では、錐状ビーム電算断層撮像法(CBCT)または錐状ビームディジタル断層撮像法(CBDT)を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の身体領域を画像化するシステムが提示されるが、この方法は、興味の対象である非圧平状態の身体領域にX線ビームを伝達するX線源と、CBCTデータセットまたはCBDTデータセットに必要な複数の2次元投射画像を獲得するにあたり、複数の投射画像のうち少なくとも1枚は35ミリ秒またはそれ未満で獲得することができる画像獲得システムと、3次元電算断層撮影画像データセットを生成するにあたり、少なくとも互いに直交する2方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像するプロセッサとを備えている。
【0008】
更にまた別な局面では、X線錐状ビーム電算断層撮像法または錐状ビームディジタル断層撮像法を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の身体領域にX線治療用投与線量を投射する方法が提示されるが、この方法は、有効量の造影剤を興味の対象である非圧平状態の身体領域に導入する段階と、錐状ビーム断層撮像データセットを得るために複数の2次元投影画像を獲得する段階と、興味の対象である非圧平状態の身体領域に1センチグレイから7000センチグレイの範囲のX線治療用投与線量を投射する段階とを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態によるX線画像化システムを例示した概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による、CBCTを利用して得られる健康な患者の左乳房の冠状面画像の図である。
【図3A】本発明の一実施形態による、CBCTを利用して得られる癌病巣を有している患者の左乳房の冠状面画像の図である。
【図3B】本発明の一実施形態による、CBCTを利用して得られる癌病巣を有している患者の左乳房のまた別な冠状面画像の図である。
【図3C】本発明の一実施形態による、CBCTを利用して得られる癌病巣を有している患者の左乳房の矢状面画像の図である。
【図4】本発明の一実施形態による、癌病巣を有している患者の左乳房の冠状面画像を信号強度プロファイルを添えて示した図である。
【図5A】本発明の一実施形態に従って得られる、癌病巣を有している患者の左乳房の表面をレンダリングした3次元(3D)画像の図である。
【図5B】本発明の一実施形態に従って得られる、癌病巣を有している患者の左乳房の表面をレンダリングした3次元(3D)画像の図である。
【図5C】本発明の一実施形態に従って得られる、癌病巣を有している患者の左乳房の表面をレンダリングした3次元(3D)画像の図である。
【図5D】本発明の一実施形態に従って得られる、癌病巣を有している患者の左乳房の表面をレンダリングした3次元(3D)画像の図である。
【図6】本発明の一実施形態による、コントラストを増強した病巣部の寸法を例示した、図5Cに例示された表面をレンダリングした3次元画像の拡大図である。
【図7】図7Aは、本発明の一実施形態による、図6において寸法が10 mmおよび4 mmであると識別されているコントラストを増強した病巣部のハイライトを付した境界部を示した、患者の左乳房の冠状面画像である。図7Bは、本発明の一実施形態による、図6において寸法が10 mmであると識別されているコントラストを増強した病巣部のハイライトを付した境界部を示した、患者の左乳房の矢状面画像である。図7Cは、本発明の一実施形態による、図6において寸法が10 mmおよび6 mmであると識別されているコントラストを増強した病巣部のハイライトを付した境界部を示した、患者の左乳房の軸面画像である。
【図8】図8Aは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した10 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す冠状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図8Bは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した10 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す矢状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図8Cは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した10 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す軸面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。
【図9】図9Aは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す冠状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図9Bは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す矢状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図9Cは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す軸面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。
【図10】図10Aは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した1.4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す冠状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図10Bは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す矢状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図10Cは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す軸面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。
【図11】図11Aは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した1 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す冠状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図11Bは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す矢状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図11Cは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す軸面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。
【図12】図12Aは、図11Aに例示されている患者の左乳房の冠状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印が図中交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図12Bは、図11Bに例示されている患者の左乳房の矢状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印が図中交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図12Cは、図11Cに例示されている患者の左乳房の軸面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印が図中交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。
【図13】本発明の一実施形態によるX線画像化システムを例示した概略図である。
【図14】所望の解像度の関数として画像データセットを獲得するのに要する時間間隔を例示した折線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の上記特徴および利点と、それ以外の多様な特徴および利点は、添付の図面および添付の特許請求の範囲に関連付けて後段の詳細な説明を読めば、よりよく理解することができる。
【0011】
以下に、図面を参照しながら本発明の多様な実施形態を説明してゆく。幾つかの図面は概略的であり、これら図面は本発明の特定の実施形態の説明を容易にするように意図されているにすぎない点に注目するべきである。本発明を余すところなく記載したものと解釈するべきではなく、本発明の範囲を制限するものと解釈するべきでもない。更に、本発明の特定の実施形態に関連して説明される局面は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、本発明のいずれか他の実施形態においても実施することができる。例えば、後段の説明において、本発明は錐状ビーム電算断層撮像法の各種実施形態に関して記載されている。特許請求の範囲に記載されている発明は、錐状ビームディジタル断層像合成法や錐状ビームに基づいていない逆幾何図形の容積電算断層撮像法(IGVCT)などのようなまた別なX線画像化システムと併用されてもよいものと認識するべきである。更に、後段の説明では、本発明は、患者の乳房が検査対象となった実施形態を使って説明されている。特許請求の範囲に記載されている発明は人間患者とその人体各部のみならず、寸法の大小を問わないすべての動物および植物の検査に利用することができるものであり、長期研究の間は生命体のような振る舞いを維持するように肥育して生命維持を図った興味の対象である身体領域と、異なる生体宿主に移植され、または、成長媒体を容れたペトリ皿のような生命維持環境に移されたる興味の対象である身体領域を含んでいることが分かる。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態によるX線画像化システム10を例示している。X線画像化システム10はX線源11と検出装置12を備えている。X線源11と検出装置12の間には、被検体13が置かれている。被検体13は構造14によって支持されており、画像化に好適であればどのような位置と配向にあってもよい。注射装置15は被検体13の興味の対象である身体領域に有効量の造影剤を導入するために設けられている。
【0013】
X線源11はX線ビーム16を生成して、興味の対象である被験体13の身体領域に伝達する。X線検出装置12は、興味の対象である身体領域を透過してきたX線ビームを受光して検出する。X線ビーム16は、興味の対象である被検体の身体領域を透過してきたX線ビームの強度を表している電気信号(画素値)に変換される。電気信号は、当該技術で周知のアルゴリズムを利用して、興味の対象である身体領域の2次元画像または3次元画像を生成するように再構築される。
【0014】
X線源11は複数の異なるエネルギーレベルのX線ビームを生成することができる。X線源11はビーム生成モジュール(図示せず)を、1個または複数個、備えている。本発明の特定の実施形態によると、X線源11はキロエレクトロンボルト(keV)のエネルギーレベルのX線ビームとメガエレクトロンボルト(MeV)のエネルギーレベルのX線ビームを生成するよう構成されている。keV エネルギーレベルのX線ビームは、一般に、患者の癌、組織、または、その両方の画像を形成するために使用され、よって、画像化ビームまたは診断用ビームとも呼ばれる。一般に、MeV エネルギーレベルのX線放射ビームは患者の腫瘍またはその他の異常組織を標的として治療するために使用される。MeV エネルギーレベルのX線放射ビームはまた、患者の画像を形成するために使用することもできる。しかしながら、MeV エネルギーレベルのX線ビームを利用して形成される画像は、通例は、keV エネルギーレベルなどのもっと低いエネルギーレベルのX線ビームを使って形成される画像に比べて、コントラストと空間分解能が低くなる。MeV エネルギーレベルには、骨および金属移植片などのような患者の解剖学的構造の高密度領域によって生成されるCT画像の人為的部分、すなわち、波紋や射線などを低減するという利点がある。本発明の一実施形態によれば、X線源11は2種類のX線ビーム発生装置を備えており、一方はkeVエネルギーレベルのX線画像ビームを生成するためのものであり、もう一方はMeV レベルのX線放射ビームを生成するためのものである。2種類のビーム生成装置は互いに極めて近接して配置されてもよいし、互いから離隔されていてもよい。例えば、或る特定の実施形態では、これら2種類のビーム発生装置は放射線ビームを患者の乳房に向けて相互に約90度の角度で伝達されるように配置されている。また別な実施形態によれば、X線源11は、多数のエネルギーレベルのX線ビームを生成することができる1機のX線ビーム発生装置を備えている。或る実施形態は2元エネルギー(例えば、keV とMeV)を利用して、付加的な医療関連情報を提供する。例えば、2005年5月3日に交付された「画像化装置を位置決めするための関節接続可能な発射台を装備している放射線治療装置(Radiotherapy Apparatus Equipped with an Articulable Gantry for Positioning an Imaging Unit)」という名称の米国特許第6,888,919号は、複数の異なるエネルギーレベルのX線放射源を備えているシステムを開示しており、この特許は、ここに援用することにより開示内容の全体が本件の一部を成すものとする。
【0015】
検出装置12は、興味の対象である身体領域をMeV 高エネルギーレベルおよびkeV 低エネルギーレベルの両方で透過してきたX線ビームを検出することができる。或る実施形態においては、検出装置12は2種類の画像検出装置を備えており、一方はkeV 画像ビームにより形成された画像を検出するためのものであり、もう一方はMeV 放射線ビームによって形成された画像を検出するためのものである。或る実施形態では、検出装置は、多数のエネルギーレベルのビームによって形成された画像を検出することができる1機の画像検出装置を備えている。具体例として、2004年10月5日交付の「X線画像獲得装置(X-Ray Image Acquisition Apparatus)」という名称の米国特許第6,800,858号は、多数のエネルギーレベルのX線画像を検出することができ、尚且つ、本発明による検出装置として使用することができるX線画像検出装置を開示している。米国特許第6,800,858号は、ここに援用することにより開示内容全体が本件の一部を成すものとする。
【0016】
或る実施形態においては、検出装置12は2次元平坦パネルX線センサーである。また或る実施形態では検出装置12は光子計数用平坦プレート画像センサーである。光子計数用平坦プレート画像センサーを構成部材の1つとして含んでいる光伝導体フィルムは、多結晶質沃化水銀、沃化鉛、臭化タリウム、および、アモルファス・セレンを含有している。光伝導体フィルムは物理的蒸着法によって堆積されてもよいし、または、スクリーン印刷により、すなわち、上述のような物質の粉末を結着剤および溶剤と一緒に(粒子結着技術またはパーティクル・イン・バインダー技術)1画素ごとにアモルファスシリコン薄膜トランジスタースイッチおよびデータ保存容量のピクセル表示配列の定型に取ることにより堆積される。スクリーン印刷による堆積は、常態では1画素につき1フレームあたりに1個のX線光子しか検出されず、従って、この画素の信号強度が入射した光子エネルギーの近似値または概算値となるような高速フレーム率のシグナル統合モードで実施される。1画素ごとの電極構造は光子計測を最もうまく実施するのに適合させられており、複数の異なる電位で維持される交互嵌合式バック接点を採用している。
【0017】
或る実施形態においては、光子計数用平坦プレート画像センサーは、室温とそれよりも低い温度の両方で作用可能なテルル化カドミウム、テルル化亜鉛カドミウム、沃化水銀、または、沃化鉛の単結晶X線検出装置を備えている。ここで使用されているように、単結晶X線検出装置は、特に、テルル化亜鉛カドミウムを保有している。良好な空間深度を達成して、尚且つ、入射X線光子のうちの80%より多くのものを吸収するのに十分な深さ(100 keV 以下の光子には約0.6 mmの深さであり、6 MeV 光子には約1 cmの深さである)を得るのに、単結晶は個々に断面積が約1平方ミリメートルまたはそれ未満であるとよい。このような単結晶素子はタイル張りするように1つの配列(例えば、20行×20列)に並べられ、単結晶素子は各々がパルス波高計測電子工学機器に接続されるが、この時、画素ごとに別個の電子工学機器が設けられており、用途指定集積回路(ASIC)として構築されるような電子工学機器の多数配列に並べられる。この配列は単独で用いられてもよいし、または、光子を計数しない複数の配列(1ミリメートルに満たない空間分解能を備えている)と一緒に設置されることで、光子計数データが光子を計数しない画像モジュールと同時に得られるようにしてもよい。
【0018】
或る特定の実施形態においては、検出装置12は、1536 行x 2048列の1辺が194 μmの方形画素配列を含んでいる素光子計数用平坦プレート画像センサーである。或る実施形態においては、検出装置12は投射画像を得るにあたり、1秒あたり1フレームの速度で作動させられる。或る実施形態においては、検出装置12は1秒あたり10フレームまたはそれよりも高速で作動させることができる。或る実施形態では、検出装置12は1秒あたり1000フレームまたはそれよりも高速で作動させることができる。
【0019】
或る実施形態においては、光子計数用平坦プレート画像センサーを備えている画像獲得装置は、錐状ビーム電算断層撮影データセットを得るために多数の2次元投射画像を獲得するが、この場合、投射画像のうちの1枚以上は5秒またはそれより短い時間のうちに獲得される。また別な実施形態において、画像獲得装置は錐状ビーム電算断層撮影データセットを得るために多数の2次元投射画像を獲得するが、この場合は、投射画像のうちの1枚以上は35ミリ秒またはそれより短い時間のうちに獲得される。更に別な実施形態においては、画像獲得装置は錐状ビーム電算断層撮影データセットを得るために多数の2次元投射画像を獲得するが、この場合は、投射画像のうちの1枚以上は0.5ミリ秒またはそれより短い時間のうちに獲得される。
【0020】
構造体14は画像処理に好適な位置や配向に患者13を支持する。構造体14は、患者13が横たわり、或いは、うつ伏せまたは仰向けになって構造体14の上に乗ることができるような多様な形状を取るように構成されるとよい。構造体14は、患者が直立し、または、構造体14に寄りかかって、片方の乳房などのような興味の対象である身体領域のみを構造体の中に伸ばし入れて画像処理に備えることができるような多様な形状を取るように構成されてもよい。構造体14はX線吸収素材から製造されていればよく、たとえば、鉛、タングステン、タンタル、ウラニウム、トリウム、イリジウム、金、および、これらの各種合金または各種混合物を含有している素材から製造することができる。
【0021】
或る実施形態においては、構造体14は、乳房などのような興味の対象である身体領域が非圧平状態のままで支持されるような態様に構成される。本件で採用されているように、「興味の対象である非圧平状態の身体領域」または「非圧平状態の乳房」という語は、圧搾されていない状態である、すなわち、体液や導入された薬剤の輸送を抑圧するような態様で拘束されていない状態である身体領域または乳房のことを指している。非圧平式の実施形態の具体例としては、支持用架台および位置決め用架台、平坦面および湾曲面、各種カップ、各種シリンダー、ブラジャー状部材(繊維素材製と可塑材製の両方を含む)などが挙げられる。非圧平式の実施形態のより特殊な具体例としては、体液および導入された薬剤の輸送を向上させる、一方端が解放状態のシリンダーなどのような各種形状体であって、片乳房を覆うように設置されて部分真空までポンプ吸引されるものが挙げられる。興味の対象である身体領域または乳房を非圧平状態のままにする実施形態が望ましい理由は、これら実施形態が従来の圧平式マンモグラフィーで患者が被る苦痛を排除したのみならず、興味の対象である非圧平状態の身体領域または乳房に造影剤をより容易に効果的に循環させることで疑わしい病変部の査定をする支援を行うことができるからである。
【0022】
或る特定の実施形態においては、患者13は支持構造体14の上にうつ伏せに寝転ぶ。患者の左乳房、すなわち、興味の対象である身体領域は支持構造体14に設けられた穴を通って下に垂れてX線源11から放射されるX線ビーム16の領域に張出した結果、患者の心臓や肺には直接的にX線ビームがほとんど露光されることなく、X線投射画像が検出装置12で得られる。
【0023】
また別な特定の実施形態においては、構造体14は180度にX線ビームの扇状の角度を加えた分だけ回転することができるように構成されている。X線源11および検出装置12は、適所に固定された状態に維持されたC字型アームに取付けられている。X線錐状ビームは半分に分割され、患者の乳房だけが直接的に露光され、心臓および肺は直接的にはビーム経路に入らないようになっている。
【0024】
また別な特定の実施形態においては、患者13は傾斜直立位置を取って、角度付けされた支持構造体または直立状の支持構造体を装備した回転椅子の上に座ったままの姿勢でいる。X線源11および検出装置12は一緒に、錐状ビームCTデータを得るために患者の周囲を回動するC字型アームに接続されている。X線ビームは半円錐形状を呈しているため、直接的なX線ビームに露光されるのは乳房だけで、心臓および肺は露光されずに済む。
【0025】
更に特定の実施形態においては、患者13は水平に横たわり、解剖学的構造の部分だけを直接的なX線ビームに露光する。支持構造体14またはX線源11と平坦パネル画像装置12とを保持したC字型アームの一方のみが回転するようにしてもよいし、両方ともが回転するようにしてもよい。
【0026】
また別な特定の実施形態においては、支持構造体14は、患者の肩領域が半扇状のX線ビームの中に張出して、乳房から腋の中までの身体領域の画像化を行うことができるように構成されている。
【0027】
更に別な特定の実施形態においては、構造体14はもたれ寝椅子であり、患者13はその上に寝転ぶことができる。X線源11および検出装置12は環状の発射台の被覆部の内側に取付けられており、患者の解剖学的構造のどの部位でも画像化することができるようになっている。これに代わる例として、露出したC字型アームがX線源11および検出装置12を保持し、C字型アームが患者13の周囲でX線源と検出装置の両方を回転させる。
【0028】
2005年5月20日出願の「電算断層撮影および放射線治療を利用して乳房の腫瘍組織を画像化して治療するシステムおよび方法(System and Method for Imaging and Treatment of Tumorous Tissue in Breasts Using Computed Tomography and Radiotherapy)」という名称の米国特許出願第11/134,695号は、X線画像処理中に非圧平状態の乳房を支持するために使用することができる多様な構造体を開示している。米国特許出願第11/134,695号は、ここに援用することにより本件の一部を成すものとする。
【0029】
注入装置15は、興味の対象である身体領域に有効量の造影剤を投与するのに好適な装置であればどのようなものであってもよい。例えば、腕の静脈などのような患者の血管に造影剤を注入するための可撓性チューブと注射器を併用して、循環系により興味の対象である患者の身体領域に造影剤を循環させることができる。
【0030】
本発明で使用される造影剤は、X線の減衰に影響を与えることにより画像のコントラストを変動させる物質であればどんなものでもよい。造影剤は、検査の対象となる組織または身体構造よりもX線の吸収率が高いポジティブの造影媒体であってもよいし、または、X線吸収率が低いネガティブの造影媒体であってもよい。具体的には、造影剤はヨウ素ベースのものか、または、ガドリニウムベースのものにするとよい。ヨウ素ベースの造影剤の具体例としては、VISIPAQUE(登録商標)(ジー・イー・ヘルスケア(GE Healthcare)のイオディキサノール造影剤の登録商標)、OMNIPAQUE(登録商標)(ジー・イー・ヘルスケアのイオへクソル造影剤の登録商標)、ULTRAVIST(登録商標)(バーレックス(Berlex)のイオプロミド造影剤の登録商標)、ISOVUE(登録商標)(ブラッコ・ダイアグノスティックス(Bracco Diagnostics)のイオパミドル造影剤の登録商標)などが挙げられるが、これらに限定されない。上記以外の造影剤も存在し、先に挙げたものは具体例である。ガドリニウムベースの造影剤としては、MultiHance(登録商標)(ブラッコ・ダイアグノスティックスのガドベン酸ジメグルミン造影剤の登録商標)、OMNISCAN(登録商標)(ジー・イー・ヘルスケアの造影剤の登録商標)、MAGNEVIST(登録商標)(バーレックス・ラボラトリーズの造影剤の登録商標)などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に使用される造影剤は、1ミリリットルあたり300ミリグラムまたはそれを越えるヨウ素を含有するといったような高濃度のヨウ素ベースの造影剤であるのが好ましい。特定の実施形態においては、本発明で使用される造影剤はVISOPAQUE(登録商標)である。
【0031】
造影剤の有効量は絶対的ではない。一般に、造影剤の有効量は50ミリリットルから150ミリリットルの範囲である。
【0032】
作動時には、造影剤注入後に画像獲得が開始される。造影剤の注入から画像獲得までの時間遅延は、病変部の種類、病変部の寸法、および、心搏出量などのような個別特性で決まる。人間の乳房が検査対象である或る実施形態においては、造影剤を患者の血管に注入してから約40秒から130秒後に、画像獲得を開始するのが好ましい。また別な実施形態においては、合計で100ミリリットルの造影剤が1秒あたり4ミリリットルの流量で25秒間に亘って患者の上腕静脈に注入され、造影剤注入開始から90秒後に画像処理が開始される。
【0033】
造影剤の注入から画像獲得までの最適時間遅延を定義する1つの方法は、外部ビーム放射線治療を受けることになっている多数患者の大規模集団を研究し、造影剤注入開始から10 分以上の期間に亘って継続的に錐状ビームのCTデータセットを測定することである。この研究から、病変部の種類および病変部の寸法の関数として、また、心搏出量などのような個々の特性の関数として、画像獲得時間を得るためのガイドラインを作成することができる。最適遅延時間を定義するもう1つ別の方法は、CBDTまたは高速CBCTを利用して上述の処置を反復することである。結果として得られる秒単位の(ミリ秒単位まで細分化した)時間分解能(特に、CBDTについて)を利用すれば、造影剤注入開始から10分またはそれを越える期間に亘る時間遅延の総和は全期間の最初から最後までの短い時間間隔について迅速に抽出することができるが、CBDTデータ獲得処理中にX線を患者に露光する場合には更により細かく分化した時間について抽出を行うことができる。例えば、第1回目のデータ獲得時間は1秒で開始され、次の獲得が始まるまでその時間を次々と2倍して、2秒、4秒、8秒、16秒、32秒、64秒、128秒などの遅延の後、最終的に、所望の抽出時間の総和は丸10分から30分または30分以上の期間に及ぶ。このような間隔のうちのいずれであれ望ましいことが分かると、その継承研究で更に多くの画像獲得間隔を充足させて、特に利益があると認識された1つ以上の開始間隔を見出すことができる。もっと緩慢な画像獲得システムの上記に代わる時間シーケンスは、初期抽出遅延が30秒あった後に第1回目のデータ獲得が実施され、それから一連の付加的な獲得遅延間隔が、所望に応じて、17秒、34秒、68秒、136秒、272秒などの長さとなる。
【0034】
興味の対象である身体領域の電算断層撮像分層画像を再構築するのに要するデータを獲得するのに十分な高フレーム速度の多数の投射画像を得るために、X線源11、検出装置12、および、患者13の間の相対運動が行われる。錐状ビーム電算断層撮像法(CBCT)については、検出装置およびX線源と患者との間に相対運動が与えられても、検出装置のX線源に対する相関的な空間設定と配向とは堅固に一定に維持される。通例、これは、180度にX線ビームの錐状角度を加えた角度について、または、360度に所要の重複分を与えるための数度分(+5度までから10度程度)を加えた角度について、いずれの角度についてであれ、興味の対象である患者の身体領域の周囲における平面上の相対回転運動について言えることである。錐状ビームディジタル断層像合成法(CBDT)については、検出装置、X線源、および、患者の間の相対運動は遥かにずっと大雑把かつ恣意的であるが、同時にその条件として、錐状のX線ビームのX線光子の経路は興味の対象である患者の身体領域の個々の3次元画素を多様な角度で透過し、尚且つ、投射画像の形式で検出装置に検出されるという条件を伴う。一般に検出装置の解像度とX線源スポット寸法に制約が課された場合には、個々の3次元画素を通る角度の範囲が大きいほど、空間分解能も向上する。個々の3次元画素について、その特定3次元画素に関するデータを含んでいる別個の複数の投射画像の枚数が多いほど、その3次元画素の画像は明瞭となり(SN比が高くなり)、測定される吸収率とコントラストは高精度となる。錐状ビームディジタル断層像合成法は、特に、X線源11と検出装置12と被写体13との間の円形回転運動を含んでおり、この場合、回転の総角は360度よりも小さく、例えば、回転角度の総度数は300度、260度、220度、200度、180度、160度、140度、120度、100度、80度、60度、40度、20度、10度などになる。3次元容積を画像化するにあたり、解像することができる最小容積(立方体であることが多い)が3次元画素と呼称される。「3次元画素」という語は「画素」という語の延長であって、2次元投射画像の解像度を制限する最小面積の(通例は正方形)領域である。電算断層撮像法の主たる利点の1つは、2次元画像が、この画像平面上に存在している3次元画素のみのコントラスト値(X線吸収率)を集成することによって再構築することができることにある。その平面の上下に位置する複数平面の紛らわしいコントラストは全て除去されるが、この点で、別個の複数平面画像が全部重畳される単投射画像とは異なっている。
【0035】
或る実施形態においては、2次元投射画像は、互いに直交する少なくとも2方向に10 mmまたはそれ未満の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元CT画像データセットに再構築される。また別な実施形態においては、2次元投射画像は、互いに直交し合う少なくとも2方向に0.4 mmまたはそれ未満の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元CT画像データセットに再構築される。更に別な実施形態では、2次元投射画像は、互いに直交し合う少なくとも2方向に5ミクロン以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元CT画像データセットに再構築される。
【0036】
或る作動実施例では、左乳房が興味の対象である領域であった患者13が支持構造体14の上にうつ伏せに寝転がった。乳房は支持構造体14に設けられた穴から垂れ下がりX線源11から発せられるX線ビーム16の領域に伸び出ていた。乳房は圧平されていなかった。1536行×2048列の方形画素は容れるの1辺が194μmである高空間分解能の平坦プレート画像センサー12でX線投射画像が得られた。この平坦プレート画像センサー12は米国カリフォルニア州パロ・オルトに居所を置くヴェアリアン・メディカル・システムズ・インコーポレイティッド(Varian Medical Systems, Inc.)から購入することができる。患者の心臓および肺は、支持構造体14によって直接的なX線ビーム露光から保護されていた。X線源11および平坦プレート画像センサー12は、患者の左乳房の投射画像を500枚収集するのに単位秒あたり30フレームの画像処理速度を利用して静止状態の患者13の周囲を16.6行のうちに約365度回転するアームに堅固に接続されていた。
【0037】
図2は、上述の実施形態によって得られた健康な患者の左乳房の冠状面画像である。図2に例示されているように、精密な空間分解の細部はCBCT構成で得られた。画像の白い部分は乳房の至るところに分布する粒状組織および皮膚境界部である。濃い部分は乳房の脂肪質または脂肪領域である。
【0038】
これと同じCBCT処置が、最高最悪ランクのBIRADS 5の乳癌を患う別な患者について反復実施された。100 ccのVisopaque(ヨウ素ベースの造影剤)が患者の腕の静脈に4秒のうちに注入された。患者がVisopaqueの注入を受けてから140秒後に、500枚の回転投射画像が撮影された。図3Aから図3Cは、フェルトカンプ再構築アルゴリズムを利用した、患者の左乳房の再構築されたCBCT冠状面画像およびCBCT矢状面画像を例示している。
【0039】
図3Aおよび図3Bは、2本の矢印で示されているように、乳房の奥へ深度を変えた2つの部位でコントラストを増強した、2箇所の病変部を例示した冠状面図である。図3Cは、コントラストを増強した病変部の両方を1枚の画像に例示した矢状面図である。その後の外科手術的生検で確認した内容は、2箇所のコントラストを増強した病変部は実際には悪性であった。従来の投射X線圧平式マンモグラフィー画像でコントラストを増強しない場合は、2箇所の病変部の面積と深度のより大きいものを認識することができる。
【0040】
赤線沿いの信号強度プロファイルが図4に挿入されて例示されているが、図3Bの大きいほうの病巣の中央を通って延びる皮膚の線を越えた先から始まって、乳房容積のより深部へと続いている。コントラストを増強した身体領域の信号計数値は1850から2100であるが、粒状組織の計数値は1560から1700である。皮膚ラインを丁度越えた辺りで、計数値は負の領域に降下する。このような計数値は定率調整されてオフセットされた実験的データ計数レベルであり、ハウンズフィールド単位の較正CT値ではない。複数の互いに異なる色を複数の互いに異なる計数値に割当てることにより、表面をレンダリングした3D斜視画像が得られる。例えば、ピンクの各色は-350の皮膚計数値に割当てられ、グリーンの各色は1560から1700までの粒状計数値に割当てられ、レッドの各色は1850から2100までの間のコントラストを増強した計数値に割当てられる。表面をレンダリングした3次元斜視画像が図5Aから図5Dに例示されている。これらの添付画像は、米国カリフォルニア州パロ・オルトに居所を置くヴェアリアン・メディカル・システムズから購入することができるコンピュータソフトウエアEclipse(登録商標)を利用して生成されたものである。
【0041】
レンダリングされた皮膚表面(半透明ピンクで示されている)はお椀の形状を成している。図5Aは側面図であり、図5Bから図5Dはそれを更に回転させた図であり、背面(すなわち、胸部の壁)から前面方向を見た図である。図5Aから図5Dに例示されているように、2つの大きい容積と更に4つの別個の小さい容積とがコントラストが増強されるように解像される。これら6箇所のコントラストを増強した容積部位の拡大図が図6に例示されている。
【0042】
図6の最も大容積のコントラスト増強部位は直線寸法が約10 mmであり、これは、通例ならば従来の投射画像スクリーニングX線マンモグラフィー画像で見て取れる最小寸法の癌病巣の大きさである。これ以外のコントラストを増強した容積寸法はいずれも、最大容積の寸法と等尺に調整されている。10 mmの病変部と6 mmの病変部の両方が生検で悪性癌であると確認された。
【0043】
早期発見と早期治療が乳癌およびそれ以外の部位の癌の治療の要となる。癌が成長するがゆえに上述のコントラスト増強領域を設けるのであるが、このように解像される容積部の寸法は約1 mmに達し、これは、10 mm幅の病巣部の容積の1000分の1よりも小さい寸法である。このように直線寸法にして1 mm分の成長は、癌が深刻な問題を生じ始めるのに十分な大きさまで成長する前の発生期癌病巣の寸法にほぼ等しい(アール・サザーランド(R. Sutherland)著、サイエンス240巻、177頁−240頁、1988年刊)。解像度のレベルは、X線CBCT再構築画像の1辺が約400μmのほぼ立方体の3次元画素寸法に直接由来する。疑わしい領域(10 ミリメートル以下、10 mm以上)が画像で見つかった場合の標準的なマンモグラフィー画像スクリーニングにおける従来からの取組みは、癌があることを強く確信させる指標となる急速な病変部成長などのような変化を求めて、6ヶ月のうち撮像を繰返し実施することである。本発明の改良法を利用すれば、潜在的な癌病変部の容積は遥かに小さい寸法で認識することができるため、より早期に発見することができ、病変部の寸法などの変化は、撮像反復期間をずっと短くしても(例えば、数週間から1ヶ月)確認することができるため、より早期に悪性確認を行うことができる。
【0044】
一局面においては、本発明はCT画像で癌病変部を認識する方法を提示している。従来、マンモグラフィー撮像者または放射線技師は、利用できるデータを全て検証して最終的にはっきりと悪性認識の判断をするにいたるまでに、数時間を要していた。本発明の一実施形態によれば、コントラストを増強した病変部の信号範囲、良性の粒状組織、および、皮膚の境界部は既に説明して図4にも例示されているように定義される(例えば、上述の特定のデータ定率調整およびオフセットの事例については、ヨウ素でコントラストを増強した病変部については信号範囲は1850から2100であり、良性の粒状組織については1560から1700であり、皮膚の境界部については350までである)。3本の互いに直交する分層方向に(冠状面、矢状面、および、軸面であり、これら各面では、3方向が環状のCT発射台と支持台に寝転がっている仰向け、または、うつ伏せの患者との標準的な水平回転軸線に対して相関的に規定されている)迅速にスクロールすることにより、6箇所のコントラスト増強容積の各々の略中心を認識することができる。表面をレンダリングする処理はこれら直交する分層病巣境界部の周囲に赤色の周辺帯域(色は任意で選択される)を設ける。手動でスクロールして上述のように略中心を認識して図7Aから図7Cに例示されているような最終結果を生じるのに1分を要する。これは最大の10 mm病変部についてであるが、図7Aから図7Cにおいては、6 mmおよび4 mmの病変部の輪郭も赤い境界部で強調されている。表示と読取りのために、このような赤色境界部を排除して、図8Aから図8Cに例示されているように、放射線技師にとって最も馴染みのあるグレースケールの様式で互いに直交する画像(ここでは最大の10 mm病変部に中心が置かれている)を提示するようにしてもよい。破線は、最大の病巣部の略中心を示している。例えば、図8Aから図8Cの上右部分の表面をレンダリングした画像中のピンクの矢印は、画像化の対象となっている病巣部の厳密な表面レンダリング部位を指している。図8Aから図8Cに例示されている互いに直交する画像は、標準的な非圧平状態の乳房の投射マンモグラフィー画像からは得られない高解像度で明瞭な細部を供与している。所望に応じて、3枚の互いに直交する画像は各々が3面の別個の表示スクリーン上に示されて、最大視認空間分解能を得ることができるが、図8Aから図8Cの上右部の参照配置画像はこれら3面スクリーンのいずれにでも重畳させることができ、また、それらとは別個の第4のスクリーンに表示されてもよい。
【0045】
コンピュータによって質量の略中心を迅速に算定する1つの方法は、図7Aから図7Cの3枚の互いに直交する画像の3つの赤色の周辺部の各々より十分に内側の1点を拾うことである。これら3点から、各点を通る12本の線を構築し、但し、これらの線は各々が互いから45度だけ回転させられた位置にくるようにする。これら12本の線が赤色の周辺部と交わる24個の交点(互いに直交する投射面の1枚ごとに8個の交点)の結果的に得られるx値、y値、および、z値を利用して、24組のx値、y値、z値の平均値または中央値を算出することができる。この平均または中間のx値、y値、z値を利用して、質量の中心を迅速に推定することができる。
【0046】
大きなCTデータセットから疑わしい癌病変部の位置を迅速に同定するもう1つ別の方法は次のとおりである。図7Aから図7Cを参照すると、冠状面、矢状面、および、軸面という3つの面が互いに直交し合うx軸、y軸、および、z軸にそれぞれ直交するように設定されている。Eclipse(登録商標)またはこれに匹敵するソフトウエアを利用すれば、冠状面画像をスクロールさせて、最終的に、表面に境界設定された(例えば、赤でレンダリングされた)疑わしい病変部が視覚的に識別される(例えば、図7Aに例示されているように)。次に、ユーザーは、この疑わしい病巣の境界部が示されている領域に合わせてゆっくりとスクロールすると、赤色の境界部の内側で概ね最大の領域を占めるCT分層画像が選択される。この特定の冠状面のx値は参照値xrを提示している。次に、ユーザーはカーソル矢印をこの境界部のほぼ中心に置き、この点でクリックすると参照値yrおよびzrを認識する。これらの値xr、yr、zrを利用して、疑わしい領域を通って互いに直交する(冠状面画像、矢状面画像、および、軸面画像の)分層を表示する(図8Aに例示されているように)。Eclipse(登録商標)、または、これと類似するソフトウエアを利用して、いずれかの分層方向に(または、全部の分層方向に、もしくは、或る組合せの方向に)僅かに前後して移動し、疑わしい病変部をより明瞭に視覚化することができる(図8Aに例示されている参照交線を含む、または、含まない)。容積をレンダリングしたCTデータが利用される場合は、処理過程は同じであるが、例外として、疑わしい病変部の境界部だけではなく、むしろ、その断面領域が表示される。病変部のほぼ最大に近い断面領域を利用してxrを規定する。xr平面の略中心に置いたカーソルをクリックすることで、yrおよびzrを得る。例示のために、冠状面の分層方向のみを説明している。しかし、それ以外のどの分層方向を利用しても、例えば、矢状面方向、軸面方向、これらに対して斜行する各方向などのうちいずれを利用しても、この基準認識を実施することができる。表面をレンダリングした領域または容積をレンダリングした領域が色で示されていても、また、色で示されていなくても、ロッキング、すなわち、前後を交互に振って視認する処理を実施することができる。上述の処理過程はコンピュータプログラムを地用して全自動式に行うことができる。コンピュータプログラムは或る特定の平面方向(例えば、冠状面方向など)に画像分層をやり通し、コントラストを増強した領域の面積がほぼ最大限にされた平面を認識し、また、例えば、xrが同定される。次に、プログラムはコントラスト増強領域の略中心(質量中心、この領域を通過するように引かれた多数線の交点の中間値など)を識別することで、例えば、yrおよびzrを特定する。次に、プログラムは、ほぼ実時間で、また、人と対話せずに、適切な画像(例えば、図8Aから図8C)を自動表示する。必要ならば、透視装置がロッキングを行い、すなわち、所望に応じて前後に振って視認するようにしてもよい。
【0047】
図9Aから図9Cは、4 mm病変部の、互いに直交するグレースケール画像を例示している。衛星悪性腫瘍は、大型の10 mm病変部から遠ざかる方向に拡張し、3次元空間に明瞭に画定されるため、その組織は乳腺腫瘤摘出術などのような切開処置で除去し、思いもよらず癌組織を残すことがないようにすることができるが、除去し残した癌組織は標準式マンモグラフィー投射画像処理では輪郭を明確に示すことが容易ではない。図9Aから図9Cもまた、4 mm病変部とその周囲の良性の粒状組織との関係を明瞭に示しており、特に、矢状面図の図9Bに明確に見て取れる。
【0048】
図10Aから図10Cは、1.4 mm病変部のコントラストを増強した画像を例示している。ここでは、表示領域の総容積は10 mmの病変部の総容積の300分の1にも満たない。従って、1.4 mm程度の小さい悪性腫瘍も、本発明の方法を利用すれば解像することができる。
【0049】
図11Aから図11Cは、1 mm病変部のコントラストを増強した画像を例示している。1 mm病変部の総容積は10 mm病変部の総容積の約1000分の1にも満たない。ガドリニウムでコントラストを増強したMRI画像化処理は、直線寸法にして5 mmまたはそれよりも小さい病変部について、深刻な偽陽性の問題に陥り始めている。先に述べたような本発明のコントラスト増強CBCTは、ガドリニウムMRIよりも高い空間分解能および時間分解能を供与し、僅かにコントラストを増強した良性の領域を悪性領域から弁別するのに有用となる。
【0050】
本発明の空間分解能およびコントラスト解像度によって与えられる余得の融通性が図12Aから図12Cに例示されているが、ここでは、図11Aから図11Cの画像が4倍程度だけ拡大されており、画像それぞれのウインドウと水準化処理は、腺領域、コントラスト増強領域、および、皮膚領域だけを示すために精密になっている。これは有用な弁別化情報を提供するように思われる。1 mmの潜在的な病巣領域は画像では小さすぎるため、そのような領域の増強断面はここでは点として顕在化しているにすぎない。
【0051】
癌病変部を高空間分解能および高時間分解能で処理するコントラストを増強したCBCTが大いに望ましい。癌成長を初期段階から特徴付けし、多様な癌の初発と成長を検査することができるようにした高精度の定量法が大いに必要となる。本発明はどのような理論にも制約されないが、血管形成前の腫瘍の寸法は直径にして0.2 mmから2 mmに限られるとの提唱がなされており(ジェイ・フォルクマン(J. Folkman)著、「腫瘍の血管形成(Tumor Angiogenesis)」、癌医学(Cancer Medicine)第5版、ジェイ・ホーランド(J. Halland)およびイー・フライ(E. Frei)編、デッカー社(Decker)、ロンドン、134頁−137頁、2000年刊)、そのような寸法の腫瘍は、突然、腫瘍起因性血管形成を含む急速な成長形式(顕型)に切替わる。このようなモデルは、第1期腫瘍が除去されるまでの間、大型の腫瘍塊になるとこのような小型の血管形成前の腫瘍塊の上記のような「切替わり」を抑止することを暗示している。このような第1期腫瘍と、その成長抑止が喪失されてしまうと、「第2期の」前腫瘍、転移腫瘍、または、その両方が血管形成を伴う急成長段階に「切替わる」。本発明のコントラストを増強したCBCTにより供与される、優れた時間分解能および空間分解能ならびに感度はこのモデルを検証するのに極めて好適であり、乳癌を患っている患者に無数の小さいコントラスト増強領域と潜在的悪性腫瘍が存在するのを示した図4から図12で証明されているとおりである。1990年代に実現を予想された腫瘍起因性血管形成抑止剤を使って、向上した癌治療を行うという大きな期待は2005年になってもほとんど未確証のままである(シー・シュターク(C. Sturk)およびディー・デュモント(D. Dumont)共著、「腫瘍起因性血管形成(Angiogenesis)」、腫瘍学の基礎科学(Tumor Angiogenesis)第4版、アイ・タノック(I. Tannock)ほか編、マグローヒル社(McGraw-Hill)、ニューヨーク、244頁、2005年刊)。この原因の少なくとも一部は、癌生物学および癌機能に対するこのような薬剤の投与時機と効果についての理解不足であった。癌後期には、もっと優れた作用調整、スケジュール調整、時機調整を図ったうえで、細胞傷害性化学療法、放射線治療、ホルモン治療、外科手術などの術後補助の癌治療を行う必要がある。本発明によりもたらされる高空間分解能および高時間分解能を備えたコントラスト増強CBCTは、不確実だった事柄の少なくとも幾らかを片付け、術後補助の各種癌治療を組合せて施すための改良された治療計画案を規定する基礎を提示している。
【0052】
癌の初発、成長、診断、病期判定、および、有効な治療は高度に変容する複雑な生物学的・化学的・物理的な過程である。しかし、あらゆる度の過ぎた癌病巣の成長、機能、発達、および、監視と最適治療の査定の根本にあり、また、これらにとって不可欠である3つの基本的な物理化学的過程が存在するのは明らかである。第1の基本過程は、生体の生化学的代謝であり、酸素やグルコースなどの養分の注入拡散と二酸化炭素などの老廃物の放出拡散であるが、このような拡散が行われる最大距離は血液供給源と大半の人体細胞(および、動物体細胞)との間の100μmから200μmにおよぶ(アール・サザーランド(R. Sutherland)著、サイエンス240巻、177頁−184頁、1988年刊、および、ジェイ・フォルクマン著、「腫瘍の血管形成」、癌医学第5版、ジェイ・ホーランドおよびイー・フライ編、デッカー社、ロンドン、134頁、2000年刊を参照のこと)。これは、癌を含むどのような組織物質であれ、その急成長に必要であり、また、毛細血管輸送構造が(健康組織において典型的な内径が10μmから15μmである)、急成長する組織塊のいたるところに約100ミクロンから200ミクロンの平均間隔で入り込むことが要件となる。第2の基本過程では、癌の急成長は極めて不規則かつ非系統的であり、初期的には十分な毛細血管構造を組入れることはない。その結果、低酸素濃度すなわち低酸素症などのようなストレスが癌の供給不足領域の細胞に発生する。このようなストレスが局部遺伝子を誘導してこの領域に蛋白質(血管内皮成長因子すなわちVEGFなど)を生成(発現)させるが、この蛋白質が放出拡散し、既存の毛細血管から発芽した新生毛細血管をストレスを被った領域に向けて形成させる。しかしながら、結果として生じる新生毛細血管は健康な領域の極めて整った幾何学的形状と比べて、でたらめで、不規則で、絡みつき、尖頂喪失しており、更に、直径が大きいという顕著な幾何形状を有している。第3の基本過程は、このようにストレスに誘発された新生毛細血管のほとんどが血管の内層(内皮)だけから構成されることであるが、新生毛細血管は健康で無傷に近い毛細血管には存在している基底膜や平滑筋外被膜などを有していない。重要な結果として、このような標準以下の血管の壁は漏出が激しく、特に、血管の周囲の組織にガドリニウム含有化合物またはヨウ素含有化合物などのような造影剤を漏らしてしまう傾向が顕著である。通例、このようなことが起こるのは、化合物濃度が、本件で既に説明したようなコントラストを増強したX線錐状ビームCTを使って癌構造を容易に画像化することができるようにするのに十分な場合である。
【0053】
コントラストを増強した容積の形状および寸法と、これらがもっと長期(数日から数週間から数ヶ月)に亘って経時変化するのを視覚化するという目的に加えて、癌の発見、監視、査定、および、治療にとって更に有用な特性がある。コントラストを増強した錐状ビームCTから直接的に得られる上記のようなまた別な特性の具体例として、組織灌流を定量化するもっと短期(数分から数秒)の測定による動態、相対的な血液量、毛細血管透水性、漏出空間などが挙げられるが、これら具体例は、組織塊の幾何形状についての患者相互の変差を補正する動脈系の経時減衰データによって標準化される比較分析とデコンボリューションを利用して説明されるようなものである。灌流は、組織の濃度−時間曲線(造影剤の)の最大傾斜から算定されるか、または、前記曲線のピーク波高から算定されて、動脈入力関数に従って標準化される。心搏出量の体重に対する割合を利用して灌流を更に標準化することで、正規の灌流値を得ることができる。これを2区画モデルに敷衍することで、毛細血管の透水性と血液量を判定する。デコンボリューションは同一パラメータについての代替の取組みである。デコンボリューションでは、衝撃残存関数(IRF)を算定する目的で動脈と組織の濃度−時間曲線を利用する。IRFは理論上の組織曲線であって、即時動脈入力から得られる。流量補正されたIRFの高さから組織灌流を求めることができ、また、曲線より下の領域で血液量が判定される。分散パラメータモデルを利用することでこの解析を敷衍し、毛細血管の透水性の測定値を得ることができる。これらパラメータは全て、診断、病期判定、腫瘍等級の査定、予後について、また、治療監視をするうえで、腫瘍学的に有用である。本発明は単結晶集積画素式のセンサー配列を利用して、秒レベルの時間分解能と、合理的なX線投与線量と、手ごろな構成部材価格およびシステム価格で、より大容量の、空間分解能の高い画像をもたらすことができる。
【0054】
或る実施形態では、造影剤で増強したCBCTまたはCBDTに基づいて癌組織を良性組織と明確に識別する目的で拡大処理、X線源由来の小さい寸法のX線スポット、または、その両方を利用することで、高空間分解能の画像を得ることができる。拡大率(X)は、X線源から平坦パネル画像化装置までの距離の、X線源から患者までの距離に対する割合であると定義される。1に近い低拡大率については、空間分解能は画像化装置それ自体の空間分解能によってほぼ決まるが、この場合の空間分解能は画像化装置の画素寸法のことであって、シンチレーターにボケがある場合は、このボケによって劣化される。高拡大率(10より大きい)については、空間分解能はX線源のスポット寸法によってほぼ決まる。中間拡大率X値については、結果として得られる空間分解能は画像化装置の空間分解能とX線源のスポット寸法の組合せにより決まり、両方の値をそれぞれ2乗して求めた和の平行根に近似していることが多い。
【0055】
図13は、複数の異なる拡大率Xについての好ましい実施形態を例示している。固定距離AはX線源11のX線スポットから平坦パネル画像化装置12まで測定された値である。固定距離BはX線源11のX線スポットから患者13の周囲を巡る回転の中心まで、または、患者の身体部位(例えば、患者の乳房)まで測定された値である。回転中心は概ね患者13または患者の身体部位に位置する。距離Cは回転中心から患者13の身体部位まで測定されるた値であるが、この身体部位の測定位置は、回転中心からの距離を最大にして、身体部位を遮るものがなく、露にするのに十分なだけ外側にくる。患者の支持台14の外表面の形状は円筒状で、この形状によりX線源11は患者13(または、患者の身体部位)の周囲を回転して角度(θ)を成すことができるようになるとともに、わずかな余地(例えば、1 cm)だけ遮るものを無くすることができる。凡その拡大率はA/BからXである。このようなパラメータの好ましい値が表1にリスト表示されている。X線源11のスポット寸法は錐状ビームCTデータセットの空間分解能に概ね等しく、それは、このスポットから平坦パネル画像化装置12までの距離と比較して、X線源11のスポットのほうが回転中心に近い位置に置かれているからである。具体的な好ましいX線源スポット寸法の具体例として、直径にして800、400、200、100、70、50、30、10、1、0.1、0.02などが挙げられるが、測定単位は全てミクロンである。角度(θ)の値が低くして(15度未満)拡大率を大きくすると、X線源11と平坦パネル画像化装置12の運動は、それぞれの円形経路を横断する直線コード様となるが、但し、相互に反対方向であり、これは、これらのほぼ近似した円形経路が、そのような小さい角度には好適だからである。大半の実施形態全般について、X線源11からの多数のX線ビームが興味の対象である患者13の身体領域の全部の3次元画素を多数の分かっている角度で透過する限りにおいて、運動は何らかの相対運動であればよく(直線軌跡、湾曲軌跡、ジグザグの軌跡など)、X線源11か画像化装置12のいずれか一方、または、その両方による運動を伴う。
【0056】
【表1】
【0057】
興味の対象である領域が速度vで移動している場合の所与の空間分解能Δxを達成するために、画像獲得データセットは、移動距離が所望の解像度よりも小さい場合の時間間隔Δtのうちに取得される必要がある。これは、以下の数式1で表される。
【数1】
所望の解像度Δxの関数としてのΔt式の最大値が、速度0.2 mm/秒、2.0 mm/秒、および、20 mm/秒の速度について図14にグラフ表示されている。このような速度は、人体について観察されることが多い反復運動(例えば、呼吸、心拍)および不規則運動(例えば、蠕動)を表している。このΔtはトモグラフィーデータセット全体を収集するための時間であってもよいし、または、ゲート制御データセットの1間隔ごとの時間であってもよいが、この1間隔は興味の対象である運動中の領域が規定された2つの限界位置の間にくるまで待つ(すなわち、ゲート制御する)期間であり、更に、Δtはこのような1ゲート制御間隔あたりのデータを獲得するのに要する最長時間である。所与の空間分解能を達成するのにもっと信頼を置くことができるようにするために、最大値は3の因数によって、以下の数式2で示す値まで低減することができる。
【数2】
【0058】
高拡大率の代償として、平坦プレート画像化装置は依然としてX線源からほぼ同じ線量のX線総投与量を受ける必要があるが、低拡大率では、または、拡大しない場合は、同程度のコントラスト分解能が必要となるからである。X線源から出力されるX線投与線量はX線源のスポット寸法の減少に比例して減少する。これと同時に、画像化されている容積の立方体はその直線寸法が低下するため、単位容積あたりの投与線量は劇的に増大する。その結果、投与線量密度が高くなりすぎて、画像化されている領域を変化させる、または、その領域に損傷を与える。後者は健康で良性の組織から成る容積部には特に問題となる。この問題に対処する好ましい実施形態は平坦なパネル画像装置またはタイル配列式の独立画素画像装置を使用することであり、このような画像装置は個々の画素に吸収されるX線信号の光子計数を実施し、個々の画素に吸収されたX線光子のエネルギー分布を特徴づけるパルス波高信号を供与する。これにより、獲得したデータから電子ノイズを全て除去し、投与線量のレベルを減らすことができるが、低い投与線量レベルでは、個々の画素のX線光子の量統計によってのみノイズが限定される。更に、エネルギー弁別により、個々の画素の信号は区分けされ、所望されるとおりの数のエネルギー画分を得ることができる。従って、特徴的な吸収端の真上と真下のエネルギーを保有する信号を、どのような所望のエネルギー帯域幅を有するようにも確立することができ、結果として、投与線量を低下させた画像化処理についても、3次元データセットのどの3次元画素についても造影剤の有無とその濃度を解像することができる。明確な弁別が確立された後は、容積画像の悪性部位に対する投与線量の密度を選択的に増大させて治療レベルまで戻すことで、そのような癌領域がCBCT、CBDT、または、その両方で画像処理されるのと同時に治療を施すことができるようになる。このような治療またはそれ以外の治療の施療が完了すると、低投与線量で非治療性のコントラスト増強画像化処理が反復されて、治療後に継続して、または、治療中に、数ミリ秒から数ヶ月の範囲にわたる時間枠の間、治療に対する反応を監視することができる。
【0059】
或る特定の実施形態においては、2 ミリグレイから50 ミリグレイの範囲のX線投与線量を利用して、錐状ビーム断層撮像データセットの2次元投射画像を得る。また別な特定の実施形態においては、1 センチグレイから7000 センチグレイの範囲のX線治療の投与線量が興味の対象である非圧平状態の身体領域に分散されて、癌と認識された組織を治療する。この治療用線量が供与される時期は、癌組織を解像する3次元画像データセットの再構築中またはその後である。
【0060】
好ましい治療処置およびシステム構築は次のとおりである。小型悪性腫瘍(直径7 ミリ以上、初期腫瘍または転移腫瘍)は、上述のような、表面をレンダリングしてヨウ素でコントラストを増強した錐状ビームCTデータセットに基づいて、ヴェアリアン・パクススキャン(Varian PaxScan) 4030CB画像センサープレート(1辺が194 μmの画素を利用)の大型画分を病巣部の画像で一杯にするのに十分な拡大率(30倍またはそれ以上)を利用して認識される。キロボルト級X線源スポット寸法は、このスポット寸法が錐状ビームCT画像データセットの空間分解能を厳密に限定しないようにするのに十分なだけ小さい(直径0.2 ミリメートルを越える)。ヴェアリアン・ピー・アール・エム・システム(Varian PRM(登録商標))などのような好適な運動管理システムを利用して錐状ビームCT画像データ獲得を制御し、病巣部が放射線治療を施すのに正しい位置にあるため完璧な回転式錐状ビームCTデータセットを獲得することができて、同時に、運動により生じる人為的部分のほとんどがクリアされる場合にのみX線源がオン状態となるようにしている。X線源から発せられるビームの形状はマイクロ・マルチリーフ照準装置によって制御されることで、投射画像が得られる回転角度ごとに病巣部の境界に特定の余地(例えば、1 mm)を加えた位置に揃えられる。錐状ビームデータセットが個別に得られると、X線源を絶えず移動させて(患者および病巣部と相対的に)病巣周辺の健康な組織に当たる放射線量を拡散させて患者の皮膚に当たる投与線量も低下させながら、所望の放射線治療用線量が病巣部に供与されるレベルまでX線源のビーム電流が調節される。このプロセスは投与線量の1区分ごとに繰返されるが、典型的な小分け投与線量供与計画案に従って、通例は毎日1回、1週間に5日の頻度で、連続4週から連続6週におよぶ。画像化は放射線治療中に実施されるので(これに加えて、放射線治療と同時に行われる術後補助ホルモン治療中または化学療法中にも実施されるので)、造影剤は投与線量供与の全期間にわたって適切な間隔で(例えば、5回の均等に隔てた間をおいて)投与される。後者の処置を利用して、治療に対する腫瘍起因性血管形成反応(および、増強されたコントラストの動態パラメータ反応)を監視し、病巣部の形状および寸法の変化などのような、治療期間中に生じる変化に対する治療(放射線治療、化学治療、ホルモン治療、または、これらの各種組合せ治療)を最適化する。これは、多数の病巣について、所望に応じて、1回が4週から6週の小分け治療期間計画の最中に繰返される。
【0061】
また別な好ましい治療処置およびシステム構成はすぐ前段に記載されているものと同じであるが、X線源がメガボルト級のもの(例えば、6 MeV)である点が例外的に異なっている。コントラスト解像度は数メガボルトで低下するが(キロボルトと比較して)、それでも依然、多数の病巣部およびそれぞれの特性を区別するには十分に良好である(2%またはそれ以上)。ベガボルト線源の利点は、吸収されるX線の1光子あたりの、供与される投与線量エネルギーが遥かに高く、その結果、所要のビーム電流と投与線量供給時間がキロボルト線源を利用した場合に比べて、遥かに低いからである。
【0062】
或る実施形態では、X線源11は、X線投与線量が低くてもコントラスト増強CBCTおよびCBDTの感度を向上させることができる準単色性線源である。この実施形態は、単結晶素子(または薄板)の分散配列から構成されている場合には、ヴェアリアン・メディカル・システムズ・インコーポレーティッドから購入できるスノーバード(Snowbird)チューブなどのような高出力X線チューブから発射されるビームの断片をより多量に捕獲することができる。高出力X線チューブは標準診断用X線エネルギー範囲(30 kVpから100 kVp)にわたって調整可能であり、数エレクトロンボルト(eV)程度の帯域幅を有している。この実施形態は、投射面積が小さい線源から発射されるX線の大きな角度全部を隈なく捕獲する。狭い帯域のX線エネルギーについて効率がよい。その構成は、特定の設計要件に従って結晶薄板が特定の表面形状に搭載されている。標準X線チューブと組合わせると、用途は無数になるが、その場合、効率の良さと狭いエネルギー帯域のX線の高い捕獲性能は活きている。この実施形態は、多数のCBCT処置およびCBDT処置を改良し、新規な処置を行えるようにするためにも利用することができる。この構成を使って、線源からのX線ビームの特性を変えることもできる。その具体例として、有効線源の直径を小さくすること、または、ビームの形状を発散型ではなく並行型にすることなどが挙げられる。X線チューブ源11から発射されたビームを選択して屈折させ、仮想合焦点または実際の合焦点のいずれであれ、線源スポットと相対的に多様な位置に置かれた合焦点から発散する、ほぼ単一エネルギーのX線ビームを生成する特性を示すようにすることもできる。基本概念は、屈折平面の配向と結晶薄板のモザイク状配置の両方を同時使用して、単色性と高いビーム捕獲効率とを達成するというものである。
【0063】
或る実施形態においては、X線源11は、X線投与線量を低下させてコントラスト増強CBCTおよびCBDTと併用する特定用途の準単色性線源である。準単色性線源は多数の元素の1/200減衰から1/500減衰までの減衰価層の膜を有しており、そのような元素の具体例として、セリウム、ネオジミウム、ユーロピウム、および、タングステンが挙げられるが、これら元素はそれぞれ固有のヨウ素k吸収端ピークエネルギー、すなわち、40.44 keV、43.57 keV、48.52 keV、および、69.53 keVを有しているとともに、それぞれ固有の1/200減衰の価層厚さ0.71 mm、0.7 mm、1.00 mm、および、0.2 mmを有しており、更にそれぞれ固有の1/500減衰の価層厚さ0.91 mm、0.93 mm、1.25 mm、および、0.25 mmを有しており、層状膜は40 kVpから100 kVpの範囲で作動するX線チューブのビームの中に置かれ、狭帯域X線フィルターとして作用する。
【0064】
或る実施形態においては、X線源11は、X線投与線量を低下させてコントラスト増強CBCTおよびCBDTと併用する特定用途の準単色性線源である。この準単色性線源は高X線密度の素材と低X線密度の素材の多層状膜を有しており、このような層状膜は調整可能な狭帯域X線フィルターとして作用し、40 kVpから100 kVpの範囲で作動するX線チューブのビームの中に置かれる。
【0065】
本発明の一局面においては、腫瘍起因性血管形成の抑止治療(薬物を含む)、または、それ以外の癌治療が患者に施されてから、血管形成反応、および、この反応の代理反応としての注入済み造影剤の動態パラメータが監視される。このような血管形成抑止剤の具体例として、アバスチン(Avastin、ベバシズマブ)、アンジオスタチン(Angiostatin)、アレステン(Arresten)、カンスタチン(Canstatin)、コンブレタスタチン(Combretastatin)、エンドスタチン(Endostatin)、NM−3、タリドミド(Thalidomide)、スロンボスポンジン(Thrombospondin)、ツムスタチン(Tumstatin)、2-メトキシエストラジオール、ビタキシン(Vitaxin)、イレッサ(Iressa)、タルセバ(Tarceva)、エルビツクス(Erbitux)、グリーベック(Gleevec)、ヘルセプチン(Herceptin)、インターフェロン-α、SU 11248、BAY 43-9006、AG-013736、PTK787、および、SU 5416が挙げられる。これら各種組合せ治療の開発および最適化は、本件記載の発明を利用して腫瘍血管の変化を画像化する性能によって大いに向上させることができる。このような画像化処置は、造影剤注入から20分後から30分後までの時間に亘る画像を収集することを含んでいる。これにより、治療の経過にわたって治療によって誘起された変化についての情報を供与している。このような画像は、構造変化は元より、病態生理学的効果についての情報も提供することができる。
【0066】
このような血管形成防止剤または抗血管剤を薬物、放射線、または、その両方と組合わせるための多様なスケジュールを、本件の画像化方法を利用して開発することができるが、すなわち、最適手順と最適時機を開発することができる。血管に作用する上記薬剤は血管系を「正常化」することができることが示されている(アール・ジェイン(R. Jain)著、サイエンス第307巻、58頁−62頁、2005年刊)。この「正常化」は、本件記載の画像化方法によって経時的に監視することができる血管のパターン構造、寸法、透水性の変化を含んでいる。血管形成防止治療または抗血管治療の後に(または、その前に、もしくは、その最中に)規定の時間領域に亘って薬物投与し、または、放射線治療を施すことにより、放射線の相乗効果を達成することができる。
【0067】
本発明は、かなり初期の癌形成および癌成長を認識し、診断し、病期判定し、監視するのに十分な時間分解能、十分な空間分解能、および、十分な感度で、また、従来可能であった以上の高精度で、生体内の立体癌病変部における腫瘍起因性血管形成効果を非観血的に画像化する方法およびシステムを提示している。早期発見および早期治療が久しく癌を克服して生存する要であったので、このことは重要な利益となる。更に、本発明の方法は、標準的なX線スクリーニング処置およびX線診断処置の投与線量に匹敵するX線投与線量で実施することができる。
【0068】
前述の内容から鑑みて、本発明の特定の実施形態をここに記載してきたが、その目的は例示することであって、本発明の真髄および範囲から逸脱せずに多様な変更を行うことができることが分かる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、コントラストを増強したX線画像化に関するものであり、特に、人間または動物の癌を発見し、診断し、病期判定し、監視し、治療するのに有用な、コントラストを増強した錐状ビーム電算断層撮影(CBCT)または錐状ビームディジタル断層画像合成(CBDT)に関連する。
【背景技術】
【0002】
乳癌などのような癌を有効に治療するには、早期発見および早期診断が要となる。従来のX線マンモグラフィーは乳癌の早期発見に好適な経費効率のよい器具であることが分かっている。しかしながら、3次元解剖学的構造を2次元画像に投影するせいで、さらに、造影検出能力がお粗末なせいで、X線マンモグラフィーの予測値と詳細指定性能は限られている。従来のマンモグラフィーによって看破することができる人体の癌の最小寸法は直径にして約10 mmであり、重量に換算して約1グラム、含有細胞数にして約10の9乗個であった。癌が1個の細胞から始まった場合は、直径10 mmの寸法に達するまでに倍量化を約10回程度繰返すことになる。そこから更に倍量化を10回程度繰返せば腫瘍の重量は約1 kgになり、その時の寸法は直径にして約8 cm から10 cmで、この寸法では致死的となる場合もある。現在のところ、倍量化を10回繰返した後に更に10回繰返されるうちに、漸く人体で観察可能となるのが通例である。倍量化が最初の10回程度までの初期状態で診査するのに必要なのは非観血処置であり、それは、初期潜伏期間の後に急速な指数関数的成長期が続き、その時期になって最終的に病巣の寸法の直径が約10 mmになり、そうなると成長率は衰え始めるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
乳癌の発見にはガドリニウム(Gd)造影剤を磁気共鳴画像化法(MRI)と併用して画像コントラストを増強することが実施されているが、そのために、良性期の構造すなわち良性期の病巣よりも高感度で、ガドリニウムを取入れた癌病巣のプロファイルとガドリニウム洗浄後のプロファイルとを経時的に検出する方法が採られている。Gdコントラスト増強MRIは高感度で、従来の検体圧平式X線断層撮影法によって見逃されてきた、すなわち、不顕性の乳癌病巣の大半を検出することができる。しかしながら、Gd−MRIは詳細指定がお粗末で、良性組織が誤って悪性組織として識別されたといったような誤った陽性所見を生じていた。これは、従来の圧平式X線投射式マンモグラフィーに共通する問題であり、マンモグラフィーで疑わしいと識別された領域の生検事例の約75パーセントが良性であったと判明している。
【0004】
錐状ビームCTは、患者の乳房の3次元画像を生成するために利用されている。従来の錐状ビームCTについての1つの問題点は、乳房の癌病変部はCT断層画像のX線吸収係数とコントラストレベルが良性の腺構造のものとほぼ同じであり、このことが原因で悪性病巣部を良性構造と区別するのを困難になっているが、特に、悪性病巣部が腺組織に隣接している場合、または、腺組織と結着している場合にはそのことが言える。このことは、腺組織の含有率の高い高密度の乳房を持つ若い女性では特に問題となる。
【0005】
従って、人間または動物の全身くまなく、高い空時的分解能でがんを早期発見し、早期診断し、早期治療するための向上した方法およびシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの観点では、X線錐状ビーム電算断層撮像法または錐状ビームディジタル断層撮像法を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の身体領域を画像化する方法が提示されるが、この方法は、有効量の造影剤を興味の対象である非圧平状態の身体領域に導入する段階を含んでいる。
【0007】
また別な観点では、X線電算断層撮像法またはディジタル断層撮像法を利用して、患者の非圧平状態の乳房を画像化する方法が提示されるが、この方法は、有効量の造影剤を非圧平状態の乳房に導入する段階を含んでいる。
更に別な観点では、錐状ビーム電算断層撮像法(CBCT)または錐状ビームディジタル断層撮像法(CBDT)を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の身体領域を画像化するシステムが提示されるが、この方法は、興味の対象である非圧平状態の身体領域にX線ビームを伝達するX線源と、CBCTデータセットまたはCBDTデータセットに必要な複数の2次元投射画像を獲得するにあたり、複数の投射画像のうち少なくとも1枚は35ミリ秒またはそれ未満で獲得することができる画像獲得システムと、3次元電算断層撮影画像データセットを生成するにあたり、少なくとも互いに直交する2方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像するプロセッサとを備えている。
【0008】
更にまた別な局面では、X線錐状ビーム電算断層撮像法または錐状ビームディジタル断層撮像法を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の身体領域にX線治療用投与線量を投射する方法が提示されるが、この方法は、有効量の造影剤を興味の対象である非圧平状態の身体領域に導入する段階と、錐状ビーム断層撮像データセットを得るために複数の2次元投影画像を獲得する段階と、興味の対象である非圧平状態の身体領域に1センチグレイから7000センチグレイの範囲のX線治療用投与線量を投射する段階とを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態によるX線画像化システムを例示した概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による、CBCTを利用して得られる健康な患者の左乳房の冠状面画像の図である。
【図3A】本発明の一実施形態による、CBCTを利用して得られる癌病巣を有している患者の左乳房の冠状面画像の図である。
【図3B】本発明の一実施形態による、CBCTを利用して得られる癌病巣を有している患者の左乳房のまた別な冠状面画像の図である。
【図3C】本発明の一実施形態による、CBCTを利用して得られる癌病巣を有している患者の左乳房の矢状面画像の図である。
【図4】本発明の一実施形態による、癌病巣を有している患者の左乳房の冠状面画像を信号強度プロファイルを添えて示した図である。
【図5A】本発明の一実施形態に従って得られる、癌病巣を有している患者の左乳房の表面をレンダリングした3次元(3D)画像の図である。
【図5B】本発明の一実施形態に従って得られる、癌病巣を有している患者の左乳房の表面をレンダリングした3次元(3D)画像の図である。
【図5C】本発明の一実施形態に従って得られる、癌病巣を有している患者の左乳房の表面をレンダリングした3次元(3D)画像の図である。
【図5D】本発明の一実施形態に従って得られる、癌病巣を有している患者の左乳房の表面をレンダリングした3次元(3D)画像の図である。
【図6】本発明の一実施形態による、コントラストを増強した病巣部の寸法を例示した、図5Cに例示された表面をレンダリングした3次元画像の拡大図である。
【図7】図7Aは、本発明の一実施形態による、図6において寸法が10 mmおよび4 mmであると識別されているコントラストを増強した病巣部のハイライトを付した境界部を示した、患者の左乳房の冠状面画像である。図7Bは、本発明の一実施形態による、図6において寸法が10 mmであると識別されているコントラストを増強した病巣部のハイライトを付した境界部を示した、患者の左乳房の矢状面画像である。図7Cは、本発明の一実施形態による、図6において寸法が10 mmおよび6 mmであると識別されているコントラストを増強した病巣部のハイライトを付した境界部を示した、患者の左乳房の軸面画像である。
【図8】図8Aは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した10 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す冠状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図8Bは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した10 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す矢状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図8Cは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した10 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す軸面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。
【図9】図9Aは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す冠状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図9Bは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す矢状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図9Cは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す軸面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。
【図10】図10Aは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した1.4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す冠状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図10Bは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す矢状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図10Cは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す軸面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。
【図11】図11Aは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した1 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す冠状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図11Bは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す矢状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図11Cは、本発明の一実施形態によるコントラストを増強した4 mmの病巣部のほぼ中心で交差する2本の互いに直交する線を示す軸面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印がこの交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。
【図12】図12Aは、図11Aに例示されている患者の左乳房の冠状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印が図中交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図12Bは、図11Bに例示されている患者の左乳房の矢状面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印が図中交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。図12Cは、図11Cに例示されている患者の左乳房の軸面の図であり、図5の一連の図に量感をレンダリングした図を示した上右部分においてピンクの太い矢印が図中交線に中心が置かれた肉体機能部分を指し示しているものを加えた図である。
【図13】本発明の一実施形態によるX線画像化システムを例示した概略図である。
【図14】所望の解像度の関数として画像データセットを獲得するのに要する時間間隔を例示した折線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の上記特徴および利点と、それ以外の多様な特徴および利点は、添付の図面および添付の特許請求の範囲に関連付けて後段の詳細な説明を読めば、よりよく理解することができる。
【0011】
以下に、図面を参照しながら本発明の多様な実施形態を説明してゆく。幾つかの図面は概略的であり、これら図面は本発明の特定の実施形態の説明を容易にするように意図されているにすぎない点に注目するべきである。本発明を余すところなく記載したものと解釈するべきではなく、本発明の範囲を制限するものと解釈するべきでもない。更に、本発明の特定の実施形態に関連して説明される局面は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、本発明のいずれか他の実施形態においても実施することができる。例えば、後段の説明において、本発明は錐状ビーム電算断層撮像法の各種実施形態に関して記載されている。特許請求の範囲に記載されている発明は、錐状ビームディジタル断層像合成法や錐状ビームに基づいていない逆幾何図形の容積電算断層撮像法(IGVCT)などのようなまた別なX線画像化システムと併用されてもよいものと認識するべきである。更に、後段の説明では、本発明は、患者の乳房が検査対象となった実施形態を使って説明されている。特許請求の範囲に記載されている発明は人間患者とその人体各部のみならず、寸法の大小を問わないすべての動物および植物の検査に利用することができるものであり、長期研究の間は生命体のような振る舞いを維持するように肥育して生命維持を図った興味の対象である身体領域と、異なる生体宿主に移植され、または、成長媒体を容れたペトリ皿のような生命維持環境に移されたる興味の対象である身体領域を含んでいることが分かる。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態によるX線画像化システム10を例示している。X線画像化システム10はX線源11と検出装置12を備えている。X線源11と検出装置12の間には、被検体13が置かれている。被検体13は構造14によって支持されており、画像化に好適であればどのような位置と配向にあってもよい。注射装置15は被検体13の興味の対象である身体領域に有効量の造影剤を導入するために設けられている。
【0013】
X線源11はX線ビーム16を生成して、興味の対象である被験体13の身体領域に伝達する。X線検出装置12は、興味の対象である身体領域を透過してきたX線ビームを受光して検出する。X線ビーム16は、興味の対象である被検体の身体領域を透過してきたX線ビームの強度を表している電気信号(画素値)に変換される。電気信号は、当該技術で周知のアルゴリズムを利用して、興味の対象である身体領域の2次元画像または3次元画像を生成するように再構築される。
【0014】
X線源11は複数の異なるエネルギーレベルのX線ビームを生成することができる。X線源11はビーム生成モジュール(図示せず)を、1個または複数個、備えている。本発明の特定の実施形態によると、X線源11はキロエレクトロンボルト(keV)のエネルギーレベルのX線ビームとメガエレクトロンボルト(MeV)のエネルギーレベルのX線ビームを生成するよう構成されている。keV エネルギーレベルのX線ビームは、一般に、患者の癌、組織、または、その両方の画像を形成するために使用され、よって、画像化ビームまたは診断用ビームとも呼ばれる。一般に、MeV エネルギーレベルのX線放射ビームは患者の腫瘍またはその他の異常組織を標的として治療するために使用される。MeV エネルギーレベルのX線放射ビームはまた、患者の画像を形成するために使用することもできる。しかしながら、MeV エネルギーレベルのX線ビームを利用して形成される画像は、通例は、keV エネルギーレベルなどのもっと低いエネルギーレベルのX線ビームを使って形成される画像に比べて、コントラストと空間分解能が低くなる。MeV エネルギーレベルには、骨および金属移植片などのような患者の解剖学的構造の高密度領域によって生成されるCT画像の人為的部分、すなわち、波紋や射線などを低減するという利点がある。本発明の一実施形態によれば、X線源11は2種類のX線ビーム発生装置を備えており、一方はkeVエネルギーレベルのX線画像ビームを生成するためのものであり、もう一方はMeV レベルのX線放射ビームを生成するためのものである。2種類のビーム生成装置は互いに極めて近接して配置されてもよいし、互いから離隔されていてもよい。例えば、或る特定の実施形態では、これら2種類のビーム発生装置は放射線ビームを患者の乳房に向けて相互に約90度の角度で伝達されるように配置されている。また別な実施形態によれば、X線源11は、多数のエネルギーレベルのX線ビームを生成することができる1機のX線ビーム発生装置を備えている。或る実施形態は2元エネルギー(例えば、keV とMeV)を利用して、付加的な医療関連情報を提供する。例えば、2005年5月3日に交付された「画像化装置を位置決めするための関節接続可能な発射台を装備している放射線治療装置(Radiotherapy Apparatus Equipped with an Articulable Gantry for Positioning an Imaging Unit)」という名称の米国特許第6,888,919号は、複数の異なるエネルギーレベルのX線放射源を備えているシステムを開示しており、この特許は、ここに援用することにより開示内容の全体が本件の一部を成すものとする。
【0015】
検出装置12は、興味の対象である身体領域をMeV 高エネルギーレベルおよびkeV 低エネルギーレベルの両方で透過してきたX線ビームを検出することができる。或る実施形態においては、検出装置12は2種類の画像検出装置を備えており、一方はkeV 画像ビームにより形成された画像を検出するためのものであり、もう一方はMeV 放射線ビームによって形成された画像を検出するためのものである。或る実施形態では、検出装置は、多数のエネルギーレベルのビームによって形成された画像を検出することができる1機の画像検出装置を備えている。具体例として、2004年10月5日交付の「X線画像獲得装置(X-Ray Image Acquisition Apparatus)」という名称の米国特許第6,800,858号は、多数のエネルギーレベルのX線画像を検出することができ、尚且つ、本発明による検出装置として使用することができるX線画像検出装置を開示している。米国特許第6,800,858号は、ここに援用することにより開示内容全体が本件の一部を成すものとする。
【0016】
或る実施形態においては、検出装置12は2次元平坦パネルX線センサーである。また或る実施形態では検出装置12は光子計数用平坦プレート画像センサーである。光子計数用平坦プレート画像センサーを構成部材の1つとして含んでいる光伝導体フィルムは、多結晶質沃化水銀、沃化鉛、臭化タリウム、および、アモルファス・セレンを含有している。光伝導体フィルムは物理的蒸着法によって堆積されてもよいし、または、スクリーン印刷により、すなわち、上述のような物質の粉末を結着剤および溶剤と一緒に(粒子結着技術またはパーティクル・イン・バインダー技術)1画素ごとにアモルファスシリコン薄膜トランジスタースイッチおよびデータ保存容量のピクセル表示配列の定型に取ることにより堆積される。スクリーン印刷による堆積は、常態では1画素につき1フレームあたりに1個のX線光子しか検出されず、従って、この画素の信号強度が入射した光子エネルギーの近似値または概算値となるような高速フレーム率のシグナル統合モードで実施される。1画素ごとの電極構造は光子計測を最もうまく実施するのに適合させられており、複数の異なる電位で維持される交互嵌合式バック接点を採用している。
【0017】
或る実施形態においては、光子計数用平坦プレート画像センサーは、室温とそれよりも低い温度の両方で作用可能なテルル化カドミウム、テルル化亜鉛カドミウム、沃化水銀、または、沃化鉛の単結晶X線検出装置を備えている。ここで使用されているように、単結晶X線検出装置は、特に、テルル化亜鉛カドミウムを保有している。良好な空間深度を達成して、尚且つ、入射X線光子のうちの80%より多くのものを吸収するのに十分な深さ(100 keV 以下の光子には約0.6 mmの深さであり、6 MeV 光子には約1 cmの深さである)を得るのに、単結晶は個々に断面積が約1平方ミリメートルまたはそれ未満であるとよい。このような単結晶素子はタイル張りするように1つの配列(例えば、20行×20列)に並べられ、単結晶素子は各々がパルス波高計測電子工学機器に接続されるが、この時、画素ごとに別個の電子工学機器が設けられており、用途指定集積回路(ASIC)として構築されるような電子工学機器の多数配列に並べられる。この配列は単独で用いられてもよいし、または、光子を計数しない複数の配列(1ミリメートルに満たない空間分解能を備えている)と一緒に設置されることで、光子計数データが光子を計数しない画像モジュールと同時に得られるようにしてもよい。
【0018】
或る特定の実施形態においては、検出装置12は、1536 行x 2048列の1辺が194 μmの方形画素配列を含んでいる素光子計数用平坦プレート画像センサーである。或る実施形態においては、検出装置12は投射画像を得るにあたり、1秒あたり1フレームの速度で作動させられる。或る実施形態においては、検出装置12は1秒あたり10フレームまたはそれよりも高速で作動させることができる。或る実施形態では、検出装置12は1秒あたり1000フレームまたはそれよりも高速で作動させることができる。
【0019】
或る実施形態においては、光子計数用平坦プレート画像センサーを備えている画像獲得装置は、錐状ビーム電算断層撮影データセットを得るために多数の2次元投射画像を獲得するが、この場合、投射画像のうちの1枚以上は5秒またはそれより短い時間のうちに獲得される。また別な実施形態において、画像獲得装置は錐状ビーム電算断層撮影データセットを得るために多数の2次元投射画像を獲得するが、この場合は、投射画像のうちの1枚以上は35ミリ秒またはそれより短い時間のうちに獲得される。更に別な実施形態においては、画像獲得装置は錐状ビーム電算断層撮影データセットを得るために多数の2次元投射画像を獲得するが、この場合は、投射画像のうちの1枚以上は0.5ミリ秒またはそれより短い時間のうちに獲得される。
【0020】
構造体14は画像処理に好適な位置や配向に患者13を支持する。構造体14は、患者13が横たわり、或いは、うつ伏せまたは仰向けになって構造体14の上に乗ることができるような多様な形状を取るように構成されるとよい。構造体14は、患者が直立し、または、構造体14に寄りかかって、片方の乳房などのような興味の対象である身体領域のみを構造体の中に伸ばし入れて画像処理に備えることができるような多様な形状を取るように構成されてもよい。構造体14はX線吸収素材から製造されていればよく、たとえば、鉛、タングステン、タンタル、ウラニウム、トリウム、イリジウム、金、および、これらの各種合金または各種混合物を含有している素材から製造することができる。
【0021】
或る実施形態においては、構造体14は、乳房などのような興味の対象である身体領域が非圧平状態のままで支持されるような態様に構成される。本件で採用されているように、「興味の対象である非圧平状態の身体領域」または「非圧平状態の乳房」という語は、圧搾されていない状態である、すなわち、体液や導入された薬剤の輸送を抑圧するような態様で拘束されていない状態である身体領域または乳房のことを指している。非圧平式の実施形態の具体例としては、支持用架台および位置決め用架台、平坦面および湾曲面、各種カップ、各種シリンダー、ブラジャー状部材(繊維素材製と可塑材製の両方を含む)などが挙げられる。非圧平式の実施形態のより特殊な具体例としては、体液および導入された薬剤の輸送を向上させる、一方端が解放状態のシリンダーなどのような各種形状体であって、片乳房を覆うように設置されて部分真空までポンプ吸引されるものが挙げられる。興味の対象である身体領域または乳房を非圧平状態のままにする実施形態が望ましい理由は、これら実施形態が従来の圧平式マンモグラフィーで患者が被る苦痛を排除したのみならず、興味の対象である非圧平状態の身体領域または乳房に造影剤をより容易に効果的に循環させることで疑わしい病変部の査定をする支援を行うことができるからである。
【0022】
或る特定の実施形態においては、患者13は支持構造体14の上にうつ伏せに寝転ぶ。患者の左乳房、すなわち、興味の対象である身体領域は支持構造体14に設けられた穴を通って下に垂れてX線源11から放射されるX線ビーム16の領域に張出した結果、患者の心臓や肺には直接的にX線ビームがほとんど露光されることなく、X線投射画像が検出装置12で得られる。
【0023】
また別な特定の実施形態においては、構造体14は180度にX線ビームの扇状の角度を加えた分だけ回転することができるように構成されている。X線源11および検出装置12は、適所に固定された状態に維持されたC字型アームに取付けられている。X線錐状ビームは半分に分割され、患者の乳房だけが直接的に露光され、心臓および肺は直接的にはビーム経路に入らないようになっている。
【0024】
また別な特定の実施形態においては、患者13は傾斜直立位置を取って、角度付けされた支持構造体または直立状の支持構造体を装備した回転椅子の上に座ったままの姿勢でいる。X線源11および検出装置12は一緒に、錐状ビームCTデータを得るために患者の周囲を回動するC字型アームに接続されている。X線ビームは半円錐形状を呈しているため、直接的なX線ビームに露光されるのは乳房だけで、心臓および肺は露光されずに済む。
【0025】
更に特定の実施形態においては、患者13は水平に横たわり、解剖学的構造の部分だけを直接的なX線ビームに露光する。支持構造体14またはX線源11と平坦パネル画像装置12とを保持したC字型アームの一方のみが回転するようにしてもよいし、両方ともが回転するようにしてもよい。
【0026】
また別な特定の実施形態においては、支持構造体14は、患者の肩領域が半扇状のX線ビームの中に張出して、乳房から腋の中までの身体領域の画像化を行うことができるように構成されている。
【0027】
更に別な特定の実施形態においては、構造体14はもたれ寝椅子であり、患者13はその上に寝転ぶことができる。X線源11および検出装置12は環状の発射台の被覆部の内側に取付けられており、患者の解剖学的構造のどの部位でも画像化することができるようになっている。これに代わる例として、露出したC字型アームがX線源11および検出装置12を保持し、C字型アームが患者13の周囲でX線源と検出装置の両方を回転させる。
【0028】
2005年5月20日出願の「電算断層撮影および放射線治療を利用して乳房の腫瘍組織を画像化して治療するシステムおよび方法(System and Method for Imaging and Treatment of Tumorous Tissue in Breasts Using Computed Tomography and Radiotherapy)」という名称の米国特許出願第11/134,695号は、X線画像処理中に非圧平状態の乳房を支持するために使用することができる多様な構造体を開示している。米国特許出願第11/134,695号は、ここに援用することにより本件の一部を成すものとする。
【0029】
注入装置15は、興味の対象である身体領域に有効量の造影剤を投与するのに好適な装置であればどのようなものであってもよい。例えば、腕の静脈などのような患者の血管に造影剤を注入するための可撓性チューブと注射器を併用して、循環系により興味の対象である患者の身体領域に造影剤を循環させることができる。
【0030】
本発明で使用される造影剤は、X線の減衰に影響を与えることにより画像のコントラストを変動させる物質であればどんなものでもよい。造影剤は、検査の対象となる組織または身体構造よりもX線の吸収率が高いポジティブの造影媒体であってもよいし、または、X線吸収率が低いネガティブの造影媒体であってもよい。具体的には、造影剤はヨウ素ベースのものか、または、ガドリニウムベースのものにするとよい。ヨウ素ベースの造影剤の具体例としては、VISIPAQUE(登録商標)(ジー・イー・ヘルスケア(GE Healthcare)のイオディキサノール造影剤の登録商標)、OMNIPAQUE(登録商標)(ジー・イー・ヘルスケアのイオへクソル造影剤の登録商標)、ULTRAVIST(登録商標)(バーレックス(Berlex)のイオプロミド造影剤の登録商標)、ISOVUE(登録商標)(ブラッコ・ダイアグノスティックス(Bracco Diagnostics)のイオパミドル造影剤の登録商標)などが挙げられるが、これらに限定されない。上記以外の造影剤も存在し、先に挙げたものは具体例である。ガドリニウムベースの造影剤としては、MultiHance(登録商標)(ブラッコ・ダイアグノスティックスのガドベン酸ジメグルミン造影剤の登録商標)、OMNISCAN(登録商標)(ジー・イー・ヘルスケアの造影剤の登録商標)、MAGNEVIST(登録商標)(バーレックス・ラボラトリーズの造影剤の登録商標)などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に使用される造影剤は、1ミリリットルあたり300ミリグラムまたはそれを越えるヨウ素を含有するといったような高濃度のヨウ素ベースの造影剤であるのが好ましい。特定の実施形態においては、本発明で使用される造影剤はVISOPAQUE(登録商標)である。
【0031】
造影剤の有効量は絶対的ではない。一般に、造影剤の有効量は50ミリリットルから150ミリリットルの範囲である。
【0032】
作動時には、造影剤注入後に画像獲得が開始される。造影剤の注入から画像獲得までの時間遅延は、病変部の種類、病変部の寸法、および、心搏出量などのような個別特性で決まる。人間の乳房が検査対象である或る実施形態においては、造影剤を患者の血管に注入してから約40秒から130秒後に、画像獲得を開始するのが好ましい。また別な実施形態においては、合計で100ミリリットルの造影剤が1秒あたり4ミリリットルの流量で25秒間に亘って患者の上腕静脈に注入され、造影剤注入開始から90秒後に画像処理が開始される。
【0033】
造影剤の注入から画像獲得までの最適時間遅延を定義する1つの方法は、外部ビーム放射線治療を受けることになっている多数患者の大規模集団を研究し、造影剤注入開始から10 分以上の期間に亘って継続的に錐状ビームのCTデータセットを測定することである。この研究から、病変部の種類および病変部の寸法の関数として、また、心搏出量などのような個々の特性の関数として、画像獲得時間を得るためのガイドラインを作成することができる。最適遅延時間を定義するもう1つ別の方法は、CBDTまたは高速CBCTを利用して上述の処置を反復することである。結果として得られる秒単位の(ミリ秒単位まで細分化した)時間分解能(特に、CBDTについて)を利用すれば、造影剤注入開始から10分またはそれを越える期間に亘る時間遅延の総和は全期間の最初から最後までの短い時間間隔について迅速に抽出することができるが、CBDTデータ獲得処理中にX線を患者に露光する場合には更により細かく分化した時間について抽出を行うことができる。例えば、第1回目のデータ獲得時間は1秒で開始され、次の獲得が始まるまでその時間を次々と2倍して、2秒、4秒、8秒、16秒、32秒、64秒、128秒などの遅延の後、最終的に、所望の抽出時間の総和は丸10分から30分または30分以上の期間に及ぶ。このような間隔のうちのいずれであれ望ましいことが分かると、その継承研究で更に多くの画像獲得間隔を充足させて、特に利益があると認識された1つ以上の開始間隔を見出すことができる。もっと緩慢な画像獲得システムの上記に代わる時間シーケンスは、初期抽出遅延が30秒あった後に第1回目のデータ獲得が実施され、それから一連の付加的な獲得遅延間隔が、所望に応じて、17秒、34秒、68秒、136秒、272秒などの長さとなる。
【0034】
興味の対象である身体領域の電算断層撮像分層画像を再構築するのに要するデータを獲得するのに十分な高フレーム速度の多数の投射画像を得るために、X線源11、検出装置12、および、患者13の間の相対運動が行われる。錐状ビーム電算断層撮像法(CBCT)については、検出装置およびX線源と患者との間に相対運動が与えられても、検出装置のX線源に対する相関的な空間設定と配向とは堅固に一定に維持される。通例、これは、180度にX線ビームの錐状角度を加えた角度について、または、360度に所要の重複分を与えるための数度分(+5度までから10度程度)を加えた角度について、いずれの角度についてであれ、興味の対象である患者の身体領域の周囲における平面上の相対回転運動について言えることである。錐状ビームディジタル断層像合成法(CBDT)については、検出装置、X線源、および、患者の間の相対運動は遥かにずっと大雑把かつ恣意的であるが、同時にその条件として、錐状のX線ビームのX線光子の経路は興味の対象である患者の身体領域の個々の3次元画素を多様な角度で透過し、尚且つ、投射画像の形式で検出装置に検出されるという条件を伴う。一般に検出装置の解像度とX線源スポット寸法に制約が課された場合には、個々の3次元画素を通る角度の範囲が大きいほど、空間分解能も向上する。個々の3次元画素について、その特定3次元画素に関するデータを含んでいる別個の複数の投射画像の枚数が多いほど、その3次元画素の画像は明瞭となり(SN比が高くなり)、測定される吸収率とコントラストは高精度となる。錐状ビームディジタル断層像合成法は、特に、X線源11と検出装置12と被写体13との間の円形回転運動を含んでおり、この場合、回転の総角は360度よりも小さく、例えば、回転角度の総度数は300度、260度、220度、200度、180度、160度、140度、120度、100度、80度、60度、40度、20度、10度などになる。3次元容積を画像化するにあたり、解像することができる最小容積(立方体であることが多い)が3次元画素と呼称される。「3次元画素」という語は「画素」という語の延長であって、2次元投射画像の解像度を制限する最小面積の(通例は正方形)領域である。電算断層撮像法の主たる利点の1つは、2次元画像が、この画像平面上に存在している3次元画素のみのコントラスト値(X線吸収率)を集成することによって再構築することができることにある。その平面の上下に位置する複数平面の紛らわしいコントラストは全て除去されるが、この点で、別個の複数平面画像が全部重畳される単投射画像とは異なっている。
【0035】
或る実施形態においては、2次元投射画像は、互いに直交する少なくとも2方向に10 mmまたはそれ未満の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元CT画像データセットに再構築される。また別な実施形態においては、2次元投射画像は、互いに直交し合う少なくとも2方向に0.4 mmまたはそれ未満の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元CT画像データセットに再構築される。更に別な実施形態では、2次元投射画像は、互いに直交し合う少なくとも2方向に5ミクロン以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元CT画像データセットに再構築される。
【0036】
或る作動実施例では、左乳房が興味の対象である領域であった患者13が支持構造体14の上にうつ伏せに寝転がった。乳房は支持構造体14に設けられた穴から垂れ下がりX線源11から発せられるX線ビーム16の領域に伸び出ていた。乳房は圧平されていなかった。1536行×2048列の方形画素は容れるの1辺が194μmである高空間分解能の平坦プレート画像センサー12でX線投射画像が得られた。この平坦プレート画像センサー12は米国カリフォルニア州パロ・オルトに居所を置くヴェアリアン・メディカル・システムズ・インコーポレイティッド(Varian Medical Systems, Inc.)から購入することができる。患者の心臓および肺は、支持構造体14によって直接的なX線ビーム露光から保護されていた。X線源11および平坦プレート画像センサー12は、患者の左乳房の投射画像を500枚収集するのに単位秒あたり30フレームの画像処理速度を利用して静止状態の患者13の周囲を16.6行のうちに約365度回転するアームに堅固に接続されていた。
【0037】
図2は、上述の実施形態によって得られた健康な患者の左乳房の冠状面画像である。図2に例示されているように、精密な空間分解の細部はCBCT構成で得られた。画像の白い部分は乳房の至るところに分布する粒状組織および皮膚境界部である。濃い部分は乳房の脂肪質または脂肪領域である。
【0038】
これと同じCBCT処置が、最高最悪ランクのBIRADS 5の乳癌を患う別な患者について反復実施された。100 ccのVisopaque(ヨウ素ベースの造影剤)が患者の腕の静脈に4秒のうちに注入された。患者がVisopaqueの注入を受けてから140秒後に、500枚の回転投射画像が撮影された。図3Aから図3Cは、フェルトカンプ再構築アルゴリズムを利用した、患者の左乳房の再構築されたCBCT冠状面画像およびCBCT矢状面画像を例示している。
【0039】
図3Aおよび図3Bは、2本の矢印で示されているように、乳房の奥へ深度を変えた2つの部位でコントラストを増強した、2箇所の病変部を例示した冠状面図である。図3Cは、コントラストを増強した病変部の両方を1枚の画像に例示した矢状面図である。その後の外科手術的生検で確認した内容は、2箇所のコントラストを増強した病変部は実際には悪性であった。従来の投射X線圧平式マンモグラフィー画像でコントラストを増強しない場合は、2箇所の病変部の面積と深度のより大きいものを認識することができる。
【0040】
赤線沿いの信号強度プロファイルが図4に挿入されて例示されているが、図3Bの大きいほうの病巣の中央を通って延びる皮膚の線を越えた先から始まって、乳房容積のより深部へと続いている。コントラストを増強した身体領域の信号計数値は1850から2100であるが、粒状組織の計数値は1560から1700である。皮膚ラインを丁度越えた辺りで、計数値は負の領域に降下する。このような計数値は定率調整されてオフセットされた実験的データ計数レベルであり、ハウンズフィールド単位の較正CT値ではない。複数の互いに異なる色を複数の互いに異なる計数値に割当てることにより、表面をレンダリングした3D斜視画像が得られる。例えば、ピンクの各色は-350の皮膚計数値に割当てられ、グリーンの各色は1560から1700までの粒状計数値に割当てられ、レッドの各色は1850から2100までの間のコントラストを増強した計数値に割当てられる。表面をレンダリングした3次元斜視画像が図5Aから図5Dに例示されている。これらの添付画像は、米国カリフォルニア州パロ・オルトに居所を置くヴェアリアン・メディカル・システムズから購入することができるコンピュータソフトウエアEclipse(登録商標)を利用して生成されたものである。
【0041】
レンダリングされた皮膚表面(半透明ピンクで示されている)はお椀の形状を成している。図5Aは側面図であり、図5Bから図5Dはそれを更に回転させた図であり、背面(すなわち、胸部の壁)から前面方向を見た図である。図5Aから図5Dに例示されているように、2つの大きい容積と更に4つの別個の小さい容積とがコントラストが増強されるように解像される。これら6箇所のコントラストを増強した容積部位の拡大図が図6に例示されている。
【0042】
図6の最も大容積のコントラスト増強部位は直線寸法が約10 mmであり、これは、通例ならば従来の投射画像スクリーニングX線マンモグラフィー画像で見て取れる最小寸法の癌病巣の大きさである。これ以外のコントラストを増強した容積寸法はいずれも、最大容積の寸法と等尺に調整されている。10 mmの病変部と6 mmの病変部の両方が生検で悪性癌であると確認された。
【0043】
早期発見と早期治療が乳癌およびそれ以外の部位の癌の治療の要となる。癌が成長するがゆえに上述のコントラスト増強領域を設けるのであるが、このように解像される容積部の寸法は約1 mmに達し、これは、10 mm幅の病巣部の容積の1000分の1よりも小さい寸法である。このように直線寸法にして1 mm分の成長は、癌が深刻な問題を生じ始めるのに十分な大きさまで成長する前の発生期癌病巣の寸法にほぼ等しい(アール・サザーランド(R. Sutherland)著、サイエンス240巻、177頁−240頁、1988年刊)。解像度のレベルは、X線CBCT再構築画像の1辺が約400μmのほぼ立方体の3次元画素寸法に直接由来する。疑わしい領域(10 ミリメートル以下、10 mm以上)が画像で見つかった場合の標準的なマンモグラフィー画像スクリーニングにおける従来からの取組みは、癌があることを強く確信させる指標となる急速な病変部成長などのような変化を求めて、6ヶ月のうち撮像を繰返し実施することである。本発明の改良法を利用すれば、潜在的な癌病変部の容積は遥かに小さい寸法で認識することができるため、より早期に発見することができ、病変部の寸法などの変化は、撮像反復期間をずっと短くしても(例えば、数週間から1ヶ月)確認することができるため、より早期に悪性確認を行うことができる。
【0044】
一局面においては、本発明はCT画像で癌病変部を認識する方法を提示している。従来、マンモグラフィー撮像者または放射線技師は、利用できるデータを全て検証して最終的にはっきりと悪性認識の判断をするにいたるまでに、数時間を要していた。本発明の一実施形態によれば、コントラストを増強した病変部の信号範囲、良性の粒状組織、および、皮膚の境界部は既に説明して図4にも例示されているように定義される(例えば、上述の特定のデータ定率調整およびオフセットの事例については、ヨウ素でコントラストを増強した病変部については信号範囲は1850から2100であり、良性の粒状組織については1560から1700であり、皮膚の境界部については350までである)。3本の互いに直交する分層方向に(冠状面、矢状面、および、軸面であり、これら各面では、3方向が環状のCT発射台と支持台に寝転がっている仰向け、または、うつ伏せの患者との標準的な水平回転軸線に対して相関的に規定されている)迅速にスクロールすることにより、6箇所のコントラスト増強容積の各々の略中心を認識することができる。表面をレンダリングする処理はこれら直交する分層病巣境界部の周囲に赤色の周辺帯域(色は任意で選択される)を設ける。手動でスクロールして上述のように略中心を認識して図7Aから図7Cに例示されているような最終結果を生じるのに1分を要する。これは最大の10 mm病変部についてであるが、図7Aから図7Cにおいては、6 mmおよび4 mmの病変部の輪郭も赤い境界部で強調されている。表示と読取りのために、このような赤色境界部を排除して、図8Aから図8Cに例示されているように、放射線技師にとって最も馴染みのあるグレースケールの様式で互いに直交する画像(ここでは最大の10 mm病変部に中心が置かれている)を提示するようにしてもよい。破線は、最大の病巣部の略中心を示している。例えば、図8Aから図8Cの上右部分の表面をレンダリングした画像中のピンクの矢印は、画像化の対象となっている病巣部の厳密な表面レンダリング部位を指している。図8Aから図8Cに例示されている互いに直交する画像は、標準的な非圧平状態の乳房の投射マンモグラフィー画像からは得られない高解像度で明瞭な細部を供与している。所望に応じて、3枚の互いに直交する画像は各々が3面の別個の表示スクリーン上に示されて、最大視認空間分解能を得ることができるが、図8Aから図8Cの上右部の参照配置画像はこれら3面スクリーンのいずれにでも重畳させることができ、また、それらとは別個の第4のスクリーンに表示されてもよい。
【0045】
コンピュータによって質量の略中心を迅速に算定する1つの方法は、図7Aから図7Cの3枚の互いに直交する画像の3つの赤色の周辺部の各々より十分に内側の1点を拾うことである。これら3点から、各点を通る12本の線を構築し、但し、これらの線は各々が互いから45度だけ回転させられた位置にくるようにする。これら12本の線が赤色の周辺部と交わる24個の交点(互いに直交する投射面の1枚ごとに8個の交点)の結果的に得られるx値、y値、および、z値を利用して、24組のx値、y値、z値の平均値または中央値を算出することができる。この平均または中間のx値、y値、z値を利用して、質量の中心を迅速に推定することができる。
【0046】
大きなCTデータセットから疑わしい癌病変部の位置を迅速に同定するもう1つ別の方法は次のとおりである。図7Aから図7Cを参照すると、冠状面、矢状面、および、軸面という3つの面が互いに直交し合うx軸、y軸、および、z軸にそれぞれ直交するように設定されている。Eclipse(登録商標)またはこれに匹敵するソフトウエアを利用すれば、冠状面画像をスクロールさせて、最終的に、表面に境界設定された(例えば、赤でレンダリングされた)疑わしい病変部が視覚的に識別される(例えば、図7Aに例示されているように)。次に、ユーザーは、この疑わしい病巣の境界部が示されている領域に合わせてゆっくりとスクロールすると、赤色の境界部の内側で概ね最大の領域を占めるCT分層画像が選択される。この特定の冠状面のx値は参照値xrを提示している。次に、ユーザーはカーソル矢印をこの境界部のほぼ中心に置き、この点でクリックすると参照値yrおよびzrを認識する。これらの値xr、yr、zrを利用して、疑わしい領域を通って互いに直交する(冠状面画像、矢状面画像、および、軸面画像の)分層を表示する(図8Aに例示されているように)。Eclipse(登録商標)、または、これと類似するソフトウエアを利用して、いずれかの分層方向に(または、全部の分層方向に、もしくは、或る組合せの方向に)僅かに前後して移動し、疑わしい病変部をより明瞭に視覚化することができる(図8Aに例示されている参照交線を含む、または、含まない)。容積をレンダリングしたCTデータが利用される場合は、処理過程は同じであるが、例外として、疑わしい病変部の境界部だけではなく、むしろ、その断面領域が表示される。病変部のほぼ最大に近い断面領域を利用してxrを規定する。xr平面の略中心に置いたカーソルをクリックすることで、yrおよびzrを得る。例示のために、冠状面の分層方向のみを説明している。しかし、それ以外のどの分層方向を利用しても、例えば、矢状面方向、軸面方向、これらに対して斜行する各方向などのうちいずれを利用しても、この基準認識を実施することができる。表面をレンダリングした領域または容積をレンダリングした領域が色で示されていても、また、色で示されていなくても、ロッキング、すなわち、前後を交互に振って視認する処理を実施することができる。上述の処理過程はコンピュータプログラムを地用して全自動式に行うことができる。コンピュータプログラムは或る特定の平面方向(例えば、冠状面方向など)に画像分層をやり通し、コントラストを増強した領域の面積がほぼ最大限にされた平面を認識し、また、例えば、xrが同定される。次に、プログラムはコントラスト増強領域の略中心(質量中心、この領域を通過するように引かれた多数線の交点の中間値など)を識別することで、例えば、yrおよびzrを特定する。次に、プログラムは、ほぼ実時間で、また、人と対話せずに、適切な画像(例えば、図8Aから図8C)を自動表示する。必要ならば、透視装置がロッキングを行い、すなわち、所望に応じて前後に振って視認するようにしてもよい。
【0047】
図9Aから図9Cは、4 mm病変部の、互いに直交するグレースケール画像を例示している。衛星悪性腫瘍は、大型の10 mm病変部から遠ざかる方向に拡張し、3次元空間に明瞭に画定されるため、その組織は乳腺腫瘤摘出術などのような切開処置で除去し、思いもよらず癌組織を残すことがないようにすることができるが、除去し残した癌組織は標準式マンモグラフィー投射画像処理では輪郭を明確に示すことが容易ではない。図9Aから図9Cもまた、4 mm病変部とその周囲の良性の粒状組織との関係を明瞭に示しており、特に、矢状面図の図9Bに明確に見て取れる。
【0048】
図10Aから図10Cは、1.4 mm病変部のコントラストを増強した画像を例示している。ここでは、表示領域の総容積は10 mmの病変部の総容積の300分の1にも満たない。従って、1.4 mm程度の小さい悪性腫瘍も、本発明の方法を利用すれば解像することができる。
【0049】
図11Aから図11Cは、1 mm病変部のコントラストを増強した画像を例示している。1 mm病変部の総容積は10 mm病変部の総容積の約1000分の1にも満たない。ガドリニウムでコントラストを増強したMRI画像化処理は、直線寸法にして5 mmまたはそれよりも小さい病変部について、深刻な偽陽性の問題に陥り始めている。先に述べたような本発明のコントラスト増強CBCTは、ガドリニウムMRIよりも高い空間分解能および時間分解能を供与し、僅かにコントラストを増強した良性の領域を悪性領域から弁別するのに有用となる。
【0050】
本発明の空間分解能およびコントラスト解像度によって与えられる余得の融通性が図12Aから図12Cに例示されているが、ここでは、図11Aから図11Cの画像が4倍程度だけ拡大されており、画像それぞれのウインドウと水準化処理は、腺領域、コントラスト増強領域、および、皮膚領域だけを示すために精密になっている。これは有用な弁別化情報を提供するように思われる。1 mmの潜在的な病巣領域は画像では小さすぎるため、そのような領域の増強断面はここでは点として顕在化しているにすぎない。
【0051】
癌病変部を高空間分解能および高時間分解能で処理するコントラストを増強したCBCTが大いに望ましい。癌成長を初期段階から特徴付けし、多様な癌の初発と成長を検査することができるようにした高精度の定量法が大いに必要となる。本発明はどのような理論にも制約されないが、血管形成前の腫瘍の寸法は直径にして0.2 mmから2 mmに限られるとの提唱がなされており(ジェイ・フォルクマン(J. Folkman)著、「腫瘍の血管形成(Tumor Angiogenesis)」、癌医学(Cancer Medicine)第5版、ジェイ・ホーランド(J. Halland)およびイー・フライ(E. Frei)編、デッカー社(Decker)、ロンドン、134頁−137頁、2000年刊)、そのような寸法の腫瘍は、突然、腫瘍起因性血管形成を含む急速な成長形式(顕型)に切替わる。このようなモデルは、第1期腫瘍が除去されるまでの間、大型の腫瘍塊になるとこのような小型の血管形成前の腫瘍塊の上記のような「切替わり」を抑止することを暗示している。このような第1期腫瘍と、その成長抑止が喪失されてしまうと、「第2期の」前腫瘍、転移腫瘍、または、その両方が血管形成を伴う急成長段階に「切替わる」。本発明のコントラストを増強したCBCTにより供与される、優れた時間分解能および空間分解能ならびに感度はこのモデルを検証するのに極めて好適であり、乳癌を患っている患者に無数の小さいコントラスト増強領域と潜在的悪性腫瘍が存在するのを示した図4から図12で証明されているとおりである。1990年代に実現を予想された腫瘍起因性血管形成抑止剤を使って、向上した癌治療を行うという大きな期待は2005年になってもほとんど未確証のままである(シー・シュターク(C. Sturk)およびディー・デュモント(D. Dumont)共著、「腫瘍起因性血管形成(Angiogenesis)」、腫瘍学の基礎科学(Tumor Angiogenesis)第4版、アイ・タノック(I. Tannock)ほか編、マグローヒル社(McGraw-Hill)、ニューヨーク、244頁、2005年刊)。この原因の少なくとも一部は、癌生物学および癌機能に対するこのような薬剤の投与時機と効果についての理解不足であった。癌後期には、もっと優れた作用調整、スケジュール調整、時機調整を図ったうえで、細胞傷害性化学療法、放射線治療、ホルモン治療、外科手術などの術後補助の癌治療を行う必要がある。本発明によりもたらされる高空間分解能および高時間分解能を備えたコントラスト増強CBCTは、不確実だった事柄の少なくとも幾らかを片付け、術後補助の各種癌治療を組合せて施すための改良された治療計画案を規定する基礎を提示している。
【0052】
癌の初発、成長、診断、病期判定、および、有効な治療は高度に変容する複雑な生物学的・化学的・物理的な過程である。しかし、あらゆる度の過ぎた癌病巣の成長、機能、発達、および、監視と最適治療の査定の根本にあり、また、これらにとって不可欠である3つの基本的な物理化学的過程が存在するのは明らかである。第1の基本過程は、生体の生化学的代謝であり、酸素やグルコースなどの養分の注入拡散と二酸化炭素などの老廃物の放出拡散であるが、このような拡散が行われる最大距離は血液供給源と大半の人体細胞(および、動物体細胞)との間の100μmから200μmにおよぶ(アール・サザーランド(R. Sutherland)著、サイエンス240巻、177頁−184頁、1988年刊、および、ジェイ・フォルクマン著、「腫瘍の血管形成」、癌医学第5版、ジェイ・ホーランドおよびイー・フライ編、デッカー社、ロンドン、134頁、2000年刊を参照のこと)。これは、癌を含むどのような組織物質であれ、その急成長に必要であり、また、毛細血管輸送構造が(健康組織において典型的な内径が10μmから15μmである)、急成長する組織塊のいたるところに約100ミクロンから200ミクロンの平均間隔で入り込むことが要件となる。第2の基本過程では、癌の急成長は極めて不規則かつ非系統的であり、初期的には十分な毛細血管構造を組入れることはない。その結果、低酸素濃度すなわち低酸素症などのようなストレスが癌の供給不足領域の細胞に発生する。このようなストレスが局部遺伝子を誘導してこの領域に蛋白質(血管内皮成長因子すなわちVEGFなど)を生成(発現)させるが、この蛋白質が放出拡散し、既存の毛細血管から発芽した新生毛細血管をストレスを被った領域に向けて形成させる。しかしながら、結果として生じる新生毛細血管は健康な領域の極めて整った幾何学的形状と比べて、でたらめで、不規則で、絡みつき、尖頂喪失しており、更に、直径が大きいという顕著な幾何形状を有している。第3の基本過程は、このようにストレスに誘発された新生毛細血管のほとんどが血管の内層(内皮)だけから構成されることであるが、新生毛細血管は健康で無傷に近い毛細血管には存在している基底膜や平滑筋外被膜などを有していない。重要な結果として、このような標準以下の血管の壁は漏出が激しく、特に、血管の周囲の組織にガドリニウム含有化合物またはヨウ素含有化合物などのような造影剤を漏らしてしまう傾向が顕著である。通例、このようなことが起こるのは、化合物濃度が、本件で既に説明したようなコントラストを増強したX線錐状ビームCTを使って癌構造を容易に画像化することができるようにするのに十分な場合である。
【0053】
コントラストを増強した容積の形状および寸法と、これらがもっと長期(数日から数週間から数ヶ月)に亘って経時変化するのを視覚化するという目的に加えて、癌の発見、監視、査定、および、治療にとって更に有用な特性がある。コントラストを増強した錐状ビームCTから直接的に得られる上記のようなまた別な特性の具体例として、組織灌流を定量化するもっと短期(数分から数秒)の測定による動態、相対的な血液量、毛細血管透水性、漏出空間などが挙げられるが、これら具体例は、組織塊の幾何形状についての患者相互の変差を補正する動脈系の経時減衰データによって標準化される比較分析とデコンボリューションを利用して説明されるようなものである。灌流は、組織の濃度−時間曲線(造影剤の)の最大傾斜から算定されるか、または、前記曲線のピーク波高から算定されて、動脈入力関数に従って標準化される。心搏出量の体重に対する割合を利用して灌流を更に標準化することで、正規の灌流値を得ることができる。これを2区画モデルに敷衍することで、毛細血管の透水性と血液量を判定する。デコンボリューションは同一パラメータについての代替の取組みである。デコンボリューションでは、衝撃残存関数(IRF)を算定する目的で動脈と組織の濃度−時間曲線を利用する。IRFは理論上の組織曲線であって、即時動脈入力から得られる。流量補正されたIRFの高さから組織灌流を求めることができ、また、曲線より下の領域で血液量が判定される。分散パラメータモデルを利用することでこの解析を敷衍し、毛細血管の透水性の測定値を得ることができる。これらパラメータは全て、診断、病期判定、腫瘍等級の査定、予後について、また、治療監視をするうえで、腫瘍学的に有用である。本発明は単結晶集積画素式のセンサー配列を利用して、秒レベルの時間分解能と、合理的なX線投与線量と、手ごろな構成部材価格およびシステム価格で、より大容量の、空間分解能の高い画像をもたらすことができる。
【0054】
或る実施形態では、造影剤で増強したCBCTまたはCBDTに基づいて癌組織を良性組織と明確に識別する目的で拡大処理、X線源由来の小さい寸法のX線スポット、または、その両方を利用することで、高空間分解能の画像を得ることができる。拡大率(X)は、X線源から平坦パネル画像化装置までの距離の、X線源から患者までの距離に対する割合であると定義される。1に近い低拡大率については、空間分解能は画像化装置それ自体の空間分解能によってほぼ決まるが、この場合の空間分解能は画像化装置の画素寸法のことであって、シンチレーターにボケがある場合は、このボケによって劣化される。高拡大率(10より大きい)については、空間分解能はX線源のスポット寸法によってほぼ決まる。中間拡大率X値については、結果として得られる空間分解能は画像化装置の空間分解能とX線源のスポット寸法の組合せにより決まり、両方の値をそれぞれ2乗して求めた和の平行根に近似していることが多い。
【0055】
図13は、複数の異なる拡大率Xについての好ましい実施形態を例示している。固定距離AはX線源11のX線スポットから平坦パネル画像化装置12まで測定された値である。固定距離BはX線源11のX線スポットから患者13の周囲を巡る回転の中心まで、または、患者の身体部位(例えば、患者の乳房)まで測定された値である。回転中心は概ね患者13または患者の身体部位に位置する。距離Cは回転中心から患者13の身体部位まで測定されるた値であるが、この身体部位の測定位置は、回転中心からの距離を最大にして、身体部位を遮るものがなく、露にするのに十分なだけ外側にくる。患者の支持台14の外表面の形状は円筒状で、この形状によりX線源11は患者13(または、患者の身体部位)の周囲を回転して角度(θ)を成すことができるようになるとともに、わずかな余地(例えば、1 cm)だけ遮るものを無くすることができる。凡その拡大率はA/BからXである。このようなパラメータの好ましい値が表1にリスト表示されている。X線源11のスポット寸法は錐状ビームCTデータセットの空間分解能に概ね等しく、それは、このスポットから平坦パネル画像化装置12までの距離と比較して、X線源11のスポットのほうが回転中心に近い位置に置かれているからである。具体的な好ましいX線源スポット寸法の具体例として、直径にして800、400、200、100、70、50、30、10、1、0.1、0.02などが挙げられるが、測定単位は全てミクロンである。角度(θ)の値が低くして(15度未満)拡大率を大きくすると、X線源11と平坦パネル画像化装置12の運動は、それぞれの円形経路を横断する直線コード様となるが、但し、相互に反対方向であり、これは、これらのほぼ近似した円形経路が、そのような小さい角度には好適だからである。大半の実施形態全般について、X線源11からの多数のX線ビームが興味の対象である患者13の身体領域の全部の3次元画素を多数の分かっている角度で透過する限りにおいて、運動は何らかの相対運動であればよく(直線軌跡、湾曲軌跡、ジグザグの軌跡など)、X線源11か画像化装置12のいずれか一方、または、その両方による運動を伴う。
【0056】
【表1】
【0057】
興味の対象である領域が速度vで移動している場合の所与の空間分解能Δxを達成するために、画像獲得データセットは、移動距離が所望の解像度よりも小さい場合の時間間隔Δtのうちに取得される必要がある。これは、以下の数式1で表される。
【数1】
所望の解像度Δxの関数としてのΔt式の最大値が、速度0.2 mm/秒、2.0 mm/秒、および、20 mm/秒の速度について図14にグラフ表示されている。このような速度は、人体について観察されることが多い反復運動(例えば、呼吸、心拍)および不規則運動(例えば、蠕動)を表している。このΔtはトモグラフィーデータセット全体を収集するための時間であってもよいし、または、ゲート制御データセットの1間隔ごとの時間であってもよいが、この1間隔は興味の対象である運動中の領域が規定された2つの限界位置の間にくるまで待つ(すなわち、ゲート制御する)期間であり、更に、Δtはこのような1ゲート制御間隔あたりのデータを獲得するのに要する最長時間である。所与の空間分解能を達成するのにもっと信頼を置くことができるようにするために、最大値は3の因数によって、以下の数式2で示す値まで低減することができる。
【数2】
【0058】
高拡大率の代償として、平坦プレート画像化装置は依然としてX線源からほぼ同じ線量のX線総投与量を受ける必要があるが、低拡大率では、または、拡大しない場合は、同程度のコントラスト分解能が必要となるからである。X線源から出力されるX線投与線量はX線源のスポット寸法の減少に比例して減少する。これと同時に、画像化されている容積の立方体はその直線寸法が低下するため、単位容積あたりの投与線量は劇的に増大する。その結果、投与線量密度が高くなりすぎて、画像化されている領域を変化させる、または、その領域に損傷を与える。後者は健康で良性の組織から成る容積部には特に問題となる。この問題に対処する好ましい実施形態は平坦なパネル画像装置またはタイル配列式の独立画素画像装置を使用することであり、このような画像装置は個々の画素に吸収されるX線信号の光子計数を実施し、個々の画素に吸収されたX線光子のエネルギー分布を特徴づけるパルス波高信号を供与する。これにより、獲得したデータから電子ノイズを全て除去し、投与線量のレベルを減らすことができるが、低い投与線量レベルでは、個々の画素のX線光子の量統計によってのみノイズが限定される。更に、エネルギー弁別により、個々の画素の信号は区分けされ、所望されるとおりの数のエネルギー画分を得ることができる。従って、特徴的な吸収端の真上と真下のエネルギーを保有する信号を、どのような所望のエネルギー帯域幅を有するようにも確立することができ、結果として、投与線量を低下させた画像化処理についても、3次元データセットのどの3次元画素についても造影剤の有無とその濃度を解像することができる。明確な弁別が確立された後は、容積画像の悪性部位に対する投与線量の密度を選択的に増大させて治療レベルまで戻すことで、そのような癌領域がCBCT、CBDT、または、その両方で画像処理されるのと同時に治療を施すことができるようになる。このような治療またはそれ以外の治療の施療が完了すると、低投与線量で非治療性のコントラスト増強画像化処理が反復されて、治療後に継続して、または、治療中に、数ミリ秒から数ヶ月の範囲にわたる時間枠の間、治療に対する反応を監視することができる。
【0059】
或る特定の実施形態においては、2 ミリグレイから50 ミリグレイの範囲のX線投与線量を利用して、錐状ビーム断層撮像データセットの2次元投射画像を得る。また別な特定の実施形態においては、1 センチグレイから7000 センチグレイの範囲のX線治療の投与線量が興味の対象である非圧平状態の身体領域に分散されて、癌と認識された組織を治療する。この治療用線量が供与される時期は、癌組織を解像する3次元画像データセットの再構築中またはその後である。
【0060】
好ましい治療処置およびシステム構築は次のとおりである。小型悪性腫瘍(直径7 ミリ以上、初期腫瘍または転移腫瘍)は、上述のような、表面をレンダリングしてヨウ素でコントラストを増強した錐状ビームCTデータセットに基づいて、ヴェアリアン・パクススキャン(Varian PaxScan) 4030CB画像センサープレート(1辺が194 μmの画素を利用)の大型画分を病巣部の画像で一杯にするのに十分な拡大率(30倍またはそれ以上)を利用して認識される。キロボルト級X線源スポット寸法は、このスポット寸法が錐状ビームCT画像データセットの空間分解能を厳密に限定しないようにするのに十分なだけ小さい(直径0.2 ミリメートルを越える)。ヴェアリアン・ピー・アール・エム・システム(Varian PRM(登録商標))などのような好適な運動管理システムを利用して錐状ビームCT画像データ獲得を制御し、病巣部が放射線治療を施すのに正しい位置にあるため完璧な回転式錐状ビームCTデータセットを獲得することができて、同時に、運動により生じる人為的部分のほとんどがクリアされる場合にのみX線源がオン状態となるようにしている。X線源から発せられるビームの形状はマイクロ・マルチリーフ照準装置によって制御されることで、投射画像が得られる回転角度ごとに病巣部の境界に特定の余地(例えば、1 mm)を加えた位置に揃えられる。錐状ビームデータセットが個別に得られると、X線源を絶えず移動させて(患者および病巣部と相対的に)病巣周辺の健康な組織に当たる放射線量を拡散させて患者の皮膚に当たる投与線量も低下させながら、所望の放射線治療用線量が病巣部に供与されるレベルまでX線源のビーム電流が調節される。このプロセスは投与線量の1区分ごとに繰返されるが、典型的な小分け投与線量供与計画案に従って、通例は毎日1回、1週間に5日の頻度で、連続4週から連続6週におよぶ。画像化は放射線治療中に実施されるので(これに加えて、放射線治療と同時に行われる術後補助ホルモン治療中または化学療法中にも実施されるので)、造影剤は投与線量供与の全期間にわたって適切な間隔で(例えば、5回の均等に隔てた間をおいて)投与される。後者の処置を利用して、治療に対する腫瘍起因性血管形成反応(および、増強されたコントラストの動態パラメータ反応)を監視し、病巣部の形状および寸法の変化などのような、治療期間中に生じる変化に対する治療(放射線治療、化学治療、ホルモン治療、または、これらの各種組合せ治療)を最適化する。これは、多数の病巣について、所望に応じて、1回が4週から6週の小分け治療期間計画の最中に繰返される。
【0061】
また別な好ましい治療処置およびシステム構成はすぐ前段に記載されているものと同じであるが、X線源がメガボルト級のもの(例えば、6 MeV)である点が例外的に異なっている。コントラスト解像度は数メガボルトで低下するが(キロボルトと比較して)、それでも依然、多数の病巣部およびそれぞれの特性を区別するには十分に良好である(2%またはそれ以上)。ベガボルト線源の利点は、吸収されるX線の1光子あたりの、供与される投与線量エネルギーが遥かに高く、その結果、所要のビーム電流と投与線量供給時間がキロボルト線源を利用した場合に比べて、遥かに低いからである。
【0062】
或る実施形態では、X線源11は、X線投与線量が低くてもコントラスト増強CBCTおよびCBDTの感度を向上させることができる準単色性線源である。この実施形態は、単結晶素子(または薄板)の分散配列から構成されている場合には、ヴェアリアン・メディカル・システムズ・インコーポレーティッドから購入できるスノーバード(Snowbird)チューブなどのような高出力X線チューブから発射されるビームの断片をより多量に捕獲することができる。高出力X線チューブは標準診断用X線エネルギー範囲(30 kVpから100 kVp)にわたって調整可能であり、数エレクトロンボルト(eV)程度の帯域幅を有している。この実施形態は、投射面積が小さい線源から発射されるX線の大きな角度全部を隈なく捕獲する。狭い帯域のX線エネルギーについて効率がよい。その構成は、特定の設計要件に従って結晶薄板が特定の表面形状に搭載されている。標準X線チューブと組合わせると、用途は無数になるが、その場合、効率の良さと狭いエネルギー帯域のX線の高い捕獲性能は活きている。この実施形態は、多数のCBCT処置およびCBDT処置を改良し、新規な処置を行えるようにするためにも利用することができる。この構成を使って、線源からのX線ビームの特性を変えることもできる。その具体例として、有効線源の直径を小さくすること、または、ビームの形状を発散型ではなく並行型にすることなどが挙げられる。X線チューブ源11から発射されたビームを選択して屈折させ、仮想合焦点または実際の合焦点のいずれであれ、線源スポットと相対的に多様な位置に置かれた合焦点から発散する、ほぼ単一エネルギーのX線ビームを生成する特性を示すようにすることもできる。基本概念は、屈折平面の配向と結晶薄板のモザイク状配置の両方を同時使用して、単色性と高いビーム捕獲効率とを達成するというものである。
【0063】
或る実施形態においては、X線源11は、X線投与線量を低下させてコントラスト増強CBCTおよびCBDTと併用する特定用途の準単色性線源である。準単色性線源は多数の元素の1/200減衰から1/500減衰までの減衰価層の膜を有しており、そのような元素の具体例として、セリウム、ネオジミウム、ユーロピウム、および、タングステンが挙げられるが、これら元素はそれぞれ固有のヨウ素k吸収端ピークエネルギー、すなわち、40.44 keV、43.57 keV、48.52 keV、および、69.53 keVを有しているとともに、それぞれ固有の1/200減衰の価層厚さ0.71 mm、0.7 mm、1.00 mm、および、0.2 mmを有しており、更にそれぞれ固有の1/500減衰の価層厚さ0.91 mm、0.93 mm、1.25 mm、および、0.25 mmを有しており、層状膜は40 kVpから100 kVpの範囲で作動するX線チューブのビームの中に置かれ、狭帯域X線フィルターとして作用する。
【0064】
或る実施形態においては、X線源11は、X線投与線量を低下させてコントラスト増強CBCTおよびCBDTと併用する特定用途の準単色性線源である。この準単色性線源は高X線密度の素材と低X線密度の素材の多層状膜を有しており、このような層状膜は調整可能な狭帯域X線フィルターとして作用し、40 kVpから100 kVpの範囲で作動するX線チューブのビームの中に置かれる。
【0065】
本発明の一局面においては、腫瘍起因性血管形成の抑止治療(薬物を含む)、または、それ以外の癌治療が患者に施されてから、血管形成反応、および、この反応の代理反応としての注入済み造影剤の動態パラメータが監視される。このような血管形成抑止剤の具体例として、アバスチン(Avastin、ベバシズマブ)、アンジオスタチン(Angiostatin)、アレステン(Arresten)、カンスタチン(Canstatin)、コンブレタスタチン(Combretastatin)、エンドスタチン(Endostatin)、NM−3、タリドミド(Thalidomide)、スロンボスポンジン(Thrombospondin)、ツムスタチン(Tumstatin)、2-メトキシエストラジオール、ビタキシン(Vitaxin)、イレッサ(Iressa)、タルセバ(Tarceva)、エルビツクス(Erbitux)、グリーベック(Gleevec)、ヘルセプチン(Herceptin)、インターフェロン-α、SU 11248、BAY 43-9006、AG-013736、PTK787、および、SU 5416が挙げられる。これら各種組合せ治療の開発および最適化は、本件記載の発明を利用して腫瘍血管の変化を画像化する性能によって大いに向上させることができる。このような画像化処置は、造影剤注入から20分後から30分後までの時間に亘る画像を収集することを含んでいる。これにより、治療の経過にわたって治療によって誘起された変化についての情報を供与している。このような画像は、構造変化は元より、病態生理学的効果についての情報も提供することができる。
【0066】
このような血管形成防止剤または抗血管剤を薬物、放射線、または、その両方と組合わせるための多様なスケジュールを、本件の画像化方法を利用して開発することができるが、すなわち、最適手順と最適時機を開発することができる。血管に作用する上記薬剤は血管系を「正常化」することができることが示されている(アール・ジェイン(R. Jain)著、サイエンス第307巻、58頁−62頁、2005年刊)。この「正常化」は、本件記載の画像化方法によって経時的に監視することができる血管のパターン構造、寸法、透水性の変化を含んでいる。血管形成防止治療または抗血管治療の後に(または、その前に、もしくは、その最中に)規定の時間領域に亘って薬物投与し、または、放射線治療を施すことにより、放射線の相乗効果を達成することができる。
【0067】
本発明は、かなり初期の癌形成および癌成長を認識し、診断し、病期判定し、監視するのに十分な時間分解能、十分な空間分解能、および、十分な感度で、また、従来可能であった以上の高精度で、生体内の立体癌病変部における腫瘍起因性血管形成効果を非観血的に画像化する方法およびシステムを提示している。早期発見および早期治療が久しく癌を克服して生存する要であったので、このことは重要な利益となる。更に、本発明の方法は、標準的なX線スクリーニング処置およびX線診断処置の投与線量に匹敵するX線投与線量で実施することができる。
【0068】
前述の内容から鑑みて、本発明の特定の実施形態をここに記載してきたが、その目的は例示することであって、本発明の真髄および範囲から逸脱せずに多様な変更を行うことができることが分かる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線錐状ビーム電算断層撮像法またはX線錐状ビームディジタル断層撮像法を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の領域を画像化する方法であって、前記方法は、有効量の造影剤を興味の対象である非圧平状態の領域に導入する段階を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項2】
興味の対象である患者の領域は患者の非圧平状態の乳房であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
錐状ビーム電算断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうち1枚以上が、5秒以下の期間のうちに獲得されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
錐状ビーム電算断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうち1枚以上が35ミリ秒以下の短い期間のうちに獲得されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
錐状ビーム電算断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうち1枚以上が0.1ミリ秒以下の期間のうちに獲得されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
互いに直交する少なくとも2つの方向に10 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元断層撮影画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
互いに直交する少なくとも2つの方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元断層撮影画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
互いに直交する少なくとも2つの方向に5 μm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元断層撮影画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は錐状ビーム断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうち少なくとも1枚は35ミリ秒以下の期間のうちに獲得され、前記方法は互いに直交する少なくとも2つの方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元電算断層撮影画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記造影剤はヨウ素ベースの造影剤であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記獲得する段階は、興味の対象である前記非圧平状態の領域に2ミリグレイから50ミリグレイの範囲の投与線量で錐状ビームX線を供与する段階を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
1秒あたり1フレームまたはそれより高速で作動する2次元平坦パネル画像化装置を利用して、錐状ビーム断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
1秒あたり10フレームまたはそれより高速で作動する2次元平坦パネル画像化装置を利用して、錐状ビーム断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
1秒あたり1000フレームまたはそれより高速で作動する2次元平坦パネル画像化装置を利用して、錐状ビーム断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
投射画像を獲得する前記段階の前に、治療物質を投与し、患者に治療処置を実施し、または、その両方を行う段階を更に含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項16】
経時的に投射画像を獲得する前記段階を反復して、興味の対象である患者の前記領域の治療物質または治療処置に対する反応の時間依存を表示する段階を更に含んでいる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記治療物質、前記治療処置、または、その両方は血管形成の発現を抑止することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
X線電算断層撮像法またはX線電算ディジタル断層撮像法を利用して、患者の非圧平状態の乳房を画像化する方法は、有効量の造影剤を非圧平状態の乳房に導入する段階を含んでいる。
【請求項19】
断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうちの1枚以上が5秒以下の期間のうちに獲得されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうちの1枚以上が35ミリ秒以下の期間のうちに獲得されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうちの1枚以上が0.5ミリ秒以下の期間のうちに獲得されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
互いに直交する少なくとも2つの方向に10 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元断層撮像画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
互いに直交する少なくとも2つの方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元断層撮像画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
互いに直交する少なくとも2つの方向に5 μm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元断層撮像画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、電算断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうち少なくとも1枚は35ミリ秒以下の期間のうちに獲得され、前記方法は互いに直交する少なくとも2つの方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元電算断層撮影画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記造影剤はヨウ素ベースの造影剤であることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
投射画像を獲得する前記段階は、興味の対称となる非圧平状態の領域に2ミリグレイから50ミリグレイの範囲の投与線量のX線を供与する段階を含んでいることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
1秒あたり10フレームまたはそれより高速で作動する2次元平坦パネル画像化装置を利用して、複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
X線錐状ビーム電算断層撮像法(CBCT)またはX線錐状ビームディジタル断層撮像法(CBDT)を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の領域を画像化する方法は、CBCTデータセットまたはCBDTデータセットを得る複数の2次元投射画像を獲得する段階を含んでいるが、前記投射画像のうちの少なくとも1枚は35ミリ秒以下の期間のうちに獲得されることを特徴とする。
【請求項30】
興味の対象である前記非圧平状態の領域に有効量の造影剤を導入する段階を更に含んでいる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
互いに直交する少なくとも2つの方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する、興味の対象である前記非圧平状態の領域の3次元電算断層撮影画像データセットを生成する段階を更に含んでいる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
X線錐状ビーム電算断層撮像法(CBCT)またはX線錐状ビームディジタル断層撮像法(CBDT)を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の領域を画像化する方法は、互いに直交する少なくとも2つの方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する、興味の対象である前記非圧平状態の領域の3次元電算断層撮影画像データセットを生成する段階を含んでいる。
【請求項33】
興味の対象である前記非圧平状態の領域に有効量の造影剤を導入する段階を更に含んでいる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
錐状ビーム電算断層撮像法(CBCT)または錐状ビームディジタル断層撮像法(CBDT)を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の領域を画像化するシステムは、興味の対称である前記非圧平状態の領域にX線ビームを伝達するX線源と、CBCTデータセットまたはCBDTデータセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する獲得システムであって、前記投射画像のうちの少なくとも1枚は35ミリ秒以下の期間のうちに獲得される獲得システムと、互いに直交する少なくとも2つの方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元電算断層撮像画像を生成するプロセッサとを備えている。
【請求項35】
X線錐状ビーム電算断層撮像法またはX線錐状ビームディジタル断層撮像法を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の領域にX線治療用線量を分散させる方法は、興味の対象である前記非圧平状態の領域に有効量の造影剤を導入する段階と、錐状ビーム断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階と、1センチグレイから7000センチグレイの範囲のX線治療用線量を興味の対象である前記非圧平状態の領域に分散させる段階とを含んでいる。
【請求項36】
2ミリグレイから50ミリグレイの範囲のX線投与線量で複数の2次元投射画像を獲得して、錐状ビーム断層撮像データセットを得た後に継続して、X線治療用投与線量を分散させる段階を更に含んでいる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
興味の対象である前記非圧平状態の領域に前記X線治療用投与線量を分散させる前に、3次元断層撮像データセットを生成する段階を更に含んでいる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記X線治療用投与線量を興味の対象である前記非圧平状態の領域に分散させるプロセスの間に、3次元断層撮像データセットを生成する段階を更に含んでいる、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
コントラストを増強した錐状ビーム電算断層撮像データセットまたは錐状ビームディジタル断層撮像データセットを処理してから評価する方法であって、前記方法は、
造影剤が存在しているという信号値特性を有している領域を弁別する3次元画素信号値の閾値および3次元画素信号の範囲を利用して、前記データセットをレンダリングして容積描写または表面描写を行う段階と、
レンダリングで描写した容積または表面の内側の少なくとも1点を識別する段階と、
前記識別された点の3次元座標を利用して、1枚以上の多数の異なる層のデータを表示する段階とを含んでおり、前記多数の層は各々が前記識別された点を通過し、各々が異なる配向であることを特徴とする方法。
【請求項1】
X線錐状ビーム電算断層撮像法またはX線錐状ビームディジタル断層撮像法を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の領域を画像化する方法であって、前記方法は、有効量の造影剤を興味の対象である非圧平状態の領域に導入する段階を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項2】
興味の対象である患者の領域は患者の非圧平状態の乳房であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
錐状ビーム電算断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうち1枚以上が、5秒以下の期間のうちに獲得されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
錐状ビーム電算断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうち1枚以上が35ミリ秒以下の短い期間のうちに獲得されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
錐状ビーム電算断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうち1枚以上が0.1ミリ秒以下の期間のうちに獲得されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
互いに直交する少なくとも2つの方向に10 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元断層撮影画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
互いに直交する少なくとも2つの方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元断層撮影画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
互いに直交する少なくとも2つの方向に5 μm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元断層撮影画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は錐状ビーム断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうち少なくとも1枚は35ミリ秒以下の期間のうちに獲得され、前記方法は互いに直交する少なくとも2つの方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元電算断層撮影画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記造影剤はヨウ素ベースの造影剤であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記獲得する段階は、興味の対象である前記非圧平状態の領域に2ミリグレイから50ミリグレイの範囲の投与線量で錐状ビームX線を供与する段階を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
1秒あたり1フレームまたはそれより高速で作動する2次元平坦パネル画像化装置を利用して、錐状ビーム断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
1秒あたり10フレームまたはそれより高速で作動する2次元平坦パネル画像化装置を利用して、錐状ビーム断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
1秒あたり1000フレームまたはそれより高速で作動する2次元平坦パネル画像化装置を利用して、錐状ビーム断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
投射画像を獲得する前記段階の前に、治療物質を投与し、患者に治療処置を実施し、または、その両方を行う段階を更に含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項16】
経時的に投射画像を獲得する前記段階を反復して、興味の対象である患者の前記領域の治療物質または治療処置に対する反応の時間依存を表示する段階を更に含んでいる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記治療物質、前記治療処置、または、その両方は血管形成の発現を抑止することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
X線電算断層撮像法またはX線電算ディジタル断層撮像法を利用して、患者の非圧平状態の乳房を画像化する方法は、有効量の造影剤を非圧平状態の乳房に導入する段階を含んでいる。
【請求項19】
断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうちの1枚以上が5秒以下の期間のうちに獲得されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうちの1枚以上が35ミリ秒以下の期間のうちに獲得されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうちの1枚以上が0.5ミリ秒以下の期間のうちに獲得されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
互いに直交する少なくとも2つの方向に10 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元断層撮像画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
互いに直交する少なくとも2つの方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元断層撮像画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
互いに直交する少なくとも2つの方向に5 μm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元断層撮像画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、電算断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでおり、前記投射画像のうち少なくとも1枚は35ミリ秒以下の期間のうちに獲得され、前記方法は互いに直交する少なくとも2つの方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元電算断層撮影画像データセットを再構築する段階を更に含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記造影剤はヨウ素ベースの造影剤であることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
投射画像を獲得する前記段階は、興味の対称となる非圧平状態の領域に2ミリグレイから50ミリグレイの範囲の投与線量のX線を供与する段階を含んでいることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
1秒あたり10フレームまたはそれより高速で作動する2次元平坦パネル画像化装置を利用して、複数の2次元投射画像を獲得する段階を更に含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
X線錐状ビーム電算断層撮像法(CBCT)またはX線錐状ビームディジタル断層撮像法(CBDT)を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の領域を画像化する方法は、CBCTデータセットまたはCBDTデータセットを得る複数の2次元投射画像を獲得する段階を含んでいるが、前記投射画像のうちの少なくとも1枚は35ミリ秒以下の期間のうちに獲得されることを特徴とする。
【請求項30】
興味の対象である前記非圧平状態の領域に有効量の造影剤を導入する段階を更に含んでいる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
互いに直交する少なくとも2つの方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する、興味の対象である前記非圧平状態の領域の3次元電算断層撮影画像データセットを生成する段階を更に含んでいる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
X線錐状ビーム電算断層撮像法(CBCT)またはX線錐状ビームディジタル断層撮像法(CBDT)を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の領域を画像化する方法は、互いに直交する少なくとも2つの方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する、興味の対象である前記非圧平状態の領域の3次元電算断層撮影画像データセットを生成する段階を含んでいる。
【請求項33】
興味の対象である前記非圧平状態の領域に有効量の造影剤を導入する段階を更に含んでいる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
錐状ビーム電算断層撮像法(CBCT)または錐状ビームディジタル断層撮像法(CBDT)を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の領域を画像化するシステムは、興味の対称である前記非圧平状態の領域にX線ビームを伝達するX線源と、CBCTデータセットまたはCBDTデータセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する獲得システムであって、前記投射画像のうちの少なくとも1枚は35ミリ秒以下の期間のうちに獲得される獲得システムと、互いに直交する少なくとも2つの方向に0.4 mm以下の面積部または容積部について3次元画素を解像する3次元電算断層撮像画像を生成するプロセッサとを備えている。
【請求項35】
X線錐状ビーム電算断層撮像法またはX線錐状ビームディジタル断層撮像法を利用して、興味の対象である患者の非圧平状態の領域にX線治療用線量を分散させる方法は、興味の対象である前記非圧平状態の領域に有効量の造影剤を導入する段階と、錐状ビーム断層撮像データセットを得るために複数の2次元投射画像を獲得する段階と、1センチグレイから7000センチグレイの範囲のX線治療用線量を興味の対象である前記非圧平状態の領域に分散させる段階とを含んでいる。
【請求項36】
2ミリグレイから50ミリグレイの範囲のX線投与線量で複数の2次元投射画像を獲得して、錐状ビーム断層撮像データセットを得た後に継続して、X線治療用投与線量を分散させる段階を更に含んでいる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
興味の対象である前記非圧平状態の領域に前記X線治療用投与線量を分散させる前に、3次元断層撮像データセットを生成する段階を更に含んでいる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記X線治療用投与線量を興味の対象である前記非圧平状態の領域に分散させるプロセスの間に、3次元断層撮像データセットを生成する段階を更に含んでいる、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
コントラストを増強した錐状ビーム電算断層撮像データセットまたは錐状ビームディジタル断層撮像データセットを処理してから評価する方法であって、前記方法は、
造影剤が存在しているという信号値特性を有している領域を弁別する3次元画素信号値の閾値および3次元画素信号の範囲を利用して、前記データセットをレンダリングして容積描写または表面描写を行う段階と、
レンダリングで描写した容積または表面の内側の少なくとも1点を識別する段階と、
前記識別された点の3次元座標を利用して、1枚以上の多数の異なる層のデータを表示する段階とを含んでおり、前記多数の層は各々が前記識別された点を通過し、各々が異なる配向であることを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2009−537238(P2009−537238A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511136(P2009−511136)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/067008
【国際公開番号】WO2007/136952
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(500414202)ヴァリアン メディカル システムズ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/067008
【国際公開番号】WO2007/136952
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(500414202)ヴァリアン メディカル システムズ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
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