コンバイン
【課題】作業機の稼働に連動したエンジン制御によって効率的なエンジン動作を確保するとともに、排出装置の穀粒詰まりを招くことなく、安定した穀粒排出を可能とする排出オーガ付きコンバインを提供する。
【解決手段】排出オーガ付きコンバインは、排出クラッチ(52)により穀粒を排出動作する排出装置(54)と、この排出装置(54)を稼動させるための操作具(67)と、この操作具(67)の操作信号によってエンジン(10)を所定回転以上に制御する制御装置(200)とを備えて構成され、上記排出装置(54)は、制御装置(200)によって排出クラッチ(52)を断接制御可能に構成し、かつ、制御装置(200)は、上記操作具(67)の信号によってエンジン(10)が所定回転に達したときに排出クラッチ(52)を接続する連繋制御機能を備えるものである。
【解決手段】排出オーガ付きコンバインは、排出クラッチ(52)により穀粒を排出動作する排出装置(54)と、この排出装置(54)を稼動させるための操作具(67)と、この操作具(67)の操作信号によってエンジン(10)を所定回転以上に制御する制御装置(200)とを備えて構成され、上記排出装置(54)は、制御装置(200)によって排出クラッチ(52)を断接制御可能に構成し、かつ、制御装置(200)は、上記操作具(67)の信号によってエンジン(10)が所定回転に達したときに排出クラッチ(52)を接続する連繋制御機能を備えるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出クラッチにより動作制御が可能な排出装置を備えてグレンタンクから収穫穀粒を排出する排出装置を備えたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のコンバインのように、刈取から穀粒排出までエンジンから回転動力を受けて稼動する各種作業機を備え、個々のクラッチ操作による作業機の稼動に合わせてエンジンをアイドリングから定格回転まで増速制御する技術が知られている。
【0003】
例えば、排出装置については、収穫穀粒を載せ替える排出位置に機体を停車するとエンジン回転がアイドリングに下がり、排出装置のクラッチレバーの操作により、エンジンを増速しつつ、排出動作を開始することにより、グレンタンクの底部から収容穀粒を近傍のトラックの荷台等に上位排出する。
このように、上記コンバインは、作業機の稼働と連動してエンジンを制御することにより、無駄なエンジン回転を抑えて効率的な動力供給により作業機を稼動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3769981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、排出装置は、エンジンの増速途中の低速回転時に過大な量の穀粒を受けると詰まりを生じることがあり、その穀粒を取り出して排出を再開するまでの無駄時間により、広い圃場における集中刈取り計画の狂いを招くこととなる一方で、これを解決するためにエンジン回転をアイドリングより高速に維持するようにした場合は、無駄なエンジン回転が抑えられないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、作業機の稼働に連動したエンジン制御によって効率的なエンジン動作を確保するとともに、排出装置の穀粒詰まりを招くことなく、安定した穀粒排出を可能とする排出オーガ付きコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、エンジン(10)から受ける動力を断接する排出クラッチ(52)によりグレンタンク(50)から収容穀粒を排出する排出装置(54)と、この排出クラッチ(52)を断接操作する操作具(67)と、この操作具(67)の操作によってエンジン(10)の回転速度を所定の回転速度以上に自動的に変速制御する制御装置(200)とを備え、
該制御装置(200)には、前記操作具(67)の操作に基づいてエンジン(10)の回転速度が所定の回転速度に達したときに排出クラッチ(52)を自動的に接続する連繋制御機能を備えたことを特徴とするコンバインとする。
【0008】
上記排出装置(54)の操作具(67)を入操作すると、制御装置(200)がエンジン(10)を増速制御し、所定の回転速度に達したときに排出装置(54)の排出クラッチ(52)を接続制御することにより、排出装置(54)が所定の回転速度で安定して排出動作する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記制御装置(200)は、所定のスイッチ(70)の操作に基づいてその連繋制御機能を有効または無効に切換可能に構成し、該スイッチ(70)が連繋制御機能を無効とする側に切り換えられた場合には、エンジン(10)の回転速度に拘りなく、操作具(67)による穀粒排出操作によって排出クラッチ(52)を接続制御する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとする。
上記排出装置(54)は、連繋制御機能を無効とするスイッチ(70)の操作により、エンジン(10)との連繋動作が解除されるとともに、排出装置(54)が操作具(67)の操作によって稼動される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によると、操作具(67)を入操作すると、制御装置(200)がエンジン(10)を増速制御し、所定の回転速度に達したときに排出クラッチ(52)を接続制御することにより、排出装置(54)が所定の回転速度で排出動作することから、作業機停止時のエンジン(10)の無駄な回転を抑えるとともに、排出装置(54)の詰まりを防止して安定した穀粒排出作業を行うことができるので、広い圃場における集中刈取作業を計画通り進めることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によると、請求項1記載の発明の効果に加え、排出装置(54)は、スイッチ(70)による連繋制御機能を無効とする操作により、エンジン(10)との連繋制御が解除されるとともに、操作具(67)の信号によって排出装置(54)の稼動が可能となることから、メンテナンスの際の単独の動作テストが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンバイン制御のシステム要部構成図
【図2】制御処理のフローチャート
【図3】コンバインの側面図
【図4】普通型コンバインの側面図
【図5】刈取部の拡大側面図
【図6】刈取部の上面図
【図7】接地センサ部の拡大側面図
【図8】刈取部の昇降制御のシステム構成図
【図9】刈取部の昇降制御のフローチャート
【図10】旋回時の昇降制御のフローチャート
【図11】旋回制御のシステム構成図
【図12】アルファターンの旋回行程図
【図13】パワステレバーの見取図
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明のコンバインは、刈取から穀粒排出までの各工程において、エンジンから回転動力を受けて稼動する各種作業機と、個々のクラッチ操作による作業機の稼動に合わせてエンジンを1000rpm程度のアイドリングから2700rpm程度の定格回転速度まで制御する制御装置を備える。コンバインの全体構成は、別途、詳述する。
【0014】
コンバインの制御は、システム要部構成図を図1に示すように、エンジン10を制御するエンジン制御部10cと、エンジン10から受ける動力を断接して排出装置54を動作させるモータ駆動式の排出クラッチ52等を制御装置200によって動作制御可能に構成し、それぞれの動作を検出するエンジン回転速度センサ10a、排出クラッチセンサ52aおよび、排出装置54を稼動させるための操作具である排出スイッチ67の操作信号を制御装置200に入力する。制御装置200には、排出スイッチ67の入操作の信号によってエンジン10を増速し、所定回転に達したときに排出クラッチ52を接続する連繋制御機能を構成する。
【0015】
また、連繋制御機能の適用を選択するための自動アクセルスイッチ70と、機器チェックの際のテストモードを選択するためのセンサチェックスイッチ71とを設け、連繋制御機能の非適用の場合やテストモードでは、エンジン10の回転によることなく、排出スイッチ67による穀粒排出の信号によって排出クラッチ52を接続制御可能に構成する。
【0016】
上記制御装置200による排出装置54の詳細な制御処理は、そのフローチャートを図2に示すように、整備モードの選択がなく、かつ、自動アクセルスイッチ70によって連繋制御が適用される場合は、排出クラッチセンサ52aに基づく排出クラッチ52の動作判定の処理ステップ1(以下においてS1の如く略記する。)により、「切」の場合において排出スイッチ67の操作(S2)が有ったときに、穀粒排出に適する回転速度目標値にエンジンを増速制御(S3)した上で、エンジン回転速度が所定値を越えることを条件に排出クラッチ52を「入」に制御(S5)する。
【0017】
また、整備モードの場合や自動アクセルスイッチ70によって連繋制御が適用されない場合は、排出スイッチ67の操作(S6)が有ったときに、排出クラッチセンサ52aに基づいて(S7)排出クラッチ52の「切」の場合に限り排出クラッチ52を「入」に制御(S5)する。
【0018】
このように、連繋制御の選択時は、排出装置の操作具を入操作すると、制御装置200によりエンジン10を増速制御し、所定の回転速度(例えば、上記定格回転速度である2700rpm)に達したときに排出装置54の排出クラッチ52を接続制御することにより、排出装置54が所定の回転速度で排出動作することから、作業機停止時のエンジン10の無駄な回転を抑えるとともに、排出装置54の詰まりを防止して安定した穀粒排出を確保することができるので、広い圃場における集中刈取作業を計画通り進めることができる。
【0019】
また、連繋制御機能を解除し、または、整備モードとすることによってエンジンとの連繋動作がなくなり、穀粒排出用の排出スイッチ67の信号によって排出装置54の稼動が可能となることから、メンテナンスの際の単独の動作テストが可能となる。
【0020】
(適用コンバイン)
前記制御の適用対象となるコンバイン1は、その1例を表した側面図を図3に示すように、車体フレーム2の下部側に左右一対の走行クローラ4を有する走行装置3を配設し、車体フレーム2の前部に刈取装置20を搭載し、車体フレーム2の上部に脱穀装置30およびグレンタンク50を搭載し、グレンタンク50と刈取装置20との間に操作席5と、操作席5を覆うキャビン6を設け、操作席5の周辺には走行操作用のHSTレバー62や旋回と刈取操作用のパワステレバー61等の操作具を配した操作パネルが設けられ、車体フレーム2の上部で操作席5の下部後方にエンジン10を搭載している。
【0021】
刈取装置20は最前端部に分草具を、その背後に傾斜状にした穀稈引起装置を、その後方底部に刈刃を設け、分草して刈取った穀稈を直列する複数の搬送装置に引き継ぎ、扱深さを調節して脱穀装置30のフィードチェン33の始端部に受け継ぐ構成である。
【0022】
穀粒を搬送排出するオーガ54の運転操作は、操作パネルに配設した排出スイッチ67、オーガ旋回レバー、オーガ自動張り出し収納スイッチ、オーガ停止位置可変ダイヤル、オーガ停止スイッチなどの各種の操作具により行われる。
【0023】
上記構成のコンバイン1は、刈取脱穀走行によってグレンタンク50が満了に達すると刈取走行を中断してトラックの待機位置にコンバイン1を移動し、収穫穀粒を載せ替える排出位置に機体を停車した時点でエンジン回転がアイドリングに下がり、オーガ56の先端をトラックの荷台位置に定めた上で、排出装置54の排出スイッチ67の操作により、エンジンを増速しつつ、排出動作を開始することにより、グレンタンク50の底部から収容穀粒が近傍のトラックの荷台等に上位排出される。
【0024】
穀粒排出後は、圃場の刈取位置に戻って刈取を再開することにより、穀粒の載せ替えの時間を最小限度に抑えてコンバインを連続的に回転運用することにより、刈取り計画に沿って広い圃場における集中刈取を行うことができる。
【0025】
(普通型コンバイン)
次に、刈取リールを備える普通型コンバインにおける刈取部の制御について説明する。
図4の側面図に示す普通型コンバイン81の刈取部82は、拡大側面図、上面図をそれぞれ図5,図6に示すように、タインを備えて回転掻込みを行う刈取リール83を前後機構付きのリール支持アーム84により機体前方に対して昇降と進退の動作可能に備え、かつ、刈取部82の昇降も可能に構成され、刈取部82の底面に設けた接地センサ部85は、図7の拡大側面図に示すように、ポジションセンサ85aにリンクして接地検出可能に構成する。
【0026】
刈取部82の昇降システムは、図8の構成図に示すように、刈取部82の昇降または刈取リール83の昇降を一括で自動制御する選択スイッチ82sを設けて構成し、制御部82cは、自動制御の選択スイッチ82sがオンの時は、図9の刈取部の昇降制御のフローチャートに示すように、刈取部82の昇降位置を示すセンサー値より刈取部82が所定以上の高さ位置であることを検出(S11〜S14)し、また、その状態で所定距離以上走行したことを検出(S15,S15a)した場合に刈取リール83を最下降位置まで下降(S16,S16a)させるべく制御出力を行う。
【0027】
従来は、刈り終わり時に刈取部82に残った穀物をできるだけ零さないように刈取リール83を下降させる煩わしい操作を要していたが、刈取部82の上昇検出により、オペレータを煩わせることなく、刈取リール83を操作することができる。
【0028】
また、リール83下降開始から一定時間について刈取部82を上昇(S17,S17a,S17b)する制御出力を行い、または、所定の高さ位置まで刈取部82を上昇する制御出力を行うことにより、刈取穀物の把持を良くして取りこぼしを減少することができる。
【0029】
次いで、上記刈取部82の上昇後またはリール83下降後において、パワステを所定以上左右に操作して機体旋回を検出した後の中立復帰によって旋回が終了した場合は、図10の旋回時の昇降制御のフローチャートに示すように、下降位置のリール83を上昇出力して再び所定以上の高さまで復帰(S21,S21a)させ、さらに、上昇位置の刈取部82を下降出力して再び所定以下の高さまで復帰(S22,S22a)させることにより、旋回終了時における再度の刈取作業に際し、オペレータの手を煩わせることがない。
【0030】
また、前掲の図9のフローチャートに示すように、刈取部82の高さ判定(S12〜S14)により、センサー値が所定以下を検出、または刈取部82の底面の接地センサ85が接地域であることを検出した場合は、リール83の上昇出力によって所定位置に上昇(S18,S18a)させることにより、再度の刈取作業に際し、オペレータの手を煩わせることがない。
【0031】
(旋回制御)
次に、機体の旋回制御について説明する。
図11の旋回制御のシステム構成図に示すように、自動旋回を選択するための旋回アシストスイッチ91を含む旋回制御システムを構成し、この旋回アシストスイッチ91によって適用が選択された場合に、制御部92により、穀稈センサ23に基づいて前後進無段変速機101による前後進とトランスミッション100による左右旋回を制御することにより、図12に旋回行程を示すアルファターンと称する旋回走行を行う。
【0032】
詳細には、アルファターンによる自動旋回制御は、(1)穀稈センサがオフしてから所定距離の前進、(2)左旋回による前進、(3)走行停止、(4)後進、(5)逆旋回による後進、(6)走行停止、(7)前進までの一連の手順によって構成され、旋回アシストスイッチ91の選択操作により、刈取走行における刈取穀稈の終端部において、左側の未刈側に向けて切り返しにより機体を方向転換することができる。したがって、オペレータの負担を抑えた高精度の旋回によって作業効率のアップが可能となる。
【0033】
上記旋回制御システムにおいて、脱穀クラッチがオフの時は、旋回アシストスイッチ91が押されても、自動旋回を行わないように構成することにより、路上走行時等の際の自動旋回を防止でき、安全性が向上する。また、角速度センサを用いて高精度で旋回角度を検出することによって正確な自動旋回が可能となる。
【0034】
旋回アシストスイッチ91は、図13の見取図に示すように、左右操作によって機体旋回を可能とするパワステレバー61に設けることにより、簡単な操作で自動旋回できることから、オペレータの負担が軽減される。この旋回アシストスイッチ91を押すタイミングは、分草杆の先端が作物列の終端に来たときとすることにより、正確な自動旋回が可能となる。
【0035】
刈取部については、オペレータの操作性の向上のために、旋回アシストスイッチ91が押されて一定距離を走行した後に一定高さまで上昇させ、アルファターンの後の未刈部に進入の時に元の高さに自動降下させるように連動制御する。また、旋回アシストスイッチ91を間違って押しても、簡単にキャンセルすることができるように、自動旋回中において旋回アシストスイッチ91を押すと自動旋回を中止するように制御部を構成する。
【0036】
機体の前後進動作が手動操作によるものにあっては、前後進への切換えが必要な場合に、液晶やランプ或いはブザーにより切換えタイミングをオペレータに知らせるようにシステムを構成することにより、前後進タイミングが簡単に分かり、正確な旋回が可能となる。
【符号の説明】
【0037】
10 エンジン
50 グレンタンク
52 排出クラッチ
54 排出装置
67 排出スイッチ(操作具)
70 自動アクセルスイッチ(スイッチ)
200 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出クラッチにより動作制御が可能な排出装置を備えてグレンタンクから収穫穀粒を排出する排出装置を備えたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のコンバインのように、刈取から穀粒排出までエンジンから回転動力を受けて稼動する各種作業機を備え、個々のクラッチ操作による作業機の稼動に合わせてエンジンをアイドリングから定格回転まで増速制御する技術が知られている。
【0003】
例えば、排出装置については、収穫穀粒を載せ替える排出位置に機体を停車するとエンジン回転がアイドリングに下がり、排出装置のクラッチレバーの操作により、エンジンを増速しつつ、排出動作を開始することにより、グレンタンクの底部から収容穀粒を近傍のトラックの荷台等に上位排出する。
このように、上記コンバインは、作業機の稼働と連動してエンジンを制御することにより、無駄なエンジン回転を抑えて効率的な動力供給により作業機を稼動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3769981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、排出装置は、エンジンの増速途中の低速回転時に過大な量の穀粒を受けると詰まりを生じることがあり、その穀粒を取り出して排出を再開するまでの無駄時間により、広い圃場における集中刈取り計画の狂いを招くこととなる一方で、これを解決するためにエンジン回転をアイドリングより高速に維持するようにした場合は、無駄なエンジン回転が抑えられないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、作業機の稼働に連動したエンジン制御によって効率的なエンジン動作を確保するとともに、排出装置の穀粒詰まりを招くことなく、安定した穀粒排出を可能とする排出オーガ付きコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、エンジン(10)から受ける動力を断接する排出クラッチ(52)によりグレンタンク(50)から収容穀粒を排出する排出装置(54)と、この排出クラッチ(52)を断接操作する操作具(67)と、この操作具(67)の操作によってエンジン(10)の回転速度を所定の回転速度以上に自動的に変速制御する制御装置(200)とを備え、
該制御装置(200)には、前記操作具(67)の操作に基づいてエンジン(10)の回転速度が所定の回転速度に達したときに排出クラッチ(52)を自動的に接続する連繋制御機能を備えたことを特徴とするコンバインとする。
【0008】
上記排出装置(54)の操作具(67)を入操作すると、制御装置(200)がエンジン(10)を増速制御し、所定の回転速度に達したときに排出装置(54)の排出クラッチ(52)を接続制御することにより、排出装置(54)が所定の回転速度で安定して排出動作する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記制御装置(200)は、所定のスイッチ(70)の操作に基づいてその連繋制御機能を有効または無効に切換可能に構成し、該スイッチ(70)が連繋制御機能を無効とする側に切り換えられた場合には、エンジン(10)の回転速度に拘りなく、操作具(67)による穀粒排出操作によって排出クラッチ(52)を接続制御する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとする。
上記排出装置(54)は、連繋制御機能を無効とするスイッチ(70)の操作により、エンジン(10)との連繋動作が解除されるとともに、排出装置(54)が操作具(67)の操作によって稼動される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によると、操作具(67)を入操作すると、制御装置(200)がエンジン(10)を増速制御し、所定の回転速度に達したときに排出クラッチ(52)を接続制御することにより、排出装置(54)が所定の回転速度で排出動作することから、作業機停止時のエンジン(10)の無駄な回転を抑えるとともに、排出装置(54)の詰まりを防止して安定した穀粒排出作業を行うことができるので、広い圃場における集中刈取作業を計画通り進めることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によると、請求項1記載の発明の効果に加え、排出装置(54)は、スイッチ(70)による連繋制御機能を無効とする操作により、エンジン(10)との連繋制御が解除されるとともに、操作具(67)の信号によって排出装置(54)の稼動が可能となることから、メンテナンスの際の単独の動作テストが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンバイン制御のシステム要部構成図
【図2】制御処理のフローチャート
【図3】コンバインの側面図
【図4】普通型コンバインの側面図
【図5】刈取部の拡大側面図
【図6】刈取部の上面図
【図7】接地センサ部の拡大側面図
【図8】刈取部の昇降制御のシステム構成図
【図9】刈取部の昇降制御のフローチャート
【図10】旋回時の昇降制御のフローチャート
【図11】旋回制御のシステム構成図
【図12】アルファターンの旋回行程図
【図13】パワステレバーの見取図
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明のコンバインは、刈取から穀粒排出までの各工程において、エンジンから回転動力を受けて稼動する各種作業機と、個々のクラッチ操作による作業機の稼動に合わせてエンジンを1000rpm程度のアイドリングから2700rpm程度の定格回転速度まで制御する制御装置を備える。コンバインの全体構成は、別途、詳述する。
【0014】
コンバインの制御は、システム要部構成図を図1に示すように、エンジン10を制御するエンジン制御部10cと、エンジン10から受ける動力を断接して排出装置54を動作させるモータ駆動式の排出クラッチ52等を制御装置200によって動作制御可能に構成し、それぞれの動作を検出するエンジン回転速度センサ10a、排出クラッチセンサ52aおよび、排出装置54を稼動させるための操作具である排出スイッチ67の操作信号を制御装置200に入力する。制御装置200には、排出スイッチ67の入操作の信号によってエンジン10を増速し、所定回転に達したときに排出クラッチ52を接続する連繋制御機能を構成する。
【0015】
また、連繋制御機能の適用を選択するための自動アクセルスイッチ70と、機器チェックの際のテストモードを選択するためのセンサチェックスイッチ71とを設け、連繋制御機能の非適用の場合やテストモードでは、エンジン10の回転によることなく、排出スイッチ67による穀粒排出の信号によって排出クラッチ52を接続制御可能に構成する。
【0016】
上記制御装置200による排出装置54の詳細な制御処理は、そのフローチャートを図2に示すように、整備モードの選択がなく、かつ、自動アクセルスイッチ70によって連繋制御が適用される場合は、排出クラッチセンサ52aに基づく排出クラッチ52の動作判定の処理ステップ1(以下においてS1の如く略記する。)により、「切」の場合において排出スイッチ67の操作(S2)が有ったときに、穀粒排出に適する回転速度目標値にエンジンを増速制御(S3)した上で、エンジン回転速度が所定値を越えることを条件に排出クラッチ52を「入」に制御(S5)する。
【0017】
また、整備モードの場合や自動アクセルスイッチ70によって連繋制御が適用されない場合は、排出スイッチ67の操作(S6)が有ったときに、排出クラッチセンサ52aに基づいて(S7)排出クラッチ52の「切」の場合に限り排出クラッチ52を「入」に制御(S5)する。
【0018】
このように、連繋制御の選択時は、排出装置の操作具を入操作すると、制御装置200によりエンジン10を増速制御し、所定の回転速度(例えば、上記定格回転速度である2700rpm)に達したときに排出装置54の排出クラッチ52を接続制御することにより、排出装置54が所定の回転速度で排出動作することから、作業機停止時のエンジン10の無駄な回転を抑えるとともに、排出装置54の詰まりを防止して安定した穀粒排出を確保することができるので、広い圃場における集中刈取作業を計画通り進めることができる。
【0019】
また、連繋制御機能を解除し、または、整備モードとすることによってエンジンとの連繋動作がなくなり、穀粒排出用の排出スイッチ67の信号によって排出装置54の稼動が可能となることから、メンテナンスの際の単独の動作テストが可能となる。
【0020】
(適用コンバイン)
前記制御の適用対象となるコンバイン1は、その1例を表した側面図を図3に示すように、車体フレーム2の下部側に左右一対の走行クローラ4を有する走行装置3を配設し、車体フレーム2の前部に刈取装置20を搭載し、車体フレーム2の上部に脱穀装置30およびグレンタンク50を搭載し、グレンタンク50と刈取装置20との間に操作席5と、操作席5を覆うキャビン6を設け、操作席5の周辺には走行操作用のHSTレバー62や旋回と刈取操作用のパワステレバー61等の操作具を配した操作パネルが設けられ、車体フレーム2の上部で操作席5の下部後方にエンジン10を搭載している。
【0021】
刈取装置20は最前端部に分草具を、その背後に傾斜状にした穀稈引起装置を、その後方底部に刈刃を設け、分草して刈取った穀稈を直列する複数の搬送装置に引き継ぎ、扱深さを調節して脱穀装置30のフィードチェン33の始端部に受け継ぐ構成である。
【0022】
穀粒を搬送排出するオーガ54の運転操作は、操作パネルに配設した排出スイッチ67、オーガ旋回レバー、オーガ自動張り出し収納スイッチ、オーガ停止位置可変ダイヤル、オーガ停止スイッチなどの各種の操作具により行われる。
【0023】
上記構成のコンバイン1は、刈取脱穀走行によってグレンタンク50が満了に達すると刈取走行を中断してトラックの待機位置にコンバイン1を移動し、収穫穀粒を載せ替える排出位置に機体を停車した時点でエンジン回転がアイドリングに下がり、オーガ56の先端をトラックの荷台位置に定めた上で、排出装置54の排出スイッチ67の操作により、エンジンを増速しつつ、排出動作を開始することにより、グレンタンク50の底部から収容穀粒が近傍のトラックの荷台等に上位排出される。
【0024】
穀粒排出後は、圃場の刈取位置に戻って刈取を再開することにより、穀粒の載せ替えの時間を最小限度に抑えてコンバインを連続的に回転運用することにより、刈取り計画に沿って広い圃場における集中刈取を行うことができる。
【0025】
(普通型コンバイン)
次に、刈取リールを備える普通型コンバインにおける刈取部の制御について説明する。
図4の側面図に示す普通型コンバイン81の刈取部82は、拡大側面図、上面図をそれぞれ図5,図6に示すように、タインを備えて回転掻込みを行う刈取リール83を前後機構付きのリール支持アーム84により機体前方に対して昇降と進退の動作可能に備え、かつ、刈取部82の昇降も可能に構成され、刈取部82の底面に設けた接地センサ部85は、図7の拡大側面図に示すように、ポジションセンサ85aにリンクして接地検出可能に構成する。
【0026】
刈取部82の昇降システムは、図8の構成図に示すように、刈取部82の昇降または刈取リール83の昇降を一括で自動制御する選択スイッチ82sを設けて構成し、制御部82cは、自動制御の選択スイッチ82sがオンの時は、図9の刈取部の昇降制御のフローチャートに示すように、刈取部82の昇降位置を示すセンサー値より刈取部82が所定以上の高さ位置であることを検出(S11〜S14)し、また、その状態で所定距離以上走行したことを検出(S15,S15a)した場合に刈取リール83を最下降位置まで下降(S16,S16a)させるべく制御出力を行う。
【0027】
従来は、刈り終わり時に刈取部82に残った穀物をできるだけ零さないように刈取リール83を下降させる煩わしい操作を要していたが、刈取部82の上昇検出により、オペレータを煩わせることなく、刈取リール83を操作することができる。
【0028】
また、リール83下降開始から一定時間について刈取部82を上昇(S17,S17a,S17b)する制御出力を行い、または、所定の高さ位置まで刈取部82を上昇する制御出力を行うことにより、刈取穀物の把持を良くして取りこぼしを減少することができる。
【0029】
次いで、上記刈取部82の上昇後またはリール83下降後において、パワステを所定以上左右に操作して機体旋回を検出した後の中立復帰によって旋回が終了した場合は、図10の旋回時の昇降制御のフローチャートに示すように、下降位置のリール83を上昇出力して再び所定以上の高さまで復帰(S21,S21a)させ、さらに、上昇位置の刈取部82を下降出力して再び所定以下の高さまで復帰(S22,S22a)させることにより、旋回終了時における再度の刈取作業に際し、オペレータの手を煩わせることがない。
【0030】
また、前掲の図9のフローチャートに示すように、刈取部82の高さ判定(S12〜S14)により、センサー値が所定以下を検出、または刈取部82の底面の接地センサ85が接地域であることを検出した場合は、リール83の上昇出力によって所定位置に上昇(S18,S18a)させることにより、再度の刈取作業に際し、オペレータの手を煩わせることがない。
【0031】
(旋回制御)
次に、機体の旋回制御について説明する。
図11の旋回制御のシステム構成図に示すように、自動旋回を選択するための旋回アシストスイッチ91を含む旋回制御システムを構成し、この旋回アシストスイッチ91によって適用が選択された場合に、制御部92により、穀稈センサ23に基づいて前後進無段変速機101による前後進とトランスミッション100による左右旋回を制御することにより、図12に旋回行程を示すアルファターンと称する旋回走行を行う。
【0032】
詳細には、アルファターンによる自動旋回制御は、(1)穀稈センサがオフしてから所定距離の前進、(2)左旋回による前進、(3)走行停止、(4)後進、(5)逆旋回による後進、(6)走行停止、(7)前進までの一連の手順によって構成され、旋回アシストスイッチ91の選択操作により、刈取走行における刈取穀稈の終端部において、左側の未刈側に向けて切り返しにより機体を方向転換することができる。したがって、オペレータの負担を抑えた高精度の旋回によって作業効率のアップが可能となる。
【0033】
上記旋回制御システムにおいて、脱穀クラッチがオフの時は、旋回アシストスイッチ91が押されても、自動旋回を行わないように構成することにより、路上走行時等の際の自動旋回を防止でき、安全性が向上する。また、角速度センサを用いて高精度で旋回角度を検出することによって正確な自動旋回が可能となる。
【0034】
旋回アシストスイッチ91は、図13の見取図に示すように、左右操作によって機体旋回を可能とするパワステレバー61に設けることにより、簡単な操作で自動旋回できることから、オペレータの負担が軽減される。この旋回アシストスイッチ91を押すタイミングは、分草杆の先端が作物列の終端に来たときとすることにより、正確な自動旋回が可能となる。
【0035】
刈取部については、オペレータの操作性の向上のために、旋回アシストスイッチ91が押されて一定距離を走行した後に一定高さまで上昇させ、アルファターンの後の未刈部に進入の時に元の高さに自動降下させるように連動制御する。また、旋回アシストスイッチ91を間違って押しても、簡単にキャンセルすることができるように、自動旋回中において旋回アシストスイッチ91を押すと自動旋回を中止するように制御部を構成する。
【0036】
機体の前後進動作が手動操作によるものにあっては、前後進への切換えが必要な場合に、液晶やランプ或いはブザーにより切換えタイミングをオペレータに知らせるようにシステムを構成することにより、前後進タイミングが簡単に分かり、正確な旋回が可能となる。
【符号の説明】
【0037】
10 エンジン
50 グレンタンク
52 排出クラッチ
54 排出装置
67 排出スイッチ(操作具)
70 自動アクセルスイッチ(スイッチ)
200 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(10)から受ける動力を断接する排出クラッチ(52)によりグレンタンク(50)から収容穀粒を排出する排出装置(54)と、この排出クラッチ(52)を断接操作する操作具(67)と、この操作具(67)の操作によってエンジン(10)の回転速度を所定の回転速度以上に自動的に変速制御する制御装置(200)とを備え、
該制御装置(200)には、前記操作具(67)の操作に基づいてエンジン(10)の回転速度が所定の回転速度に達したときに排出クラッチ(52)を自動的に接続する連繋制御機能を備えたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記制御装置(200)は、所定のスイッチ(70)の操作に基づいてその連繋制御機能を有効または無効に切換可能に構成し、該スイッチ(70)が連繋制御機能を無効とする側に切り換えられた場合には、エンジン(10)の回転速度に拘りなく、操作具(67)による穀粒排出操作によって排出クラッチ(52)を接続制御する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項1】
エンジン(10)から受ける動力を断接する排出クラッチ(52)によりグレンタンク(50)から収容穀粒を排出する排出装置(54)と、この排出クラッチ(52)を断接操作する操作具(67)と、この操作具(67)の操作によってエンジン(10)の回転速度を所定の回転速度以上に自動的に変速制御する制御装置(200)とを備え、
該制御装置(200)には、前記操作具(67)の操作に基づいてエンジン(10)の回転速度が所定の回転速度に達したときに排出クラッチ(52)を自動的に接続する連繋制御機能を備えたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記制御装置(200)は、所定のスイッチ(70)の操作に基づいてその連繋制御機能を有効または無効に切換可能に構成し、該スイッチ(70)が連繋制御機能を無効とする側に切り換えられた場合には、エンジン(10)の回転速度に拘りなく、操作具(67)による穀粒排出操作によって排出クラッチ(52)を接続制御する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−207171(P2010−207171A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58953(P2009−58953)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]