コンバイン
【課題】副切断装置の刈高さ制御を、主切断装置とは別個にも、連動しても行えるようにするにあたり、各種センサー類などを削減して、構造の簡素化、及び低コスト化を図る。
【解決手段】主切断装置32を走行機体に対して昇降操作自在に構成し、副切断装置41を走行機体側に揺動自在に装備させた昇降フレーム40に支持させて昇降自在に構成し、主切断装置32の昇降操作に連動して副切断装置41が昇降される連係状態と、主切断装置32の昇降操作とは別に独立して副切断装置41が昇降自在である連係解除状態とに、主切断装置32に対する副切断装置41の昇降作動の連係状態を切換操作自在な連係手段5を備えた。
【解決手段】主切断装置32を走行機体に対して昇降操作自在に構成し、副切断装置41を走行機体側に揺動自在に装備させた昇降フレーム40に支持させて昇降自在に構成し、主切断装置32の昇降操作に連動して副切断装置41が昇降される連係状態と、主切断装置32の昇降操作とは別に独立して副切断装置41が昇降自在である連係解除状態とに、主切断装置32に対する副切断装置41の昇降作動の連係状態を切換操作自在な連係手段5を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植立茎稈の上部を刈り取る主切断装置と、主切断装置よりも低い位置で植立茎稈に作用する副切断装置とを設けてあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように、植立茎稈の上部を刈り取る主切断装置と、主切断装置よりも低い位置で植立茎稈に作用する副切断装置との二種の切断装置を備えているのは、茎稈の着粒部のみを脱穀装置に投入するために主切断装置で着粒部を刈り取り、着粒部より下側の茎稈部分は脱穀装置へ投入しないで圃場に放出するように副切断装置で株元部分を切断するためである。
この種のコンバインとしては、下記[1]及び[2]に記載の構造のものが従来より知られている。
[1] 主切断装置を備えた刈取フレームに副切断装置を取り付けて、主切断装置の刈高さ調節操作にともなって、副切断装置の刈高さも同調して昇降制御される状態と、主刈取装置の刈高さ調節操作とは別に副切断装置独自の高さ調節が行われる状態と、刈取部全体の対地レベルが所定高さ以上であると、副切断装置を自動的に格納位置にまで上昇させるように構成したもの(例えば特許文献1参照)。
[2] 主切断装置を備えた刈取フレームに副切断装置を取り付けて、主切断装置の刈高さ調節操作にともなって、副切断装置の刈高さも同調して昇降制御されるように構成し、かつ、副切断装置に接地橇体を設けて、その接地橇体の動作をポテンショメータで検出することにより副切断装置を独自で昇降制御するようにしたもの(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−147828号公報(段落番号〔0012〕、図1、及び図2)
【特許文献2】特開平7−155044号公報(段落番号〔0017〕,〔0019〕、図1、及び図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]及び[2]に記載の従来構造のものでは、主切断装置での刈高さを適正に保つために刈高さ調節を行うと、それに連動して副切断装置の刈取作用位置の高さも変化してしまう。
このため、副切断装置による刈高さを適正に保つために、前記特許文献1に記載の構造のものでは、刈取フレーム全体の揺動作動を検出するポテンショメータと、刈取フレームに対する副切断装置の相対高さを検出するポテンショメータと、両ポテンショメータの検出値から適正調節代を演算する制御装置を備え、その制御装置からの出力で作動される油圧シリンダを用いて、副切断装置の適正高さを得られるように制御していた。
この構造によれば、主切断装置による刈高さ変更にかかわらず、副切断装置の刈高さを自動的に調節可能である点で有用である。しかしながら、このように複数のポテンショメータや各種制御装置、ならびに制御用のアクチュエータを要するものであるため、副切断装置の調節作動を制御するための構造が複雑で、かつ高価な部品点数も多くて低コスト化が困難なものであった。
また、副切断装置の高さ制御が主切断装置との相対位置の制御で行われるものであるため、実際の圃場面の凹凸状況などによっては、十分に茎稈を地面近くで切断し難い場合もある。
【0005】
前記特許文献2に記載の構造のものでは、副切断装置側に接地するソリ状のセンサを設けて、そのソリ状のセンサの姿勢変化をポテンショメータで検出することにより、副切断装置側の対地高さを単独で制御できるようにした構造のものも示されているが、この場合にも、各種の検出手段や制御装置を要することは前記特許文献1に記載の構造のものと同様であり、やはり構造上の複雑化や部品点数の多さを低減することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、主切断装置と副切断装置とを用いて植立茎稈の上下を切断可能に構成したコンバインにおいて、副切断装置の刈高さ制御を主切断装置とは別個に行えるように、及び主切断装置の高さ位置変更に連動して姿勢変更することもできるようにするにあたり、各種センサー類などを削減して、構造の簡素化、及び低コスト化を図る点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、請求項1に記載のように、植立茎稈を刈り取る主切断装置と、その主切断装置よりも低い位置で前記植立茎稈に作用する副切断装置とを備えたコンバインにおいて、
前記主切断装置を走行機体に対して昇降操作自在に構成し、前記副切断装置を走行機体側に揺動自在に装備させた昇降フレームに支持させて昇降自在に構成し、
前記主切断装置の昇降操作に連動して副切断装置が昇降される連係状態と、前記主切断装置の昇降操作とは別に独立して副切断装置が昇降自在である連係解除状態とに、前記主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作自在な連係手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明のコンバインでは、副切断装置を装備させる対象として、従来のように、走行機体に対して揺動自在に支持されている主切断装置を選択したのではなく、走行機体側に揺動自在に装備させた昇降フレームを用いて、副切断装置を走行機体に対して直接的に揺動自在に支持させている。
このため、副切断装置は、主切断装置の揺動作動には関係せずに、独自に対地高さを設定する状態が得られる。この状態では、主切断装置の刈高さの変更操作がなされても、これには関係なく副切断装置の切断高さは所定の状態に維持されるので、主切断装置に対して副切断装置を支持させた従来構造のような、主切断装置の刈高さ変更に伴う副切断装置側での高さ変化を修正するための検出手段や制御手段を必要としない。
それでいて、主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作自在な連係手段を備えたものであるから、副切断装置の昇降作動を主切断装置の昇降作動に連係させる必要が生じた場合には、前記連係手段を操作して、連係解除状態から連係状態に切換操作することができる。その結果、畦越え走行時などに必然的に持ち上げ操作される主切断装置の作動に連動させて副切断装置も追従作動させることができ、各種使用形態に則した副切断装置の昇降作動を、特別な制御手段を要することなく行わせることができる。
【0009】
したがって、副切断装置の高さ位置制御に関して、主切断装置側の刈高さ調節の影響を受けない制御動作と、主切断装置側の高さ位置変更に連動した制御動作とを、任意に選択できるようにしたことにより、副切断装置の対機体姿勢や対地高さ位置などを検出するための各種のセンサ類や、修正のための制御手段を必要とせず、構造の簡素化や部品点数の削減を図り得る利点がある。
【0010】
〔解決手段2〕
本発明のコンバインにおける第2の解決手段は、請求項2の記載のように、副切断装置は橇体を装備して接地追従するように構成されているとともに、前記橇体が地面に接する範囲で、その橇体と接地面との間における面圧を軽減するように、副切断装置を上昇側へ揺動付勢する付勢手段を備えた点に特徴がある。
【0011】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段2にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段1にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、副切断装置は橇体を装備して接地追従するものであるから、副切断装置の対地高さは橇体が地面に沿って滑走することで自動的に地面の変化に追従した高さに制御され、特別な高さ検出手段や高さ制御手段を必要としない。
そして、前記橇体は、その橇体と接地面との間における面圧を軽減するように、副切断装置を上昇側へ揺動付勢する付勢手段を備えているので、圃場面が比較的軟弱な状態であっても接地面基準での刈高さを維持し易く、圃場の硬軟による影響を受け難い状態で所要の刈高さを確保し易いという利点がある。
【0012】
〔解決手段3〕
本発明のコンバインにおける第3の解決手段は、請求項3の記載のように、主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作する連係手段の操作部は、運転座席に搭座する操縦者の手が届く範囲の運転座席近くに設けてある点に特徴がある。
【0013】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段3にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段1及び2にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作する連係手段の操作部を、運転座席に搭座する操縦者の手が届く範囲に設けて、作業走行中での操作を行い易くしてあるので、作業開始時や作業終了時、あるいは別の圃場へ機体を移すときなど、主切断装置と副切断装置との連係作動が要望される時点での連係状態への切換を迅速に行うことができる利点がある。
【0014】
〔解決手段4〕
本発明のコンバインにおける第4の解決手段は、請求項4の記載のように、主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作する連係手段は、下端側に前記副切断装置に対する接続部を備え、その接続部よりも上端側寄りの中間箇所に主切断装置と副切断装置とを接続及び接続解除可能な連結部を備え、その連結部よりも上端側に前記連結部を人為的に操作可能な操作部を備えて構成されている点に特徴がある。
【0015】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段4にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段1〜3にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、連係手段が副切断装置に支持されているので、連係手段の連結部が接続状態に操作された状態であるのか、接続解除状態に操作されている状態であるのかを、操作部を目視することで簡単に識別することができる。つまり、接続解除状態で作業走行しているときには、操作部が圃場面の凹凸変化などによって頻繁に上下動し、連結部の接続状態ではその操作部の相対的な上下動がないので、走行作業中に連係状態の有無を確認することができる。また、畦越え時などに、前記連係状態で主切断装置を上昇作動させると、操作部の相対位置変化はないが、連係が解除された状態であれば、主切断装置の上昇時に操作部が追従しないので、その連係が解除状態であることを早期のうちに認識することができる。
このようにして、特別な表示手段を要することなく連係状態の有無を識別できるので、簡単な構造を用いたものでありながら、操作忘れや誤操作の少ない状態で使用することができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1にはコンバインの全体側面が示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置2を備えた走行機体1の前部に、刈取対象茎稈を刈り取って後方へ搬送する刈取搬送系処理部Aを設けてある。走行機体1上には、前記刈取搬送系処理部Aから供給される刈取茎稈の全体を投入して脱穀、及び選別処理を施す脱穀装置12や、この脱穀装置12からの穀粒を貯留して袋詰めする穀粒袋詰め装置13などを搭載してあり、走行機体1における穀粒袋詰め装置13の前方箇所に運転座席15を備えた搭乗運転部14を設けて、供給処理対象物の全体を脱穀処理する普通型コンバインを構成してある。
【0017】
〔刈取搬送系処理部〕
図1及び図2に示すように、刈取搬送系処理部Aは、走行機体1に対して、左右向きの第1軸心X1周りで上下揺動可能に連結してある刈取搬送フレーム30を備えた上部処理装置3と、走行機体1の前部に対して左右向きの第1軸心X2周りで上下揺動可能に装着した昇降フレーム40を備えた下部処理装置4とで構成されている。
【0018】
前記刈取搬送フレーム30に備えられた上部処理装置3は、走行に伴って刈取対象茎稈と非刈取対象茎稈とを梳き分けるデバイダ31が前部左右両端に装備され、両デバイダ31,31の間に導かれた刈取対象の植立茎稈を切断するバリカン型の主切断装置32と、刈取対象茎稈を後方に向けて掻き込む回転リール33と、切断後の刈取対象茎稈を左右方向の所定箇所に寄せ集めて後方に送るオーガ34と、さらに後方の脱穀装置12の入り口に向けて後方送りするフィーダ35とを備えて構成されている。
そして、この上部処理装置3は、前記フィーダ35の下方近くと走行機体1側の固定部とにわたって架設した油圧式のシリンダ11の作動で左右向き第1軸心X1周りに上下揺動し、その上下揺動で、刈取対象茎稈に対する主切断装置32の高さ位置を変更する刈り高さ調節を行えるようになっている。
【0019】
前記下部処理装置4は、次のように構成してある。
バリカン型の副切断装置41について説明する。図2乃至図4に示すように、走行機体1の前端側における左右両側と左右方向での中央箇所近く位置に、左右向きの第2軸心X2周りで上下揺動自在な昇降フレーム40を前方側に向けて延出してある。そして、これらの各昇降フレーム40は、その前端側が、上下に分岐した二股状に形成されており、上方側の分岐先端部を横長の連結フレーム42で連結し、下方側の分岐先端部をバリカン型の副切断装置41の受刃支持台43に連結してあって、各昇降フレーム40、及び副切断装置41が一体に連結された状態で前記第2軸心X2周りで揺動可能に構成してある。
【0020】
図2乃至図5に示すように、上方側の分岐先端部を連結する横長の連結フレーム42の左側端部には、その連結フレーム42と下方の副切断装置41の受刃支持台43とを連結するブラケット44を設けてあり、このブラケット44に、前記副切断装置41を駆動する駆動装置20を収納した伝動ケース21が取付固定してある。
【0021】
前記受刃支持台43に固定された受刃体41Aの上部には、左右にスライド移動する可動刃41Bが載置されており、前記駆動装置20から、駆動アーム、ナイフヘッド等の周知の刈刃駆動機構を介して、可動刃41Bがスライド駆動されるように構成してある。
前記駆動装置20を内装する伝動ケース21に対しては、伝動ケース21の内側に設けた伝動プーリ22と、機体フレーム10上の中継ケース23に設けた中継プーリ24とにわたって伝動ベルト25を巻回し、中継ケース23の中継スプロケット26と、前記上部処理装置3への伝動系から分岐伝動される出力用スプロケット27とにわたって伝動チェーン28を巻回することによってエンジン動力が伝達されるように構成してある。
【0022】
前記下部処理装置4は、図3,4に示すように、前記受刃支持台43の右端側(既刈側)下方に接地用の橇体45を備えている。そして、図7乃至図9に示すように、中央箇所の昇降フレーム40と走行機体1との間に、前記橇体45の接地圧を減少させるように、昇降フレーム40を上昇側へ揺動付勢する付勢手段6を備え、その橇体45と接地面との間における面圧を軽減するように構成してある。
【0023】
前記付勢手段6は、昇降フレーム40側に揺動自在に枢支連結された上部支持体60と、走行機体1側に揺動自在に支持された下部支持体61と、下部支持体61側に装備されたコイルスプリング62とで構成されている。
上部支持体60は、所定長さの軸体部分63の周部に所定間隔を隔てて短い筒状部64が一体的に構成されたものであり、下部支持体61は、前記上部支持体60の軸体部分63に外嵌し、かつ前記筒状部64に内嵌する筒軸部65と、その筒軸部65に外嵌して相対摺動自在に装着された鍔状部材66とで構成してある。
そして、コイルスプリング62は下部支持体61の外周部分に外嵌させてあり、図6(a)及び図9(a)に示すように昇降フレーム40が下降した副切断装置41が地面に近づいた作業姿勢になると、前記コイルスプリング62が圧縮され、逆に、図6(b)及び図9図(b)に示すように昇降フレーム40が所定高さ以上に上昇して、副切断装置41が地面から大きく離れると、前記コイルスプリング62の付勢力は作用しなくなる。図9(b)に示す状態が、コイルスプリング62の自由伸張状態である。
【0024】
前記付勢手段6のコイルスプリング62による上昇側への付勢力は、前記接地用の橇体45が地面に接した作業状態では確実に橇体45に作用する接地圧を軽減することができるように、下部処理装置4の重量とコイルスプリング62の上昇側への付勢力とがほぼバランスして、僅かに橇体45の接地面に接地圧が作用する程度に設定されている。
したがって、圃場面の凹凸変化などによって橇体45に作用する面圧が少し変化すると下部処理装置4を追従させて昇降作動させられるように、所謂フローティング作業状態での刈取作業が可能となるように構成してある。
【0025】
図4及び図6,7に示すように、前記下部処理装置4は上部処理装置3に対して左右一対のガスダンパ46によって連結してあり、あまり急激な昇降動作が行われ難いように構成してある。尚、このガスダンパ46は、下部処理装置4が最大限下降状態となったときの下降限界位置を設定し得るように、その最大伸長量が設定されている。
【0026】
〔連係手段〕
上記下部処理装置4に備えられた副切断装置41を、上部処理装置3に備えられた主切断装置32に対して、その昇降作動が連係する状態と、連係解除された状態とを切換操作するための連係手段5は次のように構成されている。
【0027】
図6乃至図8に示すように、連係手段5は、上下方向に長い板状の連結部材50と、その連結部材50の中間部を上部処理装置3に対して接続、及び接続を解除する状態に切換操作するための係合操作体51とで構成されている。
前記連結部材50は、その下端側に、前記昇降フレーム40の他方の分岐端側に対する接続部52としての接続用孔を備え、その接続部52よりも上端側寄りの中間箇所に、連結部材50の長手方向に沿って形成された長尺のスライド用孔53と、そのスライド用孔53の長手方向の範囲内で、かつスライド用孔53の下端近くに、連結部材50の横側部に位置する連結部54としての係合用孔部54とを備えている。また、前記接続部52が設けられた下端側とは反対の上端部は、運転座席15近くに位置して、操縦者が握り操作することが可能な操作部55に形成されている。
この連結部材50は、ある程度の靱性を有した鋼材で構成してあり、その上端側の操作部55を握って機体の左右方向、すなわち、連結部材50の板面に直交する方向で少し揺動操作すると、自身の靱性で撓み変形し、前記連結部54としての係合用孔部と係合操作体51との相対位置を変更操作して、係脱操作を行うことができる。
【0028】
前記係合操作体51は、図10及び図11に示すように、刈取搬送フレーム30に対して、抜き差し方向で移動自在に装着された一方の脚部56aを、前記連結部材50のスライド用孔53に嵌入させ、他側の短い脚部56bを前記係合用孔部54に対して係脱自在であるように、鉤状に屈曲形成された係合片56と、その係合片56の前記短い側の脚部56bを前記係合用孔部54から抜け出し側へ付勢するバネ57とで構成されている。
【0029】
したがって、連結部材50と係合操作体51との非係合状態では、前記図10(a)及び図11(a)のように、係合操作体51の短い脚部56bは連結部54としての係合用孔部から外れているが、連結部材50の操作部55を握って連結部材50を少し右方へ操作すると、図10(b)及び図11(b)に示すように、係合操作体51の短い脚部56bに係合用孔部が嵌り込む。この状態で上部処理装置3を上昇させると、下部処理装置4が吊り上げられる状態となるので、その状態では下部処理装置4の重量が係合用孔部54と係合操作体51との接触面に作用して、前記操作部55から手を離しても、前記係合用孔部と係合操作体51との係合状態が維持される。もちろん、上部処理装置3を下降させて下部処理装置4が接地すると、その下部処理装置4の重量が前記接触面に作用しなくなるので、前記連結部材50は自身の靱性でもとの状態に復帰し、前記係合状態は解除される。
【0030】
このように構成されたコンバインでは、図6(b)及び図8に示すように、畦越え走行時などに、前記連係手段5を操作して下部処理装置4を上部処理装置3の昇降作動に連動する状態に切換え、上部処理装置3を上昇操作することによって、下部処理装置4も追従して持ち上げられた姿勢とする。
尚、図10及び図11中に示す符号58は、前記スライド用孔53に挿入された一方の脚部56aがそのスライド用孔53から抜け出すことを防止するためのワッシャであり、符号59は抜け止めピンである。
【0031】
〔別実施形態の1〕
連係手段5としては、最良の実施形態で示したような、連結部材50の靱性を利用して係合解除側へ付勢したものに限らず、例えば、別途バネ材を用いて連結部材50を係合解除側へ付勢するように構成したものであってもよい。
【0032】
〔別実施形態の2〕
連係手段5としては、最良の実施形態で示したような、連結部材50の靱性を利用して係合解除側へ付勢したものに限らず、例えば、全く付勢手段を用いないで、係合位置と係合解除位置に位置変更したり、あるいは、別途、係止ピンとピン孔などの係合手段を用いて係脱するようにしてもよい。
【0033】
〔別実施形態の3〕
連係手段5としては、最良の実施形態で示したような、接続部52、連結部54、及び操作部55を、一連の連結部材50を利用して構成したものに限らず、例えば、上部処理装置3と下部処理装置4とをチェーンなどで連結し、搭乗運転部14に設けた指令スイッチの操作で電動モータによりチェーンを巻き上げて、上部処理装置3に下部処理装置4を吊り持ちさせた状態と、チェーンを十分に緩めて下部処理装置4の自由な昇降動作を許容する状態にするなど、適宜の手段を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体を示す平面図
【図3】下部処理装置部分を示す正面図
【図4】下部処理装置部分を示す平面図
【図5】下部処理装置の支持構造を示す側面図
【図6】コンバインの使用状態を示す側面図
【図7】下部処理装置の支持構造と連係手段を示す側面図
【図8】下部処理装置の支持構造と連係手段を示す側面図
【図9】付勢手段を示す切り欠き側面図
【図10】連係手段の作用状態を示す正面図
【図11】連係手段の作用状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0035】
3 上部処理装置
4 下部処理装置
5 連係手段
6 付勢手段
30 刈取搬送フレーム
32 主切断装置
40 昇降フレーム
41 副切断装置
45 橇体
50 連結部材
51 係合操作体
52 接続部
53 スライド用孔
54 係合用孔部
55 操作部
【技術分野】
【0001】
本発明は、植立茎稈の上部を刈り取る主切断装置と、主切断装置よりも低い位置で植立茎稈に作用する副切断装置とを設けてあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように、植立茎稈の上部を刈り取る主切断装置と、主切断装置よりも低い位置で植立茎稈に作用する副切断装置との二種の切断装置を備えているのは、茎稈の着粒部のみを脱穀装置に投入するために主切断装置で着粒部を刈り取り、着粒部より下側の茎稈部分は脱穀装置へ投入しないで圃場に放出するように副切断装置で株元部分を切断するためである。
この種のコンバインとしては、下記[1]及び[2]に記載の構造のものが従来より知られている。
[1] 主切断装置を備えた刈取フレームに副切断装置を取り付けて、主切断装置の刈高さ調節操作にともなって、副切断装置の刈高さも同調して昇降制御される状態と、主刈取装置の刈高さ調節操作とは別に副切断装置独自の高さ調節が行われる状態と、刈取部全体の対地レベルが所定高さ以上であると、副切断装置を自動的に格納位置にまで上昇させるように構成したもの(例えば特許文献1参照)。
[2] 主切断装置を備えた刈取フレームに副切断装置を取り付けて、主切断装置の刈高さ調節操作にともなって、副切断装置の刈高さも同調して昇降制御されるように構成し、かつ、副切断装置に接地橇体を設けて、その接地橇体の動作をポテンショメータで検出することにより副切断装置を独自で昇降制御するようにしたもの(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−147828号公報(段落番号〔0012〕、図1、及び図2)
【特許文献2】特開平7−155044号公報(段落番号〔0017〕,〔0019〕、図1、及び図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]及び[2]に記載の従来構造のものでは、主切断装置での刈高さを適正に保つために刈高さ調節を行うと、それに連動して副切断装置の刈取作用位置の高さも変化してしまう。
このため、副切断装置による刈高さを適正に保つために、前記特許文献1に記載の構造のものでは、刈取フレーム全体の揺動作動を検出するポテンショメータと、刈取フレームに対する副切断装置の相対高さを検出するポテンショメータと、両ポテンショメータの検出値から適正調節代を演算する制御装置を備え、その制御装置からの出力で作動される油圧シリンダを用いて、副切断装置の適正高さを得られるように制御していた。
この構造によれば、主切断装置による刈高さ変更にかかわらず、副切断装置の刈高さを自動的に調節可能である点で有用である。しかしながら、このように複数のポテンショメータや各種制御装置、ならびに制御用のアクチュエータを要するものであるため、副切断装置の調節作動を制御するための構造が複雑で、かつ高価な部品点数も多くて低コスト化が困難なものであった。
また、副切断装置の高さ制御が主切断装置との相対位置の制御で行われるものであるため、実際の圃場面の凹凸状況などによっては、十分に茎稈を地面近くで切断し難い場合もある。
【0005】
前記特許文献2に記載の構造のものでは、副切断装置側に接地するソリ状のセンサを設けて、そのソリ状のセンサの姿勢変化をポテンショメータで検出することにより、副切断装置側の対地高さを単独で制御できるようにした構造のものも示されているが、この場合にも、各種の検出手段や制御装置を要することは前記特許文献1に記載の構造のものと同様であり、やはり構造上の複雑化や部品点数の多さを低減することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、主切断装置と副切断装置とを用いて植立茎稈の上下を切断可能に構成したコンバインにおいて、副切断装置の刈高さ制御を主切断装置とは別個に行えるように、及び主切断装置の高さ位置変更に連動して姿勢変更することもできるようにするにあたり、各種センサー類などを削減して、構造の簡素化、及び低コスト化を図る点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、請求項1に記載のように、植立茎稈を刈り取る主切断装置と、その主切断装置よりも低い位置で前記植立茎稈に作用する副切断装置とを備えたコンバインにおいて、
前記主切断装置を走行機体に対して昇降操作自在に構成し、前記副切断装置を走行機体側に揺動自在に装備させた昇降フレームに支持させて昇降自在に構成し、
前記主切断装置の昇降操作に連動して副切断装置が昇降される連係状態と、前記主切断装置の昇降操作とは別に独立して副切断装置が昇降自在である連係解除状態とに、前記主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作自在な連係手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明のコンバインでは、副切断装置を装備させる対象として、従来のように、走行機体に対して揺動自在に支持されている主切断装置を選択したのではなく、走行機体側に揺動自在に装備させた昇降フレームを用いて、副切断装置を走行機体に対して直接的に揺動自在に支持させている。
このため、副切断装置は、主切断装置の揺動作動には関係せずに、独自に対地高さを設定する状態が得られる。この状態では、主切断装置の刈高さの変更操作がなされても、これには関係なく副切断装置の切断高さは所定の状態に維持されるので、主切断装置に対して副切断装置を支持させた従来構造のような、主切断装置の刈高さ変更に伴う副切断装置側での高さ変化を修正するための検出手段や制御手段を必要としない。
それでいて、主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作自在な連係手段を備えたものであるから、副切断装置の昇降作動を主切断装置の昇降作動に連係させる必要が生じた場合には、前記連係手段を操作して、連係解除状態から連係状態に切換操作することができる。その結果、畦越え走行時などに必然的に持ち上げ操作される主切断装置の作動に連動させて副切断装置も追従作動させることができ、各種使用形態に則した副切断装置の昇降作動を、特別な制御手段を要することなく行わせることができる。
【0009】
したがって、副切断装置の高さ位置制御に関して、主切断装置側の刈高さ調節の影響を受けない制御動作と、主切断装置側の高さ位置変更に連動した制御動作とを、任意に選択できるようにしたことにより、副切断装置の対機体姿勢や対地高さ位置などを検出するための各種のセンサ類や、修正のための制御手段を必要とせず、構造の簡素化や部品点数の削減を図り得る利点がある。
【0010】
〔解決手段2〕
本発明のコンバインにおける第2の解決手段は、請求項2の記載のように、副切断装置は橇体を装備して接地追従するように構成されているとともに、前記橇体が地面に接する範囲で、その橇体と接地面との間における面圧を軽減するように、副切断装置を上昇側へ揺動付勢する付勢手段を備えた点に特徴がある。
【0011】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段2にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段1にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、副切断装置は橇体を装備して接地追従するものであるから、副切断装置の対地高さは橇体が地面に沿って滑走することで自動的に地面の変化に追従した高さに制御され、特別な高さ検出手段や高さ制御手段を必要としない。
そして、前記橇体は、その橇体と接地面との間における面圧を軽減するように、副切断装置を上昇側へ揺動付勢する付勢手段を備えているので、圃場面が比較的軟弱な状態であっても接地面基準での刈高さを維持し易く、圃場の硬軟による影響を受け難い状態で所要の刈高さを確保し易いという利点がある。
【0012】
〔解決手段3〕
本発明のコンバインにおける第3の解決手段は、請求項3の記載のように、主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作する連係手段の操作部は、運転座席に搭座する操縦者の手が届く範囲の運転座席近くに設けてある点に特徴がある。
【0013】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段3にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段1及び2にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作する連係手段の操作部を、運転座席に搭座する操縦者の手が届く範囲に設けて、作業走行中での操作を行い易くしてあるので、作業開始時や作業終了時、あるいは別の圃場へ機体を移すときなど、主切断装置と副切断装置との連係作動が要望される時点での連係状態への切換を迅速に行うことができる利点がある。
【0014】
〔解決手段4〕
本発明のコンバインにおける第4の解決手段は、請求項4の記載のように、主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作する連係手段は、下端側に前記副切断装置に対する接続部を備え、その接続部よりも上端側寄りの中間箇所に主切断装置と副切断装置とを接続及び接続解除可能な連結部を備え、その連結部よりも上端側に前記連結部を人為的に操作可能な操作部を備えて構成されている点に特徴がある。
【0015】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段4にかかる本発明のコンバインでは、前記解決手段1〜3にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、連係手段が副切断装置に支持されているので、連係手段の連結部が接続状態に操作された状態であるのか、接続解除状態に操作されている状態であるのかを、操作部を目視することで簡単に識別することができる。つまり、接続解除状態で作業走行しているときには、操作部が圃場面の凹凸変化などによって頻繁に上下動し、連結部の接続状態ではその操作部の相対的な上下動がないので、走行作業中に連係状態の有無を確認することができる。また、畦越え時などに、前記連係状態で主切断装置を上昇作動させると、操作部の相対位置変化はないが、連係が解除された状態であれば、主切断装置の上昇時に操作部が追従しないので、その連係が解除状態であることを早期のうちに認識することができる。
このようにして、特別な表示手段を要することなく連係状態の有無を識別できるので、簡単な構造を用いたものでありながら、操作忘れや誤操作の少ない状態で使用することができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1にはコンバインの全体側面が示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置2を備えた走行機体1の前部に、刈取対象茎稈を刈り取って後方へ搬送する刈取搬送系処理部Aを設けてある。走行機体1上には、前記刈取搬送系処理部Aから供給される刈取茎稈の全体を投入して脱穀、及び選別処理を施す脱穀装置12や、この脱穀装置12からの穀粒を貯留して袋詰めする穀粒袋詰め装置13などを搭載してあり、走行機体1における穀粒袋詰め装置13の前方箇所に運転座席15を備えた搭乗運転部14を設けて、供給処理対象物の全体を脱穀処理する普通型コンバインを構成してある。
【0017】
〔刈取搬送系処理部〕
図1及び図2に示すように、刈取搬送系処理部Aは、走行機体1に対して、左右向きの第1軸心X1周りで上下揺動可能に連結してある刈取搬送フレーム30を備えた上部処理装置3と、走行機体1の前部に対して左右向きの第1軸心X2周りで上下揺動可能に装着した昇降フレーム40を備えた下部処理装置4とで構成されている。
【0018】
前記刈取搬送フレーム30に備えられた上部処理装置3は、走行に伴って刈取対象茎稈と非刈取対象茎稈とを梳き分けるデバイダ31が前部左右両端に装備され、両デバイダ31,31の間に導かれた刈取対象の植立茎稈を切断するバリカン型の主切断装置32と、刈取対象茎稈を後方に向けて掻き込む回転リール33と、切断後の刈取対象茎稈を左右方向の所定箇所に寄せ集めて後方に送るオーガ34と、さらに後方の脱穀装置12の入り口に向けて後方送りするフィーダ35とを備えて構成されている。
そして、この上部処理装置3は、前記フィーダ35の下方近くと走行機体1側の固定部とにわたって架設した油圧式のシリンダ11の作動で左右向き第1軸心X1周りに上下揺動し、その上下揺動で、刈取対象茎稈に対する主切断装置32の高さ位置を変更する刈り高さ調節を行えるようになっている。
【0019】
前記下部処理装置4は、次のように構成してある。
バリカン型の副切断装置41について説明する。図2乃至図4に示すように、走行機体1の前端側における左右両側と左右方向での中央箇所近く位置に、左右向きの第2軸心X2周りで上下揺動自在な昇降フレーム40を前方側に向けて延出してある。そして、これらの各昇降フレーム40は、その前端側が、上下に分岐した二股状に形成されており、上方側の分岐先端部を横長の連結フレーム42で連結し、下方側の分岐先端部をバリカン型の副切断装置41の受刃支持台43に連結してあって、各昇降フレーム40、及び副切断装置41が一体に連結された状態で前記第2軸心X2周りで揺動可能に構成してある。
【0020】
図2乃至図5に示すように、上方側の分岐先端部を連結する横長の連結フレーム42の左側端部には、その連結フレーム42と下方の副切断装置41の受刃支持台43とを連結するブラケット44を設けてあり、このブラケット44に、前記副切断装置41を駆動する駆動装置20を収納した伝動ケース21が取付固定してある。
【0021】
前記受刃支持台43に固定された受刃体41Aの上部には、左右にスライド移動する可動刃41Bが載置されており、前記駆動装置20から、駆動アーム、ナイフヘッド等の周知の刈刃駆動機構を介して、可動刃41Bがスライド駆動されるように構成してある。
前記駆動装置20を内装する伝動ケース21に対しては、伝動ケース21の内側に設けた伝動プーリ22と、機体フレーム10上の中継ケース23に設けた中継プーリ24とにわたって伝動ベルト25を巻回し、中継ケース23の中継スプロケット26と、前記上部処理装置3への伝動系から分岐伝動される出力用スプロケット27とにわたって伝動チェーン28を巻回することによってエンジン動力が伝達されるように構成してある。
【0022】
前記下部処理装置4は、図3,4に示すように、前記受刃支持台43の右端側(既刈側)下方に接地用の橇体45を備えている。そして、図7乃至図9に示すように、中央箇所の昇降フレーム40と走行機体1との間に、前記橇体45の接地圧を減少させるように、昇降フレーム40を上昇側へ揺動付勢する付勢手段6を備え、その橇体45と接地面との間における面圧を軽減するように構成してある。
【0023】
前記付勢手段6は、昇降フレーム40側に揺動自在に枢支連結された上部支持体60と、走行機体1側に揺動自在に支持された下部支持体61と、下部支持体61側に装備されたコイルスプリング62とで構成されている。
上部支持体60は、所定長さの軸体部分63の周部に所定間隔を隔てて短い筒状部64が一体的に構成されたものであり、下部支持体61は、前記上部支持体60の軸体部分63に外嵌し、かつ前記筒状部64に内嵌する筒軸部65と、その筒軸部65に外嵌して相対摺動自在に装着された鍔状部材66とで構成してある。
そして、コイルスプリング62は下部支持体61の外周部分に外嵌させてあり、図6(a)及び図9(a)に示すように昇降フレーム40が下降した副切断装置41が地面に近づいた作業姿勢になると、前記コイルスプリング62が圧縮され、逆に、図6(b)及び図9図(b)に示すように昇降フレーム40が所定高さ以上に上昇して、副切断装置41が地面から大きく離れると、前記コイルスプリング62の付勢力は作用しなくなる。図9(b)に示す状態が、コイルスプリング62の自由伸張状態である。
【0024】
前記付勢手段6のコイルスプリング62による上昇側への付勢力は、前記接地用の橇体45が地面に接した作業状態では確実に橇体45に作用する接地圧を軽減することができるように、下部処理装置4の重量とコイルスプリング62の上昇側への付勢力とがほぼバランスして、僅かに橇体45の接地面に接地圧が作用する程度に設定されている。
したがって、圃場面の凹凸変化などによって橇体45に作用する面圧が少し変化すると下部処理装置4を追従させて昇降作動させられるように、所謂フローティング作業状態での刈取作業が可能となるように構成してある。
【0025】
図4及び図6,7に示すように、前記下部処理装置4は上部処理装置3に対して左右一対のガスダンパ46によって連結してあり、あまり急激な昇降動作が行われ難いように構成してある。尚、このガスダンパ46は、下部処理装置4が最大限下降状態となったときの下降限界位置を設定し得るように、その最大伸長量が設定されている。
【0026】
〔連係手段〕
上記下部処理装置4に備えられた副切断装置41を、上部処理装置3に備えられた主切断装置32に対して、その昇降作動が連係する状態と、連係解除された状態とを切換操作するための連係手段5は次のように構成されている。
【0027】
図6乃至図8に示すように、連係手段5は、上下方向に長い板状の連結部材50と、その連結部材50の中間部を上部処理装置3に対して接続、及び接続を解除する状態に切換操作するための係合操作体51とで構成されている。
前記連結部材50は、その下端側に、前記昇降フレーム40の他方の分岐端側に対する接続部52としての接続用孔を備え、その接続部52よりも上端側寄りの中間箇所に、連結部材50の長手方向に沿って形成された長尺のスライド用孔53と、そのスライド用孔53の長手方向の範囲内で、かつスライド用孔53の下端近くに、連結部材50の横側部に位置する連結部54としての係合用孔部54とを備えている。また、前記接続部52が設けられた下端側とは反対の上端部は、運転座席15近くに位置して、操縦者が握り操作することが可能な操作部55に形成されている。
この連結部材50は、ある程度の靱性を有した鋼材で構成してあり、その上端側の操作部55を握って機体の左右方向、すなわち、連結部材50の板面に直交する方向で少し揺動操作すると、自身の靱性で撓み変形し、前記連結部54としての係合用孔部と係合操作体51との相対位置を変更操作して、係脱操作を行うことができる。
【0028】
前記係合操作体51は、図10及び図11に示すように、刈取搬送フレーム30に対して、抜き差し方向で移動自在に装着された一方の脚部56aを、前記連結部材50のスライド用孔53に嵌入させ、他側の短い脚部56bを前記係合用孔部54に対して係脱自在であるように、鉤状に屈曲形成された係合片56と、その係合片56の前記短い側の脚部56bを前記係合用孔部54から抜け出し側へ付勢するバネ57とで構成されている。
【0029】
したがって、連結部材50と係合操作体51との非係合状態では、前記図10(a)及び図11(a)のように、係合操作体51の短い脚部56bは連結部54としての係合用孔部から外れているが、連結部材50の操作部55を握って連結部材50を少し右方へ操作すると、図10(b)及び図11(b)に示すように、係合操作体51の短い脚部56bに係合用孔部が嵌り込む。この状態で上部処理装置3を上昇させると、下部処理装置4が吊り上げられる状態となるので、その状態では下部処理装置4の重量が係合用孔部54と係合操作体51との接触面に作用して、前記操作部55から手を離しても、前記係合用孔部と係合操作体51との係合状態が維持される。もちろん、上部処理装置3を下降させて下部処理装置4が接地すると、その下部処理装置4の重量が前記接触面に作用しなくなるので、前記連結部材50は自身の靱性でもとの状態に復帰し、前記係合状態は解除される。
【0030】
このように構成されたコンバインでは、図6(b)及び図8に示すように、畦越え走行時などに、前記連係手段5を操作して下部処理装置4を上部処理装置3の昇降作動に連動する状態に切換え、上部処理装置3を上昇操作することによって、下部処理装置4も追従して持ち上げられた姿勢とする。
尚、図10及び図11中に示す符号58は、前記スライド用孔53に挿入された一方の脚部56aがそのスライド用孔53から抜け出すことを防止するためのワッシャであり、符号59は抜け止めピンである。
【0031】
〔別実施形態の1〕
連係手段5としては、最良の実施形態で示したような、連結部材50の靱性を利用して係合解除側へ付勢したものに限らず、例えば、別途バネ材を用いて連結部材50を係合解除側へ付勢するように構成したものであってもよい。
【0032】
〔別実施形態の2〕
連係手段5としては、最良の実施形態で示したような、連結部材50の靱性を利用して係合解除側へ付勢したものに限らず、例えば、全く付勢手段を用いないで、係合位置と係合解除位置に位置変更したり、あるいは、別途、係止ピンとピン孔などの係合手段を用いて係脱するようにしてもよい。
【0033】
〔別実施形態の3〕
連係手段5としては、最良の実施形態で示したような、接続部52、連結部54、及び操作部55を、一連の連結部材50を利用して構成したものに限らず、例えば、上部処理装置3と下部処理装置4とをチェーンなどで連結し、搭乗運転部14に設けた指令スイッチの操作で電動モータによりチェーンを巻き上げて、上部処理装置3に下部処理装置4を吊り持ちさせた状態と、チェーンを十分に緩めて下部処理装置4の自由な昇降動作を許容する状態にするなど、適宜の手段を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体を示す平面図
【図3】下部処理装置部分を示す正面図
【図4】下部処理装置部分を示す平面図
【図5】下部処理装置の支持構造を示す側面図
【図6】コンバインの使用状態を示す側面図
【図7】下部処理装置の支持構造と連係手段を示す側面図
【図8】下部処理装置の支持構造と連係手段を示す側面図
【図9】付勢手段を示す切り欠き側面図
【図10】連係手段の作用状態を示す正面図
【図11】連係手段の作用状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0035】
3 上部処理装置
4 下部処理装置
5 連係手段
6 付勢手段
30 刈取搬送フレーム
32 主切断装置
40 昇降フレーム
41 副切断装置
45 橇体
50 連結部材
51 係合操作体
52 接続部
53 スライド用孔
54 係合用孔部
55 操作部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植立茎稈を刈り取る主切断装置と、その主切断装置よりも低い位置で前記植立茎稈に作用する副切断装置とを備えたコンバインであって、
前記主切断装置を走行機体に対して昇降操作自在に構成し、前記副切断装置を走行機体側に揺動自在に装備させた昇降フレームに支持させて昇降自在に構成し、
前記主切断装置の昇降操作に連動して副切断装置が昇降される連係状態と、前記主切断装置の昇降操作とは別に独立して副切断装置が昇降自在である連係解除状態とに、前記主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作自在な連係手段を備えたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
副切断装置は橇体を装備して接地追従するように構成されているとともに、前記橇体が地面に接する範囲で、その橇体と接地面との間における面圧を軽減するように、副切断装置を上昇側へ揺動付勢する付勢手段を備えたものである請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作する連係手段の操作部は、運転座席に搭座する操縦者の手が届く範囲の運転座席近くに設けてある請求項1または2記載のコンバイン。
【請求項4】
主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作する連係手段は、下端側に前記副切断装置に対する接続部を備え、その接続部よりも上端側寄りの中間箇所に主切断装置と副切断装置とを接続及び接続解除可能な連結部を備え、その連結部よりも上端側に前記連結部を人為的に操作可能な操作部を備えて構成されている請求項1、2、または3記載のコンバイン。
【請求項1】
植立茎稈を刈り取る主切断装置と、その主切断装置よりも低い位置で前記植立茎稈に作用する副切断装置とを備えたコンバインであって、
前記主切断装置を走行機体に対して昇降操作自在に構成し、前記副切断装置を走行機体側に揺動自在に装備させた昇降フレームに支持させて昇降自在に構成し、
前記主切断装置の昇降操作に連動して副切断装置が昇降される連係状態と、前記主切断装置の昇降操作とは別に独立して副切断装置が昇降自在である連係解除状態とに、前記主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作自在な連係手段を備えたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
副切断装置は橇体を装備して接地追従するように構成されているとともに、前記橇体が地面に接する範囲で、その橇体と接地面との間における面圧を軽減するように、副切断装置を上昇側へ揺動付勢する付勢手段を備えたものである請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作する連係手段の操作部は、運転座席に搭座する操縦者の手が届く範囲の運転座席近くに設けてある請求項1または2記載のコンバイン。
【請求項4】
主切断装置に対する副切断装置の昇降作動の連係状態を切換操作する連係手段は、下端側に前記副切断装置に対する接続部を備え、その接続部よりも上端側寄りの中間箇所に主切断装置と副切断装置とを接続及び接続解除可能な連結部を備え、その連結部よりも上端側に前記連結部を人為的に操作可能な操作部を備えて構成されている請求項1、2、または3記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−51217(P2010−51217A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218567(P2008−218567)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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