コンバイン
【課題】圧力検出手段の検出結果及び穀粒量の関係を示す関数に、圧力検出手段の取付位置及び取付姿勢、並びに刈取る品種に応じた適切な係数を使用し、貯留部に貯留する穀粒量を正確に検出することができるコンバインを提供する。
【解決手段】投口センサ23aの検出結果及び演算して求めた穀粒量に基づいて未知係数を求めて、実関数を導出し、投口センサ23aの穀粒タンク4への取付位置並びに取付姿勢の差異、及び刈取る品種などの諸条件に応じた適切な実関数を穀粒量の検出に使用する構成とした。
【解決手段】投口センサ23aの検出結果及び演算して求めた穀粒量に基づいて未知係数を求めて、実関数を導出し、投口センサ23aの穀粒タンク4への取付位置並びに取付姿勢の差異、及び刈取る品種などの諸条件に応じた適切な実関数を穀粒量の検出に使用する構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収した穀粒の量を精度良く検出することができるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場での収穫作業を行う場合には、穀稈の刈取り及び脱穀並びに穀粒の回収を行うコンバインを使用することが多い。コンバインは、クローラの走行中に刈刃にて穀稈を刈取り、刈取った穀稈を扱胴へ搬送して脱穀する。そして扱胴の下方に配置してあるチャフシーブにて、穀稈から分離した稈及び穀粒の選別を行い、選別された穀粒をチャフシーブから漏下させて、スクリューコンベアを介して穀粒タンクに回収する。
【0003】
スクリューコンベアの先端部には、穀粒を穀粒タンクに投げ入れるための羽根板が取り付けてあり、該羽根板によって投げ入れられた穀粒量を検出する穀粒量検出センサが穀粒タンクに設けてある。穀粒量検出センサは圧電素子を備えており、該圧電素子によって検出された圧力を、圧力及び穀粒量の関係を示す関数に適用して穀粒量を求めている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−24381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧力及び穀粒量の関係を示す関数に使用されている係数は一定である。しかし穀粒量検出センサをユーザが取り付けた場合には、前記関数が前提とした位置及び姿勢で穀粒量検出センサが取り付けられていないことがあり、正確な穀粒量を検出するためには、前記係数を、穀粒量検出センサの穀粒タンクへの取付位置及び取付姿勢に応じて変更する必要がある。また刈取る品種に応じて前記係数を変更する必要がある。そのため前記係数が一定である場合には、穀粒タンクに貯留する穀粒量を正確に検出することができない場合がある。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、圧力検出手段の検出結果及び穀粒量の関係を示す関数に、圧力検出手段の取付位置及び取付姿勢、並びに刈取る品種に応じた適切な係数を使用し、貯留部に貯留する穀粒量を正確に検出することができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係るコンバインは、刈取られた穀稈を脱穀する脱穀装置と、該脱穀装置にて脱穀された穀粒を貯留する貯留部と、前記脱穀装置から前記貯留部へ穀粒を搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送された穀粒による圧力を検出する圧力検出手段とを備えるコンバインにおいて、未知係数を含み、前記圧力検出手段の検出結果及び前記搬送手段にて搬送される単位時間あたりの穀粒量の関係を示す仮関数を記憶してある手段と、前記搬送手段にて搬送される単位時間あたりの穀粒量を演算する穀粒量演算手段と、前記圧力検出手段の検出結果及び前記穀粒量演算手段の演算結果に基づいて、前記未知係数に設定されるべき値を演算する係数演算手段と、該係数演算手段にて求めた値を前記仮関数に適用して、前記圧力検出手段の検出結果及び前記搬送手段にて搬送される単位時間あたりの穀粒量の関係を示す実関数を導出する手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、圧力検出手段の検出結果及び演算して求めた穀粒量に基づいて未知係数を求めて、実関数を導出し、圧力検出手段の貯留部への取付位置及び取付姿勢、並びに刈取る品種などの諸条件に応じた適切な実関数を穀粒量の検出に使用する。
【0009】
第2発明に係るコンバインは、前記仮関数は未知係数を二つ以上含み、前記係数演算手段は、前記圧力検出手段から少なくとも二つの異なる検出結果を取り込むようにしてあり、前記圧力検出手段から取り込んだ少なくとも二つの異なる検出結果に基づいて、前記未知係数に設定されるべき値を求めるようにしてあることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、圧力検出手段による高圧力及び低圧力を示す検出結果に基づいて、複数の未知係数を求め、諸条件に適切に対応した精度の高い実関数を導出する。
【0011】
第3発明に係るコンバインは、前記貯留部に貯留した穀粒量を検出する貯留量検出手段と、該貯留量検出手段が所定量の穀粒量を検出したことを出力する手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、貯留部に所定量の穀粒が貯留した場合、例えば満杯になった場合に、ユーザにその旨報知し、刈取の終了を促す。
【0013】
第4発明に係るコンバインは、前記脱穀装置に動力を供給する駆動源と、該駆動源から前記脱穀装置への動力の伝達を継断するクラッチと、前記貯留部に貯留した穀粒量を検出する貯留量検出手段と、該貯留量検出手段が所定量の穀粒量を検出した場合に、前記クラッチを切断する手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、貯留部に所定量の穀粒が貯留した場合、例えば満杯になった場合に、クラッチを切断し、刈取を強制的に終了させる。
【発明の効果】
【0015】
第1発明に係るコンバインにあっては、圧力検出手段の検出結果及び演算して求めた穀粒量に基づいて未知係数を求めて、実関数を導出するので、圧力検出手段の貯留部への取付位置並びに取付姿勢の差異、及び刈取る品種などの諸条件に応じた適切な実関数を穀粒量の検出に使用することができる。
【0016】
第2発明に係るコンバインにあっては、圧力検出手段による高圧力及び低圧力を示す検出結果に基づいて、複数の未知係数を求めるので、諸条件に適切に対応した精度の高い実関数を導出することができる。
【0017】
第3発明に係るコンバインにあっては、貯留部に所定量の穀粒が貯留した場合、例えば満杯になった場合に、ユーザにその旨報知する。そのためユーザは警告の報知後、直ちに刈取を終了することができる。
【0018】
第4発明に係るコンバインにあっては、貯留部に所定量の穀粒が貯留した場合、例えば満杯になった場合に、クラッチを切断し、刈取を強制的に終了させる。そのため貯留部への過剰な貯留を防止し、コンバインの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係るコンバインの外観斜視図である。
【図2】脱穀装置の内部構成を略示する側面断面図である。
【図3】穀粒タンクを略示する平面断面図である。
【図4】エンジンの駆動力の伝達経路を略示する伝動機構図である。
【図5】制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】制御部による実関数設定処理を説明するフローチャートである。
【図7】制御部による実関数設定処理を説明するフローチャートである。
【図8】制御部による実関数設定処理を説明するフローチャートである。
【図9】CPUによる警報処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を実施の形態に係るコンバインを示す図面に基づいて詳述する。図1はコンバインの外観斜視図である。
【0021】
図において1は走行クローラであり、該走行クローラ1の上側に機体9が設けてある。該機体9の上には脱穀装置2が設けてある。該脱穀装置2の前側に、刈取り穀稈と非刈取り穀稈とを区別する分草板3a、穀稈を刈取る刈刃3b、及び穀稈を引き起こす引起し装置3cを備える刈取部3が設けてある。前記脱穀装置2の右側には穀粒を収容する穀粒タンク4を設けてあり、前記脱穀装置2の左部には穀稈を搬送する前後に長いフィードチェン5を設けてある。該フィードチェン5の上側に、穀稈を挟持する挟持部材6が設けてあり、該挟持部材6とフィードチェン5とが対向している。前記フィードチェン5の前端部付近には縦搬送装置7を配設してある。また前記穀粒タンク4には、穀粒タンク4から穀粒を排出する筒状の排出オーガ4aを取り付けてあり、穀粒タンク4の前側にはキャビン8を設けてある。
【0022】
走行クローラ1の駆動によって機体9は走行する。機体9の走行によって刈取部3に穀稈が取り込まれ、刈り取られる。刈り取られた穀稈は縦搬送装置7、フィードチェン5及び挟持部材6を介して脱穀装置2に搬送され、脱穀装置2内にて脱穀される。
【0023】
脱穀装置2の側面下部に、一定量の穀粒を投入する投入部8が設けてある。該投入部8は漏斗状に形成されている。投入部8の先端部に貫通孔が形成してある。脱穀装置2における前記貫通孔に整合する箇所に貫通孔が設けてあり、両貫通孔は連通している。投入部8の貫通孔の内側には、電磁弁8aが設けてある。電磁弁8aの開閉度合いを調節することによって、投入部8から脱穀装置2内へ投入される穀粒の量を調節することができる。
【0024】
図2は脱穀装置2の内部構成を略示する側面断面図、図3は穀粒タンク4を略示する平面断面図である。
図2に示すように、脱穀装置2の前側上部に穀稈を脱穀するための扱室10が設けてある。該扱室10内に、前後方向を軸長方向とした円筒形の扱胴11が軸架してあり、該扱胴11は軸回りに回動可能となっている。扱胴11の周面には多数の扱歯12、12、・・・12が螺旋状に並んでいる。前記扱胴11の下側に、前記扱歯12、12、・・・12と協働して稈を揉みほぐすクリンプ網15が配置してある。前記扱胴11は後述するエンジン40の駆動力によって回動し、穀稈を脱穀する。
【0025】
前記扱室10の上壁に四つの送塵弁10a、10a、10a、10aが前後方向に並設してあり、該送塵弁は扱室10の後部へ送出する稈及び穀粒の量を調節する。
【0026】
扱室10の後部には処理室13が連設してある。該処理室13内に、前後方向を軸長方向とした円筒形の処理胴13bが軸架してあり、該処理胴13bは軸回りに回動可能となっている。処理胴13bの周面には多数の扱歯13c、13c、・・・、13cが螺旋状に並んでいる。前記処理胴13bの下側には扱歯13c、13c、・・・、13cと協働して稈を揉みほぐす処理網13dが配置してある。前記処理胴13bはエンジン40の駆動力によって回動し、扱室10から送出された稈及び穀粒から穀粒を分離する処理を行う。処理室13の後端部下側には排出口13eを開設してある。
【0027】
前記処理室13の上壁に四つの処理胴弁13a、13a、13a、13aが前後方向に沿って並設してあり、該処理胴弁13a、13a、13a、13aは処理室13の後部へ送出する稈及び穀粒の量を調節する。
【0028】
前記クリンプ網15の下側には、穀粒及び稈の選別を行う揺動選別装置16を設けてある。該揺動選別装置16は、穀粒及び稈を均一化すると共に比重選別を行う揺動選別盤17と、該揺動選別盤17の後側に設けてあり、穀粒及び稈の粗選別を行うチャフシーブ18と、該チャフシーブ18の後側に設けてあり、稈に混入した穀粒を落下させるためのストローラック19とを備える。該ストローラック19は図示しない複数の透孔を有している。また前記揺動選別盤17の前部には揺動アーム21が連結してある。該揺動アーム21は前後に揺動するように構成されている。この揺動アーム21の揺動によって揺動選別装置16は揺動し、稈及び穀粒の選別が行われる。
【0029】
揺動選別装置16は、前記チャフシーブ18の下側に設けてあり、穀粒及び稈の精選別を行うグレンシーブ20を更に備える。該グレンシーブ20の下方に、前方を下として傾斜した一番穀粒板22が設けてあり、該一番穀粒板22の前側に、穀粒を前記穀粒タンク4に送給する一番スクリューコンベア23が設けてある。該一番スクリューコンベア23は、一番穀粒板22を滑落した穀粒を取り込み、上方に位置する穀粒タンク4へ送給する。
【0030】
なお前述した投入部8は、一番スクリューコンベア23付近に位置しており、投入部8から電磁弁8aを介して投入された穀粒は、一番スクリューコンベア23によって搬送される。
【0031】
図3に示すように、一番スクリューコンベア23の上端部の軸部分23cには、矩形の羽根板23bが設けてある。該羽根板23bは、軸部分23cを中心として放射方向に突出している。該羽根板23bは、一番スクリューコンベア23に同期して回転する。
【0032】
穀粒タンク4に投口4bが設けてあり、羽根板23cは投口4bに配置されている。穀粒タンク4の上部には、押圧式スイッチ4dが設けてある。穀粒タンク4が満杯になった場合に、押圧式スイッチ4cは貯留した穀粒に押圧され、後述する制御部100に信号を出力する。投口4bに対向する位置に、投口4bから穀粒タンク4へ投入される単位時間あたりの穀粒量を検出する投口センサ23aが設けてある。該投口センサ23aは、圧電素子を備えている。
【0033】
前記グレンシーブ20から一番穀粒板22に落下した穀粒は前記一番スクリューコンベア23に向けて滑落する。滑落した穀粒は一番スクリューコンベア23よって搬送され、投口4bから、羽根板23bの回転によって間欠的に穀粒タンク4へ投入される。図3の破線矢印によって示すように、投入された穀粒が投口センサ23aに当接することによって圧電素子から電圧が出力され、出力された電圧に基づいて投口量が検出される。
【0034】
前記一番穀粒板22の後部に、後方を下として傾斜した傾斜板24が連設してある。該傾斜板24の後端部に、前方を下として傾斜した二番穀粒板25が連設してある。該二番穀粒板25と前記傾斜板24との連結部分の上側に稈及び穀粒を搬送する二番スクリューコンベア26が設けてある。
前記ストローラック19の透孔から傾斜板24又は二番穀粒板25に落下した落下物は前記二番スクリューコンベア26に向けて滑落する。滑落した落下物は、二番スクリューコンベア26によって前記扱胴11の左側に設けてある処理ロータ14に搬送され、処理ロータ14にて脱穀処理される。
【0035】
前記一番スクリューコンベア23よりも前方であって、前記揺動選別盤17よりも下方に、起風動作を行う唐箕27が設けてある。記唐箕27の起風動作によって発生した風は、後方へ進行する。唐箕27と前記一番スクリューコンベア23との間に、風を上向きに送り出す整流板28を配設してある。
【0036】
前記二番穀粒板25の後端部に通路板36が連ねてある。該通路板36の上方には下部吸引カバー30が設けてある。該下部吸引カバー30及び通路板36の間は塵埃が排出される排気通路37になっている。
【0037】
下部吸引カバー30の上方に上部吸引カバー31が設けてある。該上部吸引カバー31及び下部吸引カバー30の間に、稈を吸引排出する軸流ファン32を配設してある。該軸流ファン32の後方には排塵口33を設けてある。前記唐箕27の動作によって発生した気流は、前記整流板28、28によって整流された後に、前記揺動選別装置16を通過して、前記排塵口33及び排気通路37に至る。
【0038】
排塵口33及び排気通路37には、圧電素子を備える排出量センサ34、34がそれぞれ配してある。排塵口33及び排気通路37から、穀粒が排出され、排出量センサ34、34に当接する。このとき排出量センサ34、34の圧電素子から電圧信号が出力され、排塵口33及び排気通路37から排出される単位時間あたりの穀粒量(ロス量)が検出される。なお排出量センサ34、34は圧電素子を有するセンサに限るものではなく、発光素子及び受光素子を有する光センサを排出量センサ34として使用し、発光素子及び受光素子の間を通過する穀粒量を検出しても良い。また発信器及び受信機を有する超音波センサを排出量センサ34として使用し、発信器及び受信機の間を通過する穀粒量を検出しても良い。
【0039】
前記上部吸引カバー31の上側であって、前記処理室13の下方に、前方を下として傾斜した流下樋35が設けてある。前記処理室13の排出口13eから排出された排出物は流下樋35を滑落して前記ストローラック19に落下する。
【0040】
前述した走行クローラ1の駆動、刈取部3の刈取動作、扱胴11の回動、処理胴13bの回動、揺動選別装置16の揺動及び一番スクリューコンベア23の回転動作などはエンジン40の駆動力によって行われる。図4はエンジン40の駆動力の伝達経路を略示する伝動機構図である。
【0041】
図4に示すように、エンジン40はHST(Hydro Static Transmission)41を介して走行ミッション42に連結してある。HST41は油圧ポンプ(図示せず)と、該油圧ポンプに供給される作動油の流量及び油圧ポンプの圧力を調整する機構(図示せず)と、該機構を制御する変速回路41aとを有している。
【0042】
走行ミッション42は、前記走行クローラ1に駆動力を伝達するギヤ(図示せず)を有している。走行ミッション42には、ホール素子を有する車速センサ43を設けてある。該車速センサ43は前記ギヤの回転数を検出して、ギヤの回転数に対応する機体の車速を示す信号を出力するようにしてある。
【0043】
前記エンジン40は電磁式の脱穀クラッチ44を介して、前記扱胴11及び処理胴13bに連結してあり、また伝動機構50に連結してある。伝動機構50は前記一番スクリューコンベア23に連結してある。伝動機構50と一番スクリューコンベア23とを連結する軸の近傍にピックアップセンサ51が設けてある。該ピックアップセンサ51は、ホール素子などを有する磁気センサであり、前記軸が有する磁性体の通過によって一番スクリューコンベア23の回転数を検出する。
【0044】
またエンジン40は脱穀クラッチ44を介して偏心クランク45に連結してある。該偏心クランク45は前記揺動アーム21に連結してある。偏心クランク45の駆動により前記揺動選別装置16が揺動する。また前記エンジン40は脱穀クラッチ44を介して前記唐箕27に連結してある。また前記エンジン40は脱穀クラッチ44及び電磁式の刈取クラッチ46を介して前記刈取部3に連結してある。
【0045】
走行ミッション42を介してエンジン40の駆動力が走行クローラ1に伝達され、機体9が走行する。また刈取クラッチ46を介して刈取部3にエンジン40の駆動力が伝達し、刈取部3にて穀稈が刈取られる。
【0046】
脱穀クラッチ44を介して前記扱胴11にエンジン40の駆動力が伝達し、扱胴11にて穀稈は脱穀される。また脱穀クラッチ44を介して処理胴13bにエンジン40の駆動力が伝達し、扱胴11にて脱穀された稈及び穀粒から穀粒が分離される。
【0047】
また前記揺動選別装置16には、脱穀クラッチ44及び偏心クランク45を介してエンジン40の駆動力が伝達し、扱胴11から漏下した稈及び穀粒並びに処理室13の排出口13eから排出された稈及び穀粒の選別が行われる。また脱穀クラッチ44を介して前記唐箕27にエンジン40の駆動力が伝達し、揺動選別装置16にて選別された稈及び穀粒を唐箕27による起風作用によって排塵口33及び排気通路37から排出する。
【0048】
前記投口センサ23a、エンジン回転数センサ40a及びピックアップセンサ51からの出力に基づいて、穀粒タンク4に貯留する穀粒量を演算する制御部100がコンバインに搭載されている。図5は制御部の構成を示すブロック図である。
【0049】
制御部100は内部バス100gにより相互に接続されたCPU(Central Processing Unit)100a、ROM(Read Only Memory)100b、RAM(Random Access Memory)100c及びEEPROM(Electrically Erasable and Progrmmable Read Only Memory)100dを備えている。CPU100aはROM100bに記憶された制御プログラムをRAM100cに読み込み、該制御プログラムに従って、送塵弁10a及び処理胴弁13aの動作制御など必要な制御を実行する。なおCPU100aはタイマを内蔵している。
【0050】
EEPROM100dには、投入部8に投入される穀粒量を示す定数が設定してある。またEEPROM100dには、投口センサ23aの検出値に係る変数d及び未知係数A、αを含む仮関数が設定してある。例えば、Q=F(d、A、α)が設定してある。Qは一番スクリューコンベア23によって搬送される単位時間あたりの穀粒量(以下流量という)を示す変数である。なお上述した仮関数は例示であって、これに限定されない。
【0051】
制御部100は出力インタフェース100fを介して、刈取クラッチ46及び脱穀クラッチ44に継断信号を出力する。また制御部100は出力インタフェース100fを介して、表示部83に所定の映像を表示することを示す表示信号を出力する。また制御部100は出力インタフェース100fを介して、警告ランプ84に点灯又は消灯信号を出力する。また制御部100は、出力インタフェース100fを介して、電磁弁8aに開閉度合いを示す信号を出力する。
【0052】
刈取スイッチ80、操作スイッチ82、投口センサ23a、押圧式スイッチ4c、ピックアップセンサ51及びエンジン回転数センサ40aの各出力信号は入力インタフェース100eを介して制御部100に入力されている。
【0053】
なお前記キャビン8内には図示しないダッシュボードパネルが設けてあり、該ダッシュボードパネルには、刈取スイッチ80、複数の操作スイッチ82及び脱穀スイッチ85が設けてあり、また液晶パネルを有する表示部83が設けてある。また前記キャビン8内には、警告ランプ84が設けてある。なお刈取スイッチ80のオンオフに対応して、刈取クラッチ46及び脱穀クラッチ44が継断される。また脱穀スイッチ85のオンオフに対応して、脱穀クラッチ44が継断される。
【0054】
制御部100は、投口センサ23aによって検出された検出値及び後述する演算処理によって求めた流量Qを仮関数に適用して、未知係数A及びαを求め、実関数をEEPROM100dに設定する。図6〜図8は制御部100による実関数設定処理を説明するフローチャートである。なおエンジン40は略一定の回転数で駆動しており、一番スクリューコンベア23は略一定の回転数で駆動しているものとする。またHST41において、走行クローラ1への駆動力の伝達は遮断されているものとする。
【0055】
制御部100のCPU100aは、操作スイッチ82から実関数を設定する処理を開始することを示す信号を受信するまで待機する(ステップS1:NO)。操作スイッチ82から較正開始を示す信号を受信した場合(ステップS1:YES)、CPU100aは、穀粒の投入部8への投入を促すことを表示する信号を表示部83に出力する(ステップS2)。このときユーザは、投入部8へ穀粒を投入することができる。なお投入部8へは一定量の穀粒を投入することができる。
【0056】
そしてCPU100aは、操作スイッチ82から穀粒の投入が完了したことを示す信号を受信するまで待機する(ステップS3:NO)。ユーザは、操作スイッチ82を操作し、穀粒の投入が完了したことを示す信号を送信することができる。
【0057】
次にCPU100aは、高圧力で流量を計測することを表示する信号を表示部83に出力する(ステップS4)。そしてCPU100aは、電磁弁8aに全開信号を出力する(ステップS5)。このとき投入部8から多量の穀粒が一番スクリューコンベア23へ連続的に投入される。投入された穀粒は、一番スクリューコンベア23にて搬送され、穀粒タンク4へ投入される。
【0058】
次にCPU100aは、投口センサ23aにて所定の圧力が検出されるまで待機する(ステップS6:NO)。ここで所定の圧力とは、穀粒が当接することによって発生する圧力であり、例えば、予め設定された閾値(外乱及び投口センサ23aの特性などによって発生すると推測される値)よりも高い圧力が該当する。
【0059】
投口センサ23aにて所定の圧力が検出された場合、CPU100aは、内蔵するタイマにて経時を開始する(ステップS7)。そしてCPU100aは、検出した圧力を示す値(圧力値)をEEPROM100dに記憶する(ステップS8)。次にCPU100aは、投口センサ23aにおける圧力の検出が終了したか否か判定する(ステップS9)。圧力の検出が終了したか否かの判定は、予め設定された閾値以下の値が所定時間検出されたか否かを判定することで行う。予め設定された閾値以下の値が所定時間検出された場合に、圧力の検出が終了したと判定する。所定時間はタイマにて計時する。なお予め設定された閾値以下の値が所定時間検出されたか否かの判定は、圧力の検出が終了したか否かを判定するための一例であり、圧力の検出が終了したか否かの判定は、これに限定されるものではない。
【0060】
投口センサ23aにおける圧力の検出が終了していない場合(ステップS9:NO)、CPU100aは、処理をステップS8へ戻す。投口センサ23aにおける圧力の検出が終了した場合(ステップS9:YES)、CPU100aは、タイマによる経時を終了し(ステップS10)、計測時間をEEPROM100dに記憶する(ステップS11)。
【0061】
そしてCPU100aは流量を算出する(ステップS12)。このときCPU100aは、EEPROM100dにアクセスし、投入部8に投入される穀粒量を示す定数を参照する。そしてステップS11にて記憶した計測時間から前述の所定時間を減算し、減算した時間で前記定数を除算して流量を算出する。
【0062】
次にCPU100aは、ステップS8にて記憶した圧力値の移動平均を算出する(ステップS13)。そしてCPU100aは、圧力値の移動平均と流量とを対応付けて記憶する(ステップS14)。
【0063】
次にCPU100aは、穀粒の投入部8への投入を促すことを表示する信号を表示部83に出力する(ステップS15)。そしてCPU100aは、操作スイッチ82から穀粒の投入が完了したことを示す信号を受信するまで待機する(ステップS16:NO)。
【0064】
次にCPU100aは、低圧力で流量を計測することを表示する信号を表示部83に出力する(ステップS17)。CPU100aは、電磁弁8aに半開信号を出力する(ステップS18)。このとき投入部8から少量の穀粒が一番スクリューコンベア23へ連続的に投入される。
【0065】
次にCPU100aは、投口センサ23aにて所定の圧力が検出されるまで待機する(ステップS19:NO)。投口センサ23aにて所定の圧力が検出された場合、CPU100aは、内蔵するタイマにて経時を開始する(ステップS20)。そしてCPU100aは、検出した圧力値をEEPROM100dに記憶する(ステップS21)。次にCPU100aは、投口センサ23aにおける圧力の検出が終了したか否か判定する(ステップS22)。
【0066】
投口センサ23aにおける圧力の検出が終了していない場合(ステップS22:NO)、CPU100aは、処理をステップS21へ戻す。投口センサ23aにおける圧力の検出が終了した場合(ステップS22:YES)、CPU100aは、タイマによる経時を終了し(ステップS23)、計測時間をEEPROM100dに記憶する(ステップS24)。
【0067】
そしてCPU100aは流量を算出する(ステップS25)。このときCPU100aは、EEPROM100dにアクセスし、投入部8に投入される穀粒量を示す定数を参照する。そしてステップS24にて記憶した計測時間から前述の所定時間を減算し、減算した時間で前記定数を除算して流量を算出する。
【0068】
次にCPU100aは、ステップS8にて記憶した圧力値の移動平均を算出する(ステップS26)。そしてCPU100aは、圧力値の移動平均と流量とを対応付けて記憶する(ステップS27)。
【0069】
次にCPU100aは、EEPROM100dにアクセスし、ステップS14及びステップS27にて記憶した圧力値の移動平均及び流量の二つの組合せ、すなわち、投入部8から多量の穀粒を一番スクリューコンベア23へ投入した場合の圧力値の移動平均及び流量の組合せと、投入部8から少量の穀粒を一番スクリューコンベア23へ投入した場合の圧力値の移動平均及び流量の組合せとを参照する(ステップS28)。
【0070】
そしてCPU100aは、EEPROM100dにアクセスして、仮関数を参照し(ステップS29)、圧力値の移動平均及び流量の二つの組合せを、仮関数(Q=F(d、A、α))にそれぞれ適用し、実関数を導出する(ステップS30)。具体的には、各組合せについて、圧力値の移動平均をdに適用し、流量をQに適用して、未知係数A及びαに係る関数を複数導出し、未知係数A及びαに割り当てるべき定数を求める。そして求めた定数を仮関数に設定して実関数を導出する。
【0071】
CPU100aは、導出した実関数をEEPROM100dに設定し(ステップS31)、実関数を設定した旨を表示する信号を表示部83に出力する(ステップS32)。
【0072】
実関数を設定した後に、コンバインが刈取作業を行った場合、CPU100aは、投口センサ23aにて検出された検出値を、設定した実関数に適用し、流量を求める。
【0073】
コンバインの刈取作業によって、穀粒タンク4に穀粒が貯留し、押圧式スイッチ4cが貯留した穀粒に押圧された場合、すなわち押圧式スイッチ4cがオンになった場合に、CPU100aは警報処理を実行する。図9は、CPU100aによる警報処理を説明するフローチャートである。なお警報処理は、割込処理として実行される。
【0074】
CPU100aは、押圧式スイッチ4cから信号を取り込み、押圧式スイッチ4cがオンするまで待機する(ステップS41:NO)。押圧式スイッチ4cがオンである場合(ステップS41:YES)、警告ランプ84に点灯信号を出力する(ステップS42)。そしてCPU100aは、タイマにて経時を行い、所定時間が経過するまで待機する(ステップS43:NO)。所定時間経過後、CPU100aは、刈取スイッチ80及び脱穀スイッチ85から信号を取り込み、脱穀クラッチ44が切断されているか否かを判定する(ステップS44)。刈取スイッチ80及び脱穀スイッチ85からオフ信号が入力されている場合は、脱穀クラッチ44は切断されており、刈取スイッチ80又は脱穀スイッチ85からオン信号が入力されている場合は、脱穀クラッチ44は継合している。
【0075】
脱穀クラッチ44が切断されている場合(ステップS44:YES)、すなわち刈取スイッチ80及び脱穀スイッチ85がオフである場合、CPU100aは処理を終了する。この場合、ユーザは警告ランプ84の点灯によって、穀粒タンク4が満杯であることに気付き、刈取スイッチ80及び脱穀スイッチ85をオフ操作したものと考えられる。
【0076】
脱穀クラッチ44が継合している場合(ステップS44:NO)、CPU100aは、脱穀クラッチ44及び刈取クラッチ46に切断信号を出力する(ステップS45)。なおステップS45を実行する前に、脱穀クラッチ44及び刈取クラッチ46を強制的に切断することを表示させる信号を表示部83に出力してもよい。なおステップS42において、押圧式スイッチ4cがオンである場合に警告ランプ84を点灯させているが、これに限定されない。例えばブザーを設けて、該ブザーから警報音を発するようにしてもよいし、表示部83に貯留タンク4が満杯である旨を表示させてもよい。
【0077】
実施の形態に係るコンバインにあっては、投口センサ23aの検出結果及び演算して求めた穀粒量に基づいて未知係数A及びαを求めて、実関数を導出するので、投口センサ23aの穀粒タンク4への取付位置並びに取付姿勢の差異、及び刈取る品種などの諸条件に応じた適切な実関数を穀粒量の検出に使用することができる。
【0078】
穀粒の流量が低い場合と、穀粒の流量が高い場合とでは、穀粒が当接する投口センサ23aの位置などの物理的な状態が異なり、またセンサの取付角度もコンバイン毎に異なるため、実際の流量と投口センサ23aによる検出値とを示す関数(検量線)は線形にならないことが多い。そのため初期状態において設定する関数は仮関数とし、その後に実関数設定処理を行って実関数を設定する(すなわち線形の検量線を補正する)ことによって、流量の検出精度を向上させることができる。
【0079】
実施の形態に係るコンバインにあっては、投口センサ23aによる高圧力及び低圧力を示す検出結果に基づいて、複数の未知係数A及びαに設定すべき定数を求めるので、諸条件に適切に対応した精度の高い実関数を導出することができる。
【0080】
実施の形態に係るコンバインにあっては、穀粒タンク4に所定量の穀粒が貯留した場合、例えば満杯になった場合に、ユーザにその旨報知する。そのためユーザは警告の報知後、直ちに刈取を終了することができる。
【0081】
実施の形態に係るコンバインにあっては、穀粒タンク4に所定量の穀粒が貯留した場合、例えば満杯になった場合に、クラッチを切断し、刈取を強制的に終了させる。そのため穀粒タンク4への過剰な貯留を防止し、コンバインの破損を防止することができる。
【0082】
なお実施の形態に係るコンバインは、二つの未知係数A、αを求めるために、電磁弁8aを全開にした場合での流量と、半開にした場合での流量とを演算しているが、三つ以上の未知係数を求める場合には、電磁弁8aを調整して、三つ以上の異なる開度でそれぞれの流量を演算すればよい。
【0083】
以上説明した実施の形態は本発明の例示であり、本発明は特許請求の範囲の記載に基づいて定められる範囲内において種々変更した形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0084】
2 脱穀装置
11 扱胴
23 一番スクリューコンベア(搬送手段)
23a 投口センサ(圧力検出手段)
4 穀粒タンク(貯留部)
4c 押圧式スイッチ(貯留量検出手段)
8 投入部
8a 電磁弁
40 エンジン(駆動源)
44 脱穀クラッチ(クラッチ)
100 制御部
100a CPU
100b ROM
100c RAM
100d EEPROM
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収した穀粒の量を精度良く検出することができるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場での収穫作業を行う場合には、穀稈の刈取り及び脱穀並びに穀粒の回収を行うコンバインを使用することが多い。コンバインは、クローラの走行中に刈刃にて穀稈を刈取り、刈取った穀稈を扱胴へ搬送して脱穀する。そして扱胴の下方に配置してあるチャフシーブにて、穀稈から分離した稈及び穀粒の選別を行い、選別された穀粒をチャフシーブから漏下させて、スクリューコンベアを介して穀粒タンクに回収する。
【0003】
スクリューコンベアの先端部には、穀粒を穀粒タンクに投げ入れるための羽根板が取り付けてあり、該羽根板によって投げ入れられた穀粒量を検出する穀粒量検出センサが穀粒タンクに設けてある。穀粒量検出センサは圧電素子を備えており、該圧電素子によって検出された圧力を、圧力及び穀粒量の関係を示す関数に適用して穀粒量を求めている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−24381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧力及び穀粒量の関係を示す関数に使用されている係数は一定である。しかし穀粒量検出センサをユーザが取り付けた場合には、前記関数が前提とした位置及び姿勢で穀粒量検出センサが取り付けられていないことがあり、正確な穀粒量を検出するためには、前記係数を、穀粒量検出センサの穀粒タンクへの取付位置及び取付姿勢に応じて変更する必要がある。また刈取る品種に応じて前記係数を変更する必要がある。そのため前記係数が一定である場合には、穀粒タンクに貯留する穀粒量を正確に検出することができない場合がある。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、圧力検出手段の検出結果及び穀粒量の関係を示す関数に、圧力検出手段の取付位置及び取付姿勢、並びに刈取る品種に応じた適切な係数を使用し、貯留部に貯留する穀粒量を正確に検出することができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係るコンバインは、刈取られた穀稈を脱穀する脱穀装置と、該脱穀装置にて脱穀された穀粒を貯留する貯留部と、前記脱穀装置から前記貯留部へ穀粒を搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送された穀粒による圧力を検出する圧力検出手段とを備えるコンバインにおいて、未知係数を含み、前記圧力検出手段の検出結果及び前記搬送手段にて搬送される単位時間あたりの穀粒量の関係を示す仮関数を記憶してある手段と、前記搬送手段にて搬送される単位時間あたりの穀粒量を演算する穀粒量演算手段と、前記圧力検出手段の検出結果及び前記穀粒量演算手段の演算結果に基づいて、前記未知係数に設定されるべき値を演算する係数演算手段と、該係数演算手段にて求めた値を前記仮関数に適用して、前記圧力検出手段の検出結果及び前記搬送手段にて搬送される単位時間あたりの穀粒量の関係を示す実関数を導出する手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、圧力検出手段の検出結果及び演算して求めた穀粒量に基づいて未知係数を求めて、実関数を導出し、圧力検出手段の貯留部への取付位置及び取付姿勢、並びに刈取る品種などの諸条件に応じた適切な実関数を穀粒量の検出に使用する。
【0009】
第2発明に係るコンバインは、前記仮関数は未知係数を二つ以上含み、前記係数演算手段は、前記圧力検出手段から少なくとも二つの異なる検出結果を取り込むようにしてあり、前記圧力検出手段から取り込んだ少なくとも二つの異なる検出結果に基づいて、前記未知係数に設定されるべき値を求めるようにしてあることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、圧力検出手段による高圧力及び低圧力を示す検出結果に基づいて、複数の未知係数を求め、諸条件に適切に対応した精度の高い実関数を導出する。
【0011】
第3発明に係るコンバインは、前記貯留部に貯留した穀粒量を検出する貯留量検出手段と、該貯留量検出手段が所定量の穀粒量を検出したことを出力する手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、貯留部に所定量の穀粒が貯留した場合、例えば満杯になった場合に、ユーザにその旨報知し、刈取の終了を促す。
【0013】
第4発明に係るコンバインは、前記脱穀装置に動力を供給する駆動源と、該駆動源から前記脱穀装置への動力の伝達を継断するクラッチと、前記貯留部に貯留した穀粒量を検出する貯留量検出手段と、該貯留量検出手段が所定量の穀粒量を検出した場合に、前記クラッチを切断する手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、貯留部に所定量の穀粒が貯留した場合、例えば満杯になった場合に、クラッチを切断し、刈取を強制的に終了させる。
【発明の効果】
【0015】
第1発明に係るコンバインにあっては、圧力検出手段の検出結果及び演算して求めた穀粒量に基づいて未知係数を求めて、実関数を導出するので、圧力検出手段の貯留部への取付位置並びに取付姿勢の差異、及び刈取る品種などの諸条件に応じた適切な実関数を穀粒量の検出に使用することができる。
【0016】
第2発明に係るコンバインにあっては、圧力検出手段による高圧力及び低圧力を示す検出結果に基づいて、複数の未知係数を求めるので、諸条件に適切に対応した精度の高い実関数を導出することができる。
【0017】
第3発明に係るコンバインにあっては、貯留部に所定量の穀粒が貯留した場合、例えば満杯になった場合に、ユーザにその旨報知する。そのためユーザは警告の報知後、直ちに刈取を終了することができる。
【0018】
第4発明に係るコンバインにあっては、貯留部に所定量の穀粒が貯留した場合、例えば満杯になった場合に、クラッチを切断し、刈取を強制的に終了させる。そのため貯留部への過剰な貯留を防止し、コンバインの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係るコンバインの外観斜視図である。
【図2】脱穀装置の内部構成を略示する側面断面図である。
【図3】穀粒タンクを略示する平面断面図である。
【図4】エンジンの駆動力の伝達経路を略示する伝動機構図である。
【図5】制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】制御部による実関数設定処理を説明するフローチャートである。
【図7】制御部による実関数設定処理を説明するフローチャートである。
【図8】制御部による実関数設定処理を説明するフローチャートである。
【図9】CPUによる警報処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を実施の形態に係るコンバインを示す図面に基づいて詳述する。図1はコンバインの外観斜視図である。
【0021】
図において1は走行クローラであり、該走行クローラ1の上側に機体9が設けてある。該機体9の上には脱穀装置2が設けてある。該脱穀装置2の前側に、刈取り穀稈と非刈取り穀稈とを区別する分草板3a、穀稈を刈取る刈刃3b、及び穀稈を引き起こす引起し装置3cを備える刈取部3が設けてある。前記脱穀装置2の右側には穀粒を収容する穀粒タンク4を設けてあり、前記脱穀装置2の左部には穀稈を搬送する前後に長いフィードチェン5を設けてある。該フィードチェン5の上側に、穀稈を挟持する挟持部材6が設けてあり、該挟持部材6とフィードチェン5とが対向している。前記フィードチェン5の前端部付近には縦搬送装置7を配設してある。また前記穀粒タンク4には、穀粒タンク4から穀粒を排出する筒状の排出オーガ4aを取り付けてあり、穀粒タンク4の前側にはキャビン8を設けてある。
【0022】
走行クローラ1の駆動によって機体9は走行する。機体9の走行によって刈取部3に穀稈が取り込まれ、刈り取られる。刈り取られた穀稈は縦搬送装置7、フィードチェン5及び挟持部材6を介して脱穀装置2に搬送され、脱穀装置2内にて脱穀される。
【0023】
脱穀装置2の側面下部に、一定量の穀粒を投入する投入部8が設けてある。該投入部8は漏斗状に形成されている。投入部8の先端部に貫通孔が形成してある。脱穀装置2における前記貫通孔に整合する箇所に貫通孔が設けてあり、両貫通孔は連通している。投入部8の貫通孔の内側には、電磁弁8aが設けてある。電磁弁8aの開閉度合いを調節することによって、投入部8から脱穀装置2内へ投入される穀粒の量を調節することができる。
【0024】
図2は脱穀装置2の内部構成を略示する側面断面図、図3は穀粒タンク4を略示する平面断面図である。
図2に示すように、脱穀装置2の前側上部に穀稈を脱穀するための扱室10が設けてある。該扱室10内に、前後方向を軸長方向とした円筒形の扱胴11が軸架してあり、該扱胴11は軸回りに回動可能となっている。扱胴11の周面には多数の扱歯12、12、・・・12が螺旋状に並んでいる。前記扱胴11の下側に、前記扱歯12、12、・・・12と協働して稈を揉みほぐすクリンプ網15が配置してある。前記扱胴11は後述するエンジン40の駆動力によって回動し、穀稈を脱穀する。
【0025】
前記扱室10の上壁に四つの送塵弁10a、10a、10a、10aが前後方向に並設してあり、該送塵弁は扱室10の後部へ送出する稈及び穀粒の量を調節する。
【0026】
扱室10の後部には処理室13が連設してある。該処理室13内に、前後方向を軸長方向とした円筒形の処理胴13bが軸架してあり、該処理胴13bは軸回りに回動可能となっている。処理胴13bの周面には多数の扱歯13c、13c、・・・、13cが螺旋状に並んでいる。前記処理胴13bの下側には扱歯13c、13c、・・・、13cと協働して稈を揉みほぐす処理網13dが配置してある。前記処理胴13bはエンジン40の駆動力によって回動し、扱室10から送出された稈及び穀粒から穀粒を分離する処理を行う。処理室13の後端部下側には排出口13eを開設してある。
【0027】
前記処理室13の上壁に四つの処理胴弁13a、13a、13a、13aが前後方向に沿って並設してあり、該処理胴弁13a、13a、13a、13aは処理室13の後部へ送出する稈及び穀粒の量を調節する。
【0028】
前記クリンプ網15の下側には、穀粒及び稈の選別を行う揺動選別装置16を設けてある。該揺動選別装置16は、穀粒及び稈を均一化すると共に比重選別を行う揺動選別盤17と、該揺動選別盤17の後側に設けてあり、穀粒及び稈の粗選別を行うチャフシーブ18と、該チャフシーブ18の後側に設けてあり、稈に混入した穀粒を落下させるためのストローラック19とを備える。該ストローラック19は図示しない複数の透孔を有している。また前記揺動選別盤17の前部には揺動アーム21が連結してある。該揺動アーム21は前後に揺動するように構成されている。この揺動アーム21の揺動によって揺動選別装置16は揺動し、稈及び穀粒の選別が行われる。
【0029】
揺動選別装置16は、前記チャフシーブ18の下側に設けてあり、穀粒及び稈の精選別を行うグレンシーブ20を更に備える。該グレンシーブ20の下方に、前方を下として傾斜した一番穀粒板22が設けてあり、該一番穀粒板22の前側に、穀粒を前記穀粒タンク4に送給する一番スクリューコンベア23が設けてある。該一番スクリューコンベア23は、一番穀粒板22を滑落した穀粒を取り込み、上方に位置する穀粒タンク4へ送給する。
【0030】
なお前述した投入部8は、一番スクリューコンベア23付近に位置しており、投入部8から電磁弁8aを介して投入された穀粒は、一番スクリューコンベア23によって搬送される。
【0031】
図3に示すように、一番スクリューコンベア23の上端部の軸部分23cには、矩形の羽根板23bが設けてある。該羽根板23bは、軸部分23cを中心として放射方向に突出している。該羽根板23bは、一番スクリューコンベア23に同期して回転する。
【0032】
穀粒タンク4に投口4bが設けてあり、羽根板23cは投口4bに配置されている。穀粒タンク4の上部には、押圧式スイッチ4dが設けてある。穀粒タンク4が満杯になった場合に、押圧式スイッチ4cは貯留した穀粒に押圧され、後述する制御部100に信号を出力する。投口4bに対向する位置に、投口4bから穀粒タンク4へ投入される単位時間あたりの穀粒量を検出する投口センサ23aが設けてある。該投口センサ23aは、圧電素子を備えている。
【0033】
前記グレンシーブ20から一番穀粒板22に落下した穀粒は前記一番スクリューコンベア23に向けて滑落する。滑落した穀粒は一番スクリューコンベア23よって搬送され、投口4bから、羽根板23bの回転によって間欠的に穀粒タンク4へ投入される。図3の破線矢印によって示すように、投入された穀粒が投口センサ23aに当接することによって圧電素子から電圧が出力され、出力された電圧に基づいて投口量が検出される。
【0034】
前記一番穀粒板22の後部に、後方を下として傾斜した傾斜板24が連設してある。該傾斜板24の後端部に、前方を下として傾斜した二番穀粒板25が連設してある。該二番穀粒板25と前記傾斜板24との連結部分の上側に稈及び穀粒を搬送する二番スクリューコンベア26が設けてある。
前記ストローラック19の透孔から傾斜板24又は二番穀粒板25に落下した落下物は前記二番スクリューコンベア26に向けて滑落する。滑落した落下物は、二番スクリューコンベア26によって前記扱胴11の左側に設けてある処理ロータ14に搬送され、処理ロータ14にて脱穀処理される。
【0035】
前記一番スクリューコンベア23よりも前方であって、前記揺動選別盤17よりも下方に、起風動作を行う唐箕27が設けてある。記唐箕27の起風動作によって発生した風は、後方へ進行する。唐箕27と前記一番スクリューコンベア23との間に、風を上向きに送り出す整流板28を配設してある。
【0036】
前記二番穀粒板25の後端部に通路板36が連ねてある。該通路板36の上方には下部吸引カバー30が設けてある。該下部吸引カバー30及び通路板36の間は塵埃が排出される排気通路37になっている。
【0037】
下部吸引カバー30の上方に上部吸引カバー31が設けてある。該上部吸引カバー31及び下部吸引カバー30の間に、稈を吸引排出する軸流ファン32を配設してある。該軸流ファン32の後方には排塵口33を設けてある。前記唐箕27の動作によって発生した気流は、前記整流板28、28によって整流された後に、前記揺動選別装置16を通過して、前記排塵口33及び排気通路37に至る。
【0038】
排塵口33及び排気通路37には、圧電素子を備える排出量センサ34、34がそれぞれ配してある。排塵口33及び排気通路37から、穀粒が排出され、排出量センサ34、34に当接する。このとき排出量センサ34、34の圧電素子から電圧信号が出力され、排塵口33及び排気通路37から排出される単位時間あたりの穀粒量(ロス量)が検出される。なお排出量センサ34、34は圧電素子を有するセンサに限るものではなく、発光素子及び受光素子を有する光センサを排出量センサ34として使用し、発光素子及び受光素子の間を通過する穀粒量を検出しても良い。また発信器及び受信機を有する超音波センサを排出量センサ34として使用し、発信器及び受信機の間を通過する穀粒量を検出しても良い。
【0039】
前記上部吸引カバー31の上側であって、前記処理室13の下方に、前方を下として傾斜した流下樋35が設けてある。前記処理室13の排出口13eから排出された排出物は流下樋35を滑落して前記ストローラック19に落下する。
【0040】
前述した走行クローラ1の駆動、刈取部3の刈取動作、扱胴11の回動、処理胴13bの回動、揺動選別装置16の揺動及び一番スクリューコンベア23の回転動作などはエンジン40の駆動力によって行われる。図4はエンジン40の駆動力の伝達経路を略示する伝動機構図である。
【0041】
図4に示すように、エンジン40はHST(Hydro Static Transmission)41を介して走行ミッション42に連結してある。HST41は油圧ポンプ(図示せず)と、該油圧ポンプに供給される作動油の流量及び油圧ポンプの圧力を調整する機構(図示せず)と、該機構を制御する変速回路41aとを有している。
【0042】
走行ミッション42は、前記走行クローラ1に駆動力を伝達するギヤ(図示せず)を有している。走行ミッション42には、ホール素子を有する車速センサ43を設けてある。該車速センサ43は前記ギヤの回転数を検出して、ギヤの回転数に対応する機体の車速を示す信号を出力するようにしてある。
【0043】
前記エンジン40は電磁式の脱穀クラッチ44を介して、前記扱胴11及び処理胴13bに連結してあり、また伝動機構50に連結してある。伝動機構50は前記一番スクリューコンベア23に連結してある。伝動機構50と一番スクリューコンベア23とを連結する軸の近傍にピックアップセンサ51が設けてある。該ピックアップセンサ51は、ホール素子などを有する磁気センサであり、前記軸が有する磁性体の通過によって一番スクリューコンベア23の回転数を検出する。
【0044】
またエンジン40は脱穀クラッチ44を介して偏心クランク45に連結してある。該偏心クランク45は前記揺動アーム21に連結してある。偏心クランク45の駆動により前記揺動選別装置16が揺動する。また前記エンジン40は脱穀クラッチ44を介して前記唐箕27に連結してある。また前記エンジン40は脱穀クラッチ44及び電磁式の刈取クラッチ46を介して前記刈取部3に連結してある。
【0045】
走行ミッション42を介してエンジン40の駆動力が走行クローラ1に伝達され、機体9が走行する。また刈取クラッチ46を介して刈取部3にエンジン40の駆動力が伝達し、刈取部3にて穀稈が刈取られる。
【0046】
脱穀クラッチ44を介して前記扱胴11にエンジン40の駆動力が伝達し、扱胴11にて穀稈は脱穀される。また脱穀クラッチ44を介して処理胴13bにエンジン40の駆動力が伝達し、扱胴11にて脱穀された稈及び穀粒から穀粒が分離される。
【0047】
また前記揺動選別装置16には、脱穀クラッチ44及び偏心クランク45を介してエンジン40の駆動力が伝達し、扱胴11から漏下した稈及び穀粒並びに処理室13の排出口13eから排出された稈及び穀粒の選別が行われる。また脱穀クラッチ44を介して前記唐箕27にエンジン40の駆動力が伝達し、揺動選別装置16にて選別された稈及び穀粒を唐箕27による起風作用によって排塵口33及び排気通路37から排出する。
【0048】
前記投口センサ23a、エンジン回転数センサ40a及びピックアップセンサ51からの出力に基づいて、穀粒タンク4に貯留する穀粒量を演算する制御部100がコンバインに搭載されている。図5は制御部の構成を示すブロック図である。
【0049】
制御部100は内部バス100gにより相互に接続されたCPU(Central Processing Unit)100a、ROM(Read Only Memory)100b、RAM(Random Access Memory)100c及びEEPROM(Electrically Erasable and Progrmmable Read Only Memory)100dを備えている。CPU100aはROM100bに記憶された制御プログラムをRAM100cに読み込み、該制御プログラムに従って、送塵弁10a及び処理胴弁13aの動作制御など必要な制御を実行する。なおCPU100aはタイマを内蔵している。
【0050】
EEPROM100dには、投入部8に投入される穀粒量を示す定数が設定してある。またEEPROM100dには、投口センサ23aの検出値に係る変数d及び未知係数A、αを含む仮関数が設定してある。例えば、Q=F(d、A、α)が設定してある。Qは一番スクリューコンベア23によって搬送される単位時間あたりの穀粒量(以下流量という)を示す変数である。なお上述した仮関数は例示であって、これに限定されない。
【0051】
制御部100は出力インタフェース100fを介して、刈取クラッチ46及び脱穀クラッチ44に継断信号を出力する。また制御部100は出力インタフェース100fを介して、表示部83に所定の映像を表示することを示す表示信号を出力する。また制御部100は出力インタフェース100fを介して、警告ランプ84に点灯又は消灯信号を出力する。また制御部100は、出力インタフェース100fを介して、電磁弁8aに開閉度合いを示す信号を出力する。
【0052】
刈取スイッチ80、操作スイッチ82、投口センサ23a、押圧式スイッチ4c、ピックアップセンサ51及びエンジン回転数センサ40aの各出力信号は入力インタフェース100eを介して制御部100に入力されている。
【0053】
なお前記キャビン8内には図示しないダッシュボードパネルが設けてあり、該ダッシュボードパネルには、刈取スイッチ80、複数の操作スイッチ82及び脱穀スイッチ85が設けてあり、また液晶パネルを有する表示部83が設けてある。また前記キャビン8内には、警告ランプ84が設けてある。なお刈取スイッチ80のオンオフに対応して、刈取クラッチ46及び脱穀クラッチ44が継断される。また脱穀スイッチ85のオンオフに対応して、脱穀クラッチ44が継断される。
【0054】
制御部100は、投口センサ23aによって検出された検出値及び後述する演算処理によって求めた流量Qを仮関数に適用して、未知係数A及びαを求め、実関数をEEPROM100dに設定する。図6〜図8は制御部100による実関数設定処理を説明するフローチャートである。なおエンジン40は略一定の回転数で駆動しており、一番スクリューコンベア23は略一定の回転数で駆動しているものとする。またHST41において、走行クローラ1への駆動力の伝達は遮断されているものとする。
【0055】
制御部100のCPU100aは、操作スイッチ82から実関数を設定する処理を開始することを示す信号を受信するまで待機する(ステップS1:NO)。操作スイッチ82から較正開始を示す信号を受信した場合(ステップS1:YES)、CPU100aは、穀粒の投入部8への投入を促すことを表示する信号を表示部83に出力する(ステップS2)。このときユーザは、投入部8へ穀粒を投入することができる。なお投入部8へは一定量の穀粒を投入することができる。
【0056】
そしてCPU100aは、操作スイッチ82から穀粒の投入が完了したことを示す信号を受信するまで待機する(ステップS3:NO)。ユーザは、操作スイッチ82を操作し、穀粒の投入が完了したことを示す信号を送信することができる。
【0057】
次にCPU100aは、高圧力で流量を計測することを表示する信号を表示部83に出力する(ステップS4)。そしてCPU100aは、電磁弁8aに全開信号を出力する(ステップS5)。このとき投入部8から多量の穀粒が一番スクリューコンベア23へ連続的に投入される。投入された穀粒は、一番スクリューコンベア23にて搬送され、穀粒タンク4へ投入される。
【0058】
次にCPU100aは、投口センサ23aにて所定の圧力が検出されるまで待機する(ステップS6:NO)。ここで所定の圧力とは、穀粒が当接することによって発生する圧力であり、例えば、予め設定された閾値(外乱及び投口センサ23aの特性などによって発生すると推測される値)よりも高い圧力が該当する。
【0059】
投口センサ23aにて所定の圧力が検出された場合、CPU100aは、内蔵するタイマにて経時を開始する(ステップS7)。そしてCPU100aは、検出した圧力を示す値(圧力値)をEEPROM100dに記憶する(ステップS8)。次にCPU100aは、投口センサ23aにおける圧力の検出が終了したか否か判定する(ステップS9)。圧力の検出が終了したか否かの判定は、予め設定された閾値以下の値が所定時間検出されたか否かを判定することで行う。予め設定された閾値以下の値が所定時間検出された場合に、圧力の検出が終了したと判定する。所定時間はタイマにて計時する。なお予め設定された閾値以下の値が所定時間検出されたか否かの判定は、圧力の検出が終了したか否かを判定するための一例であり、圧力の検出が終了したか否かの判定は、これに限定されるものではない。
【0060】
投口センサ23aにおける圧力の検出が終了していない場合(ステップS9:NO)、CPU100aは、処理をステップS8へ戻す。投口センサ23aにおける圧力の検出が終了した場合(ステップS9:YES)、CPU100aは、タイマによる経時を終了し(ステップS10)、計測時間をEEPROM100dに記憶する(ステップS11)。
【0061】
そしてCPU100aは流量を算出する(ステップS12)。このときCPU100aは、EEPROM100dにアクセスし、投入部8に投入される穀粒量を示す定数を参照する。そしてステップS11にて記憶した計測時間から前述の所定時間を減算し、減算した時間で前記定数を除算して流量を算出する。
【0062】
次にCPU100aは、ステップS8にて記憶した圧力値の移動平均を算出する(ステップS13)。そしてCPU100aは、圧力値の移動平均と流量とを対応付けて記憶する(ステップS14)。
【0063】
次にCPU100aは、穀粒の投入部8への投入を促すことを表示する信号を表示部83に出力する(ステップS15)。そしてCPU100aは、操作スイッチ82から穀粒の投入が完了したことを示す信号を受信するまで待機する(ステップS16:NO)。
【0064】
次にCPU100aは、低圧力で流量を計測することを表示する信号を表示部83に出力する(ステップS17)。CPU100aは、電磁弁8aに半開信号を出力する(ステップS18)。このとき投入部8から少量の穀粒が一番スクリューコンベア23へ連続的に投入される。
【0065】
次にCPU100aは、投口センサ23aにて所定の圧力が検出されるまで待機する(ステップS19:NO)。投口センサ23aにて所定の圧力が検出された場合、CPU100aは、内蔵するタイマにて経時を開始する(ステップS20)。そしてCPU100aは、検出した圧力値をEEPROM100dに記憶する(ステップS21)。次にCPU100aは、投口センサ23aにおける圧力の検出が終了したか否か判定する(ステップS22)。
【0066】
投口センサ23aにおける圧力の検出が終了していない場合(ステップS22:NO)、CPU100aは、処理をステップS21へ戻す。投口センサ23aにおける圧力の検出が終了した場合(ステップS22:YES)、CPU100aは、タイマによる経時を終了し(ステップS23)、計測時間をEEPROM100dに記憶する(ステップS24)。
【0067】
そしてCPU100aは流量を算出する(ステップS25)。このときCPU100aは、EEPROM100dにアクセスし、投入部8に投入される穀粒量を示す定数を参照する。そしてステップS24にて記憶した計測時間から前述の所定時間を減算し、減算した時間で前記定数を除算して流量を算出する。
【0068】
次にCPU100aは、ステップS8にて記憶した圧力値の移動平均を算出する(ステップS26)。そしてCPU100aは、圧力値の移動平均と流量とを対応付けて記憶する(ステップS27)。
【0069】
次にCPU100aは、EEPROM100dにアクセスし、ステップS14及びステップS27にて記憶した圧力値の移動平均及び流量の二つの組合せ、すなわち、投入部8から多量の穀粒を一番スクリューコンベア23へ投入した場合の圧力値の移動平均及び流量の組合せと、投入部8から少量の穀粒を一番スクリューコンベア23へ投入した場合の圧力値の移動平均及び流量の組合せとを参照する(ステップS28)。
【0070】
そしてCPU100aは、EEPROM100dにアクセスして、仮関数を参照し(ステップS29)、圧力値の移動平均及び流量の二つの組合せを、仮関数(Q=F(d、A、α))にそれぞれ適用し、実関数を導出する(ステップS30)。具体的には、各組合せについて、圧力値の移動平均をdに適用し、流量をQに適用して、未知係数A及びαに係る関数を複数導出し、未知係数A及びαに割り当てるべき定数を求める。そして求めた定数を仮関数に設定して実関数を導出する。
【0071】
CPU100aは、導出した実関数をEEPROM100dに設定し(ステップS31)、実関数を設定した旨を表示する信号を表示部83に出力する(ステップS32)。
【0072】
実関数を設定した後に、コンバインが刈取作業を行った場合、CPU100aは、投口センサ23aにて検出された検出値を、設定した実関数に適用し、流量を求める。
【0073】
コンバインの刈取作業によって、穀粒タンク4に穀粒が貯留し、押圧式スイッチ4cが貯留した穀粒に押圧された場合、すなわち押圧式スイッチ4cがオンになった場合に、CPU100aは警報処理を実行する。図9は、CPU100aによる警報処理を説明するフローチャートである。なお警報処理は、割込処理として実行される。
【0074】
CPU100aは、押圧式スイッチ4cから信号を取り込み、押圧式スイッチ4cがオンするまで待機する(ステップS41:NO)。押圧式スイッチ4cがオンである場合(ステップS41:YES)、警告ランプ84に点灯信号を出力する(ステップS42)。そしてCPU100aは、タイマにて経時を行い、所定時間が経過するまで待機する(ステップS43:NO)。所定時間経過後、CPU100aは、刈取スイッチ80及び脱穀スイッチ85から信号を取り込み、脱穀クラッチ44が切断されているか否かを判定する(ステップS44)。刈取スイッチ80及び脱穀スイッチ85からオフ信号が入力されている場合は、脱穀クラッチ44は切断されており、刈取スイッチ80又は脱穀スイッチ85からオン信号が入力されている場合は、脱穀クラッチ44は継合している。
【0075】
脱穀クラッチ44が切断されている場合(ステップS44:YES)、すなわち刈取スイッチ80及び脱穀スイッチ85がオフである場合、CPU100aは処理を終了する。この場合、ユーザは警告ランプ84の点灯によって、穀粒タンク4が満杯であることに気付き、刈取スイッチ80及び脱穀スイッチ85をオフ操作したものと考えられる。
【0076】
脱穀クラッチ44が継合している場合(ステップS44:NO)、CPU100aは、脱穀クラッチ44及び刈取クラッチ46に切断信号を出力する(ステップS45)。なおステップS45を実行する前に、脱穀クラッチ44及び刈取クラッチ46を強制的に切断することを表示させる信号を表示部83に出力してもよい。なおステップS42において、押圧式スイッチ4cがオンである場合に警告ランプ84を点灯させているが、これに限定されない。例えばブザーを設けて、該ブザーから警報音を発するようにしてもよいし、表示部83に貯留タンク4が満杯である旨を表示させてもよい。
【0077】
実施の形態に係るコンバインにあっては、投口センサ23aの検出結果及び演算して求めた穀粒量に基づいて未知係数A及びαを求めて、実関数を導出するので、投口センサ23aの穀粒タンク4への取付位置並びに取付姿勢の差異、及び刈取る品種などの諸条件に応じた適切な実関数を穀粒量の検出に使用することができる。
【0078】
穀粒の流量が低い場合と、穀粒の流量が高い場合とでは、穀粒が当接する投口センサ23aの位置などの物理的な状態が異なり、またセンサの取付角度もコンバイン毎に異なるため、実際の流量と投口センサ23aによる検出値とを示す関数(検量線)は線形にならないことが多い。そのため初期状態において設定する関数は仮関数とし、その後に実関数設定処理を行って実関数を設定する(すなわち線形の検量線を補正する)ことによって、流量の検出精度を向上させることができる。
【0079】
実施の形態に係るコンバインにあっては、投口センサ23aによる高圧力及び低圧力を示す検出結果に基づいて、複数の未知係数A及びαに設定すべき定数を求めるので、諸条件に適切に対応した精度の高い実関数を導出することができる。
【0080】
実施の形態に係るコンバインにあっては、穀粒タンク4に所定量の穀粒が貯留した場合、例えば満杯になった場合に、ユーザにその旨報知する。そのためユーザは警告の報知後、直ちに刈取を終了することができる。
【0081】
実施の形態に係るコンバインにあっては、穀粒タンク4に所定量の穀粒が貯留した場合、例えば満杯になった場合に、クラッチを切断し、刈取を強制的に終了させる。そのため穀粒タンク4への過剰な貯留を防止し、コンバインの破損を防止することができる。
【0082】
なお実施の形態に係るコンバインは、二つの未知係数A、αを求めるために、電磁弁8aを全開にした場合での流量と、半開にした場合での流量とを演算しているが、三つ以上の未知係数を求める場合には、電磁弁8aを調整して、三つ以上の異なる開度でそれぞれの流量を演算すればよい。
【0083】
以上説明した実施の形態は本発明の例示であり、本発明は特許請求の範囲の記載に基づいて定められる範囲内において種々変更した形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0084】
2 脱穀装置
11 扱胴
23 一番スクリューコンベア(搬送手段)
23a 投口センサ(圧力検出手段)
4 穀粒タンク(貯留部)
4c 押圧式スイッチ(貯留量検出手段)
8 投入部
8a 電磁弁
40 エンジン(駆動源)
44 脱穀クラッチ(クラッチ)
100 制御部
100a CPU
100b ROM
100c RAM
100d EEPROM
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取られた穀稈を脱穀する脱穀装置と、該脱穀装置にて脱穀された穀粒を貯留する貯留部と、前記脱穀装置から前記貯留部へ穀粒を搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送された穀粒による圧力を検出する圧力検出手段とを備えるコンバインにおいて、
未知係数を含み、前記圧力検出手段の検出結果及び前記搬送手段にて搬送される単位時間あたりの穀粒量の関係を示す仮関数を記憶してある手段と、
前記搬送手段にて搬送される単位時間あたりの穀粒量を演算する穀粒量演算手段と、
前記圧力検出手段の検出結果及び前記穀粒量演算手段の演算結果に基づいて、前記未知係数に設定されるべき値を演算する係数演算手段と、
該係数演算手段にて求めた値を前記仮関数に適用して、前記圧力検出手段の検出結果及び前記搬送手段にて搬送される単位時間あたりの穀粒量の関係を示す実関数を導出する手段と
を備えることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記仮関数は未知係数を二つ以上含み、
前記係数演算手段は、
前記圧力検出手段から少なくとも二つの異なる検出結果を取り込むようにしてあり、
前記圧力検出手段から取り込んだ少なくとも二つの異なる検出結果に基づいて、前記未知係数に設定されるべき値を求めるようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記貯留部に貯留した穀粒量を検出する貯留量検出手段と、
該貯留量検出手段が所定量の穀粒量を検出したことを出力する手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記脱穀装置に動力を供給する駆動源と、
該駆動源から前記脱穀装置への動力の伝達を継断するクラッチと、
前記貯留部に貯留した穀粒量を検出する貯留量検出手段と、
該貯留量検出手段が所定量の穀粒量を検出した場合に、前記クラッチを切断する手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項1】
刈取られた穀稈を脱穀する脱穀装置と、該脱穀装置にて脱穀された穀粒を貯留する貯留部と、前記脱穀装置から前記貯留部へ穀粒を搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送された穀粒による圧力を検出する圧力検出手段とを備えるコンバインにおいて、
未知係数を含み、前記圧力検出手段の検出結果及び前記搬送手段にて搬送される単位時間あたりの穀粒量の関係を示す仮関数を記憶してある手段と、
前記搬送手段にて搬送される単位時間あたりの穀粒量を演算する穀粒量演算手段と、
前記圧力検出手段の検出結果及び前記穀粒量演算手段の演算結果に基づいて、前記未知係数に設定されるべき値を演算する係数演算手段と、
該係数演算手段にて求めた値を前記仮関数に適用して、前記圧力検出手段の検出結果及び前記搬送手段にて搬送される単位時間あたりの穀粒量の関係を示す実関数を導出する手段と
を備えることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記仮関数は未知係数を二つ以上含み、
前記係数演算手段は、
前記圧力検出手段から少なくとも二つの異なる検出結果を取り込むようにしてあり、
前記圧力検出手段から取り込んだ少なくとも二つの異なる検出結果に基づいて、前記未知係数に設定されるべき値を求めるようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記貯留部に貯留した穀粒量を検出する貯留量検出手段と、
該貯留量検出手段が所定量の穀粒量を検出したことを出力する手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記脱穀装置に動力を供給する駆動源と、
該駆動源から前記脱穀装置への動力の伝達を継断するクラッチと、
前記貯留部に貯留した穀粒量を検出する貯留量検出手段と、
該貯留量検出手段が所定量の穀粒量を検出した場合に、前記クラッチを切断する手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−223960(P2011−223960A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99075(P2010−99075)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年4月5日に、農業機械学会発行の「Program ISMAB 2010 JAPAN(CD)」にて発表
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年4月5日に、農業機械学会発行の「Program ISMAB 2010 JAPAN(CD)」にて発表
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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