説明

コンバータモジュールの保護装置

【課題】低コストであると同時に故障したサブモジュールの確実な橋絡を可能にする。
【解決手段】パワー半導体回路(T1,T2,D1,D2)と、パワー半導体回路(T1,T2,D1,D2)の並列回路内におけるエネルギー蓄積器(8)とを持つサブモジュール(7)の直列回路を備え、各サブモジュール(7)にサブモジュール(7)の短絡のための短絡装置が付設されている装置(1)に関する。本発明によれば、短絡装置が真空スイッチ管(100)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体回路とパワー半導体回路に並列接続されたエネルギー蓄積器とを持つサブモジュールの直列回路を備え、各サブモジュールにサブモジュールの短絡のための短絡装置が付設されている装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直列接続された電圧中間コンバータ、特に配電および送電という枠内での高電圧直流送電用のコンバータにおいては、交流電圧の直流電圧への変換およびその逆の変換のために、ターンオフ制御可能なパワー半導体が使用される。この場合に電圧レベルは数10kVから数100kVに達する。相応に高い電圧を達成するためには、パワー半導体の耐圧が限られていることから、パワー半導体チップを備えた多数の半導体モジュールが直列接続されなければならない。パワー半導体回路の構成のために種々の半導体モジュールを相互に配線することができる。特に、いわゆるマルチレベル電力変換器の場合には、このようなパワー半導体回路が2端子を有するサブモジュールの一部であり、サブモジュールが直列に接続されている。連続運転中に、これらの半導体モジュールの1つまたはサブモジュール全体が絶縁破壊して内部短絡を形成することが起こり得る。1つだけの半導体モジュールまたは1つのサブモジュールの故障時に設備全体の故障を回避するために、故障した半導体モジュールまたはサブモジュールが橋絡される。このために短絡装置が用いられる。この短絡装置は、設備の寿命期間中において、半導体モジュールの動作電圧高さの耐圧を有し、かつ動作中に時折発生する過電圧にも耐えなければならない。短絡装置の電流容量は、サブモジュールの最大許容平均電流の能力が出せるように設計されていなければならない。これは、典型的には100Aないし1000Aである。
【0003】
従来技術から、特に高電圧直流コンバータにおいて大抵はパワー半導体が、いわゆるプレスパック構成で使用される。プレスパック構成では、半導体構成要素の内部短絡が僅かだけの熱発生をともなう低抵抗の短絡をもたらす。換言するならば、故障した半導体モジュールがブレークダウンするので、短絡装置の形での更なる保護は必要でない。
【0004】
モジュール構造様式の低コストのボンディング形パワー半導体の使用時には、半導体モジュールの内部故障がアーク発生をもたらし、このアークは、更なる損傷および火災の発生を防止するために、典型的には約1msの短い時間以内に遮断されなければならない。
【0005】
この種の装置は既に公知である(例えば、特許文献1参照)。これには、多数の相を有する交流電圧線に接続するために設けられたコンバータが記載されている。コンバータは、1つの中間の交流電圧端子と2つの外側の交流電圧端子とを有する相モジュールを持つ。中間の交流電圧端子と各外側の交流電圧端子との間に1つの相モジュールアームが延びていて、各相モジュールアームはサブモジュールの直列回路からなる。各サブモジュールは固有のコンデンサを有し、コンデンサにはパワー半導体回路が並列接続されている。パワー半導体回路はターンオフ制御可能なパワー半導体を含み、ターンオフ制御可能なパワー半導体にはそれぞれフリーホイールダイオードが逆並列接続されている。各ターンオフ制御可能なパワー半導体と、これにそれぞれ付設されたフリーホイールダイオードとが1つの半導体モジュールにまとめられている。多数の半導体モジュールが互いに接続されていて、いわゆるフルブリッジ回路を構成しているので、それぞれのサブモジュールの両端子には、コンデンサに生じる電圧、零電圧または極性反転されたコンデンサ電圧のいずれかが現われる。このようなコンバータはマルチレベルコンバータとも呼ばれる。半導体モジュールのパワー半導体は、互いに圧力接触によって接続されていない。むしろ低コストのボンディングされた半導体モジュールであるので、半導体モジュールまたはサブモジュール内の短絡は、結果として爆発ガスをともなうアーク発生をもたらす。アークから駆動電圧を取り去るために、故障したサブモジュールは短絡されて、この方法で直列回路内において橋絡される。短絡のためにサブモジュールには、半導体からなる犠牲的構成要素またはサイリスタを含む短絡装置が並列接続されている。犠牲的構成要素は故障時にブレークダウンし、破壊される。サイリスタは故障時に点弧され、短絡電流のほとんどの部分を担う。しかし、公知の装置は付加的に使用されるパワー半導体のゆえに高コストである。
【0006】
目下のところまだ未公開のドイツ特許庁経由国際特許出願第2006/000344号明細書からサブモジュールの短絡のための装置が知られているが、この装置は火工技術的機械要素である短絡装置を有する。短絡発生時に火工技術的機械要素が点火される。その場合に起爆装置が、例えば可動接触子を爆発的に加速することによって、故障したサブモジュールが橋絡される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第10323220号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、低コストであると同時に故障したサブモジュールの確実な橋絡を可能にする冒頭に述べた如き装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、この課題を、短絡装置が真空スイッチ管であることによって解決する。
【0010】
本発明によれば、従来技術のように半導体または気中断路ギャップではなくて真空スイッチ管が使用される。このような真空スイッチ管は大量生産されていて、したがって市場において低コストで入手可能である。特に市販の低電圧用真空スイッチ管は必要な電気パラメータを有し、それらのサイズが電力変換器のサブモジュールのための短絡装置として適している。
【0011】
真空断路ギャップは特に高い電気絶縁耐力を有するので、真空スイッチ管の接触子間の操作距離を非常に小さく保つことができる。これは、真空スイッチ管の断路位置から接触位置への移行のための加速力が同様に僅かですむという結果を生じさせる。
【0012】
好ましくは、真空スイッチ管の断路位置での保持および保持解除のための解除・保持ユニットが設けられている。解除・保持ユニットが真空スイッチ管の移動案内される可動接触子を断路位置に保持し、断路位置では真空スイッチ管を介する電流の流れが遮断されている。
【0013】
これに対して、この解除・保持ユニットの解除時には、真空スイッチ管がサブモジュールを橋絡する接触位置へ移行させられる。
【0014】
真空スイッチ管の断路位置において蓄勢されている投入ばねが設けられているのが好ましく、保持解除によって、真空スイッチ管の接触位置への移行のために、投入ばねのばね力が解放される。
【0015】
解除・保持ユニットが、保持力を提供する永久磁石と、保持解除のために保持力を減殺する解除手段とを有するとよい。
【0016】
解除手段が電気コイルであるとよい。電気コイルは真空スイッチ管の投入のために通電される。電気コイルは、通電によって永久磁石の磁界に反対向きの磁界を発生する。換言するならば、電気コイルの通電によって永久磁石の保持力が弱められるので、投入力に基づいて真空スイッチ管が接触位置へ移行させられる。
【0017】
これに関して適切な発展形態によれば、解除・保持ユニットが継鉄と移動案内される接極子とを有し、継鉄が永久磁石に接続されていて、接極子が断路位置において磁気回路を閉じる。継鉄、永久磁石および接極子は保持位置において磁気回路を形成する。この場合に、接極子が空隙を橋絡して継鉄または永久磁石にしっかり当接する。この位置において、永久磁石の磁界が、好ましくは軟磁性材料から作られた継鉄、ならびにこれに対して移動可能な接極子において広がる。断路位置における磁気回路の閉成によって、磁気回路が閉じられて、空隙を有する磁気回路に比べてエネルギー的に有利な状態がもたらされ、それによって接極子の磁気的なロッキングが維持されるように配慮されている。接極子は、直接的にまたは適切なレバー機構を介して真空スイッチ管の可動接触子に接続されていることが好ましい。したがって、接極子の移動が直接的に真空スイッチ管の可動接触子に伝達される。
【0018】
これに関する適切な発展形態によれば、電気コイルが磁気回路における永久磁石の磁力を弱めるように配置されている。永久磁石の磁力が弱められると、その磁力に対して反対に作用しかつ可動接触子の接触位置への移行に合わせられている力が永久磁石の磁力よりも強くなる。したがって、真空スイッチ管の投入、したがってサブモジュールの短絡が引き起こされる。
【0019】
パワー半導体回路が、フルブリッジ回路であるとよい。この場合に、例えば、IGBT、GTOまたはIGCTのようなターンオフ制御可能なパワー半導体が使用される。これらのターンオフ制御可能なパワー半導体のそれぞれには、フリーホイールダイオードが逆並列接続されている。各サブモジュールは2端子として構成されている。フルブリッジ回路の場合には、各サブモジュールの接続端子に、既に従来技術に関連して述べたように、エネルギー蓄積器に生じる電圧、零電圧、反転されたエネルギー蓄積器電圧のうちのいずれかが発生させられる。
【0020】
これとは違って、パワー半導体回路がハーフブリッジ回路であってよい。このようなハーフブリッジ回路は2つのターンオフ制御可能なパワー半導体を有し、これらのパワー半導体には再びそれぞれフリーホイールダイオードが逆並列接続されている。例えば、マルクワルト回路としても知られているハーフブリッジ回路により、各モジュールの2つの接続端子に、サブモジュールのエネルギー蓄積器に生じる電圧または零電圧が発生可能である。
【0021】
装置が、交流電圧系統を接続するための交流電圧端子を有する電力変換器を有するとよい。このような装置の可能な適用例は、いわゆるフレキシブル交流送電システム(略して、FACTS)の分野または高電圧直流送電(HVDCT)の分野にある。
【0022】
真空スイッチ管が、保持解除時に駆動装置なしに断路位置から、サブモジュールを短絡する接触位置へ移行可能であるように構成されているとよい。この有利な発展形態によれば、真空スイッチ管が、主として真空スイッチ管内部と外部大気圧との間において生じる圧力差だけに基づいて、断路位置から接触位置へ移行させられる。接触位置では真空スイッチ管を介する電流の流れが可能にされているのに対して、断路位置では真空スイッチ管を介する電流の流れが遮断されている。上述の圧力差に基づいて生じる力に加えて、一般に可動接触子に接続されているベローズの張力も生じる。市場で入手可能な真空スイッチ管では、真空スイッチ管の内部において約10-6Paの圧力が存在する。これに関する発展形態によれば、小さな補助ばねが設けられ、補助ばねによって接触子の投入のための付加的な補助力が発生させられる。
【0023】
特定のケースでは、駆動ユニットが設けられているとよい。駆動ユニットは真空スイッチ管の狙いどおりの開閉を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本発明による装置の実施例を示す回路図である。
【図2】図2はサブモジュールの直列回路を有する相モジュールアームを示す回路図である。
【図3】図3は真空スイッチ管の実施例を示す切断側面図である。
【図4】図4は解除・保持ユニットを有する図3による真空スイッチ管の側面図である。
【図5】図5は図4による解除・保持ユニットのコイルを制御するための電子制御装置の回路図である。
【図6】図6は図4による電気コイルのための電子制御装置の他の実施例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の他の適切な構成および利点は、以下における図面に基づく本発明実施例の説明の対象である。同じ作用をする構成部分には同じ参照符号が付されている。
【0026】
図1は、3つの相モジュール2a,2b,2cから構成されている本発明による装置1の実施例を示す。各相モジュール2a,2b,2cは、正の直流電圧線pならびに負の直流電圧線nに接続されているので、各相モジュール2a,2b,2cは2つの直流電圧端子pおよびnを有する。更に、各各相モジュール2a,2b,2cのために、それぞれ1つの交流電圧端子31,32,33が設けられていて、変圧器4を介して3相交流電圧系統5に接続されている。交流電圧系統5の相には相電圧U1,U2,U3が存在し、系統電流In1,In2,In3が流れる。各相モジュールの交流電圧側の相電流はI1,I2,I3にて示されている。直流電圧側電流はIdである。各交流電圧端子31,32,33と正の直流電圧端子pとの間には、相モジュールアーム6p1,6p2,6p3が構成されている。各交流電圧端子31,32,33と負の直流電圧端子nとの間には、相モジュールアーム6n1,6n2,6n3が構成されている。各相モジュールアーム6p1,6p2,6p3,6n1,6n2,6n3は、図1には詳しく示されていないサブモジュールと、図1にLKRにて示されているインダクタンスとからなる直列回路から構成されている。
【0027】
図2には、サブモジュール7の直列回路が示され、そして特にサブモジュールの構成が電気的な等価回路図によって詳細に示されている。図2においては、相モジュールアーム6p1のみが例として取り上げられている。しかし、残りの相モジュールアームは同一に構成されている。各サブモジュール7が、2つのターンオフ制御可能なパワー半導体T1およびT2を有することが分かる。ターンオフ制御可能なパワー半導体は、例えば、いわゆるIGBT、GTO、IGCTなどである。これら自体は専門家によく知られているので、ここでは詳しい説明を省略する。各ターンオフ制御可能なパワー半導体T1,T2にはフリーホイールダイオードD1,D2が逆並列接続されている。ターンオフ制御可能なパワー半導体T1,T2もしくはフリーホイールダイオードD1,D2に並列に、エネルギー蓄積器としてコンデンサ8が接続されている。各コンデンサ8は、単極に充電されている。各サブモジュール7の端子X1およびX2には、今や2つの電圧状態が発生可能である。制御ユニット9によって、例えば制御信号が発生させられて、この制御信号によりターンオフ制御可能なパワー半導体T2が導通状態に移行させられ、この導通状態においてパワー半導体T2を介する電流の流れが可能にされた場合には、サブモジュール7の端子X1,X2に零の電圧が現われる。この場合に、ターンオフ制御可能なパワー半導体T1は阻止状態にあり、この阻止状態ではパワー半導体T1を介する電流の流れが遮断されている。これに対して、ターンオフ制御可能なパワー半導体T1が導通状態に移行されるが、しかしターンオフ制御可能なパワー半導体T2が阻止状態に移行される場合には、サブモジュール7の端子X1,X2に完全なコンデンサ電圧Ucが印加される。
【0028】
図1および図2による本発明による装置の実施例は、いわゆるマルチレベル電力変換器とも呼ばれる。このようなマルチレベル電力変換器は、例えば電動機等の如き電気機械の駆動に適している。更に、このようなマルチレベル電力変換器は、配電および送電の分野における使用にも好適である。したがって、本発明による装置は、例えば直流伝送線路なし電力変換設備として用いられる。直流伝送線路なし電力変換設備は、直流電圧側で互いに接続された2つの電力変換器からなり、電力変換器がそれぞれ1つの交流電圧系統と接続されている。このような直流伝送線路なし電力変換設備は、2つの配電系統間でのエネルギー交換のために使用され、この場合に配電系統は、異なる周波数、位相、中性点接地方式などを有する。更に、いわゆるFACT(=Flexible AC Transmission System、フレキシブル交流送電システム)として、無効電力補償の分野における用途が考慮に値する。長距離のわたる高電圧直流送電もこのようなマルチレベル電力変換器により考えられ得る。多様の種々の適用可能性のゆえに、その都度の本発明による装置が、適合させられるべき多くの異なった動作電圧が生じる。この理由から、サブモジュール7の個数がほんの二・三から数百まで変わり得る。
【0029】
既に更に述べたように、故障したサブモジュールが故障発生後僅かのミリ秒以内に短絡されるならば有利である。この場合に、故障時に発生するアークは、大きな損傷が発生し得る前に消弧される。サブモジュールの短絡のために、各サブモジュール7の端子X1およびX2の間に、真空スイッチ管100が短絡装置として接続されている。正常動作時には、概略的にしか示されていない真空スイッチ管100が断路状態にあるので、付設のサブモジュール7の端子X1およびX2の間の短絡が回避されている。
【0030】
図3は真空スイッチ管100を切断側面図で示す。真空スイッチ管100は、第1の金属容器部分141、第2の金属容器部分142ならびに環状セラミック絶縁体および金属ベローズによって形成されている真空密封した容器を有する。真空スイッチ管100の上記構成部分によって区切られた内部空間内では約10-6Paの内圧が支配している。換言するならば、真空スイッチ管100の内部は真空状態にされている。
【0031】
第2の金属容器部分142は固定接触ボルト111によって貫通され、真空スイッチ管100の内部に配置された固定接触ボルト自由端が固定接触子101を支持している。固定接触子101には、可動接触子102が付設されている。可動接触子102は、固定接触子101と縦方向において向かい合っていて、かつ可動接触ボルト112に固定接続されている。可動接触ボルト112は固定接触子101に関して縦移動可能に案内されているが、しかし可動接触ボルト112は真空密封されて金属ベローズ120に接続されている。金属ベローズ120は、可動接触ボルト112とは反対側に向けられた端部で第1の金属容器部分141に真空密封接合されている。固定接触ボルト101は図3に示されためねじを有し、これは付設のサブモジュールの第1の端子の電気接続のために利用される。これに対応して、可動接触ボルト112もサブモジュールの第2の端子の導電的固定のためのめねじを有する。
【0032】
図3には真空スイッチ管100が断路位置で示されていて、この断路位置では可動接触子102が固定接触子101から接点ギャップ150によって隔てられている。作り出された真空は高い電気絶縁能力を有するので、図示の小さい接点ギャップが、既に高電圧印加時に断路位置において、真空スイッチ管100の必要な耐圧を提供するために十分である。
【0033】
真空スイッチ管100の内部と外気との間の大きな圧力差のゆえに、可動接触ボルト112の縦方向に作用しかつ可動接触子102を固定接触子101の向けて押す力作用200が生じる。力作用200は、金属ベローズ120のばね作用によって支援される。金属ベローズ120のばね作用は、図示の断路位置において蓄勢されていて、可動接触子102を同様に固定接触子101の方向に押す。したがって、真空スイッチ管100を断路位置に移行させるためには、上述の圧力差と金属ベローズの蓄勢とに基づく投入力に反対に作用する保持力240が必要である。
【0034】
図4は固定接触ボルト111および可動接触ボルト112を備えた真空スイッチ管100を示し、可動接触ボルト112が作動・保持ユニット300の接極子310に固定接続されている。作動・保持ユニット300は、永久磁石330と、永久磁石330に接続されている軟磁性継鉄320と、上述の接極子310と、電気コイル340とからなる。永久磁石330によって発生させられた磁界は、できるだけ少ない磁気抵抗を有する材料において広がるように努められている。接極子310および継鉄320は、空隙に比べて少ない磁気抵抗を有する。できるだけ低いエネルギー状態を達成するために、接極子310は、継鉄320もしくは永久磁石330と接極子310との間において認識できる空隙335を閉じるように努められている。換言するならば、永久磁石330の力によって、可動接触ボルト112が、したがって可動接触子102が断路位置に保持される。好ましくは電気コイル340の通電によって、結局は投入力が永久磁石330の保持力よりも大きくなるまで永久磁石330の力が弱められ、その結果として接極子310が軟磁性継鉄320もしくは永久磁石330から離れる。その際に真空スイッチ管100は、真空スイッチ管100を介する電流の流れが可能にされる接触位置に移行させられる。したがって、電気コイル340の通電によって、真空スイッチ管100を投入することができ、それにともなって付設のサブモジュールを橋絡することができる。
【0035】
図5は、図4からの電気コイル340のための電子制御装置400を示す。電子制御装置400は、電源部410、電子制御可能な投入スイッチ420、投入スイッチ420の作動のための端子ならびにエネルギー蓄積器430を含む。投入スイッチ420は、例えば制御可能なパワー半導体、例えばサイリスタまたはIGBTである。投入スイッチ420が閉成されるか、もしくは導通状態に移行させられると、結果として電気コイル340を介して流れる短絡電流をともなうエネルギー蓄積器430の放電が生じる。短絡電流により電気コイル340が非常に高い磁界を発生するので、接極子30が継鉄から離れる。
【0036】
図6は、解除・保持ユニット300の異なる実施例を示す。図6による解除・保持ユニット300は永久磁石を持たない。その代わりに可動接触ボルトの保持のために必要な保持力がコイルの磁力のみによって発生させられる。したがって、正常動作時にはコイルが励磁される。しかし、サブモジュール7の橋絡のために、電気コイル340の通電が阻止されるようにスイッチ420が開路位置に移行させられる。したがって保持力が失われるので、接極子が離れ、それにともなって上述の投入力に基づいて真空スイッチ管100の投入がもたらされる。
【符号の説明】
【0037】
1 本発明による装置
2a,2b,2c 相モジュール
1,32,33 交流電圧端子
4 変圧器
5 3相交流電圧系統
6p1,6p2,6p3 相モジュールアーム
6n1,6n2,6n3 相モジュールアーム
7 サブモジュール
8 コンデンサ(エネルギー蓄積器)
9 制御ユニット
100 真空スイッチ管
101 固定接触子
102 可動接触子
111 固定接触ボルト
112 可動接触ボルト
120 金属ベローズ
141 第1の金属容器部分
142 第2の金属容器部分
150 接点ギャップ
200 力作用
240 保持力
300 解除・保持ユニット
310 接極子
320 継鉄
330 永久磁石
335 空隙
340 電気コイル
400 電子制御装置
410 電源部
420 スイッチ
430 エネルギー蓄積器
D1,D2 フリーホイールダイオード
I1,I2,I3 交流電圧側相電流
Id 直流電圧側電流
In1,In2,In3 系統電流
KR インダクタンス
p,n 直流電圧端子
T1,T2 ターンオフ制御可能なパワー半導体
U1,U2,U3 交流電圧側相電流
UC コンデンサ電圧
X1,X2 サブモジュール端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体回路(T1,T2,D1,D2)と、パワー半導体回路(T1,T2,D1,D2)に並列接続されたエネルギー蓄積器(8)とを持つ複数のサブモジュール(7)の直列回路を備え、各サブモジュール(7)にサブモジュール(7)の短絡のための短絡装置が付設されている装置(1)において、短絡装置が真空スイッチ管(100)であることを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
真空スイッチ管(100)の断路位置における保持および保持解除のための解除・保持ユニット(300)を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
解除・保持ユニット(300)が、保持力を提供する永久磁石(330)と、保持解除のために保持力を減殺する解除手段(340)とを有することを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
解除手段が、電気コイル(340)であることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
解除・保持ユニット(300)が、継鉄(320)と移動案内される接極子(310)とを有し、継鉄(320)が永久磁石(330)に接続されていて、接極子(310)が断路位置において磁気回路を閉じることを特徴とする請求項3又は4記載の装置。
【請求項6】
電気コイル(340)が、磁気回路における永久磁石(330)の磁力を弱めるように配置されていることを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項7】
パワー半導体回路が、フルブリッジ回路であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
パワー半導体回路(T1,T2,D1,D2)が、ハーフブリッジ回路であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
装置(1)が、交流電圧系統(5)を接続するための交流電圧端子を有する電力変換器であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
真空スイッチ管(100)が、保持解除時に駆動装置なしに断路位置から、サブモジュールを短絡する接触位置へ移行可能であるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
真空スイッチ管(100)を接触位置へ移行させるための投入ばねを有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項12】
真空スイッチ管(100)を開閉するための駆動ユニットを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−524426(P2010−524426A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503447(P2010−503447)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053925
【国際公開番号】WO2008/125494
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】