説明

コンピュータ装置、プロセッサ診断方法、及びプロセッサ診断制御プログラム

【課題】プロセッサの不良機能を確実に特定して、各種の診断テストの正常な実行を担保すること。
【解決手段】第1のプロセッサと、第2のプロセッサと、メインメモリとを有するコンピュータ装置であって、第2のプロセッサによりメモリ診断プログラムを実行させることにより、メインメモリを診断し、メインメモリ内の不良領域を特定するメモリ診断手段と、メインメモリのうち、メモリ診断手段により特定された不良領域を除く領域に、第1のプロセッサの有する複数の機能を診断するためのプロセッサ診断プログラムを展開する診断プログラム展開手段と、展開されたプロセッサ診断プログラムを第2のプロセッサにより実行させることにより、第1のプロセッサの有する複数の機能のうち、実行不能な機能である不良機能を特定する不良機能特定手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンピュータ装置、プロセッサ診断方法、及びプロセッサ診断制御プログラムに関し、特に、プロセッサの不良機能を確実に特定して、各種の診断テストの正常な実行を担保するコンピュータ装置、プロセッサ診断方法、及びプロセッサ診断制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンピュータ装置では、内蔵された各デバイスの不良箇所を診断する種々の診断テストが行われている。例えば、特許文献1には、内蔵された各メモリにおけるメモリ機能が正常に機能するか否か(例えば、メモリに所定のデータが正常に読み書きできるか否か)を診断するメモリ診断テストを実行するものが開示されている。
【0003】
この種のコンピュータ装置では、内部ROM(Read Only Memory)の一部に、各デバイスに対応する診断プログラムを記憶しておき、OS(Operation System)の起動後に、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサによって、上記した診断プログラムをRAM(Random Access Memory)等のメインメモリ上に展開して実行することにより、各種の診断テストを実行している。
【0004】
【特許文献1】特開平6−4413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のコンピュータ装置では、プロセッサに異常がある場合には、各種の診断テストを正常に実行できない。すなわち、プロセッサは、複数の機能を実行するものであるが、この複数の機能に実行不能な不良機能が存在する場合には、プロセッサの動作が不安定となるため、診断プログラムを正常に実行することができない。
【0006】
開示の技術は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、プロセッサの不良機能を確実に特定して、各種の診断テストの正常な実行を担保するコンピュータ装置、プロセッサ診断方法、及びプロセッサ診断制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本願の開示するコンピュータ装置は、一つの態様において、第1のプロセッサと、第2のプロセッサと、メインメモリとを有するコンピュータ装置であって、前記第2のプロセッサにメモリ診断プログラムを実行させることにより、前記メインメモリを診断し、前記メインメモリ内の不良領域を特定するメモリ診断手段と、前記メインメモリのうち、前記メモリ診断手段により特定された不良領域を除く領域に、前記第1のプロセッサの有する複数の機能を診断するためのプロセッサ診断プログラムを展開する診断プログラム展開手段と、前記展開された前記プロセッサ診断プログラムを前記第2のプロセッサに実行させることにより、前記第1のプロセッサの有する複数の機能のうち、実行不能な機能である不良機能を特定する不良機能特定手段と、を有する。
【0008】
この態様によれば、プロセッサの不良機能を確実に特定して、各種の診断テストの正常な実行を担保することができる。
【0009】
なお、本願の開示するコンピュータ装置の構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、データ構造などに適用したものも上述した課題を解決するために有効である。
【発明の効果】
【0010】
本願の開示するコンピュータ装置、プロセッサ診断方法、及びプロセッサ診断制御プログラムの一つの態様によれば、プロセッサの不良機能を確実に特定して、各種の診断テストの正常な実行を担保することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本願の開示するコンピュータ装置、プロセッサ診断方法、及びプロセッサ診断制御プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0012】
まず、本実施例に係るコンピュータ装置の概要について説明する。本実施例に係るコンピュータ装置は、第1のプロセッサと、第2のプロセッサと、メインメモリとを有するコンピュータ装置であって、前記第2のプロセッサにメモリ診断プログラムを実行させることにより、前記メインメモリを診断し、前記メインメモリ内の不良領域を特定するメモリ診断手段と、前記メインメモリのうち、前記不良領域を除く領域に、前記第1のプロセッサの有する複数の機能を診断するためのプロセッサ診断プログラムを展開する診断プログラム展開手段と、前記展開された前記プロセッサ診断プログラムを前記第2のプロセッサに実行させることにより、前記第1のプロセッサの有する複数の機能のうち、実行不能な機能である不良機能を特定する不良機能特定手段と、を有するものである。
【0013】
すなわち、本実施例に係るコンピュータ装置は、CPU等の2つのプロセッサを有しており、このうち一方のプロセッサ(第2のプロセッサ)が、他方のプロセッサ(第1のプロセッサ)の有する機能を診断可能なプロセッサ診断プログラムを、メインメモリ上で実行することにより、第1のプロセッサの診断を行う。なお、第1のプロセッサの有する機能には、演算機能やデータ入出力機能等の基本的な機能の他、メインメモリの仮想アドレス変換機能等の応用的な機能が含まれる。
【0014】
そして、第1のプロセッサの診断過程で、メモリ診断手段は、コンピュータ装置の有するメインメモリを診断することにより、メインメモリ内の不良領域を特定する。なお、不良領域とは、メインメモリの全領域のうち、読み書き機能などのメモリ機能が正常に機能しない領域を言う。
【0015】
診断プログラム展開手段は、メインメモリのうち、不良領域を除く領域に、プロセッサ診断プログラムを展開する。すなわち、プロセッサ診断プログラムは、メインメモリのうち、メモリ機能が正常に機能する領域に常に展開される。したがって、プロセッサ診断プログラムが実行不能となる事態を確実に回避できる。
【0016】
ここで、プロセッサ診断プログラムは、第1のプロセッサの有する複数の機能をそれぞれ診断する複数の診断プログラムを含み、診断プログラム展開手段は、これら複数の診断プログラムを、所定の順番で、順次展開する。所定の順番としては、例えば、演算機能や、各種デバイスに対するデータ入出力機能等の基本的な機能から、その他の応用的な機能へと向かう順番等、第1のプロセッサの有する機能毎に予め定められた順番を採用することができる。
【0017】
不良機能特定手段は、順次展開される診断プログラムを順次実行することにより、第1のプロセッサの有する複数の機能のうち、実行不能な機能である不良機能を段階的に特定する。したがって、第2のプロセッサにより1つのプロセッサ診断プログラムを一度に実行するよりも、第2のプロセッサの処理負担を軽減することができる。
【0018】
このように、本実施例では、第2のプロセッサにより第1のプロセッサを診断する際に、メインメモリを診断することにより、メインメモリ内の不良領域を特定する。そして、メインメモリのうち、不良領域を除く領域に、プロセッサ診断プログラムを展開し、この展開されたプロセッサ診断プログラムを実行することにより、第1のプロセッサの有する複数の機能のうち、実行不能な機能である不良機能を特定する。このように構成したので、プロセッサの不良機能を確実に特定して、各種の診断テストの正常な実行を担保することができる。
【0019】
なお、前記メモリ診断手段、前記診断プログラム展開手段、及び前記不良機能特定手段としては、例えば、第2のプロセッサが、コンピュータ装置の起動時にROMから読み出して実行するBIOSプログラムなどにその機能を担わせることができる。
【0020】
次に、図1を参照して、本実施例に係るコンピュータ装置の構成について説明する。図1は、本実施例に係るコンピュータ装置1の構成を示す機能ブロック図であり、図2は、図1に示すDRAMの詳細を示す説明図である。
【0021】
図1に示すように、コンピュータ装置1は、CPU10と、診断用CPU11と、DRAM20と、ROM30と、表示コントローラ40と、それらを互いに接続するバス60と、を有する。
【0022】
CPU10は、第1のプロセッサとして、コンピュータ装置1の全体を制御し、各種機能を実行する制御部である。
【0023】
診断用CPU11は、第2のプロセッサとして、コンピュータ装置1の起動時にBIOS(Basic Input Output System)プログラム31をROM30から読み出して実行し、CPU10の診断を行う自己診断用の制御部である。具体的には、診断用CPU11は、BIOSプログラム31の実行中に、CPU診断プログラム32をROM30から読み出して、DRAM20上で実行することにより、CPU10の診断を行う。
【0024】
DRAM20は、コンピュータ装置1のメインメモリ(主記憶装置)である。具体的には、DRAM20は、CPU10の実行対象となるプログラム(BIOSプログラム31やCPU診断プログラム32を含む)が展開され、かかるプログラムによる各種データなどが一時的に格納されるワーキングメモリとして用いられる。また、DRAM20は、図2に示すように、CPU10のワーキングメモリとして使用されるために、所定長で区画した複数の領域(1)〜(20)に区分されて管理されている。
【0025】
ROM30は、CPU10が実行する各種プログラムやデータを記憶している。ROM30に記憶されているプログラムには、BIOSプログラム31、CPU診断プログラム32、メモリ診断プログラム33等が含まれている。
【0026】
BIOSプログラム31は、基本入出力プログラムのことである。具体的には、BIOSプログラム31は、コンピュータ装置1の電源投入時に起動して、OSやアプリケーションプログラムと、DRAM20や周辺機器(ディスプレイ、キーボード等)との間でのデータの入出力を制御する制御プログラムである。また、BIOSプログラム31は、診断用CPU11により実行されて、演算機能等のCPU10の有する複数の機能が正常に動作するか否かなどを診断するCPU診断処理(プロセッサ診断処理)を行う。なお、BIOSプログラム31がCPU診断処理を行う具体的な構成については、別途詳細に説明する。
【0027】
CPU診断プログラム32は、CPU10の有する複数の機能を診断可能なプロセッサ診断プログラムであり、BIOSプログラム31がCPU10のCPU診断処理を行う際に実行されるものである。本実施例では、CPU診断プログラム32は、CPU10の有する複数の機能をそれぞれ診断する複数の診断プログラム32a、32b、32c、…を含む。
【0028】
例えば、図4に示すように、診断プログラム32aは、CPU10の有する演算機能が正常に動作するか否かを診断するプログラムである。また、診断プログラム32bは、CPU10の有するデータ入出力機能が正常に動作するか否かを診断するプログラムである。また、診断プログラム32cは、CPU10の有する仮想アドレス変換機能が正常に動作するか否かを診断するプログラムである。なお、図4は、図1に示すCPU診断プログラム32の一例を示す説明図である。
【0029】
メモリ診断プログラム33は、DRAM20の種々のメモリ機能が正常に機能するか否か(例えば、所定のデータが正常に読み書きできるか否か)を診断するためのプログラムである。また、メモリ診断プログラム33は、CPU診断プログラム32と同様に、BIOSプログラム31がCPU10のCPU診断処理を行う際に実行されるものである。
【0030】
表示コントローラ40は、ディスプレイ50と接続されており、CPU10の診断結果などの表示出力をディスプレイ50に出力する。ディスプレイ50は、画像表示装置であり、表示コントローラ40からの表示出力を視認可能に表示する。
【0031】
次に、図3を参照して、図1に示すBIOSプログラム31がCPU10に対するCPU診断処理を行う具体的な構成について詳細に説明する。図3は、図1に示すBIOSプログラム31の詳細を示す機能ブロック図である。なお、図3では、ROM30に記憶されたBIOSプログラム31が診断用CPU11によって実行されることにより実現される機能を機能ブロックとして示している。
【0032】
BIOSプログラム31は、メモリ診断部311と、診断プログラム展開部312と、不良機能特定部313と、OS(オペレーティングシステム)異常検知部314と、診断結果告知部315と、を機能部として有している。これら各機能部311〜315は、BIOSプログラム31の起動時(実行時)に実行状態となる。
【0033】
このBIOSプログラム31は、前述したように、コンピュータ装置1の起動時に最初に実行される。したがって、OS起動前に、CPU10のCPU診断処理を実行することとなるので、OSが起動しない場合であっても、CPU診断プログラムを正常に実行することが可能となる。
【0034】
メモリ診断部311は、DRAM20を診断することにより、DRAM20内の不良領域を特定する。なお、不良領域とは、DRAM20の全領域のうち、読み書き機能などのメモリ機能が正常に機能しない領域である。DRAM20の診断は、メモリ診断プログラム33を実行することにより行われる。
【0035】
診断プログラム展開部312は、DRAM20のうち、メモリ診断部311により特定された不良領域を除く領域に、CPU診断プログラム32を展開する。また、診断プログラム展開部312は、CPU診断プログラム32に含まれる複数の診断プログラム32a、32b、32c、…を、所定の順番で、順次展開する。
【0036】
この所定の順番として、本実施例では、CPU10の有する基本的な機能から、応用的な機能へ向かう順番を採用している。例えば、図4に示すように、診断プログラム32aの診断機能である演算機能が、診断プログラム32bの診断機能であるデータ入出力機能よりも基本的な機能であるため、診断プログラム展開部312は、CPU診断プログラム32を、診断プログラム32a、32bの順番で展開する。さらに、診断プログラム32bの診断機能であるデータ入出力機能が、診断プログラム32cの診断機能である仮想アドレス変換機能よりも基本的な機能であるため、診断プログラム展開部312は、CPU診断プログラム32を、診断プログラム32a、32b、32cの順番で展開する。
【0037】
不良機能特定部313は、診断プログラム展開部312により展開されたCPU診断プログラム32を実行することにより、CPU10の有する複数の機能のうち、実行不能な機能である不良機能を特定する。また、不良機能特定部313は、診断プログラム32a、32b、32c、…の順番で順次展開されるCPU診断プログラム32を順次実行することにより、CPU10の不良機能を段階的に特定する。したがって、診断用CPU11により1つのCPU診断プログラム32を一度に実行するよりも、診断用CPU11の処理負担を軽減することができる。
【0038】
OS異常検知部314は、OSの起動異常を検知する。OSの起動異常としては、例えば、コンピュータ装置1が停止しキーボードやマウスの入力を受け付けなくなる状態(いわゆる、ハングアップ)や、OS自体の処理が継続不可能になる状態(いわゆる、青画面、黒画面)等が含まれる。このOS異常検知部314は、例えば、正常時のコンピュータ装置1の起動時間を予め測定し、タイムアウト時間を決めてROM30内の所定領域に記憶しておき、OSがタイムアウト時を経過した後もなおハングアップ、青画面、黒画面の状態にある場合に、OSの起動異常を検知するようにしている。
【0039】
診断結果告知部315は、OS異常検知部314がOSの起動異常を検知した場合に、不良機能特定部313により特定された不良機能を、CPU10の診断結果として表示コントローラ40へ表示出力する。表示コントローラ40へ表示出力されたCPU10の診断結果は、ディスプレイ50に表示される。したがって、ディスプレイ50でCPU10の診断結果を確認したユーザは、CPU10における不良箇所の修理や、CPU10の交換等の適切な処置を即座にとることができる。
【0040】
次に、図5を参照して、BIOSプログラム31がCPU10のCPU診断処理を行う処理手順について具体的に説明する。図5は、BIOSプログラム31がCPU10のCPU診断処理を行う処理手順を示す説明図である。
【0041】
まず、図5に示すように、メモリ診断部311によってメモリ診断プログラム33が実行されると、DRAM20内の不良領域が特定される。ここでは、DRAM20の全領域(1)〜(20)のうち、領域(5)、(6)、及び(19)が不良領域として特定されている。
【0042】
続いて、診断プログラム展開部312によって、DRAM20の全領域のうち、不良領域を除く領域が、CPU診断プログラム32を展開する展開対象領域として設定される。図5では、DRAM20の全領域のうち、領域(5)、(6)、及び(19)を除く領域が、CPU診断プログラム32の展開対象領域として設定されている。したがって、CPU診断プログラム32は、DRAM20のうち、メモリ機能が正常に機能する領域に常に展開されるため、CPU診断処理が途中で実行不能となる事態を確実に回避できる。
【0043】
続いて、診断プログラム展開部312によって、CPU診断プログラム32に含まれる複数の診断プログラム32a、32b、32c、…が、この順番で順次展開される。そして、順次展開される複数の診断プログラム32a、32b、32c、…は、不良機能特定部313によって、順次実行され、CPU10の有する複数の機能から不良機能が段階的に特定される。ここで、複数の診断プログラム32a、32b、32c、…が展開される順番は、上述したように、CPU10の有する基本的な機能から、応用的な機能へ向かう順番である。したがって、CPU10の有する複数の機能から不良機能が段階的に特定されるため、CPU10の有する複数の機能のうち、どの段階の機能まで実行可能であるのかを詳細に特定することができる。
【0044】
次に、図6を参照して、本実施例に係るコンピュータ装置のCPU診断処理について説明する。図6は、本実施例に係るコンピュータ装置1のCPU診断処理を示すフローチャートである。なお、図6に示すCPU診断処理は、コンピュータ装置1の電源が投入された後、診断用CPU11が、BIOSプログラム31をROM30から読み出して実行することにより、実行される処理である。
【0045】
図6に示すように、まず、BIOSプログラム31のメモリ診断部311は、メモリ診断プログラム33を実行し(ステップS11)、DRAM20の全領域を、1つの領域ごとに診断する(ステップS12)。このとき、メモリ診断部311は、メモリ診断結果と、DRAM20のアドレス情報とを関連付ける。
【0046】
続いて、メモリ診断部311は、DRAM20の全領域に、未診断の領域が有るか否かを判定する(ステップS13)。この判定は、DRAM20の各領域のアドレス情報に、メモリ診断結果が関連付けられているか否かを判定することにより行われる。この判定の結果、DRAM20の全領域に、未診断の領域が有ると判定すると(ステップS13:Yes)、メモリ診断部311は、DRAM20の全領域に、未診断の領域が無くなるまで、ステップS12〜ステップS13の処理を繰り返す。
【0047】
一方、DRAM20の全領域に、未診断の領域が無いと判定すると(ステップS13:No)、メモリ診断部311は、異常であると診断されたDRAM20のアドレス情報を参照して、DRAM20内の不良領域を特定する(ステップS14)。
【0048】
そして、診断プログラム展開部312は、DRAM20の全領域のうち、ステップS14にて特定された不良領域を除く領域を、展開対象領域として設定し(ステップS15)、その展開対象領域に、CPU診断プログラム32中の1の診断プログラムを展開する(ステップS16)。
【0049】
続いて、不良機能特定部313は、展開されたCPU診断プログラム32を実行することにより、CPU10の有する複数の機能のうち、不良機能を特定する(ステップS17)。このとき、不良機能特定部313は、特定したCPU10の不良機能を、CPU10の診断結果として診断結果告知部315へ送信する。
【0050】
そして、不良機能特定部313は、ステップS17にて特定されたCPU10の不良機能が存在するか否かを判定する(ステップS18)。この判定の結果、CPU10の不良機能が存在すると判定すると(ステップS18:Yes)、不良機能特定部313は、特定したCPU10の不良機能を、CPU10の診断結果として診断結果告知部315へ送信する。診断結果告知部315は、不良機能特定部313から受信したCPU10の診断結果を、表示コントローラ40を介してディスプレイ50に表示し(ステップS22)、CPU診断処理を終了する。
【0051】
一方、CPU10の不良機能が存在しないと判定すると(ステップS18:No)、不良機能特定部313は、全てのCPU診断プログラム32を実行したか否かを判定する(ステップS19)。この判定の結果、全てのCPU診断プログラム32を実行していないと判定すると(ステップS19:No)、処理をステップS16へ戻す。一方、全てのCPU診断プログラム32を実行したと判定すると(ステップS19:Yes)、不良機能特定部313は、処理をステップS20へ移す。
【0052】
ステップS20において、BIOSプログラム31は、OSを起動し、処理をステップS21へ移す。
【0053】
ステップS21において、BIOSプログラム31のOS異常検知部314は、OSの起動異常が有る否かを検知する。この検知の結果、OSの起動異常を検知すると(ステップS21:Yes)、OS異常検知部314は、その検知信号を診断結果告知部315へ送信する。OS異常検知部314からの検知信号を受信すると、診断結果告知部315は、不良機能特定部313から受信したCPU10の診断結果を、表示コントローラ40を介してディスプレイ50に表示し(ステップS22)、CPU診断処理を終了する。一方、OSの起動異常がないと検知すると(ステップS21:No)、OS異常検知部314は、CPU診断処理を終了する。
【0054】
上述してきたように、本実施例では、メモリ診断部311は、DRAM20を診断することにより、DRAM20内の不良領域を特定し、診断プログラム展開部312は、DRAM20のうち、不良領域を除く領域に、CPU診断プログラム32を展開し、不良機能特定部313は、展開されたCPU診断プログラム32を実行することにより、CPU10の有する複数の機能のうち、実行不能な機能である不良機能を特定することとした。かかる構成としたので、プロセッサの不良機能を確実に特定して、各種の診断テストの正常な実行を担保することができる。
【0055】
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、上記特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施例にて実施されてもよいものである。
【0056】
例えば、本実施例では、診断プログラム展開部312及び不良機能特定部313は、ROM30に記憶されたBIOSプログラム31が診断用CPU11によって実行されることにより実現される機能部として説明したが、これに限らず、診断プログラム展開部312及び不良機能特定部313の機能を、CPU10及び診断用CPU11で分担させてもよい。
【0057】
この場合、BIOSプログラム31に、診断用CPU11をCPU10に切り替えるプロセッサ切替手段を設ける。具体的には、診断プログラム展開部312が、CPU診断プログラム32に含まれる複数の診断プログラム32a、32b、32c、…を、所定の順番まで展開し、不良機能特定部313が、その展開された診断プログラムを実行したときに、プロセッサ切替手段は、診断用CPU11をCPU10に切り替える。これにより、CPU診断プログラム32のうち、所定の順番より後の順番の診断プログラムは、診断用CPU11に代わってCPU10により実行されることになる。
【0058】
このように、BIOSプログラム31に、プロセッサ切替手段を設けることとすれば、CPU10の有する複数の機能のうち、基本的な機能の診断を診断用CPU11に実行させると共に、応用的な機能の診断をCPU10自身に実行させることができる。したがって、診断用CPU11の処理負担を軽減することができ、CPU診断処理全体の処理時間を短縮することができる。さらに、診断用CPU11として、低機能かつ低コストなプロセッサを用いることができるため、コンピュータ装置1全体の製造コストの増大を抑制することができる。
【0059】
また、本実施例では、BIOSプログラム31をDRAM20上で実行することで、CPU診断処理を実行することとしたが、BIOSプログラム31を、CPU内部のキャッシュメモリ上で実行してもよい。
【0060】
また、本実施例のBIOSプログラム31、CPU診断プログラム32、及びメモリ診断プログラム33は、必ずしもROM30に記憶されている必要はなく、例えば、フラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性のメモリに記憶しておき、このプログラムを、診断用CPU11が読み出して実行するようにしてもよい。
【0061】
また、本実施例のBIOSプログラム31、CPU診断プログラム32、及びメモリ診断プログラム33は、例えば、ネットワークに接続されたサーバ等からフラッシュメモリにダウンロードされるようにしてもよく、さらには、CD−ROM等の記録媒体に記録されてから記録媒体のドライブを介して、フラッシュメモリに読み込まれるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施例に係るコンピュータ装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に示すDRAMの詳細を示す説明図である。
【図3】図1に示すBIOSプログラムの詳細を示す機能ブロック図である。
【図4】CPU診断プログラムの一例を示す説明図である。
【図5】CPU診断処理の処理手順を示す説明図である。
【図6】本実施例に係るコンピュータ装置のCPU診断処理の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 コンピュータ装置
10 第1のプロセッサ(CPU)
11 第2のプロセッサ(診断用CPU)
20 DRAM
30 ROM
31 基本入出力プログラム(BIOSプログラム)
32 CPU診断プログラム
32a〜32c 診断プログラム
311 メモリ診断部
311〜315 機能部
312 診断プログラム展開部
313 不良機能特定部
314 OS異常検知部
315 診断結果告知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプロセッサと、第2のプロセッサと、メインメモリとを有するコンピュータ装置であって、
前記第2のプロセッサにメモリ診断プログラムを実行させることにより、前記メインメモリを診断し、前記メインメモリ内の不良領域を特定するメモリ診断手段と、
前記メインメモリのうち、前記メモリ診断手段により特定された不良領域を除く領域に、前記第1のプロセッサの有する複数の機能を診断するためのプロセッサ診断プログラムを展開する診断プログラム展開手段と、
前記展開された前記プロセッサ診断プログラムを前記第2のプロセッサに実行させることにより、前記第1のプロセッサの有する複数の機能のうち、実行不能な機能である不良機能を特定する不良機能特定手段と、
を有することを特徴とするコンピュータ装置。
【請求項2】
前記プロセッサ診断プログラムは、前記第1のプロセッサの有する複数の機能をそれぞれ診断する複数の診断プログラムを含み、
前記診断プログラム展開手段は、前記複数の診断プログラムを、所定の順番で、順次展開し、
前記不良機能特定手段は、前記順次展開される診断プログラムを前記第2のプロセッサに順次実行させることにより、前記不良機能を段階的に特定することを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ装置。
【請求項3】
前記コンピュータにて起動されるオペレーティングシステムの起動異常を検知するオペレーティングシステム異常検知手段と、
前記オペレーティングシステム異常検知手段が前記起動異常を検知した場合に、前記不良機能特定手段により特定された前記不良機能を、前記第1のプロセッサの診断結果として告知する診断結果告知手段と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載のコンピュータ装置。
【請求項4】
前記各手段は、電源の投入時に起動して、前記メインメモリに対するデータの入出力を制御する制御プログラムである基本入出力プログラム内に組み込まれており、当該基本入出力プログラムの起動時に実行状態となることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のコンピュータ装置。
【請求項5】
第1のプロセッサと、第2のプロセッサと、メインメモリとを有するコンピュータ装置が、
前記第2のプロセッサにメモリ診断プログラムを実行させることにより、前記メインメモリを診断し、前記メインメモリ内の不良領域を特定するメモリ診断ステップと、
前記メインメモリのうち、前記メモリ診断手段により特定された不良領域を除く領域に、前記第1のプロセッサの有する複数の機能を診断するためのプロセッサ診断プログラムを展開する診断プログラム展開ステップと、
前記展開された前記プロセッサ診断プログラムを前記第2のプロセッサに実行させることにより、前記第1のプロセッサの実行する複数の機能のうち、実行不能な機能である不良機能を特定する不良機能特定ステップと、
を実行することを特徴とするプロセッサ診断方法。
【請求項6】
第1のプロセッサと、第2のプロセッサと、メインメモリとを有するコンピュータ装置に、
前記第2のプロセッサにメモリ診断プログラムを実行させることにより、前記メインメモリを診断し、前記メインメモリ内の不良領域を特定するメモリ診断手順と、
前記メインメモリのうち、前記メモリ診断手段により特定された不良領域を除く領域に、前記第1のプロセッサの有する複数の機能を診断するためのプロセッサ診断プログラムを展開する診断プログラム展開手順と、
前記展開された前記プロセッサ診断プログラムを前記第2のプロセッサに実行させることにより、前記第2のプロセッサの実行する複数の機能のうち、実行不能な機能である不良機能を特定する不良機能特定手順と、
を実行させることを特徴とするプロセッサ診断制御プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−92127(P2010−92127A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258976(P2008−258976)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】