説明

コンベヤベルトの摩耗検出装置

【課題】コンベヤベルトの摩耗量を、運転中に自動的に、しかも簡単かつ正確に検出できるようにしたコンベヤベルトの摩耗検出装置を提供する。
【解決手段】厚さ方向に磁化した複数の磁石シートM1〜M5を、表面に現れる極性が同方向であって、ベルト本体2の長手方向に向かって段階的に深くなるように埋設し、磁石シートM1〜M5の磁力の変化を検出する磁気センサ4を、磁石シートM1〜M5が通過する位置に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトの摩耗を、非接触で検出するようにしたコンベヤベルトの摩耗検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンベヤベルトの摩耗検出手段として、べルト本体内にべルト本体の弾性層と異なる色相(例えば白ゴム)の摩耗検知層を埋設し、弾性層が摩耗したときに露出する摩耗検知層により、摩耗を判断するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、コンベヤベルトの停止時に、超音波厚さ計により、定期的に厚さを測定することにより、摩耗を判定するものもある。
【0004】
さらに、べルト内に、表面からの深さを異ならせて、多数のトランスボンダを埋設し、そのいずれかが、ベルトの摩耗とともに破壊されるか、または脱落したことを、ベルトの通過経路の近くに配設した、発信コイルとセンスコイルとを有するアンテナ部により検出して、ベルトの摩耗程度を知るようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−35115号公報
【特許文献2】西独国特許第19525326号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているものや、超音波厚さ計により計測するものでは、摩耗量の自動測定が困難であり、コンベヤベルトの停止時に、人為的手段で測定するしかなく、効率が悪い。
【0006】
特許文献2に記載されているものは、多数のトランスボンダを、広範囲に埋設しなければならず、また装置全体が大掛かりとなり、設置コストが高くつく。
【0007】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、コンベヤベルトの摩耗量を、運転中に、自動的に、しかも簡単かつ正確に検出できるようにしたコンベヤベルトの摩耗検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は次のようにして解決される。
(1) ベルト本体に、厚さ方向に磁化した複数の磁石シートを、ベルト本体の長手方向に沿って深さを異ならせて埋設し、かつ前記磁石シートの磁力の変化を検出する磁気センサを、前記磁石シートが通過する位置に配設する。
【0009】
(2)上記(1)項において、ベルト本体に、厚さ方向に磁化した複数の磁石シートを、ベルト本体の長手方向に沿って段階的に深く、または浅くなるように配設したものを1ユニットとし、複数ユニットを、ベルト本体の長手方向および幅方向に位置をずらして配設する。
【0010】
(3)ベルト本体に、厚さ方向に磁化した複数の磁石シートを、ベルト本体の長手方向および幅方向に位置をずらして、同一深さで埋設し、かつ前記磁石シートの磁力の変化を検出する磁気センサを、前記磁石シートが通過する位置に配設する。
【0011】
(4)ベルト本体の長手方向を複数の検出エリアに分け、各検出エリアに、厚さ方向に磁化した複数の磁石シートを、前記ベルト本体の長手方向および幅方向に位置をずらして、かつ同一の検出エリアにおいては同一深さに、異なる検出エリアにおいては異なる深さにそれぞれ埋設し、かつ前記磁石シートの磁力の変化を検出する磁気センサを、前記磁石シートが通過する位置に配設する。
【0012】
(5)上記(2)または(4)項において、深さを異ならせてベルト本体に埋設する複数の磁石シートを、ベルト本体の長手方向に沿って段階的に深く、または浅くなるように配設する。
【0013】
(6)上記(3)または(4)項において、ベルト本体の長手方向および幅方向に位置をずらして、同一深さで埋設する複数の磁石シートを、段階的に平面位置が変化するように配設する。
【0014】
(7)上記(1)〜(6)項のいずれかにおいて、複数の磁石シートの表面に現れる極性をすべて同一とする。
【0015】
(8)上記(1)〜(7)項のいずれかにおいて、複数の磁石シートを、磁石粉末をゴムマトリックス内に分散混合させて、シート状に成形し、かつ厚さ方向に磁化させたボンド磁石とする。
【0016】
(9)上記(1)〜(8)項のいずれかにおいて、磁気センサにより検出した磁石シートの磁力のピーク数をカウントし、このカウント数により、磁石シートの脱落を検出して、ベルト本体の摩耗の度合いや部位をデジタル的に検出する制御手段を設ける。
【0017】
(10)上記(1)〜(9)項のいずれかにおいて、磁気センサにより検出した磁石シートの磁力のピーク値の変化により、ベルト本体の摩耗の度合いをアナログ的に検出する制御手段を設ける。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
(a) 請求項1記載の発明によると、複数の磁石シートを、ベルト本体の長手方向に沿って深さを異ならせて埋設し、この磁石シートの磁力の変化を検出するようにしてあるので、検出した磁力の変化により、どの磁石シートがベルト本体から脱落したかが分り、これにより、ベルト本体の摩耗の度合いを、デジタル的に正確に検出することができる。
また、ピーク時の磁力の低下を測定することにより、磁石シートの摩耗量とともに、ベルト本体の摩耗量を、アナログ的に正確に検出することができる。
さらに、ベルトコンベヤの運転中に、コンベヤベルトの摩耗を、非接触で、自動的に検出することができる。
【0019】
(b) 請求項2記載の発明によると、請求項1記載の発明の効果に加えて、コンベヤベルトにおける磨耗の長手方向と幅方向との位置と、その磨耗の深さとを、正確に知ることができる。
【0020】
(c) 請求項3記載の発明によると、複数の磁石シートを、ベルト本体の長手方向および幅方向に位置をずらして、同一深さで埋設し、この磁石シートの磁力を検出するようにしてあるので、検出した磁力の変化により、どの磁石シートがベルト本体から脱落したかが分り、これにより、ベルト本体のどの部分に摩耗が生じたかを、デジタル的に正確に検出することができる。
また、ピーク時の磁力の低下を測定することにより、摩耗が生じた部位とともに、その摩耗の程度をアナログ的に検出することができる。
さらに、ベルトコンベヤの運転中に、コンベヤベルトの摩耗を、非接触で、自動的に検出することができる。
【0021】
(d) 請求項4記載の発明によると、複数の検出エリアに、複数の磁石シートを、長手方向および幅方向に位置をずらして、かつ同一の検出エリアにおいては同一深さに、異なる検出エリアにおいては異なる深さにそれぞれ埋設し、この磁石シートの磁力を検出するようにしてあるので、請求項1および2記載の発明におけるのと同様の原理で、検出した磁力の変化により、ベルト本体の表面における摩耗の部位と、その摩耗の度合いとを、正確に検出することができる。
また、ベルトコンベヤの運転中に、コンベヤベルトの摩耗を、非接触で、自動的に検出することができる。
【0022】
(e) 請求項5記載の発明によると、複数の磁石シートを、ベルト本体の長手方向に沿って段階的に深く、または浅くなるように配設してあるので、それに伴って、各磁石シートの磁力の強さを示す波形のピーク値が、順次小さく、または大きくなり、摩耗の程度に応じて、ピーク値が大きい波形から順に消失していくので、脱落した磁石シートの数を認識し易く、検出効率が向上する。
【0023】
(f) 請求項6記載の発明によると、ベルト本体の長手方向および幅方向に位置をずらして、同一深さで埋設する複数の磁石シートを、段階的に平面位置が変化するように配設したので、各磁石シートの磁力の強さを示す波形の順序と、ベルト本体における各磁石シートの位置とが互いに対応するので、ベルト本体における摩耗した部位を割り出し易い。
【0024】
(g) 請求項7記載の発明によると、複数の磁石シートの表面に現れる極性をすべて同一としてあるので、隣り合う磁石シート同士が互いに悪影響を及ぼし合うことが少なく、検出精度を高めることができる。
すなわち、隣接する磁石シートの表面に現れる極性が互いに逆になるように配置した場合には、それらの隣接する磁石シート間を結ぶ磁力線が、ベルト表面に近いところを通るため、磁気センサがベルト表面から少しでも離れると、検出磁力が急激に小さくなり、検出精度が低下するが、請求項6記載の発明のようにすると、そのような検出精度の低下のおそれをなくすことができる。
【0025】
(h) 請求項8記載の発明によると、複数の磁石シートを、磁石粉末をゴムマトリックス内に分散混合させて、シート状に成形し、かつ厚さ方向に磁化させたボンド磁石としてあるので、ベルト本体とともに、磁石シートも同様に摩耗し、その磁石シートの摩耗による磁力の低下を測定することにより、その磁石シートの摩耗量、ひいてはそれに対応するベルト本体の摩耗量をアナログ的に検出することができる。
【0026】
(i) 請求項9記載の発明によると、磁気センサにより検出した磁石シートの磁力のピーク数をカウントし、このカウント数により、磁石シートの脱落を検出して、ベルト本体の摩耗の度合いや部位をデジタル的に検出する制御手段を設けてあるので、ベルト本体の摩耗の度合いや部位を、デジタル的に正確に把握することができるとともに、脱落した磁石シートをカウント数で判定するため、ベルト本体の蛇行等による外乱の影響を受けることなく、正確な摩耗検出が可能となる。
【0027】
(j) 請求項10記載の発明によると、磁気センサにより検出した磁石シートの磁力のピーク値の変化により、ベルト本体の摩耗の度合いをアナログ的に検出する制御手段を設けてあるので、ベルト本体からの磁石シートの脱落による、デジタル的なベルト本体の摩耗の検出だけでなく、その大まかな範囲内におけるベルト本体の微細な摩耗の程度まで、正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態を備えるベルトコンベヤの荷下ろし端部の側面図、図2は、図1のII部分の拡大縦断側面図、図3は、図1のIII−III線拡大矢視図である。
【0029】
第1の実施形態のコンベヤベルトの摩耗検出装置は、プーリ(1)に巻掛けられたベルト本体(2)の表面側に、複数の磁石シート(M1)(M2)(M3)(M4)(M5)からなる磁石シート群(3)と、ベルト本体(2)が通過する場所の近くに配設され、磁石シート群(3)からの磁力を検出する磁気センサ(4)とを備えている。
【0030】
磁石シート群(3)におけるそれぞれの磁石シート(M1)〜(M5)は、シート状の磁性体を厚さ方向(図2における上下方向)に磁化したもので、それぞれの表面に現れる極性が同一方向に向き、ベルト本体(2)の長手方向(走行方向Pに平行の方向)に対して深さを段階的に深くして埋設されている。
【0031】
各磁石シート(M1)〜(M5)は、磁石粉末をゴムマトリックス内に分散混合させて、シート状に成形し、かつ厚さ方向に磁化させたボンド磁石が好適に使用されるが、その他の永久磁石を用いることもできる。
【0032】
なお、図示の例では、ベルト本体(2)の走行方向(P)の後方が深くなるようにしているが、これとは逆に走行方向の前方が深くなるようにしてもよい。磁石シート(M1)〜(M5)の個数は、任意の複数個であってよい。
【0033】
磁石シート(M1)〜(M5)は、ベルト製造時に、ベルト本体(2)の表面に埋設することも可能であるが、ベルト本体(2)の端末同士の接合部(エンドレス部)(5)に埋設すると、埋設作業が容易であるので好ましい。しかし、埋設箇所を限定するものではない。
【0034】
図示の例では、いずれの磁石シート(M1)〜(M5)も、表面側(図示では下側)がN極、裏面側がS極であるが、逆に、表面側がS極、裏面側がN極であってもよい。
【0035】
磁気センサ(4)は、ループコイル、ホール素子等、周知のものが使用され、磁石シート(M1)〜(M5)の通過位置にできるだけ接近して配置される。磁気センサ(4)の取り付け位置は、図1および図2に示すように、ベルト本体(2)のリターン側とすることが好ましい。このようにすると、ベルト本体(2)で搬送されてきた搬送物がスクレーバ(6)により掻き落とされた後のクリーンな箇所で検出することできる。
【0036】
図3に示すように、磁気センサ(4)の近傍には、そこを通過するベルト本体(2)の幅方向の位置を規制する幅方向ガイド(7)が設けられ、また、磁気センサ(4)の反対側には、ベルト本体(2)と磁気センサ(4)との関係を一定に保つための厚さ方向ガイド(8)が設けられている。磁石シート(M1)〜(M5)は、ベルト本体(2)の幅方向に同一の幅をもって埋設されている。
【0037】
図4は、コンベヤベルトの摩耗検出装置の制御装置の一例を示す。
同図に示すように、制御装置は、磁気センサ(4)からの検出信号を入力して、ベルトの摩耗度合いを演算し、送信部(9)より送信する現場制御部(10)と、送信されてきた信号を受信部(11)で受信して、演算結果を出力端末(12)に出力し、かつ、摩耗度合いが所定の閾値を超えた場合に、警報を発したり、ベルトコンベヤの作動を停止させるなどの必要な処理をする中央制御部(13)とを備えている。
【0038】
現場制御部(10)(または中央制御部(13))には、磁気センサ(4)により検出した磁石シート(M1)〜(M5)の磁力のピーク数をカウントし、このカウント数の低下により、磁石シート(M1)〜(M5)の脱落を検出して、ベルト本体(2)の摩耗の度合いをデジタル的に検出するデジタル制御手段(図示略)と、磁気センサ(4)により検出した磁石シート(M1)〜(M5)の磁力のピーク値の変化により、ベルト本体(2)の摩耗の度合いをアナログ的に検出するアナログ制御手段(図示略)とが設けられている。
【0039】
次に、本実施形態の摩耗検出装置の作用を説明する。
ベルト本体(2)が矢印(P)方向に移動し、磁石シート(M1)〜(M5)が、磁気センサ(4)に対向する位置を通過するごとに、磁気センサ(4)は磁力を検出し、磁気センサ(4)から図2に示すような出力波形の信号が出力される。すなわち、表面に最も近い位置にある磁石シート(M1)を検出したときの信号は、ピーク値が最も高い出力波形(H1)となり、次の2段目の磁石シート(M2)を検出したときの信号は、少し低いピーク値の出力波形(H2)となり、同様にして、磁石シート(M3)(M4)を検出したときの信号は、順次低いピーク値の出力波形(H3)(H4)となって現れ、最も深い位置にある磁石シート(M5)からの信号は、一番低いピーク値の出力波形(H5)となる。
【0040】
図5は、コンベヤベルトが摩耗していく状態を示す。
ベルト本体(2)の摩耗は、搬送に使用する表面側から始まるため、表面に一番近い側の第1の磁石シート(M1)から摩耗が始まる。図5(a)に示すように、第1の磁石シート(M1)が、ベルト本体(2)の摩耗に伴って脱落すると、出力波形(H1)は消滅する。
【0041】
さらに、第2、第3および第4の磁石シート(M2)(M3)および(M4)も脱落すると、図5(b)に示すように、出力波形(H1)〜(H4)も消滅し、残る磁石シート(M5)からの信号である出力波形(H5)のみとなる。
【0042】
磁気センサ(4)からの信号は、現場制御部(10)に入力され、内蔵されているカウンタで、出力波形(H1)〜(H5)のピーク数をカウントし、このカウント数から、脱落した磁石シート(M1)〜(M5)を判定し、これにより、ベルト本体(2)の摩耗の度合いをデジタル的に正確に検出することができる。
【0043】
また、ベルト本体(2)の使用初期の出力波形(H1)〜(H5)のピーク値から、現在の出力波形(H1)〜(H5)のピーク値を減算することにより、各磁石シート(M1)〜(M5)の脱落するまでの間の摩耗の度合い、ひいてはベルト本体(2)の摩耗の度合いを、アナログ的に検出することができる。
【0044】
図6〜図8は、本発明の第2の実施形態を示す。
磁石シート群(3)におけるそれぞれの磁石シート(M1)(M2)(M3)(M4)(M5)(M6)は、第1の実施形態と同様、厚さ方向に磁化したものである。第2の実施形態では、磁石シート群(3)におけるそれぞれの磁石シート(M1)〜(M6)を、それぞれの表面に現れる極性を同一方向に向けて、ベルト本体(2)の表面側に同一深さに埋設するとともに、ベルト本体(2)の幅方向および長手方向に段階的にずらせて、幅方向全体にわたり、斜めに配置した構造としてある。
【0045】
磁気センサ(4)としては、ベルト本体(2)の全幅をカバーできるゲート型ループコイルを使用し、これを、ベルト本体(2)の面に近接して配置してある。
【0046】
ベルト本体(2)が矢印(P)方向に移動し、磁石シート(M1)〜(M6)が磁気センサ(4)に対向する位置を通過するごとに、磁気センサ(4)がその磁力を検出し、磁気センサ(4)から、図6に示すように、ほぼ同じピーク値を持つ出力波形(H1)〜(H6)の信号が出力される。
【0047】
図8に示すように、例えば、ベルト本体(2)に局所的な摩耗部分(14)が発生し、第2の磁石シート(M2)が脱落すると、2番目の出力波形(H2)の出力波形が消滅する。第1の実施形態と同様、これを現場制御部(10)で検出することにより、局所的摩耗の部位を検出することができる。
【0048】
また、ベルト本体(2)の使用初期の各出力波形(H1)〜(H6)のピーク値から、現在の各出力波形(H1)〜(H6)のピーク値を減算することにより、各磁石シート(M1)〜(M6)の脱落するまでの間の摩耗の度合い、ひいてはその各磁石シート(M1)〜(M6)が配設されている部位におけるベルト本体(2)の摩耗の度合いを、アナログ的に検出することができる。
【0049】
図9、および図10は、本発明の第3の実施形態を示す。
両図に示すように、ベルト本体(2)を長手方向に区分して、3箇所の検出エリア(A)(B)(C)を設け、それぞれの検出エリア(A)(B)(C)に、磁石シート群(3A)(3B)(3C)を埋設してある。なお、検出エリア(A)(B)(C)の数は任意である。
【0050】
それぞれの検出エリア(A)(B)(C)における磁石シート群(3A)(3B)(3C) は、平面構造を第2実施形態と同様に、それぞれの表面に現れる極性が同一方向に向き、かつコンベヤベルトの幅方向および長手方向に順次段階的にずらせて、幅方向全体にわたり斜めに配置した構造としてある。図10に示すように、その断面構造は、検出エリア(A)の磁石シート群(3A)が一番浅く、磁石シート群(3B)、磁石シート群(3C)と順次深く埋設した構造としてある。
【0051】
ベルト本体(2)が矢印(P)方向に移動し、それぞれの検出エリア(A)(B)(C)が磁気センサ(4)に対向する位置を通過するごとに、磁気センサ(4)がその磁力を検出し、磁気センサ(4)から、図9に示すように、同一検出エリアではほぼ同じ強さであり、検出エリア(A)→(B)→(C)の順に小さくなる出力波形(Ha)(Hb)(Hc)の信号が出力される。
【0052】
例えば、検出エリア(A)に局所的な摩耗部分(15)が発生し、磁石シート(M2)が脱落すると、検出エリア(A)における2番目の出力波形(Ha2)が消滅する。第2実施形態と同様、これを現場制御部(10)で検出することにより、局所的摩耗の部位と摩耗の度合いとが同時に検出できる。他の検出エリア(B)(C)においても、磁石シート群(3B)または(3C)の深さまで摩耗すると、同じ原理で、その検出エリア(B)(C)における局所的摩耗が検出できる。
【0053】
図11、および図12は、本発明の第4の実施形態を示す。
この例では、ベルト本体(2)を、表面層(2a)と裏面層(2b)との間に、帆布等よりなる補強層(2c)を形成した3層構造とし、その表面層(2a)に、厚さ方向に磁化した複数の磁石シート(M1)〜(M5)を、ベルト本体(2)の長手方向に沿って段階的に深く(または浅く)なるように配設したものを1ユニット(U)とし、複数ユニット(U1)〜(U5)を、ベルト本体(2)の長手方向および幅方向に位置をずらして配設してある。
各磁石シート(M1)〜(M5)の極性の向きは、すべてベルト本体(2)の表面側がN極となるようにしてある。
【0054】
表面層(2a)における第1番目のユニット(U1)の前方で、かつ補強層(2c)寄りの部分には、先頭割り出し兼伸び検出用の磁石シート(MS)が埋設されている。
この磁石シート(MS)の極性の向きは、他の磁石シート(M1)〜(M5)の極性の向きと逆になるように、ベルト本体(2)の表面側がS極となるようにしてある。
その他の構成は、第1の実施形態と同一である。
【0055】
第4の実施形態においては、正常状態で、ベルト本体(2)が矢印(P)方向に移動すると、磁気センサ(4)からは、図11の上部に示すように、最初に、磁石シート(MS)により、マイナスのピーク値が先に、プラスのピーク値がその後に続く1サイクルの出力波形(Hx)が出力し、続いて、最初のユニット(U1)における各磁石シート(M1)〜(M5)により、プラスのピーク値が先に、マイナスのピーク値がその後に続く1サイクルの出力波形(HU1)が出力し、その後、各ユニット(U2)〜(U5)により、同様の出力波形(HU2)〜(HU5)((HU4)(HU5)は図示略)が繰り返し出力する。
【0056】
出力波形(Hx)がこのような形状をしているのは、磁石シート(MS)がループコイル型磁気センサ(4)にさしかかって、磁石シート(MS)のS極面に向かって入る下向きの磁力線がコイルに入る時点で、出力波形がマイナスのピーク値を示し、磁石シート(MS)が磁気センサ(4)を通り過ぎて、磁石シート(MS)の磁力線がコイル外に出る時点で、今度は出力波形がプラスのピーク値を示すからである。
【0057】
出力波形(HU1)〜(HU5)がこのような形状をしているのは、各ユニット(U1)〜(U5)における磁石シート(M1)〜(M5)が一つの塊となって、一様な磁力線分布が形成され、この磁石シート(M1)〜(M5)の塊の先頭がループコイル型磁気センサ(4)にさしかかって、磁石シート(M1)〜(M5)のN極面から出る上向きの磁力線がコイルに入る時点で、出力波形がプラスのピーク値を示し、磁石シート(M1)〜(M5)の塊の終端が磁気センサ(4)を通り過ぎて、磁石シート(M1)〜(M5)の磁力線がコイル外に出る時点で、今度は出力波形がマイナスのピーク値を示すからである。
なお、磁石シート(M1)〜(M5)の埋設深さは漸次大となるので、磁気センサ(4)を通過する磁力線の強度も、磁石シート(M1)上が最も強く、その後は漸次低下して、磁石シート(M5)上が最も弱くなる。そのため、上記各出力波形(HU1)〜(HU5)の先頭のプラスのピーク値に比べ、終端のマイナスのピーク値は小さくなる。
【0058】
図11および図12に示すように、例えば、ベルト本体(2)に局所的な摩耗部分(16)が発生し、第2番目のユニット(U2)における第1の磁石シート(M1)が脱落すると、図11に破線で示すように、2番目の出力波形(HU2)の先頭のピーク値(P1)が消滅する。第1の実施形態と同様、これを現場制御部(10)で、ピーク間隔の変動、ピーク値の低下等として検出することにより、局所的な摩耗部分(16)の位置とその磨耗の程度とを正確に知ることができる。
【0059】
また、ベルト本体(2)を定速で回走させている状態で、出力波形(Hx)が検出されてから、次の出力波形(Hx)が検出されるまでの時間を計測しておくことにより、その時間が延びることによって、ベルト本体(2)に伸びが生じたことを検出することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
例えば、磁石シート(M1)〜(M6)の配置は、図2、図6、および図9に示すような段階的なものではなく、ランダムな配置とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明のコンベヤベルトの摩耗検出装置の第1の実施形態を示す側面図である。
【図2】図1のII部分の拡大断面図である。
【図3】図1のIII―III線拡大矢視図である。
【図4】制御装置のブロック図である。
【図5】ベルト本体が摩耗していく状態を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す、図3に対応した底面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】第2実施形態におけるベルト本体の局所的摩耗状態を示す説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態を示す、図3に対応した底面図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態を示す、図3に対応した底面図である。
【図12】図11のXII−XII線断面図である。
【符号の説明】
【0062】
(1)プーリ
(2)ベルト本体
(2a)表面層
(2b)裏面層
(2c)補強層
(3)(3A)(3B)(3C)磁石シート群
(4)磁気センサ
(5)接合部
(6)スクレーバ
(7)幅方向ガイド
(8)厚さ方向ガイド
(9)送信部
(10)現場制御部
(11)受信部
(12)出力端末
(13)中央制御部
(14)(15)(16)摩耗部分
(M1)第1の磁石シート
(M2)第2の磁石シート
(M3)第3の磁石シート
(M4)第4の磁石シート
(M5)第5の磁石シート
(M6)第6の磁石シート
(MS)先頭割り出し兼伸び検出用の磁石シート
(A)(B)(C)検出エリア
(H1)〜(H6)(Hx)(HU1)〜(HU5)出力波形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体に、厚さ方向に磁化した複数の磁石シートを、ベルト本体の長手方向に沿って深さを異ならせて埋設し、かつ前記磁石シートの磁力の変化を検出する磁気センサを、前記磁石シートが通過する位置に配設したことを特徴とするコンベヤベルトの摩耗検出装置。
【請求項2】
ベルト本体に、厚さ方向に磁化した複数の磁石シートを、ベルト本体の長手方向に沿って段階的に深く、または浅くなるように配設したものを1ユニットとし、複数ユニットを、ベルト本体の長手方向および幅方向に位置をずらして配設したことを特徴とする請求項1記載のコンベヤベルトの摩耗検出装置。
【請求項3】
ベルト本体に、厚さ方向に磁化した複数の磁石シートを、ベルト本体の長手方向および幅方向に位置をずらして、同一深さで埋設し、かつ前記磁石シートの磁力の変化を検出する磁気センサを、前記磁石シートが通過する位置に配設したことを特徴とするコンベヤベルトの摩耗検出装置。
【請求項4】
ベルト本体の長手方向を複数の検出エリアに分け、各検出エリアに、厚さ方向に磁化した複数の磁石シートを、前記ベルト本体の長手方向および幅方向に位置をずらして、かつ同一の検出エリアにおいては同一深さに、異なる検出エリアにおいては異なる深さにそれぞれ埋設し、かつ前記磁石シートの磁力の変化を検出する磁気センサを、前記磁石シートが通過する位置に配設したことを特徴とするコンベヤベルトの摩耗検出装置。
【請求項5】
深さを異ならせてベルト本体に埋設する複数の磁石シートを、ベルト本体の長手方向に沿って段階的に深く、または浅くなるように配設したことを特徴とする請求項1または4記載のコンベヤベルトの摩耗検出装置。
【請求項6】
ベルト本体の長手方向および幅方向に位置をずらして、同一深さで埋設する複数の磁石シートを、段階的に平面位置が変化するように配設したことを特徴とする請求項3または4記載のコンベヤベルトの摩耗検出装置。
【請求項7】
複数の磁石シートの表面に現れる極性をすべて同一としたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のコンベヤベルトの摩耗検出装置。
【請求項8】
複数の磁石シートを、磁石粉末をゴムマトリックス内に分散混合させて、シート状に成形し、かつ厚さ方向に磁化させたボンド磁石としたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のコンベヤベルトの摩耗検出装置。
【請求項9】
磁気センサにより検出した磁石シートの磁力のピーク数をカウントし、このカウント数により、磁石シートの脱落を検出して、ベルト本体の摩耗の度合いや部位をデジタル的に検出する制御手段を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のコンベヤベルトの摩耗検出装置。
【請求項10】
磁気センサにより検出した磁石シートの磁力のピーク値の変化により、ベルト本体の摩耗の度合いをアナログ的に検出する制御手段を設けたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のコンベヤベルトの摩耗検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−315858(P2006−315858A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306603(P2005−306603)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】