説明

コージェネレーションシステム

【課題】燃料電池等によって発生した排気ガスから直接的に熱回収し且つ温度調節できるコージェネレーションシステムの提供を目的とする。
【解決手段】貯留タンク4は気・液熱交換器13を内蔵し、貯留タンク4の外部に気・液熱交換器13を迂回するバイパス流路11を備え、さらに排気ガスの流れを気・液熱交換器13側とバイパス流路11側のいずれに流すかの切り換え或いは両者に流れる排気ガスの比率を調節する流路調節機能を備え、当該気・液熱交換器13に発電装置2(発電部)の排気ガスを通過させて貯留タンク4内の液体を昇温する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池等が発生する熱を回収するコージェネレーションシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池等の発電装置において発生した熱エネルギーを回収するコージェネレーションシステムとしては、発電装置内に設けられた熱交換器に湯水等の液体を熱媒体として循環ポンプによって循環させ、その循環させた熱媒体を介して熱エネルギーを貯留タンク等に回収するシステムが一般的である。また、前記システムには、熱媒体が過度に昇温することを防止するための保護回路として冷却用ラジエータを備えていることも多い。
【0003】
しかし、前記したコージェネレーションシステムでは、発電装置からの熱回収装置の複雑さや熱回収装置に掛かる費用、循環中の放熱ロスが問題となっている。特に放熱ロスの問題については、今後大きな問題となっていくと予想される。その要因として、最新の燃料電池(特に固体酸化物形燃料電池[以下、SOFCと略す])の排熱温度の低温化が挙げられる。
【0004】
SOFCは、他の燃料電池に比べて発電効率が非常に高く、燃料電池の主流となっている。ところが、開発が進むにつれて、排熱温度が低く抑えられてきている。そのため、熱交換器から循環させる熱媒体の循環中における放熱ロスの対策に苦心している。
【0005】
さて、前記熱回収装置の複雑さや熱回収装置に掛かる費用、放熱ロスの解決策として、特許文献1の図9には、発電装置内に熱交換器を設けずに、燃料電池からの高温排気ガス流路を直接貯留タンク内に通過させたコージェネレーションシステムが開示されている。
【特許文献1】特開2005−291615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、温度調節機構や装置を備えていないため、燃料電池によって発電が行われている間、常に高温の排気ガスが貯留タンク内の高温排気ガス流路を通過することになり、貯留タンク内の液体が沸点に達した場合でも、高温の排気ガスが貯留タンク内の高温排気ガス流路を通過し続け、貯留タンクを焚き続けることが考えられる。
【0007】
そこで本発明は、このような問題点に鑑み、燃料電池等によって発生した排気ガスから直接的に熱回収し且つ温度調節できるコージェネレーションシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、電気と排気ガスとを発生する発電部と、液体を貯留する貯留タンクとを有するコージェネレーションシステムにおいて、貯留タンクは気・液熱交換器を内蔵し、貯留タンクの外部に気・液熱交換器を迂回するバイパス流路を備え、さらに排気ガスの流れを気・液熱交換器側とバイパス流路側のいずれに流すかの切り換え或いは両者に流れる排気ガスの比率を調節する流路調節機能を備え、当該気・液熱交換器に発電部の排気ガスを通過させて貯留タンク内の液体を昇温することを特徴とするコージェネレーションシステムである。
【0009】
本発明のコージェネレーションシステムは、貯留タンクの外部に気・液熱交換器を迂回するバイパス流路を備え、さらに排気ガスの流れを気・液熱交換器側とバイパス流路側のいずれに流すかの切り換え或いは両者に流れる排気ガスの比率を調節する流路調節機能を備えたことにより、従来技術で問題となっていた高温の排気ガスが貯留タンク内の高温排気ガス流路を通過し続けることを回避できる。つまり、前記流路調節機能によって、過剰な排気ガスをバイパス流路から大気中に放つことが可能となり、貯留タンクを必要以上に加熱することを防止できる。
【0010】
さらに、貯留タンクに気・液熱交換器を内蔵することにより、従来必要だった発電装置内の熱交換器、熱媒体循環用の循環ポンプ、冷却ラジエータを不要とし、コストダウンに大きく寄与している。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、発電部は、燃料電池と燃料電池のオフガスを燃焼させる燃焼部とを有し、前記燃焼部において排気ガスを発生させることを特徴とするコージェネレーションシステムである。
【0012】
本発明のコージェネレーションシステムは、燃焼部を発電部に備えたことを特徴とし、前記燃焼部において、燃料電池に供給されたものの反応に寄与しなかったオフガス(未反応ガス)を燃焼させ、貯留タンクを昇温させるための排気ガスを発生させることができる。つまり、燃焼部にてオフガスを素早く燃焼させることが可能となり、オフガスの熱量を下げることなく、排気ガスへと変えることができ、高温の排気ガスを気・液熱交換器側へ送ることを可能としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、貯留タンクの高さ方向の中心よりも下部に、貯留タンクに貯留された液体の温度を検知する温度検知手段が設けられ、流路調節機能は、前記温度検知手段の検知温度が一定以上である場合に、排気ガスの一部又は全部をバイパス流路側に流すことを特徴とするコージェネレーションシステムである。
【0014】
本発明のコージェネレーションシステムは、貯留タンクに貯留された液体の温度を検知する温度検知手段を設け、温度検知手段の検知温度が一定以上である場合に、排気ガスの一部又は全部をバイパス流路側に流すことにより、貯留タンク内の液体の温度を一定以上に加熱されることを防ぐことができる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、気・液熱交換器は上部側に排気ガス導入口があり、下部側に排気ガス排出口があり、排気ガス導入口から排気ガス排出口に至る流路はいずれの部位も下り勾配または平坦であって上り勾配部が存在しないことを特徴とするコージェネレーションシステムである。
【0016】
本発明のコージェネレーションシステムは、排気ガスを一方向排気させるために上部側に排気ガス導入口を、下部側に排気ガス排出口を設けている。これは、気・液熱交換器を通過した後に冷却された排気ガスの内、液化されたドレン(蒸留水)を効率よく下部側に集めるための構造となっている。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、貯留タンクの外部における排気ガスが流れる流路の一部であって、気・液熱交換器の下流側にドレン排出口が設けられていることを特徴とするコージェネレーションシステムである。
【0018】
本発明のコージェネレーションシステムでは、気・液熱交換器を通過した後に冷却された排気ガスの内、液化され下流側に集められたドレン(蒸留水)をドレン排出口から排出することを可能にしている。
【0019】
請求項6の発明は、請求項5に記載の発明において、発電部は水蒸気改質装置を備え、ドレン排出口から回収されたドレンを気化して水蒸気改質装置で再利用することを特徴とするコージェネレーションシステムである。
【0020】
本発明のコージェネレーションシステムでは、燃料電池の燃料である改質ガスを生成するための水蒸気改質装置を発電部に備えることで、水蒸気改質装置から燃料電池までの距離を短くし、高温に加熱された改質ガスの放熱ロスを最小限に抑えることを図っている。また、ドレン排出口から回収されたドレン(蒸留水)を水蒸気改質装置で再利用することを可能にしている。
【0021】
請求項7の発明は、請求項5又は6に記載の発明において、発電部からドレン排出口に至る排気ガスの流路は、いずれの部位も下り勾配または平坦であって上り勾配部が存在しないことを特徴とするコージェネレーションシステムである。
【0022】
本発明のコージェネレーションシステムでは、排気ガスを一方向排気させるために上り勾配部を設けていない。これは、気・液熱交換器を通過した後に冷却された排気ガスの内、液化されたドレン(蒸留水)を下部側に集めるための構造となっている。
【0023】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明において、発電部と貯留タンクとが一つの筐体内に収められていることを特徴とするコージェネレーションシステムである。
【0024】
本発明のコージェネレーションシステムは、発電部と貯留タンクとを一つの筐体内に収めたことにより、省スペース化が図られると共に、排気ガスが流れる流路が外気に面することがなく気・液熱交換器に連結されるため、排気ガスの放熱ロスを最小限に抑えることを図っている。
【0025】
請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明において、貯留タンクから排出される液体が特定温度以下の場合に作動する補助熱源機を別置としたことを特徴とするコージェネレーションシステムである。
【0026】
本発明のコージェネレーションシステムでは、貯留タンクから排出される液体が特定温度以下の場合に作動する補助熱源機を別置としたことにより、省スペース化を図ると共に、補助熱源機の有無の選択をユーザ側で決定できるようにしている。このことにより、既設の給湯器を補助熱源機として利用することが可能となり、ユーザに無駄な経済的負担を強いることが避けられる。
【0027】
請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の発明において、気・液熱交換器を貯留タンクの下部領域に設け、液体の自然対流にて貯留タンク内部に温度成層を形成することを特徴とするコージェネレーションシステムである。
【0028】
本発明のコージェネレーションシステムでは、気・液熱交換器を貯留タンクの下部領域に設けることにより、貯留タンク内部の液体を満蓄熱状態にすることが可能となる。詳しく説明すると、高温の排気ガスを貯留タンクの下部領域に存在する低温の液体と熱交換させることにより、温められた液体が自然対流にて貯留タンクの上部に上がっていき、貯留タンク内部の上層部から温度成層が形成されていく。その結果、貯留タンク内部の液体を満蓄熱状態にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、燃料電池等によって発生した排気ガスから直接的に熱回収し且つ温度調節できるコージェネレーションシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に本発明の具体的な実施形態について説明する。
図1はコージェネレーションシステムを示す作動原理図であり、図2はコージェネレーションシステムが加熱モードで動作する際の動作状態を示す作動原理図であり、図3はコージェネレーションシステムが保温モードで動作する際の動作状態を示す作動原理図であり、図4はコージェネレーションシステムがバイパスモードで動作する際の動作状態を示す作動原理図であり、図5はコージェネレーションシステムの排気方向切替ダンパ12付近の拡大図である。
【0031】
図1に示すように、本実施形態のコージェネレーションシステム1は、発電装置2(発電部)と、排熱回収装置3と、貯留タンク4から構成され、これらが一つの筐体内に納められている。
【0032】
まず、発電装置2は、燃焼部5(燃焼装置)、水蒸気改質装置6(燃料改質器)、SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)7から構成されている。
SOFC7は、主としてアノード(燃料極)と、カソード(空気極)と、アノードとカソードに挟まれた電解質とから構成される単電池を複数積層した電池スタックで構成される。
【0033】
SOFC7の発電原理を説明すると、カソードで酸素O2 (オーツー)が電子4e-(イーマイナス)と反応して酸素イオンO2-(オーツーマイナス)になり、酸素イオンO2- が固体酸化物電解質(セラミックス膜)を通り、アノードで水素2H2(エッチツー)と反応して水蒸気2H2O(エッチツーオー)と電子4e- (イーマイナス)を生成する。さらに、アノードでは一酸化炭素COと酸素イオンO2- (オーツーマイナス)が反応して二酸化炭素CO2 と電子2e- (イーマイナス)を生成する。
固体酸化物電解質は酸素イオンO2-(オーツーマイナス)を通すが、水蒸気2H2Oや一酸化炭素CO、電子4e- を通さないので、アノードで生じた電子4e- がアノードとカソードを結ぶ回路を移動して、カソードで再び酸素をイオン化することによって回路に電流が流れる仕組み(発電)となっている。
【0034】
ちなみに、PEFC(Polimer Electrolyte Fuel Cell)に代表される低温作動型(70℃〜90℃)の燃料電池では、化学反応を効率よく進めるために白金(Pt)などの触媒を必要とするが、SOFC7は高温作動型(700℃〜1000℃)なので触媒が不要となっている。このため、低温作動型の燃料電池では、触媒(白金等の金属)の劣化を招く一酸化炭素は極力取り除く必要があったが、SOFC7では水素のほかに一酸化炭素も燃料として使用可能となっている。
【0035】
SOFC7のアノードに供給される水素や一酸化炭素は、都市ガス、メタノール、ガソリン、天然ガス、プロパンなどの電池用燃料を水蒸気改質装置6(燃料改質器)によって水蒸気改質することで得られる改質ガス(水素、一酸化炭素、二酸化炭素)である。
詳しく説明すると、水蒸気改質装置6において都市ガスなどの電池用燃料が起こす反応は吸熱反応であり、電池用燃料の改質反応を促進するために、水蒸気改質装置6にはバーナー等の燃焼部5が改質反応の熱源として接続される。なお、水蒸気改質装置6における電池用燃料の改質反応を安定して行うため、燃焼部5は、水蒸気改質装置6におおよそ摂氏700度(°C)〜1000度(°C)という高温の熱量を供給する。或いは、高温作動中のSOFC7からの排熱(摂氏700度〜1000度)を水蒸気改質装置6への熱量の供給源として併用してもよい。
【0036】
さて、燃焼部5より水蒸気改質装置6内にて高温の熱量を受けた水と電池用燃料は、水蒸気改質反応を起こし、水素H2 、一酸化炭素CO、二酸化炭素CO2 を含有する改質ガスとなる。水蒸気改質装置6を出た改質ガスは、SOFCのアノードに供給され、前述した発電に至る。
【0037】
なお、上記した燃焼部5には、ガス供給管を介して都市ガス等の燃料が供給される。ガス供給管を介して供給される燃料は、ウオッベ指数が高く、一次空気と混合されることにより良好に燃焼される高熱量燃料である。また、燃焼部5には、上記したSOFCのアノードに供給されたものの反応に寄与しなかったオフガス(未反応ガス)が、循環ガス供給管(図示しない)を介して供給される。オフガスは、SOFCにおいて発生する水分を多く含み、水素を主成分とするガスであり、ウオッベ指数が低い低熱量燃料である。
【0038】
熱回収装置3は、上流側排気ガス流路9、気・液熱交換器13、下流側排気ガス流路10、バイパス流路11、排気方向切替ダンパ12、ドレン排出口14から構成されている。すなわち、熱回収装置3の構成は、燃焼部5からの排気ガス流路を構成するもので、貯留タンク4の内部に気・液熱交換器13が配置されている。つまり、貯留タンク4の内部を排気ガス流路が貫通した恰好となっている。
【0039】
詳細に説明すると、上流側排気ガス流路9の一端は、燃焼部5の排気ガス排出口に繋がっている。気・液熱交換器13は、上部側に排気ガス導入口が設けられ、上流側排気ガス流路9の末端と連結されている。また、気・液熱交換器13の下部側に排気ガス排出口があり、下流側排気ガス流路10が連結されている。
【0040】
気・液熱交換器13の形状は任意であり、図の様な単純な水平部と垂直部によって構成される「コ」の字状であってもよく、水平部と垂直部がそれぞれ複数列、並列に設けられているものであってもよい。また気・液熱交換器13は螺旋コイル状であってもよい。ただし、気・液熱交換器13はその内部のいずれの部位も下り勾配または平坦であって上り勾配部は存在しない。
【0041】
上流側排気ガス流路9の途中から分岐されたバイパス流路11は、下流側排気ガス流路10と繋がっており、バイパス流路11の出口には排気方向切替ダンパ12が設けられている。排気方向切替ダンパ12はモータを内蔵し、排気ガスの流れる方向を切り替える流路調節機能を持っている。
【0042】
詳細に説明すると、図5に示すように、排気方向切替ダンパ12がバイパス流路11の出口を完全に塞いでいる角度を0度とし、排気方向切替ダンパ12が気・液熱交換器13の排気ガス排出口からの下流側排気ガス流路10を完全に塞いでいる角度を90度とし、この排気方向切替ダンパ12の開放角度を調整することで、気・液熱交換器13に流れ込む排気ガス量を調整し、貯留タンク4内の湯水の温度を調整する。
また、下流側排気ガス流路10のバイパス流路11と連結された部位より下流側には、ドレン排出口14が設けられている。
【0043】
発電装置2の燃焼部5から上流側排気ガス流路9、気・液熱交換器13、そして下流側排気ガス流路10を経てドレン排出口14に至る排気ガス流路は、いずれの部位も下り勾配または平坦であって上り勾配部は存在せず、常に上流側から下流側へ排気ガスが流れる構造になっている。なお、少なくとも、気・液熱交換器13の排気ガス導入口からドレン排出口14までが下り勾配または平坦であって上り勾配部が存在しないように構成されていれば良い。
【0044】
湯水を貯留するための貯留タンク4は、貯留タンク4の頂部に設けられた頂部接続部30並びに、底部に設けられた底部接続部31に対して給湯・給水系統60を構成する配管が接続された構成となっている。頂部接続部30から接続されている給湯・給水系統60の下流側の途中には、補助熱源機40が設けられている。なお、給湯・給水系統60の詳細な説明は省略する。
【0045】
貯留タンク4は、高さ方向、即ち内部に貯留される湯水の水位上昇方向に複数(本実施形態では4つ)の温度センサー20〜23を取り付けた構成となっている。温度センサー20〜23は、それぞれ貯留タンク4内の湯水の温度を検知するための温度検知手段として機能すると共に、貯留タンク4内に所定温度あるいは温度範囲の湯水の残留量を検知するための残量検知手段としての役割も果たす。
【0046】
コージェネレーションシステム1は、制御手段50によって動作が制御されている。制御手段50は、従来公知のコージェネレーションシステムが備えているものと同様のものであり、例えばCPUや所定の制御プログラムが内蔵されたメモリなどを備えた構成とすることができる。制御手段50は、各部に設けられたセンサー類の検知信号や、メモリに記憶されているデータ等に基づいてコージェネレーションシステム1の各部に設けられた弁や発電装置2、排気方向切替ダンパ12、補助熱源機40等の動作を制御し、コージェネレーションシステム1の総合エネルギー効率の最適化を図る構成とされている。
【0047】
次に、本実施形態のコージェネレーションシステム1における、気・液熱交換器13に流れ込む排気ガスの比率を調節する流路調節機能(排気方向切替ダンパ12)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
コージェネレーションシステム1は、加熱モード、保温モード、バイパスモードから動作モードを選択して、流路調節機能を働かせることができる。以下、コージェネレーションシステム1の動作について、各動作モード毎に説明する。
【0048】
(加熱モード)
加熱モードでは、図2に矢印で示すように、発電装置2の動作に伴って発生する燃焼部5からの高温の排気ガス(熱エネルギー)を、バイパス流路11の出口に設けられた排気方向切替ダンパ12の角度を0度(排気方向切替ダンパ12がバイパス流路11の出口を完全に塞いでいる角度)に調整することにより、排気ガス流路を調整する。
【0049】
つまり、排気ガスを上流側排気ガス流路9から気・液熱交換器13を経て、下流側排気ガス流路10に流すことにより、熱エネルギーを気・液熱交換器13にて回収して貯留タンク4内の湯水を加熱する動作モードである。加熱モードは、貯留タンク4に設けられた温度センサー20、21によって検知される湯水の温度が設定温度(一定温度)に達するまで実施される。すなわち、本動作モードでは、気・液熱交換器13に流れ込む排気ガスの比率が100%である。
【0050】
(保温モード)
保温モードは、図3に矢印で示すように、発電装置2の動作に伴って発生する燃焼部5からの高温の排気ガスを、バイパス流路11の出口に設けられた排気方向切替ダンパ12の角度を調節することで、排気ガス流路を調整する。つまり、上流側排気ガス流路9から気・液熱交換器13へ流す流量と、上流側排気ガス流路9からバイパス流路11へ流す流量とを調節する動作モードである。
本保温モードは、例えば、貯留タンクが満蓄熱状態である場合において、自然放熱による温度低下を防止するために実施される。
【0051】
この調節機能により、気・液熱交換器13にて回収する熱エネルギー量を調整し、貯留タンク4に設けられた温度センサー20、21によって検知される湯水の温度を設定温度(一定温度)のまま保持できるよう、排気方向切替ダンパ12の角度を微調整する。すなわち、本動作モードでは、排気方向切替ダンパ12の角度を0〜90度の間で微調整する時、上流側排気ガス流路9から気・液熱交換器13に流れ込む排気ガスの比率は0〜100%となり、バイパス流路11へ流れ込む排気ガスの比率は100〜0%となる。
【0052】
(バイパスモード)
バイパスモードは、図4に矢印で示すように、発電装置2の動作に伴って発生する燃焼部5からの高温の排気ガスを、バイパス流路11の出口に設けられた排気方向切替ダンパ12の角度を90度(排気方向切替ダンパ12が気・液熱交換器13の排気ガス排出口からの下流側排気ガス流路10を完全に塞いでいる角度)に調整することにより、排気ガス流路を調整する。
本バイパスモードは、例えば、貯留タンク内における局部沸騰を防止するために実施される。
【0053】
つまり、排気ガスを上流側排気ガス流路9からバイパス流路11を経て、下流側排気ガス流路10に流し大気中に放つことにより、熱エネルギーを気・液熱交換器13にて回収せず、貯留タンク4内の湯水を加熱しない動作モードである。バイパスモードは、貯留タンク4に設けられた温度センサー20、21によって検知される湯水の温度が設定温度(一定温度)を超えた時に実施される。すなわち、本動作モードでは、気・液熱交換器13に流れ込む排気ガスの比率が0%である。
【0054】
本実施形態のコージェネレーションシステム1では、温度センサー20、21の検知温度を制御手段50で監視し、貯留タンク4内の湯水の温度が設定温度(一定温度)となるように、排熱回収装置3に設けられた排気方向切替ダンパ12の開放角度を0度〜90度の間で調整し、気・液熱交換器13に流れ込む排気ガスの比率を0〜100%の間で調整することが可能である。
【0055】
すなわち、従来技術で問題となっていた高温の排気ガスが貯留タンク内の高温排気ガス流路を通過し続けることを回避できる。つまり、前記流路調節機能によって、過剰な排気ガスをバイパス流路11を経由して大気中に放つことが可能となり、貯留タンク4を必要以上に加熱することを防止できる。
【0056】
本実施形態のコージェネレーションシステム1では、燃料電池等によって発生した排気ガスから直接的に熱回収し且つ温度調節することが可能である。
さらに、貯留タンク4に気・液熱交換器13を内蔵することにより、従来必要だった発電装置内の熱交換器、熱媒体循環用の循環ポンプ、冷却ラジエータを不要とし、コストダウンに大きく寄与している。
【0057】
燃焼部5において、SOFC7からのオフガスを燃焼させ貯留タンク4を昇温させるための排気ガスを発生させることができる。つまり、燃焼部5にてオフガスを素早く燃焼させることが可能となり、オフガスの熱量を下げることなく、排気ガスへと変えることができ、高温の排気ガスを気・液熱交換器13へ送ることを可能としている。
【0058】
本実施形態のコージェネレーションシステム1は、排気ガスを一方向排気させるために上り勾配部を設けていない。つまり、上部側に排気ガス導入口を、下部側に排気ガス排出口を設け、気・液熱交換器13を通過した後に冷却された排気ガスの内、液化され下流側に集められたドレン(蒸留水)をドレン排出口から排出することを可能にしている。
【0059】
ここでSOFC7からのオフガスは、前記した様にSOFC7のアノードに供給されたものの反応に寄与しなかった未反応ガスであり、水分を多く含み、水素を主成分とする。そのためオフガスを燃焼させた燃焼ガスには、水蒸気が多量に含まれる。そしてオフガスを燃焼させた燃焼ガスが貯留タンク4の内部に気・液熱交換器13を通過すると、燃焼ガスに含まれる水蒸気が液化し、ドレンを発生させる。
この排出されたドレンは、水の純度が高く、蒸留水に近い。
そこで本実施形態では、ドレン(蒸留水)は、発電装置2に備えられた水蒸気改質装置6で再利用することを可能にしている。
【0060】
また、水蒸気改質装置6を発電装置2に備えることで、水蒸気改質装置6からSOFC7までの距離を短くし、高温に加熱された改質ガスの放熱ロスを最小限に抑えることを図っている。
【0061】
さらに、本実施形態のコージェネレーションシステム1では、発電装置2と貯留タンク4とを一つの筐体内に収めたことにより、省スペース化が図られると共に、排気ガスが流れる流路が外気に面することがなく気・液熱交換器13に連結されるため、排気ガスの放熱ロスを最小限に抑えることを図っている。
【0062】
本実施形態のコージェネレーションシステム1では、貯留タンク4から排出される湯水が特定温度以下の場合に作動する補助熱源機40を別置としたことにより、省スペース化を図ると共に、補助熱源機の有無の選択をユーザ側で決定できるようにしている。このことにより、既設の給湯器を補助熱源機として利用することが可能となり、ユーザに無駄な経済的負担を強いることが避けられる。また、補助熱源機40に風呂追焚機能や温水暖房機能を備えて、コージェネレーションシステム1に対して別置とし、給湯・給水系統60とは別の独立した追焚回路や暖房回路を備えてもよい。
【0063】
なお、補助熱源機40は、従来公知の給湯器と同様にガスや灯油等の燃料を燃焼するためのバーナーと熱交換器とを内蔵しており、燃料の燃焼により発生した熱エネルギーを利用して湯水を加熱するものである。補助熱源機40は、貯留タンク4から排出される湯水の温度が低い等のような特別な場合に限って燃焼動作を行う。
【0064】
本実施形態では、温度センサー20、21の検知温度をそのまま動作モード判定用の基準温度とする例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、温度センサー20〜23の検知温度から選ばれる1又は複数の検知温度あるいは、温度センサー20〜23の検知温度に所定の演算を加えて動作モード判定用の基準温度を設定する構成としてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、気・液熱交換器を貯留タンクの下部領域に設けることにより、貯留タンク内部の液体を満蓄熱状態にすることが可能となる。詳しく説明すると、高温の排気ガスを貯留タンクの下部領域に存在する低温の液体と熱交換させることにより、温められた液体が自然対流にて貯留タンクの上部に上がっていき、貯留タンク内部の上層部から温度成層が形成されていく。その結果、貯留タンク内部の液体を満蓄熱状態にすることが可能となる。
【0066】
なお、本実施形態では、発電装置2にSOFC形の燃料電池を採用した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、今後開発される高効率の発電効果を持つ他の燃料電池を利用して発電するものを採用することができる。また本発明の構成要件たる発電部は、燃料電池に限定されるものではなく、例えばガスエンジンと発電機の組み合わせであってもよい。
【0067】
ちなみに、本実施形態のコージェネレーションシステム1では、発電装置2(発電部)と、排熱回収装置3と、貯留タンク4が一つの筐体内に納められていたが、発電装置2と、排熱回収装置3と、貯留タンク4は、どのように組み合わされてもよいし、一つの筐体内に納められていないものも考えてよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態であるコージェネレーションシステムを示す作動原理図である。
【図2】図1に示すコージェネレーションシステムが加熱モードで動作する際の動作状態を示す作動原理図である。
【図3】図1に示すコージェネレーションシステムが保温モードで動作する際の動作状態を示す作動原理図である。
【図4】図1に示すコージェネレーションシステムがバイパスモードで動作する際の動作状態を示す作動原理図である。
【図5】図1に示すコージェネレーションシステムの排気方向切替ダンパ付近の拡大図である。
【符号の説明】
【0069】
1 コージェネレーションシステム
2 発電装置(発電部)
3 排熱回収装置
4 貯留タンク
5 燃焼部(燃焼装置)
6 水蒸気改質装置(燃料改質器)
7 SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)
9 上流側排気ガス流路
10 下流側排気ガス流路
11 バイパス流路
12 排気方向切替ダンパ
13 気・液熱交換器
14 ドレン排出口
20 温度センサー
21 温度センサー
40 補助熱源機
50 制御手段
60 給湯・給水系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気と排気ガスとを発生する発電部と、液体を貯留する貯留タンクとを有するコージェネレーションシステムにおいて、貯留タンクは気・液熱交換器を内蔵し、貯留タンクの外部に気・液熱交換器を迂回するバイパス流路を備え、さらに排気ガスの流れを気・液熱交換器側とバイパス流路側のいずれに流すかの切り換え或いは両者に流れる排気ガスの比率を調節する流路調節機能を備え、当該気・液熱交換器に発電部の排気ガスを通過させて貯留タンク内の液体を昇温することを特徴とするコージェネレーションシステム。
【請求項2】
発電部は、燃料電池と燃料電池のオフガスを燃焼させる燃焼部とを有し、前記燃焼部において排気ガスを発生させることを特徴とする請求項1に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項3】
貯留タンクの高さ方向の中心よりも下部に、貯留タンクに貯留された液体の温度を検知する温度検知手段が設けられ、流路調節機能は、前記温度検知手段の検知温度が一定以上である場合に、排気ガスの一部又は全部をバイパス流路側に流すことを特徴とする請求項1又は2に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項4】
気・液熱交換器は上部側に排気ガス導入口があり、下部側に排気ガス排出口があり、排気ガス導入口から排気ガス排出口に至る流路はいずれの部位も下り勾配または平坦であって上り勾配部が存在しないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコージェネレーションシステム。
【請求項5】
貯留タンクの外部における排気ガスが流れる流路の一部であって、気・液熱交換器の下流側にドレン排出口が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコージェネレーションシステム。
【請求項6】
発電部は水蒸気改質装置を備え、ドレン排出口から回収されたドレンを気化して水蒸気改質装置で再利用することを特徴とする請求項5に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項7】
発電部からドレン排出口に至る排気ガスの流路は、いずれの部位も下り勾配または平坦であって上り勾配部が存在しないことを特徴とする請求項5又は6に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項8】
発電部と貯留タンクとが一つの筐体内に収められていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のコージェネレーションシステム。
【請求項9】
貯留タンクから排出される液体が特定温度以下の場合に作動する補助熱源機を別置としたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のコージェネレーションシステム。
【請求項10】
気・液熱交換器を貯留タンクの下部領域に設け、液体の自然対流にて貯留タンク内部に温度成層を形成することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のコージェネレーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−151384(P2010−151384A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330746(P2008−330746)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】