説明

コーティングされた物品および多層コーティング

物品が開示され、ここで着色非隠蔽コーティング層がその表面に堆積されている。このコーティング層は、約10%の最大ヘーズを有する着色粒子およびフィルム形成材樹脂を含有する保護コーティング組成物から堆積される。これらのコーティングを使用する方法およびそれによってコーティングされる基材がまた、開示される。染料を含有する類似のコーティング層に匹敵する透明度および色を有し得、慣習的な顔料性コーティングと同様の色の持続性を有し得る、着色非隠蔽コーティング層が堆積したコーティングされた物品が提供され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、表面を有する物品に関し、ここで着色非隠蔽コーティング層は、この表面の少なくとも一部上に堆積されている。このコーティング層は、低いヘーズ(高い透明度)を有する着色粒子およびフィルム形成材樹脂を含有する保護コーティング組成物から堆積される。本発明はまた、このような着色層を含む多層コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
有色の顔料を含む(colored pigmented)ベースコートを基材へ塗布し、次いでこのベースコート上に透明なトップコートを塗布する工程を包含する「カラー−プラス−クリア(color−plus−clear)」コーティング系は、例えば、自動車および床の被覆(例えば、陶磁器タイルおよび木質フローリング)が挙げられる多くの消費財に対する最初の仕上げとして、ますます一般的になってきた。ベース−プラス−カラー(base−plus−clear)コーティング系は、光沢および像の明確さが挙げられる目立った外観上の性質を有し得る。
【0003】
「三重コート(Tricoat)」コーティング系は、特定のコーティング用途に使用される。このような系は、上に記載される2工程のベースプラスカラー(base−plus−clear)コーティング系と比較した場合、深い透明色効果を達成し得る。三重コート系は、ベースコート層と透明なトップコート層との間に堆積する、さらなる着色非隠蔽層を備える。標準的な三重コート加工は、反射性成分(例えば、金属性および/またはマイカの干渉フレーク(interference flake))を含むか、またはこれを含まない第1段階の顔料性ベースコートを塗布し、次いで第2段階の着色非隠蔽コーティング層を塗布し、その後に透明なトップコートを塗布する工程を包含する。
【0004】
特定の三重コート系中の着色非隠蔽コーティング層の1つの目的は、ときとして、「砂糖漬け(candied)」効果として公知である、ベースコート層に色の深みおよび豊かさを与えることであり得る。例えば、特定の用途において、有機性の赤色の非隠蔽コーティング層が赤色の金属性ベースコート層上に塗布されて、この赤色の金属性ベースコートの赤色の深みおよび豊かさを向上させ得る。いくつかの三重コート系において、着色非隠蔽コーティング層は、塗布された色の組み合わせに起因して、ベースコート層上に対比色の効果を与える。例えば、特定の用途において、有機性の赤色の非隠蔽層は、銀色の金属性ベースコート層上に塗布されて、赤い金属性の外観を与え得る。別の例において、有機性の黄色の非隠蔽層は赤色の金属性ベースコート層上に塗布されて、橙色の金属性の外観を与え得る。
【0005】
いくつかの場合において、このような着色非隠蔽コーティング層は、上に記載されるようにベースコート層上に塗布されるが、さらなるクリアコート層の塗布を伴わない。これらの例において、この着色非隠蔽コーティング層は、代表的に、伝統的なクリアコートに類似する性質を提供する。
【0006】
他の場合において、これらの着色非隠蔽コーティング層は、ベースコートまたはクリアコート層が存在しない基材に、単一のコーティング層として直接塗布され得る。さらに、このような着色非隠蔽コーティング層は、代表的に、この基材に対して色および保護の両方を提供する。
【0007】
歴史的に、染料は、このような着色非隠蔽コーティング層に透明色を実現するために使用されてきた。このような用途において、染料は、コーティング媒体内で完全に可溶性であり、かつ溶媒和した状態で光を散乱しない有機着色料と見なされる。しかし、染料は、多くの場合、周辺の光および気象条件に曝された場合に、顔料より乏しい耐久性を有する。染料は、多くの場合、コーティングの表面に移動するそれらの傾向に起因して、顔料より、色の乏しい持続性を有する。特定の染料において、重金属は、色彩を与えるために組み込まれ、そして次に、これらの染料の耐久性の性質を向上させる。しかし、多くの重金属は、有毒であると考えられ、そして結果として、それらの使用による健康上および安全性上の問題が存在する。さらに、染料は、コーティング層の表面に移動し得、色の損失を生じ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、染料を含有する類似のコーティング層に匹敵する透明度および色を有し得、慣習的な顔料性コーティングと同様の色の持続性を有し得る、着色非隠蔽コーティング層が堆積したコーティングされた物品に対する必要性が、コーティングの分野に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
1つの観点において、本発明は、表面を備える物品に関し、ここで保護コーティング組成物から堆積される着色非隠蔽コーティング層が、この表面の少なくとも一部上に堆積される。この保護コーティング組成物は、約10%の最大ヘーズを有する着色粒子およびフィルム形成材樹脂を含有する。
【0010】
別の観点において、本発明は、多層コーティングに関する。本発明の多層コーティングは、以下を含む:(a)約10%の最大ヘーズを有する着色粒子およびフィルム形成材樹脂を含有する保護コーティング組成物から堆積した着色非隠蔽コーティング層;ならびに(b)この着色非隠蔽層上に堆積したクリアコート層。
【0011】
さらに別の観点において、本発明は、以下を備える多層コーティング系に関する:(a)樹脂製バインダーおよび顔料を含有するフィルム形成材組成物から堆積したベースコート層;(b)このベースコート層の少なくとも一部上に堆積した着色非隠蔽コーティング層;ならびに(c)この着色非隠蔽層の少なくとも一部上に堆積したクリアコート層。この着色非隠蔽コーティング層は、約10%の最大ヘーズを有する着色粒子およびフィルム形成材樹脂を含有する保護コーティング組成物から堆積される。このクリアコート層は、樹脂製バインダーを含有するフィルム形成材組成物から堆積される。
【0012】
これらの組成物を使用するための方法はまた、本発明の範囲内であり、これらの方法に従ってコーティングされた基材も同様に、本発明の範囲内である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(発明の実施形態の説明)
操作の実施例以外においてか、または他に示される場合、全ての数、数値的なパラメーターおよび/または範囲の表現(例えば、明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量、反応条件など)は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されることが理解されるべきである。したがって、それと反対のことが示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に示される数値的パラメーターは、本発明によって得られる所望の性質に依存して変わり得る近似である。最低限でも、そして特許請求の範囲に対する均等の原則の適用を制限することを試みるようにではなく、各数値的パラメーターは、報告された有効数字という点で、そして普通の四捨五入の技術を適用することによって、少なくとも解釈され得る。
【0014】
本発明の幅広い範囲に示される数値的範囲および数値的パラメーターが近似であるにも関わらず、特定の実施例に示される数値は、できるだけ正確に報告される。しかし、任意の数値は、それぞれの試験測定において見出される、標準偏差から必ず生じる本質的に特定の誤差を含む。
【0015】
また、本明細書中で列挙される任意の数値的範囲は、本明細書中に包含される、全ての部分的な範囲を含むことが意図されることを、理解すべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、列挙される最小値1と列挙される最大値10との間であり、かつそれを含む、全ての部分的な範囲を含むことが意図され、すなわち、1と等しいか、それより大きな最小値および10と等しいか、それより小さな最大値を有する。
【0016】
本発明の特定の実施形態は、表面を備える物品に関し、ここで着色非隠蔽コーティング層は、この表面の少なくとも一部上に堆積され、そしてこの層は、約10%の最大ヘーズを有する着色粒子、およびフィルム形成材樹脂を含有する保護コーティング組成物から堆積される。
【0017】
本明細書中で使用される場合、用語「非隠蔽コーティング層」とは、表面上に堆積される場合、コーティング層の下の表面が、可視的であるコーティング層をいう。本発明の特定の実施形態において、この非隠蔽コーティング層の下の表面は、この非隠蔽層が、自動車の塗換えコーティングの分野において公知である代表的な乾燥フィルム厚(例えば、0.5〜5.0ミル(12.7〜127ミクロン))で塗布される場合、可視的である。非隠蔽を評価するための1つの方法は、不透明度の測定によるものである。本明細書中で使用される場合、「不透明度」とは、材料が基材を覆い隠す程度をいう。
【0018】
本明細書中で、「不透明度の%」とは、5%以下の反射率の黒い基材上の乾燥コーティングフィルムの反射率の、85%の反射率の基材上に同等に塗布され、かつ乾燥された同じコーティングフィルムの反射率に対する比をいう。乾燥コーティングフィルムの不透明度の%は、このコーティングの乾燥フィルム厚および着色粒子の濃度に依存する。本発明の特定の実施形態において、この着色非隠蔽コーティング層は、1ミル(約25ミクロン)の乾燥フィルム厚において90%以下(例えば50%以下)の不透明度の%を有する。
【0019】
本明細書中で使用される場合、用語「保護コーティング組成物」とは、表面上に堆積される場合に、インクとは異なり、その表面の完全性を保持するために、周囲の環境条件に起因する分解からのその表面の保護を提供する組成物をいう。環境条件に起因する分解の例としては、酸化および光分解が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、保護コーティング組成物は、通常、引っかき抵抗性および傷抵抗性のような機械的性質を有する。
【0020】
本発明の特定の実施形態は、表面を有する物品に関し、ここで着色粒子を含有する保護コーティング組成物は、この表面の少なくとも一部上に堆積されている。本明細書中で使用される場合、用語「着色粒子」とは、この保護コーティング組成物に対して、ほとんど溶解性を有さないか、または全く溶解性を有さず、かつこの組成物に色を与える粒子をいう。このような着色粒子の例としては、とりわけ色(例えば、赤、緑、黄、および青)を与える顔料が挙げられるが、これに限定されない。これらの着色粒子を構成し得、かつ本発明において使用され得る適切な顔料組成物の例としては、アゾ(モノアゾ、ジアゾ、β−ナフトール、ナフトールAS、塩の型(アゾ顔料レーキ)、ベンズイミダゾロン、ジアゾ縮合物、アゾ金属錯体(イソインドリノン、イソインドリン)および多環式(フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン(インダンスロン、アントラピリミジン、フラバスロン、ピランスロン、アンサンスロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン)の顔料、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明において、上記保護コーティング組成物中に存在する着色粒子は、10%の最大ヘーズ(例えば、5%の最大ヘーズ、または1%の最大ヘーズ)を有するか、またはなお他の実施形態において、0.5%の最大ヘーズを有する。本明細書中で使用される場合、「ヘーズ」とは、材料の透明度の基準をいい、そしてASTM D1003によって規定される。
【0022】
本明細書中に記載される着色粒子のヘーズ値は、液体(例えば、水、有機溶媒、または本明細書中に記載されるような分散剤)中に分散される着色粒子を最初に有し、次いで500ミクロンの光路長を有するByk−Gardner TCS(The Color Sphere)機器を使用して、溶媒(例えば、ブチルアセテート)中に希釈されたこれらの分散物を測定することによって決定され得る。液体サンプルのヘーズの%が、濃度依存性であることに起因して、本発明者らは、本明細書中で、最大吸光度の波長における約15%〜約20%の透過率にて、ヘーズの%を特定した。図1において一般的に示されるように、受容可能なヘーズは、その粒子と周囲の媒体との間の屈折率の違いが低い場合、相対的に大きい粒子について達成され得る。反対に、より小さい粒子に関して、その粒子と周囲の媒体との間のより大きい屈折率の違いは、受容可能なヘーズを提供し得る。
【0023】
一般に、10%以下の望ましいヘーズ(最小限の散乱)を達成するために、この着色粒子は、150ナノメートル以下の平均1次粒子サイズを有する。したがって、特定の実施形態において、保護コーティング組成物中に存在する着色粒子は、このような1次粒子サイズを有する。このような粒子は、例えば、約0.3ミリメートル(例えば、約0.2ミリメートル)の粒子サイズか、またはいくつかの場合において約0.1ミリメートルの粒子サイズを有するミリング用媒体を用いてバルクの顔料をミリングすることによって調製され得る。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、顔料粒子は、高エネルギーミル中で、分散剤(例えば、Solsperse(登録商標)32,500またはSolsperse(登録商標)32,000(両方ともLubrizol Corporation of Wickliffe,Ohioから入手可能))を使用する有機溶媒(例えば、ブチルアセテート)系においてか、または必要に応じてポリマー性研磨材樹脂と一緒に分散剤(例えば、Lubrizol Corporationから入手可能なSolsperse(登録商標)27,000)を使用する水中で、ナノ粒子サイズまでミリングされる。本発明の着色粒子を生成する他の適切な方法としては、結晶化、沈殿、気相濃縮、および化学的摩損(すなわち、部分的な溶解)が挙げられる。着色粒子の再凝集が最小化されるか、または総じて回避される限り、これらの着色粒子を生成するための任意の公知の方法が利用され得ることに、留意すべきである。
【0025】
平均1次粒子サイズの測定値は、当業者に認識されるように、100kVでのPhilips CM12透過電子顕微鏡(TEM)によって得られ得る。
【0026】
特定の実施形態において、上記着色粒子は、上記保護コーティング組成物中の全固形物の重量に基づいて、少なくとも0.01重量%〜50重量%の量でこの保護コーティング組成物中に存在し得る。本発明の保護コーティング中に存在するこれらの着色粒子の量は、これらの列挙された値を含めて、これらの列挙された値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。
【0027】
特定の実施形態において、上記着色非隠蔽コーティング層は、1色の着色粒子を含むか、または他の実施形態において、このような層は、少なくとも2色以上の粒子の混合物を含む。
【0028】
本発明において使用される保護コーティング組成物は、フィルム形成材樹脂を含有する。本明細書中で使用される場合、「フィルム形成樹脂」とは、この組成物中に存在する任意の溶媒もしくは任意のキャリアの除去、または周囲の温度もしくは高い温度での硬化の際に、基材の少なくとも水平な表面上に、自立型の連続的なフィルムを形成し得る樹脂をいう。
【0029】
代表的に、このような保護コーティング組成物において使用され得る慣習的なフィルム形成材樹脂としては、とりわけ、自動車のOEMコーティング組成物、自動車の塗換えコーティング組成物、産業用コーティング組成物、建築用コーティング組成物、粉末コーティング組成物、コイル用コーティング組成物、および航空宇宙用コーティング組成物において使用されるものが挙げられる。
【0030】
適切な樹脂としては、例えば、少なくとも1つの型の反応性官能基を有するポリマーと、およびこのポリマーの官能基と反応する官能基を有する硬化剤との反応から形成されるものが挙げられる。本明細書中で使用される場合、用語「ポリマー」は、オリゴマーを包含することが意味され、そしてこのポリマーとしては、ホモポリマーおよびコポリマーの両方が挙げられるが、これらに限定されない。これらのポリマーは、例えば、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマーまたはポリエーテルポリマー、ポリビニルポリマー、セルロースポリマー、アクリレートポリマー、シリコンベースのポリマー、それらのコポリマー、およびそれらの混合物であり得、そして官能基(例えば、エポキシ基、カルボン酸基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミド基、カルバメート基、およびカルボキシレート基)を含み得る。
【0031】
使用される場合、アクリルポリマーは、代表的に、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはアクリル酸もしくはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(例えば、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはヒドロキシプロピルアクリレートと1つ以上の他の重合可能なエチレン性(ethylenically)の不飽和モノマー(例えば、メチルメタクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられるアクリル酸のアルキルエステル、ならびにビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレンおよびビニルトルエン))とのコポリマーである。反応物の比および反応条件は、ペンダントなヒドロキシル官能性またはカルボン酸官能性を有するアクリルポリマーを生じるように選択される。
【0032】
アクリルポリマーに加えて、本発明において使用される保護コーティング組成物は、ポリエステルポリマーまたはポリエステルオリゴマーを含み得、これらとしては、末端の自由なヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を含むものが挙げられる。このようなポリマーは、多価アルコールとポリカルボン酸との縮合による公知な様式で調製され得る。適切な多価アルコールとしては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールが挙げられる。
【0033】
適切なポリカルボン酸としては、アジピン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸およびヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。前述のポリカルボン酸に加えて、無水物のようなこれらの酸の機能的等価物(存在する場合には)が使用されても、これらの酸の低級アルキルエステル(例えば、メチルエステル)が使用されてもよい。また、少量のモノカルボン酸(例えば、ステアリン酸)が、使用され得る。
【0034】
ヒドロキシル基含有ポリエステルオリゴマーは、ジカルボン酸の無水物(例えば、無水ヘキサヒドロフタル酸)とジオール(例えば、ネオペンチルグリコール)とを、1:2のモル比で反応させることによって調製され得る。
【0035】
風乾を向上させることが、望まれる場合、適切な乾性油の脂肪酸が、使用され得、そしてこれらとしては、アマニ油、大豆油、トール油、脱水ヒマシ油またはキリ油に由来するものが挙げられる。
【0036】
末端にイソシアネート基またはヒドロキシル基を含むポリウレタンポリマーがまた、使用され得る。使用され得るポリウレタンポリオールまたはNCOの末端を有するポリウレタンとしては、ポリマーのポリオールが挙げられるポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させることによって調製されるものが挙げられる。使用され得るポリ尿素含有末端のイソシアネート基または第1級アミン基もしくは第2級アミン基としては、ポリマーのポリアミンが挙げられるポリアミンとポリイソシアネートとを反応させることによって調製されるものが挙げられる。所望の末端基を得るために、ヒドロキシル/イソシアネートまたはアミン/イソシアネートの当量の比が調整され、そして反応条件が選択される。適切なポリイソシアネートの例としては、本明細書によって参考として援用される米国特許第4,046,729号の第5欄、26行目〜第6欄、28行目に記載されるものが挙げられる。適切なポリオールの例としては、本明細書によって参考として援用される米国特許第4,046,729号の第7欄、52行目〜第10欄、35行目に記載されるものが挙げられる。適切なポリアミンの例としては、米国特許第4,046,729号の第6欄、61行目〜第7欄、32行目および同第3,799,854号の第3欄、13行目〜50行目(両方とも本明細書によって参考として援用される)に記載されるものが挙げられる。
【0037】
これまでに記載されるとおり、シリコンベースのポリマーがまた、使用され得る。本明細書中で使用される場合、「シリコンベースのポリマー」は、1つ以上の−SiO−単位をその骨格中に含むポリマーを意味する。このようなシリコンベースのポリマーとしては、ハイブリッドポリマー(1つ以上の−SiO−単位をその骨格中に有する有機ポリマーブロックを含むもの)が挙げられ得る。
【0038】
前述の通り、本発明において使用される特定の保護コーティング組成物は、硬化剤の使用によって形成されるフィルム形成材樹脂を含有し得る。本発明において使用される保護コーティング組成物に使用するのに適切な硬化剤としては、OH官能基含有材料、COOH官能基含有材料、アミド官能基含有材料、およびカルバメート官能基含有材料に対する硬化剤のような、アミノプラスト樹脂およびフェノプラスト樹脂ならびにその混合物が挙げられ得る。本発明で使用され得る硬化可能な組成物における硬化剤として適切な、アミノプラスト樹脂およびフェノプラスト樹脂の例としては、本明細書によって参考として援用される米国特許第3,919,351号の第5欄、22行目〜第6欄、25行目に記載されるものが挙げられる。
【0039】
OH基ならびに第1級および/または第2級アミノ基を含有する材料に対する硬化剤としては、ポリイソシアネートおよびブロックポリイソシアネートがまた、適切である。本発明で使用され得る硬化可能な組成物において硬化剤として使用するのに適したポリイソシアネートおよびブロックイソシアネートの例としては、米国特許第4,546,045号の第5欄、16行目〜38行目;および同第5,468,802号の第3欄、48行目〜60行目に記載されるものが挙げられる。
【0040】
OH基ならびに第1級および/または第2級アミノ基を含有する材料に対する硬化剤としての無水物は、当該分野において周知である。本発明で使用され得る保護コーティング組成物において硬化剤として使用するのに適した無水物の例としては、米国特許第4,798,746の第10欄、16行目〜50行目;および同第4,732,790号の第3欄、41行目〜57行目(両方とも本明細書によって参考として援用される)に記載されるものが挙げられる。
【0041】
COOH官能基含有材料に対する硬化剤としてのポリエポキシドは、当該分野において周知である。本発明で使用され得る保護コーティング組成物において硬化剤として使用するのに適したエポキシドの例としては、本明細書によって参考として援用される米国特許第4,681,811号の第5欄、33行目〜58行目に記載されるものが挙げられる。
【0042】
エポキシ官能基含有材料に対する硬化剤としてのポリ酸は、当該分野において周知である。本発明で使用され得る保護コーティング組成物において硬化剤として使用するのに適したポリ酸の例としては、本明細書によって参考として援用される米国特許第4,681,811号の第6欄、45行目〜第9欄、54行目に記載されるものが挙げられる。
【0043】
ポリオール、すなわち、分子あたり平均で2つ以上のヒドロキシル基を有する材料は、NCO官能基含有材料ならびに無水物およびエステルに対する硬化剤として使用され得、そしてこのポリオールは、当該分野において周知である。このポリオールの例としては、米国特許第4,046,729号の第7欄、52行目〜第8欄、9行目;第8欄、29行目〜第9欄、66行目;および同第3,919,315号の第2欄、64行目〜第3欄、33行目(両方とも本明細書によって参考として援用される)に記載されるものが挙げられる。
【0044】
ポリアミンはまた、NCO官能基含有材料ならびにカーボネートおよび立体障害の小さい(unhindered)エステルに対する硬化剤として使用され得、そしてこのポリアミンは、当該分野において周知である。本発明で使用され得る保護コーティング組成物において硬化剤として使用するのに適したポリアミンの例としては、本明細書によって参考として援用される米国特許第4,046,729号の第6欄、61行目〜第7欄、26行目、および同第3,799,854号の第3欄、13行目〜50行目に記載されるものが挙げられる。
【0045】
所望される場合、硬化剤の適切な混合物は、使用され得る。さらに、本発明において使用される保護コーティング組成物は、硬化剤(例えば、上に記載されるもののようなアミノプラスト樹脂および/またはブロックイソシアネート化合物)が他の組成物構成成分と混合される、1構成要素の組成物として処方され得る。この1構成要素の組成物は、処方された場合、安定に保存され得る。あるいは、このような組成物は、例えば、上に記載されるもののようなポリイソシアネート硬化剤が、塗布の直前に、他の組成物構成要素の予め形成された混合物に添加され得る、2構成要素の組成物として処方され得る。この予め形成された混合物は、硬化剤(例えば、上に記載されるもののようなアミノプラスト樹脂および/またはブロックイソシアネート化合物)を含有し得る。
【0046】
特定の実施形態において、上記フィルム形成材樹脂は、一般的に、約30重量%より大きい量(例えば、約40重量%より大きい量)であり、かつ90重量%未満の量(組成物の全固形物の重量に基づいた重量%)で保護コーティング組成物中に存在する。例えば、樹脂の重量%は、30重量%と90重量%との間であり得る。硬化剤が使用される場合、これは、一般的に、70重量%までの量(代表的に、10重量%と70重量%との間の量)で存在し;この重量%はまた、このコーティング組成物の全固形物の重量に基づく。
【0047】
本発明において使用される保護コーティング組成物は、液体であるフィルム形成材樹脂、すなわち、水を介する系または溶媒を介する系から形成され得る。適切な希釈剤としては、有機溶媒、水、および/または水/有機溶媒混合物が挙げられる。この保護コーティング組成物が分散され得る有機溶媒としては、例えば、アルコール、ケトン、芳香族炭化水素、グリコールエステルまたはそれらの混合物が挙げられる。一般的に、この希釈剤は、この組成物の総重量に基づいて、5重量%〜80重量%(例えば、30%〜50%)の範囲の量で存在する。
【0048】
本発明において使用される保護コーティング組成物はまた、表面コーティングを処方する分野において周知であるもののような、必要に応じた成分を含有し得る。このような必要に応じた成分は、例えば、表面活性剤、流れ制御剤(flow control agent)、揺変剤、充填剤、抗ガッシング(anti−gassing)剤、有機共溶媒、触媒、抗酸化剤、光安定剤、UV吸収体および他の慣習の助剤を含み得る。当該分野において公知である任意のこのような添加剤は、この組成物から堆積して生じるコーティング層が上に記載されるように非隠蔽である限り、適合性の問題なくして使用され得る。これらの材料の非限定的な例は、米国特許第4,220,679号;同第4,403,003号;同第4,147,769号;および同第5,071,904号(これらの特許は、参考として本明細書中に援用される)に記載される。特定の場合において、必要に応じた成分の各々は、0.01重量%と同程度の低い量、および20.0重量%と同程度の高い量で存在し得る。通常、必要に応じた成分の総量は、この組成物の総重量に基づいて、0.01重量%〜25重量%の範囲である。
【0049】
特定の実施形態において、上記保護コーティング組成物は、光学効果顔料をさらに含有し得る。本明細書中で使用される場合、用語「光学効果顔料」とは、コーティング層の光学的特性を改変するために使用される顔料をいう。適切な光学効果顔料の例としては、マイカベースの顔料、ボロシリケートベースの顔料、オキシ塩化ビスマスの結晶、アルミニウムベースの顔料、液晶フレーク、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。この保護コーティング組成物中に存在するこのような光学効果顔料の量は、この組成物から堆積して生じるコーティング層が、上に記載される通り、非隠蔽である限り、特に限定されない。
【0050】
さらに、特定の実施形態において、上記着色非隠蔽層は、反射面上に堆積する。例えば、特定の実施形態において、この着色非隠蔽コーティング層は、少なくとも30%(例えば、少なくとも40%)の全反射率を有する反射性材料を備える表面上に堆積する。本明細書中で、「全反射率」とは、見る角度全体で合わせた可視スペクトルにおける、対象物からの反射光の、対象物に衝突する入射光に対する比をいう。本明細書中で、「可視スペクトル」とは、400ナノメートルの波長と700ナノメートルの波長との間の電磁スペクトルの部分をいう。本明細書中で、「見る角度」とは、視線(viewing ray)と、入射点(point of incidence)における表面に対する垂線との間の角度をいう。本明細書中で記載される反射率の値は、実施例の節に記載される手順によって、Minolta Spectrophotometer CM−3600dを使用して測定される。
【0051】
特定の実施形態において、上記反射性材料は、例えば、とりわけ磨かれたアルミニウム、冷間圧延鋼、クロムめっきされた金属、またはプラスチック上に真空蒸着された金属のような基材を含む。他の実施形態において、反射性材料は、例えば、コーティング組成物から堆積したベースコート層(例えば、銀色の金属性ベースコート層、有色の金属性ベースコート層、または白色のベースコート層のような)を備え得る、予めコーティングされた表面を備え得る。
【0052】
このようなベースコート層は、例えば、前述の保護コーティング組成物において使用されるこれまでに記載されたフィルム形成材樹脂のいずれかを含有し得る、ベースコートフィルム形成材組成物から堆積し得る。例えば、このベースコートのフィルム形成材組成物は、樹脂製バインダーおよび着色料として機能する1種以上の顔料を含有し得る。有用な樹脂製バインダーは、アクリルポリマー、アルキドおよびポリウレタンが挙げられるポリエステル(例えば、上記で詳細に議論されるもののいずれか)である。このベースコートのための樹脂製バインダーとしては、例えば、有機溶媒ベースの材料または水ベースのコーティング組成物が挙げられ得る。
【0053】
注記されるように、このベースコート組成物は、着色料として顔料を含み得る。このベースコート組成物に対して適切な顔料としては、例えば、アルミニウムフレーク、銅フレークまたは青銅フレークおよび金属酸化物をコーティングしたマイカが挙げられる金属性顔料;非金属色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、クロム酸鉛、およびカーボンブラック);ならびに有機顔料(例えば、フタロシアニンブルーおよびフタロシアニングリーン)が挙げられる。
【0054】
上記ベースコート組成物に含まれるのに適切な必要に応じた成分としては、表面コーティング(例えば、前述の材料)を処方する分野において周知であるものが挙げられる。このベースコート組成物の固体含有量は、多くの場合、ほぼ15重量%〜60重量%の範囲か、またはほぼ20重量%〜50重量%の範囲である。
【0055】
上記ベースコート組成物は、任意の慣習的なコーティング技術(例えば、とりわけはけ塗り塗装、スプレー塗装、浸漬塗装またはフロー塗装(flowing))によって基材に塗布され得る。有用なスプレー技術ならびにエアスプレー塗装、エアレススプレー塗装および静電塗装のための装置は、手動の方法または自動の方法のいずれかで使用され得る。基材に対するこのベースコートの塗布の間、この基材上に形成されるベースコートのフィルム厚は、多くの場合、0.1〜5ミル(2.5〜127マイクロメートル)の範囲であるか、または0.1〜2ミル(2.5〜50.8マイクロメートル)の範囲である。
【0056】
基材上に上記ベースコートのフィルムを形成した後、このベースコートは、次のコーティング組成物を塗布する前の期間に、加熱するか、または風乾することによって、硬化され得るか、あるいは溶媒がこのベースコートフィルムから排除される乾燥工程が与えられ得る。適切な乾燥条件は、特定のベースコート組成物、およびこの組成物が水を介する場合には周囲の湿度に依存するが、多くの場合、75°F〜200°F(21℃〜93℃)の温度における1分間〜15分間の乾燥時間が、適切である。
【0057】
再び、着色非隠蔽コーティング層に関して、このような層は保護コーティング組成物から堆積し、この保護コーティング組成物中に含有される着色粒子は、特定の実施形態において、水性媒体中に安定して分散され得る。これらの実施形態において、このような保護コーティング組成物は、以下の工程によって調製され得る:(a)上に記載される着色粒子を提供する工程、(b)これらの着色粒子と、(1)1種以上の重合可能な、エチレン性の不飽和モノマー;もしくは(2)1種以上の重合可能な不飽和モノマーと1種以上のポリマーの混合物(mixture);または(3)1種以上のポリマーとを混合して、混合物(admixture)を形成する工程;(c)この混合物(admixture)を、水性媒体の存在下で、高応力せん断状態(high stress shear condition)に供して、この混合物(admixture)を微粒子へと粒子化する工程;および(d)必要に応じて、このエチレン性の不飽和モノマーを、フリーラジカル重合条件下において重合する工程。
【0058】
特定の実施形態において、上記着色粒子は、少なくとも0.1重量%の量、または少なくとも5重量%の量、または少なくとも10重量%の量で、このような水性分散物中に存在し、これらの量は、この分散物中に存在する全固形物の重量に基づく。また、これらの着色粒子は、50重量%までの量、または40重量%までの量、または35重量%までの量でこのような水性分散物中に存在し、これらの量は、この分散物中に存在する全固形物の重量に基づく。このような水性分散物中に存在するこれらの着色粒子の量は、これらの列挙された値を含めて、これらの列挙された値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。
【0059】
特定の実施形態において、上記水性分散物は、これらの着色粒子と、(1)1種以上の重合可能な、エチレン性の不飽和モノマー;および/もしくは(2)1種以上の重合可能な不飽和モノマーと1種以上のポリマーの混合物(mixture);ならびに/または(3)1種以上のポリマーとを混合して、混合物(admixture)を形成することによって調製される。次いでこの混合物(admixture)は、水性媒体の存在下で、高応力せん断状態(以下で詳細に記載される)に供されて、この混合物(admixture)が微粒子へと粒子化される。存在する場合、次いでこれらのエチレン性の不飽和モノマーは、以下に記載されるようなフリーラジカル条件下において重合され得る。
【0060】
このような水性分散物において、上記着色粒子が分散される水性媒体は、ほぼ水だけである。しかし、いくつかのモノマー系および/またはポリマー系に関して、分散されるポリマーの粘度を低下させることを補助し得る、微量の不活性な有機溶媒を含むことがまた、所望され得る。特定の実施形態において、この水性分散物中に存在する有機溶媒の量は、この分散物の総重量に基づいて、20重量%未満(例えば、10重量%未満)であるか、またはいくつかの実施形態において、5重量%未満、もしくは2重量%未満である。例えば、この有機相が、25℃にて1000センチポイズより大きいBrookfield粘度またはW Gardner Holdt粘度を有する場合、数種の溶媒が、使用され得る。組み込まれ得る適切な溶媒の例としては、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、n−ブタノール、ベンジルアルコール、およびミネラルスピリットが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
含まれる場合、上記重合可能なエチレン性の不飽和モノマーとしては、当該分野において公知であるビニルモノマーが挙げられるエチレン性の不飽和モノマーのいずれかが挙げられ得る。カルボン酸官能基を含有する有用なエチレン性の不飽和モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリルオキシプロピオン酸、クロトン酸、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル、イタコン酸、イタコン酸のモノアルキルエステル、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用される場合、「(メタ)アクリル」およびそこから派生する用語は、アクリルおよびメタクリルの両方を包含することを意図する。
【0062】
カルボン酸官能基を含まない他の有用なエチレン性の不飽和モノマーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(例えば、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、およびエチレングリコールジ(メタ)アクリレート);ビニル芳香族化合物(例えば、スチレンおよびビニルトルエン);(メタ)アクリルアミド(例えば、N−ブトキシメチルアクリルアミド;アクリロニトリル;マレイン酸のジアルキルエステルおよびフマル酸のジアルキルエステル;ビニルハライドおよびビニリデンハライド;ビニルアセテート;ビニルエーテル;アリルエーテル;アリルアルコール;それらの誘導体およびそれらの混合物。
【0063】
上記エチレン性の不飽和モノマーとしては、エチレン性で不飽和の、β−ヒドロキシエステル官能基のモノマー(例えば、モノカルボン酸のようなエチレン性で不飽和の酸官能基のモノマー(例えば、アクリル酸)、およびフリーラジカルによって開始される重合に関与しないエポキシ化合物と、不飽和の酸モノマーとの反応から得られるもの)が挙げられ得る。このようなエポキシ化合物は、グリシジルエーテルおよびグリシジルエステルである。適切なグリシジルエーテルとしては、アルコールのグリシジルエーテルおよびフェノールのグリシジルエーテル(例えば、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなど)が挙げられる。適切なエポキシ化合物としては、以下の構造(I):
【0064】
【化1】

を有するものが挙げられ、ここで、Rは、4個〜26個の炭素原子を含む炭化水素ラジカルである。適切なグリシジルエステルとしては、商品名CARDURA EでShell Chemical Company から市販されているもの、および商品名GLYDEXX−10でExxon Chemical Companyから市販されているものが挙げられる。あるいは、このβ−ヒドロキシエステル官能基のモノマーは、エチレン性で不飽和の、エポキシ官能基のモノマー(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートおよびアリルグリシジルエーテル)、および飽和モノカルボン酸のような飽和カルボン酸(例えば、イソステアリン酸)から調製され得る。
【0065】
これまでに記載された通り、上記着色粒子はまた、1種以上のポリマーと混合され得る。適切なポリマーとしては、前述のフィルム形成材樹脂に関してこれまでに記載されたものが挙げられるが、これに限定されない。他の有用なポリマーとしては、ポリアミド(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミドおよびN−アルキルメタクリルアミド)が挙げられ得る。
【0066】
ポリエーテルはまた、本発明の特定の実施形態において使用され得る着色粒子の水性分散物を調製するために使用され得る。適切なポリエーテルポリマーの例としては、例えば、以下の構造式(II)または(III):
【0067】
【化2】

を有するポリアルキレンエーテルポリオールのようなポリエーテルポリオールが挙げられ得、ここで置換基Rは、水素、または混合性の置換基を含む1個〜5個の炭素原子を有する低級アルキル基であり、そしてnは、代表的に、2〜6の範囲の値を有し、そしてmは、8〜100またはそれ以上の範囲の値を有する。例示的なポリアルキレンエーテルポリオールとしては、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシテトラエチレン)グリコール、ポリ(オキシ−1,2−プロピレン)グリコール、およびポリ(オキシ−1,2−ブチレン)グリコールが挙げられる。
【0068】
種々のポリオール(例えば、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAなどのようなグリコール、またはトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのようなより高度な他のポリオール)のオキシアルキル化から形成されるポリエーテルポリオールはまた、有用である。示されたように利用され得る高度な官能性のポリオールは、例えば、化合物(例えば、スクロースまたはソルビトール)のオキシアルキル化によって作製され得る。1つの一般的に利用されるオキシアルキル化法は、酸性触媒または塩基性触媒の存在下における、ポリオールとアルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシドまたはエチレンオキシド)との反応である。ポリエーテルの特定の例としては、商品名TERATHANEおよびTERACOLで販売されるもの(E.I.Du Pont de Nemours and Company,Inc.から入手可能)が挙げられる。
【0069】
エチレン性の不飽和モノマーおよび/または他のさらなる重合可能なモノマーならびに予め形成されたポリマーを、ホモ重合および共重合するための適切な方法は、ポリマー合成の当業者に周知であり、そしてそれらのさらなる議論は、本開示に照らして必要であると考えられない。例えば、エチレン性の不飽和モノマーの重合は、バルクにおいてか水溶液もしくは有機溶媒の溶液(例えば、ベンゼンまたはn−ヘキサン)中か、またはエマルション中か、または水性分散物中で実施され得る。Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第1巻、(1963)、305ページ。この重合は、フリーラジカル開始剤(例えば、ベンゾイルペルオキシドまたはアゾビスイソブチロニトリル)、アニオン性開始剤および有機金属開始剤が挙げられる適切な開始剤系の方法によって成立し得る。分子量は、溶媒または重合媒体の選択、開始剤またはモノマーの濃度、温度、および連鎖移動剤によって制御され得る。さらなる情報が必要とされる場合、このような重合方法は、Kirk−Othmer.第1巻、203〜205ページ、259〜297ページおよび305〜307ページに開示される。
【0070】
一般に、本発明において使用される保護コーティング組成物中に存在し得る着色粒子を含む微粒子の水性分散物の調製に有用であるポリマーは、1000〜20,000、または1500〜15,000、または2000〜12,000の範囲の重量平均分子量(Mw)を有し得、この分子量は、ポリスチレンの基準を使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって決定される。着色粒子のこのような水性分散物の調製において使用するのに適したポリマーは、熱硬化性か、または熱可塑性かのいずれかであり得る。
【0071】
着色粒子を含む微粒子の水性分散物の調製に有用なポリマーとしてはまた、代表的には架橋剤といわれる、ポリマーまたは材料が挙げられ得る。適切な架橋剤としては、とりわけ、ポリイソシアネートおよびアミノプラスト樹脂のような、先だって議論されたものが挙げられる。
【0072】
特定の実施形態において、着色粒子を含む微粒子の水性分散物は、上に記載される重合可能なエチレン性の不飽和モノマーの1種以上と上に記載されるポリマーの1種以上との混合物と、この着色粒子とを混合することによって調製される。同様に、所望される場合、上記のポリイソシアネートとアミノプラスト樹脂との混合物が、使用され得、そしてこれらの材料のいずれか一方または両方と、上記1種以上のポリマーおよび/または1種以上の上に記載されるエチレン性の不飽和モノマーとの混合物が使用され得る。
【0073】
特定の実施形態において、上記微粒子の水性分散物は、これまでに記載された1種以上のモノマーおよび/または1種以上のポリマー(および使用される場合、有機溶媒)を含む第1の相、ならびに上記着色粒子を含む第2の相を有する複合性の微粒子を含む。
【0074】
本明細書中で使用される場合、用語「複合性の微粒子」は、2種以上の異なる材料の組み合わせを意味する。複合性の材料から形成される粒子は、一般的に、その表面下の粒子の内部部分の硬さと異なる、表面における硬さを有する。より具体的には、この粒子の表面は、当該分野において周知である任意の様式で改変され得、この様式としては、当該分野において公知である技術を使用してその表面の特性を、化学的かまたは物理学的に変化させることが挙げられるが、これに限定されない。
【0075】
例えば、粒子は、より軟らかい表面を有する複合粒子を形成する1つ以上の2次材料でコーティングされるか、被覆されるか、または封入される1次材料から形成され得る。あるいは、複合性の材料から形成される粒子は、異なる形態の1次材料によってコーティングされるか、被覆されるか、または封入される1次材料から形成され得る。本発明において有用な粒子についてのさらなる情報に関しては、G.Wypych、Handbook of Fillers、第2版、(1999)、15〜202ページ(これは、本明細書中に参考として具体的に援用される)を参照のこと。
【0076】
上記1種以上のモノマーおよび/または1種以上のポリマーは、少なくとも10重量%(例えば、少なくとも20重量%)の量か、またはいくつかの実施形態において、少なくとも30重量%の量で上記水性分散物中に存在し得、この量は、この分散物中に存在する固形物の総重量に基づく。また、この1種以上のモノマーおよび/または1種以上のポリマーは、80重量%までの量(例えば、70重量%までの量)か、またはいくつかの実施形態において、60重量%までの量でこの水性分散物中に存在し得、この量は、この分散物中に存在する固形物の総重量に基づく。この分散物中に存在する1種以上のモノマーおよび/または1種以上のポリマーの量は、これらの列挙された値を含めて、これらの列挙された値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。
【0077】
これまでに議論されたように、複合性の着色粒子を調製するための公知の方法は、エマルション重合技術を慣習的に利用し、それによって、モノマーはナノサイズの粒子および/または着色粒子の存在下で重合されて、複合性の微粒子の安定な分散物を形成する。一般的に、このようなモノマーとしては、比較的高いレベルの親水性モノマー(例えば、カルボン酸基含有モノマー)、および比較的高いレベルの親水性界面活性剤または親水性分散剤が挙げられ得る。コーティング組成物中に含有される場合、このような分散剤の親水性は、湿度に対する抵抗性に悪影響を及ぼし得るか、または望ましくない水に対する感受性を与え得る。本発明の着色粒子を含む微粒子の水性分散物は、前述の負の効果を最小化し得るか、または総じて排除し得る。なぜならバインダー系(すなわち、存在する場合に、ポリマーおよび界面活性剤)は、代表的に、バインダー系1グラムあたり40mgのKOHと等価かもしくはそれ未満の酸価、またはバインダー系1グラムあたり30mgのKOHと等価かもしくはそれ未満の酸価、またはバインダー系1グラムあたり20mgのKOHと等価かもしくはそれ未満の酸価を有するからである。
【0078】
特定の実施形態において、上記着色粒子を含む微粒子の水性分散物は、この着色粒子が、上に記載されるような1種以上の重合可能なモノマーおよび/または1種以上のポリマーと混合された後に、この混合物を、水性媒体の存在下で、高応力せん断状態に供して、この混合物を微粒子へと粒子化することによって調製される。この高応力せん断は、当該分野において周知である高応力せん断技術のいずれかによって達成され得る。
【0079】
本明細書中で使用される場合、「高応力せん断状態」は、高応力技術(例えば、以下で詳細に議論される液体−液体衝突(liquid−liquid impingement)技術)だけでなく、機械的手段による高速せん断も含むことを意味する。所望される場合、上記混合物に応力を適用する任意の様式は、十分な応力が使用されて、この混合物の粒子化(particularization)および必要な粒子サイズ分布を達成する限り、利用され得ることが理解されるべきである。
【0080】
上記混合物は、Microfluidics Corporation in Newton、Massachusettsから入手可能であるMICROFLUIDIZER(登録商標)乳化装置(emulsifier)の使用によって適切な応力に供され得る。MICROFLUIDIZER(登録商標)高圧衝突(high−pressure−impingement)式乳化装置は、米国特許第4,533,254号(これは、本明細書によって参考として援用される)に詳細に記載される。このデバイスは、高圧(約1.4×10kPa(20,000psi))ポンプおよび乳化が起きる相互作用チャンバーからなる。このポンプは、代表的には水性媒体中の混合物を、非常に高速度で少なくとも2つの隙間を通過し、そしてぶつかる少なくとも2つの流れに分かれるチャンバーに投入し、このチャンバーは、小さい粒子の形成をもたらす(すなわち、この混合物が「粒子化される」)。一般的に、プレエマルション(pre−emulsion)の混合物は、約3.5×10kPaと約1×10kPaとの間(5,000psiと15,000psiとの間)の圧力にて乳化装置に通される。複数の通路は、より小さい平均粒子サイズおよびより狭い粒子サイズ分布の範囲をもたらす。前述のMICROFLUIDIZER(登録商標)乳化装置を使用する場合、応力は、記載されたような液体−液体衝突によって適用される。上記のように、乳化前の混合物に応力を適用する他の様式は、十分な応力が適用されて、必要な粒子サイズ分布を達成する限り、利用され得る。例えば、応力を適用する1つの代替的な様式は、超音波エネルギーの使用である。
【0081】
応力は、単位面積あたりの力として示される。MICROFLUIDIZER(登録商標)乳化装置が乳化前の混合物に応力を加えて粒子化する正確な機構は、十分に理解されていないが、応力が1つより多い様式で発揮されることが理論化される。応力が発揮される1つの様式は、せん断、すなわち、力は、1つの層または面が隣接する平行な面に対して平行に動くことによるものと考えられる。応力はまた、バルク(圧縮応力)として全ての側面から発揮され得る。この場合において、応力は、任意のせん断なしで発揮され得る。強い応力を発生するためのさらなる様式は、キャビテーションによるものである。キャビテーションは、液体内の圧力が、蒸発を引き起こすのに十分な程度減少される場合に起こる。蒸気泡の形成および崩壊は、短時間にわたって激しく起こり、そして強い応力を発生する。任意の特定の理論に拘束されることを意図しないが、せん断およびキャビテーションの両方が、乳化前の混合物を粒子化する(particulate)応力の発生に寄与することが、考えられる。
【0082】
上で議論される通り、本発明の種々の実施形態において、上記着色粒子は、1種以上の重合可能なエチレン性の不飽和モノマーか、または1種以上の重合可能なエチレン性の不飽和モノマーおよび1種以上のポリマーのいずれかと混合され得る。これらの方法のいずれかが利用される場合、この重合可能なエチレン性の不飽和モノマー(および使用される場合には、ポリマー)は、この着色粒子および水性媒体とブレンドされて、プレエマルションの混合物を形成する。次いでこのプレエマルションの混合物は上に記載されるような高応力状態に供されて、この混合物を粒子化し、それによって微粒子を形成する。その後、各粒子内の重合可能な化学種は、水性媒体中に安定して分散される複合性の微粒子(第1の有機相または第1のポリマー相、および第2の着色粒子相をそれぞれ有する)を生成するのに十分な条件下において重合される(すなわち、このポリマーは、代表的には以下に記載されるような適切なフリーラジカル重合条件下において、インサイチュで形成される)。
【0083】
いくつかの場合において、界面活性剤または分散剤は、分散物を安定化するために存在し得る。通常、この界面活性剤は、上述の有機成分が上記微粒子の形成前に上記水性媒体中に混合される場合に存在する。あるいは、この界面活性剤は、この微粒子が形成された直後の時点で、この媒体中に導入され得る。
【0084】
アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤は、このような水性分散物の調製に使用するのに適切である。当業者に周知である他の材料はまた、本明細書中で使用するのに適切である。一般的に、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤の両方は、一緒に使用され得、そしてこの界面活性剤の量は、この水性分散物中に存在する全固形物に基づいて、約1%〜10%(代表的には2%未満)の範囲であり得る。
【0085】
微粒子の安定な分散物の生成に必要である界面活性剤の量は、多くの場合、この分散物の安定を促す他の成分の使用によって最小化され得ることが、理解されるべきである。例えば、水に分散可能なポリマーを形成するアミンによって中和され得る酸官能性を有するポリマーが使用されて、この着色粒子を含む他の成分を分散させ得る。
【0086】
上記着色粒子(および使用される場合には、上記ポリマー)の存在下におけるエチレン性の不飽和モノマーの重合を行うために、代表的にはフリーラジカル開始剤が存在する。水溶性の開始剤および油溶性の開始剤の両方が、使用され得る。水溶性の開始剤の例としては、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、ペルオキシ二硫酸カリウムおよび過酸化水素が挙げられる。油溶性の開始剤の例としては、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジラウリルペルオキシドおよび2,2,−アゾビス(イソブチロニトリル)が挙げられる。一般的に、この反応は、20℃〜80℃の範囲の温度で行われる。この重合は、バッチプロセスまたは連続的なプロセスのいずれかにおいて行われ得る。この重合を行うのに必要な時間の長さは、この時間が、1種以上のエチレン性の不飽和モノマーからインサイチュでポリマーを形成するのに十分である限り、10分間〜6時間の範囲であり得る。
【0087】
一旦上記微粒子が形成され、そして重合プロセス(存在する場合)が完了すると、得られる生成物は、いくつかの有機溶媒を含み得る水性媒体中の微粒子の安定な分散物である。ある程度か、または全ての有機溶媒は、40℃未満の温度での減圧蒸留を介して除去され得る。「安定な分散物」は、この微粒子が、静置の際に、沈殿も、凝析も、凝集もしないことを意味する。
【0088】
特定の実施形態において、本発明は、物品上に堆積した着色非隠蔽コーティング層を有するその物品に関し、このコーティング層は、約10%の最大ヘーズを有する着色粒子を含む微粒子の水性分散物を含む保護コーティング組成物から堆積され、この微粒子の水性分散物は、上記の方法のいずれかによって調製される。
【0089】
上記着色粒子を含む微粒子の水性分散物は、このようなコーティング組成物の1次フィルム形成材材料であり得るか、あるいはこのような組成物はまた、反応性官能基を含んでも含まなくてもよい1種以上のフィルム形成材ポリマー、および/または適切な場合に、フィルム形成材ポリマーの反応性官能基と反応する官能基を有する硬化剤を備える樹脂製バインダー系を含み得ることが、理解されるべきである。これまでに記載された通り、1種以上のポリマー、またはこの微粒子の調製に使用される1種以上のモノマーの重合を介してインサイチュで形成される1種以上のポリマーは、反応性官能基を含み得る。反応基を有するこのようなポリマーは、架橋剤(例えば、この微粒子の有機相中に含まれるアミノプラストもしくはポリイソシアネート)との反応か、またはその架橋(すなわち、このコーティング組成物中に含まれる硬化剤(上に記載される))のいずれかとの反応に利用可能である。
【0090】
上記保護コーティング組成物中に存在する着色粒子を含む微粒子の水性分散物の量は、種々の因子(例えば、所望される最終的な色、使用されるべき硬化方法、所望のコーティング性能の性質など)に依存して広範に変化し得ることが、理解されるべきである。例えば、この着色粒子を含む微粒子の水性分散物は、このコーティング組成物中に、0.05重量%と同程度の低い量(例えば、顔料色付け用ペースト(pigment tint paste)として使用される場合)、および100重量%と同程度の高い量(例えば、コーティング組成物それ自体として使用される場合)で存在し得る。
【0091】
特定の実施形態において、上記着色粒子を含む微粒子の安定な水性分散物は、以下の工程によって調製され得る:(a)上に記載される着色粒子を提供する工程;(b)1種以上の水に分散可能な、溶媒を介するポリマーと、この着色粒子とを、有機溶媒(以下に記載される)の存在下において混合する工程;(c)この混合物を、上に記載されるような水性媒体の存在下において高応力せん断状態(例えば、上に記載される高応力せん断方法のいずれか)に供して、この水性媒体中に分散した複合性の微粒子を形成する工程。上記複合性の微粒子は、1種以上の水に分散可能な、溶媒を介するポリマー、および必要に応じて有機溶媒を含む第1の相、ならびにこの着色粒子を含む第2の相を有する。
【0092】
適切な有機溶媒の例としては、以下が挙げられ得るが、これらに限定されない:グリコールエーテル(例えば、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチル);アルコール(例えば、ブタノール、a−エチルヘキサノール、トリデシルアルコール);ケトン(例えば、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン);エステル(例えば、ブチルアセテート);芳香族炭化水素(例えば、キシレンおよびトルエン);および脂肪族炭化水素(例えば、ヘプタン)。
【0093】
直前に記載される実施形態において使用するのに適した1種以上の水に分散可能な、溶媒を介するポリマーは、水性媒体中に分散可能であるか、可溶性であるか、または乳化可能である種々のポリマーのいずれかであり、このようなポリマーは、種々の親水基(例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボン酸基、またはこのような親水基の混合物)のいずれかを含み得る。このような親水基は、このポリマーを水性媒体中に分散可能にするか、可溶性にするか、または乳化可能にするのに十分な量でこのポリマー上に存在し得る。これらのポリマーは、十分に親水性であること、あるいは分散を促す酸もしくは塩基を用いた中和または可溶化のいずれかによって、水性媒体中に分散可能にされ得る。
【0094】
本発明において使用される保護コーティング組成物が使用されて、単一の着色非隠蔽層を形成し得るか;または特定の実施形態において、この保護コーティング組成物は、この着色非隠蔽層上に堆積するクリアコート層を備える多層系のうちの一層を形成し得る。結果として、本発明はまた、(a)約10%の最大ヘーズを有する着色粒子およびフィルム形成材樹脂を含有する保護コーティング組成物から堆積される着色非隠蔽層;ならびに(b)この着色非隠蔽層上に堆積されるクリアコート層を含む多層コーティングに関する。
【0095】
上記クリアコート層は、上に記載されるフィルム形成材樹脂のいずれかを含有する組成物から堆積され得、そして表面下部にさらなる深みおよび/または保護の性質を与えるために上記着色非隠蔽層上に塗布され得る。上記ベースコートのための樹脂製バインダーは、有機溶媒ベースの材料または水ベースのコーティング組成物であり得る。このクリアコート組成物中に含有されるのに適した必要に応じた成分としては、表面コーティングを処方する分野において周知であるもの(例えば、前述の材料)が挙げられる。このクリアコート組成物は、任意の慣習的なコーティング技術(例えば、とりわけはけ塗り塗装、スプレー塗装、浸漬塗装またはフロー塗装)によって基材に塗布され得る。
【0096】
本発明はまた、以下を備える多層コーティング系に関する:(a)樹脂製バインダーおよび顔料を含有するフィルム形成材組成物から堆積したベースコート層;(b)このベースコート層の少なくとも一部上に堆積した着色非隠蔽コーティング層であって、この着色非隠蔽層が、(i)約10%の最大ヘーズを有する着色粒子;および(ii)フィルム形成材樹脂を含有する保護コーティング組成物から堆積される、着色非隠蔽コーティング層;ならびに(c)この着色非隠蔽層の少なくとも一部上に堆積したクリアコート層であって、このクリアコート層が、樹脂製バインダーを含有するフィルム形成材組成物から堆積される、クリアコート層。
【0097】
当業者に理解される通り、着色非隠蔽コーティング層について、コーティングフィルム厚ならびに硬化温度および硬化条件は、形成されるべきコーティング層の型(すなわち、単一の層または多層系のうちの一層のような);ならびにコーティング組成物それ自体(すなわち熱硬化性であるかまたは熱可塑性であるか、周囲環境で硬化可能であるかまたは熱で硬化可能であるか)に依存し、そして熱硬化性である場合には、必要とされる硬化反応の型に依存する。
【0098】
上記着色非隠蔽コーティング層が堆積される保護コーティング組成物は、任意の慣習的な方法(例えば、ワイピング塗装、はけ塗り塗装、浸漬塗装、フロー塗装、ローラー塗装、慣習的なスプレー塗装および静電塗装)によって塗布され得る。スプレー技術が、ほとんどの場合に使用される。代表的に、硬化コーティングについてのフィルム厚は、少なくとも0.1ミルであり、そして0.5ミルと5ミルとの間の範囲であり得る。
【0099】
塗布後、このような保護コーティング組成物は、硬化され得る。数種のコーティング組成物は、周囲の温度にて硬化され得る(例えば、ポリイソシアネート硬化剤またはポリ無水物硬化剤を有するようなもの)か、またはこれらの保護コーティング組成物は、硬化を早めるために最小限に高い温度にて硬化され得る。1つの例は、約40℃〜60℃にて下方流ブース(down draft booth)中で空気によって乾燥させられ、これは、自動車の塗換え産業において一般的である。周囲の温度で硬化可能な組成物は、通常、周囲環境硬化剤(ambient curing agent)(「架橋剤パック」)が反応性官能基を含むフィルム形成材樹脂(「樹脂パック」)とは別に保たれる2パッケージ系(「2K」)として調製される。これらのパッケージは、塗布前に手短に混合される。
【0100】
熱で硬化可能なコーティング組成物(例えば、ブロックイソシアネート、アミノプラスト、フェノプラスト、ポリエポキシドまたはポリ酸硬化剤を使用するもの)は、1パッケージ系(「1K」)として調製され得る。これらの組成物は、高い温度(代表的に、約250°F〜約450°F(121℃〜232℃)の使用される基材の型に主に依存した温度で1分間〜30分間)にて硬化される。滞留時間(すなわち、コーティングされた基材が、硬化するための高い温度に曝される時間)は、使用される硬化温度および塗布されたコーティング組成物の湿潤フィルム厚に依存する。例えば、コーティングされた自動車用エラストマー部分は、より低い硬化温度において、長い滞留時間を要する(例えば、250°F(121℃)にて30分間)が、コーティングされた飲料用アルミニウム容器は、非常に高い硬化温度における非常に短い滞留時間を要する(例えば、375°F(191℃)にて1分間)。1K系はまた、化学線(例えば、UV光または電子ビーム)に対する曝露によって硬化され得る。
【0101】
本発明をその細部に限定するものとして見なされるべきでない以下の実施例は、本発明を例示する。実施例および本明細書全体における全ての割合ならびに%は、特に明記されない限り重量に基づく。
【実施例】
【0102】
(実施例)
実施例1〜4は、10%の最大ヘーズを有する着色粒子の調製を記載する。
【0103】
(実施例1)
Chromothal(登録商標)Yellow 8GN(Ciba Specialty Chemicals Corporation、Tarrytown、New Yorkから入手可能)を、Advantis(登録商標)ミル(Draiswerke,Inc.、Mahwah、New Jerseyから入手可能)においてミリングし、そして分散した。表1は、着色粒子の分散物を生成するための成分およびミリング条件を示す。
【0104】
分析のために、着色粒子の最終的な分散物を、n−ブチルアセテートで希釈した。表2は、着色粒子の最終的な分散物の性質を示す。平均1次粒子サイズを、Philips CM12透過電子顕微鏡(TEM)を用いて100kVにて得た。このヘーズの%を、500ミクロンの光路長を有するByk−Gardner TCS(The Color Sphere)機器を用いて測定した。
【0105】
(実施例2)
Heliogen(登録商標)Blue L 7081 D(BASF Corporation、Mount Oliver、New Jerseyから入手可能)のシアン顔料を、実施例1にあるようにミリングし、そして分散し、次いで分析した。表1および表2を参照のこと。
【0106】
(実施例3)
Monolite(登録商標)Green 860/Monastrol Green 6Y(Aveciaから入手可能)の緑色顔料を、実施例1にあるようにミリングし、そして分散し、そして分析した。表1および表2を参照のこと。
【0107】
(実施例4)
Irgazin(登録商標)Red 379(Ciba Specialty Chemicals Corporationから入手可能)の赤色顔料を、実施例1にあるようにミリングし、そして分散し、そして分析した。表1および表2を参照のこと。
【0108】
【表1】

Lubrizol Corporation、Wickliffe、Ohioから市販されている。
Lubrizol Corporation、Wickliffe、Ohioから市販されている。
E.I.DuPont DeNemours,Inc.、Wilmington、Delawareから市販されている。
Lubrizol Corporation、Wickliffe、Ohioから市販されている。
原子移動ラジカル重合技術によって重量ベースで以下のモノマーから、米国特許第6,365,666 B号に、一般的に記載されるように調製した第4級アンモニウム基含有ポリマー:4.7%のグリシジルメタクリレート、20.3%のベンジルメタクリレート、14.1%のブチルメタクリレート、52.3%の2−エチルヘキシルメタクリレートおよび7.1%のヒドロキシプロピルメタクリレート。このポリマーは、ポリスチレンの基準を使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定した場合、9505のM(n)および15,445のM(w)を有する。
溶液重合技術によって、重量ベースで以下のモノマーから調製した、プロピレンイミンによってイミン化された(iminated)アクリルポリマー:29.32%のスチレン、19.55%の2−エチルヘキシルアクリレート、19.04%のブチルメタクリレート、9.77%の2−ヒドロキシエチルアクリレート、1.86%のメタクリル酸、および0.59%のアクリル酸。
Dow Chemical Co.、Midland、Michiganから市販されている。
【0109】
【表2】

最大吸光度の波長における約17.5%の透過率でのヘーズの%。
着色粒子の分散物を、これらの最終的な固形物の%の値、および最終的な顔料の%の値を得るために調整した。
【0110】
(実施例5〜8)
実施例5〜8は、表3に示される通り、実施例1〜実施例4の着色粒子を含有する保護コーティング組成物の調製を記載する。全ての組成物を、表3に示す添加物の順に成分(重量)を混合することによって調製した。「色パック」を、基材に対する塗布の直前に、「架橋剤パック」と一緒にブレンドした。さらなるDT885 Reducerを、粘度の調整のために添加した。
【0111】
【表3】

10DCU2042 Fast Dry Clearcoat(PPG Industries,Inc.Pittsburgh、PAから市販されている)。
11DT885 Reducer(PPG Industries,Inc.Pittsburgh、PAから市販されている)。
12DCX 61 High Solids Hardener(PPG Industries,Inc.Pittsburgh、PAから市販されている)。
【0112】
(比較例9〜12)
比較例9〜12を、表4に示す成分を使用して調製した。これらの比較例において、実施例5〜8のそれぞれの顔料分散物を、対応する高性能の染料によって置換した。例えば、比較例9において、実施例5の黄色顔料分散物は、黄色染料溶液であった。顔料および固形物の重量を、実施例5〜12の全てにおいて一定に保った。
【0113】
全ての比較例を、表4に示す添加物の順に成分(重量)を混合することによって調製した。この「色パック」を、基材に対する塗布の直前に、「架橋剤パック」と一緒にブレンドした。必要な場合、さらなるDT885薄め液を、粘度の調整のために添加した。
【0114】
【表4】

13PPG Industries,Inc.から市販されている黄色染料溶液。
14PPG Industries,Inc.から市販されている青色染料。
15PPG Industries,Inc.から市販されている緑色染料溶液。
16PPG Industries,Inc.から市販されている赤色染料溶液。
【0115】
(試験基材)
実施例5〜12の不透明度の%を、48ゲージのワイヤドローダウン(drawdown)ロッド(Paul N.Gardner Co.Inc.、Pompano Beach、Floridaから入手可能)を用いて各実施例をForm 1BのLenetaペーパー(The Leneta Company、New Jerseyから入手可能)上にドローダウンし(drawn down)、そして製造業者によって提供される説明書に従ってMinolta Spectrophotometer CM−3600dを使用して、不透明度の%を測定することによって決定した。
【0116】
最初の測定値を、Fisherscope MMS(Multi−measuring System)機器を使用して乾燥フィルム厚について得た。乾燥フィルム厚を、同じ48ゲージのワイヤドローダウンロッドを用いて各実施例を冷間圧延鋼上にドローダウンすることによって決定した。適切なプローブを選択して、各コーティングの乾燥フィルム厚を測定した。
【0117】
実施例5〜12の全てのドローダウンを、周囲条件下で24時間硬化させた。特定の乾燥フィルム厚における各実施例についての不透明度の%は、表5に見出され得る。
【0118】
【表5】

色を、色空間のCIELABモデルを用い、Minolta Spectrophotometer CM3600−dを使用して測定した。D65デイライト光源(daylight source)および10°角を選択した。最初の色の読み(QUV試験の前)を、それぞれのコーティングしたパネルについて得た。これらのコーティングしたパネルを、24ゲージのワイヤドローダウンロッド(Paul N.Gardner Co.Inc.、Pompano Beach、Floridaから入手可能)を用いて各実施例を、圧延仕上3105を有するアルミニウム基材(ACT Laboratories,Inc.から市販されている)上にドローダウンすることによって調製した。最初の測定値を、Fisherscope MMS(Multi−measuring System)機器を使用して測定したこれらのパネル上の乾燥フィルム厚について得た。適切なプローブを選択して、各コーティングの乾燥フィルム厚を測定した。
【0119】
その後、これらのコーティングしたパネルを、加速度的な気象条件において、Q−Panel Lab Products、800 Canterbury Road、Cleveland、Ohio 44145から入手可能なQUV/se Accelerated Weather Testerを使用して試験した。全てのパネルに対して使用した光源は、UVB−313ナノメートルバルブによって提供された。照射量の値を、波長の較正において0.48ワット/メートル/ナノメートルに設定した。全てのパネルを70℃にて8時間露光し、次いで50℃にて4時間凝結に曝露する試験サイクルの交替に供した。これらのパネルを、750時間にわたってこれらのサイクル条件に曝した。750時間後、これらのパネルを、QUVキャビネットから取り出し、そして色の測定値をこれらのパネルの各々について得て、色の違い(ΔEab)の値を作製した。これらの結果を、表6に示す。これらの実施例を、各顔料の型に対して対応する比較例(染料を含む)に従って分類する。
【0120】
【表6】

(実施例13〜16)
実施例13〜16を、以下の様式で調製した。実施例6および7の組成物を、以下のように調製した4×12インチパネル上に、ハンドスプレー塗布した。これらの4×12インチパネルは、ACT Laboratories,Inc.から入手可能なタイプAPR24711(冷間圧延鋼;ED5000 e−コート;GPXプライマー)であった。
【0121】
最初に、プライマー層を、このAPR24711パネルにハンドスプレー塗布した。このプライマーは、PPG Industries,Incから市販されているDP40LF/DP401LFエポキシプライマーであった。このプライマーのブレンド比は、技術データシートの教示に従い、2〜1の値であった。全てのスプレー条件および乾燥条件は、この技術データシートに規定されるものに従った。その後、実施例6および7の組成物を、塗布した。
【0122】
次に、実施例13および15において、ベースコート層を、DP40LF/401LFプライマー上に、ハンドスプレー塗布した。この白色ベースコートは、PPG Industries,Inc.から市販されているGlobal D751であった。この白色ベースコートを、D871 ReducerおよびDX57 Basecoat Activator(両方ともPPG Industries,Inc.から入手可能である)とブレンドし、そして技術データシート上の教示のように、塗布しそして硬化させた。
【0123】
次に、クリアコート層を、クリアコート層を有さない実施例6および7が、クリアコート層を有する実施例6および7と比較され得るように、実施例6および7上に塗布した。
【0124】
このクリアコートを、DCU2042(PPG Industries,Inc.から市販されているクリアコート)と、DCX61(PPG Industries,Inc.から市販されている架橋剤パッケージ)とを混合することによって調製し、そしてDT885(PPG Industries,Inc.から市販されている薄め液パッケージ)によってうすめた。これらは、4:1:1の容量比であった。このクリアコート層を、塗布し、そして試験する前に7日間、周囲条件で硬化させた。最初の色を、上に記載されるように測定し、次いでこのコーティングしたパネルを、上に示されるようなQUV試験に供した。1000時間後、これらのパネルを、QUVキャビネットから取り出し、そして色の測定値を各々について得て、ΔEの値を作成した。これらの結果を、表7に示す。
【0125】
【表7】

(実施例17A)
この実施例は、ポリウレタン/尿素分散剤の調製を記載し、この分散剤は、次いで以下の実施例18のそれぞれの水性分散物の形成に使用された。このポリウレタン/尿素分散剤を、示した比における成分の以下の混合物のバッチから調製した:
【0126】
【化3】

171000の数平均分子量を有するポリ(ブチレンオキシド)。
【0127】
充填物Iを、全ての固形物が溶解されるまで、フラスコ中で100℃の温度にて攪拌した。充填物IIを添加し、そしてこの混合物を、再度70℃まで加熱した。充填物IIIを、15分間掛けて添加した。充填物IVを添加し、そして得られた混合物を、90℃に3時間保った。充填物Vを添加した。充填物VIを、別のフラスコ中で攪拌し、そして70℃まで加熱した。充填物I、充填物II、充填物III、充填物IV、および充填物Vの反応生成物を、充填物VIに添加し、そして得られた混合物を、室温まで冷却した。この最終生成物は、15.2の酸価、800センチポイズのBrookfield粘度(60rpmでのスピンドル#3)、7.4のpH、および110℃にて1時間で測定した場合に28.4%の不揮発性内容物を有する白色エマルションであった。
【0128】
(実施例17B)
この実施例は、アクリル分散剤の調製を記載し、この分散剤は、次いで以下の実施例17Cのそれぞれの顔料分散物の形成に使用された。このアクリル分散剤を、示した比における成分の以下の混合物のバッチから調製した:
【0129】
【化4】

充填物Iを、空気攪拌機、熱電対および共沸蒸留設備を備える2リットルフラスコ中で混合した。充填物Iを加熱して、還流し、そして水を、共沸して除去した。次いで充填物Iを、冷却し、そして窒素ブランケット(blanket)下においた。
【0130】
充填物IIおよび充填物IIIを、窒素ブランケットを維持しながら、順に添加した。充填物IVを、滴下漏斗に添加し、そして滴下前に15分間、窒素によってパージした。充填物IVを、この反応フラスコに添加し、そしてこの混合物を、70℃まで慎重に加熱した。これらの固形物が60.7%に達したとき、充填物Vを、滴下漏斗に充填し、そして15分間、窒素によってパージした。充填物Vを、70℃の反応温度を維持しながら、30分間掛けてこの反応に添加した。
【0131】
この反応を、6時間加熱し、次いで冷却し、そして窒素ブランケット下で一晩攪拌した。この反応混合物を、500gのトルエンによって薄め、次いでマグネソール(magnesol)のケークを通してろ過して、残りの触媒を除去した。
【0132】
溶媒を、真空下で除去し、98.4%が固形物の樹脂を得た。数平均分子量(M)は、7469であった。重量平均分子量(M)は、9212であった。Mw/Mnは、1.2であった。
【0133】
(実施例17C)
この実施例は、ナノサイズのPB 15:3フタロシアニンブルー顔料分散物の調製を記載し、この分散物は、次いで以下の実施例18の水性分散物を形成するために使用された。この顔料分散物を、示した比における成分の以下の混合物のバッチから調製した:
【0134】
【化5】

15BASF Corp.から市販されているPB 15:3(フタロシアニンブルー顔料)。
【0135】
これらの成分を、0.3mmYTZ粉砕媒体を含むAdvantis V15 Draisミル中で粉砕した。この混合物を、1650rpmにて218分間の総滞留時間でミリングした。このミリングの進行を、サンプルの可視スペクトルを測定し、そして400ナノメートルの波長における吸光度の減少を観察することによってモニタリングした。このミリングの過程の間に、4535.9gの水および544.3gのプロピレングリコールモノブチルエーテルを添加して、110℃にて1時間で測定した場合に24.4%の不揮発性内容物を有する最終混合物を作製した。この粒子サイズは、Horiba Model LA 900レーザー回折粒子サイズ機器を使用して測定した場合に、139ナノメートルであった。この機器は、633ナノメートルの波長を有するヘリウム−ネオンレーザーを使用して、この粒子のサイズを測定し、そしてこの粒子が球状を有すると仮定する(すなわち、この「粒子サイズ」とは、この粒子を完全に囲む最も小さい球をいう)。ヘーズの%は、1.0%であり、そしてこの%は、実施例1に記載されるように測定した。
【0136】
(実施例18)
この実施例は、ナノサイズのPB 15:3フタロシアニンブルー顔料を含む微粒子の水性分散物の調製を記載する。この分散物を、以下の成分から調製した:
【0137】
【化6】

プレエマルションを、ステンレス鋼ビーカー中でカウレスブレード(cowles blade)によって充填物Iを攪拌することによって作製した。このプレエマルションを、8000psiにてMicrofluidizer(登録商標)M110Tに2回通し、そしてオーバーヘッド攪拌機(overhead stirrer)、濃縮器、電子的温度プローブ(electronic temperature probe)、および窒素雰囲気を備えた四つ首丸底フラスコに移した。充填物IIを使用して、Microfluidizer(登録商標)をリンスし、そしてこのフラスコに添加した。このマイクロエマルションの温度を、30℃に調整した。重合を、充填物IIIを添加し、次いで充填物IVを30分間添加することによって開始した。この反応の温度は、43℃まで上昇した。このラテックスの最終pHは、7.0であり、この不揮発性内容物は、32.6%であり、そしてBrookfield 粘度は、56cpsであった(スピンドル#2、60rpm)。
【0138】
(実施例19)
実施例18を使用して、実施例19と称される以下の保護コーティング組成物を調製した。全ての成分を、緩やかな攪拌下において表8に示した順序で重量によって添加した。
【0139】
【表8】

19Hercules,Inc.から市販されているAquaflow NLS 210レオロジー改変剤を使用して、以下のプレ溶液を調製した:脱イオン水;ジエチレングリコールモノブチルエーテル;Aquaflow NLS 210(それぞれ、20/5/20の重量比)。
20Bayer Corporationから市販されているBaysilone 3739(ポリエーテル改変メチルポリシロキサン)。
21ジメチルエタノールアミン、メチルエチルケトン、および脱イオン水(2.6/0.8/96.6の重量比)中で、アジピン酸ジヒドラジド、ジメチロールプロピオン酸、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、イソホロンジジイソシアネートから形成(3.0/6.1/68.2/22.7の重量比)される水希釈性ポリウレタン樹脂(37.5%が固形物)。
【0140】
実施例19を、比較例20(Envirobase T412 Transparent Blue Basecoat(PPG Industries,Inc.から市販されている))に対して評価した。両方の実施例を、ACT Laboratories,Inc.、Hillsdale、MichiganからAPR 43741として利用可能であるプライム電着(primed electrocoat)された4×12インチパネル上にスプレー塗布した。これらのパネルを、P600グリットサンドペーパー(grit sand paper)によってウェットサンド仕上げし、水で洗浄し、そして乾燥した。
【0141】
青色ベースコート組成物を、413ニードル、1.2エアノズル、および2000番エアキャップを備えたDeVilbiss GTI HVLP重力送りスプレーガンを使用してこれらの調製したパネル上にハンドスプレー塗布した。この銃の基部における空気圧は、28lbs/インチ(2kg/cm)であった。Envirobase T412 Transparent Blue Basecoat(比較例20)を、スプレー塗布のために、それぞれの製品データシートが指示する通りに調製した。実施例19を、さらなる改変なしで噴霧した。
【0142】
各実施例を、2つのコートに、約70°F(21℃)の温度および約68%の相対湿度にて、コートの間に約5分間のフラッシュによって塗布した。このコーティングを、クリアコートの塗布前に約30分間、自然に流した(ambient flash)。
【0143】
クリアコートを、上記青色ベースコートに使用したものと同じスプレーガンを使用してハンドスプレー塗布した。このクリアコートは、PPG Industries,Inc.から入手可能なConcept(登録商標)DCU2055 Clearであった。このクリアコートを、3:1:0.5の重量比で、DCX61 High Solids Hardener(PPG Industries,Inc.)およびD871 Medium Thinner(PPG Industries,Inc.)と混合した。このクリアコートを、2つのコートに、約70°F(21℃)の温度および約40%の相対湿度における10分間の自然な流れによって塗布した。約1.50〜1.90ミルの乾燥フィルム厚を達成した。これらのパネルを、試験する前に7日間、水平位において周囲環境で硬化させた。
【0144】
これらのパネルを、乾燥フィルム厚、最初の20°光沢度、最初の接着ならびに耐湿性試験の10日後の20°光沢度および接着について試験した。
【0145】
乾燥フィルム厚を、Fisherscope MMS(Multi−measuring System)機器を使用して測定した。適切なプローブを選択して、各コーティングの乾燥フィルム厚を測定した。この値を、表9にミルで報告する。両方の実施例を、黒色および白色の隠蔽チャート(hiding chart)(The Lenata Companyから入手可能)上に噴霧したが、提供された実施例は、いずれもそのチャートを隠蔽しなかった。このチャートを見ることができた。20°光沢度を、BYK Gardner マイクロ−TRI−光沢機器を使用して測定した。
【0146】
基材に対する硬化したコーティングの接着を、2組の6本の平行線を、硬化したコーティングを通してこの基材の表面まで、刃先を使用して切ることによって測定した。第1に、6本の平行線を、間隔をとるための型板の補助を用いて2ミリメートルの間隔をあけて切った。それぞれの線は、約2インチ長であった。次いで、第2の組の6本の平行線を、第1の組に対して直角に切った。それぞれの線はまた、約2インチ長であった。この結果は、25個の正方形の格子であった。1枚の3M Tape #898(約3インチの長さ)を、線を引いた格子上におき、そしてしっかりとならして、良好な接触を確保した。テープの適用の90秒以内に、このテープを、一連の動作で素早く引き剥がした。可能な限り60度角近くにこのテープを保ちつつ引っ張る行為を、試験実施者に指示した。この報告した値は、この基材上に残ったフィルムの%を示す。したがって、100は、破損がないことを意味する。
【0147】
湿度に対する抵抗性を、95%〜100%の相対湿度および40℃(104°F)の温度を有する環境に試験パネルを曝すことによって評価した。これらのパネルを、この環境に10日間保ち、次いで試験するために取り出した。全ての試験を、その試験が終了した時間から1時間以内に行う。
【0148】
上記の試験から得た結果は、表9に認められ得る。
【0149】
【表9】

本発明の特定の実施形態は例示の目的で上に記載されたが、本発明の細部の多くのバリエーションが、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明から逸脱することなくなされる得ることは、当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1は、樹脂製バインダー中に懸濁された着色料粒子についての、粒子サイズ対屈折率の違いのグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を備える物品であって、着色非隠蔽コーティング層が、該表面の少なくとも一部上に堆積し、そして該層は、(i)10%の最大ヘーズを有する着色粒子;および(ii)フィルム形成材樹脂を含有する保護コーティング組成物から堆積されている、物品。
【請求項2】
前記着色粒子が、150ナノメートル未満の平均1次粒子径を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記着色粒子が、0.3ミリメートルの粒子径を有するミリング用媒体を用いて着色粒子をミリングすることによって生成される、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記着色粒子が、0.2ミリメートルの粒子径を有するミリング用媒体を用いて着色粒子をミリングすることによって生成される、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記着色粒子が、0.1ミリメートルの粒子径を有するミリング用媒体を用いて着色粒子をミリングすることによって生成される、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記着色粒子が、5%の最大ヘーズを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記着色粒子が、1%の最大ヘーズを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記着色粒子が、0.5%の最大ヘーズを有する、請求項5に記載の物品。
【請求項9】
前記着色粒子が、少なくとも2色以上の粒子の混合物を含有する、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記着色粒子が、有機顔料を含有する、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記有機顔料が、ペリレン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、ジオキサジン(すなわち、トリフェンジオキサジン)、1,4−ジケトピロロピロール、アントラピリミジン、アンサンスロン、フラバンスロン、インダンスロン、ペリノン、ピランスロン、チオインジゴ、4,4’−ジアミノ−1,1’−ジアントラキノニル、アゾ化合物、それらの置換誘導体、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記着色非隠蔽コーティング層が、1ミルの乾燥フィルム厚で90%を超えない不透明度の%を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記着色非隠蔽コーティング層が、1ミルの乾燥フィルム厚で50%を超えない不透明度の%を有する、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記保護コーティング組成物が、(iii)光学効果顔料をさらに含有する、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記着色非隠蔽コーティング層が、少なくとも30%の全反射率を有する反射性材料を備える反射面上に堆積されている、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記着色非隠蔽コーティング層が、少なくとも40%の全反射率を有する反射性材料を備える反射面上に堆積されている、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記反射性材料が、前記物品の表面を構成する、請求項15に記載の物品。
【請求項18】
前記表面が、磨かれたアルミニウム、冷間圧延鋼、クロムめっきされた金属、またはプラスチック上に真空蒸着された金属を備える、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記反射性材料が、コーティング組成物から堆積したベースコート層である、請求項15に記載の物品。
【請求項20】
前記フィルム形成材樹脂が、少なくとも1種の反応性官能基含有ポリマー、および該ポリマーの官能基と反応する官能基を有する少なくとも1種の硬化剤を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項21】
前記ポリマーが、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、およびポリエーテルポリマーからなる群より選択される、請求項20に記載の物品。
【請求項22】
前記ポリマーが、エポキシ基、カルボン酸基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミド基、カルバメート基、カルボキレート基およびそれらの混合物からなる群より選択される反応性官能基を含む、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
前記着色粒子が、水性媒体中に安定して分散される、請求項1に記載の物品。
【請求項24】
多層コーティングであって、以下:
a)(i)約10%の最大ヘーズを有する着色粒子;および(ii)フィルム形成材樹脂を含有する保護コーティング組成物から堆積された着色非隠蔽コーティング層;
b)該着色非隠蔽層の少なくとも一部上に堆積されたクリアコート層、
を含む、多層コーティング。
【請求項25】
請求項24に記載の多層コーティングによってコーティングされている基材。
【請求項26】
前記着色粒子が、150ナノメートル未満の平均1次粒子径を有する、請求項24に記載の多層コーティング。
【請求項27】
前記着色粒子が、0.3ミリメートルの粒子径を有するミリング用媒体を用いて着色粒子をミリングすることによって生成される、請求項24に記載の多層コーティング。
【請求項28】
前記着色粒子が、0.2ミリメートルの粒子径を有するミリング用媒体を用いて着色粒子をミリングすることによって生成される、請求項27に記載の多層コーティング。
【請求項29】
前記着色粒子が、0.1ミリメートルの粒子径を有するミリング用媒体を用いて着色粒子をミリングすることによって生成される、請求項28に記載の多層コーティング。
【請求項30】
前記着色粒子が、5%の最大ヘーズを有する、請求項24に記載の多層コーティング。
【請求項31】
前記着色粒子が、1%の最大ヘーズを有する、請求項30に記載の多層コーティング。
【請求項32】
前記着色粒子が、0.5%の最大ヘーズを有する、請求項31に記載の多層コーティング。
【請求項33】
前記着色粒子が、少なくとも2色以上の粒子の混合物を含有する、請求項24に記載の多層コーティング。
【請求項34】
前記着色粒子が、有機顔料を含有する、請求項24に記載の多層コーティング。
【請求項35】
前記有機顔料が、ペリレン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、ジオキサジン(すなわち、トリフェンジオキサジン)、1,4−ジケトピロロピロール、アントラピリミジン、アンサンスロン、フラバンスロン、インダンスロン、ペリノン、ピランスロン、チオインジゴ、4,4’−ジアミノ−1,1’−ジアントラキノニル、アゾ化合物、それらの置換誘導体、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項34に記載の多層コーティング。
【請求項36】
前記着色非隠蔽コーティング層が、1ミルの乾燥フィルム厚で90%を超えない不透明度の%を有する、請求項24に記載の多層コーティング。
【請求項37】
前記着色非隠蔽コーティング層が、1ミルの乾燥フィルム厚で50%を超えない不透明度の%を有する、請求項36に記載の多層コーティング。
【請求項38】
保護コーティング組成物から堆積した前記着色非隠蔽コーティング層が、光学効果顔料をさらに含有する、請求項24に記載の多層コーティング。
【請求項39】
堆積した請求項24に記載の多層コーティングを有する反射性材料であって、該反射性材料が、少なくとも30%の全反射率を有する、反射性材料。
【請求項40】
堆積した請求項39に記載の多層コーティングを有する反射性材料であって、該反射性材料が、少なくとも40%の全反射率を有する、反射性材料。
【請求項41】
前記反射性材料が、前記物品の表面を構成する、請求項39に記載の多層コーティング。
【請求項42】
前記表面が、磨かれたアルミニウム、冷間圧延鋼、クロムめっきされた金属、またはプラスチック上に真空蒸着された金属を備える、請求項41に記載の多層コーティング。
【請求項43】
前記反射性材料が、コーティング組成物から堆積したベースコート層である、請求項39に記載の多層コーティング。
【請求項44】
前記フィルム形成材樹脂が、少なくとも1種の反応性官能基含有ポリマー、および該ポリマーの官能基と反応する官能基を有する少なくとも1種の硬化剤を含む、請求項24に記載の多層コーティング。
【請求項45】
前記ポリマーが、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、およびポリエーテルポリマーからなる群より選択される、請求項44に記載の多層コーティング。
【請求項46】
前記ポリマーが、エポキシ基、カルボン酸基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミド基、カルバメート基、カルボキシレート基およびそれらの混合物からなる群より選択される反応性官能基を含む、請求項44に記載の多層コーティング。
【請求項47】
前記着色粒子が、水性媒体中に安定して分散される、請求項24に記載の多層コーティング。
【請求項48】
多層コーティング系であって、以下:
a)樹脂製バインダーおよび顔料を含有するフィルム形成材組成物から堆積されたベースコート層;
b)該ベースコート層の少なくとも一部上に堆積された着色非隠蔽コーティング層であって、該着色非隠蔽層が、(i)約10%の最大ヘーズを有する着色粒子;および(ii)フィルム形成材樹脂を含有する保護コーティング組成物から堆積されている、着色非隠蔽コーティング層;ならびに
c)該着色非隠蔽層の少なくとも一部上に堆積されたクリアコート層であって、該クリアコート層が、樹脂製バインダーを含有するフィルム形成材組成物から堆積されている、クリアコート層、
を備える、多層コーティング系。
【請求項49】
請求項48に記載の多層コーティング系によってコーティングされている基材。

【図1】
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【公表番号】特表2008−502479(P2008−502479A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527810(P2007−527810)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/021128
【国際公開番号】WO2006/012010
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】