説明

ゴムシートの加硫装置およびゴムシートの加硫方法

【課題】スチールバンドの短命化を回避し、加硫したゴムシートの高品質化を図る。
【解決手段】駆動輪と従動輪との間に無端状に巻回されたスチールバンド、およびこのスチールバンドの内周面側に設けられた平板状の加熱体を有する加熱搬送装置が上下一対備えられるとともに、これら一対の加熱搬送装置の各スチールバンド間で長尺状の未加硫のゴムシートを厚さ方向に挟み加圧した状態で加熱体からの熱で加熱して加硫するゴムシートの加硫装置であって、主ピストン17によって2つの室18a、18bに仕切られた主シリンダ室18を内部に有し、前記2つの室18a、18bの一方18aが加圧されることにより前記一対の加熱搬送装置を相対的に接近移動させる主シリンダ19と、前記2つの室18a、18bの他方18bに第1接続管路20を介して接続された副シリンダ21と、が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の未加硫のゴムシートを搬送しながら加硫するゴムシートの加硫装置およびゴムシートの加硫方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の加硫装置として、例えば下記特許文献1に示されるような、駆動輪と従動輪との間に無端状に巻回されたスチールバンド、およびこのスチールバンドの内周面側に設けられた平板状の加熱体を有する加熱搬送装置が上下一対備えられ、これら一対の加熱搬送装置の各スチールバンド間で長尺状の未加硫のゴムシートを厚さ方向に挟み加圧した状態で加熱体からの熱で加熱しつつ、各スチールバンドを送り移動させることにより、ゴムシートを搬送しながら加硫する構成が知られている。
さらに、この文献1記載の加硫装置では、スチールバンドにおいて一対の加熱搬送装置が互いに対向する側の内周面と前記加熱体との間に、複数のローラが設けられており、前述のようにゴムシートを搬送しながら加硫する際に、スチールバンドの送り移動に伴って複数のローラを回転させることにより、加熱体とスチールバンドとの間に発生する摩擦力を低減させている。
【特許文献1】特開平5−301299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、加硫時にはゴムシートを比較的大きな力で加圧する必要があるが、前記加硫装置では加硫が完了するまでの間にゴムシートを一定の力で加圧していたので、前述のように複数のローラを設けて加熱体とスチールバンドの前記内周面との間に発生する摩擦力を低減させるようにしても、前記摩擦力を大幅に低減することはできなかった。
したがって、各スチールバンドを送り移動させてゴムシートを搬送しながら加硫する際に、このスチールバンドに付与する駆動力を大きく低減することはできず、スチールバンドの短命化を招くおそれがあった。
さらに、加硫が完了するまでの間にゴムシートを一定の力で加圧していたことから、前記従来の加硫装置のようにローラを設けた場合には、複数のローラの各外周面形状がスチールバンドを介して転写され、加硫されたゴムシートの表面が凸凹になり平坦にすることができなくなるおそれもあった。
【0004】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、スチールバンドの短命化を回避することができ、しかも加硫したゴムシートの高品質化を図ることができるゴムシートの加硫装置およびゴムシートの加硫方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のゴムシートの加硫装置は、駆動輪と従動輪との間に無端状に巻回されたスチールバンド、およびこのスチールバンドの内周面側に設けられた平板状の加熱体を有する加熱搬送装置が上下一対備えられるとともに、これら一対の加熱搬送装置の各スチールバンド間で長尺状の未加硫のゴムシートを厚さ方向に挟み加圧した状態で前記加熱体からの熱で加熱して加硫するゴムシートの加硫装置であって、主ピストンによって2つの室に仕切られた主シリンダ室を内部に有し、前記2つの室の一方が加圧されることにより前記一対の加熱搬送装置を相対的に接近移動させる主シリンダと、前記2つの室の他方に第1接続管路を介して接続された副シリンダと、が備えられ、前記主シリンダにおける前記一方の室を加圧して、前記一対の加熱搬送装置を相対的に接近移動させることにより、前記各スチールバンド間でゴムシートを厚さ方向に挟み加圧した状態で前記加熱体からの熱で加熱するプレス工程と、前記副シリンダのシリンダ室内の作動油を前記第1接続管路に向けて押し出し、前記主シリンダにおける前記他方の室を加圧して、一対の加熱搬送装置を相対的に離間移動させることにより、ゴムシートを、前記各スチールバンド間で前記プレス工程時よりも小さい力で加圧した状態で前記加熱体からの熱で加熱しつつ、前記各スチールバンドを送り移動させてこのゴムシートを一定量搬送する保圧工程と、をこの順に繰り返す構成とされたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明のゴムシートの加硫方法は、駆動輪と従動輪との間に無端状に巻回されたスチールバンド、およびこのスチールバンドの内周面側に設けられた平板状の加熱体を有する加熱搬送装置が上下一対備えられるとともに、これら一対の加熱搬送装置の各スチールバンド間で長尺状の未加硫のゴムシートを厚さ方向に挟み加圧した状態で前記加熱体からの熱で加熱して加硫するゴムシートの加硫方法であって、本発明のゴムシートの加硫装置が用いてゴムシートを加硫することを特徴とする。
【0007】
この発明では、前記副シリンダを備えているので前述の保圧工程を確実に実現することが可能になり、この保圧工程時に、加熱体とスチールバンドとの間に発生する摩擦力を抑えてこのスチールバンドに付与する駆動力を低減することができ、その長寿命化を図ることができる。
しかも、例えば上記従来の加硫装置のように、加熱体とスチールバンドとの間にローラを設けたとしても、ゴムシートを加硫するまでの間において少なくとも前記保圧工程ではゴムシートに対する加圧力を減圧するので、ローラの外周面形状がスチールバンドを介して転写されるのを抑制することができる。
また、前述のように保圧工程が実現されることから、ゴムシートを、前記プレス工程と保圧工程とをこの順に繰り返して加硫することが可能になり、スチールバンドに付与する駆動力を抑えつつ、長尺状のゴムシートを搬送しながら連続的に加硫することができる。したがって、加硫時間を短縮することができるとともに、未加硫部分が生ずるのを防ぐことも可能になり、加硫したゴムシートの品質を向上させることができる。
さらに、前述の保圧工程時では、副シリンダのシリンダ室内の作動油を前記第1接続管路に向けて押し出し、主シリンダにおける前記他方の室を加圧して、前記一対の加熱搬送装置を相対的に離間移動させることにより、ゴムシートを、各スチールバンド間で前記プレス工程時よりも小さい力で加圧するので、この保圧工程時におけるゴムシートに対する加圧力を、例えばゴムシートの厚さ等がばらついたとしても安定させることが可能になり、このゴムシートの品質を確実に向上させることができる。
【0008】
すなわち、前記保圧工程を実現するために、本発明のような副シリンダを採用するのに代えて例えば、主シリンダにおける前記2つの室のうち加圧する室を主切替弁で前記一方の室から他方の室に切り替え、かつこの他方の室に付与する油圧を前記一方の室に付与していた油圧よりも小さくすることも考えられるが、この場合、主切替弁の切り替えと同時に各スチールバンドによるゴムシートに対する加圧力がなくなる等、前記保圧工程時にゴムシートに付与する加圧力を安定させることができない。
さらにまた、この保圧工程を実現するために、前記副シリンダに代えて例えば、この加硫装置に、上下方向で互いに対向する一対の機械的ストッパーを設け、前記保圧工程時にこれらのストッパー同士が衝突するまで、前記一対の加熱搬送装置を相対的に離間移動させることも考えられるが、この場合、加硫装置全体に衝撃力が加わったり、前記機械的ストッパーが破損し易くなったりして、この加硫装置のメンテナンス頻度を増大させるおそれがある。
さらにこの場合、例えばゴムシートの厚さ等がばらつくと、前記プレス工程時に前記一対の機械的ストッパー同士の間の間隔もばらつくことになり、前記保圧工程時における一対の加熱搬送装置の相対的な離間移動量、つまり前記ゴムシートに対する加圧力を安定させることが困難になり、加硫後のゴムシートの品質を低下させるおそれがある。
【0009】
ここで、前記主シリンダの2つの室に一端が接続され作動油を給排する一対の給排管路と、これら一対の給排管路の他端に接続された主切替弁と、が備えられ、前記一対の給排管路にはそれぞれリリーフ弁が設けられ、これら一対の給排管路のうち前記他方の室に接続された給排管路には、前記リリーフ弁よりも前記主切替弁側に開閉バルブが設けられてもよい。
この場合、開閉バルブを閉じた状態で、副シリンダのシリンダ室内の作動油を第1接続管路に押し出すことにより、前記他方の室の内圧が高められて主ピストンが駆動させられる。これに伴って、前記一方の室内の作動油が、一対の給排管路のうち前記一方の室に接続された給排管路に押し出されることになる。
【0010】
さらに、前記副シリンダは、前記第1接続管路に接続された第1副シリンダと、この第1副シリンダよりも大径の第2副シリンダとを備え、前記第1副シリンダは第1副ピストンによって2つの室に仕切られた第1副シリンダ室を内部に有するとともに、前記第2副シリンダは、前記第1副ピストンに連結された第2副ピストンによって2つの室に仕切られた第2副シリンダ室を内部に有し、この第2副シリンダ室内を加圧して第2副ピストンを動作させることにより、前記第1副ピストンを動作させて、前記第1副シリンダ室内の作動油を第1接続管路内に押し出す構成とされてもよい。
この場合、副シリンダが、第1副シリンダ室の作動油を第1接続管路内に押し出して主シリンダの前記他方の室を加圧する構成とされているので、前記保圧工程時における一対の加熱搬送装置の相対的な離間移動量を確実に安定させることができる。
また、第1副シリンダよりも大径の第2副シリンダにおける第2副ピストンを動作させることにより、第1副ピストンを動作させて第1副シリンダ室の作動油を第1接続管路内に押し出すので、前述のような一対の加熱搬送装置の相対的な離間移動を短時間で行うことができる。
【0011】
また、前記加熱体の内部には、前記スチールバンドにおいて前記一対の加熱搬送装置が互いに対向する側の内周面に向けて開口する噴出孔を有する第1熱媒通路が形成され、前記保圧工程時に、前記スチールバンドの前記内周面に前記噴出孔から熱媒の流体圧を作用させることにより、このスチールバンドの前記内周面と加熱体との間に隙間を形成しつつ、前記各スチールバンド間でゴムシートを厚さ方向に加圧する構成とされてもよい。
この場合、前記保圧工程に、加熱体との間に隙間が形成されたスチールバンドによりゴムシートを厚さ方向に加圧するので、このゴムシートを全域にわたって均等に加圧することが可能になり、ゴムシートの品質をより一層向上させることができるとともに、加熱体とスチールバンドの前記内周面との間に発生する摩擦力を大きく低減することが可能になり、スチールバンドの耐久性をより一層確実に向上させることもできる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、スチールバンドの短命化を回避することができ、しかも加硫したゴムシートの高品質化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るゴムシートの加硫装置の一実施形態を、図1から図5を参照しながら説明する。
この加硫装置10には、駆動輪11と従動輪12との間に無端状に巻回されたスチールバンド13、およびこのスチールバンド13の内周面側に設けられた平板状の加熱体14を有する加熱搬送装置15a、15bが上下一対備えられており、これら一対の加熱搬送装置15a、15bの各スチールバンド13間で長尺状の未加硫のゴムシートWを厚さ方向に挟み加圧した状態で加熱体14からの熱で加熱して加硫するように構成されている。
【0014】
スチールバンド13は、例えば厚さ0.5mm〜2.5mm程度のステンレス鋼板とされている。
また、加熱体14は、スチールバンド13において一対の加熱搬送装置15a、15bが互いに対向する側の内周面13aをその全域にわたって一体に覆う大きさの平板状体となっている。さらに、本実施形態では、加熱体14の内部には、スチールバンド13の前記内周面13aに向けて開口する噴出孔14aを有する第1熱媒通路14bと、この第1熱媒通路14bとは別系統の第2熱媒通路14cとが形成されている。
【0015】
そして、各加熱搬送装置15a、15bにおいて駆動輪11、従動輪12および加熱体14は、左右一対のガイドフレーム16を介して連結されている。ここで、各加熱搬送装置15a、15bの両側部にはそれぞれ密封手段16aが設けられており、加熱体14が、スチールバンド14の内周面側に気密状態若しくは液密状態で密封されている。そして、これらの密封手段16aにガイドフレーム16が各別に連結されている。
【0016】
さらに、この加硫装置10には、主ピストン17によって2つの室18a、18bに仕切られた主シリンダ室18を内部に有し、前記2つの室18a、18bの一方の室(以下、ロッド側室という)18aが加圧されることにより一対の加熱搬送装置15a、15bを相対的に接近移動させる主シリンダ19が備えられている。図示の例では、主シリンダ19は、左右一対設けられるとともに、スチールバンド13を送り移動させる方向に互いに間隔をあけて複数配置されている。
【0017】
そして、主ピストン17のロッド先端が上側の加熱搬送装置15aに設けられた左右一対のガイドフレーム16に連結され、かつ主シリンダ19の軸方向両端部のうちロッド側の外表面に、下側の加熱搬送装置15bに備えられた左右一対のガイドフレーム16が固定されている。これにより、主シリンダ19のロッド側室18aを加圧して主ピストン17を後退移動させることにより、上側の加熱搬送装置15aが下降して下側の加熱搬送装置15bに接近し、また、前記2つの室18a、18bのうち他方の室(以下、ヘッド側室という)18bを加圧して主ピストン17を前進移動させることにより、上側の加熱搬送装置15aが上昇して下側の加熱搬送装置15bから離間するようになっている。
【0018】
そして、本実施形態では、主シリンダ19のヘッド側室18bに第1接続管路20を介して接続された副シリンダ21を備えている。この副シリンダ21は、第1接続管路20に接続された第1副シリンダ22と、この第1副シリンダ22よりも大径の第2副シリンダ23とを備えている。なお、主シリンダ19は、第2副シリンダ23よりも大径となっている。
第1副シリンダ22は、第1副ピストン24によって2つの室25a、25bに仕切られた第1副シリンダ室25を内部に有しており、また、第2副シリンダ23は、第1副ピストン24に連結された第2副ピストン26によって2つの室27a、27bに仕切られた第2副シリンダ室27を内部に有している。
【0019】
図示の例では、第1副ピストン24のロッド部分と、第2副ピストン26のロッド部分とは、互いに同軸上に配置され一体に形成されて、第1副シリンダ22と第2副シリンダ23とが同軸上に配置されている。なお、第1副シリンダ22には、第1副ピストン24の後退端位置および前進端位置をそれぞれ検出するシリンダスイッチ22a、22bが設けられている。また、第1接続管路20は、第1副シリンダ22のヘッド側室25aに接続されるとともに、この第1接続管路20の中間位置に第1開閉バルブ41が設けられている。
【0020】
次に、以上の主シリンダ19および副シリンダ21を駆動する油圧回路の詳細について説明する。
この加硫装置10には、主シリンダ19の2つの室18a、18bに一端が接続され作動油を給排する一対の第1給排管路29、30と、これら一対の第1給排管路29、30の他端に接続された主切替弁31と、副シリンダ21において第2副シリンダ23のヘッド側室27bに一端が接続され作動油を給排する第2給排管路36と、この第2給排管路36の他端が接続された副切替弁37と、が備えられている。
【0021】
さらに、主切替弁31と油圧ポンプ28とを接続する主接続管路35には、油圧ポンプ28側から主切替弁31側に向けて逆止弁35aおよび第1リリーフ弁35bがこの順に設けられている。また、副切替弁37は、主接続管路35において第1リリーフ弁35bと主切替弁31との間に位置する部分に、第1分岐管路38を介して接続されている。
【0022】
そして、本実施形態では、一対の第1給排管路29、30のうち、主シリンダ19のロッド側室18aに接続されたロッド側第1給排管路29には、第2リリーフ弁32が設けられるとともに、主シリンダ19のヘッド側室18bに接続されたヘッド側第1給排管路30には、第3リリーフ弁33、およびこの第3リリーフ弁33よりも主切替弁31側に配置された第2開閉バルブ34が設けられている。なお、第2リリーフ弁32および第1リリーフ弁35bの各リリーフ圧は互いに同等とされるとともに、第3リリーフ弁33のリリーフ圧よりも小さく設定されている。
【0023】
さらに、第1接続管路20において第1開閉バルブ41と第1副シリンダ22との間に位置する部分と、第1分岐管路38とが、第2分岐管路39を介して接続されており、この分岐管路39の中間位置に第3開閉バルブ40が設けられている。
以上より、本実施形態では、一つの油圧ポンプ28から主シリンダ19および副シリンダ21に作動油を送出するようになっている。
【0024】
次に、以上のように構成されたゴムシートの加硫装置10を用いて未加硫のゴムシートWを加硫する方法について、図5に示すフローチャートに沿って説明する。
図示されない巻き出し装置から未加硫のゴムシートWを巻き出して、このゴムシートWを一対の加熱搬送装置15a、15b同士の間に到達させる。この際予め、加熱体14の第1熱媒通路14bおよび第2熱媒通路14cの各内部には熱媒を循環させておき、スチールバンド13を加熱しておく。
【0025】
次に、油圧ポンプ28の運転を開始し(S1)、第2開閉バルブ34を開きかつ第1開閉バルブ41を閉じる(S2)。
また、副切替弁37を切り替えて、第2副シリンダ23のヘッド側室27bおよび第2給排管路36の各内部を大気圧にし、かつ第3開閉バルブ40を開く(S3)。
これにより、副シリンダ21における第1副シリンダ22のヘッド側室25aに、油圧ポンプ28から主接続管路35、第1分岐管路38、第2分岐管路39および第1接続管路20をこの順に通過させて作動油を充填し、この充填に伴い、第1副ピストン24が、第1副シリンダ22内を摺動しつつ前進移動させられ、かつ第2副ピストン26が、第2副シリンダ23内を摺動しつつ後退移動させられる。なお、この際、第1開閉バルブ41は閉じているので、第2分岐管路39から第1接続管路20に供給された作動油は、主シリンダ19のヘッド側室18b内には流入しない。
【0026】
そして、第1副ピストン24の前進端位置が、第1副シリンダ22に設けられたシリンダスイッチ22bにより検出されたときに(S4)、主切替弁31を切り替えて、主シリンダ19のロッド側室18aに油圧ポンプ28から主接続管路35およびロッド側第1給排管路29を通して作動油を供給する一方、ヘッド側室18bをヘッド側第1給排管路30を通して大気圧にする。
【0027】
これにより、主シリンダ19の主ピストン17が後退移動させられ、上側の加熱搬送装置15aが下降して下側の加熱搬送装置15bに接近し(S5)、これら15a、15bの間に位置する未加硫のゴムシートWを、スチールバンド13同士の間で挟んで例えば3MPaで加圧しかつ加熱する(プレス工程)ことにより加硫を開始する。この加硫の開始と同時にタイマーによるカウントも開始する(S6)。
【0028】
なお、この際、図2に示されるように、一対の加熱搬送装置15a、15bそれぞれにおいて、スチールバンド13の前記内周面13aと加熱体14とは当接し、これら13、14の間は隙間のない状態となっており、加熱体14の噴出孔14aから熱媒は噴出しておらず、主としてこの噴出孔14aを有する第1熱媒通路14bとは別系統の第2熱媒通路14c内を流れる熱媒の熱によって、スチールバンド13を介してゴムシートWが加熱されるようになっている。
【0029】
そして、例えば4分経過したときに(S7)、第2開閉バルブ34を閉じ、第1開閉バルブ41を開き、かつ第3開閉バルブ40を閉じる(S8)。
この状態で、副切替弁37を切り替えて、副シリンダ21における第2副シリンダ23のヘッド側室27bに、油圧ポンプ28から主接続管路35、第1分岐管路38、および第2給排管路36をこの順に通過させて作動油を供給する(S9)。
【0030】
これにより、副シリンダ21において、第2副シリンダ23の第2副ピストン26が前進移動させられるとともに、第1副シリンダ22の第1副ピストン24が後退移動させられて、第1副シリンダ22のヘッド側室25aに充填しておいた作動油が、第1接続管路20に押し出される。以上より、第1接続管路20内を通して、主シリンダ19のヘッド側室18bが加圧されることにより、主ピストン17が前進移動させられて、上側の加熱搬送装置15aが約0.5mm〜1mm程度上昇し下側の加熱搬送装置15bから離間する。
【0031】
この際、第1副ピストン24の後退端位置が、第1副シリンダ22に設けられたシリンダスイッチ22aにより検出される(S10)。さらにこの際、図3に示されるように、上側の加熱搬送装置15aにおけるスチールバンド13の前記内周面13aに加熱体14の噴出孔14aから流体圧(例えば0.5MPa〜0.8MPa)を作用させることにより、このスチールバンド13の前記内周面13aと加熱体14との間に隙間を形成、若しくは広げた状態で、このスチールバンド13でゴムシートWを厚さ方向に例えば0.5MPaで加圧する。
【0032】
この状態でさらに、駆動輪11を回転駆動させて、一対の加熱搬送装置15a、15bそれぞれのスチールバンド13によりゴムシートWを挟んで加圧および加熱しつつ、例えば1分間かけて、加熱体14の、スチールバンド13を送り移動させる方向における全長の30分の1から10分の1までの距離だけ搬送する(S11、S12、保圧工程)。
次に、駆動輪11の回転駆動を停止させた後に、第2開閉バルブ34を開き、かつ第1開閉バルブ41を閉じ(S13)、前述のS6と同様にしてプレス工程を行う(S14)。
【0033】
このプレス工程の間に、前述のS3と同様にして、副シリンダ21における第1副シリンダ22のヘッド側室25aに作動油を充填する(S15)。そして、前述のS4と同様に第1副ピストン24の前進端位置が、第1副シリンダ22に設けられたシリンダスイッチ22bにより検出されたか否かを判定(S16)するとともに、前述のS7と同様に前記プレス工程を所定時間行ったか否かを判定(S17)する。
【0034】
そして、前述のS8〜S17を、全てのゴムシートWの加硫が完了するまで繰り返し行った後に(S18)、主切替弁31を切り替えて、主シリンダ19のヘッド側室18bに油圧ポンプ28から主接続管路35およびヘッド側第1給排管路30を通して作動油を供給する一方、ロッド側室18aをロッド側第1給排管路29を通して大気圧にする。これにより、主シリンダ19の主ピストン17が前進移動させられ、上側の加熱搬送装置15aが上昇して下側の加熱搬送装置15bから離れ、ゴムシートが上側の加熱搬送装置15aのスチールバンド13から離れる(S19)。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によるゴムシートの加硫装置10によれば、副シリンダ21を備えているので前述の保圧工程を確実に実現することが可能になり、この保圧工程時に、加熱体14とスチールバンド13との間に発生する摩擦力を抑えてこのスチールバンド13に付与する駆動力を低減することができ、その長寿命化を図ることができる。
【0036】
また、前述のように保圧工程が実現されることから、ゴムシートWを、前記プレス工程と保圧工程とをこの順に繰り返して加硫することが可能になり、スチールバンド13に付与する駆動力を抑えつつ、長尺状のゴムシートWを搬送しながら連続的に加硫することができる。したがって、加硫時間を短縮することができるとともに、未加硫部分が生ずるのを防ぐことも可能になり、加硫したゴムシートの品質を向上させることができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、前記保圧工程時に、副シリンダ21における第1副シリンダ22のヘッド側室25a内の作動油を第1接続管路20に向けて押し出して、主シリンダ19におけるヘッド側室18bを加圧することにより、上側の加熱搬送装置15aを上昇させて、ゴムシートWに対する加圧力を前記プレス工程時よりも小さくしているので、この保圧工程時におけるゴムシートWに対する加圧力を、例えばゴムシートWの厚さ等がばらついたとしても安定させることが可能になり、このゴムシートWの品質を確実に向上させることができる。
【0038】
さらにまた、本実施形態では、第1副シリンダ22よりも大径の第2副シリンダ23における第2副ピストン26を動作させることにより、第1副ピストン24を動作させて第1副シリンダ室25の作動油を第1接続管路20内に押し出すので、前述のような上側の加熱搬送装置15aの上昇移動を短時間で行わせることができる。
【0039】
また、本実施形態では、前記保圧工程時に、加熱体14との間に隙間が形成されたスチールバンド13によりゴムシートWを厚さ方向に加圧するので、このゴムシートWを全域にわたって均等に加圧することが可能になり、ゴムシートWの品質をより一層向上させることができるとともに、加熱体14とスチールバンド13の前記内周面13aとの間に発生する摩擦力を大きく低減することが可能になり、スチールバンド13の耐久性をより一層確実に向上させることもできる。
【0040】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、図5に示すフローチャートにおいて、第1副シリンダ22のヘッド側室25aへ作動油を充填する工程(S3およびS4)を、前記プレス工程(S5〜S7)の前に行ったが、これに代えて第1副シリンダ22のヘッド側室25aへ作動油を充填する工程(S3およびS4)を、前記プレス工程中に行うようにしてもよい。
【0041】
また、前記実施形態では、一つの油圧ポンプ28から主シリンダ19および副シリンダ21に作動油を送出する構成を示したが、これに代えて主シリンダ19に作動油を送出する油圧ポンプとは別に、副シリンダ21に作動油を送出する油圧ポンプを設けてもよい。
さらに、一対の加熱搬送装置15a、15bそれぞれにおいて、スチールバンド13の前記内周面13aと加熱体14との間に、スチールバンド13の送り移動に伴って回転するローラを設けてもよい。
また、前記実施形態では、上側の加熱搬送装置15aを下側の加熱搬送装置15bに対して昇降可能に設けたが、これに代えて例えば、下側の加熱搬送装置15bを上側の加熱搬送装置15aに対して昇降可能に設けてもよいし、あるいは一対の加熱搬送装置15a、15bそれぞれを昇降可能に設け、互いに接離させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
スチールバンドの短命化を回避することができ、しかも加硫したゴムシートの高品質化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る一実施形態として示したゴムシートの加硫装置の概略斜視図である。
【図2】図1に示すゴムシートの加硫装置においてプレス工程時の要部縦断面図である。
【図3】図1に示すゴムシートの加硫装置において保圧工程時の要部縦断面図である。
【図4】図1に示すゴムシートの加硫装置の油圧回路図である。
【図5】図1に示すゴムシートの加硫装置を用いて長尺状の未加硫のゴムシートを加硫する過程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
10 加硫装置
11 駆動輪
12 従動輪
13 スチールバンド
13a 内周面
14 加熱体
14a 噴出孔
14b 第1熱媒通路
15a、15b 加熱搬送装置
17 主ピストン
18 主シリンダ室
18a ロッド側室(一方の室)
18b ヘッド側室(他方の室)
19 主シリンダ
20 第1接続管路
21 副シリンダ
22 第1副シリンダ
23 第2副シリンダ
24 第1副ピストン
25 第1副シリンダ室
26 第2副ピストン
27 第2副シリンダ室
29、30 第1給排管路(給排管路)
31 主切替弁
32 第2リリーフ弁(リリーフ弁)
33 第3リリーフ弁(リリーフ弁)
34 第2開閉バルブ(開閉バルブ)
W ゴムシート



【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪と従動輪との間に無端状に巻回されたスチールバンド、およびこのスチールバンドの内周面側に設けられた平板状の加熱体を有する加熱搬送装置が上下一対備えられるとともに、これら一対の加熱搬送装置の各スチールバンド間で長尺状の未加硫のゴムシートを厚さ方向に挟み加圧した状態で前記加熱体からの熱で加熱して加硫するゴムシートの加硫装置であって、
主ピストンによって2つの室に仕切られた主シリンダ室を内部に有し、前記2つの室の一方が加圧されることにより前記一対の加熱搬送装置を相対的に接近移動させる主シリンダと、
前記2つの室の他方に第1接続管路を介して接続された副シリンダと、が備えられ、
前記主シリンダにおける前記一方の室を加圧して、前記一対の加熱搬送装置を相対的に接近移動させることにより、前記各スチールバンド間でゴムシートを厚さ方向に挟み加圧した状態で前記加熱体からの熱で加熱するプレス工程と、
前記副シリンダのシリンダ室内の作動油を前記第1接続管路に向けて押し出し、前記主シリンダにおける前記他方の室を加圧して、一対の加熱搬送装置を相対的に離間移動させることにより、ゴムシートを、前記各スチールバンド間で前記プレス工程時よりも小さい力で加圧した状態で前記加熱体からの熱で加熱しつつ、前記各スチールバンドを送り移動させてこのゴムシートを一定量搬送する保圧工程と、をこの順に繰り返す構成とされたことを特徴とするゴムシートの加硫装置。
【請求項2】
請求項1記載のゴムシートの加硫装置であって、
前記主シリンダの2つの室に一端が接続され作動油を給排する一対の給排管路と、これら一対の給排管路の他端に接続された主切替弁と、が備えられ、
前記一対の給排管路にはそれぞれリリーフ弁が設けられ、これら一対の給排管路のうち前記他方の室に接続された給排管路には、前記リリーフ弁よりも前記主切替弁側に開閉バルブが設けられていることを特徴とするゴムシートの加硫装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴムシートの加硫装置であって、
前記副シリンダは、前記第1接続管路に接続された第1副シリンダと、この第1副シリンダよりも大径の第2副シリンダとを備え、
前記第1副シリンダは第1副ピストンによって2つの室に仕切られた第1副シリンダ室を内部に有するとともに、前記第2副シリンダは、前記第1副ピストンに連結された第2副ピストンによって2つの室に仕切られた第2副シリンダ室を内部に有し、
この第2副シリンダ室内を加圧して第2副ピストンを動作させることにより、前記第1副ピストンを動作させて、前記第1副シリンダ室内の作動油を第1接続管路内に押し出す構成とされたことを特徴とするゴムシートの加硫装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のゴムシートの加硫装置であって、
前記加熱体の内部には、前記スチールバンドにおいて前記一対の加熱搬送装置が互いに対向する側の内周面に向けて開口する噴出孔を有する第1熱媒通路が形成され、
前記保圧工程時に、前記スチールバンドの前記内周面に前記噴出孔から熱媒の流体圧を作用させることにより、このスチールバンドの前記内周面と加熱体との間に隙間を形成しつつ、前記各スチールバンド間でゴムシートを厚さ方向に加圧する構成とされたことを特徴とするゴムシートの加硫装置。
【請求項5】
駆動輪と従動輪との間に無端状に巻回されたスチールバンド、およびこのスチールバンドの内周面側に設けられた平板状の加熱体を有する加熱搬送装置が上下一対備えられるとともに、これら一対の加熱搬送装置の各スチールバンド間で長尺状の未加硫のゴムシートを厚さ方向に挟み加圧した状態で前記加熱体からの熱で加熱して加硫するゴムシートの加硫方法であって、
請求項1から4のいずれかに記載のゴムシートの加硫装置を用いてゴムシートを加硫することを特徴とするゴムシートの加硫方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−272975(P2008−272975A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117151(P2007−117151)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】