説明

ゴム支承

【課題】簡易な構成でゴム部材への高温履歴の有無を判断することの可能なゴム支承を得る。
【解決手段】ゴム支承10のゴム体14が所定の検知温度になるか、または、ゴム体14の周囲が所定の検知温度になると、温度検知材20が溶融する。溶融した温度検知材20は、下方へ流れ、切欠き凹部17Kから流出する。その後、ゴム支承10のゴム体14及びゴム体14の周囲が所定の検知温度よりも低くなると、溶融した温度検知材20は再度固化して流出が止まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部材と被支持部材との間に配置されて、支持部材上で被支持部材を支持するゴム支承に関する。
【背景技術】
【0002】
支持部材に対し、ビルや橋梁などの構造物(被支持部材)を免震して支持するゴム支承が知られている。このようなゴム支承は、支持部材と被支持部材との間に配置され、被支持部材である上部構造物を支持すると共に、支持部材と被支持部材とを水平方向に相対移動可能としている。そして、このゴム支承は、支承自体が弾性変形することにより被支持部材と支持部材との間の相対移動を許容している。
【0003】
ところで、ゴム支承のゴム部材は、溶接施工や火災などに起因する限界を超えた高温により、内部性状に剛性低下などの影響が及ぼされることがある。しかしながら、想定外の高温下にあった場合でも、炭素化などの顕著な外観を呈する場合を除いて、ゴム部材は外観からその高温履歴を判断することは難しい。
【0004】
そのため、特許文献1に記載の技術では、ゴム体の電気的インピーダンスを測定して、ゴム体の性状変化を測定しているが、この方法では、ゴム体にどのような性状変化が生じているのかを特定することはできず、限界を超えた高温下にあってゴム体に影響が出ているかどうかは判断できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2713106号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、簡易な構成でゴム部材への高温履歴の有無を判断することの可能なゴム支承を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載のゴム支承は、支持部材と被支持部材との間に配置され、前記被支持部材を前記支持部材と相対移動可能なように支持するゴム部材を含んだゴム支承であって、所定の温度よりも高温となった場合に性状変化が生じると共に該性状変化の形跡が視認可能に残る温度検知材を備えている。
【0008】
本発明のゴム支承によれば、所定の温度よりも高温となった場合に性状変化が生じると共に該性状変化の形跡が視認可能に残る温度検知材を備えているので、ゴム支承が高温となった履歴を把握することができる。
なお、ここでの「性状変化」とは、例えば、熱による変形、溶融、変色(物質中に含まれる化合物の分解、酸化などによる)を含んでいる。
【0009】
また、上記の「被支持部材」としては、支承を介して支持される構造物であればよく、例えば、オフィスビル、病院、集合住宅、美術館、公会堂、学校、庁舎、神社仏閣、橋梁、競技場、照明灯等を挙げることができる。また、「支持部材」としては、支承を介して上記の被支持部材を支持するものであればよく、例えば、これら被支持部材の基礎、土台、地盤等を含む。
【0010】
請求項2に記載のゴム支承は、前記温度検知材が、所定の温度で溶融状態となるように性状変化するものであること、を特徴とする。
【0011】
このように、高温により溶融状態となる物質を用いて、温度検知材とすることができる。
【0012】
請求項3に記載のゴム支承は、前記温度検知材が、溶融状態で流れ落ちるように前記ゴム部材に接着されていること、を特徴とする。
【0013】
このように、温度検知部材を、溶融状態となったときに流れ落ちるように接着させておくことにより、一旦所定の温度を超えると、温度検知部材は流れ落ちてしまう。したがって、温度が所定の温度よりも低温に戻って、温度検知部材が液体から固体へと性状変化した場合でも、流れ落ちた状態により、一旦所定の温度を超える高温状態となったことを、把握することができる。
【0014】
請求項4に記載のゴム支承は、前記温度検知材は、前記ゴム部材に塗布されていること、を特徴とする。
【0015】
このように、ゴム部材に塗布することにより、簡単に温度検知材を形成することができる。
【0016】
請求項5に記載のゴム支承は、前記温度検知材が、前記ゴム部材の側面に形成された凹部に塗布されていること、を特徴とする。
【0017】
このように、温度検知材を、ゴム部材の側面に形成された凹部に塗布することにより、風雨によって温度検知材が受けるダメージを抑制することができる。
【0018】
請求項6に記載のゴム支承は、前記ゴム部材の側面に形成された凸部に切欠き凹部又は穴部が構成され、前記温度検知材は、この切欠き凹部又は穴部に塗布されていること、を特徴とする。
【0019】
このように、温度検知材を、ゴム部材のこの切欠き凹部または穴部に塗布することにより、風雨によって温度検知材が受けるダメージを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記構成としたので、簡易な構成でゴム部材への高温履歴の有無を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態の支承を示す側断面図である。
【図2】本発明の実施形態の支承を上面からみた図である。
【図3】本発明の実施形態の支承を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態の凸状部の拡大図である。
【図5】本発明の実施形態の支承の変形例を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態の支承の他の変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態の支承の他の変形例を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施形態の支承の他の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態のゴム支承10は、図1に示すように、支持部材の一例である橋脚106と、被支持部材の一例である橋梁の橋桁108との間に配置されている。
【0023】
ゴム支承10は、下板11、上板12、及び、ゴム体14を備えている。下板11は、橋脚106上に固定され、上板12は橋桁108の下面に固定されている。
【0024】
ゴム体14は、図2及び図3にも示すように、四角柱状とされ、厚み方向に所定の間隙をあけて積層された複数の金属板15と、これらの間隙に配置されたゴム層16を備えている。ゴム体14の側面は、ゴム壁18によって覆われている。ゴム壁18により、ゴム層16は紫外線等から保護され、その耐久性が向上されている。ゴム層16及びゴム壁18の具体的材料としては、たとえば、EPDMなどの合成ゴムを挙げることができる。
【0025】
ゴム壁18には、鉛直方向に凸状部17が形成されている。この凸状部17としては、ゴム材の加硫時に使用する金型に構成されたガス抜きのベントリッジに対応する位置に形成されるものを用いることができる。ベントリッジは、金型が外側に凸となるように段付にされたガス抜き用段付部であり、機能的には、所謂、ベントホールと同様である。凸状部17には、図4にも示すように、切欠き凹部17Kが構成されている。切欠き凹部17Kは、凸状部17の突出基端側に、ゴム壁18に沿って鉛直方向に構成され、温度検知材20が塗布されている。
【0026】
温度検知材20は、所定の検知温度以上になることで、溶融状態となる材料で形成されている。温度検知材20としては、所謂、示温材として用いられているものを使用することができる。示温材としては、所定の温度以上で溶融状態となるもの(所定の温度に融点が設定されている材料)を用いることができる。例えば、具体的商品として、(株)内外コーポレーションの「シオンクレヨン」、ラメール(株)のテンピラックGを用いることができる。また、貼付用として、サーモデマンドを用いることができる。
【0027】
ここで、所定の検知温度は、常温よりも高い温度であり、ゴム材にも依るが、130℃〜400℃程度の温度に設定しておくことにより、温度に起因したゴム材が受けるダメージを、適切に把握することができる。
【0028】
次に、本実施形態のゴム支承10の作用について説明する。
【0029】
橋脚106と橋桁108とが、水平方向に相対移動すると、ゴム体14がせん断変形し、その弾性力が、橋脚106及び橋桁108に対し復元力として作用する。これにより、橋脚106と橋桁108との相対移動が制限されると共に長周期化されるので、これらが相対移動前の位置に戻ろうとすると共に、相対移動のエネルギーが吸収される。
【0030】
溶接施工や火災などにより、ゴム支承10のゴム体14が所定の検知温度になるか、または、ゴム体14の周囲が所定の検知温度になると、温度検知材20が溶融する。溶融した温度検知材20は、下方へ流れ、切欠き凹部17Kから流出する。その後、ゴム支承10のゴム体14及びゴム体14の周囲が所定の検知温度よりも低くなると、溶融した温度検知材20は再度固化して流出が止まる。
【0031】
本実施形態によれば、ゴム支承10のゴム体14、もしくは、ゴム体14の周囲所定の検知温度以上の状態となった場合には、温度検知材20が下方へ流れて切欠き凹部17Kから流出する。これにより、その後、ゴム支承10のゴム体14及びゴム体14の周囲が所定の検知温度よりも低くなっても、検知温度以上の状態となった事実を外観から把握することができる。
【0032】
また、本実施形態では、温度検知材20を、切欠き凹部17Kに塗布しているので、風雨による温度検知材20の剥がれを抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態では、金型のベントリッジにより形成される凸状部17を用いているので、凸部を構成するための特別の金型を用いる必要がなく、経済的である。
【0034】
なお、本実施形態では、凸状部17に切欠き凹部17Kを構成して温度検知部材20を塗布したが、切欠き凹部17Kに代えて、図5に示すように、凸状部17に穴部17Hを構成して温度検知部材20を塗布してもよい。
【0035】
また、本実施形態では、温度検知材20を、切欠き凹部17Kに塗布したが、図6に示すように、ゴム壁18の外側に塗布しても良い。
【0036】
また、本実施形態では、凸状部17を利用して切欠き凹部17Kを構成したが、図7に示すように、ゴム壁18自体に凹溝18Kを構成して、この凹溝18Kに温度検知材20を塗布してもよい。この場合でも、温度検知材20が溶融したときに流下するように、凹溝18Kを鉛直方向の成分を持つ方向(水平方向から傾斜する方向)に構成する。
【0037】
また、本実施形態では、四角柱状のゴム支承10に適用した例について説明したが、どのような形状の支承に用いてもよく、例えば、図7に示すように、円柱状のゴム体24を有するゴム支承10Aに用いることもできる。
【0038】
また、本実施形態では、温度検知材20として、所定の検知温度で溶融するという性状変化を呈する材料を用いたが、他の性状変化を呈する材料を用いることもできる。例えば、所定の検知温度で気化する性質を有する物質を用いたり、所定の検知温度で熱変形する物質を用いたり、分解、酸化により変色する物質を用いることができる。熱変形する物質としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂(140℃で変形)を用いることができる。
【0039】
また、本実施形態では、温度検知材20を塗布することにより、ゴム体14に接着させたが、他の手段、例えば、接着剤で接着したり、係合により取り付けたりしてもよい。特に、本実施形態のように塗布することにより、温度検知材20を簡易に接着させることができる。
【0040】
なお、温度検知材20は、1種類のみでなく、各々異なる温度を検知温度とする複数種類のものを用意し、複数の温度について検知可能としてもよい。例えば、各々、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、で性状変化するものから、複数のものを選択して、温度検知材20として用いてもよい。この場合には、異なる検知温度の温度検知材20をゴム材14の異なる位置に接着することが好ましい。
【符号の説明】
【0041】
10 ゴム支承
14 ゴム体
15 金属板
16 ゴム層
17K 切欠き凹部
17 凸状部
18 ゴム壁
18K 凹溝
20 温度検知材
106 橋脚
108 橋桁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と被支持部材との間に配置され、前記被支持部材を前記支持部材と相対移動可能なように支持するゴム部材を含んだゴム支承であって、
所定の温度よりも高温となった場合に性状変化が生じると共に該性状変化の形跡が視認可能に残る温度検知材を備えた、ゴム支承。
【請求項2】
前記温度検知材は、所定の温度で溶融状態となるように性状変化するものであること、を特徴とする請求項1に記載のゴム支承。
【請求項3】
前記温度検知材は、溶融状態で流れ落ちるように前記ゴム部材に接着されていること、を特徴とする、請求項2に記載のゴム支承。
【請求項4】
前記温度検知材は、前記ゴム部材に塗布されていること、を特徴とする請求項2または請求項3に記載のゴム支承。
【請求項5】
前記温度検知材は、前記ゴム部材の側面に形成された凹部に塗布されていること、を特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載のゴム支承。
【請求項6】
前記ゴム部材の側面に形成された凸部に切欠き凹部または穴部が構成され、
前記温度検知材は、この切欠き凹部または穴部に塗布されていること、を特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載のゴム支承。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−111732(P2011−111732A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266667(P2009−266667)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】