説明

サイジング処理をしない製織用の糸、繊維およびフィラメント

本発明は、糸、繊維およびフィラメントのサイジング組成物に関する。特に、本発明はサイジング工程または洗浄工程を含まない方法によって製織可能で、表面の少なくとも一部に前記組成物を含む糸、繊維およびフィラメントに関する。また、本発明は、前記糸、繊維およびフィラメントを製造する方法に関する。さらに、本発明は乾燥織機を用いた方法のようにサイジング工程または洗浄工程を含まない方法によって、前記糸、繊維またはフィラメントから製造される布に関する。その上、本発明は前記糸、繊維またはフィラメントの使用方法と、その結果として製造される安全エアバッグ用織布または編布に関するものでもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸、繊維およびフィラメントの仕上げ用組成物に関する。本発明は特に、サイジング工程および洗浄工程を含まずに製織可能であり、表面の少なくとも一部にこの仕上げ用組成物を含む糸、繊維およびフィラメントに関し、さらに糸、繊維およびフィラメントを製造する方法に関する。本発明はさらに、これらの糸、繊維およびフィラメントから、サイジング工程および洗浄工程を経ることなく得られる織物、そしてこれらの糸、繊維およびフィラメントを用いたサイジング工程および洗浄工程を含まない、特に乾式織機での製織方法に関する。最後に、本発明は、糸、繊維およびフィラメントの使用方法と、エアバッグ分野に適用可能な織物および編物に関する。
【背景技術】
【0002】
製織用糸の結束性を確保するため、糸に撚りをかける方法が一般的である。しかし、この加撚作業は、圧縮空気を用いてフィラメントを混繊交絡するというプロセスに代替されている。この方法によると、流動体および交絡装置の圧力次第で、結節点の数、すなわちフィラメントが節を形成する点の数を、糸の最終的な外観とその後の使用方法に適合するように変更可能である。
【0003】
繊維および糸の相互の滑りを良くするため、オイルや仕上げ用組成物を塗布する方法が一般的である。連続人工合成糸に関して言えば、これらオイルや仕上げ用組成物は製造工程の中で糸に1回または複数回塗布される。これらのオイルまたは仕上げ剤は通常、洗浄工程での織布の処理によって製織後に取り除かれる。これらオイルまたは仕上げ剤の存在は実際上有害であり、安全エアバッグの分野では特に有害である。オイルや仕上げ剤は、例えば、保護コーティング層への織物の密着力を弱める他、エアバッグの耐火性および耐熱性を低下させることがある。
【0004】
縦糸の使用中、主に製織時に、一方では糸がヘドルシャフトの上下運動によって互いに擦れ合い、他方では糸が糸の通るヘドルの目、リードのくぼみ、スレー、送り出し構造、縦糸停止装置などの織機構造と擦れることが知られている。摩擦によって、実際の製織や製造された織布の品質に不利となる欠陥が発生することを防ぐため、糸にサイジングという前処理が施される。この処理は、繊維の結束性を確保し、紡績糸を覆う保護鞘を形成するために紡糸繊維に施されるものとして既知であり、人工合成マルチフィラメント連続糸にも適用される。見た目に欠陥の無い織布を製造し、破れ、ほつれをできる限り防止するために、サイジング処理によって、一般的に細番手で壊れやすいフィラメントを定着させ、保護し、さらに、連続糸を鞘で覆うことで、上記の摩擦を防ぎ、結果として糸と織機構造間の滑りおよび糸どうしの滑りを促進させる必要がある。これらのサイジング剤は、一般的にデサイジング工程での織布の処理によって製織後に取り除かれる。デサイジング工程により、糸上のオイルおよび仕上げ剤を取り除くことも可能である。この場合、上記した洗浄作業はデサイジング工程で実行される。
【0005】
サイジングおよびデサイジングに要するコストを削減するため、すなわち、糸についての製造2工程を廃止するために、環境に有害であるサイジング処理を省く試みがなされてきた。さらに、サイジング剤は、使用されている製品の種類、糸の種類および布の織り方によっては完全に取り除くことが難しい場合があり、布内にサイジング剤が残留する危険性がある。これら残留物は、特に安全エアバッグの分野で有害であることが判明している。例えば、サイジング剤の残留により、時間の経過とともに製品機能が衰える上に、耐火性および耐熱性が低下し得る。
【0006】
したがって、車両搭乗者の個人保護を目的としたバッグ(「エアバッグ」とも呼ばれる。)に用いられる布の製造において、サイジング工程および洗浄工程を廃止する試みがなされてきた。しかしながら、サイジング工程および洗浄工程を廃止しても、エアバッグの素材として必要とされる繊維特性を損なうことなく維持させる必要がある。
【0007】
エアバッグには2種類のベース織布が存在する。シリコーン樹脂のようなエラストマーからできた保護コーティング層を持つ布と、特に重量の理由からエラストマーからできた保護コーティング層を持たない布である。
【0008】
歴史的に言えば、保護コーティングした織布に関する限り、エアバッグは、少なくとも一表面がクロロプレンタイプのエラストマー層で覆われたポリアミド(Nylon(登録商標))のような合成繊維からなる布でできている。このエアバッグ(または膨張可能なクッション)は、折りたたまれて圧縮されたポリアミド素材でできている。エラストマー層または保護コーティングの存在は、衝撃時にガス発生器によって放出されるガス(一酸化炭素または窒素酸化物等)が非常に熱く、Nylon素材のエアバッグを損傷させ得る白熱粒子を含むという事実によって決定付けられる。
【0009】
シリコーン保護コーティングも使用されている。シリコーンコーティングは一般的に、基質を覆い、その基質を化学処理することで形成される。その化学処理とは、ポリオルガノシロキサンの不飽和基(例えばSi−Vi等のアルケニル基)を同重合体または別のポリオルガノシロキサンの水素へ重付加する処理である。
【0010】
エアバッグの壁を形成する、エラストマーからなる内部保護層と、合成繊維からなる基底材は、特に完全に接着し、高温と機械的圧力に持ちこたえなければならない。エアバッグは特に、優れた耐火性、耐熱性、さらに、優れた耐摩擦・耐磨耗性(スクラブテスト耐性)を備えなければならない。
【0011】
したがって、保護コーティングを施した安全エアバッグの場合は特に、その布の製造時にサイジング工程および洗浄工程を廃止する一方で、安全エアバッグとして必要とされる繊維特性、特に耐火・耐熱性および耐摩擦・耐磨耗性(スクラブテスト耐性)を維持し、または向上する試みがなされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、第一の目的として、糸、繊維またはフィラメントの仕上げ用組成物で、特にサイジング工程および洗浄工程を含まない製織を可能とする仕上げ用組成物を提供する。
【0013】
本発明は、第二の目的として、サイジング工程および洗浄工程を含まずに製織可能であり、表面の少なくとも一部に仕上げ用組成物を含む糸、繊維またはフィラメントを提供する。さらに、これらの糸、繊維またはフィラメントを製造する工程も示す。
【0014】
本発明は、第三の目的として、特にこれらの糸、繊維およびフィラメントから得られる織布または編布を提供する。さらに、この織布または編布を製造する工程も示す。
【0015】
本発明は、第四の目的として、エアバッグの分野で用いられるこれらの糸、繊維、フィラメント、織布および編布の使用方法を示す。
【0016】
最後に、本発明は、第五の目的として、表面にポリオルガノシロキサンからなる化合物を含む糸、繊維またはフィラメントから製造されるエアバッグ用織布または編布を提供する。さらにこの織布または編布を製造する方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、第一の目的との関連において、化合物Aおよび/または化合物Bを有する糸、繊維またはフィラメント用の仕上げ用組成物を提供する。化合物Aは少なくとも1個のSi−H構造単位を含むモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーであり、化合物Bは少なくとも1個の不飽和脂肪族基を含むモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーである。糸、繊維またはフィラメントの製造時に塗布される仕上げ用組成物は、滑りを良くする。糸、繊維またはフィラメントに塗布される本発明に係る仕上げ用組成物によって、サイジング処理を施すことなく紡績、整経および製織するときに、糸、繊維またはフィラメントの状態が良く保たれるだけでなく、シリコーンで保護コーティングされたエアバッグ織布の場合には特に、優れた最終特性を持つ布を製造できる。本布は特に耐摩擦・耐磨耗性(スクラブテスト耐性)および耐火・耐熱性の点で優れ、布を構成する糸、繊維またはフィラメント表面の仕上げ用組成物を取り除く必要もない。
【0018】
本発明に係る仕上げ用組成物の特定の実施例によると、ポリオルガノシロキサンAはポリオルガノヒドロゲノシロキサンで、以下式(1)の単位群を含む。
【化1】

(式(1)中、符号Wはそれぞれが同等の場合および/または異なる場合があり、以下を示す:
・1〜18の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル残基。任意的に、少なくとも1個のハロゲンに置換されている;
・5〜8の環状炭素原子を含むシクロアルキル残基。任意的に、少なくとも1個のハロゲンに置換されている;
・6〜12の炭素原子を含むアリール残基。任意的に、アリール部が少なくとも1個のハロゲン原子、あるいは1〜3個の炭素原子を含むアルキルおよび/またはアルコキシル基に置換されている;
・5〜14の炭素原子を含むアルキル部および6〜12の炭素原子を含むアリール部を有するアリールアルキル基。任意的に、アリール部が少なくとも1個のハロゲン原子、あるいは1〜3個の炭素原子を含むアルキルおよび/またはアルコキシル基に置換されている。ここに、aは1または2、bは0、1または2、合計(a+b)は1〜3である。)
オルガノヒドロゲノシロキサンは、任意的に、次の平均式(2)の単位群を含む。
【化2】

(式(2)中、Wは上記と同じ意味を有し、Cは0〜3の値である。)
【0019】
ポリオルガノシロキサンAは、式(1)の単位群のみからなる場合、またはさらに式(2)の単位群を含む場合もある。
【0020】
ポリオルガノシロキサンAは、線状、分岐状または非分岐状、環状、または交差結合の構造を有する。重合度は、2またはそれ以上であり、より一般的には5000未満である。
【0021】
式(1)の単位群は、以下に例示できる。
H(CH)SiO1/2、HCHSiO2/2、H(C)SiO2/2
【0022】
線状ポリマーに関する限り、ポリマーは本質的には「D」単位、すなわちWSiO2/2およびWHSiO2/2、そして「M」単位、すなわちWSiO1/2およびWHSiO1/2からなり、末端封鎖基である「M」単位はトリアルキルシロキシまたはジアルキルアリールシロキシ基となり得る。
【0023】
末端基である「M」単位の例として、トリメチルシロキシ、ジメチルフェニルシロキシ、ジメチルエトキシシロキシ、ジメチルエチルトリエトキシリルシロキシ基が挙げられる。
【0024】
「D」単位の例として、ジメチルシロキシおよびメチルフェニルシロキシ基が挙げられる。
【0025】
この線状ポリオルガノシロキサンは、25℃で粘度1〜100000mPa・s、一般的には25℃で粘度10〜5000mPa・sのオイルである。
【0026】
環状ポリオルガノシロキサンに関する限り、ポリオルガノシロキサンはWSiO2/2、WHSiO2/2の「D」単位からなり、ジアルキルシロキシ基またはアルキルアリールシロキシ基の類である場合もある。環状ポリオルガノシロキサンの粘度は、1〜1000mPa・sである。
【0027】
現在公表されている全てのポリオルガノシロキサンポリマーの25℃での粘度は、1972年2月のAFNOR基準NFT 76 102に従い、ブルークフィールド粘度計を用いて測定されている。
【0028】
ポリオルガノシロキサンAは、好ましくは下記より選択される:
・ヒドロゲノジメチルシリル末端基を有するポリジメチルシロキサン;
・トリメチルシリル末端基を有するポリジメチルヒドロゲノメチルシロキサン;
ヒドロゲノジメチルシリル末端基を有するポリジメチルヒドロゲノメチルシロキサン;
・トリメチルシリル末端基を有するポリヒドロゲノメチルシロキサン;
・環状ポリヒドロゲノメチルシロキサン。
【0029】
本発明に係る仕上げ用組成物の化合物Bは、有利にはポリオルガノシロキサンである。
【0030】
本発明に係る仕上げ用組成物の特定の実施例によると、ポリオルガノシロキサンBは式(3)と同等または異なる単位群で構成されるポリオルガノシロキサンから選ばれる。
【化3】

(式(3)中、符号W’はそれぞれ同等の場合および/または異なる場合があり、以下を示す:
・1〜18の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル残基。任意的に、少なくとも1個のハロゲンに置換されている;
・5〜8の環状炭素原子を含むシクロアルキル残基。任意的に、少なくとも1個のハロゲンに置換されている;
・6〜12の炭素原子を含むアリール残基。任意的に、アリール部が少なくとも1個のハロゲン原子、あるいは1〜3個の炭素原子を含むアルキルおよび/またはアルコキシル基に置換されている;
・5〜14の炭素原子を含むアルキル部および6〜12の炭素原子を含むアリール部を有するアリールアルキル基。任意的に、アリール部が少なくとも1個のハロゲン原子、あるいは1〜3個の炭素原子を含むアルキルおよび/またはアルコキシル基に置換されている。符号Yはそれぞれ同等の場合と異なる場合があり、鎖末端および/または鎖中に少なくとも1個の不飽和エチレン、さらに任意的に、少なくとも1個のヘテロ原子を有するC1〜C12の線状もしくは分岐状アルケニル残基を示す。ここに、eは1または2、dは0、1または2、合計(d+e)は1〜3の値である。)
ポリオルガノシロキサンは、任意的に、次の平均式(2’)の単位を含む。
【化4】

(式(2’)中、W’は上記と同じ意味を有し、Cは0〜3の値である。)
【0031】
残留基Yに関して、これらは有利には以下のリストから選ばれる。ビニル、プロペニル、3−ブテニル、5−ヘキセニル、9−デセニル、10−ウンデセニル、5,9−デセニルおよび6,11−ドデカジエニル
【0032】
これらポリオルガノシロキサンは、線状(分岐状または非分岐状)、環状または交差結合の構造を有する。重合度は、好ましくは2〜5000である。
【0033】
線状ポリマーに関する限り、ポリマーは本質的にW’SiO2/2、YSiO2/2およびW’SiO2/2の「D」単位と、W’YSiO1/2、W’YSiO1/2およびW’SiO1/2の「M」単位とからなり、末端封鎖基である「M」単位はトリアルキルシロキシ、ジアルキルアリールシロキシ、ジアルキルビニルシロキシまたはジアルキルアルセニルシロキシ基となり得る。
【0034】
上記の線状ポリオルガノシロキサンは、25°Cで粘度1〜100000mPa・s、通常は25°Cで粘度10〜5000mPa・sのオイルである。
【0035】
環状ポリオルガノシロキサンに関する限り、これらはW’SiO2/2、W’YSiO2/2およびW’SiO2/2の「D」単位からなり、ジアルキルシロキシ、アルキルアリールシロキシ、またはアルキルシロキシ基の類である場合もある。このような単位の例は上述したとおりである。
【0036】
上記環状ポリオルガノシロキサンBは、粘度1〜5000mPa・sである。
【0037】
本発明において有効な脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンBは、例えば、該当の技術分野で既知のオレフィンまたはアセチレンの不飽和ポリオルガノシロキサンである。これに関しては、上記化合物について記述している米国特許第3159662号、第3220272号および第3410886号を参照されたい。
【特許文献1】米国特許第3159662号
【特許文献2】米国特許第3220272号
【特許文献3】米国特許第3410886号
【0038】
有利には、本発明に係る仕上げ用組成物は、ヒドロシリル化触媒を含まない。
【0039】
本発明に係る仕上げ用組成物は、帯電防止剤を含む。好ましくは、帯電防止剤はポリオルガノシロキサンである。有利には、帯電防止剤は、コポリマーが以下の一般式(i)および(ii)の単位群からなるポリシロキサン/ポリオキシアルキレンコポリマーである。
【化5】

【化6】

(式中、各Rは一価の炭化水素基を示し、基の少なくとも80%はメチル基である。各R’は一般式Q(OA)OZの置換基を示し、ここでQはシリコン原子に結合している二価基を示す。Aはアルキレン基を示し、OA基の少なくとも80%はオキシエチレン基である。Zは水素原子またはOCR’’基を示し、R’’は一価基を示す。aは1、2または3の値、bは0、1または2の値、cは1または2の値、bおよびcの合計は3より小さく、nは5〜25の値である。コポリマーは、測定された分子の重量のうちOA基が約25%〜約65%を占めるような平均分子式を有する。)
【0040】
本発明に使用可能なポリシロキサン/ポリオキシアルキレンコポリマーは、一般式(i)のシロキサン単位群を含む。
【化7】

(式中、各Rは一価の炭化水素基を示す。)これらの単位はポリシロキサン分子の鎖単位として存在し、ポリシロキサン分子の末端基としても存在し得る。R基のうちのいくらかは、飽和、脂肪族または芳香族のいずれにせよ非置換の炭化水素基であるが、これらR基の少なくとも80%はメチル基、特に好ましくは各Rがメチル基である。一般式(i)の単位はポリシロキサン分子単位の半分以上を構成し、例えば、シロキサン単位の約65%〜約92%、とりわけ78%〜85%を構成する。
【0041】
本発明に使用可能なポリシロキサン/ポリオキシアルキレンコポリマーは、一般式(ii)のシロキサン単位を含む。
【化8】

(式中、Rは上記の基を示す。R’は一般式Q(OA)OZ(すなわち、オキシアルキレン残留基を含む基)が表す基を示す。ここでAは二価の炭化水素基を示し、A基の少なくとも80%はエチレン基である。Zは水素原子またはOCR’’基を示し、このR’’は一価基を示す。)好ましくは、A基は、例えばエチレンオキシドから誘導されたエチレン(CHCH)基である。必要ならば、A基の少なくとも80%がエチレン基という条件下でオキシエチレン/オキシプロピレンコポリマーを用いても良い。これらオキシアルキレンポリマー鎖はランダム構造もしくはブロック構造を有し、Q(OC(OCHOZと示される。オキシアルキレン鎖は二価結合Qによってシロキサン鎖のシリコン原子に結合する。
【0042】
結合は、例えば置換、非置換、芳香族、脂環式または脂肪族の炭化水素であるが、非常に好都合には、この結合は鎖中に2〜8の炭素原子を有する非置換アルキレン鎖である。オキシエチレン単位以外のオキシアルキレン単位がオキシアルキレン鎖に存在する場合、オキシアルキレン単位はオキシアルキレン鎖の20%を上限とした構成要素である。用いられるコポリマーは、n値が5〜25、好ましくは5〜15である。使用可能なコポリマーの例(後述)では、各R’基に平均して約7.5もしくは12のオキシチレン単位を含み、−(CH−基を結合基Qとする。
【0043】
R’基の末端基OZはOHまたはOOCR’’で、R’’は一価基を示す。一価基の例として、メチル、エチルまたはブチルのような低アルキル基が挙げられる。好ましいコポリマーでは、末端基OZがヒドロキシ基またはアセテート基である。
【0044】
好ましいコポリマーは、平均組成式MeSiO(MeSiO)(MeR’SiO)SiMeで示されるものからなる。式中、Meはメチル基を示す。xとyの比は1:1〜11:1、好ましくは1:1〜9:1である。特に好ましくは、xとyの比は3:1〜7:1、とりわけ3:1〜5:1である。
【0045】
本発明に係る化合物には、PVA(ポリビニルアルコール)のような乳化剤が含まれる。
【0046】
本発明に係る化合物には、仕上げ用組成物、とりわけポリマー紡績の分野で、特にポリアミドまたはポリエステルの紡績に通常用いられるその他の化合物を含む場合もある。例えば、界面活性剤、潤滑剤などがある。
【0047】
本発明に係る化合物には接着促進剤が含まれる場合がある。接着促進剤は、織物コーティングの分野における当業者間で既知である。本発明に適する接着促進剤の例は、国際公開第00/60010号パンフレットおよび欧州特許第0681014号明細書に詳細に記載されている。
【特許文献4】国際公開第00/60010号パンフレット
【特許文献5】欧州特許第0681014号明細書
【0048】
本発明に係る化合物は、好ましくはポリオルガノシランの重量(固形分)の少なくとも50%を構成する。
【0049】
本発明に係る化合物は、通常は液体である。本発明に係る化合物は、特に、液体中の溶液、乳濁質または分散質であってもよい。
【0050】
化合物は、乳濁質、特に水性乳濁質であってもよい。化合物は、オイルであってもよい。
【0051】
第二の目的との関連において、本発明は、サイジング工程および洗浄工程を含まずに製織可能であり、表面の少なくとも一部に上記の仕上げ用組成物を含む糸、繊維またはフィラメントを提供する。
【0052】
本発明に係る糸、繊維またはフィラメントは、天然物、人工物および/または合成物のいずれでもよい。本発明に係る糸、繊維またはフィラメントは、様々な素材を含む場合もある。例として、ポリアミド紡績糸および綿繊維が挙げられる。
【0053】
本発明に係る糸、繊維またはフィラメントは、有利には熱可塑性高分子に基づいている。本発明の目的に適する熱可塑性高分子(熱可塑性共重合体)を以下に例示する:ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアルキレンオキシド、ポリオキシアルキレン、ポリハロアルキレン、ポリ(アルキレンフタレートまたはテレフタレート)、ポリ(フェニルまたはフェニレン)、ポリ(フェニレンオキシドまたはフェニレンスルフィド)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルハロゲン化物)、ポリビニリデンハロゲン化物、ポリビニルニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリシロキサン、アクリル酸ポリマーまたはメタクリル酸ポリマー、ポリアクリル酸塩またはメタクリル酸塩、セルロースやセルロース誘導体等の天然ポリマー、合成エラストマー等の合成ポリマー、あるいは上記ポリマーに含まれる何れかのモノマーと同一のモノマーを少なくとも1分子有する熱可塑性共重合体、およびこれら熱可塑性高分子(熱可塑性共重合体)の混合物および/またはポリマーアロイ。
【0054】
本発明において、その他の好ましい熱可塑性高分子としては、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、より一般的には、飽和脂肪族二塩基酸または芳香族二塩基酸と芳香族第一ジアミンまたは飽和脂肪族第一ジアミンの間の重縮合によって得られる線状ポリアミド、ラクタムまたはアミノ酸の縮合によって得られるポリアミド、またはこれらモノマーの混合物の縮合によって得られる線状ポリアミドのような半結晶性または非結晶性ポリアミドがある。
【0055】
より正確には、これらのポリアミドは、例えば、ポリヘキサメチレン アジポアミド、AMODELの商品名で販売されているポリアミドのような、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から得られるポリフタルアミド、またはアジピン酸から得られるコポリアミド、また、ヘキサメチレンジアミンおよびカプロラクタムである。
【0056】
熱可塑性高分子は、有利には、ポリエチレンテレフタル酸(PET)、ポリプロピレンテレフタル酸(PPT)、ポリブチレンテレフタル酸(PBT)およびこれらの共重合体および混合物であるポリエステルである。
【0057】
さらにより好ましくは、熱可塑性高分子は、以下を含むポリアミド(コポリアミド)基から選択される。ポリアミド−6、ポリアミド−66、ポリアミド−4、ポリアミド−11、ポリアミド−12、ポリアミド4−6、6−10、6−12、6−36、12−12およびこれらの共重合体および混合物。
【0058】
本発明に係る糸、繊維およびフィラメントは、熱可塑性高分子または熱可塑性共重合体に基づく場合もある。
【0059】
本発明に係る糸、繊維およびフィラメントは、強化剤のような添加剤、難燃剤、UV安定剤、熱安定剤、二酸化チタンのような艶消し剤、生物活性剤などを含む場合もある。
【0060】
仕上げ用組成物は、有利には糸の重量に対して、0.05〜5重量%(固形分)、好ましくは0.1〜2重量%を占める。
【0061】
本発明に係る布の総体的な線密度は、通常線密度の全範囲から選択され、例えば、10〜2500dtex、有利には10〜1100dtexである。安全エアバッグの分野において、総体的な線密度は有利には100〜950dtexである。
【0062】
本発明に係る布のフィラメントの線密度は、通常線密度の全範囲から選択できる。フィラメントの線密度は一般的には0.3dtexまたはそれ以上である。これは、大径モノフィラメントの場合では直径800μmに相当する線密度よりも通常小さい。安全エアバッグの場合、糸は一般的にマルチフィラメント糸であり、フィラメントの線密度は有利には1.5〜7dtexである。
【0063】
本発明に係る糸、繊維またはフィラメントの特定の実施例によると、本発明に係る糸、繊維またはフィラメントの表面上に存在する化合物は架橋していない。
【0064】
本発明はさらに、糸、繊維またはフィラメントの製造方法に関する。その製造方法は、以下の工程を含む:
1)糸の構成材料を紡績する。
2)任意的に、糸を延伸する。
3)任意的に、糸に織加工を施す。
4)上記のとおり定義した化合物を利用して糸を処理をする
【0065】
紡績工程1)は、当業者間で既知の何れの方法を用いても実行できる。
【0066】
糸の素材が熱可塑性高分子の場合、工程1)は、有利には融解状態でポリマーを紡績する工程となる。
【0067】
本発明に係る糸、繊維またはフィラメントは、延伸工程を経る場合もある。その場合、糸は何れかの従来方法により、糸が必要とする配向性や力学的性質に応じた好ましい延伸比になるまで、紡績経路に沿って引き伸ばされる。糸は、最終的な巻き速度に応じて、紡績中に簡単に予備配向または配向される。このような延伸工程が有効であり、または必要とされる場合、糸の巻き張力を調整するために糸をロールに直接的に、または後に続いて巻くことができる。工程2)は、紡績と融合させて、または融合させずに実行される。
【0068】
巻き速度は一般的に100〜8000m/分、有利には600〜5000m/分、好ましくは700〜4000m/分である。
【0069】
織加工工程3)のは、当業者間で既知の何れの方法でも実行できる。
【0070】
処理工程4)は、任意的な延伸工程の前または後に実行される。処理工程4は、任意的な織加工工程3)の前または後に実行される。処理工程4での処理に用いられる本発明に係る化合物は、上記のとおり、通常は液体である。本発明に係る化合物は、特に、オイル、溶解、乳剤もしくは液体中の分散物であってもよい。有利には、本発明の化合物は、乳濁質、好ましくは水性乳濁質である。
【0071】
マルチフィラメント糸の場合、本処理によりフィラメントの相互接着を強化できる。
【0072】
処理工程4)は、ローラーや穴付ノズルを使った沈積法のような通常技術によって実行できる。通常技術の例を例示的に列挙すると、噴霧または気化、浸漬、パッドフィニッシング法、さらに合成繊維を処理するために織物産業界で用いられている何れかの方法により、ロールを用いて原料繊維を処理する技術がある。有利には、本処理は穴付ノズルを用いて実行される。本処理は、糸の製造時に様々な工程において実行される。様々な工程とは、、仕上げ用組成物が慣例的に塗布されていた全ての工程を含む。すなわち、添加剤は巻き工程の前に紡績装置の底部に塗布される。さらに、いわゆる「繊維」加工の場合、添加剤を延伸工程、縮み加工工程、乾燥工程等の前、途中または後で塗布することも可能である。
【0073】
特定の場合、化合物の糸への吸着性を促進するために、当業者に既知の方法により、糸に第一前処理(プレトリートメント)を施すことも有利である。さらに、工程4)の前または後に、例えば照射、染色などのようなその他の化学的処理または物理的処理を糸に施すことも想定される。
【0074】
本発明に係る方法の特定の実施例おいては、糸、繊維またはフィラメントの製造工程において、糸、繊維またはフィラメント上に沈積した化合物は架橋しない。
【0075】
本発明は、第三の目的との関連において、上記のように、少なくとも一部に糸、繊維およびフィラメントを含む織布または編布と、この織布または編布を製造する方法を提供する。織布または編布の製造に使用される糸は、全て同一の種類である場合も、それぞれ異なる場合もある。本発明に係る糸は少なくとも布の縦糸を構成し、有利には布の縦糸、横糸の両方を構成する。
【0076】
本発明に係る糸は、例えば産業織機で織られる縦糸として使用できる。有利には、この縦糸によりサイジング工程を経ることなく織布を製造することが可能である。好ましくは、この縦糸によりサイジング工程および洗浄工程のどちらも経ることなく織布を製造することが可能である。
【0077】
本発明に係る糸を縦糸として使用する場合、サイジング工程なしに、直接整経用、部分整経用の何れかに容易に使用でき、全種類の織機、特に産業界で用いられる高速織機で製織が可能である。
【0078】
特定の場合、例えば縦糸に高い張力が及ぼされる織機で製織する場合、製織を行う前に、通常使われている何れかの製品で糸を磨くのが好ましい。
【0079】
有利には、本発明に係る糸からなる織布は、エアジェット織機、レピア織機、プロジェクタイル織機等の乾式織機を用いて得ることができる。
【0080】
本発明に係る布は、単位面積あたりの重量が40〜400g/mである。布は、特にエアバッグ分野では、一般的に布1cmあたり10〜30本の糸を含む。
【0081】
本発明に係る糸、繊維、フィラメント、織布および編布はエアバッグの分野で特に有効であり、これが第4の目的に関連する。本発明に係る糸は、エアバッグ用の織布または編布の製造に使用される。これらの織布または編布は、有利にはサイジング工程を経ることなく、さらに好ましくは洗浄工程も経ることなく製造可能であり、これら製品の製造方法を単純化させ、製造コストを削減できる。本発明に係る糸、繊維、フィラメント、織布および編布は、特にシリコーンで保護コーティングされたエアバッグ用の織布または編布の製造時にとりわけ有効である。
【0082】
さらに、本発明に係る布は、熱処理工程を経ることなく生産できる。熱処理工程は、布に寸法安定性を付加するために効率的に実行される。この熱処理は、一般的には布の乾燥工程と同時に行われる。乾燥工程は、布が洗浄工程を経る場合に必要である。本発明により洗浄工程が廃止されると、乾燥工程は不要となる。したがって、熱処理工程は、乾燥工程を経る場合の次工程と同時に行うことができ、特にエアバッグ用織布または編布の場合には、そうすることが可能である。例えば、熱処理工程は、織布または編布がエラストマーでコーティングされた後に実行され、有利にはエラストマーの架橋過程と同時に実行される。
【0083】
とりわけ布がエアバッグ分野で用いられる場合、糸、繊維およびフィラメントの表面に化合物が存在しても、織布または編布が経る後工程にいかなる影響も及ぼさない。後工程の例として、エラストマーによるコーティング処理などが挙げられる。特に、耐火・耐熱性、磨耗・摩擦特性は変化しない。
【0084】
例えば、エアバッグ用の織布または編布の製造に使用される糸、繊維およびフィラメントの表面に存在する本発明に係る化合物は、織布または編布をコーティングする任意の保護エラストマーの構成要素ではない。
【0085】
最後に、本発明は第五の目的との関連において、エアバッグ用織布または編布を提供する。これら織布または編布の少なくとも一部は、表面の少なくとも一部にポリオルガノシロキサンを含む化合物を有する糸、繊維またはフィラメントからなる。布の表面に存在する化合物は、布に施す任意のエラストマー保護コーティングではない。本発明に係る仕上げ用組成物、特に化合物の構造、固形成分および固形成分の糸への塗布に関して上記した全ての内容は、ポリオルガノシロキサンを構成する化合物にも同様に適用できる。同様に、糸、繊維およびフィラメントの記述に関して上記した全ての内容、特にポリマーの性質や線密度などは、本発明の第五の目的に関連してここで同様に適用できる。
【0086】
本発明の第五の目的に関連するエアバッグ織物または編布は、有利には保護コーティングが施されており、好ましくはその保護コーティングはシリコーンである。本発明に係るエアバッグ織物または編布は、表面の少なくとも一部にポリオルガノシロキサンを含む化合物を有する糸、繊維またはフィラメントを織機で織るか、または編むことによって得られる。製織工程または製編工程に関連して上記した全ての内容が、ここで同様に適用される。糸、繊維またはフィラメントの表面に、通常は糸のサイジング時に形成されるポリオルガノシロキサンが存在することで、サイジング工程を経ることなく、好ましくはサイジング工程および洗浄工程のどちらも経ることなく製織が可能となる。さらに、ポリオルガノシロキサンの存在が、エアバッグ用布に必要とされる最終特性、すなわち特に耐火・耐熱性および耐摩擦・耐磨耗性(スクラブテスト耐性)を変えることはない。
【0087】
有利には、本発明の第五の目的に関連する織布または編布に用いる仕上げ用組成物は、ポリオルガノシロキサンの重量(固形分)の少なくとも50%を占める。
【0088】
本発明のその他の詳細または利点について、下記の実例によって一層明確になる。
【0089】
評価用の布の製造
各種仕上げ用組成物を評価した。各仕上げ用組成物が施されて完成した布をシミュレートするため、エアバッグの製造に通常用いられる染色していない布を用いた。染色していない布の仕上げ用組成物を、当業者が通常用いる条件の下で予め除去し、熱処理した。すなわち、洗浄剤を使用して60℃で洗浄し、180℃で30分間熱硬化させた。仕上げ用組成物除去後に残留した組成物は、通常は0.1%より少ない。
【0090】
以下の布が用いられた。Rhodia IY社製のT682として販売されている700dtex/104フィラメントの糸から製造されたポリアミド66素材の布。縦糸方向、横糸方向ともに16〜17本/cmの糸で構成される布である。この布の洗浄、硬化後の重量は約255g/mである。
【0091】
評価ステップは以下の通りである:
・2枚のサンプル(20×28cm)を裁断する;
・これらのサンプルを、検査対象となる仕上げ用組成物の希釈水性乳剤、つまり仕上げ用組成物の種類および必要沈積量に応じて使用される希釈溶液の中に2分間浸す;
・サンプルを取り出し、フード内の2個の留め具を用いて数分間垂直につるす。さらに、200℃の通風口付きオーブンで2分間熱処理する。サンプルのうち1枚は、仕上げ用組成物の量を測定するために用いられる。測定は石油エーテルまたはジクロロメタンを用いる抽出法による。もう一方のサンプルにはコーティングを施す。抽出法によって、仕上げ用組成物の平均量(布の重量に対する固形分重量)が測定される;
・コーティングを施す予定のサンプルを測量する;
・布をRhodia Silicone社製のRHODORSIL(登録商標)TCS 7510 AおよびBとして販売されているシリコーン樹脂でコーティングする。コーティングには実験用のドクターブレード法が用いられる。沈積量は約40±10g/m(固形分)である;
・沈積量を測定するためにコーティングされた布を測量する;
・コーティングされた布を180℃のオーブンで80秒間熱処理する;
・コーティングされた布をオーブンから取り出し、外気にさらす;
・コーティングされた布を5×10cmに裁断し、スクラブテストまたは耐熱テストによって評価する。
【0092】
クラブテスト耐摩擦性の測定(ISO規格5981に準ずる。)
このテストは、コーティング布の耐摩擦・耐磨耗性を明らかにするものである。
【0093】
このテストでは、一方で、布をせん断運動にさらす。2つのはさみ口でサンプル布の両端をはさみ、交互運動させる。さらにもう一方では、布を可動式の支柱との接触により磨耗させる。
【0094】
難燃性テスト(ISO規格3795に準ずる。)
このテストは、エアバッグが高熱ガスによって膨張した場合の布の難燃性を評価するために用いられる。
【0095】
138mm×64mmのサンプルを裁断する。後で伝播時間を計測するために、参照マークをつける。
【0096】
このサンプルを水平に置き、ブンゼン・バーナーで15秒間燃焼させる。そして、ブンゼン・バーナーを取り外す。参照マーク間の火炎伝播時間を計測することで、伝播速度が算出可能である。
【0097】
好ましくは、製品は自己消火性で、すなわち、火炎伝播すべきでない。
【0098】
一般的に、各サンプルに3種類の連続したテストを実行する。
【実施例】
【0099】
上記手順によって、各種仕上げ用組成物を評価した。
【0100】
用いられた仕上げ用組成物の各種化合物は以下の通りである:
・A:Rhodia Silicones社製のSILCOLEASE(登録商標)架橋乳剤966(ポリジメチルメチルヒドロゲノシロキサン)。粘度220mPa;
・B:Rhodia Silicones社製のSILCOLEASE樹脂11367(ポリメチルビニルシロキサン)。粘度200mPa;
・C:Rhodia Silicones社製のSILCOLEASE乳剤902(ポリジメチルメチルヒドロゲノシロキサンおよびポリメチルビニルシロキサンの非イオン水性乳剤)。粘度120mPa;
・D:Rhodia Silicones社製のRHODORSIL TCS 7110 A(ポリジメチルメチルヒドロゲノシロキサンおよびポリメチルビニルシロキサン);
・E:Rhodia Silicones社製のRHODORSIL SP3301(非加水分解性シリコーン/ポリエーテル共重合体)。
【0101】
分析された化合物の性質や割合を、テストの結果とともに以下の表に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
例1〜13によって得られたコーティング処理後の布は、寸法的に安定している。
【0104】
例14および15の仕上げ用組成物は、下記ポリアミド66の紡績工程で用いられた。
【0105】
使用されるポリアミド66は、0.02%の酸化チタンを含む濃縮後のポリアミド66であり、濃縮後の相対粘度は2.95(96%の硫酸中10g/lの濃縮で測定)、使用前の含水率は0.03%である。
【0106】
このポリマーを二軸押し出し機に導入し、溶融させる。そして、34本のフィラメントから構成される235dtexの連続糸を得るために、このポリマーを溶融紡績する。押し出し成形後、仕上げ用組成物を沈積させるために、2台の誘導装置を使ってフィラメントを空冷し、結束させる。こうして得られた糸は200m/分の速度で巻き取る。主な状態を以下に挙げる:
・押出し温度 293.5℃;
・スピンパックの温度 288℃;
・巻取り時間 1時間;
・動作 中断または不具合なし;
【0107】
糸は1工程の中でオーブン内を経て延伸され、管糸に巻き取られる前にほぐされる。
【0108】
こうして得た糸は、以下の特徴を有する。(DIN53834規格に準じて測定):
・引張り強さ 68cN/tex
・破断伸び率 25%.
【0109】
この糸は混繊交絡されていないが、優れた結束性を持つ。ROTHSCHILD社製の装置を用いて分析したところ、この糸は交絡数3〜4N/mの糸に相当する結束性を持つ。すなわち、従来の仕上げ用組成物の乳剤を用いて得た従来の糸に相当する結束性を持つ。これらの交絡部は非常に安定している。
【0110】
この糸の織物用としての性能を調査するために、従来のエアバッグ用縦糸の上に横糸として利用し、レピア織機で製織した。5mの布が停止することなく製造された。
【0111】
例16の仕上げ用組成物は、以下に記述したポリアミド66の製織工程において用いられた。
【0112】
使用されるポリアミド66は、0.02%の酸化チタンを含む濃縮後のポリアミド66で、相対粘度は3.25(96%の硫酸中10g/lの濃縮で測定)である。
【0113】
このポリマーを押し出し機に導入し、溶融させる。そして、68本のフィラメントから構成される470dtexの連続糸を得るために、紡績/延伸の統合工程にてこのポリマーを溶融紡績する。押し出し成形後、フィラメントを空冷し、仕上げ用組成物を沈積させるために沈積誘導装置に通す。そして、フィラメントを結束させる。
【0114】
仕上げ用組成物は、乳剤の形態で沈積する。その後、糸は650m/分の速度で巻き取られ、2工程で延伸率が4.5になるまで熱延伸される。糸はほぐされた後に混繊交絡され、2900m/分の速度で巻き取られる。
【0115】
こうして得た糸は以下の特徴を有する(DIN53834規格に準ずる):
・強度 82.5cN/tex
・破断伸び率 21.5%;
・180℃の熱気中での収縮率 6.8%;
・交絡数 16個/m。
【0116】
布は、レピア織機を用いてこれらの糸から製造される。整経と紡績は申し分ない。上記の工程にしたがって布をコーティングした後のスクラブテストの結果(磨耗数)は平均で1500である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸、繊維またはフィラメント用の仕上げ用組成物であって、化合物Aおよび/または化合物Bを含み、前記化合物Aが少なくとも1個のSi−H構造単位を含むモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーであり、前記化合物Bは少なくとも1個の不飽和脂肪族基を含むモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーであることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記化合物Aがポリオルガノシロキサンであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサンAが、次式(1)の単位群:
【化1】

(式(1)中、符号Wはそれぞれ同等の場合および/または異なる場合があり、以下を示す:
・1〜18の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル残基であって、少なくとも1個のハロゲンに任意的に置換されたもの;
・5〜8の環状炭素原子を含むシクロアルキル残基であって、少なくとも1個のハロゲンに任意的に置換されたもの;
・6〜12の炭素原子を含むアリール残基であって、アリール部が少なくとも1個のハロゲン原子、もしくは1〜3個の炭素原子を含むアルキル基および/もしくはアルコキシル基に任意的に置換されたもの;
・5〜14の炭素原子を含むアルキル部および6〜12の炭素原子を含むアリール部を有するアリールアルキル基であって、前記アリール部が少なくとも1個のハロゲン原子、あるいは1〜3個の炭素原子を含むアルキル基および/またはアルコキシル基に任意的に置換されたもの。ここに、aは1または2、bは0、1または2、合計(a+b)は1〜3である。)
を含むポリオルガノヒドロゲノシロキサンであり、該ポリオルガノシロキサンAが、任意的に次の平均式(2)の単位群:
【化2】

(式(2)中、Wは上記と同じ意味を有し、Cは0〜3の値である。)
を含むことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオルガノシロキサンAが、以下から選択されたものであることを特徴とする、請求項2または3に記載の組成物:
・ヒドロゲノジメチルシリル末端基を有するポリジメチルシロキサン;
・トリメチルシリル末端基を有するポリジメチルヒドロゲノメチルシロキサン;
・ヒドロゲノジメチルシリル末端基を有するポリジメチルヒドロゲノメチルシロキサン;
・トリメチルシリル末端基を有するポリヒドロゲノメチルシロキサン;および
環状ポリヒドロゲノメチルシロキサン。
【請求項5】
前記化合物Bがポリオルガノシロキサンであることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオルガノシロキサンBが、次式(3):
【化3】

(式(3)中、符号W’はそれぞれが同等の場合および/または異なる場合があり、以下を示す:
・1〜18の炭素原子を含む線状または分岐状アルキル残基であって、少なくとも1個のハロゲンに任意的に置換されたもの;
・5〜8の環状炭素原子を含むシクロアルキル残基であって、少なくとも1個のハロゲンに任意的に置換されたもの;
・6〜12の炭素原子を含むアリール残基であって、アリール部が少なくとも1個のハロゲン原子、あるいは1〜3個の炭素原子を含むアルキル基および/またはアルコキシル基に任意的に置換されたもの;
・5〜14の炭素原子を含むアルキル部および6〜12の炭素原子を含むアリール部を有するアリールアルキル基であって、前記アリール部が少なくとも1個のハロゲン原子、あるいは1〜3個の炭素原子を含むアルキル基および/またはアルコキシル基に任意的に置換されたもの。ここに、符号Yはそれぞれ同等の場合と異なる場合があり、鎖末端および/または鎖中に少なくとも1個の不飽和エチレンを、さらに任意的に少なくとも1個のヘテロ原子を有するC1〜C12の線状または分岐状アルケニル残基を示し、eは1または2、dは0、1または2、合計(d+e)は1〜3の値である。)
と同等または異なる単位群で構成されるポリオルガノシロキサンから選択され、任意的に次の平均式(2’):
【化4】

(式(2’)中、W’は上記と同じ意味を示し、Cは0〜3の値である。)
の単位群を含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ポリオルガノシロキサンの重量(固形分)の少なくとも50%を構成することを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
重付加触媒を含まないことを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の組成物が、糸、繊維またはフィラメントの表面の少なくとも一部に存在することを特徴とする、サイジング工程を経ることなく製織可能な糸、繊維またはフィラメント。
【請求項10】
熱可塑性高分子に基づいていることを特徴とする、請求項9に記載の糸、繊維またはフィラメント。
【請求項11】
ポリエステルまたはポリアミドに基づいていることを特徴とする、請求項9または10に記載の糸、繊維またはフィラメント。
【請求項12】
前記組成物が糸の重量の0.05〜5%(固形分)を構成することを特徴とする、請求項9〜11の何れか一項に記載の糸、繊維またはフィラメント。
【請求項13】
前記組成物が糸の重量の0.1〜2%(固形分)を構成することを特徴とする、請求項12に記載の糸、繊維またはフィラメント。
【請求項14】
糸の総体的な線密度が100〜950dtexであることを特徴とする、請求項9〜13の何れか一項に記載の糸、繊維またはフィラメント。
【請求項15】
フィラメントの線密度が1.5〜7dtexであることを特徴とする、請求項9〜14の何れか一項に記載の糸、繊維またはフィラメント。
【請求項16】
以下の工程を含む、請求項9〜15の何れか一項に記載の糸、繊維またはフィラメントを製造する方法:
1)糸の構成材料の紡績工程;
2)任意的な糸の延伸工程;
3)任意的な糸の織加工工程;および
4)請求項1〜8の何れか一項に記載の組成物を用いる糸処理工程。
【請求項17】
前記構成材料が熱可塑性高分子であり、さらに前記工程1)は前記熱可塑性高分子の溶融紡績工程であることを特徴とする、請求項16に記載の工程。
【請求項18】
前記工程4)を、前記工程2)および3)の後に実行することを特徴とする、請求項16または17に記載の工程。
【請求項19】
前記工程4)を、前記工程2)および3)の前に実行することを特徴とする、請求項16または17に記載の工程。
【請求項20】
織布または編布の少なくとも一部が請求項9〜15の何れか一項に記載の糸、繊維またはフィラメント、あるいは請求項16〜19の何れか一項に記載の工程によって得られた糸、繊維またはフィラメントで構成されていることを特徴とする、織布または編布。
【請求項21】
請求項9〜15の何れか一項に記載の糸、または請求項16〜19の何れか一項に記載の工程によって得られた糸、繊維またはフィラメントの織機を用いた製織工程または製編工程を含む、縦糸と横糸を用いた布または請求項20に記載の編布を製造する方法。
【請求項22】
サイジング処理を含まないことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記織布または編布の洗浄処理を含まないことを特徴とする、請求項21または22に記載の工程。
【請求項24】
前記織布または編布の熱処理を含まないことを特徴とする、請求項21〜23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
織機が、エアジェット織機、レピア織機、プロジェクタイル織機等の乾式織機であることを特徴とする、請求項21〜24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項9〜15の何れか一項に記載の糸、繊維またはフィラメント、あるいはエアバッグ用の織布または編布を製造するために請求項16〜19の何れか一項に記載の工程を用いて得られた糸、繊維またはフィラメントを使用する使用方法。
【請求項27】
請求項20に記載の織布もしくは編布、またはエアバッグの製造時に、請求項16〜19の何れか一項に記載の方法により得られた糸、繊維またはフィラメントを使用する使用方法。
【請求項28】
エアバッグ用の前記織布または編布が保護コーティングされていることを特徴とする、請求項27に記載の使用方法。
【請求項29】
前記保護コーティングがシリコーンコーティングであることを特徴とする、請求項28に記載の使用方法。
【請求項30】
少なくとも部分的に、表面の少なくとも一部にポリオルガノシロキサンを含む化合物を有する糸、繊維またはフィラメントから成るエアバッグ用織布または編布であって、前記化合物は前記織布または編布上の任意のシリコーン保護コーティングとは異なる織布または編布。
【請求項31】
織布または編布が保護コーティングされていることを特徴とする、請求項30に記載の織布または編布。
【請求項32】
前記保護コーティングがシリコーンコーティングであることを特徴とする、請求項31に記載の織布または編布。
【請求項33】
前記組成物がポリオルガノシロキサンの重量(固形分)の少なくとも50%を構成することを特徴とする、請求項30〜32の何れか一項に記載のエアバッグ用織布または編布。
【請求項34】
請求項30〜33の何れか一項に記載の、縦糸および横糸よりなる布または編布の製造方法であって、表面の少なくとも一部にポリオルガノシロキサンを含む化合物をコーティングしてなる糸、繊維またはフィラメントの、織機を用いた製織工程または製編工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
サイジング処理を含まないことを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記織布または編布の洗浄処理を含まないことを特徴とする、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記織布または編布の熱処理を含まないことを特徴とする、請求項34〜36の何れか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−518552(P2009−518552A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543807(P2008−543807)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069299
【国際公開番号】WO2007/065886
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(502132782)ネクシス ファイバーズ アーゲー (2)
【Fターム(参考)】