説明

サイズ剤組成物

【課題】ガラス繊維強化ポリアミド6およびポリアミド6,6の衝撃強度を改善したガラス繊維サイズ剤を提供する。
【解決手段】式(I):


〔式中 R1は、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族または脂環族基であり、および R2は、3〜5個の炭素原子を有する脂肪族基である〕で示される構造単位を含んでなるポリウレタン−ポリ尿素分散体に関する。該ポリウレタン−ポリ尿素分散体の製造方法およびサイズ剤組成物としてのそれらの使用も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド構造単位を有するポリウレタン−ポリ尿素分散体、およびそれらの製造法およびサイズ剤組成物としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維および炭素繊維は、例えば欧州特許EP−A792900(特許文献1)中に記載されるように、ポリウレタン−ポリ尿素分散体(PUR分散体)と、サイズ剤組成物における結合剤成分としての架橋剤を使用して、サイズ剤付与される。
【0003】
ガラス繊維強化ポリアミドは、高い剛性および強度と極度の衝撃強度を兼ね備え、したがって機械的ストレスに対抗して頑強である。しかしながら、このようなガラス繊維強化ポリアミドのコーティングは、通常、問題をもたらす。なぜなら、表面は不均一であり、したがって孔および亀裂が形成されるからである。さらに、破壊されて接着することが起こり得る。先行技術において、今まで記載されたガラス繊維または炭素繊維の製造に適当であるサイズ剤組成物は、ポリアミド中に組み込まれた繊維の増強特性の改善において不十分である。
【特許文献1】欧州特許EP−A792900
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、ガラス繊維強化ポリアミド6およびポリアミド6,6の衝撃強度を改善し、先行技術の欠点を解消するガラス繊維サイズ剤を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
今回、少なくとも2つのアミド基を有する少なくともジヒドロキシ官能性の特定のポリアミドポリオールに基づくPURポリマーばかりでなく、必要に応じて親水性基を含有するブロックトポリイソシアネート架橋剤を含んでなり、および/または水に分散性であり、および/または水に分散した水性サイズ剤で被覆されたガラス繊維が、ポリマー化合物、特にポリアミド6およびポリアミド6,6において優れた増強特性を示すことが見出された。
【0006】
欧州特許EP−A0595281は、他の成分の中で酸無水物および/または酸ハロゲン化物およびジアミンおよび/またはアミノアルコールから製造されたポリアミドマクロモノマーを含んでなる自動車塗料を製造するための水分散性ポリアミド変性ポリウレタンを記載している。これらの系の不利な特徴は、ポリアミドマクロモノマーの製造が非常に複雑であり、および得られるポリアミドマクロモノマーの水溶解性は、なお非常に乏しいことである。これらの化合物がガラス繊維サイズ剤の製造に適当であるとの記載はない。
【0007】
米国特許US−A6,455,632は、第2級アミド基を有する水性ポリウレタン分散体を記載している。それらは、例えば、イソシアネートと特定のヒドロキシ官能性モノアミドを反応させることによって製造される。かくして得られるポリマーは、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、N−メチロールアクリルアミドエマルジョンまたはイソブトキシメチルアクリルアミドエマルジョンとの架橋反応に参加する。該分散体は、熱硬化性コーティング材料、コーティング、およびシーラントに適当である。2以上のアミド構造単位を含有するアミド化合物は、記載されておらず、およびアミド官能性ポリウレタン分散体のガラス繊維サイズ剤としての特定の適合性も記載されていない。
【0008】
したがって、本発明は、式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
〔式中
R1は、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族または脂環族基であり、および
R2は、3〜5個の炭素原子を有する脂肪族基である〕
で示される構造単位を含有する水性ポリウレタン−ポリ尿素ポリマー分散体(PURポリマー)を提供する。
該ポリウレタンの骨格は、((CO)NHとして計算して)少なくとも0.5重量%、好ましくは0.75重量%〜10重量%、より好ましくは0.9重量%〜5.0重量%のアミド基を含有する。
【0011】
同様に、本発明は、本発明の水性PURポリマー分散体(I)、および
(II)そのイソシアネート基の少なくとも50%がブロックされた、親水性化ブロックトポリイソシアネート、
(III)必要に応じて、水に溶解性、乳化性または分散性であるさらなるポリマー、および
(IV)カップリング剤、滑剤、帯電防止剤、染料、顔料、流動調整剤、光安定剤、老化防止剤および紫外線吸収剤の群から選択される助剤および添加剤
を含んでなる、サイズ剤組成物を提供する。
【0012】
本発明の分散体のポリウレタン−ポリ尿素ポリマー(PURポリマー)は、
I.1)1以上のポリイソシアネート、
I.2a)200〜8000g/molの数平均分子量を有する1以上のポリマーポリオール、
I.2b)一般式(II):
【0013】
【化2】

【0014】
〔式中
R1は、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族または脂環族基であり、および
R2は、3〜5個の炭素原子を有する脂肪族基である〕
で示される1以上のポリアミドポリオール、
I.3)合計2以上のヒドロキシル基および/またはアミノ基を有する分子量62〜400の1以上の低分子量化合物、
I.4)必要に応じて、ヒドロキシル基またはアミノ基を有する1以上の化合物、および
I.5)イソシアネート反応性のイオン的または潜在的イオン的親水性化化合物、および/または
I.6)イソシアネート反応性の非イオン的親水性化化合物
の反応生成物を含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施例において使用されるものを含め、他に明確に特定されない限り、本明細書および請求項に使用される全ての数値は、用語「約」が明確に示されていない場合でさえも、用語「約」が前置きされていると解釈することができる。また、本明細書における任意の数値範囲は、それに包含される全ての小範囲を含むことが意図されている。
【0016】
成分I.1)の適当なポリイソシアネートは、当業者に自体既知の芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環族ポリイソシアネートである。適当なポリイソシアネートの例は、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IBDI)、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたは任意の所望の異性体含量のそれらの混合物、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−および1,4−ビス(2−イソシアナトプロパ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)、(S)−アルキル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートまたは(L)−アルキル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートである。
【0017】
比例的に、≧2の官能価を有するポリイソシアネートも使用することもできる。これらとしては、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有する変性ジイソシアネート、ならびに1分子当たり2つより多くのNCO基を有する非変性ポリイソシアネート、例えば4−イソシアナトメチル1,8−オクタンジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)またはトリフェニルメタン4,4’,4’’−トリイソシアネートが挙げられる。
【0018】
問題のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物は、好ましくは専ら脂肪族的および/または脂環族的に結合したイソシアネート基を含有し、2〜4、好ましくは2〜2.6およびより好ましくは2〜2.4の平均官能価を有する上記種類のものである。
【0019】
特に好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンの異性体ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0020】
化合物I.2a)として使用することができるポリマーポリオールは、400〜8000g/mol、好ましくは400〜6000g/molおよびより好ましくは600〜3000g/molの分子量Mnを有する。それらのヒドロキシル価は、22〜400mgKOH/g、好ましくは30〜200mgKOH/gおよびより好ましくは40〜160mgKOH/gであり、およびそれらは1.5〜6、好ましくは1.8〜3、およびより好ましくは1.9〜2.1のOH官能価を有する。
【0021】
本発明の目的のためのポリオールは、ポリウレタンコーティング技術において既知の有機ポリヒドロキシル化合物、例えば、単独または混合物の状態の、典型的なポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステル−ポリアクリレートポリオールならびにポリウレタン−ポリアクリレートポリオール、ポリウレタン−ポリエステルポリオール、ポリウレタン−ポリエーテルポリオール、ポリウレタン−ポリカーボネートポリオール、ポリエステル−ポリカーボネートポリオール、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂などである。ポリエステルポリオールが好ましい。
【0022】
ポリエステルポリオールの非常に適当な例は、ジオールならびに必要に応じてトリオールおよびテトラオール、およびジカルボン酸ならびに必要に応じてトリカルボン酸およびテトラカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸またはラクトンの既知の重縮合物である。遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物または対応する低級アルコールのポリカルボン酸エステルを使用してポリエステルを製造することもできる。適当なジオールの例は、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、また、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオールおよび異性体、ネオペンチルグリコールまたはヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルであり、最後の3つの化合物が好ましい。必要に応じてさらに使用されるポリオールは、例えばトリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロール(emthylol)ベンゼンまたはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートである。
【0023】
適当なジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2−メチルコハク酸、3,3−ジエチルグルタル酸、2,2−ジメチルコハク酸が挙げられる。同様に、これらの酸の無水物は、それらが存在する場合、使用可能である。したがって、本発明の目的のために、該無水物は、表現「酸」に包含される。また、モノカルボン酸、例えば安息香酸およびヘキサンカルボン酸も使用することができる(ただし、該ポリオールの平均官能価は≧2である)。飽和脂肪族または芳香族酸、例えばアジピン酸またはイソフタル酸が好ましい。適切であれば比較的少量で同様に使用されるポリカルボン酸として、トリメリト酸が挙げられる。
【0024】
末端ヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールの製造において、同様に反応体として使用することができるヒドロキシカルボン酸は、例えばヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシステアリン酸などである。使用することができるラクトンとしては、カプロラクトン、ブチロラクトンおよび同族体が挙げられる。
【0025】
適当な式(II)で示されるポリアミドポリオールI.2b)は、少なくとも2官能性のアミン、例えばエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,3−ブタンジアミン、1,2−ブタンジアミン、ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、C9〜C10ジアミン、C13〜C27ジアミン、1,4−シクロヘキシルメチルジアミン、アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジエチレントリアミン、ノナントリアミン、2,5−ジアミノ−2,5−ジメチルヘキサン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(Dytek(登録商標) A、DuPont)、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、Laromin(登録商標) C260(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルシクロヘキシルメタン、BASF AG、独国)、トリシクロデカンジアミン(TCDジアミン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルシクロヘキサンアミン)、例えばHuntsmanによって名称Jeffamin(登録商標)のもと市販される種類の脂肪族的に結合した第1級アミノ基を有する高分子量ポリエーテルポリアミンと、ε−カプロラクトンを反応させることによって得られる。同様に適当なものは、他の官能基、例えばヒドロキシル基をさらに含有する2官能性アミンであり、例えば、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルプロパンジアミン、N−ヒドロキシエチルブタンジアミンまたはN−ヒドロキシエチルヘキサンジアミンである。
【0026】
同様に適当なものは、例えばさらなる2官能性アミンとの混合物を含む、所望であればさらなる官能基を含有する少なくとも2官能性のアミンの混合物である。少量で、単官能性アミンも同様に使用することができる。しかしながら、その場合、少なくとも2官能性のアミンの割合は、少なくとも70%でなければならない。
【0027】
成分I.2b)は、好ましくは第1級および第2級アミノ基を含有するジアミン、およびε−カプロラクトンから合成される。
【0028】
特に好ましくは、本発明のPUR分散体は、1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンの異性体、およびそれらの混合物の群から選択される化合物と、ε−カプロラクトンとの反応生成物を含んでなる。
【0029】
アミドポリオールを製造するため、1当量のアミノ基を、0.9〜2.0(好ましくは1.0〜1.3)当量のε−カプロラクトンと反応させる。この反応は、適切であれば触媒物質の助力を受けて、室温〜200℃で行うことができる。該触媒物質の例は、錫化合物、第3級アミノ化合物、チタンテトラブトキシド、トリアルキルホスフィン化合物、ヘキサメチレンジシラザン、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、酸性化合物、例えばパラ−トルエンスルホン酸などである。好ましくは、錫触媒を使用することが挙げられ、および特に好ましくは該製造は、触媒の非存在下で行う。
【0030】
ポリウレタン樹脂を合成するために使用される低分子量ポリオールI.3)は、通常、ポリマー鎖を硬化および/または分岐する効果を有する。該分子量は、好ましくは62と200の間である。適当なポリオールは、脂肪族、脂環族または芳香族基を含有し得る。その例としては、1分子当たり約20個までの炭素原子を有する低分子量ポリオールが挙げられ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ハイドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、およびそれらの混合物、ならびにトリメチロールプロパン、グリセロールまたはペンタエリスリトールが挙げられる。同様に、エステルジオール、例えばδ−ヒドロキシブチル−ε−ヒドロキシカプロンエステル、ω−ヒドロキシヘキシル−γ−ヒドロキシ酪酸エステル、アジピン酸(β−ヒドロキシエチル)エステルまたはテレフタル酸ビス(β−ヒドロキシエチル)エステルを使用することができる。
【0031】
同様に、ジアミンまたはポリアミンならびにヒドラジドは、成分I.3)として用いることができ、その例は、エチレンジアミン、1,2−および1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,3−および1,4−キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチル−1,3−および−1,4−キシリレンジアミンおよび4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチルエチレンジアミン、ヒドラジンまたはアジピン酸ジヒドラジドである。
【0032】
また、I.3)として原理上適当なものは、NCO基に対して異なる反応性を有する活性水素を含有する化合物であり、例えば第1級アミノ基に加えて第2級アミノ基を含有する化合物、またはアミノ基(第1級または第2級)に加えてOH基も含有する化合物である。このような化合物の例は、第1級/第2級アミン、例えば3−アミノ−1−メチルアミノプロパン、3−アミノ−1−エチルアミノプロパン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、3−アミノ−1−メチルアミノブタン、さらに、アルカノールアミン、例えばN−アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、3−アミノプロパノールまたはネオペンタノールアミンである。好ましくは、ジエタノールアミンが挙げられる。
【0033】
また、ポリウレタン樹脂は、必要に応じて、いずれの場合も鎖末端に位置し、それらをキャップする単位I.4)も含む。これらの単位は、一方では、NCO基と反応性である単官能性化合物、例えばモノアミン、特にモノ第2級アミン、またはモノアルコールから誘導される。その例としては、以下のものが挙げられる:エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノール、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、イソノニルオキシプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン、ジエチル(メチル)アミノプロピルアミン、モルホリン、ピペリジン、および/またはそれらの適当な置換誘導体、ジ第1級アミンおよびモノカルボン酸のアミドアミン、ジ第1級アミンのモノケチム(monoketime)、第1級/第3級アミン、例えばN,N−ジメチルアミノプロピルアミンなど。
【0034】
イオン的および潜在的イオン的親水性化化合物I.5)は、少なくとも1つのイソシアネート反応性基、ならびに、水性媒体との相互作用によって、pH依存性解離平衡に参加し、およびそのようにして負電荷、正電荷または中性電荷を有し得る少なくとも1つの官能価、例えば−COOY、−SOY、−PO(OY)(Yは、例えば、H、NH、金属陽イオンである)、−NR、−NR(R=H、アルキル、アリール)を含有する全ての化合物を意味する。好ましいイソシアネート反応性基は、ヒドロキシルまたはアミノ基である。
【0035】
成分I.5)の定義を満たす適当なイオン的または潜在的イオン的親水性化化合物は、例えば、モノおよびジヒドロキシカルボン酸、モノおよびジアミノカルボン酸、モノおよびジヒドロキシスルホン酸、モノおよびジアミノスルホン酸ならびにモノおよびジヒドロキシホスホン酸またはモノおよびジアミノホスホン酸およびその塩、例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミンプロピル−または−ブチルスルホン酸、1,2−または1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、リシン、3,5−ジアミノ安息香酸、IPDIおよびアクリル酸の付加生成物(欧州特許EP−A0916647、実施例1)およびそれらのアルカリ金属および/またはアンモニウム塩;親水性合成成分としての、重亜硫酸ナトリウムとブタ−2−エン−1,4−ジオールの付加生成物、ポリエーテルスルホネート、例えば独国特許DE−A2446440(第5〜9頁、式I〜III)に記載されている2−ブテンジオールおよびNaHSOのプロポキシル化付加生成物、および陽イオン性基、例えばアミンベース単位に変換し得る単位を含有する化合物、例えばN−メチルジエタノールアミンである。さらに、成分I.5)の定義を満たす化合物として、例えば国際公開WO−A01/88006中の、シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸(CAPS)などを使用することもできる。
【0036】
好ましいイオン性または潜在的イオン性化合物I.5)は、カルボキシル基またはカルボキシレート基および/またはスルホネート基および/またはアンモニウム基を有するものである。特に好ましいイオン性化合物I.5)は、イオン性または潜在的イオン性基としてカルボキシル基および/またはスルホネート基を含有するもの、例えばN−(2−アミノエチル)−β−アラニンの塩、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸の塩またはIPDIおよびアクリル酸の付加生成物の塩(欧州特許EP−A0916647、実施例1)ならびにジメチロールプロピオン酸の塩である。
【0037】
成分I.6)の定義を満たす適当な非イオン的親水性化化合物は、例えば、少なくとも1つのヒドロキシル基またはアミノ基を含有するポリオキシアルキレンエーテルである。これらのポリエーテルは、30重量%〜100重量%の画分のエチレンオキシドから誘導された単位を含む。
【0038】
また、非イオン的親水性化化合物としては、例えば、1分子当たり平均5〜70個(好ましくは7〜55個)のエチレンオキシド単位を含有する1価のポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールが挙げられる。これらは、例えば、従来の方法において、適切なスターター分子(例えば、Ullmanns Encyclopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、Verlag Chemie、ワインハイム、第31〜38頁中のもの)をアルコキシ化することによって、得ることができる。
【0039】
適当なスターター分子の例は、飽和モノアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、異性体ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびノナノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体メチルシクロヘキサノールまたはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル、不飽和アルコール、例えばアリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコール、芳香族アルコール、例えばフェノール、異性体クレゾールまたはメトキシフェノール、芳香脂肪族アルコール、例えばベンジルアルコール、アニシルアルコールまたはシンナミルアルコール、第2級モノアミン、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチル−およびN−エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミンならびにヘテロ環式第2級アミン、例えばモルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H−ピラゾールである。好ましいスターター分子は、飽和モノアルコールである。特に好ましくは、スターター分子としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを使用することが挙げられる。
【0040】
アルコキシル化反応に適当なアルキレンオキシドは、特にエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、これらは、アルコキシル化反応において、任意の順序であるいは混合物として使用することができる。
【0041】
ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、そのアルキレンオキシド単位の少なくとも30mol%、好ましくは少なくとも40mol%がエチレンオキシド単位を構成する、直鎖ポリエチレンオキシドポリエーテルまたは混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルのいずれかである。好ましい非イオン性化合物は、少なくとも40mol%のエチレンオキシド単位および60mol%以下のプロピレンオキシド単位を含有する単官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0042】
PURポリマー(I)に関して、成分I.5)およびI.6)の定義を満たすイオン性親水性化剤および非イオン性親水性化剤を組み合わせて使用することが好ましい。特に好ましい組合せは、非イオン性親水性化剤および陰イオン性親水性化剤の組合せである。
【0043】
好ましくは、5重量%〜45重量%の成分I.1)、50重量%〜90重量%の成分I.2)〔該成分I.2)は、成分I.2a)およびI.2b)から構成される〕、1重量%〜30重量%の化合物I.3)およびI.4)の合計、12重量%以下の成分I.5)、15重量%以下の成分I.6)〔該成分I.5)およびI.6)の合計は、0.1重量%〜27重量%であり、および全ての成分の合計は、合計100重量%になる〕を使用することが挙げられる。
【0044】
特に好ましくは、10重量%〜40重量%の成分I.1)、60重量%〜85重量%の成分I.2)〔該成分I.2)は、成分I.2a)およびI.2b)から構成される〕、1重量%〜25重量%の化合物I.3)およびI.4)の合計、10重量%以下の成分I.5)、10重量%以下の成分I.6)〔該成分I.5)およびI.6)の合計は、0.1重量%〜20重量%であり、および全ての成分の合計は、合計100重量%になる〕を使用することが挙げられる。
【0045】
非常に特に好ましくは、15重量%〜45重量%の成分I.1)、60重量%〜82重量%の成分I.2)〔該成分I.2)は、成分I.2a)およびI.2b)から構成される〕、1重量%〜20重量%の化合物I.3)およびI.4)の合計、8重量%以下の成分I.5)、10重量%以下の成分I.6)〔該成分I.5)およびI.6)の合計は、0.1重量%〜18重量%であり、および全ての成分の合計は、合計100重量%になる〕を使用することが挙げられる。
【0046】
本発明のコーティング組成物は、それらの水性PUR分散体(I)の形態で使用されるPURポリマー(I)を含んでなる。
【0047】
水性PUR分散体(I)の製造方法は、1以上の段階において均質相中で、または多段反応の場合、部分的に分散相中で行うことができる。I.1)〜I.6)の部分または完全重付加に続いて、分散、乳化または溶解工程を行う。これに続いて、必要に応じて分散相中でのさらなる重付加または変性を行う。
【0048】
水性PUR分散体(I)の製造のため、先行技術から既知の全ての方法、例えばプレポリマー混合法、アセトン法または溶融分散法を使用することができる。PUR分散体(I)は、好ましくはアセトン法によって製造される。
【0049】
アセトン法によってPUR分散体(I)を製造するため、如何なる第1級または第2級アミノ基も含有すべきでない構成成分I.2a)〜I.6)およびポリイソシアネート成分I.1)を、典型的に、イソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーを製造するための最初の充填物中に完全にまたは部分的に含有させ、および所望であれば水と混和性であるがイソシアネート基に対して不活性である溶媒で希釈し、および必要に応じて希釈した混合物を50〜120℃の範囲の温度に加熱する。イソシアネート付加反応を、ポリウレタン化学において既知の触媒を使用して促進させることができる。ジブチル錫ジラウレートが好ましい。
【0050】
適当な溶媒は、典型的に脂肪族、ケト官能性溶媒、例えばアセトン、ブタノンであり、これらは、製造の開始時ばかりでなく、所望であれば、同様に、その後に部分的に添加することができる。アセトンおよびブタノンが好ましい。
【0051】
その後、場合により反応開始時に添加しなかったI.1)〜I.6)の構成成分を、計量供給する。
【0052】
ポリウレタンプレポリマーの製造において、イソシアネート基とイソシアネート反応性基とのモル比は、1.0〜3.5、好ましくは1.1〜3.0、より好ましくは1.1〜2.5である。
【0053】
プレポリマーを形成するための成分I.1)〜I.6)の反応を、部分的にまたは完全に(好ましくは完全に)行う。このように、遊離イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーは、バルク(溶媒なし)で、または溶液の状態で得られる。
【0054】
ポリウレタンプレポリマーの製造に続いて、またはこれに伴って、出発分子においてそれが予め行われていない場合、陰イオン的および/または陽イオン的分散性基の塩の完全または部分形成を行う。陰イオン性基の場合、これは塩基、例えば第3級アミンを使用して行う。第3級アミンの例は、例えば各アルキル基中1〜12個(好ましくは1〜6個)の炭素原子を有するトリアルキルアミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンである。例えば、該アルキル基は、例えばジアルキルモノアルカノールアミン、アルキルジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンの場合、ヒドロキシル基も有し得る。中和剤として、必要に応じて無機塩基、例えばアンモニアまたは水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを使用することもできる。好ましくはトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンまたはジイソプロピルエチルアミンが挙げられる。
【0055】
塩基のモル量は、陰イオン性基のモル量の50重量%と100重量%の間、好ましくは70重量%と100重量%の間である。陽イオン性基の場合、ジメチルスルフェート、リン酸またはコハク酸を使用する。エーテル基を有する非イオン的親水性化化合物I.6)のみを使用する場合、中和工程は省略される。また、中和は、中和剤を予め含有する分散水を用いて、分散と同時に行うことができる。
【0056】
その後、該方法のさらなる工程において、それが予め行われていないか、または部分的にのみ行われている場合、得られたプレポリマーを脂肪族ケトン、例えばアセトンまたはブタノンの助力によって溶解させる。
【0057】
その後、可能性のあるNH−官能性および/またはNH−官能性成分を、残りのイソシアネート基と反応させる。この鎖延長/終結を、分散前に溶媒中で、分散過程中で、または分散後に水中で行うことができる。鎖延長は、好ましくは分散前に水中で行う。
【0058】
I.5)の定義を満たし、およびNHまたはNH基を含有する化合物を使用して鎖延長を行う場合、プレポリマーを、好ましくは分散前に鎖延長する。
【0059】
鎖延長の程度、換言すれば鎖延長に使用される化合物のNCO反応性基とプレポリマーの遊離NCO基との当量比は、40%と150%の間、好ましくは70%と120%の間、より好ましくは80%〜120%の間である。
【0060】
アミン成分[I.3)、I.4)、I.5)]を、必要に応じて、本発明の方法において水−または溶媒−希釈形態で、個々に、または混合物の状態で、原理上可能な任意の添加順序で、使用することができる。
【0061】
水または有機溶媒を希釈剤として併用する場合、希釈剤含量は、好ましくは70重量%〜95重量%である。
【0062】
プレポリマーからのPUR分散体(I)の製造を、鎖延長に続いて行う。その目的のために、溶解したおよび鎖延長したポリウレタンポリマーを、適切であれば強い剪断力、例えば強攪拌などで分散水中に導入するか、または、反対に、分散水をプレポリマー溶液中に攪拌混合する。水を、溶解したプレポリマーに添加することが好ましい。
【0063】
次いで、典型的に、分散工程後に分散体中になお存在する溶媒を、蒸留によって除去する。分散中の除去さえも、同様に可能である。
【0064】
中和の程度およびイオン性基の量に応じて、分散体を非常に細かくすることができ、その結果、それはほとんど溶液の外観を有する。また、非常に粗い処方物も可能であり、これは同様に十分に安定性である。
【0065】
本発明のPUR分散体(I)の固形分は、20重量%〜70重量%、好ましくは30重量%〜65重量%およびより好ましくは35重量%〜62重量%の間である。
使用される架橋剤II)は、ブロックトポリイソシアネートであり、これは適切であれば水分散性または水溶性形態であり、あるいは水性分散体または溶液として使用される。
【0066】
本発明のPURポリマー分散体を含んでなるサイズ剤において、ブロックトポリイソシアネートII)は、非親水性化形態で存在し得る;例えば、それらを、本発明のポリウレタン分散体の製造の分散段階前に添加することができ、その結果、ポリウレタン分散体は、ブロックトポリイソシアネートに対して乳化または分散効果を有する。
【0067】
同様に、ブロックトポリイソシアネートII)を、水性溶液または分散体として使用することができる。ポリイソシアネートII)の溶液または分散体は、10重量%〜70重量%、好ましくは20重量%〜60重量%およびより好ましくは25重量%〜50重量%の間の固形分を有し、および全組成物の比率としてのG)の溶媒画分は、好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満および非常に好ましくは5重量%未満である。
【0068】
ブロックトポリイソシアネートII)は、2.0〜5.0、好ましくは2.3〜4.5の(平均)NCO官能価、5.0重量%〜27.0重量%、好ましくは14.0重量%〜24.0重量%の(ブロックされたおよびブロックされていない)イソシアネート基含量、および1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満のモノマージイソシアネート含量を有する。水分散性および/または水溶性ブロックトポリイソシアネートII)のポリイソシアネートA)のイソシアネート基は、ブロックされた形態で、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%およびより好ましくは少なくとも70%である。
【0069】
水分散性ブロックトポリイソシアネートII)は、先行技術の既知の方法(例えば独国特許DE−A2456469、第7〜8欄、実施例1〜5および独国特許DE−A2853937、第21〜26頁、実施例1〜9)によって製造することができる。
【0070】
水分散性ブロックトポリイソシアネートII)を含有する水性溶液または分散体を製造するため、一般的なアプローチは、得られる分散体または溶液が、それぞれ10〜70重量%、好ましくは20重量%〜60重量%およびより好ましくは25重量%〜50重量%の固形分を有するようになる水の量を使用することである。
【0071】
成分III)の例は、ポリエステルポリマー、ポリウレタン、アクリルポリマー、ビニルポリマー、例えばポリ酢酸ビニル、ポリウレタン分散体、ポリアクリレート分散体、ポリウレタン−ポリアクリレートハイブリッド分散体、ポリビニルエーテルおよび/またはポリビニルエステル分散体、ポリスチレン分散体および/またはポリアクリロニトリル分散体である。
【0072】
成分IV)として、助剤および添加剤を、サイズ剤組成物に添加する。これらは、カップリング剤、滑剤、帯電防止剤あるいは当業者に自体周知のコーティング添加剤、例えば染料、顔料、流動調整助剤、光安定剤、老化防止剤および紫外線吸収剤であり得る。
【0073】
カップリング剤として、既知のシランカップリング剤、例えば3−アミノプロピルトリメトキシ−および/または−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランまたは3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランを使用することができる。本発明のサイズ剤組成物中のシランカップリング剤の濃度は、好ましくはサイズ剤組成物全体に基づいて0.05重量%〜2重量%、より好ましくは0.15重量%〜0.85重量%である。
【0074】
同様に、本発明は、混合容器に水を充填すること、攪拌しながら、結合剤(I)、硬化剤(II)、次いで滑剤(IV)および必要に応じて成分(IV)からのさらなる助剤を添加すること、その後、pH(20℃)を5〜7に調整すること、および成分(IV)からのカップリング剤の加水分解物を添加することを特徴とする、本発明のサイズ剤組成物の製造方法を提供する。
【0075】
本発明のPURポリマー分散体を含んでなるサイズ剤組成物は、成分IV)の一部として1以上の非イオン性および/またはイオン性滑剤、例えば脂肪アルコールまたは脂肪アミンのポリアルキレングリコールエーテル、12〜18個の炭素原子を有する脂肪酸のポリアルキレングリコールエーテルおよびグリセリルエステル、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールおよび/またはアルキレンアミンの12〜18個の炭素原子を有する高級脂肪酸アミド、第4級窒素化合物、例えばエトキシル化イミダゾリニウム塩、鉱物油およびワックスをさらに含んでなり得る。該滑剤を、好ましくはサイズ剤組成物全体に基づいて0.05重量%および1.5重量%の合計濃度で用いる。
【0076】
該サイズ剤組成物は、1以上の帯電防止剤も含んでなり得る。その例としては、塩化リチウム、塩化アンモニウム、Cr(III)塩、有機チタン化合物、アリールアルキルスルフェートまたはアリールアルキルスルホネート、アリールポリグリコールエーテルスルホネートまたは第4級窒素化合物が挙げられる。帯電防止剤は、好ましくは0.01重量%〜0.8重量%の濃度で使用される。
【0077】
該サイズ剤組成物は、自体既知の方法によって製造することができる。好ましくは、水を適当な混合容器に充填し、攪拌しながら、結合剤、硬化剤、次いで滑剤および成分IV)からの任意のさらなる助剤を添加する。その後、pHを5〜7に調整し、および成分IV)からのカップリング剤の加水分解物を添加する。さらなる15分間の攪拌時間後、該サイズ剤組成物は、使用準備が整い、および適切であればpH調整に続いて付与することができる。
【0078】
該サイズ剤組成物を、任意の所望の方法によって、例えば噴霧塗布機またはロール塗布機などによって、適当な基材に付与することができ、および硬化させることができる。適当な基材は、ガラス繊維または炭素繊維である。
【0079】
また、本発明は、本発明の水性PURポリマー分散体を含んでなるサイズ剤組成物で被覆されたガラス繊維または炭素繊維を提供する。
【0080】
サイズ剤が付与されるガラス繊維に適当なガラスタイプには、ガラス繊維の製造に使用される既知のガラスタイプ、例えばDIN 1259−1によるE、A、CおよびSガラスばかりでなく、他のガラス繊維生産者の従来の製品も含まれる。上記のガラスのタイプのなかでも、Eガラス繊維は、それらがアルカリを含まないこと、それらの高い引張強さおよびそれらの高い弾性率のために、連続ガラス繊維の製造、プラスチックの増強に非常に重要である。
【0081】
ガラス繊維の製造方法、サイジング方法および後処理は、既知であり、例えばK.L.Loewenstein「The Manufacturing Technology of Continous Glass Fibres」、Elsevier Scientific Publishing Corp.、アムステルダム、ロンドン、ニューヨーク、1983年中に記載されている。
【実施例】
【0082】
他に示さない限り、全ての百分率は、重量百分率と理解すべきである。
〔材料および使用する略号〕
ジアミノスルホネート:NH−CHCH−NH−CHCH−SONa(水中45%濃度)
Desmophen(登録商標) 2020:ポリカーボネートポリオール、OH価56mgKOH/g、数平均分子量2000g/mol(Bayer AG、レバークーゼン、独国)
PolyTHF(登録商標) 2000:ポリテトラメチレングリコールポリオール、OH価56mgKOH/g、数平均分子量2000g/mol(BASF AG、Ludwigshafen、独国)
ポリTHF(登録商標) 1000:ポリテトラメチレングリコールポリオール、OH価112mgKOH/g、数平均数平均分子量1000g/mol(BASF AG、Ludwigshafen、独国)
Polyether LB 25:エチレンオキシド/プロピレンオキシドに基づく単官能性ポリエーテル、数平均分子量2250g/mol、OH価25mgKOH/g(Bayer AG、レバークーゼン、独国)
KV 1386親水性化剤(BASF AG、Ludwigshafen、独国)
Breox(登録商標) 50−A 140滑剤(BP Chemicals、英国)
固形分は、DIN−EN ISO 3251にしたがって決定した。
他に明確に示さない限り、NCO含量を、DIN−EN ISO 11909にしたがって容量分析で決定した。
【0083】
〔架橋剤分散体(成分II)〕
23.0%のNCO含量を有する1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)に基づくビウレット基を含有するポリイソシアネート(147.4g)を、Polyether LB 25(39.2g)と共に100℃にて30分間攪拌した。その後、20分間にわたって、カプロラクタム(493.0g)を、混合物の温度が110℃を超えないような速度で攪拌しながら添加した。混合物を、理論NCO値に到達するまで110℃で攪拌した。次いで、それを90℃まで冷却し、および2分間にわたって、親水性化剤KV 1386(152.5)および水(235.0g)の混合物を計量供給した。続いて、それを、水(3325.1g)を添加することによって分散させた。その後、2時間の攪拌により、30.0%の固形分を有する保存安定性水性分散体を得た。
【0084】
〔ポリアミドポリオールの製造〕
〔実施例1〕ポリアミドポリオール
攪拌装置、加熱および還流冷却器を有する2lの反応容器に、窒素下、イソホロンジアミンIPDA(748g;アミノ基当量8.8)を充填し、およびこの最初の充填物を、攪拌しながら80℃に加熱する。次いで、カプロラクトン(1003.2g;当量8.8)を、20分間にわたって計量供給する。温度は120℃に上昇する。120℃で3時間後、該バッチを冷却して、透明粘性生成物を排出する。
【0085】
〔実施例2〕比較例PUR分散体(成分I)
アジピン酸およびヘキサンジオールに基づく2官能性ポリエステルポリオール(1530.0g;平均分子量1700g/mol、OHN=約66mgKOH/g物質)およびPolyether LB 25(67.50g)を65℃に加熱した。次いで、65℃にて5分間にわたって、イソホロンジイソシアネート(455.1g)を添加し、および混合物を、理論NCO値4.6%に到達するまで100℃にて攪拌した。完成したプレポリマーを、50℃にてアセトン(2781g)を用いて溶解させ、次いで、イソホロンジアミン(139.1g)およびアセトン(247.2g)の溶液を、10分間にわたって計量供給した。その後、ジアミノスルホネート(46.0g)、ヒドラジン水和物(4.80)および水(239.1g)の溶液を、5分間にわたって計量供給した。その後の攪拌時間は、15分間であった。続いて、これを10分間にわたって、水(3057g)を添加することによって分散させた。真空蒸留による溶媒の除去に続いて、40.1%の固形分および207nmの粒度を有する保存安定性PUR分散体を得た。
【0086】
〔実施例3〕PUR分散体(成分I、本発明)
アジピン酸およびヘキサンジオールに基づく2官能性ポリエステルポリオール(252.0g;平均分子量1700g/mol、OHN=約66mgKOH/g物質)、Polyether LB 25(11.3g)および実施例1のポリアミドポリオール(19.7g)を65℃に加熱した。次いで、65℃にて5分間にわたって、イソホロンジイソシアネート(49.7g)およびヘキサメチレンジイソシアネート(37.6g)を添加し、および混合物を、理論NCO値5.6%に到達するまで100℃にて攪拌した。プレポリマーを、50℃にてアセトン(658.2g)を用いて溶解させ、次いで、イソホロンジアミン(29.2g)およびアセトン(51.9g)の溶液を、10分間にわたって計量供給した。その後、ジアミノスルホネート(9.7g)、ヒドラジン水和物(1.0g)および水(50.6g)の溶液を、5分間にわたって計量供給した。その後の攪拌時間は、15分間であった。続いて、これを10分間にわたって、水(550.4g)を添加することによって分散させた。真空蒸留による溶媒の除去に続いて、40.2%の固形分および172nmの粒度を有する保存安定性PUR分散体を得た。
【0087】
〔適用例〕
組成物を以下のように製造した:
混合容器を半分まで示した量の水を充填し、相次いで、および攪拌しながら、本発明のPUR分散体、フィルム形成樹脂、架橋剤分散体および滑剤(Breox(登録商標) 50−A 140、BP Chemicals、英国)を添加した。その後、pHを、酢酸を用いて5〜7に調整し、および水性カップリング剤溶液として、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(A1100、UCC、ニューヨーク、米国)の製造業者の指図書にしたがって製造した加水分解物を添加した。さらなる15分間の攪拌時間後、サイズ剤は使用準備が整った。
その後、適切であれば5〜7へのpH調整に続いて、サイズ剤組成物をガラス繊維に付与した。その後、かくしてサイズ剤が付与されたガラス繊維を、切り刻み、乾燥し、およびポリアミド6またはポリアミド6,6に配合した(GF画分=30%)。
表1にサイズ剤組成物の詳細に示す:
【0088】
【表1】

【0089】
ポリアミド6およびポリアミド6,6の両方に見出された衝撃強度は、本発明のサイズ剤による顕著な改善を示す。
【0090】
本発明を上記で例示の目的をもって詳細に説明したが、このような詳説が単にその目的のためであって、本発明は、特許請求の範囲によって限定され得る場合を除いて、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、当業者によって変形がなされ得ると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

〔式中
R1は、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族または脂環族基であり、および
R2は、3〜5個の炭素原子を有する脂肪族基である〕
で示される構造単位を含んでなる水性ポリウレタン−ポリ尿素ポリマー分散体(PURポリマー)。
【請求項2】
PURポリマーは、(CO)NHとして計算して少なくとも0.5重量%のアミド基を含有する、請求項1に記載の水性ポリウレタン−ポリ尿素ポリマー分散体。
【請求項3】
ポリウレタン−ポリ尿素ポリマー(PURポリマー)は、
I.1)1以上のポリイソシアネート、
I.2a)200〜8000g/molの数平均分子量を有する1以上のポリマーポリオール、
I.2b)一般式(II):
【化2】

〔式中
R1は、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族または脂環族基であり、および
R2は、3〜5個の炭素原子を有する脂肪族基である〕
で示される1以上のポリアミドポリオール、
I.3)合計2以上のヒドロキシル基および/またはアミノ基を有する分子量62〜400の1以上の低分子量化合物、
I.4)必要に応じて、ヒドロキシル基またはアミノ基を有する1以上の化合物、および
I.5)イソシアネート反応性のイオン的または潜在的イオン的親水性化化合物からなる群から選択される1以上の化合物、および/または
I.6)イソシアネート反応性の非イオン的親水性化化合物
の反応生成物を含んでなる、請求項1に記載の水性ポリウレタン−ポリ尿素ポリマー分散体。
【請求項4】
成分I.2a)はポリエステルポリオールである、請求項1に記載の水性ポリウレタン−ポリ尿素ポリマー分散体。
【請求項5】
成分I.2b)は、第1級および第2級アミノ基を含有するジアミン、およびε−カプロラクトンから合成されたものである、請求項1に記載の水性ポリウレタン−ポリ尿素ポリマー分散体。
【請求項6】
成分I.2b)は、1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンの異性体、およびそれらの混合物の群から選択される化合物と、ε−カプロラクトンとの反応生成物から合成されたものである、請求項1に記載の水性ポリウレタン−ポリ尿素ポリマー分散体。
【請求項7】
成分I.5)およびI.6)の定義を満たすイオン的親水性化剤および非イオン的親水性化剤の組合せを使用する、請求項1に記載の水性ポリウレタン−ポリ尿素ポリマー分散体。
【請求項8】
(I)請求項1に記載の水性PURポリマー分散体、および
(II)そのイソシアネート基の少なくとも50%がブロックされた、親水性化ブロックトポリイソシアネート、
(III)必要に応じて、水に溶解性、乳化性または分散性であるさらなるポリマー、および
(IV)カップリング剤、滑剤、帯電防止剤、染料、顔料、流動調整剤、光安定剤、老化防止剤および紫外線吸収剤の群から選択される助剤および添加剤
を含んでなる、サイズ剤組成物。
【請求項9】
1)混合容器に水を充填する工程、
2)攪拌しながら、結合剤(I)、硬化剤(II)、次いで滑剤(IV)および必要に応じて成分(IV)からのさらなる助剤を添加する工程、および
3)pH(20℃)を5〜7の間に調整する工程、および
4)成分(IV)からのカップリング剤の加水分解物を添加する工程
を含む、請求項8に記載のサイズ剤組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載のサイズ剤組成物で被覆されたガラス繊維。
【請求項11】
請求項8に記載のサイズ剤組成物で被覆された炭素繊維。

【公開番号】特開2008−120997(P2008−120997A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−254235(P2007−254235)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】