説明

サスペンション装置

【課題】左右の操舵輪で車両重量を受ける割合が互いに異なる場合であっても、車両走行時での操舵特性に左右差が生じるのを抑える。
【解決手段】ラジアスロッド57の前端57a及び後端57bを、車体側のサスペンションメンバ53及び後輪7,9のリアアクスルハウジング45に、外筒、内筒及びゴムブッシュを有するマウント部材59及び61を介してそれぞれ連結する。左右の前輪3,5のうち車両重量を受ける割合が低いほうの前輪3に対角する位置にある右後輪9が、サスペンション装置に荷重が掛かっていない状態で、左後輪7よりも車体に対して下方位置となるようラジアスロッド57を連結する。サスペンション装置に荷重が掛かっている実車状態では、ゴムブッシュはねじりが付与されて弾性変形した状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の操舵輪と、車体側にサスペンションアームを介して連結されている左右の非操舵輪とを有するサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
四輪自動車において、車両前方に位置する左右の操舵輪が、車両重量を受ける割合が互いに異なる場合がある。このような左右の操舵輪で車両重量を受ける割合が異なる車両として、エンジンを車両前方に配置する一方、トランスミッションを車両後方に配置した四輪駆動車が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
この四輪駆動車は、エンジンからトランスミッションに動力を伝達し、トランスミッションからの出力を左右の前輪に伝達するためのフロントデファレンシャル装置を、車幅方向中央に配置したエンジンの車幅方向右側に配置している。これにより、車幅方向右側が左側よりも車両重量が重くなり、車幅方向右側の操舵輪のほうが、左側の操舵輪よりも車両重量を受ける割合が高くなる。このような車両重量を受ける割合の相違は、車幅方向右側に運転席がある車両ではさらに顕著なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−256530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、左右の操舵輪で車両重量を受ける割合が互いに異なる場合には、車両走行時、特に左右旋回時での操舵特性に左右差が生じるものとなる。
【0006】
そこで、本発明は、左右の操舵輪で車両重量を受ける割合が互いに異なる場合であっても、車両走行時での操舵特性に左右差が生じるのを抑えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、サスペンションアームを、非操舵輪を支持する支持部材と車体との少なくとも一方に対して弾性体を介して連結し、左右の操舵輪のうち車両重量を受ける割合が低いほうの操舵輪に対角する位置にある非操舵輪が、サスペンション装置に車両の荷重が掛かっていない状態で、他の非操舵輪よりも車体に対して下方位置となるように、サスペンションアームを連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サスペンション装置に車両の荷重が掛かっている状態では、弾性体にねじりが付与されることになり、このねじりが付与された弾性体は、車両重量を受ける割合が低いほうの操舵輪に対角する位置にある非操舵輪を地面に押し付けるように作用して該非操舵輪の接地荷重が増大する。これにより、この非操舵輪に対角する位置にある、車両重量を受ける割合が低いほうの操舵輪の受ける接地荷重が増大し、左右の操舵輪の接地荷重がより均一化するので、車両走行時での操舵特性に左右差が生じるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係わる車両のリアサスペンション装置を示す車両後方から見た背面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わる車両の駆動機構の概略を示す平面図である。
【図3】図1のリアサスペンション装置の左後輪周辺を示す斜視図である。
【図4】図1のリアサスペンション装置の左後輪周辺を示す平面図である。
【図5】図1のリアサスペンション装置の左後輪周辺を示す側面図である。
【図6】車両が右旋回するときの左前輪及び左後輪における荷重移動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0011】
本発明の一実施形態に係わる車両1は、図1に示す四輪駆動車であって、図2の矢印Fで示す車両前方側に位置する左右の操舵輪である前輪3,5と、この左右の前輪3,5に対して車両前後方向後方側に位置する左右の非操舵輪としての後輪7,9とを備えている。
【0012】
左右の前輪3,5の車幅方向中央にはエンジン11を配置する一方、左右の後輪7,9の車幅方向中央にはリアデファレンシャル装置13を配置し、リアデファレンシャル装置13には、その車両前方側にトランスミッション15を一体に組み付けている。このトランスミッション15と、エンジン11の後方に一体に組み付けている第1クラッチ17とは、リアプロペラシャフト19によってユニバーサルジョイントを介して連結している。
【0013】
リアデファレンシャル装置13には、左右のリアアクスルシャフト21,23を介して左右の後輪7,9を連結している。リアデファレンシャル装置13の車両前端部の車幅方向右側には、第2クラッチ25を一体に組み付けてあり、第2クラッチ25には、フロントプロペラシャフト27の後端をユニバーサルジョイントを介して連結している。
【0014】
フロントプロペラシャフト27は、リアプロペラシャフト19に対して車幅方向右側に位置しており、その前端は、図示しないユニバーサルジョイントを介してフロントデファレンシャル装置29に、図示しないユニバーサルジョイントを介して連結している。
【0015】
フロントデファレンシャル装置29は、エンジン11の車幅方向右側に一体に組み付けてあり、このフロントデファレンシャル装置29には、左右のフロントアクスルシャフト31,33を介して左右の前輪3,5を連結している。
【0016】
このように、本車両1は、車幅方向中央に配置したエンジン11の右側に、フロントデファレンシャル装置29やフロントプロペラシャフト27を配置しているので、特に車両前部において、車幅方向中央に対して右側の車両重量が左側より重くなっている。また、本車両1は、前席の右側にステアリング装置35を備えているので、右側の車両重量が左側に対してさらに重くなっている。
【0017】
次に、上記した車両1のリアサスペンション装置37について説明する。なお、図3〜図5では、左側の後輪7のリアサスペンション装置37について図示しているが、右側の後輪9のリアサスペンション装置37も、基本的な構造は同等なので、左側の後輪7に対応するリアサスペンション装置37についてのみ説明する。
【0018】
後輪7はハブ39を有し、ハブ39にブレーキディスク41を取り付けている。符号43は、ブレーキディスク41を制動するブレーキキャリパである。ハブ39の車幅方向内側には、支持部材としてのリアアクスルハウジング45をリアアクスルシャフト21に対して相対回転可能に配置している。リアアクスルハウジング45にはショックアブソーバ47の外筒の下端を連結し、ショックアブソーバ47の内筒の上端は車体に連結している。図4中の符号49はコイルスプリングである。なお、図5ではブレーキディスク41、ブレーキキャリパ43、ショックアブソーバ47、コイルスプリング49を省略している。
【0019】
リアアクスルハウジング45の上端にはリアアッパアーム51の車幅方向外側の端部をマウント部材51aを介して連結し、リアアッパアーム51の車幅方向内側の車両前後方向に位置する2箇所の端部は、マウント部材51b,51cを介してリアサスペンションメンバ53の上部に連結している。
【0020】
また、図1に示すように、リアアクスルハウジング45の上下方向ほぼ中央の車両後方側には、リアロアアーム55の車幅方向外側の端部をマウント部材55aを介して連結し、リアロアアーム55の車幅方向内側の端部は、マウント部材55b(図3)を介してリアサスペンションメンバ53に連結している。さらに、フロントロアアーム56の車幅方向外側の端部をマウント部材56aを介してリアアクスルハウジング45の下部に連結し、フロントロアアーム56の車幅方向内側の端部をマウント部材56bを介してリアサスペンションメンバ53の下部に連結している。なお、図3ではリアサスペンションメンバ53を省略している。
【0021】
リアサスペンションメンバ53は、図4に示すように、車両前方側で車幅方向に延びるフロントクロスメンバ53aと、フロントクロスメンバ53aの車両後方側で車幅方向に延びるリアクロスメンバ53bと、これら各クロスメンバ53a,53b相互を連結して車両前後方向に延びるサイドメンバ53cとを備えている。サイドメンバ53cは、上下一対備えており、上部に前記したリアアッパアーム51の端部51b,51cを連結し、下部のリアクロスメンバ53b付近にリアロアアーム55の端部55bを連結している。
【0022】
また、このリアサスペンションメンバ53は、フロントクロスメンバ53aとサイドメンバ53cとの結合部付近から、車両前方かつ車幅方向外側に向けて延びる延設部53dと、リアクロスメンバ53bと上部のサイドメンバ53cとの結合部付近から車幅方向外側かつ後方に延びる延設部53eとを備えている。
【0023】
そして、上記した延設部53dの先端53fと、延設部53eの先端53gと、上部のサイドメンバ53cの先端53hとを、車体への取付部としている。
【0024】
また、図5に示すように、リアアクスルハウジング45の下部と、リアサスペンションメンバ53におけるサイドメンバ53cの先端53h付近の下部とを、サスペンションアームとしてのラジアスロッド57により互いに連結している。ラジアスロッド57は、図4に示すように、車両前方側が車両後方側より車幅方向内側となるよう傾斜した状態で車両前後方向に延在している。
【0025】
上記したラジアスロッド57の前後両端部57a,57bは、それぞれマウント部材59,61を介してサスペンションメンバ53、リアアクスルハウジング45にそれぞれ連結している。前方のマウント部材59は、図5に示すように、外筒59aと、内筒59bと、これら外筒59a、内筒59b相互間に介装される弾性体としての円筒形状のゴムブッシュ59cとを備えている。ゴムブッシュ59cは外筒59a、内筒59bにそれぞれ固定してあり、外筒59aの外周面をラジアスロッド57の前端部57aに連結し、内筒59bの軸方向端部をサスペンションメンバ53に連結する。
【0026】
ここで、本実施形態では、ラジアスロッド57の前端部57aと、マウント部材59の外筒59aの外周面とを、実車状態で、ゴムブッシュ59cが外筒59a、内筒59bの軸心を中心としてあらかじめねじりが付与されて弾性変形した状態で接続している。このねじりを加えた状態は、車両1の図3〜図5に示してある車両左側と、図示していない車両右側とで互いに逆方向としている。
【0027】
なお、上記した実車状態とは、タイヤが地面に接地して、サスペンション装置に車両重量が掛かっている状態である。
【0028】
このようなラジアスロッド57の接続状態は、後輪7を地面から浮かせた状態(サスペンション装置に車両の荷重が掛かっていない状態)で、標準位置に対応する実線位置よりも上方に位置する破線位置でラジアスロッド57の前端部57aのマウント部材59を締結し、かつ後端部57bもリアアクスルハウジング45に接続した状態でマウント部材61を締結し、タイヤを接地させて実車状態とすることにより達成できる。タイヤを接地させることで、ラジアスロッド57は破線位置から実線位置に変位するので、これに伴ない外筒59aが図5中で時計方向に回転し、ゴムブッシュ59cが同方向にねじられた状態に弾性変形することになる。
【0029】
この状態では、ゴムブッシュ59cが上記のねじりが加えられた方向とは逆方向(図5中で反時計)に戻ろうとする力が作用する。このため、この戻ろうとする力は、ラジアスロッド57の後端部57bが、これに連結しているリアアクスルハウジング45、ひいてはハブ39及び後輪7とともに、図1のように車体側のサスペンションメンバ53に対して上方に持ち上げる方向に作用し、コイルスプリング49は圧縮されて縮み側となる。
【0030】
この際、ラジアスロッド57の後端部57bとリアアクスルハウジング45との連結部に設けてあるマウント部材61についても、そのゴムブッシュが、コイルスプリング49が圧縮されて縮み側となるようねじりが付与されて弾性変形している。
【0031】
このマウント部材61のゴムブッシュについては、その外筒がゴムブッシュに対し図5中で反時計方向に回転させるようにしてねじりを付与して弾性変形させ、この状態でラジアスロッド57の後端部57bがマウント部材61を介して締結されている。この状態では、ゴムブッシュが上記のねじりが加えられた方向とは逆方向(図5中で時計方向)に戻ろうとする力が作用する。この戻ろうとする力によって、ラジアスロッド57の後端部57bは、これに連結しているリアアクスルハウジング45、ひいてはハブ39及び後輪7を、図1のように上方に持ち上げる方向に作用することになる。
【0032】
一方、右側の後輪9におけるラジアスロッド57の接続状態は、後輪9を地面から浮かせた状態(サスペンション装置に車両の荷重が掛かっていない状態)で、標準位置に対応する実線位置よりも下方に位置する二点鎖線位置でラジアスロッド57の前端部57aを、外筒59aに接続してマウント部材59を締結し、かつ後端部57bもリアアクスルハウジング45に接続した状態でマウント部材61を締結し、タイヤを接地させて実車状態とすることにより達成できる。タイヤを接地させることで、ラジアスロッド57は二点鎖線位置から実線位置に変位するので、これに伴ない外筒59aが図5中で反時計方向に回転し、ゴムブッシュ59cが同方向にねじられた状態に弾性変形することになる。
【0033】
なお、上記の右側の後輪9の説明では、便宜上左側の後輪7を示す図5を用いている。
【0034】
この状態では、ゴムブッシュ59cが上記のねじりが加えられた方向とは逆方向(図5中で時計方向)に戻ろうとする力が作用する。このため、この戻ろうとする力は、ラジアスロッド57の後端部57bが、これに連結しているリアアクスルハウジング45、ひいてはハブ39及び後輪9とともに、図1のように車体側のサスペンションメンバ53に対して下方に押し下げる方向に作用し、コイルスプリング49は引張られて伸び側となる。
【0035】
この際、ラジアスロッド57の後端部57bとリアアクスルハウジング45との連結部に設けてあるマウント部材61についても、そのゴムブッシュが、コイルスプリング49が引張られて伸び側となるようねじりが付与されて弾性変形している。
【0036】
この右後輪9におけるマウント部材61のゴムブッシュについては、その外筒がゴムブッシュに対し図5中で時計方向に回転させるようにしてねじりを付与して弾性変形させ、この状態でラジアスロッド57の後端部57bが外筒に接続されてマウント部材61が締結されている。この状態では、ゴムブッシュが上記のねじりが加えられた方向とは逆方向(図5中で反時計方向)に戻ろうとする力が作用する。この戻ろうとする力によって、ラジアスロッド57の後端部57bは、これに連結しているリアアクスルハウジング45、ひいてはハブ39及び後輪7を、図1のように下方に押し下げる方向に作用することになる。
【0037】
また、アッパアーム51の車幅方向内側端部のマウント部材51b,51cや、リアロアアーム55及びフロントロアアーム56の車幅方向外側端部のマウント部材55a,56aについても、上記したラジアスロッド57と同様に、そのゴムブッシュにねじりが付与されて弾性変形している。
【0038】
すなわち、左後輪7側では、アッパアーム51、リアロアアーム55及びフロントロアアーム56に連結しているリアアクスルハウジング45ひいてはハブ39及び後輪7が、ねじりが付与されているマウント部材51b,51c,55a,56aの各ゴムブッシュの反力によって、図1のように上方に持ち上げられる方向に押し付けられている。
【0039】
逆に、右後輪9側では、アッパアーム51、リアロアアーム55及びフロントロアアーム56に連結しているリアアクスルハウジング45ひいてはハブ39及び後輪9が、ねじりが付与されているマウント部材51b,51c,55a,56aの各ゴムブッシュの反力によって、図1のように下方に押し下げられる方向に押し付けられている。
【0040】
したがって、上記したアッパアーム51、リアロアアーム55及びフロントロアアーム56は、ラジアスロッド57と同様に、サスペンションアームを構成していることになる。
【0041】
本実施形態では、実車状態で、左後輪7側は車体が沈む方向にゴムブッシュが作用し、右後輪9側は車体が浮く方向にゴムブッシュが作用している。この際、左後輪7は、車体に対して上方に持ち上げられるようにゴムブッシュが作用するので、タイヤの接地荷重が減少し、一方右後輪9は、車体に対して下方に押し下げられるようにゴムブッシュが作用するので、タイヤの接地荷重が増大する。
【0042】
これにより、例えば車両1が右旋回して左にロールし、荷重が旋回外側輪(左側)に移動する際に、左後輪7の接地荷重が減少している分、左前輪3の受ける荷重が増大する。逆に、車両1が左旋回して右にロールし、荷重が旋回外側輪(右側)に移動する際には、右後輪9の接地荷重が増大している分、右前輪5の受ける荷重が減少する。
【0043】
このように、右旋回時には左前輪3の受ける荷重が増大する一方、左旋回時には右前輪5の受ける荷重が減少することで、車幅方向右側が左側よりも車両重量が重い本車両1であっても、左右旋回時での操舵特性に左右差が生じることを抑えることができる。
【0044】
図6は、車両1が右旋回するときの左前輪3と左後輪7における荷重移動を示している。図6によれば、車両1が直進状態から時間T1で右に旋回すべくステアリングを右方向に回転操舵すると、時間T2までの操舵初期には、左前輪7が受ける荷重は、一点鎖線で示す従来から実線で示す本実施形態のように増大している。一方、左後輪7が受ける荷重は、一点鎖線で示す従来から実線で示す本実施形態のように減少している。
【0045】
また、本実施形態では、車両1が直進走行する際にも、路面の凹凸によるタイヤへの荷重入力がある場合に、左後輪7のタイヤの接地荷重が減少する一方、右後輪9のタイヤの接地荷重が増大する方向にゴムブッシュが作用していることで、左前輪3に荷重が移行することになる。これにより、車幅方向右側が左側よりも車両重量が重い本車両1であっても、操舵特性に左右差が生じることを抑えることができる。
【0046】
また、本実施形態では、サスペンションアームであるラジアスロッド57やアッパアーム51、リアロアアーム55及びフロントロアアーム56を連結してリアサスペンション装置1に車両の荷重が掛かっている状態では、弾性体であるゴムブッシュにねじりが付与されて弾性変形している。このため、リアサスペンション装置1に車両の荷重が掛かっている実車状態では、ゴムブッシュの弾性反力が、左右の操舵輪のうち車両重量を受ける割合が低いほうの左前輪3に対角する位置にある右後輪9が、左後輪7よりも車体に対して下方位置となるように作用することになる。これにより、右後輪9の接地荷重を左後輪7よりも高めることができる。
【0047】
また、本実施形態では、サスペンションアームであるラジアスロッド57やアッパアーム51、リアロアアーム55及びフロントロアアーム56に設けてあるマウント部材59,61,51b,51c,55a,56aの各ゴムブッシュに、実車状態でねじりが付与された状態とするという簡単な作業で、車幅方向右側が左側よりも車両重量が重い本車両1であっても、操舵特性に左右差が生じることを抑えることができる。
【0048】
また、本実施形態では、左前輪3側のフロントサスペンションの図示しないコイルスプリングのばね定数を、右前輪5側のフロントサスペンションの図示しないコイルスプリングのばね定数よりも大きく設定する。
【0049】
この場合、路面の凹凸によりタイヤの接地荷重が変動する場合において、ばね定数を大きく設定している側(左前輪3)のタイヤは小さく設定している側(右前輪5)のタイヤに対し、接地荷重が早く立ち上がる(大きく変動する)ことで輪荷重が増大する。これにより、左右の輪荷重がより同等となり、左側に対して右側の車両重量が重い車両1であっても、左右操舵に係る操舵過渡特性の差異が低減し、運転者へ与える違和感が減少する。
【0050】
また、左前輪3側のコイルスプリングのばね定数を右前輪5側よりも大きくすることで、車両1の右旋回時に、ステアリング35を切った際のタイヤのコーナリングフォースをより早く立ち上げることができる。
【0051】
このように、左前輪3側のコイルスプリングのばね定数を、右前輪5側のコイルスプリングのばね定数よりも大きく設定することで、左右前輪3,5に作用する重量差に起因する操舵過渡特性の差異を低減することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、車幅方向中央に対して右側の車両重量が左側より重くなっている車両1として四輪駆動車を例にとって説明したが、左右輪の重量配分が異なっている車両であれば、駆動方式に関わらず本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0053】
3 左前輪(車両重量を受ける割合が低いほうの操舵輪)
5 右前輪(車両重量を受ける割合が高いほうの操舵輪)
7 左後輪(非操舵輪)
9 右後輪(非操舵輪)
45 リアアクスルハウジング(支持部材)
51 リアアッパアーム(サスペンションアーム)
53 サスペンションメンバ
55 リアロアアーム(サスペンションアーム)
56 フロントロアアーム(サスペンションアーム)
57 ラジアスロッド(サスペンションアーム)
59c マウント部材のゴムブッシュ(弾性体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の操舵輪と、この左右の操舵輪に対して車両前後方向に位置する左右の非操舵輪とを有し、前記左右の非操舵輪は、該非操舵輪を支持する支持部材がサスペンションアームを介して車体側と連結されているサスペンション装置であって、前記サスペンションアームを前記非操舵輪と車体との少なくとも一方に対して弾性体を介して連結し、前記左右の操舵輪のうち車両重量を受ける割合が低いほうの操舵輪に対角する位置にある前記非操舵輪が、サスペンション装置に車両の荷重が掛かっていない状態で、他の前記非操舵輪よりも車体に対して下方位置となるように、前記サスペンションアームを連結することを特徴とするサスペンション装置。
【請求項2】
前記サスペンションアームを連結して前記サスペンション装置に車両の荷重が掛かっている状態では、前記弾性体にねじりが付与されて弾性変形していることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション装置。
【請求項3】
前記左右の操舵輪のうち車両重量を受ける割合が低いほうの操舵輪と車体との間に介装されるスプリングのばね定数が、他の操舵輪と車体との間に介装されるスプリングのばね定数よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のサスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−91417(P2013−91417A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234685(P2011−234685)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】