説明

サッシ枠及びサッシ枠用アタッチメント枠

【課題】 標準サッシ枠をそのまま用いて、コストアップを招くことなく、PC建築物に乾式工法で取り付けることができるサッシ枠を提供する。
【解決手段】 標準サッシ枠とアタッチメント枠と取付金具とからなる。標準サッシ枠は、上、下枠及び縦枠に木造建築物に取付けるための取付縁と、上、下枠及び縦枠の外周面側に屋内外方向に対向して突出する、湿式工法に用いるアンカーを係止する係止縁とを有する。アタッチメント枠は、標準サッシ枠の外周側において、上、下枠の屋外側端部と屋内側端部に固着される横アタッチメント材と、縦枠の屋外側端部と屋内側端部に固着される縦アタッチメント材とを矩形に連続されてなる。取付金具は、横断面L字形に形成され、水平部においてプレキャストコンクリート壁の開口部内周面に固定され、垂直部において横アタッチメント材の屋内側端部に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシ枠及びサッシ枠用アタッチメント枠、とくにプレキャストコンクリート造建築物(以下、PC建築物という。)に取り付けるのに好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
サッシは、住宅用木造家屋ばかりでなく、鉄筋コンクリート造建築物(以下、RC建築 物という。)にも取り付けられている。
【0003】
従来のサッシ枠の建築物の開口部に対する取付構造は、建築物が木造建築物かRC建築物かにより異なる。すなわち、木造建築物の場合は、左右の柱の上部間と下部間とにまぐさと窓台を取り付けることにより、矩形に連続する開口枠を形成し、サッシ枠には、その上、下枠と左右縦枠に上記まぐさ、窓台及び柱に当接して木ねじにより固定するための取付縁が形成されている標準サッシ枠を用いて、そのサッシ枠を開口枠の中に嵌合し、上、下枠と左右縦枠の取付縁から木ねじをまぐさ、窓台及び柱にねじ込んで取り付けていた。
【0004】
そして、RC建築物の場合は、窓開口部を形成する鉄筋コンクリート壁(以下、RC壁という。)の内周に差筋を突設し、標準サッシ枠の上、下枠及び左右の縦枠の外周面側に屋内外方向に対向して突出する係止縁を設け、その対向する係止縁にアンカーを嵌着し、そのアンカーを差筋に溶接してサッシ枠を固定し、RC壁の開口部内周面とサッシ枠の各枠との間の空隙にモルタルを充填してサッシ枠を取付ける湿式工法が採られている。
【0005】
近年、サッシは、PC建築物にも取り付けられるようになった。PC建築物にサッシ枠を取り付けるには、差筋設置やモルタル充填を行う湿式工法を採用することができず、プレキャストコンクリート壁(以下、PC壁という。)中の鉄筋に開口部に突出するように固定したボルトとナットによりサッシ枠を締着して、開口部に納める乾式工法しか採用できないが、従来の標準サッシ枠は、その形状及び構造上、乾式納まり(モルタルレス)をすることができないという問題があった。
【0006】
標準サッシ枠以外のサッシ枠を乾式工法により取り付ける方法として、次の2つの方法が行われている。その1つは、乾式工法専用の枠を作り、その専用の枠を乾式納まりする方法である。もう1つは、スチールやアルミニウム製の板材の曲げ加工品をサッシ枠に付加して、納める方法である。
【特許文献1】特になし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記乾式工法専用の枠を用いる方法は、新規生産設備を必要とするので、小ロット対応ができない。また、上記曲げ加工品を付加する方法は、部材、部品の製造及び加工が増えるため、コストアップになり、製作時に高い精度が要求されるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の主たる目的は、標準サッシ枠をそのまま用いて、コストアップを招くことなく、PC建築物に乾式工法により取り付けることができるサッシ枠を提供することにある。本発明の付随的目的は、PC建築物用サッシ枠を構成するのに適するアタッチメント枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる目的を達成するため、本発明のサッシ枠は、(a)標準サッシ枠と、アタッチメント枠と、取付金具とからなり、(b)前記標準サッシ枠は、上、下枠及び左右の縦枠に木造建築物に取り付けるための取付縁と、上、下枠及び左右の縦枠の外周面側に屋内方向に対向して突出し、湿式工法に用いるアンカーを係止するための係止縁とを有するサッシ枠であり、(c)前記アタッチメント枠は、前記標準サッシ枠の外周側において、上、下枠のそれぞれの屋外側端部と屋内側端部に固着される横アタッチメント材と、左右の縦枠のそれぞれの屋外側端部と屋内側端部に固着される縦アタッチメント材とを矩形に連続されてなるものであり、(d)前記取付金具は、横断面L字形に形成され、水平部においてPC壁の開口部内周面に固定され、垂直部において前記アタッチメント枠の横アタッチメント材の屋内側端部に連結されるものであることを特徴としている(請求項1)。
【0010】
アタッチメント枠の横アタッチメント材及び縦アタッチメント材は、それぞれ標準サッシ枠の上、下枠及び左右の縦枠に接続された状態で、その上、下枠及び左右の縦枠を中空筒状に形成することを特徴としている(請求項2)。
【0011】
アタッチメント枠の縦アタッチメント材は、サッシ枠の縦枠と開口部を形成している壁との間の空隙に充填される弾性目地材を受け止める部材を兼ねていることを特徴としている(請求項3)。
【0012】
上記付随的目的を達成するため、本発明は、サッシ枠用アタッチメント枠を、標準サッシ枠の上、下枠のそれぞれの屋外側端部と屋内側端部に固着される横アタッチメント材と、前記標準サッシ枠の左右の縦枠のそれぞれの屋外側端部と屋内側端部に固着される縦アタッチメント材とで構成し、PC壁に設けられた開口の内周面に固着されたボルトに取付金具を介して固定されるようにしたことを特徴としている(請求項4)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、標準サッシ枠を木造建築物にそのまま取り付けることができるほか、アンカーを用いてRC建築物に湿式工法により取り付けることも、アタッチメント枠及び取付金具を用いてPC建築物に取り付けることもできる。
すなわち、標準サッシ枠は、上、下枠及び左右の縦枠に木造建築物に取り付けるための取付縁と、上、下枠及び左右の縦枠の外周面側に屋内外方向に対向して突出し、湿式工法に用いるアンカーを係止するための係止縁とを有するものであるから、従来と同様に、アンカーを係止することなく、そのまま木造建築物に取り付けることができ、アンカーを係止すれば、RC建築物に取り付けることができる。
【0014】
そして、アタッチメント枠は、標準サッシ枠の外周側において、上、下枠のそれぞれの屋外側端部と屋内側端部に固着される横アタッチメント材と、左右の縦枠のそれぞれの屋外側端部と屋内側端部に固着される縦アタッチメント材とを矩形に連続されてなるものであり、取付金具は、横断面L字形に形成され、水平部においてPC壁の開口部内周面に固定され、垂直部において前記アタッチメント枠の横アタッチメント材の屋内側端部に連結されるものであるから、標準サッシ枠にアタッチメント枠を取り付け、PC製建築物の開口部に嵌合して、取付金具によりサッシ枠を固定することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、アタッチメント枠の横アタッチメント材及び縦アタッチメント材は、それぞれ標準サッシ枠の上、下枠及び左右の縦枠に接続された状態で、その上、下枠及び左右の縦枠を中空筒状に形成するので、上、下枠及び左右の縦枠の強度が大きくなり、とくにRC建築物又はPC建築物に堅牢に取り付けることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、アタッチメント枠の縦アタッチメント材は、サッシ枠の縦枠と壁との間に充填される弾性目地材を受け止める部材を兼ねるので、目地材の充填を容易に行うことができるとともに、建築物の地震発生時などの層間変位を弾性目地材が吸収するので、ガラス障子を含めてサッシ枠全体が保護される。
【0017】
請求項4の発明によれば、既存の標準サッシ枠の外周に接続するだけで、容易にPC建築物に乾式工法により取り付けることができるサッシ枠を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、標準サッシ枠SFをPC製建築物に取り付けるために、本発明に基づき、標準サッシ枠SFに新規なアタッチメント枠AFを結合した状態を示す縦断面図であり、図2は同状態の一方の縦枠のみの横断面図である。標準サッシ枠SFの断面は、塗りつぶしてある。図3は図1の標準サッシ枠SFの上、下枠11,12のみを抽出した縦断面図、図4は同じく図2の標準サッシ枠SFの縦枠13のみを抽出した横断面図である。図5は図1のアタッチメント枠AFの中の上下の横アタッチメント材(以下、上枠又は下枠という。)21.22のみを抽出した端面図、図6は同じく図2のアタッチメント枠AFの中の縦アタッチメント材(以下、縦枠という。)23のみの端面図、図7は取付金具30の断面図である。
図8は標準サッシ枠をRC造建築物に取り付けた例の縦断面図、図9は同じく一方側の縦枠の横断面図である。
図10は、標準サッシ枠を、アタッチメント枠と取付金具を用いてPC製建築物に取り付けた状態の縦断面図、図11は同じく一方側の縦枠の横断面図である。図12は、標準サッシ枠に上、下枠と縦枠を取り付けたことにより生じるコーナーの隙間を遮蔽する小口塞ぎの取付例を示す概念図である。
【0019】
標準サッシ枠SFは、既知のものであり、その中に設けられる障子の形態、すなわち、引違い障子、片引戸、ガラス嵌め殺しのいずれであるかにより、その形状及び構造が異なるが、一例を説明すると、上枠11は、図3に示すように、屋外壁111と、屋内壁112と、これらの屋外壁111と屋内壁112とを接続する基本壁113とを有するとともに、屋外壁111の上端部に、木造建築物のまぐさ(図示省略)の屋外面に当接して木ねじで固定するための取付縁111aを有し、屋内壁112の下端部に、上部額縁(図示省略)に当接して木ねじで固定するための取付縁112aを有する。また、屋外壁111の高さ方向中間位置の基本壁113よりも上側において屋内方向に突出する係止縁111bを有し、屋内壁112の上端部に、基本壁113よりも上側において屋外方向に突出する係止縁112bを有する。
【0020】
屋内側の係止縁112bは、標準サッシ枠SFを木造建築物に取付ける場合は、まぐさの下面と係止縁112bの間に押入されるサッシ取付位置調整材又はまぐさの下面に当接される。また、係止縁111bと係止縁112bは、互いに対向する方向に突出していて、標準サッシ枠SFをRC建築物H1に取付ける場合は、図8に示すように、標準サッシ枠SFをRC建築物H1に固定するアンカー41を係止するために用いられる。
【0021】
基本壁113の下面には、このサッシ枠の中に保持される障子の形態に応じて、所要の断面形状を構成する複数のレール114や防水壁115が形成されている。
【0022】
標準サッシ枠SFの下枠12は、図3に示すように、屋外側底壁121と、屋内壁122と、これらの屋外側底壁121と屋内壁122とを接続する基本壁123とを有し、屋外側底壁121の屋内側端部に窓台(図示省略)の屋外面に当接して木ねじで固定するための取付縁121aを有し、屋内壁122の上端部に屋内方向に延出し、膳板(図示省略)の上面に当接して木ねじで固定するための取付縁122aを有する。また、屋内壁122の下端部と基本壁123の屋外側部分の下面に、互いに対向する方向に突出する係止縁122b,123bを有する。係止縁122bと係止縁123bは、互いに対向する方向に突出して、図8に示すように、標準サッシ枠SFをRC建築物H1に取付けるためのアンカー42を係止するために用いられる。
【0023】
基本壁123の上面には、このサッシ枠の中に保持される障子の形態に応じて、所要の断面形状を構成する複数のレール124や防水壁125が形成されている。
【0024】
標準サッシ枠SFの縦枠13は、図4に示すように、屋外壁131と、屋内壁132と、これらの屋外壁131と屋内壁132とを接続する基本壁133とを有し、屋外壁131の窓開口と反対側の端部にL字形に屈曲して形成されて、柱(図示省略)の屋外面に当接して木ねじで固定される取付縁131aを有し、屋内壁132の上端部に屋内方向に突出して形成され、額縁(図示省略)に当接して木ねじで固定される取付縁132aを有する。また、屋外壁131の基本壁133よりも窓開口と反対側の中間位置と屋内壁132の基本壁133よりも窓開口と反対側の端部とに、互いに対向して突出する係止縁131b,132bを有する。係止縁131bと係止縁132bは、互いに対向する方向に突出して、図9に示すように、標準サッシ枠SFをRC建築物H1に取付けるためのアンカー43を係止するために用いられる。
【0025】
基本壁133の開口部側の面には、このサッシ枠の中に保持される障子の形態に応じて、所要の断面形状を構成する複数の防振壁134や防水壁135が形成されている。
【0026】
上記構成の標準サッシ枠SFは、アンカー41〜43やアタッチメント枠AFを付加することなく、従来方法により、図示されていない木造建築物の左右の柱、まぐさ及び窓台により形成される開口部に嵌め込み、木ねじにより固定される。
【0027】
次に、標準サッシ枠SFをRC建築物H1に取付ける場合は、上枠11、下枠12及び左右の縦枠13のそれぞれ対向する一対の係止縁111b,112b,122b,123b,131b,132bに、図8及び図9に示すように、幅方向両端部に係止溝を有するアンカー41,42,43を、その両側の係止溝にそれぞれ一対の係止縁を嵌着して取付け、それぞれのアンカー41,42,43をRC建築物H1の壁Wに設けた差筋44に溶接して、標準サッシ枠SFを固定し、上、下枠11.12と壁W1の開口部内周面との間にモルタルMを打ち込み、養生させることにより、標準サッシ枠SFをRC壁Wに固定することができる。
図8,9において、屋内側取付縁112a,122a,132aは、額縁51又は膳板52に当接して木ねじで固定される。
【0028】
図1におけるアタッチメント枠AFの上枠21は、図5(a)にも示すように、屋外側端部に標準サッシ枠SFの上枠11の屋外側の取付縁111aにビスb1により結合される第1結合部211と、同上枠11の屋内壁112にビスb2により結合される第2結合部212と、その結合部212の上端部に形成され、後述される取付金具FMを着脱自在に結合するための第3結合部213と、第1結合部211と第3結合部213とを接続して、その間を遮蔽する遮蔽板214とを一体に有している。第3結合部213は、これに取付金具FMを着脱自在に結合することができれば、形状を問わないが、図示の例では、屋内方向に開口するあり溝状の溝213aを有している。215,216は、アタッチメント枠AFの上枠21を標準サッシ枠SFの上枠11に結合するときの位置決め用突条である。
【0029】
アタッチメント枠AFの下枠22は、図5(b)に示すように、上枠21とほぼ上下対称形に形成され、屋外側端部に標準サッシ枠SFの下枠12の屋外側の取付縁121aにビスb3により結合される第1結合部221と、同下枠11の屋内壁122にビスb4により結合される第2結合部222と、その結合部222の下端部に形成され、後述される取付金具FMを着脱自在に結合するための第3結合部223と、第1結合部221と第3結合部223とを接続して、その間を遮蔽する遮蔽板224とを一体に有している。第3結合部223は、これに取付金具FMを着脱自在に結合することができれば、形状を問わないが、図示の例では、屋内方向に開口するあり溝状の溝223aを有している。225,226は、アタッチメント枠AFの下枠22を標準サッシ枠SFの下枠12に結合するときの位置決め用突条である。
【0030】
また、図2におけるアタッチメント枠AFの縦枠23は、図6にも示すように、屋外側端部に標準サッシ枠SFの縦枠13の屋外側取付縁131aに結合される第1結合部231と、縦枠13の屋内壁132にビスb2により結合される第2結合部232と、第1結合部231と第3結合部232とを接続して、その間を遮蔽する遮蔽板233とを一体に有している。234,325は、アタッチメント枠AFの縦枠23を標準サッシ枠SFの縦枠13に結合するときの位置決め用突条である。
【0031】
上記構成により、アタッチメント枠AFの上、下枠21,22及び左右の縦枠23をそれぞれ、矩形に枠組みされている標準サッシ枠SFの上、下枠11,12及び左右の縦枠13に、屋内側から接近させ、屋外側の第1結合部211,221を標準サッシ枠SFの上、下枠11,12及び左右の縦枠13の屋外側取付縁111a,121a,131aの屋内面に当接するとともに、第2結合部212,222,232を標準サッシ枠SFの上、下枠11,12及び左右の縦枠13の屋内側取付縁112a,122a,132aの屋内面に当接して、屋外側からと屋内側からビスb1,b2をねじ込むことにより、図1及び図2に示すように、アタッチメント枠AFを標準サッシ枠SFの外周側に一体的に結合することができる。
【0032】
アタッチメント枠AFを標準サッシ枠SFの外周側に結合した状態で、図1及び図2に示すように、四周に強度の大きい中空部を備えた新たなPC用サッシ枠NFが構成される。
【0033】
上記PC用サッシ枠NFをPC建築物に取り付けるために、図7に例示するような取付金具FMが用いられる。取付金具FMは、標準サッシ枠SF及びアタッチメント枠AFと同様のアルミニウム製又はスチール製であり、横断面形状を可及的に単純にするため、垂直部31と水平部32とを有するL字形に形成され、垂直部31と水平部32のそれぞれにボルト貫通孔31a,32aが形成されている。
【0034】
取付金具FMは、図10に示すように、PC建築物H2の開口部の上壁W2aを支持するスチール板61aに水平部32を当接し、そのボルト貫通孔32a(図7参照)に貫通したボルト71aをスチール板61aに貫通し、さらにそのスチール板に固着してあるナット72aにねじ込んで固定される。また、PC建築物H2の開口部の下壁W2bを支持するスチール板62bにも上部取付金具FMと同一形状のものを上下反転した状態で、水平部32を当接し、そのボルト貫通孔31a(図7参照)に貫通したボルト71bをスチール板61bに貫通し、さらにそのスチール板に固着してあるナット72bにねじ込んで固定される。
【0035】
そして、アタッチメント枠AFの上下のあり溝213a,2223a(図5参照)にボルト71c,71dの頭部を挿通し、軸部を屋内側に突出させた状態のPC用サッシ枠NFをPC建築物H2の開口に屋外側から嵌め込み、ボルト71cの軸部を上下の取付金具FMの垂直部31のボルト貫通孔31a(図7参照)に挿入し、その垂直部の反対側に突出した軸部にナット72d,72dを螺合して、PC用サッシ枠NFがPC建築物H2に取り付けられる。図示の例では、第3結合部213、223のあり溝213a,223aにボルト7c,71dの頭を挿通し、そのあり溝から突出された軸にナット72a,72dを螺合しているから、十分な結合強度を得ている。
【0036】
図10において、81a,81bは、サッシ枠NFの取付後に、上下の取付金具FMの垂直壁からPC上壁W2aの屋内面及び下壁W2bの屋内面に掛けてそれぞれ施されたシール材であり、そのシール後に、額縁51及び膳板52が取り付けられ、内装材53が施工される。
【0037】
上下の取付金具FMによりPC壁に固定されたサッシ枠NFの縦枠13とPC側壁W2cの開口内面との間には、地震発生時の層間変位量よりも僅かに大きな間隔を有する空隙Sが形成され、その空隙に耐火目地材その他の弾性塞ぎ材82が充填され、その後に、PC側壁W2cの開口内面から屋内面に掛けてシール材81cが施され、その後に、額縁51が取り付けられ、内装材53が施工される。
図10,11において、83はサッシ枠NFとPC壁の開口内面との間に施されたコーキング材である。
【0038】
なお、標準サッシ枠SFの外周にアタッチメント枠AFを取付けただけのPC用サッシ枠NFのコーナー部の外側部分には、図12に示すように、L字形の空隙が生じるので、この空隙が屋内外側に露見しないように、小口塞ぎ91a、92を取り付けることが望ましい。
【0039】
以上のように、本発明の実施の形態においては、既存の標準サッシ枠SFを、そのまま木造建築物に取り付けることができるとともに、アンカー41〜43を付加することによりRC建築物に湿式工法で取り付けることができ、さらに、標準サッシ枠SFの外周にアタッチメント枠AFを付加し、PC壁に取付金具FMを予め付加することにより、PC建築物にも乾式工法により取り付けることができる。
しかも、標準サッシ枠SFの外周にアタッチメント枠AFを付加して、上、下枠及び縦枠の全てを中空枠にするので、大きな強度を有して、耐震性能に優れたPC用サッシの提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】標準サッシ枠をPC製建築物に取り付けるために、標準サッシ枠に新規なアタッチメント枠AFを結合した状態を示す縦断面図。
【図2】同状態の一方の縦枠のみの横断面図。
【図3】図1の標準サッシ枠SFの上、下枠のみを抽出した縦断面図。
【図4】同じく図2の標準サッシ枠SFの縦枠13のみを抽出した横断面図。
【図5】図1のアタッチメント枠の中の上下の横アタッチメント材のみを抽出した端面図、
【図6】同じく図2のアタッチメント枠の中の縦アタッチメント材のみの端面図。
【図7】取付金具の断面図。
【図8】標準サッシ枠をRC建築物に取り付けた例の縦断面図。
【図9】同じく一方側の縦枠の横断面図。
【図10】標準サッシ枠を、アタッチメント枠と取付金具を用いてPC製建築物に取り付けた状態の縦断面図。
【図11】同じく一方側の縦枠の横断面図。
【図12】標準サッシ枠に横アタッチメント材と縦アタッチメント材を取り付けたことにより生じるコーナーの隙間を遮蔽する小口塞ぎの取付例を示す概念図。
【符号の説明】
【0041】
SF 標準サッシ枠
11 上枠
111a,112a 取付縁
111b,112b 係止縁
12 下枠
121a,122a 取付縁
121b,122b 係止縁
13 縦枠
131a,132a 取付縁
131b,132b 係止縁
AF アタッチメント枠
21 上枠
211 第1結合部
212 第2結合部
213 第3結合部
214 遮蔽部
22 下枠
221 第1結合部
222 第2結合部
223 第3結合部
224 遮蔽部
23 縦枠
231 第1結合部
232 第2結合部
233 遮蔽部
H1 RC(鉄筋コンクリート)建築物
W1 RC壁
H2 PC(プレキャストコンクリート)建築物
W2 PC壁
NF PC用サッシ枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準サッシ枠と、アタッチメント枠と、複数個の取付金具とからなり、
前記標準サッシ枠は、上、下枠及び左右の縦枠に木造建築物に取り付けるための取付縁と、上、下枠及び左右の縦枠の外周面側に屋内方向に対向して突出し、湿式工法に用いるアンカーを係止するための係止縁とを有するものであり、
前記アタッチメント枠は、前記標準サッシ枠の外周側において、前記上、下枠のそれぞれの屋外側端部と屋内側端部に固着される横アタッチメント材と、前記左右の縦枠のそれぞれの屋外側端部と屋内側端部に固着される縦アタッチメント材とを矩形に連続されてなるものであり、
前記取付金具は、横断面L字形に形成され、水平部においてプレキャストコンクリート壁の開口部内周面に固定され、垂直部において前記アタッチメント枠の横アタッチメント材の屋内側端部に連結されるものである、
ことを特徴とするサッシ枠。
【請求項2】
請求項1に記載のサッシ枠において、アタッチメント枠の横アタッチメント材及び縦アタッチメント材は、それぞれ標準サッシ枠の上、下枠及び左右の縦枠に接続された状態で、その上、下枠及び左右の縦枠を中空筒状に形成することを特徴とするサッシ枠。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のサッシ枠において、アタッチメント枠の縦アタッチメント材は、サッシ枠の縦枠と開口部を形成している壁との間の空隙に充填される弾性目地材を受け止める部材を兼ねていることを特徴とするサッシ枠。
【請求項4】
標準サッシ枠の上、下枠のそれぞれの屋外側端部と屋内側端部に固着される横アタッチメント材と、前記標準サッシ枠の左右の縦枠のそれぞれの屋外側端部と屋内側端部に固着される縦アタッチメント材とからなり、プレキャストコンクリート壁に設けられた開口の内周面に固着されたボルトに取付金具を介して固定されるサッシ枠用アタッチメント枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−144405(P2010−144405A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322277(P2008−322277)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】