説明

サファイア単結晶引き上げ装置、サファイア単結晶製造用るつぼ、サファイア単結晶の製造方法

【課題】アルミナ融液の固化に伴うるつぼの変形を抑制するとともに、アルミナ融液中の温度勾配を連続的なものとする。
【解決手段】加熱コイル30に高周波電流を供給することで、るつぼ20およびるつぼ20内のアルミナ融液を加熱し、るつぼ20内のアルミナ融液からサファイア単結晶からなるサファイアインゴットを成長させる単結晶引き上げ装置において、るつぼ20を、底部21と、底部21の周縁から立ち上がるとともに底部21より遠い側から底部に近づく側に向けて肉厚が連続的に増加する壁部22とで構成し、加熱コイル30を、るつぼ20の壁部22の外側に巻き回すとともに、底部21から遠ざかる側の壁部22との間隔よりも底部21に近い側の壁部22との間隔が短くなるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化アルミニウムの融液を用いたサファイア単結晶引き上げ装置、サファイア単結晶製造用るつぼ、サファイア単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サファイア単結晶は、例えば青色LEDを製造する際のIII族窒化物半導体(GaN等)のエピ膜成長用の基板材料として広く利用されている。また、サファイア単結晶は、例えば液晶プロジェクタに用いられる偏光子の保持部材等としても広く用いられている。
【0003】
このようなサファイア単結晶の板材すなわちウエハは、一般に、サファイア単結晶のインゴットを所定の厚さに切り出すことによって得られる。サファイア単結晶のインゴットを製造する方法については種々の提案がなされているが、その結晶特性がよいことや大きな結晶径のものが得やすいということから、溶融固化法で製造されることが多い。特に、溶融固化法の一つであるチョクラルスキー法(Cz法)は、サファイア単結晶のインゴットの製造に広く用いられている。
【0004】
チョクラルスキー法によってサファイア単結晶のインゴットを製造するには、まず、るつぼに酸化アルミニウムの原料を充填し、誘導加熱法や抵抗加熱法によってるつぼを加熱し原料を溶融する。原料が溶融した後、所定の結晶方位に切り出した種結晶を原料融液表面に接触させ、種結晶を所定の回転速度で回転させながら所定の速度で上方に引き上げて単結晶を成長させる(特許文献1参照)。
【0005】
ところで、チョクラルスキー法を用いたサファイア単結晶の製造においては、るつぼ中において、上部側のアルミナ融液の温度よりも下部側のアルミナ融液の温度を高くする温度勾配を設けることで、アルミナ融液中に自然対流を生じさせることが、均質な単結晶を得るという観点から好ましい。
【0006】
公報記載の従来技術として、誘導加熱法にて加熱されたランガサイト(La3Ga5SiO14)の融液から単結晶を引き上げる単結晶引き上げ装置用のるつぼとして、側面の下部側を上部側よりも薄い板厚で形成したものを用いる技術が存在する(特許文献2参照)。
【0007】
また、他の公報記載の従来技術として、同じく誘導加熱法にて加熱されたランガサイトの融液から単結晶を引き上げる単結晶引き上げ装置用のるつぼとして、下部側の側面から外側に突出するフランジ状外周部を形成したものを用いる技術が存在する(特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2008−207992号公報
【特許文献2】特開2004−284853号公報
【特許文献3】特開2004−284854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、チョクラルスキー法によるサファイア単結晶の製造においては、通常、サファイア単結晶を引き上げた後に、るつぼ内にアルミナ融液の一部が残存する。このアルミナ融液は、るつぼに対する誘導加熱が停止されることによって冷却され、その後るつぼの底側で固化する。
【0010】
ここで、側面の下部側を上部側よりも薄い板厚としたるつぼを用いた場合、下部側の板厚の薄い部分が固化したアルミナ(酸化アルミ)によって機械的なストレスを受けることになるため、るつぼの変形が生じやすくなる。
また、側面の下部側にフランジ状外周部を突出形成した場合、フランジ状外周部の形成部が集中的に加熱されることになるため、他の部位との温度差が大きくなって所望とする温度勾配が得にくくなる。
【0011】
本発明は、アルミナ融液の固化に伴うるつぼの変形を抑制するとともに、アルミナ融液中の温度勾配を連続的なものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的のもと、本発明が適用されるサファイア単結晶引き上げ装置は、アルミナ融液を収容するるつぼと、るつぼを誘導加熱する誘導加熱手段と、るつぼに収容されたアルミナ融液からサファイア単結晶を引き上げる引き上げ手段とを備え、るつぼは、底部と、底部の周縁から立ち上がるとともに底部より遠い側から底部に近づく側に向けて肉厚が連続的に増加する壁部とを有し、誘導加熱手段は、るつぼの壁部の外側に巻き回され、底部から遠ざかる側の壁部との距離よりも底部に近い側の壁部との距離が近くなるように配置される加熱コイルを有することを特徴としている。
【0013】
このようなサファイア単結晶引き上げ装置において、るつぼが、イリジウム、イリジウムを含む合金、白金、あるいは白金を含む合金で構成されることを特徴とすることができる。
また、るつぼの壁部の外側の面が、底部に近い側から底部から遠ざかる側に向けて直線状の断面形状を有していることを特徴とすることができる。
さらに、るつぼは、底部に近い側における壁部の外径が底部から遠い側における壁部の外径よりも大きく設定されることを特徴とすることができる。
さらにまた、引き上げ手段は、アルミナ融液からc軸方向に成長させたサファイア単結晶を引き上げることを特徴とすることができる。
【0014】
また、他の観点から捉えると、本発明は、アルミナ融液を収容し、サファイア単結晶の製造に用いられるるつぼであって、底部と、底部の周縁から立ち上がるとともに底部より遠い側から底部に近づく側に向けて肉厚が連続的に増加する壁部とを有することを特徴としている。
【0015】
このようなるつぼにおいて、底部および壁部がイリジウム、イリジウムを含む合金、白金、あるいは白金を含む合金で構成されることを特徴とすることができる。
また、底部に近い側における壁部の外径が底部から遠い側における壁部の外径よりも大きく設定されることを特徴とすることができる。
さらに、壁部の外側の面が、底部に近い側から底部から遠ざかる側に向けて直線状の断面形状を有していることを特徴とすることができる。
【0016】
さらに、他の観点から捉えると、本発明が適用されるサファイア単結晶の製造方法は、底部と、底部の周縁から立ち上がるとともに底部より遠い側から底部に近づく側に向けて肉厚が連続的に増加する壁部とを有するるつぼに、アルミナ原料を投入する投入工程と、アルミナ原料が投入されたるつぼを、るつぼの壁部の外側に巻き回され、底部から遠ざかる側の壁部との距離よりも底部に近い側の壁部との距離が近くなるように配置される加熱コイルに交流電流を供給することにより誘導加熱して、アルミナ原料を溶融させてアルミナ融液とする溶融工程と、加熱コイルを用いてるつぼを誘導加熱するとともに、るつぼ中のアルミナ融液からサファイア単結晶を引き上げて成長させる成長工程とを有することを特徴としている。
【0017】
このような製造方法では、成長工程において、サファイア単結晶をc軸方向に成長させることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アルミナ融液の固化に伴うるつぼの変形を抑制するとともに、アルミナ融液中の温度勾配を連続的なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<実施の形態1>
図1は本実施の形態が適用される単結晶引き上げ装置1の構成の一例を説明するための図である。
この単結晶引き上げ装置1は、サファイア単結晶からなるサファイアインゴット200を成長させるための加熱炉10を備えている。この加熱炉10は断熱容器11を備えている。ここで、断熱容器11は円柱状の外形を有しており、その内部には円柱状の空間が形成されている。そして、断熱容器11は、ジルコニア製の断熱材からなる部品を組み立てることで構成されている。また、加熱炉10は、内部の空間に断熱容器11を収容するチャンバ14をさらに備えている。さらに、加熱炉10は、チャンバ14の側面に貫通形成され、チャンバ14の外部からチャンバ14を介して断熱容器11の内部にガスを供給するガス供給管12と、同じくチャンバ14の側面に貫通形成され、断熱容器11の内部からチャンバ14を介して外部にガスを排出するガス排出管13とを備えている。
【0020】
また、断熱容器11の内側下方には、酸化アルミニウムを溶融してなるアルミナ融液300を収容するるつぼ20が、鉛直上方に向かって開口するように配置されている。
さらに、加熱炉10は、断熱容器11の下部側の側面外側であってチャンバ14の下部側の側面内側となる部位に巻き回された金属製の加熱コイル30を備えている。この加熱コイル30は、断熱容器11を介してるつぼ20の壁面と対向するように配置されている。
なお、るつぼ20および加熱コイル30の詳細については後述する。
【0021】
さらにまた、加熱炉10は、断熱容器11、チャンバ14それぞれの上面に設けられた貫通孔を介して上方から下方に伸びる引き上げ棒40を備えている。この引き上げ棒40は、鉛直方向への移動および軸を中心とする回転が可能となるように取り付けられている。なお、チャンバ14に設けられた貫通孔と引き上げ棒40との間には、図示しないシール材が設けられている。そして、引き上げ棒40の鉛直下方側の端部には、サファイアインゴット200を成長させるための基となる種結晶210(後述する図2参照)を装着、保持させるための保持部材41が取り付けられている。
【0022】
また、単結晶引き上げ装置1は、引き上げ棒40を鉛直上方に引き上げるための引き上げ駆動部50および引き上げ棒40を回転させるための回転駆動部60を備えている。ここで、引き上げ駆動部50はモータ等で構成されており、引き上げ棒40の引き上げ速度を調整できるようになっている。また、回転駆動部60もモータ等で構成されており、引き上げ棒40の回転速度を調整できるようになっている。
【0023】
さらに、単結晶引き上げ装置1は、ガス供給管12を介してチャンバ14の内部にガスを供給するガス供給部70を備えている。本実施の形態において、ガス供給部70は、例えば窒素等の不活性ガスを供給することができる。また、ガス供給部70は、必要に応じて、窒素等の不活性ガスに加えて酸素を供給することもできる。そして、ガス供給部70は、例えば酸素と窒素との混合比を可変することで混合ガス中の酸素の濃度を調整したり、あるいは、チャンバ14の内部に供給する混合ガスの流量を調整したりすることも可能となっている。
【0024】
一方、単結晶引き上げ装置1は、ガス排出管13を介してチャンバ14の内部からガスを排出する排気部80を備えている。排気部80は例えば真空ポンプ等を備えており、チャンバ14内の減圧や、ガス供給部70から供給されたガスの排気をすることが可能となっている。
【0025】
さらにまた、単結晶引き上げ装置1は、加熱コイル30に交流電流を供給するコイル電源90を備えている。コイル電源90は、加熱コイル30への交流電流の供給の有無および供給する電流量、さらには加熱コイル30に供給する交流電流の周波数を設定できるようになっている。
【0026】
また、単結晶引き上げ装置1は、引き上げ棒40を介して引き上げ棒40の下部側に成長するサファイアインゴット200の重量を検出する重量検出部110を備えている。この重量検出部110は、例えば公知の重量センサ等を含んで構成される。
【0027】
そして、単結晶引き上げ装置1は、上述した引き上げ駆動部50、回転駆動部60、ガス供給部70、排気部80およびコイル電源90の動作を制御する制御部100を備えている。また、制御部100は、重量検出部110から出力される重量信号に基づき、引き上げられるサファイアインゴット200の結晶直径の計算を行い、コイル電源90にフィードバックする。
【0028】
なお、本実施の形態では、加熱コイル30およびコイル電源90によって誘導加熱手段が構成されている。また、引き上げ棒40、保持部材41および引き上げ駆動部50によって引き上げ手段が構成されている。
【0029】
図2は、図1に示す単結晶引き上げ装置1を用いて製造されるサファイアインゴット200の構成の一例を示している。
このサファイアインゴット200は、サファイアインゴット200を成長させるための基となる種結晶210と、種結晶210の下部に延在しこの種結晶210と一体化した肩部220と、肩部220の下部に延在し肩部220と一体化した直胴部230と、直胴部230の下部に延在し直胴部230と一体化した尾部240とを備えている。そして、このサファイアインゴット200においては、上方すなわち種結晶210側から下方すなわち尾部240側に向けてc軸方向にサファイアの単結晶が成長している。
【0030】
ここで、肩部220は、種結晶210側から直胴部230側に向けて、徐々にその直径が拡大していく形状を有している。また、直胴部230は、上方から下方に向けてその直径がほぼ同じとなるような形状を有している。なお、直胴部230の直径は、所望とするサファイア単結晶のウエハの直径よりもわずかに大きな値に設定される。そして、尾部240は、上方から下方に向けて徐々にその直径が縮小していくことにより、上方から下方に向けて凸状となる形状を有している。
【0031】
なお、本実施の形態において、c軸方向に結晶成長させたサファイアインゴット200を製造しているのは、次の理由による。
一般的に、青色LEDの基板材料や液晶プロジェクタの偏光子の保持部材等では、サファイア単結晶のc軸に垂直な面((0001)面)が主面となるように、インゴットから切り出されたウエハが用いられることが多い。したがって、歩留まりの観点からすれば、c軸方向に結晶成長させたサファイア単結晶のインゴットをウエハの切り出しに用いることが好ましい。このため、本実施の形態では、このような後工程での利便性を考慮し、c軸方向に結晶成長させたサファイアインゴット200の製造を行っている。
【0032】
図3は、図1に示す単結晶引き上げ装置1におけるるつぼ20および加熱コイル30の構成、および、両者の位置関係を説明するための断面図の一例である。
【0033】
最初に、るつぼ20の構成について説明する。
るつぼ20はイリジウムによって構成されており、鉛直上方に向かって開口する形状を有している。このるつぼ20は、底部21と、底部21の周縁から上方に立ち上がる壁部22とを有している。そして、本実施の形態のるつぼ20は、鉛直上方から鉛直下方に向けてその外径が漸次増加する形状を有している。
【0034】
なお、以下の説明においては、底部21において外側に向かう面を底部外面21aと呼び、内側に向かう面すなわち凹部を形成する面を底部内面21bと呼ぶ。また、壁部22において外側に向かうすなわち加熱コイル30と対向する面を壁部外面22aと呼び、内側に向かう面すなわち底部内面21bとともに凹部を形成する面を壁部内面22bと呼ぶ。
【0035】
底部21は円形状を有しており、全域にわたってほぼ均一な厚さ(例えば2mm〜7mm程度)となっている。
これに対し、壁部22は、上部側よりも下部側の方がより厚みを増す構成となっている。より具体的に説明すると、本実施の形態では、最上部における壁部22の厚みすなわち第1の肉厚T1が2mmであるのに対し、最下部における壁部22の厚みすなわち第2の肉厚T2が7mmとなっている。そして、壁部内面22bが上方から下方にほぼ垂直に向かう直線状の断面を有しているのに対し、壁部外面22aは上方から下方に斜めに向かう直線状の断面を有している。このように、るつぼ20における壁部外面22aは、上方から下方に向けて連続的であって変曲点のない直線状の断面形状を有している。
【0036】
また、このるつぼ20の高さHは約150mmである。また、るつぼ20の最上部側の直径である第1の外径Do1は約154mmである。さらに、るつぼ20の最下部側の直径すなわち底部21における壁部外面22aの直径である第2の外径Do2は約164mmとなっている。
これに対し、るつぼ20の凹部の直径である内径Diは、上下方向の位置にかかわらず約150mmで一定となっている。
なお、図3は、るつぼ20の断面の一例を示すものであり、その具体的な寸法を反映させたものではない。
【0037】
次に、加熱コイル30の構成について説明する。
加熱コイル30は、例えば中空状の銅管によって構成されている。また、加熱コイル30は螺旋状に巻き回されており、全体としてみたときに円筒状の形状を有している。すなわち、本実施の形態では、加熱コイル30の上部側の内径と下部側の内径とがほぼ同一になっている。これにより、巻き回された加熱コイル30によってその内部に形成される空間が円柱状となっている。また、円柱状の空間を通る加熱コイル30の中心軸は、水平方向に対しほぼ垂直となっている。
【0038】
さらに、単結晶引き上げ装置1(図1参照)におけるるつぼ20と加熱コイル30との相対的な位置関係について説明する。
まず、るつぼ20は、加熱コイル30によって形成される円柱状の空間の内側に配置されている。そして、るつぼ20は、加熱コイル30によって形成される円形状の領域のほぼ中央となる部位に置かれる。また、加熱コイル30の下側端部はるつぼ20の下端よりも下側に位置し、加熱コイル30の上側端部はるつぼ20の上端よりも上側に位置するように置かれる。
【0039】
これにより、加熱コイル30の内側とるつぼ20の壁部外面22aとの最短距離である間隔(距離)Lは、るつぼ20の上方から下方に向けて漸次減少し、加熱コイル30とるつぼ20とが下方側ほど近づくようになっている。より具体的に説明すると、加熱コイル30の内側とるつぼ20の最上部側における壁部外面22aとの最短間隔である第1の間隔L1よりも、加熱コイル30の内側とるつぼ20の最下部側における壁部外面22aとの最短間隔である第2の間隔L2の方が短くなっている。なお、この例において、第1の間隔L1と第2の間隔L2との差は、第1の肉厚T1と第2の肉厚T2との差すなわち5mmとなっている。
【0040】
図4は、図1に示す単結晶引き上げ装置1を用いて、図2に示すサファイアインゴット200を製造する手順を説明するためのフローチャートである。
サファイアインゴット200の製造にあたっては、まず、チャンバ14内のるつぼ20内に充填された固体の酸化アルミニウムを加熱によって溶融する溶融工程を実行する(ステップ101)。
次に、酸化アルミニウムの融液すなわちアルミナ融液300に種結晶210の下端部を接触させた状態で温度調整を行う種付け工程を実行する(ステップ102)。
次いで、アルミナ融液300に接触させた種結晶210を回転させながら上方に引き上げることにより、種結晶210の下方に肩部220を形成する肩部形成工程を実行する(ステップ103)。
引き続いて、種結晶210を介して肩部220を回転させながら上方に引き上げることにより、肩部220の下方に直胴部230を形成する直胴部形成工程を実行する(ステップ104)。
さらに引き続いて、種結晶210および肩部220を介して直胴部230を回転させながら上方に引き上げてアルミナ融液300から引き離すことにより、直胴部230の下方に尾部240を形成する尾部形成工程を実行する(ステップ105)。
そして、るつぼ20内のアルミナ融液300の加熱を停止して冷却する冷却工程を実行し(ステップ106)、得られたサファイアインゴット200が冷却された後にチャンバ14の外部に取り出して、一連の製造工程を完了する。
【0041】
なお、このようにして得られたサファイアインゴット200は、まず、肩部220と直胴部230との境界および直胴部230と尾部240との境界においてそれぞれ切断され、直胴部230が切り出される。次に、切り出された直胴部230は、さらに、長手方向に直交する方向に切断され、サファイア単結晶のウエハとなる。このとき、本実施の形態のサファイアインゴット200はc軸方向に結晶成長していることから、得られるウエハの主面はc面((0001)面)となる。そして、得られたウエハは、青色LEDや偏光子の製造等に用いられる。
【0042】
では、上述した各工程について具体的に説明を行う。ただし、ここでは、ステップ101の溶融工程の前に実行される準備工程から順を追って説明を行う。
【0043】
(準備工程)
準備工程では、まず、<0001>c軸の種結晶210を用意する。次に、引き上げ棒40の保持部材41に種結晶210を取り付け、所定の位置にセットする。続いて、るつぼ20内に酸化アルミニウムの原材料すなわちアルミナ原料を充填し、ジルコニア製の断熱材からなる部品を用いて、チャンバ14内に断熱容器11を組み立てる。
そして、ガス供給部70からのガス供給を行わない状態で、排気部80を用いてチャンバ14内を減圧する。その後、ガス供給部70がチャンバ14内に所定のガスを供給し、チャンバ14の内部を常圧にする。
【0044】
(溶融工程)
溶融工程では、ガス供給部70が所定のガスをチャンバ14内に供給する。なお、溶融工程において供給するガスは、準備工程と同じものであってもよいし異なるものであってもよい。このとき、回転駆動部60は、引き上げ棒40を第1の回転速度で回転させる。
また、コイル電源90が加熱コイル30に高周波の交流電流(以下の説明では高周波電流と呼ぶ)を供給する。コイル電源90から加熱コイル30に高周波電流が供給されると、加熱コイル30の周囲において磁束が生成・消滅を繰り返す。そして、加熱コイル30で生じた磁束が、断熱容器11を介してるつぼ20を横切ると、るつぼ20の壁面にはその磁界の変化をさまたげるような磁界が発生し、それによってるつぼ20内に渦電流が発生する。そして、るつぼ20は、渦電流(I)によってるつぼ20の表皮抵抗(R)に比例したジュール熱(W=IR)が発生し、るつぼ20が加熱されることになる。るつぼ20が加熱され、それに伴ってるつぼ20内に収容される酸化アルミニウムがその融点(2054℃)を超えて加熱されると、るつぼ20内において酸化アルミニウムが溶融し、アルミナ融液300となる。
【0045】
(種付け工程)
種付け工程では、ガス供給部70が、所定のガスをチャンバ14内に供給する。なお、種付け工程において供給するガスは、溶融工程と同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
そして、引き上げ駆動部50は、保持部材41に取り付けられた種結晶210の下端が、るつぼ20内のアルミナ融液300と接触する位置まで引き上げ棒40を下降させて停止させる。その状態で、コイル電源90は、重量検出部110からの重量信号をもとに加熱コイル30に供給する高周波電流の電流値を調節する。
【0046】
(肩部形成工程)
肩部形成工程では、コイル電源90が加熱コイル30に供給する高周波電流を調節したのち、アルミナ融液300の温度が安定するまでしばらくの間保持し、その後、引き上げ棒40を第1の回転速度で回転させながら第1の引き上げ速度にて引き上げる。
【0047】
すると、種結晶210は、その下端部がアルミナ融液300に浸った状態で回転されつつ引き上げられることになり、種結晶210の下端には、鉛直下方に向かって拡開する肩部220が形成されていく。
なお、肩部220の直径が所望とするウエハの直径よりも数mm程度大きくなった時点で、肩部形成工程を完了する。
【0048】
(直胴部形成工程)
直胴部形成工程では、ガス供給部70が所定のガスをチャンバ14内に供給する。なお、直胴部形成工程において供給するガスは、肩部形成工程と同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
また、コイル電源90は、引き続き加熱コイル30に高周波電流の供給を行い、るつぼ20を介したアルミナ融液300を加熱する。
さらに、引き上げ駆動部50は、引き上げ棒40を第2の引き上げ速度にて引き上げる。ここで第2の引き上げ速度は、肩部形成工程における第1の引き上げ速度と同じ速度であってもよいし、異なる速度であってもよい。
さらにまた、回転駆動部60は、引き上げ棒40を第2の回転速度で回転させる。ここで、第2の回転速度は、肩部形成工程における第1の回転速度と同じ速度であってもよいし、異なる速度であってもよい。
【0049】
種結晶210と一体化した肩部220は、その下端部がアルミナ融液300に浸った状態で回転されつつ引き上げられることになるため、肩部220の下端部には、好ましくは円柱状の直胴部230が形成されていく。直胴部230は、所望とするウエハの直径以上の胴体であればよい。
【0050】
(尾部形成工程)
尾部形成工程では、ガス供給部70が所定のガスをチャンバ14内に供給する。なお、尾部形成工程において供給するガスは、直胴部形成工程と同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
また、コイル電源90は、引き続き加熱コイル30に高周波電流の供給を行い、るつぼ20を介したアルミナ融液300を加熱する。
さらに、引き上げ駆動部50は、引き上げ棒40を第3の引き上げ速度にて引き上げる。ここで第3の引き上げ速度は、肩部形成工程における第1の引き上げ速度あるいは直胴部形成工程における第2の引き上げ速度と同じ速度であってもよいし、これらとは異なる速度であってもよい。
さらにまた、回転駆動部60は、引き上げ棒40を第3の回転速度で回転させる。ここで、第3の回転速度は、肩部形成工程における第1の回転速度あるいは直胴部形成工程における第2の回転速度と同じ速度であってもよいし、これらとは異なる速度であってもよい。
なお、尾部形成工程の序盤において、尾部240の下端は、アルミナ融液300と接触した状態を維持する。
そして、所定の時間が経過した尾部形成工程の終盤において、引き上げ駆動部50は、引き上げ棒40の引き上げ速度を増速させて引き上げ棒40をさらに上方に引き上げさせることにより、尾部240の下端をアルミナ融液300から引き離す。これにより、図2に示すサファイアインゴット200が得られる。
【0051】
(冷却工程)
冷却工程では、ガス供給部70が所定のガスをチャンバ14内に供給する。なお、冷却工程において供給するガスは、尾部形成工程と同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
また、コイル電源90は、加熱コイル30への高周波電流の供給を停止し、るつぼ20を介したアルミナ融液300の加熱を中止する。
さらに、引き上げ駆動部50は引き上げ棒40の引き上げを停止させ、回転駆動部60は引き上げ棒40の回転を停止させる。
このとき、るつぼ20内には、サファイアインゴット200を形成しなかった酸化アルミニウムがアルミナ融液300として少量残存している。このため、加熱の停止に伴ってるつぼ20中のアルミナ融液300は徐々に冷却され、酸化アルミニウムの融点を下回った後にるつぼ20中で固化し、酸化アルミニウムの固体となる。
そして、チャンバ14内が十分に冷却された状態で、チャンバ14内からサファイアインゴット200が取り出される。
【0052】
ところで、このようなサファイアインゴット200の製造では、るつぼ20内におけるアルミナ融液300の挙動がサファイア単結晶の成長に大きな影響を与える。具体的に説明すると、るつぼ20内でアルミナ融液が自然対流にて循環移動することが好ましい。このような自然対流を実現するためには、るつぼ20内のアルミナ融液300において上部側よりも下部側の温度が高いことが好ましく、さらに上部側から下部側に向けて徐々に温度が高くなっていくことがより好ましい。
【0053】
このため、アルミナ融液300を収容するるつぼ20において、上部側よりも下部側をより加熱できる構成とすることが好ましく、るつぼ20の上部側から下部側に向けて徐々に加熱されやすくなる構成とすることがより好ましい。
【0054】
ここで、本実施の形態では、図1および図3から明らかなように、加熱コイル30と、るつぼ20の壁部外面22aとの間隔Lが、るつぼ20の上部側から下部側に向けて徐々に狭くなっている。
一般に、誘導加熱においては、加熱用のコイルと被加熱体との距離が短いほど被加熱体を通過する磁束の密度が増し、その結果より加熱されやすくなって温度が上がることが知られている。
このため、本実施の形態の構成を採用することにより、るつぼ20の上部側よりも下部側すなわち壁部22に近い側ほど加熱されやすくなる。その結果、るつぼ20内のアルミナ融液300では、上部側よりも下部側の方の温度が上がることになり、るつぼ20内におけるアルミナ融液300の自然対流が促進される。
【0055】
また、本実施の形態では、壁部外面22aが、上方から下方に向けて連続的であって変曲点のない直線状の断面形状を有している。このため、加熱コイル30とるつぼ20の壁部外面22aとの間隔Lは、るつぼ20の上部側から下部側に向けて、一次関数的に狭まっていく。これにより、るつぼ20の壁部22の最上部と最下部との間の特定の部位が極度に加熱されやすくなる状況は生じず、るつぼ20内におけるアルミナ融液300の温度勾配を、上方から下方に向けて連続的なものとすることができる。
【0056】
さらに、本実施の形態では、このようにしてるつぼ20内におけるアルミナ融液300の自然対流を促進できることから、自然対流に伴ってアルミナ融液300中の気泡をより取り除くことが可能になる。これにより、サファイアインゴット200に気泡が取り込まれるのを抑制することができる。特に、本実施の形態のように、c軸方向に結晶成長させたサファイアインゴット200を製造する場合には、サファイアインゴット200中に気泡が取り込まれやすいのであるが、上述した手法を用いて製造を行うことにより、気泡の取り込みがより抑制されたサファイアインゴット200を得ることができる。
【0057】
また、本実施の形態では、冷却工程においてアルミナ融液300がるつぼ20中で固化して酸化アルミニウムとなるが、この酸化アルミニウムは、るつぼ20の下側すなわち底部21側で固まる。このとき、酸化アルミニウムの固化に伴ってるつぼ20の下側には機械的なストレスが加えられるが、本実施の形態では壁部22が下側ほど肉厚に形成されているため、加えられた機械的なストレスによる変形を抑制することが可能となる。したがって、変形の少ないるつぼ20を長期にわたって使用できることになり、サファイアインゴット200の生産性を向上させることができ、また、るつぼ20にかかるコストをより低減することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、るつぼ20の壁部外面22aの断面形状を直線状としていたが、壁部外面22aの断面形状はこれに限られない。
すなわち、例えば図5(a)や図5(b)に示すように、壁部外面22aの断面形状を、連続的であって変曲点が存在していない曲線状のものとしてもかまわない。
【0059】
<実施の形態2>
本実施の形態は、実施の形態1とほぼ同様であるが、るつぼ20の断面形状および加熱コイル30の配置が異なっている。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同様のものについては、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0060】
図6は、本実施の形態におけるるつぼ20および加熱コイル30の構成、および、図1に示す単結晶引き上げ装置1におけるるつぼ20および加熱コイル30の位置関係を説明するための断面図の一例である。
【0061】
最初に、るつぼ20の構成について説明する。
るつぼ20は実施の形態1と同様にイリジウムによって構成されており、鉛直上方に向かって開口する形状を有している。このるつぼ20は、底部21と、底部21の周縁から上方に立ち上がる壁部22とを有している。そして、本実施の形態のるつぼ20は、鉛直上方から鉛直下方にかけてその外径がほぼ一定となる形状を有している。
【0062】
底部21は円形状を有しており、全域にわたってほぼ均一な厚さ(例えば2mm〜7mm程度)となっている。
これに対し、壁部22は、上部側よりも下部側の方がより厚みを増す構成となっている。より具体的に説明すると、本実施の形態においても、最上部における壁部22の厚みすなわち第1の肉厚T1が2mmであるのに対し、最下部における壁部22の厚みすなわち第2の肉厚T2が7mmとなっている。ただし、本実施の形態では、壁部外面22aが上方から下方にほぼ垂直に向かう直線状の断面を有しているのに対し、壁部内面22bは上方から下方に斜めに向かう直線状の断面を有している。このように、るつぼ20における壁部内面22bは、上方から下方に向けて連続的であって変曲点のない断面形状を有している。
【0063】
また、このるつぼ20の高さHは約150mmである。また、るつぼ20の凹部の最上部側の直径である第1の内径Di1は約160mmであり、凹部の最下部側の直径である第2の内径Di2は約150mmである。
これに対し、るつぼ20の直径である外径Doは、上下方向の位置にかかわらず約164mmで一定となっている。
【0064】
次に、加熱コイル30について説明する。
加熱コイル30は、実施の形態1と同様、例えば中空状の銅管によって構成されている。また、加熱コイル30は螺旋状に巻き回されている。ただし、本実施の形態では、加熱コイル30の上部側の内径よりも下部側の内径の方が小さくなっている。これにより、巻き回された加熱コイル30によってその内部に形成される空間も、断面が台形状を有する形状となっている。また、この空間を通る加熱コイル30の中心軸は、実施の形態1と同様に水平方向に対してほぼ垂直となっている。
【0065】
さらに、単結晶引き上げ装置1(図1参照)におけるるつぼ20と加熱コイル30との相対的な位置関係について説明する。
まず、るつぼ20は、加熱コイル30によって形成される断面台形状の空間の内側に配置されている。そして、るつぼ20は、加熱コイル30によって形成される円形状の領域のほぼ中央となる部位に置かれる。また、加熱コイル30の下側端部はるつぼ20の下端よりも下側に位置し、加熱コイル30の上側端部はるつぼ20の上端よりも上側に位置するように置かれる。
【0066】
これにより、加熱コイル30の内側とるつぼ20の壁部外面22aとの最短距離である間隔(距離)Lは、実施の形態1と同様、るつぼ20の上方から下方に向けて漸次減少し、加熱コイル30とるつぼ20とが下方側ほど近づく。より具体的に説明すると、加熱コイル30の内側とるつぼ20の最上部側における壁部外面22aとの最短間隔である第1の間隔L1よりも、加熱コイル30の内側とるつぼ20の最下部側における壁部外面22aとの最短間隔である第2の間隔L2の方が短くなる。なお、この例において、第1の間隔L1と第2の間隔L2との差は、るつぼ20の壁部外面22aに対する加熱コイル30の傾きによって決められ、例えば5mmに設定される。
【0067】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様、図4に示す製造手順を実行することにより、図2に示すサファイアインゴット200が得られる。
【0068】
そして、本実施の形態においても、加熱コイル30とるつぼ20の壁部外面22aとの間隔Lが、るつぼ20の上部側から下部側に向けて徐々に狭くなっており、しかも、壁部外面22aが、上方から下方に向けて連続的であって変曲点のない直線状の断面形状を有している。
このため、実施の形態1と同様、るつぼ20を誘導加熱することに伴ってるつぼ20中のアルミナ融液300の自然対流を促進することができ、しかも、るつぼ20内におけるアルミナ融液300の温度勾配を、上方から下方に向けて連続的なものとすることができる。
【0069】
また、本実施の形態においても、るつぼ20の壁部22が下側ほど肉厚に形成されていることから、アルミナ融液300が固化した際に酸化アルミニウムから受ける機械的なストレスによる変形を抑制することができる。さらに、るつぼ20の材料としては、上述したイリジウムのほかに、イリジウムを含む合金や、白金、または白金を含む合金から構成されたものを使用することができる。
【0070】
なお、本実施の形態では、るつぼ20の壁部内面22bの断面形状を直線状としていたが、壁部内面22bの断面形状はこれに限られない。
例えば、壁部内面22bの断面形状を、連続的であって変曲点が存在していない曲線状のものとしてもかまわない。
また、例えば図7に示すように、壁部外面22aおよび壁部内面22bの両者を傾斜面で形成するようにしても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施の形態が適用される単結晶引き上げ装置の構成を説明するための図である。
【図2】単結晶引き上げ装置を用いて得られたサファイアインゴットの構成の一例を示す図である。
【図3】実施の形態1の単結晶引き上げ装置におけるるつぼおよび加熱コイルの構成、および、両者の位置関係を説明するための断面図の一例である。
【図4】単結晶引き上げ装置を用いてサファイアインゴットを製造する手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】実施の形態1の変形例におけるるつぼの断面を示す図である。
【図6】実施の形態2におけるるつぼおよび加熱コイルの構成、および、単結晶引き上げ装置におけるるつぼおよび加熱コイルの位置関係を説明するための断面図の一例である。
【図7】実施の形態2の変形例におけるるつぼの断面を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1…単結晶引き上げ装置、10…加熱炉、11…断熱容器、12…ガス供給管、13…ガス排出管、14…チャンバ、20…るつぼ、21…底部、21a…底部外面、21b…底部内面、22…壁部、22a…壁部外面、22b…壁部内面、30…加熱コイル、40…引き上げ棒、41…保持部材、200…サファイアインゴット、300…アルミナ融液、Di…内径、Di1…第1の内径、Di2…第2の内径、Do1…第1の外径、Do2…第2の外径、T1…第1の肉厚、T2…第2の肉厚、H…るつぼの高さ、L…間隔、L1…第1の間隔、L2…第2の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ融液を収容するるつぼと、
前記るつぼを誘導加熱する誘導加熱手段と、
前記るつぼに収容されたアルミナ融液からサファイア単結晶を引き上げる引き上げ手段とを備え、
前記るつぼは、
底部と、
前記底部の周縁から立ち上がるとともに当該底部より遠い側から当該底部に近づく側に向けて肉厚が連続的に増加する壁部と
を有し、
前記誘導加熱手段は、
前記るつぼの前記壁部の外側に巻き回され、前記底部から遠ざかる側の前記壁部との距離よりも当該底部に近い側の当該壁部との距離が近くなるように配置される加熱コイルを有すること
を特徴とするサファイア単結晶引き上げ装置。
【請求項2】
前記るつぼが、イリジウム、イリジウムを含む合金、白金、あるいは白金を含む合金で構成されることを特徴とする請求項1記載のサファイア単結晶引き上げ装置。
【請求項3】
前記るつぼの前記壁部の外側の面が、前記底部に近い側から当該底部から遠ざかる側に向けて直線状の断面形状を有していることを特徴とする請求項1または2記載のサファイア単結晶引き上げ装置。
【請求項4】
前記るつぼは、前記底部に近い側における前記壁部の外径が当該底部から遠い側における当該壁部の外径よりも大きく設定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のサファイア単結晶引き上げ装置。
【請求項5】
前記引き上げ手段は、前記アルミナ融液からc軸方向に成長させた前記サファイア単結晶を引き上げることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のサファイア単結晶引き上げ装置。
【請求項6】
アルミナ融液を収容し、サファイア単結晶の製造に用いられるるつぼであって、
底部と、
前記底部の周縁から立ち上がるとともに当該底部より遠い側から当該底部に近づく側に向けて肉厚が連続的に増加する壁部と
を有することを特徴とするサファイア単結晶製造用るつぼ。
【請求項7】
前記底部および前記壁部が、イリジウム、イリジウムを含む合金、白金、あるいは白金を含む合金で構成されることを特徴とする請求項6記載のサファイア単結晶製造用るつぼ。
【請求項8】
前記底部に近い側における前記壁部の外径が当該底部から遠い側における当該壁部の外径よりも大きく設定されることを特徴とする請求項6または7記載のサファイア単結晶製造用るつぼ。
【請求項9】
前記壁部の外側の面が、前記底部に近い側から当該底部から遠ざかる側に向けて直線状の断面形状を有していることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載のサファイア単結晶製造用るつぼ。
【請求項10】
底部と、当該底部の周縁から立ち上がるとともに当該底部より遠い側から当該底部に近づく側に向けて肉厚が連続的に増加する壁部とを有するるつぼに、アルミナ原料を投入する投入工程と、
前記アルミナ原料が投入された前記るつぼを、当該るつぼの前記壁部の外側に巻き回され、前記底部から遠ざかる側の前記壁部との距離よりも当該底部に近い側の当該壁部との距離が近くなるように配置される加熱コイルに交流電流を供給することにより誘導加熱して、前記アルミナ原料を溶融させてアルミナ融液とする溶融工程と、
前記加熱コイルを用いて前記るつぼを誘導加熱するとともに、当該るつぼ中の前記アルミナ融液からサファイア単結晶を引き上げて成長させる成長工程と
を有することを特徴とするサファイア単結晶の製造方法。
【請求項11】
前記成長工程において、前記サファイア単結晶をc軸方向に成長させることを特徴とする請求項10記載のサファイア単結晶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−173929(P2010−173929A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22024(P2009−22024)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】