説明

サーバ−クライアントシステムにおけるクライアント端末切り替え方法

【課題】
サーバ-クライアントシステムで、クライアント端末を切り替える場合に、切り替え元のクライアント端末側の情報を切り替え先のクライアント端末に引き継ぐ手法を提供することを目的とする。
【解決手段】
クライアント端末上の端末切り替えメッセージ送信部にデータ送受信機能を装備させ、クライアント端末間でのデータ送受信と端末切り替えを連動して行なう。すなわち、第1のクライアント端末から第2のクライアント端末に切り替えるときは、ゲートウエイに通信の一時停止を指令しておき、またゲートウエイで行なっているアドレス変換のアドレスを第1の端末から第2の端末のアドレスに変更するとともに、第1の端末から第2の端末に引き継ぐべきデータを転送して第2の端末に第1の端末の状態を再現し、ゲートウエイに通信の再開を指令する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバ-クライアントシステムにおいて、クライアント端末の持つデータをそのまま別端末に移し、切り替え前のクライアントアプリケーションの状態を引き継いでサーバからサービスを受ける、クライアント端末切り替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クライアント端末を切り替える手法としては、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。下記特許文献1に記載のものは、クライアント端末からゲートウエイにデータ受信の停止、端末切り替え、および再開を通知し、サーバ-クライアント間にあるゲートウェイでセッションを管理することで、データ受信停止時もサーバからは接続しているように見せて端末切り替えを可能にしている。
【特許文献1】特開平2002−176432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、セッションの接続を継続することに留まり、既にクライアント端末上に送られた情報(再生済みのストリームデータ、クライアント端末で表示済みのデータ、サーバからのデータを元に作成されたアプリケーション固有のデータなど)の引き継ぎは行なえない。そのため、端末切り替え後もデータ受信の継続は行なえるが、それまでに元の端末で受け取った情報は切り替え後の端末では失われてしまうという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、クライアント端末を切り替える場合に、切り替え元のクライアント端末側の情報を切り替え先のクライアント端末に引き継ぐ手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、サーバ-クライアントシステムにおいてサービスを受けている間に、クライアント端末側が持つ情報を引き継いで別端末で継続してサービスを受けるためのクライアント端末切り替え方法であって、第1および第2のクライアント端末とサーバとの間に、クライアント端末側に設けられているプライベートネットワークにおいて有効なプライベートアドレスとサーバ側に設けられているグローバルネットワークにおいて有効なグローバルアドレスとの間のアドレス変換を行なうことによりクライアント端末とサーバとの通信を中継する機能を備えた中継装置を、設けるとともに、前記第1のクライアント端末が、前記第1のクライアント端末と前記サーバとの間に前記中継装置を経由する通信セッションが張られているとき、ユーザからの端末切り替え指令を受信するステップと、前記第1のクライアント端末が、前記中継装置に、前記サーバとの間の通信の一時停止を通知するステップと、前記中継装置が、前記通信の一時停止の通知を受けて、前記サーバと前記第1のクライアント端末との間の通信を一時停止するステップと、前記第1のクライアント端末が、前記第2のクライアント端末に引き継ぎするデータをまとめてデータ圧縮し、該圧縮されたデータを前記第2のクライアント端末に送信するステップと、前記第1のクライアント端末が、端末切り替え指令が入力された旨を示す情報と、切り替え先端末である第2のクライアント端末を特定する情報とを、前記中継装置に通知するステップと、前記中継装置が、その通知を受けて、前記第1のクライアント端末と前記サーバとの間に張られた通信セッションを前記第2のクライアント端末と前記サーバとの間に張られた通信セッションに切り替えるために、前記第1のクライアント端末を示すプライベートアドレスを前記第2のクライアント端末を示すプライベートアドレスに変更するステップと、前記第2のクライアント端末が、前記第1のクライアント端末から送信された前記圧縮されたデータを伸張し、該伸張したデータから、前記第1のクライアント端末の状態を第2のクライアント端末上に構築するステップと、前記第2のクライアント端末が、前記中継装置に対して、データ送信の再開を通知するステップと、前記中継装置が、前記第2のクライアント端末と前記サーバとの間の通信を再開するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、サーバ-クライアントシステムにおいて、サービス受信中にクライアント端末を切り替えることが出来ると共に、既にクライアント端末で受信したデータを切り替え後の端末でも使用することが出来る。これにより、それまで受信したデータを引き継いでクライアント端末を切り替えることが出来るようになる。また本発明では、サーバ側の構成は変更する必要が無く、複数のクライアント端末と中継装置(ゲートウエイなど)に本発明を適用するだけで、それまでに通信したデータを引き継ぎつつ、動的な端末切り替えを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施する場合の一形態を図面を参照して具体的に説明する。
【0008】
図1は、本発明の実施形態であるサーバ-クライアントシステムの全体構成を示したものである。本システムは、端末A101、端末B102、ゲートウェイ103、およびサーバ104を備える。端末A101では、所定のアプリケーションが動作しており、サーバ104から送信されるデータをゲートウエイ103経由で受信している。ここで、端末A101のユーザが、当該端末A101で行なっている動作を端末B102に切り替えたいとする。例えば、デスクトップPCである端末A101でサーバ104からの送信データを受信している処理を、ノートPCである端末B102に切り替えて、引き続き端末B102で受信を続けたい場合、あるいは端末A101でサーバ104からの送信データを受信していたが、その端末A101を使いたい別のユーザが来たので、端末A101で行なっている作業をそのまま端末B102に切り替えたい場合など、端末を切り替えたい場合としては種々のケースがある。
【0009】
端末A101で行なっている動作を端末B102に切り替えたいユーザは、切り替え指令を端末A101に入力する。この指令を受けて、端末A101、端末B102、およびゲートウェイ103が後述する切り替え動作を実行し、端末A101で行なっている動作が端末B102に切り替えられる。その際、それまでに端末A101で受信したデータは、全て端末B102に引き継がれる。
【0010】
図2は、図1のサーバ-クライアントシステムにおける端末A101,B102とゲートウエイ103の詳細な構成を示すブロック図である。端末A101は、アプリケーション部201、メッセージ処理部203、ネットワークIF(インターフェース)204、および入力部205を備える。メッセージ処理部203は、データ圧縮機能202を備える。端末B102は、アプリケーション部211、メッセージ処理部213、およびネットワークIF(インターフェース)214を備える。メッセージ処理部213は、データ復元機能212を備える。ゲートウエイ103は、プライベートネットワークIF221、グローバルネットワークIF222、アドレス変換部223、およびセッション管理部224を備える。
【0011】
こらの各処理部は、以下の機能を有する。
【表1】

【0012】
図2のシステムにおいて、端末A101から端末B102への切り替えは以下の手順で行なわれる。
(1) 端末A101のアプリケーション部201が、入力部205を介してユーザから入力された端末切り替え指令を受信する。
(2) アプリケーション部201は、メッセージ処理部203に端末切り替え指示を転送して、経路230を介してゲートウェイ103にデータ受信の停止を通知する。この通知を受けたゲートウェイ103のセッション管理部224は、サーバ104から受信したデータを一時的に蓄積し、端末A101に送信する処理を一時停止する。
(3) アプリケーション部201は、端末B102に引き継ぎするデータをアプリケーション固有の手順でシリアル化し、経路231を介してメッセージ処理部203に渡す。
(4) メッセージ処理部203は、データ圧縮機能202を利用して、アプリケーション部201から受け取った当該アプリケーション固有のデータをシリアル化し、可逆圧縮する。
(5) メッセージ処理部203は、経路230を介して、ゲートウェイ103に、ユーザから端末切り替え指令が入力されたことを、切り替え先端末の情報(この場合は、端末B102が切り替え先である旨を示す情報)と共に、通知する。
(6) メッセージ処理部203は、端末B102上のメッセージ処理部213に、経路232を介して、上記圧縮したアプリケーション固有のデータを送信する。
(7) ゲートウェイ103は、メッセージ処理部203からの上記(5)の通知を受け、アドレス変換部223におけるクライアント端末のアドレスを変換する。アドレス変換部223は、一般に、グローバルネットワークIF222経由で接続するグローバルなネットワーク(例えば、インターネットなど)で使用するグローバルアドレスとプライベートネットワークIF221経由で接続するプライベートネットワーク(例えば、社内LANなど)で使用するプライベートアドレスとの間の変換を行なうものであるが、いま端末A101とサーバ104との間にセッションが張られている場合に、端末A101から端末B102への切り替えが指令されたときには、グローバルアドレスは変更しないまま、即ちサーバに対しては同一クライアントに対してセッションが張り続けているように見せかけたまま、プライベートアドレスを端末A101のアドレスから端末B102のアドレスへ書き換え、以後は端末B102とサーバ104との間にセッションが張られているようにアドレス変換動作を行なうものである。
(8) メッセージ処理部213は、データ復元機能212を利用して、上記(6)でメッセージ処理部203から受け取ったデータ(圧縮したアプリケーション固有のデータ)を伸張する。
(9) メッセージ処理部213は、伸張したデータ(アプリケーション固有の手順でシリアル化されているデータである)を、経路233を介してアプリケーション部211に渡す。
(10) アプリケーション部211は、渡されたシリアル化されているデータをアプリケーション固有のデータ形式に復元する。
(11) アプリケーション部211は、復元したデータを元にアプリケーション部201と同じ状態を端末B102上に構築する。
(12) メッセージ処理部213は、ゲートウェイ103に対して、経路234を介してデータ送信の再開を通知する。
(13) 上記データ送信の再開通知を受けたゲートウェイ103は、端末B102に対して、経路235を介して、一時的に蓄積した続きのデータを送信する。以上により、端末A101が受信したデータは全て端末B102に引き継がれ、引き続き、端末B102がサーバ104からのデータ受信を行なう。なお、いずれの経路を介するときも、各機器のネットワークIF204、214、221、222を介してデータの送受信が行なわれる。
【0013】
図3は、アプリケーション部201,211およびメッセージ処理部203,213でのデータ送受信の形式を説明する図である。端末A101側のアプリケーション部201とメッセージ処理部203との間のインタフェース301,302、および、端末B102側のアプリケーション部211とメッセージ処理部213との間のインタフェース303,304としては、シリアル化データで送受信を行なうものと規定する。シリアル化は、アプリケーション部が必要とするデータに対して行ない、復元もアプリケーション部で行なう。メッセージ処理部203と213との間は、ネットワークを介すためデータを圧縮しサイズを小さくして送受信する。
【0014】
上記実施形態によれば、サーバ-クライアントシステムにおいて、サービス受信中にクライアント端末を切り替えることが出来ると共に、既にクライアント端末で受信したデータを切り替え後の端末でも使用することが出来る。メッセージ処理部とのインタフェースをクライアントアプリケーションに設けることで、それまで受信したデータを引き継いでクライアント端末を切り替えることが出来るようになる。さらに、メッセージ処理部とのインタフェースを持つ全てのクライアントアプリケーションはデータを維持したまま動的な端末切り替えを実現できる。また、サーバアプリケーションの変更を必要とせず、クライアントアプリケーションの変更のみで適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態の構成図
【図2】本実施形態のシステムの各部のブロック図
【図3】本実施形態の各部で送受信するクライアントデータ形式
【符号の説明】
【0016】
201…端末Aのクライアントアプリケーション部、202…端末Aのメッセージ処理部、211…端末Bのクライアントアプリケーション部、213…端末Bのメッセージ処理部、230…端末Aのメッセージ処理部とゲートウェイとの通信経路、231…端末Aのクライアントアプリケーション部とメッセージ処理部との通信経路、232…端末Aのメッセージ処理部と端末Bのメッセージ処理部との通信経路、233…端末Bのメッセージ処理部とクライアントアプリケーション部との通信経路、234…端末Bのメッセージ処理部とゲートウェイとの通信経路、235…サーバと端末Bの通信経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバ-クライアントシステムにおいてサービスを受けている間に、クライアント端末側が持つ情報を引き継いで別端末で継続してサービスを受けるためのクライアント端末切り替え方法であって、
第1および第2のクライアント端末とサーバとの間に、クライアント端末側に設けられているプライベートネットワークにおいて有効なプライベートアドレスとサーバ側に設けられているグローバルネットワークにおいて有効なグローバルアドレスとの間のアドレス変換を行なうことによりクライアント端末とサーバとの通信を中継する機能を備えた中継装置を、設けるとともに、
前記第1のクライアント端末が、前記第1のクライアント端末と前記サーバとの間に前記中継装置を経由する通信セッションが張られているとき、ユーザからの端末切り替え指令を受信するステップと、
前記第1のクライアント端末が、前記中継装置に、前記サーバとの間の通信の一時停止を通知するステップと、
前記中継装置が、前記通信の一時停止の通知を受けて、前記サーバと前記第1のクライアント端末との間の通信を一時停止するステップと、
前記第1のクライアント端末が、前記第2のクライアント端末に引き継ぎするデータをまとめてデータ圧縮し、該圧縮されたデータを前記第2のクライアント端末に送信するステップと、
前記第1のクライアント端末が、端末切り替え指令が入力された旨を示す情報と、切り替え先端末である第2のクライアント端末を特定する情報とを、前記中継装置に通知するステップと、
前記中継装置が、その通知を受けて、前記第1のクライアント端末と前記サーバとの間に張られた通信セッションを前記第2のクライアント端末と前記サーバとの間に張られた通信セッションに切り替えるために、前記第1のクライアント端末を示すプライベートアドレスを前記第2のクライアント端末を示すプライベートアドレスに変更するステップと、
前記第2のクライアント端末が、前記第1のクライアント端末から送信された前記圧縮されたデータを伸張し、該伸張したデータから、前記第1のクライアント端末の状態を第2のクライアント端末上に構築するステップと、
前記第2のクライアント端末が、前記中継装置に対して、データ送信の再開を通知するステップと、
前記中継装置が、前記第2のクライアント端末と前記サーバとの間の通信を再開するステップと
を備えることを特徴とするサーバ-クライアントシステムにおけるクライアント端末切り替え方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−140712(P2007−140712A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330896(P2005−330896)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】