説明

サービス連絡システムおよび端末装置

【課題】サービスの利用者や事業者にかかる費用負担を抑えつつ、利用者の要求に応えるサービス連絡システムを実現する。
【解決手段】サービス連絡システムは、家庭用端末装置1と、端末装置1からの緊急通報を受けるセンター装置2と、端末装置1からのサービス要求を受けるセンター装置3とを備える。端末装置1は、入力手段であるボタン11−1〜11−4と、各ボタンに対応する呼出先情報を記憶する記憶部15と、利用者から緊急通報の指示があったときにセンター装置2を呼び出し、利用者からサービス要求の指示があったときにセンター装置3を呼び出す制御部14とを有する。センター装置2,3は、利用者の情報を記憶する記憶部25,35と、端末装置1からの呼び出しがあったときに利用者を識別し、利用者の情報を記憶部25,35から読み出して表示する制御部24,34とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者からのサービス要求を受けてサービスを提供するサービス連絡システムに係り、特に既存の緊急通報システムを活用して利用者の要求に応えるサービス連絡システム、およびこのサービス連絡システムで使用する端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、高齢者や要介護者等が何らかの緊急事態に陥った際に、人を呼ぶための緊急通報システムが普及している(例えば非特許文献1、非特許文献2参照)。この緊急通報システムは、高齢者や要介護者が宅内に設置された家庭用端末装置の緊急ボタンを押下すると、通報システム運営事業者のセンター装置が必要に応じて協力員や消防本部、医療機関等への連絡を行い、協力員や救急車、消防車等の派遣を行うようにしたものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「ER−50e おとなりさんシステム」,日本電気株式会社,日本アビオニクス株式会社,緊急通報システムカタログ
【非特許文献2】「ER−50Ae おとなりさんシステム」,日本アビオニクス株式会社,<http://www.avio.co.jp/products/vicinity/index.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1、非特許文献2に開示された緊急通報システムによれば、高齢者や要介護者は緊急通報を簡単かつ確実に行うことができるとしている。
しかしながら、高齢者や要介護者が例えばタクシーを配車してもらいたい場合や必要な商品を配達してもらいたい場合があっても、従来の緊急通報システムではこのような場合に対応できないという問題点があった。従来、高齢者や要介護者はタクシー事業者やコンビニエンス事業者等のサービス事業者の電話番号を調べて事業者に直接電話するか、あるいはこれらのサービス事業者側から高齢者宅や要介護者宅を訪問して要件を聞く必要があった。
また、高齢者や要介護者の要望をサービス事業者に伝える新たなシステムを導入すると、初期投資、維持管理費がかかり、サービスの利用者および事業者に新たな費用負担が発生するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、サービスの利用者や事業者にかかる費用負担を抑えつつ、利用者の要求に応えるサービス連絡システムおよび端末装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のサービス連絡システムは、緊急通報またはサービス要求をしたい利用者が使用する端末装置と、この端末装置と公衆回線網を介して接続され、前記端末装置からの緊急通報を受ける第1のセンター装置と、前記端末装置と公衆回線網を介して接続され、前記端末装置からのサービス要求を受ける第2のセンター装置とを備え、前記端末装置は、利用者から緊急通報の指示またはサービス要求の指示を受ける入力手段と、利用者からの緊急通報の指示、サービス要求の指示の各々に対応する呼出先情報を予め記憶する第1の記憶手段と、利用者から緊急通報の指示があったときに、緊急通報に対応する呼出先情報を前記第1の記憶手段から読み出して、この呼出先情報に基づいて前記第1のセンター装置を呼び出し、利用者からサービス要求の指示があったときに、サービス要求に対応する呼出先情報を前記第1の記憶手段から読み出して、この呼出先情報に基づいて前記第2のセンター装置を呼び出す呼出手段とを有し、前記第1、第2のセンター装置は、それぞれ、利用者の情報を予め記憶する第2の記憶手段と、前記端末装置からの呼び出しがあったときに、この端末装置の識別情報に基づいて利用者を識別する利用者識別手段と、識別した利用者の情報を前記第2の記憶手段から読み出して表示する利用者情報表示手段とを有することを特徴とするものである。
また、本発明のサービス連絡システムの1構成例において、さらに、前記端末装置は、利用者から緊急通報の指示またはサービス要求の指示があったときに、この指示に対応する通信データが前記第1の記憶手段に予め登録されている場合に、この通信データを前記第1の記憶手段から読み出して呼出先の前記第1または第2のセンター装置に送信するデータ送信手段を有し、前記第1、第2のセンター装置は、前記端末装置から通信データを受信したときに、この通信データに応じた処理を行うデータ処理手段を有することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明は、緊急通報またはサービス要求をしたい利用者が使用する端末装置と、この端末装置と公衆回線網を介して接続され、前記端末装置からの緊急通報を受ける第1のセンター装置と、前記端末装置と公衆回線網を介して接続され、前記端末装置からのサービス要求を受ける第2のセンター装置とからなるサービス連絡システムの前記端末装置であって、利用者から緊急通報の指示またはサービス要求の指示を受ける入力手段と、利用者からの緊急通報の指示、サービス要求の指示の各々に対応する呼出先情報を予め記憶する記憶手段と、利用者から緊急通報の指示があったときに、緊急通報に対応する呼出先情報を前記記憶手段から読み出して、この呼出先情報に基づいて前記第1のセンター装置を呼び出し、利用者からサービス要求の指示があったときに、サービス要求に対応する呼出先情報を前記記憶手段から読み出して、この呼出先情報に基づいて前記第2のセンター装置を呼び出す呼出手段とを有することを特徴とするものである。
また、本発明の端末装置の1構成例は、さらに、利用者から緊急通報の指示またはサービス要求の指示があったときに、この指示に対応する通信データが前記記憶手段に予め登録されている場合に、この通信データを前記記憶手段から読み出して呼出先の前記第1または第2のセンター装置に送信するデータ送信手段を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、既存の緊急通報システムの設備を活用して、システムを構築することができるので、サービスの利用者や事業者にかかる費用負担を抑えつつ、利用者の要求に応えるサービス連絡システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係るサービス連絡システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るサービス連絡システムの家庭用端末装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係るサービス連絡システムのセンター装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係るサービス連絡システムの構成を示すブロック図である。
本実施の形態のサービス連絡システムは、高齢者や要介護者等のサービス利用者の宅内に設置される家庭用端末装置1と、従来の緊急通報システムの運営事業者が運営するセンター装置2と、タクシー事業者やコンビニエンス事業者等のサービス事業者が運営するセンター装置3と、家庭用端末装置1とセンター装置2,3とを接続する公衆回線網4とから構成される。
【0011】
家庭用端末装置1は、公衆回線網4と接続される送受信部10と、サービス利用者が緊急通報を行うための緊急ボタン11−1と、サービス利用者が協力員に相談するための相談ボタン11−2と、サービス利用者が必要な商品をコンビニエンス事業者に配達してもらうためのコンビニボタン11−3と、サービス利用者がタクシーを配車してもらうためのタクシーボタン11−4と、音声を出力するスピーカ12と、音声を収音するマイク13と、家庭用端末装置全体を制御する制御部14と、制御部14のプログラムおよび各ボタンに対応する呼出先情報(電話番号)等を記憶する記憶部15とを有する。ボタン11−1〜11−4は、利用者からの指示を受ける入力手段を構成している。送受信部10および制御部14は、センター装置2,3を呼び出す呼出手段と、通信データをセンター装置2,3に送信するデータ送信手段とを構成している。
【0012】
緊急通報システムの運営事業者が運営するセンター装置2は、公衆回線網4と接続される送受信部20と、運営事業者の係員がサービス利用者、協力員、消防本部あるいは医療機関等と通話するための電話機21と、係員に対して情報を表示する表示部22と、係員がセンター装置2に対して指示を与えるための操作部23と、センター装置全体を制御する制御部24と、制御部24のプログラムおよびサービス利用者の情報等を記憶する記憶部25とを有する。
【0013】
サービス事業者が運営するセンター装置3は、公衆回線網4と接続される送受信部30と、サービス事業者の係員がサービス利用者等と通話するための電話機31と、係員に対して情報を表示する表示部32と、係員がセンター装置3に対して指示を与えるための操作部33と、センター装置全体を制御する制御部34と、制御部34のプログラムおよびサービス利用者の情報等を記憶する記憶部35とを有する。制御部24,34は、家庭用端末装置1の識別情報(電話番号)に基づいて利用者を識別する利用者識別手段と、利用者の情報を表示する利用者情報表示手段と、家庭用端末装置1から受信した通信データに応じた処理を行うデータ処理手段とを構成している。
【0014】
図1に示したサービス連絡システムにおいて、家庭用端末装置1のうち送受信部10と緊急ボタン11−1と相談ボタン11−2とスピーカ12とマイク13と制御部14と記憶部15の構成と、センター装置2と、公衆回線網4とは、従来の緊急通報システムと同様の構成である。
【0015】
以下、本実施の形態のサービス連絡システムの動作について説明する。まず、従来の緊急通報システムと同様の機能、すなわちサービス利用者が緊急通報を行いたい場合、あるいは協力員に相談したい場合の動作について簡単に説明する。図2は家庭用端末装置1の動作を示すフローチャート、図3はセンター装置2,3の動作を示すフローチャートである。
【0016】
サービス利用者は、何らかの緊急事態に陥った場合、家庭用端末装置1の緊急ボタン11−1を押下し、協力員に相談したい場合、相談ボタン11−2を押下する。
家庭用端末装置1の制御部14は、緊急ボタン11−1または相談ボタン11−2が押下されたことを検出すると(図2ステップS100,S102においてYES)、記憶部15に予め登録された、ボタン11−1,11−2に対応する電話番号を読み出し、この電話番号を送受信部10に通知する(ステップS101,S103)。ここでは、緊急ボタン11−1または相談ボタン11−2に対応する電話番号として、緊急通報システムの運営事業者が運営するセンター装置2の電話番号が記憶部15に予め登録されている。
【0017】
送受信部10は、制御部14から受け取った電話番号をDTMF(Dual Tone Multi Frequency)信号に変換して公衆回線網4に送出する。これにより、センター装置2の呼び出しが行われる(ステップS108)。
センター装置2の送受信部20は、家庭用端末装置1からの呼び出しがあると(図3ステップS200においてYES)、この呼び出しに応答する(ステップS201)。送受信部20が家庭用端末装置1からの呼び出しに応答すると、家庭用端末装置1の送受信部10とセンター装置2の送受信部20とが公衆回線網4を介して接続される(図2ステップS109においてYES)。
【0018】
回線が接続された後、家庭用端末装置1の制御部14は、記憶部15に予め登録された、ボタン11−1,11−2に対応する通信データを読み出し、この通信データを送受信部10に渡す(ステップS110,S111)。送受信部10は、制御部14から受け取った通信データをDTMF信号に変換して公衆回線網4に送出する。こうして、通信データがセンター装置2に送信される(ステップS112)。ここでは、緊急ボタン11−1に対応する通信データとして、例えば緊急事態の発生を示す緊急通報データが記憶部15に予め登録されており、相談ボタン11−2に対応する通信データとして、相談を希望していることを示す相談通報データが記憶部15に予め登録されているものとする。したがって、緊急ボタン11−1が押下された場合には緊急通報データが送信され、相談ボタン11−2が押下された場合には相談通報データが送信される。
【0019】
一方、センター装置2の制御部24は、家庭用端末装置1との回線が接続されると、送受信部20から家庭用端末装置1の電話番号を取得し(図3ステップS202)、この電話番号に対応するサービス利用者の情報を記憶部25から取得して表示部22に表示させる(ステップS203)。電話番号の取得は、ナンバー・ディスプレイ(登録商標)の機能で実現することができる。記憶部25には、サービス利用者の情報として、電話番号、利用者名、年齢、性別、生年月日、住所、利用者宅の地図、緊急連絡先の電話番号、過去のサービス履歴、協力員の電話番号等が予め登録されている。
【0020】
また、制御部24は、家庭用端末装置1から通信データを受信し(ステップS204においてYES)、この通信データが緊急通報データである場合には、サービス利用者に緊急事態が発生したことを示すメッセージを表示部22に表示させ、通信データが相談通報データである場合には、サービス利用者が相談を希望していることを示すメッセージを表示部22に表示させる(ステップS205)。
【0021】
通報システム運営事業者の係員は、表示部22に表示された内容を見て、サービス利用者の状況を確認する。また、係員は、必要に応じて電話機21を使ってサービス利用者と通話を行い、サービス利用者の状況を確認することも可能である。サービス利用者の状況を確認した係員は、家庭用端末装置1との回線を切断し(ステップS206,S113においてYES)、サービス利用者の緊急事態であれば、電話機21を使って消防本部あるいは医療機関等に電話連絡を行う。また、係員は、サービス利用者が相談を希望している場合には、予め登録されている協力員に電話連絡を行う。
【0022】
また、センター装置2の制御部24は、緊急通報データを受信した場合に送受信部20を介して消防本部や医療機関等の関係機関に自動的に電話をかけたり、相談通報データを受信した場合に送受信部20を介して協力員に自動的に電話をかけたりすることも可能である。以上の機能は、従来の緊急通報システムによって実現されているものと同様の機能である。
【0023】
次に、本実施の形態のサービス連絡システムで新たに追加された構成とその機能について説明する。
サービス利用者は、例えば何らかの商品を配達してもらいたい場合、家庭用端末装置1のコンビニボタン11−3を押下する。
【0024】
家庭用端末装置1の制御部14は、コンビニボタン11−3が押下されたことを検出すると(図2ステップS104においてYES)、記憶部15に予め登録された、コンビニボタン11−3に対応する電話番号を読み出し、この電話番号を送受信部10に通知する(ステップS105)。ここでは、コンビニボタン11−3に対応する電話番号として、コンビニエンス事業者が運営するセンター装置3の電話番号が記憶部15に予め登録されている。
【0025】
送受信部10は、制御部14から受け取った電話番号をDTMF信号に変換して公衆回線網4に送出する。これにより、センター装置3の呼び出しが行われる(ステップS108)。
センター装置3の送受信部30は、家庭用端末装置1からの呼び出しがあると(図3ステップS200においてYES)、この呼び出しに応答する(ステップS201)。送受信部30が家庭用端末装置1からの呼び出しに応答すると、家庭用端末装置1の送受信部10とセンター装置3の送受信部30とが公衆回線網4を介して接続される(図2ステップS109においてYES)。
【0026】
回線が接続された後、家庭用端末装置1の制御部14は、記憶部15に予め登録された、コンビニボタン11−3に対応する通信データを読み出し、この通信データを送受信部10に渡す(ステップS110,S111)。送受信部10は、制御部14から受け取った通信データをDTMF信号に変換して公衆回線網4に送出する。こうして、通信データがセンター装置3に送信される(ステップS112)。ここでは、コンビニボタン11−3に対応する通信データとして、例えばサービス利用者が商品の配達を希望していることを示す配達希望データが記憶部15に予め登録されているものとする。
【0027】
センター装置3の制御部34は、家庭用端末装置1との回線が接続されると、送受信部30から家庭用端末装置1の電話番号を取得し(図3ステップS202)、この電話番号に対応するサービス利用者の情報を記憶部35から取得して表示部32に表示させる(ステップS203)。記憶部35には、サービス利用者の情報として、電話番号、利用者名、年齢、性別、生年月日、住所、利用者宅の地図、緊急連絡先の電話番号、過去のサービス履歴等が予め登録されている。このサービス利用者の情報は、通報システム運営事業者から予め提供されるものである。
【0028】
また、制御部34は、家庭用端末装置1から通信データを受信し(ステップS204においてYES)、この通信データが配達希望データである場合には、サービス利用者が商品の配達を希望していることを示すメッセージを表示部32に表示させる(ステップS205)。
【0029】
コンビニエンス事業者の係員は、表示部32に表示された内容を見て、電話機31を使ってサービス利用者と通話を行う。従来の電話機と同様の機能を備える送受信部10は、公衆回線網4を介してセンター装置3の電話機31から受信した音声信号をスピーカ12から出力させる。また、送受信部10は、マイク13で収音したサービス利用者の音声信号を公衆回線網4を介してセンター装置3の電話機31に送る。こうして、サービス利用者は、家庭用端末装置1を使って係員と通話することができ、配達を希望する商品を係員に伝えることができる。
【0030】
なお、発声が不自由なサービス利用者のために、必要な商品のデータを家庭用端末装置1の記憶部15に予め登録しておき、制御部14が配達希望データと同様に商品のデータをセンター装置3に自動的に送信するようにしてもよい。これにより、係員は、サービス利用者と通話することなく、サービス利用者が希望する商品を知ることができる。したがって、家庭用端末装置1に複数のコンビニボタン11−3を配置しておき、ボタン毎に異なる商品のデータを予め登録しておけば、サービス利用者は必要に応じて商品を選択することもできる。
【0031】
サービス利用者の希望を確認した係員は、家庭用端末装置1との回線を切断し(ステップS206,S113においてYES)、表示部32に表示されたサービス利用者の情報に基づいて、利用者宅に近い配送センターに連絡をとり、商品の配達の手配を行う。このとき、係員は、コンビニエンス事業者が整備済みの配達サービスシステムを利用して、サービス利用者名、住所、電話番号、配達する商品、配達希望日時等の必要な情報を配送センターに伝えるようにすればよい。こうして、連絡を受けた配送センターの社員は、サービス利用者が希望した商品を利用者宅に配達する。
【0032】
ここまでサービス利用者が家庭用端末装置1のコンビニボタン11−3を押下した場合の動作について説明したが、サービス利用者がタクシーボタン11−4を押下した場合には以下のようになる。
家庭用端末装置1の制御部14は、タクシーボタン11−4が押下されたことを検出すると(図2ステップS106においてYES)、記憶部15に予め登録された、タクシーボタン11−4に対応する電話番号を読み出し、この電話番号を送受信部10に通知する(ステップS107)。ここでは、タクシーボタン11−4に対応する電話番号として、タクシー事業者が運営するセンター装置3の電話番号が記憶部15に予め登録されている。
【0033】
回線の接続は、コンビニボタン11−3が押下された場合と同じである。回線が接続された後、家庭用端末装置1の制御部14は、記憶部15に予め登録された、タクシーボタン11−4に対応する通信データを読み出し、この通信データを送受信部10に渡す(ステップS110,S111)。送受信部10は、制御部14から受け取った通信データをDTMF信号に変換して公衆回線網4に送出する(ステップS112)。ここでは、タクシーボタン11−4に対応する通信データとして、例えばサービス利用者がタクシーの配車を希望していることを示す配車希望データが記憶部15に予め登録されているものとする。
【0034】
センター装置3の制御部34は、家庭用端末装置1との回線が接続されると、送受信部30から家庭用端末装置1の電話番号を取得し(図3ステップS202)、この電話番号に対応するサービス利用者の情報を記憶部35から取得して表示部32に表示させる(ステップS203)。また、制御部34は、家庭用端末装置1から通信データを受信し(ステップS204においてYES)、この通信データが配車希望データである場合には、サービス利用者がタクシーの配車を希望していることを示すメッセージを表示部32に表示させる(ステップS205)。
【0035】
タクシー事業者の係員は、表示部32に表示された内容を見て、サービス利用者がタクシーの配車を希望していることを認識する。また、係員は、必要に応じて電話機31を使ってサービス利用者と通話を行い、サービス利用者がタクシーの配車を希望していることを確認してもよい。
【0036】
サービス利用者の希望を確認した係員は、家庭用端末装置1との回線を切断し(ステップS206,S113においてYES)、表示部32に表示されたサービス利用者の情報に基づいて、利用者宅へのタクシーの配車の手配を行う。このとき、係員は、例えばタクシー事業者が整備済みのタクシー無線を利用して、サービス利用者名、住所、配車希望時刻等の必要な情報をタクシーの運転手に伝えるようにすればよい。こうして、連絡を受けた運転手は、利用者宅に向かう。
【0037】
以上のように、本実施の形態では、既存の緊急通報システムの設備を活用して、サービス利用者のサービス要求に応えるサービス連絡システムを実現することができる。
通報システム運営事業者は、既存の家庭用端末装置を交換するか、家庭用端末装置にオプションの部品を追加することで、サービス連絡システム用の家庭用端末装置1を実現することができる。タクシー事業者やコンビニエンス事業者等のサービス事業者は、センター装置2と同様の構成のセンター装置3と導入するか、あるいはサービス事業者が整備済みの装置にセンター装置3のプログラムを組み込むようにすればよい。
【0038】
従来、サービス事業者は、サービスの対象者に対する宣伝と、宣伝を見た利用者からの反応によりサービスを提供していたため、宣伝による対象者の絞込みが難しかった。しかし、高齢者や要介護者を利用者とする緊急通報システムを活用すれば、対象者の絞込みを行うことができる。
【0039】
従来、サービス利用者はサービス事業者の電話番号を調べて事業者に直接電話するか、あるいはこれらのサービス事業者側から利用者宅を訪問して要件を聞く必要があったが、本実施の形態によれば、サービス利用者はコンビニボタンやタクシーボタン等の専用ボタンを押すだけで簡単にサービスの要求を行うことができる。
サービス事業者にとっては、従来の方法では自社のサービスが選択されるかどうかは利用者に委ねられており、また場合によっては利用者宅を訪問して要件を聞く必要があったため、収益性が悪いという問題があった。しかし、本実施の形態では、専用ボタンに対応するサービス事業者が優先的に利用されこととなるので、サービスの固定客を獲得することができ、収益性を改善することができる。
【0040】
また、サービス事業者が独自にサービス連絡システムを構築しようとすると、初期投資並びに維持管理費をサービス事業者が賄う必要があり、採算性の点で問題がある。これに対して、本実施の形態では、既存の緊急通報システムの設備を活用できるので、初期投資並びに維持管理費を通報システム運営事業者等の他の事業者と共同で負担することになり、少ない投資でシステムの構築が行えると共に、効率的にサービス利用者を集めることができる。
【0041】
通報システム運営事業者にとっては、従来の緊急通報、介護通報のサービスのみでは市場が限られているため、価格競争の激化に伴って採算性が圧迫されている。これに対し、本実施の形態では、通報システム運営事業者は、サービス連絡システムの利用料金をサービス事業者やサービス利用者から徴収することができるので、本来の緊急通報、介護通報のサービスの利用料金を低減することができ、緊急通報、介護通報のサービス利用者を増やすことができる。
【0042】
サービス利用者は、専用ボタンを押すだけで簡単にサービスの要求を行うことができるので、利便性が増すと共に、サービスを提供する相手が固定されるため、安心してサービスを利用することができる。したがって、サービスの利用頻度が上がることで、サービス事業者にとっては収益性が改善される。
【0043】
また、本実施の形態では、サービス連絡システムを導入した時点で、通報システム運営事業者からサービス事業者にサービス利用者の情報が提供され、この情報がサービス事業者のセンター装置に登録される。したがって、サービス事業者は、サービス利用者がサービスを要求したときに、サービス利用者の情報を即座に入手することができるので、サービス利用者に対して細かなサービスを提供することができ、サービスの品質を向上させることができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、サービス事業者の例として、タクシー事業者やコンビニエンス事業者を例に挙げて説明したが、これに限らないことは言うまでもない。
また、本実施の形態の家庭用端末装置1の制御部14および記憶部15、センター装置2の制御部24および記憶部25、センター装置3の制御部34および記憶部35の各々は、それぞれCPU、記憶装置および外部とのインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。各装置のCPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、利用者からのサービス要求を受けてサービスを提供するサービス連絡システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…家庭用端末装置、2,3…センター装置、4…公衆回線網、10,20,30…送受信部、11−1…緊急ボタン、11−2…相談ボタン、11−3…コンビニボタン、11−4…タクシーボタン、12…スピーカ、13…マイク、14,24,34…制御部、15,25,35…記憶部、21,31…電話機、22,32…表示部、23,33…操作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急通報またはサービス要求をしたい利用者が使用する端末装置と、
この端末装置と公衆回線網を介して接続され、前記端末装置からの緊急通報を受ける第1のセンター装置と、
前記端末装置と公衆回線網を介して接続され、前記端末装置からのサービス要求を受ける第2のセンター装置とを備え、
前記端末装置は、
利用者から緊急通報の指示またはサービス要求の指示を受ける入力手段と、
利用者からの緊急通報の指示、サービス要求の指示の各々に対応する呼出先情報を予め記憶する第1の記憶手段と、
利用者から緊急通報の指示があったときに、緊急通報に対応する呼出先情報を前記第1の記憶手段から読み出して、この呼出先情報に基づいて前記第1のセンター装置を呼び出し、利用者からサービス要求の指示があったときに、サービス要求に対応する呼出先情報を前記第1の記憶手段から読み出して、この呼出先情報に基づいて前記第2のセンター装置を呼び出す呼出手段とを有し、
前記第1、第2のセンター装置は、
それぞれ、利用者の情報を予め記憶する第2の記憶手段と、
前記端末装置からの呼び出しがあったときに、この端末装置の識別情報に基づいて利用者を識別する利用者識別手段と、
識別した利用者の情報を前記第2の記憶手段から読み出して表示する利用者情報表示手段とを有することを特徴とするサービス連絡システム。
【請求項2】
請求項1記載のサービス連絡システムにおいて、
さらに、前記端末装置は、利用者から緊急通報の指示またはサービス要求の指示があったときに、この指示に対応する通信データが前記第1の記憶手段に予め登録されている場合に、この通信データを前記第1の記憶手段から読み出して呼出先の前記第1または第2のセンター装置に送信するデータ送信手段を有し、
前記第1、第2のセンター装置は、前記端末装置から通信データを受信したときに、この通信データに応じた処理を行うデータ処理手段を有することを特徴とするサービス連絡システム。
【請求項3】
緊急通報またはサービス要求をしたい利用者が使用する端末装置と、この端末装置と公衆回線網を介して接続され、前記端末装置からの緊急通報を受ける第1のセンター装置と、前記端末装置と公衆回線網を介して接続され、前記端末装置からのサービス要求を受ける第2のセンター装置とからなるサービス連絡システムの前記端末装置であって、
利用者から緊急通報の指示またはサービス要求の指示を受ける入力手段と、
利用者からの緊急通報の指示、サービス要求の指示の各々に対応する呼出先情報を予め記憶する記憶手段と、
利用者から緊急通報の指示があったときに、緊急通報に対応する呼出先情報を前記記憶手段から読み出して、この呼出先情報に基づいて前記第1のセンター装置を呼び出し、利用者からサービス要求の指示があったときに、サービス要求に対応する呼出先情報を前記記憶手段から読み出して、この呼出先情報に基づいて前記第2のセンター装置を呼び出す呼出手段とを有することを特徴とする端末装置。
【請求項4】
請求項3記載の端末装置において、
さらに、利用者から緊急通報の指示またはサービス要求の指示があったときに、この指示に対応する通信データが前記記憶手段に予め登録されている場合に、この通信データを前記記憶手段から読み出して呼出先の前記第1または第2のセンター装置に送信するデータ送信手段を有することを特徴とする端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−146765(P2011−146765A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3715(P2010−3715)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000227836)日本アビオニクス株式会社 (197)
【Fターム(参考)】