説明

サーミスタ素子の製造方法及びサーミスタ素子

【課題】 サーミスタ素子の製造方法及びサーミスタ素子において、高い寸法精度で抵抗値ばらつきを抑制することができ、クラック、切れ目又は反りを生じ難くすること。
【解決手段】 サーミスタ用金属酸化物焼結体と、該サーミスタ用金属酸化物焼結体に接続された複数のリード線と、を有するサーミスタ素子の製造方法であって、金属酸化物からなるサーミスタ原料粉末と有機バインダー粉と溶剤とを混合して混練することで坏土とする工程と、成型体用金型13によって坏土を押出成型して複数の貫通孔を有したロッド状グリーン成型体を形成する工程と、ロッド状グリーン成型体を乾燥させてロッド状乾燥成型体とする工程と、ロッド状乾燥成型体を所定長さに切断して貫通孔を有する切断成型体とする工程と、切断成型体の貫通孔にリード線を挿入してこの状態で焼成を行うことで、切断成型体をサーミスタ用金属酸化物焼結体とする工程と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車関係等の温度計測に用いられるサーミスタ素子の製造方法及びサーミスタ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、自動車エンジン周りの触媒温度や排気系温度等を測定センサには、1000℃付近の非常に高温まで測定可能なサーミスタ素子が求められる。サーミスタ素子は、一般的に、金属酸化物焼結体(例えば、ペロブスカイト型Y(Cr,Mn)O)とPt線とからなるものが利用される。室温と1000℃との間のヒートサイクルに耐えられるためには、素子の形状が金属酸化物焼結体中に2本のPt線が挿入されたものであって、そのPt線が金属酸化物の焼結によって強固に固定されなければならない。
【0003】
それゆえ、Pt線は、金属酸化物の焼結前に挿入する必要があり、金属酸化物とPt線とを同時に焼成する必要がある。なお、1000℃での耐熱性が求められるので、金属酸化物は1400℃以上の焼結温度をもつものが望まれ、それゆえ、電極には1400℃以上でも安定なPt線が使用される。
従来、Pt線を埋め込んだ高温サーミスタの製造方法として、例えば特許文献1に記載されているように、金属線をセラミックス造粒粉と同時にプレスする粉末プレス法が用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4024612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
サーミスタ素子を使うにあたって、温度検出誤差を抑えるためには、抵抗値のばらつきを抑えることが必須であるが、このばらつきの主要因としては、素子(焼結体)と電極(Pt線)との接触面積及び電極(Pt線)間の長さのばらつきが挙げられる。特に、前者の接触面積のばらつき、つまり造粒粉の量のばらつきに抵抗値ばらつきが強く依存する。
近年、センサの応答性の要求から、サーミスタ素子の小型化が要請されており、例えば素子(焼結体)の大きさで、2mm径×1mm厚さ程度であって、その際に使用する造粒粉の量は数mgとされる。この場合、一定量の粉末を計量により金型に充填する方法では、微小量の計量となるため、高精度で効率よく計量するのが難しい。例えば、造粒粉の量が10mgの場合、抵抗値ばらつきを1%に抑えるためには、0.1mgの秤量精度が必要であるが、天秤を用いて高精度で効率よく計量し、さらに、その計量した粉を、例えば2mm径の穴の開いた金型にこぼすことなく、効率よく入れることは、大変困難である。
また、金型に粉を入れた状態ですり切りにより一定量とする方法では、粉末の充填状態のばらつきにより粉末の量が変化し、プレス後の厚みが変化してしまう不都合があった。
【0006】
また、金型プレスから抜き出す際に、金属線が金型に引っかかることで金属線に力が加わり、グリーン成型体にクラック等の欠陥が生じるおそれがあった。外観検査でクラックを検出できない場合でも、焼成後にクラックが生じる場合がある。
さらに、粉末の金型への充填が十分でない場合には、プレス時にPt線の変形が起き、プレス金型のPt線挿入部へ粉末が入りこみ(ばりの発生)、抵抗値ばらつきの原因となる問題があった。
【0007】
また、粉末プレス法で作製されたサーミスタ素子は、図6に示すように、焼結体1の外周が湾曲して大きな反りが生じてしまうと共に、Pt線であるリード線2の挿入口に切れ目1aが生じる場合があった。この切れ目1aの大小も抵抗値ばらつきの原因となる。
すなわち、粉末とリード線2とを同時にプレスするため、粉末とリード線2とが密着しており、焼結時にリード線接合部のサーミスタ粉末の収縮が抑えられて、焼結体1に大きな反りが生じる場合があった。
また、リード線2の挿入口近傍では、リード線2とプレス用金型との間に取り出しのためのクリアランスが存在するため、リード線2の挿入口近傍には圧力が十分にかからない。そのため、このまま焼結させると、リード線2の挿入口近傍に切れ目1aが生じてしまい、この切れ目1aが上記反りを助長していると考えられる。
このように、初期状態で焼結体1の反りと挿入口の切れ目1aとがあると、焼結体1とリード線2との熱膨張差があるため、ヒートサイクル(室温と1000℃との間で100回以上)により焼結体1とリード線2との間の接合の破壊が進んでクラックが大きくなり、抵抗値が大きくなってしまうことから、信頼性不十分の要因となる不都合があった。
【0008】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、高い寸法精度で抵抗値ばらつきを抑制することができると共に、クラック、切れ目又は反りが生じ難いサーミスタ素子の製造方法及びサーミスタ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明のサーミスタ素子の製造方法は、サーミスタ用金属酸化物焼結体と、該サーミスタ用金属酸化物焼結体に接続された複数のリード線と、を有するサーミスタ素子の製造方法であって、金属酸化物からなるサーミスタ原料粉末と有機バインダー粉と溶剤とを混合して混練することで坏土とする工程と、成型体用金型によって前記坏土を押出成型して複数の貫通孔を有したロッド状グリーン成型体を形成する工程と、前記ロッド状グリーン成型体を乾燥させてロッド状乾燥成型体とする工程と、前記ロッド状乾燥成型体を所定長さに切断して貫通孔を有する切断成型体とする工程と、前記切断成型体の前記貫通孔に前記リード線を挿入してこの状態で焼成を行うことで、前記切断成型体を前記サーミスタ用金属酸化物焼結体とする工程と、を有していることを特徴とする。
【0010】
このサーミスタ素子の製造方法では、サーミスタ原料粉末と有機バインダー粉と溶剤とを混練した坏土を成型体用金型によって押出成型してロッド状グリーン成型体を形成し、これを切断した切断成型体の貫通孔にリード線を挿入して焼成を行うので、切断成型体とリード線との間に焼結時のサーミスタ収縮分を考慮したクリアランスを設けることができると共に貫通孔の内径が一定であるため、焼結途中で切断成型体とリード線とが接合されて、リード線接合部近傍におけるサーミスタ収縮による違いがほとんど無い。このため、焼成後に反りが生じ難いと共に、サーミスタ用金属酸化物焼結体とリード線とを均一かつ強固に接合することができ、ヒートサイクルに強い高温サーミスタ素子を作製することができる。
また、切断長を調整することにより高精度な寸法で同一形状が得られるので、寸法ばらつきによる抵抗値ばらつきを抑えて、効率よく作製することができる。
【0011】
また、本発明のサーミスタ素子の製造方法は、前記有機バインダー粉が、水溶性有機バインダー粉であり、前記溶剤が、水であることを特徴とする。
すなわち、このサーミスタ素子の製造方法では、有機バインダー粉が、水溶性有機バインダー粉であるので、上記乾燥の工程で、サーミスタ原料粉末と水溶性有機バインダー粉と水とを混練した坏土が、サーミスタ原料粉末と水に対して不溶性の有機バインダー粉とエタノール、トルエン等の有機溶剤とを混練した坏土に比べて、ゆっくり乾燥されるため、クラックが入りにくい。
【0012】
また、本発明のサーミスタ素子の製造方法は、水溶性有機バインダー粉として、メチルセルロース系の水溶性有機バインダー粉を使用することを特徴とする。
すなわち、このサーミスタ素子の製造方法では、水溶性有機バインダー粉として、金属酸化物との相性が良いメチルセルロース系バインダーを使用するので、サーミスタ原料粉末と良く混練された坏土が得られ、押出成型によって良好なロッド状グリーン成型体を得ることができる。
【0013】
また、本発明のサーミスタ素子の製造方法は、前記有機バインダー粉に、可塑剤、潤滑剤、湿潤材又はワックスの少なくとも1種を加えることを特徴とする。
押出成型の際、粉末間の摩擦が多い、若しくは粉末と水等の溶剤との濡れ性が無いと、押出表面が滑らかにならず、表面欠陥が増えたり、坏土の結合性が乏しくなるため、クラックが生じやすくなるが、本発明のサーミスタ素子の製造方法では、有機バインダー粉に、可塑剤、潤滑剤、湿潤材又はワックスの少なくとも1種を加えるので、粉末と水等の溶剤との濡れ性を向上させることができ、良好な押出成型が可能になる。
【0014】
また、本発明のサーミスタ素子の製造方法は、前記乾燥が、自然乾燥であることが好ましい。
ロッド状グリーン成型体を、ヒーターを用いて熱風乾燥させると、水分乾燥のむらが生じやすいため、複数の貫通孔間にクラックが入りやすいと共に、ロッド状グリーン成型体に大きな反りが生じやすく、この反りによるクラックも生じやすくなる。また、この反りは、その後切断する際の成型体固定の障害ともなる。しかしながら、本発明のサーミスタ素子の製造方法では、自然乾燥でロッド状グリーン成型体を乾燥させてロッド状乾燥成型体とするので、水分乾燥のむらが生じにくく、クラックや反りの発生も抑制される。なお、ここで自然乾燥とは、室温で乾燥にゆっくり時間(乾燥に十分な時間)をかけて乾燥させる意味である。より好ましくは、一定温度、一定湿度で乾燥させることが良い。
【0015】
また、本発明のサーミスタ素子の製造方法は、前記ロッド状乾燥成型体の外周面に平坦面を1箇所以上形成することを特徴とする。
すなわち、このサーミスタ素子の製造方法では、ロッド状乾燥成型体の外周面に平坦面を1箇所以上形成するので、その後の切断時に平坦面によりロッド状乾燥成型体の位置決めがしやすくなる。
【0016】
また、本発明のサーミスタ素子の製造方法は、前記切断成型体の貫通孔の径が、前記リード線の径よりも大きく、かつ前記リード線を前記貫通孔に挿入せずに前記焼成を行った場合に前記リード線の径より小さくなるように設定されていることを特徴とする。
すなわち、このサーミスタ素子の製造方法では、切断成型体の貫通孔の径が、リード線の径よりも大きく、かつリード線を貫通孔に挿入せずに焼成を行った場合にリード線の径より小さくなるように設定されているので、焼成前にリード線を容易に貫通孔に挿入できると共に焼成の際に貫通孔の収縮によってリード線を強固に接合させることができる。
【0017】
また、本発明のサーミスタ素子の製造方法は、前記焼成の前であって、前記切断成型体の貫通孔に前記リード線を挿入する前又は後に、前記貫通孔から突出する前記リード線の少なくとも一方に前記貫通孔の径よりも大きく半径方向外方に膨出した係止部を形成しておくことを特徴とする。
すなわち、このサーミスタ素子の製造方法では、貫通孔から突出するリード線の少なくとも一方に貫通孔の径よりも大きく半径方向外方に膨出した係止部をかしめ等の加工によって形成しておくので、係止部を上側にしてリード線が挿入された状態の切断成型体を掴んで持ち上げた際に、係止部でリード線が係止されることで、リード線が抜けることを防止できる。また、係止部によってリード線の突出量を一定にして位置決めをすることができ、焼成時に突出量のばらつきを抑制することが可能になる。これにより、サーミスタ素子をセンサに組み込む際に、電気短絡の発生を防ぐことができると共に、センサ内SUS線と溶接する際に、溶接位置が変わることによる溶接条件変化の発生を防ぐことができる。なお、リード線として柔らかいPt線を採用することで、上記係止部を形成するためのかしめ等の加工がしやすい。
【0018】
さらに、本発明のサーミスタ素子の製造方法は、前記焼成の際に、前記貫通孔に前記リード線を挿入した状態で前記切断成型体をセッターに設置する工程を有し、該工程において、前記セッターに形成された焼成後の前記サーミスタ用金属酸化物焼結体の外径よりも小さく、かつ、前記リード線の径より大きい径又は幅の設置孔又は設置溝に、前記係止部を上側にして前記リード線の下側を差し込んだ状態で、前記切断成型体を前記セッター上に設置することを特徴とする。
焼成後にリード線の突出量を一定にするためにリード線を切断加工することは、リード線のロスがあると共に工程の増加を招くことから、焼成時において、リード線の位置を一定にして固定することが重要である。例えば、リード線を横にしてセッターにリード線と切断成型体とを固定できる溝を掘っておくことで、リード線の突出量を一定に調整可能である。しかしながら、焼成を繰り返すとセッターの反りが発生するために、常に同じ突出量で焼成できるとは限らない。この対策として、本発明のサーミスタ素子の製造方法では、セッターに形成された焼成後のサーミスタ用金属酸化物焼結体の外径よりも小さく、かつ、リード線の径より大きい径又は幅の設置孔又は設置溝に、係止部を上側にしてリード線の下側を差し込んだ状態で、切断成型体をセッター上に設置するので、リード線が設置孔又は設置溝の中で宙吊り状態となることで、セッターの反り等に関係なく、リード線の突出量を一定に揃えて焼成することができる。これにより、焼成後にリード線の突出量を調整する加工が不要になると共に、長さを揃えるために切断するリード線のロスが少なくて済む。
【0019】
本発明のサーミスタ素子は、上記本発明のサーミスタ素子の製造方法により作製されたことを特徴とする。すなわち、このサーミスタ素子では、上記本発明のサーミスタ素子の製造方法により作製されているので、クラック、切れ目又は反りの発生が抑制されて高い信頼性を有していると共に、高い寸法精度で同一形状が得られ、抵抗値ばらつきが少なく特性の均一性が高い素子が得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るサーミスタ素子の製造方法によれば、サーミスタ原料粉末と有機バインダー粉と溶剤とを混練した坏土を成型体用金型によって押出成型してロッド状グリーン成型体を形成し、これを切断した切断成型体の貫通孔にリード線を挿入して焼成を行うので、焼成後に反りが生じ難いと共に、サーミスタ用金属酸化物焼結体とリード線とを均一かつ強固に接合することができ、ヒートサイクルに強い高温サーミスタ素子を作製することができる。また、切断長を調整することにより高精度な寸法で同一形状が得られるので、寸法ばらつきによる抵抗値ばらつきを抑えて、効率よく作製することができる。したがって、この製法で作製されたサーミスタ素子によれば、クラック、切れ目又は反りの発生が抑制されて高い信頼性を有していると共に、高い寸法精度で同一形状が得られ、抵抗値ばらつきが少なく特性の均一性が高い素子が得られる。特に、自動車エンジン周りの触媒温度や排気系温度を検出する高温測定用センサとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るサーミスタ素子の製造方法及びサーミスタ素子の第1実施形態において、サーミスタ素子を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態において、成型体用金型を用いた押出成型機を示す簡易的な断面図である。
【図3】第1実施形態において、ロッド状グリーン成型体を示す側面図及び正面図である。
【図4】第1実施形態において、リード線を挿入した切断成型体を示す側面図及び正面図である。
【図5】第1実施形態において、サーミスタ素子を示す断面図である。
【図6】本発明に係るサーミスタ素子の製造方法及びサーミスタ素子の従来例(粉末プレス品)において、サーミスタ素子を示す断面図である。
【図7】本発明に係るサーミスタ素子の製造方法及びサーミスタ素子の第2実施形態において、切断成型体にリード線を挿入した状態において、かしめ加工の前後を示す側面図である。
【図8】第2実施形態において、切断成型体にリード線を挿入した状態において、かしめ加工の前後を示す上面図である。
【図9】第2実施形態において、仕切りの無いセッター及び仕切りのあるセッターに、切断成型体にリード線が挿入された切断成型体を設置した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るサーミスタ素子の製造方法及びサーミスタ素子の第1実施形態を、図1から図5を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態のサーミスタ素子の製造方法は、図1に示すように、サーミスタ用金属酸化物焼結体11と、該サーミスタ用金属酸化物焼結体11に接続された一対のリード線2と、を有するサーミスタ素子10の製造方法である。
サーミスタ用金属酸化物焼結体11としては、ペロブスカイト型酸化物に絶縁体材料を混合焼結したものが使用される。例えば、一般式:1−w(La1−z1−y(Cr1−xMn)O+wY(ただし、A=Ca,Sr 0.0≦x≦1.0、0.0≦y≦1.0、0.0≦z≦1.0、0≦w≦0.9)で示される複合酸化物を含む焼結体で構成されている。
【0024】
なお、サーミスタ素子10の電気特性を示すパラメータであるB定数は、(Y1−zLa1−y(Cr1−xMn)Oのx,y,z量を変えることによって調整する。ただし、例えば、B定数が小さくなると、抵抗値も小さくなるので、形状を変えて抵抗調節できない場合は、絶縁体材料を混合焼結し、抵抗値を上げる必要がある。本実施形態では、絶縁体材料をYとするが、これを他の絶縁体材料、例えば、ZrO,MgO,Al,CeOに変更しても構わない。
【0025】
まず、Laの粉末を、1000℃、2時間にて加熱、乾燥し、残っている水酸化物を、Laに再生する。Laの原料調合は、加熱後2〜3時間以内のもの、もしくは加熱後2〜3日乾燥ボックスにて保存したものを使用する。
次に、これらLa、Y、CaCO,SrCO,Cr及びMnOの各粉末を秤量後にボールミルに入れ、Zrボールとエタノールとを適量入れて約24時間混合を行う。この混合したものを取り出して乾燥させた後、1300℃、5時間にて焼成し、例えば、上記一般式においてx=0.4,y=0,z=0.5とされた(La0.50.5)(Cr0.6Mn0.4)Oの仮焼粉を得る。
【0026】
この仮焼粉と新たにY粉末とを秤量し、焼結助剤CaCOを添加し、Zrボールとエタノールとを用いてボールミルで粉砕する。また、仮焼粉とYとCaCOとの混合時には、仮焼粉中にLaが単独で残っていなければ、純水を使用して混合粉砕しても構わない。混合時間は約24時間で、その後乾燥させ、サーミスタ原料粉末とする。
【0027】
次に、上記金属酸化物からなるサーミスタ原料粉末と有機バインダー粉と溶剤とを混合して混練することで坏土とする。
上記有機バインダー粉としては、一般に押出成型に用いられるバインダーであって、低濃度水溶液で高粘性を示すものが用いられる。特に、水溶性有機バインダー粉が好ましく、例えば、メチルセルロース系(通称MC)、エチルセルロース系(EC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等がある。また、溶剤としては、水が用いられる。
【0028】
中でも、特にメチルセルロース系が多用され、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシブチルメチルセルロース(HBMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)がある。
なお、その他、エチルセルロース系では、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)が使われる。
【0029】
さらに、これらの有機バインダー粉に、可塑剤、潤滑剤、湿潤材又はワックスの少なくとも1種を加える。
本実施形態では、例えば水溶性有機バインダー粉としてメチルセルロース(MC)系を採用し、これに純水と添加剤として可塑剤、潤滑剤、湿潤材等を加えてミキサーで混合し、水溶性有機バインダー入り湿粉とする。なお、さらに成型助剤として、他に解膠剤、分散剤、水分保持剤、界面活性剤、硬化剤等を添加しても構わない。
【0030】
そして、上記水溶性有機バインダー入り湿粉を、原料混練機のスクリューを用いて混合混練し、粘土状の坏土にする。この混合混練を十分に行うために、混練を繰り返す。
【0031】
次に、図2に示すように、押出成型機12に坏土を投入し、スクリュー(図示略)を用いて真空引きしながら混合混練する。真空引きをしながら混練することによって、気泡が成型体に入ることを防止できる。なお、上記混合混練が十分に行われないと、押出成型の安定性、精度が落ちる。さらに、坏土を、スクリューを使って押し絞り、成型体用金型13を通過させて押出成型し、図3に示すような一対の貫通孔14を有したロッド状グリーン成型体15を形成する。
【0032】
上記押出成型機12は、真空引きしながら混合混練したものを、そのまま押出成型できる構造をしている。また、上記成型体用金型13は、図2に示すように、2孔式成型体用金型であって、円柱空洞状の型内13aに坏土を押し出す複数の押出孔13bと、一対の貫通孔14を形成するために型内13aに軸線に沿って延在された1対の豚鼻用丸棒部13cと、を備えている。
【0033】
この成型体用金型13に坏土を通過させることで、例えば2.0mm径、貫通孔14の径(豚鼻径)0.34mmのロッド状グリーン成型体15が形成される。
なお、上記押出成型の際、押出成型圧力を一定にし、押出成型スピードを一定に保つことが重要である。水溶性有機バインダー粉及び水の量が適当な量でないと、ロッド状グリーン成型体15にクラックが生じる場合がある。例えば、水分量が多すぎる若しくは少なすぎると押出成型すらできず、成型体用金型13から成型体が出てこないことがある。また、成型体が出てきたとしても、径がばらつく等の形状が変わることもあり、これは焼成後、サーミスタ素子10の抵抗値ばらつきの要因となる。
【0034】
次に、押出成型後、乾燥収縮による反りを抑えるため、ロッド状グリーン成型体15を自然乾燥する。
なお、ロッド状グリーン成型体15を水分乾燥する際、自然乾燥が好ましい。ヒーターを用いて熱風乾燥させると、水分乾燥のむらが生じやすいため、一対の貫通孔14間にクラックが入りやすいためである。また、ロッド状グリーン成型体15に大きな反りが生じやすくなり、その反りによるクラックが生じることを防ぐためである。なお、この反りは、その後切断する際のロッド状グリーン成型体15固定の障害となる。
【0035】
最適な乾燥条件としては、ロッド状グリーン成型体15を、一定温度、一定湿度のボックス内で、1〜2日ゆっくり乾燥させることが好ましい。
この水分乾燥を行うと、水分が抜け、ロッド状グリーン成型体15の収縮が起きる。ロッド状グリーン成型体15の外周径及び貫通孔14の径(豚鼻径)が共に収縮するため、この水分収縮を考慮し、成型体用金型13を設計しなければならない。
【0036】
次に、上記ロッド状乾燥成型体を所定長さに切断して豚鼻状に貫通孔14を有する切断成型体16とする。
すなわち、このロッド状乾燥成型体を固定し、ダイシングによる切断を行う。
例えば、ロッド状乾燥成型体を1.00mm毎、1.00mm±0.02mmの精度で切断する。この精度で切断することにより、焼成後、初期抵抗値誤差を2%以内に抑えることができる。
なお、切断方法については、押切切断で行ってもよい。ただし、ロッド状乾燥成型体があまりに硬いと切断時に刃が欠けてしまうので、押切切断の場合はロッド状乾燥成型体の硬度を下げる必要がある。
【0037】
次に、図4に示すように、切断成型体16の一対の貫通孔14に丸棒状のリード線2を挿入し、貫通させる。
上記リード線2としては、1400℃以上の高融点を有する金属線であって、Pt線又はPtにRhが含有されている線、PtにIrが含有されている線等が採用される。
【0038】
次に、貫通孔14にリード線2を挿入した状態の切断成型体16を、脱バインダー処理した後、約1500℃の焼成を行い、サーミスタ用金属酸化物焼結体11とすることで、サーミスタ素子10を作製した。
なお、ロッド状グリーン成型体15の貫通孔14の径は、乾燥させてロッド状乾燥成型体となった際に、挿入性を考慮してリード線2の径よりも大きくなるように設定される。また、ロッド状乾燥成型体及び切断成型体16の貫通孔14の径は、焼結時の収縮による接合性を考慮してリード線2の径よりも焼成後に小さくなるように設定される。
【0039】
上記焼結による収縮率は、切断成型体16の貫通孔径から、リード線を貫通孔に挿入せずに焼成した後の貫通孔径を引いたものを、切断成型体16の貫通孔径で割ったものとして定義される。焼結時の収縮の接合性のパラメータとして、リード線に仮想的に食い込む量をΔL(mm)として定義する。以下に、定義式を示す。
ΔL=リード線径(mm)−(1−収縮率)×切断成型体の貫通孔径(mm)
【0040】
このように本実施形態にサーミスタ素子の製造方法では、サーミスタ原料粉末と有機バインダー粉と水(溶剤)とを混練した坏土を成型体用金型13によって押出成型してロッド状グリーン成型体15を形成し、これを切断した切断成型体16の貫通孔14にリード線2を挿入して焼成を行うので、切断成型体16とリード線2との間に焼結時のサーミスタ収縮分を考慮したクリアランスを設けることができると共に貫通孔14の内径が一定であるため、焼結途中で切断成型体16とリード線2とが接合されて、リード線2接合部近傍におけるサーミスタ収縮による違いがほとんど無い。このため、図5に示すように、焼成後に反りや切れ目1aが生じ難いと共に、サーミスタ用金属酸化物焼結体11とリード線2とを均一かつ強固に接合することができ、ヒートサイクルに強い高温サーミスタ素子を作製することができる。
【0041】
また、切断成型体16の切断長を調整することにより高精度な寸法で同一形状が得られるので、寸法ばらつきによる抵抗値ばらつきを抑えて、効率よく作製することができる。
また、有機バインダー粉が、水溶性有機バインダー粉であるので、上記乾燥の工程で、サーミスタ原料粉末と水溶性有機バインダー粉と水とを混練した坏土が、サーミスタ原料粉末と水に対して不溶性の有機バインダー粉とエタノール、トルエン等の有機溶剤とを混練した坏土に比べて、ゆっくり乾燥されるため、クラックが入りにくい。
特に、水溶性有機バインダー粉として、金属酸化物との相性が良いメチルセルロース(MC)系バインダーを使用するので、サーミスタ原料粉末と良く混練された坏土が得られ、押出成型によって良好なロッド状グリーン成型体15を得ることができる。
【0042】
さらに、有機バインダー粉に、可塑剤、潤滑剤、湿潤材又はワックスの少なくとも1種を加えるので、粉末と溶剤(水)との濡れ性を向上させることができ、良好な押出成型が可能になる。
また、自然乾燥でロッド状グリーン成型体15を乾燥させてロッド状乾燥成型体とするので、水分乾燥のむらが生じにくく、クラックや反りの発生も抑制される。
【0043】
また、切断成型体16の貫通孔14の径は、乾燥させてロッド状乾燥成型体となった際に、挿入性を考慮してリード線2の径よりも大きくなるように設定し、また、切断成型体16の貫通孔14の径は、焼結時の収縮による接合性を考慮してリード線2の径よりも焼成後に小さくなるように設定することにより、サーミスタ用金属酸化物焼結体11とリード線2を接合することができ、サーミスタ素子10を製造できる。
【0044】
次に、本発明に係るサーミスタ素子の製造方法及びサーミスタ素子の第2実施形態について、図7から図9を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0045】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、直棒状のリード線2が挿入された切断成型体16を焼成するのに対し、第2実施形態では、図7及び図8に示すように、焼成の前であって、切断成型体16の貫通孔14にリード線2を挿入する前又は後に、貫通孔14から突出するリード線2の少なくとも一方に貫通孔2の径よりも大きく半径方向外方に膨出した係止部2aを形成しておく点である。
【0046】
すなわち、第2実施形態では、貫通孔14にリード線2を挿入する前では、貫通孔14から突出するリード線2の一方に貫通孔2の径よりも大きく半径方向外方に膨出した係止部2aをかしめ等の加工によって形成する。そして、係止部2aが形成されていない方の端部からリード線2を貫通孔2に挿入する。
また、貫通孔14にリード線2を挿入した後では、貫通孔14から突出するリード線2の一方又は両方に貫通孔2の径よりも大きく半径方向外方に膨出した係止部2aをかしめ等の加工によって形成する。
【0047】
この係止部2aの形成は、図8の(a)(b)に示すように、リード線2の所定位置に両側から刃21を入れて側部を挟んで局所的に押し潰すと共に、図7の(b)に示すように、押し潰し方向に直交する方向に膨らませて係止部2aを形成する。
なお、リード線2の突出量はなるべく小さい方が良い。例えば、1.0mm厚の切断成型体16に対して、0.3mm以内に突出量を抑えることが好ましい。これにより、サーミスタ用金属酸化物焼結体11を、よりセンサ先端側に電気短絡させることなく備え付けることが可能になる。
【0048】
さらに、第2実施形態では、図9の(a)に示すように、焼成の際に、貫通孔14にリード線2を挿入した状態で切断成型体16をセッター22に設置する工程を有し、該工程において、セッター22に形成された焼成後のサーミスタ用金属酸化物焼結体11の外径よりも小さく、かつ、1対のリード線2が挿入できる幅の設置溝22aに、係止部2aを上側にしてリード線2の下側を差し込んだ状態で、切断成型体16をセッター22上に設置している。
なお、設置溝22aの大きさは、焼結時の収縮を考慮し、焼結体の外径よりも小さく設定され、リード線2を挿入するため、リード線2の径より大きく設定されている。図9にあるように、スリット(溝)の方向に対し、1対のリード線2が並ぶように、設置溝22aの大きさを調整した場合であっても、サーミスタ用金属酸化物焼結体11の外径よりも小さく設置溝22の大きさが設定されていればよい。このように設定した理由は、もし、設置溝22の大きさがサーミスタ用金属酸化物焼結体11の外径よりも大きく設定されると、切断成型体16が設置溝22に落下し、リード線2が抜ける可能性があるためである。
なお、上記セッター22は、例えばアルミナで形成されている。また、設置溝22aは、複数の切断成型体16を並べて設置可能なスリット状に形成されている。
【0049】
このように第2実施形態では、貫通孔14から突出するリード線2の少なくとも一方に貫通孔14の径よりも大きく半径方向外方に膨出した係止部2aをかしめ等の加工によって形成しておくので、係止部2aを上側にしてリード線2が挿入された状態の切断成型体16を掴んで持ち上げた際に、係止部2aでリード線2が係止されることで、リード線2が抜けることを防止できる。また、係止部2aによってリード線2の突出量を一定にして位置決めをすることができ、焼成時に突出量のばらつきを抑制することが可能になる。
【0050】
これにより、サーミスタ素子をセンサに組み込む際に、電気短絡の発生を防ぐことができると共に、センサ内SUS線と溶接する際に、溶接位置が変わることによる溶接条件変化の発生を防ぐことができる。なお、リード線2として柔らかいPt線を採用することで、上記係止部2aを形成するためのかしめ等の加工がしやすい。
【0051】
また、セッター22に形成された焼成後のサーミスタ用金属酸化物焼結体11の外径よりも小さい幅の設置溝22aに、係止部2aを上側にしてリード線2の下側を差し込んだ状態で、切断成型体16をセッター22上に設置するので、リード線2が設置溝22aの中で宙吊り状態となることで、セッター22の反り等に関係なく、リード線2の突出量を一定に揃えて焼成することができる。これにより、焼成後にリード線2の突出量を調整する加工が不要になると共に、長さを揃えるために切断するリード線2のロスが少なくて済む。
【0052】
なお、上記セッター22の設置溝22aには、差し込まれた一対のリード線2の間に仕切りがないが、図9の(b)に示すように、一対のリード線2の間に仕切りを設けた設置孔23aを有するセッター23を採用しても構わない。このセッター23としては、例えばハニカムセラミックス等を用いた中空状のセッター23を使用することができる。
また、スリット状の溝ではなく、焼結体の外径よりも小さく、かつ、1対のリード線2が挿入できる径より大きい円状の溝を採用しても構わない。
【実施例1】
【0053】
上記第1実施形態のサーミスタ素子の製造方法により実際に製造したサーミスタ素子について評価した結果を以下に示す。
まず、焼成後にサーミスタ素子について、1000℃、100hで耐熱性試験を行った。この耐熱性試験の結果、粉末プレス品同様に、本発明の実施例では、電気抵抗率変化率が1%以内であることを確認した。
【0054】
また、焼成後のサーミスタ素子について、ヒートサイクル試験(HCT)を行い、クラック発生による抵抗値上昇率2%の有無を調べた。
なお、このヒートサイクル試験(HCT)の条件は、室温と1000℃とを交互にして100サイクルとした。また、1.85mm径×1.0mm厚さ、貫通孔14の径(豚鼻径)0.32mmのロッド状乾燥成型体に対し、0.20〜0.31mm径のPt線(リード線2)(長さ1mm程度)を挿入した。この結果を、表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
その結果、0.30,0.31mm径のPt線(リード線2)を挿入したものは、全数、抵抗値上昇は無かった。0.27mm以下の径をもつPt線(リード線2)を挿入したものは、ヒートサイクルによる抵抗値上昇サンプルが多数あった。さらに、0.25mm以下の径をもつPt線(リード線2)を挿入したものは、焼成後のPt線(リード線2)との接合が大変弱く、ヒートサイクルを行うと、全数、抵抗値が上昇した。一方、比較例として、粉末プレス法で得られたサーミスタ素子は、ヒートサイクル後に抵抗値が上昇するサンプルが見られた。
上記実施形態のサーミスタ素子の焼結による収縮率は19%であり、ΔLが0.04mm以上のとき、ヒートサイクルによる抵抗値上昇を抑えられた。
【0057】
また、ロッド内の抵抗値ばらつきを調べた。その結果も上記表1に示す。本実施形態で得られたサーミスタ素子の抵抗値ばらつき3σ/μは、1〜2%であった。ここで、σはロッド内の抵抗値の標準偏差、μはロッド内の抵抗値の平均値である。切断寸法ばらつきを1〜2%以内に抑え、その結果、抵抗値ばらつきを抑えて作製することができる。
一方、比較例として粉末プレス法で得られた3σ/μは、8〜10%であった。原料秤量を1%以内に抑えて実施したが、プレス時の粉末の充填状態のばらつき、ばりの発生、リード線近傍へのプレス圧力不十分等の原因で、ロッド内の抵抗値ばらつきは大きくなってしまう。これらの原因は、製造方法上、避けることが困難である。
【0058】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0059】
上記ロッド状乾燥成型体の形状は円柱状であるが、ロッド状乾燥成型体の外周面に平坦面を1箇所以上形成しておいても構わない。例えば、押出成型の際に、ロッド状グリーン成型体の外周面にフラットな面が形成されるように、型内の形状を設定しておく。このように、ロッド状乾燥成型体の外周面にフラットな面を形成することで、その後の切断時に平坦面によりロッド状乾燥成型体の位置決めがしやすくなる。
【符号の説明】
【0060】
2…リード線、2a…係止部、10…サーミスタ素子、11…サーミスタ用金属酸化物焼結体、13…成型体用金型、14…貫通孔、15…ロッド状グリーン成型体、16…切断成型体、22,23…セッター、22a…設置溝、23a…設置孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーミスタ用金属酸化物焼結体と、該サーミスタ用金属酸化物焼結体に接続された複数のリード線と、を有するサーミスタ素子の製造方法であって、
金属酸化物からなるサーミスタ原料粉末と有機バインダー粉と溶剤とを混合して混練することで坏土とする工程と、
成型体用金型によって前記坏土を押出成型して複数の貫通孔を有したロッド状グリーン成型体を形成する工程と、
前記ロッド状グリーン成型体を乾燥させてロッド状乾燥成型体とする工程と、
前記ロッド状乾燥成型体を所定長さに切断して貫通孔を有する切断成型体とする工程と、
前記切断成型体の前記貫通孔に前記リード線を挿入してこの状態で焼成を行うことで、前記切断成型体を前記サーミスタ用金属酸化物焼結体とする工程と、を有していることを特徴とするサーミスタ素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のサーミスタ素子の製造方法において、
前記有機バインダー粉が、水溶性有機バインダー粉であり、前記溶剤が、水であることを特徴とするサーミスタ素子の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のサーミスタ素子の製造方法において、
前記水溶性有機バインダー粉として、メチルセルロース系の水溶性有機バインダー粉を使用することを特徴とするサーミスタ素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のサーミスタ素子の製造方法において、
前記有機バインダー粉に、可塑剤、潤滑剤、湿潤材又はワックスの少なくとも1種を加えることを特徴とするサーミスタ素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のサーミスタ素子の製造方法において、
前記乾燥が、自然乾燥であることを特徴とするサーミスタ素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のサーミスタ素子の製造方法において、
前記ロッド状乾燥成型体の外周面に平坦面を1箇所以上形成することを特徴とするサーミスタ素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のサーミスタ素子の製造方法において、
前記切断成型体の貫通孔の径が、前記リード線の径よりも大きく、かつ前記リード線を前記貫通孔に挿入せずに前記焼成を行った場合に前記リード線の径より小さくなるように設定されていることを特徴とするサーミスタ素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のサーミスタ素子の製造方法において、
前記焼成の前であって、前記切断成型体の貫通孔に前記リード線を挿入する前又は後に、前記貫通孔から突出する前記リード線の少なくとも一方に前記貫通孔の径よりも大きく半径方向外方に膨出した係止部を形成しておくことを特徴とするサーミスタ素子の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のサーミスタ素子の製造方法において、
前記焼成の際に、前記貫通孔に前記リード線を挿入した状態で前記切断成型体をセッターに設置する工程を有し、
該工程において、前記セッターに形成された焼成後の前記サーミスタ用金属酸化物焼結体の外径よりも小さく、かつ、前記リード線の径より大きい径又は幅の設置孔又は設置溝に、前記係止部を上側にして前記リード線の下側を差し込んだ状態で、前記切断成型体を前記セッター上に設置することを特徴とするサーミスタ素子の製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のサーミスタ素子の製造方法により作製されたことを特徴とするサーミスタ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−109317(P2010−109317A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64824(P2009−64824)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】