説明

シェルモールド造型装置及びシェルモールド造型方法

【課題】 造形されたシェルモールドの表面粗度の向上を図ることができ、その結果、このシェルモールドを使用した鋳物製品の品質を向上でき、特に、複数の羽根通路が形成されている羽根車を鋳造するために使用される鋳造用中子を造型することに適したシェルモールド造型装置及びシェルモールド造型方法を提供すること。
【解決手段】 圧縮空気がブロワ4から砂タンク2内へ供給されると、砂タンク2内に貯留されている造型砂が圧縮空気と一緒に、複数のブローノズル8からブロー孔13を通じて造型金型10の造型キャビティ11内へ吹き込まれる。このとき、造型キャビティ11内には外周部から中心部へ向かう気流が作り出され、この気流に乗って造型砂が、造型キャビティ11の外周部から中心部へ向けて吹き込まれ充填される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造用のシェルモールドを造型するためのシェルモールド造型装置及びシェルモールド造型方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シェル鋳型(中子を含む。以下「シェルモールド」ともいう。)の造型方法、いわゆるシェルモールド法は、樹脂被覆砂粒(Resin Coated Sand(一般に「RCS」と略称されている。))などの造型砂を使用して鋳型を造型する方法である。このシェルモールド法に用いられる造型砂の一例であるRCSは、珪砂などの砂粒と、その砂粒表面に被覆される樹脂被覆層とから形成されている。また、RCSにおける各砂粒表面の樹脂被覆層は、フェノール系樹脂などの熱硬化性樹脂から組成されており、各砂粒同士の結合材として機能するものである。
【0003】
このようなRCSを用いるシェルモールド法によれば、加熱されている造型金型内にRCSが重力方式又は吹込方式により充填され、そのRCSの各砂粒の樹脂被覆層が溶融され、その溶融した結合材を介して各砂粒同士が結合される。この結合後、RCSの結合材が硬化すると、RCSが造型金型内のキャビティ形状に合致したものに造型され、それを造型金型から離型させれば、硬化造型物であるシェル鋳型が取得されるのである。
【0004】
このようなシェルモールド法については既に種々の提案がなされており、例えば、下記する特許文献1記載の中子造型装置が知られている。この中子造型装置によれば、トップブロー方式のブローヘッドによって、造型砂が、型温200℃〜250℃に加熱されている造型金型の上方から、その造型金型内に一旦略満杯状態にまで吹き込まれる。そして、この後、加振機による三次元的振動が造型金型に加えられ、その後更に、その三次元振動が加えられている造型金型内に再び造型砂が吹き込まれて中子が造型される。
【0005】
ところで、下記する特許文献2にあるように、遠心ポンプなどの遠心式流体機械の羽根車を鋳造する場合には、その羽根車内の羽根通路を形成するための鋳型の一部として薄肉状の鋳造用中子が使用されている。そして、この特許文献2では、かかる薄肉状の鋳造用中子を製造する場合に、シェルモールド法を用いずに、中子取り型を回転させつつ、その上端開口部から内部にゾル状のスラリーを流し込み、そのスラリーを乾燥固化させた後に、中子取り型から脱型して、羽根車の鋳造用中子を造型している。
【0006】
これに対して、本願出願人は、特許文献2記載の鋳型製造方法で製造される鋳造用中子、即ち、羽根車の羽根通路を形成するための薄肉状の鋳造用中子を、従来からシェルモールド法によって造型している。従来において本願出願人が採用してきた造型方法によれば、特許文献2にある中子取り型に形態が近似した造型金型を加熱して、その上端開口部からトップブロー方式によって造型金型内に造型砂を吹き込んで、造型砂を結合硬化させて、羽根車の鋳造用中子を造型していた。
【特許文献1】特開平7−290189号公報
【特許文献2】特開平11−309545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した本願出願人採用の造型方法では、その造型方法によって羽根車の羽根通路を形成するための薄肉状の鋳造用中子を造型した場合に、その鋳造用中子の表面粗度(表面あらさ)が大きくなってしまうため、この鋳造用中子を用いて鋳造された羽根通路内壁の表面粗度の低下や、その他の鋳造品質の低下を招来し、結果、その羽根車を用いた遠心式流体機械の静粛性の悪化や、エネルギー効率の低下を招いてしまうという問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであって、造形されたシェルモールドの表面粗度の向上を図ることができ、その結果、このシェルモールドを使用した鋳物製品の品質を向上でき、特に、複数の羽根通路が形成されている羽根車を鋳造するために使用される鋳造用中子を造型することに適したシェルモールド造型装置及びシェルモールド造型方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために請求項1記載のシェルモールド造型装置は、中心部から外周部へ向かって放射状に延びる空洞である複数の放射状キャビティを有する造型型と、その造型型の外周部に開設され前記複数の放射状キャビティの個々に連通される複数のブロー孔と、その複数のブロー孔に接続されて前記複数の放射状キャビティ内へ前記造型型の外周部から中心部へ向けて造型砂を吹き込む複数のブローノズルと、その複数のブローノズルに対して圧縮空気によって造型砂を供給する圧送手段と、その圧送手段による圧縮空気を前記造型型外へ排気するために前記造型型の中心部に開設され、その造型型の外部と前記複数の放射状キャビティとを連通させる排気孔とを備えている。
【0010】
この請求項1記載のシェルモールド造型装置によれば、圧送手段によって圧縮空気が複数のブローノズルへ供給されると、この圧縮空気の流れと一緒になって造型砂が複数のブローノズルへ供給される。このとき、圧縮空気は、各ブローノズルから造型型の各ブロー孔を通じて各放射状キャビティへ吹き込まれ、造型型の外周部から各放射状キャビティを通じて造型型の中心部へ向かう気流を作り出す。そして、この気流に乗って造型砂が加熱されている造型型の各放射状キャビティ内へ吹き込まれて充填される。
【0011】
複数の放射状キャビティへ吹き込まれた圧縮空気及び造型砂は、造型型の外周部から中心部へと向かって流れて、そのうち造型砂が造型型内に残されて各放射状キャビティ内に充填されるが、圧縮空気は造型型の中心部にある排気孔から造型型外へ排気される。造型型内に充填された造型砂は、造型型の加熱によって結合硬化し、複数の放射状キャビティに合致した形状のものに造型される。そして、これを造型型から離型させれば、中心部から放射状に複数の部位が延びる硬化造型物がシェルモールドとして取得される。
【0012】
請求項2記載のシェルモールド造型装置は、請求項1記載のシェルモールド造型装置において、前記造型型内の中心部に設けられる空洞であって、前記複数の放射状キャビティの全てが連通され、かつ、前記排気孔とも連通されている中央キャビティを備えている。
【0013】
この請求項2記載のシェルモールド造型装置によれば、請求項1記載のシェルモールド造型装置と同様な作用や効果を奏することに加えて、各ブロー孔から各放射状キャビティ内へ吹き込まれた圧縮空気は、中央キャビティを経て排気孔から造型型外へ排出されることで、造型型の外周部から各放射状キャビティを通じて造型型の中心部にある中央キャビティへ向かう気流を作り出す。そして、この圧縮空気の気流によって、造型砂は、各放射状キャビティを通じて造型型の外周部から中央キャビティへと運ばれて、中央キャビティ及び各放射状キャビティに充填される。
【0014】
請求項3記載のシェルモールド造型装置は、請求項1又は2に記載のシェルモールド造型装置において、前記造型型内の外周部に環状に周設される空洞であって、前記複数の放射状キャビティの全てと連通され、かつ、前記複数のブロー孔の全てとも連通されている環状キャビティを備えている。
【0015】
この請求項3記載のシェルモールド造型装置によれば、請求項1又は2に記載のシェルモールド造型装置と同様な作用や効果を奏することに加えて、環状キャビティは、造型型の外周部に環状に周設されており、全ての放射状キャビティと連通されている。しかも、この環状キャビティには全てのブロー孔が連通されている。よって、ある1つのブロー孔から造型方内へ流入した造型砂は、必ずしも1つの放射状キャビティに吹き込まれるのではなく、環状キャビティを通じて幾つもの放射状キャビティへ分散して吹き込ませることもできる。
【0016】
したがって、例えば、複数ある放射状キャビティのいずれかで何らかの原因で局部的に気圧が低下したとしても、即座に、環状キャビティを通じて造型型内の別のキャビティから圧縮空気が補われるなどされるので、局所的気圧低下に起因する造型砂の充填不足を防止でき、そのような造型砂の充填不足により陥没や巣などの欠陥がシェルモールドに生じることを回避することができる。
【0017】
また、例えば、各ブロー孔に接続されるブローノズルの数が放射状キャビティの数に比べて少なくても、全ての放射状キャビティに対して造型砂を満遍なく吹き込んで充填することが実現できることとなるため、各放射状キャビティ毎にブローノズルを配設する必要がなく、ブローノズルの設置個数を必要最小限に抑制することができる場合もある。
【0018】
請求項4記載のシェルモールド造型装置は、略薄板状の空洞である薄肉キャビティを有する造型型と、その造型型の外周部に開設され前記薄肉キャビティ内に連通される複数のブロー孔と、その複数のブロー孔に接続されて前記薄肉キャビティ内へ前記造型型の外周部から中心部へ向けて造型砂を吹き込む複数のブローノズルと、その複数のブローノズルに対して圧縮空気によって造型砂を供給する圧送手段と、その圧送手段による圧縮空気を前記造型型外へ排気するために前記薄肉キャビティの中心部に開設され、その造型型の外部と連通する排気孔とを備えている。
【0019】
この請求項4記載のシェルモールド造型装置によれば、圧送手段によって圧縮空気が複数のブローノズルへ供給されると、この圧縮空気の流れと一緒になって造型砂が複数のブローノズルへ供給される。このとき、圧縮空気は、各ブローノズルから造型型の各ブロー孔を通じて薄肉キャビティ内へ吹き込まれることで、その薄肉キャビティの外周部から中心部へ向かう気流を作り出す。そして、この気流に乗って造型砂が加熱されている造型型の薄肉キャビティ内へ吹き込まれて充填される。
【0020】
薄肉キャビティへ吹き込まれた圧縮空気及び造型砂は、造型砂を造型型内に残して圧縮空気のみが薄肉キャビティの中心部に開設されている排気孔から造型型外へ排気される。そして、造型型内に充填された造型砂が、造型型の加熱によって結合硬化すると、造型砂が略薄板状に造型され、それを造型金型から離型させれば、略薄板状のシェルモールドとして取得される。
【0021】
請求項5記載のシェルモールド造型装置は、請求項1から4のいずれかに記載のシェルモールド造型装置において、前記造型型内に形成される造型キャビティは、ポンプなどの遠心式流体機械の羽根車の羽根通路の形状に適合した形状を有するものであって、この造型キャビティによって造型される被造形物が羽根車の羽根通路を形成するための薄肉状の鋳造用中子である。
【0022】
請求項6記載のシェルモールド造型方法は、請求項1又は4に記載のシェルモールド造型装置を用いて行う方法であって、圧送手段から供給される圧縮空気を、複数のブローノズルから複数のブロー孔を通じてキャビティ内へ吹き込み、そのキャビティ内に造型型の外周部から中心部へ向かう気流を生じさせて、その圧縮空気の気流に乗せて一緒に造型砂をキャビティ内に吹き込んで充填させて、その造型砂を搬送する圧縮空気を造型型の中心部に開設される排気孔から造型型外へ排気させる充填工程と、その充填工程中又はその充填工程後に造型型を加熱して、その造型型内に吹き込まれた造型砂を結合硬化させる加熱工程とを備えている。
【発明の効果】
【0023】
本発明のシェルモールド造型装置やシェルモールド造型方法によれば、複数のキャビティが中心部から外周部へ向けて放射状に形成されている造型型、又は、キャビティが略薄板状に形成されている造型型を用いてシェルモールドを造型する場合に、その造型されたシェルモールドの表面粗度の向上を図ることができ、その結果、このシェルモールドを使用した鋳物製品の品質を向上できるという効果がある。
【0024】
例えば、羽根車を鋳造するための薄肉状の鋳造用中子を造型するような場合には、その鋳造用中子の表面粗度を小さくでき、その鋳造用中子を用いて鋳造される羽根車の羽根通路内壁の表面を滑らかに仕上げて、鋳造品質を高めることができる。結果、この中子を用いて鋳造された羽根車を適用した流体機械の静粛性の向上でき、エネルギー効率の向上を図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例であるシェルモールド造型装置1(図2参照)によって造型される被造形物の説明図であり、具体的には、鋳造用中子50を図示したものである。ここで、図1(a)は、鋳造用中子50の平面図であり、図1(b)は、鋳造用中子50の側面図であり、図1(c)は、図1(a)のC−C’線における縦端面図である。
【0026】
図1に図示している鋳造用中子50は、遠心ポンプなどの遠心式流体機械に装備される羽根車を鋳造する場合に、その羽根車における複数の羽根通路を形成するために用いられる中子50であり、平面視略円形状に形成されている。この鋳造用中子50は、その中央部(中心部)に設けられる略円柱状のボス部51と、そのボス部51の周囲に連設される略薄板円盤状の円盤部52と、その円盤部52の表面に渦巻き模様を描くように形成される複数のスリット53とを備えている。なお、本実施例の鋳造用中子50には、合計6本のスリット53が形成されている。
【0027】
複数のスリット53は、鋳造用中子50のボス部51周囲から円盤部52の外周近傍まで放射状に延びており、個々のスリット53については細長くかつ弧状曲線的な筋状に形成されている。ここで、これらの複数のスリット53は、鋳造用中子50を用いて鋳造される羽根車の羽根を形成するための鋳造キャビティとして機能するものであり、これらの各スリット53間に設けられる部位54は、鋳造用中子50を用いて鋳造される羽根車の羽根通路を形成するものである。
【0028】
図2は、本実施例のシェルモールド造型装置(以下単に「造型装置」という。)1の内部構造を示す縦断面図であり、図中では、合計6つずつあるホースプラグ6、圧送ホース7、ブローノズル8、及び、嵌合凹部12の一部のみを図示している。
【0029】
造型装置1は、上記した鋳造用中子50をシェルモールド法を用いて造型するための装置であって、図2に示すように、その上部に造型砂を貯留するための略中空円筒状の砂タンク2が配設されており、この砂タンク2の上端部を閉塞する天板2aに給気プラグ3が設けられている。給気プラグ3は、その内周部に給気孔3aが貫通形成されており、この給気孔3aを通じてブロワ4から供給される圧縮空気が砂タンク2内へ送風される。
【0030】
ブロワ4は、砂タンク2へ圧縮空気を供給するための送風機であり、例えば、本実施例においては略4気圧から略6気圧(略0.4MPa〜略0.6MPa)の圧縮空気を送風することが可能なものを用いている。また、砂タンク2の下端部は、略中空逆円錐台状または略擂鉢状の形態を有したセパレータ5によって閉塞されており、このセパレータ5の内部が砂タンク2の内部と一体となって造型砂を貯留する空間を形成している。
【0031】
セパレータ5の外周面には、複数のホースプラグ6がセパレータ5の外周方向に略等間隔で接続されており、これらのホースプラグ6には圧送ホース7が1本ずつ接続されている。また、これらの各圧送ホース7の先端にはブローノズル8が1個ずつ接続されており、砂タンク2内にある造型砂は、ブロワ4から供給される圧縮空気の気流を用いて複数のブローノズル8から分散して造型金型10内へ吹き込まれるように構成されている。ここに複数のブローノズル8は、造型金型10内の造型キャビティ11に造型砂を吹き込むためのノズルである。
【0032】
造型金型10は、造型砂を用いて所定形状の被造形物を成型(造型)するためのシェルモールド用金型であって、本実施例では、上記した鋳造用中子50を造型するためのものである。この造型金型10の内部には、上記した鋳造用中子50を造型するための空洞であって、その鋳造用中子50の形状に適合した内部形状を有している造型キャビティ11が形成されている。また、造型金型10の内部には、造型キャビティ11の形成箇所を避けて、この造型金型10自体を加熱するための加熱ヒータ(図示せず)が内蔵されており、この加熱ヒータの発熱によって造型キャビティ11内を所定温度に加熱することができるように構成されている。
【0033】
また、造型金型10の外周面には、断面視略コ字形の嵌合凹部12がブローノズル8の個数分だけ凹設されている。この嵌合凹部12は、ブローノズル8を脱着可能に嵌着させるための凹部であり、造型金型10の外周方向に略等間隔で複数設けられている。このため、これら複数の嵌合凹部12に嵌合されることで、複数のブローノズル8は造型金型10の外周方向に略等間隔で配設されるのである。
【0034】
図3は、図2の部分的拡大図である。図3に示すように、各嵌合凹部12内にはブローノズル8のノズル孔8aと連通するブロー孔13が開口形成されており、このブロー孔13は造型キャビティ11内部と連通されている。本実施例では、セパレータ5に合計6個のホースプラグ6が接続されており、この各ホースプラグ6に接続される合計6本の圧送ホース7を介して、合計6個のブローノズル8に分散して造型砂が供給され、その6個のブローノズル8から合計6個のブロー孔13を通じて造型キャビティ11へ造型砂がそれぞれ吹き込まれるように構成されている。
【0035】
また、造型キャビティ11は、中央キャビティ11aと、複数の放射状キャビティ11bと、環状キャビティ11cとが一体的に連設されて1つの空洞を形成したものである。まず、中央キャビティ11aは、造型金型10内の中心部に設けられる造型用の空洞であって、主として鋳造用中子50のボス部51を造型するためのものである。そして、この中央キャビティ11aの周囲には全ての放射状キャビティ11bが連通されている(図4参照)。なお、放射状キャビティ11bと環状キャビティ11cとの連設部分では、これら両者の厚みが等しくなっている。
【0036】
複数の放射状キャビティ11bは、中央キャビティ11aが形成されている造型金型10の中心部から外周部へ向かって延びる造型用の空洞であって、上記した鋳造用中子50の円盤部52を造型するために適合した略薄板状の空洞に形成されている。また、環状キャビティ11cは、造型金型10内の最外周部近傍に設けられる造型用の空洞であって、放射状キャビティ11bとブロー孔13との間に介在して、これらを相互に連通させている。更に、造型金型10のキャビティ内には、上記した複数の放射状キャビティ11bの相互間を仕切る複数枚の隔壁14が設けられている(図4参照)。
【0037】
また、中央キャビティ11aの上端部は造型金型10の上端面まで貫通しており、この中央キャビティ11aの上端部開口には空気抜き板15が覆設されている。空気抜き板15は、その中央部に中央キャビティ11aの上端部開口より僅かに小径の通気孔15aが上下に貫通して形成されており、この通気孔15aと中央キャビティ11aとの間には金網製の網部材16が介設されている。
【0038】
網部材16は、造型砂の粒子より小さな細孔を多数有している網状体であり、多数の細孔を通じて中央キャビティ11aと通気孔15aとの間に通気性を確保する一方で、造型砂が中央キャビティ11aから通気孔15aに漏出することを防止するためのものである。また、空気抜き板15の上端面には複数の排気溝15bが凹設されており、この各排気溝15bは、通気孔15a内周から空気抜き板15の外周まで連続形成されている。
【0039】
また更に、この排気溝15bが凹設されている空気抜き板15の上端面にはスペーサ17の下板部17bが載置されている。スペーサ17は、その下板部17bによって空気抜き板15の通気孔15aを閉塞する一方で、その上板部17aによって砂タンク2及びセパレータ5を下方から支持するものであり、これらの上板部17a及び下板部17bが略円筒状の胴部17cの上下端面に当着されて形成されている。
【0040】
スペーサ17の上板部17a及び下板部17bは略円盤状に形成されており、その下板部17bの外径は空気抜き板15の通気孔15aの内径よりも大きく形成されている。このため、スペーサ17の下板部17bは、通気孔15aを閉塞するとともに、その通気孔15aの周縁部に重畳されることで複数の排気溝15bの上方を塞いでいる。この結果、スペーサ17の下板部17bと空気抜き板15との間には、通気孔15aから略水平方向に連通した複数の排気通路18が形成される。
【0041】
このように形成された複数の排気通路18は、網部材16及び空気抜き板15の通気孔15aを介して造型金型10の中央キャビティ11aと連通されており、その中央キャビティ11aから流出する空気を大気中へ排出するための通路である。
【0042】
図4は、造型金型10の内部構造を示す平面図であり、ブローノズル8が嵌合凹部12に嵌着された状態で図示したものである。図4に示すように、造型金型10は平面視略円形状に形成されており、その外周面には複数のブローノズル8が外周方向に略等間隔で取着されている。この複数のブローノズル8は、造型金型10の嵌合凹部12に1個ずつ嵌着されており、この嵌着によって造型金型10の外周方向に略等間隔で形成されている各ブロー孔13と接続されている。
【0043】
ここで、ブローノズル8の先端面であってノズル孔8aの穿設箇所を避けた部分には、そのノズル孔8aから僅かに外側に一対の永久磁石8b,8cが埋設されている。これに対して、ブローノズル8の嵌合凹部12におけるブローノズル8の先端面との当接面は磁性材料で形成されており、嵌合凹部12に嵌着されたブローノズル8が、一対の永久磁石8b,8cの磁力により造型金型10に吸着されるように構成されている。
【0044】
また、造型キャビティ11は、この造型キャビティ11内で造型される鋳造用中子50の外形に適合した平面視略円形状に形成されている。そして、造型キャビティ11の中心部には上記した中央キャビティ11aが設けられており、この中央キャビティ11aの周囲からは、複数枚の隔壁14が造型金型10の内周壁面直前(環状キャビティ11cの手前)まで放射状に延設されている。そして、これらの複数枚の隔壁14は、それぞれ細長く弧状曲線的な薄板状に形成されている。
【0045】
具体的に、造型キャビティ11には、それの底面から合計6枚の隔壁14が立設されており、これらの隔壁14によって鋳造用中子50における複数のスリット53が造型される。そして、これらの各隔壁14間には、羽根車の羽根通路に対応する放射状キャビティ11bが形成されており、この造型金型10には合計6個の放射状キャビティ11bが形成されている。そして、各放射状キャビティ11bは、造型金型10の中心部から外周部に向かって徐々に拡幅されながら連通した空洞であり、造型金型10の周回方向に僅かに湾曲されている。
【0046】
また、造型金型10には、これらの放射状キャビティ11bより外側を取り巻くように周回する環状キャビティ11cが周設されており、この環状キャビティ11cには全ての放射状キャビティ11bが連通されている。そして、各放射状キャビティ11bの外周側の開放端には、環状キャビティ11c越しに、その放射状キャビティ11bに向けて造型砂を吹き込む各ブロー孔13が対向して開設されている。
【0047】
図5(a)は、造型金型10の側面図であり、図5(b)は、図5(a)の部分的拡大図であり、これらの図中の2点鎖線は、嵌合凹部12に嵌着されるブローノズル8を示す想像線である。図5に示すように、ブロー孔13は、造型キャビティ11の周方向に沿って細長く、造型金型10の外周面に略水平直線状に開設した長孔であり、この長孔の長手方向中央にブローノズル8のノズル孔8aが接続されるように形成されている。なお、ブロー孔13の短手方向幅は環状キャビティ11cの厚みと略等しくされている。
【0048】
また、ブローノズル8のノズル孔8aは、ブロー孔13に対して僅かに小さく又は略等しく略水平直線状に開口された長孔に形成されており、ブローノズル8が嵌合凹部12に嵌着されると、ブロー孔13と共に造型キャビティ11の周方向に沿って細長く延びた状態となる。このようにすることで、薄肉状でかつ放射状に仕切られている造型キャビティ11内へ、造型砂をより円滑に吹き込めるように構成されている。
【0049】
次に、上記のように構成された造型装置1を用いた造型方法について説明する。圧縮空気がブロワ4から砂タンク2内へ供給されると、砂タンク2内に貯留されている造型砂が圧縮空気と一緒に押し流されて、セパレータ5から各圧送ホース7へ分散供給される。すると、複数の圧送ホース7へ供給された圧縮空気及び造型砂の混合流は複数のブローノズル8へ供給され、これらのブローノズル8から各ブロー孔13を通じて造型金型10の造型キャビティ11内へ吹き込まれる。
【0050】
このとき、造型金型10内に吹き込まれた混合流のうちの圧縮空気は、各ブロー孔13から環状キャビティ11cを通過して各放射状キャビティ11bへ流入し、その各放射状キャビティ11bから中央キャビティ11aを経た後に網部材16の各細孔を通じて空気抜き板15の通気孔15aへ流入して、そこから複数の排気通路18を通じて大気中へ排出される。
【0051】
この結果、造型キャビティ11内には、それの外周部から中心部へ向かう気流が作り出され、この気流に乗って造型砂が、造型キャビティ11の外周部から中心部へ向けて吹き込まれ充填される。そして、造型砂の充填中又はその充填後に造型金型10が加熱ヒータによって所定温度に加熱されると、造型キャビティ11内に充填された造型砂が結合硬化されて、鋳造用中子50が造型金型10内で造型される。そして、これが造型金型10から離型されると、羽根車の羽根通路を鋳造するために使用される鋳造用中子50が取得されるのである。
【0052】
そして、本実施例により鋳造用中子50を製造した場合と、上記段落[0006]に記載した従来法(以下「比較例」という。)により鋳造用中子50を製造した場合とで、双方の鋳造用中子50の表面粗さと、これらの中子50を用いて鋳造された鋳物製品の表面粗さとを比較した。すると、下記する通り、本実施例による鋳造用中子50とそれを用いた鋳物製品とが、いずれも比較例に比べてより表面粗さが良好となり、品質として高いものが得られることが確認された。
【0053】
具体的に、本実施例の鋳造用中子50は、十点平均粗さ(Rz)が118.28で、算術平均粗さ(Ra)が18.42であるのに対して、比較例の鋳造用中子50では、十点平均粗さ(Rz)が139.28で、算術平均粗さ(Ra)が23.63であった。また、本実施例による鋳物製品は、十点平均粗さ(Rz)が29.35で、算術平均粗さ(Ra)が4.97であるのに対して、比較例による鋳物製品では、十点平均粗さ(Rz)が49.97で、算術平均粗さ(Ra)が8.00であった。
【0054】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、各部材についての個数や形状やサイズ、又は、各工程の温度条件などについて、種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、本実施例では、造型金型10で造型されるシェルモールドとして鋳造用中子50を例に説明したが、かかるシェルモールドの種類は必ずしも中子に限定されるものではなく、中子を除く鋳型の造型に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例であるシェルモールド造型装置によって造型される鋳造用中子の説明図であって、(a)は、鋳造用中子の平面図であり、(b)は、鋳造用中子の側面図であり、(c)は、(a)のC−C’線における縦端面図である。
【図2】本実施例のシェルモールド造型装置の内部構造を示す縦断面図である。
【図3】図2の部分的拡大図である。
【図4】造型金型の内部構造を示す平面図であり、ブローノズルが嵌合凹部に嵌着された状態で図示したものである。
【図5】(a)は、造型金型の側面図であり、(b)は、(a)の部分的拡大図である。
【符号の説明】
【0056】
1 シェルモールド造型装置
2 砂タンク(圧送手段の一部)
3 給気プラグ(圧送手段の一部)
4 ブロワ(圧送手段の一部)
5 セパレータ(圧送手段の一部)
6 ホースプラグ(圧送手段の一部)
7 圧送ホース(圧送手段の一部)
8 ブローノズル
10 造型型
11 造型キャビティ(造型キャビティ)
11a 中央キャビティ(中央キャビティ、排気孔の一部)
11b 放射状キャビティ(放射状キャビティ、薄肉キャビティ)
11c 環状キャビティ
13 ブロー孔
15a 通気孔(排気孔の一部)
16 網部材(排気孔の一部)
18 排気通路(排気孔の一部)
50 鋳造用中子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部から外周部へ向かって放射状に延びる空洞である複数の放射状キャビティを有する造型型と、
その造型型の外周部に開設され前記複数の放射状キャビティの個々に連通される複数のブロー孔と、
その複数のブロー孔に接続されて前記複数の放射状キャビティ内へ前記造型型の外周部から中心部へ向けて造型砂を吹き込む複数のブローノズルと、
その複数のブローノズルに対して圧縮空気によって造型砂を供給する圧送手段と、
その圧送手段による圧縮空気を前記造型型外へ排気するために前記造型型の中心部に開設され、その造型型の外部と前記複数の放射状キャビティとを連通させる排気孔とを備えていることを特徴とするシェルモールド造型装置。
【請求項2】
前記造型型内の中心部に設けられる空洞であって、前記複数の放射状キャビティの全てが連通され、かつ、前記排気孔とも連通されている中央キャビティを備えていることを特徴とする請求項1記載のシェルモールド造型装置。
【請求項3】
前記造型型内の外周部に環状に周設される空洞であって、前記複数の放射状キャビティの全てと連通され、かつ、前記複数のブロー孔の全てとも連通されている環状キャビティを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシェルモールド造型装置。
【請求項4】
略薄板状の空洞である薄肉キャビティを有する造型型と、
その造型型の外周部に開設され前記薄肉キャビティ内に連通される複数のブロー孔と、
その複数のブロー孔に接続されて前記薄肉キャビティ内へ前記造型型の外周部から中心部へ向けて造型砂を吹き込む複数のブローノズルと、
その複数のブローノズルに対して圧縮空気によって造型砂を供給する圧送手段と、
その圧送手段による圧縮空気を前記造型型外へ排気するために前記薄肉キャビティの中心部に開設され、その造型型の外部と連通する排気孔とを備えていることを特徴とするシェルモールド造型装置。
【請求項5】
前記造型型内に形成される造型キャビティは、ポンプなどの遠心式流体機械の羽根車の羽根通路の形状に適合した形状を有するものであって、この造型キャビティによって造型される被造形物が羽根車の羽根通路を形成するための薄肉状の鋳造用中子であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のシェルモールド造型装置。
【請求項6】
請求項1又は4に記載のシェルモールド造型装置を用いて行う方法であって、
圧送手段から供給される圧縮空気を、複数のブローノズルから複数のブロー孔を通じてキャビティ内へ吹き込み、そのキャビティ内に造型型の外周部から中心部へ向かう気流を生じさせて、その圧縮空気の気流に乗せて一緒に造型砂をキャビティ内に吹き込んで充填させて、その造型砂を搬送する圧縮空気を造型型の中心部に開設される排気孔から造型型外へ排気させる充填工程と、
その充填工程中又はその充填工程後に造型型を加熱して、その造型型内に吹き込まれた造型砂を結合硬化させる加熱工程とを備えていることを特徴とするシェルモールド造型方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−275927(P2007−275927A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105179(P2006−105179)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(506118412)有限会社小松鋳型製作所 (5)
【Fターム(参考)】