説明

シェーディング補正方法及びシェーディング補正装置

【課題】 高価なNDフィルタを用いなくとも、スミアの影響を抑制して精度よく行ない得るシェーディング補正方法及びシェーディング補正装置を提供する。
【解決手段】 光源からの光を受光して電荷を蓄積するアレイ状の感光部と、前記感光部に蓄積された信号電荷を外部回路に転送出力する転送部を備えて構成されるリニアCCDに対して、前記光源をパルス発光させたときの前記リニアCCDの出力信号に基づいて前記光源の光量または前記出力信号を補正するシェーディング補正方法であって、前記転送部による信号電荷の転送出力が停止した状態で、前記感光部に蓄積される信号電荷を前記転送部にシフトするシフトタイミングの直前または直後の所定時間に前記光源をパルス発光させ、その後シフトされた信号電荷を転送出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの光を受光して電荷を蓄積するアレイ状の感光部と、前記感光部で蓄積された信号電荷を外部回路に転送出力する転送部を備えて構成されるリニアCCDに対して、前記光源をパルス発光させたときの前記リニアCCDの出力信号に基づいて前記光源の光量または前記出力信号を補正するシェーディング補正方法及びシェーディング補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
写真フィルム原稿を透過した光源からの光を受光して信号電荷を蓄積するアレイ状の感光部と、前記感光部で蓄積された信号電荷を外部回路に転送出力する転送部を備えて構成されるリニアCCDが設置されるフィルムスキャナでは、光源の光量や感光部の感度ばらつきを補正するために、装置を使用する初期に光源とリニアCCDの光路間に基準原稿としてNDフィルタが装着され、該NDフィルタに対する入力値に基づいてシェーディング補正などのセットアップ作業が行なわれている。一方、原稿からの反射光を受光するタイプのスキャナでは、標準白色原稿を読み込んだデータに基づいてシェーディング補正が行なわれている。
【0003】
しかし、原稿透過型のフィルムスキャナで正確なシェーディング補正を行なうためには、濃度むらの無い非常に高価なNDフィルタを使用する必要があり、さらには当該NDフィルタをフルムスキャナにセットするための機構を備える必要があり、装置全体の製造コストなどが嵩むという不都合があった。
【特許文献1】特開平8−271966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、フィルムスキャナの光源として互いに異なる波長領域の光を出力する複数のLEDアレイ、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)夫々のLEDアレイの組合せで構成されるものが提案されているが、このようなLEDアレイを光源として使用する場合には、リニアCCDの1ラインの通常の露光時間Tよりも短い時間、例えば0.1×T時間だけパルス状に点灯させて光量を低下させることにより、NDフィルタを使用せずにセットアップ作業を行なうことの可能性が検討されている。
【0005】
しかし、単純に光源の発光時間を制限するだけでは、転送部に漏れ込む光量の影響によりノイズ電荷が蓄積される所謂スミアの影響を受けて精度の良いシェーディング補正ができないという問題があった。
【0006】
つまり、図6及び図7に示すように、感光部に蓄積された信号電荷がシフトパルス信号(SH)によって転送部にシフトされ、転送部に有効な信号電荷が存在する転送部電荷有効タイミングで光源LEDを点灯させると、そのタイミングで発生したスミアにより先に転送出力された信号電荷の値よりも大きな値が出力され、また、転送出力後に発生する空の領域が存在する転送部容器有効タイミングで光源LEDを点灯させると、そのタイミングで発生したスミアにより次回に感光部からシフトされる信号電荷にスミアによるノイズ電荷が加えられて出力されることとなり、何れの場合にもスミアの影響を受けた出力とスミアの影響を受けない出力が1ラインの出力中に混在することとなり、そのような出力に基づいて正確なシェーディング補正を行なうのは困難であるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来の問題点に鑑み、高価なNDフィルタを用いなくとも、スミアの影響を抑制して精度よく行ない得るシェーディング補正方法及びシェーディング補正装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明によるシェーディング補正方法の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、光源からの光を受光して電荷を蓄積するアレイ状の感光部と、前記感光部に蓄積された信号電荷を外部回路に転送出力する転送部を備えて構成されるリニアCCDに対して、前記光源をパルス発光させたときの前記リニアCCDの出力信号に基づいて前記光源の光量または前記出力信号を補正するシェーディング補正方法であって、前記転送部による信号電荷の転送出力が停止した状態で、前記感光部に蓄積された信号電荷を前記転送部にシフトするシフトタイミングの直前または直後の所定時間に前記光源をパルス発光させ、その後シフトされた信号電荷を転送出力する点にある。
【0009】
上述の構成によれば、転送部における一連の電荷の転送処理が終了した後にシフトパルスを停止させた状態で、蓄積電荷を感光部から転送部にシフトするシフトタイミングの直前に光源をパルス発光させ、そのときに感光部に蓄積された電荷を転送部にシフトさせ、その後シフトされた信号電荷を転送出力すると、出力信号を構成する1ラインの各画素の値にはほぼ同レベルのスミアの影響が現れることになる。同様に、転送部における一連の電荷の転送処理が終了した後にシフトパルスを停止させた状態で、蓄積電荷を感光部から転送部にシフトした直後に光源をパルス発光させると、蓄積部には感光部からシフトされた信号電荷にスミアによる蓄積電荷が一様に加算され、その後シフトされた信号電荷を転送出力すると、出力信号を構成する各画素の値にはほぼ同レベルのスミアの影響が現れることになり、何れの場合であっても、シェーディング補正する際にはそのような一様なスミアの影響を容易に排除でき、正確な補正処理ができるようになるのである。
【0010】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記光源が互いに異なる波長領域の光を出力する複数のLEDアレイで構成されるとともに、前記リニアCCDが光源に対応する波長領域の光を各別に受光する複数のアレイ状の感光部を備えて構成され、前記LEDアレイを同時にパルス発光させる点にある。
【0011】
光源として出力波長領域の異なる複数のLEDアレイを使用する場合に、波長領域の異なるLEDアレイ毎にシェーディング補正する必要があるが、各LEDアレイを同時にパルス発光させることにより、個別に発光させる場合に比べて極めて短時間で補正処理を行なうことができるようになる。
【0012】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記感光部が原稿を透過した光源からの光を受光して電荷を蓄積するフィルムスキャナに設置されるリニアCCDに対して施される点にある。
【0013】
つまり、本発明によるシェーディング補正方法は、フィルムスキャナに好適なものとなるのである。
【0014】
本発明によるシェーディング補正装置の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、光源からの光を受光して電荷を蓄積するアレイ状の感光部と、前記感光部で蓄積された信号電荷を外部回路に転送出力する転送部を備えて構成されるリニアCCDに対して、前記光源をパルス発光させたときの前記リニアCCDの出力信号に基づいて前記光源の光量または前記出力信号を補正するシェーディング補正装置であって、前記転送部による信号電荷の転送出力が停止した状態で、前記感光部に蓄積された信号電荷を前記転送部にシフトするシフトタイミングの直前または直後の所定時間に前記光源をパルス発光させる発光制御部と、パルス発光の後にシフトされ転送出力された出力信号に基づいて前記光源の光量または前記出力信号を補正するシェーディング補正部を備えて構成される点にある。
【発明の効果】
【0015】
以上説明した通り、本発明によれば、高価なNDフィルタを用いなくとも、スミアの影響を抑制して精度よく行ない得るシェーディング補正方法及びシェーディング補正装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明によるシェーディング補正装置が組み込まれたフィルムスキャナを備えた写真処理装置の実施の形態を説明する。写真処理装置は、図1及び図2に示すように、供給される印画紙Pに露光及び現像処理を行ない出力する写真プリンタAと、前記写真プリンタAで処理されるプリントデータを生成、編集するとともに、前記写真プリンタAを制御する操作部Bとを備えて構成される。
【0017】
前記写真プリンタAは、ロール状に巻回された印画紙Pを収容する2つの印画紙マガジン10と、印画紙マガジン10から引き出し搬送された印画紙Pを所定のプリントサイズに切断するカッター11と、切断された印画紙Pを露光するプリントヘッドが収容された露光部12と、露光後の印画紙Pを現像処理する複数の現像処理槽を備えた現像処理部13と、現像処理後に乾燥された印画紙Pを排出するべく装置上部に配置された横送りコンベア14と、横送りコンベア14に排出されたオーダ単位の印画紙P、つまり写真プリントが搬送される複数のトレイ15aを備えたソータ15を備えて構成され、各トレイ15aにオーダ単位で仕分けられるように構成される。
【0018】
前記露光部12は、所定速度で副走査方向に搬送される印画紙Pに対して、当該搬送速度に同期して赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の光線束を主走査方向に照射するプリントヘッドを設けて構成してあり、当該プリントヘッドから出力される光線束は、前記操作部Bから送られてくるプリントデータに基づいて変調制御される。プリントヘッドは、レーザビーム方式、蛍光ビーム方式、液晶シャッター方式、DMD方式等の各種の方式を採用することが可能であり、本実施形態ではレーザビーム方式を採用している。
【0019】
前記操作部Bは、写真フィルムFに記録されているコマ画像をデジタルデータとして読み取るフィルムスキャナ2と、所定のアプリケーションプログラムがインストールされた汎用のコンピュータ3と、当該コンピュータ3に接続されたモニタ30、キーボードやマウスでなる操作入力部31、測色計4等を備えて構成される。
【0020】
前記フィルムスキャナ2により読み取られたコマ画像の画像データは、画像入力ボード33を介して前記コンピュータ3の画像メモリに入力され、前記モニタ30に表示される。当該写真処理装置を操作するオペレータが、モニタ30に表示された画像を目視しながら前記操作入力部31を操作して所定の画像処理操作等を行なうことにより、当該コンピュータ3は前記写真プリンタAに出力する最終のプリントデータを生成する。前記測色計4は後述する日々のセットアップ作業に使用されるもので、前記写真プリンタAから出力されたテストプリントのカラーパッチの濃度を測定するものである。
【0021】
前記コンピュータ3は、さらに、デジタルカメラによる撮影画像が格納されたスマートメディアやコンパクトフラッシュ(登録商標)等の記憶媒体から画像データを取得するメディアリーダ3aを備えてあり、前記フィルムスキャナ2と当該メディアリーダ3aにより画像データ入力部32が構成される。
【0022】
前記フィルムスキャナ2は、フィルム搬送部23と、フィルム搬送部23の上方に配置された照明光学系22と、フィルム搬送部23の下側に配置された結像光学系27と、結像光学系27による合焦位置に配置されたリニアCCD26を備えて構成され、照明光学系22からの光線束を定速で搬送されるフィルムFにスリット24を介して照射することでリニアCCD26によりコマ画像が読み取られるように構成されている。
【0023】
前記照明光学系22は、光源が互いに異なる波長領域の光を出力する赤(R)、緑(G)、青(B)夫々のLEDアレイ20R,20G,20Bとそれらからの出力光を共通の光軸に導くミラーM1,M2で構成される光源20とレンズ21とを備えて構成される。赤(R)のLEDアレイ20Rから出力された光が赤色成分を透過するミラーM1、赤色成分を反射するミラーM2を介してレンズ21により平行光に形成されてスリット24に照射され、緑(G)のLEDアレイ20Gから出力された光が緑色成分を透過するミラーM2を介してレンズ21により平行光に形成されてスリット24に照射され、青(B)のLEDアレイ20Bから出力された光が青色成分を反射するミラーM1、青色成分を反射するミラーM2を介してレンズ21により平行光に形成されてスリット24に照射される。
【0024】
前記結像光学系27は、スリット24の間隙からフィルムFを透過した各波長域の光線束を集光する集光レンズ25とリニアCCD26に向けて反射する反射ミラー27を備えて構成され、リニアCCD26で読み取られた画像データは、上述の画像入力ボード33を介して前記コンピュータ3のメモリに取り込まれる。
【0025】
前記写真プリンタAは、現像処理液の活性状態のばらつきや、露光光量等の変動により、同じ特性の印画紙であっても仕上りプリントの発色度合いや濃度が変動する虞があるため、特性評価用の画像データに基づいて赤、緑、青の各色の濃度の異なる複数のテストパッチをプリント出力して、各テストパッチの反射濃度などを測色計4で測定し、夫々の測定値が目標値になるように画像データを補正するための補正データを演算導出して装置に備えた記憶部に記憶させるセットアップ作業が日々行なわれる。
【0026】
同様に、前記フィルムスキャナ2は、前記光源20の光量ばらつきやリニアCCD26の画素感度のばらつきによるフィルム読取画像の変動に対処するべく、電源投入時に光源20の出力光量及びリニアCCD26で読み取られた画素データを補正処理するシェーディング補正が行なわれる。
【0027】
以下、シェーディング補正について説明する。図3に示すように、リニアCCD26は、上述した赤(R)、緑(G)、青(B)夫々のLEDアレイからの光を受光して電荷を蓄積する赤(R)、緑(G)、青(B)夫々に対応したアレイ状の感光部R1,G1,B1と、前記感光部R1,G1,B1で蓄積された信号電荷を外部回路に転送出力するアナログシフトレジスタでなる転送部R3,G3,B3と、前記感光部R1,G1,B1から前記転送部R3,G3,B3に信号電荷をシフトするシフトパルスを印加する転送電極R2,G2,B2を備えて構成される。
【0028】
前記感光部R1,G1,B1のそれぞれには一画素を構成するホトダイオードの複数が直線状に配列され、その入光部には赤(R)、緑(G)、青(B)の何れかの波長成分の光を選択的に透過させるフィルタ及びマイクロレンズが配置されている。赤(R)成分を透過させるフィルタが配置された感光部R1により赤色成分の信号電荷が蓄積され、緑(G)成分を透過させるフィルタが配置された感光部G1により緑色成分の信号電荷が蓄積され、青(B)成分を透過させるフィルタが配置された感光部B1により青色成分の信号電荷が蓄積され、これらにより写真フィルムに形成されたカラー画像に対応する信号電荷が蓄積される。尚、前記感光部R1,G1,B1の夫々には両端側の所定画素数だけ遮光され、光学的黒を検出するように構成されている。
【0029】
前記感光部R1,G1,B1に蓄積された信号電荷は、前記転送電極R2,G2,B2にシフトパルス生成部26bから出力されるシフトパルスSHが印加されるタイミングで前記転送部R3,G3,B3に転送され、さらに前記転送部R3,G3,B3に転送パルス生成部26aから出力されるφ1,φ2の2相の転送パルスの印加に同期して一画素毎に順にシフトされ、電圧変換された後に出力バッファ26R,26G,26Bから出力信号OS(R),OS(G),OS(B)として出力される。例えば、1msec.間隔で信号電荷が取り出されるようにシフトパルスSHが1msec.間隔で入力され、感光部R1,G1,B1から転送部R3,G3,B3にシフトされた蓄積電荷が、前後のシフトパルスの間に印加される構成画素数に対応する周波数の転送パルスにより出力されるのである。尚、シフトパルス生成部26b及び転送パルス生成部26aは公知のクロック生成回路で構成されるものである。
【0030】
前記出力信号OS(R),OS(G),OS(B)には、写真フィルム上のカラー画像に対応する出力に各LEDアレイの配列方向の光量ばらつきや前記感光部R1,G1,B1の感度ばらつきが重畳された状態で出力されるため、初期にそれらのばらつきを補正してフラットな出力特性を得るためにシェーディング補正処理が行なわれる。
【0031】
具体的には、先ず、予め設定された基準光量で各LEDアレイを同時に発光させて得られたリニアCCDからの赤(R)、緑(G)、青(B)夫々の出力に基づいて、色毎に値が最大を示す画素データが予め設定された値を示すように各LEDアレイの駆動電流を調整して、次に、光源オフ時のリニアCCDの出力DBKと光源オン時のリニアCCD出力DWHを求める処理を複数回繰り返し、それらの平均データに基づいて駆動電流及び光源オフ時のリニアCCDの出力DBKと光源オン時のリニアCCD出力DWHが画像入力ボード33に備えたメモリまたはコントローラ3に備えたメモリに格納され、それ以降に実際に写真フィルムを読み取る時に、今回記憶された駆動電流値で光源が駆動され、そのときに読み取られた出力DINが〔数1〕に基づいてDOUTに変換される結果、各LEDアレイの配列方向の光量ばらつきや前記感光部R1,G1,B1の感度ばらつきが補償されるようになるのである。
【0032】
【数1】

【0033】
上述した基準光量は、通常の写真フィルムの読取時のリニアCCDの1ラインの露光時間T(通常、1.0msec.)よりも短い時間、具体的には0.1×T時間に設定され、このようにパルス状に点灯させて光量を低下させることにより、フィルムベースに対する読取値と同程度の入射光量となるように設定される。
【0034】
しかし、単純に光源の発光時間を制限するだけでは、転送部に漏れ込む光量の影響によりノイズ電荷が蓄積される所謂スミアの影響を受けて精度の良いシェーディング補正ができない。つまり、図6及び図7に示すように、感光部に蓄積された信号電荷がシフトパルス信号(SH)によって転送部にシフトされ、転送部に有効な信号電荷が存在する転送部電荷有効タイミングで光源LEDを点灯させると、そのタイミングで発生したスミアにより先に転送出力された信号電荷の値よりも大きな値が出力され、また、転送出力後に発生する空の領域が存在する転送部容器有効タイミングで光源LEDを点灯させると、そのタイミングで発生したスミアにより次回に感光部からシフトされる信号電荷にスミアによるノイズ電荷が加えられて出力されることとなり、何れの場合にもスミアの影響を受けた出力とスミアの影響を受けない出力が1ラインの出力中に混在することとなり、そのような出力に基づいて正確なシェーディング補正を行なうのが困難になる。
【0035】
そこで、図4に示すように、前記転送部R3,G3,B3による信号電荷の転送出力を停止させた状態で、前記感光部R1,G1,B1に蓄積される信号電荷を前記転送部R3,G3,B3にシフトするシフトタイミングの直前または直後の所定時間に光源であるLEDアレイ20R,20G,20Bを0.1×T時間だけパルス発光させ、その後シフトされた信号電荷を転送出力するように構成してある。
【0036】
例えば、図5(a)に示すように、前記転送部R3,G3,B3の有効な電荷が全て出力された後に転送パルスφ1、φ2を停止させた状態で、LEDアレイ20R,20G,20Bを0.1×T時間だけパルス発光させると、前記感光部R1,G1,B1に信号電荷が蓄積されるとともに、前記転送部R3,G3,B3に一様なスミアによるノイズ電荷が蓄積される。その後、前記転送電極R2,G2,B2にシフトパルスSHを印加することにより前記転送部R3,G3,B3に信号電荷をシフトし、転送パルスφ1、φ2を印加して転送出力すれば、1ラインの全域において一様なスミアの影響が現れるのである。
【0037】
また、図5(b)に示すように、前記転送部R3,G3,B3の有効な電荷が全て出力された後に転送パルスφ1、φ2を停止させた状態で、前記転送電極R2,G2,B2にシフトパルスSHを印加することにより前記感光部R1,G1,B1に蓄積された信号電荷を前記転送部R3,G3,B3にシフトし、LEDアレイ20R,20G,20Bを0.1×T時間だけパルス発光させると、前記転送部R3,G3,B3に転送された信号電荷に一様なスミアによるノイズ電荷が加算されて蓄積される。その後、転送パルスφ1、φ2を印加して転送出力すれば、上述と同様に1ラインの全域において一様なスミアの影響が現れるのである。
【0038】
従って、このようなスミアの影響が一様に表れる信号出力に対しては、公知のスミア補正処理を施すことにより適切なシェーディング補正が可能になり、その結果、適正なフィルム画像入力が可能になる。
【0039】
このようなシェーディング補正方法は、例えばシフトパルス生成部26bから出力されるシフトパルスSHを基準として1.0msec.後の前記転送部R3,G3,B3にシフトされた蓄積電荷が出力された後に、前記転送パルス生成部26aからの転送パルスの出力を停止させて、0.1msec.の間LEDアレイ20R,20G,20Bを点灯させ、さらにその後シフトパルスSHの出力と同期して転送パルスの出力を再開するように夫々のパルス生成回路を構成することにより実現できるものである。また、転送パルスの周期を高く設定し、0.9msec.の間に1ラインの蓄積電荷を出力させるように構成することにより、通常の写真フィルムの読取時と同一のタイミング、つまり、シフトパルス及び転送パルスの周期を変えることなく、リニアCCDを駆動制御することができるようになる。尚、シフトパルス及び転送パルスの周期は1ラインの画素数などに基づいて適宜設定可能な値である。
【0040】
上述のシェーディング補正処理を実行する処理部即ちシェーディング補正装置は、上述の画像入力ボード33またはコントローラ3に備えることが可能で、前記転送部R3,G3,B3による信号電荷の転送出力を停止させた状態で、前記感光部R1,G1,B1に蓄積された信号電荷を前記転送部R3,G3,B3にシフトするシフトタイミングの直前または直後の所定時間に前記光源をパルス発光させる発光制御部と、パルス発光の後にシフトされ転送出力された出力信号に基づいて前記光源の光量または前記出力信号を補正するシェーディング補正部により構成することができる。
【0041】
上述した実施形態では、転送パルス生成部で生成されたφ1、φ2の二相の転送クロックパルスにより信号電荷が転送されるものを説明したが、転送クロックはアナログシフトレジスタの構成に依存するもので、二相駆動式以外に四相駆動式などにも適用できるものである。
【0042】
上述した実施形態では、リニアCCDが赤(R)、緑(G)、青(B)夫々に対応した感光部R1,G1,B1、転送電極R2,G2,B2、転送部R3,G3,B3を夫々備えたものを説明したが、リニアCCDの構成はこのようなものに限定されるものではなく、感光部の配列方向に一画素毎に赤(R)、緑(G)、青(B)夫々の波長の光を透過するフィルタを備えた1ラインのリニアCCDなど異なる構成のリニアCCDに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】写真処理装置の外観説明図
【図2】写真処理装置のブロック構成図
【図3】リニアCCDの説明図
【図4】シェーディング補正時の光源点灯シーケンスの説明図
【図5】シェーディング補正時の蓄積電荷の説明図
【図6】従来技術によるシェーディング補正時の光源点灯シーケンスの説明図
【図7】従来技術によるシェーディング補正時の蓄積電荷の説明図
【符号の説明】
【0044】
26:リニアCCD
26a:転送パルス生成部
27b:シフトパルス生成部
R1,G1,B1:感光部
R2,G2,B2:転送電極
R3,G3,B3:転送部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を受光して電荷を蓄積するアレイ状の感光部と、前記感光部に蓄積された信号電荷を外部回路に転送出力する転送部を備えて構成されるリニアCCDに対して、前記光源をパルス発光させたときの前記リニアCCDの出力信号に基づいて前記光源の光量または前記出力信号を補正するシェーディング補正方法であって、
前記転送部による信号電荷の転送出力が停止した状態で、前記感光部に蓄積される信号電荷を前記転送部にシフトするシフトタイミングの直前または直後の所定時間に前記光源をパルス発光させ、その後シフトされた信号電荷を転送出力するシェーディング補正方法。
【請求項2】
前記光源が互いに異なる波長領域の光を出力する複数のLEDアレイで構成されるとともに、前記リニアCCDが光源に対応する波長領域の光を各別に受光する複数のアレイ状の感光部を備えて構成され、前記LEDアレイを同時にパルス発光させる請求項1記載のシェーディング補正方法。
【請求項3】
前記感光部が原稿を透過した光源からの光を受光して電荷を蓄積するフィルムスキャナに設置されるリニアCCDに対して施される請求項1または2記載のシェーディング補正方法。
【請求項4】
光源からの光を受光して電荷を蓄積するアレイ状の感光部と、前記感光部で蓄積された信号電荷を外部回路に転送出力する転送部を備えて構成されるリニアCCDに対して、前記光源をパルス発光させたときの前記リニアCCDの出力信号に基づいて前記光源の光量または前記出力信号を補正するシェーディング補正装置であって、
前記転送部による信号電荷の転送出力が停止した状態で、前記感光部に蓄積された信号電荷を前記転送部にシフトするシフトタイミングの直前または直後の所定時間に前記光源をパルス発光させる発光制御部と、パルス発光の後にシフトされ転送出力された出力信号に基づいて前記光源の光量または前記出力信号を補正するシェーディング補正部を備えて構成されるシェーディング補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−36407(P2007−36407A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213622(P2005−213622)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】