説明

システインジオキシゲナーゼにおける多型

本発明は、関節リウマチに対する及び/又は多数の薬剤による副作用を有することに対する患者の性向を同定するための診断への使用のための、システインジオキシゲナーゼ(CDO)における多型の検出及び同定;多型をコードする核酸及び単離タンパク質;CDO活性並びにCDO活性に影響を及ぼす化合物の同定のためのアッセイ;また、付加的に、関節リウマチを治療するための、異なる化合物と任意に組合せたインターフェロン−γの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチに対する及び/又は多数の薬剤による副作用を有することに対する患者の性向を同定するための診断への使用のための、システインジオキシゲナーゼ(CDO)における多型の検出及び同定;多型をコードする核酸及び単離タンパク質;CDO活性並びにCDO活性に影響を及ぼす化合物の同定のためのアッセイ;また、付加的に、関節リウマチを治療するための、異なる化合物と任意に組合せたインターフェロン−γの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA)は、罹患者の関節における慢性炎症及び組織破壊を特徴とする自己免疫疾患である。この疾患がどのように発症されるかに関する正確な理由は不明である。遺伝的感受性及び微生物伝染の証拠が存在するが、いずれも申し分なく特性化されているわけではない。疾患発症時に、四肢関節の慢性炎症を引き起こし、徐々に罹患者の能力障害を増大させる前炎症性サイトカインの放出増大が認められる。関節周囲の滑膜は、正常サイズよりはるかに大きく成長する。この組織の増殖は、それが蔓延すると靭帯及び骨破壊を引き起こす線維芽細胞の塊りであるパンヌスの形成をもたらす。関節はしばしば、それらの周囲で滑液が集まると、炎症を起こす。滑液それ自体は、血清、リンパ球及び多数の分泌化学シグナルの混合物である。化学シグナルの1つは、罹患個体の慢性炎症及び進行性無能力を永続させる前炎症性サイトカインである。
【0003】
関節リウマチの状況では、前炎症性サイトカインの2つの例は、TNFα(腫瘍壊死因子アルファ)及びIL−1(インターロイキン−1)である。関節リウマチ発症の初期段階におけるシグナル伝達因子の過剰発現は、疾患症候の発症に大いに関与し、そしてサイトカインの永続性合成は罹患状態の保持に関与する。サイトカインを遮断することは、関節リウマチの治療に対する多くの研究の基礎となっている。例えば多数の抗TNF薬が市場に出ている(例えばイフリキシマブ(Centocor製)及びエタネルセプト(Amgen製))。さらに抗IL−1薬も既知である(例えばアナキラ(Amgen製))。
【0004】
システインジオキシゲナーゼ(CDO)は、イオウ含有化合物の代謝に関与する酵素である。それは、システインからのシステインスルホン酸の生成を触媒する。これは次に、多数の異なる経路で用いられ、例えばタウリン、システイン酸、アラニン及びβ−スルフィニルピルベートを産生する。最後の化合物は、それが亜硫酸塩に、次に硫酸塩に代謝されるために、特に関心を引くものである。硫酸塩生成のための他の経路が存在するが、それらはほとんど重要性を有しない。自己免疫成分又は炎症性成分を伴う種々の症状、例えば関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、原発性胆汁性肝硬変、クローン病及び強直性脊椎炎は、これらの疾患を有する患者における高血漿レベルのシステイン及び低血漿濃度の無機硫酸塩と連関することが示されている。
【0005】
硫酸塩は、関節それ自体に見出される滑液、タンパク質及びグリコサミノグリカンのスルホン化に関与する。スルホン化のレベルの低減は、これらの保護特性及び潤滑特性の低減、したがって疾患症状の悪化を引き起こす。
【0006】
非特許文献1は、CDOが無機硫酸塩の酸化的分解に関与する律速酵素である、ということを実証した。炎症症状、例えば関節リウマチ(RA)が患者における高いシステイン:硫酸塩比に関連づけられる、ということに彼等は注目した。腫瘍壊死因子−α(TNF−α)及び形質転換成長因子−β(TGF−β)はいくつかの細胞株におけるCDO産生の発現を抑制することができる、ということを彼等は示した。このようなサイトカインは
、CDO発現を低下させることによりRAの悪化に関与し得る、と彼等は結論づけた。この論文では、抗体及びウエスタンブロッティングを用いてのCDOの検出により、CDOに関してニューロン及び肝臓(Chang)ヒト細胞株がアッセイされた。
【0007】
関節リウマチに関する一般的試験としては、リウマチ因子(RF)試験が挙げられる。リウマチ因子は、ほとんどのRA患者の血中に最終的に存在する抗体である。しかしながら、特に、限定値の陰性結果を生じる疾患の早期では、すべてのRA患者がRFに対して陽性の試験結果を得るわけではない。逆に、RFに対して陽性の試験結果を得る他の患者は疾患を全く発症しない。この試験は関節リウマチを有する患者の60〜70%に関して陽性であり、このことが通常、関節炎を有し他の明白な診断を有しない患者における関節リウマチを診断するための理由である。しかしながらリウマチ因子は、他の疾患においても生じる。
【0008】
多数の一般的生化学的指標も存在し、これは炎症の活性及び程度の何らかの印象を与えるが、これはまた関節リウマチに対して特異的でない。X線又はMRIを用いる放射線学的試験も関節リウマチを検出し得るが、これもまた疾患の進行の後期においてである。さらに、HLA型分類を用いて、DR1及びDR4と関連するマーカーを見つけ出し得る。病院を基礎にした調査における関節リウマチ患者の70〜90%はこれらのマーカーを有するが、一般集団の約30%もこれらのマーカーを共有する。
【非特許文献1】Wilkinson L.J.及びWaring R.H. Toxicol in vitro (2002), pages 481-483
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、関節リウマチに関するさらなる診断試験が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
RA患者並びにRAの家族歴を有する人々におけるCDO又はCDOの発現を制御する調節領域をコードするDNA中に見出される多数の多型が存在し、したがってこのことはRA及び低濃度のCDO間の連関を示唆する、ということを本発明者らは予期せず見出した。さらに、CDO発現に関する新規のアッセイを本発明者らは見出し、そして多数の薬剤、例えばインターフェロン−γ(IFN−γ)がCDO発現を増大することを同定し、したがってIFN−γがRAを治療するために用いられ得るということを示した。
【0011】
EP 0974358Aは、HTLV−1関連疾患を治療するためのIFN−γの使用を示唆している。HTLV−1は、成人性T細胞白血病と関連する。それは多数の他の疾患、例えばシェーグレン症候群、全身性紅斑性狼瘡、ブドウ膜炎及び慢性関節リウマチに関与し得る、ということも推測されている。ただしHTLVは慢性RAと滅多に関連しない、ということが目下既知である。
【0012】
本出願の発明人らは、CDOが関節の構成成分のスルホン化に用いられるための硫酸塩の産生における重要な限定ステップであり得る、と考えた。したがって本発明者らは、2つの異なる集団:即ち関節リウマチを有する集団と対照集団の核酸試料を試験した。CDO遺伝子がシークエンシングされ、対照集団と比較して、関節リウマチ集団では高レベルの突然変異が認められる、ということを本発明者らは予期せず見出した。さらに、同定された突然変異のうちの1つを有する対照のうちの1名が25歳に過ぎないが、関節リウマチの家族歴を有し、したがってこのことは、突然変異が関節リウマチの存在を示唆するマーカーであるだけでなく、その者の人生で後に関節リウマチを発症する可能性を示唆するマーカーでもある、ということを示唆しているということにも本発明者らは注目した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
したがって、本発明は、
CDO媒介性症状を診断する方法であって、以下の工程:
(i)個体から試料を得ること、
(ii)変異型CDO、又はCDO変異型をコードする核酸及び/又はCDO調節領域の変異型の存在若しくは非存在を検出すること、及び、
(iii)CDO遺伝子及び/又はその調節領域における多型に対する照合により個体の状態を決定すること、
を包含する、方法を提供する。
【0014】
生じるスルホン化の量の低減は、CDOタンパク質のいずれかの発現低減に起因し得る。好ましくは調節領域は、CDOをコードする領域に対して5’方向にある。それは、プロモーター又はエンハンサー領域であり得る。或いは、CDOタンパク質は産生され得るが、当該タンパク質をコードするDNA中の突然変異がCDO中の1つ又は複数のアミノ酸における変化を生じ、したがってより低い酵素活性を有するCDOを生じる。CDOタンパク質産生のレベル低減及びCDOの酵素活性低減は、産生される硫酸塩の量の低減を生じる。それゆえ、変異型CDOは、正常レベルのCDOを有する正常個体と比較して、CDO変異型、その調節領域をコードする核酸内の多型を探すことにより、又は代替的にはこのような変異型から産生されるタンパク質のタンパク質構造の変化を探すことにより、検出され得る。
【0015】
CDOの正常レベルは、10〜30、あるいは5〜100ピコモル/タンパク質1mgの範囲であると考えられる。正常CDOの酵素活性は、10〜30、あるいは5〜100ピコモル/タンパク質1mg/時間と考えられる。
【0016】
本発明はまた、ヒトにおけるCDO遺伝子又はその調節配列における1つ又は複数の多型を診断する方法であって、CDO遺伝子の少なくとも一部をコードする核酸分子及び/又はCDO調節領域の配列を決定すること、及び、CDO遺伝子及び/又はその調節領域における多型に対する照合によりヒトの状態を決定することを包含する、方法を提供する。
【0017】
多型は、一集団内の2つ以上の遺伝的に決定された選択的アレル又は配列の出現を指す。多型マーカーは、多様化が起こる部位である。例えば塩基、例えばアデニンは、異なる塩基、例えばチミンに取って代わられ得る。代替的には、1つ又は複数の付加的塩基がその部位に挿入され得る。一塩基が別の塩基に置換される多型は、核酸配列に由来するメッセンジャーRNAが最終酵素に翻訳される場合、異なるアミノ酸がタンパク質中に挿入されるように、例えばコドンの変化を生じ得る。例えばGCCは、アラニンをコードするコドンである。このコドンが、アデニン残基を含有するように変えられる場合(例えばGAC)、コドンは読み違えられ、そしてアラニンの代わりにアスパラギン酸の挿入を生じる。1つ又は複数の塩基の置換は、例えば終止コドンの産生を生じて、タンパク質の生成の終結を引き起こす。このような置換は、それらが調節配列、例えばCDO遺伝子の上流のプロモーター配列で起こる場合、CDOの発現レベルの低減を生じ得る。代替的には、プロセシングシグナルをコードする配列における変化も、最終CDO産物の発現に影響を及ぼし得る。
【0018】
その他の突然変異としては、1つ又は複数の塩基が調節配列又はCDO配列それ自体をコードするDNA中に挿入される付加突然変異、及び、1つ又は複数の塩基がDNAから欠失される欠失突然変異が挙げられる。このような欠失は、切頭化タンパク質の産生を生じ得るし、代替的にはCDO遺伝子の発現のレベル低減を生じ得る。
【0019】
好ましくは2つ以上の多型が探される。好ましくはマーカーは少なくとも2つのアレルを有し、その各々は、選択集団、例えばRAを有する集団のうちの1%より大きい、さらに好ましくは少なくとも10%、15%、20%、30%又はそれより大きい頻度で起こる。
【0020】
単一ヌクレオチド多型(SNP)は一般的に、その名称が意味するように、或る種のいくつかのメンバーの核酸配列中に存在する単一ヌクレオチド又は点変異である。種内のこのような多型変異は、一般的に、進化を通しての偶発突然変異の結果であるとみなされる。
【0021】
多型は、mRNA合成、成熟、輸送及び安定性にも影響を及ぼし得る。アミノ酸変化を生じない多型(サイレント多型)又はいかなる既知のコンセンサス配列も変更しない多型であっても、例えばmRNAフォールディング、安定性、スプライシング、転写率、翻訳率又は正確性を変更することにより、生物学的作用を有し得る。実際、アミノ酸変化を生じない多型でも、潜在的に異なる生物学的機能を有するmRNAの異なる構造フォールドを引き起こし得る、ということが報告されている(Shen, et al. (1999) PNAS USA, Vol.
96, pages 7871-7876)。したがってイントロン配列及びプロモーター領域におけるようなコード配列の外側に起こる変化は、その配列の転写及び/又はメッセンジャー安定性に影響を及ぼし、したがって細胞中のCDOタンパク質のレベルに影響を及ぼし得る。
【0022】
好ましくは、上記多型が以下の多型から選択される。
【0023】
【表1】

【0024】
CDOが5つのエキソンを含むことが知られている。CDOのヌクレオチド配列は、http://www.ncbi.nlm.nih.govでアクセスすることができるGenbankから入手可能である。ヌクレオチド配列は3つのセグメントで入手可能である。CDOセグメント1は4186ヌクレオチド長であり、エキソン1(ヌクレオチド609〜1026)及びエキソン2(ヌクレオチド4000〜4077)を含み、Genbankアクセッション番号U60232.1、GI:2138108によってアクセスすることができる。CDOセグメント2は2739ヌクレオチド長であり、エキソン3(ヌクレオチド1735〜1889)を含み、Genbankアクセッション番号U78979.1、GI:1699035によってアクセスすることができる。CDOセグメント3は2995ヌクレオチド長であり、エキソン4(ヌクレオチド1115〜1284)及びエキソン5(ヌクレオチド2173〜2907)を含み、Genbankアクセッション番号U80055.1、GI
:2138109によってアクセスすることができる。
【0025】
配列リストにおいて、セグメント1=配列番号1、セグメント2=配列番号2、セグメント3=配列番号3、エキソン1=配列番号4、エキソン2=配列番号5、エキソン3=配列番号6、エキソン4=配列番号7及びエキソン5=配列番号8である。
【0026】
上記のSNP配位は、NCBIデータバンクより入手可能な野生型のCDOヌクレオチド配列を表す。エキソン1に関して、その配位はセグメント1(すなわち、配列番号1)の番号付けに対応する。したがって、同定された多型は、エキソン1のコード配列内に位置しておらず、エキソン1の隣接領域内に位置している。エキソン3及びエキソン4に関して、それらのSNP配位はエキソン3(すなわち、配列番号6)及びエキソン4(すなわち、配列番号7)それぞれの番号付けに対応する。
【0027】
多型はゲノムDNAにおいて検出することができる。代替的に、多型はmRNA等のRNA又はこのようなmRNAから得られたcDNAにおいて検出することができる。
【0028】
本発明の方法は、上記ヒトが低減したCDO濃度及び/又は酵素活性が低減したCDOを有するという指標を提供する。
【0029】
試料は、例えば血液又はその他の身体組織、或いは口腔検査スワブから得ることができる。診断は、好ましくはin vitroで実行される。
【0030】
CDO媒介性症状は、関節リウマチ、及び/又はD−ペニシラミン及び金チオマレートから選択される1つ又は複数の薬剤による副作用の発症であり得る。
【0031】
診断を手助けするために、1つ又は複数の多型の存在又は非存在を用いる。
【0032】
例えば関節リウマチを発症することに対する個体又はヒトの性向を同定する能力は、関節リウマチの疼痛性症候の発生の前に、例えばメトトレキセートを用いて個体を治療することを可能にする。これは、糜爛性関節リウマチを発症する患者を防止するのに役立つ。それは、このような個体が早期に同定され、そして関節リウマチの完全な発症を防止する手助けをすることにより彼等の生活の質がかなり改善され得る、ということを意味する。
【0033】
D−ペニシラミン及び金チオマレートのような薬剤は、このような化合物で治療されている関節リウマチ患者において副作用を引き起こすことが既知である。当該薬剤は、それらの患者における低レベルのCDO又は低レベルの活性CDOのため(おそらくは)に、適正に酸化されることができない。それゆえ、このような副作用を蒙ると思われる患者を同定することができることが助けとなるが、それは、患者を代替的投薬に委ねさせ得るからである。
【0034】
核酸の一量域内の多型の存在又は非存在を同定する方法は、それ自体、一般的に既知である。
【0035】
好ましくは多型は、多型を同定する前に、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅される。これは、多型の上流の配列に対するプライマーを用い、多型をコードする一本の核酸を増幅し、次に増幅配列をシークエンシングすることにより簡単に達成され得る。代替的には、プライマーが多型部位とハイブリダイズして、次にPCR産物を産生するために用いられるように、プライマーは多型の部位に関し得、当該多型配列と実質的に相補的なプライマーの配列を有する。当該多型がそこにない場合には、プライマーはその部位に結合せず、そしてPCR産物を産生しない。その結果、検出に利用可能なPCR産物は存在しない。
リアルタイムPCRを用いて、SNPを同定し得る。リアルタイムPCRは、例えば蛍光発生分子によりプライマー、プローブ及びアンプリコンを標識する種々の化学作用の出現のため、発展してきた。反応は通常は、キュベットとして作用する毛管中で設定されて、各周期の終了時に蛍光シグナルをモニタリングさせる。これは、同一管内で標的増幅及び検出を起こさせて、後増幅プロセシング及び検出の必要性を排除する閉管系を作り出す。例えば国際公開第97/46712号は、サーマルサイクリング法及び装置を開示している。
【0036】
国際公開第00/18965号は、突然変異又は多型の存在の検出に関する方法を開示している。この方法は、ポリメラーゼ連鎖反応及び蛍光標識オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを用いて、ハイブリダイゼーションプローブの融解曲線分析に基づいて突然変異及び多型を同定する。用いられるフルオロフォアは、当該技術分野で既知の多数の異なる化合物、例えばエチジウムブロマイド、YO−PRO−1及びSYBR Green Iのうちの1つであり得る。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、2つのハイブリダイゼーションプローブの隣接アニーリングによっている(Lay N.J. and Wittwer C.T. Clin. Chem. (1997), Vol. 43, pages 2262-2267)。第1のプローブはその3’末端に供与ダイを含有し、そして他のものはその5’末端に受容ダイを含有する。外部供給源により光が加えられると、蛍光共鳴エネルギー移動プロセスにおいてドナー染料は励起され、そして受容染料にエネルギーを移動する。両プライマーが密に近接してアニールする場合のみ、エネルギー移動が可能である。それゆえ、このような技法は、特定多型への相補的プライマーの結合の検出を可能にする。
【0037】
代替的には、潜在的多型部位周囲の核酸の増幅といったあまり複雑でない技法が成され得る。増幅DNAは、例えば電気泳動を用いることによって分離され、そしてDNAは、当該多型と相補的な標識プローブを用いてプローブされ得る。標識プローブは、放射性標識、又は例えば当該技術分野で既知の蛍光標識を用いて標識され得る。
【0038】
用いられる方法としては、好ましくは、ARMS−アレル特異的増幅、アレル特異的ハイブリダイゼーション、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ及び制限断片長多型(RFLP)から選択される方法により核酸配列が決定される本発明による方法が挙げられる。ARMS−アレル特異的増幅は、例えば欧州特許第0332435号及び米国特許第5,595,890号に記載されている。これは、プライマーの3’末端ヌクレオチド及びその鋳型の相補性によっている。プライマーの3’末端ヌクレオチドは、検出されるべき特定の突然変異、アレル又は多型と相補性であるか又は非相補性である。RFLPは、制限エンドヌクレアーゼ部位に影響を及ぼす配列の変更、及び制限酵素によるその部位の消化の防止によっている。
【0039】
個体における1つ又は複数の、好ましくは2つ以上の異なる多型の存在又は非存在は、例えば関節リウマチを発症する及び/又は薬剤に対する副作用を発症することに対するヒトの性向を決定させ得る。このCDO欠陥と関連し得る他の疾患としては、自己免疫疾患、例えば全身性紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、ブドウ膜炎、クローン病、強直性脊椎炎、神経変成疾患、例えばパーキンソン病及びアルツハイマー病及び運動神経疾患が挙げられる。このCDO欠陥と関連し得るさらなる疾患としては、炎症性サイトカインに対する抗体を包含するものが挙げられる。
【0040】
本発明は、本発明による方法に用いるためのアレル特異的プローブ又はプライマーも提供する。上記のように、多型を同定するために用いられるプロセスは、それ自体一般的に既知である。適切なプローブ又はプライマーの同定は、多型部位が一旦同定されれば、それ自体普通は当業者の知識内である。
【0041】
好ましいプローブ又はプライマーは、以下の配列を含む。
【0042】
【表2】

【0043】
エキソン1プライマーは、最初に、アクセッション番号D85778.1 GI:1747325(エキソン1)の配列とハイブリダイズするように意図されたもので、これは、www.ncbi.nlm.nih.govで公的に入手可能である。
【0044】
好ましいプローブは、対象の当該SNPを含有する核酸の領域と特異的にハイブリダイズし、そして適切な特質、例えば特異性、融解温度でプライマーを設計するための技法を当業者は熟知している。
【0045】
好ましくは、プローブ又はプライマーは、以下の多型を検出することが可能である。
【0046】
【表3】

【0047】
本発明のプローブ又はプライマーは、好ましくは検出されるべき多型に対応し、即ち、それらは検出されるべき多型と相補的である。本発明のプローブ又はプライマーは、好ましくは17〜50ヌクレオチド長、さらに好ましくは約17〜30ヌクレオチド長である。プライマー又はプローブは、多型の約6〜8のヌクレオチドに対応し得る。
【0048】
プローブ又はプライマーが単にプローブとして、即ち、PCRのためのプライマーとしてというよりむしろ標識として用いられている場合、プローブのサイズは、例えば8〜25塩基長、好ましくは8〜15塩基長に低減され得る。
【0049】
好ましくは本発明のプローブ又はプライマーは、多型部位と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の相同性を有する。好ましくはそれらは、多型部位と同一であり、或いは代替的には多型部位と相補的である。プローブ又はプライマーは、もちろん、多型を含有するCDOをコードする核酸の鎖又はその調節領域と結合し得るし、代替的にはその相補的鎖(存在する場合)と結合し得る。
【0050】
また、本発明による1つ又は複数のプローブ又はプライマーを含む診断キットも提供される。
【0051】
本発明のさらなる態様は、CDO又はCDO調節性多型をコードするか又はかかる多型と相補的な少なくとも5塩基長の単離核酸を提供する。好ましくは、当該多型は以下の配列及びこのような配列と相補的な配列から選択される。
【0052】
【表4】

好ましくは、単離核酸は少なくとも10、15、20、30又は40の塩基を有する。
【0053】
さらに好ましくは単離核酸分子は、CDO又はその断片をコードし、これはさらに好ましくは多型を含有する。
【0054】
このような核酸分子から得られる単離CDOタンパク質も提供される。単離核酸分子からの組換えタンパク質を産生する方法は、当該技術分野で既知である。単離核酸分子は、適切なベクター中にクローン化され、そして適切な原核生物又は真核生物宿主中で発現される。
【0055】
したがって、本発明の単離核酸分子を含有するベクター及び宿主細胞も、本発明により提供される。このようなベクターは、好ましくは当該技術分野で既知の型の適切なプロモーター及び終結配列を含有する。代替的には、CDOそれ自体のプロモーター及び調節配列が用いられ、これらの配列のうちの1つ又は複数に及ぼす多型の作用を試験させ得る。後者の場合、調節配列は、その発現が容易にアッセイされ得るβ−ガラクトシダーゼ又は緑色蛍光タンパク質のような当該技術分野で既知の適切なレポーター配列に付着され得る。
【0056】
上記のように、多型はCDOのアミノ酸配列中の変化を生じ、したがって酵素の構造における変化を生じ得る。酵素の構造におけるこのような変化は、1つ又は複数の抗体、例えばCDOタンパク質に特異的なモノクローナル抗体の単離により容易に同定され得る。即ち、抗体は、コード核酸配列中の多型を含有しないCDOに結合しない。モノクローナル抗体の産生は、例えばケーラー及びミルステインの方法により、それ自体既知である。
【0057】
本発明のさらなる態様は、CDO媒介性症状に対する個体の性向を決定する方法であって、以下の工程:
(i)個体から試料を得ること、及び、
(ii)本発明による抗体を用いて多型を含有するCDOの存在を検出すること、
を包含する、方法を提供する。
【0058】
好ましくは、CDOは白血球中で発現される、ということを本発明者らは予期せず見出した。従来、CDOは脳及び肺組織中に見出されている。このような組織は、容易にアクセス可能であるというわけではない。したがって、好ましくは本発明の方法に用いられる試料、例えば変異型CDO又はCDOをコードする核酸、或いはもちろんその調節配列の
試料は、白血球から得られる。
【0059】
CDOを含有する組織試料が比較的容易に利用可能であることにより、CDO活性のアッセイを行うことが可能である。したがって、本発明のさらなる態様は、CDO活性に及ぼす化合物の効果を決定する方法であって、以下の工程:
(i)白血球の試料を用意すること、
(ii)白血球をCDO基質及び化合物と接触させること、及び、
(iii)白血球中のCDOによる、検出可能な産物への基質の転化に及ぼす、化合物の効果を決定すること、
を包含する、方法を提供する。
【0060】
CDO基質の例としては、システイン、S−カルボキシメチルシステイン、S−メチルシステイン、金チオマレート、N−アセチルシステイン、アルキル−システイン及びD−ペニシラミンが挙げられる。これらの基質は分解して、システインスルフィン酸を含めた生成物を生じる。このような方法は、関節リウマチの治療のための薬剤候補を同定するのに用いられ得る。即ち、白血球内のCDO発現に及ぼす、例えばサイトカイン又は代替的には異なる化合物の作用が決定され得る。
【0061】
本発明者らによるさらなる研究は、インターフェロン−γ(IFN−γ)がCDO発現を増大し得る、ということを示した。これは、CDO発現を低減するTNF−αと対照をなす。
【0062】
CDOはヒト身体中の硫酸塩の取り込みにとって極めて重要であり、また、低レベルの硫酸塩は関節リウマチに関連するので、IFN−γは治療薬として用いられ得る、と予測される。
【0063】
したがって、本発明は、関節リウマチを治療する方法であって、薬学的有効量のインターフェロン−γ(IFN−γ)を投与することを包含する方法を提供する。好ましくは、関節リウマチは、非HTLV−1関連関節リウマチである。すでに示したように、HTLV−1関連関節リウマチは相対的に稀であると考えられる。
【0064】
インターフェロン−γは、硫酸塩産生のレベルを上げることが可能な1つ又は複数の化合物と組合せて投与することができる。これらの化合物としては、システイン、メチオニン、D−ペニシラミン、N−アセチルシステイン、S−アルキルシステイン、γ−グルタミルシステイン、インターロイキン−4及びインターロイキン−10が挙げられる。
【0065】
関節リウマチを治療するための薬剤の製造において用いるためのIFN−γであって、任意に上記の硫酸塩誘導性化合物とともに用いるためのIFN−γも提供される。
【0066】
本発明のさらなる他の態様は、例えば以下の:システイン、メチオニン、D−ペニシラミン、N−アセチルシステイン、S−アルキルシステイン、γ−グルタミルシステイン、インターロイキン−4、S−カルボキシメチル、S−メチルシステイン及びインターロイキン−10の1つ又は複数の硫酸塩誘導性化合物と組合せたインターフェロン−γを含む薬学的に許容可能な組成物を提供する。
【0067】
インターフェロン−γは、重篤な感染を低減するのを手助けするための慢性肉芽腫症の治療における臨床的使用のためにすでに認可されている。その投与量は、90マイクログラムを週3回である。関節リウマチの治療に適した投与用量は、同様の投与量限度内であると予測される。
【0068】
IFN−γ及び任意に上で言及されたその他の化合物は、グルコース、スクロース又はトレハロースのような1つ又は複数の安定剤と組合せて用いられ得る。IFN−γ及び/又は硫酸塩誘導性化合物の薬学的に許容可能な塩が用いられ得る。
【0069】
さらに、1つ又は複数の薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤、充填剤、安定剤、pH調整剤、生物学的活性物質等が組入れられ得る。
【0070】
好ましくは物質は、経口投与可能剤、例えばカプセル、粉末又は錠剤になるように形成される。代替的には、それは別の経路、例えば筋肉内注射により用いられ得る。
【0071】
本発明は、図面を参照しながら、もっぱら例示として説明される。
【実施例】
【0072】
[材料及び方法]
ゲノムDNA試料を、関節リウマチ(RA)患者及び対照ボランティア(C)からの血液から得た。静脈穿刺により、血液をEDTA処理試験管中に収集した。以下のようにPCRを実行した。
【0073】
[プライマー設計]
CDOのエキソン1、2、3及び4の増幅のために、特定のPCRプライマーを設計した。NCBIデータベース(www.ncbi.nlm.nih.gov)から入手した配列データ及びPrimer 3インターネット・ベースのプライマー設計ツール(http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3_www.cgi、これはMassachusetts Institute of Technology, http://web.mit.edu/index.htmlが主催する)を用いて、プライマーを設計した。オリゴヌクレオチドプライマーはAlta Biosciences(Birmingham, UK)により合成され、その後、蒸留水で100pmol/μl濃度に希釈された。
【0074】
[ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)]
PCRにより、CDOエキソン2、3及び4を増幅した。
【0075】
各エキソンに関する各プライマー(10pmole/mlのストック溶液)の試料10μlを混合し、蒸留水中でさらに希釈して5pmole/μlの濃度にして、各エキソンに関するフォワード及びリバースプライマーの混合溶液を生成した。反応のための鋳型DNAは、2つの型を有した:即ち、対照「C」及び「RA」。多くの対照及び患者試料が利用可能であった。対照試料は単に数字で呼ばれたが、一方、RA患者DNA試料は接頭辞「A」のついた数字で示された。そこで、鋳型試料は90、91、92、93及び94(対照)、並びにA11、A12、A13、A14、A16、A17、A18及びA19(RA)であった。PCR反応をサーモサイクラー中で実行した。
【0076】
以下の反応を、0.5mlマイクロチューブ中で、氷上で設定した:
DNA 3μl
10×PCR緩衝液 5μl
dNTPミックス(200μM) 2.5μl
フォワードプライマー 2.5μl
リバースプライマー 2.5μl
ポリメラーゼ 2U
滅菌水 50μlまで
【0077】
dNTPミックス、ポリメラーゼ及びPCR緩衝液は、Bioline(London, UK)から入手した。PCR緩衝液は、NH4反応緩衝液であった。DMSO(ジメチルスルホキシド
)も、いくつかの反応で用いた。塩化マグネシウム(50nM)を、1〜5μlの体積で添加した。PCR混合物の総体積は50μlであった。
【0078】
一般的なPCRプログラム:
1. 94°Cで5分間。融解工程。
2. 94°Cで30秒間。融解工程。
3. 53°C*で30秒間。アニーリング工程。
4. 72°Cで1分間。伸長工程。
5. 段階2〜段階4を30サイクル繰り返す。
6. 72°Cで10分間。最終伸長工程。
*アニーリング温度をプライマーの融解温度を算定して、5℃差し引くことにより決定した。プライマーの融解温度は、当業者に既知の方程式を用いて算定され得る。
【0079】
初期PCRを実施した後、直ぐに上手くいかない場合はタッチダウンPCRの使用が促された。タッチダウンPCRは、アニーリング温度がサイクルを通して定期的に変化する非典型的プロトコルを使用する。それは予測アニーリング温度より高い温度で開始し、何組目か(例えば5回)のサイクルの後に、1℃だけ下がり、最後に、最終組のサイクルで「タッチダウン」アニーリング温度に到達する。これを行なう理由は、PCRプロトコルのアニーリング温度を調整する必要があるか否かを調べるためである。タッチダウンPCRは、擬似プライミングを減少することも示されており(Don, RH, Cox, PT, Wainwright, BJ, Baker, K and Mattick, JS (1991). "Touchdown" PCR to circumvent spurious priming during gene amplification. Nucleic Acids Research 19: 4008)、即ち、正しくない位置でのプライマーの非特異的アニーリングは多数の異なるPCR産物の産生を生じ、したがってゲル上に不十分な(スメア又は拡散)バンドを示す。
【0080】
【表5】

【0081】
[PCR最適化]
システインジオキシゲナーゼのエキソン2、3及び4を正確に且つ確実に増幅するために、PCRプロトコルを最適化した。いくつかの戦略を用いて最適化を実行したが、そのほとんどが、特定の反応構成成分の濃度を変えること、或いは添加剤の存在又は非存在で実験することを包含した。制御された変数を以下に示す:
・塩化マグネシウム濃度。
・鋳型DNA濃度。
・プライマー濃度。
・プライマー設計。
・DMSO添加/非添加。
【0082】
しかし、エキソン1に関しては、以下のPCRプログラムを使用した:
段階1. 94°Cで1分間を1サイクル
段階2. 94°Cで30秒間
61°Cで30秒間
72°Cで1分間
を30サイクル
段階3. 72°Cで10分間を1サイクル。
そして、反応成分は以下の成分:
DNA 3μl
10×PCR緩衝液 5μl
dNTPミックス 2.5μl
エキソン1に対するプライマー 2つのプライマーそれぞれ12.5μl(それぞれ10μuMの濃度)
ポリメラーゼ酵素混合物 2U
滅菌水 50μlまで
であった。
【0083】
アガロースゲル電気泳動及びその後のDNA「プラスミド−プロファイル」シークエンシングにより、これらの実験結果を評価する。
【0084】
[エキソン1のPCR増幅]
標準PCR又はタッチダウンPCRを用いて、配列番号9及び配列番号10で示されるPCRプライマーを用いて、エキソン1を増幅した。エキソン1は、配列番号9及び配列番号17のプライマーを用いてタッチダウンPCRによっても増幅された。
【0085】
[アガロースゲル電気泳動]
この研究の異なる段階で、1、2及び3%のアガロースゲルを用いた。TAE緩衝液中でアガロースゲルを調製した。TAE緩衝液の50×ストックの組成は、以下の通りである:242gのトリス塩基、57.1mlの氷酢酸、100mlの0.5M EDTA(pH8);蒸留水で全体を1リットルにする。標準方法(Molecular Cloning: Sambrook,
Fritsch and Maniatis, 1989)に従ってアガロースゲルを調製した。アガロースゲルはエチジウムブロマイド(Sigma)を標準濃度で含んだ。
【0086】
PCRの完了後、PCR産物の10μlアリコートを、0.5mlマイクロチューブ中の4μl体積のゲルローディングダイ(この場合、オレンジG及びグリセロール)に添加した。次にこれらの試料をゲルに負荷した。PCR産物のほかに、2μlのローディングダイ及び5μlの100bp DNAラダー(Bioline)の混合物をすべてのゲルの最初のウエル中にピペット添加した。種々の時間(通常は少なくとも1時間)、125ボルトでゲルを泳動させて、UV光で観察した場合に目視でそれらが分離するのに十分にゲル全体にDNA断片を移動させた。バンドの適切な分解能及び十分な分離を達成するために、電気泳動条件を最適化した。
【0087】
[PCR産物精製]
ゲル電気泳動後、選択されたPCR産物を精製して、生成混合物の他の構成成分(変性TaqDNAポリメラーゼ、プライマー、dNTP等)からDNAを単離した。これを、Qiagen PCR産物精製キット(Qiagen, UK)を用いて実施した。このキットは、多数の緩衝液(結合緩衝液、洗浄緩衝液及び溶離緩衝液)及びスピンカラムを用いて、PCR混合物からDNAを単離する。メーカーの使用説明書(キットとともに提供される)に従って、キットを用いた。このキットは、緩衝液EB(溶離緩衝液)の50μl溶液中にPCR産物からDNAを溶離する。
【0088】
[ゲル抽出]
PCR後に純DNA試料を得るために用いられる別の方法は、アガロースゲルからの対
象のバンドの抽出である。インターカレートしたエチジウムブロマイドは、UV光下でDNAバンドを同定させる。鋭利な清浄メスを用いて、ゲルから対象のバンドを切り出した。切除バンドを1.5ml微量遠心管中に入れて、Qiagenゲル抽出キット(Qiagen, UK)を用いてDNAを単離した。このキットは、多数の緩衝液(PCR精製キットのものと同様)及びスピンカラム(PCR精製キットからのものと同一)で構成された。体積50μlの溶離緩衝液(緩衝液EB)中に、最終精製DNA試料が得られる。
【0089】
[DNA定量]
供試試料が特定量のDNA(本件の場合は、200ng〜600ngのDNA)を含有することを、DNAシークエンシングは必要とする。したがって、260nmの波長でUV分光測光法を用いて、精製プロセスから結果的に生じる溶液中に存在するDNAの量を定量した。吸光度値をDNAナノグラム/マイクロリットルに変換するために、以下の既知の計算を実施した:
UV吸光度×50×500=DNA(ng/μl)
【0090】
[シークエンシングのためのDNA試料の調製]
「プラスミド−プロファイル」シークエンシングのためのDNAの正確な濃度は、200〜600ng/mlであるとして引用されている(メーカーにより)。研究のこの段階で、実験の一部は、最適結果のためのシークエンシング溶液中のDNAの最適濃度を決定することを目標とした。実験後、試料を希釈してDNAを適切な濃度にして、最適結果を提供した。最後に、適切なプライマーのアリコート(プライマーの5pmole/μl溶液0.64μl)をDNA試料に添加して、シークエンシング試料中のプライマーの量を3.2pmole(0.64×5=3.2)とした。次にこれを、「プラスミド−プロファイル」シークエンシングのために、バーミンガム大学の機能的ゲノム学研究所(University of Birmingham Functional Genomics Laboratory)に付託した。
【0091】
[シークエンス分析]
Functional Genomics Laboratory ウエブサイトにおけるChromas(商標)(ソフトウエア:Chromas v4.1(商標)及びChromasPro v1.5(商標)(著作権)Telynesium Pty. Ltd. http://www.telynesium.com.au)フォーマット(.ab1 ファイル)で、完了シークエンシング結果が得られる。これらは、Chromasソフトウエアを用いて開かれ、読まれ得る。このソフトウエア内で、シークエンシングから得られた配列データに関するBLAST検索を実施することが可能である(インターネット接続と連携して)。この検索の結果、クエリ配列(即ちシークエンシングをプロファイリングするためのプラスミドからのデータ)との相同性を示す、多数の供給源からの遺伝子配列及びDNA配列の一覧が、相同順に整列され与えられる。これらの結果は、「BLASTヒット」と呼ばれる。シークエンシングが完全にうまくいった場合、BLASTヒットのトップは「ホモサピエンス・システインジオキシゲナーゼ・エキソン・・・(Homo sapiens Cysteine Dioxygenase Exon...)」である。配列アラインメント線図もBLAST出力に含まれ、整合がクエリ配列と参照配列との間でどれくらい近いかを示す。これは2つの重要な用途を供し得る:第1に、それは、シークエンシング結果中に存在する任意の不一致を示し得る(したがってシークエンシング成功の測定値であり得る)、そして第2に、シークエンスされた試料中に存在する任意の多型を示し得る。これはこの試験の重要な目的、即ち、疾患症候に影響を及ぼし得る対照と疾患CDO遺伝子との間の任意の多型を同定することである。関節リウマチ患者におけるCDO活性低減を説明し得る多型、例えば活性部位ドメインにおける有害多型が見出された場合、これは、in vivoで観察された現象、即ち高血漿システインレベルを説明するのにいくらか役立ち得る。
【0092】
[結果]
[プライマー設計]
プライマー3ウェブツール(Primer 3インターネットプライマー設計ツール、http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3_www.cgi(これはMassachusetts Institute of Technology, http://web.mit.edu/index.htmlが主催する))を用いて、PCR反応のためのオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。全組のプライマーに関して、遺伝子のその特定セクションに関するイントロン及びエキソンの配列(例えばエキソン2、3又は4)をプライマー3中にアップロードした。次にプライマー3は、各エキソンのために用いられ得るプライマーのいくつかの組を組み立てた。付加的情報、例えばプライマーの融解温度、それらの特異性も予測された。用いられる最初の3組のプライマーに関する結果、及びエキソン1プライマーに関する結果を、図3に示す。
【0093】
[PCR最適化]
PCRは、ごく高感度の技法である。それは外因性DNAによる汚染傾向が強く、反応は多数の構成成分を有し、その相対比は反応の成否を大きく左右する。これらの変数を試験して、最適濃度を決定した。理論的には、反応のすべての構成成分を修正し得るが、この研究の目的のために、重要な変数のみを調べた。PCR反応の定数因子及び変数因子を以下に示す。
定数因子:TaqDNAポリメラーゼの濃度及び容量、
プライマー容量、
緩衝液の濃度及び容量、
塩化マグネシウム濃度、
鋳型DNA容量。
変数因子:プライマー濃度、
プライマー配列、
鋳型濃度、
塩化マグネシウム溶液の容量、
DMSO添加剤の有無。
【0094】
これらのパラメーターに加えて、2つの異なる型の鋳型DNAをこの試験に用い、したがってエキソン2、3及び4の増幅のためのPCR条件は、両鋳型に関して最適化されなければならなかった。理論的には、異なる鋳型は同一条件下で首尾よく増幅され得るが、この場合、対照DNA及び関節リウマチDNAはPCRによる増幅のための異なる要件を有する、ということが判明した(後述の結果参照)。
【0095】
[アガロースゲル電気泳動分離]
PCR反応の成否を評価するために、10μl体積のPCR産物をアガロースゲル上で泳動させた。2%アガロースゲルは、主として小分子(<300bp)用でありそしてそれより高いパーセンテージのゲルはより小さい分子をより多く分離するので、この研究からのPCR産物のために最も適切である、ということが判明した。120ボルトの電圧でのゲルの泳動は、バンドの分解能とゲルを泳動するのに要する時間との間の最良の平衡をもたらし、この電圧でのゲルの泳動は約75分を要する(データは示されていない)、ということも判明した。ゲルは、ローディングダイ(オレンジG及びグリセロール)がウエルからゲルの長さの約4分の3移動すると、完了となるとみなされた。
【0096】
[初回PCRテスト]
一般的なプロトコル(材料及び方法参照)及び反応構成成分を用いて実施されたCDOエキソンを増幅しようと試みる初回反応は、非常に限定された成功を実証したが、このことは、増幅が非常に多大な最適化を要する、ということを示す。電気泳動による試験は、この反応で増幅されるDNAは全くなく(又はごくわずかであり)、そして提供されるDNAラダーは取り替えられなければならない(ラダーはゲル上には認められない)、とい
うことを示した。このゲル上のDNAのこの欠如は、対照鋳型DNA試料はいかなるDNAも含有しない、ということを意味し得た。しかしながらこれは、対照鋳型試料のアリコートがゲル上で泳動されると、除外され、このことは、それが実際にDNAを含有することを示した。
【0097】
初回に首尾よくいかない可能性のある理由を調べるために、タッチダウンPCRプロトコルを3つのCDOエキソンのために設計された特異的プライマーの周囲に考案した。58℃の平均融解温度(したがって53℃のPCRアニーリング温度)で、タッチダウンプロトコルは約53℃の一連の温度から下げ、48℃の温度に達する。そのプロトコルを以下に示す。
【0098】
【表6】

【0099】
このプロトコルの使用は部分的に上首尾のPCRを生じたが、この場合、CDOエキソン3及び4が増幅され、一方、エキソン2に関しては首尾よくいかなかった。図4は、タッチダウンPCR産物のゲル電気泳動を示す。
【0100】
図4は、PCRがエキソン3及び4に関しては上首尾であったが、それはエキソン2に関しては不首尾に終わった、ということを示す。バンドの試験時に、バンドは分離が不十
分で、そしてバンドそれ自体より下の位置にスメアを示す、ということが分かる。これは、標的産物より大きい非特異的産物を産生するPCR反応により引き起こされる。この結果から、添加剤としてジメチルスルホキシド(DMSO)をPCR反応に付加する、ことが示唆された。図5は、DMSO添加剤を用いて実施された最初のPCRの結果を示し、それは、エキソン2、3及び4が増幅されたことを示す。バンドの強度は、エチジウムブロマイドの相対濃度及び(推測として)ゲルのその領域におけるDNAの量を示す。最も明るいバンドはエキソン3のバンドであり、したがって今までのところ、PCRはエキソン3で最良に働いた、と推測することができる。
【0101】
図11は、エキソン1の増幅からのPCR産物を示す。
【0102】
[塩化マグネシウム濃度]
「マグネシウム勾配」を行うことにより、PCR混合物中の塩化マグネシウム(MgCl2)溶液の最適濃度の決定を実施した。ここでは、異なる体積のMgCl2を用いて多数の反応が設定され、そして結果はアガロースゲル上でPCR産物を分離することにより評価される。通常、PCR反応におけるMgCl2容量の範囲は1〜5μlである。図6は、対照DNA鋳型を用いた場合の第1のマグネシウム勾配を示す。この初回の結果から、増幅DNAバンドは、マグネシウム濃度が4μl又は2μlであった反応では少し明るい(より高濃度のDNAを示す)ということが分かる。しかしながらその差はごくわずかである。ほとんどのバンド上にスメアが存在するが、これは、反応が非効率的に起こり、種々の長さの産物のアレイを産生した、ということを示す。
【0103】
[プライマー]
最良のPCR結果を生じる組を同定するために、この研究の経過全体を通してプライマーのいくつかの対が設計されなければならなかった。これらはすべて、プライマー3(Primer 3インターネットプライマー設計ツール、http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3_www.cgi(これはMassachusetts Institute of Technology, http://web.mit.edu/index.htmlが主催する))インターネットツールを用いて設計した。5組のプライマーすべてにおいて試験した。PCRは一貫して十分に生じて、新規のプライマーを必要としなかったので、最適化実験の経過全体を通して、新規のプライマーを設計しなければならないということなく、エキソン3及び4の増幅を最適化し得た。しかしながら、PCR反応のほかの成分は、大幅な変更を必要とした。
【0104】
エキソン2は、増幅するのが最も難しいエキソンであることを立証した。PCR実験全体を通して、エキソン3及び4は、成功の程度は種々ではあるが、それらの増幅において(或る程度まで)一貫性を示した。しかしながらエキソン2はしばしば、良好に反応が作用したかどうかが予測不可能で、時として、良好に分離された緻密なバンドを生じるが、一方、そうでない場合は不十分なバンドを産生し、そしてしばしばバンドは全く生じなかった。一貫したPCRの成功を見出す試みにおいて、2つの付加的な組のプライマーを設計した。プライマーの設計に際しては、エキソン3及び4に関するプライマーと類似の融解温度を有するプライマーを得ることを目指し、したがって3つのエキソンすべてを同一PCRプロトコルを用いて増幅し得た。エキソン1は、配列番号9及び10で記載されるようなPCRプライマーを用いて、上記のような異なるPCRプロトコルを用いて増幅した。
【0105】
[鋳型濃度]
塩化マグネシウム及びプライマー濃度と全く同一の方法で、鋳型DNA濃度を調べた。鋳型DNA勾配を、種々の濃度の鋳型DNAを用いて、多数の反応とともに行った。PCRは極めて高感度の技法(前節参照)であり、したがって理論的には鋳型濃度は主要因子である必要はない、ということはすでに確立されている。鋳型DNA試料を少量の水性「
ストック」として得て、これからアリコートを採取し、所望の量に希釈した。分光測光計を用いて、ストック溶液のDNA含量を定量した。これらの溶液から作製した希釈液は、1/2、1/10及び1/20であった。溶液中の鋳型DNAの最適濃度を決定するために、一実験を実施した。即ち、鋳型DNAを希釈し、これらの異なる希釈液を用いてPCR反応を実行した。以前の予測は、当該技法の感受性のため、鋳型濃度がPCRの成否に大きな影響を及ぼすべきでない、ということを記述した。
【0106】
【表7】

【0107】
[タッチダウンPCR]
上記のように、研究の早期にタッチダウンPCRを用いて、増幅実験に伴う何らかの早期成功を達成した(図7参照)。この早期の成功のため、一PCRプロトコルにおけるエキソン2、3及び4の増幅の考え得る一手段として、タッチダウンPCRを再び調べた。最適化PCR構成成分を用いて(第1表参照)、2つのタッチダウンPCRプロトコルを考案した。1つは55℃で開始し、サイクル毎に1℃下げ、そして他方は、54℃で開始し、サイクルの組毎に2℃下げる。これらの反応は混合結果を生じ、一組の反応は非常に良好に作用して、3つのエキソンすべてを効率的に増幅したが、他方は、全く作用できなかった。3つのエキソンすべてに関して1つのプロトコルを適応させようとするよりむしろ、全エキソンに関して異なる反応を最適化することに集中するのが最良であると考えられた。上首尾の一タッチダウンPCR結果を図7に示す。これは非常に有望な技法であった。
【0108】
[最適化されたポリメラーゼ連鎖反応条件の要約]
この研究で実施された全実験から、ホモサピエンス・システインジオキシゲナーゼ・エキソン2、3及び4の増幅に関する最適化スキームを考案した。これらの詳細を、第2表に示す。これらの知見を検証するために、多数の対照及びRA患者DNA試料からの全エキソンの増幅に関する最適化された条件を用いて、PCR反応を設定した。大多数の場合において、PCRは上首尾であった。これらの反応からの生成物を次に精製し、そしてシークエンシングに付した。
【0109】
【表8】

【0110】
エキソン1は、上記のようにエキソン1に特異的なプライマー及び異なる反応混合物並びに上記のパラメーターを用いて増幅した。
【0111】
[PCR産物精製]
上記のようにQiagen PCR精製キットを用いて、PCR産物を単離及び精製した。3.2pmoleの精製産物をプラスミド−プロファイルシークエンシングに付した。この技法による初回実験後、精製プロセスはPCR反応からのDNAをすべて単離し得たが、収集されたDNAはあまりに不均質で、正確なシークエンシング結果を得ることができなかった、ということが明らかになった。精製されたDNAをこの方法に付すことにより得られたシークエンシング結果はすべて、不十分すぎて正確なシークエンシング結果が得られなかった。配列の不十分な分離は、BLAST検索により有意の整合を生じなかった。
【0112】
これらの知見は、PCRにより増幅される正確なDNAオリゴヌクレオチドの単離及び精製のためにより慎重な系を用いさせた。アガロースゲルスラブからのゲル抽出を、PCR産物精製のための代替物として選択した。これは、シークエンシングからの結果の劇的改善を生じた。
【0113】
[ゲル抽出]
ゲル抽出は、良好な純度のDNA(抽出及び精製されたDNAのゲル電気泳動により示されるように)及びシークエンシング結果改善を生じた。小さな一欠点は、DNA濃度低減のため、ゲル抽出試料からのバンドはしばしば不明瞭で、UV下で観察するのが困難である(不十分な画像のためにデータは含まれていない)、という点である。最も重要なことは、ゲル抽出DNAから得られるシークエンシング結果はPCR産物精製により得られるものよりはるかに高品質を有することである。これらの2つの方法から得られる配列の例を、図8に示す。
【0114】
[シークエンシング及び多型分析]
多数の理由、主に鋳型DNA(患者試料から増幅)の汚染及び不純物及びプライマーのために、初回シークエンシング試験の成功はごく限定されている。PCR産物の精製のための主な技法は、スピンカラムを用いたQiagen PCR精製キットによるものであった。この技法を用いたシークエンシング結果は、十分な品質を有せず、ほとんど使用可能でない配列を有した。ゲル抽出法を用いると、はるかに良好な結果が生じ、そしてPCR条件をさらにわずかに最適化した後、適切な品質の良好なシークエンシング結果が得られ、配列比較が可能になった。配列データを参照配列と比較して、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism)(SNP)(配列中の単一塩基対差)を同定し、これから、考え得るSNPの記録を構築した。対照配列とRA配列との間に、有意数の多型が存在する。データをより視覚的な形態で表すために、エキソン2、3及び4に関する多型を、図9中の配列上で強調させた。
【0115】
【表9】

【0116】
【表10】

【0117】
【表11】

【0118】
第3表A、第3表B及び第3表Cに示した置換に関して、その用語は従来用いられているものと反対である、ということに留意すべきである。例えば第3表Bでは、エキソン3の位置15での置換は、+15 T−Aと記載されている。標準用語(例えば本出願において前に用いた用語)を用いた場合、これは15 A−Tと読む。第3表A、第3表B及び第3表Cは、内的に一致しており、そして互いに一貫している。明解にするために、本出願の本文全体を通して、標準用語が用いられており、即ち、好ましい多型は標準用語を用いて記載されている。
【0119】
結果は、エキソン全体を通してSNPのかなりの分布が存在する、ということを示している。エキソン2は、SNP遺伝子座の広範囲の分布を示すが、一方、エキソン4では、それらはかなり少ない部位に限定される。しかしながら、シークエンシングから収集されたデータは、これらの潜在的SNPの割合が、シークエンシング設備が特定位置でヌクレオチドを決定できないことを反映しているに過ぎないと思われるので、篩い分けされなければならない。潜在的擬陽性に加えて、同定されるその他の潜在的SNPは、DNA配列中のそれらの上流の多型のために、誤って導かれる位置に存在し得る。高品質データのために結果を篩い分けする試みにおいて、「N」を含有するすべての潜在的SNPは「潜在的擬陽性」と呼ばれ、そして残りの多型は真正結果と推測される。これらの「潜在的SNP」(第3表参照)は、3つのエキソンの記録されたDNA配列上にマッピングされ、そしてこれらの多型エキソン由来のタンパク質に関する結果を調べるために翻訳される。図9は、潜在的SNPが劇的且つ(ほぼ確実に)有害な変化をアミノ酸配列に対して引き起こす、ということを示す。ほとんどの場合、アミノ酸配列のほぼ半数がオリジナルと異なる。in vivoでは、自身のCDOエキソン中にこれらの多型すべてを有する個体は
、ほぼ確実に、非効率的な又は遅延型のCDO酵素を保有する。
【0120】
「潜在的擬陽性」という用語は、本発明者らがこれらの結果をRA検出に関して無関係であるとして無視した、ということを意味しない、ということに留意すべきである。そうではなく、それは、「潜在的SNP」と呼ばれるそれらの結果がRAの存在を示している可能性がより高いということを強調するよう意図される。
【0121】
[篩い分け結果]
シークエンシングされた試料の各々において、ここで同定されたSNPをすべて含有するものはなかった。特定のSNPが生じる頻度は、これがCDOエキソン内の高度多型遺伝子座を示し得るものとして、有意である。SNPの頻度を、第4表に示す。in vivo状況でのより適切な表現を提供するために、最も高頻度に生じるSNP(即ちこの研究において2回以上出現する)のみを単独で試験した。それを図10に示す。
【0122】
【表12】

【0123】
[考察]
ホモサピエンス・システインジオキシゲナーゼ・エキソン2、3及び4の増幅及びシークエンシングのためのPCRプロトコルを、本発明者らは首尾よく最適化し得た。これは、一連のPCR実験により達成され、相対的に短時間でどの条件が種々のエキソンを増幅させ、シークエンシングさせ得るかを示し得た。ホモサピエンス・システインジオキシゲナーゼ・エキソン1の増幅及びシークエンシングに適したPCRプロトコルも、本発明者らは作成した。種々の多型を、エキソン1、3及び4において同定した。
【0124】
[化合物がCDO活性に及ぼす効果]
CDOは関節リウマチに関与する重要な酵素であり得る、ということを本発明者らは了解した。TNF−α及びTGF−βがCDO活性に影響を及ぼすことを、本発明者らはすでに同定していた(Wilkinson L.J. and Waring R.H. 2002、上記)。
【0125】
Wilkinson L.J. and Waring R.H. (Toxicol in vitro (2002), pages 481-483)に記載されている方法を用いて、IFN−γ及びTNF−αの効果をアッセイした。
【0126】
インターフェロン−γがCDO発現に及ぼす作用を、第5表に示す:
【0127】
【表13】

【0128】
これは、インターフェロン−γがCDO発現を増大するために用いられ得るということ、したがって利用可能な硫酸塩の量を増大し、したがって関節リウマチ症候を低減し得る、ということを示している。さらにそれは、硫酸塩の産生を増大することが既知である化合物、例えばシステイン、メチオニン、D−ペニシラミン、N−アセチルシステイン、δ−グルタミルシステイン、インターロイキン−4及びインターロイキン−10、S−カルボキシメチルシステイン、S−メチルシステインとともに用いられて、関節リウマチの治療をさらに改善し得る。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】ヒトCDO遺伝子のイントロン及びエキソンの配置を示す。
【図2−1】CDOのエキソン2、3及び4のイントロン配列及びエキソン配列を示す。大文字はエキソン配列を示し、太字の小文字はイントロン配列を示す。行の数字は、コードのその行の第1の塩基の位置である。National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov)からCDO配列を得た。CDOのアクセッション番号は、U60232(U60232.1、GI:2138108)である。
【図2−2】CDOのエキソン1のイントロン配列及びエキソン配列を示す。大文字はエキソン配列を示し、太字の小文字はイントロン配列を示す。行の数字は、コードのその行の第1の塩基の位置である。National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov)からCDO配列を得た。CDOのアクセッション番号は、U60232(U60232.1、GI:2138108)である。
【図3−1】CDOエキソン2(パートA)、エキソン3(パートB)及びエキソン4(パートC)の増幅のために設計されたプライマーの第1の組を示す線図である。プライマー領域は小文字で示され、そして太字でなく、下線が施され、プライマーからの合成の方向を示す矢印に隣接する。
【図3−2】エキソン1(パートD)の増幅のために設計されたプライマーの第1の組を示す線図である。プライマー領域は小文字で示され、そして太字でなく、下線が施され、プライマーからの合成の方向を示す矢印に隣接する。2つの異なるエキソン1リバースプライマーが示されている。代替的エキソン1リバースプライマー(配列番号17)とエキソン1のプライマー結合(即ち標的)領域との間に単一ヌクレオチド差が認められる。
【図4】タッチダウンPCR産物のゲル画像を示す。レーン(画像の左から数える):(1)対照エキソン4、(2)対照エキソン3、(3)対照エキソン2、(4)DNAラダー。
【図5】反応においてDMSOの添加とともに対照鋳型を用いたPCR産物のゲル画像を示す。エキソン2、3及び4が観察される(円内)。エキソン1のPCR増幅中は、DMSOを用いなかった(示されていない)。
【図6】以下を示す図である: A)対照PCR反応のマグネシウム勾配シリーズ。レーン(左から数える)(1)E4、[MgCl2]4;(2)E3、[MgCl2]4;(3)E2、[MgCl2]4;(4)E4、[MgCl2]3;(5)E3、[MgCl2]3;(6)E2、[MgCl2]2;(7)E4、[MgCl2]2;(8)E3、[MgCl2]2;(9)E2、[MgCl2]2;(10)ラダー。 B)関節リウマチ鋳型PCR反応(DMSOを含む)のマグネシウム勾配シリーズ。レーン:(1)E4、[MgCl2]4;(2)E3、[MgCl2]4;(3)E2、[MgCl2]4;(4)E4、[MgCl2]3;(5)E3、[MgCl2]3;(6)E2、[MgCl2]3;(7)E4、[MgCl2]2;(8)E3、[MgCl2]2;(9)E2、[MgCl2]2;(10)E4、[MgCl2]1;(11)E3、[MgCl2]1;(12)E2、[MgCl2]1;(13)ラダー。 これらの図において、エキソンはE2(エキソン2)、E3(エキソン3)及びE4(エキソン4)により識別され、用いられるMgCl2の体積はマイクロリットルで示される。例えば、レーン(1)は、4μlのMgCl2の存在下で増幅されたエキソン4を示す。
【図7】タッチダウンPCRからのPCR産物のゲル画像を示す。対照及びRA DNAの両方からのエキソンはすべて、首尾よく増幅された。
【図8】例として、共にRAエキソン3からの2つのシークエンシング結果の比較を示す。(A)精製結果のPCR産物、不良な配列、二重シグナル、多数の「N」(不明確なヌクレオチド)、(B)ゲル抽出結果、良好な配列、並びに明確な塩基位置。
【図9】多型がアミノ酸置換に及ぼすと予測される影響を示す。すべての考え得るSNPが含まれており(第3表参照)、したがって図示された影響はそれらがin vivoで起こるより顕著である。太矢印で示された遺伝子座は、置換SNPを示す。細い方の矢印は付加的SNPを示す。下線は正常(対照)配列と異なるアミノ酸配列を示す。(A)エキソン2多型、(B)エキソン3多型、(C)エキソン4多型。
【図10】篩い分けされたSNP分析を示す。エキソン3はアミノ酸配列における変化の大きな低減を示し、一方、エキソン4は、SNPの数の低減にもかかわらず、非常に高レベルのアミノ酸破壊を保持する。
【図11】エキソン1のPCR産物のゲル画像を示す。レーン1:DNAラダー、レーン2〜7:エキソン1、レーン8:陽性対照。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDO媒介性症状を診断する方法であって、以下の工程:
(i)個体から試料を得ること、
(ii)変異型CDO、又はCDO変異型をコードする核酸及び/又はCDO調節領域の変異型の存在若しくは非存在を検出すること、及び、
(iii)CDO遺伝子及び/又はその調節領域における多型に対する照合により個体の状態を決定すること、
を包含する、方法。
【請求項2】
ヒトにおけるCDO遺伝子又はその調節配列における1つ又は複数の多型を診断する方法であって、CDO遺伝子の少なくとも一部をコードする核酸分子及び/又はCDO調節領域の配列を決定すること、及び、CDO遺伝子及び/又はその調節領域における多型に対する照合によりヒトの状態を決定することを包含する、方法。
【請求項3】
多型が以下の多型から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【表1】

【請求項4】
ヒトが低減したCDO濃度及び/又は酵素活性が低減したCDOを有するという指標を提供する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
関節リウマチ(RA)を発症する及び/又はD−ペニシラミン及び金チオマレートから選択される1つ又は複数の薬剤による副作用を発症することに対する個体又はヒトの性向の同定のための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
多型を含有する核酸の領域が多型を同定する前にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
PCRがリアルタイムPCR(RT−PCR)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
核酸配列がARMS−アレル特異的増幅、アレル特異的ハイブリダイゼーション、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ及び制限断片長多型(RFLP)から選択される方法により決定される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
CDO遺伝子又はCDO調節配列多型を検出することが可能なアレル特異的プローブ又
はプライマー。
【請求項10】
以下のうちの1つ又は複数の多型を検出することが可能な、請求項9に記載のアレル特異的プローブ又はプライマー。
【表2】

【請求項11】
請求項8、9又は10に記載の1つ又は複数のプローブ又はプライマーを含む診断キット。
【請求項12】
以下の多型から選択されるCDO多型又はCDO調節性多型をコードする少なくとも5塩基長の単離された核酸。
(i)
【表3】

(ii)このような配列と相補的な配列。
【請求項13】
CDO又はその断片をコードする、請求項11に記載の単離された核酸分子。
【請求項14】
請求項11又は12に記載の核酸分子から得られる単離されたCDOタンパク質。
【請求項15】
請求項13に記載のタンパク質と特異的に結合することが可能であるがCDO多型を含
有しないCDOタンパク質とは結合することが不可能な抗体。
【請求項16】
CDO媒介性症状に対する個体の性向を決定する方法であって、以下の工程:
(i)個体から試料を得ること、及び、
(ii)請求項14に記載の抗体を用いて多型を含有するCDOの存在を検出すること、
を包含する、方法。
【請求項17】
CDO活性に及ぼす化合物の効果を決定する方法であって、以下の工程:
(i)白血球の試料を用意すること、
(ii)白血球をCDO基質及び化合物と接触させること、及び、
(iii)白血球中のCDOによる、検出可能な産物への基質の転化に及ぼす、化合物の効果を決定すること、
を包含する、方法。
【請求項18】
関節リウマチの治療のための薬剤候補を同定する方法であって、請求項17に記載の方法を使用することを包含する、方法。
【請求項19】
関節リウマチを治療する方法であって、薬学的有効量のインターフェロン−γ(IFN−γ)を投与することを包含する、方法。
【請求項20】
関節リウマチが非HTLV−1関連関節リウマチである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
IFN−γがシステイン、メチオニン、D−ペニシラミン、N−アセチルシステイン、δ−グルタミルシステイン、インターロイキン−4及びインターロイキン−10からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と組合せて投与される、請求項19又は19に記載の方法。
【請求項22】
関節リウマチを治療するための薬剤の製造において用いるためのIFN−γ。
【請求項23】
関節リウマチを治療するための薬剤の製造において用いるためのシステイン、メチオニン、D−ペニシラミン、N−アセチルシステイン、γ−グルタミルシステイン、インターロイキン−4及びインターロイキン−10からなる群から選択される少なくとも1つの化合物とIFN−γとの組合せ。
【請求項24】
システイン、メチオニン、D−ペニシラミン、N−アセチルシステイン、γ−グルタミルシステイン、S−カルボキシメチルシステイン、S−メチルシステイン、インターロイキン−4及びインターロイキン−10からなる群から選択される化合物とIFN−γを組合せて含む、薬学的に許容可能な組成物。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−501541(P2009−501541A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522057(P2008−522057)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002698
【国際公開番号】WO2007/010258
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(508020203)ザ ユニバーシティ オブ バーミンガム (3)
【Fターム(参考)】