シュウ酸オキシダーゼ結晶の投与による、シュウ酸塩濃度を低下させるための方法
本発明は、シュウ酸塩濃度の上昇と関係がある疾患の予防、治療、または進行を遅らせるための方法に関し、この方法はシュウ酸オキシダーゼ結晶、架橋結晶、またはこれらの結晶を含む組成物を個体に投与する工程を含む。シュウ酸オキシダーゼの架橋結晶などの安定化結晶を含む、個体に投与するためのシュウ酸オキシダーゼ結晶および組成物も提供される。本発明は、哺乳動物のシュウ酸塩濃度を低下させる方法も提供する。これらの方法は、シュウ酸塩濃度を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%低下させる。本発明の方法によって処置される疾患としては、腎臓疾患、骨疾患、肝臓疾患、消化管疾患、および膵臓疾患が挙げられる。さらなる態様において、疾患は、原発性高シュウ酸尿症、腸性高シュウ酸尿症、特発性高シュウ酸尿症、エチレングリコール中毒、尿石症、および腎臓結石症から選択される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
シュウ酸は、HO2C−CO2Hという化学式をもつジカルボン酸である。シュウ酸は、主に、シュウ酸エステルとして、すなわち、シュウ酸の塩形態で生体内に存在している。シュウ酸は、例えば、ホウレンソウ、ルバーブ、イチゴ、クランベリー、ナッツ、ココア、チョコレート、ピーナッツバター、ソルガム、および茶などの食物中に見られる。また、シュウ酸は、ヒトおよび他の哺乳動物においては代謝最終産物でもあり、腎臓によって尿の中に排出される。カルシウムに結合すると、シュウ酸は不溶性産物であるシュウ酸カルシウムを生成するが、これは、腎臓結石中に見られる最も一般的な化合物である。
【0002】
哺乳動物は、シュウ酸を分解する酵素を合成しないため、個体内のシュウ酸レベルは、通常、排出や食物として摂取するシュウ酸の低吸収性によって抑えられている。シュウ酸の濃度上昇は、原発性高シュウ酸尿症、腸性高シュウ酸尿症、および特発性高シュウ酸尿症など、様々な病態を伴う。非特許文献1および非特許文献2。シュウ酸の増加は、食物由来のシュウ酸を食べ過ぎたり、腸管からシュウ酸を過剰吸収したり、シュウ酸産生が異常になったりすることによって引き起こされることがある。結腸および小腸におけるシュウ酸の過剰吸収は、胆汁酸の疾患もしくは脂肪吸収不全症、回腸切除が原因となる過剰吸収、または、例えば、セリアック症、膵外分泌機能不全、小腸疾患、もしくは肝疾患によって起こる脂肪便を伴う。
【0003】
高シュウ酸尿症、すなわち、尿中へのシュウ酸排出は、シュウ酸カルシウムが腎組織に蓄積したり(腎石灰沈着)、尿管に蓄積したり(例えば、腎臓結石、尿路結石、および腎石症)することに関係するいくつかの健康上の問題を伴う。また、シュウ酸カルシウムは、例えば、眼、血管、関節、骨、筋肉、心臓、およびその他の主要組織にも蓄積して、それらを損傷する原因となる。例えば、非特許文献3および非特許文献4参照。シュウ酸レベルの増加による効果は、様々な組織に現れることがある。例えば、小血管への蓄積は、治癒することのない痛みを伴う皮膚潰瘍を引き起こし、骨髄への蓄積は貧血を引き起こし、骨組織への蓄積は骨折を引き起こしたり、子供の成長に影響したりし、また、心臓へのシュウ酸カルシウムの蓄積は心拍リズムの異常または心機能不全を引き起こす。
【0004】
シュウ酸レベルの上昇を治療するための現行の方法は必ずしも効果的ではなく、原発性高シュウ酸尿症患者の多くで、集中的な透析および臓器移植が必要となる可能性がある。様々な高シュウ酸尿症に対する現行の治療法には、高用量のピリドキシン、オルトリン酸、マグネシウム、鉄、アルミニウム、クエン酸カリウム、コレスチラミン、およびグリコサミノグリカン治療や、食事および液体の摂取を調整する養生法、透析療法、および、腎臓移植および肝臟移植など、外科的処置療法などが含まれる。これらの療法(例えば、低シュウ酸または低脂肪の食事、ピリドキシン、適量のカルシウム、および液体の増加)は、部分的に有効なだけで、望ましくない副作用、例えば、オルトリン酸、マグネシウム、またはコレスチラミンの補充による消化管への影響、ならびに透析および手術の危険などを生じる可能性がある。したがって、身体から安全にシュウ酸を除去する方法が必要とされている。さらに、生体試料において、シュウ酸を分解してシュウ酸レベルを低下させる方法は、例えば、シュウ酸の吸収を阻止するだけか、シュウ酸のクリアランスを増加するだけの治療法よりも有利である。
【0005】
シュウ酸分解性バクテリアを利用して、各個体のシュウ酸を減少させることが、例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に記載されている。一方、特許文献4には、シュウ酸経路に関係する酵素の投与について記載されている。しかし、これらのシュウ酸分解酵素は、胃の過酷な酸性環境に対して感受性である。514号公報は、例えば、これらの問題を解決するために腸溶コーティングを用いることを記載している。それでもなお、高活性で安定した、または他の有利な形態のシュウ酸分解酵素、例えばシュウ酸オキシダーゼが、シュウ酸塩関連疾患を治療するために必要とされている。
【0006】
現在の治療法が最適なものではないため、シュウ酸塩関連疾患に罹った個体など、各個体におけるシュウ酸塩濃度の上昇に関連した疾患を治療または予防するための方法および組成物に対する必要も存在する。一例として、各個体が、臓器移などの手術を遅らせるか避けることができるように、植原発性高シュウ酸尿症を治療するための方法も必要である。
【特許文献1】米国特許第6,200,562号明細書
【特許文献2】米国特許第6,355,242号明細書
【特許文献3】米国特許第6,699,469号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0234514号明細書
【非特許文献1】Leumannら、Nephrol.Dial.Transplant.(1999)14:2556−2558
【非特許文献2】Earnest,Adv.Internal Medicine(1979)24:407−427
【非特許文献3】Leumannら、J Am.Soc.Nephrol.(2001)12:1986−1993
【非特許文献4】Monicoら、Kidney International(2002)62:392−400
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、例えば、結晶性シュウ酸オキシダーゼの経口投与によってシュウ酸塩関連疾患を可能にするための治療法および処方剤に役立つシュウ酸オキシダーゼの結晶を提供する。また、シュウ酸オキシダーゼの結晶は、例えば、シュウ酸塩濃度を調節したり、個体におけるシュウ酸カルシウムの蓄積によって起こる損傷を最小限に抑えたりするのに有効な方法に使用することもできる。また、本発明は、架橋したシュウ酸オキシダーゼ結晶、およびこれらの結晶を含む組成物も提供する。特に、実施形態において、これらの架橋剤は多官能性であり、一定の実施形態において、本剤は、グルタルアルデヒドなどの二官能性剤である。
【0008】
ある場合には、これらの結晶は、植物、バクテリア、菌類などの天然源、特に、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、オートムギ、イネ、ホウレンソウ、ソルガム、バナナ、およびライムギに由来するシュウ酸オキシダーゼを含む。別の場合には、シュウ酸オキシダーゼは組換えによって作出される。
【0009】
また、本発明は、シュウ酸オキシダーゼの結晶または架橋したシュウ酸オキシダーゼ結晶を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物のシュウ酸塩濃度を低下させる方法も提供する。これらの方法は、シュウ酸塩濃度を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%低下させる。
【0010】
様々な実施形態において、シュウ酸オキシダーゼ結晶または架橋結晶は経口投与される。別の場合には、これらの結晶は上部消化管を経由して投与される。さらなる実施形態において、シュウ酸オキシダーゼは、対外装置によって、例えば、透析の過程で投与される。
【0011】
また、本発明は、哺乳動物におけるシュウ酸塩濃度の上昇と関係がある疾患の治療、予防、または進行を遅らせるための方法であって、シュウ酸オキシダーゼ結晶または架橋結晶を哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態において、疾患は、腎臓疾患、骨疾患、肝臓疾患、消化管疾患、および膵臓疾患から選択される。さらなる態様において、疾患は、原発性高シュウ酸尿症、腸性高シュウ酸尿症、特発性高シュウ酸尿症、エチレングリコール中毒、尿石症、および腎臓結石症から選択される。
【0012】
以上の開示および以下の説明は、特許請求の範囲に記載された発明を制限するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(詳細な説明)
本発明は、一部において、シュウ酸オキシダーゼ(OXO)の結晶を投与すると高シュウ酸尿症が治療できるとの発見および実証に基づいている。本明細書で説明するように、経口で、または直接胃に投与された結晶性シュウ酸オキシダーゼは、食物中のシュウ酸を消費していない人など、個体内のシュウ酸レベルを低下させることができる。様々なシュウ酸塩関連疾患を治療するためにOXO結晶を投与する方法が本明細書に記載されている。さらに、OXO結晶および架橋された結晶(CLEC)が、これらを含みかつ使用する組成物と同様に提供される。
【0014】
定義
本発明がより容易に理解できるよう、まず、いくつかの用語を定義しておく。それ以外の定義も、詳細な説明全体の中に示されている。
【0015】
本明細書において、「生体試料」とは、細胞、組織、器官、または生物から、例えば、分析物を検出するために集められた生物由来材料のことである。生体試料の例には、液体試料、細胞試料、または組織試料などがある。生体液には、例えば、血清、血液、血漿、唾液、尿、または汗などがある。細胞試料または組織試料には、生検、組織、細胞懸濁液、または、臨床試料などの他の標本および試料がある。
【0016】
「結晶」とは、物質の固体状態の一形態であり、3次元で周期的に反復したパターンに並んだ原子を含む(例えば、Barret,Structure of Methals,2nd ed.,McGraw−Hill,New York(1952)参照)。例えば、ポリペプチドの結晶型は、別の形態である非晶質固体状態とは異なる。結晶は、形、格子構造、溶媒の割合(percent solvent)、および、例えば、屈折率などの光学的性質などの特性を示す。
【0017】
「対外装置」とは、個体の治療においてOXO結晶と接触する体液を持ち込むための体内には置かれない構造物のことである。好ましくは、対外装置は、腎臓透析などの透析に使用される装置、持続的動静脈血液ろ過用装置、体外型膜型人工肺、または血流から老廃物をろ過するために使用される装置である。同様に、老廃物をろ過するための装置の構成要素も本用語に包含され、例えば、チューブ、多孔質材料、または膜が含まれる。特に、体外装置は、透析用装置であってよい。また、透析用装置の膜であってもよい。
【0018】
OXOの「機能性断片」とは、シュウ酸の酸化を触媒することができるなど、OXOの生物活性を一つ以上保持している、OXOポリペプチドの一部である。本明細書において、機能性断片は、別段の記載がない限り、一方または両方の末端の末端切断を含み得る。例えば、機能性断片は、OXOポリペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシル末端から1、2、4、5、6、8、10、12、15、または20個、またはそれ以上の残基が除かれていてよい。好ましくは、切断は、一方または両方の末端から20アミノ酸以下である。機能性断片は、任意には、一つ以上の異種配列に結合していてよい。
【0019】
「個体」という用語は、哺乳動物を意味し、ヒト、ヒト以外の霊長類、ヒヒ、チンパンジー、サル、齧歯類(例えば、マウス、ラット)、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなど、哺乳動物に分類されている任意の動物を含む。
【0020】
「単離された」という用語は、その本来の環境から実質的に切り離されている分子を意味する。例えば、単離されたタンパク質は、細胞内物質や、そのタンパク質が由来する細胞源または組織源に由来するその他のタンパク質を実質的に含まない。この用語は、単離されたタンパク質が、治療用組成物として投与するのに十分な純度、または少なくとも70%から80%(w/w)の純度、より好ましくは、少なくとも80%から90%(w/w)の純度、さらにより好ましくは、90%から95%(w/w)の純度、および最も好ましくは、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%または100%(w/w)の純度である調製物を意味する。
【0021】
本明細書において、「シュウ酸塩関連疾患」とは、シュウ酸またはシュウ酸塩の病理レベルに関連した病気または疾患を意味し、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、腸性高シュウ酸尿症、特発性高シュウ酸尿症、エチレングリコール(シュウ酸)中毒、特発性尿石症、腎不全(進行性、慢性、または末期の腎不全など)、脂肪便、吸収不全症、回腸切除、外陰部痛、心臓伝導疾患(cardiac conductance disorder)、炎症性腸疾患、嚢胞性線維症、膵外分泌機能不全、クローン病、潰瘍性大腸炎、腎石灰沈着症、尿石症、および腎石症を含むが、これらに限定されない。このような症状および疾患は、任意には急性または慢性であり得る。腎臓、骨、肝臓、消化管、および膵臓に関連したシュウ酸塩関連疾患が周知されている。さらに、シュウ酸カルシウムが、眼、血管、関節、骨、筋肉、心臓を含むが、これらに限定されない多様な組織、および他の主要な臓器に沈着することがあり、多くのシュウ酸塩関連疾患をもたらす。
【0022】
「シュウ酸」は、尿および腸液のpH(PKa1=1.23、PKa2=4.19)では、主に塩の形態、すなわちシュウ酸エステルの形態で(対応する共役塩基の塩類として)存在する。Earnest,Adv.Internal Medicine 24:407−427(1979)。「シュウ酸」および「シュウ酸エステル」という用語は、本開示を通じて同義のものとして用いられている。リチウム、ナトリウム、カリウム、および鉄(II)を含むシュウ酸塩は可溶性であるが、シュウ酸カルシウムは、水の中では非常に可溶性が低く、18℃では0.58mg/100mlしか溶けない。Earnest,Adv.Internal Medicine 24:407−427(1979)。食物からのシュウ酸は、食事性シュウ酸とも呼ばれる。代謝過程で産生されるシュウ酸は、内生シュウ酸と呼ばれる。循環性シュウ酸は、血液などの循環体液中に存在するシュウ酸である。
【0023】
「治療上有効な用量」または「治療上有効な量」という用語は、原発性高シュウ酸尿症または腸性高シュウ酸尿症などの高シュウ酸尿症を含む、シュウ酸関連症状の発症の開始を阻止、遅延させるか、症状の改善をもたらす化合物の量を意味する。治療上有効な量は、例えば、シュウ酸塩濃度の上昇に関連した疾患の一つ以上の症状を治療し、予防し、重篤度を低下させ、発症を遅延させ、または発生のリスクを低下させるのに十分である。有効な量は、当技術分野において周知の方法により、本説明の次章で説明するようにして決定することができる。
【0024】
「治療」、「療法」、およびこれらの同族語は、治療および予防/防止する方法を意味する。治療を必要とする人々は、特定の医学上の疾患を既に有する個人と、その疾患に最終的に罹る可能性のある人々を含むことが可能である。治療の必要性は、例えば、疾患の発症に付随する一つ以上の危険因子の存在、疾患の出現または進行、または、疾患を有する患者の治療に対する受容力によって評価される。治療には、疾患の進行を遅延または逆転させることも含まれ得る。
【0025】
シュウ酸オキシダーゼ
本明細書において、シュウ酸オキシダーゼ(OXO)は、シュウ酸:酸素酸化還元酵素を意味する。シュウ酸オキシダーゼは、以下の反応にしたがって、酸素分子(O2)依存性酸化によって、シュウ酸が二酸化炭素および過酸化水素になるのを触媒することができる明確に定義された酵素群である:
HO2C−CO2H+O2→2CO2+H2O2。
【0026】
シュウ酸オキシダーゼのアイソフォーム、およびこれらのアイソフォームのグリコフォームがこの定義に含まれる。コムギ、オオムギ、トウモロコシ、オートムギ、イネ、およびライムギなど真性の禾穀植物などの植物、バクテリア、および菌類に由来するOXOが、この用語に含まれる。任意には、OXOはさらに、オオムギOXOのように、スーパーオキシドジスムターゼの活性を可能にする。一定の状況において、OXOは、OXO糖タンパク質ダイマーの三量体など、可溶性の六量体タンパク質である。
【0027】
シュウ酸オキシダーゼは、高等植物、バクテリア、および菌類によって産生され、シュウ酸:酸素酸化還元酵素活性を有する。シュウ酸オキシダーゼは、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、オートムギ、イネ、およびライムギなど真性の禾穀植物によって産生されるシュウ酸オキシダーゼを含む。コムギのシュウ酸オキシダーゼがジャーミン(germin)としても知られているため、これらは、通常、ジャーミン型OXO(G−OXO)として同定される。ジャーミン様タンパク質(GLP)は、一定の構造的特徴を共通にもつタンパク質の大きな分類群である。OXOの他の源は、コケ、ビート、ホウレンソウ、ソルガム、およびバナナである。G−OXOなどのOXOは、例えば、六量体の糖タンパク質としての活性をもつ。OXOには、スーパーオキシドジスムターゼ活性を持つと報告されているものもある。
【0028】
結晶を調製するために用いられ、かつ、本明細書記載の方法で使用されるシュウ酸オキシダーゼは、例えば、天然源から単離すること、すなわち、天然源に由来することが可能である。本明細書において、「由来する」とは、源において天然に存在するアミノ酸または核酸の配列をもつことを意味する。例えば、オオムギに由来するシュウ酸オキシダーゼは、オオムギのシュウ酸オキシダーゼタンパク質の一次配列を含むか、オオムギで見られるシュウ酸オキシダーゼをコードする配列を含む核酸、またはその縮退した核酸によってコードされている。ある源に由来するタンパク質または核酸は、その源から単離される分子、遺伝子組換えによって産生される分子、および/または化学的に合成ないし修飾される分子を包含する。本明細書で提供される結晶は、OXOのアミノ酸配列、またはシュウ酸酸化活性を保持しているOXOの機能的断片のアミノ酸配列を含むポリペプチドから形成させることができる。好ましくは、OXOは、シュウ酸の酸化を触媒することに加え、重合、マンガン要求性、および/またはスーパーオキシドジスムターゼ活性など、天然型OXOの機能的特性を少なくとも1つ保持している。
【0029】
単離されたシュウ酸オキシダーゼ
シュウ酸オキシダーゼは以前から単離されているため、オオムギの幼植物体、根、および葉、ビートの茎、ビートの葉、コムギの胚、ソルガムの葉、およびバナナの皮など、多くの源から利用することができる。また、OXOは、例えば、Sigma社などの供給業者から購入することもできる。天然源からOXOを単離する方法は、例えば、以下の文献に既に記載されている:Liuら、Zhi Wu Sheng Li Yu Fen Zi Sheng Wu Xue Xue Bao 30:393−8(2004)(Engl.Abst.at PMID 15627687);Rodriguiez−Lopezら、FEBS Lett.9:44−48(2001);Pundirら、Chin.J.Biotechnol.15:129−138(1999);およびAguilarら、Arch.Biochem.Biophys.366:275−82(1999)。これらの単離シュウ酸オキシダーゼを用いて、本発明の結晶、架橋結晶、および組成物を生成させることができる。そして、これらの結晶、架橋結晶、および組成物を、本明細書に記載する方法に使用することができる。
【0030】
組換えシュウ酸オキシダーゼ
あるいは、組換えOXOを用いて、本明細書に記載の結晶および方法を形成することができる。いくつかの例において、組換えOXOは、天然のOXO配列から得た配列に含まれるか、コードされている。さらに、天然型配列に相同であるか、実質的に同一であるアミノ酸配列を含むOXOが、本明細書に記載されている。また、天然のOXOコード核酸に相同であるか、実質的に同一である核酸も提供されているため、本明細書に記載されているように結晶化および/または投与することができる。
【0031】
本明細書において「組換え」と呼ばれるポリペプチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、および/または制限酵素を用いてベクターにクローニングするなどの人為的組換え法による方法で作出されたポリペプチドなど、組換えDNA法によって製造されたポリペプチドである。また、「組換え」ポリペプチドは、宿主細胞などの細胞の中で組換えによって改変された発現をする天然型ポリペプチドなど、その発現が変化したポリペプチドでもある。
【0032】
一つの実施形態において、OXOは、オオムギのOXOの核酸配列に相同であって、例えば、異種の宿主内での組換え体産生を増加または最適化できるよう改変されている核酸から組換えによって産生される。このような改変配列の例は配列番号:1(核酸)に記載されており、オオムギOXOのオープンリーディングフレームの核酸配列が、そのGC含有量を下げるよう改変されており、また、α接合因子分泌シグナル配列およびに設計された制限酵素切断部位に結合している。配列番号:1にコードされるアミノ酸配列が配列番号:2に記載されている。別の反復例において、OXOは、GenBank登録番号:L15737で入手可能なオオムギの非改変核酸配列である配列番号:3から組換えによって産生される。
【0033】
OXO結晶を形成させるのに役立つOXOポリペプチドは、OXOポリペプチドまたはその機能的断片をコードする配列を含む核酸構築物を含む宿主細胞などの宿主細胞内で発現させることができる。OXOを発現させるのに適した宿主細胞は、例えば、酵母、バクテリア、菌類、昆虫、植物、または哺乳動物細胞、または遺伝子組換え植物、遺伝子組換え動物もしくは無細胞系であり得る。好ましくは、宿主細胞は、OXOポリペプチドをグリコシル化することができ、ジスルフィド結合させることができ、OXOを分泌することができ、および/またはOXOポリペプチドの多量体化を支持することができる。好適な宿主細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、大腸菌(E. coli(大腸菌Origami Bなど))、枯草菌(Bacillus subtilis)、コウジカビ(Aspergillus)、Sf9細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、293細胞(ヒト胎児腎臓)、およびその他のヒト細胞などであるが、これらに限定されない。また、遺伝子組換え植物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、鳥、およびウサギを含む遺伝子組換え動物も、OXOの産生のための適切な宿主である。
【0034】
OXOの組換え体を産生するために、宿主または宿主細胞は、OXOまたはその機能的断片をコードする核酸を少なくとも一つ含む構築物を、プラスミド、ベクター、ファージミド、または転写カセットもしくは発現カセットの形で含まなければならない。単一コピーまたは多重コピーの中で維持される構築物、または宿主細胞の染色体の中に組み込まれる構築物など、様々な構築物を利用することができる。組換え体を発現させるための多くの組換え体発現系、構成成分、および試薬が、例えば、Invitrogen社(Carlsbad,CA);U.S.Biological社(Swampscott,MA);BD Biosciences Pharmingen社(San Diego,CA);Novagen社(Madison,WI);Stratagene社(La Jolla,CA);Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen社(DSMZ)(Braunschweig,Germany)などから市販されている。あるいは、周知の遺伝子活性化技術によって、組換え体OXOを産生させることができる。
【0035】
OXOの組換え体発現は、任意で、構成型および/または誘導型のプロモーターなど、異種プロモーターによって調節される。例えば、アルコール酸化酵素(AOX)プロモーター、ジヒドロキシアセトン合成酵素(DAS)プロモーター、Gal 1,10プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、グリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、銅メタロチオネイン(CUP1)プロモーター、酸性ホスファターゼプロモーター、などのプロモーター、ならびにT7、CMV、およびポリへドリンプロモーターも適している。特定のプロモーターは、宿主または宿主細胞に基づいて選択される。また、メタノール、硫酸銅、ガラクトース、低リン酸、例えばエタノールなどのアルコールによって誘導されるプロモーターを使用することもでき、これらは、当技術分野において周知である。
【0036】
OXOをコードする核酸は、任意で異種配列を含むことができる。例えば、分泌配列は、いくつかの実施形態において、OXOポリペプチドのN末端に含まれる。α接合因子、BGL2、酵母酸性ホスファターゼ(PHO)、キシラナーゼ、αアミラーゼなどに由来するシグナル配列、別の酵母分泌タンパク質に由来するシグナル配列、および、宿主細胞からの分泌を指示することができる、他の生物種に由来する分泌シグナルペプチドなどのシグナル配列も有用である。同様に、リンカー(例えば、切断ないし制限酵素部位を含むもの)、および一つ以上の発現調節因子、エンハンサー、ターミネーター、リーダー配列、および一つ以上の翻訳シグナルなど、その他の異種配列も、本明細書の範囲に含まれる。これらの配列は、任意で、構築物に含ませることも、および/または、OXOをコードする核酸に結合させることもできる。別段の記載がない限り、「結合させた」配列は、互いに直接的または間接的に結合しているものでもよい。
【0037】
同様に、ヒスチジン、HA(ヘマグルチニンペプチド)、マルトース結合タンパク質、登録商標AviTag、FLAG、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼなどのエピトープまたはアフィニティータグを、任意で、OXOポリペプチドに結合させることができる。タグは、任意には、OXOが産生または精製された後、OXOから切断することも可能である。当業者は、例えば、適合する宿主細胞、構築物、プロモーター、および/または分泌シグナル配列など、適当な異種配列を容易に選択することができる。
【0038】
OXOの相同体または変異体は、OXOの参照配列と1個以上の残基が異なっている。構造的に類似したアミノ酸を、例えば、特定のアミノ酸のいくつかと置換することができる。構造的に類似したアミノ酸は、(I,L,V);(F,Y);(K,R);(Q,N);(D,E);および(G,A)などである。アミノ酸の欠失、付加、または置換も、本明細書記載のOXO相同体に含まれる。このような相同体および変異体には、多型変異体、および天然または人工突然変異体、ならびに1個以上の残基が改変されている改変ポリペプチド、および1個以上の改変された残基を含む突然変異体などがある。
【0039】
OXOのポリペプチドまたは核酸が参照配列と、少なくとも40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%一致するとき、それは「相同」(または「相同体」)である。相同体が参照配列と一致しない場合は「変異体」である。相同体は、その塩基配列またはアミノ酸配列が参照配列と(例えば、切断、欠失、置換、または付加によって)1、2、3、4、5、8、10、20、または50残基以下の違いがあり、かつ、シュウ酸の酸化を触媒する能力を保持(または、保持するポリペプチドをコードする)場合に「実質的に同一である」という。シュウ酸オキシダーゼの断片は、変異体および/または実質的に同一の配列などの相同体であってよい。例として、相同体は、OXOの様々な源に由来することが可能であり、または、切断変異、欠失変異、置換変異、または付加変異によって参照配列に由来したり、関係したりすることが可能である。2つの塩基配列またはアミノ酸配列の一致率は、例えば、Altschulら、J Mol. Biol,215:403−410(1990)に記載されている基本的局所整列用ツール(BLAST)、Needlemanら、J Mol. Biol,48:444−453(1970)のアルゴリズム、またはMeyersら、Comput.Appl.Biosci.4:11−17(1988)のアルゴリズムなどの標準的な整列によって決定することができる。このようなアルゴリズムは、BLASTN、BLASTP、および「BLAST2配列」プログラム(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST参照)に取り込まれている。このようなプログラムを利用するとき、デフォルトパラメーターを用いることができる。例えば、塩基配列では、「BLAST2配列」について以下の設定を用いることができる:BLASTNプログラム、一致した場合の報酬2、不一致の場合のペナルティー−2、オープンギャップおよび伸長ギャップのペナルティーは、それぞれ5および2、ギャップX_ドロップオフ値50、期待値10、ワードサイズ11、フィルター有り。アミノ酸配列では、「BLAST2配列」について以下の設定を用いることができる:BLASTPプログラム、BLOSUM62マトリックス、オープンギャップおよび伸長ギャップのペナルティーは、それぞれ5および2、ギャップX_ドロップオフ値50、期待値10、ワードサイズ3、フィルター有り。本明細書記載の結晶を形成するのに適したOXOに対するアミノ酸配列および核酸配列は、相同配列、変異体配列、または実質的に同一な配列などであってよい。
【0040】
シュウ酸オキシダーゼの精製
シュウ酸オキシダーゼのタンパク質またはポリペプチドは、結晶化する前に、天然源または組換え体源などの源から精製することができる。本明細書において「単離された」と言われるポリペプチドとは、その本来の由来源(例えば、細胞、組織(すなわち、植物組織)、または液体もしくは媒体(分泌されるポリペプチドの場合)であるタンパク質、脂質、および/または核酸など、天然の環境から実質的に切り離されているポリペプチドのことである。単離されたポリペプチドには、本明細書記載の方法、またはその他適当な方法によって得られるポリペプチなどがあり、実質的に純粋または本質的に純粋なポリペプチドを含み、また、化学合成法、組換え製造法、または生物学的方法と化学的方法とを組み合わせたものによって産生されたポリペプチドなどがある。任意には、単離されたタンパク質は、精製工程によるなどして、それが産生された後に更なる処理を受けた。
【0041】
精製は、バッファー交換工程およびクロマトグラフィー工程を含むことができる。任意で、例えば、透析、等電点電気泳動クロマトグラフィー、および/またはバッファー交換を伴う濃縮工程を用いることができる。一定の例では、スルホプロピルセファロースクロマトグラフィー、またはGM52もしくは同様の陽イオン交換カラムなどの陽イオン交換クロマトグラフィーを精製に用いることができる。バッファー交換は、任意には、クロマトグラフィー分離の前に行い、濾過透析などのタンジェンシャルフロー濾過によって行うことができる。一定の調製物では、OXOは、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.7%、または99.9%の純度である。
【0042】
OXOを調製するには、グラム単位での精製を行うことが適しているため、処理手順を効率的で安価な製造規模でのOXO精製になるよう最適化する。例えば、精製処理で、少なくとも0.5、1、2、5、10、20、50、100、500、または1000グラム以上のOXOがもたらされる。処理の一例において、少なくとも10L、50L、100L、500L、1000L、またはそれ以上の出発試料のタンジェンシャルフロー濾過が提供され、バッファー交換および混入タンパク質の沈殿が行われる。シングルSP−セフロースカラムが、OXOを精製するために任意で使用される。
【0043】
また、精製されたOXOの結晶化は、混入物を除去して、例えば、OXO調製物をさらに精製することもできる。例えば、実施例6に記載されているような結晶化されたOXOは、可溶型の精製OXOに較べて、低分子混入物の量が少ない。いくつかの態様において、0〜10kDa、1〜10kDa、0.5〜5kDa、2〜5kDaの(マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI−MSによって)測定された質量を持つ混入物が、結晶型から選択的に排除される。例えば、濾過透析およびSP−セファロースによって精製され、実施例6の(a)の部分に記載された大規模結晶化処理法によって結晶化されたOXOのMALDI−MS分析によって、約2.5、3.0、3.7、3.8、4.0、4.2、および5.0KDaの測定分子量を持つ混入物が、結晶化によって実質的に除去されることが実証されている。結晶化による精製は、例えば、発酵用媒体を含む粗シュウ酸オキシダーゼを用いて行うこともできる。
【0044】
シュウ酸オキシダーゼの結晶化
シュウ酸オキシダーゼの結晶は、上記したような六量体などのOXOポリペプチドを用いて調製することができる。Wooら、FEBS Letters 437:87−90(1998);Wooら、Nature Struct.Biol.7:1036−1040(2000)参照。例えば、蒸気拡散法(例えば、ハンギングドロップ法およびシッティングドロップ法など)、および結晶化のバッチ法を用いることができる。シュウ酸オキシダーゼ結晶は、タンパク質の制御結晶化法によって、水溶液、または有機溶媒を含む水性溶液から成長することができる。制御される条件は、例えば、溶媒の蒸発速度、適当な共存溶質の存在、ならびにバッファー、pH、および温度などである。
【0045】
シュウ酸レベルに関係する症状または疾患を治療するなど、治療用に投与するには、様々なOXO結晶サイズが適している。一定の実施形態において、平均寸法が約500μmよりも小さな結晶が投与される。また、長さが約0.01、0.1、1、5、10、25、50、100、200、300、400、500、または1000μmの(例えば)平均寸法、最大寸法、または最小寸法を持つシュウ酸オキシダーゼ結晶も提供される。微結晶シャワー(microcrystalline shower)も適当である。
【0046】
範囲は適当であり、当業者に明らかであろう。例えば、タンパク質結晶は、約0.01μmと約500μmとの間に、あるいは約0.1μmと50μmとの間に最も長い寸法を有し得る。特定の実施形態において、最も長い寸法の範囲は、約0.1μmから約10μmである。また、結晶は、球状、針状、棹状、六角形および正方形などのプレート状、ひし形、立方体、および角柱状から選択された形も有し得る。例示的な実施形態において、この結晶は、最長寸法が5μmよりも短い立方体である。例えば、図5〜7参照。
【0047】
通常、結晶は、結晶化すべきタンパク質を適当な水性溶媒、または、塩や有機溶媒など適当な結晶化剤を含む水性溶媒と組み合わせることによって生成される。この溶媒をタンパク質と混合して、任意には、結晶を誘導するのに適し、かつタンパク質の活性および安定性を維持するのに適していると実験的に決定された温度で撹拌を行う。この溶媒は、任意で、2価陽イオン、補助因子、またはカオトロープなどの共存溶質、ならびにpHを調節するためのバッファー種を含むことができる。結晶化を容易にするための共存溶質およびそれらの濃度についての必要性は実験的に決定する。工業規模での処理法においては、タンパク質、沈殿剤、共存溶質、および、任意には、例えば、バッチ処理ではバッファーを組み合わせることによって、結晶化をもたらす制御された沈殿を行うことができる。透析または蒸気拡散法など、実験室における別の結晶化法および結晶化条件を用いることもできる(McPherson,ら、Methods Enzymol.114:112−20(1985)およびGilliland,J Crystal Growth 90:51−59(1998))。時には、架橋剤と結晶化媒体との間に不適合があって、架橋する前にバッファー(溶媒)を変える必要があるかもしれない。
【0048】
実施例に示したように、シュウ酸オキシダーゼは、広いpH範囲(例えば、pH3.5から8.0など)を含む、多くの条件下で結晶化する。いくつかの実施形態では、低分子ポリエチレングリコール(例えば、PEG600、PEG400、PEG200など)などの沈殿剤、または2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)などの共溶媒が含まれる。また使用することができる一般的な塩は塩化ナトリウムおよび酢酸亜鉛である。
【0049】
シュウ酸オキシダーゼは、結晶化溶液中で、例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50、60、70、80、90、または100mg/ml、またはそれ以上の濃度にすることが可能である。結晶化反応の効率または收率は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上である。一つの実施形態において、シュウ酸オキシダーゼの結晶は、バッチ法により、シュウ酸オキシダーゼの溶液を適当なバッファーと混合することによって成長し、生成される。一定の実施形態において、バッファーは65mMのクエン酸−リン酸バッファー、pH3.5、および28.5%のPEG600である。
【0050】
安定化結晶
適当な媒体中でシュウ酸オキシダーゼが成長したところで、任意には、架橋するなどして安定化させることができる。架橋によって、結晶の構成タンパク質分子の間に共有結合が導入されることにより、結晶格子の安定化がもたらされる。こうすることによって、これ以外では結晶格子の存在に不適合であるか、さらには、本来のタンパク質が存在するのにも不適合であるかもしれない代替環境にタンパク質を移入することが可能になる。シュウ酸オキシダーゼ結晶は、例えば、リジンアミン基、チオール(スルフヒドリル)基、および炭水化物成分を介して架橋することができる。架橋された結晶も、本明細書ではCLEC OXOまたはCLCと呼ぶ。
【0051】
架橋された結晶は、酵素の安定性(例えば、pH、温度、機械、および/または化学的安定性)、OXO活性のpHの特徴、可溶性、結晶の大きさまたは体積の均一性、結晶からの酵素の放出速度、および/または下層にある結晶格子中の各酵素分子間の孔の大きさおよび形状を変え得る。
【0052】
好都合には、本発明による架橋または安定化は、結晶が、未改変のOXOと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.7%、もしくは99.9%、またはそれ以上の活性を示すOXOを含むようなやり方で行われる。安定性は、未改変のOXOと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、またはそれ以上増加させることができる。安定性は、例えば、pH安定性、温度安定性、腸プロテアーゼに対する安定性、溶解安定性、およびインビボにおける生体安定性などの貯蔵条件下で測定することができる。
【0053】
一定の場合に、架橋すると、結晶状態のOXOポリペプチドの溶液への溶解が遅くなり、タンパク質分子を微結晶粒子の中に効果的に固定する。架橋タンパク質結晶のまわりの環境中、例えば、貯蔵条件ではなく使用条件下で、開始剤に曝露されると、タンパク質分子がゆっくりと溶解し、活性型OXOポリペプチドを放出するか、および/またはOXO活性を上昇させる。この溶解速度は、例えば、以下の因子の一つ以上によって調節される:架橋の程度、タンパク質の結晶を架橋剤に曝露する時間の長さ、架橋剤をタンパク質結晶に添加する速度、架橋剤の性質、架橋剤の鎖長、pH、温度、システイン、グルタチオンのようなスルファヒドリル(sulfahydryl)試薬の存在、架橋されたタンパク質結晶の表面積、架橋されたタンパク質結晶の大きさ、および架橋されたタンパク質結晶の形。
【0054】
架橋は、多官能性剤など、多種多様な架橋剤の一つまたは組合せたものを用いて、同時(並行して)に、または連続して行うことができる。周囲の環境中に存在する開始剤に曝露されると、または一定の時間をかけて、そのような多官能性剤と架橋したタンパク質結晶間の架橋が低下または弱体化して、タンパク質溶解または活性の放出がもたらされる。あるいは、結合点で架橋が崩壊して、タンパク質溶解または活性の放出がもたらされる。米国特許第5,976,529号および第6,140,475号を参照。
【0055】
いくつかの実施形態において、架橋剤は、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上の活性部分を有する多官能性の架橋剤である。様々な実施形態において、この薬剤は、グルタルアルデヒド、スクシンアルデヒド、オクタンジアルデヒド、グリオキサール、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオン酸)、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオン酸)、ジメチル3,3’−ジチオビスプロプリオンイミデートHCl、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノオクタン、エチレンジアミン、無水コハク酸、無水フェニルグルタル酸、サリチルアルデヒド、アセトイミデート、ホルマリン、アクロレイン、コハク酸セミアルデヒド、ブチルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、グリセルアルデヒド、およびトランス−オクタ−2−エナルから選ぶことができる。
【0056】
さらに別の多官能性架橋剤には、例えば塩化シアヌルなどのハロトリアジン類;例えば2,4,6−トリクロロ/ブロモピリミジンなどのハロピリミジン類;例えば無水マレイン酸、塩化(メタ)クリロイル、塩化クロロアセチルなどの脂肪族もしくは芳香族のモノカルボン酸もしくはジカルボン酸の無水物またはハロゲン化物;例えばN−メチロイルクロロアセトアミドなどのN−メチロール化合物;例えばフェニレン−1,4−ジ−イソシアネートなどのジイソシアネート類またはジイソチオシアネート、およびアジリジン類などがある。その他の架橋剤には、例えば、ジエポキシド、トリエポキシド、およびテトラエポキシドなどのエポキシド類がある。本発明の一つの実施形態において、架橋剤は、二官能性薬剤であるグルタルアルデヒドであり、グルタルアルデヒドは、単独、またはエポキシドと連続して使用される。別の架橋試薬(例えば、Pierce Chemical社の1996年のカタログ参照)を同時に(並行して)、または、下記に記載するような可逆的架橋剤と連続して使用することもできる。
【0057】
本発明の代替的な実施形態によれば、可逆的架橋剤を用いて、並行して、または連続して架橋を行うことができる。得られた架橋タンパク質結晶は、反応性の多官能性架橋剤によって特徴づけられ、その中にトリガーが別の基として取り込まれている。反応性官能基は、反応性のアミノ酸側鎖を一緒に結合してタンパク質にすることに関与し、トリガーは、周囲の環境の条件(例えば、pH、還元剤の存在、温度、または水の熱力学的活性)の一つ以上を変えることによって破壊され得る結合からなる。
【0058】
架橋剤は、同種官能性であっても、異種官能性であってもよい。反応性官能基(または部分)は、例えば、以下の官能基の一つから選ぶことができる(但し、R、R’、R’’、およびR’’’は、アルキル基、アリール基、または水素基であってよい):
I.反応性アシル供与体、例えば:カルボン酸エステルRCOOR’、アミドRCONHR’、アジ化アシルRCON3、カルボジイミドR−N=C=N−R’、N−ヒドロキシイミドエステル、RCO−O−NR’、イミドエステルR−C=NH2+(OR’)、無水物RCO−O−COR’、炭酸RO−CO−O−R’、ウレタンRNHCONHR’、酸ハロゲン化物RCOHal(但し、Hal=ハロゲン)、アシルヒドラジドRCONNR’R’’、およびO−アシルイソウレアRCO−O−C=NR’(−NR’’R’’’)など。
【0059】
II.反応性カルボニル基、例えば:アルデヒドRCHO、およびケトンRCOR’、アセタールRCO(H2)R’、ケタールRR’CO2R’R’’など(タンパク質固定および架橋の技術分野における当業者に知られている反応性カルボニル含有官能基は、文献に記載されている(Pierce Catalog and Handbook,Pierce Chemical Company,Rockford,III.(1994);S.S.Wong,Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking,CRC Press,Boca Raton,Fla.(1991));
III.アルキル供与体またはアリール供与体、例えば:ハロゲン化アリキルまたはハロゲン化アリールR−Hal、アジドR−N3、硫酸エステルRSO3R’、リン酸エステルRPO(OR’3)、アルキルオキソニウム塩R3O+、スルホニウムR3S+、硝酸エステルRONO2、マイケル受容体RCR’CR’’’COR’’、フッ化アリールArF、イソニトリルRN+≡C−、ハロアミンR2N−Hal、アルケン、およびアルキン;
IV.硫黄含有基、例えば:ジスルフィドRSSR’、スルフヒドリルRSH、およびエポキシド
【0060】
【化1】
;および
V.塩類、例えば:アルキルアンモニウム塩もしくはアリールアンモニウム塩R4N+、カルボン酸RCOO−、硫酸ROSO3−、リン酸ROPO3−およびアミンR3N−など。
【0061】
可逆的架橋剤は、例えば、トリガーを含む。トリガーは、架橋すべきタンパク質と反応することができる活性化基をもつアルキル鎖、アリール鎖、またはその他の鎖を含む。これらの反応基は、求核置換、フリーラジカル置換、または求電子置換に対して感受性の基など、とりわけ、ハロゲン化物、アルデヒド、カーボネート、ウレタン、キサンタン、エポキシドなど、様々な基であり得る。例えば、反応性基は、酸、塩基、フッ化物、酵素、還元、酸化、チオール、金属、光分解、ラジカル、または熱に対して不安定であってよい。
【0062】
可逆的架橋剤のさらなる例が、T.W.Green,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley&Sons(Eds.)(1981)に記載されている。可逆的保護基に使用される様々な方法が、可逆的で制御された可溶化を行うことができる架橋されたタンパク質結晶を製造するのに適した架橋剤に取り込むことができる。様々なアプローチが、本題に関するWaldmannの概説、Angewante Chemie Inl.Ed.Engl.,35:2056(1996)に列挙されている。
【0063】
別のタイプの可逆的架橋剤は、ジスルフィド結合含有架橋剤である。このような架橋剤によって形成される、トリガー破壊架橋(trigger breaking cross−link)は、架橋したタンパク質結晶の環境にシステインなどの還元剤を付加することである。ジスルフィド架橋剤の例は、Pierce Catalog and Handbook(1994−1995)に記載されている。このような架橋剤と方法の例は、米国特許第6,541,606号に記載されており、その関連部分が、参照して本明細書に組み込まれる。
【0064】
また、炭水化物部分間、または炭水化物部分とアミノ酸との間を架橋する架橋剤を使用することもできる。
【0065】
架橋結晶を形成させるには、架橋剤の濃度は、溶液中で、0.5%、1%、2%、3%、3.5%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、または20%wt/vであり得る。架橋する前にバッファーを交換する必要であり得る。CLECなどの結晶は、任意で、凍結乾燥させるか、あるいは製剤することができる。
【0066】
架橋結晶などの結晶、および本明細書記載のこれらの結晶および架橋結晶を含む組成物は、本明細書記載に記載されている、治療法およびシュウ酸レベルを低下させる方法において有用である。OXO結晶、架橋結晶、および組成物も、工業工程に関係する方法(例えば、合成、加工、バイオレメディエーション、消毒、滅菌など)、および、植物菌感染など、例えば、Svedruzicら、Arch.Biochem.Biophys.433:176−192(2005)で概説されているような植物の処理法においても有用である。可溶性または非晶質のOXOの治療以外の用途が、例えば、米国特許第5,866,778号、第6,218,134号、第6,229,065号、第6,235,530号、および第6,503,507号に記載されている。本明細書記載の結晶は、シュウ酸オキシダーゼ酵素の安定性が増すなど、上記記載の安定化されたOXO結晶の一つ以上の性質に基づいて、これらの用途に使用することができる。
【0067】
組成物
架橋結晶などのOXO結晶は、医薬組成物などの組成物として提供される(例えば、タンパク質の結晶の製剤および組成物について記載されている、米国特許第6,541,606号参照)。OXO結晶を含む医薬組成物は、OXO結晶を、糖類および生体適合性ポリマーなど、一つ以上の成分または賦形剤とともに含む。賦形剤の例は、American Pharmaceutical Associationとthe Pharmaceutical Society of Great Britainによって共同出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipientsに記載されているが、さらなる例を下記に示す。
【0068】
OXO酵素は、多様な生理学的に許容される塩のいずれかの形態で、および/または医薬組成物の一部である許容される薬学的担体および/または添加剤とともに、組成物中の結晶として投与することができる。生理学的に許容される塩の形態、および標準的な医薬製剤技術、および賦形剤は、当業者に周知されている(例えば、Physician’s Desk Reference(PDR)2003,57th ed.,Medical Economics Company,2002;およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy,eds.Gennadoら、20th ed,Lippincott,Williams & Wilkins,2000参照)。本出願の目的上、「製剤」は「結晶製剤」を含む。
【0069】
本発明の方法において有用なシュウ酸オキシダーゼは、賦形剤と組み合わせることができる。本発明によれば、「賦形剤」は、医薬組成物中で使用される充填剤または充填剤の混合物として働く。組成物中で使用するための成分および賦形剤の例は、以下に示すとおりである。
【0070】
生体適合性ポリマー、すなわち、非抗原性(アジュバントとして使用しない場合)、非発癌性、非毒性のポリマーであって、その他の点でも生体と不適合ではないポリマーを、本明細書記載のOXO結晶組成物に使用することができる。例には、ポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(乳酸)またはPLAなどのポリ(エステル)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)またはPLGA、ポリ(β−ポリヒドロキシ酪酸)、ポリ(カプロラクトン)、およびポリ(ジオキサノン);ポリ(エチレングリコール)、ポリ((ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸−アルキルビニルエーテルコポリマー、多価ポリオール、アルブミン、アルギン酸、セルロースおよびセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖類、グリコアミノグリカン、硫酸化多糖類、これらの混合物およびコポリマーなどがある。
【0071】
生物分解性ポリマー、すなわち、加水分解または可溶化によって分解するポリマーを、OXO結晶化合物に含ませることができる。分解は不均一、すなわち、まず粒子の表面で起きてよく、または均一、すなわち、ポリマー基質全体にわたって一律に分解されてよい。
【0072】
1種類以上の賦形剤などの成分、または薬学的な成分または賦形剤を、OXO結晶化合物に含ませることができる。成分は、不活性な成分であっても、活性型成分であってもよい。
【0073】
シュウ酸塩関連疾患をOXO結晶によって治療する方法
本発明の方法は、シュウ酸レベルの増加に関連する症状を治療または予防し、またはそのような症状が発生するリスクを低下させるために、シュウ酸オキシダーゼを哺乳動物被検体に投与することを含む。シュウ酸レベルの上昇は、例えば、尿、血液、血清、または血漿などの体液など、被検体から得た生体試料で検出することができる。一定の実施形態において、尿中シュウ酸レベルを検出する。結晶および/または結晶含有組成物を、本明細書記載の方法で投与することができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、原発性高シュウ酸尿症、腸性高シュウ酸尿症、外科的介入に起因する高シュウ酸尿症、特発性高シュウ酸尿症、シュウ酸症などを患う個体における高シュウ酸尿症を治療するための方法が提供される。別の例では、腎臓、骨、肝臓消化管、および膵臓の高シュウ酸塩関連疾患が、本明細書に開示された方法による治療に適している。さらに、本明細書で提供されている方法によって治療できる更なる疾患または病気には、エチレングリコール(シュウ酸)中毒、特発性尿結石症、腎不全(進行性、慢性、または末期の腎不全など)、脂肪便、吸収不全、回腸切除、外陰部痛、心臓伝導疾患、炎症性腸疾患、嚢胞性線維症、膵外分泌機能不全、クローン病、潰瘍性大腸炎、腎石灰沈着症、骨粗しょう症、尿石症、および腎石症などがある。このような症状および疾患は、任意には急性または慢性であり得る。
【0075】
本発明の方法は、被検体におけるシュウ酸レベルを、無処理または対照用の被検体でのレベルと較べて、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上低下させることができる。いくつかの実施形態において、被検体におけるシュウ酸レベルを、OXOを投与する前後で比較することによって低下を測定する。いくつかの実施形態において、本発明は、シュウ酸に関係した症状または疾患を治療または改善して、症状または疾患の一つ以上の病徴を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上改善させる方法を提供する。一定の実施形態において、本方法は、内生シュウ酸のレベルおよび/または食事性シュウ酸の吸収を低下させる。
【0076】
いくつかの実施形態において、例えば、アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ、グリオキシル酸還元酵素/ヒドロキシピルビン酸還元酵素、肝臓グリコール酸オキシダーゼ、またはシュウ酸代謝に関与するか、高シュウ酸尿症に関連する別の酵素などの活性を低下させる突然変異体についてホモ接合またはヘテロ接合の個体など、高シュウ酸症に関連する遺伝子型をもつ個体を治療する方法が提供される。別の実施形態において、シュウ酸分解菌(Oxalobacter formigenes)の腸内コロニー形成が少ないか、全くない個体を治療する方法が提供される。
【0077】
開示された方法は、治療上有効な量のシュウ酸オキシダーゼを、シュウ酸レベルの増加に関連した症状を発症する危険があるか、それに感受性があるか、それに苦しんでいる哺乳動物被検体に投与することを含む。本発明の方法によって治療できる集団は、例えば、原発性高シュウ酸尿症または腸性高シュウ酸尿症などのシュウ酸塩関連疾患を患っているか、それを発症する危険のある被検体などであるが、それらに限定されない。
【0078】
本発明の方法によって治療される被検体は、ヒト、ヒト以外の霊長類、霊長目の動物、ヒヒ、チンパンジー、サル、齧歯類(例えば、マウスやラット)、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどであるが、これらに限定されない。
【0079】
適応、病徴、および病気の指標
多くの方法が、シュウ酸塩関連疾患またはシュウ酸レベルの増加に関連した症状の発症または進行を判定するために利用できる。このような疾患には、上記したような症状、病気、または疾患が含まれるが、それらに限定されない。シュウ酸塩関連疾患の発症または進行は、例えば、尿中シュウ酸、血漿中シュウ酸を測定することによって、腎臓または肝臓の機能を測定することによって、または、シュウ酸カルシウムの沈着を検出することによって判定することができる。
【0080】
例えば、尿試料中、またはその他の生体試料もしくは体液の中のシュウ酸塩濃度を検出または測定することによって、症状、病気、または疾患を同定することができる。高シュウ酸尿症の初期の病徴は、典型的には腎臓結石であるが、これは、重度または突然の腹痛または側腹痛、血尿、頻繁な尿意、排尿時の痛み、または発熱および悪寒を伴うことがある。腎臓結石は症状を示すこともあるが、無症状のこともあり、例えば、x線、超音波、またはコンピュータ断層撮影(CT)法によって腹部を画像化することによって可視化することができる。高シュウ酸症を抑制できないと、腎臓が損傷されて、腎臓の機能が低下する。腎臓が機能不全になることもある。腎不全(および腎機能低下)は、排尿(糸球体ろ過量)の減少または排尿停止、全身違和感、疲労感、および顕著な倦怠感、吐き気、嘔吐、貧血、および/または幼児における正常な発達および成長の不全によって同定することができる。他の組織や器官におけるシュウ酸カルシウム沈着も、直接可視化(例えば、目視で)、x線、超音波、CT、心エコー図、または生検(例えば、骨、肝臓、または腎臓)などの方法によって検出することができる。
【0081】
シュウ酸塩濃度だけでなく、腎臓および肝臓の機能も、周知の直接アッセイ法および間接アッセイ法を用いて判定することができる。尿、血液、または他の生体試料の化学物質含有量を、周知技術によって試験することもできる。例えば、シュウ酸、グリコール酸、およびグリセリン酸レベルを測定することができる。肝臓および腎臓の機能のアッセイ法は周知されており、例えば、酵素欠損について肝臓組織を分析したり、シュウ酸沈着について腎臓組織を分析したりする。また、原発性高シュウ酸尿症の原因となることが知られているDNAの変化について、試料を試験することもできる。
【0082】
他の治療の適応は、既に検討されていて、以下の節で検討されている危険因子など、一つ以上の危険因子が存在することを含むが、それに限定されない。症状、病気、または疾患を発症させるリスクがあるか、それに感受性のある被検体、または、シュウ酸オキシダーゼによる治療に対して特に受容的である可能性のある被検体を、そのような危険因子、診断指標、または予後指標の一つ以上の有無を確認することによって同定することができる。同様に、シュウ酸塩関連疾患を発症するリスクをもつ個体を、一つ以上の遺伝子マーカーまたは表現型マーカーを分析することによって同定することができる。
【0083】
開示された方法は、24時間当り少なくとも30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、または400mg、またはそれ以上の尿中シュウ酸レベルになる被検体において有用である。一定の実施形態において、シュウ酸レベルは、一つ以上の病徴または病理に関係する。シュウ酸レベルは、血液、血清、血漿、または尿を含む体液などの生体試料において測定することができる。任意には、シュウ酸を、尿中クレアチンなど、標準的なタンパク質または物質に対して標準化する。いくつかの実施形態において、本願の方法は、シュウ酸オキシダーゼを投与して、1、3、5、7、9、12、または15日以内に、被検体における循環液中のシュウ酸レベルを検出不能レベルまで、または、治療前の被検体におけるシュウ酸レベルの1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%以下に低下させることを含む。
【0084】
ヒトの高シュウ酸尿症は、一日あたり40mg(約440μmol)または30mgよりも多い尿中シュウ酸排出量があることで特徴付けることができる。臨床的カットオフレベルの例は、例えば、男性では43mg/日(約475μmol)、また女性では32mg/日(約355μmol)である。また、高シュウ酸尿症は、1グラムの尿中クレアチンにつき一日当り30mgよりも多い尿中シュウ酸排出があることと定義することもできる。軽度の高シュウ酸尿症の人は、一日当り少なくとも30〜60または40〜60mgのシュウ酸を排出し得る。腸性高シュウ酸尿症の人は、例えば、一日当り少なくとも80mgの尿中シュウ酸を排出し得、また、原発性高シュウ酸尿症の人は、一日当り少なくとも200mgを排出し得る。(Shekarriz,www.emedicine.com/med/topic3027.htm)参照。
【0085】
化合物および組成物の投与
本発明の方法に従ってシュウ酸オキシダーゼを投与するのは、特定の送達系に限られるものではなく、上部消化管、例えば、口(例えば、カプセル、懸濁液、錠剤にして、または食物と一緒に)もしく胃を経由して、または上部腸を経由して(例えば、チューブまたは注射によって)投与して、各個体のシュウ酸レベルを低下させることを含む。一定の実施形態では、内生シュウ酸レベルおよび/または濃度を低下させるためにOXOを投与する。また、OXOは、透析装置、または各個体からの生体試料に接触する構造物ないし装置などの体外装置によって提供することもできる。
【0086】
各個体への投与は、単回投与で行うことも、反復投与で行うこともでき、多様な生理学的に許容される形態のいずれかで行うことができ、および/または医薬組成物の一部として許容される医薬用担体および/または添加剤(上記)とともに行うこともできる。開示された方法では、シュウ酸オキシダーゼを単独で投与し得、一種類以上の付加的生物活性剤、例えば、ピリドキシン(ビタミンB−6)、オルトリン酸、マグネシウム、グリコサミノグリカン、カルシウム、鉄、アルミニウム、マグネシウム、クエン酸カリウム、コレスチラミン、有機海洋性ハイドロコロイド(organic marine hydrocolloid)、例えば、バナナの茎のジュースもしくはビートのジュースなどの植物ジュース、またはL−システインなどともに、重複または非重複する一定間隔の期間にわたって同時並行して、または連続的に投与したりすることができる。シュウ酸レベルを低下させるか、またはOXOの活性または利用可能性を増加させる生物活性剤が提供される。連続投与法では、シュウ酸オキシダーゼおよび付加的薬剤をどのような順序で投与してよい。いくつかの実施形態において、重複する期間の長さは2週間、4週間、6週間、12週間、24週間、48週間、またはそれ以上であってよい。
【0087】
シュウ酸オキシダーゼは、単独の活性化合物として、または別の活性化合物または組成物と一緒に投与することができる。別段の記載がない限り、シュウ酸オキシダーゼは、病気の症状の重篤度および進行に応じて、約10μg/kgから25mg/kgまたは100mg/kgの用量で投与される。OXOの適当な治療上有効量は、治療に当たる臨床医によって選択され、その範囲は約10μg/kgから20mg/kg、10μg/kgから10mg/kg、10μg/kgから1mg/kg、10μg/kgから100μg/kg、100μg/kgから1mg/kg、100μg/kgから10mg/kg、500μg/kgから5mg/kg、500μg/kgから20mg/kg、1mg/kgから5mg/kg、1mg/kgから25mg/kg、5mg/kgから100mg/kg、5mg/kgから50mg/kg、5mg/kgから25mg/kg、および10mg/kgから25mg/kgであり得る。さらに、実施例またはPhysician’s Desk Reference(PDR)2003,57th ed.,Medical Economics Company,2002に記載されている具体的な投薬量を用いることもできる。
【0088】
以下の実施例は、本発明の例示的な実施形態を提供する。当業者には、本発明の趣旨および範囲を変更せずに実施することができる数多くの修正および改変があることが分かっているはずである。そのような修正および改変は、本発明の範囲に含まれる。本実施例は、いかなる意味でも、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0089】
(実施例1:シュウ酸オキシダーゼの組換え体の作製)
ヒト胎児腎臓(HEK293)細胞において:OXOをコードするDNAを適当な発現ベクターにクローニングする。配列を確認した後、ベクターを直鎖状にし、予め播種しておいてHEK293細胞への、直鎖状にしたベクターの形質転換を、直径6cmの培養皿の中で、商標Lipofectamine 2000トランスフェクション試薬を用いて行うことができる。適当な媒体で形質転換を行った後ほぼ一晩培養してから、0.5g/Lのネオマイシンを添加した培地の中で形質転換体を選択する。ネオマイシン含有媒体の中で最長3週間増殖させた後、安定的に形質転換されたHEK293細胞のクローンを同定する。そして、クローンを単離して増殖させ、OXO発現に用いる。
【0090】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において:OXO遺伝子をコードするDNAを適当な発現ベクターにクローニングする。次に、培養CHOlec3.2.8.1細胞を、トリプシン分解によって剥離し、遠心分離によって採取した。そして、細胞を、エレクトロポレーションリン酸緩衝化生理食塩水バッファー(EPBS)に、最終濃度が約1×107/mlになるよう懸濁し、直鎖状にしたベクターを用いてエレクトロポレーションにより形質転換する。一晩培養した後、媒体を0.5g/Lのネオマイシンを添加した媒体に交換し、適当な形質転換CHO細胞クローンをスクリーニングするために媒体を交換し続ける。安定した形質転換細胞クローンが確立し、増殖されたら、これらの細胞をOXO発現に用いる。
【0091】
ピキア・パストリスにおいて:OXO遺伝子をコードするDNA、例えば、配列番号:1を適当な発現ベクターにクローニングする。配列を確認した後、ベクターを直鎖状にしてから、ピキア・パストリス宿主細胞に形質転換することができる(Whittakerら、J Biol.Inorg.Chem.7:136−145(2002)参照)。形質転換体をゼオシン(Zeocin)で選択し、緩衝化グリセロール複合媒体(BMGY)で展開して、メタノールで誘導する。そして、培養媒体からOXOを単離することができる。
【0092】
出芽酵母において:上記の合成OXO遺伝子を、例えば、Gal1プロモーター(pGal)および発現用ターミネーターを含む適当な発現ベクターの中にクローニングすることもできる。配列を確認した後、発現ベクターを、形質転換受容能を持つ出芽酵母W303−1の中にエレクトロポレーションによって形質転換する。OXO発現に用いる前に、形質転換体をスクリーニングして増殖させる。
【0093】
昆虫細胞において:OXOをコードするDNAは、例えば、バキュロウイルス系など適当な発現ベクターにクローニングすることができる。配列を確認した後、ベクターを、形質転換受容能を持つDH10Bac大腸菌細胞中に形質転換することができ、組換えバクミド(bacmid)を含む大腸菌細胞をスクリーニングして確認する。組換えバクミドDNAを単離し、Cellfectin試薬などの試薬を用いてSf9昆虫細胞を形質転換するために使用する。そして、組換えバキュロウイルス粒子を単離し、増殖させ、力価調整した後、OXO発現用のSf9細胞に感染させるために使用することができる。
【0094】
大腸菌において:OXOをコードするDNAを適当な発現ベクターにクローニングする。配列を確認した後、ベクターを、形質転換受容能をもつ大腸菌OrigamiB(DE3)に形質転換するが、この菌株内では、発現された組換えタンパク質でジスルフィド結合の形成が可能になる。抗生物質を含む栄養培地皿上で形質転換体を増殖させて、形質転換体を選択し、OXO遺伝子特異的プライマーを用いたコロニーPCRによって確認する。そして、形質転換体を液体媒体中で培養し、OXOを発現させるためにイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導する。
【0095】
(実施例2:OXOの精製)
5Lのプールした発現媒体[由来は?]からOXOを精製し、20mMのリン酸バッファー(pH7.0)に対して濾過透析した。発現培地を10倍に濃縮した後、100mlのDE52陰イオン交換樹脂の50%スラリーを加えて、混合物を4℃で1時間撹拌した。シュウ酸オキシダーゼは、遠心分離によって分離したDE52樹脂には結合しない。次に、この培地を50mMのコハク酸バッファー(pH4.5)に対して濾過透析した。そして、濾過透析された調製物を、SPセファロース(商標)陽イオン交換カラムに充填して、そこから、50mMコハク酸バッファー中の1M硫酸アンモニウムの直線的濃度勾配によって結合OXOを溶出させた。シュウ酸オキシダーゼ活性について各画分を測定し、活性画分をプールした。表1参照。
【0096】
【化2】
酵母発現媒体から精製されたオオムギ由来の組換えシュウ酸オキシダーゼは、標準的な測定条件下(実施例11)で約7〜12U/mgの比活性を示す。
【0097】
(実施例3:OXOの精製(大規模))
方法A:400Lの酵母培養物からの発現媒体を、20mMのリン酸バッファー(pH7.0)に対して濾過透析して、約20Lの容量に濃縮した。濃縮した媒体は、精製するまで凍結して保存した。シュウ酸オキシダーゼの精製は、9560mlの濃縮した発現媒体を50mlのクエン酸リン酸バッファー(pH4.0)に対して濾過透析し、その後の濃度を2520mlの容量になるよう実施した。この工程で沈殿するタンパク質の混入物を遠心分離によって除去した。この上清を0.22μmのフィルターで濾過した後に5×45cmのSPセファロース(商標)陽イオン交換カラムに充填した。結合したOXOを、総容量の6倍を超える50mMクエン酸リン酸バッファー(pH8.0)の0〜100%の直線的濃度勾配によって溶出させた。この2段階処理法によって、53%の收率で、4.7gを上回る精製シュウ酸オキシダーゼが得られた。この精製処理を表2に要約した。精製されたOXOは、10.7U/mgの比活性を有する。
【0098】
【化3】
方法B:分泌された組換えシュウ酸オキシダーゼを含む無細胞発酵ブロスを、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)/セントラメイト(Centramate)カセット、およびPallマニフォールドを用いて、16Lから約4Lに濃縮し、その後、50mMのクエン酸リン酸バッファー(pH4)で5倍に希釈した。この処理を4回繰り返した。媒体を最終容量である約6.5Lに濃縮してから、沈殿したタンパク質を分離するために9500rpmで遠心分離した。上清を、蠕動ポンプを用いて、0.45μmのSartobranカプセルによって濾過して不要な破片を取り除いた。
【0099】
濾過した上清を、AKTA FPLC装置を用いて、50mMのクエン酸リン酸バッファー(pH4)で平衡化したSPセファロース(商標)カラム(1L包装総容量)に充填した。未結合のタンパク質を3カラム容量(CV)の50mMクエン酸リン酸バッファー(pH4.0)で洗浄した。直線のpH勾配(pH4.0〜8.0)を流速20mL/分で6CVのコースにわたって実施して、5mLの画分を回収した。シュウ酸オキシダーゼは、50mMのクエン酸リン酸バッファーにより約pH6.0のところで単一のピークとして溶出した。そして、2CVの50mMクエン酸リン酸バッファー(pH8.0)でカラムを洗浄した。
【0100】
溶出された画分を、実施例15に記載したようにシュウ酸オキシダーゼ活性を測定して解析した。活性画分を2Lボトルにプールし、Pellicon XL Biomax 10 TFF装置を用いて約400mL(約20mg/mL)に濃縮した。
【0101】
プールした画分の純度をSDS−PAGEによって、酵素活性をシュウ酸オキシダーゼ活性測定法によって測定した。5.3%の2−メルカプトエタノールを含む試料バッファー5μLを加え、99℃で5分間加熱して試料を変性させた。電気泳動を定電圧12Vで約2時間行った。ゲルをクーマシーブルー染色法で染色し、Microtek ScanMaker 4走査装置/Adobeソフトウエアを用いて走査した。Bradford法を用いてタンパク質の濃度を決定した。表3は、この精製法が非常に効率的で、回収率が79%よりも高いことを示している。
【0102】
【化4】
(実施例4:OXOの結晶化(蒸気拡散法))
ハンギングドロップ結晶化法:以下の市販されている低密度マトリックス結晶化キットを用いてハンギングドロップ結晶化実験を行った:Crystal Screen(Hampton Research;Aliso Viejo,CA)、Crystal Screen 2(Hampton Research)、Wizard I(Emerald Biosystems;Bainbridge Island,WA)、Wizard II(Emerald Biosystems)、Cryo I(Emerald Biosystems)、およびCryo II(Emerald Biosystems)。
【0103】
600μlの試薬を各ウエルに入れた。3μlの試薬を顕微鏡のカバーガラス上に分注して、3μlのシュウ酸オキシダーゼを、できるだけ混合しないように試薬の液滴中に分注した。この6μlの試薬およびシュウ酸オキシダーゼの液滴から最大5滴の滴下を行った。液滴はほとんど混合されていないため、その後(より小さな)液滴はそれぞれ、異なった未知のタンパク質対試薬の割合になっているため、短時間で結晶が得られる可能性が高まった。一晩室温でインキュベートした後、顕微鏡下で結晶についてハンギングドロップを調べた。表4に示すように、多数の結晶化条件が得られた。
【0104】
【化5】
【0105】
【化6】
【0106】
【化7】
(実施例5:OXOの結晶化(マイクロバッチ法))
以下のいくつかの結晶化条件からマイクロバッチ法によってシュウ酸オキシダーゼを結晶化することができた。
【0107】
(a)A280nmで27mg/mlの濃度の20μlの精製したシュウ酸オキシダーゼを、0.1Mリン酸−クエン酸、pH4.2の中40%のPFG600からなる10μlの混合液と混合した。さらに10μlのPFG600を加えて混合した。最後に、5μlのグリセロールを加えて、念入りに混合した。結晶化が10分以内に起きた。收率は75%であった。沈殿はなかった。
【0108】
(b)100μlのシュウ酸オキシダーゼ(27mg/ml)を、0.1Mリン酸−クエン酸、pH4.2の中40%のPFG600からなる55μlの溶液と混合した。さらに25μlのPFG600を加えて念入りに混合した。
【0109】
(c)100μlのシュウ酸オキシダーゼ(27mg/ml)を、0.1Mリン酸−クエン酸、pH4.2の中40%のPFG600からなる50μlの溶液と混合した。さらに30μlのPFG600を加えて念入りに混合した。シュウ酸オキシダーゼの結晶立方体が2時間以内に発生した。
【0110】
(d)シュウ酸オキシダーゼ(27mg/ml)を、0.1Mクエン酸、pH4.5の中で40%(v/v)のPFG300からなる20μlの溶液と混合した。
【0111】
(e)9.34mg/mlの濃度の66.6μlのシュウ酸オキシダーゼを、0.1M MES、pH6.00の中40%(v/v)のPFG400、および5%(w/v)PEG3000からなる133.4μlの溶液と混合した。
【0112】
(f)23.25μlのシュウ酸オキシダーゼ(43mg/ml)に、1.65μlの1Mトリス、pH7.00を加えて混合し、その後、4.15μlの2M (NH4)2SO4、1.5μlの100%グリセロール、12μlの100%PEG600、7.45μlの水を段階的に加えて混合した。最終濃度:20mg/mlのシュウ酸オキシダーゼ、166mMの(NH4)2SO4、0.33Mのトリス、pH7.00、3%グリセロール、24%PEG600、20mg/mlシュウ酸オキシダーゼ。
【0113】
(実施例6:OXOの結晶化(バッチ法))
バッチ結晶化法:以下のいくつかの結晶化条件からバッチ法によってシュウ酸オキシダーゼを結晶化することができた。
【0114】
(a)結晶化の条件は、13.9mg/mlのシュウ酸オキシダーゼ、65mMクエン酸−リン酸バッファー、pH3.5、および28.5%PFG600。結晶は、5μmよりも小さな大きさの立方体であった。
【0115】
(b)1.19μlのシュウ酸オキシダーゼ(43mg/ml)に段階的な方法で、0.35μlの100%PEG600、0.12μlの2M (NH4)2SO4、0.20μlの1Mトリス、pH7.00、および0.26μlの水を加えた。1時間以内に立方体の形をした結晶が現れた。
【0116】
大規模結晶化法:前臨床試験のための材料を供給するために、結晶化の規模を15mlのバッチに拡大した。
【0117】
(a)21.5mg/mlの濃度の10mlの精製したシュウ酸オキシダーゼを、2mlの0.5Mクエン酸−リン酸バッファー、pH3.50と混合した。4.7mlの100%のPFG600を加えて、念入りに混合した。結晶化している溶液を、室温で一晩転倒撹拌した。收率は94%であった。
【0118】
(b)精製したOXOを、40%PEG400、0.1M MES、pH6、5%PEG300を含む結晶化バッファーと1:2の割合で混合し、室温で一晩転倒撹拌した。この処理によって、菱形のOXO結晶が高い收率(>70%)で生成した。
【0119】
(c)65mMクエン酸−リン酸バッファーpH3.5中2.15mg/mlのOXOを、28.5%のPEG600と混合して、室温に一晩放置した。
【0120】
実施例7A:OXO結晶の架橋
グルタルアルデヒドを用いて、シュウ酸オキシダーゼの結晶[由来は?]を架橋した。結晶化後、シュウ酸オキシダーゼ結晶を20〜30mg/mlに濃縮した。3.2mlの25%グルタルアルデヒドを20mlの結晶に加えて、4%グルタルアルデヒドの溶液を作り、結晶を室温にて16℃で転倒撹拌した。架橋結晶を、100mMトリス、pH7.00で5回洗浄し、10mMトリス、pH7.00に再懸濁した。
【0121】
可溶性シュウ酸オキシダーゼおよびCLECシュウ酸オキシダーゼの比活性を比較(6回試行)したところ、様々な調製物において、架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶が、可溶性タンパク質の本来の活性の70%以上から95%以上を保持していることが明らかになった。
【0122】
実施例7B:シュウ酸オキシダーゼ結晶の架橋
実施例6(大規模法)に記載したように調製したシュウ酸オキシダーゼ結晶を、グルタルアルデヒド(Sigma)を加えて架橋した。シュウ酸オキシダーゼ結晶の1mlの等量液(60mg/ml)を、25℃にて12時間、pH4.2の様々な濃度のグルタルアルデヒド(最終濃度は0.05%から2%)で架橋した。架橋された結晶をエッペンドルフチューブに入れて2000rpmで遠心分離により分離し、1mlの100mMトリス、pH7.0の中で架橋された結晶を再懸濁することによって架橋を停止させた。そして、CLECをpH7.5の100mMトリスバッファーで5回洗浄した後、pH7.5の10mMトリスバッファーで3回洗浄した。
【0123】
実施例7C:架橋されたシュウ酸オキシダーゼの架橋結晶のpH制御された可溶性
pHを7.5から3.0まで低下させた後、様々な架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶の可溶性を調べた。架橋結晶を、50mMグリシンHCl(pH3)中で1mg/mlにしてインキュベートした。37℃で5時間撹拌しながらインキュベートした後、等量液を取り出した。非溶解の架橋結晶を2000rpmで遠心分離により分離し、上清を0.22μフィルターに通した後、OD280nmで可溶性タンパク質の濃度を測定した。結果を下記の表5に示す。
【0124】
【化8】
実施例7Aの結果と合わせると、これは、実質的に安定したグルタルアルデヒドによるシュウ酸オキシダーゼ架橋結晶が、少なくとも約0.1%(最終濃度の)グルタルアルデヒドの存在下で形成されることを示している。好ましくは、少なくとも0.5%の最終濃度、また、より好ましくは、4%が用いられる。
【0125】
実施例7D:様々なpHにおける架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶の安定性
実施例7Bに記載されているようにして調製されたシュウ酸オキシダーゼの結晶を、グルタルアルデヒド(Sigma)を加えて架橋した。シュウ酸オキシダーゼ結晶の1mlの等量液(60mg/ml)を、25℃にて12時間、pH4.2の1%グルタルアルデヒド(最終濃度)で架橋した。架橋された結晶をエッペンドルフチューブに入れて2000rpmで遠心分離により分離し、1mlの100mMトリス、pH7.0の中で架橋された結晶を再懸濁することによって架橋を停止させた。そして、CLECをpH7.5の100mMトリスバッファーで5回洗浄した後、pH7.5の10mMトリスバッファーで3回洗浄した。
【0126】
20mg/mlの架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶を37℃で2つの異なったpH2.0(50mMグリシンHClバッファー)および7.00(50mMトリスHClバッファー)にてインキュベートして、架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶の安定性を調べた。様々な時間間隔で等量液を取り出して、実施例11に記載したようにpH3.8における活性を測定した。結果を表6に記す。
【0127】
【化9】
実施例7E:架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶のpH活性のプロフィール
実施例7Bに記載されているようにして調製されたシュウ酸オキシダーゼ結晶を、グルタルアルデヒド(Sigma)を加えて架橋した。シュウ酸オキシダーゼ結晶の1mlの等量液(60mg/ml)を、25℃にて12時間、pH4.2の4%グルタルアルデヒド(最終濃度)で架橋した。架橋された結晶をエッペンドルフチューブに入れて2000rpmで遠心分離により分離し、1mlの100mMトリス、pH7.0の中で架橋された結晶を再懸濁することによって架橋を停止させた。そして、CLECをpH7.5の100mMトリスバッファーで5回洗浄した後、pH7.5の10mMトリスバッファーで3回洗浄した。以下の様々なバッファーおよびpHを用いて、実施例11に記載されているようにシュウ酸オキシダーゼの架橋結晶の活性を測定することにより、架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶のpH活性プロフィールを調べた:pH2.0および3.0の50mMグリシンHClバッファー、pH4.0、5.0、6.0の50mMコハク酸バッファー、ならびにpH7.0の50mMトリスバッファー。これらの結果を図11に示す。比較のため、可溶性シュウ酸オキシダーゼも示されている。
【0128】
(実施例8:I型原発性高シュウ酸尿症の動物モデルにおけるOXO療法)
I型原発性高シュウ酸尿症のマウスモデル:AGT1ノックアウトマウスは、肝臓のペルオキシゾーム酵素であるアラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼを持たず、その欠乏の結果、I型原発性高シュウ酸尿症となる。これらのノックアウトマウスは、軽度の高シュウ酸尿症を示す。AGT1のKOマウスは、野生型マウスと比較して約5倍に上昇した尿中シュウ酸レベルを示す(毎日の排泄量は、正常な尿量である0.2mmlo/Lに対し、約1〜2mmlo/Lである)。
【0129】
全部で37匹の雄マウス(La Laguna Tenerife,SpainのSalido博士によって開発されたAGT1 KO/C57BL6系統)を3回の実験で用いた。マウスを1つの対照群と2つの実験群に分けた。マウスの体重は20〜25グラムで、6月齢未満であった。
【0130】
OXO結晶の投与:マウスは、処理前に、個々の代謝ケージ(Tecniplast USA Inc,Exton,PA,USA)に7日間馴化させ、0.02〜0.08%未満のシュウ酸、および0.5%未満のカルシウムを含む標準的な繁殖用飼料(タンパク質17%、脂肪11%、炭水化物53.5%)が与えられた。
【0131】
12日間の治療期間が続く間、各マウスに、曲がったステンレス鋼製の18ゲージ飼育用針(Harvard Apparatus Inc.;Holliston,MA)で一日に2回、午前10時および午後5時に強制的に経口投与した。対照群のマウスには、1.2mlの食塩水を一日に2回、強制経口投与し、実験群のマウスには、一日に50mgのシュウ酸オキシダーゼを、可溶性酵素として、または、架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶の懸濁液として強制経口投与した(1.2ml容量を一日に2回)。すべての実験群で動物は、強制経口投与に対して僅かに有害な効果を示した。可溶性シュウ酸オキシダーゼは、pH6.2の50mMクエン酸−リン酸バッファーに入れて投与した。架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶は、10mM トリス−HClバッファー(pH7.0)中の懸濁物にして投与した。
【0132】
尿試料の分析:24時間の尿試料を、代謝ケージの中に、尿中アスコルビン酸がシュウ酸に自然分解するのを最小限に抑えるために、酸(3〜4mlの尿について1Nの塩酸を15μl)上で収集した。試料は、さらに分析する時まで−70℃で保存した。毎日の利尿、シュウ酸およびクレアチンの排出を測定した。シュウ酸およびクレアチンの測定法については、実施例11に記載されている。シュウ酸の尿内排出を、クレアチンの尿内排出のモル比として表した。Studentのt検定を用いてデータを統計的に解析した。
【0133】
図8に示すように、可溶性OXOを投与したことによる尿中シュウ酸に対する作用は測定されなかったが、架橋OXO結晶で処理すると、処理後12日で尿中シュウ酸レベルの統計的に有意な低下がもたらされた。
【0134】
(実施例9:腸性高シュウ酸尿症の動物モデルにおけるOXO療法)
腸性高シュウ酸尿症のラットモデル:高シュウ酸飼料で飼養された雄のSprague Dawleyラットは、腸性高シュウ酸尿症の研究に適した動物モデルを構成する。腸内シュウ酸を分解する腸内細菌であるオキサロバクター・ホルミゲネスを除去するために1.5%の食事性シュウ酸アンモニウムを、抗生物質治療とともに投与すると、本実験で、尿中シュウ酸が5倍から10倍増加する結果となった。
【0135】
35日齢よりも若く、体重が100〜120グラムのSprague Dawleyラットを、対照群および実験群(各群当り6匹のラットで、予備群には6匹のラット)に無作為に分けた。処理前に、ラットをそれぞれの代謝ケージ(LabProducts,Inc.;Seaford,DE)に7日間馴化させた。この期間中、テトラサイクリン系抗生物質であるTerramycin(商標)(500mg/L)を添加した酸性化水をラットに不断供給して、オキサロバクター・ホルミゲネスを除去し、1.5%のシュウ酸アンモニウムと低濃度(0.5%)のカルシウムを含む合成飼料(Research Diets TD89222PWD;Harlen Teklad;Madison,WI)で飼育した。処理が継続される間、この餌でラットを飼養した。抗生物質による処理は、最初の7日間の馴化期間の後は中断した。
【0136】
OXOを強制経口投与によって、12日間の処理期間の間、18ゲージの強制経口投与用針(Harvard Apparatus Inc.;Holliston,MA)を用いて、一日に3回毎日投与した(午前9時、午後12時および4時)。強制経口投与対照群には1mlの水を投与した。実験群のラットには、1mlの架橋(4%グルタルアルデヒド、実施例7参照)シュウ酸オキシダーゼ結晶の懸濁液を、10mMトリス−HClバッファー(pH7.0)に入れ、強制経口投与(15mg/ラット/日)によって投与した。
【0137】
尿試料の分析:24時間の尿試料を、代謝ケージに、尿中アスコルビン酸がシュウ酸に自然分解するのを最小限に抑えるために、酸(10mlの尿試料について1Nの塩酸を15μl)上で収集した。試料は、さらに分析する時まで−70℃で保存した。毎日の利尿、シュウ酸およびクレアチンの排出を測定した。シュウ酸およびクレアチンの測定法については、実施例11に記載されている。シュウ酸の尿内排出を、クレアチンの尿内排出のモル比として表した。Studentのt検定を用いてデータを統計的に解析した。
【0138】
図9に示すように、7日目に、架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶の投与によって、尿中シュウ酸排出の有意かつ持続的な低下がもたらされ、処理後12日で、尿中シュウ酸レベルが最大40%まで低下した。
【0139】
(実施例10:ヒトにおけるシュウ酸塩関連疾患に対するOXO療法)
シュウ酸塩関連疾患の治療または予防を必要とするヒトを、シュウ酸オキシダーゼ結晶を経口投与して治療する。シュウ酸オキシダーゼ結晶は、治療にあたる臨床医が、病状の重篤度および病気の進行に応じて決定するところにしたがって、約10μg/kgから25mg/kg、1mg/kgから25mg/kg、または5mg/kgから100mg/kgの投薬量で投与される。グルタルアルデヒドを用いて架橋されたシュウ酸オキシダーゼの結晶を毎日1回、2回、3回、4回、または5回投与するか、例えば、週に1回か2回など、より少ない頻度で投与する。シュウ酸オキシダーゼ結晶で治療すると、尿中シュウ酸レベルが少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%またはそれ以上低下する結果となる。
【0140】
(実施例11:アッセイ法)
タンパク質濃度の測定:280nmでの吸光度を測定して、シュウ酸オキシダーゼの濃度を決定した。1光学的密度(OC)の吸光を1mg/mlとみなした。
【0141】
OXO活性アッセイ法:以下のSigma Aldrich社のプロトコール(Enzymatic Assay of Oxalate Oxidase EC1.2.3.4)を用いて、シュウ酸オキシダーゼ(OXO)の活性を測定した。酵素活性の単位は以下のように定義される。すなわち、1ユニットは、室温、pH3.8で1分間あたり、シュウ酸から1.0μモルのH2O2を発生させる。
【0142】
アッセイ試料を、0.79mMのN,N−ジメチルアニリン(DMA)(Sigma)、0.11mMの2−メチル−2−ベンゾチアゾロンヒドラゾン塩酸(MBTH)(Sigma)、pH3.8を含む50mMのコハク酸バッファー溶液中0.25mg/mLの濃度に標準化させ、氷上に置いたが、タンパク質の濃度は280nmでの吸光度で決定した。1mg/mLのペルオキシダーゼ溶液を、使用前に冷diH2O中で調製し、氷上に置いておいた。他の試薬はすべて室温に置いた。測定は室温で行った。最初の反応がO2依存性であるため、シュウ酸オキシダーゼを加える前にマスター混合液に酸素を送り込むことが重要である。試薬を50mlチューブに以下の順序で加えていった。すなわち、1M NaOHを用いてpHを3.8に調整した27mLの50mMコハク酸バッファー;1mLの100mM EDTA;および1mlの蒸留水、そして、30分間強力に酸素を送り込んだ。まず、2.9mlの酸素含有実験溶液を3mlのプラスチック製キュベットに移して、pH3.8の200mMシュウ酸溶液20μl、および10μlの1mg/mLのペルオキシダーゼと十分に混合した。そして、10μlのシュウ酸オキシダーゼを加え、密閉したチューブを3回転倒させてすばやく混合した。600nmにおける吸光度の変化を、Shimadzu Biospecを用いて直ちに読み取って、10秒間隔で最長3分間まで記録した。曲線の直線部分(0から120秒の間)を用いて、試験およびブランクの両方について、1分間毎の600nmにおける吸光度の変化を評価した。ブランク用試料は、シュウ酸オキシダーゼ以外のすべてのアッセイ試薬からなっていた。
【0143】
酵素の比活性を以下のように計算した。
【0144】
U/mL酵素={(ΔA600/分)(2.95)(希釈係数)}/{(26.4)(0.02)}
および
U/mg固体={U/mL酵素}/{mg固体/mL酵素}}
ただし、式中、2.95=アッセイのミリリットル単位での総容量、df=希釈係数、26.4=600nmにおけるインダミン色素のミリモル吸光係数、および0.02=使用された酵素の容量をミリリットル単位で表したもの。
【0145】
具体的な実験において、シュウ酸オキシダーゼの架橋結晶(CLEC OXO)(一晩転倒撹拌して4%グルタルアルデヒドと架橋された菱形の結晶)を可溶性OXOと比較した。図4に示すように、CLEC OXOは、対応する可溶性のOXO調製物の活性の95%を保持している。
【0146】
比色法によるシュウ酸測定法:尿中のシュウ酸を定量的に測定するためのシュウ酸比色キットを、Trinity Biotech USA(St Louis,MO)またはGreiner Diagnostic AG(Dennliweg 9,Switzerland)から購入した。製造業者の指示に従って、尿試料を希釈して処理した。この測定法は、2つの酵素反応、すなわち(a)シュウ酸が、シュウ酸オキシダーゼによって二酸化炭素および過酸化水素水になり、(b)このようにして生成した過酸化水素水は、ペルオキシダーゼ存在下で3−メチル−2−ベンゾチアゾロンヒドラゾン(MBTH)および3−(ジメチルアミノ)安息香酸(DMAB)と反応して、590nmにおける吸光度で検出することができるインダミン色素を産生する。発生する色の強度は、試料中のシュウ酸塩濃度と直接比例する。尿中シュウ酸値を標準曲線から計算する。
【0147】
比色法によるクレアチン測定法:尿中のクレアチンを定量的に測定するためのクレアチン比色キットを、Quidel Corporation(San Diego,CA;METRA Creatinine Assay kit)またはRandox Laboratories(Antrim,United Kingdom)から購入した。本測定法は、クレアチンが、アルカリ性溶液内でピクリン酸と反応して、492nmにおいて吸光度を持つ産物を生成するという原理に基づいている。生成される複合体の量は、クレアチン濃度に直接比例する。単一の代謝ケージから収集した、ラットの24時間尿試料を二重蒸留水(double distilled water)で15倍に希釈した。20μlの希釈尿試料を、20μlのピクリン酸/水酸化ナトリウム(1:1)と混合した。室温で2分間インキュベートした後、492nmにおける吸光度を測定した。尿中クレアチン値を標準曲線から計算した。
【0148】
過ヨウ素酸シッフ染色:可溶性および結晶性のシュウ酸オキシダーゼを4〜20%のトリス−グリシンゲルで分離した。泳動が終ったら、ゲルを半分に切り分けた。左半分(レーン1〜5)をクーマシーブルー染色法によって染色し、右半分(レーン7〜10)をPAS染色法によって染色した。PAS染色をするには、40%メタノールおよび7%酢酸で、ゲルを1回の洗浄につき10分間ずつ4回洗浄した。洗浄したゲルを新しい40%メタノール、7%酢酸溶液で室温にて一晩振とうした。脱イオン水で数回洗浄した後、ゲルを、1%ピルビン酸および3%酢酸を含む溶液の中で1時間振とうしながらインキュベートした。シッフ試薬との最後のインキュベーションを、DI水で丹念に洗浄した後、暗黒下で1時間行った(図2)。
【0149】
(実施例12:原発性高シュウ酸尿症の動物モデルにおけるOXO療法)
AGT1 KO(C57B16)マウス(実施例8に記載した表現型)をエチレングリコール(EG)で攻撃して、重度の高シュウ酸尿症を誘発した。EGは、肝臓でシュウ酸に代謝される普通のアルコールである。
【0150】
マウスは、処理前に、それぞれの代謝ケージ(Tecniplast USA Inc,Exton,PA,USA)に7日間馴化させ、0.02〜0.08%未満のシュウ酸、および約0.5〜0.9%のカルシウムを含む標準的な繁殖用飼料(タンパク質17%、脂肪11%、炭水化物53.5%)が与えられた。馴化期間の後、マウスには、7日間、0.7%EGを添加した水を不断に与え、実験期間中同じことを続けた。攻撃の数日後、これらのマウスは、日々のシュウ酸排出量が3〜6mmol/Lである野生型マウスと比較して約10〜20倍多いシュウ酸を排出していた。
【0151】
OXO−CLEC酵素の投与:全部で8匹の雄マウス系統AGT1 KO/C57B16に、7日間EGを予備抗原投与してから、架橋結晶(4%グルタルアルデヒド、例えば実施例7参照)として処方した組換えシュウ酸オキシダーゼの単回用量を、凍結/乾燥食物酵素混合物として11日間連続して経口により投与した(10MMトリスHClバッファー(pH7)の懸濁液中の50mgの酵素を、凍結乾燥された5gmの食物と混合して、毎朝、〜7gmの食物/酵素混合液で食事用容器に補充した)(「用量50」)。マウスを無作為に対照群と実験群とに分けた。マウスは体重が20〜25グラムで、6月齢よりも若かった。
【0152】
尿試料の分析:24時間の尿試料を、代謝ケージの中に、尿中アスコルビン酸がシュウ酸に自然分解するのを最小限に抑えるために、酸(3〜4mlの尿について1Nの塩酸を15μl)上で収集した。試料は、さらに分析する時まで−20℃で保存した。毎日の利尿、シュウ酸およびクレアチンの排出を測定した。シュウ酸およびクレアチンの測定法については、実施例10に記載されている。シュウ酸の尿内排出を、24時間尿試料(mL)中に排出されているシュウ酸のμmol数として表した。Studentのt検定を用いてデータを統計的に解析した。実施例12参照。
【0153】
図12に示すように、OXO−CLECをEG AGT1KO(C57B16)マウスに経口投与すると、対応する未処理の対照マウスと比較して、処理開始後6日目から実験が終わるまで、尿中シュウ酸レベルの統計的に有意な低下がもたらされた。
【0154】
(実施例13:重度高シュウ酸尿症の動物モデルにおけるOXO療法、若いAGT1 KO(129/sv)マウス)
AGT1 KO(129/sv)マウスをエチレングリコール(EG)で攻撃して、重度の高シュウ酸尿症と、腎実質中にてシュウ酸カルシウムの沈着を誘発した。通常、攻撃の2〜6週間後に、マウスは、多様な尿中シュウ酸排出量、腎石灰沈着の多様な程度、およびクレアチンクリアランスの低下から判断される腎機能障害の徴候を示す。
【0155】
マウスは、処理前に、それぞれの代謝ケージ(Tecniplast USA Inc,Exton,PA,USA)に7日間馴化させ、0.02〜0.08%未満のシュウ酸、および0.5〜0.9%未満のカルシウムを含む標準的な繁殖用飼料(タンパク質17%、脂肪11%、炭水化物53.5%)が与えられた。
【0156】
OXO−CLEC酵素の投与:全部で22匹の雄マウス系統AGT1 KO/129/svに、7日間EGを予備攻撃した。この期間中、マウスには、0.7%エチレングリコール水を不断に与えて、重度の高シュウ酸尿症を創出した。予備処理の7日後、架橋結晶(4%グルタルアルデヒド、例えば実施例7参照)として処方した組換えシュウ酸オキシダーゼ(10MMトリスHClバッファー(pH7)に懸濁された50mgのOXO酵素)の単回用量を、凍結/乾燥食物酵素混合物として31日間連続して経口により投与した(上記したように懸濁した50mgの酵素を、凍結乾燥された3.5gmの食物と混合して、毎朝、約7gmの食物/酵素混合液で食事用容器に補充した)。マウスを無作為に対照群と実験群とに分けた。マウスは体重が20〜25グラムで、8〜10週齢よりも若かった。
【0157】
尿試料の分析:24時間の尿試料を、代謝ケージの中に、尿中アスコルビン酸がシュウ酸に自然分解するのを最小限に抑えるために、酸(3〜4mlの尿について15μlの1N塩酸)上で収集した。試料は、さらに分析する時まで−20℃で保存した。毎日の利尿を記録し、尿中シュウ酸およびクレアチンの濃度を週に2回測定した。シュウ酸の測定法については、実施例11に記載されている。シュウ酸の尿中排出を、24時間尿試料(mL)中に排出されたシュウ酸のμmol数として表した。Studentのt検定を用いてデータを統計的に解析した。図13参照。
【0158】
図13に示すように、OXO−CLECをEG AGT1KO(129/sv)マウスに経口投与すると、対応する未処理の対照マウスと比較して、処理開始後3日目から、尿中シュウ酸量の低下がもたらされ、低下は、処理の10日後に最大かつ有意になった。
【0159】
クレアチンクリアランス測定による腎機能の評価:実験の終わりに、4週間にわたるEG抗原投与を生き延びた動物をすべて殺して、血液を収集して、血漿クレアチンおよびクレアチンクリアランスを測定した。血清クレアチンを測定するには、Slot.C,1965およびHeinegard D,1973,kit Oxford Medical Researchによる、若干の修正を加えたヤッヘ(Jaffe)反応法を用いた。80μlの未希釈の血清試料を、キュベット中で800μlのピクリンアルカリと混合して、室温で30分間インキュベートした。分光光度法により、510nmのところで発色を測定したが、その時点で非特異的反応を消去するために33.3μLの60%酢酸を加えた。試料を念入りに混合し、室温で5分間インキュベートした後、510nmのところで再び読み取りを行った。最終的な吸光度は、2回の読み取りの差分として提示する。1mMクレアチン溶液の連続希釈を標準曲線に使用した。
【0160】
クレアチンクリアランスは、排出速度(Ucr×V)として表されるが、ここで、Ucrは、血漿クレアチン(Pcr)で割った尿試料中のクレアチン濃度(μmol/L)を表す。これは以下のように表される。すなわち、
Ccr=(Ucr×V)/Pcr=mL/h。
【0161】
図14に示すように、OXO−CLECで4週間治療すると、クレアチンクリアランスで表される正常な腎機能が維持された(7/11)が、対照群では、2匹のマウスだけ(2/11)がEG攻撃後に生き残ったが、それらの腎臓濾過速度は正常な範囲を下回っていた(4.76ml/h)。
【0162】
腎臓の組織病理学的分析:腎臓の完全な断面を得るために、マウスの腎臓を、パラフィン包埋用に通常通り処理した。各腎臓を、腎臓当り4μmの12個の連続切片に切って、通常の組織検査用のヘマトキシリン−エオシン染色によるか、または、腎組織中に存在するシュウ酸カルシウムの結晶を検出するための特異的Yasue金属置換組織化学的方法によって染色した。顕微鏡下、20倍の倍率でスライドを検査し、検査者は、切片を4つのカテゴリ尺度でスコアを付け、腎臓の解剖学的領域(腎臓皮質、腎臓髄質、および腎乳頭)のそれぞれに同じカテゴリを適用した。スコアは、なし、すなわち、どの領域にもシュウ酸の結晶なし、最小限、すなわち、いずれかの領域に1〜5個の結晶、中度、すなわち、いずれかの領域に5〜10個の結晶、および重度、すなわち、すべての領域に多数の結晶の集まり。図15および表6参照。
【0163】
【化10】
表6および図15に示すように、シュウ酸デカルボキシラーゼ−CLECによる4週間の経口処理によって、エチレングリコールで攻撃されたAGT1KOマウスの腎実質においてシュウ酸カルシウムの沈着が形成されるのが防止された。処理群の5匹のマウス(5/11)は、シュウ酸カルシウムの結晶の痕跡すら見られず、完全に正常な腎臓の形態を持っていたが、未処理群のマウスは100%CaOx沈着を示した(11/11)。
【0164】
Kaplan−Meyer推定量による生存率分析:エチレングリコールで攻撃されたマウスの生存率に対するOXO−CLECの効果を、ある時点で死んだ被検体の生存、その時点でまだ実験が行われている被検体の数で割るKaplan−Meyer法を用いて分析した。この方法は、簡単で、同じ実験の中の2つ以上の群間の差異をグラフで図示する。計算のため、カレイダグラフ(Kaleida Graph)やSTASなどの統計用プログラムをしばしば使用する。
【0165】
図16に示すように、シュウ酸オキシダーゼ−CLECによる4週間の経口処理によって、エチレングリコールで攻撃されたAGT1KOマウスの生存率が有意に増加した。概算された生存時間の中央値(処理群の50%のマウスが生き残っていた時間)は31日間であり、本実験を実際に継続した期間である。
【0166】
本明細書は、本明細書内で引用された参考文献の教示内容を踏まえて完全に理解することができる。本明細書内の実施形態は、本発明の実施形態を例示したものであって、本発明の範囲を限定するものと解すべきではない。当業者には、他の多くの実施形態が本発明に含まれることを容易に認識できる。本開示で引用されている刊行物、特許、および生物の配列はすべて、それら全体が参照されて組み込まれる。組み込まれた資料が矛盾するか、本明細書と整合しない場合は、本明細書がそのような資料よりも優先する。本明細書におけるいかなる参考文献の引用も、その文献が本発明に対する先行技術であると認めるものではない。
【0167】
別段の記載がない限り、請求項を含み本明細書で使用されている、成分、細胞培養、処理条件などの量を表すすべての数字は、すべての場合において、「約」という用語で修飾されていると理解されるべきである。したがって、そうではないとの別段の記載がない限り、数字による変数は近似値であり、本発明によって得ることが求められている所望の性質に応じて変化し得る。別段の記載がない限り、一連の要素の前に付けられた「少なくとも」という用語は、その一連の要素のすべての要素を意味する。当業者は、通常の実験だけを用いて、本明細書に記載された発明の具体的な実施形態と同等のものが数多くあることを認識するか、確認することができるであろう。そのような同等物も、以下の請求の範囲に含まれるものとする。
【0168】
本明細書および本明細書に開示した発明の実施を考慮すれば、本発明の他の実施形態が、当業者には明らかとなろう。本明細書および実施例は例示的なものにすぎないと見なされ、本発明の真の範囲および趣旨は以下の請求の範囲の記載されているものと考える。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】還元条件下(レーン1〜4)および非還元条件下(レーン6〜8)での4〜20%SDS PAGE濃度勾配ゲルにおける、精製されたシュウ酸オキシダーゼ(「OXO」)(可溶性型および結晶型)の見かけの移動度を示す。還元条件下では、OXOはモノマーである。非還元条件下では、OXOの大部分はヘキサマーとして存在する。レーン1:分子量マーカー;レーン2:可溶性OXO;レーン4:結晶性OXO;レーン6:可溶性OXO;レーン8:結晶性OXO;レーン10:分子量マーカー。結晶性OXOは、実施例6のバッチ結晶化法にしたがって調製した。
【図2】重複サンプルを4〜20%のトリス−グリシンゲルで分離して二等分したものをグリコペプチドに対して過ヨウ素酸シッフ(PAD)染色、およびクーマシーブルー染色(「常法」)したものを示す。左半分(レーン1〜5)をクーマシーブルー染色し、右半分(レーン7〜10)をPASで染色した。レーン1:分子量マーカー;レーン3:可溶性OXO;レーン5:結晶性OXO;レーン7:可溶性OXO;レーン9:結晶性OXO。結晶性OXOは、実施例6のバッチ結晶化法にしたがって調製した。
【図3】非還元SDSゲルで分離したOXOのシュウ酸オキシダーゼ反応性を示す。インサイチュでのシュウ酸オキシダーゼ分析により、様々なOXO調製物で活性が検出された。この活性は、見かけの分子量が約120kDaのポリペプチドと関連していた。レーン1:分子量マーカー;レーン3:精製した可溶性OXO;レーン5:pH6.0の10mM MES中の脱塩した可溶性OXO;レーン7:水中に溶解した結晶性OXO(40%(v/v)PEG400、pH6.0のMES、5%(w/v)PEG 3000から結晶化したもの);レーン9:水中に溶解した結晶性OXO(40%(v/v)PEG400、pH9.5のCHES、から結晶化したもの)。
【図4】可溶性OXOおよび架橋したOXO結晶(実施例6参照)の反応速度の特徴を比較したプロット図であり、結晶化OXOが、非結晶化OXOの活性の95%を保持していることを示している。
【図5A】図5Aは、蒸気拡散によって成長したOXO結晶の一連の写真である。
【図5B】図5Bは、蒸気拡散によって成長したOXO結晶の一連の写真である。
【図6】マイクロバッチ法によって成長させたOXO結晶の写真である。
【図7】バッチ法によって成長させたOXO結晶(図7A)、およびバッチ法によって成長させた架橋OXO結晶(図7B)を示している。
【図8】原発性高シュウ酸尿症のマウスモデルにおけるシュウ酸オキシダーゼ(OXO)療法の結果を示す。オスのAGT1ノックアウトマウスに、胃管栄養法によって可溶性OXO(図8A)、架橋したOXO結晶(図8B)、または模擬処理物(対照群)を投与した。24時間後の尿試料における尿中のシュウ酸およびクレアチンを測定した。エラーバーは、標準偏差をnの平方根で割って計算される標準誤差(SE)(n=5〜8)を示している。アステリスクは、対照群と実験群との間に統計的に有意な(P<0.05)差があることを示している。
【図9】腸性高シュウ酸尿症のラットモデルにおけるOXO療法の結果を示す。オスのSprague Dawleyラットに架橋したOXO結晶(15mg/ラット)または模擬処理物(対照群)を投与した。24時間後の尿試料における尿中のシュウ酸およびクレアチンを測定した。エラーバーは標準誤差(SE)(n=6)を示している。アステリスクは、対照群と実験群との間に統計的に有意な(P<0.05)差があることを示している。
【図10】配列番号:1〜3の配列情報を示す。
【図11】様々なpHにおける可溶性シュウ酸オキシダーゼのシュウ酸オキシダーゼ活性と比較した、グルタルアルデヒドに架橋したシュウ酸オキシダーゼ結晶(4%)のシュウ酸オキシダーゼ活性(%)のグラフを描いたものである。
【図12】EG AGT1 KOマウスをOXO−CLECで経口処理した1〜11日間、対照よりも尿中シュウ酸レベルが低下したことを示している。処理群(n=5)に、OXO−CLECを、経口で50用量投与した(適量の酵素スラリーを5gmの食物と混ぜ、凍結乾燥して、毎朝、えさ箱に〜7gmの食物/酵素混合物を再補充した)。対応する対照群はn=3で、試験品を含まない同じタイプの食物を投与した。各バーは、平均値±SEを示している。
【図13】EG AGT1 KOマウスをOXO−CLECで経口処理した31日後に、対照よりも尿中シュウ酸レベルが低下したことを示している。処理群(n=11)に、OXO−CLECを、経口で50用量投与した(適量の酵素スラリーを3.5gmの食物と混ぜ、凍結乾燥して、毎朝、えさ箱に〜7gmの食物/酵素混合物を再補充した)。対応する対照群はn=11で、試験品を含まない同じタイプの食物を投与した。基準尿中シュウ酸レベルを3日目について示す。各バーは平均値±SEを示している。*は、対照群と実験群との間に有意な差があることを示している。これらの結果を、独立した両側スチューデントのt検定によって分析した。実験を開始する際に、各群にn=11のマウスがいたが、何匹かが、エチレングリコールの攻撃が原因となって投与実験の途中で死亡したため、実験の終わりに尿中シュウ酸を測定した特定の日に生きていたマウスのみ、すなわち、対照群ではn=2および50mgOXO−CLEC群ではn=7のみについて示す。したがって、統計的有意性とは関連が薄い。それよりも、これらの結果は、下記に記載した結果と相俟って、本発明による治療法の有効性の証拠を提供している。
【図14】レアチニンクリアランスによって測定したところによると、極度の高シュウ酸尿症状態における正常な腎機能を維持する上で、OXO−CLEC処理が有効であることを示している。示された結果は、1ヶ月の全実験期間を生き延びたマウスだけである;すなわち、50mg群(n=7)および対照群(n=2)。対照群と比較すると、1匹あたり毎日50mgのOXO−CLECを投与されたマウスでは、クレアチンクリアランスが有意に高かった。各バーは、平均値±SEを示している。正常な腎機能をもつマウスにおけるクレアチンクリアランスは>10ml/hである。
【図15】50mgOXO−CLECで処理した群(図15A)および対照群(図15C)のマウスの腎実質におけるYasue陽性シュウ酸カルシウム結晶を示す。代表的なスライドを20倍に拡大して示す。シュウ酸カルシウムの蓄積を示さない正常な腎実質を(A)に示し、中度の腎石灰沈着をスライド(B)に示し、重度の腎石灰沈着をスライド(C)に示す。黒い矢印は、シュウ酸カルシウム沈着を示し、橙色の矢印は、形態が僅かに変化した糸球体を示し、また、茶色の矢印は、間質が線維化した広範な領域を示している。
【図16】エチレングリコール攻撃された、OXO−CLECで処理されたマウスと、対照群のマウスと生存時間を比較したKaplan−Meyerの生存曲線を示す。
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
シュウ酸は、HO2C−CO2Hという化学式をもつジカルボン酸である。シュウ酸は、主に、シュウ酸エステルとして、すなわち、シュウ酸の塩形態で生体内に存在している。シュウ酸は、例えば、ホウレンソウ、ルバーブ、イチゴ、クランベリー、ナッツ、ココア、チョコレート、ピーナッツバター、ソルガム、および茶などの食物中に見られる。また、シュウ酸は、ヒトおよび他の哺乳動物においては代謝最終産物でもあり、腎臓によって尿の中に排出される。カルシウムに結合すると、シュウ酸は不溶性産物であるシュウ酸カルシウムを生成するが、これは、腎臓結石中に見られる最も一般的な化合物である。
【0002】
哺乳動物は、シュウ酸を分解する酵素を合成しないため、個体内のシュウ酸レベルは、通常、排出や食物として摂取するシュウ酸の低吸収性によって抑えられている。シュウ酸の濃度上昇は、原発性高シュウ酸尿症、腸性高シュウ酸尿症、および特発性高シュウ酸尿症など、様々な病態を伴う。非特許文献1および非特許文献2。シュウ酸の増加は、食物由来のシュウ酸を食べ過ぎたり、腸管からシュウ酸を過剰吸収したり、シュウ酸産生が異常になったりすることによって引き起こされることがある。結腸および小腸におけるシュウ酸の過剰吸収は、胆汁酸の疾患もしくは脂肪吸収不全症、回腸切除が原因となる過剰吸収、または、例えば、セリアック症、膵外分泌機能不全、小腸疾患、もしくは肝疾患によって起こる脂肪便を伴う。
【0003】
高シュウ酸尿症、すなわち、尿中へのシュウ酸排出は、シュウ酸カルシウムが腎組織に蓄積したり(腎石灰沈着)、尿管に蓄積したり(例えば、腎臓結石、尿路結石、および腎石症)することに関係するいくつかの健康上の問題を伴う。また、シュウ酸カルシウムは、例えば、眼、血管、関節、骨、筋肉、心臓、およびその他の主要組織にも蓄積して、それらを損傷する原因となる。例えば、非特許文献3および非特許文献4参照。シュウ酸レベルの増加による効果は、様々な組織に現れることがある。例えば、小血管への蓄積は、治癒することのない痛みを伴う皮膚潰瘍を引き起こし、骨髄への蓄積は貧血を引き起こし、骨組織への蓄積は骨折を引き起こしたり、子供の成長に影響したりし、また、心臓へのシュウ酸カルシウムの蓄積は心拍リズムの異常または心機能不全を引き起こす。
【0004】
シュウ酸レベルの上昇を治療するための現行の方法は必ずしも効果的ではなく、原発性高シュウ酸尿症患者の多くで、集中的な透析および臓器移植が必要となる可能性がある。様々な高シュウ酸尿症に対する現行の治療法には、高用量のピリドキシン、オルトリン酸、マグネシウム、鉄、アルミニウム、クエン酸カリウム、コレスチラミン、およびグリコサミノグリカン治療や、食事および液体の摂取を調整する養生法、透析療法、および、腎臓移植および肝臟移植など、外科的処置療法などが含まれる。これらの療法(例えば、低シュウ酸または低脂肪の食事、ピリドキシン、適量のカルシウム、および液体の増加)は、部分的に有効なだけで、望ましくない副作用、例えば、オルトリン酸、マグネシウム、またはコレスチラミンの補充による消化管への影響、ならびに透析および手術の危険などを生じる可能性がある。したがって、身体から安全にシュウ酸を除去する方法が必要とされている。さらに、生体試料において、シュウ酸を分解してシュウ酸レベルを低下させる方法は、例えば、シュウ酸の吸収を阻止するだけか、シュウ酸のクリアランスを増加するだけの治療法よりも有利である。
【0005】
シュウ酸分解性バクテリアを利用して、各個体のシュウ酸を減少させることが、例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に記載されている。一方、特許文献4には、シュウ酸経路に関係する酵素の投与について記載されている。しかし、これらのシュウ酸分解酵素は、胃の過酷な酸性環境に対して感受性である。514号公報は、例えば、これらの問題を解決するために腸溶コーティングを用いることを記載している。それでもなお、高活性で安定した、または他の有利な形態のシュウ酸分解酵素、例えばシュウ酸オキシダーゼが、シュウ酸塩関連疾患を治療するために必要とされている。
【0006】
現在の治療法が最適なものではないため、シュウ酸塩関連疾患に罹った個体など、各個体におけるシュウ酸塩濃度の上昇に関連した疾患を治療または予防するための方法および組成物に対する必要も存在する。一例として、各個体が、臓器移などの手術を遅らせるか避けることができるように、植原発性高シュウ酸尿症を治療するための方法も必要である。
【特許文献1】米国特許第6,200,562号明細書
【特許文献2】米国特許第6,355,242号明細書
【特許文献3】米国特許第6,699,469号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0234514号明細書
【非特許文献1】Leumannら、Nephrol.Dial.Transplant.(1999)14:2556−2558
【非特許文献2】Earnest,Adv.Internal Medicine(1979)24:407−427
【非特許文献3】Leumannら、J Am.Soc.Nephrol.(2001)12:1986−1993
【非特許文献4】Monicoら、Kidney International(2002)62:392−400
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、例えば、結晶性シュウ酸オキシダーゼの経口投与によってシュウ酸塩関連疾患を可能にするための治療法および処方剤に役立つシュウ酸オキシダーゼの結晶を提供する。また、シュウ酸オキシダーゼの結晶は、例えば、シュウ酸塩濃度を調節したり、個体におけるシュウ酸カルシウムの蓄積によって起こる損傷を最小限に抑えたりするのに有効な方法に使用することもできる。また、本発明は、架橋したシュウ酸オキシダーゼ結晶、およびこれらの結晶を含む組成物も提供する。特に、実施形態において、これらの架橋剤は多官能性であり、一定の実施形態において、本剤は、グルタルアルデヒドなどの二官能性剤である。
【0008】
ある場合には、これらの結晶は、植物、バクテリア、菌類などの天然源、特に、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、オートムギ、イネ、ホウレンソウ、ソルガム、バナナ、およびライムギに由来するシュウ酸オキシダーゼを含む。別の場合には、シュウ酸オキシダーゼは組換えによって作出される。
【0009】
また、本発明は、シュウ酸オキシダーゼの結晶または架橋したシュウ酸オキシダーゼ結晶を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物のシュウ酸塩濃度を低下させる方法も提供する。これらの方法は、シュウ酸塩濃度を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%低下させる。
【0010】
様々な実施形態において、シュウ酸オキシダーゼ結晶または架橋結晶は経口投与される。別の場合には、これらの結晶は上部消化管を経由して投与される。さらなる実施形態において、シュウ酸オキシダーゼは、対外装置によって、例えば、透析の過程で投与される。
【0011】
また、本発明は、哺乳動物におけるシュウ酸塩濃度の上昇と関係がある疾患の治療、予防、または進行を遅らせるための方法であって、シュウ酸オキシダーゼ結晶または架橋結晶を哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態において、疾患は、腎臓疾患、骨疾患、肝臓疾患、消化管疾患、および膵臓疾患から選択される。さらなる態様において、疾患は、原発性高シュウ酸尿症、腸性高シュウ酸尿症、特発性高シュウ酸尿症、エチレングリコール中毒、尿石症、および腎臓結石症から選択される。
【0012】
以上の開示および以下の説明は、特許請求の範囲に記載された発明を制限するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(詳細な説明)
本発明は、一部において、シュウ酸オキシダーゼ(OXO)の結晶を投与すると高シュウ酸尿症が治療できるとの発見および実証に基づいている。本明細書で説明するように、経口で、または直接胃に投与された結晶性シュウ酸オキシダーゼは、食物中のシュウ酸を消費していない人など、個体内のシュウ酸レベルを低下させることができる。様々なシュウ酸塩関連疾患を治療するためにOXO結晶を投与する方法が本明細書に記載されている。さらに、OXO結晶および架橋された結晶(CLEC)が、これらを含みかつ使用する組成物と同様に提供される。
【0014】
定義
本発明がより容易に理解できるよう、まず、いくつかの用語を定義しておく。それ以外の定義も、詳細な説明全体の中に示されている。
【0015】
本明細書において、「生体試料」とは、細胞、組織、器官、または生物から、例えば、分析物を検出するために集められた生物由来材料のことである。生体試料の例には、液体試料、細胞試料、または組織試料などがある。生体液には、例えば、血清、血液、血漿、唾液、尿、または汗などがある。細胞試料または組織試料には、生検、組織、細胞懸濁液、または、臨床試料などの他の標本および試料がある。
【0016】
「結晶」とは、物質の固体状態の一形態であり、3次元で周期的に反復したパターンに並んだ原子を含む(例えば、Barret,Structure of Methals,2nd ed.,McGraw−Hill,New York(1952)参照)。例えば、ポリペプチドの結晶型は、別の形態である非晶質固体状態とは異なる。結晶は、形、格子構造、溶媒の割合(percent solvent)、および、例えば、屈折率などの光学的性質などの特性を示す。
【0017】
「対外装置」とは、個体の治療においてOXO結晶と接触する体液を持ち込むための体内には置かれない構造物のことである。好ましくは、対外装置は、腎臓透析などの透析に使用される装置、持続的動静脈血液ろ過用装置、体外型膜型人工肺、または血流から老廃物をろ過するために使用される装置である。同様に、老廃物をろ過するための装置の構成要素も本用語に包含され、例えば、チューブ、多孔質材料、または膜が含まれる。特に、体外装置は、透析用装置であってよい。また、透析用装置の膜であってもよい。
【0018】
OXOの「機能性断片」とは、シュウ酸の酸化を触媒することができるなど、OXOの生物活性を一つ以上保持している、OXOポリペプチドの一部である。本明細書において、機能性断片は、別段の記載がない限り、一方または両方の末端の末端切断を含み得る。例えば、機能性断片は、OXOポリペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシル末端から1、2、4、5、6、8、10、12、15、または20個、またはそれ以上の残基が除かれていてよい。好ましくは、切断は、一方または両方の末端から20アミノ酸以下である。機能性断片は、任意には、一つ以上の異種配列に結合していてよい。
【0019】
「個体」という用語は、哺乳動物を意味し、ヒト、ヒト以外の霊長類、ヒヒ、チンパンジー、サル、齧歯類(例えば、マウス、ラット)、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなど、哺乳動物に分類されている任意の動物を含む。
【0020】
「単離された」という用語は、その本来の環境から実質的に切り離されている分子を意味する。例えば、単離されたタンパク質は、細胞内物質や、そのタンパク質が由来する細胞源または組織源に由来するその他のタンパク質を実質的に含まない。この用語は、単離されたタンパク質が、治療用組成物として投与するのに十分な純度、または少なくとも70%から80%(w/w)の純度、より好ましくは、少なくとも80%から90%(w/w)の純度、さらにより好ましくは、90%から95%(w/w)の純度、および最も好ましくは、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%または100%(w/w)の純度である調製物を意味する。
【0021】
本明細書において、「シュウ酸塩関連疾患」とは、シュウ酸またはシュウ酸塩の病理レベルに関連した病気または疾患を意味し、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、腸性高シュウ酸尿症、特発性高シュウ酸尿症、エチレングリコール(シュウ酸)中毒、特発性尿石症、腎不全(進行性、慢性、または末期の腎不全など)、脂肪便、吸収不全症、回腸切除、外陰部痛、心臓伝導疾患(cardiac conductance disorder)、炎症性腸疾患、嚢胞性線維症、膵外分泌機能不全、クローン病、潰瘍性大腸炎、腎石灰沈着症、尿石症、および腎石症を含むが、これらに限定されない。このような症状および疾患は、任意には急性または慢性であり得る。腎臓、骨、肝臓、消化管、および膵臓に関連したシュウ酸塩関連疾患が周知されている。さらに、シュウ酸カルシウムが、眼、血管、関節、骨、筋肉、心臓を含むが、これらに限定されない多様な組織、および他の主要な臓器に沈着することがあり、多くのシュウ酸塩関連疾患をもたらす。
【0022】
「シュウ酸」は、尿および腸液のpH(PKa1=1.23、PKa2=4.19)では、主に塩の形態、すなわちシュウ酸エステルの形態で(対応する共役塩基の塩類として)存在する。Earnest,Adv.Internal Medicine 24:407−427(1979)。「シュウ酸」および「シュウ酸エステル」という用語は、本開示を通じて同義のものとして用いられている。リチウム、ナトリウム、カリウム、および鉄(II)を含むシュウ酸塩は可溶性であるが、シュウ酸カルシウムは、水の中では非常に可溶性が低く、18℃では0.58mg/100mlしか溶けない。Earnest,Adv.Internal Medicine 24:407−427(1979)。食物からのシュウ酸は、食事性シュウ酸とも呼ばれる。代謝過程で産生されるシュウ酸は、内生シュウ酸と呼ばれる。循環性シュウ酸は、血液などの循環体液中に存在するシュウ酸である。
【0023】
「治療上有効な用量」または「治療上有効な量」という用語は、原発性高シュウ酸尿症または腸性高シュウ酸尿症などの高シュウ酸尿症を含む、シュウ酸関連症状の発症の開始を阻止、遅延させるか、症状の改善をもたらす化合物の量を意味する。治療上有効な量は、例えば、シュウ酸塩濃度の上昇に関連した疾患の一つ以上の症状を治療し、予防し、重篤度を低下させ、発症を遅延させ、または発生のリスクを低下させるのに十分である。有効な量は、当技術分野において周知の方法により、本説明の次章で説明するようにして決定することができる。
【0024】
「治療」、「療法」、およびこれらの同族語は、治療および予防/防止する方法を意味する。治療を必要とする人々は、特定の医学上の疾患を既に有する個人と、その疾患に最終的に罹る可能性のある人々を含むことが可能である。治療の必要性は、例えば、疾患の発症に付随する一つ以上の危険因子の存在、疾患の出現または進行、または、疾患を有する患者の治療に対する受容力によって評価される。治療には、疾患の進行を遅延または逆転させることも含まれ得る。
【0025】
シュウ酸オキシダーゼ
本明細書において、シュウ酸オキシダーゼ(OXO)は、シュウ酸:酸素酸化還元酵素を意味する。シュウ酸オキシダーゼは、以下の反応にしたがって、酸素分子(O2)依存性酸化によって、シュウ酸が二酸化炭素および過酸化水素になるのを触媒することができる明確に定義された酵素群である:
HO2C−CO2H+O2→2CO2+H2O2。
【0026】
シュウ酸オキシダーゼのアイソフォーム、およびこれらのアイソフォームのグリコフォームがこの定義に含まれる。コムギ、オオムギ、トウモロコシ、オートムギ、イネ、およびライムギなど真性の禾穀植物などの植物、バクテリア、および菌類に由来するOXOが、この用語に含まれる。任意には、OXOはさらに、オオムギOXOのように、スーパーオキシドジスムターゼの活性を可能にする。一定の状況において、OXOは、OXO糖タンパク質ダイマーの三量体など、可溶性の六量体タンパク質である。
【0027】
シュウ酸オキシダーゼは、高等植物、バクテリア、および菌類によって産生され、シュウ酸:酸素酸化還元酵素活性を有する。シュウ酸オキシダーゼは、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、オートムギ、イネ、およびライムギなど真性の禾穀植物によって産生されるシュウ酸オキシダーゼを含む。コムギのシュウ酸オキシダーゼがジャーミン(germin)としても知られているため、これらは、通常、ジャーミン型OXO(G−OXO)として同定される。ジャーミン様タンパク質(GLP)は、一定の構造的特徴を共通にもつタンパク質の大きな分類群である。OXOの他の源は、コケ、ビート、ホウレンソウ、ソルガム、およびバナナである。G−OXOなどのOXOは、例えば、六量体の糖タンパク質としての活性をもつ。OXOには、スーパーオキシドジスムターゼ活性を持つと報告されているものもある。
【0028】
結晶を調製するために用いられ、かつ、本明細書記載の方法で使用されるシュウ酸オキシダーゼは、例えば、天然源から単離すること、すなわち、天然源に由来することが可能である。本明細書において、「由来する」とは、源において天然に存在するアミノ酸または核酸の配列をもつことを意味する。例えば、オオムギに由来するシュウ酸オキシダーゼは、オオムギのシュウ酸オキシダーゼタンパク質の一次配列を含むか、オオムギで見られるシュウ酸オキシダーゼをコードする配列を含む核酸、またはその縮退した核酸によってコードされている。ある源に由来するタンパク質または核酸は、その源から単離される分子、遺伝子組換えによって産生される分子、および/または化学的に合成ないし修飾される分子を包含する。本明細書で提供される結晶は、OXOのアミノ酸配列、またはシュウ酸酸化活性を保持しているOXOの機能的断片のアミノ酸配列を含むポリペプチドから形成させることができる。好ましくは、OXOは、シュウ酸の酸化を触媒することに加え、重合、マンガン要求性、および/またはスーパーオキシドジスムターゼ活性など、天然型OXOの機能的特性を少なくとも1つ保持している。
【0029】
単離されたシュウ酸オキシダーゼ
シュウ酸オキシダーゼは以前から単離されているため、オオムギの幼植物体、根、および葉、ビートの茎、ビートの葉、コムギの胚、ソルガムの葉、およびバナナの皮など、多くの源から利用することができる。また、OXOは、例えば、Sigma社などの供給業者から購入することもできる。天然源からOXOを単離する方法は、例えば、以下の文献に既に記載されている:Liuら、Zhi Wu Sheng Li Yu Fen Zi Sheng Wu Xue Xue Bao 30:393−8(2004)(Engl.Abst.at PMID 15627687);Rodriguiez−Lopezら、FEBS Lett.9:44−48(2001);Pundirら、Chin.J.Biotechnol.15:129−138(1999);およびAguilarら、Arch.Biochem.Biophys.366:275−82(1999)。これらの単離シュウ酸オキシダーゼを用いて、本発明の結晶、架橋結晶、および組成物を生成させることができる。そして、これらの結晶、架橋結晶、および組成物を、本明細書に記載する方法に使用することができる。
【0030】
組換えシュウ酸オキシダーゼ
あるいは、組換えOXOを用いて、本明細書に記載の結晶および方法を形成することができる。いくつかの例において、組換えOXOは、天然のOXO配列から得た配列に含まれるか、コードされている。さらに、天然型配列に相同であるか、実質的に同一であるアミノ酸配列を含むOXOが、本明細書に記載されている。また、天然のOXOコード核酸に相同であるか、実質的に同一である核酸も提供されているため、本明細書に記載されているように結晶化および/または投与することができる。
【0031】
本明細書において「組換え」と呼ばれるポリペプチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、および/または制限酵素を用いてベクターにクローニングするなどの人為的組換え法による方法で作出されたポリペプチドなど、組換えDNA法によって製造されたポリペプチドである。また、「組換え」ポリペプチドは、宿主細胞などの細胞の中で組換えによって改変された発現をする天然型ポリペプチドなど、その発現が変化したポリペプチドでもある。
【0032】
一つの実施形態において、OXOは、オオムギのOXOの核酸配列に相同であって、例えば、異種の宿主内での組換え体産生を増加または最適化できるよう改変されている核酸から組換えによって産生される。このような改変配列の例は配列番号:1(核酸)に記載されており、オオムギOXOのオープンリーディングフレームの核酸配列が、そのGC含有量を下げるよう改変されており、また、α接合因子分泌シグナル配列およびに設計された制限酵素切断部位に結合している。配列番号:1にコードされるアミノ酸配列が配列番号:2に記載されている。別の反復例において、OXOは、GenBank登録番号:L15737で入手可能なオオムギの非改変核酸配列である配列番号:3から組換えによって産生される。
【0033】
OXO結晶を形成させるのに役立つOXOポリペプチドは、OXOポリペプチドまたはその機能的断片をコードする配列を含む核酸構築物を含む宿主細胞などの宿主細胞内で発現させることができる。OXOを発現させるのに適した宿主細胞は、例えば、酵母、バクテリア、菌類、昆虫、植物、または哺乳動物細胞、または遺伝子組換え植物、遺伝子組換え動物もしくは無細胞系であり得る。好ましくは、宿主細胞は、OXOポリペプチドをグリコシル化することができ、ジスルフィド結合させることができ、OXOを分泌することができ、および/またはOXOポリペプチドの多量体化を支持することができる。好適な宿主細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、大腸菌(E. coli(大腸菌Origami Bなど))、枯草菌(Bacillus subtilis)、コウジカビ(Aspergillus)、Sf9細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、293細胞(ヒト胎児腎臓)、およびその他のヒト細胞などであるが、これらに限定されない。また、遺伝子組換え植物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、鳥、およびウサギを含む遺伝子組換え動物も、OXOの産生のための適切な宿主である。
【0034】
OXOの組換え体を産生するために、宿主または宿主細胞は、OXOまたはその機能的断片をコードする核酸を少なくとも一つ含む構築物を、プラスミド、ベクター、ファージミド、または転写カセットもしくは発現カセットの形で含まなければならない。単一コピーまたは多重コピーの中で維持される構築物、または宿主細胞の染色体の中に組み込まれる構築物など、様々な構築物を利用することができる。組換え体を発現させるための多くの組換え体発現系、構成成分、および試薬が、例えば、Invitrogen社(Carlsbad,CA);U.S.Biological社(Swampscott,MA);BD Biosciences Pharmingen社(San Diego,CA);Novagen社(Madison,WI);Stratagene社(La Jolla,CA);Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen社(DSMZ)(Braunschweig,Germany)などから市販されている。あるいは、周知の遺伝子活性化技術によって、組換え体OXOを産生させることができる。
【0035】
OXOの組換え体発現は、任意で、構成型および/または誘導型のプロモーターなど、異種プロモーターによって調節される。例えば、アルコール酸化酵素(AOX)プロモーター、ジヒドロキシアセトン合成酵素(DAS)プロモーター、Gal 1,10プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、グリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、銅メタロチオネイン(CUP1)プロモーター、酸性ホスファターゼプロモーター、などのプロモーター、ならびにT7、CMV、およびポリへドリンプロモーターも適している。特定のプロモーターは、宿主または宿主細胞に基づいて選択される。また、メタノール、硫酸銅、ガラクトース、低リン酸、例えばエタノールなどのアルコールによって誘導されるプロモーターを使用することもでき、これらは、当技術分野において周知である。
【0036】
OXOをコードする核酸は、任意で異種配列を含むことができる。例えば、分泌配列は、いくつかの実施形態において、OXOポリペプチドのN末端に含まれる。α接合因子、BGL2、酵母酸性ホスファターゼ(PHO)、キシラナーゼ、αアミラーゼなどに由来するシグナル配列、別の酵母分泌タンパク質に由来するシグナル配列、および、宿主細胞からの分泌を指示することができる、他の生物種に由来する分泌シグナルペプチドなどのシグナル配列も有用である。同様に、リンカー(例えば、切断ないし制限酵素部位を含むもの)、および一つ以上の発現調節因子、エンハンサー、ターミネーター、リーダー配列、および一つ以上の翻訳シグナルなど、その他の異種配列も、本明細書の範囲に含まれる。これらの配列は、任意で、構築物に含ませることも、および/または、OXOをコードする核酸に結合させることもできる。別段の記載がない限り、「結合させた」配列は、互いに直接的または間接的に結合しているものでもよい。
【0037】
同様に、ヒスチジン、HA(ヘマグルチニンペプチド)、マルトース結合タンパク質、登録商標AviTag、FLAG、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼなどのエピトープまたはアフィニティータグを、任意で、OXOポリペプチドに結合させることができる。タグは、任意には、OXOが産生または精製された後、OXOから切断することも可能である。当業者は、例えば、適合する宿主細胞、構築物、プロモーター、および/または分泌シグナル配列など、適当な異種配列を容易に選択することができる。
【0038】
OXOの相同体または変異体は、OXOの参照配列と1個以上の残基が異なっている。構造的に類似したアミノ酸を、例えば、特定のアミノ酸のいくつかと置換することができる。構造的に類似したアミノ酸は、(I,L,V);(F,Y);(K,R);(Q,N);(D,E);および(G,A)などである。アミノ酸の欠失、付加、または置換も、本明細書記載のOXO相同体に含まれる。このような相同体および変異体には、多型変異体、および天然または人工突然変異体、ならびに1個以上の残基が改変されている改変ポリペプチド、および1個以上の改変された残基を含む突然変異体などがある。
【0039】
OXOのポリペプチドまたは核酸が参照配列と、少なくとも40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%一致するとき、それは「相同」(または「相同体」)である。相同体が参照配列と一致しない場合は「変異体」である。相同体は、その塩基配列またはアミノ酸配列が参照配列と(例えば、切断、欠失、置換、または付加によって)1、2、3、4、5、8、10、20、または50残基以下の違いがあり、かつ、シュウ酸の酸化を触媒する能力を保持(または、保持するポリペプチドをコードする)場合に「実質的に同一である」という。シュウ酸オキシダーゼの断片は、変異体および/または実質的に同一の配列などの相同体であってよい。例として、相同体は、OXOの様々な源に由来することが可能であり、または、切断変異、欠失変異、置換変異、または付加変異によって参照配列に由来したり、関係したりすることが可能である。2つの塩基配列またはアミノ酸配列の一致率は、例えば、Altschulら、J Mol. Biol,215:403−410(1990)に記載されている基本的局所整列用ツール(BLAST)、Needlemanら、J Mol. Biol,48:444−453(1970)のアルゴリズム、またはMeyersら、Comput.Appl.Biosci.4:11−17(1988)のアルゴリズムなどの標準的な整列によって決定することができる。このようなアルゴリズムは、BLASTN、BLASTP、および「BLAST2配列」プログラム(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST参照)に取り込まれている。このようなプログラムを利用するとき、デフォルトパラメーターを用いることができる。例えば、塩基配列では、「BLAST2配列」について以下の設定を用いることができる:BLASTNプログラム、一致した場合の報酬2、不一致の場合のペナルティー−2、オープンギャップおよび伸長ギャップのペナルティーは、それぞれ5および2、ギャップX_ドロップオフ値50、期待値10、ワードサイズ11、フィルター有り。アミノ酸配列では、「BLAST2配列」について以下の設定を用いることができる:BLASTPプログラム、BLOSUM62マトリックス、オープンギャップおよび伸長ギャップのペナルティーは、それぞれ5および2、ギャップX_ドロップオフ値50、期待値10、ワードサイズ3、フィルター有り。本明細書記載の結晶を形成するのに適したOXOに対するアミノ酸配列および核酸配列は、相同配列、変異体配列、または実質的に同一な配列などであってよい。
【0040】
シュウ酸オキシダーゼの精製
シュウ酸オキシダーゼのタンパク質またはポリペプチドは、結晶化する前に、天然源または組換え体源などの源から精製することができる。本明細書において「単離された」と言われるポリペプチドとは、その本来の由来源(例えば、細胞、組織(すなわち、植物組織)、または液体もしくは媒体(分泌されるポリペプチドの場合)であるタンパク質、脂質、および/または核酸など、天然の環境から実質的に切り離されているポリペプチドのことである。単離されたポリペプチドには、本明細書記載の方法、またはその他適当な方法によって得られるポリペプチなどがあり、実質的に純粋または本質的に純粋なポリペプチドを含み、また、化学合成法、組換え製造法、または生物学的方法と化学的方法とを組み合わせたものによって産生されたポリペプチドなどがある。任意には、単離されたタンパク質は、精製工程によるなどして、それが産生された後に更なる処理を受けた。
【0041】
精製は、バッファー交換工程およびクロマトグラフィー工程を含むことができる。任意で、例えば、透析、等電点電気泳動クロマトグラフィー、および/またはバッファー交換を伴う濃縮工程を用いることができる。一定の例では、スルホプロピルセファロースクロマトグラフィー、またはGM52もしくは同様の陽イオン交換カラムなどの陽イオン交換クロマトグラフィーを精製に用いることができる。バッファー交換は、任意には、クロマトグラフィー分離の前に行い、濾過透析などのタンジェンシャルフロー濾過によって行うことができる。一定の調製物では、OXOは、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.7%、または99.9%の純度である。
【0042】
OXOを調製するには、グラム単位での精製を行うことが適しているため、処理手順を効率的で安価な製造規模でのOXO精製になるよう最適化する。例えば、精製処理で、少なくとも0.5、1、2、5、10、20、50、100、500、または1000グラム以上のOXOがもたらされる。処理の一例において、少なくとも10L、50L、100L、500L、1000L、またはそれ以上の出発試料のタンジェンシャルフロー濾過が提供され、バッファー交換および混入タンパク質の沈殿が行われる。シングルSP−セフロースカラムが、OXOを精製するために任意で使用される。
【0043】
また、精製されたOXOの結晶化は、混入物を除去して、例えば、OXO調製物をさらに精製することもできる。例えば、実施例6に記載されているような結晶化されたOXOは、可溶型の精製OXOに較べて、低分子混入物の量が少ない。いくつかの態様において、0〜10kDa、1〜10kDa、0.5〜5kDa、2〜5kDaの(マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI−MSによって)測定された質量を持つ混入物が、結晶型から選択的に排除される。例えば、濾過透析およびSP−セファロースによって精製され、実施例6の(a)の部分に記載された大規模結晶化処理法によって結晶化されたOXOのMALDI−MS分析によって、約2.5、3.0、3.7、3.8、4.0、4.2、および5.0KDaの測定分子量を持つ混入物が、結晶化によって実質的に除去されることが実証されている。結晶化による精製は、例えば、発酵用媒体を含む粗シュウ酸オキシダーゼを用いて行うこともできる。
【0044】
シュウ酸オキシダーゼの結晶化
シュウ酸オキシダーゼの結晶は、上記したような六量体などのOXOポリペプチドを用いて調製することができる。Wooら、FEBS Letters 437:87−90(1998);Wooら、Nature Struct.Biol.7:1036−1040(2000)参照。例えば、蒸気拡散法(例えば、ハンギングドロップ法およびシッティングドロップ法など)、および結晶化のバッチ法を用いることができる。シュウ酸オキシダーゼ結晶は、タンパク質の制御結晶化法によって、水溶液、または有機溶媒を含む水性溶液から成長することができる。制御される条件は、例えば、溶媒の蒸発速度、適当な共存溶質の存在、ならびにバッファー、pH、および温度などである。
【0045】
シュウ酸レベルに関係する症状または疾患を治療するなど、治療用に投与するには、様々なOXO結晶サイズが適している。一定の実施形態において、平均寸法が約500μmよりも小さな結晶が投与される。また、長さが約0.01、0.1、1、5、10、25、50、100、200、300、400、500、または1000μmの(例えば)平均寸法、最大寸法、または最小寸法を持つシュウ酸オキシダーゼ結晶も提供される。微結晶シャワー(microcrystalline shower)も適当である。
【0046】
範囲は適当であり、当業者に明らかであろう。例えば、タンパク質結晶は、約0.01μmと約500μmとの間に、あるいは約0.1μmと50μmとの間に最も長い寸法を有し得る。特定の実施形態において、最も長い寸法の範囲は、約0.1μmから約10μmである。また、結晶は、球状、針状、棹状、六角形および正方形などのプレート状、ひし形、立方体、および角柱状から選択された形も有し得る。例示的な実施形態において、この結晶は、最長寸法が5μmよりも短い立方体である。例えば、図5〜7参照。
【0047】
通常、結晶は、結晶化すべきタンパク質を適当な水性溶媒、または、塩や有機溶媒など適当な結晶化剤を含む水性溶媒と組み合わせることによって生成される。この溶媒をタンパク質と混合して、任意には、結晶を誘導するのに適し、かつタンパク質の活性および安定性を維持するのに適していると実験的に決定された温度で撹拌を行う。この溶媒は、任意で、2価陽イオン、補助因子、またはカオトロープなどの共存溶質、ならびにpHを調節するためのバッファー種を含むことができる。結晶化を容易にするための共存溶質およびそれらの濃度についての必要性は実験的に決定する。工業規模での処理法においては、タンパク質、沈殿剤、共存溶質、および、任意には、例えば、バッチ処理ではバッファーを組み合わせることによって、結晶化をもたらす制御された沈殿を行うことができる。透析または蒸気拡散法など、実験室における別の結晶化法および結晶化条件を用いることもできる(McPherson,ら、Methods Enzymol.114:112−20(1985)およびGilliland,J Crystal Growth 90:51−59(1998))。時には、架橋剤と結晶化媒体との間に不適合があって、架橋する前にバッファー(溶媒)を変える必要があるかもしれない。
【0048】
実施例に示したように、シュウ酸オキシダーゼは、広いpH範囲(例えば、pH3.5から8.0など)を含む、多くの条件下で結晶化する。いくつかの実施形態では、低分子ポリエチレングリコール(例えば、PEG600、PEG400、PEG200など)などの沈殿剤、または2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)などの共溶媒が含まれる。また使用することができる一般的な塩は塩化ナトリウムおよび酢酸亜鉛である。
【0049】
シュウ酸オキシダーゼは、結晶化溶液中で、例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50、60、70、80、90、または100mg/ml、またはそれ以上の濃度にすることが可能である。結晶化反応の効率または收率は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上である。一つの実施形態において、シュウ酸オキシダーゼの結晶は、バッチ法により、シュウ酸オキシダーゼの溶液を適当なバッファーと混合することによって成長し、生成される。一定の実施形態において、バッファーは65mMのクエン酸−リン酸バッファー、pH3.5、および28.5%のPEG600である。
【0050】
安定化結晶
適当な媒体中でシュウ酸オキシダーゼが成長したところで、任意には、架橋するなどして安定化させることができる。架橋によって、結晶の構成タンパク質分子の間に共有結合が導入されることにより、結晶格子の安定化がもたらされる。こうすることによって、これ以外では結晶格子の存在に不適合であるか、さらには、本来のタンパク質が存在するのにも不適合であるかもしれない代替環境にタンパク質を移入することが可能になる。シュウ酸オキシダーゼ結晶は、例えば、リジンアミン基、チオール(スルフヒドリル)基、および炭水化物成分を介して架橋することができる。架橋された結晶も、本明細書ではCLEC OXOまたはCLCと呼ぶ。
【0051】
架橋された結晶は、酵素の安定性(例えば、pH、温度、機械、および/または化学的安定性)、OXO活性のpHの特徴、可溶性、結晶の大きさまたは体積の均一性、結晶からの酵素の放出速度、および/または下層にある結晶格子中の各酵素分子間の孔の大きさおよび形状を変え得る。
【0052】
好都合には、本発明による架橋または安定化は、結晶が、未改変のOXOと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.7%、もしくは99.9%、またはそれ以上の活性を示すOXOを含むようなやり方で行われる。安定性は、未改変のOXOと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、またはそれ以上増加させることができる。安定性は、例えば、pH安定性、温度安定性、腸プロテアーゼに対する安定性、溶解安定性、およびインビボにおける生体安定性などの貯蔵条件下で測定することができる。
【0053】
一定の場合に、架橋すると、結晶状態のOXOポリペプチドの溶液への溶解が遅くなり、タンパク質分子を微結晶粒子の中に効果的に固定する。架橋タンパク質結晶のまわりの環境中、例えば、貯蔵条件ではなく使用条件下で、開始剤に曝露されると、タンパク質分子がゆっくりと溶解し、活性型OXOポリペプチドを放出するか、および/またはOXO活性を上昇させる。この溶解速度は、例えば、以下の因子の一つ以上によって調節される:架橋の程度、タンパク質の結晶を架橋剤に曝露する時間の長さ、架橋剤をタンパク質結晶に添加する速度、架橋剤の性質、架橋剤の鎖長、pH、温度、システイン、グルタチオンのようなスルファヒドリル(sulfahydryl)試薬の存在、架橋されたタンパク質結晶の表面積、架橋されたタンパク質結晶の大きさ、および架橋されたタンパク質結晶の形。
【0054】
架橋は、多官能性剤など、多種多様な架橋剤の一つまたは組合せたものを用いて、同時(並行して)に、または連続して行うことができる。周囲の環境中に存在する開始剤に曝露されると、または一定の時間をかけて、そのような多官能性剤と架橋したタンパク質結晶間の架橋が低下または弱体化して、タンパク質溶解または活性の放出がもたらされる。あるいは、結合点で架橋が崩壊して、タンパク質溶解または活性の放出がもたらされる。米国特許第5,976,529号および第6,140,475号を参照。
【0055】
いくつかの実施形態において、架橋剤は、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上の活性部分を有する多官能性の架橋剤である。様々な実施形態において、この薬剤は、グルタルアルデヒド、スクシンアルデヒド、オクタンジアルデヒド、グリオキサール、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオン酸)、3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオン酸)、ジメチル3,3’−ジチオビスプロプリオンイミデートHCl、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノオクタン、エチレンジアミン、無水コハク酸、無水フェニルグルタル酸、サリチルアルデヒド、アセトイミデート、ホルマリン、アクロレイン、コハク酸セミアルデヒド、ブチルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、グリセルアルデヒド、およびトランス−オクタ−2−エナルから選ぶことができる。
【0056】
さらに別の多官能性架橋剤には、例えば塩化シアヌルなどのハロトリアジン類;例えば2,4,6−トリクロロ/ブロモピリミジンなどのハロピリミジン類;例えば無水マレイン酸、塩化(メタ)クリロイル、塩化クロロアセチルなどの脂肪族もしくは芳香族のモノカルボン酸もしくはジカルボン酸の無水物またはハロゲン化物;例えばN−メチロイルクロロアセトアミドなどのN−メチロール化合物;例えばフェニレン−1,4−ジ−イソシアネートなどのジイソシアネート類またはジイソチオシアネート、およびアジリジン類などがある。その他の架橋剤には、例えば、ジエポキシド、トリエポキシド、およびテトラエポキシドなどのエポキシド類がある。本発明の一つの実施形態において、架橋剤は、二官能性薬剤であるグルタルアルデヒドであり、グルタルアルデヒドは、単独、またはエポキシドと連続して使用される。別の架橋試薬(例えば、Pierce Chemical社の1996年のカタログ参照)を同時に(並行して)、または、下記に記載するような可逆的架橋剤と連続して使用することもできる。
【0057】
本発明の代替的な実施形態によれば、可逆的架橋剤を用いて、並行して、または連続して架橋を行うことができる。得られた架橋タンパク質結晶は、反応性の多官能性架橋剤によって特徴づけられ、その中にトリガーが別の基として取り込まれている。反応性官能基は、反応性のアミノ酸側鎖を一緒に結合してタンパク質にすることに関与し、トリガーは、周囲の環境の条件(例えば、pH、還元剤の存在、温度、または水の熱力学的活性)の一つ以上を変えることによって破壊され得る結合からなる。
【0058】
架橋剤は、同種官能性であっても、異種官能性であってもよい。反応性官能基(または部分)は、例えば、以下の官能基の一つから選ぶことができる(但し、R、R’、R’’、およびR’’’は、アルキル基、アリール基、または水素基であってよい):
I.反応性アシル供与体、例えば:カルボン酸エステルRCOOR’、アミドRCONHR’、アジ化アシルRCON3、カルボジイミドR−N=C=N−R’、N−ヒドロキシイミドエステル、RCO−O−NR’、イミドエステルR−C=NH2+(OR’)、無水物RCO−O−COR’、炭酸RO−CO−O−R’、ウレタンRNHCONHR’、酸ハロゲン化物RCOHal(但し、Hal=ハロゲン)、アシルヒドラジドRCONNR’R’’、およびO−アシルイソウレアRCO−O−C=NR’(−NR’’R’’’)など。
【0059】
II.反応性カルボニル基、例えば:アルデヒドRCHO、およびケトンRCOR’、アセタールRCO(H2)R’、ケタールRR’CO2R’R’’など(タンパク質固定および架橋の技術分野における当業者に知られている反応性カルボニル含有官能基は、文献に記載されている(Pierce Catalog and Handbook,Pierce Chemical Company,Rockford,III.(1994);S.S.Wong,Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking,CRC Press,Boca Raton,Fla.(1991));
III.アルキル供与体またはアリール供与体、例えば:ハロゲン化アリキルまたはハロゲン化アリールR−Hal、アジドR−N3、硫酸エステルRSO3R’、リン酸エステルRPO(OR’3)、アルキルオキソニウム塩R3O+、スルホニウムR3S+、硝酸エステルRONO2、マイケル受容体RCR’CR’’’COR’’、フッ化アリールArF、イソニトリルRN+≡C−、ハロアミンR2N−Hal、アルケン、およびアルキン;
IV.硫黄含有基、例えば:ジスルフィドRSSR’、スルフヒドリルRSH、およびエポキシド
【0060】
【化1】
;および
V.塩類、例えば:アルキルアンモニウム塩もしくはアリールアンモニウム塩R4N+、カルボン酸RCOO−、硫酸ROSO3−、リン酸ROPO3−およびアミンR3N−など。
【0061】
可逆的架橋剤は、例えば、トリガーを含む。トリガーは、架橋すべきタンパク質と反応することができる活性化基をもつアルキル鎖、アリール鎖、またはその他の鎖を含む。これらの反応基は、求核置換、フリーラジカル置換、または求電子置換に対して感受性の基など、とりわけ、ハロゲン化物、アルデヒド、カーボネート、ウレタン、キサンタン、エポキシドなど、様々な基であり得る。例えば、反応性基は、酸、塩基、フッ化物、酵素、還元、酸化、チオール、金属、光分解、ラジカル、または熱に対して不安定であってよい。
【0062】
可逆的架橋剤のさらなる例が、T.W.Green,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley&Sons(Eds.)(1981)に記載されている。可逆的保護基に使用される様々な方法が、可逆的で制御された可溶化を行うことができる架橋されたタンパク質結晶を製造するのに適した架橋剤に取り込むことができる。様々なアプローチが、本題に関するWaldmannの概説、Angewante Chemie Inl.Ed.Engl.,35:2056(1996)に列挙されている。
【0063】
別のタイプの可逆的架橋剤は、ジスルフィド結合含有架橋剤である。このような架橋剤によって形成される、トリガー破壊架橋(trigger breaking cross−link)は、架橋したタンパク質結晶の環境にシステインなどの還元剤を付加することである。ジスルフィド架橋剤の例は、Pierce Catalog and Handbook(1994−1995)に記載されている。このような架橋剤と方法の例は、米国特許第6,541,606号に記載されており、その関連部分が、参照して本明細書に組み込まれる。
【0064】
また、炭水化物部分間、または炭水化物部分とアミノ酸との間を架橋する架橋剤を使用することもできる。
【0065】
架橋結晶を形成させるには、架橋剤の濃度は、溶液中で、0.5%、1%、2%、3%、3.5%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、または20%wt/vであり得る。架橋する前にバッファーを交換する必要であり得る。CLECなどの結晶は、任意で、凍結乾燥させるか、あるいは製剤することができる。
【0066】
架橋結晶などの結晶、および本明細書記載のこれらの結晶および架橋結晶を含む組成物は、本明細書記載に記載されている、治療法およびシュウ酸レベルを低下させる方法において有用である。OXO結晶、架橋結晶、および組成物も、工業工程に関係する方法(例えば、合成、加工、バイオレメディエーション、消毒、滅菌など)、および、植物菌感染など、例えば、Svedruzicら、Arch.Biochem.Biophys.433:176−192(2005)で概説されているような植物の処理法においても有用である。可溶性または非晶質のOXOの治療以外の用途が、例えば、米国特許第5,866,778号、第6,218,134号、第6,229,065号、第6,235,530号、および第6,503,507号に記載されている。本明細書記載の結晶は、シュウ酸オキシダーゼ酵素の安定性が増すなど、上記記載の安定化されたOXO結晶の一つ以上の性質に基づいて、これらの用途に使用することができる。
【0067】
組成物
架橋結晶などのOXO結晶は、医薬組成物などの組成物として提供される(例えば、タンパク質の結晶の製剤および組成物について記載されている、米国特許第6,541,606号参照)。OXO結晶を含む医薬組成物は、OXO結晶を、糖類および生体適合性ポリマーなど、一つ以上の成分または賦形剤とともに含む。賦形剤の例は、American Pharmaceutical Associationとthe Pharmaceutical Society of Great Britainによって共同出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipientsに記載されているが、さらなる例を下記に示す。
【0068】
OXO酵素は、多様な生理学的に許容される塩のいずれかの形態で、および/または医薬組成物の一部である許容される薬学的担体および/または添加剤とともに、組成物中の結晶として投与することができる。生理学的に許容される塩の形態、および標準的な医薬製剤技術、および賦形剤は、当業者に周知されている(例えば、Physician’s Desk Reference(PDR)2003,57th ed.,Medical Economics Company,2002;およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy,eds.Gennadoら、20th ed,Lippincott,Williams & Wilkins,2000参照)。本出願の目的上、「製剤」は「結晶製剤」を含む。
【0069】
本発明の方法において有用なシュウ酸オキシダーゼは、賦形剤と組み合わせることができる。本発明によれば、「賦形剤」は、医薬組成物中で使用される充填剤または充填剤の混合物として働く。組成物中で使用するための成分および賦形剤の例は、以下に示すとおりである。
【0070】
生体適合性ポリマー、すなわち、非抗原性(アジュバントとして使用しない場合)、非発癌性、非毒性のポリマーであって、その他の点でも生体と不適合ではないポリマーを、本明細書記載のOXO結晶組成物に使用することができる。例には、ポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(乳酸)またはPLAなどのポリ(エステル)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)またはPLGA、ポリ(β−ポリヒドロキシ酪酸)、ポリ(カプロラクトン)、およびポリ(ジオキサノン);ポリ(エチレングリコール)、ポリ((ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸−アルキルビニルエーテルコポリマー、多価ポリオール、アルブミン、アルギン酸、セルロースおよびセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖類、グリコアミノグリカン、硫酸化多糖類、これらの混合物およびコポリマーなどがある。
【0071】
生物分解性ポリマー、すなわち、加水分解または可溶化によって分解するポリマーを、OXO結晶化合物に含ませることができる。分解は不均一、すなわち、まず粒子の表面で起きてよく、または均一、すなわち、ポリマー基質全体にわたって一律に分解されてよい。
【0072】
1種類以上の賦形剤などの成分、または薬学的な成分または賦形剤を、OXO結晶化合物に含ませることができる。成分は、不活性な成分であっても、活性型成分であってもよい。
【0073】
シュウ酸塩関連疾患をOXO結晶によって治療する方法
本発明の方法は、シュウ酸レベルの増加に関連する症状を治療または予防し、またはそのような症状が発生するリスクを低下させるために、シュウ酸オキシダーゼを哺乳動物被検体に投与することを含む。シュウ酸レベルの上昇は、例えば、尿、血液、血清、または血漿などの体液など、被検体から得た生体試料で検出することができる。一定の実施形態において、尿中シュウ酸レベルを検出する。結晶および/または結晶含有組成物を、本明細書記載の方法で投与することができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、原発性高シュウ酸尿症、腸性高シュウ酸尿症、外科的介入に起因する高シュウ酸尿症、特発性高シュウ酸尿症、シュウ酸症などを患う個体における高シュウ酸尿症を治療するための方法が提供される。別の例では、腎臓、骨、肝臓消化管、および膵臓の高シュウ酸塩関連疾患が、本明細書に開示された方法による治療に適している。さらに、本明細書で提供されている方法によって治療できる更なる疾患または病気には、エチレングリコール(シュウ酸)中毒、特発性尿結石症、腎不全(進行性、慢性、または末期の腎不全など)、脂肪便、吸収不全、回腸切除、外陰部痛、心臓伝導疾患、炎症性腸疾患、嚢胞性線維症、膵外分泌機能不全、クローン病、潰瘍性大腸炎、腎石灰沈着症、骨粗しょう症、尿石症、および腎石症などがある。このような症状および疾患は、任意には急性または慢性であり得る。
【0075】
本発明の方法は、被検体におけるシュウ酸レベルを、無処理または対照用の被検体でのレベルと較べて、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上低下させることができる。いくつかの実施形態において、被検体におけるシュウ酸レベルを、OXOを投与する前後で比較することによって低下を測定する。いくつかの実施形態において、本発明は、シュウ酸に関係した症状または疾患を治療または改善して、症状または疾患の一つ以上の病徴を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上改善させる方法を提供する。一定の実施形態において、本方法は、内生シュウ酸のレベルおよび/または食事性シュウ酸の吸収を低下させる。
【0076】
いくつかの実施形態において、例えば、アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ、グリオキシル酸還元酵素/ヒドロキシピルビン酸還元酵素、肝臓グリコール酸オキシダーゼ、またはシュウ酸代謝に関与するか、高シュウ酸尿症に関連する別の酵素などの活性を低下させる突然変異体についてホモ接合またはヘテロ接合の個体など、高シュウ酸症に関連する遺伝子型をもつ個体を治療する方法が提供される。別の実施形態において、シュウ酸分解菌(Oxalobacter formigenes)の腸内コロニー形成が少ないか、全くない個体を治療する方法が提供される。
【0077】
開示された方法は、治療上有効な量のシュウ酸オキシダーゼを、シュウ酸レベルの増加に関連した症状を発症する危険があるか、それに感受性があるか、それに苦しんでいる哺乳動物被検体に投与することを含む。本発明の方法によって治療できる集団は、例えば、原発性高シュウ酸尿症または腸性高シュウ酸尿症などのシュウ酸塩関連疾患を患っているか、それを発症する危険のある被検体などであるが、それらに限定されない。
【0078】
本発明の方法によって治療される被検体は、ヒト、ヒト以外の霊長類、霊長目の動物、ヒヒ、チンパンジー、サル、齧歯類(例えば、マウスやラット)、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどであるが、これらに限定されない。
【0079】
適応、病徴、および病気の指標
多くの方法が、シュウ酸塩関連疾患またはシュウ酸レベルの増加に関連した症状の発症または進行を判定するために利用できる。このような疾患には、上記したような症状、病気、または疾患が含まれるが、それらに限定されない。シュウ酸塩関連疾患の発症または進行は、例えば、尿中シュウ酸、血漿中シュウ酸を測定することによって、腎臓または肝臓の機能を測定することによって、または、シュウ酸カルシウムの沈着を検出することによって判定することができる。
【0080】
例えば、尿試料中、またはその他の生体試料もしくは体液の中のシュウ酸塩濃度を検出または測定することによって、症状、病気、または疾患を同定することができる。高シュウ酸尿症の初期の病徴は、典型的には腎臓結石であるが、これは、重度または突然の腹痛または側腹痛、血尿、頻繁な尿意、排尿時の痛み、または発熱および悪寒を伴うことがある。腎臓結石は症状を示すこともあるが、無症状のこともあり、例えば、x線、超音波、またはコンピュータ断層撮影(CT)法によって腹部を画像化することによって可視化することができる。高シュウ酸症を抑制できないと、腎臓が損傷されて、腎臓の機能が低下する。腎臓が機能不全になることもある。腎不全(および腎機能低下)は、排尿(糸球体ろ過量)の減少または排尿停止、全身違和感、疲労感、および顕著な倦怠感、吐き気、嘔吐、貧血、および/または幼児における正常な発達および成長の不全によって同定することができる。他の組織や器官におけるシュウ酸カルシウム沈着も、直接可視化(例えば、目視で)、x線、超音波、CT、心エコー図、または生検(例えば、骨、肝臓、または腎臓)などの方法によって検出することができる。
【0081】
シュウ酸塩濃度だけでなく、腎臓および肝臓の機能も、周知の直接アッセイ法および間接アッセイ法を用いて判定することができる。尿、血液、または他の生体試料の化学物質含有量を、周知技術によって試験することもできる。例えば、シュウ酸、グリコール酸、およびグリセリン酸レベルを測定することができる。肝臓および腎臓の機能のアッセイ法は周知されており、例えば、酵素欠損について肝臓組織を分析したり、シュウ酸沈着について腎臓組織を分析したりする。また、原発性高シュウ酸尿症の原因となることが知られているDNAの変化について、試料を試験することもできる。
【0082】
他の治療の適応は、既に検討されていて、以下の節で検討されている危険因子など、一つ以上の危険因子が存在することを含むが、それに限定されない。症状、病気、または疾患を発症させるリスクがあるか、それに感受性のある被検体、または、シュウ酸オキシダーゼによる治療に対して特に受容的である可能性のある被検体を、そのような危険因子、診断指標、または予後指標の一つ以上の有無を確認することによって同定することができる。同様に、シュウ酸塩関連疾患を発症するリスクをもつ個体を、一つ以上の遺伝子マーカーまたは表現型マーカーを分析することによって同定することができる。
【0083】
開示された方法は、24時間当り少なくとも30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、または400mg、またはそれ以上の尿中シュウ酸レベルになる被検体において有用である。一定の実施形態において、シュウ酸レベルは、一つ以上の病徴または病理に関係する。シュウ酸レベルは、血液、血清、血漿、または尿を含む体液などの生体試料において測定することができる。任意には、シュウ酸を、尿中クレアチンなど、標準的なタンパク質または物質に対して標準化する。いくつかの実施形態において、本願の方法は、シュウ酸オキシダーゼを投与して、1、3、5、7、9、12、または15日以内に、被検体における循環液中のシュウ酸レベルを検出不能レベルまで、または、治療前の被検体におけるシュウ酸レベルの1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%以下に低下させることを含む。
【0084】
ヒトの高シュウ酸尿症は、一日あたり40mg(約440μmol)または30mgよりも多い尿中シュウ酸排出量があることで特徴付けることができる。臨床的カットオフレベルの例は、例えば、男性では43mg/日(約475μmol)、また女性では32mg/日(約355μmol)である。また、高シュウ酸尿症は、1グラムの尿中クレアチンにつき一日当り30mgよりも多い尿中シュウ酸排出があることと定義することもできる。軽度の高シュウ酸尿症の人は、一日当り少なくとも30〜60または40〜60mgのシュウ酸を排出し得る。腸性高シュウ酸尿症の人は、例えば、一日当り少なくとも80mgの尿中シュウ酸を排出し得、また、原発性高シュウ酸尿症の人は、一日当り少なくとも200mgを排出し得る。(Shekarriz,www.emedicine.com/med/topic3027.htm)参照。
【0085】
化合物および組成物の投与
本発明の方法に従ってシュウ酸オキシダーゼを投与するのは、特定の送達系に限られるものではなく、上部消化管、例えば、口(例えば、カプセル、懸濁液、錠剤にして、または食物と一緒に)もしく胃を経由して、または上部腸を経由して(例えば、チューブまたは注射によって)投与して、各個体のシュウ酸レベルを低下させることを含む。一定の実施形態では、内生シュウ酸レベルおよび/または濃度を低下させるためにOXOを投与する。また、OXOは、透析装置、または各個体からの生体試料に接触する構造物ないし装置などの体外装置によって提供することもできる。
【0086】
各個体への投与は、単回投与で行うことも、反復投与で行うこともでき、多様な生理学的に許容される形態のいずれかで行うことができ、および/または医薬組成物の一部として許容される医薬用担体および/または添加剤(上記)とともに行うこともできる。開示された方法では、シュウ酸オキシダーゼを単独で投与し得、一種類以上の付加的生物活性剤、例えば、ピリドキシン(ビタミンB−6)、オルトリン酸、マグネシウム、グリコサミノグリカン、カルシウム、鉄、アルミニウム、マグネシウム、クエン酸カリウム、コレスチラミン、有機海洋性ハイドロコロイド(organic marine hydrocolloid)、例えば、バナナの茎のジュースもしくはビートのジュースなどの植物ジュース、またはL−システインなどともに、重複または非重複する一定間隔の期間にわたって同時並行して、または連続的に投与したりすることができる。シュウ酸レベルを低下させるか、またはOXOの活性または利用可能性を増加させる生物活性剤が提供される。連続投与法では、シュウ酸オキシダーゼおよび付加的薬剤をどのような順序で投与してよい。いくつかの実施形態において、重複する期間の長さは2週間、4週間、6週間、12週間、24週間、48週間、またはそれ以上であってよい。
【0087】
シュウ酸オキシダーゼは、単独の活性化合物として、または別の活性化合物または組成物と一緒に投与することができる。別段の記載がない限り、シュウ酸オキシダーゼは、病気の症状の重篤度および進行に応じて、約10μg/kgから25mg/kgまたは100mg/kgの用量で投与される。OXOの適当な治療上有効量は、治療に当たる臨床医によって選択され、その範囲は約10μg/kgから20mg/kg、10μg/kgから10mg/kg、10μg/kgから1mg/kg、10μg/kgから100μg/kg、100μg/kgから1mg/kg、100μg/kgから10mg/kg、500μg/kgから5mg/kg、500μg/kgから20mg/kg、1mg/kgから5mg/kg、1mg/kgから25mg/kg、5mg/kgから100mg/kg、5mg/kgから50mg/kg、5mg/kgから25mg/kg、および10mg/kgから25mg/kgであり得る。さらに、実施例またはPhysician’s Desk Reference(PDR)2003,57th ed.,Medical Economics Company,2002に記載されている具体的な投薬量を用いることもできる。
【0088】
以下の実施例は、本発明の例示的な実施形態を提供する。当業者には、本発明の趣旨および範囲を変更せずに実施することができる数多くの修正および改変があることが分かっているはずである。そのような修正および改変は、本発明の範囲に含まれる。本実施例は、いかなる意味でも、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0089】
(実施例1:シュウ酸オキシダーゼの組換え体の作製)
ヒト胎児腎臓(HEK293)細胞において:OXOをコードするDNAを適当な発現ベクターにクローニングする。配列を確認した後、ベクターを直鎖状にし、予め播種しておいてHEK293細胞への、直鎖状にしたベクターの形質転換を、直径6cmの培養皿の中で、商標Lipofectamine 2000トランスフェクション試薬を用いて行うことができる。適当な媒体で形質転換を行った後ほぼ一晩培養してから、0.5g/Lのネオマイシンを添加した培地の中で形質転換体を選択する。ネオマイシン含有媒体の中で最長3週間増殖させた後、安定的に形質転換されたHEK293細胞のクローンを同定する。そして、クローンを単離して増殖させ、OXO発現に用いる。
【0090】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において:OXO遺伝子をコードするDNAを適当な発現ベクターにクローニングする。次に、培養CHOlec3.2.8.1細胞を、トリプシン分解によって剥離し、遠心分離によって採取した。そして、細胞を、エレクトロポレーションリン酸緩衝化生理食塩水バッファー(EPBS)に、最終濃度が約1×107/mlになるよう懸濁し、直鎖状にしたベクターを用いてエレクトロポレーションにより形質転換する。一晩培養した後、媒体を0.5g/Lのネオマイシンを添加した媒体に交換し、適当な形質転換CHO細胞クローンをスクリーニングするために媒体を交換し続ける。安定した形質転換細胞クローンが確立し、増殖されたら、これらの細胞をOXO発現に用いる。
【0091】
ピキア・パストリスにおいて:OXO遺伝子をコードするDNA、例えば、配列番号:1を適当な発現ベクターにクローニングする。配列を確認した後、ベクターを直鎖状にしてから、ピキア・パストリス宿主細胞に形質転換することができる(Whittakerら、J Biol.Inorg.Chem.7:136−145(2002)参照)。形質転換体をゼオシン(Zeocin)で選択し、緩衝化グリセロール複合媒体(BMGY)で展開して、メタノールで誘導する。そして、培養媒体からOXOを単離することができる。
【0092】
出芽酵母において:上記の合成OXO遺伝子を、例えば、Gal1プロモーター(pGal)および発現用ターミネーターを含む適当な発現ベクターの中にクローニングすることもできる。配列を確認した後、発現ベクターを、形質転換受容能を持つ出芽酵母W303−1の中にエレクトロポレーションによって形質転換する。OXO発現に用いる前に、形質転換体をスクリーニングして増殖させる。
【0093】
昆虫細胞において:OXOをコードするDNAは、例えば、バキュロウイルス系など適当な発現ベクターにクローニングすることができる。配列を確認した後、ベクターを、形質転換受容能を持つDH10Bac大腸菌細胞中に形質転換することができ、組換えバクミド(bacmid)を含む大腸菌細胞をスクリーニングして確認する。組換えバクミドDNAを単離し、Cellfectin試薬などの試薬を用いてSf9昆虫細胞を形質転換するために使用する。そして、組換えバキュロウイルス粒子を単離し、増殖させ、力価調整した後、OXO発現用のSf9細胞に感染させるために使用することができる。
【0094】
大腸菌において:OXOをコードするDNAを適当な発現ベクターにクローニングする。配列を確認した後、ベクターを、形質転換受容能をもつ大腸菌OrigamiB(DE3)に形質転換するが、この菌株内では、発現された組換えタンパク質でジスルフィド結合の形成が可能になる。抗生物質を含む栄養培地皿上で形質転換体を増殖させて、形質転換体を選択し、OXO遺伝子特異的プライマーを用いたコロニーPCRによって確認する。そして、形質転換体を液体媒体中で培養し、OXOを発現させるためにイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導する。
【0095】
(実施例2:OXOの精製)
5Lのプールした発現媒体[由来は?]からOXOを精製し、20mMのリン酸バッファー(pH7.0)に対して濾過透析した。発現培地を10倍に濃縮した後、100mlのDE52陰イオン交換樹脂の50%スラリーを加えて、混合物を4℃で1時間撹拌した。シュウ酸オキシダーゼは、遠心分離によって分離したDE52樹脂には結合しない。次に、この培地を50mMのコハク酸バッファー(pH4.5)に対して濾過透析した。そして、濾過透析された調製物を、SPセファロース(商標)陽イオン交換カラムに充填して、そこから、50mMコハク酸バッファー中の1M硫酸アンモニウムの直線的濃度勾配によって結合OXOを溶出させた。シュウ酸オキシダーゼ活性について各画分を測定し、活性画分をプールした。表1参照。
【0096】
【化2】
酵母発現媒体から精製されたオオムギ由来の組換えシュウ酸オキシダーゼは、標準的な測定条件下(実施例11)で約7〜12U/mgの比活性を示す。
【0097】
(実施例3:OXOの精製(大規模))
方法A:400Lの酵母培養物からの発現媒体を、20mMのリン酸バッファー(pH7.0)に対して濾過透析して、約20Lの容量に濃縮した。濃縮した媒体は、精製するまで凍結して保存した。シュウ酸オキシダーゼの精製は、9560mlの濃縮した発現媒体を50mlのクエン酸リン酸バッファー(pH4.0)に対して濾過透析し、その後の濃度を2520mlの容量になるよう実施した。この工程で沈殿するタンパク質の混入物を遠心分離によって除去した。この上清を0.22μmのフィルターで濾過した後に5×45cmのSPセファロース(商標)陽イオン交換カラムに充填した。結合したOXOを、総容量の6倍を超える50mMクエン酸リン酸バッファー(pH8.0)の0〜100%の直線的濃度勾配によって溶出させた。この2段階処理法によって、53%の收率で、4.7gを上回る精製シュウ酸オキシダーゼが得られた。この精製処理を表2に要約した。精製されたOXOは、10.7U/mgの比活性を有する。
【0098】
【化3】
方法B:分泌された組換えシュウ酸オキシダーゼを含む無細胞発酵ブロスを、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)/セントラメイト(Centramate)カセット、およびPallマニフォールドを用いて、16Lから約4Lに濃縮し、その後、50mMのクエン酸リン酸バッファー(pH4)で5倍に希釈した。この処理を4回繰り返した。媒体を最終容量である約6.5Lに濃縮してから、沈殿したタンパク質を分離するために9500rpmで遠心分離した。上清を、蠕動ポンプを用いて、0.45μmのSartobranカプセルによって濾過して不要な破片を取り除いた。
【0099】
濾過した上清を、AKTA FPLC装置を用いて、50mMのクエン酸リン酸バッファー(pH4)で平衡化したSPセファロース(商標)カラム(1L包装総容量)に充填した。未結合のタンパク質を3カラム容量(CV)の50mMクエン酸リン酸バッファー(pH4.0)で洗浄した。直線のpH勾配(pH4.0〜8.0)を流速20mL/分で6CVのコースにわたって実施して、5mLの画分を回収した。シュウ酸オキシダーゼは、50mMのクエン酸リン酸バッファーにより約pH6.0のところで単一のピークとして溶出した。そして、2CVの50mMクエン酸リン酸バッファー(pH8.0)でカラムを洗浄した。
【0100】
溶出された画分を、実施例15に記載したようにシュウ酸オキシダーゼ活性を測定して解析した。活性画分を2Lボトルにプールし、Pellicon XL Biomax 10 TFF装置を用いて約400mL(約20mg/mL)に濃縮した。
【0101】
プールした画分の純度をSDS−PAGEによって、酵素活性をシュウ酸オキシダーゼ活性測定法によって測定した。5.3%の2−メルカプトエタノールを含む試料バッファー5μLを加え、99℃で5分間加熱して試料を変性させた。電気泳動を定電圧12Vで約2時間行った。ゲルをクーマシーブルー染色法で染色し、Microtek ScanMaker 4走査装置/Adobeソフトウエアを用いて走査した。Bradford法を用いてタンパク質の濃度を決定した。表3は、この精製法が非常に効率的で、回収率が79%よりも高いことを示している。
【0102】
【化4】
(実施例4:OXOの結晶化(蒸気拡散法))
ハンギングドロップ結晶化法:以下の市販されている低密度マトリックス結晶化キットを用いてハンギングドロップ結晶化実験を行った:Crystal Screen(Hampton Research;Aliso Viejo,CA)、Crystal Screen 2(Hampton Research)、Wizard I(Emerald Biosystems;Bainbridge Island,WA)、Wizard II(Emerald Biosystems)、Cryo I(Emerald Biosystems)、およびCryo II(Emerald Biosystems)。
【0103】
600μlの試薬を各ウエルに入れた。3μlの試薬を顕微鏡のカバーガラス上に分注して、3μlのシュウ酸オキシダーゼを、できるだけ混合しないように試薬の液滴中に分注した。この6μlの試薬およびシュウ酸オキシダーゼの液滴から最大5滴の滴下を行った。液滴はほとんど混合されていないため、その後(より小さな)液滴はそれぞれ、異なった未知のタンパク質対試薬の割合になっているため、短時間で結晶が得られる可能性が高まった。一晩室温でインキュベートした後、顕微鏡下で結晶についてハンギングドロップを調べた。表4に示すように、多数の結晶化条件が得られた。
【0104】
【化5】
【0105】
【化6】
【0106】
【化7】
(実施例5:OXOの結晶化(マイクロバッチ法))
以下のいくつかの結晶化条件からマイクロバッチ法によってシュウ酸オキシダーゼを結晶化することができた。
【0107】
(a)A280nmで27mg/mlの濃度の20μlの精製したシュウ酸オキシダーゼを、0.1Mリン酸−クエン酸、pH4.2の中40%のPFG600からなる10μlの混合液と混合した。さらに10μlのPFG600を加えて混合した。最後に、5μlのグリセロールを加えて、念入りに混合した。結晶化が10分以内に起きた。收率は75%であった。沈殿はなかった。
【0108】
(b)100μlのシュウ酸オキシダーゼ(27mg/ml)を、0.1Mリン酸−クエン酸、pH4.2の中40%のPFG600からなる55μlの溶液と混合した。さらに25μlのPFG600を加えて念入りに混合した。
【0109】
(c)100μlのシュウ酸オキシダーゼ(27mg/ml)を、0.1Mリン酸−クエン酸、pH4.2の中40%のPFG600からなる50μlの溶液と混合した。さらに30μlのPFG600を加えて念入りに混合した。シュウ酸オキシダーゼの結晶立方体が2時間以内に発生した。
【0110】
(d)シュウ酸オキシダーゼ(27mg/ml)を、0.1Mクエン酸、pH4.5の中で40%(v/v)のPFG300からなる20μlの溶液と混合した。
【0111】
(e)9.34mg/mlの濃度の66.6μlのシュウ酸オキシダーゼを、0.1M MES、pH6.00の中40%(v/v)のPFG400、および5%(w/v)PEG3000からなる133.4μlの溶液と混合した。
【0112】
(f)23.25μlのシュウ酸オキシダーゼ(43mg/ml)に、1.65μlの1Mトリス、pH7.00を加えて混合し、その後、4.15μlの2M (NH4)2SO4、1.5μlの100%グリセロール、12μlの100%PEG600、7.45μlの水を段階的に加えて混合した。最終濃度:20mg/mlのシュウ酸オキシダーゼ、166mMの(NH4)2SO4、0.33Mのトリス、pH7.00、3%グリセロール、24%PEG600、20mg/mlシュウ酸オキシダーゼ。
【0113】
(実施例6:OXOの結晶化(バッチ法))
バッチ結晶化法:以下のいくつかの結晶化条件からバッチ法によってシュウ酸オキシダーゼを結晶化することができた。
【0114】
(a)結晶化の条件は、13.9mg/mlのシュウ酸オキシダーゼ、65mMクエン酸−リン酸バッファー、pH3.5、および28.5%PFG600。結晶は、5μmよりも小さな大きさの立方体であった。
【0115】
(b)1.19μlのシュウ酸オキシダーゼ(43mg/ml)に段階的な方法で、0.35μlの100%PEG600、0.12μlの2M (NH4)2SO4、0.20μlの1Mトリス、pH7.00、および0.26μlの水を加えた。1時間以内に立方体の形をした結晶が現れた。
【0116】
大規模結晶化法:前臨床試験のための材料を供給するために、結晶化の規模を15mlのバッチに拡大した。
【0117】
(a)21.5mg/mlの濃度の10mlの精製したシュウ酸オキシダーゼを、2mlの0.5Mクエン酸−リン酸バッファー、pH3.50と混合した。4.7mlの100%のPFG600を加えて、念入りに混合した。結晶化している溶液を、室温で一晩転倒撹拌した。收率は94%であった。
【0118】
(b)精製したOXOを、40%PEG400、0.1M MES、pH6、5%PEG300を含む結晶化バッファーと1:2の割合で混合し、室温で一晩転倒撹拌した。この処理によって、菱形のOXO結晶が高い收率(>70%)で生成した。
【0119】
(c)65mMクエン酸−リン酸バッファーpH3.5中2.15mg/mlのOXOを、28.5%のPEG600と混合して、室温に一晩放置した。
【0120】
実施例7A:OXO結晶の架橋
グルタルアルデヒドを用いて、シュウ酸オキシダーゼの結晶[由来は?]を架橋した。結晶化後、シュウ酸オキシダーゼ結晶を20〜30mg/mlに濃縮した。3.2mlの25%グルタルアルデヒドを20mlの結晶に加えて、4%グルタルアルデヒドの溶液を作り、結晶を室温にて16℃で転倒撹拌した。架橋結晶を、100mMトリス、pH7.00で5回洗浄し、10mMトリス、pH7.00に再懸濁した。
【0121】
可溶性シュウ酸オキシダーゼおよびCLECシュウ酸オキシダーゼの比活性を比較(6回試行)したところ、様々な調製物において、架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶が、可溶性タンパク質の本来の活性の70%以上から95%以上を保持していることが明らかになった。
【0122】
実施例7B:シュウ酸オキシダーゼ結晶の架橋
実施例6(大規模法)に記載したように調製したシュウ酸オキシダーゼ結晶を、グルタルアルデヒド(Sigma)を加えて架橋した。シュウ酸オキシダーゼ結晶の1mlの等量液(60mg/ml)を、25℃にて12時間、pH4.2の様々な濃度のグルタルアルデヒド(最終濃度は0.05%から2%)で架橋した。架橋された結晶をエッペンドルフチューブに入れて2000rpmで遠心分離により分離し、1mlの100mMトリス、pH7.0の中で架橋された結晶を再懸濁することによって架橋を停止させた。そして、CLECをpH7.5の100mMトリスバッファーで5回洗浄した後、pH7.5の10mMトリスバッファーで3回洗浄した。
【0123】
実施例7C:架橋されたシュウ酸オキシダーゼの架橋結晶のpH制御された可溶性
pHを7.5から3.0まで低下させた後、様々な架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶の可溶性を調べた。架橋結晶を、50mMグリシンHCl(pH3)中で1mg/mlにしてインキュベートした。37℃で5時間撹拌しながらインキュベートした後、等量液を取り出した。非溶解の架橋結晶を2000rpmで遠心分離により分離し、上清を0.22μフィルターに通した後、OD280nmで可溶性タンパク質の濃度を測定した。結果を下記の表5に示す。
【0124】
【化8】
実施例7Aの結果と合わせると、これは、実質的に安定したグルタルアルデヒドによるシュウ酸オキシダーゼ架橋結晶が、少なくとも約0.1%(最終濃度の)グルタルアルデヒドの存在下で形成されることを示している。好ましくは、少なくとも0.5%の最終濃度、また、より好ましくは、4%が用いられる。
【0125】
実施例7D:様々なpHにおける架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶の安定性
実施例7Bに記載されているようにして調製されたシュウ酸オキシダーゼの結晶を、グルタルアルデヒド(Sigma)を加えて架橋した。シュウ酸オキシダーゼ結晶の1mlの等量液(60mg/ml)を、25℃にて12時間、pH4.2の1%グルタルアルデヒド(最終濃度)で架橋した。架橋された結晶をエッペンドルフチューブに入れて2000rpmで遠心分離により分離し、1mlの100mMトリス、pH7.0の中で架橋された結晶を再懸濁することによって架橋を停止させた。そして、CLECをpH7.5の100mMトリスバッファーで5回洗浄した後、pH7.5の10mMトリスバッファーで3回洗浄した。
【0126】
20mg/mlの架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶を37℃で2つの異なったpH2.0(50mMグリシンHClバッファー)および7.00(50mMトリスHClバッファー)にてインキュベートして、架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶の安定性を調べた。様々な時間間隔で等量液を取り出して、実施例11に記載したようにpH3.8における活性を測定した。結果を表6に記す。
【0127】
【化9】
実施例7E:架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶のpH活性のプロフィール
実施例7Bに記載されているようにして調製されたシュウ酸オキシダーゼ結晶を、グルタルアルデヒド(Sigma)を加えて架橋した。シュウ酸オキシダーゼ結晶の1mlの等量液(60mg/ml)を、25℃にて12時間、pH4.2の4%グルタルアルデヒド(最終濃度)で架橋した。架橋された結晶をエッペンドルフチューブに入れて2000rpmで遠心分離により分離し、1mlの100mMトリス、pH7.0の中で架橋された結晶を再懸濁することによって架橋を停止させた。そして、CLECをpH7.5の100mMトリスバッファーで5回洗浄した後、pH7.5の10mMトリスバッファーで3回洗浄した。以下の様々なバッファーおよびpHを用いて、実施例11に記載されているようにシュウ酸オキシダーゼの架橋結晶の活性を測定することにより、架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶のpH活性プロフィールを調べた:pH2.0および3.0の50mMグリシンHClバッファー、pH4.0、5.0、6.0の50mMコハク酸バッファー、ならびにpH7.0の50mMトリスバッファー。これらの結果を図11に示す。比較のため、可溶性シュウ酸オキシダーゼも示されている。
【0128】
(実施例8:I型原発性高シュウ酸尿症の動物モデルにおけるOXO療法)
I型原発性高シュウ酸尿症のマウスモデル:AGT1ノックアウトマウスは、肝臓のペルオキシゾーム酵素であるアラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼを持たず、その欠乏の結果、I型原発性高シュウ酸尿症となる。これらのノックアウトマウスは、軽度の高シュウ酸尿症を示す。AGT1のKOマウスは、野生型マウスと比較して約5倍に上昇した尿中シュウ酸レベルを示す(毎日の排泄量は、正常な尿量である0.2mmlo/Lに対し、約1〜2mmlo/Lである)。
【0129】
全部で37匹の雄マウス(La Laguna Tenerife,SpainのSalido博士によって開発されたAGT1 KO/C57BL6系統)を3回の実験で用いた。マウスを1つの対照群と2つの実験群に分けた。マウスの体重は20〜25グラムで、6月齢未満であった。
【0130】
OXO結晶の投与:マウスは、処理前に、個々の代謝ケージ(Tecniplast USA Inc,Exton,PA,USA)に7日間馴化させ、0.02〜0.08%未満のシュウ酸、および0.5%未満のカルシウムを含む標準的な繁殖用飼料(タンパク質17%、脂肪11%、炭水化物53.5%)が与えられた。
【0131】
12日間の治療期間が続く間、各マウスに、曲がったステンレス鋼製の18ゲージ飼育用針(Harvard Apparatus Inc.;Holliston,MA)で一日に2回、午前10時および午後5時に強制的に経口投与した。対照群のマウスには、1.2mlの食塩水を一日に2回、強制経口投与し、実験群のマウスには、一日に50mgのシュウ酸オキシダーゼを、可溶性酵素として、または、架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶の懸濁液として強制経口投与した(1.2ml容量を一日に2回)。すべての実験群で動物は、強制経口投与に対して僅かに有害な効果を示した。可溶性シュウ酸オキシダーゼは、pH6.2の50mMクエン酸−リン酸バッファーに入れて投与した。架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶は、10mM トリス−HClバッファー(pH7.0)中の懸濁物にして投与した。
【0132】
尿試料の分析:24時間の尿試料を、代謝ケージの中に、尿中アスコルビン酸がシュウ酸に自然分解するのを最小限に抑えるために、酸(3〜4mlの尿について1Nの塩酸を15μl)上で収集した。試料は、さらに分析する時まで−70℃で保存した。毎日の利尿、シュウ酸およびクレアチンの排出を測定した。シュウ酸およびクレアチンの測定法については、実施例11に記載されている。シュウ酸の尿内排出を、クレアチンの尿内排出のモル比として表した。Studentのt検定を用いてデータを統計的に解析した。
【0133】
図8に示すように、可溶性OXOを投与したことによる尿中シュウ酸に対する作用は測定されなかったが、架橋OXO結晶で処理すると、処理後12日で尿中シュウ酸レベルの統計的に有意な低下がもたらされた。
【0134】
(実施例9:腸性高シュウ酸尿症の動物モデルにおけるOXO療法)
腸性高シュウ酸尿症のラットモデル:高シュウ酸飼料で飼養された雄のSprague Dawleyラットは、腸性高シュウ酸尿症の研究に適した動物モデルを構成する。腸内シュウ酸を分解する腸内細菌であるオキサロバクター・ホルミゲネスを除去するために1.5%の食事性シュウ酸アンモニウムを、抗生物質治療とともに投与すると、本実験で、尿中シュウ酸が5倍から10倍増加する結果となった。
【0135】
35日齢よりも若く、体重が100〜120グラムのSprague Dawleyラットを、対照群および実験群(各群当り6匹のラットで、予備群には6匹のラット)に無作為に分けた。処理前に、ラットをそれぞれの代謝ケージ(LabProducts,Inc.;Seaford,DE)に7日間馴化させた。この期間中、テトラサイクリン系抗生物質であるTerramycin(商標)(500mg/L)を添加した酸性化水をラットに不断供給して、オキサロバクター・ホルミゲネスを除去し、1.5%のシュウ酸アンモニウムと低濃度(0.5%)のカルシウムを含む合成飼料(Research Diets TD89222PWD;Harlen Teklad;Madison,WI)で飼育した。処理が継続される間、この餌でラットを飼養した。抗生物質による処理は、最初の7日間の馴化期間の後は中断した。
【0136】
OXOを強制経口投与によって、12日間の処理期間の間、18ゲージの強制経口投与用針(Harvard Apparatus Inc.;Holliston,MA)を用いて、一日に3回毎日投与した(午前9時、午後12時および4時)。強制経口投与対照群には1mlの水を投与した。実験群のラットには、1mlの架橋(4%グルタルアルデヒド、実施例7参照)シュウ酸オキシダーゼ結晶の懸濁液を、10mMトリス−HClバッファー(pH7.0)に入れ、強制経口投与(15mg/ラット/日)によって投与した。
【0137】
尿試料の分析:24時間の尿試料を、代謝ケージに、尿中アスコルビン酸がシュウ酸に自然分解するのを最小限に抑えるために、酸(10mlの尿試料について1Nの塩酸を15μl)上で収集した。試料は、さらに分析する時まで−70℃で保存した。毎日の利尿、シュウ酸およびクレアチンの排出を測定した。シュウ酸およびクレアチンの測定法については、実施例11に記載されている。シュウ酸の尿内排出を、クレアチンの尿内排出のモル比として表した。Studentのt検定を用いてデータを統計的に解析した。
【0138】
図9に示すように、7日目に、架橋シュウ酸オキシダーゼ結晶の投与によって、尿中シュウ酸排出の有意かつ持続的な低下がもたらされ、処理後12日で、尿中シュウ酸レベルが最大40%まで低下した。
【0139】
(実施例10:ヒトにおけるシュウ酸塩関連疾患に対するOXO療法)
シュウ酸塩関連疾患の治療または予防を必要とするヒトを、シュウ酸オキシダーゼ結晶を経口投与して治療する。シュウ酸オキシダーゼ結晶は、治療にあたる臨床医が、病状の重篤度および病気の進行に応じて決定するところにしたがって、約10μg/kgから25mg/kg、1mg/kgから25mg/kg、または5mg/kgから100mg/kgの投薬量で投与される。グルタルアルデヒドを用いて架橋されたシュウ酸オキシダーゼの結晶を毎日1回、2回、3回、4回、または5回投与するか、例えば、週に1回か2回など、より少ない頻度で投与する。シュウ酸オキシダーゼ結晶で治療すると、尿中シュウ酸レベルが少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%またはそれ以上低下する結果となる。
【0140】
(実施例11:アッセイ法)
タンパク質濃度の測定:280nmでの吸光度を測定して、シュウ酸オキシダーゼの濃度を決定した。1光学的密度(OC)の吸光を1mg/mlとみなした。
【0141】
OXO活性アッセイ法:以下のSigma Aldrich社のプロトコール(Enzymatic Assay of Oxalate Oxidase EC1.2.3.4)を用いて、シュウ酸オキシダーゼ(OXO)の活性を測定した。酵素活性の単位は以下のように定義される。すなわち、1ユニットは、室温、pH3.8で1分間あたり、シュウ酸から1.0μモルのH2O2を発生させる。
【0142】
アッセイ試料を、0.79mMのN,N−ジメチルアニリン(DMA)(Sigma)、0.11mMの2−メチル−2−ベンゾチアゾロンヒドラゾン塩酸(MBTH)(Sigma)、pH3.8を含む50mMのコハク酸バッファー溶液中0.25mg/mLの濃度に標準化させ、氷上に置いたが、タンパク質の濃度は280nmでの吸光度で決定した。1mg/mLのペルオキシダーゼ溶液を、使用前に冷diH2O中で調製し、氷上に置いておいた。他の試薬はすべて室温に置いた。測定は室温で行った。最初の反応がO2依存性であるため、シュウ酸オキシダーゼを加える前にマスター混合液に酸素を送り込むことが重要である。試薬を50mlチューブに以下の順序で加えていった。すなわち、1M NaOHを用いてpHを3.8に調整した27mLの50mMコハク酸バッファー;1mLの100mM EDTA;および1mlの蒸留水、そして、30分間強力に酸素を送り込んだ。まず、2.9mlの酸素含有実験溶液を3mlのプラスチック製キュベットに移して、pH3.8の200mMシュウ酸溶液20μl、および10μlの1mg/mLのペルオキシダーゼと十分に混合した。そして、10μlのシュウ酸オキシダーゼを加え、密閉したチューブを3回転倒させてすばやく混合した。600nmにおける吸光度の変化を、Shimadzu Biospecを用いて直ちに読み取って、10秒間隔で最長3分間まで記録した。曲線の直線部分(0から120秒の間)を用いて、試験およびブランクの両方について、1分間毎の600nmにおける吸光度の変化を評価した。ブランク用試料は、シュウ酸オキシダーゼ以外のすべてのアッセイ試薬からなっていた。
【0143】
酵素の比活性を以下のように計算した。
【0144】
U/mL酵素={(ΔA600/分)(2.95)(希釈係数)}/{(26.4)(0.02)}
および
U/mg固体={U/mL酵素}/{mg固体/mL酵素}}
ただし、式中、2.95=アッセイのミリリットル単位での総容量、df=希釈係数、26.4=600nmにおけるインダミン色素のミリモル吸光係数、および0.02=使用された酵素の容量をミリリットル単位で表したもの。
【0145】
具体的な実験において、シュウ酸オキシダーゼの架橋結晶(CLEC OXO)(一晩転倒撹拌して4%グルタルアルデヒドと架橋された菱形の結晶)を可溶性OXOと比較した。図4に示すように、CLEC OXOは、対応する可溶性のOXO調製物の活性の95%を保持している。
【0146】
比色法によるシュウ酸測定法:尿中のシュウ酸を定量的に測定するためのシュウ酸比色キットを、Trinity Biotech USA(St Louis,MO)またはGreiner Diagnostic AG(Dennliweg 9,Switzerland)から購入した。製造業者の指示に従って、尿試料を希釈して処理した。この測定法は、2つの酵素反応、すなわち(a)シュウ酸が、シュウ酸オキシダーゼによって二酸化炭素および過酸化水素水になり、(b)このようにして生成した過酸化水素水は、ペルオキシダーゼ存在下で3−メチル−2−ベンゾチアゾロンヒドラゾン(MBTH)および3−(ジメチルアミノ)安息香酸(DMAB)と反応して、590nmにおける吸光度で検出することができるインダミン色素を産生する。発生する色の強度は、試料中のシュウ酸塩濃度と直接比例する。尿中シュウ酸値を標準曲線から計算する。
【0147】
比色法によるクレアチン測定法:尿中のクレアチンを定量的に測定するためのクレアチン比色キットを、Quidel Corporation(San Diego,CA;METRA Creatinine Assay kit)またはRandox Laboratories(Antrim,United Kingdom)から購入した。本測定法は、クレアチンが、アルカリ性溶液内でピクリン酸と反応して、492nmにおいて吸光度を持つ産物を生成するという原理に基づいている。生成される複合体の量は、クレアチン濃度に直接比例する。単一の代謝ケージから収集した、ラットの24時間尿試料を二重蒸留水(double distilled water)で15倍に希釈した。20μlの希釈尿試料を、20μlのピクリン酸/水酸化ナトリウム(1:1)と混合した。室温で2分間インキュベートした後、492nmにおける吸光度を測定した。尿中クレアチン値を標準曲線から計算した。
【0148】
過ヨウ素酸シッフ染色:可溶性および結晶性のシュウ酸オキシダーゼを4〜20%のトリス−グリシンゲルで分離した。泳動が終ったら、ゲルを半分に切り分けた。左半分(レーン1〜5)をクーマシーブルー染色法によって染色し、右半分(レーン7〜10)をPAS染色法によって染色した。PAS染色をするには、40%メタノールおよび7%酢酸で、ゲルを1回の洗浄につき10分間ずつ4回洗浄した。洗浄したゲルを新しい40%メタノール、7%酢酸溶液で室温にて一晩振とうした。脱イオン水で数回洗浄した後、ゲルを、1%ピルビン酸および3%酢酸を含む溶液の中で1時間振とうしながらインキュベートした。シッフ試薬との最後のインキュベーションを、DI水で丹念に洗浄した後、暗黒下で1時間行った(図2)。
【0149】
(実施例12:原発性高シュウ酸尿症の動物モデルにおけるOXO療法)
AGT1 KO(C57B16)マウス(実施例8に記載した表現型)をエチレングリコール(EG)で攻撃して、重度の高シュウ酸尿症を誘発した。EGは、肝臓でシュウ酸に代謝される普通のアルコールである。
【0150】
マウスは、処理前に、それぞれの代謝ケージ(Tecniplast USA Inc,Exton,PA,USA)に7日間馴化させ、0.02〜0.08%未満のシュウ酸、および約0.5〜0.9%のカルシウムを含む標準的な繁殖用飼料(タンパク質17%、脂肪11%、炭水化物53.5%)が与えられた。馴化期間の後、マウスには、7日間、0.7%EGを添加した水を不断に与え、実験期間中同じことを続けた。攻撃の数日後、これらのマウスは、日々のシュウ酸排出量が3〜6mmol/Lである野生型マウスと比較して約10〜20倍多いシュウ酸を排出していた。
【0151】
OXO−CLEC酵素の投与:全部で8匹の雄マウス系統AGT1 KO/C57B16に、7日間EGを予備抗原投与してから、架橋結晶(4%グルタルアルデヒド、例えば実施例7参照)として処方した組換えシュウ酸オキシダーゼの単回用量を、凍結/乾燥食物酵素混合物として11日間連続して経口により投与した(10MMトリスHClバッファー(pH7)の懸濁液中の50mgの酵素を、凍結乾燥された5gmの食物と混合して、毎朝、〜7gmの食物/酵素混合液で食事用容器に補充した)(「用量50」)。マウスを無作為に対照群と実験群とに分けた。マウスは体重が20〜25グラムで、6月齢よりも若かった。
【0152】
尿試料の分析:24時間の尿試料を、代謝ケージの中に、尿中アスコルビン酸がシュウ酸に自然分解するのを最小限に抑えるために、酸(3〜4mlの尿について1Nの塩酸を15μl)上で収集した。試料は、さらに分析する時まで−20℃で保存した。毎日の利尿、シュウ酸およびクレアチンの排出を測定した。シュウ酸およびクレアチンの測定法については、実施例10に記載されている。シュウ酸の尿内排出を、24時間尿試料(mL)中に排出されているシュウ酸のμmol数として表した。Studentのt検定を用いてデータを統計的に解析した。実施例12参照。
【0153】
図12に示すように、OXO−CLECをEG AGT1KO(C57B16)マウスに経口投与すると、対応する未処理の対照マウスと比較して、処理開始後6日目から実験が終わるまで、尿中シュウ酸レベルの統計的に有意な低下がもたらされた。
【0154】
(実施例13:重度高シュウ酸尿症の動物モデルにおけるOXO療法、若いAGT1 KO(129/sv)マウス)
AGT1 KO(129/sv)マウスをエチレングリコール(EG)で攻撃して、重度の高シュウ酸尿症と、腎実質中にてシュウ酸カルシウムの沈着を誘発した。通常、攻撃の2〜6週間後に、マウスは、多様な尿中シュウ酸排出量、腎石灰沈着の多様な程度、およびクレアチンクリアランスの低下から判断される腎機能障害の徴候を示す。
【0155】
マウスは、処理前に、それぞれの代謝ケージ(Tecniplast USA Inc,Exton,PA,USA)に7日間馴化させ、0.02〜0.08%未満のシュウ酸、および0.5〜0.9%未満のカルシウムを含む標準的な繁殖用飼料(タンパク質17%、脂肪11%、炭水化物53.5%)が与えられた。
【0156】
OXO−CLEC酵素の投与:全部で22匹の雄マウス系統AGT1 KO/129/svに、7日間EGを予備攻撃した。この期間中、マウスには、0.7%エチレングリコール水を不断に与えて、重度の高シュウ酸尿症を創出した。予備処理の7日後、架橋結晶(4%グルタルアルデヒド、例えば実施例7参照)として処方した組換えシュウ酸オキシダーゼ(10MMトリスHClバッファー(pH7)に懸濁された50mgのOXO酵素)の単回用量を、凍結/乾燥食物酵素混合物として31日間連続して経口により投与した(上記したように懸濁した50mgの酵素を、凍結乾燥された3.5gmの食物と混合して、毎朝、約7gmの食物/酵素混合液で食事用容器に補充した)。マウスを無作為に対照群と実験群とに分けた。マウスは体重が20〜25グラムで、8〜10週齢よりも若かった。
【0157】
尿試料の分析:24時間の尿試料を、代謝ケージの中に、尿中アスコルビン酸がシュウ酸に自然分解するのを最小限に抑えるために、酸(3〜4mlの尿について15μlの1N塩酸)上で収集した。試料は、さらに分析する時まで−20℃で保存した。毎日の利尿を記録し、尿中シュウ酸およびクレアチンの濃度を週に2回測定した。シュウ酸の測定法については、実施例11に記載されている。シュウ酸の尿中排出を、24時間尿試料(mL)中に排出されたシュウ酸のμmol数として表した。Studentのt検定を用いてデータを統計的に解析した。図13参照。
【0158】
図13に示すように、OXO−CLECをEG AGT1KO(129/sv)マウスに経口投与すると、対応する未処理の対照マウスと比較して、処理開始後3日目から、尿中シュウ酸量の低下がもたらされ、低下は、処理の10日後に最大かつ有意になった。
【0159】
クレアチンクリアランス測定による腎機能の評価:実験の終わりに、4週間にわたるEG抗原投与を生き延びた動物をすべて殺して、血液を収集して、血漿クレアチンおよびクレアチンクリアランスを測定した。血清クレアチンを測定するには、Slot.C,1965およびHeinegard D,1973,kit Oxford Medical Researchによる、若干の修正を加えたヤッヘ(Jaffe)反応法を用いた。80μlの未希釈の血清試料を、キュベット中で800μlのピクリンアルカリと混合して、室温で30分間インキュベートした。分光光度法により、510nmのところで発色を測定したが、その時点で非特異的反応を消去するために33.3μLの60%酢酸を加えた。試料を念入りに混合し、室温で5分間インキュベートした後、510nmのところで再び読み取りを行った。最終的な吸光度は、2回の読み取りの差分として提示する。1mMクレアチン溶液の連続希釈を標準曲線に使用した。
【0160】
クレアチンクリアランスは、排出速度(Ucr×V)として表されるが、ここで、Ucrは、血漿クレアチン(Pcr)で割った尿試料中のクレアチン濃度(μmol/L)を表す。これは以下のように表される。すなわち、
Ccr=(Ucr×V)/Pcr=mL/h。
【0161】
図14に示すように、OXO−CLECで4週間治療すると、クレアチンクリアランスで表される正常な腎機能が維持された(7/11)が、対照群では、2匹のマウスだけ(2/11)がEG攻撃後に生き残ったが、それらの腎臓濾過速度は正常な範囲を下回っていた(4.76ml/h)。
【0162】
腎臓の組織病理学的分析:腎臓の完全な断面を得るために、マウスの腎臓を、パラフィン包埋用に通常通り処理した。各腎臓を、腎臓当り4μmの12個の連続切片に切って、通常の組織検査用のヘマトキシリン−エオシン染色によるか、または、腎組織中に存在するシュウ酸カルシウムの結晶を検出するための特異的Yasue金属置換組織化学的方法によって染色した。顕微鏡下、20倍の倍率でスライドを検査し、検査者は、切片を4つのカテゴリ尺度でスコアを付け、腎臓の解剖学的領域(腎臓皮質、腎臓髄質、および腎乳頭)のそれぞれに同じカテゴリを適用した。スコアは、なし、すなわち、どの領域にもシュウ酸の結晶なし、最小限、すなわち、いずれかの領域に1〜5個の結晶、中度、すなわち、いずれかの領域に5〜10個の結晶、および重度、すなわち、すべての領域に多数の結晶の集まり。図15および表6参照。
【0163】
【化10】
表6および図15に示すように、シュウ酸デカルボキシラーゼ−CLECによる4週間の経口処理によって、エチレングリコールで攻撃されたAGT1KOマウスの腎実質においてシュウ酸カルシウムの沈着が形成されるのが防止された。処理群の5匹のマウス(5/11)は、シュウ酸カルシウムの結晶の痕跡すら見られず、完全に正常な腎臓の形態を持っていたが、未処理群のマウスは100%CaOx沈着を示した(11/11)。
【0164】
Kaplan−Meyer推定量による生存率分析:エチレングリコールで攻撃されたマウスの生存率に対するOXO−CLECの効果を、ある時点で死んだ被検体の生存、その時点でまだ実験が行われている被検体の数で割るKaplan−Meyer法を用いて分析した。この方法は、簡単で、同じ実験の中の2つ以上の群間の差異をグラフで図示する。計算のため、カレイダグラフ(Kaleida Graph)やSTASなどの統計用プログラムをしばしば使用する。
【0165】
図16に示すように、シュウ酸オキシダーゼ−CLECによる4週間の経口処理によって、エチレングリコールで攻撃されたAGT1KOマウスの生存率が有意に増加した。概算された生存時間の中央値(処理群の50%のマウスが生き残っていた時間)は31日間であり、本実験を実際に継続した期間である。
【0166】
本明細書は、本明細書内で引用された参考文献の教示内容を踏まえて完全に理解することができる。本明細書内の実施形態は、本発明の実施形態を例示したものであって、本発明の範囲を限定するものと解すべきではない。当業者には、他の多くの実施形態が本発明に含まれることを容易に認識できる。本開示で引用されている刊行物、特許、および生物の配列はすべて、それら全体が参照されて組み込まれる。組み込まれた資料が矛盾するか、本明細書と整合しない場合は、本明細書がそのような資料よりも優先する。本明細書におけるいかなる参考文献の引用も、その文献が本発明に対する先行技術であると認めるものではない。
【0167】
別段の記載がない限り、請求項を含み本明細書で使用されている、成分、細胞培養、処理条件などの量を表すすべての数字は、すべての場合において、「約」という用語で修飾されていると理解されるべきである。したがって、そうではないとの別段の記載がない限り、数字による変数は近似値であり、本発明によって得ることが求められている所望の性質に応じて変化し得る。別段の記載がない限り、一連の要素の前に付けられた「少なくとも」という用語は、その一連の要素のすべての要素を意味する。当業者は、通常の実験だけを用いて、本明細書に記載された発明の具体的な実施形態と同等のものが数多くあることを認識するか、確認することができるであろう。そのような同等物も、以下の請求の範囲に含まれるものとする。
【0168】
本明細書および本明細書に開示した発明の実施を考慮すれば、本発明の他の実施形態が、当業者には明らかとなろう。本明細書および実施例は例示的なものにすぎないと見なされ、本発明の真の範囲および趣旨は以下の請求の範囲の記載されているものと考える。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】還元条件下(レーン1〜4)および非還元条件下(レーン6〜8)での4〜20%SDS PAGE濃度勾配ゲルにおける、精製されたシュウ酸オキシダーゼ(「OXO」)(可溶性型および結晶型)の見かけの移動度を示す。還元条件下では、OXOはモノマーである。非還元条件下では、OXOの大部分はヘキサマーとして存在する。レーン1:分子量マーカー;レーン2:可溶性OXO;レーン4:結晶性OXO;レーン6:可溶性OXO;レーン8:結晶性OXO;レーン10:分子量マーカー。結晶性OXOは、実施例6のバッチ結晶化法にしたがって調製した。
【図2】重複サンプルを4〜20%のトリス−グリシンゲルで分離して二等分したものをグリコペプチドに対して過ヨウ素酸シッフ(PAD)染色、およびクーマシーブルー染色(「常法」)したものを示す。左半分(レーン1〜5)をクーマシーブルー染色し、右半分(レーン7〜10)をPASで染色した。レーン1:分子量マーカー;レーン3:可溶性OXO;レーン5:結晶性OXO;レーン7:可溶性OXO;レーン9:結晶性OXO。結晶性OXOは、実施例6のバッチ結晶化法にしたがって調製した。
【図3】非還元SDSゲルで分離したOXOのシュウ酸オキシダーゼ反応性を示す。インサイチュでのシュウ酸オキシダーゼ分析により、様々なOXO調製物で活性が検出された。この活性は、見かけの分子量が約120kDaのポリペプチドと関連していた。レーン1:分子量マーカー;レーン3:精製した可溶性OXO;レーン5:pH6.0の10mM MES中の脱塩した可溶性OXO;レーン7:水中に溶解した結晶性OXO(40%(v/v)PEG400、pH6.0のMES、5%(w/v)PEG 3000から結晶化したもの);レーン9:水中に溶解した結晶性OXO(40%(v/v)PEG400、pH9.5のCHES、から結晶化したもの)。
【図4】可溶性OXOおよび架橋したOXO結晶(実施例6参照)の反応速度の特徴を比較したプロット図であり、結晶化OXOが、非結晶化OXOの活性の95%を保持していることを示している。
【図5A】図5Aは、蒸気拡散によって成長したOXO結晶の一連の写真である。
【図5B】図5Bは、蒸気拡散によって成長したOXO結晶の一連の写真である。
【図6】マイクロバッチ法によって成長させたOXO結晶の写真である。
【図7】バッチ法によって成長させたOXO結晶(図7A)、およびバッチ法によって成長させた架橋OXO結晶(図7B)を示している。
【図8】原発性高シュウ酸尿症のマウスモデルにおけるシュウ酸オキシダーゼ(OXO)療法の結果を示す。オスのAGT1ノックアウトマウスに、胃管栄養法によって可溶性OXO(図8A)、架橋したOXO結晶(図8B)、または模擬処理物(対照群)を投与した。24時間後の尿試料における尿中のシュウ酸およびクレアチンを測定した。エラーバーは、標準偏差をnの平方根で割って計算される標準誤差(SE)(n=5〜8)を示している。アステリスクは、対照群と実験群との間に統計的に有意な(P<0.05)差があることを示している。
【図9】腸性高シュウ酸尿症のラットモデルにおけるOXO療法の結果を示す。オスのSprague Dawleyラットに架橋したOXO結晶(15mg/ラット)または模擬処理物(対照群)を投与した。24時間後の尿試料における尿中のシュウ酸およびクレアチンを測定した。エラーバーは標準誤差(SE)(n=6)を示している。アステリスクは、対照群と実験群との間に統計的に有意な(P<0.05)差があることを示している。
【図10】配列番号:1〜3の配列情報を示す。
【図11】様々なpHにおける可溶性シュウ酸オキシダーゼのシュウ酸オキシダーゼ活性と比較した、グルタルアルデヒドに架橋したシュウ酸オキシダーゼ結晶(4%)のシュウ酸オキシダーゼ活性(%)のグラフを描いたものである。
【図12】EG AGT1 KOマウスをOXO−CLECで経口処理した1〜11日間、対照よりも尿中シュウ酸レベルが低下したことを示している。処理群(n=5)に、OXO−CLECを、経口で50用量投与した(適量の酵素スラリーを5gmの食物と混ぜ、凍結乾燥して、毎朝、えさ箱に〜7gmの食物/酵素混合物を再補充した)。対応する対照群はn=3で、試験品を含まない同じタイプの食物を投与した。各バーは、平均値±SEを示している。
【図13】EG AGT1 KOマウスをOXO−CLECで経口処理した31日後に、対照よりも尿中シュウ酸レベルが低下したことを示している。処理群(n=11)に、OXO−CLECを、経口で50用量投与した(適量の酵素スラリーを3.5gmの食物と混ぜ、凍結乾燥して、毎朝、えさ箱に〜7gmの食物/酵素混合物を再補充した)。対応する対照群はn=11で、試験品を含まない同じタイプの食物を投与した。基準尿中シュウ酸レベルを3日目について示す。各バーは平均値±SEを示している。*は、対照群と実験群との間に有意な差があることを示している。これらの結果を、独立した両側スチューデントのt検定によって分析した。実験を開始する際に、各群にn=11のマウスがいたが、何匹かが、エチレングリコールの攻撃が原因となって投与実験の途中で死亡したため、実験の終わりに尿中シュウ酸を測定した特定の日に生きていたマウスのみ、すなわち、対照群ではn=2および50mgOXO−CLEC群ではn=7のみについて示す。したがって、統計的有意性とは関連が薄い。それよりも、これらの結果は、下記に記載した結果と相俟って、本発明による治療法の有効性の証拠を提供している。
【図14】レアチニンクリアランスによって測定したところによると、極度の高シュウ酸尿症状態における正常な腎機能を維持する上で、OXO−CLEC処理が有効であることを示している。示された結果は、1ヶ月の全実験期間を生き延びたマウスだけである;すなわち、50mg群(n=7)および対照群(n=2)。対照群と比較すると、1匹あたり毎日50mgのOXO−CLECを投与されたマウスでは、クレアチンクリアランスが有意に高かった。各バーは、平均値±SEを示している。正常な腎機能をもつマウスにおけるクレアチンクリアランスは>10ml/hである。
【図15】50mgOXO−CLECで処理した群(図15A)および対照群(図15C)のマウスの腎実質におけるYasue陽性シュウ酸カルシウム結晶を示す。代表的なスライドを20倍に拡大して示す。シュウ酸カルシウムの蓄積を示さない正常な腎実質を(A)に示し、中度の腎石灰沈着をスライド(B)に示し、重度の腎石灰沈着をスライド(C)に示す。黒い矢印は、シュウ酸カルシウム沈着を示し、橙色の矢印は、形態が僅かに変化した糸球体を示し、また、茶色の矢印は、間質が線維化した広範な領域を示している。
【図16】エチレングリコール攻撃された、OXO−CLECで処理されたマウスと、対照群のマウスと生存時間を比較したKaplan−Meyerの生存曲線を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物におけるシュウ酸塩濃度を低下させるための方法であって、シュウ酸オキシダーゼ結晶を該哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記シュウ酸オキシダーゼ結晶が安定化されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記シュウ酸オキシダーゼ結晶が、架橋剤によって共有結合されているシュウ酸オキシダーゼを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記架橋剤が多官能性である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記架橋剤が二官能性である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記二官能性架橋剤がグルタルアルデヒドである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記投与が上部消化管を介する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記投与が経口である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記投与が体外装置を介する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記装置が透析装置である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記シュウ酸オキシダーゼ結晶を、懸濁液、乾燥粉末、カプセル、または錠剤として投与する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記哺乳動物の生体試料中のシュウ酸塩濃度を検出する工程を含む、請求項1または3記載の方法。
【請求項13】
前記生体試料が尿、血液、血漿、および血清である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記シュウ酸オキシダーゼ結晶の投与が、結果としてシュウ酸塩濃度を少なくとも10%低下させる、請求項1または3記載の方法。
【請求項15】
シュウ酸オキシダーゼ結晶の投与が、結果としてシュウ酸塩濃度を少なくとも20%低下させる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
シュウ酸オキシダーゼ結晶の投与が、結果としてシュウ酸塩濃度を少なくとも30%低下させる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
尿、血液、血漿、および血清から選択される生体試料において前記低下を測定する、請求項14、15、または16記載の方法。
【請求項18】
哺乳動物におけるシュウ酸塩濃度の上昇に関連した疾患を処置するための方法であって、シュウ酸オキシダーゼ結晶を該哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項19】
前記疾患が、腎臓疾患、骨疾患、肝臓疾患、消化管疾患、および膵臓疾患から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記疾患が、原発性高シュウ酸尿症、腸性高シュウ酸尿症、特発性高シュウ酸尿症、エチレングリコール中毒、嚢胞性線維症、炎症性腸疾患、尿石症、および腎石症から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記シュウ酸オキシダーゼを組換え産生する、請求項1または18記載の方法。
【請求項22】
個体におけるシュウ酸塩関連疾患を処置するための方法であって、シュウ酸および酸素分子の二酸化炭素および過酸化水素への変換を触媒することができる内因性ポリペプチドを該個体に提供する工程を含み、該ポリペプチドが安定化された結晶である、方法。
【請求項23】
前記ポリペプチドを、架橋剤によって共有結合的に架橋する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記架橋剤がグルタルアルデヒドである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
多官能性架橋剤によって架橋されている、シュウ酸オキシダーゼ結晶。
【請求項26】
前記架橋剤がグルタルアルデヒドである、請求項25記載の架橋されたシュウ酸オキシダーゼ結晶。
【請求項27】
前記架橋剤が、少なくとも約0.1%の最終濃度で存在するグルタルアルデヒドである、請求項26記載の架橋されたシュウ酸オキシダーゼ結晶。
【請求項28】
前記架橋剤が、最終濃度4%で存在するグルタルアルデヒドである、請求項27記載の架橋されたシュウ酸オキシダーゼ結晶。
【請求項29】
前記架橋剤が、最終濃度1%で存在するグルタルアルデヒドである、請求項28記載の架橋されたシュウ酸オキシダーゼ結晶。
【請求項30】
前記シュウ酸オキシダーゼが、対応する可溶性シュウ酸オキシダーゼの活性の少なくとも70%を保持している、請求項25から29のいずれか一項記載の結晶。
【請求項31】
前記シュウ酸オキシダーゼが、対応する可溶性シュウ酸オキシダーゼの活性の少なくとも95%を保持している、請求項25から29のいずれか一項記載の結晶。
【請求項32】
前記シュウ酸オキシダーゼが、対応する可溶性シュウ酸オキシダーゼの活性の少なくとも98%を保持している、請求項25から29のいずれか一項記載の結晶。
【請求項33】
請求項25から29のいずれか一項記載の結晶を含む医薬組成物。
【請求項34】
請求項33記載の医薬組成物の有効量を投与する工程を含む処置方法。
【請求項1】
哺乳動物におけるシュウ酸塩濃度を低下させるための方法であって、シュウ酸オキシダーゼ結晶を該哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記シュウ酸オキシダーゼ結晶が安定化されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記シュウ酸オキシダーゼ結晶が、架橋剤によって共有結合されているシュウ酸オキシダーゼを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記架橋剤が多官能性である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記架橋剤が二官能性である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記二官能性架橋剤がグルタルアルデヒドである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記投与が上部消化管を介する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記投与が経口である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記投与が体外装置を介する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記装置が透析装置である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記シュウ酸オキシダーゼ結晶を、懸濁液、乾燥粉末、カプセル、または錠剤として投与する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記哺乳動物の生体試料中のシュウ酸塩濃度を検出する工程を含む、請求項1または3記載の方法。
【請求項13】
前記生体試料が尿、血液、血漿、および血清である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記シュウ酸オキシダーゼ結晶の投与が、結果としてシュウ酸塩濃度を少なくとも10%低下させる、請求項1または3記載の方法。
【請求項15】
シュウ酸オキシダーゼ結晶の投与が、結果としてシュウ酸塩濃度を少なくとも20%低下させる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
シュウ酸オキシダーゼ結晶の投与が、結果としてシュウ酸塩濃度を少なくとも30%低下させる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
尿、血液、血漿、および血清から選択される生体試料において前記低下を測定する、請求項14、15、または16記載の方法。
【請求項18】
哺乳動物におけるシュウ酸塩濃度の上昇に関連した疾患を処置するための方法であって、シュウ酸オキシダーゼ結晶を該哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項19】
前記疾患が、腎臓疾患、骨疾患、肝臓疾患、消化管疾患、および膵臓疾患から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記疾患が、原発性高シュウ酸尿症、腸性高シュウ酸尿症、特発性高シュウ酸尿症、エチレングリコール中毒、嚢胞性線維症、炎症性腸疾患、尿石症、および腎石症から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記シュウ酸オキシダーゼを組換え産生する、請求項1または18記載の方法。
【請求項22】
個体におけるシュウ酸塩関連疾患を処置するための方法であって、シュウ酸および酸素分子の二酸化炭素および過酸化水素への変換を触媒することができる内因性ポリペプチドを該個体に提供する工程を含み、該ポリペプチドが安定化された結晶である、方法。
【請求項23】
前記ポリペプチドを、架橋剤によって共有結合的に架橋する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記架橋剤がグルタルアルデヒドである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
多官能性架橋剤によって架橋されている、シュウ酸オキシダーゼ結晶。
【請求項26】
前記架橋剤がグルタルアルデヒドである、請求項25記載の架橋されたシュウ酸オキシダーゼ結晶。
【請求項27】
前記架橋剤が、少なくとも約0.1%の最終濃度で存在するグルタルアルデヒドである、請求項26記載の架橋されたシュウ酸オキシダーゼ結晶。
【請求項28】
前記架橋剤が、最終濃度4%で存在するグルタルアルデヒドである、請求項27記載の架橋されたシュウ酸オキシダーゼ結晶。
【請求項29】
前記架橋剤が、最終濃度1%で存在するグルタルアルデヒドである、請求項28記載の架橋されたシュウ酸オキシダーゼ結晶。
【請求項30】
前記シュウ酸オキシダーゼが、対応する可溶性シュウ酸オキシダーゼの活性の少なくとも70%を保持している、請求項25から29のいずれか一項記載の結晶。
【請求項31】
前記シュウ酸オキシダーゼが、対応する可溶性シュウ酸オキシダーゼの活性の少なくとも95%を保持している、請求項25から29のいずれか一項記載の結晶。
【請求項32】
前記シュウ酸オキシダーゼが、対応する可溶性シュウ酸オキシダーゼの活性の少なくとも98%を保持している、請求項25から29のいずれか一項記載の結晶。
【請求項33】
請求項25から29のいずれか一項記載の結晶を含む医薬組成物。
【請求項34】
請求項33記載の医薬組成物の有効量を投与する工程を含む処置方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2009−501136(P2009−501136A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516040(P2008−516040)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/023115
【国際公開番号】WO2006/135925
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(500498730)アルタス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/023115
【国際公開番号】WO2006/135925
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(500498730)アルタス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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