ショート・コヒーレンス干渉計
本発明は、軸方向に離間する、供試体(P)、特に眼(A)の複数の領域(T1、T2)を測定するためのショート・コヒーレンス干渉計装置に関し、干渉計は、複数の個別の測定ビームが通って供試体(P)に照射される少なくとも1つの測定ビーム経路、および参照ビームが通る参照ビーム経路(R)からなり、個別の測定ビーム(M1、M2)は、参照ビームと重ねられて干渉状態になり、個別の測定ビーム(M1、M2)は、供試体(P)に照射されたとき、軸方向距離(d)に適合した量だけ互いに対して軸方向に変位し、干渉計装置(I)は、干渉するやり方で、個別の測定ビーム(M1、M2)を参照ビームと重ね、また、ビームをそれぞれの測定ビームに関連した検出器(D1、D2、..、DN)へ導き、個別の測定ビーム(M1、M2、..、MN)は、参照ビームと重なり、結合されて混合光になり、そこでは、参照ビームと重ねられる際に測定ビームが別々の位相位置を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試体、具体的には眼の、軸方向に離間された複数の領域を測定するためのショート・コヒーレンス干渉計装置に関し、この装置は、複数の個別の測定ビームが通って供試体上に入射する少なくとも1つの測定ビーム経路と、個別の測定ビームに重ねられて個別の測定ビームと干渉状態になる参照放射が通って導かれる1つの参照ビーム経路とを有し、個別の測定ビームは、供試体上に入射するとき、軸方向の間隔に適合した量だけ軸方向に互いにオフセットされ、干渉計装置は、供試体から戻るそれぞれの個別の測定ビームを参照放射と重ねて干渉を引き起こす重ね合わせデバイスを有する。
【0002】
その上、本発明は、供試体、具体的には眼の、軸方向に離間された複数の領域を測定するためのショート・コヒーレンス干渉計装置に関し、この装置は、複数の個別の測定ビームが通って供試体上に入射する少なくとも1つの測定ビーム経路を有し、個別の測定ビームは、供試体上に入射するとき、軸方向の間隔に適合した量だけ軸方向に互いにオフセットされ、この干渉計装置は、個別の測定ビームのうちの少なくとも2つを互いに重ねて干渉を引き起こす。
【背景技術】
【0003】
光コヒーレンス・トモグラフィを用いる光学的結像のためのそのようなショート・コヒーレンス干渉計装置は、例えば国際公開第2007/065670A1号パンフレットから知られている。最初に述べたタイプは、分離した参照光に対してそれぞれの複数の測定ビームの干渉を引き起こすものであり、2番目に述べたタイプは、対になった複数の個別の測定ビームを重ねるもので、いわゆる「デュアル・ビーム」干渉計として示されている。
【0004】
人間の眼などの小型光学部品または生体組織などの供試体の内部散乱中心の位置およびサイズを検出する目的で、光コヒーレンス領域反射率測定(Optical coherence domain reflectometry:OCDR)が用いられる。光コヒーレンス・トモグラフィに関して、具体的には光コヒーレンス領域反射率測定に関して、対応する文献の概要を得るために、米国特許出願第2006/0109477A1号を参照する。この特許出願は、とりわけ本発明の発明者によって考案されたものであり、光コヒーレンス・トモグラフィの基本原理も扱っている。迅速に走査する参照アームを用いる時間領域OCDR(Time domain OCDR:TD OCDR)ならびに固定参照アームおよびスペクトル干渉解析を用いるフーリエ領域OCDR(Fourier domain OCDR:FD OCDR)の変形形態は、OCDRで知られている。FD OCDRは、広帯域の光源および分光計ベースの検出を使用する種類(スペクトル領域OCDR(Spectral domain OCDR)すなわちSD OCDR)と、スペクトル的に掃引する光源および広帯域の検出器を使用する種類(掃引光源OCDR(Swept-source OCDR)すなわちSS OCDR)とに、再び区分される。
【0005】
光コヒーレンス・トモグラフィは、具体的にはFD OCDR形式のものは、測定エリアと測定分解能との固定された連係に問題がある。従来技術では、所望の分解能より幾何学的に数桁大きい領域における対象の測定を扱う多くの公開が知られている。そのような測定業務の1例に、人間の眼の上の領域の測定、例えば眼の前部(例えば角膜)上、および網膜上の両方の構造の検出がある。
【0006】
眼の前部および眼底における測定のための1つの手法に、国際公開第2007/065670A1号パンフレットから知られているものがあり、これは、それぞれが分離した参照アームおよび関連する測定アームから構成された複数の干渉計装置を熟練したやり方で結合する。1つのデバイスへ結合されたこれら複数の独立した干渉計装置の調整を変化させることにより、眼の様々なポイントで同時に測定を実行することが可能である。この公開は、例えば放射の偏光またはその波長に関して、結合された干渉計において放射を区別するための様々な手法を説明している。
【0007】
そのようなタイプの区別の1つも国際公開第01/38820A1号パンフレットに説明されているが、これは、参照アーム長さを調整するための可動部を必要とするFD OCDRしか述べていない。様々な長さの複数の参照アームを用いる原理も、米国特許出願第2005/0140981号パンフレットまたは米国特許第6198540号明細書に見いだされ、それぞれがOCDRを述べており、様々な距離の、個別に調整された複数の参照光経路を用いる。
【0008】
最後に、既に冒頭で引用された米国特許出願第2006/0109477A1号は、供試体の軸方向に異なって離間された複数の領域の検出が全くできず、むしろ、3×3の位相結合器を差分信号解析すなわち平衡検出と組み合わせて用いる、できるだけ大きな感度を述べている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
この従来技術から、したがって、本発明は、供試体の、軸方向に離間された複数の領域を検出することができるショート・コヒーレンス干渉計装置を提供するという目的に基づくものであり、FD OCDRのスペクトル分解などで用いられるOCDRの変形形態のパラメータに起因する測定エリアによって許されるものよりさらに遠くへ領域を離間することが可能であり、後方散乱だけが弱く検出され得る供試体におけるポイントでさえ、特に高い感度がさらにもたらされることになる。
【0010】
この目的は、本発明により、述べられたタイプのショート・コヒーレンス干渉計装置によって達成され、この装置の重ね合わせデバイスは、それぞれが検出器に入力する複数の出力を有し、この重ね合わせデバイスは、重ね合わせ用の同一の参照放射を受け取って、各出力に、参照放射と重ねられた複数の個別の測定ビームの混合光を出力し、各混合光は、様々な位相調整で参照放射と重ねられた個別の測定ビームの小部分を含む。
【0011】
したがって、本発明は、参照アームを1つだけ有する干渉計を使用する。このことは、有利な構造の単純化をもたらすばかりではない。さらに、複数の強い参照信号間の干渉が防止されるので、平衡検出と、複数の測定アームと、1つの共通の参照アームとの結合で高い信号感度が達成される。そのような干渉は、強く広範なアーチファクトをもたらすことになる。本発明によるコンセプトでは、せいぜい2つの弱い信号、すなわち測定アームからの信号の干渉が生じるだけである。2つの強い参照信号の干渉が回避される。
【0012】
その上、参照光成分が、顕著に、または主に寄与する散弾雑音などのノイズ成分の低減を達成することができる。散弾雑音は、最も大きなノイズ源(散弾雑音に限定された動作)であり、したがって、参照信号に対して測定信号が小さく、信号成分は、干渉する測定光光子の数と参照光光子の数との積に相当し、ノイズ成分が参照光光子の数に比例するので、信号対雑音比は、一般に、検出された測定信号光子の数に相当する。
【0013】
複数の参照アームを使用することによって参照光成分の数が増加すると、ノイズ成分は、参照光成分に含まれる参照光子の合計に対応して上昇する。しかし、信号成分は、依然として測定光光子と単一の適合された参照光成分の光子との積にのみ相当する。これは、個別の測定信号に関して、信号対雑音比が低下することを意味する。
【0014】
それと対照的に、1つだけの参照アームに適合した複数の測定信号を有する本発明による解決策により、不変の信号レベルで、1つの参照光成分のみによってもたらされる寄与にノイズを限定することが可能になる。
【0015】
したがって、例えば、従来技術では一般的なことであるが、測定信号に個別に適合された2つの同一参照信号を用いて2つの測定信号が測定されると、散弾雑音に限定された信号対雑音比は、1つだけの参照信号を用いたもの(この信号に、2つの測定信号が個別に適合される)に対して2dBまたは3dBの係数だけ劣る。
【0016】
デュアル・ビームの変形形態では、上記の目的は、供試体、具体的には眼の、軸方向に離間された複数の領域を測定するためのショート・コヒーレンス干渉計装置によってさらに達成され、この装置は、複数の個別の測定ビームが通って供試体上に入射する少なくとも1つの測定ビーム経路を有し、個別の測定ビームは、供試体上に入射するとき、軸方向の間隔に適合した量だけ軸方向に互いにオフセットされ、この干渉計装置は、個別の測定ビームのうちの少なくとも2つを互いに重ねて干渉を引き起こし、この干渉計装置は、2つの個別の測定ビームのそれぞれを、干渉させるやり方で他方と重ね、次いで、それぞれを、関連する分離した検出器へ伝導する。
【0017】
したがって、本発明は、重ね合わせデバイスの後の関連する検出器で干渉信号が生じるように軸方向に個別に遅らせた個別の測定ビームを用いる。混合光中の個別の測定ビームは、干渉を引き起こすために、それぞれ参照ビームを用いて重ねられ、参照ビームは、混合光のそれぞれの個別の測定ビームに対して個々に異なる位相で重ねられる。この手順により、干渉計装置において、感度の向上および直交成分の割出しのうちの少なくとも一方のための平衡検出がさらに可能になる。雑音抑圧のための平衡検出の利点は、例えば、ポドリーヌ(Podoleanu)、Appl.Optics 39、173(2000)、“Unbalanced versus balanced operation in an optical coherence tomography system”に、広範囲にわたって説明されている。その上、個別の測定ビームの軸方向の測定範囲よりはるかに大きい間隔で軸方向に離間された供試体の領域が、分離した個別の測定ビームによって同時に検出され得る。
【0018】
そうする際に、最大の信号品質を達成するために、個別の測定ビームの合焦状態および偏光状態ならびに拡散特性を、供試体の、特定の関連付けられた軸方向の測定領域に適合させることが可能である。ミラー・アーチファクトを抑制するためのフーリエ領域の光コヒーレンス・トモグラフィ(FD OCDR)向けの干渉計において、目標を絞って拡散条件を適合させることの利点は、本発明者が寄与した米国特許出願第2006/0171503号に説明されている。
【0019】
測定放射は、好ましくは、SS OCDRを実行するために実施されるビーム源から生じるものであり、すなわち調整可能である。しかし、本発明は、一般に、SD OCDR(掃引されない放射のスペクトル解析を用いる)向け、およびTD OCDR(干渉計における干渉条件の掃引、例えば参照ビーム経路の距離の調整を用いる)向けのうちの少なくとも一方において可能であり、実施され得る。
【0020】
個別の測定ビームの分割は、重ね合わせデバイスが、ビーム源によって与えられる光源ビームからの測定ビーム経路と参照ビーム経路とを分割を有した後に、共通の測定ビームから実行することができる。この変形形態については、好ましくは測定ビームを供給するビーム源が設けられて光源ビームを出力し、また、重ね合わせデバイスが、この光源ビームの一定の強度の小部分を測定ビーム経路と参照ビーム経路とに分割するとの前提がある。
【0021】
供試体への経路における個別の測定ビームの分割および供試体からの復帰経路における再結合は、測定ビーム経路で(のみ)起こり得る。レンズ・デバイスは、この目的に特に有利に用いられ、これは、測定放射を個別の測定ビームへ分割し、それらの測定ビームを互いに軸方向へオフセット(遅延)させ、また、供試体上に様々な焦点距離でそれらを合焦する。
【0022】
レンズ・デバイスが、瞳分割を用いて個別の測定ビームを供給する場合、特にコンパクトなレンズ・デバイスが得られ、レンズ・デバイスの分離した瞳領域は、それぞれの個別の測定ビームおよび光学距離、ならびに任意選択で別の瞳領域の結像特性にも関連付けられる。
【0023】
そのようなレンズ・デバイスは、独立した発明としてレンズ装置またはレンズ・デバイスを提供することができるように、説明されたショート・コヒーレンス干渉計装置とは無関係にも実現可能であり、これは、供給されたビーム束を個別ビーム束に分割し、個別のビーム束を互いに対して遅らせ、また、任意選択で、それらを別々に合焦させて出力し、このレンズ装置は、分割された瞳(それぞれの個別のビームの束、および光学距離、拡散、ならびに任意選択で、分離した別の瞳領域におけるレンズ装置またはレンズ・デバイスの結像特性にも関連付けられた分離した瞳領域)を有する。
【0024】
2つのレンズ表面およびガラス体の光軸に沿って通る穴を有するガラス体を有するレンズ装置またはレンズ・デバイスで、レンズの片方の面を改良すると特に都合が良い(もちろん、ショート・コヒーレンス干渉計装置の範囲でも改良は可能である)。このように、ガラス体を通る様々な光学距離によって個別ビームが生じるので、穴の深さが、個別ビームの相互の遅延の原因となる。穴が導入される穴基部およびレンズ表面の光学的性質も異なってよい。いかなる差異も、個別ビームの合焦の変化をもたらす。
【0025】
したがって、レンズ装置またはレンズ・デバイスの設計では、独立して選択可能な穴深さならびに穴基部およびレンズ表面の幾何学的形状のパラメータによって、個別ビームの遅延および集束は、互いと無関係に設定および/または選択することができる。
【0026】
所望の光遅延および拡散条件のうちの少なくとも一方を達成するために、ガラス体の空洞を、存続するガラス本体と比較して異なる光学的性質、すなわち具体的には屈折率および拡散を有する材料で、完全に、あるいは部分的に充填する可能性も注目される。
【0027】
共通の測定ビームから、すなわち参照ビーム経路の分割後に、個別の測定ビームを生成することの代替に、重ね合わせデバイスが、光源ビームから個別の測定ビームを直接分割することがある。
【0028】
特定の強度比に従って重ね合わせデバイスでビーム分割を実行すること、すなわち、従来技術に多くの点で見られる偏光分離を実行しないことが、2つの理由で一般に好ましく、そのうち1つは、偏光スプリッタは高価な部品であり、したがって装置がより高くつくようになることである。もう1つの理由は、偏光分割された個別の測定ビームが、重ね合わせに際して同一の偏光状態を再び有するように、後で大変な努力を払って再び保証しなければならないことである。これは、具体的には、例えば眼のレンズを通過するとき、供試体の複屈折させる構造によって個別の測定ビームの偏光状態が変化する可能性がある供試体では問題がある。最後に、偏光分離も、決まって高々2つのスプリット・ビームに限定されるが、その一方で対照的に、例えばファイバ・カプラを用いることで可能な強度分割では、2つより多くのスプリット・ビームを生成することもできる。
【0029】
したがって、本発明の改良では、個別の測定ビームおよび重ね合わせデバイスが、光源ビームの特定の強度成分を個別の測定ビーム経路へ分割するために、測定ビーム経路が、異なる距離の個別の測定ビーム経路を有するのが好ましい。重ね合わせデバイスは、任意選択で、光源ビームの特定の強度成分を参照ビーム経路へ分割することができる。
【0030】
元のビームの、個別の測定ビームおよび(デュアル・ビーム形式を用いない場合)参照ビームへの分割は、例えば本出願の発明者のうちの1人が寄与した先に引用の米国特許出願第2006/0109477A1号に説明されているように、強度割当てに従って、3×3のファイバ・カプラまたは結合された2つの2×2のファイバ・カプラを用いて、特に簡単に実行することができる。この公開の開示内容は、そのようなファイバ・カプラの動作モード、構成、および能力に関する参照により、明確に本願明細書に援用する。
【0031】
重ね合わせデバイスは、その出力のそれぞれに、少なくとも2つの個別の測定ビームの混合光を出力し、この測定ビームはそれぞれ参照ビームと重ねられ、それぞれの個別の測定ビームに関して、重ね合わせで、参照ビームに対するそれぞれの個別の位相シフトが引き起こされ、この個別の位相シフトは、重ね合わせのとき、個別の測定ビームが、参照ビームに対して別々の相対位相調整を経験するという結果をもたらす。例えば前述の2×2のファイバ・カプラを用いると、位相シフトは180°であり、それによって、前述のように平衡検出が特に有利に実施され得る。
【0032】
したがって、各検出器は、複数の個別の測定ビームがそれぞれ別々の相対位相調整を用いて参照ビームと重ねられた混合光を受け取る。個別の測定ビームは、基本的には等しく混合光に寄与してよいが、混合光において、個別の測定ビームのうち1つが、具体的には90%を上回る不均衡な小部分を有する非対称の構成も可能である。もちろん、この小部分の増加によって、その他の1つまたは複数の個別の測定ビームが犠牲になる。
【0033】
測定領域信号を同時検出することにより、間隔を置く測定において、何らかの軸方向の供試体の運動に起因する位置誤差の補償が可能になる。そうしない場合のFD OCT上の軸方向の供試体運動の負の効果は、例えば、ユンら(Yun et.al.),Opt.Express 12,2977(2004),“Motion artifacts in optical coherence tomography with frequency−domain ranging”に説明されている。
【0034】
任意選択で、個別の測定ビーム、複数の測定ビーム、または1つを除いたすべての個別の測定ビームを遮る阻止要素を設けることができ、その結果、阻止要素が作動すると、個別の測定ビームのうち1つだけが、依然として参照ビームと重ねられる。
【0035】
個別の測定ビームの重ね合わせ(参照ビームとの重ね合わせ、またはデュアル・ビームの変形形態の場合には少なくとも1つの他の個別の測定ビームとの重ね合わせ)が、50%未満の損失を示す場合、特に高い検出精度が達成される。例えば、従来技術の手法では、偏光分割またはスペクトル分割が、そこにいっそう高い損失を引き起こすので、この特徴を実施することができない。
【0036】
検出器の各2つの差動読出しを用いて、特に高い感度が達成される。この前述の平衡検出も、米国特許出願第2006/0109477A1号に説明されており、その開示内容も、参照によって全体を本願明細書に援用する。
【0037】
干渉の信号品質、したがって供試体において弱く散乱する対象物さえ検出され得る感度は、もちろん、とにかく、干渉状態になる個別の測定ビームが有し得る干渉の度合いの関数である。例えば、知られているように、直交する直線的に偏光されたビームは互いに全く干渉することができないので、この目的にとって偏光状態はもちろん重要である。したがって、すべての個別の測定ビームに対して活動状態であって、個別の測定ビームの偏光状態を互いに等しくし、かつ/または(デュアル・ビーム形式を用いない場合)個別の測定ビームの重ね合わせの前に個別の測定ビームの偏光状態を参照ビームの偏光状態と等しくする偏光制御器を測定ビーム経路に設けるのが好ましい。重ね合わせに際して偏光状態の自動適合を実施するために、個別の測定ビーム中および参照アーム中にファラデー回転子が用いられてもよい。供試体中のファラデー回転子およびOCT干渉計の参照アームは、米国特許第7126693号に説明されている。
【0038】
個別の測定ビームとの重ね合わせのために、参照放射の偏光状態と等しくするために、個別の測定ビームへの測定ビームの瞳分割、および個別の測定ビームの偏光状態に対する供試体の十分に均一な影響とともに、好ましくは単一の偏光制御器が用いられる。
【0039】
光源ビームから個別の測定ビームが直接分割される実施形態については、生成されたそれぞれの個別の測定ビーム経路に、このように偏光制御器を設けることは有利であり、その結果、このように設けられた偏光制御器が、個別の測定ビームの重ね合わせの前に、個別の測定ビームの偏光状態を互いに等しくする。すべての個別の測定ビームが依然として共通に伝搬する測定ビーム経路の一部分における中央の偏光制御器とは対照的に、ここでは、それぞれの個別の測定ビームの偏光状態に対して個別の適合を実行することができる。デュアル・ビーム形式を用いない場合、この等化も、再び参照ビーム経路の偏光状態に適応される。
【0040】
掃引される放射源を用いたOCDR(SS OCDR)向けに、もちろん対応する実施形態が好ましいので、特に好ましくは説明された装置が実装される。
この装置によって、例えば、SS OCDRでは掃引された放射源のスペクトルの線幅により、TD OCDRでは干渉計の参照アームの調整経路により、また、SD OCDRでは検出のスペクトル分解能により、あらかじめ決められた許容測定範囲より、軸方向にさらに遠く離間された領域で供試体を検出することが可能になる。したがって、個別の測定ビームの軸方向のオフセットが、干渉計装置の掃引範囲ならびにスペクトルの分割および検出によってそれぞれ与えられた測定範囲より大きいことが好ましい。
【0041】
もちろん、ここで説明した本発明による装置の変形形態は、供試体の横方向スキャンのために、具体的には結像のために実施されてもよい。この目的のために、供試体と個別の測定ビームの少なくとも1つとの横方向の相互変位によって供試体をスキャンするために、少なくとも1つのスキャン・デバイスが設けられるのが好ましい。
【0042】
したがって、スキャン・デバイスは、個別の測定ビームのうち少なくとも1つに対して効果的である。眼に対して適用するために、したがって、好ましくは対眼レンズの結像も、その形状および位置(レンズの傾斜、すなわち光学軸と視軸との間の角度、後方のレンズ表面の曲率、前方のレンズ表面の曲率)の測定を含んで実行される。網膜の領域の結像、具体的には窩の領域での結像も可能である。
【0043】
個別の測定ビームの少なくとも1つのためのスキャン・デバイスによって、有利には、結合された測定が可能になり、これは単純な間隔を置く測定またはトポグラフィ検出に勝る。人間の眼などの動く対象物を測定すると、測定手順中の眼球運動によってデータが壊れる問題が常に存在する。光コヒーレンス・トモグラフィを用いてスキャンするとき、これは特に好ましくない。本発明による装置により、角膜の頂点または網膜基部などの参照点への距離を検出して、何らかの距離変化から、眼などの供試体の運動の測定値を得るのに、個別の測定ビームのうちの1つを用いることが可能になる。次いで、同時に行われた供試体の別の領域の横方向のスキャンから得られた測定データを補正するのに、参照点の運動を用いることができる。
【0044】
この手法の有利な改良では、参照点の軸方向の位置ばかりでなく、その横方向の位置も検出される。例えば、角膜の頂点の横方向の運動も検出される。次いで、検討する供試体の軸変位だけでなく、横変位に関しても補正することができる。対象物の別の領域のスキャンによって実行される3次元結像のための参照点は、3次元的に追跡することができ、対応する測定データは、参照点の運動に関して3次元的に補正することができる。
【0045】
したがって、好ましくは、この装置が、個別の測定ビームを用いて参照点の軸方向の位置を検出すること、または独立してスキャンされる個別の測定ビームを用いて参照点の3次元位置を検出することにより前述の参照を実行してこの装置を制御する、対応する制御ユニットを有するという前提がある。
【0046】
前述の特徴または特性、あるいは今後説明されることになる実施形態の特徴または特性は、それと反対の注が付けられなければ、開示された組合せばかりでなく、他の組合せまたは任意選択として単独でも、本発明の範囲を逸脱することなく利用され得ることが明白である。装置の任意の方法の工程を実行するために、適当な制御ユニットが設けられる。SS OCDRに基づく以下の説明は、このOCDR方式に対するいかなる制約でもないことにも留意されたい。同様に、本発明は、SD OCDRまたはTD OCDRにも適する。もちろん、SS OCDRで生じる光源の掃引は、重ねられた放射のスペクトル解析または参照ビーム経路の調整でそれぞれ置換される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】眼の2つの異なる領域を同時検出するための平衡検出を有するSS OCDR干渉計を示す図。
【図2】図1のものと類似であるが、照明放射のより優れた活用および眼の様々な領域からの測定放射のより広範囲な個別の検出を実行するために、図1の干渉計の測定ビーム経路が変更されている干渉計を示す図。
【図3】図2のものと類似の干渉計を示す概略図。
【図4】ビーム・スプリッタ・デバイスの影響を説明する、図3と類似の図。
【図5】図4のものと類似であるが、デュアル・ビーム干渉計の1実施形態の干渉計を示す図。
【図6】図4のものと類似であるが、平衡検出を有する干渉計装置について示す概略図。
【図7】図6のものと類似であるが、供試体のさらなる横方向スキャンを有する干渉計装置を示す図。
【図8】図7の干渉計装置と類似であるが、デュアル・ビーム干渉計として示す図。
【図9a】図1の干渉計のビーム・スプリッタ・デバイスを示す概略図。
【図9b】図9aによる様々なビーム・スプリッタ・デバイスを有するリボルバ・ホイールを示す図。
【図10】図2〜図8の干渉計のビーム・スプリッタ・デバイスを示す概略図。
【図11】図2〜図8の干渉計のビーム・スプリッタ・デバイスを示す概略図。
【図12】図2〜図8の干渉計のビーム・スプリッタ・デバイスを示す概略図。
【図13】図1のものと類似であって、その構成によって正確な平衡検出が可能になり、干渉読取り検出器間の位相シフトが正確に180°であるOCDR干渉計を示す図。完全な平衡検出を有する構成を示す。
【図14】図1のものと類似であって、その構成によって正確な平衡検出が可能になり、干渉読取り検出器間の位相シフトが正確に180°であるOCDR干渉計を示す図。図13の構成の変更であって、伝達に役立つ参照ビーム経路を有するものを示す。
【図15】図1のものと類似であって、その構成によって正確な平衡検出が可能になり、干渉読取り検出器間の位相シフトが正確に180°であるOCDR干渉計を示す図。図14のものと類似であるが、重ね合わせデバイスが異なって実施された構成を示す。
【図16】図15ものと類似であるが、2つの独立した測定ビーム経路を有する構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に、例示の目的のために、本発明が、添付図を参照しながらより詳細に説明され、本発明にとって不可欠な特徴も開示される。
図1は、SS OCDR向けの干渉計を概略的に示す。ビーム源Qからの放射は掃引され、その線幅は、例えば30pm未満であり、好ましくは26pm以下、あるいは別の実施形態では、好ましくは15pm未満、または13pm以下でさえある。そのようなビーム源は従来技術で知られており、例えば冒頭で既に示された米国特許出願第2006/0109477A1号に説明されている。したがって、この点に関して、この文献を参照する。例示的実施形態における眼Aである供試体P上の別々の部分領域T1およびT2を検出する目的で、干渉計Iが使用される。干渉計Iは、部分領域T1およびT2にある散乱中心の位置および散乱強度を全体的に検出するので、もちろん、眼の代わりに干渉計Iを使用して、何らかの任意の非生体の技術的構造も検出することができる。このように本説明が眼Aに対する適用に言及する限りでは、これは単に例示であって、限定するものと理解するべきではない。
【0049】
部分領域T1およびT2は、図1および図2に点として示されている。これは、単によりよい概要の説明のために用いられている。放射源Qの掃引により、もちろん、この部分領域は、放射の入射軸に沿って広がる範囲にわたって広がる。しかし、SS OCDRにおける最大の測定深さは、掃引される放射源Qの線幅によって限定され、部分領域T1および部分領域T2の両方が、1つの掃引手順で検出され得るほど十分には大きくない。部分領域間の間隔dは、この目的には広すぎる。例えば、約1μmの中心波長で10pm〜200pmの間の範囲の線幅を有する、掃引する放射源を使用した眼上の測定では、約35.2mmのスキャン深さが実施され得て、これは可能な眼の距離の一部分に対応するのみであり、そのため、軸方向にオフセットされた複数の部分領域は、眼に対する適用に対して有利である。
【0050】
レーザ・ビーム源Qの放射は、光ファイバ1を介してカプラKに導かれ、カプラKは重ね合わせデバイスとして作用し、この後、より詳細に説明される。カプラKは、光ファイバ1からの放射の一部分から、基本的には光ファイバ2によって実現される参照ビーム経路Rへ分岐させ、光ファイバ2の終端には(例えばファイバの末端反射によって)ミラー・デバイスが設けられる。光ファイバ1からの放射の別の部分が、光ファイバ4で始まる測定ビーム経路Mに供給される。
【0051】
しかし、カプラKは、干渉計Iに対してこのように光源ビームを供給するレーザ源Qの放射の結合ばかりでなく、むしろ測定ビーム経路Mから戻る測定放射および参照ビーム経路Rから戻る参照放射の分配および重ね合わせも引き起こす。カプラKは、参照ビーム経路Rからの参照放射を光ファイバ4からの測定放射と重ねて、重ねられた放射を光ファイバ3へ出力し、また光ファイバ5へ同一の小部分を出力する。このようにして干渉状態になった信号は、検出器D1およびD2によって収集され、その後、差動増幅器13を使用して平衡検出によって増幅される。
【0052】
カプラKの物理的特性のために、各検出器D1およびD2は、参照ビーム経路からの放射と重ねられた測定ビームの混合光を受け取り、個別の測定ビームは、参照ビーム経路Rからの放射との重ね合わせのとき、カプラの入力IIIと入力IVとの間の相対位相シフトを経験している。個別の測定ビームは、等しい小部分で混合光に含まれる。
【0053】
したがって、カプラKは、元のビームの分割ならびに測定放射と参照ビームとの重ね合わせのどちらに対しても活動状態である。測定放射は、(この後説明されるように)個別の測定ビームからなる。カプラは端子I〜端子VIを有する。
【0054】
光ファイバ6に結合される放射は現行の構成ではこれ以上使用されないので、端子Iに供給された放射は、カプラKによって、例えば端子IIに80%、端子IVに20%、また端子VIに0%伝導される。
【0055】
端子IVで戻る測定放射は、20%が端子Iへ、すなわち光源へ伝導され、カプラKによって端子IIIおよび端子Vへそれぞれ40%ずつ戻る。測定ビーム経路の放射線強度の80%は、このように干渉のために利用される。
【0056】
端子IIに供給される放射は、端子IIIへ10%、端子Vへ10%、また端子Iへ80%が伝導される。
図1の干渉計Iは、このように高い割合で測定ビーム経路からの放射を使用するが、レーザ・ビーム源Qが光ファイバ1に供給する強度の20%しか使用しない。大きな測定信号損失を補償するより、高パワーのレーザ・ビーム源Qを使用する方がはるかに簡単であるため、これは全く問題にならない。カプラKの構成により、比較的大きな強度超過の放射が参照ビーム経路Rに供給されるので、この放射は、さらに別のやり方で、例えば、レーザ・ビーム源Qのスペクトルの較正のために、あるいは信号記録を起動するために使用することができる。
【0057】
測定ビーム経路Mは、光ファイバ4で始まる。次いで、測定ビーム経路Mは、測定ビーム経路Mから戻る放射が、参照放射に対するその偏光特性に関して適合されることを保証する偏光制御器7を備え、その結果、最大の干渉能力がもたらされる。
【0058】
測定ビーム経路Mの供試体Pに伝導された放射は、モノリシックのビーム・スプリッタ8を使用して光ファイバ4から分割され、ビーム・スプリッタ8は、前述の個別の測定ビームM1およびM2を供給し、それらは互いに対して遅れる。この遅延は、この後より詳細に説明されるモノリシックのビーム・スプリッタ8により、個別の測定ビームM1およびM2向けの別々のガラス経路で達成される。この遅延は、眼A上の領域T1とT2との間隔d(カプラから供試体への往復)に合わせられる。このタイプの測定ビーム経路Mの均一な全長は、参照ビーム経路Rの距離に合わせられる。
【0059】
その上、モノリシックのビーム・スプリッタは異なる合焦ももたらし、すなわち、最終的に、個別の測定ビームM2が領域T2に合焦され、個別の測定ビームM1が領域T1に合焦されることを保証する。この後より詳細に説明されるように、これはモノリシックのビーム・スプリッタ8によって達成され、モノリシックのビーム・スプリッタ8の出力側で、個別の測定ビームM1およびM2に対して別々の屈折表面が効果的である。
【0060】
個別の測定ビームM1またはM2など、個別の測定ビームのうちの1つを遮断することができるように、阻止要素として、例えば可動ストップ24が任意選択で設けられ、特定の個別の測定ビームを遮る。個別の測定ビームM1を消すために、ストップ24は、モノリシックのビーム・スプリッタ8によって個別の測定ビームM1を供給される瞳領域を遮蔽するように実施される。それと対照的に、個別の測定ビームM2に対して、別の、あるいは追加のストップ24が設けられ、このストップはリング遮蔽の形で実施されて、個別の測定ビームM1が通過することだけを許容する。
【0061】
図では、既に構造的または機能的に説明された要素に相当する要素には同一の参照符号が与えられており、したがって、任意選択で再び説明されない。
この時点まで、掃引される光源を有するSS OCDR向けの例示的実施形態が説明されてきた。しかし、放射源Qとして超発光ダイオード(SLD)などの広帯域の光源が使用され、検出器Dが分光計として実施されると、ショート・コヒーレンス干渉計装置のSD OCDR変形形態が得られ、これは、説明された利点を同様に有する。直交成分測定用に複数の分光計を有する干渉計装置は、米国特許出願第2004/0239943号から知られている。広帯域の光源Qが維持され、また、その光路長を迅速に変化させることができるように参照アームRが実施される場合、干渉計装置のTD OCDR変形形態が実施される。参照アームの光路長を迅速に変化させるのに適当な装置(高速走査光遅延線、RSOD)は、例えば米国特許第6654127号に説明されている。
【0062】
図2は、図1の干渉計の変更された構成を示す。ここでレーザ・ビーム源Qの放射のより優れた利用がもたらされ、その結果、例えば、レーザ・ビーム源Qのパワーまたは線幅、掃引範囲、および掃引速度のような境界条件の、安全性に動機付けられた制限がこれを示す場合、すなわち、特に低パワーのレーザを扱うことが所望である場合、図2の構成は特に有効である。
【0063】
構造および/または機能において図1の干渉計Iの要素に対応する図2の干渉計Iの要素には同一の参照符号が与えられており、もう一度説明されることはない。このことは、すべての図に当てはまる。図2による干渉計Iは、基本的に2つの態様において図1に示された構成と異なる。1つは、測定ビーム経路Mが異なって実施されていることである。もう1つは、図2に示された構成には、検出器D1およびD2の差動読取りがなく、したがって平衡検出がないことである。
【0064】
測定ビーム経路Mの差異は、カプラKが、光ファイバ1からのレーザ・ビーム源Qの光源ビームを、光ファイバ4(すなわちカプラKの端子IV)および光ファイバ6(すなわちカプラKの端子VI)の両方へ結合するという事実に基づく。したがって、個別の測定ビームの生成は、従来型の共通の測定ビームから実行されるのでなく、むしろ、この場合カプラKであるビーム・スプリッタ・デバイスで直接もたらされる。図1に関して既に説明されたように、個別の測定ビームM1、M2は、それぞれ偏光制御器7.1または7.2を介して伝搬し、このことは、最後に、個別の測定ビームが互いに同一の偏光方向を有し、また、とりわけ供試体Aから戻った後に参照ビームRと同一の偏光方向を有することを保証する。レンズ9.1および9.2は、供試体の特定の領域T1およびT2の上に個別の測定ビームが合焦されることを保証する。
【0065】
個別の測定ビームが通過する経路長は互いに等しく、すなわち、カプラKの端子IVから領域T1までの光学距離が、端子VIから領域T2までの光学距離と等しい(また、この両方が参照ビーム経路Rの光学距離と等しい)。これは、光ファイバ4、6の別々のループによって図2に概略的に示されている。
【0066】
カプラKの結合係数は、以下の図2の干渉計I向けの好ましい実施形態のように、端子Iに供給された光源ビームの分配は、端子IIに60%、端子IVおよびVIにそれぞれ20%である。光源ビームの強度、すなわちレーザ・ビーム源Qのパワーは、このように40%利用され、したがって図1の干渉計Iより2倍優れている。
【0067】
端子IVに戻る個別の測定ビームM1は、端子IIIに80%、端子Iに20%伝導される。端子Vに生じるフィードバックは0%である。これは、端子VIでの個別の測定ビームM2についても同様に当てはまり、その80%が端子Vへ、したがって光ファイバ5へ伝導され、また、20%が光源へ、すなわち端子Iおよび光ファイバ1へ戻る。不利な作業で、0%が端子IVと端子Vとの間でしか実施され得ない場合は、5%以下(具体的には4%)の結合度も用いられ得る。次いで、端子VIと端子Vとの間の結合度は、対応して80%から下がる。
【0068】
したがって、個別の測定ビームM1およびM2の強度は、特定の関連付けられた検出器D1およびD2に80%伝導される。
端子IIは、端子Iへ60%、端子VおよびVIへ20%、また、端子IIIおよびIVへ20%結合される。
【0069】
検出器D1およびD2を用いた個別の検出により、特定の領域T1またはT2で、それぞれ他方の特定の領域から干渉の影響を受けることなく、散乱強度を検出することが可能になる。1.05pmの波長、2mWの供試体、および5mWを送出する光源で、レーザ放射の上限から始める場合、カプラKによるエネルギー割当ては特に有利である。そのとき、検出器D1およびD2が光ファイバ3および5を介して接続されている端子IIIおよびVへの放射の、説明された対称的分配が最適である。
【0070】
図2のカプラKは、もちろん、入力IVおよびVIの光学的放射を、入力IIの参照ビーム経路からの放射と別々の相対位相調整で重ねて、それぞれ入力VおよびIIIへ混合光として中継する、といった図1に関連して既に説明されたカプラの特性を有する。したがって、この場合も出力Vで混合が行われ、端子VIの信号が端子IIの信号と重ねられ、また、端子IVの信号が端子IIの信号と重ねられる。端子VIおよびIVの両方で、混合光中の信号は、別々の相対位相調整で端子IIからの参照放射と重ねられる。
【0071】
しかし、図1のカプラKとは対照的に、図2のカプラは非対称の混合光をもたらし、そこでは、端子VIまたはIVのうちの1つからの信号が、混合光中に不均衡な、具体的には90%または95%を上回る小部分を有する。この結果、図2の構成において、参照放射と重ねられた光ファイバ6からの信号は、光ファイバ5に90%または95%含まれ、その一方で、別の相対位相調整で参照放射と重ねられた光ファイバ4からの信号は、10%または5%しか含まれない。このことは、主に光ファイバ4および2からの重ねられた信号を伝導する光ファイバ3に対して同様に当てはまる。したがって、図2は、カプラKの出力VおよびIIIで不均一に構成された混合光に関する1実施例を示す。
【0072】
図3は、図1および図2の干渉計構造体を概略図に示す。概略的に図示された干渉計Iでは、参照符号Vは遅延経路を示し、参照符号Oはレンズを示し、参照符号Fはファイバを示し、また、参照符号Aは出力を示す。検出器Dおよび個別の測定ビームMに関して図1および図2に基づいて既に行われたように、特定のインデックスは、特定の個別の測定ビームへこれらの変数を関連付ける。このことは、供試体P上で検出される領域T1、T2、...、TNに対して同様に当てはまる。
【0073】
レーザ放射光源Qによって光ファイバ1に供給された元のビームの一部分は、ファイバ・カプラK(複数のカプラの組合せによっても実施することができる)を使用して、光ファイバF1、F2、...、FNの中へ、個別の測定ビームM1、M2、...、MNに分割される。このように、光学手段によって、それぞれの個別の測定ビーム経路に個別の遅延v1、v2、...、vNが生じ、その結果、カプラKから供試体の特定の領域T1、T2、...、TNまでの光学距離は、すべての個別の測定ビームM1、M2、...、MNに関して等しい。個別の測定ビーム経路中の対応するオプティクスO1、O2、...、ONは、検出されるべき部分領域T1、T2、...、TNを照射し、後方散乱光を吸収して、それをファイバFおよびカプラKに中継する。
【0074】
遅延vは、図3の概略図にオプティクスOと無関係に示されている。順序、例えば遅延vとオプティクスOとの順番は、とりわけ独立しており、オプティクスO中で遅延vが生じることもある。もちろん、別々の遅延および別々の長さのうちの少なくとも一方を有するファイバFも、遅延をもたらすことがある。
【0075】
それぞれの個別の測定ビームM1、M2、...、MNに対して測定ビーム経路Mの構成が選択され、その結果、カプラKに戻る個別の測定ビームが、参照ビーム経路Rからの放射と干渉することが可能になり、すなわち、具体的には十分に類似の偏光状態を有する。可能な偏光制御器は、図3には示されていない。
【0076】
その一方で、図1および図2に基づいて既に説明されたように、遅延ラインは、カプラKから供試体の検出されるべき領域へのすべての個別の測定ビームに対する光学距離が等しくなるように選択されている。しかし、遅延ラインは、個別の測定ビームの光学距離が、参照ビーム経路Rの参照ビームの光学距離と等しくなるようにも選択されており(もちろん、このことは図1および図2にも当てはまる)、というのは、そのように選択されたときのみ、重ねられた個別の測定ビームと参照ビームとの干渉が可能になるからである。この重ね合わせはカプラKによって実行され、また、カプラKは、個別の測定ビームM1、M2、...、MNを供給し、これらが参照ビームの小部分と重ねられて干渉状態になって特定の出力A1、A2、...、ANとなり、そこで、対応する検出器によって記録されて、解析ユニット10によって読み取られる。もちろん、カプラKが、出力A1、A2、...、ANに、それぞれが別々の相対位相調整で参照放射と重ねられた個別の測定ビームの混合光を再び伝導するので、混合光は、等しい小部分(任意選択で、平衡検出のための差動読取りが実行される)から、1つまたは複数の個別の測定ビームの大幅に不均衡な小部分まで変化させることができる。いかなる特定の分割、小部分または混合光の構成も、ここで説明される限り、それらは限定するものとして理解されるべきではなく、むしろ単なる例示として理解されたい。
【0077】
図3の干渉計Iの概略図によって、2つの個別の測定ビームを有する図1および図2の説明が限定的でないことが明らかになる。むしろ、個別の測定ビームの数は任意に選択することができ、Nに対する上限が2である必要はない。
【0078】
もちろん、遅延のうちの1つを、対応して設定された供試体Pへの距離または参照ビーム経路における距離(例えばミラーSへの距離)で置換することができる。レーザ・ビーム源Qのスキャン深さの向上に関連して領域Tの間隔を制限することにより、さらなる遅延ライン数の低減を達成することができる。
【0079】
個別の測定ビーム検出の所望の高性能を保証するために、カプラKは、ファイバFへのすべての出力に関して、元のビーム(すなわちファイバ1)と特定のファイバFとの間に50%未満の結合が与えられるように設計される。
【0080】
干渉計Iは、個別の測定ビームの高効率解析のためのここで説明された構成を達成し、その構成では、ビーム・スプリッタ・デバイスが、強度に関して非対称に参照ビーム経路/測定ビーム経路へ光源ビームを結合し、また、測定ビーム経路を検出器入力へ結合する。具体的には、光源ビームが個別の測定ビーム経路へ分割される結合度は、反対方向で個別の測定ビーム経路と関連する検出器への供給との間に50%を上回る結合を達成するために、50%未満に低減され得る。
【0081】
カプラKにおける個別の結合係数は、さらに各様に実施されてよい。図4は1実施例を示しており、ここでは、実線は結合度の合計の80%を示し、一点鎖線は結合度の合計の20%を示す。結合度の合計は、この出力で、すべての、付随して印の付いた、出て行くビームに関する結合度の合計である。光源ビームを導く光ファイバ1からの放射は、したがって、80%が光ファイバ2へ結合され、光ファイバFへは結合度の合計の20%が結合される。それぞれの個別の光ファイバFが、この20%の小部分を等分したものを含む。FとAとの間の特定の結合、すなわち、個別の測定ビームの、参照ビームと重ね合わせるときの特定の検出器への伝達は、せいぜい、1から結合度の合計を引いたものであり得て、この伝達で、光源ビームがファイバに分配される。この結合度を低減することにより、非常に高い信号強度を検出器で達成することができ、その結果、ほとんど分離された信号が部分領域に関して検出される。
【0082】
図4の構成はデュアル・ビーム干渉計を得るために変更することができ、デュアル・ビーム干渉計は、図5に概略的に示されている。ここでは、供試体を構成していない静止した参照アームからの参照放射とではなく、個別の測定ビームの間で干渉が生じることが必要である。ここで、破線は、結合度の合計の約40%を示す。したがって、それぞれの個別の測定ビームは、もう一方の個別の測定ビームの一部分とここで混ぜられる。
【0083】
例えば3つの個別の測定ビーム(N=3)を有する干渉計Iでは、出力A1で、個別の測定ビームM1が40/3%生じ、個別の測定ビームM2も40/3%生じ、個別の測定ビームM3も40/3%生じる。これは、さらなる出力に対して同様に当てはまる。
【0084】
個別の測定ビームは、それぞれが互いに重ね合わされて出力Aに供給される。したがって、結合された部分領域信号が検出され得て、それらは、部分領域要素の間で別々の位相関係を有する。したがって、解析デバイス10は、例えばフーリエ領域OCTで生じることがあるミラー・アーチファクトを低減するために直交成分を検出することができる。これは、図4による構成に対して、同様に当てはまる。
【0085】
図5の構成では、部分領域信号間の相互干渉だけが検出され、その結果、静止した参照アームからの放射とでは干渉が生じないので、干渉信号は、供試体Pの軸方向移動と無関係である。
【0086】
図6に示された構成において、一方では、2つの個別のカプラK1およびK2によってカプラKが実施される。他方では、この態様で既に引用された米国特許出願第2006/0109477A1号における異なったタイプの干渉計に関して既に説明されたように、平衡検出が実行される。この平衡検出の原理は、とりわけ、対に結合された信号が位相シフト(例えば約180°)を有し、したがって、差動増幅器13および14を使用した差分解析が、いかなる直流の光成分(例えばレーザ放射光源Qの強度の変化または干渉する放射)も除去するということである。図6は、2つの測定ビームに関する実施例を示し、もちろん3つ以上の測定ビームを有する変形形態も可能である。図3は、結合係数に関して先の図と同一の方式を用いており、実線は、特定の端子で始まる結合度の合計の80%に相当し、破線は、特定の端子で始まる結合度の合計の40%に相当し、一点鎖線は、特定の端子で始まる結合度の合計の20%に相当する。
【0087】
図7は、測定ビーム経路にスキャナ12が設けられた改良を示し、スキャナ12は、3次元領域Tを検出するために、例えば個別の測定ビームを横方向に偏向する。したがって、別の個別の測定ビーム(例えば偏向されなかったもの)と結合すると、もう一方の供試体領域の3次元偏向の座標システムが関係し得る参照点を検出することが可能になる。したがって、例えば眼である供試体Pのいかなる軸方向移動も補償され得て、3次元サンプリングのデータが壊れることがない。
【0088】
さらに、参照点も、その軸方向の位置に関して検出するばかりでなく、むしろこの個別の測定ビームの個別の測定ビーム経路に設けられるさらに独立したスキャナによって3次元で検出することができ、その結果、供試体の3次元の運動は、信号を測定するのに、別のスキャンされた供試体領域に対して補償され得る。
【0089】
しかし、図7の構成は、基本的に図6の構成を実施するものであり、個別の測定ビームM2および任意選択で個別の測定ビームM1も、それぞれ独立したスキャナ12(および15)を使用して(それぞれ)偏向される。解析ユニット10は、対応するスキャナの信号を記録し、差動増幅器13および14によって出力された信号を、スキャナ信号を考慮しながら、供試体の運動に関して、それに応じて補正された画像へと結合する。
【0090】
もちろん、スキャナのこの用途も、説明された干渉計Iのうちの任意のものに使用することができる。これは、デュアル・ビームの手法向けのスキャナの使用を示す図8に概略的に示されている。したがって、スキャン・デバイスは、個別の測定ビームのうち少なくとも1つに対して効果的である。眼の用途に関して、これによって、その対眼レンズに関する結像も、その対眼レンズの形状(レンズの傾斜、すなわち光学軸と視軸との間の角度、後方のレンズ表面の曲率、前方のレンズ表面の曲率)の測定を含んで可能になる。網膜の領域、具体的には窩の領域での結像も可能である。
【0091】
最大の角膜反射に位置合わせした静的な個別の測定ビームの使用は、眼の測定では特に有利であり、その一方で、第2の個別の測定ビームは、網膜構造の空間分布を記録するために横方向に偏向され、例えば、結像(デュアル・ビームOCT)または網膜上の特定の参照点に対する眼の長さの測定に特に有利である。横方向のスキャンに関して、眼の長さの周波数分布の簡単な測定も、眼を特徴付けることができる情報を送出する。これらの変形形態は、白内障の事例では重要であり、患者にとって固定するのはもはや不可能で、眼の長さは、空間的に解いて求めること、および統計的に求めることのうちのいずれか一方が必要である。
【0092】
次に図9aを参照すると、モノリシックのビーム・スプリッタ8の構成が説明される。このビーム・スプリッタは、光ファイバ4によって供給されたビームを2つの個別ビームに分割する目的で使用され、2つの個別ビームは、何らかの後の干渉を基準にしてそれぞれに対して軸方向にオフセットされ、また、任意選択で、間隔aだけ離間された別々の焦点に束ねられる。復帰経路では、すなわち供試体Pから離れて伝搬する放射のために、ビーム・スプリッタ8が測定ビーム経路を再び結合する。
【0093】
ビーム・スプリッタ8は、光ファイバ4の終端に出るビーム束18を受け取り、ビーム・スプリッタ8のガラス体17によって構成された第1のレンズ面L1を使用して、それを視準する。次いで、このようにして視準された放射は、出力側に瞳分割を有するガラス体17を通過する。この目的のために、光学軸に沿って伸びる穴18が、対向するレンズ面L2に導入される。穴基部19にて出る放射は、ガラス経路を通過し、レンズ面L2で出る放射より穴18の深さtだけ小さい。これは、個別ビームの互いに対する遅延をもたらす。したがって、この遅延は、ガラス体17(もちろん、いかなるレンズ対応の材料も用いることができる)の穴18の深さtの光路に相当する。
【0094】
図9aでは、個別の測定ビームは、別々の焦点コーン20および21に出る。この異なる合焦は、レンズ表面L2および穴基部19の別々の回折特性によってもたらされる。このように達成された瞳分割の異なる回折特性は、焦点22および23が間隔aによって別々に離間されるという結果を有する。焦点距離および遅延は、レンズ表面および穴深さによって互いに無関係に設定され得る。
【0095】
もちろん、図9aに示されたような合焦は、例示としてのみ理解されるべきである。例えば、穴基部が平坦に実施されると、この瞳部分から出る個別ビームは、平行になり、かつ/またはレンズ面L1によってもたらされた同一の伝搬方向を有することもあり得る。
【0096】
図9bは、ビーム・スプリッタ8の変更も可能であることを示す。この目的のための、様々なビーム・スプリッタ8.1、8.2、および8.3がリボルバ・ホイールWに取り付けられ、必要な特定のビーム・スプリッタが、ビーム経路のピボット上に取り付けられ得る。様々なビーム・スプリッタ8.1、8.2および8.3は、深さtの光路によってもたらされる遅延に関して異なる。
【0097】
ガラス体17の第1および第2の面がレンズ面としてではなく平面として実施されると、結像ビーム・スプリッタ8の代わりに非結像ビーム・スプリッタも使用され得る。
図10から図12は、ファイバ・カプラKの概略図を示す。図10には3×3のカプラが示されており、これは端子I〜VIを有して、一方の側にI、IIIおよびIVがあり、反対側のII、IVおよびVIとの対応する結合をもたらす。
【0098】
図11は、図10のファイバ・カプラKの変更形態を示し、これでは、3つのファイバが部分的に融合されるのではなく、むしろ2×2のファイバが用いられている。この態様から既に複数回引用されている米国特許出願第2006/0109477A1号に既に説明されているように、3×3のカプラは、このように置換することができる。
【0099】
そのような結合された2×2のダブレットを使用するのであれば、個別の測定ビームの強度が異なる場合については、より高感度の経路IV→IIIにおけるクロストークを回避するために、説明された実施形態に示されるように、経路VI→Vによって著しく強い個別の測定ビームを導くことが推奨される。眼の干渉計測定では、著しく強い信号は、一般に角膜からのものであるのに対して、より高感度の信号は、網膜上の測定領域から生じる。
【0100】
平衡検出を用いるために、図12に示されるように、VI→VとIV→IIIとの間に40%のクロス・カップリングを有するカプラKが有利である。物理的実施形態が、図12の斜視図に示されている。したがって、結合経路V→IVの進路は、経路II→IVと経路I→IIとで測られる面の上に折り畳んで置かれている。
【0101】
図13は、図1の構成と類似の構成を示し、いわゆる正確な平衡検出がここで実行され得て、すなわち、混合光は、対称に、あるいは釣り合って構成される。
図13の構成では、破線を用いて描かれたボックスによって一方に示されており、光ファイバ4が、様々に実施されて位置している適用モジュール25に非常に広く入力することができ、適用モジュール25は、光ファイバ4から始まる測定ビーム経路から個別の測定ビーム経路を分割する。図13の上のボックスに示された変形形態では、この目的のために第3のカプラK3が使用されており、これは個別の測定ビーム経路の分割および結合を実行する。下側のボックスに示された図13の適用モジュール25の構成は、図9aのビーム・スプリッタを使用するが、既に説明された変形形態には、8の部分の上に光学面がない。カプラK1およびK2は連帯でカプラKを実施し、カプラKは、基本的に図1のものに相当する。カプラK2は、50−50のカプラまたはスプリッタとして実施され、それによって光ファイバ5および3の混合光が対称に構成され、すなわち、それぞれが参照ビーム経路との重ね合わせに関して180°の相対位相シフトを有する等しい部分で、測定ビーム経路M1およびM2からの放射を含む。
【0102】
その上、カプラK1とK2との間の接続光ファイバ26を使用する2×2のカプラ・ダブレットからのカプラKの構成を通る可能性が存在する。これによって、ある種のサーキュレータを実施することが可能になる。放射源Qからの元の放射が直線的に偏向され、4分の1波長のユニットが光ファイバ26に組み込まれると、循環的に偏光された放射が測定ビーム経路Mに到達する。光ファイバ26を通って光ファイバ1へ戻る、したがって光源Qへ戻る放射は、結果として元の放射に対して垂直に偏向される。これは、光源Qの、乱されない、安定した稼働にとって良いことであると判明した。また、ここでは、光源から来る光に対して光路26に直交偏光状態が達成されるので、任意選択で光路26にファラデー回転子を使用することも有利である。
【0103】
図14は、図13の構成の変更形態を示す。ここでは、参照放射は、光ファイバループによって、すなわち光ファイバ2と6との接続によって供給される。これは、伝達に役立つ参照として示すことができる。伝達に役立つ参照アームは、検出器上に設定する信号を試験する目的で、固定または可変の減衰要素も含むことができ、あるいは可変減衰を実現するように実施することができる。図13に対してなされた記述は、他の点では図14の構成に対して同様に当てはまる。
【0104】
最後に、図15に示された構成は、実質的に図14の構成に相当するが、カプラK2とK1との順番が、光ファイバ26への接続に関して逆になっている。元の放射は、再び、先ずカプラK2に達するが、そこから測定ビーム経路に直接入り、もちろん、ここで再び伝達に役立つものとして実施される参照ビーム経路にも入る。
【0105】
最後に、図16は図15に類似の構成を示すが、ここではカプラK2は3×3のカプラとして構成され、その結果、カプラK2は、端子IV.1およびIV.2によって2つの個別の測定ビーム経路へ直接分割する。
【0106】
前述のように、個別の測定ビーム経路は、それらの光路に関して、検出されるべき供試体領域の間隔に適合される。光路のみの調整に加えて、測定ビームに関する拡散も、別個に供試体の状態に合わせることができる。この目的のために、測定ビーム経路に、適当な媒体が個々に導入され、この媒体は、光遅延が不変の拡散に影響を及ぼし、その結果、測定ビームが通過する供試体領域の影響が個々に補償される。
【0107】
これも既に述べたように、前述の実施形態は、完全に本質的にSS OCDR、SD OCDR、またはTD OCDR向けに実施することができる。後者の事例では、効果的な参照アーム長さの調整がもたらされる。図1、図2、図6、図7、図13、図14、および図15の説明において参照ビーム経路の放射の遅延を調整するためのデバイスが、Rで示された参照ビーム経路にもさらに設けられ、例えば、RSODは、米国特許第6654127号または経路長調整によって既に示されている。類似の要素が、図4および図16で光ファイバ2の端子に設けられている。あるいは、例えば可変光減衰器(VOA)またはドープされたファイバ要素を使用して、参照アームの参照放射を設定できる減衰を実行することも可能である。したがって、非常に大きな減衰を容易に達成することができ、これは、さらに調整することも可能である。これは、より適当なファイバ結合比の選択に対する代替および微調整のための補足追加の両方を表す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試体、具体的には眼の、軸方向に離間された複数の領域を測定するためのショート・コヒーレンス干渉計装置に関し、この装置は、複数の個別の測定ビームが通って供試体上に入射する少なくとも1つの測定ビーム経路と、個別の測定ビームに重ねられて個別の測定ビームと干渉状態になる参照放射が通って導かれる1つの参照ビーム経路とを有し、個別の測定ビームは、供試体上に入射するとき、軸方向の間隔に適合した量だけ軸方向に互いにオフセットされ、干渉計装置は、供試体から戻るそれぞれの個別の測定ビームを参照放射と重ねて干渉を引き起こす重ね合わせデバイスを有する。
【0002】
その上、本発明は、供試体、具体的には眼の、軸方向に離間された複数の領域を測定するためのショート・コヒーレンス干渉計装置に関し、この装置は、複数の個別の測定ビームが通って供試体上に入射する少なくとも1つの測定ビーム経路を有し、個別の測定ビームは、供試体上に入射するとき、軸方向の間隔に適合した量だけ軸方向に互いにオフセットされ、この干渉計装置は、個別の測定ビームのうちの少なくとも2つを互いに重ねて干渉を引き起こす。
【背景技術】
【0003】
光コヒーレンス・トモグラフィを用いる光学的結像のためのそのようなショート・コヒーレンス干渉計装置は、例えば国際公開第2007/065670A1号パンフレットから知られている。最初に述べたタイプは、分離した参照光に対してそれぞれの複数の測定ビームの干渉を引き起こすものであり、2番目に述べたタイプは、対になった複数の個別の測定ビームを重ねるもので、いわゆる「デュアル・ビーム」干渉計として示されている。
【0004】
人間の眼などの小型光学部品または生体組織などの供試体の内部散乱中心の位置およびサイズを検出する目的で、光コヒーレンス領域反射率測定(Optical coherence domain reflectometry:OCDR)が用いられる。光コヒーレンス・トモグラフィに関して、具体的には光コヒーレンス領域反射率測定に関して、対応する文献の概要を得るために、米国特許出願第2006/0109477A1号を参照する。この特許出願は、とりわけ本発明の発明者によって考案されたものであり、光コヒーレンス・トモグラフィの基本原理も扱っている。迅速に走査する参照アームを用いる時間領域OCDR(Time domain OCDR:TD OCDR)ならびに固定参照アームおよびスペクトル干渉解析を用いるフーリエ領域OCDR(Fourier domain OCDR:FD OCDR)の変形形態は、OCDRで知られている。FD OCDRは、広帯域の光源および分光計ベースの検出を使用する種類(スペクトル領域OCDR(Spectral domain OCDR)すなわちSD OCDR)と、スペクトル的に掃引する光源および広帯域の検出器を使用する種類(掃引光源OCDR(Swept-source OCDR)すなわちSS OCDR)とに、再び区分される。
【0005】
光コヒーレンス・トモグラフィは、具体的にはFD OCDR形式のものは、測定エリアと測定分解能との固定された連係に問題がある。従来技術では、所望の分解能より幾何学的に数桁大きい領域における対象の測定を扱う多くの公開が知られている。そのような測定業務の1例に、人間の眼の上の領域の測定、例えば眼の前部(例えば角膜)上、および網膜上の両方の構造の検出がある。
【0006】
眼の前部および眼底における測定のための1つの手法に、国際公開第2007/065670A1号パンフレットから知られているものがあり、これは、それぞれが分離した参照アームおよび関連する測定アームから構成された複数の干渉計装置を熟練したやり方で結合する。1つのデバイスへ結合されたこれら複数の独立した干渉計装置の調整を変化させることにより、眼の様々なポイントで同時に測定を実行することが可能である。この公開は、例えば放射の偏光またはその波長に関して、結合された干渉計において放射を区別するための様々な手法を説明している。
【0007】
そのようなタイプの区別の1つも国際公開第01/38820A1号パンフレットに説明されているが、これは、参照アーム長さを調整するための可動部を必要とするFD OCDRしか述べていない。様々な長さの複数の参照アームを用いる原理も、米国特許出願第2005/0140981号パンフレットまたは米国特許第6198540号明細書に見いだされ、それぞれがOCDRを述べており、様々な距離の、個別に調整された複数の参照光経路を用いる。
【0008】
最後に、既に冒頭で引用された米国特許出願第2006/0109477A1号は、供試体の軸方向に異なって離間された複数の領域の検出が全くできず、むしろ、3×3の位相結合器を差分信号解析すなわち平衡検出と組み合わせて用いる、できるだけ大きな感度を述べている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
この従来技術から、したがって、本発明は、供試体の、軸方向に離間された複数の領域を検出することができるショート・コヒーレンス干渉計装置を提供するという目的に基づくものであり、FD OCDRのスペクトル分解などで用いられるOCDRの変形形態のパラメータに起因する測定エリアによって許されるものよりさらに遠くへ領域を離間することが可能であり、後方散乱だけが弱く検出され得る供試体におけるポイントでさえ、特に高い感度がさらにもたらされることになる。
【0010】
この目的は、本発明により、述べられたタイプのショート・コヒーレンス干渉計装置によって達成され、この装置の重ね合わせデバイスは、それぞれが検出器に入力する複数の出力を有し、この重ね合わせデバイスは、重ね合わせ用の同一の参照放射を受け取って、各出力に、参照放射と重ねられた複数の個別の測定ビームの混合光を出力し、各混合光は、様々な位相調整で参照放射と重ねられた個別の測定ビームの小部分を含む。
【0011】
したがって、本発明は、参照アームを1つだけ有する干渉計を使用する。このことは、有利な構造の単純化をもたらすばかりではない。さらに、複数の強い参照信号間の干渉が防止されるので、平衡検出と、複数の測定アームと、1つの共通の参照アームとの結合で高い信号感度が達成される。そのような干渉は、強く広範なアーチファクトをもたらすことになる。本発明によるコンセプトでは、せいぜい2つの弱い信号、すなわち測定アームからの信号の干渉が生じるだけである。2つの強い参照信号の干渉が回避される。
【0012】
その上、参照光成分が、顕著に、または主に寄与する散弾雑音などのノイズ成分の低減を達成することができる。散弾雑音は、最も大きなノイズ源(散弾雑音に限定された動作)であり、したがって、参照信号に対して測定信号が小さく、信号成分は、干渉する測定光光子の数と参照光光子の数との積に相当し、ノイズ成分が参照光光子の数に比例するので、信号対雑音比は、一般に、検出された測定信号光子の数に相当する。
【0013】
複数の参照アームを使用することによって参照光成分の数が増加すると、ノイズ成分は、参照光成分に含まれる参照光子の合計に対応して上昇する。しかし、信号成分は、依然として測定光光子と単一の適合された参照光成分の光子との積にのみ相当する。これは、個別の測定信号に関して、信号対雑音比が低下することを意味する。
【0014】
それと対照的に、1つだけの参照アームに適合した複数の測定信号を有する本発明による解決策により、不変の信号レベルで、1つの参照光成分のみによってもたらされる寄与にノイズを限定することが可能になる。
【0015】
したがって、例えば、従来技術では一般的なことであるが、測定信号に個別に適合された2つの同一参照信号を用いて2つの測定信号が測定されると、散弾雑音に限定された信号対雑音比は、1つだけの参照信号を用いたもの(この信号に、2つの測定信号が個別に適合される)に対して2dBまたは3dBの係数だけ劣る。
【0016】
デュアル・ビームの変形形態では、上記の目的は、供試体、具体的には眼の、軸方向に離間された複数の領域を測定するためのショート・コヒーレンス干渉計装置によってさらに達成され、この装置は、複数の個別の測定ビームが通って供試体上に入射する少なくとも1つの測定ビーム経路を有し、個別の測定ビームは、供試体上に入射するとき、軸方向の間隔に適合した量だけ軸方向に互いにオフセットされ、この干渉計装置は、個別の測定ビームのうちの少なくとも2つを互いに重ねて干渉を引き起こし、この干渉計装置は、2つの個別の測定ビームのそれぞれを、干渉させるやり方で他方と重ね、次いで、それぞれを、関連する分離した検出器へ伝導する。
【0017】
したがって、本発明は、重ね合わせデバイスの後の関連する検出器で干渉信号が生じるように軸方向に個別に遅らせた個別の測定ビームを用いる。混合光中の個別の測定ビームは、干渉を引き起こすために、それぞれ参照ビームを用いて重ねられ、参照ビームは、混合光のそれぞれの個別の測定ビームに対して個々に異なる位相で重ねられる。この手順により、干渉計装置において、感度の向上および直交成分の割出しのうちの少なくとも一方のための平衡検出がさらに可能になる。雑音抑圧のための平衡検出の利点は、例えば、ポドリーヌ(Podoleanu)、Appl.Optics 39、173(2000)、“Unbalanced versus balanced operation in an optical coherence tomography system”に、広範囲にわたって説明されている。その上、個別の測定ビームの軸方向の測定範囲よりはるかに大きい間隔で軸方向に離間された供試体の領域が、分離した個別の測定ビームによって同時に検出され得る。
【0018】
そうする際に、最大の信号品質を達成するために、個別の測定ビームの合焦状態および偏光状態ならびに拡散特性を、供試体の、特定の関連付けられた軸方向の測定領域に適合させることが可能である。ミラー・アーチファクトを抑制するためのフーリエ領域の光コヒーレンス・トモグラフィ(FD OCDR)向けの干渉計において、目標を絞って拡散条件を適合させることの利点は、本発明者が寄与した米国特許出願第2006/0171503号に説明されている。
【0019】
測定放射は、好ましくは、SS OCDRを実行するために実施されるビーム源から生じるものであり、すなわち調整可能である。しかし、本発明は、一般に、SD OCDR(掃引されない放射のスペクトル解析を用いる)向け、およびTD OCDR(干渉計における干渉条件の掃引、例えば参照ビーム経路の距離の調整を用いる)向けのうちの少なくとも一方において可能であり、実施され得る。
【0020】
個別の測定ビームの分割は、重ね合わせデバイスが、ビーム源によって与えられる光源ビームからの測定ビーム経路と参照ビーム経路とを分割を有した後に、共通の測定ビームから実行することができる。この変形形態については、好ましくは測定ビームを供給するビーム源が設けられて光源ビームを出力し、また、重ね合わせデバイスが、この光源ビームの一定の強度の小部分を測定ビーム経路と参照ビーム経路とに分割するとの前提がある。
【0021】
供試体への経路における個別の測定ビームの分割および供試体からの復帰経路における再結合は、測定ビーム経路で(のみ)起こり得る。レンズ・デバイスは、この目的に特に有利に用いられ、これは、測定放射を個別の測定ビームへ分割し、それらの測定ビームを互いに軸方向へオフセット(遅延)させ、また、供試体上に様々な焦点距離でそれらを合焦する。
【0022】
レンズ・デバイスが、瞳分割を用いて個別の測定ビームを供給する場合、特にコンパクトなレンズ・デバイスが得られ、レンズ・デバイスの分離した瞳領域は、それぞれの個別の測定ビームおよび光学距離、ならびに任意選択で別の瞳領域の結像特性にも関連付けられる。
【0023】
そのようなレンズ・デバイスは、独立した発明としてレンズ装置またはレンズ・デバイスを提供することができるように、説明されたショート・コヒーレンス干渉計装置とは無関係にも実現可能であり、これは、供給されたビーム束を個別ビーム束に分割し、個別のビーム束を互いに対して遅らせ、また、任意選択で、それらを別々に合焦させて出力し、このレンズ装置は、分割された瞳(それぞれの個別のビームの束、および光学距離、拡散、ならびに任意選択で、分離した別の瞳領域におけるレンズ装置またはレンズ・デバイスの結像特性にも関連付けられた分離した瞳領域)を有する。
【0024】
2つのレンズ表面およびガラス体の光軸に沿って通る穴を有するガラス体を有するレンズ装置またはレンズ・デバイスで、レンズの片方の面を改良すると特に都合が良い(もちろん、ショート・コヒーレンス干渉計装置の範囲でも改良は可能である)。このように、ガラス体を通る様々な光学距離によって個別ビームが生じるので、穴の深さが、個別ビームの相互の遅延の原因となる。穴が導入される穴基部およびレンズ表面の光学的性質も異なってよい。いかなる差異も、個別ビームの合焦の変化をもたらす。
【0025】
したがって、レンズ装置またはレンズ・デバイスの設計では、独立して選択可能な穴深さならびに穴基部およびレンズ表面の幾何学的形状のパラメータによって、個別ビームの遅延および集束は、互いと無関係に設定および/または選択することができる。
【0026】
所望の光遅延および拡散条件のうちの少なくとも一方を達成するために、ガラス体の空洞を、存続するガラス本体と比較して異なる光学的性質、すなわち具体的には屈折率および拡散を有する材料で、完全に、あるいは部分的に充填する可能性も注目される。
【0027】
共通の測定ビームから、すなわち参照ビーム経路の分割後に、個別の測定ビームを生成することの代替に、重ね合わせデバイスが、光源ビームから個別の測定ビームを直接分割することがある。
【0028】
特定の強度比に従って重ね合わせデバイスでビーム分割を実行すること、すなわち、従来技術に多くの点で見られる偏光分離を実行しないことが、2つの理由で一般に好ましく、そのうち1つは、偏光スプリッタは高価な部品であり、したがって装置がより高くつくようになることである。もう1つの理由は、偏光分割された個別の測定ビームが、重ね合わせに際して同一の偏光状態を再び有するように、後で大変な努力を払って再び保証しなければならないことである。これは、具体的には、例えば眼のレンズを通過するとき、供試体の複屈折させる構造によって個別の測定ビームの偏光状態が変化する可能性がある供試体では問題がある。最後に、偏光分離も、決まって高々2つのスプリット・ビームに限定されるが、その一方で対照的に、例えばファイバ・カプラを用いることで可能な強度分割では、2つより多くのスプリット・ビームを生成することもできる。
【0029】
したがって、本発明の改良では、個別の測定ビームおよび重ね合わせデバイスが、光源ビームの特定の強度成分を個別の測定ビーム経路へ分割するために、測定ビーム経路が、異なる距離の個別の測定ビーム経路を有するのが好ましい。重ね合わせデバイスは、任意選択で、光源ビームの特定の強度成分を参照ビーム経路へ分割することができる。
【0030】
元のビームの、個別の測定ビームおよび(デュアル・ビーム形式を用いない場合)参照ビームへの分割は、例えば本出願の発明者のうちの1人が寄与した先に引用の米国特許出願第2006/0109477A1号に説明されているように、強度割当てに従って、3×3のファイバ・カプラまたは結合された2つの2×2のファイバ・カプラを用いて、特に簡単に実行することができる。この公開の開示内容は、そのようなファイバ・カプラの動作モード、構成、および能力に関する参照により、明確に本願明細書に援用する。
【0031】
重ね合わせデバイスは、その出力のそれぞれに、少なくとも2つの個別の測定ビームの混合光を出力し、この測定ビームはそれぞれ参照ビームと重ねられ、それぞれの個別の測定ビームに関して、重ね合わせで、参照ビームに対するそれぞれの個別の位相シフトが引き起こされ、この個別の位相シフトは、重ね合わせのとき、個別の測定ビームが、参照ビームに対して別々の相対位相調整を経験するという結果をもたらす。例えば前述の2×2のファイバ・カプラを用いると、位相シフトは180°であり、それによって、前述のように平衡検出が特に有利に実施され得る。
【0032】
したがって、各検出器は、複数の個別の測定ビームがそれぞれ別々の相対位相調整を用いて参照ビームと重ねられた混合光を受け取る。個別の測定ビームは、基本的には等しく混合光に寄与してよいが、混合光において、個別の測定ビームのうち1つが、具体的には90%を上回る不均衡な小部分を有する非対称の構成も可能である。もちろん、この小部分の増加によって、その他の1つまたは複数の個別の測定ビームが犠牲になる。
【0033】
測定領域信号を同時検出することにより、間隔を置く測定において、何らかの軸方向の供試体の運動に起因する位置誤差の補償が可能になる。そうしない場合のFD OCT上の軸方向の供試体運動の負の効果は、例えば、ユンら(Yun et.al.),Opt.Express 12,2977(2004),“Motion artifacts in optical coherence tomography with frequency−domain ranging”に説明されている。
【0034】
任意選択で、個別の測定ビーム、複数の測定ビーム、または1つを除いたすべての個別の測定ビームを遮る阻止要素を設けることができ、その結果、阻止要素が作動すると、個別の測定ビームのうち1つだけが、依然として参照ビームと重ねられる。
【0035】
個別の測定ビームの重ね合わせ(参照ビームとの重ね合わせ、またはデュアル・ビームの変形形態の場合には少なくとも1つの他の個別の測定ビームとの重ね合わせ)が、50%未満の損失を示す場合、特に高い検出精度が達成される。例えば、従来技術の手法では、偏光分割またはスペクトル分割が、そこにいっそう高い損失を引き起こすので、この特徴を実施することができない。
【0036】
検出器の各2つの差動読出しを用いて、特に高い感度が達成される。この前述の平衡検出も、米国特許出願第2006/0109477A1号に説明されており、その開示内容も、参照によって全体を本願明細書に援用する。
【0037】
干渉の信号品質、したがって供試体において弱く散乱する対象物さえ検出され得る感度は、もちろん、とにかく、干渉状態になる個別の測定ビームが有し得る干渉の度合いの関数である。例えば、知られているように、直交する直線的に偏光されたビームは互いに全く干渉することができないので、この目的にとって偏光状態はもちろん重要である。したがって、すべての個別の測定ビームに対して活動状態であって、個別の測定ビームの偏光状態を互いに等しくし、かつ/または(デュアル・ビーム形式を用いない場合)個別の測定ビームの重ね合わせの前に個別の測定ビームの偏光状態を参照ビームの偏光状態と等しくする偏光制御器を測定ビーム経路に設けるのが好ましい。重ね合わせに際して偏光状態の自動適合を実施するために、個別の測定ビーム中および参照アーム中にファラデー回転子が用いられてもよい。供試体中のファラデー回転子およびOCT干渉計の参照アームは、米国特許第7126693号に説明されている。
【0038】
個別の測定ビームとの重ね合わせのために、参照放射の偏光状態と等しくするために、個別の測定ビームへの測定ビームの瞳分割、および個別の測定ビームの偏光状態に対する供試体の十分に均一な影響とともに、好ましくは単一の偏光制御器が用いられる。
【0039】
光源ビームから個別の測定ビームが直接分割される実施形態については、生成されたそれぞれの個別の測定ビーム経路に、このように偏光制御器を設けることは有利であり、その結果、このように設けられた偏光制御器が、個別の測定ビームの重ね合わせの前に、個別の測定ビームの偏光状態を互いに等しくする。すべての個別の測定ビームが依然として共通に伝搬する測定ビーム経路の一部分における中央の偏光制御器とは対照的に、ここでは、それぞれの個別の測定ビームの偏光状態に対して個別の適合を実行することができる。デュアル・ビーム形式を用いない場合、この等化も、再び参照ビーム経路の偏光状態に適応される。
【0040】
掃引される放射源を用いたOCDR(SS OCDR)向けに、もちろん対応する実施形態が好ましいので、特に好ましくは説明された装置が実装される。
この装置によって、例えば、SS OCDRでは掃引された放射源のスペクトルの線幅により、TD OCDRでは干渉計の参照アームの調整経路により、また、SD OCDRでは検出のスペクトル分解能により、あらかじめ決められた許容測定範囲より、軸方向にさらに遠く離間された領域で供試体を検出することが可能になる。したがって、個別の測定ビームの軸方向のオフセットが、干渉計装置の掃引範囲ならびにスペクトルの分割および検出によってそれぞれ与えられた測定範囲より大きいことが好ましい。
【0041】
もちろん、ここで説明した本発明による装置の変形形態は、供試体の横方向スキャンのために、具体的には結像のために実施されてもよい。この目的のために、供試体と個別の測定ビームの少なくとも1つとの横方向の相互変位によって供試体をスキャンするために、少なくとも1つのスキャン・デバイスが設けられるのが好ましい。
【0042】
したがって、スキャン・デバイスは、個別の測定ビームのうち少なくとも1つに対して効果的である。眼に対して適用するために、したがって、好ましくは対眼レンズの結像も、その形状および位置(レンズの傾斜、すなわち光学軸と視軸との間の角度、後方のレンズ表面の曲率、前方のレンズ表面の曲率)の測定を含んで実行される。網膜の領域の結像、具体的には窩の領域での結像も可能である。
【0043】
個別の測定ビームの少なくとも1つのためのスキャン・デバイスによって、有利には、結合された測定が可能になり、これは単純な間隔を置く測定またはトポグラフィ検出に勝る。人間の眼などの動く対象物を測定すると、測定手順中の眼球運動によってデータが壊れる問題が常に存在する。光コヒーレンス・トモグラフィを用いてスキャンするとき、これは特に好ましくない。本発明による装置により、角膜の頂点または網膜基部などの参照点への距離を検出して、何らかの距離変化から、眼などの供試体の運動の測定値を得るのに、個別の測定ビームのうちの1つを用いることが可能になる。次いで、同時に行われた供試体の別の領域の横方向のスキャンから得られた測定データを補正するのに、参照点の運動を用いることができる。
【0044】
この手法の有利な改良では、参照点の軸方向の位置ばかりでなく、その横方向の位置も検出される。例えば、角膜の頂点の横方向の運動も検出される。次いで、検討する供試体の軸変位だけでなく、横変位に関しても補正することができる。対象物の別の領域のスキャンによって実行される3次元結像のための参照点は、3次元的に追跡することができ、対応する測定データは、参照点の運動に関して3次元的に補正することができる。
【0045】
したがって、好ましくは、この装置が、個別の測定ビームを用いて参照点の軸方向の位置を検出すること、または独立してスキャンされる個別の測定ビームを用いて参照点の3次元位置を検出することにより前述の参照を実行してこの装置を制御する、対応する制御ユニットを有するという前提がある。
【0046】
前述の特徴または特性、あるいは今後説明されることになる実施形態の特徴または特性は、それと反対の注が付けられなければ、開示された組合せばかりでなく、他の組合せまたは任意選択として単独でも、本発明の範囲を逸脱することなく利用され得ることが明白である。装置の任意の方法の工程を実行するために、適当な制御ユニットが設けられる。SS OCDRに基づく以下の説明は、このOCDR方式に対するいかなる制約でもないことにも留意されたい。同様に、本発明は、SD OCDRまたはTD OCDRにも適する。もちろん、SS OCDRで生じる光源の掃引は、重ねられた放射のスペクトル解析または参照ビーム経路の調整でそれぞれ置換される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】眼の2つの異なる領域を同時検出するための平衡検出を有するSS OCDR干渉計を示す図。
【図2】図1のものと類似であるが、照明放射のより優れた活用および眼の様々な領域からの測定放射のより広範囲な個別の検出を実行するために、図1の干渉計の測定ビーム経路が変更されている干渉計を示す図。
【図3】図2のものと類似の干渉計を示す概略図。
【図4】ビーム・スプリッタ・デバイスの影響を説明する、図3と類似の図。
【図5】図4のものと類似であるが、デュアル・ビーム干渉計の1実施形態の干渉計を示す図。
【図6】図4のものと類似であるが、平衡検出を有する干渉計装置について示す概略図。
【図7】図6のものと類似であるが、供試体のさらなる横方向スキャンを有する干渉計装置を示す図。
【図8】図7の干渉計装置と類似であるが、デュアル・ビーム干渉計として示す図。
【図9a】図1の干渉計のビーム・スプリッタ・デバイスを示す概略図。
【図9b】図9aによる様々なビーム・スプリッタ・デバイスを有するリボルバ・ホイールを示す図。
【図10】図2〜図8の干渉計のビーム・スプリッタ・デバイスを示す概略図。
【図11】図2〜図8の干渉計のビーム・スプリッタ・デバイスを示す概略図。
【図12】図2〜図8の干渉計のビーム・スプリッタ・デバイスを示す概略図。
【図13】図1のものと類似であって、その構成によって正確な平衡検出が可能になり、干渉読取り検出器間の位相シフトが正確に180°であるOCDR干渉計を示す図。完全な平衡検出を有する構成を示す。
【図14】図1のものと類似であって、その構成によって正確な平衡検出が可能になり、干渉読取り検出器間の位相シフトが正確に180°であるOCDR干渉計を示す図。図13の構成の変更であって、伝達に役立つ参照ビーム経路を有するものを示す。
【図15】図1のものと類似であって、その構成によって正確な平衡検出が可能になり、干渉読取り検出器間の位相シフトが正確に180°であるOCDR干渉計を示す図。図14のものと類似であるが、重ね合わせデバイスが異なって実施された構成を示す。
【図16】図15ものと類似であるが、2つの独立した測定ビーム経路を有する構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に、例示の目的のために、本発明が、添付図を参照しながらより詳細に説明され、本発明にとって不可欠な特徴も開示される。
図1は、SS OCDR向けの干渉計を概略的に示す。ビーム源Qからの放射は掃引され、その線幅は、例えば30pm未満であり、好ましくは26pm以下、あるいは別の実施形態では、好ましくは15pm未満、または13pm以下でさえある。そのようなビーム源は従来技術で知られており、例えば冒頭で既に示された米国特許出願第2006/0109477A1号に説明されている。したがって、この点に関して、この文献を参照する。例示的実施形態における眼Aである供試体P上の別々の部分領域T1およびT2を検出する目的で、干渉計Iが使用される。干渉計Iは、部分領域T1およびT2にある散乱中心の位置および散乱強度を全体的に検出するので、もちろん、眼の代わりに干渉計Iを使用して、何らかの任意の非生体の技術的構造も検出することができる。このように本説明が眼Aに対する適用に言及する限りでは、これは単に例示であって、限定するものと理解するべきではない。
【0049】
部分領域T1およびT2は、図1および図2に点として示されている。これは、単によりよい概要の説明のために用いられている。放射源Qの掃引により、もちろん、この部分領域は、放射の入射軸に沿って広がる範囲にわたって広がる。しかし、SS OCDRにおける最大の測定深さは、掃引される放射源Qの線幅によって限定され、部分領域T1および部分領域T2の両方が、1つの掃引手順で検出され得るほど十分には大きくない。部分領域間の間隔dは、この目的には広すぎる。例えば、約1μmの中心波長で10pm〜200pmの間の範囲の線幅を有する、掃引する放射源を使用した眼上の測定では、約35.2mmのスキャン深さが実施され得て、これは可能な眼の距離の一部分に対応するのみであり、そのため、軸方向にオフセットされた複数の部分領域は、眼に対する適用に対して有利である。
【0050】
レーザ・ビーム源Qの放射は、光ファイバ1を介してカプラKに導かれ、カプラKは重ね合わせデバイスとして作用し、この後、より詳細に説明される。カプラKは、光ファイバ1からの放射の一部分から、基本的には光ファイバ2によって実現される参照ビーム経路Rへ分岐させ、光ファイバ2の終端には(例えばファイバの末端反射によって)ミラー・デバイスが設けられる。光ファイバ1からの放射の別の部分が、光ファイバ4で始まる測定ビーム経路Mに供給される。
【0051】
しかし、カプラKは、干渉計Iに対してこのように光源ビームを供給するレーザ源Qの放射の結合ばかりでなく、むしろ測定ビーム経路Mから戻る測定放射および参照ビーム経路Rから戻る参照放射の分配および重ね合わせも引き起こす。カプラKは、参照ビーム経路Rからの参照放射を光ファイバ4からの測定放射と重ねて、重ねられた放射を光ファイバ3へ出力し、また光ファイバ5へ同一の小部分を出力する。このようにして干渉状態になった信号は、検出器D1およびD2によって収集され、その後、差動増幅器13を使用して平衡検出によって増幅される。
【0052】
カプラKの物理的特性のために、各検出器D1およびD2は、参照ビーム経路からの放射と重ねられた測定ビームの混合光を受け取り、個別の測定ビームは、参照ビーム経路Rからの放射との重ね合わせのとき、カプラの入力IIIと入力IVとの間の相対位相シフトを経験している。個別の測定ビームは、等しい小部分で混合光に含まれる。
【0053】
したがって、カプラKは、元のビームの分割ならびに測定放射と参照ビームとの重ね合わせのどちらに対しても活動状態である。測定放射は、(この後説明されるように)個別の測定ビームからなる。カプラは端子I〜端子VIを有する。
【0054】
光ファイバ6に結合される放射は現行の構成ではこれ以上使用されないので、端子Iに供給された放射は、カプラKによって、例えば端子IIに80%、端子IVに20%、また端子VIに0%伝導される。
【0055】
端子IVで戻る測定放射は、20%が端子Iへ、すなわち光源へ伝導され、カプラKによって端子IIIおよび端子Vへそれぞれ40%ずつ戻る。測定ビーム経路の放射線強度の80%は、このように干渉のために利用される。
【0056】
端子IIに供給される放射は、端子IIIへ10%、端子Vへ10%、また端子Iへ80%が伝導される。
図1の干渉計Iは、このように高い割合で測定ビーム経路からの放射を使用するが、レーザ・ビーム源Qが光ファイバ1に供給する強度の20%しか使用しない。大きな測定信号損失を補償するより、高パワーのレーザ・ビーム源Qを使用する方がはるかに簡単であるため、これは全く問題にならない。カプラKの構成により、比較的大きな強度超過の放射が参照ビーム経路Rに供給されるので、この放射は、さらに別のやり方で、例えば、レーザ・ビーム源Qのスペクトルの較正のために、あるいは信号記録を起動するために使用することができる。
【0057】
測定ビーム経路Mは、光ファイバ4で始まる。次いで、測定ビーム経路Mは、測定ビーム経路Mから戻る放射が、参照放射に対するその偏光特性に関して適合されることを保証する偏光制御器7を備え、その結果、最大の干渉能力がもたらされる。
【0058】
測定ビーム経路Mの供試体Pに伝導された放射は、モノリシックのビーム・スプリッタ8を使用して光ファイバ4から分割され、ビーム・スプリッタ8は、前述の個別の測定ビームM1およびM2を供給し、それらは互いに対して遅れる。この遅延は、この後より詳細に説明されるモノリシックのビーム・スプリッタ8により、個別の測定ビームM1およびM2向けの別々のガラス経路で達成される。この遅延は、眼A上の領域T1とT2との間隔d(カプラから供試体への往復)に合わせられる。このタイプの測定ビーム経路Mの均一な全長は、参照ビーム経路Rの距離に合わせられる。
【0059】
その上、モノリシックのビーム・スプリッタは異なる合焦ももたらし、すなわち、最終的に、個別の測定ビームM2が領域T2に合焦され、個別の測定ビームM1が領域T1に合焦されることを保証する。この後より詳細に説明されるように、これはモノリシックのビーム・スプリッタ8によって達成され、モノリシックのビーム・スプリッタ8の出力側で、個別の測定ビームM1およびM2に対して別々の屈折表面が効果的である。
【0060】
個別の測定ビームM1またはM2など、個別の測定ビームのうちの1つを遮断することができるように、阻止要素として、例えば可動ストップ24が任意選択で設けられ、特定の個別の測定ビームを遮る。個別の測定ビームM1を消すために、ストップ24は、モノリシックのビーム・スプリッタ8によって個別の測定ビームM1を供給される瞳領域を遮蔽するように実施される。それと対照的に、個別の測定ビームM2に対して、別の、あるいは追加のストップ24が設けられ、このストップはリング遮蔽の形で実施されて、個別の測定ビームM1が通過することだけを許容する。
【0061】
図では、既に構造的または機能的に説明された要素に相当する要素には同一の参照符号が与えられており、したがって、任意選択で再び説明されない。
この時点まで、掃引される光源を有するSS OCDR向けの例示的実施形態が説明されてきた。しかし、放射源Qとして超発光ダイオード(SLD)などの広帯域の光源が使用され、検出器Dが分光計として実施されると、ショート・コヒーレンス干渉計装置のSD OCDR変形形態が得られ、これは、説明された利点を同様に有する。直交成分測定用に複数の分光計を有する干渉計装置は、米国特許出願第2004/0239943号から知られている。広帯域の光源Qが維持され、また、その光路長を迅速に変化させることができるように参照アームRが実施される場合、干渉計装置のTD OCDR変形形態が実施される。参照アームの光路長を迅速に変化させるのに適当な装置(高速走査光遅延線、RSOD)は、例えば米国特許第6654127号に説明されている。
【0062】
図2は、図1の干渉計の変更された構成を示す。ここでレーザ・ビーム源Qの放射のより優れた利用がもたらされ、その結果、例えば、レーザ・ビーム源Qのパワーまたは線幅、掃引範囲、および掃引速度のような境界条件の、安全性に動機付けられた制限がこれを示す場合、すなわち、特に低パワーのレーザを扱うことが所望である場合、図2の構成は特に有効である。
【0063】
構造および/または機能において図1の干渉計Iの要素に対応する図2の干渉計Iの要素には同一の参照符号が与えられており、もう一度説明されることはない。このことは、すべての図に当てはまる。図2による干渉計Iは、基本的に2つの態様において図1に示された構成と異なる。1つは、測定ビーム経路Mが異なって実施されていることである。もう1つは、図2に示された構成には、検出器D1およびD2の差動読取りがなく、したがって平衡検出がないことである。
【0064】
測定ビーム経路Mの差異は、カプラKが、光ファイバ1からのレーザ・ビーム源Qの光源ビームを、光ファイバ4(すなわちカプラKの端子IV)および光ファイバ6(すなわちカプラKの端子VI)の両方へ結合するという事実に基づく。したがって、個別の測定ビームの生成は、従来型の共通の測定ビームから実行されるのでなく、むしろ、この場合カプラKであるビーム・スプリッタ・デバイスで直接もたらされる。図1に関して既に説明されたように、個別の測定ビームM1、M2は、それぞれ偏光制御器7.1または7.2を介して伝搬し、このことは、最後に、個別の測定ビームが互いに同一の偏光方向を有し、また、とりわけ供試体Aから戻った後に参照ビームRと同一の偏光方向を有することを保証する。レンズ9.1および9.2は、供試体の特定の領域T1およびT2の上に個別の測定ビームが合焦されることを保証する。
【0065】
個別の測定ビームが通過する経路長は互いに等しく、すなわち、カプラKの端子IVから領域T1までの光学距離が、端子VIから領域T2までの光学距離と等しい(また、この両方が参照ビーム経路Rの光学距離と等しい)。これは、光ファイバ4、6の別々のループによって図2に概略的に示されている。
【0066】
カプラKの結合係数は、以下の図2の干渉計I向けの好ましい実施形態のように、端子Iに供給された光源ビームの分配は、端子IIに60%、端子IVおよびVIにそれぞれ20%である。光源ビームの強度、すなわちレーザ・ビーム源Qのパワーは、このように40%利用され、したがって図1の干渉計Iより2倍優れている。
【0067】
端子IVに戻る個別の測定ビームM1は、端子IIIに80%、端子Iに20%伝導される。端子Vに生じるフィードバックは0%である。これは、端子VIでの個別の測定ビームM2についても同様に当てはまり、その80%が端子Vへ、したがって光ファイバ5へ伝導され、また、20%が光源へ、すなわち端子Iおよび光ファイバ1へ戻る。不利な作業で、0%が端子IVと端子Vとの間でしか実施され得ない場合は、5%以下(具体的には4%)の結合度も用いられ得る。次いで、端子VIと端子Vとの間の結合度は、対応して80%から下がる。
【0068】
したがって、個別の測定ビームM1およびM2の強度は、特定の関連付けられた検出器D1およびD2に80%伝導される。
端子IIは、端子Iへ60%、端子VおよびVIへ20%、また、端子IIIおよびIVへ20%結合される。
【0069】
検出器D1およびD2を用いた個別の検出により、特定の領域T1またはT2で、それぞれ他方の特定の領域から干渉の影響を受けることなく、散乱強度を検出することが可能になる。1.05pmの波長、2mWの供試体、および5mWを送出する光源で、レーザ放射の上限から始める場合、カプラKによるエネルギー割当ては特に有利である。そのとき、検出器D1およびD2が光ファイバ3および5を介して接続されている端子IIIおよびVへの放射の、説明された対称的分配が最適である。
【0070】
図2のカプラKは、もちろん、入力IVおよびVIの光学的放射を、入力IIの参照ビーム経路からの放射と別々の相対位相調整で重ねて、それぞれ入力VおよびIIIへ混合光として中継する、といった図1に関連して既に説明されたカプラの特性を有する。したがって、この場合も出力Vで混合が行われ、端子VIの信号が端子IIの信号と重ねられ、また、端子IVの信号が端子IIの信号と重ねられる。端子VIおよびIVの両方で、混合光中の信号は、別々の相対位相調整で端子IIからの参照放射と重ねられる。
【0071】
しかし、図1のカプラKとは対照的に、図2のカプラは非対称の混合光をもたらし、そこでは、端子VIまたはIVのうちの1つからの信号が、混合光中に不均衡な、具体的には90%または95%を上回る小部分を有する。この結果、図2の構成において、参照放射と重ねられた光ファイバ6からの信号は、光ファイバ5に90%または95%含まれ、その一方で、別の相対位相調整で参照放射と重ねられた光ファイバ4からの信号は、10%または5%しか含まれない。このことは、主に光ファイバ4および2からの重ねられた信号を伝導する光ファイバ3に対して同様に当てはまる。したがって、図2は、カプラKの出力VおよびIIIで不均一に構成された混合光に関する1実施例を示す。
【0072】
図3は、図1および図2の干渉計構造体を概略図に示す。概略的に図示された干渉計Iでは、参照符号Vは遅延経路を示し、参照符号Oはレンズを示し、参照符号Fはファイバを示し、また、参照符号Aは出力を示す。検出器Dおよび個別の測定ビームMに関して図1および図2に基づいて既に行われたように、特定のインデックスは、特定の個別の測定ビームへこれらの変数を関連付ける。このことは、供試体P上で検出される領域T1、T2、...、TNに対して同様に当てはまる。
【0073】
レーザ放射光源Qによって光ファイバ1に供給された元のビームの一部分は、ファイバ・カプラK(複数のカプラの組合せによっても実施することができる)を使用して、光ファイバF1、F2、...、FNの中へ、個別の測定ビームM1、M2、...、MNに分割される。このように、光学手段によって、それぞれの個別の測定ビーム経路に個別の遅延v1、v2、...、vNが生じ、その結果、カプラKから供試体の特定の領域T1、T2、...、TNまでの光学距離は、すべての個別の測定ビームM1、M2、...、MNに関して等しい。個別の測定ビーム経路中の対応するオプティクスO1、O2、...、ONは、検出されるべき部分領域T1、T2、...、TNを照射し、後方散乱光を吸収して、それをファイバFおよびカプラKに中継する。
【0074】
遅延vは、図3の概略図にオプティクスOと無関係に示されている。順序、例えば遅延vとオプティクスOとの順番は、とりわけ独立しており、オプティクスO中で遅延vが生じることもある。もちろん、別々の遅延および別々の長さのうちの少なくとも一方を有するファイバFも、遅延をもたらすことがある。
【0075】
それぞれの個別の測定ビームM1、M2、...、MNに対して測定ビーム経路Mの構成が選択され、その結果、カプラKに戻る個別の測定ビームが、参照ビーム経路Rからの放射と干渉することが可能になり、すなわち、具体的には十分に類似の偏光状態を有する。可能な偏光制御器は、図3には示されていない。
【0076】
その一方で、図1および図2に基づいて既に説明されたように、遅延ラインは、カプラKから供試体の検出されるべき領域へのすべての個別の測定ビームに対する光学距離が等しくなるように選択されている。しかし、遅延ラインは、個別の測定ビームの光学距離が、参照ビーム経路Rの参照ビームの光学距離と等しくなるようにも選択されており(もちろん、このことは図1および図2にも当てはまる)、というのは、そのように選択されたときのみ、重ねられた個別の測定ビームと参照ビームとの干渉が可能になるからである。この重ね合わせはカプラKによって実行され、また、カプラKは、個別の測定ビームM1、M2、...、MNを供給し、これらが参照ビームの小部分と重ねられて干渉状態になって特定の出力A1、A2、...、ANとなり、そこで、対応する検出器によって記録されて、解析ユニット10によって読み取られる。もちろん、カプラKが、出力A1、A2、...、ANに、それぞれが別々の相対位相調整で参照放射と重ねられた個別の測定ビームの混合光を再び伝導するので、混合光は、等しい小部分(任意選択で、平衡検出のための差動読取りが実行される)から、1つまたは複数の個別の測定ビームの大幅に不均衡な小部分まで変化させることができる。いかなる特定の分割、小部分または混合光の構成も、ここで説明される限り、それらは限定するものとして理解されるべきではなく、むしろ単なる例示として理解されたい。
【0077】
図3の干渉計Iの概略図によって、2つの個別の測定ビームを有する図1および図2の説明が限定的でないことが明らかになる。むしろ、個別の測定ビームの数は任意に選択することができ、Nに対する上限が2である必要はない。
【0078】
もちろん、遅延のうちの1つを、対応して設定された供試体Pへの距離または参照ビーム経路における距離(例えばミラーSへの距離)で置換することができる。レーザ・ビーム源Qのスキャン深さの向上に関連して領域Tの間隔を制限することにより、さらなる遅延ライン数の低減を達成することができる。
【0079】
個別の測定ビーム検出の所望の高性能を保証するために、カプラKは、ファイバFへのすべての出力に関して、元のビーム(すなわちファイバ1)と特定のファイバFとの間に50%未満の結合が与えられるように設計される。
【0080】
干渉計Iは、個別の測定ビームの高効率解析のためのここで説明された構成を達成し、その構成では、ビーム・スプリッタ・デバイスが、強度に関して非対称に参照ビーム経路/測定ビーム経路へ光源ビームを結合し、また、測定ビーム経路を検出器入力へ結合する。具体的には、光源ビームが個別の測定ビーム経路へ分割される結合度は、反対方向で個別の測定ビーム経路と関連する検出器への供給との間に50%を上回る結合を達成するために、50%未満に低減され得る。
【0081】
カプラKにおける個別の結合係数は、さらに各様に実施されてよい。図4は1実施例を示しており、ここでは、実線は結合度の合計の80%を示し、一点鎖線は結合度の合計の20%を示す。結合度の合計は、この出力で、すべての、付随して印の付いた、出て行くビームに関する結合度の合計である。光源ビームを導く光ファイバ1からの放射は、したがって、80%が光ファイバ2へ結合され、光ファイバFへは結合度の合計の20%が結合される。それぞれの個別の光ファイバFが、この20%の小部分を等分したものを含む。FとAとの間の特定の結合、すなわち、個別の測定ビームの、参照ビームと重ね合わせるときの特定の検出器への伝達は、せいぜい、1から結合度の合計を引いたものであり得て、この伝達で、光源ビームがファイバに分配される。この結合度を低減することにより、非常に高い信号強度を検出器で達成することができ、その結果、ほとんど分離された信号が部分領域に関して検出される。
【0082】
図4の構成はデュアル・ビーム干渉計を得るために変更することができ、デュアル・ビーム干渉計は、図5に概略的に示されている。ここでは、供試体を構成していない静止した参照アームからの参照放射とではなく、個別の測定ビームの間で干渉が生じることが必要である。ここで、破線は、結合度の合計の約40%を示す。したがって、それぞれの個別の測定ビームは、もう一方の個別の測定ビームの一部分とここで混ぜられる。
【0083】
例えば3つの個別の測定ビーム(N=3)を有する干渉計Iでは、出力A1で、個別の測定ビームM1が40/3%生じ、個別の測定ビームM2も40/3%生じ、個別の測定ビームM3も40/3%生じる。これは、さらなる出力に対して同様に当てはまる。
【0084】
個別の測定ビームは、それぞれが互いに重ね合わされて出力Aに供給される。したがって、結合された部分領域信号が検出され得て、それらは、部分領域要素の間で別々の位相関係を有する。したがって、解析デバイス10は、例えばフーリエ領域OCTで生じることがあるミラー・アーチファクトを低減するために直交成分を検出することができる。これは、図4による構成に対して、同様に当てはまる。
【0085】
図5の構成では、部分領域信号間の相互干渉だけが検出され、その結果、静止した参照アームからの放射とでは干渉が生じないので、干渉信号は、供試体Pの軸方向移動と無関係である。
【0086】
図6に示された構成において、一方では、2つの個別のカプラK1およびK2によってカプラKが実施される。他方では、この態様で既に引用された米国特許出願第2006/0109477A1号における異なったタイプの干渉計に関して既に説明されたように、平衡検出が実行される。この平衡検出の原理は、とりわけ、対に結合された信号が位相シフト(例えば約180°)を有し、したがって、差動増幅器13および14を使用した差分解析が、いかなる直流の光成分(例えばレーザ放射光源Qの強度の変化または干渉する放射)も除去するということである。図6は、2つの測定ビームに関する実施例を示し、もちろん3つ以上の測定ビームを有する変形形態も可能である。図3は、結合係数に関して先の図と同一の方式を用いており、実線は、特定の端子で始まる結合度の合計の80%に相当し、破線は、特定の端子で始まる結合度の合計の40%に相当し、一点鎖線は、特定の端子で始まる結合度の合計の20%に相当する。
【0087】
図7は、測定ビーム経路にスキャナ12が設けられた改良を示し、スキャナ12は、3次元領域Tを検出するために、例えば個別の測定ビームを横方向に偏向する。したがって、別の個別の測定ビーム(例えば偏向されなかったもの)と結合すると、もう一方の供試体領域の3次元偏向の座標システムが関係し得る参照点を検出することが可能になる。したがって、例えば眼である供試体Pのいかなる軸方向移動も補償され得て、3次元サンプリングのデータが壊れることがない。
【0088】
さらに、参照点も、その軸方向の位置に関して検出するばかりでなく、むしろこの個別の測定ビームの個別の測定ビーム経路に設けられるさらに独立したスキャナによって3次元で検出することができ、その結果、供試体の3次元の運動は、信号を測定するのに、別のスキャンされた供試体領域に対して補償され得る。
【0089】
しかし、図7の構成は、基本的に図6の構成を実施するものであり、個別の測定ビームM2および任意選択で個別の測定ビームM1も、それぞれ独立したスキャナ12(および15)を使用して(それぞれ)偏向される。解析ユニット10は、対応するスキャナの信号を記録し、差動増幅器13および14によって出力された信号を、スキャナ信号を考慮しながら、供試体の運動に関して、それに応じて補正された画像へと結合する。
【0090】
もちろん、スキャナのこの用途も、説明された干渉計Iのうちの任意のものに使用することができる。これは、デュアル・ビームの手法向けのスキャナの使用を示す図8に概略的に示されている。したがって、スキャン・デバイスは、個別の測定ビームのうち少なくとも1つに対して効果的である。眼の用途に関して、これによって、その対眼レンズに関する結像も、その対眼レンズの形状(レンズの傾斜、すなわち光学軸と視軸との間の角度、後方のレンズ表面の曲率、前方のレンズ表面の曲率)の測定を含んで可能になる。網膜の領域、具体的には窩の領域での結像も可能である。
【0091】
最大の角膜反射に位置合わせした静的な個別の測定ビームの使用は、眼の測定では特に有利であり、その一方で、第2の個別の測定ビームは、網膜構造の空間分布を記録するために横方向に偏向され、例えば、結像(デュアル・ビームOCT)または網膜上の特定の参照点に対する眼の長さの測定に特に有利である。横方向のスキャンに関して、眼の長さの周波数分布の簡単な測定も、眼を特徴付けることができる情報を送出する。これらの変形形態は、白内障の事例では重要であり、患者にとって固定するのはもはや不可能で、眼の長さは、空間的に解いて求めること、および統計的に求めることのうちのいずれか一方が必要である。
【0092】
次に図9aを参照すると、モノリシックのビーム・スプリッタ8の構成が説明される。このビーム・スプリッタは、光ファイバ4によって供給されたビームを2つの個別ビームに分割する目的で使用され、2つの個別ビームは、何らかの後の干渉を基準にしてそれぞれに対して軸方向にオフセットされ、また、任意選択で、間隔aだけ離間された別々の焦点に束ねられる。復帰経路では、すなわち供試体Pから離れて伝搬する放射のために、ビーム・スプリッタ8が測定ビーム経路を再び結合する。
【0093】
ビーム・スプリッタ8は、光ファイバ4の終端に出るビーム束18を受け取り、ビーム・スプリッタ8のガラス体17によって構成された第1のレンズ面L1を使用して、それを視準する。次いで、このようにして視準された放射は、出力側に瞳分割を有するガラス体17を通過する。この目的のために、光学軸に沿って伸びる穴18が、対向するレンズ面L2に導入される。穴基部19にて出る放射は、ガラス経路を通過し、レンズ面L2で出る放射より穴18の深さtだけ小さい。これは、個別ビームの互いに対する遅延をもたらす。したがって、この遅延は、ガラス体17(もちろん、いかなるレンズ対応の材料も用いることができる)の穴18の深さtの光路に相当する。
【0094】
図9aでは、個別の測定ビームは、別々の焦点コーン20および21に出る。この異なる合焦は、レンズ表面L2および穴基部19の別々の回折特性によってもたらされる。このように達成された瞳分割の異なる回折特性は、焦点22および23が間隔aによって別々に離間されるという結果を有する。焦点距離および遅延は、レンズ表面および穴深さによって互いに無関係に設定され得る。
【0095】
もちろん、図9aに示されたような合焦は、例示としてのみ理解されるべきである。例えば、穴基部が平坦に実施されると、この瞳部分から出る個別ビームは、平行になり、かつ/またはレンズ面L1によってもたらされた同一の伝搬方向を有することもあり得る。
【0096】
図9bは、ビーム・スプリッタ8の変更も可能であることを示す。この目的のための、様々なビーム・スプリッタ8.1、8.2、および8.3がリボルバ・ホイールWに取り付けられ、必要な特定のビーム・スプリッタが、ビーム経路のピボット上に取り付けられ得る。様々なビーム・スプリッタ8.1、8.2および8.3は、深さtの光路によってもたらされる遅延に関して異なる。
【0097】
ガラス体17の第1および第2の面がレンズ面としてではなく平面として実施されると、結像ビーム・スプリッタ8の代わりに非結像ビーム・スプリッタも使用され得る。
図10から図12は、ファイバ・カプラKの概略図を示す。図10には3×3のカプラが示されており、これは端子I〜VIを有して、一方の側にI、IIIおよびIVがあり、反対側のII、IVおよびVIとの対応する結合をもたらす。
【0098】
図11は、図10のファイバ・カプラKの変更形態を示し、これでは、3つのファイバが部分的に融合されるのではなく、むしろ2×2のファイバが用いられている。この態様から既に複数回引用されている米国特許出願第2006/0109477A1号に既に説明されているように、3×3のカプラは、このように置換することができる。
【0099】
そのような結合された2×2のダブレットを使用するのであれば、個別の測定ビームの強度が異なる場合については、より高感度の経路IV→IIIにおけるクロストークを回避するために、説明された実施形態に示されるように、経路VI→Vによって著しく強い個別の測定ビームを導くことが推奨される。眼の干渉計測定では、著しく強い信号は、一般に角膜からのものであるのに対して、より高感度の信号は、網膜上の測定領域から生じる。
【0100】
平衡検出を用いるために、図12に示されるように、VI→VとIV→IIIとの間に40%のクロス・カップリングを有するカプラKが有利である。物理的実施形態が、図12の斜視図に示されている。したがって、結合経路V→IVの進路は、経路II→IVと経路I→IIとで測られる面の上に折り畳んで置かれている。
【0101】
図13は、図1の構成と類似の構成を示し、いわゆる正確な平衡検出がここで実行され得て、すなわち、混合光は、対称に、あるいは釣り合って構成される。
図13の構成では、破線を用いて描かれたボックスによって一方に示されており、光ファイバ4が、様々に実施されて位置している適用モジュール25に非常に広く入力することができ、適用モジュール25は、光ファイバ4から始まる測定ビーム経路から個別の測定ビーム経路を分割する。図13の上のボックスに示された変形形態では、この目的のために第3のカプラK3が使用されており、これは個別の測定ビーム経路の分割および結合を実行する。下側のボックスに示された図13の適用モジュール25の構成は、図9aのビーム・スプリッタを使用するが、既に説明された変形形態には、8の部分の上に光学面がない。カプラK1およびK2は連帯でカプラKを実施し、カプラKは、基本的に図1のものに相当する。カプラK2は、50−50のカプラまたはスプリッタとして実施され、それによって光ファイバ5および3の混合光が対称に構成され、すなわち、それぞれが参照ビーム経路との重ね合わせに関して180°の相対位相シフトを有する等しい部分で、測定ビーム経路M1およびM2からの放射を含む。
【0102】
その上、カプラK1とK2との間の接続光ファイバ26を使用する2×2のカプラ・ダブレットからのカプラKの構成を通る可能性が存在する。これによって、ある種のサーキュレータを実施することが可能になる。放射源Qからの元の放射が直線的に偏向され、4分の1波長のユニットが光ファイバ26に組み込まれると、循環的に偏光された放射が測定ビーム経路Mに到達する。光ファイバ26を通って光ファイバ1へ戻る、したがって光源Qへ戻る放射は、結果として元の放射に対して垂直に偏向される。これは、光源Qの、乱されない、安定した稼働にとって良いことであると判明した。また、ここでは、光源から来る光に対して光路26に直交偏光状態が達成されるので、任意選択で光路26にファラデー回転子を使用することも有利である。
【0103】
図14は、図13の構成の変更形態を示す。ここでは、参照放射は、光ファイバループによって、すなわち光ファイバ2と6との接続によって供給される。これは、伝達に役立つ参照として示すことができる。伝達に役立つ参照アームは、検出器上に設定する信号を試験する目的で、固定または可変の減衰要素も含むことができ、あるいは可変減衰を実現するように実施することができる。図13に対してなされた記述は、他の点では図14の構成に対して同様に当てはまる。
【0104】
最後に、図15に示された構成は、実質的に図14の構成に相当するが、カプラK2とK1との順番が、光ファイバ26への接続に関して逆になっている。元の放射は、再び、先ずカプラK2に達するが、そこから測定ビーム経路に直接入り、もちろん、ここで再び伝達に役立つものとして実施される参照ビーム経路にも入る。
【0105】
最後に、図16は図15に類似の構成を示すが、ここではカプラK2は3×3のカプラとして構成され、その結果、カプラK2は、端子IV.1およびIV.2によって2つの個別の測定ビーム経路へ直接分割する。
【0106】
前述のように、個別の測定ビーム経路は、それらの光路に関して、検出されるべき供試体領域の間隔に適合される。光路のみの調整に加えて、測定ビームに関する拡散も、別個に供試体の状態に合わせることができる。この目的のために、測定ビーム経路に、適当な媒体が個々に導入され、この媒体は、光遅延が不変の拡散に影響を及ぼし、その結果、測定ビームが通過する供試体領域の影響が個々に補償される。
【0107】
これも既に述べたように、前述の実施形態は、完全に本質的にSS OCDR、SD OCDR、またはTD OCDR向けに実施することができる。後者の事例では、効果的な参照アーム長さの調整がもたらされる。図1、図2、図6、図7、図13、図14、および図15の説明において参照ビーム経路の放射の遅延を調整するためのデバイスが、Rで示された参照ビーム経路にもさらに設けられ、例えば、RSODは、米国特許第6654127号または経路長調整によって既に示されている。類似の要素が、図4および図16で光ファイバ2の端子に設けられている。あるいは、例えば可変光減衰器(VOA)またはドープされたファイバ要素を使用して、参照アームの参照放射を設定できる減衰を実行することも可能である。したがって、非常に大きな減衰を容易に達成することができ、これは、さらに調整することも可能である。これは、より適当なファイバ結合比の選択に対する代替および微調整のための補足追加の両方を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体(P)、具体的には眼(A)の、軸方向に離間する複数の領域(T1、T2)を測定するためのショート・コヒーレンス干渉計装置であって、複数の個別の測定ビームが通って該供試体上に入射する少なくとも1つの測定ビーム経路と、該個別の測定ビーム(M1、M2)に重ねられて該個別の測定ビームと干渉状態になる参照放射が通って導かれる1つの参照ビーム経路(R)とを有し、該個別の測定ビーム(M1、M2)が、該供試体(P)上に入射するとき、軸方向の間隔(d)に適合された量だけ軸方向に互いにオフセットされ、該干渉計装置(I)が、該供試体から戻るそれぞれの個別の測定ビーム(M1、M2)を、該参照放射と重ねて干渉を引き起こす重ね合わせデバイス(K、K1、K2)を有するショート・コヒーレンス干渉計装置において、
該重ね合わせデバイス(K、K1、K2)が、それぞれが検出器(D1、D2)に入力する複数の出力(III、V)を有し、該重ね合わせデバイス(K、K1、K2)が、すべての個別の測定ビーム(M1、M2)と重ね合わせるための該同一の参照放射を受け取って、各出力(III、V)に、該参照放射と重ねられた該複数の個別の測定ビーム(M1、M2)の混合光を出力し、各混合光が、異なる位相調整で該参照放射と重ねられた該個別の測定ビーム(M1、M2)の小部分を含むことを特徴とするショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項2】
測定放射を供給する放射源(Q)が設けられ、該放射源(Q)が、光源ビームを出力し、該光源ビームの一定強度の小部分を前記測定ビーム経路(M)と前記参照ビーム経路(R)とに分割する前記重ね合わせデバイス(K、K1、K2)に対して該光源ビームを供給することを特徴とする請求項1に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項3】
前記個別の測定ビーム(M1、M2)が、各混合光中に基本的に等しい成分を有することを特徴とする請求項1に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項4】
供試体(P)、具体的には眼(A)の、軸方向に離間された複数の領域(T1、T2)を測定するためのショート・コヒーレンス干渉計装置であって、複数の個別の測定ビームが通って該供試体上に入射する少なくとも1つの測定ビーム経路であって、該個別の測定ビーム(M1、M2)が、該供試体(P)上に入射するとき、軸方向の間隔(d)に合わせた量だけ軸方向に互いにオフセットされる測定ビーム経路を有し、該干渉計装置(I)が、該個別の測定ビーム(M1、M2)のうちの少なくとも2つを互いに重ねて干渉を引き起こす重ね合わせデバイス(K、K1、K2)を有するショート・コヒーレンス干渉計装置において、
該重ね合わせデバイス(K、K1、K2)が、該2つの個別の測定ビームのそれぞれを、該特定の他の個別の測定ビームに重ねて干渉を引き起こし、かつ2つの重ねられたビームを取得し、次いで、これら2つのビームを関連する検出器(D1、D2)へ伝導することを特徴とするショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項5】
前記測定ビーム経路(M)に設けられたレンズ・デバイス(8)が、前記測定放射を前記個別の測定ビーム(M1、M2)へ分割し、かつ前記個別の測定ビーム(M1、M2)を互いに対して遅らせて、前記供試体(P)へ別々の焦点距離でそれらを合焦することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項6】
前記レンズ・デバイス(8)が、瞳分割によって前記個別の測定ビーム(M1、M2)を分割し、前記レンズ・デバイス(8)の分離した瞳領域が、光学距離の結像特性の少なくとも1つを有して、それぞれの個別の測定ビーム(M1、M2)に関連付けられ、該瞳領域および該瞳領域の拡散が互いに異なることを特徴とする請求項5に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項7】
前記レンズ・デバイス(8)が、ガラス体(17)であって、2つのレンズ表面(L1、L2)と、一方のレンズ面上に穴または別々の屈折率を有する材料を用いる充填とを有し、この穴/充填が、光学軸に沿って該ガラス体(17)の中へ伸びる前記ガラス体(17)を含む特徴とする請求項6に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項8】
前記重ね合わせデバイス(K、K1、K2)が、対の個別の測定ビーム経路当り、1つの3×3のファイバ・スプリッタ(K)または2つの結合された2×2のファイバ・スプリッタ(K1、K2)を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項9】
前記重ね合わせデバイス(K、K1、K2)が、元のビームの強度の50%未満を前記測定ビーム経路(M)へ伝導し、前記個別の測定ビーム(M1、M2)を重ねてそれらを前記検出器(D1、D2)へ中継するとき、前記個別の測定ビームについて50%未満の強度損失を実現することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項10】
前記検出器(D1、D2)のうち少なくとも2つが差分解析で読み取られることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項11】
前記個別の測定ビーム(M1、M2)の前記重ね合わせの前に、前記個別の測定ビーム(M1、M2)の偏光状態を互いに等しくするために、すべての個別の測定ビーム(M1、M2)に対して活動状態である偏光制御器(7、7.1、7.2)が前記測定ビーム経路に設けられるか、あるいは、偏光制御器(7.1、7.2)がそれぞれの個別の測定ビーム経路に設けられることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項12】
前記ショート・コヒーレンス干渉計装置が掃引される放射源を使用して、SS OCDR向けに実施されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項13】
前記個別の測定ビーム(D1、D2)の軸方向のオフセットが、前記掃引される放射源によって定義された測定範囲より大きいことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項14】
前記供試体(P)と前記個別の測定ビーム(M1、M2)の少なくとも1つとの横方向の相対変位によって前記供試体(P)をスキャンするために、少なくとも1つのスキャン・デバイスが設けられることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項15】
前記ショート・コヒーレンス干渉計装置が広帯域の放射源およびスペクトル的に分解する検出器を使用して、SD OCDRに適合されることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項16】
前記ショート・コヒーレンス干渉計装置が広帯域の放射源および迅速に変化する光学距離を有する参照アームを使用して、TD OCDRに適合されることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項1】
供試体(P)、具体的には眼(A)の、軸方向に離間する複数の領域(T1、T2)を測定するためのショート・コヒーレンス干渉計装置であって、複数の個別の測定ビームが通って該供試体上に入射する少なくとも1つの測定ビーム経路と、該個別の測定ビーム(M1、M2)に重ねられて該個別の測定ビームと干渉状態になる参照放射が通って導かれる1つの参照ビーム経路(R)とを有し、該個別の測定ビーム(M1、M2)が、該供試体(P)上に入射するとき、軸方向の間隔(d)に適合された量だけ軸方向に互いにオフセットされ、該干渉計装置(I)が、該供試体から戻るそれぞれの個別の測定ビーム(M1、M2)を、該参照放射と重ねて干渉を引き起こす重ね合わせデバイス(K、K1、K2)を有するショート・コヒーレンス干渉計装置において、
該重ね合わせデバイス(K、K1、K2)が、それぞれが検出器(D1、D2)に入力する複数の出力(III、V)を有し、該重ね合わせデバイス(K、K1、K2)が、すべての個別の測定ビーム(M1、M2)と重ね合わせるための該同一の参照放射を受け取って、各出力(III、V)に、該参照放射と重ねられた該複数の個別の測定ビーム(M1、M2)の混合光を出力し、各混合光が、異なる位相調整で該参照放射と重ねられた該個別の測定ビーム(M1、M2)の小部分を含むことを特徴とするショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項2】
測定放射を供給する放射源(Q)が設けられ、該放射源(Q)が、光源ビームを出力し、該光源ビームの一定強度の小部分を前記測定ビーム経路(M)と前記参照ビーム経路(R)とに分割する前記重ね合わせデバイス(K、K1、K2)に対して該光源ビームを供給することを特徴とする請求項1に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項3】
前記個別の測定ビーム(M1、M2)が、各混合光中に基本的に等しい成分を有することを特徴とする請求項1に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項4】
供試体(P)、具体的には眼(A)の、軸方向に離間された複数の領域(T1、T2)を測定するためのショート・コヒーレンス干渉計装置であって、複数の個別の測定ビームが通って該供試体上に入射する少なくとも1つの測定ビーム経路であって、該個別の測定ビーム(M1、M2)が、該供試体(P)上に入射するとき、軸方向の間隔(d)に合わせた量だけ軸方向に互いにオフセットされる測定ビーム経路を有し、該干渉計装置(I)が、該個別の測定ビーム(M1、M2)のうちの少なくとも2つを互いに重ねて干渉を引き起こす重ね合わせデバイス(K、K1、K2)を有するショート・コヒーレンス干渉計装置において、
該重ね合わせデバイス(K、K1、K2)が、該2つの個別の測定ビームのそれぞれを、該特定の他の個別の測定ビームに重ねて干渉を引き起こし、かつ2つの重ねられたビームを取得し、次いで、これら2つのビームを関連する検出器(D1、D2)へ伝導することを特徴とするショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項5】
前記測定ビーム経路(M)に設けられたレンズ・デバイス(8)が、前記測定放射を前記個別の測定ビーム(M1、M2)へ分割し、かつ前記個別の測定ビーム(M1、M2)を互いに対して遅らせて、前記供試体(P)へ別々の焦点距離でそれらを合焦することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項6】
前記レンズ・デバイス(8)が、瞳分割によって前記個別の測定ビーム(M1、M2)を分割し、前記レンズ・デバイス(8)の分離した瞳領域が、光学距離の結像特性の少なくとも1つを有して、それぞれの個別の測定ビーム(M1、M2)に関連付けられ、該瞳領域および該瞳領域の拡散が互いに異なることを特徴とする請求項5に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項7】
前記レンズ・デバイス(8)が、ガラス体(17)であって、2つのレンズ表面(L1、L2)と、一方のレンズ面上に穴または別々の屈折率を有する材料を用いる充填とを有し、この穴/充填が、光学軸に沿って該ガラス体(17)の中へ伸びる前記ガラス体(17)を含む特徴とする請求項6に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項8】
前記重ね合わせデバイス(K、K1、K2)が、対の個別の測定ビーム経路当り、1つの3×3のファイバ・スプリッタ(K)または2つの結合された2×2のファイバ・スプリッタ(K1、K2)を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項9】
前記重ね合わせデバイス(K、K1、K2)が、元のビームの強度の50%未満を前記測定ビーム経路(M)へ伝導し、前記個別の測定ビーム(M1、M2)を重ねてそれらを前記検出器(D1、D2)へ中継するとき、前記個別の測定ビームについて50%未満の強度損失を実現することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項10】
前記検出器(D1、D2)のうち少なくとも2つが差分解析で読み取られることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項11】
前記個別の測定ビーム(M1、M2)の前記重ね合わせの前に、前記個別の測定ビーム(M1、M2)の偏光状態を互いに等しくするために、すべての個別の測定ビーム(M1、M2)に対して活動状態である偏光制御器(7、7.1、7.2)が前記測定ビーム経路に設けられるか、あるいは、偏光制御器(7.1、7.2)がそれぞれの個別の測定ビーム経路に設けられることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項12】
前記ショート・コヒーレンス干渉計装置が掃引される放射源を使用して、SS OCDR向けに実施されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項13】
前記個別の測定ビーム(D1、D2)の軸方向のオフセットが、前記掃引される放射源によって定義された測定範囲より大きいことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項14】
前記供試体(P)と前記個別の測定ビーム(M1、M2)の少なくとも1つとの横方向の相対変位によって前記供試体(P)をスキャンするために、少なくとも1つのスキャン・デバイスが設けられることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項15】
前記ショート・コヒーレンス干渉計装置が広帯域の放射源およびスペクトル的に分解する検出器を使用して、SD OCDRに適合されることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【請求項16】
前記ショート・コヒーレンス干渉計装置が広帯域の放射源および迅速に変化する光学距離を有する参照アームを使用して、TD OCDRに適合されることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載のショート・コヒーレンス干渉計装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2010−540914(P2010−540914A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526220(P2010−526220)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008230
【国際公開番号】WO2009/043557
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(503078265)カール ツァイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec AG
【住所又は居所原語表記】Goeschwitzer Strasse 51−52, D−07745 Jena, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008230
【国際公開番号】WO2009/043557
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(503078265)カール ツァイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec AG
【住所又は居所原語表記】Goeschwitzer Strasse 51−52, D−07745 Jena, Germany
【Fターム(参考)】
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