シリコンウェハーの製造方法
【課題】シリコンインゴットからシリコンウェハーを製造するに際して、歩留まりを改善させることができると共に、生産効率の低下も防止することができるシリコンウェハーの製造方法をを提供する。
【解決手段】リコンブロック表面の研磨には、無端研磨ベルト30(ダイヤモンド研磨布)を研磨工具として使用することで、シリコンブロック表面の研磨にかかる時間を大幅に短縮することができる。また、無端研磨ベルト30(ダイヤモンド研磨布)による研磨では、ダイヤモンド砥石による研磨と異なり弾性研磨が可能であることから、研磨中にシリコンブロック表面に入る微小なクラックを軽減することができる。
【解決手段】リコンブロック表面の研磨には、無端研磨ベルト30(ダイヤモンド研磨布)を研磨工具として使用することで、シリコンブロック表面の研磨にかかる時間を大幅に短縮することができる。また、無端研磨ベルト30(ダイヤモンド研磨布)による研磨では、ダイヤモンド砥石による研磨と異なり弾性研磨が可能であることから、研磨中にシリコンブロック表面に入る微小なクラックを軽減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルに使用されるシリコンウェハーの製造方法に係り、特に、シリコンウェハーの歩留まりを改善し、且つ、製造効率を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池のパネルとして使用されるシリコンウェハーの製造方法を簡単に説明すると、多結晶シリコンの場合、四角柱状に製造されるシリコンインゴットをバンドソーなどを使用して所定の大きさに切り出し、切り出された部材(シリコンブロック)をマルチワイヤソーで薄くスライスすることで製造される。図13に多結晶シリコンインゴットによるシリコンウェハーの製造工程を各工程毎に簡単に示す。先ず、四角柱状のインゴット200を成形型などで製造し、製造されたインゴット200(a)をバンドソーなどを用いて外周部を排除し、内部を所定のブロックに分割する(b)ことで、シリコンブロック202(c)が製造される。この製造されたシリコンブロック202をマルチワイヤソーで薄板状に切断することでシリコンウェハー204(d)が製造される。なお、単結晶のシリコンインゴットであっても最初に製造されるシリコンインゴットが丸形形状であるだけであって、基本的な製造方法は特に相違しない。
【0003】
ここで、マルチワイヤソーによってシリコンブロックを薄板状に切断してシリコンウェハーを製造する際、シリコンブロックの表面に微小なクラックが入った状態で切断されると、例えば図13(d)に示すように、切断中にシリコンウェハー表面に割れ(クラック)206が生じて歩留まりが低下することが知られていた。これに対して、特許文献1のシリコンウェハーの加工方法では、シリコンブロックを研磨して表面に存在する微小なクラックを取り除き、表面を平坦化することによって歩留まりを改善する技術が開示されている。また、特許文献2の半導体ウェハ(シリコンウェハー)の製造方法では、シリコンブロック表面を研磨して表面の粗さRmaxを2.5μm以下にすると共に、ブロック端面を面取りしてその面取りした端面縁部の表面についても研磨によって粗さRmaxを2.5μm以下にすることで、シリコンウェハーの歩留まりを改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−176014号公報
【特許文献2】特開2002−237476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のシリコンウェハーの製造方法では、具体的には、ダイヤモンド砥石(ダイヤモンドホイール)によるシリコンブロックの表面研磨を実施している。また、特許文献2の半導体ウェハーの製造方法では、回転ブラシ(ダイヤモンドブラシなど)を用いてシリコンブロック表面を研磨している。
【0006】
しかしながら、上記ダイヤモンド砥石もしくはダイヤモンドブラシによって研磨を行った場合、それぞれ以下のような問題が発生する。ダイヤモンド砥石によって研磨を実施する場合、加工精度は得られるものの、ダイヤモンド砥石が剛性体のためにさらに加工ダメージ(微小なクラック)が入り易く、その加工ダメージを除去するためにダイヤモンドブラシ等によるさらなる仕上加工が必要となる。結果として、研磨に時間がかかってしまい生産効率が低下する。一方、ダイヤモンドブラシによる仕上加工は、高弾性であるため研磨による加工ダメージは入り難いものの、ダイヤモンドブラシによる削除量が小さいため、研磨に時間がかかって生産効率が低下する。また、ダイヤモンドブラシは、柔軟性が高く加工時の切込み量が比較的大きいため、シリコンブロックの角部がダレ易くなる。さらに工具交換が容易でなく、交換時の研磨機停止時間が長くなる。上記のように、ダイヤモンド砥石、ダイヤモンドブラシ共に研磨時間が長くなり、生産効率が低下する問題があった。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、シリコンインゴットからシリコンウェハーを製造するに際して、歩留まりを改善させることができると共に、生産効率の低下も防止することができるシリコンウェハーの製造方法をを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)シリコンインゴットを所定の大きさのシリコンブロックに分割し、そのシリコンブロック表面を研磨した後に薄板状に切断することでシリコンウェハーを製造するシリコンウェハーの製造方法であって、(b)前記シリコンブロック表面の研磨には、ダイヤモンド研磨布を研磨工具として使用することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1のシリコンウェハーの製造方法において、前記ダイヤモンド研磨布は無端ベルト状に形成され、前記シリコンブロック表面の研磨には、そのダイヤモンド研磨布を1つのホイールの外周面に巻き付けるか、少なくとも2つ以上のホイールに掛け渡した状態で回転させるベルト研磨機を使用することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2のシリコンウェハーの製造方法において、前記ホイールの1つは、前記無端ベルト状に形成される前記ダイヤモンド研磨布に所定の弾性を付与するゴム材から成るコンタクトホイールであることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項3のシリコンウェハーの製造方法において、前記コンタクトホイールの外周面には、周方向に沿って凸部と凹溝とが交互に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる発明のシリコンウェハーの製造方法によれば、シリコンブロック表面の研磨には、ダイヤモンド研磨布を研磨工具として使用することで、シリコンブロック表面の研磨にかかる時間を大幅に短縮することができる。また、ダイヤモンド研磨布による研磨では、ダイヤモンド砥石による研磨と異なり弾性研磨が可能であることから、研磨中にシリコンブロック表面に入る微小なクラックを軽減することができる。
【0013】
また、請求項2にかかる発明のシリコンウェハーの製造方法によれば、シリコンブロック表面の研磨にはベルト研磨機が使用されるため、研磨面に対して平行方向の回転軸での加工が可能となる。このことより、シリコンブロックへの接触面積が小さくなることから、加工効率を向上させることができる。したがって、ダイヤモンド砥石よりも低い研削性能であってもダイヤモンド砥石と同等以上の加工効率を得ることができる。また、ベルト研磨では弾性研削が可能となることから、シリコンブロック表面に入る微小なクラック(ダメージ)を軽減することができる。
【0014】
また、請求項3にかかる発明のシリコンウェハーの製造方法によれば、前記ホイールの1つは、前記ダイヤモンド研磨布に所定の弾性を付与するゴム材から成るコンタクトホイールであるため、コンタクトホイールのゴム硬度を適宜変更することで、ダイヤモンド研磨布の弾性を調整することができる。例えば、ゴム硬度を調整してダイヤモンド研磨布の弾性を最適に設定することで研磨中にシリコンブロック表面に入る微小なクラックを軽減することも可能となる。
【0015】
また、請求項4にかかる発明のシリコンウェハーの製造方法によれば、前記コンタクトホイールの外周面には、周方向に沿って凸部と凹溝とが交互に設けられているため、上記凸部と凹溝との比率を調整することで、研磨時の研磨量や研磨面の面粗度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用されるシリコンウェハーの製造工程を簡単に示すフロー図である。
【図2】本発明が適用されたベルト研磨機の構成を概略的に示す図である。
【図3】図2のコンタクトホイールの外周面の一部を拡大して示した図である。
【図4】図2の無端研磨ベルトの表面を拡大した部分拡大図である。
【図5】図4のダイヤモンドペーストを中心として無端研磨ベルトを切断して拡大した断面図である。
【図6】図2の無端研磨ベルトを用いて所定の研磨条件で研磨したときの粗さ曲線を示す図である。
【図7】図2の無端研磨ベルトを用いて所定の研磨条件で研磨したときの他の粗さ曲線を示す他のである。
【図8】面ダレの定義を説明する図である。
【図9】図2の無端研磨ベルトを用いて研磨した後に面ダレを測定した際の各測定面の位置を説明する図である。
【図10】所定の研磨条件で研磨したシリコンブロック表面のうねり曲線を示す図である。
【図11】所定の研磨条件で研磨したシリコンブロック表面のうねり曲線を示す他の図である。
【図12】単結晶シリコンから製造されるシリコンブロックの四隅に形成される曲面を無端研磨ベルトによって研磨する一例を概略的に示す図である。
【図13】多結晶シリコンインゴットからシリコンウェハーが製造されるまでの流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、好適には、前記ダイヤモンド研磨布は、基材(基材層)の片面に形成される研磨層と、その研磨層上に形成されるダイヤモンド層とからなり、ダイヤモンド層は、ポリイミドやエポキシなどの液状樹脂にダイヤモンド砥粒が混合されたダイヤモンドペーストを研磨層に立体的に塗布した後に熱硬化させることで得られるものである。このようにすれば、一般的な研磨布に比べて安定した研磨性能(研削量、面粗度等)を長時間継続して得ることができる。また、適度な弾性を有することから弾性研磨が可能となり、研磨時にシリコンブロック表面に入る微小なクラックを軽減することができる。
【0018】
また、好適には、ダイヤモンド研磨布は、コンタクトホイールによってシリコンブロック表面に押し当てられることで研磨されるものである。このようにすれば、コンタクトホイールの硬さ等を調整することにより、ダイヤモンド研磨布に適度な弾性を持たせることができるので、研磨時にシリコンブロック表面に入る微小なクラックを軽減することができる。
【0019】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明が適用されるシリコンウェハーの製造工程を多結晶シリコンを一例として簡単に示すフロー図である。なお、本フロー図は、シリコンウェハーの製造に際して主要な工程を示すものであって、例えば洗浄などの細かな工程は省略されている。第1工程STEP1では、原料となるシリコン(Si)を成形型に充填し、この成形型を加熱処理することでシリコンを溶融し、結晶を成長させて縦600mm、横600mm、高さ300mm程度のインゴットを製造する。次いで、第2工程ST2では、そのインゴットをバンドソー等を用いて複数個の小インゴットに分割し、その小インゴットの外周面を排除して複数個のシリコンブロックに分割する。第3工程ST3では、そのシリコンブロックの寸法出しを実施する。具体的には、例えば比較的粗めのダイヤモンド砥石等でシリコンブロックの表面を研削して平滑化する。第4工程ST4では、シリコンブロック表面をさらに研磨して、シリコンブロック表面を所定の面粗さにする表面処理を実施する。そして、第5工程ST5では、研磨されたシリコンブロックをマルチワイヤソーによって所定の厚さに切断する。上記の工程によってシリコンウェハーが製造される。なお、単結晶シリコンの場合であっても、基本的には上記製造工程と略同様である。
【0021】
ここで、第4工程ST4において、シリコンブロック表面を研磨するが、従来では、ダイヤモンド砥石によって寸法出しを実施した後(第3工程ST3に対応)、粒度の異なるダイヤモンドブラシ(例えば#400番、#800番、#2000番等)によって複数回表面研磨を実施するものであった。上記研磨方法では、時間がかかり生産性が低下する問題があった。これに対して、本実施例では、ダイヤモンド研磨布を研磨工具として使用することで、研磨時間を大幅に短縮することを可能とした。以下、ダイヤモンド研磨布の具体的な使用方法およびその使用による効果(研磨時間短縮効果等)について説明する。
【0022】
図2は、本発明が適用されたベルト研磨機10の構成を概略的に示す図である。ベルト研磨機10は、図示しないインゴットより四角柱状に切り出されたシリコンブロック12の表面を研磨する(図1において第4工程ST4に相当)ために使用される。
【0023】
ベルト研磨機10は、研磨の際にシリコンブロック12を搬送するための搬送機構14およびシリコンブロック表面を研磨するための研磨機構16を備えている。搬送機構14は、左右一対の搬送ロール18に搬送用ベルト22が掛け渡されており、図示しない駆動モータによって搬送ロール18が駆動させられることで、搬送用ベルト22が移動(図において左方向)させられる。これに従い、搬送用ベルト22の搬送面22a上に搭載されているシリコンブロック12が搬送用ベルト22の進行方向と同方向(図において左方向)に搬送される。
【0024】
研磨機構16は、図示しない駆動モータによって回転駆動可能な駆動ホイール26、コンタクトホイール28、およびその駆動ホイール26およびコンタクトホイール28に掛け渡されている無端ベルトとして機能する無端研磨ベルト30とを備えている。コンタクトホイール28は、駆動ホイール26の回転駆動に伴って回転させられる無端研磨ベルト30によってシリコンブロック表面を研磨する際に無端研磨ベルト30に好適な押圧力および弾性を付与する機能を有している。具体的には、コンタクトホイール28はゴム材等からなり、そのゴム材の硬さが変更されると、無端研磨ベルト30とシリコンブロック表面とが研磨時に接触する際の押圧力や無端研磨ベルト30の弾性が変化される。したがって、予めコンタクトホイール28のゴム硬度を実験等に基づいて調整することで、無端研磨ベルト30に最適な弾性が付与される。
【0025】
図3は、コンタクトホイール28の外周面の一部を拡大して示した図である。図3に示すように、コンタクトホイール28の外周面には、周方向に沿って凸部28aおよび凹溝28bが交互に周期的に形成されている。なお、上記凸部28aおよび凹溝28bは、ともにコンタクトホイール28の回転軸心と平行に長手方向に厚みを有している。従って、無端研磨ベルト30がコンタクトホイール28に巻き掛けられている際には、凸部28aの外周端面32と無端研磨ベルト30とが接触される一方、凹溝28bと無端研磨ベルト30とは非接触となる。ここで、凸部28aの円周方向の幅寸法を凸幅h1とし、凹溝28bの円周方向の幅寸法を凹幅h2とすると、凸幅h1が大きくなるに従って、コンタクトホイール28と無端研磨ベルト30との接触面積が大きくなる。上記凸部28aの凸幅h1と凹溝28bの凹幅h2との比率を変更することでも、シリコンブロック12の研磨量や研磨後のシリコンブロック表面の面粗度等に影響が生じるため、実験等に基づいて適宜比率が調整され、要求される面粗度によっては凸部、凹部のないコンタクトホイール(プレーンホイール)が使用される。なお、駆動ホイール26およびコンタクトホイール28が本発明の少なくとも2つのホイールに対応している。
【0026】
図4は、ダイヤモンド研磨布が無端ベルト状に連結されることで構成される無端研磨ベルト30(本発明のダイヤモンド研磨布に相当)の表面を拡大した部分拡大図である。図4に示すように、無端研磨ベルト30のシリコンブロック表面と接触する側(研磨側)には、ダイヤモンドペースト38から成るダイヤモンド層44が形成されている。ダイヤモンドペースト38は、例えばスクリーン印刷などによって後述する研磨層42上に規則的に塗布される。なお、上記ダイヤモンドペースト38は、図4において菱形状あるいはストライプ形状で所定の間隔を隔てて規則的に塗布(コーティング)されているが、ダイヤモンドペースト38の塗布形状(コーティングパターン)は、研磨特性に合わせて適宜変更される。
【0027】
図5は、図4の上記ダイヤモンドペースト38を中心として無端研磨ベルト30を切断して拡大した拡大断面図である。本実施例の無端研磨ベルト30は、基材40(基材層40)、研磨層42、およびダイヤモンド層44(ダイヤモンドペースト38)の三層構造で構成されている。基材40(基材層40)は、例えば可撓性を有するポリエステル布や綿の混合物で構成され、その基材40の片面に研磨層42が形成されている。研磨層42は、例えばポリイミドやエポキシなどの液状樹脂から成る接着剤46を塗布した上に砥粒、ガラス粒、鉱物などからなる研磨材48(骨材)を塗布して熱硬化させることで形成される。上記研磨層42が形成されることで、無端研磨ベルト30の強度が増し、その上に塗布されるダイヤモンドペースト38が強く保持される。
【0028】
ダイヤモンド層44を構成するダイヤモンドペースト38は、上記研磨層42の上にスクリーン印刷などによって立体的に塗布される(図4)。ダイヤモンドペースト38は、ダイヤモンド砥粒52が混合されているポリイミドやエポキシなどの液状樹脂50(接着剤)からなり、研磨層42への塗布後に熱硬化させることでダイヤモンド層44が形成される。なお、ダイヤモンドペースト38の厚みは150μm程度、基材40(基材層40)および研磨層42を合わせた厚みt2は650μm程度とされる。
【0029】
上記のように構成されるベルト研磨機10において、図2に示すように駆動ロール26を矢印で示す方向に回転駆動させて無端研磨ベルト30を回転させた状態で、搬送用ベルトによってシリコンブロック12を矢印で示す方向に移動させることにより、シリコンブロック12の表面が研磨される。また、上記ベルト研磨機10は、研磨面に対して平行方向の回転軸で研磨されるので、無端研磨ベルト30の研磨面への接触面積が小さくなって加工効率が高くなる。また、ベルト研磨機10では、研削負荷が駆動ホイール26を駆動させる図示しない駆動モータの駆動電流で設定され、コンタクトホイール28の硬さや凸部28aと凹溝28bとの比を最適に設定することで、無端研磨ベルト30に最適な弾性を持たせることも可能となる。例えば、コンタクトホイール28の硬さを低くすると、無端研磨ベルト30の弾性が高くなり、ダイヤモンドブラシに近い性質となる。このような場合、弾性研磨が可能となって研磨中に入る微小なクラックが軽減される。一方、コンタクトホイール28の硬さを高くすると剛性が高くなり、ダイヤモンド砥石に近い性質となる。このような場合、研磨量を増加させることも可能となる。上記より、要求される研磨量や面粗度等に基づいてコンタクトホイール28を最適に設定することで、要求に合った最適な研磨が可能となる。
【0030】
以下、上記のように構成されるベルト研磨機10によってシリコンブロック12を予め設定されている目標削除量だけ研磨したときの研磨結果について説明する。
【0031】
先ず、目標削除量を100μmとした場合について説明する。なお、本研磨では、シリコンブロック12の寸法出しを目的とするダイヤモンド砥石による研削が予め為されていないシリコンブロック12を使用した。すなわち、ベルト研磨機10のみによる研磨を実施した。ここで、ベルト研磨機10の無端研磨ベルト30は、幅寸法が170mm、周長が2100mmのものを用いてベルトスピードを1500m/minで回転させた。また、駆動ホイール26を駆動させる図示しない駆動モータの駆動電流(研削負荷)を4Aとした。さらに、ベルト研磨機10のコンタクトホイール28のゴム硬度を70度、コンタクトホイール28の凸幅h1と凹幅h2との比を1:1とした。一方、被研削材であるシリコンブロック12は、断面寸法(縦横寸法)が共に156mmで全長が400mmのものを使用し、そのシリコンブロック12を2.0m/minの送りスピードで無端研磨ベルト30を通過させた。また、目標削除量が100μmと比較的大きいため、最初は比較的ダイヤモンド砥粒の粒度が粗い#400番の無端研磨ベルト30を使って2度研磨することで削除量を確保し、さらに粒度の細かい#800番および#2000番の無端研磨ベルト30を1度ずつ使用することで仕上げ研磨とした。
【0032】
表1に上記条件で研磨加工を実施した際の各研磨ベルト毎による削除量S(μm)、面粗度Ra(μm)、研磨に要した研磨時間T(分)を示す。表1において、まず最初にダイヤモンド砥粒の粒度が粗い#400番による研磨を2回実施することで、大きな削除量が得られている。さらに#800番で研磨を実施すると削除量が小さくなる反面、シリコンブロックの面粗度Ra(表面粗さ)が向上した。さらに#2000番で仕上げ研磨を実施すると、面粗度Raが0.042μmと従来方法と変わらない面粗度(従来方法面粗度Ra:0.05μm)が得られた。また、上記4回の研磨によって得られた削除量は109.5μmと目標削除量を越え、その研磨に要した研磨時間Tは、合計で3.2分(0.8分×4)となった。一方、従来方法では、面粗度Raを略等しくするのに20分程度かかっていたことから、本実施例の研磨時間が従来方法に比べて1/6以下と、大幅に研磨時間が短縮された。なお、従来方法の研磨時間(20分)は、実際の研磨と同様に、寸法出しを目的とするダイヤモンド砥石による研磨を実施し、その後に粒度が#500番および#1000番のダイヤモンドブラシによる研磨を実施して100μmの削除量(面粗度0.05μm)を得るのに要する時間に相当する。
【表1】
【0033】
次に、目標削除量(目標研磨量)を20μmとした場合について説明する。なお、本研磨加工では、シリコンブロック12を予めダイヤモンド砥石によって研削したものを使用した。本研磨加工では、目標削除量が20μmと前述した目標削除量(100μm)よりも小さく、予めダイヤモンド砥石によって表面が研磨されているため、ダイヤモンド砥粒の粒度が#600番および#2000番の無端研磨ベルト30を使用して2度の研磨加工を実施した。なお、ベルト寸法やシリコンブロック寸法等の各研磨条件については、前述した研磨加工と同様であるためその説明を省略する。
【0034】
表2に上記条件で研磨加工を実施した場合の各研磨ベルトによる削除量S(μm)、面粗度Ra(μm)、研磨時間T(分)を示す。表2に示すように、粒度が#600番の研磨ベルト30を用いて研磨を実施すると、削除量が25.5μmと目標削除量(20μm)を越える削除量が得られた。次いで、ダイヤモンド砥粒の粒度が#2000番の研磨ベルト30を用いて仕上げ研磨を実施することで、面粗度Raが0.045μmと従来方法(0.05μm)と略変わらない面粗度が得られた。また、上記2回の研磨に要した研磨時間Tは、1.6分(0.8×2)となり、従来方法による研磨で要した時間(15分)の約1/10程度と、大幅に研磨時間が短縮された。なお、従来方法の研磨時間(15分)は、粒度が#500番であるダイヤモンドブラシおよび#1000番のダイヤモンドブラシを用いて研磨した場合に20μmの削除量(面粗度0.05μm)を得るのに要する時間に相当する。
【表2】
【0035】
表3に示す研磨加工による結果は、ダイヤモンド砥粒の粒度が#600番の無端研磨ベルト30でシリコンブロック12を研磨したときに得られた取り代(μm)と面粗度(Ra、Rz)、その後にダイヤモンド砥粒の粒度が#2000番の無端研磨ベルト30でシリコンブロック12を研磨した場合に得られた取り代(μm)と面粗度(Ra、Rz)を示している。本研磨加工では、無端研磨ベルト30のベルト寸法を、幅寸法170mm、周長2100mmとし、ベルトスピードを1500m/minとした。また、駆動ホイール26を駆動させる図示しない駆動モータの駆動電流(研削負荷)を4Aとし、さらに、ベルト研磨機10のコンタクトホイール28のゴム硬度を40度、コンタクトホイール28の凸幅h1と凹幅h2との比を1:1とした。さらに、シリコンブロック12は、断面寸法(縦横寸法)がそれぞれ156mmで全長が400mmとし、そのシリコンブロック12の送りスピードを2.0m/minとした。
【表3】
【0036】
表3に示されるように、#600番で最初に研磨されることで、24.8μmと大きな取り代(削除量)が得られ、次いで#2000番で研磨されることで、面粗度Raが0.045μmと従来方法による研磨で得られる面粗度(0.05μm)と同程度の面粗度が得られた。図6に、上記研磨条件下における面粗度Raに対応する粗さ曲線を参考として示す。なお、図6において、(a)が#600番の無端研磨ベルト30を用いて研磨を実施した場合、(b)が#2000番の無端研磨ベルト30を用いて研磨を実施した場合の粗さ曲線を示している。
【0037】
表4は、表3に対応する研磨条件に対して、コンタクトホイール28のゴム硬度を70度に変更した場合の結果を示している。表4に示すように、ゴム硬度を高くすると、#600番の無端研磨ベルト30で研磨した際に26.6μmとゴム硬度が40度の場合(24.8μm)よりも大きな取り代(削除量)得られた。上記は、ゴム硬度が高くなることで、無端研磨ベルト30の剛性が高くなったためと考えられる。続いて、#2000番の無端研磨ベルト30を使用して研磨すると、面粗度が0.051μmと従来研磨と同程度(0.05μm)の面粗度が得られた。図7に、上記条件下における面粗度Raに対応する粗さ曲線を参考に示す。なお、図6と同様に、(a)が#600番の無端研磨ベルト30を用いて研磨を実施した場合、(b)が#2000番の無端研磨ベルト30を用いて研磨を実施した場合の粗さ曲線を示している。
【表4】
【0038】
表5および表6は、無端研磨ベルト30によってシリコンブロック表面を研磨した際に測定された各角部での面ダレWv(μm)を示している。なお、表5は#600番の無端研磨ベルト30によって研磨を実施した場合の面ダレWvを示しており、表6は#600番の無端研磨ベルト30による研磨を実施した後、さらに#2000番の無端研磨ベルト30による研磨を実施した場合の面ダレWvを示している。ここで、研磨後の面ダレWvを測定するに際して、以下の条件で研磨を実施した。無端研磨ベルト30は、幅寸法が170mm、ベルト周長が2100mmであり、ベルトスピードを1500m/minとした。また、駆動ホイール26を駆動させる図示しない駆動モータの駆動電流(研削負荷)を4Aとし、さらに、ベルト研磨機10のコンタクトホイール28のゴム硬度を40度、コンタクトホイール28の凸幅h1と凹幅h2との比を1:1とした。さらに、シリコンブロック12は、断面寸法(縦横寸法)がそれぞれ156mmで全長が400mmとし、そのシリコンブロック12の送りスピードを2.0m/minとした。なお、研磨前のシリコンブロック12は、予めダイヤモンド砥石による表面研磨が実施されており、そのときの任意の角部の面ダレWvは0.318(μm)であった。
【表5】
【表6】
【0039】
ここで、測定された面ダレWvとは、図8に示すようにシリコンブロック12の角部から内側に10mmの位置を測定基準位置とし、その基準位置から角部に向かうに従って変化する表面深さの最大値Wvを示している。また、表5および表6に示す、測定面A、B、C、Dとは、図9に示すシリコンブロックの研磨面の各角部での測定面に対応している。すなわち、測定面Aは、シリコンブロック12の送り(ワークの送り)に対して後側の角部、測定面Cはシリコンブロック12の送りに対して前側の角部、測定面Bおよび測定面Dはシリコンブロック12の送りに対して垂直な両側の角部の測定面にそれぞれ対応している。
【0040】
表5および表6に示すように、無端研磨ベルト30による研磨が実施されると、各測定面とも研磨前(0.318μm程度)よりも面ダレWvが大きくなっている。上記は無端研磨ベルト30とシリコンインゴット12とが接触する際に無端研磨ベルト30が微小ながら変形することに起因する。ここで、研磨されたシリコンインゴット12を図示しないマルチワイヤソーによって薄板状に切断してシリコンウェハーを製造するに際して、シリコンブロック12の測定面Aおよび測定面Cにおいては、シリコンウェハーに切断する際に除去されるので面ダレWvが大きくなっても問題とならない。一方、測定面Bおよび測定面Dにおいては、切断した際にその角部がシリコンウェハーの角部として残るため、測定面Bおよび測定面Dの面ダレWvが小さいことが好ましい。これに対して、表5および表6に示すように、研磨前の面ダレWv(0.318μm)に比べて測定面B、Dの面ダレWvは大きくなっているものの、シリコンウェハーとして許容される面ダレWvとなる。なお、一般に面ダレWvが50μm以下の範囲が許容される面ダレWvとされている。図10に、面ダレWvを測定した際に測定されるシリコンブロック表面のうねり曲線を参考に示す。ここで、(a)がベルト研磨前のうねり曲線すなわちダイヤモンド砥石による研磨後のうねり曲線を示しており、(b)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Aのうねり曲線を示しており、(c)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Bのうねり曲線を示しており、(d)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Cのうねり曲線を示しており、(e)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Dのうねり曲線を示している。
【0041】
表7および表8は、上述した面ダレ測定時の研磨条件に対して、コンタクトホイール28のゴム硬度を70度に変更した場合に測定された面ダレWvを示している。なお、表7は#600番の無端研磨ベルト30によって研磨を実施した場合の面ダレWvを示しており、表8は#600番の無端研磨ベルト30による研磨を実施した後、さらに#2000番の無端研磨ベルト30による研磨を実施した場合の面ダレWvを示している。また、測定面A、B、C、Dについても前述した測定位置と同様であるためその説明を省略する。
【表7】
【表8】
【0042】
表7および表8に示すように、コンタクトホイール28のゴム硬度(70度)を上げると、測定面Bおよび測定面Dでの面ダレWvが、ゴム硬度(40度)の場合に比べて大幅に改善されている。上記は、ゴム硬度が高くなることで剛性が高くなり、無端研磨ベルト30とシリコンブロック12とが接触する際の無端研磨ベルト30の弾性変形が抑制されるためである。図11に、面ダレWvを測定した際に測定されるシリコンブロック表面のうねり曲線を参考に示す。ここで、(a)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Aのうねり曲線を示しており、(b)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Bのうねり曲線を示しており、(c)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Cのうねり曲線を示しており、(d)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Dのうねり曲線を示している。
【0043】
図10と図11とを比較してもわかるように、コンタクトホイール28のゴム硬度が高くなると、研磨表面のうねり小さくなっていることがわかり、面ダレWvが小さくなっていることがわかる。すなわち、コンタクトホイール28のゴム硬度を高くする(70度)ことで、無端研磨ベルト30の剛性が高くなって弾性変形が小さくなることから、無端研磨ベルト30の性質がダイヤモンド砥石に近くなって面ダレWvが小さくなる。なお、ゴム硬度を低くする(40度)と、無端研磨ベルト30の弾性変形が大きくなり、無端研磨ベルト30の性質がダイヤモンドブラシに近くなって面ダレWv大きくなる。
【0044】
上記のように、無端研磨ベルト30によってシリコンブロック表面を研磨すると、シリコンブロック表面の面粗度Raが0.05μm(#2000番で研磨時)程度となり、従来の方法(ダイヤモンド砥石およびダイヤモンドブラシによる研磨)と変わらない面粗度Raが得られる。ここで、シリコンブロック表面の面粗度Raが改善されると、一般にシリコンブロック12からシリコンウェハーを製造する際の歩留まりが向上することが知られている。具体的には、シリコンブロック表面を研磨せずにシリコンウェハーを製造する場合、歩留まりが85%程度であるのに対して、研磨を実施してシリコンブロック表面の面粗度Raを0.05μm程度にすると、歩留まりが90%となることが確認されている。これに対して、無端研磨ベルト30による研磨を実施したシリコンブロック12からシリコンウェハーを製造したが、歩留まりが90%程度となり、従来の研磨方法(ダイヤモンド砥石およびダイヤモンドブラシによる研磨)と変わらない歩留まりが得られる結果となった。したがって、無端研磨ベルト30によるシリコンブロック12の研磨を実施すれば、高い歩留まりが得られると共に、研磨時間の大幅な短縮化が達成され、生産性が大幅に向上することとなる。
【0045】
また、上述したシリコンブロック12は多結晶インゴットから製造されたものであったが、単結晶シリコンインゴットからシリコンブロック12を製造する場合であっても無端研磨ベルト30による研磨が有効である。単結晶シリコンインゴットは、引き上げ方式により円柱状に製造されるが、上記シリコンインゴットから複数個のシリコンブロック12に切断する際には、歩留まりを向上させるため、通常その円柱断面の曲面Rの一部がシリコンブロック断面の四隅となる。このような場合、シリコンブロック12の四隅に形成される曲面Rを研磨する必要が生じる。これに対して、例えば図12に示すように、シリコンブロック12の曲面Rと同じ形状を有するパッド60を研磨する曲面Rに押し当てた状態で無端研磨ベルト30をシリコンブロック12の長手方向(図において奥行き方向)と同じ方向に移動させることで、曲面Rの研磨加工が可能となる。なお、パッド60は、軸心Cを中心に回転可能な略円柱形状となっており、シリコンブロック12の長手方向に沿って複数個配設されている。このように、単結晶シリコンインゴットから製造されるシリコンブロック12であっても無端研磨ベルト30を使用すると研磨時間が非常に短くなり、十分な面粗度Raを得ることができる。なお、従来では、シリコンブロック12の曲面Rに応じてダイヤモンドブラシを数度に分けて研磨するなど、研磨時間が非常に長くなっていた。上記より、製造効率を低下させることなく、高い歩留まりを得ることができる。
【0046】
また、シリコンブロック12に面取りが施されていた場合であっても、その面取り部を研磨する必要があるが、例えば単結晶シリコンインゴットと同じように、その形状に応じたパッド60を当てるなどして研磨することで、速やかな研磨が可能となる。したがって、製造効率を低下させることなく、高い歩留まりを得ることができる。
【0047】
上述のように、本実施例によれば、シリコンブロック表面の研磨には、無端研磨ベルト30(ダイヤモンド研磨布)を研磨工具として使用することで、シリコンブロック表面の研磨にかかる時間を大幅に短縮することができる。また、無端研磨ベルト30(ダイヤモンド研磨布)による研磨では、ダイヤモンド砥石による研磨と異なり弾性研磨が可能であることから、研磨中にシリコンブロック表面に入る微小なクラックを軽減することができる。
【0048】
また、本実施例によれば、シリコンブロック表面の研磨にはベルト研磨機10が使用されるため、研磨面に対して平行方向の回転軸での加工が可能となる。このことより、シリコンブロック12への接触面積が小さくなることから、加工効率を向上させることができる。したがって、ダイヤモンド砥石よりも低い研削性能であってもダイヤモンド砥石と同等以上の加工効率を得ることができる。また、ベルト研磨では弾性研削が可能となることから、シリコンブロック表面に入る微小なクラック(ダメージ)を軽減することができる。
【0049】
また、本実施例によれば、無端研磨ベルト30(ダイヤモンド研磨布)は、基材40(基材層40)の片面に形成される研磨層42と、その研磨層上に形成されるダイヤモンド層44とからなり、ダイヤモンド層44は、ポリイミドやエポキシなどの液状樹脂にダイヤモンド砥粒が混合されたダイヤモンドペースト38を研磨層に立体的に塗布した後に熱硬化させることで得られるものである。このようにすれば、一般的な研磨布に比べて安定した研磨性能(研削量、面粗度等)を長時間継続して得ることができる。また、適度な弾性を有することから弾性研磨が可能となり、研磨時にシリコンブロック表面に入る微小なクラックを軽減することができる。
【0050】
また、本実施例によれば、無端研磨ベルト30(ダイヤモンド研磨布)に所定の弾性を付与するゴム材から成るコンタクトホイール28を備えるため、コンタクトホイール28のゴム硬度を適宜変更することで、無端研磨ベルト30の弾性を調整することができる。例えば、コンタクトホール28のゴム硬度を調整して無端研磨ベルト30の弾性を最適に設定することで、研磨中にシリコンブロック表面入る微小なクラックを軽減することも可能となる。
【0051】
また、本実施例によれば、コンタクトホイール28の外周面には、周方向に沿って凸部28aと凹溝28bとが交互に設けられているため、上記凸部28aと凹溝28bとの比率を調整することで、研磨時の研磨量や研磨面の面粗度を調整することができる。
【0052】
また、本実施例によれば、ベルト研磨機10では、工具交換の際に無端研磨ベルト30を掛け替えるだけで済むため、ダイヤモンド砥石やダイヤブラシに比べて短時間で工具交換を実施することができる。従ってベルト研磨機10の作動停止時間が短くなり生産効率が向上する。
【0053】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0054】
例えば、前述の実施例のベルト研磨機10の構成は一例であって、被削材(シリコンブロック12)の形状等に応じて適宜変更しても構わない。また、必ずしもコンタクトホイール28によって研磨ベルト30をシリコンブロック12に押し付ける構成である必要はない。例えばバックアップベルトや板状、ローラ上のプラテン、空気圧等を利用して無端研磨ベルト30をシリコンブロック12に押し付ける構造、或いはフリーベルト構造であっても構わない。
【0055】
また、前述の実施例では、無端研磨ベルト30において、基材40(基材層40)とダイヤモンド層44の間に研磨層42が形成されているが、研磨層42は必ずしも必要ではなく、基材40(基材層40)に直接ダイヤモンド層44を形成するものであっても構わない。
【0056】
また、前述の実施例では、シリコンブロック12をバンドソーによって切り出した後、シリコンブロック12の寸法出しをするためにダイヤモンド砥石によって研削するとしたが、上記工程を省略しても構わない。このような場合、ベルト研磨機10によってシリコンブロック12の寸法出しを実施することとなる。例えば、最初の研磨において、粒度の粗い無端研磨ベルト30を使用し、コンタクトホイール28のゴム硬度を高くして研削することで寸法出しと同様の結果を得ることができる。
【0057】
また、前述の実施例では、無端研磨ベルト30は、2つのホイール(駆動ホイール26、コンタクトホール28)に掛け渡されているが、1つのホイールの外周面に巻き付けられた形式、或いは3つ以上のホイールに掛け渡された形式であっても本発明と同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
10:ベルト研磨機
12:シリコンブロック
26:駆動ホイール(ホイール)
28:コンタクトホイール(ホイール)
30:無端研磨ベルト(ダイヤモンド研磨布)
202:小インゴット(インゴット)
206:シリコンウェハー
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルに使用されるシリコンウェハーの製造方法に係り、特に、シリコンウェハーの歩留まりを改善し、且つ、製造効率を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池のパネルとして使用されるシリコンウェハーの製造方法を簡単に説明すると、多結晶シリコンの場合、四角柱状に製造されるシリコンインゴットをバンドソーなどを使用して所定の大きさに切り出し、切り出された部材(シリコンブロック)をマルチワイヤソーで薄くスライスすることで製造される。図13に多結晶シリコンインゴットによるシリコンウェハーの製造工程を各工程毎に簡単に示す。先ず、四角柱状のインゴット200を成形型などで製造し、製造されたインゴット200(a)をバンドソーなどを用いて外周部を排除し、内部を所定のブロックに分割する(b)ことで、シリコンブロック202(c)が製造される。この製造されたシリコンブロック202をマルチワイヤソーで薄板状に切断することでシリコンウェハー204(d)が製造される。なお、単結晶のシリコンインゴットであっても最初に製造されるシリコンインゴットが丸形形状であるだけであって、基本的な製造方法は特に相違しない。
【0003】
ここで、マルチワイヤソーによってシリコンブロックを薄板状に切断してシリコンウェハーを製造する際、シリコンブロックの表面に微小なクラックが入った状態で切断されると、例えば図13(d)に示すように、切断中にシリコンウェハー表面に割れ(クラック)206が生じて歩留まりが低下することが知られていた。これに対して、特許文献1のシリコンウェハーの加工方法では、シリコンブロックを研磨して表面に存在する微小なクラックを取り除き、表面を平坦化することによって歩留まりを改善する技術が開示されている。また、特許文献2の半導体ウェハ(シリコンウェハー)の製造方法では、シリコンブロック表面を研磨して表面の粗さRmaxを2.5μm以下にすると共に、ブロック端面を面取りしてその面取りした端面縁部の表面についても研磨によって粗さRmaxを2.5μm以下にすることで、シリコンウェハーの歩留まりを改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−176014号公報
【特許文献2】特開2002−237476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のシリコンウェハーの製造方法では、具体的には、ダイヤモンド砥石(ダイヤモンドホイール)によるシリコンブロックの表面研磨を実施している。また、特許文献2の半導体ウェハーの製造方法では、回転ブラシ(ダイヤモンドブラシなど)を用いてシリコンブロック表面を研磨している。
【0006】
しかしながら、上記ダイヤモンド砥石もしくはダイヤモンドブラシによって研磨を行った場合、それぞれ以下のような問題が発生する。ダイヤモンド砥石によって研磨を実施する場合、加工精度は得られるものの、ダイヤモンド砥石が剛性体のためにさらに加工ダメージ(微小なクラック)が入り易く、その加工ダメージを除去するためにダイヤモンドブラシ等によるさらなる仕上加工が必要となる。結果として、研磨に時間がかかってしまい生産効率が低下する。一方、ダイヤモンドブラシによる仕上加工は、高弾性であるため研磨による加工ダメージは入り難いものの、ダイヤモンドブラシによる削除量が小さいため、研磨に時間がかかって生産効率が低下する。また、ダイヤモンドブラシは、柔軟性が高く加工時の切込み量が比較的大きいため、シリコンブロックの角部がダレ易くなる。さらに工具交換が容易でなく、交換時の研磨機停止時間が長くなる。上記のように、ダイヤモンド砥石、ダイヤモンドブラシ共に研磨時間が長くなり、生産効率が低下する問題があった。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、シリコンインゴットからシリコンウェハーを製造するに際して、歩留まりを改善させることができると共に、生産効率の低下も防止することができるシリコンウェハーの製造方法をを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)シリコンインゴットを所定の大きさのシリコンブロックに分割し、そのシリコンブロック表面を研磨した後に薄板状に切断することでシリコンウェハーを製造するシリコンウェハーの製造方法であって、(b)前記シリコンブロック表面の研磨には、ダイヤモンド研磨布を研磨工具として使用することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1のシリコンウェハーの製造方法において、前記ダイヤモンド研磨布は無端ベルト状に形成され、前記シリコンブロック表面の研磨には、そのダイヤモンド研磨布を1つのホイールの外周面に巻き付けるか、少なくとも2つ以上のホイールに掛け渡した状態で回転させるベルト研磨機を使用することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2のシリコンウェハーの製造方法において、前記ホイールの1つは、前記無端ベルト状に形成される前記ダイヤモンド研磨布に所定の弾性を付与するゴム材から成るコンタクトホイールであることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項3のシリコンウェハーの製造方法において、前記コンタクトホイールの外周面には、周方向に沿って凸部と凹溝とが交互に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる発明のシリコンウェハーの製造方法によれば、シリコンブロック表面の研磨には、ダイヤモンド研磨布を研磨工具として使用することで、シリコンブロック表面の研磨にかかる時間を大幅に短縮することができる。また、ダイヤモンド研磨布による研磨では、ダイヤモンド砥石による研磨と異なり弾性研磨が可能であることから、研磨中にシリコンブロック表面に入る微小なクラックを軽減することができる。
【0013】
また、請求項2にかかる発明のシリコンウェハーの製造方法によれば、シリコンブロック表面の研磨にはベルト研磨機が使用されるため、研磨面に対して平行方向の回転軸での加工が可能となる。このことより、シリコンブロックへの接触面積が小さくなることから、加工効率を向上させることができる。したがって、ダイヤモンド砥石よりも低い研削性能であってもダイヤモンド砥石と同等以上の加工効率を得ることができる。また、ベルト研磨では弾性研削が可能となることから、シリコンブロック表面に入る微小なクラック(ダメージ)を軽減することができる。
【0014】
また、請求項3にかかる発明のシリコンウェハーの製造方法によれば、前記ホイールの1つは、前記ダイヤモンド研磨布に所定の弾性を付与するゴム材から成るコンタクトホイールであるため、コンタクトホイールのゴム硬度を適宜変更することで、ダイヤモンド研磨布の弾性を調整することができる。例えば、ゴム硬度を調整してダイヤモンド研磨布の弾性を最適に設定することで研磨中にシリコンブロック表面に入る微小なクラックを軽減することも可能となる。
【0015】
また、請求項4にかかる発明のシリコンウェハーの製造方法によれば、前記コンタクトホイールの外周面には、周方向に沿って凸部と凹溝とが交互に設けられているため、上記凸部と凹溝との比率を調整することで、研磨時の研磨量や研磨面の面粗度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用されるシリコンウェハーの製造工程を簡単に示すフロー図である。
【図2】本発明が適用されたベルト研磨機の構成を概略的に示す図である。
【図3】図2のコンタクトホイールの外周面の一部を拡大して示した図である。
【図4】図2の無端研磨ベルトの表面を拡大した部分拡大図である。
【図5】図4のダイヤモンドペーストを中心として無端研磨ベルトを切断して拡大した断面図である。
【図6】図2の無端研磨ベルトを用いて所定の研磨条件で研磨したときの粗さ曲線を示す図である。
【図7】図2の無端研磨ベルトを用いて所定の研磨条件で研磨したときの他の粗さ曲線を示す他のである。
【図8】面ダレの定義を説明する図である。
【図9】図2の無端研磨ベルトを用いて研磨した後に面ダレを測定した際の各測定面の位置を説明する図である。
【図10】所定の研磨条件で研磨したシリコンブロック表面のうねり曲線を示す図である。
【図11】所定の研磨条件で研磨したシリコンブロック表面のうねり曲線を示す他の図である。
【図12】単結晶シリコンから製造されるシリコンブロックの四隅に形成される曲面を無端研磨ベルトによって研磨する一例を概略的に示す図である。
【図13】多結晶シリコンインゴットからシリコンウェハーが製造されるまでの流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、好適には、前記ダイヤモンド研磨布は、基材(基材層)の片面に形成される研磨層と、その研磨層上に形成されるダイヤモンド層とからなり、ダイヤモンド層は、ポリイミドやエポキシなどの液状樹脂にダイヤモンド砥粒が混合されたダイヤモンドペーストを研磨層に立体的に塗布した後に熱硬化させることで得られるものである。このようにすれば、一般的な研磨布に比べて安定した研磨性能(研削量、面粗度等)を長時間継続して得ることができる。また、適度な弾性を有することから弾性研磨が可能となり、研磨時にシリコンブロック表面に入る微小なクラックを軽減することができる。
【0018】
また、好適には、ダイヤモンド研磨布は、コンタクトホイールによってシリコンブロック表面に押し当てられることで研磨されるものである。このようにすれば、コンタクトホイールの硬さ等を調整することにより、ダイヤモンド研磨布に適度な弾性を持たせることができるので、研磨時にシリコンブロック表面に入る微小なクラックを軽減することができる。
【0019】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明が適用されるシリコンウェハーの製造工程を多結晶シリコンを一例として簡単に示すフロー図である。なお、本フロー図は、シリコンウェハーの製造に際して主要な工程を示すものであって、例えば洗浄などの細かな工程は省略されている。第1工程STEP1では、原料となるシリコン(Si)を成形型に充填し、この成形型を加熱処理することでシリコンを溶融し、結晶を成長させて縦600mm、横600mm、高さ300mm程度のインゴットを製造する。次いで、第2工程ST2では、そのインゴットをバンドソー等を用いて複数個の小インゴットに分割し、その小インゴットの外周面を排除して複数個のシリコンブロックに分割する。第3工程ST3では、そのシリコンブロックの寸法出しを実施する。具体的には、例えば比較的粗めのダイヤモンド砥石等でシリコンブロックの表面を研削して平滑化する。第4工程ST4では、シリコンブロック表面をさらに研磨して、シリコンブロック表面を所定の面粗さにする表面処理を実施する。そして、第5工程ST5では、研磨されたシリコンブロックをマルチワイヤソーによって所定の厚さに切断する。上記の工程によってシリコンウェハーが製造される。なお、単結晶シリコンの場合であっても、基本的には上記製造工程と略同様である。
【0021】
ここで、第4工程ST4において、シリコンブロック表面を研磨するが、従来では、ダイヤモンド砥石によって寸法出しを実施した後(第3工程ST3に対応)、粒度の異なるダイヤモンドブラシ(例えば#400番、#800番、#2000番等)によって複数回表面研磨を実施するものであった。上記研磨方法では、時間がかかり生産性が低下する問題があった。これに対して、本実施例では、ダイヤモンド研磨布を研磨工具として使用することで、研磨時間を大幅に短縮することを可能とした。以下、ダイヤモンド研磨布の具体的な使用方法およびその使用による効果(研磨時間短縮効果等)について説明する。
【0022】
図2は、本発明が適用されたベルト研磨機10の構成を概略的に示す図である。ベルト研磨機10は、図示しないインゴットより四角柱状に切り出されたシリコンブロック12の表面を研磨する(図1において第4工程ST4に相当)ために使用される。
【0023】
ベルト研磨機10は、研磨の際にシリコンブロック12を搬送するための搬送機構14およびシリコンブロック表面を研磨するための研磨機構16を備えている。搬送機構14は、左右一対の搬送ロール18に搬送用ベルト22が掛け渡されており、図示しない駆動モータによって搬送ロール18が駆動させられることで、搬送用ベルト22が移動(図において左方向)させられる。これに従い、搬送用ベルト22の搬送面22a上に搭載されているシリコンブロック12が搬送用ベルト22の進行方向と同方向(図において左方向)に搬送される。
【0024】
研磨機構16は、図示しない駆動モータによって回転駆動可能な駆動ホイール26、コンタクトホイール28、およびその駆動ホイール26およびコンタクトホイール28に掛け渡されている無端ベルトとして機能する無端研磨ベルト30とを備えている。コンタクトホイール28は、駆動ホイール26の回転駆動に伴って回転させられる無端研磨ベルト30によってシリコンブロック表面を研磨する際に無端研磨ベルト30に好適な押圧力および弾性を付与する機能を有している。具体的には、コンタクトホイール28はゴム材等からなり、そのゴム材の硬さが変更されると、無端研磨ベルト30とシリコンブロック表面とが研磨時に接触する際の押圧力や無端研磨ベルト30の弾性が変化される。したがって、予めコンタクトホイール28のゴム硬度を実験等に基づいて調整することで、無端研磨ベルト30に最適な弾性が付与される。
【0025】
図3は、コンタクトホイール28の外周面の一部を拡大して示した図である。図3に示すように、コンタクトホイール28の外周面には、周方向に沿って凸部28aおよび凹溝28bが交互に周期的に形成されている。なお、上記凸部28aおよび凹溝28bは、ともにコンタクトホイール28の回転軸心と平行に長手方向に厚みを有している。従って、無端研磨ベルト30がコンタクトホイール28に巻き掛けられている際には、凸部28aの外周端面32と無端研磨ベルト30とが接触される一方、凹溝28bと無端研磨ベルト30とは非接触となる。ここで、凸部28aの円周方向の幅寸法を凸幅h1とし、凹溝28bの円周方向の幅寸法を凹幅h2とすると、凸幅h1が大きくなるに従って、コンタクトホイール28と無端研磨ベルト30との接触面積が大きくなる。上記凸部28aの凸幅h1と凹溝28bの凹幅h2との比率を変更することでも、シリコンブロック12の研磨量や研磨後のシリコンブロック表面の面粗度等に影響が生じるため、実験等に基づいて適宜比率が調整され、要求される面粗度によっては凸部、凹部のないコンタクトホイール(プレーンホイール)が使用される。なお、駆動ホイール26およびコンタクトホイール28が本発明の少なくとも2つのホイールに対応している。
【0026】
図4は、ダイヤモンド研磨布が無端ベルト状に連結されることで構成される無端研磨ベルト30(本発明のダイヤモンド研磨布に相当)の表面を拡大した部分拡大図である。図4に示すように、無端研磨ベルト30のシリコンブロック表面と接触する側(研磨側)には、ダイヤモンドペースト38から成るダイヤモンド層44が形成されている。ダイヤモンドペースト38は、例えばスクリーン印刷などによって後述する研磨層42上に規則的に塗布される。なお、上記ダイヤモンドペースト38は、図4において菱形状あるいはストライプ形状で所定の間隔を隔てて規則的に塗布(コーティング)されているが、ダイヤモンドペースト38の塗布形状(コーティングパターン)は、研磨特性に合わせて適宜変更される。
【0027】
図5は、図4の上記ダイヤモンドペースト38を中心として無端研磨ベルト30を切断して拡大した拡大断面図である。本実施例の無端研磨ベルト30は、基材40(基材層40)、研磨層42、およびダイヤモンド層44(ダイヤモンドペースト38)の三層構造で構成されている。基材40(基材層40)は、例えば可撓性を有するポリエステル布や綿の混合物で構成され、その基材40の片面に研磨層42が形成されている。研磨層42は、例えばポリイミドやエポキシなどの液状樹脂から成る接着剤46を塗布した上に砥粒、ガラス粒、鉱物などからなる研磨材48(骨材)を塗布して熱硬化させることで形成される。上記研磨層42が形成されることで、無端研磨ベルト30の強度が増し、その上に塗布されるダイヤモンドペースト38が強く保持される。
【0028】
ダイヤモンド層44を構成するダイヤモンドペースト38は、上記研磨層42の上にスクリーン印刷などによって立体的に塗布される(図4)。ダイヤモンドペースト38は、ダイヤモンド砥粒52が混合されているポリイミドやエポキシなどの液状樹脂50(接着剤)からなり、研磨層42への塗布後に熱硬化させることでダイヤモンド層44が形成される。なお、ダイヤモンドペースト38の厚みは150μm程度、基材40(基材層40)および研磨層42を合わせた厚みt2は650μm程度とされる。
【0029】
上記のように構成されるベルト研磨機10において、図2に示すように駆動ロール26を矢印で示す方向に回転駆動させて無端研磨ベルト30を回転させた状態で、搬送用ベルトによってシリコンブロック12を矢印で示す方向に移動させることにより、シリコンブロック12の表面が研磨される。また、上記ベルト研磨機10は、研磨面に対して平行方向の回転軸で研磨されるので、無端研磨ベルト30の研磨面への接触面積が小さくなって加工効率が高くなる。また、ベルト研磨機10では、研削負荷が駆動ホイール26を駆動させる図示しない駆動モータの駆動電流で設定され、コンタクトホイール28の硬さや凸部28aと凹溝28bとの比を最適に設定することで、無端研磨ベルト30に最適な弾性を持たせることも可能となる。例えば、コンタクトホイール28の硬さを低くすると、無端研磨ベルト30の弾性が高くなり、ダイヤモンドブラシに近い性質となる。このような場合、弾性研磨が可能となって研磨中に入る微小なクラックが軽減される。一方、コンタクトホイール28の硬さを高くすると剛性が高くなり、ダイヤモンド砥石に近い性質となる。このような場合、研磨量を増加させることも可能となる。上記より、要求される研磨量や面粗度等に基づいてコンタクトホイール28を最適に設定することで、要求に合った最適な研磨が可能となる。
【0030】
以下、上記のように構成されるベルト研磨機10によってシリコンブロック12を予め設定されている目標削除量だけ研磨したときの研磨結果について説明する。
【0031】
先ず、目標削除量を100μmとした場合について説明する。なお、本研磨では、シリコンブロック12の寸法出しを目的とするダイヤモンド砥石による研削が予め為されていないシリコンブロック12を使用した。すなわち、ベルト研磨機10のみによる研磨を実施した。ここで、ベルト研磨機10の無端研磨ベルト30は、幅寸法が170mm、周長が2100mmのものを用いてベルトスピードを1500m/minで回転させた。また、駆動ホイール26を駆動させる図示しない駆動モータの駆動電流(研削負荷)を4Aとした。さらに、ベルト研磨機10のコンタクトホイール28のゴム硬度を70度、コンタクトホイール28の凸幅h1と凹幅h2との比を1:1とした。一方、被研削材であるシリコンブロック12は、断面寸法(縦横寸法)が共に156mmで全長が400mmのものを使用し、そのシリコンブロック12を2.0m/minの送りスピードで無端研磨ベルト30を通過させた。また、目標削除量が100μmと比較的大きいため、最初は比較的ダイヤモンド砥粒の粒度が粗い#400番の無端研磨ベルト30を使って2度研磨することで削除量を確保し、さらに粒度の細かい#800番および#2000番の無端研磨ベルト30を1度ずつ使用することで仕上げ研磨とした。
【0032】
表1に上記条件で研磨加工を実施した際の各研磨ベルト毎による削除量S(μm)、面粗度Ra(μm)、研磨に要した研磨時間T(分)を示す。表1において、まず最初にダイヤモンド砥粒の粒度が粗い#400番による研磨を2回実施することで、大きな削除量が得られている。さらに#800番で研磨を実施すると削除量が小さくなる反面、シリコンブロックの面粗度Ra(表面粗さ)が向上した。さらに#2000番で仕上げ研磨を実施すると、面粗度Raが0.042μmと従来方法と変わらない面粗度(従来方法面粗度Ra:0.05μm)が得られた。また、上記4回の研磨によって得られた削除量は109.5μmと目標削除量を越え、その研磨に要した研磨時間Tは、合計で3.2分(0.8分×4)となった。一方、従来方法では、面粗度Raを略等しくするのに20分程度かかっていたことから、本実施例の研磨時間が従来方法に比べて1/6以下と、大幅に研磨時間が短縮された。なお、従来方法の研磨時間(20分)は、実際の研磨と同様に、寸法出しを目的とするダイヤモンド砥石による研磨を実施し、その後に粒度が#500番および#1000番のダイヤモンドブラシによる研磨を実施して100μmの削除量(面粗度0.05μm)を得るのに要する時間に相当する。
【表1】
【0033】
次に、目標削除量(目標研磨量)を20μmとした場合について説明する。なお、本研磨加工では、シリコンブロック12を予めダイヤモンド砥石によって研削したものを使用した。本研磨加工では、目標削除量が20μmと前述した目標削除量(100μm)よりも小さく、予めダイヤモンド砥石によって表面が研磨されているため、ダイヤモンド砥粒の粒度が#600番および#2000番の無端研磨ベルト30を使用して2度の研磨加工を実施した。なお、ベルト寸法やシリコンブロック寸法等の各研磨条件については、前述した研磨加工と同様であるためその説明を省略する。
【0034】
表2に上記条件で研磨加工を実施した場合の各研磨ベルトによる削除量S(μm)、面粗度Ra(μm)、研磨時間T(分)を示す。表2に示すように、粒度が#600番の研磨ベルト30を用いて研磨を実施すると、削除量が25.5μmと目標削除量(20μm)を越える削除量が得られた。次いで、ダイヤモンド砥粒の粒度が#2000番の研磨ベルト30を用いて仕上げ研磨を実施することで、面粗度Raが0.045μmと従来方法(0.05μm)と略変わらない面粗度が得られた。また、上記2回の研磨に要した研磨時間Tは、1.6分(0.8×2)となり、従来方法による研磨で要した時間(15分)の約1/10程度と、大幅に研磨時間が短縮された。なお、従来方法の研磨時間(15分)は、粒度が#500番であるダイヤモンドブラシおよび#1000番のダイヤモンドブラシを用いて研磨した場合に20μmの削除量(面粗度0.05μm)を得るのに要する時間に相当する。
【表2】
【0035】
表3に示す研磨加工による結果は、ダイヤモンド砥粒の粒度が#600番の無端研磨ベルト30でシリコンブロック12を研磨したときに得られた取り代(μm)と面粗度(Ra、Rz)、その後にダイヤモンド砥粒の粒度が#2000番の無端研磨ベルト30でシリコンブロック12を研磨した場合に得られた取り代(μm)と面粗度(Ra、Rz)を示している。本研磨加工では、無端研磨ベルト30のベルト寸法を、幅寸法170mm、周長2100mmとし、ベルトスピードを1500m/minとした。また、駆動ホイール26を駆動させる図示しない駆動モータの駆動電流(研削負荷)を4Aとし、さらに、ベルト研磨機10のコンタクトホイール28のゴム硬度を40度、コンタクトホイール28の凸幅h1と凹幅h2との比を1:1とした。さらに、シリコンブロック12は、断面寸法(縦横寸法)がそれぞれ156mmで全長が400mmとし、そのシリコンブロック12の送りスピードを2.0m/minとした。
【表3】
【0036】
表3に示されるように、#600番で最初に研磨されることで、24.8μmと大きな取り代(削除量)が得られ、次いで#2000番で研磨されることで、面粗度Raが0.045μmと従来方法による研磨で得られる面粗度(0.05μm)と同程度の面粗度が得られた。図6に、上記研磨条件下における面粗度Raに対応する粗さ曲線を参考として示す。なお、図6において、(a)が#600番の無端研磨ベルト30を用いて研磨を実施した場合、(b)が#2000番の無端研磨ベルト30を用いて研磨を実施した場合の粗さ曲線を示している。
【0037】
表4は、表3に対応する研磨条件に対して、コンタクトホイール28のゴム硬度を70度に変更した場合の結果を示している。表4に示すように、ゴム硬度を高くすると、#600番の無端研磨ベルト30で研磨した際に26.6μmとゴム硬度が40度の場合(24.8μm)よりも大きな取り代(削除量)得られた。上記は、ゴム硬度が高くなることで、無端研磨ベルト30の剛性が高くなったためと考えられる。続いて、#2000番の無端研磨ベルト30を使用して研磨すると、面粗度が0.051μmと従来研磨と同程度(0.05μm)の面粗度が得られた。図7に、上記条件下における面粗度Raに対応する粗さ曲線を参考に示す。なお、図6と同様に、(a)が#600番の無端研磨ベルト30を用いて研磨を実施した場合、(b)が#2000番の無端研磨ベルト30を用いて研磨を実施した場合の粗さ曲線を示している。
【表4】
【0038】
表5および表6は、無端研磨ベルト30によってシリコンブロック表面を研磨した際に測定された各角部での面ダレWv(μm)を示している。なお、表5は#600番の無端研磨ベルト30によって研磨を実施した場合の面ダレWvを示しており、表6は#600番の無端研磨ベルト30による研磨を実施した後、さらに#2000番の無端研磨ベルト30による研磨を実施した場合の面ダレWvを示している。ここで、研磨後の面ダレWvを測定するに際して、以下の条件で研磨を実施した。無端研磨ベルト30は、幅寸法が170mm、ベルト周長が2100mmであり、ベルトスピードを1500m/minとした。また、駆動ホイール26を駆動させる図示しない駆動モータの駆動電流(研削負荷)を4Aとし、さらに、ベルト研磨機10のコンタクトホイール28のゴム硬度を40度、コンタクトホイール28の凸幅h1と凹幅h2との比を1:1とした。さらに、シリコンブロック12は、断面寸法(縦横寸法)がそれぞれ156mmで全長が400mmとし、そのシリコンブロック12の送りスピードを2.0m/minとした。なお、研磨前のシリコンブロック12は、予めダイヤモンド砥石による表面研磨が実施されており、そのときの任意の角部の面ダレWvは0.318(μm)であった。
【表5】
【表6】
【0039】
ここで、測定された面ダレWvとは、図8に示すようにシリコンブロック12の角部から内側に10mmの位置を測定基準位置とし、その基準位置から角部に向かうに従って変化する表面深さの最大値Wvを示している。また、表5および表6に示す、測定面A、B、C、Dとは、図9に示すシリコンブロックの研磨面の各角部での測定面に対応している。すなわち、測定面Aは、シリコンブロック12の送り(ワークの送り)に対して後側の角部、測定面Cはシリコンブロック12の送りに対して前側の角部、測定面Bおよび測定面Dはシリコンブロック12の送りに対して垂直な両側の角部の測定面にそれぞれ対応している。
【0040】
表5および表6に示すように、無端研磨ベルト30による研磨が実施されると、各測定面とも研磨前(0.318μm程度)よりも面ダレWvが大きくなっている。上記は無端研磨ベルト30とシリコンインゴット12とが接触する際に無端研磨ベルト30が微小ながら変形することに起因する。ここで、研磨されたシリコンインゴット12を図示しないマルチワイヤソーによって薄板状に切断してシリコンウェハーを製造するに際して、シリコンブロック12の測定面Aおよび測定面Cにおいては、シリコンウェハーに切断する際に除去されるので面ダレWvが大きくなっても問題とならない。一方、測定面Bおよび測定面Dにおいては、切断した際にその角部がシリコンウェハーの角部として残るため、測定面Bおよび測定面Dの面ダレWvが小さいことが好ましい。これに対して、表5および表6に示すように、研磨前の面ダレWv(0.318μm)に比べて測定面B、Dの面ダレWvは大きくなっているものの、シリコンウェハーとして許容される面ダレWvとなる。なお、一般に面ダレWvが50μm以下の範囲が許容される面ダレWvとされている。図10に、面ダレWvを測定した際に測定されるシリコンブロック表面のうねり曲線を参考に示す。ここで、(a)がベルト研磨前のうねり曲線すなわちダイヤモンド砥石による研磨後のうねり曲線を示しており、(b)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Aのうねり曲線を示しており、(c)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Bのうねり曲線を示しており、(d)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Cのうねり曲線を示しており、(e)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Dのうねり曲線を示している。
【0041】
表7および表8は、上述した面ダレ測定時の研磨条件に対して、コンタクトホイール28のゴム硬度を70度に変更した場合に測定された面ダレWvを示している。なお、表7は#600番の無端研磨ベルト30によって研磨を実施した場合の面ダレWvを示しており、表8は#600番の無端研磨ベルト30による研磨を実施した後、さらに#2000番の無端研磨ベルト30による研磨を実施した場合の面ダレWvを示している。また、測定面A、B、C、Dについても前述した測定位置と同様であるためその説明を省略する。
【表7】
【表8】
【0042】
表7および表8に示すように、コンタクトホイール28のゴム硬度(70度)を上げると、測定面Bおよび測定面Dでの面ダレWvが、ゴム硬度(40度)の場合に比べて大幅に改善されている。上記は、ゴム硬度が高くなることで剛性が高くなり、無端研磨ベルト30とシリコンブロック12とが接触する際の無端研磨ベルト30の弾性変形が抑制されるためである。図11に、面ダレWvを測定した際に測定されるシリコンブロック表面のうねり曲線を参考に示す。ここで、(a)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Aのうねり曲線を示しており、(b)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Bのうねり曲線を示しており、(c)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Cのうねり曲線を示しており、(d)が無端研磨ベルト30による研磨後(#2000番)の測定面Dのうねり曲線を示している。
【0043】
図10と図11とを比較してもわかるように、コンタクトホイール28のゴム硬度が高くなると、研磨表面のうねり小さくなっていることがわかり、面ダレWvが小さくなっていることがわかる。すなわち、コンタクトホイール28のゴム硬度を高くする(70度)ことで、無端研磨ベルト30の剛性が高くなって弾性変形が小さくなることから、無端研磨ベルト30の性質がダイヤモンド砥石に近くなって面ダレWvが小さくなる。なお、ゴム硬度を低くする(40度)と、無端研磨ベルト30の弾性変形が大きくなり、無端研磨ベルト30の性質がダイヤモンドブラシに近くなって面ダレWv大きくなる。
【0044】
上記のように、無端研磨ベルト30によってシリコンブロック表面を研磨すると、シリコンブロック表面の面粗度Raが0.05μm(#2000番で研磨時)程度となり、従来の方法(ダイヤモンド砥石およびダイヤモンドブラシによる研磨)と変わらない面粗度Raが得られる。ここで、シリコンブロック表面の面粗度Raが改善されると、一般にシリコンブロック12からシリコンウェハーを製造する際の歩留まりが向上することが知られている。具体的には、シリコンブロック表面を研磨せずにシリコンウェハーを製造する場合、歩留まりが85%程度であるのに対して、研磨を実施してシリコンブロック表面の面粗度Raを0.05μm程度にすると、歩留まりが90%となることが確認されている。これに対して、無端研磨ベルト30による研磨を実施したシリコンブロック12からシリコンウェハーを製造したが、歩留まりが90%程度となり、従来の研磨方法(ダイヤモンド砥石およびダイヤモンドブラシによる研磨)と変わらない歩留まりが得られる結果となった。したがって、無端研磨ベルト30によるシリコンブロック12の研磨を実施すれば、高い歩留まりが得られると共に、研磨時間の大幅な短縮化が達成され、生産性が大幅に向上することとなる。
【0045】
また、上述したシリコンブロック12は多結晶インゴットから製造されたものであったが、単結晶シリコンインゴットからシリコンブロック12を製造する場合であっても無端研磨ベルト30による研磨が有効である。単結晶シリコンインゴットは、引き上げ方式により円柱状に製造されるが、上記シリコンインゴットから複数個のシリコンブロック12に切断する際には、歩留まりを向上させるため、通常その円柱断面の曲面Rの一部がシリコンブロック断面の四隅となる。このような場合、シリコンブロック12の四隅に形成される曲面Rを研磨する必要が生じる。これに対して、例えば図12に示すように、シリコンブロック12の曲面Rと同じ形状を有するパッド60を研磨する曲面Rに押し当てた状態で無端研磨ベルト30をシリコンブロック12の長手方向(図において奥行き方向)と同じ方向に移動させることで、曲面Rの研磨加工が可能となる。なお、パッド60は、軸心Cを中心に回転可能な略円柱形状となっており、シリコンブロック12の長手方向に沿って複数個配設されている。このように、単結晶シリコンインゴットから製造されるシリコンブロック12であっても無端研磨ベルト30を使用すると研磨時間が非常に短くなり、十分な面粗度Raを得ることができる。なお、従来では、シリコンブロック12の曲面Rに応じてダイヤモンドブラシを数度に分けて研磨するなど、研磨時間が非常に長くなっていた。上記より、製造効率を低下させることなく、高い歩留まりを得ることができる。
【0046】
また、シリコンブロック12に面取りが施されていた場合であっても、その面取り部を研磨する必要があるが、例えば単結晶シリコンインゴットと同じように、その形状に応じたパッド60を当てるなどして研磨することで、速やかな研磨が可能となる。したがって、製造効率を低下させることなく、高い歩留まりを得ることができる。
【0047】
上述のように、本実施例によれば、シリコンブロック表面の研磨には、無端研磨ベルト30(ダイヤモンド研磨布)を研磨工具として使用することで、シリコンブロック表面の研磨にかかる時間を大幅に短縮することができる。また、無端研磨ベルト30(ダイヤモンド研磨布)による研磨では、ダイヤモンド砥石による研磨と異なり弾性研磨が可能であることから、研磨中にシリコンブロック表面に入る微小なクラックを軽減することができる。
【0048】
また、本実施例によれば、シリコンブロック表面の研磨にはベルト研磨機10が使用されるため、研磨面に対して平行方向の回転軸での加工が可能となる。このことより、シリコンブロック12への接触面積が小さくなることから、加工効率を向上させることができる。したがって、ダイヤモンド砥石よりも低い研削性能であってもダイヤモンド砥石と同等以上の加工効率を得ることができる。また、ベルト研磨では弾性研削が可能となることから、シリコンブロック表面に入る微小なクラック(ダメージ)を軽減することができる。
【0049】
また、本実施例によれば、無端研磨ベルト30(ダイヤモンド研磨布)は、基材40(基材層40)の片面に形成される研磨層42と、その研磨層上に形成されるダイヤモンド層44とからなり、ダイヤモンド層44は、ポリイミドやエポキシなどの液状樹脂にダイヤモンド砥粒が混合されたダイヤモンドペースト38を研磨層に立体的に塗布した後に熱硬化させることで得られるものである。このようにすれば、一般的な研磨布に比べて安定した研磨性能(研削量、面粗度等)を長時間継続して得ることができる。また、適度な弾性を有することから弾性研磨が可能となり、研磨時にシリコンブロック表面に入る微小なクラックを軽減することができる。
【0050】
また、本実施例によれば、無端研磨ベルト30(ダイヤモンド研磨布)に所定の弾性を付与するゴム材から成るコンタクトホイール28を備えるため、コンタクトホイール28のゴム硬度を適宜変更することで、無端研磨ベルト30の弾性を調整することができる。例えば、コンタクトホール28のゴム硬度を調整して無端研磨ベルト30の弾性を最適に設定することで、研磨中にシリコンブロック表面入る微小なクラックを軽減することも可能となる。
【0051】
また、本実施例によれば、コンタクトホイール28の外周面には、周方向に沿って凸部28aと凹溝28bとが交互に設けられているため、上記凸部28aと凹溝28bとの比率を調整することで、研磨時の研磨量や研磨面の面粗度を調整することができる。
【0052】
また、本実施例によれば、ベルト研磨機10では、工具交換の際に無端研磨ベルト30を掛け替えるだけで済むため、ダイヤモンド砥石やダイヤブラシに比べて短時間で工具交換を実施することができる。従ってベルト研磨機10の作動停止時間が短くなり生産効率が向上する。
【0053】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0054】
例えば、前述の実施例のベルト研磨機10の構成は一例であって、被削材(シリコンブロック12)の形状等に応じて適宜変更しても構わない。また、必ずしもコンタクトホイール28によって研磨ベルト30をシリコンブロック12に押し付ける構成である必要はない。例えばバックアップベルトや板状、ローラ上のプラテン、空気圧等を利用して無端研磨ベルト30をシリコンブロック12に押し付ける構造、或いはフリーベルト構造であっても構わない。
【0055】
また、前述の実施例では、無端研磨ベルト30において、基材40(基材層40)とダイヤモンド層44の間に研磨層42が形成されているが、研磨層42は必ずしも必要ではなく、基材40(基材層40)に直接ダイヤモンド層44を形成するものであっても構わない。
【0056】
また、前述の実施例では、シリコンブロック12をバンドソーによって切り出した後、シリコンブロック12の寸法出しをするためにダイヤモンド砥石によって研削するとしたが、上記工程を省略しても構わない。このような場合、ベルト研磨機10によってシリコンブロック12の寸法出しを実施することとなる。例えば、最初の研磨において、粒度の粗い無端研磨ベルト30を使用し、コンタクトホイール28のゴム硬度を高くして研削することで寸法出しと同様の結果を得ることができる。
【0057】
また、前述の実施例では、無端研磨ベルト30は、2つのホイール(駆動ホイール26、コンタクトホール28)に掛け渡されているが、1つのホイールの外周面に巻き付けられた形式、或いは3つ以上のホイールに掛け渡された形式であっても本発明と同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
10:ベルト研磨機
12:シリコンブロック
26:駆動ホイール(ホイール)
28:コンタクトホイール(ホイール)
30:無端研磨ベルト(ダイヤモンド研磨布)
202:小インゴット(インゴット)
206:シリコンウェハー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンインゴットを所定の大きさのシリコンブロックに分割し、該シリコンブロック表面を研磨した後に薄板状に切断することでシリコンウェハーを製造するシリコンウェハーの製造方法であって、
前記シリコンブロック表面の研磨には、ダイヤモンド研磨布を研磨工具として使用することを特徴とするシリコンウェハーの製造方法。
【請求項2】
前記ダイヤモンド研磨布は無端ベルト状に形成され、
前記シリコンブロック表面の研磨には、該ダイヤモンド研磨布を1つのホイールの外周面に巻き付けるか、少なくとも2つ以上のホイールに掛け渡した状態で回転させるベルト研磨機を使用することを特徴とする請求項1のシリコンウェハーの製造方法。
【請求項3】
前記ホイールの1つは、前記無端ベルト状に形成される前記ダイヤモンド研磨布に所定の弾性を付与するゴム材から成るコンタクトホイールであることを特徴とする請求項2のシリコンウェハーの製造方法。
【請求項4】
前記コンタクトホイールの外周面には、周方向に沿って凸部と凹溝とが交互に設けられていることを特徴とする請求項3のシリコンウェハーの製造方法。
【請求項1】
シリコンインゴットを所定の大きさのシリコンブロックに分割し、該シリコンブロック表面を研磨した後に薄板状に切断することでシリコンウェハーを製造するシリコンウェハーの製造方法であって、
前記シリコンブロック表面の研磨には、ダイヤモンド研磨布を研磨工具として使用することを特徴とするシリコンウェハーの製造方法。
【請求項2】
前記ダイヤモンド研磨布は無端ベルト状に形成され、
前記シリコンブロック表面の研磨には、該ダイヤモンド研磨布を1つのホイールの外周面に巻き付けるか、少なくとも2つ以上のホイールに掛け渡した状態で回転させるベルト研磨機を使用することを特徴とする請求項1のシリコンウェハーの製造方法。
【請求項3】
前記ホイールの1つは、前記無端ベルト状に形成される前記ダイヤモンド研磨布に所定の弾性を付与するゴム材から成るコンタクトホイールであることを特徴とする請求項2のシリコンウェハーの製造方法。
【請求項4】
前記コンタクトホイールの外周面には、周方向に沿って凸部と凹溝とが交互に設けられていることを特徴とする請求項3のシリコンウェハーの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−77413(P2011−77413A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228986(P2009−228986)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【出願人】(390017318)株式会社ノリタケコーテッドアブレーシブ (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【出願人】(390017318)株式会社ノリタケコーテッドアブレーシブ (4)
【Fターム(参考)】
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