説明

シリコンデバイスの製造方法及び液体噴射ヘッドの製造方法

【課題】製造過程におけるシリコンウエハーの欠けや割れの発生を抑制できると共に、異
物の発生を抑制することができるシリコンデバイスの製造方法及び液体噴射ヘッドの製造
方法を提供する。
【解決手段】第1のウエハー110上に圧力発生素子を形成すると共に、第2のウエハー
130上に第1の基板10が収まる深さの凹部131を形成し、第2のウエハー130の
凹部131内に第1のウエハー110を接合して接合体200を形成し、第2のウエハー
130の第1のウエハー110が接合された面の少なくとも外周部に耐エッチング性を有
する材料からなる保護膜150を形成してこの保護膜150で第2のウエハー110の表
面を覆い、接合体200の第1のウエハー110側の面を、第1のウエハー110の表面
と第2のウエハー130の表面とが同一平面となるまで加工し、その後、接合体200を
所定サイズの複数のチップに分割する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板上に素子を有するシリコンデバイスの製造方法に関し、特に、
圧力発生素子によってノズルから液滴を噴射させる液体噴射ヘッドの製造方法に適用して
好適なものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表的な例であるインクジェット式記録ヘッドの構造としては、例え
ば、ノズルに連通する圧力発生室が形成されるシリコン基板からなる流路形成基板と、こ
の流路形成基板の一方面側に形成される圧電素子と、流路形成基板の圧電素子側の面に接
着されて圧電素子を封止する圧電素子保持部を有する封止基板(保護基板)とを有するも
のがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような構造のインクジェット式記録ヘッドは、例えば次のように製造される
。まず流路形成基板が複数一体的に形成されるシリコンウエハーの一方面側に振動板を介
して圧電素子を形成する。そして、このシリコンウエハーに封止基板となる封止基板形成
材を接合し、封止基板形成材が接合された状態でシリコンウエハーをアルカリ溶液でウェ
ットエッチングすることにより圧力発生室等を形成する。その後、シリコンウエハーを所
定のチップサイズに分割することにより、インクジェット式記録ヘッドが製造される。
【0004】
ここで、特許文献1にも記載されているように、流路形成基板が複数一体的に形成され
るシリコンウエハーの周縁部には、一般的に、欠けや割れ等を防止するために面取り面(
面取り部)が形成されていることが多い。
【0005】
また、近年のヘッドの小型化に伴い、流路形成基板として比較的厚みの薄いシリコン基
板が用いられてきている。このように比較的厚みの薄い流路形成基板を有するインクジェ
ット式記録ヘッドの製造方法としては、例えば、流路形成基板用ウエハー(シリコンウエ
ハー)に保護基板用ウエハーを接合した後、流路形成基板用ウエハーを所定の薄さに加工
した後、エッチングにより圧力発生室等を形成する方法がある(例えば、特許文献2参照
)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−266394号公報
【特許文献2】特開2004−82722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように周縁部に面取り部が形成されているシリコンウエハー(流路形成基板用
ウエハー)を比較的薄く加工しようとすると、その周縁部のシリコンウエハーの厚さは極
めて薄くなるため、特に、割れや欠け等が発生し易いという問題がある。
【0008】
なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドの製造方法
だけではなく、液体噴射ヘッドに代表される各種シリコンデバイスの製造方法においても
同様に存在する。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、製造過程におけるシリコンウエ
ハーの欠けや割れの発生を抑制できると共に、異物の発生を抑制することができるシリコ
ンデバイスの製造方法及び液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、液体を噴射するノズルに連通する圧力発生室が形成され
る第1の基板と、該第1の基板の一方面側に設けられて前記圧力発生室に圧力を発生させ
る圧力発生素子と、前記第1の基板の前記一方面側に接合される第2の基板とを具備する
液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記第1の基板が複数一体的に形成される当該第1
の基板よりも厚さの厚い第1のウエハー上に前記圧力発生素子を形成すると共に、前記第
2の基板が複数一体的に形成される前記第1のウエハーよりも大径の第2のウエハーに前
記第1の基板が収まる深さの凹部を形成する工程と、前記第2のウエハーの前記凹部内に
前記第1のウエハーを接合して接合体を形成する工程と、前記第2のウエハーの前記第1
のウエハーが接合された面の少なくとも外周部に耐エッチング性を有する材料からなる保
護膜を形成し、該保護膜で前記第2のウエハーの表面を覆う工程と、前記接合体の前記第
1のウエハー側の面を、前記第1のウエハーの表面と前記第2のウエハーの表面とが同一
平面となるまで加工する工程と、前記接合体を所定サイズの複数のチップに分割する工程
と、を備えることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる本発明の液体噴射ヘッドの製造方法では、第1のウエハーの外周部が、第2のウ
エハーと保護膜とによって確実に保護される。したがって、製造過程で第1のウエハーの
外周部に欠けや割れ等が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0011】
ここで、前記保護膜を形成する工程では、前記凹部の隙間が当該保護膜によって埋まる
ようにすることが好ましい。これにより、第1のウエハーの外周部をさらに良好に保護す
ることができる。
【0012】
また前記保護膜を形成する工程では、前記保護膜によって前記第2のウエハーの表面と
共に前記第1のウエハーの表面が覆われるようにすることが好ましい。保護膜によって比
較的広い範囲を覆うようにすることで、第1のウエハーの外周部をより確実に保護するこ
とができる。
【0013】
また前記接合体を加工する工程では、前記第1のウエハーを研削する工程を少なくとも
含むことが好ましい。これにより第1のウエハーを比較的容易且つ良好に所定の厚さに加
工することができる。
【0014】
また前記第1の基板の他方面側の外周部のみに面取り部を形成する工程をさらに有する
ことが好ましい。これにより、第1のウエハーの外周部の剛性が高まり、欠けや割れ等が
発生するのをより確実に抑制することができる。
【0015】
さらに本発明は、一方面側に素子が形成されたシリコン基板からなる第1の基板と、該
第1の基板の前記素子側の面に接合された第2の基板とを有するシリコンデバイスの製造
方法であって、前記第1の基板が複数一体的に形成される当該第1の基板よりも厚さの厚
い第1のウエハー上に前記素子を形成する一方、前記第2の基板が複数一体的に形成され
る前記第1のウエハーよりも大径の第2のウエハーに前記第1の基板が収まる深さの凹部
を形成する工程と、前記第2のウエハーの前記凹部内に前記第1のウエハーを接合して接
合体を形成する工程と、前記第2のウエハーの前記第1のウエハーが接合された面の少な
くとも外周部に耐エッチング性を有する材料からなる保護膜を形成し、該保護膜で前記第
2のウエハーの表面を覆う工程と、前記接合体の前記第1のウエハー側の面を、前記第1
のウエハーの表面と前記第2のウエハーの表面とが同一平面となるまで加工する工程と、
前記接合体を所定サイズの複数のチップに分割する工程と、を備えることを特徴とするシ
リコンデバイスの製造方法にある。
かかる本発明のシリコンデバイスの製造方法では、第1のウエハーの外周部が、第2の
ウエハーと保護膜とによって確実に保護される。したがって、製造過程で第1のウエハー
の外周部に欠けや割れ等が発生するのを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明では、第2のウエハーに形成した凹部内に第1のウエハーを接合
すると共に、その外周部を保護膜によって保護するようにした。これにより、第1のウエ
ハーの外周部における欠けや割れの発生を効果的に抑制することができ、また両ウエハー
を接合するための接着剤が剥離することも抑制することができる。したがって、製造過程
で生じる異物によるノズル詰まり等の発生を抑制して、歩留まりを大幅に向上することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】一実施形態に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】一実施形態に係る記録ヘッドの製造方法の概略を示す断面図である。
【図4】一実施形態に係る記録ヘッドの製造方法の概略を示す断面図である。
【図5】一実施形態に係る記録ヘッドの製造方法の概略を示す断面図である。
【図6】一実施形態に係る記録ヘッドの製造方法の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録
ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面
図である。
【0019】
図示するように、シリコン基板からなる第1の基板である流路形成基板10は、その一
方面に酸化シリコン(SiO)からなる弾性膜50が形成されている。流路形成基板1
0には、隔壁11によって区画された複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されてい
る。流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端側には、隔壁11によって区画さ
れ各圧力発生室12に連通するインク供給路13と連通路14とが設けられている。さら
に、連通路14の外側には、各連通路14と連通する連通部15が設けられている。この
連通部15は、後述する第2の基板である保護基板30のリザーバー部32と連通して、
各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバー100を構成する。
【0020】
流路形成基板10の他方面側には、各圧力発生室12に連通するノズル21が穿設され
たノズルプレート20が、圧力発生室12を形成する際のマスクとして用いられる絶縁膜
51を介して接合されている。このノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス
、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。なお絶縁膜51を除去して流路形
成基板10に直接ノズルプレート20を接合するようにしてもよい。
【0021】
流路形成基板10の一方面側には上述したように弾性膜50が形成されており、この弾
性膜50上には、弾性膜50とは異なる材料からなる絶縁体膜55が形成されている。さ
らに、この絶縁体膜55上には、圧力発生室12内に圧力を発生させる圧力発生素子とし
ての圧電素子300が形成されている。本実施形態では、圧電素子300は、絶縁体膜5
5上に形成された共通電極である下電極膜60と、下電極膜60上に形成された圧電体層
70と、圧電体層70上に形成された個別電極である上電極膜80とで構成されている。
また圧電素子300の各上電極膜80には、リード電極90がそれぞれ接続されており、
このリード電極90を介して各上電極膜80と後述する駆動ICとが接続されている。
【0022】
流路形成基板10の圧電素子300側の面、具体的には下電極膜60、弾性膜50及び
リード電極90上には、圧電素子300を保護するための圧電素子保持部31を有する第
2の基板である保護基板30が、例えば、接着剤35によって接合されている。保護基板
30には、圧電素子保持部31と共にリザーバー部32が設けられている。このリザーバ
ー部32は、上述のように流路形成基板10に形成された連通部15と連通してリザーバ
ー100を構成している。
【0023】
保護基板30の材料は、特に限定されないが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の
材料、例えば、ガラス材料、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では
、流路形成基板10と同一材料であるシリコン基板を用いている。
【0024】
また保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられてお
り、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、この貫通孔33内
に露出されている。保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆
動IC200が固定されている。そして、駆動IC200とリード電極90とが、貫通孔
33内に延設されるボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線210に
よって電気的に接続されている。
【0025】
保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40
が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなる。リ
ザーバー部32の一方面はこの封止膜41によって封止されている。また、固定板42は
、金属等の硬質の材料で形成されている。この固定板42のリザーバー100に対向する
領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっており、リザーバー100の一方
面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0026】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給
手段からインクを取り込み、リザーバー100からノズル21に至るまで内部をインクで
満たした後、駆動IC200からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれ
の圧電素子300に電圧を印加して撓み変形させることにより、各圧力発生室12内の圧
力が高まりノズル21からインク滴が噴射される。
【0027】
以下、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図5を参照
して説明する。
【0028】
まずは、図3(a)に示すように、複数の流路形成基板10が一体的に形成される流路
形成基板用ウエハー(第1のウエハー)110の一方面側に、弾性膜50、絶縁体膜55
、圧電素子300及びリード電極90を順次形成する。なおこれらの各層の製造方法は、
公知の技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0029】
また図3(b)に示すように、圧電素子保持部31等を有する複数の保護基板30が一
体的に形成された保護基板用ウエハー(第2のウエハー)130の流路形成基板用ウエハ
ー110との接合面側に、流路形成基板用ウエハー110を収容可能な大きさを有する凹
部131を形成する。すなわち、流路形成基板用ウエハー110よりも大きい直径を有す
る保護基板用ウエハー130の中央部を、保護基板30の厚さを残して除去することで凹
部131を形成する。なおこの凹部131の深さは、特に限定されないが、流路形成基板
10の厚さ(本実施形態では数十μm程度)よりも若干深いことが好ましい。凹部131
の形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライエッチング等によって形成すればよ
い。
【0030】
このような保護基板用ウエハー130の両表面の外周縁部には、例えば、R形状の面取
り部132が予め設けられている。これにより保護基板用ウエハー130の外周部に欠け
や割れ等が発生することを抑制している。一方、流路形成基板用ウエハー110の外周縁
部にも面取り部111が設けられており、保護基板用ウエハー130と同様に、外周部に
おける欠けや割れ等の発生が抑制されている。ただし本実施形態では、面取り部111が
流路形成基板用ウエハー110の圧電素子300とは反対側の面にのみ設けるようにして
いる。面取り部111は流路形成基板用ウエハー110の両面に設けられていてもよいが
、本発明の製造方法では、流路形成基板用ウエハー110の圧電素子300とは反対側の
面にのみ面取り部111を設けることで、流路形成基板用ウエハー110の外周部に欠け
や割れが発生するのをより確実に抑制することができる。
【0031】
次に図4(a)に示すように、この保護基板用ウエハー130の凹部131内に流路形
成基板用ウエハー110を接着剤35によって接合してウエハー接合体200を形成する
。このように保護基板用ウエハー130の凹部131内に流路形成基板用ウエハー110
を接合することで、流路形成基板用ウエハー110と保護基板用ウエハー130とを比較
的容易に高精度に位置決めすることができる。また流路形成基板用ウエハー110の移動
は、凹部131内に限定されるため、接合後の位置ずれの発生も少ない。また流路形成基
板用ウエハー110の保護基板用ウエハー130との接合面側の外周部は、結果として、
保護基板用ウエハー130によって覆われることになる。
【0032】
このため、その後のヘッドの製造過程において、流路形成基板用ウエハー110の保護
基板用ウエハー130との接合面側の外周部に負荷がかかることは少なく、欠けや割れ等
の発生を効果的に抑制することができる。このように流路形成基板用ウエハー110の保
護基板用ウエハー130側の面の外周縁部は、保護基板用ウエハー130によって保護さ
れるため、上述したように面取り部111は保護基板用ウエハー130とは反対側の面に
のみ設けられていることが好ましい。流路形成基板用ウエハー110の保護基板用ウエハ
ーとの接合面に面取り部111が設けられていないことで、流路形成基板用ウエハー11
0の外周部における剛性が高まると共に、流路形成基板用ウエハー110と保護基板用ウ
エハー130との接着強度も向上する。したがって、流路形成基板用ウエハー110の外
周部における欠けや割れ等の発生をより確実に抑制することができる。
【0033】
次に、図4(b)に示すように、保護基板用ウエハー130の流路形成基板用ウエハー
110との接合面側の表面に、少なくとも外周部の露出された露出部133が覆われるよ
うに保護膜150を形成する。本実施形態では、保護基板用ウエハー130の露出部13
3と流路形成基板用ウエハー110の表面とを含むウエハー接合体200の一方面の全面
に保護膜150を形成するようにした。本実施形態では流路形成基板用ウエハー110の
保護基板用ウエハー130との接合面側には面取り部111が形成されていないため、流
路形成基板用ウエハー110の外周部に保護膜150を良好に密着させることができる。
【0034】
またこのとき、保護基板用ウエハー130の凹部131内の隙間が保護膜150で埋ま
るようにすることが好ましい。これにより流路形成基板用ウエハー110の外周部をより
良好に保護することができる。またウエハー同士を接合する接着剤35も保護膜150に
よって確実に覆われるため、その後の工程で、この接着剤35が剥離してしまうことも確
実に防止することができる。なおウエハー接合体200(保護基板用ウエハー130)の
他方面は、例えば、保護テープ160を貼付することによって保護しておくことが好まし
い。
【0035】
ここで、保護膜150は、流路形成基板用ウエハー110と保護基板用ウエハー130
とを接合する接着剤35を硬化させる際の加熱温度よりも低い温度で成膜することが好ま
しい。また保護膜150は、耐エッチング性を有する材料からなることが好ましい。耐エ
ッチング性を有する材料とは、後述する工程で流路形成基板用ウエハー110をエッチン
グするのに用いるエッチング液で実質的にエッチングされない材料をいう。例えば、本実
施形態では、流路形成基板用ウエハー110をKOH等のアルカリ溶液を用いてエッチン
グするため、耐エッチング性を有する材料としては、例えば、SOGからなる無機酸化物
が挙げられる。また保護膜150は、例えば、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン
(SiN)等を、低温スパッタ法や、低温成膜CVD法等によって形成したものであって
もよい。
【0036】
次いで、図4(c)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の保護基板用ウエハ
ー130が接合された面とは反対側の面を加工することにより、流路形成基板用ウエハー
110を所定の厚さにする。具体的には、例えば、裏面研磨装置(バックグラインダー)
等によって流路形成基板用ウエハー110をある程度の厚さまで研削する。その後、例え
ば、フッ硝酸等からなるエッチング液を用いて流路形成基板用ウエハー110をウェット
エッチングすることにより所定の厚さとする。特に、流路形成基板用ウエハー110を保
護基板用ウエハー130に達するまで研削した後、ウェットエッチングにより流路形成基
板用ウエハー110を所望の厚さとするのが好ましい。
【0037】
本発明の製造方法では、上述したように流路形成基板用ウエハー110が保護基板用ウ
エハー130に形成された凹部131内に接合されていると共に、流路形成基板用ウエハ
ー110の外周部が保護膜150によって保護されている。したがって、このように研削
等によって流路形成基板用ウエハー110を加工しても、流路形成基板用ウエハー110
に欠けや割れが発生するのを効果的に抑制することができる。また接着剤35の剥離等を
防止することができる。したがって、異物によるノズル詰まり等の初期不良の発生を抑制
でき、歩留まりを向上することができる。
【0038】
さらに本実施形態では、流路形成基板用ウエハー110の保護基板用ウエハー130側
の面に面取り部111が設けられていないため、流路形成基板用ウエハー110を加工し
た後も、流路形成基板用ウエハー110の外周部は、他の部分と同様の厚さが確保されて
いる。したがって、流路形成基板用ウエハー110の外周部に欠けや割れが発生するのを
より確実に抑制することができる。なお図6に示すように、流路形成基板用ウエハー11
0の保護基板用ウエハー130側に面取り部111が形成されている場合であっても、流
路形成基板用ウエハー110の外周部は、保護基板用ウエハー130(凹部131の外壁
)によって保護されると共に、保護膜150によっても保護される。したがって、本発明
の製造方法によれば、このような構成とした場合でも、勿論、流路形成基板用ウエハー1
10の外周部に欠けや割れ等が発生することを抑制することができる。
【0039】
なお、このように流路形成基板用ウエハー110の薄板化工程が終了した後は、流路形
成基板用ウエハー110をエッチングすることによって圧力発生室12等の流路を形成す
る。具体的には、ウエハー接合体200の他方面に貼付した保護テープ160を剥離した
後、図5(a)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の表面に、例えば、窒化シ
リコン(SiN)からなる絶縁膜51を新たに形成し、図示しないレジスト等を介して所
定形状にパターニングする。次いで、流路形成基板用ウエハー110を、絶縁膜51をマ
スクとして、例えば、水酸化カリウム(KOH)水溶液等のアルカリ溶液を用いてウェッ
トエッチングする。これにより、図5(b)に示すように、流路形成基板用ウエハー11
0に圧力発生室12、インク供給路13、連通路14及び連通部15が形成される。また
ウエハー同士を接合する接着剤35は、この工程でも保護膜150によって覆われている
ため、接着剤35が剥離して異物となることを抑制することができる。
【0040】
その後は、図5(c)に示すように、ウエハー接合体200の外周縁部の不要部分を、
例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。このとき、流路形成基板用
ウエハー110の周囲に残っている保護膜150も同時に除去されることになる。そして
、流路形成基板用ウエハー110の保護基板用ウエハー130とは反対側の面にノズル2
1が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウエハー130にコン
プライアンス基板40を接合し、これら流路形成基板用ウエハー110等を図1に示すよ
うな一つのチップサイズに分割することによって上述した構造のインクジェット式記録ヘ
ッドが製造される。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明はこのような実施形態に
限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、アルカリ溶液を用いたウェッ
トエッチングによって流路形成基板用ウエハー110をエッチングして圧力発生室12等
を形成するようにしたが、勿論、ドライエッチングによって圧力発生室12等を形成する
ようにしてもよい。なおこの場合には、保護膜150の材料を適宜選択する必要がある。
【0042】
また、上述の実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッド
を挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク
以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射
ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、
液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELデ
ィスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘ
ッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【0043】
さらに、本発明は、液体噴射ヘッドの製造方法に限定されず、シリコン基板を有するシ
リコンデバイスの製造方法であれば、広く適用可能なものである。
【符号の説明】
【0044】
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 20 ノズルプレート、 30 保護基
板、 35 接着剤、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体
膜、 60 下電極膜、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、
100 リザーバー、 110 流路形成基板用ウエハー、 111 面取り部、 13
0 保護基板用ウエハー、 131 凹部、 132 面取り部、 133 露出部、
150 保護膜、 200 ウエハー接合体、 300 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルに連通する圧力発生室が形成される第1の基板と、該第1の基板
の一方面側に設けられて前記圧力発生室に圧力を発生させる圧力発生素子と、前記第1の
基板の前記一方面側に接合される第2の基板とを具備する液体噴射ヘッドの製造方法であ
って、
前記第1の基板が複数一体的に形成される当該第1の基板よりも厚さの厚い第1のウエ
ハー上に前記圧力発生素子を形成すると共に、前記第2の基板が複数一体的に形成される
前記第1のウエハーよりも大径の第2のウエハーに前記第1の基板が収まる深さの凹部を
形成する工程と、
前記第2のウエハーの前記凹部内に前記第1のウエハーを接合して接合体を形成する工
程と、
前記第2のウエハーの前記第1のウエハーが接合された面の少なくとも外周部に耐エッ
チング性を有する材料からなる保護膜を形成し、該保護膜で前記第2のウエハーの表面を
覆う工程と、
前記接合体の前記第1のウエハー側の面を、前記第1のウエハーの表面と前記第2のウ
エハーの表面とが同一平面となるまで加工する工程と、
前記接合体を所定サイズの複数のチップに分割する工程と、を備えることを特徴とする
液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記保護膜を形成する工程では、前記凹部の隙間が当該保護膜によって埋まるようにす
ることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記保護膜を形成する工程では、前記保護膜によって前記第2のウエハーの表面と共に
前記第1のウエハーの表面が覆われるようにすることを特徴とする請求項1又は2に記載
の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記接合体を加工する工程では、前記第1のウエハーを研削する工程を少なくとも含む
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記第1の基板の他方面側の外周部のみに面取り部を形成する工程をさらに有すること
を特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項6】
一方面側に素子が形成されたシリコン基板からなる第1の基板と、該第1の基板の前記
素子側の面に接合された第2の基板とを有するシリコンデバイスの製造方法であって、
前記第1の基板が複数一体的に形成される当該第1の基板よりも厚さの厚い第1のウエ
ハー上に前記素子を形成する一方、前記第2の基板が複数一体的に形成される前記第1の
ウエハーよりも大径の第2のウエハーに前記第1の基板が収まる深さの凹部を形成する工
程と、
前記第2のウエハーの前記凹部内に前記第1のウエハーを接合して接合体を形成する工
程と、
前記第2のウエハーの前記第1のウエハーが接合された面の少なくとも外周部に耐エッ
チング性を有する材料からなる保護膜を形成し、該保護膜で前記第2のウエハーの表面を
覆う工程と、
前記接合体の前記第1のウエハー側の面を、前記第1のウエハーの表面と前記第2のウ
エハーの表面とが同一平面となるまで加工する工程と、
前記接合体を所定サイズの複数のチップに分割する工程と、を備えることを特徴とする
シリコンデバイスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−178145(P2011−178145A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47506(P2010−47506)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】