説明

シリコン単結晶の製造方法

【課題】本発明の目的は、複雑な雰囲気圧力の制御を必要とすることなく、比抵抗のばらつきが小さいシリコン単結晶を確実に製造できる方法を提供することにある。
【解決手段】揮発性ドーパントを添加したシリコン融液から、チョクラルスキー法によって比抵抗値が10Ω・cm以上のn型シリコン単結晶の引き上げを行うシリコン単結晶の製造方法であって、シリコン単結晶を引き上げる際の雰囲気圧力を調整しつつシリコン単結晶の引き上げを開始し、雰囲気圧力が所定圧力に達した後、引き上げ終了まで所定圧力±0.5kPaの範囲に雰囲気圧力を維持することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶の製造方法、特に、揮発性ドーパントを添加したシリコン融液から、チョクラルスキー法によって比抵抗値が10Ω・cm以上のシリコン単結晶の引き上げを行うシリコン単結晶の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハの製造工程において、シリコン単結晶の電気抵抗率を変化させるため、単結晶の引上げに用いられるシリコン融液中に、ドーパント(p型としてボロン、n型としてリン、ヒ素、アンチモンなど)を添加する方法がある。また、電気抵抗率を低くするためには、ヒ素や赤リン、アンチモン等のドーパントを添加することが有効である。
【0003】
ただし、前記シリコン融液中に添加されたドーパントは、一般的に、揮発性が高く蒸発しやすいものが多い。シリコン融液内のドーパントが蒸発すると、シリコン融液が所望のドーパント濃度を確保できないため、製品の比抵抗値にばらつきが生じるという問題がある。
【0004】
そのため、特許文献1では、シリコン単結晶を引き上げる際の雰囲気圧力を低下させながら、チョクラルスキー法により引上げを行うGaドープシリコン単結晶製造方法が開示されている。この方法を用いれば、シリコン融液からのドーパントの蒸発量を制御できるため、シリコン単結晶の抵抗率変動を抑制することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の製造方法では、シリコン単結晶の抵抗率変動を抑制することができるものの、前記シリコン単結晶を引き上げる際の圧力雰囲気の制御が煩雑であり、引き上げの開始から終了まで常に融液の濃度や雰囲気圧力に注意を図らなければならず、さらに、比抵抗値が10Ω・cm以上の高抵抗のシリコン単結晶を製造する際には、特にドーパント濃度の精密な制御が必要であることから、実際のシリコン単結の製造工程に用いるためにはさらなる改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−154896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の問題を鑑みて、本発明の目的は、複雑な雰囲気圧力の制御を必要とすることなく、比抵抗値が10Ω・cm以上で、且つそのばらつきが小さいn型シリコン単結晶を確実に製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、揮発性ドーパントを添加したシリコン融液から、チョクラルスキー法によってシリコン単結晶の引き上げを行うシリコン単結晶の製造方法のうち、特に、比抵抗値が10Ω・cm以上であるシリコン単結晶について、上記の課題を解決するため検討を重ねた結果、前記シリコン単結晶を引き上げる際の雰囲気圧力が所定圧力に達するまでは、有液中のドーパントの蒸発量が多いが、圧力を漸減させて所定圧力に達した後は、雰囲気圧力を細かく変動させなくとも、前記シリコン単結晶の比抵抗値のばらつきが抑えられることを見出した。そして、前記雰囲気圧力が所定圧力に達した後から引き上げ終了までの間、前記所定圧力±0.5kPaの範囲に前記雰囲気圧力を維持することで、従来の製造方法に比べて煩雑な制御を必要とせず、比抵抗のばらつきが小さいシリコン単結晶を確実に製造できることを見出した。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)揮発性ドーパントを添加したシリコン融液から、チョクラルスキー法によって比抵抗値が10Ω・cm以上のn型シリコン単結晶の引き上げを行うシリコン単結晶の製造方法であって、前記シリコン単結晶を引き上げる際の雰囲気圧力を調整しつつ前記シリコン単結晶の引き上げを開始し、前記雰囲気圧力が所定圧力に達した後、引き上げ終了まで前記所定圧力±0.5kPaの範囲に前記雰囲気圧力を維持することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
【0010】
(2)前記所定圧力は、4kPaであることを特徴とする上記(1)に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【0011】
(3)前記雰囲気圧力の調整において、前記シリコン単結晶の引き上げ量を基準として、−0.01〜−0.005kPa/mmの勾配で前記雰囲気圧力を漸減させることを特徴とする上記(1)に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【0012】
(4)前記揮発性ドーパントは、ヒ素又はアンチモンであることを特徴とする上記(1)に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【0013】
(5)前記揮発性ドーパントの投入は、ウェーハドープ方式によって行うことを特徴とする上記(1)に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【0014】
(6)揮発性ドーパントを添加したシリコン融液から、チョクラルスキー法によって比抵抗値が10Ω・cm以上のn型シリコン単結晶の引き上げを行うシリコン単結晶の製造方法であって、前記シリコン単結晶を引き上げる際の雰囲気圧力を調整しつつ前記シリコン単結晶の引き上げを開始し、前記雰囲気圧力が第1の所定圧力に達した後、該雰囲気圧力を第2の所定圧力まで急減させ、その後、引き上げ終了まで前記第2の所定圧力±0.2kPaの範囲に前記雰囲気圧力を維持することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
【0015】
(7)前記第1の所定圧力が4kPaであり、前記第2の所定圧力が2kPaであることを特徴とする上記(6)に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【0016】
(8)前記雰囲気圧力を急減させるときの勾配が、前記シリコン単結晶の引き上げ量を基準として、−0.08〜−0.02kPa/mmの範囲である上記(6)に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、複雑な雰囲気圧力の制御を必要とすることなく、比抵抗値が10Ω・cm以上で、且つそのばらつきが小さいn型シリコン単結晶を確実に製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、本発明に従ってシリコン単結晶の引き上げを行ったときの引き上げ量(mm)と引き上げ時の雰囲気圧力(kPa)との関係を示したグラフであり、(b)は、得られたシリコン単結晶インゴットのトップ部からテール部に向かっての長さ位置(mm)とシリコン単結晶の比抵抗値(Ω・cm)との関係を示したグラフである。
【図2】(a)は、従来の製造方法に従ってシリコン単結晶の引き上げを行ったときの引き上げ量(mm)と引き上げ時の雰囲気圧力(kPa)との関係を示したグラフであり、(b)は、得られたシリコン単結晶インゴットのトップ部からテール部に向かっての長さ位置(mm)とシリコン単結晶の比抵抗値(Ω・cm)との関係を示したグラフである。
【図3】(a)は、本発明に従うシリコン単結晶の引き上げを行ったときの引き上げ量(mm)と引き上げ時の雰囲気圧力(kPa)との関係を示したグラフであり、(b)は、得られたシリコン単結晶インゴットのトップ部からテール部に向かっての長さ位置(mm)とシリコン単結晶の比抵抗値(Ω・cm)との関係を示したグラフである。
【図4】本発明に従うシリコン単結晶の製造方法に用いられる引き上げ装置の一実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によるシリコン単結晶の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
本発明によるシリコン単結晶の製造方法は、揮発性ドーパントを添加したシリコン融液から、チョクラルスキー法によって比抵抗値が10Ω・cm以上のシリコン単結晶の引き上げを行うシリコン単結晶の製造方法である。
【0020】
ここで、前記シリコン単結晶の比抵抗値を10Ω・cm以上に限定したのは、本発明は、得られたシリコン単結晶の比抵抗値が10Ω・cm以上であるようなドーパント濃度が低いシリコン融液を用いて引き上げを行った場合にのみ有効であり、前記比抵抗値が10Ω・cm未満の場合(つまり、シリコン融液中に含有されるドーパント濃度が高い場合)、十分に本発明の効果(複雑な雰囲気圧力の制御を必要とすることなく、比抵抗のばらつきが小さいシリコン単結晶を製造する)を発揮することはできないからである。10Ω・cm未満の結晶で本発明による方法を適用した場合には、操業中の圧力を一方向に下げていくことで、容易にアンチモン等のドーパントの蒸発を促進することができ、複雑な雰囲気圧力の制御を必要とすることなく比抵抗値のばらつきを抑えることができるからである。
【0021】
そして、本発明は、前記シリコン単結晶を引き上げる際の雰囲気圧力を調整した状態で前記シリコン単結晶の引き上げを開始し、前記雰囲気圧力が所定圧力に達した後、引き上げ終了まで前記所定圧力±0.5kPaの範囲に前記雰囲気圧力を維持することを特徴とする。
【0022】
前記シリコン単結晶を引き上げる際の雰囲気圧力は、所定圧力に達するまでは融液中のドーパントの蒸発量が多いが、圧力を漸減させて所定圧力に達した後は、雰囲気圧力を細かく変動させなくとも、前記シリコン単結晶の比抵抗値のばらつきが抑えられることから、前記所定圧力±0.5kPaの範囲に前記雰囲気圧力を維持することによって、従来の製造方法に比べて煩雑な制御を必要とせず、比抵抗のばらつきが小さいシリコン単結晶を確実に製造できる。
【0023】
前記所定圧力とは、シリコン融液中に含有するドーパント濃度との関係で、細かい制御(雰囲気圧力の上げ下げ)を必要とすることなく前記シリコン単結晶の比抵抗値のばらつきを抑えることができる雰囲気圧力のことであり、前記ドーパント濃度や目標とするシリコン単結晶の比抵抗値によって種々の値をとることができるが、10Ω・cm以上の比抵抗値を有するシリコン単結晶を得るためには、前記所定圧力を4kPaとすることが好ましい。
【0024】
ここで、維持する所定圧力を±0.5kPaの範囲としたのは、±0.5kPaを超えると、前記所定圧力から離れすぎるため、十分に前記シリコン単結晶の比抵抗値のばらつきを抑えることができないからである。
【0025】
図1は、本発明に従ってシリコン単結晶の引き上げを行ったときの引き上げ量(mm)と引き上げ時の雰囲気圧力(kPa)との関係を示したグラフ(図1(a))、及び、得られたシリコン単結晶インゴットのトップ部からテール部に向かっての長さ位置(mm)とシリコン単結晶の比抵抗値(Ω・cm)との関係を示したグラフ(図1(b))を示したものである。なお、図1(b)に示すシリコン単結晶インゴットの長さ位置に対する抵抗値については、インゴット中の任意の長さ位置(0mm、150mm、300mm、450mm、600mm)における比抵抗値を数箇所測定し、平均することによって得られる。
図1から、雰囲気圧力を4kPa(所定圧力)に達するまでは漸減させて、4kPaに達した後にほぼ一定(±0.5kPa以内)にすることで(図1(a))、比抵抗値のばらつきが小さいシリコン単結晶が得られることがわかる(図1(b))。
【0026】
一方、図2は、従来の製造方法に従って、雰囲気圧力を漸減しながらシリコン単結晶の引き上げを行ったときの引き上げ量(mm)と、引き上げ時の雰囲気圧力(kPa)との関係を示したグラフ(図2(a))、及び、得られたシリコン単結晶インゴットのトップ部からテール部に向かっての長さ位置(mm)とシリコン単結晶の比抵抗値(Ω・cm)との関係を示したグラフ(図2(b))を示したものである。なお、図2(b)に示すシリコン単結晶インゴットの長さ位置に対する比抵抗値については、インゴット中の任意の長さ位置(0mm、150mm、300mm、450mm、600mm)における比抵抗値を数箇所測定し、平均することによって得られる。
図2から、雰囲気圧力が4kPa(所定圧力)に達した後も漸減させ続けているため(図2(a))、得られたシリコン単結晶は、長さが450mmを超えたところから比抵抗値が大きくなり、ばらつきを生じていることがわかる(図2(b))。
【0027】
また、前記雰囲気圧力の調整は、図1(a)に示すように、前記シリコン単結晶の引き上げ量(mm)を基準として、−0.01〜−0.005kPa/mmの勾配で前記雰囲気圧力を漸減させて行うことが好ましい。前記雰囲気圧力を下げることで前記シリコン融液中のドーパントの蒸発を抑制し、前記シリコン単結晶の比抵抗値のばらつきを抑えるためである。また、勾配を限定したのは、−0.01kPa/mm未満の場合、前記雰囲気圧力を急激に下げすぎるため、前記シリコン融液中のドーパント濃度が高くなる結果、前記シリコン単結晶の比抵抗値が高くなるおそれがあり、一方、−0.005kPa/mmを超えると、減圧が十分でなくシリコン融液中のドーパント濃度が低くなる結果、前記シリコン単結晶の比抵抗値が低くなるおそれがあるからである。
【0028】
また、本発明は、シリコン単結晶を引き上げる際の雰囲気圧力を調整しつつシリコン単結晶の引き上げを開始し、雰囲気圧力が第1の所定圧力に達した後、該雰囲気圧力を第2の所定圧力まで急減させ、その後、引き上げ終了まで第2の所定圧力±0.2kPaの範囲に前記雰囲気圧力を維持することを特徴とする。具体的には、本発明では、図3(a)に示すように、前記雰囲気圧力が4kPa(第1の所定圧力)に達した後、2kPa(第2の所定圧力)に達するまで前記雰囲気圧力を急減させ、その後、引き上げ終了まで2±0.2kPaの圧力範囲に維持することも可能である。このような圧力制御を行えば、前記雰囲気圧力の急減によって前記ドーパントの蒸発をあえて促進し、前記シリコン融液中のドーパント濃度を低下させることで、図3(b)に示すように、2種類の抵抗値(図3(b)では、およそ27Ω・cm及び50Ω・cm)をもったシリコン単結晶を製造することが可能となる。
【0029】
なお、2種類の抵抗値をもったシリコン単結晶を製造する場合、比抵抗値が一定でなく変化している部分(比抵抗値の遷移部分)をできるだけ少なくするため、前記雰囲気圧力の変化を大きくすることが有効であり、前記雰囲気圧力を急減させるときの勾配が、前記シリコン単結晶の引き上げ量を基準として、−0.08〜−0.02kPa/mmの範囲であることが好ましい。−0.08kPa/mmの場合、圧力の変化が大きくなりすぎる結果、前記融液中のドーパントの蒸発が過度に進行し、前記シリコン単結晶について所望の比抵抗値を得ることができないおそれがあり、一方、−0.02kPa/mmを超えると、圧力変化が緩やかになりすぎるため、前記シリコン単結晶の比抵抗値の遷移部分が大きくなるからである。
【0030】
また、さらなる雰囲気圧力の制御を行うことで、3種類以上の抵抗値をもったシリコン単結晶を製造することも可能である。例えば上述したように、前記雰囲気圧力が4kPaに達した後、2kPaに達するまで前記雰囲気圧力を急減させ、その後、2±0.2kPaの圧力範囲に維持した後、さらに、低い圧力雰囲気に減圧し、一定範囲(例えば、±0.2kPa)に維持する圧力制御を行うことで製造することが可能となる。
【0031】
なお、本発明ではチョクラルスキー法によってシリコン単結晶の引き上げを行うが、その引き上げ装置としては、例えば、図4に示すようなシリコン単結晶引き上げ装置100を用いることができる。引き上げ装置100は、シリコン融液10が充填されたルツボ20を備え、種結晶30及び前記ルツボ20をそれぞれ回転させながら、前記種結晶30を引き上げることで、シリコン単結晶のインゴット40を製造することができる。
【0032】
また、前記シリコン融液10中に含有される揮発性ドーパントは、ヒ素又はアンチモンなどのn型ドーパントであることが好ましい。これらの材料がシリコン融液中に添加された場合、揮発性が非常に高く、蒸発する量が大きいため、本発明によってドーパントの蒸発を制御し、比抵抗値のばらつきが小さいシリコン単結晶を得ることができるという効果が、最も顕著に発揮されるためである。また、その他のドーパント、例えばボロン等のp型ドーパントを添加した場合には、ドーパントの蒸発が少ないため、本願発明のように、引き上げ時の雰囲気圧力の適正化を図る必要がないためである。
【0033】
さらに、前記揮発性ドーパントの前記シリコン融液10への投入は、ウェーハドープ方式によって行うことが好ましい。前記シリコン融液10中のドーパント濃度が微差の場合でも、比抵抗値は大きな差を生じることから、前記ドーパントの投入はできるだけ少量ずつ行う必要がある。そのため、ウェーハドープ方式を用いれば、ドーパントを直接前記シリコン融液10中に投入する場合に比べて、少量ずつのドーパント投入が可能となり、所望のドーパント濃度を確実に得ることができるからである。ここで、ウェーハドープ方式とは、ドーパントを含有するシリコンウェーハを前記シリコン融液10の原料として投入する方式であり、前記シリコン原料であるウェーハ中にはドーパントが含有されているため、シリコン原料の投入と同時にドーパントの投入も行える。
【0034】
なお、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
実施例1として、図4に示すような、シリコン単結晶の引き上げのためのシリコン融液10を有するルツボ20を備えるシリコン単結晶の製造装置100を用いて、チョクラルスキー法によってシリコン単結晶インゴット40の引き上げを行い、シリコン単結晶を製造した。
なお、前記シリコン単結晶インゴット40を引き上げる際の雰囲気圧力については、図1(a)に示すように、6.7kPaから漸減させていき、4kPaに達した後は、引き上げ終了まで4.0kPaで維持した。
【0036】
(実施例2)
実施例2として、実施例1と同様のシリコン単結晶の製造装置100を用いて、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶インゴット40の引き上げを行い、シリコン単結晶を製造した。
なお、前記シリコン単結晶インゴット40を引き上げる際の雰囲気圧力については、図3(a)に示すように、6.7kPaから漸減させていき、4kPaに達した後、およそ2kPaまで急減させ、その後、引き上げ終了まで2±0.2kPaで維持した。
【0037】
(比較例)
比較例として実施例1と同様のシリコン単結晶の製造装置100を用いて、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶インゴット40の引き上げを行い、シリコン単結晶を製造した。
なお、前記シリコン単結晶インゴット40を引き上げる際の雰囲気圧力については、図2(a)に示すように、6.7kPaの状態でシリコン単結晶の引き上げを開始し、引上げが終了するまで雰囲気圧力を漸減させ、最終的には2.7kPaであった。
【0038】
(評価方法)
実施例1、2及び比較例で得られたシリコン単結晶について、シリコン単結晶インゴットのトップ部を0mmとしてテール部方向への各距離(mm)における比抵抗値(Ω・cm)を測定した。なお、比抵抗値の測定は、ウェーハにした状態で測定し、測定位置はウェーハの中心及びウェーハの外周端部から10mm中心側の位置である。
実施例1の比抵抗値の測定結果については表1に示し、シリコン単結晶の長さ位置と比抵抗値の平均値との関係を示したグラフを図1(b)に示す。実施例2の比抵抗値の測定結果については表2に示し、シリコン単結晶の長さ位置と比抵抗値の平均値との関係を示したグラフを図3(b)に示す。比較例の比抵抗値の測定結果については表3に示し、シリコン単結晶の長さ位置と比抵抗値の平均値との関係を示したグラフを図2(b)に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
表1及び図1(b)から、実施例1のシリコン単結晶については、シリコン単結晶の比抵抗値のばらつきが3.2Ω・cm以内であり、全長に渡ってばらつきが小さいことがわかった。また、表2及び図3(b)から、実施例2のシリコン単結晶については、2種類の異なる比抵抗値(約27Ω・cm、約50Ω・cm)を有するシリコン単結晶を製造でき、それぞれの比抵抗値については、0〜400mmに渡る部分のばらつきが3.0Ω・cm以内、450〜800mmに渡る部分のばらつきが2.0Ω・cm以内であり、いずれもばらつきが小さいことがわかった。一方、表3及び図2(b)から、比較例のシリコン単結晶については、長さが450mmを超えたところから比抵抗値が大きくなり、大きなばらつきを示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明によれば、複雑な雰囲気圧力の制御を必要とすることなく、比抵抗値が10Ω・cm以上で且つそのばらつきが小さいn型シリコン単結晶を確実に製造できる。
【符号の説明】
【0044】
100 シリコン単結晶インゴットの引き上げ装置
10 シリコン融液
20 ルツボ
30 種結晶
40 シリコン単結晶インゴット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性ドーパントを添加したシリコン融液から、チョクラルスキー法によって比抵抗値が10Ω・cm以上のn型シリコン単結晶の引き上げを行うシリコン単結晶の製造方法であって、
前記シリコン単結晶を引き上げる際の雰囲気圧力を調整しつつ前記シリコン単結晶の引き上げを開始し、前記雰囲気圧力が所定圧力に達した後、引き上げ終了まで前記所定圧力±0.5kPaの範囲に前記雰囲気圧力を維持することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記所定圧力は、4kPaであることを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記雰囲気圧力の調整において、前記シリコン単結晶の引き上げ量を基準として、−0.01〜−0.005kPa/mmの勾配で前記雰囲気圧力を漸減させることを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記揮発性ドーパントは、ヒ素又はアンチモンであることを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項5】
前記揮発性ドーパントの投入は、ウェーハドープ方式によって行うことを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項6】
揮発性ドーパントを添加したシリコン融液から、チョクラルスキー法によって比抵抗値が10Ω・cm以上のn型シリコン単結晶の引き上げを行うシリコン単結晶の製造方法であって、前記シリコン単結晶を引き上げる際の雰囲気圧力を調整しつつ前記シリコン単結晶の引き上げを開始し、前記雰囲気圧力が第1の所定圧力に達した後、該雰囲気圧力を第2の所定圧力まで急減させ、その後、引き上げ終了まで前記第2の所定圧力±0.2kPaの範囲に前記雰囲気圧力を維持することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
【請求項7】
前記第1の所定圧力が4kPaであり、前記第2の所定圧力が2kPaであることを特徴とする請求項6に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項8】
前記雰囲気圧力を急減させるときの勾配が、前記シリコン単結晶の引き上げ量を基準として、−0.08〜−0.02kPa/mmの範囲であることを特徴とする請求項6に記載のシリコン単結晶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−31023(P2012−31023A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173168(P2010−173168)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】