説明

シリコーン変性ワックス含有組成物及び該組成物を含む化粧料

【課題】化粧料製造時に100℃以上での加熱の必要がなく、また、優れた感触を示し、さらに他の増粘剤とも併用可能な、シリコーン変性ワックス組成物及び該組成物を含む化粧料を提供する。
【解決手段】融点100℃以上のシリコーン変性ワックスと、融点80℃以下の油剤からなり、該シリコーン変性ワックスの融点以上の温度で該シリコーン変性ワックスと該油剤とを溶解混合した後、冷却することにより調製された、化粧料用の組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン変性ワックスを含有する組成物及び該組成物を含む化粧料に関する。該組成物は、好適には室温でペースト状又はスラリー状であり、高温で溶融すること無く化粧料中に配合することができる。
【背景技術】
【0002】
ワックス等の油性増粘剤又はゲル化剤(以下まとめて「増粘剤」という)は、化粧料中の油性成分の粘度を上げて、化粧料の使用性、安定性、外観等を改善する目的で使用される。ここでワックスとは広く室温で固体状の油剤を指す。該油性増粘剤としては、セレシン、ポリエチレン、オゾケライト等の炭化水素系ワックスや、カルナバワックス、キャンデリラワックス等のロウや、ショ糖パルミチン酸エステル等の多糖脂肪酸エステル等が広く利用されている。
【0003】
これらの増粘剤は、化粧料に配合する際に、通常、増粘剤の融点以上の温度で溶融する必要がある。従って、融点が高いものを配合する場合には、化粧料中の他の成分の劣化や分解を来たす場合がある。このため、融点が低いこと、特に100℃未満であることが望まれる。しかし、融点が低い増粘剤は、一般に増粘効果が低く、夏場などに化粧料の粘度低下又は相分離を起こす場合がある。これらの点から、増粘剤は融点が60〜95℃程度であることが好ましい。
【0004】
また、増粘剤は、化粧料に配合される低粘度の油剤との相溶性が良好であることが望まれる。相溶性が悪いと、経時で油剤と分離したり、冷却された際に増粘剤の結晶が大きくなって化粧料の外観や感触を損ねたりする場合がある。さらに、増粘剤は、他の増粘剤との相性も良いことが望まれる。相性が悪いと、一方の増粘剤が他方の増粘効果を阻害する場合がある。
【0005】
シリコーン油は、さらっとした感触で、伸びが良く、撥水性が良い等の優れた特性から化粧料用油剤として多用されている。なかでも低粘度シリコーン油は、べたつきが無く感触が軽い化粧料を構成するために多用されている。しかしながら、シリコーン油は一般の油剤との相溶性、及び増粘剤との相性が悪く、上述の問題を起こし易い。また、シリコーン油は展延性が良く、皮膚等に塗布された際に伸びすぎてしまい、しっとりとした付着感を与える厚みのある化粧膜を形成できないという問題があった。
【0006】
上記問題を解決するために、低粘度シリコーン油を増粘することができる増粘剤が開発されている(特許文献1〜3)。しかしながら、これらは単独でシリコーン油を滑らかに増粘することは難しく、また得られる増粘化物は、化粧料で求められる滑らかさに欠けるものであった。そこで、これらの問題を解決するものとして、シリコーン変性オレフィン系ワックスが提案されている。(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−64115号公報
【特許文献2】特開平10−500431号公報
【特許文献3】特開平2−132141号公報
【特許文献4】特開2008−174571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記シリコーン変性オレフィン系ワックスを化粧料に配合する際には、油剤と共に加熱溶解する(特許文献4、例えば段落0202)。加熱溶解の温度については不明であるが、通常、ワックスの融点以上である。従って、同文献記載のシリコーンのうち融点が100℃以上のものを化粧料に配合する際には、化粧料の他の成分を劣化させないような措置を講じることが必要である。また、上記シリコーン変性オレフィン系ワックスを油剤と共に加熱溶解した後、冷却して室温まで戻すと、流動性の無いシリコーン系室温固化組成物が得られ、該組成物を化粧料として使用することができるとある(特許文献4、段落0195)。しかし、該組成物は伸び性、感触の点で、改良の余地がある。
【0009】
そこで、本発明は、化粧料製造時に100℃以上での加熱の必要がなく、また、優れた感触を示し、さらに他の増粘剤とも併用可能な、シリコーン変性ワックス組成物及び該組成物を含む化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者はこれらの課題を解決する為に鋭意検討した結果、シリコーン変性オレフィンワックスを油剤と加熱溶解混合した後、攪拌しながら冷却して調製した、好適には室温でペースト状又はスラリー状の組成物により、上記課題を達成できることを見出した。即ち、本発明は、融点100℃以上のシリコーン変性ワックスと、融点80℃以下の油剤からなり、該シリコーン変性ワックスの融点以上の温度で該シリコーン変性ワックスと該油剤とを溶解混合した後、(通常、室温まで)冷却することにより調製された、好適には室温でペースト状又はスラリー状である、化粧料用の組成物である。
また、本発明は、
1)融点100℃以上のシリコーン変性ワックスと、融点80℃以下の油剤を、該シリコーン変性ワックスの融点以上の温度において溶解混合する工程、及び
2)工程1)で得られた混合物を、攪拌しながら、冷却する工程、
を含む化粧料用組成物の調製方法である。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の組成物は、滑らかな感触及び艶のある表面を有し、100℃以上で加熱する事無く、化粧料に配合することができる。さらに、カルナバワックスのような他の増粘剤とも併用が可能で、しっとりとした化粧膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のシリコーン変性ワックス組成物(以下、単に「シリコーンワックス組成物」と言うことがある)において、シリコーン変性ワックスとしては、上記特許文献4に記載のシリコーン変性オレフィン系ワックスを使用することができる。該ワックスは、エチレンと少なくとも一種のジエンとの共重合体又はエチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも一種のオレフィンと少なくとも一種のジエンとを共重合して得られる共重合体であるオレフィン系ワックスと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応させて得られる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子当り少なくとも1個の、好ましくは側鎖に、ヒドロシリル基を有する。
なかでもエチレンと炭素原子数3〜12のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンとビニルノルボルネンを共重合することにより得られる共重合体に、ハイドロジェンシリコーンを付加させて得られる、高純度のシリコーン変性オレフィンワックスが好ましい。特に、ブチルポリジメチルシロキシル(エチレン/プロピレン/ビニルノルボルネン)コポリマーが好ましく、該コポリマーは、THE INTERNATIONAL COSMETIC INGREDIENT DICTIONALY AND HANDBOOK、12th EDITIONにも、収載されている。これはジメチルポリシロキサン等のシリコーン油や、トリオクタノイン、スクワラン等の化粧品に利用される油剤との相溶性が良く、安定した組成物を形成することができる。
【0013】
該シリコーンワックスの融点については、100℃以上のものであれば特に制限されるものではないが、通常は100〜140℃、特に100〜130℃、程度のものであれば好適に使用できる。
【0014】
該シリコーンワックス組成物において、油剤は、広く、化粧料に用いられる融点80℃以下、好ましくは30℃以下、の室温で液体状、半固体状もしくは固体状の油剤である。斯かる油剤を含むことにより、組成物が皮膚に施与されて液状に崩れていく際の独特の感触が得られ、また化粧料に配合する際に、液状油と同様に取り扱う事が可能である。該油剤としては、例えば炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、動植物油、フッ素系油、シリコーン油を挙げることができる。なお、本明細書において「室温」は25±5℃を意味する。
【0015】
炭化水素油としては、オゾケライト、α−オレフィンオリゴマー、パラフィン、イソパラフィン、イソドデカン、スクワラン、セレシン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリイソブチレン、水添ポリイソブテン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。これらの炭化水素油のうち室温で揮発性のものは、その揮発後に皮膚上に皮膜を形成させ、もしくはさっぱりとした感触を与える。不揮発性の液状油は感触や艶の向上のために使用され、固形油は他の油剤を増粘させる為等に使用される。
【0016】
高級脂肪酸としては、直鎖状、分岐状、飽和、不飽和のいずれであってもよく、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。これらは、乳化、乳化の補助剤や油の増粘剤等化粧料の安定化の目的等で使用される。特に分岐脂肪酸であるイソステアリン酸は、乳化の補助剤として有用である。
【0017】
高級アルコールとしては、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロール、バチルアルコール、セラキルアルコール等が挙げられる。これらは、乳化の補助剤として有用である。
【0018】
エステル油としては、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシルパルミチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等のモノエステル;セバシン酸ジイソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル等の二塩基酸エステル;トリエチルヘキサノイン等のトリグリセライド;トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2等のポリグリセリンエステル;トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン等のトリメチロールプロパン誘導体;12−ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル等のフィトステロールエステル;N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシル等のアミノ酸系エステル;(ヒドロキシステアリン酸・ステアリン酸・ロジン酸)ジペンタエリスリトール等のヒドロキシステアリン酸やロジン酸等の脂肪酸ペンタエリスリトールエステル等が挙げられ、これらは感触調整、成分の相溶化、顔料分散性の向上、つやの向上、エモリエント・保湿性の向上等の効果を奏する。
【0019】
動植物油としては、アボカド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油、イボタロウ、カカオ脂、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サフラワー油、シアバター、ホホバ油、スクワラン、大豆油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、米ヌカロウ、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、マカデミアナッツ油、ミツロウ、メドウフォーム油、綿実油、モクロウ、モンタンロウ、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、卵黄油を精製して得られる動植物油。またこれらを水素添加品としてホホバロウ、硬化ヒマシ油、硬化ナタネ油、還元ラノリン等が挙げられる。
【0020】
フッ素系油としては、パーフルオロポリオキシアルキレン、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等が挙げられる。
【0021】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、カプリリルメチコン、セチルジメチコン、フェニルトリメチコン、メチルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルヘキシルポリシロキサン等の直鎖シリコーン油;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン(以下「D5」と呼ぶ)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン等の環状オルガノポリシロキサン;トリストリメチルシロキシメチルシラン、テトラキストリメチルシロキシシラン等の分岐状オルガノポリシロキサン;
アミノ変性オルガノポリシロキサン、高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン、ガム状アミノ変性オルガノポリシロキサン、ガム状のジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のシリコーンゴム、及び高級脂肪酸変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、長鎖アルキル変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサンが挙げられる。
が例示される。
【0022】
好ましくは、室温で液体状の油剤が使用される。例えば、スクワラン、イソドデカン、イソパラフィン等の炭化水素油、トリエチルヘキサノイン、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソトリデシル等の分岐構造を有するエステル油、及びシリコーン油が好ましく、より好ましくは、シリコーン油が使用される。シリコーン油を含む組成物は、べたつきが少なくさらっとした感触の化粧料を与える事ができる。シリコーン油のなかでも、ジメチルポリシロキサン、特に好ましくは室温における粘度が2〜10csのジメチルポリシロキサン及びその誘導体である。
【0023】
好ましくは、該シリコーンワックス組成物において、シリコーン変性ワックスの含有量は、該組成物総質量の5〜60質量%、より好ましくは10〜40質量%、即ち、油剤の含有量が、40〜95質量%、より好ましくは60〜90質量%である。シリコーン変性ワックスの含有量が、前記下限値未満では、化粧料に配合した際に十分な増粘効果が達成できない場合があり、一方、前記上限値超であると、組成物の感触が悪く、化粧料に配合する際に、100℃以上での加熱が必要となる場合がある。
【0024】
該シリコーンワックス組成物は、室温で固形状、ペースト状(半固形状)またはスラリー状であり、好適にはペースト状またはスラリー状のものである。スラリーは、細かい固体状ワックスの微粒子が液状油剤中に懸濁している状態であり、室温で(自己)流動性を示す。また、ペーストも、細かい固体状ワックスの微粒子が液状油剤中に懸濁している状態であるが、室温において、何も力が加えられていない状態では(自己)流動性を示さないか、ほとんど示さないが、一定以上の力が加わると流動性が増す。該組成物は滑らかな感触を有し、それ自体で化粧料となり得る。また、優れた増粘効果を有し、滑らかな感触の化粧料を構成する事ができる。
【0025】
該シリコーンワックス組成物は、下記工程
1)融点100℃以上のシリコーン変性ワックスと、融点80℃以下の油剤を、該シリコーン変性ワックスの融点以上の温度において溶解混合する工程、及び
2)工程1)で得られた混合物を、攪拌しながら、冷却する工程、
を含む方法で作ることができる。
なお、攪拌をすることなく自然冷却した場合に得られる固化物は感触が悪い。また、自然冷却して得られた固化物を化粧料に配合する際にはシリコーン変性ワックスの融点以上に加熱しなければ配合が困難な場合がある。
【0026】
攪拌手段は、公知の手段、例えばディスパー、パドルミキサー、ゴムべら等を使用することができる。また、冷却は自然冷却であっても水冷であってもよい。
【0027】
上記の工程1)、2)を経て得られるシリコーンワックス組成物を化粧料に配合する際には、該組成物中に分散しているシリコーン変性ワックス自身を溶融する必要が無く、該組成物を100℃未満の温度で、加熱し又は加熱せずに、混合することができる。
【0028】
本発明は、該シリコーンワックス組成物を含む化粧料にも関する。該化粧料は下記の工程を含む方法で作ることができる。
3)上記1)、2)の工程を含む調製方法によって調製された化粧料用のシリコーン変性ワックス組成物を、100℃未満の温度で、化粧料に配合すべき他の成分の少なくとも一つと混合する工程。
工程1)及び2)で得られるシリコーンワックス組成物は、特に増粘成分として、油性化粧料に好適に使用される。化粧料に配合すべき他の成分としては、化粧品に通常用いられる成分、例えば油剤、粉体成分、界面活性剤、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、薬剤等、を用いることができる。これらの配合量は本発明の効果を損なわない範囲の量であってよい。
【0029】
油剤は、化粧料に通常使用される油剤であってよく、該油剤には、シリコーンワックス組成物を調製するための油剤として上述した油剤も包含される。また、シリコーンワックス組成物に含まれる油剤と同じであっても、異なっていてもよい。ましくは、炭化水素油、エステル油、シリコーン油が使用される。
【0030】
室温で固体状の油剤として、炭化水素系ワックス及びロウから選ばれる少なくとも一種のワックスとシリコーンワックス組成物を併用することによって、油性化粧料の特徴的な粘度コントロールが可能となる。即ち、ベタつきがなく、且つ、厚みを持たせた塗布が可能な化粧料を調整できる。この場合、工程3)の後に、4)工程3)で得られた混合物を、攪拌しながら、冷却する工程、をさらに含むことが好ましい。
【0031】
該炭化水素系ワックスは、炭化水素を主成分とするワックスであり、例えばセレシン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、オゾケライト、合成炭化水素系ワックスなどが挙げられる。またロウは、高級アルコールと高級脂肪酸のエステルを主成分とするワックスであり、例えばカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ミツロウ、水素添加ホホバ油等が挙げられる。これらのうち、融点が60℃〜95℃であるものが特に好ましく、セレシン、及びカルナバワックスが好ましい。工程3)においてシリコーンワックス組成物をワックスと100℃未満の温度で混合した後、工程2)と同様に攪拌しながら冷却すれば(工程4))、種々の形態の化粧料、例えばチューブ、ジャー容器等に入った状態の化粧料、を調製することができる。シリコーン組成物とワックスとの好ましい混合割合(質量比)は、シリコーンワックス組成物:ワックスの混合比(質量比)=5:95〜91:9であってよい。また、シリコーンワックス組成物をワックスと混合する場合に、油剤を添加してもよい。該油剤はシリコーンワックス組成物に含まれる油剤と同じでも異なっていてもよい。その場合の、シリコーンワックス組成物と、ワックス及び油剤との、好ましい混合割合(質量比)は、(シリコーンワックス組成物+ワックス):油剤=4:96〜40:60である。
【0032】
化粧料の粉体成分としては、化粧料に通常用いられるものであれば、その形状(球状、針状、板状、樹状、繊維状、不定形等)や粒子径、粒子構造(多孔質、無孔質、中空、中空多孔質等)を問わず、使用することができる。このような粉体としては、例えば無機粉体、有機粉体、金属石鹸、着色用粉体等が挙げられる。これらの粉体成分は、表面活性を抑える為、分散性を向上するため、化粧料塗布時の感触の改善等の目的で、金属石鹸、シリカ、酸化アルミ、水酸化アルミその他の公知の方法によって表面処理されたものであっても良く複合化粉体としても良い。
【0033】
無機粉体の例としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム等の紫外線吸収散乱剤、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、合成金雲母、シリカ、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の体質顔料が挙げられる。上記の紫外線吸収散乱剤は、あらかじめ油剤に分散させた分散物を用いることもできる。これらの市販品としては、SPD−T5,SPD−Z5(何れも信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0034】
有機粉体の例としては、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、メチルメタクリレートクロスポリマー、セルロースパウダー、シルクパウダー、12ナイロンや6ナイロン等のナイロンパウダー、または、これらの繊維状パウダー、ジメチルポリシロキサンを架橋した構造を持つ架橋型シリコーン微粉末、架橋型球状ポリメチルシルセスキオキサン微粉末、架橋型球状オルガノポリシロキサンゴム表面をポリメチルシルセスキオキサン粒子で被覆してなる微粉末、樹脂の積層末、デンプン末、脂肪酸デンプン誘導体末、ラウロイルリジン等が挙げられる。
【0035】
特に、粉体の一部に(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマーのような架橋型球状オルガノポリシロキサンゴム表面をポリメチルシルセスキオキサン粒子で被覆した粉末を用いる事により、分散性が良くさらっとしたやわらかい優れた感触を化粧料に付与することができる。これらの市販品としては、KSP−100、KSP−101、KSP−102、KSP−105、KSP−300(何れも信越化学工業(株)製)等がある。
【0036】
金属石鹸としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0037】
着色用の粉体としては、酸化チタン、酸化鉄、チタンブラック、カーボンブラック、水酸化クロム、酸化クロム、紺青、群青、アルミニウムパウダー等の無機着色顔料や、赤色226号、黄色4号等のタール色素、カルミン等の天然色素、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化チタン被覆合成金雲母等のパール顔料等がある。
【0038】
これらの粉体は本発明の効果を妨げない範囲で、市販の皮膜形成剤や表面処理剤を必要に応じて一種、又は二種以上用いて表面処理して使用することができる。表面処理剤としては例えばKF−9908、KF−9909、KP−574(何れも信越化学工業(株)製)等が目的に応じて優れた分散性を示す。
【0039】
化粧料成分のうち界面活性剤としては通常の化粧料に使用されるものであれば特に制限されるものではなくいずれのものも使用することができる。このような界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性の活性剤がある。
【0040】
アニオン性界面活性剤としては、例えばステアリン酸Na等の脂肪酸石鹸は、O/W型の乳化剤として知られており、またイソステアリン酸Na等分岐脂肪酸石鹸は、W/Oの安定性向上に使用される場合がある。両性界面活性剤としては、ベタイン、ホスファチジルコリン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体、アミドアミン型等が挙げられる。
【0041】
非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、メチルグルコシド脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等、疎水基が炭化水素系活性剤や、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン等のように疎水基が、シリコーン系活性剤である物質等がよく知られている。
【0042】
これらの界面活性剤の中で、シリコーン系活性剤は、W/O型の活性剤として有用である。これらのシリコーン系活性剤の市販品としては、KF−6017(信越化学工業(株)製)等がある。なかでも分子中にポリオキシエチレン鎖又は、ポリグリセリン鎖を有する分岐状のオルガノポリシロキサンであるシリコーン系活性剤は、シリコーンを含むW/O型の界面活性剤として有用である。さらにシリコーン骨格上にアルキル分岐を持つ活性剤は、さらにその他の化粧品油剤との相溶性が良く幅広い油剤の選択が可能である。これらの活性剤の市販品としては、KF−6028、KF−6028P、KF−6038、KF−6100、KF−6104、KF−6105(何れも信越化学工業(株)製)等がある。また上記活性剤でポリグリセリン鎖を有する活性剤は、顔料の分散性にも優れている事が知られている。炭化水素系活性剤は、O/W型の乳化においてよく利用されているが、W/O型の乳化においても先のシリコーン系活性剤等と併用して用いる事が知られている。例えば、親水性のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルや、セスキオレイン酸ソルビタンやセスキイソステアリン酸ソルビタン等が、顔料分散や乳化安定性の向上の為併用されている。
【0043】
化粧料成分のうち増粘剤としては、化粧品に通常用いられているものであれば特に限定されない。このような増粘剤としては水性タイプ、油性タイプに分ける事ができる。
【0044】
水性タイプの増粘剤としては、微粒子シリカ;ベントナイト、ヘクトライト等の無機粉体;アラビアゴム、グアーガム、カラギーナン、寒天、クインスシード、ローカストビーンガム、キサンタンガム、プルラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、(アクロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa) コポリマー、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子等の水溶性高分子が使用できる。上記アクリル系高分子を用いる事により比較的容易にO/W型乳化の安定化を図る事が可能である。
【0045】
油性タイプの増粘剤としては、シリル化シリカ等の疎水化微粒子シリカ、ジステアルジモニウムヘクトライト等の有機変性粘土鉱物、アルミニウムステアレート等の金属セッケン、(パルミチン酸/2−エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸イヌリン等の多糖脂肪酸エステル、酢酸ステアリン酸スクロース等のショ糖脂肪酸エステル、架橋型オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0046】
疎水化微粒子シリカは、少量で多量の油性成分を吸収するため、また有機変性粘土鉱物は界面活性剤との併用により乳化安定性を向上したり、極性の添加物例えば炭酸プロピレン等の添加により増粘させる事ができるため、さらに(パルミチン酸/2−エチルヘキサン酸)デキストリンは、離しょうを抑えた増粘ゲルを形成できるため、それぞれ油性又はW/O化粧料の増粘、安定化に有用である。
【0047】
架橋型オルガノポリシロキサンとしては、液状油に対し、自重以上の該液状油を含んで膨潤するもので、ポリオキシアルキレン部分、ポリグリセリン部分、アルキル部分、アルケニル部分、アリール部分、及びフルオロアルキル部分からなる群から選択される少なくとも1種の部分を分子中に含有していても良い。これらの市販品としては、油剤でペースト状にしたKSGシリーズ(信越化学工業(株)製)等がある。これらの架橋型オルガノポリシロキサンは、べた付きの少ないさらっとした感触で油性又はW/O化粧料の増粘、安定化に優れている。
【0048】
化粧料成分のうち皮膜剤としては、化粧料に通常用いられているものであれば特に限定されない。このような皮膜剤としては、水性タイプと油性タイプに分ける事ができる。水性タイプの皮膜剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸系共重合体のエマルジョン等が使用できる。
【0049】
油性タイプの皮膜剤としては、エイコセン・ビニルピロリドン共重合体等のα−オレフィン・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸/アルキルアクリレート共重合体、トリメチルシロキシケイ酸等のシリコーン網状樹脂、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)ポリマー等のアクリル/シリコーングラフト又はブロック共重合体のアクリルシリコーン樹脂、さらにアクリルシリコーン樹脂及びシリコーン網状樹脂はその分子内にさらに、ピロリドン部分、長鎖アルキル部分、ポリオキシアルキレン部分及びフルオロアルキル部分、カルボン酸などのアニオン部分を含有しているものも使用できる。これらの皮膜剤の市販品としてはKP−543、KP−545、KP−550(何れも信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0050】
化粧料成分のうち紫外線吸収剤としては、通常の化粧料に使用されるものであれば特に制限されない。紫外線吸収剤としては、例えばポリシリコーン−15、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、サリチル酸オクチル、ホモサレート、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ジメチルPABAオクチル(パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルへキシル)等が挙げられる。
【0051】
上化粧料成分のうち薬剤としては、例えばアルミニウムクロロハイドレート等の制汗剤;トコフェロール等の酸化防止剤;グリシン、セリン、アルギニン、グルタミン酸等のアミノ酸類及びその誘導体;ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテニルエチルエーテル、ニコチン酸アミド、シアノコバラミン等のビタミンB類、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸グルコシド等のビタミンC類、α−トコフェロール等のビタミンE類、等のニコチン酸類その他ビタミン類及びその誘導体;グリチルリチン酸K2塩等の抗炎症剤等が挙げられる。
【0052】
本発明のシリコーンワックス組成物は、スキンケア製品、メークアップ製品、頭髪製品、制汗剤製品、紫外線防御製品等の種々の化粧料に配合することができる。化粧料の形態としても限定されず、固体、粉体、液体、油中水型エマルション、水中油型エマルション、非水エマルション等のエマルション、などであってよい。化粧料製品としては、例えば化粧水、乳液、クリーム、クレンジング、パック、マッサージ料、美容液、美容オイル、洗浄剤、ハンドクリーム、リップクリーム、しわ隠し化粧料、メークアップ下地、コンシーラー、白粉、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、クリームファンデーション、油性ファンデーション、頬紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、口紅、美爪料、シャンプ−、リンス、トリートメント、ヘアセット剤、制汗剤化粧料、日焼け止め乳液、日焼け止めクリーム等が挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下実施例を挙げて本発明をさらに説明する。但し、本発明はこれによって限定されるものではない。以下配合量は特に断りの無い限り質量%である。
【0054】
<シリコーン変性ワックス組成物の調製例1>
シリコーン変性ワックスとしてブチルポリジメチルシロキシル(エチレン/プロピレン/ビニルノルボルネン)コポリマー(融点約120℃)20%及び、油剤としてジメチルポリシロキサン(KF−96A−6cs:信越化学工業(株)製)80%をビーカーに秤り入れ、オイルバスにて140℃で加熱溶解後、ゴムべらを用いて均一な混合物になるように攪拌しながら、25℃まで徐々に冷却を行い、シリコーン変性ワックス組成物Aを得た。
【0055】
<シリコーン変性ワックス組成物の調製例2>
油剤としてのジメチルポリシロキサンをトリエチルヘキサノインに変更した以外はシリコーン変性ワックス組成物の調製例1と同様にして、シリコーン変性ワックス組成物Bを得た。
【0056】
<シリコーン変性ワックス組成物の調製例3>
油剤としてのジメチルポリシロキサンを植物性スクワランに変更した以外はシリコーン変性ワックス組成物の調製例1と同様にして、シリコーン変性ワックス組成物Cを得た。
【0057】
<シリコーン変性ワックス組成物の調製例4>
油剤としてのジメチルポリシロキサンをセレシン(セレシン810:日興リカ社製)に変更した以外はシリコーン変性ワックス組成物の調製例1と同様にして、シリコーン変性ワックス組成物Dを得た。
【0058】
<シリコーン変性ワックス組成物の調製例5>
シリコーン変性ワックスとしてブチルポリジメチルシロキシル(エチレン/プロピレン/ビニルノルボルネン)コポリマー(融点約120℃)30%及び、油剤としてジメチルポリシロキサン(KF−96A−6cs:信越化学工業(株)製)70%をビーカーに秤り入れ、オイルバスにて140℃で加熱溶解後、調製例1と同様に、攪拌しながら25℃まで冷却しシリコーン変性ワックス組成物Eを得た。
【0059】
<シリコーン変性ワックス組成物の調製例6>
油剤としてのジメチルポリシロキサンをD5に変更した以外はシリコーン変性ワックス組成物の調製例1と同様にして、シリコーン変性ワックス組成物Fを得た。
【0060】
<比較調製例1>
セレシン(融点約80℃)20%にジメチルポリシロキサン(KF−96A−6cs:信越化学工業(株)製)80%を実施例1と同様に混合加熱溶解後冷却したところ、セレシンの粒子がジメチルポリシロキサン中に不均一に分散した液状の混合物Gとなった。該混合物Gは、ざらざらした感触であった。このように、セレシンは、ジメチルポリシロキサンを増粘することができなかった。
【0061】
<比較調製例2>
セレシンに変えてステアリン酸イヌリンを用いた以外、比較調製例1と同様にして混合物の調製を試みたが、二層に分離してしまった。このように、通常用いられるワックスやゲル化剤ではジメチルポリシロキサンをうまく増粘できないことが確認できた。
【0062】
<シリコーン変性ワックス組成物A〜Fの性状>
得られたシリコーン変性ワックス組成物A、B、C、D、Fは、均一な、低粘度から高粘度のペースト状で、シリコーン変性ワックス組成物Eは均一な固体のワックス状であった。これらを95℃で加熱すると、各組成物中のシリコーン変性ワックス微粒子(固体)が各油剤(液状油)に分散してなる、低粘度から高粘度の液状(即ち、スラリー状又はペースト状)となった。このとおり、これらの組成物は、100℃未満の温度での加熱によって、化粧料に液状で配合することができる。各組成物は、再度攪拌しながら冷却することにより、それぞれ元の低粘度から高粘度のペースト状、固体のワックス状に戻った。
【0063】
<50℃での保存安定性>
シリコーン変性ワックス組成物A及び混合物Gを、50℃の恒温槽で、3時間保管後、25℃まで攪拌することなく冷却した。混合物Gは流動性を失い不均一のやわらかい固化物となった。これは温度変化によって、混合物中でのワックスの状態が変化したことによると考えられる。一方、シリコーン変性ワックス組成物Aは状態の変化が認められなかった。これは、シリコーン変性ワックスが高融点であるため、温度による状態変化がほとんど起こらなかったことが考えられる。これにより、50℃程度の高温保管での安定性が優れていることが確認できた。
【0064】
<セレシンの液状油固化作用に対する影響、調製例a〜c>
次にシリコーン変性ワックス組成物の、セレシンのオイル(液状油)の固化作用への影響を表1に示す調製例a〜cにより確認した。表中の硬度は、レオテック製レオメーターにより測定を行った(アタッチメント1φ棒状)。
【0065】
【表1】

表1中の各成分をビーカーに入れ、湯浴を用いて約90℃にて溶解後、25℃にて静置冷却を行い調製例a〜cの混合物を作製した。
調製例bの混合物の硬度を調製例aのそれと比べると分かるように、シリコーン変性ワックス組成物Aの添加は、セレシンのオイル(液状油)の固化作用を妨げないことが確認された。また調製例bの混合物は調製例aの混合物と比較して、表面に艶があった。
また、調製例cは、調製例aのメチルポリシロキサン50質量%のうちの5%を、油性ゲル化剤として知られているパルミチン酸デキストリンに置き換えたものであり、調製例cの様にパルミチン酸デキストリンをセレシンと併用添加すると、得られた組成物は低粘度の液状であったことから、パルミチン酸デキストリンはセレシンのオイル(液状油)の固化作用を妨げるものであるのに対して、調製例bの混合物の様に、シリコーン変性ワックス組成物Aは、パルミチン酸デキストリンとは異なって、セレシンのオイル(液状油)の固化作用を妨げないことが確認された。
【0066】
<炭化水素系ワックス又はロウとの混合物の調製例d〜g>
次にシリコーン変性ワックス組成物と、ワックス又はロウを併用した時の増粘効果を表2に示す調製例d〜gにより確認した。表2中の各成分をビーカーに入れ、湯浴を用いて約90℃にて溶解後、攪拌しながら25℃まで冷却を行い調製例d〜gの混合物を作製した。
【0067】
【表2】



調製例dとeを比べると分かるように、本発明のシリコーン変性ワックス組成物を用いれば、メチルポリシロキサンとトリエチルヘキサノインの混合物をペースト状に増粘することができる。カルナバワックスを用いれば、メチルポリシロキサンを増粘することが可能であるが(調製例f)、メチルポリシロキサンの一部を、シリコーン変性ワックス組成物に含まれた状態で配合して攪拌しながら冷却することにより、ペースト状の組成物にすることができる(調製例g)。該ペースト状組成物は、感触がよく、皮膚に塗付された際に厚みのある膜を形成することができた。一方、シリコーン変性ワックス組成物を添加していない調製例d及びfの組成物は不均一であり、感触及び外観が悪かった。さらに、調製例dのメチルポリシロキサン50質量%のうちの5%を、油性ゲル化剤として知られているパルミチン酸デキストリンに置き換えた、上記調製例cと同様の組成を有する組成物を、攪拌しながら25℃まで冷却して調製したが、低粘度の液状であった。ここから、シリコーン変性ワックス組成物とパルミチン酸デキストリンの併用によっては増粘効果が得られないことがわかった。
【0068】
以下に、得られたシリコーン変性ワックス組成物A〜Fを用いて、化粧料を調製した例を示す。以下の実施例における加熱は、特に断りのない限り、湯浴中での100℃未満の温度での加熱である。
【0069】
<実施例1〜2、比較例1>
表3に示す処方で、W/O乳化型クリームを作製した。
【0070】
【表3】


信越化学工業(株)製:KSG−210(メチルポリシロキサン膨潤物)
信越化学工業(株)製:KF−6017P
信越化学工業(株)製:KSG−15(D5膨潤物)
信越化学工業(株)製:KF−96A 6cs
(注5)(株)レオテック製のレオメーターに、アタッチメントとして20Φ平板を用いて測定した。
(製法)成分1〜5を混合して、均一に分散した後、成分6〜10からなる溶液を高速攪拌機で攪拌しながら添加して、目的のW/O乳化型クリームを得た。本化粧料の調製工程中に加熱の必要は無かった。
【0071】
比較例1と実施例1を比較して明らかなとおり、メチルポリシロキサンをシリコーン変性ワックス組成物Aに変えて、化粧料中の油相の粘度を上げることによりW/O乳化型クリームの硬度(粘度)が大きく上昇したことが分かる。架橋型ジメチルポリシロキサンはジメチルポリシロキサンの3次元架橋物をシリコーンで膨潤させたシリコーン弾性体のゲルで、シリコーンの増粘に使用できるものであるが、これらとの併用も問題がなく更に硬度(粘度)を上昇させていることが実施例2から分かる。また、実施例のW/O乳化型クリームは経時・温度安定性は良好であった。弾性体である架橋型ジメチルポリシロキサンと、シリコーン変性ワックス組成物Aは、その構造が大きく異なり、化粧料塗布時の感触も大きく異なる。これらを併用すれば、化粧料の感触の幅広いコントロールが可能である。
【0072】
実施例3:トリートメントクリーム



(注6)信越化学工業(株)製:KF−6038
(注7)信越化学工業(株)製:KSG−43(トリエチルヘキサノイン膨潤物)

(製法)成分1〜6を混合して、均一な分散物を形成した後、別途、均一な混合物とした成分7〜13を、高速攪拌機で攪拌しながら添加し、目的のトリートメントクリームを得た。

得られたトリートメントクリームは、べた付きが無く、毛髪上で伸びが良く、毛髪にしっとり感を与えた。
【0073】
実施例4:パウダーファンデーション



(注8)信越化学工業(株)製:KMP−590
(注9)信越化学工業(株)製:KSP−300
(注10)信越化学工業(株)製:KF−9909処理

(製法)成分3〜8を粉砕して均一な混合物とし、予め室温で混合した成分1〜2を加え、均一な分散物を形成した後、金型にプレス成型してパウダーファンデーションを得た。
得られたパウダーファンデーションは、さらっとして伸びがよく、化粧持ちが良好でありながら、落とし易いものであった。
【0074】
実施例5:固形W/Oファンデーション



(注11)信越化学工業(株)製:KSG−710(メチルポリシロキサン膨潤物)
(注12)信越化学工業(株)製:KF−6105

(製法)A:成分1〜8を加熱溶解して均一な混合物にした。
B:成分9〜13を混合し、ローラーで分散処理後、成分14に加えて、加熱混合した。
C:Aで得られた混合物を加熱及び攪拌しながら、Bで得られた分散物を徐々に加えて乳化した。得られた乳化物を、スティック状に成型あるいは、コンパクト形状の型に流し込み、それぞれ、スティック状W/Oファンデーション及びW/Oコンパクトファンデーションを得た。

得られた固形W/Oファンデーションは、伸びがよく、べた付きの無いしっとりとした膜感を皮膚に与えた。
【0075】
実施例6:クリーム状口紅



(注13)千葉製粉(株)製:レオパールTT
(注14)信越化学工業(株)製:KP−545(固形分30%)

(製法)
A:成分2の一部に、成分10を混合しローラーミルにて分散後、得られた分散物を成分1〜7と共に加熱混合した。
B:成分8、9を加熱し、Aで得られた混合物に加えて乳化後冷却した。
C:成分11をBで得られた乳化物に添加し、クリーム状口紅を得た。

得られたクリーム状口紅は、のびが軽く、べたつきや油っぽさが無く、持ちのよい膜を唇上に形成した。
【0076】
実施例7:マスカラ



(注15)信越化学工業(株)製:KF−6028P
(注16)信越化学工業(株)製:KP−550(固形分40%)

(製法)
A:成分1〜3を均一な混合物にし、成分4を加え、混合した。
B:成分5〜12を、加熱及び攪拌して溶解し、Aで得た混合物及び粉砕した成分13を加えて均一になるよう混合した後冷却した。

得られたマスカラは、べたつきがなく、のびが軽くて睫に塗り易く、化粧持ちも非常に良かった。
【0077】
実施例8:クリームアイシャドウ



(注17)信越化学工業(株)製:KP−561P

(製法)成分1〜9を加熱混合して均一な分散物を得た後、成分10と11の混合物を添加して乳化してクリームアイシャドウを得た。

得られたクリームアイシャドウは、油っぽさや粉っぽさがなく、のび広がりが軽くて、瞼にみずみずしい感触を与え、持ちも良かった。
【0078】
実施例9:サンカット乳液



(注18)信越化学工業(株)製:SPD−T5
(注19)信越化学工業(株)製:SPD−Z5

(製法)成分1〜6を均一な混合物にした後、成分9〜12を混合して得られた溶液を添加して乳化し、得られた乳化物に成分7〜8を加えてサンカット乳液を得た。

得られたサンカット乳液は、べたつきや油っぽさがなく、のび広がりが軽く、しっとりとした膜感を皮膚に与え、皮膚上での耐水性が良好であった。

実施例10:サンカットクリーム



(注20)信越化学工業(株)製:KSG−240(D5膨潤物)
(注21)信越化学工業(株)製:KP−575
(注22)信越化学工業(株)製:AES−3083処理

(製法)
A:成分5の一部に成分7を加えて均一な混合物を得、該混合物に成分8を添加してビーズミルにて分散した。
B:成分1〜4、6及び成分5の残部から加熱して均一な混合物を得、該混合物に、成分9〜13を混合して得られた溶液を添加して乳化後、Aで得られた分散物を加えてサンカットクリームを得た。

得られたサンカットクリームは、べたつきがなく、のび広がりが軽く、しっとりとした膜感及びさらっとした使用感を与えると共に、持ちも良好であった。
【0079】
実施例11:リップスティック



(注23)信越化学工業(株)製:KF−54
(製法)成分1〜11を加熱し、均一に混合後、成分12〜13を加えて、均一な混合物を得、気密性の高い所定の容器に充填して、リップスティックを得た。

得られたリップスティックは、べたつきや油っぽさがなく、唇上に施与された際に、にじみ等もなく、化粧持ちもよいことが確認された。
【0080】
実施例12:W/Oリキッドファンデーション



(製法)
A:成分4の一部と成分9を混合し、得られた混合物に成分8を均一に分散した。
B:成分4の残部及び成分1〜3、5〜7を混合して得られた均一な油状混合物に、成分10〜15を混合して得られた溶液を徐添して乳化し、得られた乳化物に、Aで得られた分散物を添加してW/Oリキッドファンデーションを得た。

得られたW/Oリキッドファンデーションは、べたつきや油っぽさがなく、のび広がりが軽く、化粧持ちもよく、襟等への2次付着もほとんど無かった。
【0081】
実施例13:ヘアクリーム




(注24)信越化学工業(株)製:KF−9028
(注25)信越化学工業(株)製:KF−7312J
(注26)信越化学工業(株)製:KP―549
(注27)信越化学工業(株)製:KF−6011
(注28)ノベオン社製:ペミュレンTR−1
(製法)
成分1〜10を加熱溶解したところへ、別途、成分11〜15を加熱して得た溶液を、攪拌下、徐添して乳化し冷却後ヘアクリームを得た。

得られたヘアクリームは、のび広がりが軽く、毛髪に光沢と滑らかさを与え、毛髪に対した優れたセット効果を示すと共に、耐水性、耐汗性があり、持ちも良かった。
【0082】
実施例14:O/Wクリーム



(製法)成分10〜14を、加熱溶解したところへ、別途、成分1〜9を加熱して得た溶液を徐添して乳化後、冷却しO/Wクリームを得た。

得られたO/Wクリームは、べたつきや油っぽさがなくサラッとしており、のび広がりが軽く、さっぱりとした使用感を与えた。
【0083】
実施例15:O/Wクリーム



(注29)信越化学工業(株)製:KSG−16
(注30)信越化学工業(株)製:KF−6100
(注31)信越化学工業(株)製:KF−6104
(注32)セピック社製:SIMULGEL600
(注33)クライアント社製:AristoflexAVC

(製法)成分1〜5を、湯浴中で加熱溶解したところへ、成分6〜11を加熱して得た溶液に徐添して乳化後、冷却し、成分10を添加混合しO/Wクリームを得た。

得られたO/Wクリームは、べたつきや油っぽさがなく、しっとりとした膜感と共に、サラッとした使用感を与えた。
【0084】
実施例16、比較例2,3:クリームコンシーラー

(製法)
A:成分1〜9を加熱溶解して均一にした。
B:成分10〜13を混合し、ローラーで分散処理後、成分14に加えて、加熱混合した。
C:Aで得られた混合物を加熱及び攪拌しながら、Bを徐々に加えて乳化後、攪拌しながら冷却した。
D:Cで得られた乳化物を、ジャー容器に充填しクリームコンシーラーを得た。

比較例2は実施例16のシリコーン変性ワックス組成物中の固形分を、ワックス配合処方の硬度を上げることで知られているステアリン酸イヌリンに置き換えたもの、比較例3はシリコーン変性ワックス組成物中の固形分をメチルポリシロキサンに置き換えたものである。実施例16のクリームコンシーラーは、べた付きがなく、厚みのある化粧膜を与えたが、比較例3のものは粘性がなく、厚みのある膜を形成できなかった。比較例2のものは比較例3のものよりは厚い膜を形成できたが、粘性が低く、実施例16のものを用いた場合の仕上がりには及ばなかった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の組成物は、化粧料に配合し易く、化粧料に適度な粘性を与える。該組成物は他の増粘剤とも併用が可能で、経時及び温度安定性の良い化粧料を構成する。該化粧料は、べた付きのないさっぱりとした使用感を与え、しっとりとした化粧膜を形成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点100℃以上のシリコーン変性ワックスと、融点80℃以下の油剤からなり、該シリコーン変性ワックスの融点以上の温度で該シリコーン変性ワックスと該油剤とを溶解混合した後、冷却することにより調製された、化粧料用の組成物。
【請求項2】
該組成物の総質量の10〜40質量%の該シリコーン変性ワックスと、90〜60質量%の該油剤からなる、請求項1に係る組成物。
【請求項3】
該シリコーン変性ワックスが、シリコーン変性オレフィンワックスである、請求項1又は2に係る組成物。
【請求項4】
該シリコーン変性オレフィンワックスが、エチレンと、炭素原子数3〜12のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンと、ビニルノルボルネンとを共重合することにより得られる共重合体にオルガノハイドロジェンポリシロキサンを付加させて得られる共重合体である、請求項3に係る組成物。
【請求項5】
該シリコーン変性オレフィンワックスが、ブチルポリジメチルシロキシル(エチレン/プロピレン/ビニルノルボルネン)コポリマーである、請求項4に係る組成物。
【請求項6】
該油剤の融点が30℃以下である、請求項1〜5のいずれか1項に係る組成物。
【請求項7】
室温でペースト状又はスラリー状である請求項1〜6のいずれか1項に係る組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に係る組成物を含む化粧料。
【請求項9】
炭化水素系ワックス及びロウから選ばれる少なくとも1種のワックスをさらに含む、請求項8に係る化粧料。
【請求項10】
化粧料用組成物の調製方法であって
1)融点100℃以上のシリコーン変性ワックスと、融点80℃以下の油剤を、該シリコーン変性ワックスの融点以上の温度において溶解混合する工程、及び
2)工程1)で得られた混合物を、攪拌しながら、冷却する工程、
を含む方法。
【請求項11】
化粧料の調製方法であって
1)融点100℃以上のシリコーン変性ワックスと、融点80℃以下の油剤を、該シリコーン変性ワックスの融点以上の温度において溶解混合する工程、
2)工程1)で得られた混合物を、攪拌しながら、冷却する工程、及び
3)工程2)で得られた組成物を、100℃未満の温度で、化粧料に配合すべき他の成分の少なくとも一つと混合する工程
を含む方法。
【請求項12】
工程3)における他の成分が炭化水素系ワックス及びロウから選ばれる少なくとも1種のワックスであり、
4)工程3)で得られた混合物を、攪拌しながら、冷却する工程、
をさらに含む請求項11に係る方法。

【公開番号】特開2011−26263(P2011−26263A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175185(P2009−175185)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】