説明

シリル化カゴ型ケイ酸の製造方法、および、それから得られるシリル化カゴ型ケイ酸および多面体構造ポリシロキサン変性体

【課題】本発明は、不純物量の少ない効率的なシリル化カゴ型ケイ酸の製造方法、および、それから得られる多面体構造ポリシロキサン変性体を提供することを目的とする。
【解決手段】以下の(i)〜(iii)の製造工程を含むことを特徴とするシリ
ル化カゴ型ケイ酸の製造方法;
(i)テトラアルコキシシランまたはその部分縮合物(a)に水酸化4級アンモ
ニウム(b)を混合、反応させる工程、
(ii)前記(i)で得られる反応液を冷却する工程、
(iii)前記(ii)で得られた反応液とシリルクロライド(c)とを反応さ
せてシリル化カゴ型ケイ酸を得る工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリル化カゴ型ケイ酸の製造方法、および、それから得られるシリル化カゴ型ケイ酸および多面体構造ポリシロキサン変性体に関する。
【背景技術】
【0002】
多面体構造ポリシロキサン系化合物、例えば、シリル化カゴ型ケイ酸は、その特異的な化学構造から、優れた耐熱性、耐光性、化学的安定性、低誘電性等を示し、その応用が期待されている。
【0003】
前記シリル化カゴ型ケイ酸の製造方法としては、例えば、テトラアルコキシシラン、または、その部分縮合物と水酸化4級アンモニウムを反応させて、多面体構造アンモニウムオリゴシリケートを作成した後、さらに、シリルクロライドと反応させる方法が知られている(例えば、特許文献1〜3)。
【0004】
前記製造法で行われるテトラアルコキシシラン、または、その部分縮合物と水酸化4級アンモニウムの反応では、反応初期は、テトラアルコキシシラン、または、その部分縮合物の加水分解反応が生じ、その後、多面体構造アンモニウムオリゴシリケートが徐々に生成することから、高収率で多面体構造アンモニウムオリゴシリケートを得るためには、ある程度の反応時間が必要であり、反応時間が短く、不十分であると、シリルクロライドと反応させた後、シリル化カゴ型ケイ酸の収率が低下するなど、生産性が課題となっていた。
【0005】
また、前記製造法では、具体的に例えば、大量(前記テトラアルコキシシランに含まれるケイ素原子と理論上同じモル量)の水酸化4級アンモニウムを用いる必要がある等の理由により、原料由来の不純物が残存し、洗浄が困難で、生産性を低下させる大きな原因となっていた。さらには、不純物の影響により、着色が見られたり、シリル化カゴ型ケイ酸を次なる反応、具体的に例えば、ヒドロシリル化反応のような触媒反応に用いる際に、反応が阻害される等の問題点を有していた。これら問題点に対し、不純物を除去するため、単離したシリル化カゴ型ケイ酸をメタノールで繰り返し洗浄する方法が知られているが、当該製造方法では、シリル化カゴ型ケイ酸がメタノールに一部溶解する等、ロスが大きく、収率の低下が課題となっていた。
【0006】
以上のような課題を受け、効率的、かつ、不純物の少ないシリル化カゴ型ケイ酸の製造方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−178291
【特許文献2】特開平2−67290
【特許文献3】特表2007−509177
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、不純物量の少ない効率的なシリル化カゴ型ケイ酸の製造方法、および、それから得られる多面体構造ポリシロキサン変性体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
【0010】
1)・ 以下の(i)〜(iii)の製造工程を含むことを特徴とするシリル
化カゴ型ケイ酸の製造方法;
(i)テトラアルコキシシランまたはその部分縮合物(a)と水酸化4級アンモ
ニウム(b)を混合、反応させる工程、
(ii)前記(i)で得られる反応液を冷却する工程、
(iii)前記(ii)で得られた反応液とシリルクロライド(c)とを反応さ
せてシリル化カゴ型ケイ酸を得る工程。
【0011】
2). 以下の(i)〜(iii)の製造工程を含むことを特徴とするシリル
化カゴ型ケイ酸の製造方法;
(i)シリカ(d)と水酸化4級アンモニウム(b)を混合、反応させる工程、

(ii)前記(i)で得られる反応液を冷却する工程、
(iii)前記(ii)で得られた反応液とシリルクロライド(c)とを反応さ
せてシリル化カゴ型ケイ酸を得る工程。
【0012】
3). 製造工程(ii)の反応液の冷却温度が10℃未満であることを特徴
とする1)または2)に記載のシリル化カゴ型ケイ酸の製造方法。
【0013】
4). テトラアルコキシシランまたはその部分縮合物(a)のアルキル基の炭素数が1〜5であることを特徴とする1)または3)に記載のシリル化カゴ型ケイ酸の製造方法。
【0014】
5). 吸着剤(e)で処理することを特徴とする1)〜4)のいずれか1に記載のシリル化カゴ型ケイ酸の製造方法。
【0015】
6). 吸着剤(e)が、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケートから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする5)に記載のシリル化カゴ型ケイ酸の製造方法。
【0016】
7). 1)〜6)のいずれか1に記載の製造方法で得られることを特徴とするシリル化カゴ型ケイ酸。
【0017】
8). アルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有することを特徴とする7)に記載のシリル化カゴ型ケイ酸。
【0018】
9). 8)に記載のアルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有するシリル化カゴ型ケイ酸をヒドロシリル基および/またはアルケニル基を有する化合物でヒドロシリル化反応させることによって得られる多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0019】
10). ヒドロシリル基および/またはアルケニル基を有する化合物が、ヒドロシリル基/またはアルケニル基を有する直鎖状あるいは環状ポリシロキサンであることを特徴とする9)に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0020】
119. 9)または10)に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体と硬化剤からなるポリシロキサン系組成物。
【0021】
12). 11)に記載のポリシロキサン系組成物を硬化して得られる硬化物。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、不純物量の少ない効率的なシリル化カゴ型ケイ酸の製造方法、および、それから得られる多面体構造ポリシロキサン変性体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0024】
<テトラアルコキシシランまたはその部分縮合物(a)>
本発明に用いるテトラアルコキシシランとしては、広く公知のものを使用することができるが、アルキル基の炭素数が1〜5、好ましくは、1〜2、であるものが好ましい。具体的に例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等が例示でき、好ましく用いることができる。さらには、後述の水酸化4級アンモニウム(b)との反応性の観点から、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランを好適に用いることできる。
【0025】
また、テトラメトキシシランを原料として用いた場合、水酸化4級アンモニウムとの反応の際に発生するメタノールが、生成する多面体構造を有するアンモニウムオリゴシリケートを溶解させるため、固体の析出等を避けることができ、反応液の粘度上昇や反応効率の低下を抑制することが可能となる。
【0026】
また、本発明においては、上述のテトラアルコキシシランの部分縮合物を好適に用いることができる。前記テトラアルコキシシランの部分縮合物としては、具体的に例えば、
【0027】
【化1】

【0028】
(Rはアルキル基または水素原子であり、互いに異なっていても同じでもよい;nは平均して2以上の整数)
で表されるオリゴシリケートを使用することができる。
【0029】
上記Rとしては、アルキル基または水素原子であれば特に制限はないが、オリゴシリケートの反応性の観点から、アルキル基の炭素数が1〜5、好ましくは、1〜2、具体的にはメチル基、エチル基を好適に用いることできる。特に、Rがメチル基の場合、水酸化4級アンモニウムとの反応の際に発生するメタノールが、多面体構造アンモニウムオリゴシリケートを溶解させるため、固体の析出等を避けやすく、反応液の粘度上昇や反応効率の低下を抑制することが可能となるので好ましい。
【0030】
また、nは平均して2以上の整数であれば特に制限はないが、好ましくは、2〜20、さらに好ましくは、3〜10である。nが小さいと、固形分量が下がり、反応液の濃度アップが不十分となることから生産性が低く、効率に劣る。一方、nが大きすぎると、後述の水酸化4級アンモニウムとの反応性が低下し、多面体構造アンモニウムオリゴシリケートの生産性が低下する。
【0031】
<水酸化4級アンモニウム(b)>
本発明における水酸化4級アンモニウム(b)としては、前記(a)との反応により多面体構造(カゴ型構造)を有するアンモニウムオリゴシリケートを与えるものであれば、特に制限はないが、使用する種類によって、得られるアンモニウムオリゴシリケートの構造に影響を与えるため、所望の構造に応じて選択し、使用することが好ましい。
【0032】
本発明における水酸化4級アンモニウム(b)としては、以下の式
x(4-a)YaN・OH
で表されるものを好適に用いることができる。ここで、Rx、RYはそれぞれ置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、水素原子から選ばれ、各々は、同一であっても異なっていても良い。aは0〜4の整数である。
【0033】
aが0の場合はRXは炭素数1〜10、のアルキル基であることが好ましい。また、aが0以外の場合はRXは炭素数1〜10、さらには1〜4のアルキル基であることが好ましい。RYは水素あるいは活性水素含有置換基を有する炭素数1〜10、さらには1〜4のアルキル基であることが好ましい。活性水素含有官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基が好ましい。中でも水酸基が好ましい。aは1〜4であることが好ましく、1の場合が最も好ましい。
【0034】
本発明における水酸化4級アンモニウム(b)としては、具体的に、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、が好ましい。特に、反応性の観点から水酸化トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムが好ましい。
【0035】
<シリルクロライド(c)>
本発明におけるシリルクロライド(c)は、上述の多面体構造アンモニウムオリゴシリケートと反応することで、カゴ型ケイ酸に官能基を導入するための成分である。
【0036】
上記シリルクロライドとしては、広く公知のものを使用することができるが、トリアルキルシリルクロライド、アルケニル基含有シリルクロライド、ヒドロシリル基含有シリルクロライドが好ましいものとして例示できる。さらに具体的には、トリメチルシリルクロライド、トリエチルシリルクロライド、ジメチルブチルシリルクロライド等のトリアルキルシリルクロライド;ジメチルビニルシリルクロライド、ジメチルアリルシリルクロライド等のアルケニル基を有するシリルクロライド;ジメチルシリルクロライド等のヒドロシリル基を有するシリルクロライド、等が例示される。
【0037】
本発明におけるシリルクロライド(c)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。具体的に例えば、シリル化カゴ型ケイ酸に導入する反応性官能基量を調整したい場合には、アルケニル基含有シリルクロライドとトリアルキルクロライドとを併用したり、ヒドロシリル基含有シリルクロライドとトリアルキルシリルクロライドとを併用したりして使用することができる。
【0038】
<シリカ(d)>
本発明においては、上記テトラアルコキシシランまたはその部分縮合物(a)の代わりとして、シリカ(d)を使用することもできる。
【0039】
本発明におけるシリカ(d)としては、特に制限はなく、フィラー等で使用されている通常のシリカ(SiO2)、あるいは、作物残査、石炭、コークス及びその類似物のようなシリカ含有有機物質からの燃焼又は熱分解残留物、例えば、もみ殻灰又はフライアッシュなどを好適に用いることができる。
【0040】
<吸着剤(e)>
本発明における吸着剤(e)は、活性炭、イオン交換樹脂等の合成樹脂系吸着剤、ゼオライト等の無機系吸着剤などを、用途に応じて好適に用いることができる。
【0041】
活性炭は、大部分が炭素質の炭であり、吸着性は高い。通常は粉状または粒状であるが、いずれも使用することができる。
合成樹脂系吸着剤としては、イオン交換樹脂を用いることができる。イオン交換樹脂としては、酸性、塩基性イオン交換樹脂の一般的なものを使用してよい。また、キレート型イオン交換樹脂を使用してもよい。
【0042】
無機系吸着剤は、一般的に固体酸、固体塩基を有し、粒子は多孔質構造を持っているため、吸着能は非常に高い。また、低温から高温まで使用することができる。無機系吸着剤としては、特に限定されないが、具体的に例えば、アルミニウム、マグネシウム、珪素等を主成分とする単独もしくはこれらを組み合わせたもの等がある。
【0043】
具体的に例えば、二酸化珪素、酸化マグネシウム、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、珪藻土、活性アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケート、酸性白土、活性白土等の粘土系吸着剤、珪酸アルミニウムナトリウム等の含水アルミノ珪酸塩鉱物群で総称されるゼオライト系吸着剤、ドーソナイト類化合物、ハイドロタルサイト類化合物等が挙げられる。ゼオライトには天然産と合成品があるがいずれを使用してもよい。
【0044】
二酸化珪素は、結晶性、無定形、非晶質、ガラス状、合成品、天然品等があるが、本発明では、粉体状であれば使用することができる。二酸化珪素としては、活性白土を酸処理して得られる粘土鉱物から作られる珪酸、カープレックスBS304、カープレックスBS304F、カープレックス#67、カープレックス#80(いずれもシオノギ製薬)などの合成珪酸が挙げられる。
【0045】
アルミニウムシリケートは、珪酸の珪素の一部がアルミニウムに置換されたもので、具体的に例えば、軽石、フライアッシュ、カオリン、ベントナイト、活性白土、ケイソウ土等が挙げられる。この中でも、合成のアルミニウムシリケートは比表面積も大きく吸着能力が高い。合成アルミニウムシリケートとしては、キョーワード700シリーズ(協和化学製)などが挙げられる。
【0046】
ハイドロタルサイト類化合物は、2価の金属(Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等)と3価の金属(Al、Fe、Cr、Co、In等)の含水水酸化物又は前記水酸化物の水酸基の一部をハロゲンイオン、NO3-、CO32-、SO42-、Fe(CN)63-、CH3CO2-、シュウ酸イオン、サリチル酸イオン等の陰イオンに交換したものである。これらのうち、合成品としては、具体的に例えば、キョーワード500シリーズ、キョーワード1000シリーズ、キョーワード2000シリーズ(いずれも協和化学(株)製)などが挙げられる。
【0047】
<シリル化カゴ型ケイ酸の製造方法>
本発明のシリル化カゴ型ケイ酸の製造方法は、以下の
(i)テトラアルコキシシランまたはその部分縮合物(a)と水酸化4級アンモ
ニウム(b)を混合、反応させ、
(ii)前記(i)で得られる反応液を冷却する工程、
(iii)さらにシリルクロライド(c)とを反応させてシリル化カゴ型ケイ酸を得る工程を有することを特徴とする。
以下、(i)〜(iii)の各工程について、詳しく説明する。
【0048】
<工程(i)>
本製造工程では、テトラアルコキシシランまたはその部分縮合物(a)と水酸化4級アンモニウム(b)を混合することにより、テトラアルコキシシランまたはその部分縮合物(a)の加水分解縮合反応を進行させることを目的としている。
【0049】
この際、テトラアルコキシシランまたはその部分縮合物(a)に含まれるケイ素原子と水酸化4級アンモニウム(b)とのモル比は、0.5〜2.0、さらに好ましくは、0.8〜1.5となるように設定することが好ましい。モル比が小さいと、(a)と(b)との反応が不十分となり、モル比が大きいと、水酸化4級アンモニウム由来の不純物が多く残留する。
【0050】
混合させる際の温度は特に設定しなくても構わない。室温において混合させても構わない。
【0051】
反応温度としては、温度が低すぎると、反応の開始、進行が遅れる恐れがあるので、10℃以上、さらには、20℃以上であることが好ましい。本反応は室温でも進むため室温で行ってもよい。ただ、実用的な製造条件としては、夏期の室温よりすこし高い温度、具体的には40℃程度で行うことが、反応温度に違いによる不測の特性の変動を無くすためには好ましい。混合後、通常は速やかに反応が始まり、反応液の温度の上昇が観察される。この際、反応液の温度は特に急激な発熱がなければ特に冷却を行わなくても構わない。
【0052】
本製造工程においては、適宜、溶剤を使用することが可能である。使用する溶剤としては、特に制限はないが、次の製造工程で生成する多面体構造アンモニウムオリゴシリケートの溶解性の観点から、アルコール系溶剤、特にはメタノールを好適に用いることができる。アルコール系溶剤を使用することで、生成する多面体構造アンモニウムオリゴシリケートが溶解するため、固体(多面体構造アンモニウムオリゴシリケート)の析出等を避けることができ、また、反応液の粘度上昇、反応温度の制御や反応効率の低下を抑制することが可能となる。また、テトラアルコキシシランまたはその部分縮合物(a)、水酸化4級アンモニウム(b)は、予め可溶な溶剤あるいは水に溶解させた形態にて使用してもよい。
【0053】
<工程(ii)>
本製造工程では、前記工程iで得られる反応液を冷却することにより、多面体構
造アンモニウムオリゴシリケートの生成を促進する目的としている。
【0054】
前記工程(i)で、テトラアルコキシシランまたはその部分縮合物(a)の加
水分解縮合反応が生じた後、反応時間の経過に伴って、多面体構造アンモニウムオリゴシリケートが生成していくが、この際、反応溶液を冷却することによって、多面体構造アンモニウムオリゴシリケートの生成を促進させることが可能となる。
【0055】
反応溶液を冷却する温度は、特に限定されるものではないが、少なくとも工程(i)の反応温度より低い温度であり、好ましくは室温以下、さらには10℃未満が好ましく、より好ましくは7℃未満である。
【0056】
冷却を開始する時間は、特に限定されるものでないが、反応温度が室温付近に達した後、冷却を開始するのが好ましい。
【0057】
<工程(iii)>
本製造工程は、前記工程(ii)で得られた多面体構造オリゴシリケートをシ
リルクロライド(c)と反応させて、シリル化カゴ型ケイ酸を生成させることを目的としている。
【0058】
本製造工程で用いる多面体構造アンモニウムオリゴシリケートは、アルコール系溶剤、特には、メタノールに溶解させた状態で反応させることが好ましく、また、シリルクロライド(c)については、好ましくは、ヘキサン、トルエン、キシレン等の非極性溶剤に溶解させて用いることが好ましい。多面体構造アンモニウムオリゴシリケートをアルコール系溶剤に、さらには、シリルクロライドを非極性溶媒に溶解して、反応させることにより、得られるシリル化カゴ型ケイ酸の収率が向上する。
【0059】
本製造工程において、多面体構造アンモニウムオリゴシリケートとシリルクロライド(c)とを反応させる際は、シリルクロライド(c)が常に過剰量存在できるよう、シリルクロライド(c)溶液に対して、多面体構造アンモニウムオリゴシリケートを滴下しながらゆっくりと加えることが好ましい。シリルクロライド(c)の使用量は、特に限定されないが、多面体構造アンモニウムオリゴシリケートに含まれる窒素原子に対して、モル比で、1〜5当量、さらに好ましくは、1〜3.5当量が好ましい。
【0060】
この範囲にあることにより、シリル化が不十分となるとか(c)成分由来の副成物の混入量が多くなる問題が解決することが可能である。
【0061】
多面体構造アンモニウムオリゴシリケートとシリルクロライド(c)を反応させる温度は、特に限定されるものではなく、具体的例えば、−10〜60℃で反応させることができるが、さらに好ましくは、0〜50℃である。温度が低すぎると、反応が十分に進行せず、収率が低下するおそれがあり、温度が高すぎると、副反応などが生じる恐れがある。
【0062】
また、本発明においては、前記製造工程(i)〜(iii)で得られたシリル
化カゴ型ケイ酸と吸着剤(e)を混合・接触させることにより、反応溶液中に含まれる不純物を効果的に除去し、成形体の着色やヒドロシリル化反応させる際の反応性の低下を抑制することができる。
【0063】
吸着剤(e)によるシリル化カゴ型ケイ酸の処理方式としては、特に限定はないが、回分式、吸着塔などによる連続式などを好適に使用することができる。回分式としては、具体的には例えば、シリル化反応(工程(iii))の終了後の溶液に吸着剤を加え、攪拌、吸着させた後、ろ別する方法がある。連続式としては、具体的に例えば、吸着剤を充填したカラム塔に、シリル化反応終了後の溶液を流し込む方法がある。回分式、吸着塔などによる連続式のいずれにおいても、使用方式に限定はない。
【0064】
具体的には例えば、単離した後のシリル化カゴ型ケイ酸を有機溶剤に溶解させてから、上記の方式で、吸着剤処理を行っても良く、シリル化カゴ型ケイ酸が液体の場合は、特に有機溶剤に溶解させなくても構わないが、粘度が高すぎる場合など、状況に応じて、有機溶剤で希釈して、処理を行ってもよい。さらには、効率面や生産性の観点から、シリル化反応終了後、溶媒に溶解した状態でシリル化カゴ型ケイ酸溶液に、吸着剤を添加し、接触させることが好ましい。
【0065】
吸着剤処理の際の温度は、特に指定はないが、0〜300℃で行うのが好ましく、10〜200℃で行うのがより好ましい。温度が高過ぎたり低過ぎたりすると処理が不十分となる恐れがある。
【0066】
吸着剤(e)の添加量としては、特に限定はないが、回分式を用いて処理する場合は、生成するシリル化カゴ型ケイ酸100重量部に対して、0.001〜50重量部で用いるのが好ましく、0.01〜20重量部で用いるのがさらに好ましい。添加量が低いと吸着能が下がるため、不純物の残存量が多くなる恐れがあり、添加量が多いと、攪拌しづらくなったり、ろ過による除去が困難になる場合がある。
【0067】
吸着剤を十分に混合・接触させた後は、ろ過等の簡易な手段により、容易に吸着剤を除去することができる。吸着剤除去後のシリル化カゴ型ケイ酸は、溶剤を留去し単離して用いてもよく、また、溶液状態のままハンドリングしてもよい。さらには、特に、後述のようにシリル化カゴ型ケイ酸を次なる反応に供する場合には、最適な溶剤種へ置換したのち、ハンドリングしてもよい。
【0068】
<シリル化カゴ型ケイ酸>
本発明におけるシリル化カゴ型ケイ酸は、上述のような製造工程(i)〜(iii)を含む製造方法によって得ることができる。
【0069】
本発明におけるシリル化カゴ型ケイ酸としては、例えば、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有したシリル化カゴ型ケイ酸を好適に用いることができる。アルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有するシリル化カゴ型ケイ酸は、後述のヒドロシリル化反応に供することができる。
【0070】
本発明におけるアルケニル基を含有するシリル化カゴ型ケイ酸の好ましい例としては、具体的に例えば、以下の式で表されるアルケニル基を有するシリル化カゴ型ケイ酸が例示される。
[AR12SiO−SiO3/2]a[R23SiO−SiO3/2]b
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aはアルケニル基および/または水素原子。ただし、少なくとも1つはアルケニル基である;R1は、アルキル基またはアリール基;R2は、アルケニル基および水素原子以外の置換基、例えば、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンやシロキサン化合物と連結している基)
【0071】
このようなアルケニル基を含有するシリル化カゴ型ケイ酸を用いる場合、ヒドロシリル化触媒の存在下、後述のヒドロシリル基を有する化合物とヒドロシリル化反応させることにより、多面体構造ポリシロキサン変性体を得ることができる。この際、シリル化カゴ型ケイ酸のアルケニル基は、すべて反応する必要はなく、一部残存していてもよい。また、複数のアルケニル基を含有するシリル化カゴ型ケイ酸と複数のヒドロシリル基を有する化合物が反応していても良い。
【0072】
本発明におけるヒドロシリル基を含有するシリル化カゴ型ケイ酸の好ましい例としては、具体的に例えば、以下の式で表されるヒドロシリル基を有するシリル化カゴ型ケイ酸が例示される。
[BR12SiO−SiO3/2]a[R23SiO−SiO3/2]b
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Bはアルケニル基および/または水素原子。ただし、少なくとも1つは水素原子である;R1は、アルキル基またはアリール基;R2は、アルケニル基および水素原子以外の置換基、例えば、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンやシロキサン化合物と連結している基)
【0073】
このようなヒドロシリル基を含有するシリル化カゴ型ケイ酸を用いる場合、ヒドロシリル化触媒の存在下、後述のアルケニル基を有する化合物とヒドロシリル化反応させることにより、多面体構造ポリシロキサン変性体を得ることができる。この際、シリル化カゴ型ケイ酸のヒドロシリル基は、すべて反応する必要はなく、一部残存していてもよい。また、複数のヒドロシリル基を含有するシリル化カゴ型ケイ酸と複数のアルケニル基を有する化合物が反応していても良い。
【0074】
<ヒドロシリル基および/またはアルケニル基を有する化合物>
次に、本発明で用いるヒドロシリル基および/またはアルケニル基を有する化合物について説明する。
【0075】
前記ヒドロシリル基を有する化合物は、ヒドロシリル基(Si原子に直結した水素原子)を有するものであり、前記シリル化カゴ型ケイ酸のアルケニル基と反応して、新たに反応性官能基を有する基を導入することができる。
【0076】
前記ヒドロシリル基を有する化合物としては、ヒドロシリル基含有シロキサン化合物、具体的に例えば、両末端にヒドロシリル基を有する直鎖状のポリシロキサン、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンなどが好ましいものとして挙げられ、さらには、工業的入手性や反応させる際の反応性が良好である、また、得られた硬化物の耐青色レーザー性に優れる等の観点からヒドロシリル基を含有する環状シロキサンが好ましい。これらヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
前記両末端にヒドロシリル基を有する直鎖状のポリシロキサンの具体例としては、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンなどが例示される。
【0078】
ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0079】
前記ヒドロシリル基を有する化合物の添加量は、シリル化カゴ型ケイ酸のアルケニル基の個数1個あたり、Si原子に直結した水素原子の数が2.5〜20個になるように用いることが好ましい。この範囲にあることにより、得られるポリシロキサン変性体のハンドリング性の問題と、変性体内部にSi原子に直結した水素原子が残存する問題点を解決することが可能である。
【0080】
前記アルケニル基を有する化合物は、アルケニル基を有するものであり、シリル化カゴ型ケイ酸のヒドロシリル基と反応して、新たな反応性官能基を導入することができる。前記アルケニル基を有する化合物としては、アルケニル基含有シロキサン化合物、具体的に例えば、両末端にアルケニル基を有する直鎖状のポリシロキサン、アルケニル基を含有する環状シロキサンなどが好ましいものとして挙げられる。これらアルケニル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
前記両末端にアルケニル基を有する直鎖状のポリシロキサンの具体例としては、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、テトラメチルジビニルジシロキサン、ヘキサメチルジビニルトリシロキサンなどが例示される。
【0082】
アルケニル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0083】
アルケニル基を有する化合物の添加量は、多面体構造シロキサン系化合物のSi原子に直結した水素原子1個あたり、アルケニル基が2.5〜20個になるように用いることが好ましい。この範囲にあることにより、得られるポリシロキサン変性体のハンドリング性の問題と、変性体内部にアルケニル基が残存する問題点を解決することが可能である。
【0084】
本発明においては、ヒドロシリル基および/またはアルケニル基を有する化合物はポリシロキサンであることが好ましく、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0085】
<多面体構造ポリシロキサン変性体>
本発明における多面体構造ポリシロキサン変性体は、上述のアルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有するシリル化カゴ型ケイ酸をヒドロシリル基および/またはアルケニル基を有する化合物でヒドロシリル化反応することによって得ることが可能である。特に、吸着剤(e)で混合・接触させたシリル化カゴ型ケイ酸は、不純物の残存量を大きく低減していることから、短時間で高い反応率にてヒドロシリル化反応を行うことができ、生産性良く多面体構造ポリシロキサン変性体を得ることが可能となる。
【0086】
本発明におけるヒドロシリル化反応は、例えば、前記吸着剤処理を実施済のシリル化カゴ型ケイ酸を単離することなく反応液のまま行っても良く、単離してから、有機溶剤で再度溶解させてから行っても良い。
【0087】
次に、本発明で用いるヒドロシリル化触媒について説明する。
【0088】
本発明では、多面体構造ポリシロキサン変性体を合成する際に、ヒドロシリル化触媒を用いることができる。
【0089】
本発明で用いるヒドロシリル化触媒としては、通常ヒドロシリル化触媒化触媒として用いられるものを用いることができ特に制限はなく、任意のものが使用できる。
【0090】
具体的には例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt〔(MeViSiO)4m;白金−ホスフィン錯体、例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34;白金−ホスファイト錯体、例えば、Pt〔P(OPh)34、Pt〔P(OBu)34(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0091】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。
【0092】
多面体構造ポリシロキサン変性体の合成時および硬化時に用いるヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、アルケニル基1モルに対して10-1〜10-10モルの範囲で用いるのがよい。好ましくは10-4〜10-8モルの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化触媒が多すぎると、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、変性体が着色する恐れがあり、また、ヒドロシリル化触媒が少なすぎると、反応が進まず、目的物が得られない恐れがある。
【0093】
また、多面体構造ポリシロキサン変性体合成時のヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、45〜140℃である。温度が低すぎると反応が十分に進行せず、温度が高すぎると、ゲル化が生じ、ハンドリング性が悪化する恐れがある。
【0094】
<ポリシロキサン系組成物>
次に、本発明のポリシロキサン系組成物について説明する。本発明においては、多面体構造ポリシロキサン系変性体に硬化剤、必要によっては前記したヒドロシリル化触媒、硬化遅延剤、接着性付与剤を加えることにより得ることができる。接着性付与剤を添加した場合は、硬化物と基材との接着性が良好な組成物となすことができる。
【0095】
本発明のポリシロキサン系組成物は、透明性の液状組成物となす事が可能である。特に液状の多面体構造ポリシロキサン変性体を用いることで溶媒を用いずとも液状組成物と成すことができ、成型体に流し込み、加熱して硬化させることで容易に成形体を得ることができる。透明性であることにより、光学用組成物として用いることができる。
【0096】
液状の透明性のポリシロキサン系組成物を硬化させた成型体は、例えば3mm厚さの成型体での透過率は400nmの光線で75%以上となるものを得ることが可能である。また、多面体構造ポリシロキサン系化合物が液状であることで、本発明のポリシロキサン系組成物が容易に液状として得ることができるので好ましい。
【0097】
多面体構造ポリシロキサン変性体を含有するポリシロキサン系組成物をヒドロシリル化反応により硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、30〜400℃、さらに好ましくは50〜250℃である。硬化温度が高くなり過ぎると、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低すぎると硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。
【0098】
具体的には例えば、70℃、120℃、150℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることができ好ましい。硬化時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及びヒドロシリル基の量その他、本願組成物のその他の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、1分〜12時間、好ましくは10分〜10時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
【0099】
次に、本発明に用いる硬化剤について説明する。
【0100】
硬化剤は、多面体構造ポリシロキサン変性体の主たる反応性基の種類よって使い分けることができる。多面体構造ポリシロキサン変性体がヒドロシリル基を主たる反応性基として有する場合は、アルケニルを有する化合物、アルケニル基を主たる反応性基として有する場合は、ヒドロシリル基を有する化合物を硬化剤として用いることができる。以下、詳細に説明する。
【0101】
前記アルケニル基を有する硬化剤は、アルケニル基を有する化合物であれば特に限定されないが、1分子中に少なくともアルケニル基を2個含有するものが好ましく、アルケニル基を有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサン、アルケニル基を含有する環状シロキサンなどのシロキサン化合物が特に好ましい。これらアルケニル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
直鎖構造を有するアルケニル基含有ポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
【0103】
分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルビニルシロキサン単位(Vi(CH32SiO1/2単位)とSiO2単位、SiO3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0104】
アルケニル基を含有する環状シロキサン化合物としては、1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0105】
前記ヒドロシリル基を有する硬化剤は、ヒドロシリル基を有する化合物であれば特に限定されないが、1分子中に少なくともヒドロシリル基を2個含有するものが好ましく、ヒドロシリル基を有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサン、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンなどのシロキサン化合物が特に好ましい。これらヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
【0107】
分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CH32SiO1/2単位)とSiO2単位、SiO3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0108】
ヒドロシリル基を含有する環状シロキサン化合物としては、1,3,5,7−ハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−1,3,5−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0109】
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0110】
硬化剤の添加量は種々設定できるが、アルケニル基1個あたり、Si原子に直結した水素原子が0.3〜5個、好ましくは、0.5〜3個となる割合であることが望ましい。アルケニル基の割合が少なすぎると、発泡等による外観不良が生じやすくなり、また、多すぎると、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0111】
次に、本発明で用いる硬化遅延剤について、説明する。
【0112】
硬化遅延剤は、本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体、および、ポリシロキサン系組成物の保存安定性を改良あるいは、硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整するための成分である。本発明においては、硬化遅延剤としては、ヒドロシリル化触媒による付加型硬化性組成物で用いられている公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもよい。
【0113】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、具体的には3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示できる。
【0114】
有機リン化合物としては、具体的にはトリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示できる。
【0115】
有機イオウ化合物としては、具体的にはオルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示できる。
【0116】
窒素含有化合物としては、具体的にはN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が例示できる。
【0117】
スズ系化合物としては、具体的にはハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示できる。
【0118】
有機過酸化物としては、具体的にはジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。これらのうち、マレイン酸ジメチル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが、特に好ましい硬化遅延剤として例示できる。
【0119】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10-1〜103モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜100モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0120】
次に、本発明で用いる接着性付与剤について説明する。
【0121】
接着性付与剤は本願発明の組成物と基材との接着性を向上する目的で用いるものであり、その様な効果があるものは時に制限はないが、シランカップリング剤、エポキシ化合物が好ましい物として例示できる。
【0122】
具体的に例えば、多面体構造ポリシロキサン変性体としてヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサン変性体にアルケニル基を有する化合物、ヒドロシリル化触媒、接着性付与剤を配合した組成物により、硬化物が基材との接着性が良好な組成物となす事ができる。
【0123】
シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0124】
好ましいシランカップリング剤としては、具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0125】
シランカップリング剤の添加量としては、多面体構造ポリシロキサン変性体および硬化剤の合計重量の0.05〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜15重量%である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0126】
エポキシ化合物としては、例えば、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2'−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。
【0127】
エポキシ化合物の添加量としては、多面体構造ポリシロキサン変性体および硬化剤の合計重量の0.1〜50重量%であることが好ましく、さらに好ましくは、0.2〜15重量%である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0128】
また、シランカップリング剤、エポキシ化合物等は単独で使用してもよく、2種併用してもよい。
【0129】
本発明においては、接着性付与剤の効果を高めるために、公知の接着性促進剤を用いることができる。接着性促進剤としては、ボロン酸エステル化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0130】
本発明に用いるポリシロキサン系組成物には、上記成分に加え、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じ、粉砕石英、炭酸カルシウム、カーボンブラック、シリカなどの充填剤を添加してもよい。
【0131】
また、本発明のポリシロキサン系組成物には、必要に応じて、顔料、蛍光体、着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。
【0132】
この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。
【0133】
また、本発明のポリシロキサン系組成物を難燃性、耐火性にするためには二酸化チタン、炭酸マンガン、Fe23、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどの公知の添加剤を添加してもよい。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0134】
本発明に用いるポリシロキサン系組成物は、上記した成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりすることにより得ることができる。
【0135】
本発明のポリシロキサン系組成物は、成形材料として使用することができる。成形方法としては、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、発泡成形、射出成形、液状射出成形、注型成形などの任意の方法を使用することができる。また、本発明のポリシロキサン系組成物を、シリコンやガラスなどの各種基材にスピンコーター等で塗布し、皮膜させて使用することもできる。この際、粘度調整のために、任意の溶剤で希釈して用いてもよい。
【0136】
また、耐熱性・耐光性の低下を伴う有機酸官能基等を導入する必要がないため、高温や強い光が照射される環境下での使用が可能となる。
【0137】
本発明によるポリシロキサン系組成物から得られる硬化物は、耐熱性、耐光性に優れ、広い波長領域および温度領域において、高い透明性を発現する。また、低誘電特性や低屈折率材料としても好適である。
【0138】
本発明によるポリシロキサン系組成物から得られる硬化物・成形体・膜は、耐熱性、耐光性に優れ、400nm程度の紫外領域の波長の光に対しても、高い透明性を有している。この特性によりオプトデバイス用部材(光学材料)として用いることが可能である。
【0139】
本発明のポリシロキサン系組成物は、光学材料用組成物として用いることができ、硬化等により、例えば、オプトデバイス用部材として用いることができる。ここで言う光学材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。ここで、光学材料として用途を想定する場合、具体的に、例えば、厚さ3mmでの波長400nmにおける光線透過率が70%以上、さらには、75%以上であることが望ましい。近年、光学材料においては、高い耐熱性や耐光性が要求されており、特に、これらの試験後での光線透過率の低下が小さいもの(低下率が試験前の透過率の好ましくは5%以下)が望まれる。
【0140】
また、本発明によって得られる硬化物は、短波長領域(350nm〜450nm)のレーザー光への耐久性に優れ、例えば、405nm±10nmの青紫色レーザーを長時間照射しても、レーザー光線透過率の変化率を小さく抑制することが可能である。従い、オプトデバイス用部材として用いた場合、デバイスを長寿命化することが可能となる。また、具体的に例えば、短波長領域のレーザーへの高い耐久性を発現させたい場合は、ゲル分率が95%以上であることが好ましい。ゲル分率が95%未満の場合、レーザー透過部の屈折率変化が起こったり、スジが発生したり、また、表面に凹凸を生じたりする場合がある。
【0141】
なお、前記ゲル分率は、具体的に例えば、20±5℃の条件下において、1gのサンプルをステンレス製の金網に包み、トルエンに72時間浸漬した後100℃x5時間の条件で乾燥させた際の、試験前後のサンプル重量を測定することにより算出する。具体的には、
(ゲル分率)=[(試験後の重量)/(試験前の重量)]x100
の計算式にて算出することができる。
【0142】
本発明において得られるポリシロキサン系組成物および成形体の用途としては、具体的には、カラーフィルタ、レジスト材料、液晶ディスプレイ分野における基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、液晶用フィルム、層間絶縁膜などの液晶表示装置周辺材料が例示される。
【0143】
また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止剤、反射防止膜、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤が例示される。。
【0144】
またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、封止剤、偏光子保護フィルムが例示される。
【0145】
また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、各種封止剤、接着剤、また、フィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤が例示される。
【0146】
またLED表示装置に使用されるLED素子のモールド材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤などが例示される。
【0147】
光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤が例示される。さらに具体的には、次世代DVD等の光ピックアップ用の部材、例えば、ピックアップレンズ、コリメータレンズ、対物レンズ、センサレンズ、保護フィルム、素子封止剤、センサー封止剤、グレーティング、接着剤、プリズム、波長板、補正板、スプリッタ、ホログラム、ミラー等に好適に用いることができる。
【0148】
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部が例示される。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーが例示される。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤などが例示される。光センシング機器のレンズ用材料、封止剤、接着剤、フィルムなどが例示される。
【0149】
光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止剤、接着剤などが例示される。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止剤、接着剤などが例示される。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LED素子の封止剤、接着剤などが例示される。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【0150】
光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーが例示される。
【0151】
半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料が例示される。
【0152】
自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品が例示される。また、鉄道車輌用の複層ガラスが例示される。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コートが例示される。
【0153】
建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料が例示される。農業用では、ハウス被覆用フィルムが例示される。
【0154】
次世代の光・電子機能有機材料としては、次世代DVD、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【実施例】
【0155】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0156】
(ガスクロマトグラフィー測定)
本実施例に示すガスクロマトグラフィー測定は、以下に示す分析装置、条件で行った。
使用機器:島津製作所(株)製ガスクロマトグラフィー(GC−14B)
分離カラム:J&W SCIENTIFIC INC製キャピラリーカラムDB−17、0.32mmφ×30m
分離条件:初期温度50℃、6分間保持
昇温速度20℃/min
最終温度280℃、10分間保持
インジェクション温度250℃
ディテクター温度250℃
試料:反応溶液0.2μL
内部標準物質:ドデカン
【0157】
(比較例1)
48〜50%の水酸化トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム水溶液387g(日本ファインケム製)、メタノール182g、テトラエトキシシラン(多摩化学製)312gを室温で攪拌しながら順に加えた。テトラエトキシシランの添加完了時から、およそ5分程度で、内部温度が上昇を始めた。次に、テトラエトキシシランの添加完了時から、所定時間毎に、反応液2.2gをシリンジでサンプリングし、ビニルジメチルクロロシラン1g、ドデカン、0.05g、トルエン4.95gの混合溶液に、室温で攪拌しながら、ゆっくりと滴下した。
【0158】
滴下終了後から、5分後に、トルエン溶液のガスクロマトグラフィーを測定し、ビニルジメチルシロキシオクタシルセスキオキサンの収率を算出した(GC収率、内部標準法)。反応時間、温度、収率の結果を表1に示す。尚、反応時間はテトラエトキシシランの添加終了からの時間であり、温度はサンプリング時の反応系の温度である。
【0159】
(実施例1)
比較例1の140時間反応させた溶液100mLを取り出し、設定温度が5℃の冷蔵庫内で12時間静置した後、比較例1と同様にサンプリングし、ビニルジメチルクロロシランと反応させて、ガスクロマトグラフィーを測定、ビニルジメチルシロキシオクタシルセスキオキサンの収率を算出した。結果を表1に示す。この結果、反応系を冷却することにより、アンモニウムオリゴシリケートの生成を促進でき、ビニルジメチルシロキシオクタシルセスキオキサンの収率が向上することが分かった。
【0160】
(実施例2)
比較例1と同様に48〜50%の水酸化トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム水溶液387g(日本ファインケム製)、メタノール182g、テトラエトキシシラン(多摩化学製)312gを攪拌しながら室温で順に加えた。
【0161】
テトラエトキシシランの添加完了から3時間後に、反応液は27℃であった。その反応系をアイスバスで5℃に冷却し、表2記載の所定時間毎に、比較例1と同様にサンプリングし、ビニルジメチルクロロシランと反応させて、ガスクロマトグラフィーを測定し、ビニルジメチルシロキシオクタシルセスキオキサンの収率を算出した。結果を表2に示す。この結果、比較例1では、反応開始から7時間後の収率が80%、140時間後の収率が88%であったのに対して、反応開始から4.5時間後には収率が80%、6時間後には87%、20時間後には97%になることが分かった。
【0162】
(実施例3)
比較例1と同様に48〜50%の水酸化トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム水溶液322g(日本ファインケム製)、メタノール190mL、テトラエトキシシラン(多摩化学製)260gを攪拌しながら室温で順に加えた。反応開始から3時間後に、反応系をアイスバスで5℃に冷却し、さらに17時間反応させた。
【0163】
次に、得られた反応溶液を、ジメチルビニルクロロシラン131g、トリメチルクロロシラン154g、ヘキサン330mLの20℃の混合溶液に、攪拌しながら、20℃でゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温で2時間反応させた後、ヘキサン層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た(抽出は、反応系に500mLのヘキサンを追加して行った)。次に、生成した固形物をメタノール中で激しく攪拌することにより洗浄し、ろ別することにより、白色固体のシリル化カゴ型ケイ酸154gを得た。シリル化カゴ型シロキサンの生成は、1H−NMRとガスクロマトグラフィーにより確認した。
【0164】
(実施例4)
実施例3で作成したシリル化カゴ型ケイ酸3.2gに、アルミナシリケート(キョーワード700:協和化学工業)0.16g、トルエン30mLを加え、100℃で2時間攪拌した。攪拌終了後、アルミナシリケートをろ別し、ろ液を濃縮、減圧乾燥させることにより、シリル化カゴ型ケイ酸を得た3gを得た。
【0165】
このシリル化カゴ型ケイ酸3g、白金ビニルシロキサン錯体(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)0.33μL、トルエン12gの混合溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン5.25gとトルエン5.25gの混合溶液に加え、100℃で反応させた。1時間30分後、シリル化カゴ型ケイ酸のビニル基が完全に消失し、ヒドロシリル化反応が100%進行したことを1H−NMRにより確認した。
【0166】
このようにして得られた反応溶液について、減圧条件下にて揮発成分を留去し、多面体構造ポリシロキサン変性体を得た。得られた変性体は、無色透明液体であり、1H−NMRにより、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン由来のSiH基が導入されていることを確認した。
【0167】
(実施例5)
実施例4で得られた変性体3.0gに、両末端にビニル基を有する直鎖状のポリシロキサン(クラリアント製:MVD8MV)3.34gを加えて、均一溶液とした。このようにして得られた溶液を型枠に流し込み、60℃で1時間、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で1時間、180℃で1時間加熱して硬化させた後、型枠を取り外した。次に、型枠より取り外した硬化物を、200℃に温度設定した熱風循環オーブン内にて、2時間養生することにより、板状成型体を得た。
【0168】
反応時間と温度を変えた結果を表1、2に示す。なお表1中実施例1は比較例1の140時間後のサンプルを5℃で12時間冷却したものである。
【0169】
【表1】

【0170】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)〜(iii)の製造工程を含むことを特徴とするシリル化カゴ型ケ
イ酸の製造方法;
(i)テトラアルコキシシランまたはその部分縮合物(a)と水酸化4級アンモ
ニウム(b)を混合、反応させる工程、
(ii)前記(i)で得られる反応液を冷却する工程、
(iii)前記(ii)で得られた反応液とシリルクロライド(c)とを反応さ
せてシリル化カゴ型ケイ酸を得る工程。
【請求項2】
以下の(i)〜(iii)の製造工程を含むことを特徴とするシリル化カゴ型ケ
イ酸の製造方法;
(i)シリカ(d)と水酸化4級アンモニウム(b)を混合、反応させる工程、

(ii)前記(i)で得られる反応液を冷却する工程、
(iii)前記(ii)で得られた反応液とシリルクロライド(c)とを反応さ
せてシリル化カゴ型ケイ酸を得る工程。
【請求項3】
製造工程(ii)の反応液の冷却温度が10℃未満であることを特徴とする請求
項1または2に記載のシリル化カゴ型ケイ酸の製造方法。
【請求項4】
テトラアルコキシシランまたはその部分縮合物(a)のアルキル基の炭素数が1〜5であることを特徴とする請求項1または3に記載のシリル化カゴ型ケイ酸の製造方法。
【請求項5】
吸着剤(e)で処理することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリル化カゴ型ケイ酸の製造方法。
【請求項6】
吸着剤(e)が、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケートから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載のシリル化カゴ型ケイ酸の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法で得られることを特徴とするシリル化カゴ型ケイ酸。
【請求項8】
アルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有することを特徴とする請求項7に記載のシリル化カゴ型ケイ酸。
【請求項9】
請求項8に記載のアルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有するシリル化カゴ型ケイ酸をヒドロシリル基および/またはアルケニル基を有する化合物でヒドロシリル化反応させることによって得られる多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項10】
ヒドロシリル基および/またはアルケニル基を有する化合物が、ヒドロシリル基/またはアルケニル基を有する直鎖状あるいは環状ポリシロキサンであることを特徴とする請求項9に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項11】
請求項9または10に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体と硬化剤からなるポリシロキサン系組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のポリシロキサン系組成物を硬化して得られる硬化物。

【公開番号】特開2010−280816(P2010−280816A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135323(P2009−135323)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】