説明

シロキサン重合性成分を含むアミン有機ボラン錯体開始重合性組成物

一実施態様において、本発明は、a)有機ボランアミン錯体;b)遊離基重合によって重合可能なオレフィン性不飽和を有する1種又はそれ以上のモノマー、オリゴマー又はポリマー;c)シロキサン主鎖及び重合可能な反応性部分を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマー;並びにd)シロキサン主鎖及び重合可能な反応性部分を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマーの重合用触媒を含む重合性組成物である。この組成物は有機ボランアミン錯体を解離させる化合物を更に含むことができる。好ましい実施態様において、2液型組成物はb)遊離基重合によって重合可能なオレフィン性不飽和を有する1種又はそれ以上のモノマー、オリゴマー又はポリマー;及びc)シロキサン主鎖及び重合可能な反応性部分を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマーの両方と反応性である化合物を更に含む。この組成物は、組成物の2液を接触させることによって重合させることができる。別の実施態様において、本発明は、アルキル、シクロアルキル又はその両者である配位子を有するアルキルボラン及びアミノシロキサンを含む有機ボランアミン錯体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシロキサン重合性成分を含む有機ボランアミン開始重合性組成物に関する。本発明の重合性組成物は遊離基重合可能な部分を含む化合物及びシロキサンを含む重合性化合物を含む。別の実施態様において、本発明は、有機ボランアミン錯体及び遊離基重合可能な部分を含む化合物及びシロキサン主鎖(backbone)を含む重合性化合物を含む接着剤、シーリング材及び被覆に関する。本発明の別の実施態様は、アミンがシロキサン官能価を有する有機ボランアミン錯体である。本発明の別の実施態様は、遊離基重合可能な部分を含む化合物及び有機ボランアミン錯体開始剤並びに1液型配合物(one−part formulation)中で湿分の不存在下においては重合性組成物を安定化できる、湿分への暴露時に酸を生成し得るシリコーン含有物質を含む重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物を重合させる多くの実際の局面において、例えば重合性化合物を接着剤として使用する場合において、反応性材料を含む2種若しくはそれ以上の成分の加熱、剪断又は接触のような操作を実施することによってオンデマンド方式で硬化可能な接着剤組成物及び重合性組成物を得ることが望ましい。オンデマンド硬化は、必要に応じて、重合を開始できることを意味する。オンデマンド硬化組成物に関する重要な問題は組成物の安定性である。多くのこのような組成物は、周囲温度又はその近くの温度において、部分的に硬化し、その結果、粘度が増加して取り扱いが困難になると同時に、重合性組成物又は接着剤組成物の機能が低下する。
【0003】
ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリテトラフルオロエチレンのような、低表面エネルギーオレフィン類は、玩具、自動車部品、家具用途などのような種々の用途において種々の魅力的な性質を有する。これらのプラスチック材料は、表面エネルギーが低いため、これらの材料に接着する接着剤組成物を見出すのは非常に困難である。これらのプラスチックに使用される市販の接着剤は、表面への接着の前に、時間のかかる又は広範な表面前処理を必要とする。このような前処理には、コロナ処理、火炎処理、プライマーの適用などがある。表面の広範な前処理の必要性は、自動車部品、玩具、家具などの設計者にかなりの制限をもたらす。
【0004】
Skoultchiに対して発行された一連の特許(特許文献1、2、3、4及び5(引用することによってこれら全てを本明細書中に組み入れる))は、アクリル系接着剤組成物において有用な2液型開始剤系(two−part initiator system)を開示している。2液系の第1液は、安定な有機ボランアミン錯体を含み、第2液は有機酸又はアルデヒドのような不安定化剤又は活性化剤を含む。錯体の有機ボラン化合物は、C1〜C10アルキル基又はフェニル基から選ぶことができる3個の配位子を有する。この接着剤組成物は、スピーカー磁石、金属間接着、自動車のガラス対金属の接着、ガラス間接着、回路基板部品の接着、選定されたプラスチック対金属の接着、ガラス対木材の接着などのような構造用接着剤又は半構造用接着剤用途において、及び電動機磁石に有用であることが開示されている。
【0005】
Zharovらは、一連の米国特許(特許文献6、7及び8(引用することによってこれら全てを本明細書中に組み入れる))において、有機ボランアミン錯体を硬化の開始に使用する接着剤として特に有用である重合性アクリル系組成物を開示している。これらの錯体は、低表面エネルギー基材に接着する接着剤の重合を開始するのに好適であることが開示されている。
【0006】
Pociusは、一連の特許(特許文献9、10、11、12、13及び14(引用することによってこれら全てを本明細書中に組み入れる))において、第1級アミンと反応する少なくとも2つの基を有する化合物とジ第1級アミンとの反応生成物であるポリアミン及びポリオキシアルキレンポリアミンのような種々のアミンを用いたアミン有機ボラン錯体を開示している。Pocius(特許文献12)は、有機ポリアミン錯体、ポリオール及びイソシアネート脱錯化剤(decomplexing agent)を含む組成物を開示している。
【0007】
前記先行技術の組成物の多くは、重合後、周囲温度又はその近くの温度において優れた安定性、強度及び接着力を示すが、室温より高温及び低温では、接着剤のTgより高温での軟化及び接着剤マトリックスのTgより低温での脆化により、強度及び接着力がかなり低下する。このため、これらの接着剤を用いて接着される基材(substrate)を使用できる環境が制限される。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,106,928号
【特許文献2】米国特許第5,143,884号
【特許文献3】米国特許第5,286,821号
【特許文献4】米国特許第5,310,835号
【特許文献5】米国特許第5,376,746号
【特許文献6】米国特許第5,539,070号
【特許文献7】米国特許第5,690,780号
【特許文献8】米国特許第5,691,065号
【特許文献9】米国特許第5,616,796号
【特許文献10】米国特許第5,621,143号
【特許文献11】米国特許第5,681,910号
【特許文献12】米国特許第5,686,544号
【特許文献13】米国特許第5,718,977号
【特許文献14】米国特許第5,795,657号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、低表面エネルギー基材への接着可能な接着剤系及びそのような接着を促進する開始剤系が必要とされている。更にまた必要とされているのは、周囲温度又はその近傍で熱安定性であり、ユーザーのニーズに応じて、重合されるポリマー組成物及び接着剤系である。さらにまた必要とされているのは、広範な前処理も費用のかかる前処理を必要とせずに、低表面エネルギー基材に接着可能で且つ低表面エネルギー基材を他の基材に接着可能な接着剤組成物である。周囲温度とは異なる温度において安定性及び接着性を有する組成物も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施態様において、本発明は、a)有機ボランアミン錯体;b)遊離基重合によって重合可能なオレフィン性不飽和を有する1種又はそれ以上のモノマー、オリゴマー若しくはポリマー;c)シロキサン主鎖及び重合可能な反応性部分を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマー;並びにd)シロキサン主鎖及び重合可能な反応性部分を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマーの重合用触媒を含む重合性組成物である。本発明の組成物の一部は、有機ボランアミン錯体が解離され且つ反応性化合物、オリゴマー又はプレポリマーの重合を開始する温度への暴露によって重合させることができる。
【0011】
別の実施態様において、本発明は、a)有機ボランアミン錯体;b)遊離基重合によって重合可能なオレフィン性不飽和を有する1種又はそれ以上のモノマー、オリゴマー又はポリマー;c)主鎖中にシロキサンを有し且つ重合可能な反応性部分を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマー;d)有機ボランアミン錯体を解離させることによってボランを遊離させて、オレフィン性不飽和を有する1種又はそれ以上のモノマー、オリゴマー又はポリマーの重合を開始する化合物の有効量;及びe)シロキサン主鎖及び重合可能な反応性部分を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマーの重合用触媒を含む2液型重合性組成物である。錯体の解離を引き起こす化合物は、重合の開始が要求されるまで錯体とは別々にしておく。組成物中に使用する触媒成分を、通常の貯蔵又は輸送条件下において反応し得る組成物の部分とは別々にしておく、例えば2液型組成物の別々の液にしておくのが望ましい場合がある。
【0012】
好ましい実施態様において、2液型組成物はさらに、b)遊離基重合によって重合可能なオレフィン性不飽和を有する1種又はそれ以上のモノマー、オリゴマー又はポリマー;及びc)シロキサン主鎖及び重合可能な反応性部分を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマーの両者と反応性の化合物を含む。この組成物は、組成物の2液を接触させることによって重合させることができる。
【0013】
別の実施態様において、本発明は、アルキル、シクロアルキル又は両者である配位子を有するアルキルボラン及びアミノシロキサンを含む有機ボランアミン錯体である。
【0014】
更に別の実施態様において、本発明は、a)有機ボランアミン錯体;b)遊離基重合によって重合可能なオレフィン性不飽和を有する1種又はそれ以上のモノマー、オリゴマー又はポリマー;及びc)主鎖中にシロキサン基を有し且つ湿分への暴露時に、有機ボランアミン錯体を脱錯化可能な酸を遊離する部分を含む化合物を含む重合性組成物である。この組成物は、c)が分解して、有機ボランアミン錯体を解離させ且つ重合を開始させる酸を形成するような条件下で大気中の湿分に暴露することによって重合されることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の重合性組成物は、周囲温度又はその近傍で安定であり、前記組成物の2液(two parts)を接触させることによって、又は前記組成物を有機ボランアミン錯体の熱解離温度より高温に加熱することによって、オンデマンドで硬化させることができる。更に、本発明の重合性組成物は、プライマー又は表面処理を必要とせずに、低表面エネルギー基材に対する接着を形成できる。これらの重合性組成物は、接着剤、被覆として又は基材同士の貼り合わせに使用できる。重合された組成物は、また、高温において優れた凝集及び接着強さを示し、従って、高温において優れた安定性を示す。本発明の組成物はまた、例えば−40℃までの低温を含む広範囲の温度において優れた性質を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
錯体中に使用される有機ボランは、トリアルキルボラン又はアルキルシクロアルキルボランである。好ましくは、このようなボランは式1:
B−(R23
[式中、Bは硼素を表し;R2は、それぞれ別個に、C1〜C10アルキル、C3〜C10アルキルであるか、又はR2の2つ又はそれ以上が結合して、脂環式環を形成してもよい]
に対応する。好ましくは、R2はC1〜C4アルキル、さらに好ましくはC2〜C4アルキル、最も好ましくはC3〜C4アルキルである。好ましい有機ボランには、トリ−エチルボラン、トリ−イソプロピルボラン及びトリ−n−ブチルボランがある。
【0017】
有機ボラン化合物の錯化に使用されるアミンは、有機ボランを錯化し且つ脱錯化剤への暴露時に脱錯化され得る任意のアミン又はアミン混合物であることができる。アミン/有機ボラン錯体中の所定のアミンの使用の望ましさは、ルイス酸−塩基錯体と単離されるルイス酸(有機ボラン)及び塩基(アミン)のエネルギーの合計とのエネルギー差から計算できる。結合エネルギーがマイナスであるほど、錯体は安定である。
【0018】
結合エネルギー=
(錯体エネルギー(ルイス酸のエネルギー+ルイス塩基のエネルギー))
【0019】
このような結合エネルギーは、Hartree Fock法のような理論的非経験(ab−initio)法と3−21G基底系を用いて計算できる。これらの計算方法は、市販ソフトウェア及びハードウェア、例えばSPARTAN及びGaussian 98プログラムとSilicon Graphicsワークステーションを用いて商業的に利用可能である。10キロカロリー/モル又はそれ以上のアミン/有機ボラン結合エネルギーを有するアミンが好ましく、15キロカロリー/モル又はそれ以上の結合エネルギーを有するアミンがより好ましく、20キロカロリー/モル又はそれ以上の結合エネルギーを有するアミンが最も好ましい。本発明の組成物の重合を脱錯化剤の使用によって開始する実施態様において、有機ボランへのアミンの結合エネルギーは好ましくは50kcal/モル又はそれ以下、最も好ましくは30kcal/モル又はそれ以下である。本発明の組成物の重合を熱の使用によって開始する実施態様においては、アミンの結合エネルギーは好ましくは100kcal/モル又はそれ以下、より好ましくは80kcal/モル又はそれ以下、最も好ましくは50kcal/モル又はそれ以下である。
【0020】
好ましいアミンとしては以下のものが挙げられる:第1級アミン若しくは第2級アミン又は第1級アミン基若しくは第2級アミン基を含むポリアミン、あるいはアンモニア(Zharovの米国特許第5,539,070号5欄、第41〜53行(引用することによって本明細書中に組み入れる)、Skoultchiの米国特許第5,106,928号,2欄,第29〜58行(引用することによって本明細書中に組み入れる)、及びPociusの米国特許第5,686,544号,7欄,第29行〜10欄,第36行(引用することによって本明細書中に組み入れる));エタノールアミン、第2級ジアルキルジアミン又はポリオキシアルキレンポリアミン;並びにジアミン及び2個又はそれ以上の、アミンと反応性の基を有する化合物との、アミンを末端基とする反応生成物(Devinyの米国特許第5,883,208号,7欄,第30行〜8欄,第56行(引用することによって本明細書中に組み入れる))。Devinyの特許に記載された反応生成物に関して、好ましいジ第1級アミンとしては、アルキルジ第1級アミン、アリールジ第1級アミン、アルカリールジ第1級アミン及びポリオキシアルキレンジアミンが挙げられ;アミンと反応性の化合物としては、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸ハロゲン化物、アルデヒド、エポキシド、アルコール及びアクリレート基の2個又はそれ以上の部分を含む化合物が挙げられる。Devinyの特許に記載された好ましいアミンとしては、n−オクチルアミン、1,6−ジアミノヘキサン(1,6−ヘキサンジアミン)、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン(1,3−プロパンジアミン)、1,2−プロピレンジアミン、1,2−エタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチルー1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリエチレン及びテトラアミン並びにジエチレントリアミンが挙げられる。好ましいポリオキシアルキレンポリアミンとしては、ポリエチレンオキシドジアミン、ポリプロピレンオキシドジアミン、トリエチレングリコールプロピレンジアミン、ポリテトラメチレンオキシドジアミン及びポリエチレンオキシドコポリプロピレンオキシドジアミンが挙げられる。
【0021】
好ましい一実施態様において、アミンは、第1級アミン及び1個又はそれ以上の水素結合受容基を有する化合物を含み、この化合物において第1級アミンと水素結合受容基の間に少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個の炭素原子が存在する。好ましくは、アルキレン部分が、第1級アミンと水素結合受容基との間に位置する。本明細書中において、「水素結合受容基(hydrogen bond accepting group)」とは、ボラン錯化アミンの水素との分子間又は分子間相互作用によって、ボランで錯化されるアミン基の窒素の電子密度を増加させる官能基を意味する。好ましい水素結合受容基としては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、エーテル、ハロゲン、ポリエーテル、チオエーテル及びポリアミンが挙げられる。好ましい実施態様において、アミンは式2に対応する。
【0022】
NH2(CH2b−(C(R12a−X 式2
[式中、R1は、それそれ別個に、水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキルであり、又はR1の2つ又はそれ以上が結合して1個又はそれ以上のシクロ環を形成し;Xは水素結合受容部分であり;aは、それぞれ別個に、1〜10の整数であり;bは0〜1の整数であり、aとbの合計は、それぞれ別個に、2〜10である]。
【0023】
好ましくは、R1は水素、メチルであるか、又はR1の2つ又はそれ以上が結合して5員又は6員のシクロ環を形成する。好ましい実施態様において、Xは水素結合受容部分であるが、水素結合受容部分がアミンである場合には、それは第3級アミン又は第2級アミンである。好ましくは、水素結合受容基は基内に1個又はそれ以上の窒素、酸素、硫黄又はハロゲン原子を有する。より好ましくは、Xは、それぞれ別個に、−N(R82、−OR10、―SR10又はハロゲンである。R8は、それぞれ別個に、水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル、−(C(R12d−Wであるか、又はR8の2つが結合して、1個又はそれ以上のシクロ環を有する構造を形成することができる。R10は、それぞれ別個に、水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル、又は−(C(R12d−Wである。より好ましくは、Xは−N(R82又は−OR10である。好ましくは、R8及びR10は、それぞれ別個に、水素、C1〜C4アルキル又は−(C(R12d−W、より好ましくは水素、C1〜C4アルキル、最も好ましくは水素又はメチルである。Wは、それぞれ別個に、水素若しくはC1〜C10アルキル又はXで、より好ましくは水素又はC1〜C4アルキルである。WがXである場合には、これは水素結合受容基が本明細書中に記載した水素結合受容部分を1より多く含むことを意味する。好ましくは、aは1又はそれ以上、より好ましくは2又はそれ以上である。好ましくは、aは6又はそれ以下、最も好ましくは4又はそれ以下である。好ましくは、bは1である。好ましくは、aとbとの合計は、2又はそれ以上、最も好ましくは3又はそれ以上の整数である。好ましくは、aとbとの合計は、それぞれ別個に、6又はそれ以下、より好ましくは4又はそれ以下である。好ましくは、dは、それぞれ別個に、1〜4の整数、より好ましは2〜4、最も好ましくは2〜3の整数である。式2に対応する好ましいアミンには、ジメチルアミノプロピルアミン、メトキシプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノブチルアミン、メトキシブチルアミン、メトキシエチルアミン、エトキシプロピルアミン、プロポキシプロピルアミン、アミンを末端基とするポリアルキレンエーテル(例えば、トリメチロールプロパントリス(ポリ(プロピレングリコール)アミン末端)エーテル)及びアミノプロピルプロパンジアミンがある。
【0024】
一実施態様において、好ましいアミン錯体は式3に対応する:
(R23−B←NH2(CH2b−(C(R12a―X 式3
[式中、R1、R2、X、a及びbは前に定義した通りである]。
【0025】
別の実施態様において、前記アミンは、複素環中に少なくとも1個の窒素を有する脂肪族複素環である。複素環式化合物は、また、窒素、酸素、硫黄又は二重結合の1つ又はそれ以上を含むことができる。更に、複素環は、環の少なくとも1つが環中に窒素を有する複数の環を含むことができる。好ましくは、脂肪族複素環式アミンは式4に対応する:
【0026】
【化1】

【0027】
[式中、R3は、それぞれ別個に、水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキルであるか、又は隣接原子と共に二重結合を形成し;R4’は、それぞれ別個に、水素、C1〜C10アルキルであるか、又はR3、Z又はZ上の置換基と共にシクロ環を形成し;Zは、それぞれ別個に、硫黄、酸素又は−NR4であり;R4は、それぞれ別個に、水素、C1〜C10アルキル、C6〜C10アリール又はC7〜C10アルカリールであり;xは、それぞれ別個に、1〜10の整数であるが、全てのxの合計は2〜10でなければならず;yは、それぞれ別個に、0又は1であり;R3、R4及びR4’の2つ又はそれ以上は結合してシクロ環を形成し、それによって多環式化合物を形成できる]。
【0028】
好ましくは、R3は、それぞれ別個に、水素、メチルであるか、又は隣接原子と共に二重結合を形成する。好ましくは、ZはNR4である。好ましくは、R4は水素又はC1〜C4アルキル、より好ましくは水素又はメチルである。好ましくは、R4’は水素又はC1〜C4アルキル、より好ましくは水素又はメチル、最も好ましくは水素である。好ましくは、xは1〜5(1と5を含む)であり、全てのxの合計は3〜5である。式4に対応する好ましい化合物としては、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、ピペラジン、1,3,3−トリメチル6−アザビシクロ[3,2,1]オクタン、チアゾリジン、ホモピペラジン、アジリジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、3−ピロリン、アミノプロピルモルホリンなどが挙げられる。脂肪族複素環式アミンを含む錯体は好ましくは式5に対応する。
【0029】
【化2】

【0030】
[式中、R2、R3、R4’、Z、x及びyは前に定義した通りである]。
【0031】
さらに別の実施態様において、有機ボランによって錯化されるアミンはアミジンである。アミジンが有機ボランとの、前述のような結合エネルギーを充分に有するアミジン構造を有する任意の化合物を使用できる。好ましいアミジン化合物は式6に対応する。
【0032】
【化3】

【0033】
[式中、R5、R6及びR7は、それぞれ別個に、水素、C1〜C10アルキル又はC3〜C10シクロアルキルであり;R5、R6及びR7の2つ又はそれ以上は任意の組み合わせて結合して環構造を形成でき、前記環構造は1個又はそれ以上の環を有することができる]。
好ましくは、R5、R6及びR7は、それぞれ別個に、水素、C1〜C4アルキル又はC5〜C6シクロアルキルである。最も好ましくは、R7はH又はメチルである。R5、R6及びR7の2つ又はそれ以上が結合して環構造を形成する実施態様において、環構造は好ましくは単環又は二環構造である。好ましいアミジンには、1,8−ジアザビシクロ[5,4]ウンデク−7−エン;テトラヒドロピリミジン;2−メチル−2−イミダゾリン;及び1,1,3,3−テトラメチルグアニジンなどがある。
【0034】
有機ボランアミジン錯体は好ましくは式7に対応する。
【0035】
【化4】

【0036】
[式中、R2、R5、R6及びR7は前に定義した通りである]。
【0037】
さらに別の実施態様において、有機ボランによって錯化されるアミンは共役イミンである。イミンが有機ボランとの前述のような結合エネルギーを充分に有する共役イミン構造を有する任意の化合物を使用できる。共役イミンは直鎖若しくは分岐鎖イミン又は環状イミンであることができる。好ましいイミン化合物は式8に対応する:
NR7=CR9−(CR9=CR9cY 式8
[式中、R7は水素、アルキルであるか、又はR9又はYと環を形成し;Yは、それぞれ独立に、水素、N(R42、OR4、C(O)OR4、ハロゲン、R7若しくはR9とシクロ環を形成するアルキレン基であり;R9は、それぞれ独立に、水素、Y、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル−、C(R92−(CR9=CR9c−Yであるか、又はY中の電子を多く含む基がイミン窒素の二重結合に関して共役している場合にはR9の2つ又はそれ以上が結合して環構造を形成してもよく;cは、それぞれ別個に、1〜10の整数である]。
【0038】
好ましくは、R9は、それぞれ別個に、水素又はメチルである。Yは、好ましくはN(R42、SR4、OR4、又はR9とシクロ環を形成するアルキレン基である。Yは、より好ましくはN(R42、又はR9とシクロ環を形成するアルキレン基である。cは好ましくは1〜5の整数、最も好ましくは1である。本発明において有用な好ましい共役イミンには、4−ジメチルアミノピリジン;2,3−ビス(ジメチルアミノ)シクロプロペンイミン;3−(ジメチルアミノ)アクロレインイミン;3−(ジメチルアミノ)メタクロレインイミンなどがある。
【0039】
好ましい環状イミンには、下記構造に対応するものがある。
【0040】
【化5】

【0041】
共役イミンとの錯体は好ましくは式9:
(R23−B←NR7=CR9−(CR9=CR9c
[式中、R2、R7、R9、c及びYは前に定義した通りである]
に対応する。
【0042】
別の実施態様において、アミンは、アミン部分を含む置換基が脂環式環に結合している脂環式化合物であることができる。アミン含有脂環式化合物は、1個又はそれ以上の窒素、酸素、硫黄原子又は二重結合を含む第2の置換基を有することができる。脂環式環は、1個又は2個の二重結合を含むことができる。脂環式化合物は単環又は多環構造であることができる。好ましくは、第1置換基上のアミンは第1級又は第2級である。好ましくは、脂環式環は5員環又は6員環である。好ましくは、第2置換基上の官能基Xはアミン、エーテル、チオエーテル又はハロゲンである。好ましい実施態様において、1個又はそれ以上のアミンを含む置換基を有する脂環式化合物は式10に対応する。
【0043】
【化6】

【0044】
[式中、R3、X、b及びxは前述の通りである]。
アミン置換脂環式化合物に含まれるのは、イソホロンジアミン、及びビス(アミノエチル)シクロヘキサンの異性体である。
【0045】
アミン置換脂環式化合物を用いる錯体は式11に対応する。
【0046】
【化7】

【0047】
[式中、R2、R3、x、b及びxは前に定義した通りである]。
【0048】
別の好ましい実施態様において、アミンは、シロキサン、即ち、アミノシロキサンを更に含む。アミンが有機ボランとの、前述のような結合エネルギーを充分に有する、アミン単位及びシロキサン単位を共に有する任意の化合物を使用できる。好ましくは、シロキサン部分は、シロキサンモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーの重合へのこの成分の関与を可能にする。シロキサン含有モノマー、オリゴマー及び/又はポリマーは、シリコンを含む任意の化合物であることができる。シロキサン化合物は、好ましくは反応性官能価を有する。好ましい反応性官能価としては、水素化物、オレフィン性不飽和、ヒドロキシル及び加水分解してシラノール部分を形成する加水分解性部分が挙げられる。この配合物の好ましい実施態様は、下記一般式を有する。
【0049】
NH2(CH2b−(C(R122a−Si((R11q(Q)p 式12
Qは加水分解性部分である。好ましくは、Qは、それぞれ別個に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノ−オキシ基、メルカプト基又はアルケニルオキシ基である。加水分解性基のうち好ましいのは、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノ−オキシ基、メルカプト基及びアルケニルオキシ基である。弱い加水分解性によって取り扱いを容易にするために、アルコキシ基がより好ましく、メトキシ又はエトキシ基が最も好ましい。好ましくは、Qは、−OR13[式中、R13は、それぞれ別個に、アルキル又は水素である]である。好ましくは、R13は低級C1〜C4アルキル、更に好ましくはエチル又はメチル、最も好ましくはメチルである。
【0050】
11は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキルアミノであるか、又は式:
((CR14H)rO)n−(NR4b−(CH2o−NH2
に対応するが、少なくとも1個のR11は第1級アミンを含む。式12において、R4は好ましくは水素又はC1〜C10アルキル基である。より好ましくは、R11は、それぞれ別個にC1〜C10アルキル、C2〜C20ビニル末端アルケニルであるか又は式:
((CR14H)rO)n−(NR4b−(CH2o−NH2
に対応し、最も好ましくはC1〜C4アルキル、C2〜C8アルケニルであるか、又は式:
((CR14H)rO)n−(NR4b−(CH2o−NH2
に対応する。R11がアルケニルである実施態様において、不飽和は好ましくは末端炭素上に位置する。
【0051】
12は、それぞれ独立に、H、アルキル、アリール、アルコキシであり、さらに1個又はそれ以上の第1級、第2級又は第3級アミンを含むことができる。R12がアルコキシ、第2級又は第3級アミンである実施態様において、式12で表される化合物は、式2で表される化合物と同様な分子内水素結合がなされることができる。これによって、より安定性の高い錯体が形成されることが可能になる。好ましくは、R12は、それぞれ別個に、水素、C1〜C20アルキル、C6〜C20アリール又はC1〜C20アルコキシであり、最も好ましくはC1〜C4アルキル、C6〜C12アリール又はC1〜C4アルコキシである。好ましくは、R13は、それぞれ独立に、C1〜C20アルキル又は水素であり、最も好ましくはC1〜C4アルキル又は水素である。R14は好ましくは水素又はアルキルである。好ましくは、R14は水素又は低級アルキル、より好ましくは水素又はC1〜C6アルキル、さらに好ましくは水素、メチル又はエチル、最も好ましくは水素又はメチルである。pは、それぞれ別個に、1〜3の数であり、qは、それぞれ別個に、1〜2の整数であり、各珪素部分におけるpとqの合計は3である。好ましくは、pは2又は3 10又はそれ以上、最も好ましくは20又はそれ以上である。nは、それぞれ別個に、100又はそれ以下、より好ましくは60又はそれ以下、最も好ましくは50又はそれ以下の整数である。oは1又はそれ以上、より好ましくは3又はそれ以上、最も好ましくは4又はそれ以上の整数である。oは9又はそれ以下、より好ましくは7又はそれ以下、最も好ましくは5又はそれ以下の整数である。rは2又は2の整数である。
【0052】
加水分解性基を有するアミン含有シロキサン部分を用いる錯体は、式13に対応する。
(R23−B←NH2(CH2b−(C(R122a−Si−(R11q(Q)p
式13
【0053】
別の実施態様において、アミンはアミンを末端とするポリシロキサンであり、好ましい一実施態様において、アミンはポリオキシアルキレン鎖を末端とするか又はポリ(シロキサン)主鎖に対する1つのペンダント(側鎖)を有する。このようなアミンは一般式14に対応する。
【0054】
【化8】

【0055】
前記式において、R11、Q、p及びqは前に定義した通りであるが、R11の少なくとも1つは第1級又は第2級アミン、好ましくは第1級アミンを含む。mは、それぞれ別個に、0又はそれ以上、より好ましくは1又はそれ以上の自然数であり、更に好ましくは、化合物の分子量が250〜100,000ダルトン、より好ましくは10,000〜60,000ダルトンとなるように選ばれる。
【0056】
錯体は式15で示される。
【0057】
【化9】

【0058】
別の実施態様において、アミンは、少なくとも1個のアミンが第1級であるアミン末端基を有するポリ(ジアルキル又はジアリールシロキサン)主鎖である。アミンは、基中に1個より多くのアミン窒素が存在することを意味するポリアミン、又はモノアミンであることができる。好ましくは、これらの化合物は一般式16に対応する。
【0059】
【化10】

【0060】
前記式において、j及びkは、それぞれ別個に、化合物の分子量が250〜10,000となるように選ばれた自然数である。R15は、それぞれ独立に、水素、C1〜C20アルキル又はC1〜C20アミノアルキル;より好ましくは水素又はC1〜C20アミノアルキル;最も好ましくは水素である。R16は、それぞれ別個に、水素、炭素数が20以下、好ましくは8以下のアルキル、アルケニル、アリール、アルカリール又はアルアルキルである。R17は、それぞれ独立に、水素、フッ素、C1〜C20ヒドロカルビル又はC1〜C20フルオロカルビル;より好ましくは水素、フッ素、C1〜C8アルキル又はC1〜C8フルオロアルキル;最も好ましくはH又はメチルである。好ましくは、jは、それぞれ独立に、1又はそれ以上の数、より好ましくは20又はそれ以上の数、最も好ましくは50又はそれ以上の数である。好ましくは、kは、それぞれ独立に、1又はそれ以上の数、最も好ましくは2又はそれ以上の数である。好ましくは、kは、それぞれ独立に、8又はそれ以下の数、最も好ましくは3又はそれ以下の数である。一実施態様において、R15は、以下の式の少なくとも1つに対応する。
【0061】
【化11】

【0062】
この錯体は、式17で示される。
【0063】
【化12】

【0064】
[式中、R2、R15、R16、R17、j及びkは前に定義した通りである]。
【0065】
錯体中のアミン化合物対ボラン化合物の当量比は比較的重要である。錯体の安定性を増大させるために、過剰のアミンが好ましい。
【0066】
脱錯化剤がジ又はポリイソシアネート官能性化合物であり且つ錯体が2又はそれ以上のアミン官能価を1又は2個有する実施態様において、脱錯化後のアミンはイソシアネート官能性化合物と反応することによって、最終生成物中にポリ尿素を存在させる。ポリ尿素の存在は、組成物の高温特性を向上させる。
【0067】
本発明の重合性組成物は、遊離基重合可能な重合性化合物を含む部分と、シロキサン官能価を含む、未重合の又は部分重合された化合物を含む第2の部分を含む。2つの部分は混和性、部分混和性又は不混和性であることができる。好ましい実施態様において、重合された組成物は2つの相を含む。相の1つはオレフィン結合によって重合する化合物に基づき、第2の相は、縮合又は付加によって重合する化合物に基づく。本発明の硬化組成物は、好ましくは多くの場合に混和性でない2つの領域を含む。いくつかの実施態様において、これらの2つの領域は別々の相であるか、又は2つの異なるポリマーの相互連絡網目構造である。組成物が架橋性化合物を含む場合には、2つの領域は共有結合によって互いに化学結合させることができる。
【0068】
本発明の重合性組成物中に使用できる、遊離基重合可能な化合物は、遊離基重合によって重合可能なオレフィン性不飽和を含む任意のモノマー、オリゴマー、ポリマー又はそれらの混合物を含む。このような化合物は当業者によく知られている。Mottusの米国特許第3,275,611号は、2欄,第46行〜4欄,第16行(引用することによって本明細書中に組み入れる)にこのような化合物を記載している。オレフィン性不飽和を含む好ましい種類の化合物には、アクリレート及びメタクリレート;オレフィン性不飽和炭化水素、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、1−オクテン、1−ドデセン、1−ヘプタデセン、1−エイコセンなど;ビニル化合物、例えばスチレン、ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、ビニルナフチレン、α―メチルスチレン;ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン;アクリロニトリル及びメタクリロニトリル;酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル;ビニルオキシエタノール;ビニルトリメチルアセテート;ヘキサン酸ビニル;ラウリン酸ビニル;クロロ酢酸ビニル;ステアリン酸ビニル;メチルビニルケトン;ビニルイソブチルエーテル;ビニルエチルエーテル;多数のエチレン結合を有する化合物、例えば共役二重結合を有するもの、ブタジエン、2−クロロブタジエン、イソプレンなどから得られるモノマー、オリゴマー、ポリマー及びそれらの混合物がある。好ましいアクリレート及びメタクリレートの例は、Skoultchiの米国特許第5,286,821号,3欄,第50行〜6欄,第12行(引用することによって本明細書中に組み入れる)及びPociusの米国特許第5,681,910号,9欄,第28行〜12欄,第25行(引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示されている。より好ましいオレフィン性化合物としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸エチル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリルアミド、n−メチルアクリルアミド及び他の同様なアクリレート含有モノマーが挙げられる。また、いくつかの供給源から市販されている、アクリレートを先端に有するポリウレタンプレポリマーの類も有用である。これらは、ヒドロキシアクリレートのようなイソシアネート反応性アクリレートモノマー、オリゴマー又はポリマーをイソシアネート官能性プレポリマーと反応させることによって製造される。また、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールビスメタクリルオキシカーボネート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジグリセロールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、イソボルニルメタクリレート及びテトラヒドロフルフリルメタクリレートを含むアクリレート架橋性分子もこれらの組成物中で有用である。
【0069】
本発明において製造される、アクリレート相及びシロキサン相を架橋させることができる、アクリレート及びメタクリレートを先端に有するシロキサン材料の類もまた、本発明の組成物中で有用である。このような材料の例は、(アクリルオキシプロピル)トリメトキシシロキサン及び(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシロキサン(Shinitsu Siliconesから入手可能)、アクリルオキシ及びメタクリルオキシプロピルを末端基とするポリジメチルシロキサン並びに(アクリルオキシプロピル)及び(メタクリルオキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー(Gel−est(Tullytown,Pennsylvania)から入手可能)である。
【0070】
組成物を接着剤として使用する実施態様においては、アクリレート及び/又はメタクリレート系化合物を使用するのが好ましい。最も好ましいアクリレート及びメタクリレート化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル及びシクロヘキシルメチルメタクリレートが挙げられる。アクリルモノマー(アクリレート及び/又はメタクリレート系化合物)の好ましい量は、好ましくは総配合物重量に基づき、10重量%又はそれ以上、より好ましくは20重量%又はそれ以上。最も好ましくは30重量%又はそれ以上である。アクリルモノマー(アクリレート及び/又はメタクリレート系化合物)の好ましい量は、好ましくは総配合物重量に基づき90重量%又はそれ以下、より好ましくは85重量%又はそれ以下、最も好ましくは80重量%又はそれ以下である。
【0071】
本発明において有用な、シロキサン主鎖及び重合の可能な反応性部分を有する化合物、オリゴマー又はプレポリマーは、主鎖中にシロキサン単位を含み且つ適度な反応条件下で重合可能な反応性基を有する任意の化合物、オリゴマー又はプレポリマーを含む。本明細書中で使用する「オリゴマー」は、反応性部分によって結合された数個の識別可能な化学単位を意味する。オリゴマーは、数個の単位だけを有する小さいポリマー、例えば二量体、三量体、四量体又は五量体と考えることができる。「マー」は、オリゴマー又はポリマーの識別可能な基本化学単位の1つを表すのに用い、多くの場合、オリゴマー又はポリマーの原料となる1種又はそれ以上の化合物の残基である。「プレポリマー」は、いくつかの識別可能な基本化学単位を有する化合物を意味し、化合物をさらに反応させる反応性基をさらに含むポリマー、即ち、いくつかの「マー」を含んでなる。実際には、プレポリマーは、ポリマーの種々の数の識別可能な基本化学単位を有するポリマーの混合物であり、若干量のオリゴマーを含むことができる。本明細書中において、「シロキサン主鎖を有する」とは、化合物、オリゴマー及び/又はポリマーの主鎖が、主鎖中にシリコン及び酸素原子を有する識別可能な基本化学単位を含むことを意味する。好ましくは、シロキサンの識別可能な基本化学単位は、式に対応する。
【0072】
【化13】

【0073】
[式中、R16は前に定義した通りである]。「重合可能な反応性部分」とは、互いに反応して又は他の反応性部分と反応してオリゴマー、プレポリマー又はポリマーを形成する任意の部分を意味する。重合可能な好ましい反応性部分の例としては、ビニル部分、加水分解性部分、ヒドロキシル部分、水素化物、イソシアネート部分、アミン又は環状シロキサンの場合には、開環によって形成される反応性末端などが挙げられる。より好ましい、重合可能な反応性部分としては、ビニル部分、加水分解性部分、ヒドロキシル部分、水素化物などが挙げられる。
【0074】
「加水分解性部分」なる用語は、特には限定されず、従来の加水分解性基から選ばれる。具体例は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノ−オキシ基、メルカプト基、及びアルケニルオキシ基である。それらのうちで好ましいのは、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノ−オキシ基、メルカプト基、及びアルケニルオキシ基である。弱い加水分解性によって取り扱いを容易にするために、アルコキシ基がより好ましく、メトキシ又はエトキシ基が最も好ましい。1個の珪素原子には1〜3個のヒドロキシル基または加水分解性基を結合させることができる。反応性珪素基当たり2個又はそれ以上のヒドロキシル基または加水分解性基が存在する場合には、それらは同一であっても異なってもよい。
【0075】
シロキサン重合の化学はより知られており、反応体及び触媒を2液配合物に分けて貯蔵安定性を与える必要がある場合を除いて、ほとんど変更を行わずに本発明に一般的に適用される。シロキサン重合の化学は、この題材に関する多くの教科書に、例えばK.J.Saunders 2nd Ed,Chapman and Hall Publishers,London.(1988),Chapter 17及びS.J.Clarson,J.J.Fitzgerald,M.J.Owen,and S.D.Smit,Editors,ACS Publishers,Washington,D.C.(2000)によって概ね網羅されており、これらの文献を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0076】
シロキサン含有相は、混合時にさらに反応して分子量を増加させるであろうモノマー、オリゴマー、環状オリゴマー又はポリマーの形態で配合物に添加することができる。
【0077】
本発明の実施において有用なシロキサンポリマーの1つの類として、遊離基重合又は付加重合によってさらに重合されることができるビニル官能基化シロキサンが挙げられる。ビニル官能基化シロキサンは、主鎖中にシロキサン単位を有すると共に重合性オレフィン部分を有する化合物、オリゴマー及びプレポリマーを含む。ビニル官能基化シロキサンは、主鎖中にヒドロカルビレン及び/又はフルオロカルビレン単位を含むことができる。「ヒドロカルビレン」とは、炭素及び水素を含む二価の部分を意味する。フルオロカルビレンは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたヒドロカルビレン部部分であり、一部の実施態様においては、全ての水素原子がフッ素原子で置換されることができる。好ましいヒドロカルビレン部分はアルキレンである。好ましいフルオロカルビレンは一部分又は全てがフッ素で置換されたアルキレンである。好ましいオレフィン部分としては、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アセチレニルなどが挙げられる。好ましくは、ビニル官能基化シロキサンは好ましくは、式:
【0078】
【化14】

【0079】
[式中、Vはオレフィン性不飽和を含む基であり、R16は前に定義した通りである]
に対応する部分を含む。hは、それぞれ別個に、5又はそれ以上、より好ましくは10又はそれ以上、最も好ましくは15又はそれ以上の整数である。hはそれぞれ別個に50又はそれ以下、より好ましくは40又はそれ以下、最も好ましくは30又はそれ以下の整数である。ビニル官能基化シロキサンはまた、主鎖中に式:
【0080】
【化15】

【0081】
[式中、R16、R17、h及びkは前に定義した通りである]
に対応する部分を含むことができる。
【0082】
ビニル官能基化シロキサンはまた、珪素に結合された水素(水素化物官能基化シロキサン)又はヒドロキシル部分を有する、シロキサンをベースとする化合物、オリゴマー又はポリマーと反応することができる。水素化物又はヒドロキシル官能性珪素化合物は、ヒドロシリル化反応によって不飽和点においてビニル官能性シロキサンと反応できる。この反応は、Kawakuboの米国特許第4,788,254号,12欄、第38〜61行、米国特許第3,971,751号;米国特許第5,223,597号;米国特許第4,923,927号;米国特許第5,409,995号;及び米国特許第5,567,833号記載されており、関連部分を引用することによって本明細書中に組み入れる。ビニル官能基化ポリジアルキルシロキサンはまた、ジフェニルシロキサンと共重合して、低温特性をさらに向上させることができる。これらの材料は、Pt触媒を用いた付加硬化による又は室温において過酸化物触媒を用いるラジカルカップリングによる処理によって使用できる。フッ素置換は、形成される組成物の耐溶剤性を向上させる。
【0083】
水素化物官能基化シロキサンもまた、本発明の範囲内において有用である。水素化物官能性シロキサンには、主に2つの類の反応がなされる。第1の反応は、Pt触媒で触媒されるビニル官能基化ポリマーとの反応を含むヒドロシリル化である。第2の反応である脱水素化は、例えば、鎖をカップリングさせ且つ水素ガスを脱離することによる、水素化物官能性シロキサンとヒドロキシ官能基化シロキサンとのカップリング反応を含む。これらの反応は一般に、当業者に知られた種々の金属塩触媒、例えばジブチル錫ジアセテート、ビス(2−エチル−ヘキサノエート)錫、オクタン酸亜鉛又はオクタン酸鉄のような有機錫触媒で触媒される。ヒドロシリル化及び脱水素化は共に、シロキサン鎖をカップリングさせ、また、水素化物、ビニル及びヒドロキシ含有部分が2個又はそれ以上である場合には、室温においてゴム状弾性を有する伸長された又は架橋された網目構造を作ることができる。好ましくは、水素化物官能性シロキサンは、式:
【0084】
【化16】

【0085】
に対応する末端部分と式:
【0086】
【化17】

【0087】
[式中、R18は、それぞれ別個に、水素又は炭素数が20以下の、好ましくは8以下のアルキル、アルケニル、アリール、アルカリール若しくはアルアルキルであり;h及びjは前に定義した通りである]
に対応する主鎖部分を含む。
【0088】
さらに、水素化物は式:
【0089】
【化18】

【0090】
[式中、R16及びR17は前に定義した通りであり、sは、それぞれ別個に、1又はそれ以上、好ましくは3又はそれ以上で、好ましくは10又はそれ以下、最も好ましくは8又はそれ以下である]
に対応する部分を主鎖中に含むことができる。
【0091】
本発明において有用なシロキサン含有化合物、オリゴマー又はプレポリマーの別の類は、末端シラノール基又は湿分への暴露時にシラノール基を形成する加水分解性基を有するシロキサンである。シロキサン鎖上の末端シラノール基は、化合物、オリゴマー又はプレポリマーを触媒時に縮合によって反応させる。これらの反応は、1液又は2液型重合系として室温で進行する。この反応は、室温においてシラノール縮合触媒の存在下で起こる。シラノール縮合触媒は公知であり、例としては以下のものが挙げられる。チタン酸エステル、例えばテトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなど;有機錫化合物;有機アルミニウム化合物、例えばアルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトネート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトネートなど;反応生成物、例えばビスマス塩及び有機カルボン酸、例えばビスマストリス(2−エチルへキソエート)、ビスマストリス(ネオデカノエート)など;キレート化合物、例えばジルコニウムテトラアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネートなど;有機鉛化合物、例えばオクチル酸鉛、有機バナジウム化合物;アミン化合物、例えばブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,1−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)など、又はカルボン酸などとのそれらの塩;過剰のポリアミン及び多塩基酸から得られた低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物など。
【0092】
シラノール縮合反応に有用な好ましい有機錫触媒は公知である。シラノール縮合に有用な好ましい錫化合物には、以下のものがある。有機カルボン酸のジアルキル錫(IV)塩、例えばジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート又はジオクチル錫ジアセテート;カルボン酸錫、例えばオクチル酸錫又はナフテン酸錫;ジアルキル錫オキシドとフタル酸エステル又はアルカンジオンとの反応生成物;ジアルキル錫ジアセチルアセトネート、例えばジブチル錫ジアセチルアセトネート(一般的にジブチル錫アセチルアセトネートとも称する);ジアルキル錫オキシド、例えばジブチル錫オキシド;有機カルボン酸の錫(II)塩、例えば錫(II)ジアセテート、錫(II)ジオクタノエート、錫(II)ジエチルヘキサノエート又は錫(II)ジラウレート;ジアルキル錫(IV)ジハロゲン化物、例えばジメチル錫ジクロリド;及びカルボン酸の第一錫塩、例えばオクタン酸第一錫、オレイン酸第一錫、酢酸第一錫又はラウリン酸第一錫。しかし、これらの化合物は特には限定されず、一般に使用されている任意のシラノール縮合触媒を使用できる。硬化性の観点からすると、これらのシラノール縮合触媒のうち、有機金属化合物又は有機金属化合物とアミン化合物との組み合わせが好ましい。これらのシラノール縮合触媒は単独で又は2つ又はそれ以上の組み合わせで使用できる。好ましい触媒は、ジアルキル錫ジカルボキシレート、ジアルキル錫オキシド、ジアルキルビス(アセチルアセトネート)、ジアルキル錫オキシドとフタル酸エステル又はアルカンジオンとの反応生成物、ジアルキル錫ハロゲン化物及びジアルキル錫オキシドである。さらに好ましい触媒は、ジブチル錫ジラウレート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ジブチル錫オキシドとフタル酸エステル又はペンタンジオンとの反応生成物、ジブチル錫ジアセチルアセトネート、ジブチル錫オキシド及びジメチル錫クロリドである。配合物中に使用する触媒の量は、硬化後に接着剤の劣化を引き起こすことなく、接着剤の硬化を促進する量である。接着剤配合物中の触媒の量は好ましくは0.01重量%又はそれ以上、より好ましくは0.1重量%又はそれ以上、最も好ましくは0.2重量%又はそれ以上であって、好ましくは5重量%又はそれ以下、さらに好ましくは1.0重量%又はそれ以下、最も好ましくは0.4重量%又はそれ以下である。
【0093】
シクロシロキサン又は環状シロキサンもまた、本発明の実施において有用である。シクロシロキサンは、シロキサン単位を含む1個又はそれ以上の環構造を含む化合物である。これらの物質は、塩基触媒作用(bases catalysis)及び触媒量の水の存在下において開環重合を受けることができる。環状シロキサンが有用であり、公知の市販材料であり、Harknessらの米国特許第6,001,928号、Currieらの米国特許第6,054,548号及びHalloranらの米国特許第6,207,781号に開示されている。これらの特許を全て、引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0094】
シクロシロキサンにおいて有用なシロキサン単位は好ましくは式:
【0095】
【化19】

【0096】
に対応する。本発明の実施における環状シロキサンの開環重合の実施は、組成物の成分が最終製品の作用に悪影響を及ぼさないようにして配合される場合に論じられた他の技術と同様に、本発明の重合性組成物に利益をもたらすことができる。環状シクロシロキサンの重合において有用な触媒は公知である。好ましくは、ホスファゼン及びアルカリ性シラノレートのようなアルカリ性触媒を使用する。他の有用な触媒は、米国特許第6,001,928号,1欄,第17〜23行及び米国特許第6,207,781号に開示されており、これらを引用することによって本明細書中に組み入れる。触媒は、当業者によく知られた量で使用する。
【0097】
シラノール又は官能基化シロキサンはまた、湿分硬化系の配合において有用である。この化学反応は現在は、Dow Corning及びGeneral Electricのような会社によって、シーリング及び被覆業界全体で実施されている。この室温化学反応は、多くの経路で実施することができ、この経路は全て、本発明の範囲内で使用できる。湿分硬化性シロキサンを用いた化学反応は、米国特許第5,948,854号及び第6,008,284号並びにそれらに記載された参考文献に記載されており、それらは、シラノール官能基化シロキサンとアルコキシ官能基化シロキサンとの間の湿分硬化を促進するためにチタン触媒を使用することを記載している。
【0098】
シロキサン官能性ポリマーは場合によっては、大気中の湿分との接触時に重合及び架橋し始める配合物中で安定に保つことができる。多くの市販材料は、単一成分製品の製造を可能にするシロキサン化学反応の能力を利用する。本発明は、多くの場合、シロキサン湿分硬化技術と適合する。
【0099】
シロキサンに関するいくつかの湿分硬化技術は、酸を生成する化合物と大気中の湿分との反応によって働く。潜在的酸生成物質であるいくつかの材料のこのような能力のため、本発明において一液型接着剤を製造するのにそれらは魅力的である。この場合、重合性組成物は、遊離基重合可能なモノマー組成物及び潜在性酸生成物質を含むトリアルキルボラン−アミン錯体を含む。シロキサン官能性材料は、大気中の水分への暴露時に酸を生成できる材料の類に入る。シロキサン官能性潜在性酸生成物質の例は、エチルトリアセトキシシロキサン及びメチルトリアセトキシシロキサンである。
【0100】
ポリアクリレート材料は、配合物中のモノマー組成物を変えることによってガラス転移温度(Tg)を変えることができる。しかし、これらの材料のTgが室温より低い場合には、ポリマーがクリープを起こすか又は流れる傾向があるので、接着剤の性質はかなり悪化するおそれがある。低Tgアクリレートは架橋させることができるが、これは、モノマーの過度に速い重合を起こすことによって本発明の組成物に損なう可能性もある。前述のような官能性シロキサン重合性化合物の存在は、Tgが非常に低いポリマーの相を提供すると同時に低表面エネルギー基材への優れた接着性を依然として提供することによって、重合された又は部分重合された組成物の低温柔軟性及び伸びを改善する。重合された又は部分重合された組成物の物理的性質の改善及び重合された又は部分重合された組成物の低温特性の改善には、充分な量のシロキサン官能性材料を用いる。組成物のTgは、シロキサンポリマーの量及びその架橋結合密度を制御することよって制御できる。0℃又はそれ以下のガラス転移温度を達成するには一定量のシロキサンポリマーが存在する。好ましくは、ポリマー組成物は、重ね剪断強さ(lap sheer strength)が100psi又はそれ以上であることを示している。重合性配合物全体がシロキサン重合性化合物を1重量%又はそれ以上、より好ましくは2重量%又はそれ以上、最も好ましくは3重量%又はそれ以上を含むのが好ましい。重合性配合物はシロキサン重合性化合物を90重量%又はそれ以下、より好ましくは85重量%又はそれ以下、最も好ましくは80重量%又はそれ以下含むのが好ましい。
【0101】
シロキサン官能価の物理的性質を改良するために重合性組成物中に追加の官能価を取り入れる便利な方法は、多官能価シロキサン含有架橋剤を配合物中に含ませる方法である。多官能価シロキサン含有架橋剤は、シロキサン単位と、存在する反応性材料の官能基と反応して存在するポリマー材料を架橋させる、少なくとも2個の、好ましくは2〜4個の官能基を含む化合物、オリゴマー及びポリマーを含む。好ましくは、形成される種々のポリマー材料を結合させるには、存在する種々の化合物、オリゴマー又はポリマーと反応する少なくとも2個の官能基が存在する。好ましくは、1つはシロキサンをベースとする材料と反応し、1つは、反応中に存在するか又は反応において形成される、本質的にはオレフィン性でない不飽和基を含む官能性物質と反応する。このような物質の例は、(3−グリシジルプロピル)トリメトキシシロキサン、(アクリルオキシプロピル)トリメトキシシロキサン及び(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシロキサン、(メタクリロプロピ)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、メタクリルオキシプロピルプロピルを末端基とするポリジメチルシロキサン、(アクリルオキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーなどである。一実施態様において、オキシラン環は、配合物中にシラノール官能性シロキサン含有ポリマーを架橋させることができるアルコキシシロキサンと同様に取り入れられる。別の場合では、シロキサン含有相をアクリル相に架橋させることができるアクリル及びメタクリル官能価が取り入れられる。他の例は、メルカプト官能性シロキサン及びイソシアナト官能性シロキサンである。これらの材料は全て、Shin−Etsu Silicones、Witco,Dow Corning,Gelestなどのような会社から市販されている。ビニル及び加水分解性基を有するシロキサン含有化合物、オリゴマー及び/又はプレポリマーも使用できる。
【0102】
場合によっては、遊離基重合性化合物相をシロキサン化合物由来相に架橋させるのが有用であることができる。これは、オレフィン性不飽和官能価、例えばアクリル部分とシリコーン重合性官能価を共に含む二官能価モノマー(以下で架橋剤とも称する)を用いて達成される。この型の物質の例としては、(アクリルオキシプロピル)トリメトキシシロキサン及び(メタクシルオキシプロピル)トリメトキシシロキサンが挙げられる。同様に、シロキサン相は、アルキルボラン−アミン錯体からのアミンとイソシアネートとの反応によって生成される硬質ポリ尿素相に架橋させることができる。このような架橋性物質としては、3−アミノプロピルトリエトキシシロキサン、3−アミノプロピルトリメトキシシロキサン、3−イソシアナトプロピルトリメントオキシシロキサン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシロキサンが挙げられる。このような化合物は、重合性組成物の別の相の反応性成分と、通常の反応条件下で反応する。架橋剤の使用量は、所望の性質、すなわち、室温における充分な重ね剪断強さを与えるが、結合たわみ強度を所望の値以下に下げることのない量である。架橋剤の好ましい量は、重合性配合物の重量に基づき、0重量%又はそれ以上、より好ましくは1重量%又はそれ以上、最も好ましくは2重量%又はそれ以上である。好ましくは、架橋剤の使用量は、総重合性配合物の20重量%又はそれ以下、さらに好ましくは15重量%又はそれ以下、最も好ましくは12重量%又はそれ以下である。
【0103】
シロキサン重合性化合物は、遊離基重合可能な部分を含む化合物の重合速度と同様な速度で重合するのが好ましい。一方の重合性成分の反応が遅すぎる場合には、組成物は、両相のモノマー又はオリゴマーのポリマーへの許容され得る転化が得られる前に、ガラス化またはゲル化する可能性がある。未反応成分は可塑剤として作用し、接着性、熱的性能などような性質を悪化させるおそれがある。最終重合組成物の性質は、重合組成物の後加熱によって重合の完了を促進することによって向上させることができる。これは、重合組成物をそのガラス転移温度より高温に加熱することによって実施する。この実施態様において、構造の予想使用温度において、より好ましくは、組成物の予想使用温度よりも5℃高い温度において後硬化するのが好ましく、重合組成物の予想使用温度よりも10℃高い温度の熱的後硬化を行うのが最も好ましい。
【0104】
好ましい実施態様において、エポキシ置換基を含むシロキサン官能性物質の反応は、Saunders,K.J.によってOrganic Polymer Chemistry,2ndEdition、Chapter 17(1988)(引用することによって本明細書中に組み入れる)によって記載されたような触媒の混和によって実施される。使用されているシロキサン化学反応に応じて、種々の触媒を本技術の実施に使用できる。シロキサン官能性材料同士の反応の促進には、錫触媒が用いられることが多い。好ましい錫触媒としては、ジブチル錫ジアセテート及びジブチル錫ジラウレートが挙げられる。テトラアルコキシチタン触媒が、Buylら(米国特許第5,948,854号)によって、及び湿分硬化性室温加硫物に関するNylundらによる改良(米国特許第6,008,284号)に記載されている。種々の酸性触媒が、Falenderらによって米国特許第4,448,927号に教示されている。この特許を引用することによって全て本明細書中に組み入れる。白金触媒もまた、ビニル官能基化シロキサンの重合に使用される。好ましい白金触媒の例としては、塩化白金酸及び白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。有用な触媒の前記例は、説明のためにのみ記載するのであって、本発明はそれに限定されない。一般に、本発明の遊離基重合の触媒又は重合性成分を妨げないならば、シロキサン官能性モノマー又はオリゴマーの重合に有用な任意の触媒が本発明において有用である。
【0105】
触媒は、シロキサン官能性化合物の重合の開始に充分な量で使用する。具体的には、触媒は、比較的少量で使用できる。好ましくは触媒の使用量は、総配合物の0.1重量%又はそれ以上、より好ましくは0.25重量%又はそれ以上、最も好ましくは0.5重量%又はそれ以上である。好ましくは、触媒の使用量は、総配合物の10重量%又はそれ以下、より好ましくは8重量%又はそれ以下、最も好ましくは6重量%又はそれ以下である。
【0106】
遊離基重合可能な部分を有する化合物の重合に有用な有機ボランアミン錯体は、ボランからアミンを追い出し且つ遊離基重合を開始するであろう脱錯化の適用を必要とする。アルキルボランからのアミンの追い出しは、交換エネルギーが好適な任意の化学薬品、例えば鉱酸、有機酸、ルイス酸、イソシアネート、酸塩化物、塩化スルホニル、アルデヒドなどを用いて行うことができる。好ましい脱錯化剤は、酸及びイソシアネートである。開環重合用の開始剤が必要であり且つそれがルイス酸である実施態様において、ルイス酸は脱錯化剤としても働くことができるので、有機ボランアミン用の脱錯化剤は省くことができる。ルイス酸を脱錯化剤及び複素環開環重合開始剤として使用する場合には、重合開始に必要な量以上に追加量は必要ない。開始剤の選択は、重合性組成物の目的最終用途によって影響され得る。詳細には、重合性組成物が接着剤であり且つポリプロピレンに接着される材料である場合には、好ましい類の開始剤はイソシアネート開始剤であり、基材がナイロンである場合には、好ましい開始剤は酸である。
【0107】
一実施態様において、脱錯化剤は、湿分への暴露時に、有機ボランアミン錯体を解離させる酸を放出するシロキサン化合物であることができる。この実施態様では、分解して酸を放出する任意のシロキサン化合物を使用できる。シロキサンと、分解して酸を放出する部分とを含む類の化合物としては、ハロシラン、酸無水物(カルボン酸)、アセトキシシロキサン、アルキル珪酸、カルボン酸とシラノールとのエステル、酸塩化物などが挙げられる。好ましい化合物としては、カルボン酸のシラノールエステル、酸無水物、酸塩化物及びアセトキシシランが挙げられる。シロキサン官能性潜在的酸生産物質の例は、エチルトリアセトキシシロキサン及びメチルトリアセトキシシロキサンである。
【0108】
オレフィン性不飽和成分の遊離基重合はまた、熱によって開始できる。重合の開始のために組成物を加熱する温度は、有機ボランアミン錯体の結合エネルギーによって決定される。一般に、錯体の脱錯化による重合開始に使用する温度は、30℃又はそれ以上、好ましくは50℃又はそれ以上である。好ましくは、熱開始重合の開始温度は、120℃又はそれ以下、より好ましくは100℃又はそれ以下である。熱源が組成物の成分又はその作用に悪影響を与えないならば、組成物を所望の温度まで加熱する任意の熱源を使用できる。このように、組成物は、熱への暴露前又は暴露後に基材と接触させることができる。組成物を、基材との接触前に加熱する場合には、組成物は、基材にもはや接着できない点まで重合してしまう前に、基材と接触させなければならない。熱開始反応においては、ラジカル形成に好適な条件を生成するのに充分であるが、重合を阻害するほど多くはない量の酸素が存在するように、酸素含量を制御することが必要な場合がある。他の重合性種の反応のための触媒レベルは、全ての重合に関して概ね等しい反応時間を保証するように調整しなければならない場合がある。
【0109】
本発明の一実施態様において、シロキサンポリマーは、系の成分がシロキサン成分と非反応性であるが湿分への暴露時には反応性になる湿分硬化メカニズムを用いて重合させることができる。この湿分の供給源は通常、周囲環境であるが、カプセル化された供給源から供給されることもできる。優れたシロキサンポリマー特性を得るためにこれまで種々のアプローチが用いられており、これらのアプローチを本発明の範囲内で使用できる。商業的には、これらの配合物は1液型配合物に関してはRTV−1(室温加硫)、2液型配合物に関してはRTV−2と称されることができる。RTV−1への公知アプローチのいくつかは、Bayer Ag、Th.Goldschmidt AG、Wacker−Chemie GmbH及びHaus der Technik e.V.の技術スタッフによって編集されたSilicones Chemistry and Technology,CRC Press,Boca Raton(1991),pp 45〜60(引用することによって本明細書中に組み入れる)並びにNylundらの米国特許第6,008,284号、de Buylらの米国特許第5,948,854号、Kornerらの米国特許第6,090,904号及びKozakiewiczらの米国特許第5,705,561号(それらの特許は引用することによって全て本明細書中に組み入れる)に列挙されている。
【0110】
本発明の2液型重合性組成物又は接着剤組成物は、2液型組成物用の従来の市販計量分配装置と共に使用するのに非常に適している。可使時間(開放時間)はモノマーミックス、錯体の量、ルイス酸触媒の量及び接着を行う温度によっては短い場合があるので、2液を合した後は、組成物は直ちに使用すべきである。本発明の接着剤組成物は、一方又は両方の基材に適用し、次いで基材を密着させ、好ましくは圧力によって密着させて、接着剤層から過剰の組成物を押し出す。一般に、接着は、組成物の適用の直後に、好ましくは10分以内に行うべきである。代表的な接着剤層の厚さは0.005インチ(0.13mm)〜0.03インチ(0.76mm)である。本発明の組成物は接着剤及び填隙剤の両方の役割を果たすことができるので、ギャップ充填が必要な場合には、接着剤層はこれよい厚くてもよい。接着プロセスは室温で容易に実施でき、接着度を改善するためには、温度を40℃未満、より好ましくは30℃未満、最も好ましくは25℃未満に保つのが望ましい。
【0111】
組成物はさらに、種々の任意の添加剤を含んでなることができる。特に有用な添加剤は、中間分子量〜高分子量10,000〜1,000,000)のポリメチルメタリレートのような増粘剤であり、これは組成物の総重量に基づき10〜60重量%の量で添加できる。増粘剤は、組成物の粘度を増加させて組成物の適用を容易にするために使用できる。
【0112】
別の特に有用な添加剤はエラストマー材料である。これらの材料は、軟質ポリマー基材のような他の材料ほど容易にはエネルギーを機械的に吸収しない、金属基材のような剛くて、降伏強さの強い材料を例えば接着する場合に有益であり得る材料は、それを用いて製造された組成物の破壊靭性を改善することができる。このような添加剤は、組成物の総重量に基づき、5〜35重量%の量で添加できる。有用なエラストマー系改質剤としては、塩素化又はクロロスルホン化ポリエチレン、例えばHYPALON 30(E.I.Dupont de Nemours&Co.(Wilmington,Delaware)から市販されている)及びスチレンと共役ジエンとのブロックコポリマー(Dexco Plymersから商標VECTORとして、Firestoneから商標STEREONとして市販されている)が挙げられる。有用で、さらに好ましいのは、比較的硬いシェルで取り囲まれたゴム若しくはゴム状コア又は網状構造を含む粒子のようなある種のグラフトコポリマー樹脂である。最も好ましいのは、Rohm and Haasから入手できるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマーである。組成物の破壊靭性を改善する他、コア−シェルポリマーはまた、未硬化組成物の拡布性及び流動性を向上させることができる。これらの向上した性質は、組成物がシリンジ型アプリケーターからの計量分配時に不所望な「ストリング」を残したり、又は垂直面への適用後にサグ若しくはスランプを生じる傾向の低下によって示されることができる。改善された耐サグ−スランプ性を得るには、20%超のコア−シェルポリマー添加剤を使用するの望ましい。一般に、強化用ポリマーの使用量は、ポリマー又は製造される接着剤に所望の靭性を与える量である。
【0113】
シロキサン含有成分を強化するが、シロキサン又は遊離基成分の重合は阻害しない任意の添加剤が本発明の実施に有益であることができる。当業者によく知られた強化剤を本発明に使用できる。好ましい強化剤としては、ヒュームド・シリカ又は有機的に改質されたヒュームド・シリカが挙げられる。多くの処理されたヒュームド・シリカが利用可能であり、本発明の実施の範囲内で適用できる。表面処理されたヒュームド・シリカは、例えば米国特許第4,344,800号(Lutzら)、米国特許第4,448,927号(Falenderら)、米国特許第4,985,477号(Collinsら)及びWuら,J.Appl.Polym Sci、80,(2001)2341〜2346(これらは全て、引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載されたような一般的な添加剤である。当業者に一般的に知られた他の添加剤、例えば、Wangら,J.Appl.Polym Sci.,69,(1998),1557〜1561に開示された添加剤も使用できる。このような市販の、処理されたヒュームド・シリカは、Cabot Corporationのような会社から入手できる。強化剤の有用な量は、0%超である。ヒュームドシリカのより好ましい量は、2%超であり、最も好ましい量は3%超である。ヒュームドシリカ又は処理されたヒュームドシリカの有効量は、40重量%未満である。組成物中のヒュームドシリカのより有効な量は、30%未満であり、組成物中のヒュームドシリカの最も有効な量は25重量%未満である。
【0114】
少量の阻害剤、例えばジフェニルアミン又はヒンダードフェノールを、例えば貯蔵時のオレフィンモノマーの劣化を防止するか又は低下させるのに使用できる。阻害剤は、重合速度も、接着剤又はそれを用いて製造された他の組成物の最終的性質もそれほど低下させない量で、一般的には重合性モノマーの重量に基づき10〜10,000ppm(百万分率)の量で添加できる。湿分硬化性組成物に関しては、組成物が活性成分と反応する前に組成物中の一時的な湿分を掃去するための化合物を添加することが有用な場合がある。
【0115】
本発明に係る重合性組成物は、種々の方法で、例えばシーリング材、被覆、プライマーとして、ポリマー表面及び射出成形法樹脂の改質に使用できる。これらはまた、樹脂トランスファー成形操作におけるように、マトリックス樹脂としてガラス及び金属繊維マットと共に使用できる。これらはさらに、電気部品、プリント回路基板などの製造におけるように、封入剤及び注封材料として使用できる。非常に望ましくは、それらは、ポリマー、木材、セラミック、コンクリート、ガラス及び下塗りされた金属を含む多数の基材を接着できる重合性接着剤組成物を提供する。別の望ましい関連用途は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド及びポリテトラフルオロエチレン及びそれらのコポリマーのような低表面エネルギー基材へのペイントの接着の促進への使用である。この実施態様においては、組成物を、基材表面に被覆して表面を改質し、基材表面への最終被覆の密着性を向上させる。
【0116】
本発明の組成物は、被覆用に使用することができる。このよう用途において、組成物はさらに溶剤のようなビヒクルを含むことができる。被覆はさらに、当業者によく知られた被覆用の添加剤、例えば、被覆を着色するための顔料、阻害剤及びUV安定剤を含むことができる。組成物はまた、粉体塗料として提供でき、当業者によく知られた粉体塗料用の添加剤を含むことができる。
【0117】
本発明の組成物はまた、ポリマー成形品、押出フィルム又は輪郭に合わせて作られた物の表面を改質するのに使用できる。本発明の組成物はまた、未改質プラスチック基材へのポリマー鎖の表面グラフトによってポリマー粒子の官能価を変化させるのに使用できる。
【0118】
本発明の重合性組成物は、複雑な表面処理技術、下塗り(priming)などを用いなければ接着がこれまで非常に困難であった低表面エネルギープラスチック又はポリマー基材を接着するのに特に有用である。「低表面エネルギー基材」とは、45mJ/m2又はそれ以下、より好ましくは40mJ/m2又はそれ以下、最も好ましくは35mJ/m2又はそれ以下の表面エネルギーを有する材料を意味する。これらの材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリアミド、シンジオタクチックポリスチレン、オレフィン含有ブロックコポリマー及びフッ素化ポリマー、例えば20mJ/m2未満の表面エネルギーを有するポリテトラフルオロエチレン(TEFLON(登録商標)TM)が含まれる(「表面エネルギー」という表現は、しばしば「臨界湿潤張力」と同義で用いられる)。本発明の組成物を用いて有効に接着できる、これらより若干表面エネルギーの高い他のポリマーとしては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート及びポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0119】
本発明の重合性組成物は、2液型接着剤(two−part adhesive)として簡単に使用できる。重合性組成物の成分は、このような材料を扱う場合に普通に行われるようにしてブレンドする。有機ボランアミン錯体からオレフィン重合性成分を隔てるために、オレフィン性重合性成分には通常、有機ボランアミン錯体用の脱錯化剤を含ませ、これが2液型組成物の1液を提供する。重合開始系の有機ボランアミン錯体は、組成物の第2液を提供し、組成物の使用が必要となる直前に第1液に添加する。同様に、シロキサン重合用の触媒は、重合に関与するシロキサン官能性化合物の少なくとも1つの成分とは別々にしておく。シロキサン重合に適当な触媒は、第1液に直接添加することもできるし、あるいは反応性オレフィンモノマー、すなわち、メタクリル酸メチル又はMMA/PMMA粘稠溶液のような適当なベヒクル中に予め溶解させることもできる。
【0120】
2液型接着剤(two−part adhesive)、例えば商業用及び工業用環境において最も簡単に使用される本発明の2液型接着剤に関しては、2液を合する容量比は簡便な自然数でなければならない。これが、常用の市販計量分配装置による接着剤の適用を容易にする。このような計量分配装置は、米国特許第4,538,920号及び第5,082,147号(引用することによって本明細書中に組み入れる)に示され、Conprotec,Inc.(Salem NJ)から商品名MIXPACとして入手できる。典型的には、これらの計量分配装置は、並列に配置された1対のチューブ状容器を用い、各チューブは、接着剤の2液の一方を収容するためのものである。各チューブについて1個、合計2個のプランジャーを同時に進めて(例えば、手動で又は手動式ラチェット機構によって)、チューブ内容物を、2液のブレンドを容易にするためのスタティックミキサーを含むこともできる、一般的な細長い中空混合室中に排出する。ブレンドされた接着剤は、混合室から基材上に押出する。チューブが空になったら、それらを新しいチューブと取り替えて、適用プロセスを続けることができる。
【0121】
接着剤の2液を合する比は、チューブの直径によって制御する。(各プランジャーは、一定の直径のチューブ内に収容される大きさであり、両プランジャーは、同一速度でチューブ内を進められる。)単一の計量分配装置は、種々の異なる2液型接着剤と共に使用するためのものであることが多く、プランジャーは、簡便な混合比で接着剤の2液を送出する大きさである。普通の混合比には1:1,2:1、4:1及び10:1などがあるが、好ましくは10:1未満、より好ましくは4:1未満である。
【0122】
好ましくは、本発明の混合された2液型組成物は、液垂れを起こさずに適用できる適当な粘度を有する。好ましくは、2つの個々の成分の粘度は、同じオーダーの大きさでなければならない。好ましくは、混合された組成物は、100センチポアズ(0.1 Pa.S)又はそれ以上、より好ましくは1,000センチポアズ(1.0 Pa.S)又はそれ以上、最も好ましくは5,000(5.0 Pa.S)又はそれ以上の粘度を有する。好ましくは、接着剤組成物は、150,000センチポアズ(150 Pa.S)又はそれ以下、より好ましくは100,000センチポアズ(100 Pa.S)又はそれ以下、最も好ましくは50,000センチポアズ(50 Pa.S)又はそれ以下の粘度を有する。
【0123】
一実施態様において、本発明は、2つの基材の接着方法であって、
A)ヒドロキシを末端基とするシロキサンと、アクリレート樹脂中に分散されたテトラアルコキシシリケートとを、前記シラノール縮合触媒、例えば有機錫又はチタネート触媒の存在下において、アクリレート中に分散されたシロキサンポリマーが製造されるような条件下で反応させ;
B)アクリレート樹脂中に分散された、シロキサンをベースとするポリマーを、有機ボランアミン錯体と接触させ;
C)工程Bの組成物を、錯体を解離させる化合物の有効量と接触させ;
D)2つの基材を、この2つの基材間に配置された工程Cに係る組成物と接触させ、そして接着剤を硬化させる
ことを含む方法である。
【0124】
本発明の一実施態様は、1液型組成物としての接着剤の使用を可能にする。この場合には、単一のチューブが用いられ、適用前に複雑な混合をすることなく、簡単な方法で適用されるであろう。この場合には、適用前に1液型接着剤の成分に湿分が取りこまれないように保護するのが最も有益であろう。
【実施例】
【0125】
以下の実施例は、説明の目的でのみ記載するのであって、「特許請求の範囲」の範囲を限定することを目的としない。特に断らない限り、全ての部及び百分率は重量基準である。
有機ボラン/アミン錯体の調製
有機ボラン、例えばトリブチルボラン(TBB)のエーテル溶液中1M溶液(Aldrich)50ccを、秤量された丸底フラスコに添加した。この溶液を窒素でパージした。秤量された量のアミン、例えば3−アミノプロピルトリエトキシシロキサン(14.35g;ボラン対アミンのモル比1:1.3)を、少量ずつ有機ボラン溶液に添加し、外部氷浴を用いて40℃未満に保持した。アミンを添加して、有機ボラン対アミンのモル比を1:1〜1:3とした。この溶液を30分間撹拌し、次いで溶媒をロータリーエバポレーター上で40℃未満において除去した。溶媒の完全な除去を保証するために、フラスコ及び錯体の重量を理論重量と定期的に比較した。錯体を、ペーパータオル上に1滴たらし且つタオルの炭化を探すことによって、自然発火反応性に関して試験した。一部の自然発火性錯体は、追加のアミンを添加することによって(有機ボラン:アミンのモル比を低下させることによって)自然発火性を低下させるか又はなくすことができる。
【0126】
接着剤組成物の調製
2成分型(2液型)接着剤を、下記のようにして製造した。一方の成分(硬化剤)は、相互に反応しないシロキサン官能性成分、例えば触媒を含まない触媒反応性シロキサンと混合された有機ボランアミン錯体を含んでいた。場合によっては、ボランアミン錯体及びシロキサン含有材料は、適当な混合容量又は粘度を得るために、メタクリル酸メチル(MMA)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)又は他の充填材で希釈した。もう一方の成分(樹脂)は、第1の成分、アクリル樹脂及び任意の脱錯化剤(例えば有機ボラン錯体用の)、例えば、アクリル酸またはイソシアネート、例えばイソホロンジイソシアネートとの反応のためのシロキサン官能性成分の他の成分を含んでいた。アクリル樹脂はメタクリル酸メチル(MMA)と場合によってはポリメチルメタクリレート(PMMA)との混合物であった。MMA及びPMMAは、一晩攪拌するか又は回転させて、PMMAをMMA中に混合した。シロキサン反応触媒、強化剤及び充填材、例えばガラスビーズは、接着剤成分の保存寿命を低下させないならば、どちらか一方側に添加できる。
【0127】
接着剤は空気中で、バッグ中で又は加圧ガンによって所望の容量比で混合することができる。接着剤は、低温に関してはポリプロピロピレンを用い、又は高温に関しはナイロン、シンジオタクチックポリスチレン(sPS)/ナイロン若しくはe−コートスチールを用いて、幅1インチ(25.4mm)×厚さ0.125インチ(3.2mm)の試験片に0.5インチ(12.7mm)の重なりで適用し、以下のようにして接着強度について試験した。接着剤の成分を混合し、一方又は両方の基材に適用した。接着剤の厚さは、目的とする接着剤層厚を得るまで数重量%のガラスビーズ(例えば、直径0.005〜0.030インチ(0.13mm〜0.76mm))を添加することよって制御できる。クーポンを合わせて、重ね剪断試験の配置の0.25平方インチ(80mm2)〜1.0平方インチ(645mm2)の基材の重なりを形成した。サンプルを、金属バインダークリップで所定の位置に保持して一定の力を与え、硬化中における接着剤中の気泡の排除を促進した。接着されたサンプルは、通常は少なくとも24時間硬化させてから、サンプルオーブンを装着した引張試験装置(Instron)中に取り付けた。サンプルを、室温及び高温(>100℃)試験条件に関してそれぞれ0.05インチ(0.13mm)/分及び0.5インチ(13.0mm)/分のクロスヘッド速度で評価した。破壊までの最大荷重(ポンド)を記録し、この荷重を重なり部分の面積(平方インチ)で割ることによって最大応力(psi)を計算した。高温試験に関しては、試験ストリップは、Instron試験機のオーブン中で少なくとも5分間所望の温度に平衡化してから、試験を開始した。
【0128】
以下の表中において、以下の略語を用いる。
MMAはメタクリル酸メチルである。
PMMAはポリ(メチルメタクリレート)である。
AAはアクリル酸である。
PDMSはポリジメチルシロキサンである。
PDMS−OHはヒドロキシを末端基とするPDMSである。
PDMS−Hは水素化物を末端とする26重量%ポリヒドリドメチルシロキサン/PDMSコポリマーである。
PdVはビニルを末端基とするジビニルポリジメチルシロキサンである。
TBBはトリn−ブチルボランである。
MOPAは3−メトキシプロピルアミンである。
IPDAはイソホロンジアミンである。
DMAPAはN,N−ジメチルアミノ3−プロピルアミンである。
IPDIはイソホロンジイソシアネートである。
DBTDAはジブチル錫ジアセテートである。
MPTMSはメタクリルオキシプロピルトリメトキシシロキサンである。
TMOSはテトラメチルオルトシリケートである。
3−IPTESは3−イソシアナトプロピルトリエトキシシロキサンである。
3−APESは3−アミノプロピルトリエトキシシロキサンである。
3−APMSは3−アミノプロピルトリメトキシシロキサンである。
3−ame−3−apesはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシロキサンである。
2−ame−3−apmdesはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシロキサンである。
2−ame−3−aptmsはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシロキサンである。
【0129】
iPPはBasell Inc.(Wilmington,Delaware)の製品、アイソタクチックポリプロピレン6524である。
Nylonは、全ての場合において、熱安定化された35%のガラス繊維入りナイロン6である。
SPS−Nylonは、全ての場合において、The Dow Chemical Companyの製品、30%sPS(シンジオタクチックポリスチレン)/35%ガラス繊維入り、熱安定化ナイロン6ブレンドである。
PETは、全ての場合において、Ticona Corporationの無機充填材入りPET製品、EKX−215である。
Icemanは2−イソシアナトエチルメタクリレートである。
VS5500は3M Corp.(Minneapolis,MN)の製品である中空ガラス球である。
H−29はTBBとMOPAとのモル比1:1.3の錯体である。
H−28-はTBBとIPDAとの当量比1:1.1の錯体である。
RMSはGel−Est Corporationから入手可能な(メチルアクリルオキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーである。
「PDMSグラフト化PEG」はポリ(ジメチルシロキサン−コ−メチル(3−ヒドロキシプロピル)シロキサン]−グラフト−ポリ(エチレングリコール)である。
「アミノプロピルを末端基とするPDMSグラフト化PEG」はポリ(ジメチルシロキサン−コ−メチル(3−ヒドロキシプロピル)シロキサン]−グラフト−ポリ(エチレングリコール)−3−アミノプロピルエーテルである。
APT−PDMSはビス(3−アミノプロピル)末端ポリ(ジメチルシロキサン)である。
「>」は、重ね剪断値に関して用いる場合には、示された応力における、接着破壊前の基材の破壊を示す。
【0130】
実施例1〜6
実施例1〜6は、接着剤の製造に有用な本発明の触媒の性能を記載する。これらのトリアルキルボランアミン触媒は、良好〜優れた熱安定性を示し、シラノール官能性材料を架橋するための官能価を提供し、低表面エネルギープラスチック基材に対して優れた接着力を提供する。全ての場合において、触媒は、アクリル樹脂と4%のアクリル酸から成る配合物に総接着剤の4重量%で添加した。表Iに示した「テイクオフ」温度は、有機ボランアミン触媒が熱的に脱錯化し且つ樹脂(MMA及びPMMA)が重合し始める温度であった。重合は、混合物の粘度増加として確認される。粘度は、直線的な熱傾斜の間に粘度計によって連続的に監視した(約1℃/分)。全ての実施例において、錯体は自然発火性を示さなかった。シロキサン官能性アミンはさらに、アミンに対して他の方法では得られない官能価を与える。結果を表Iに示す。
【0131】
【表1】

【0132】
実施例7〜16
実施例7〜16は、本発明の触媒と配合された本発明の接着剤が、低表面エネルギー基材に対して優れた接着力を示すことができることを示している。全ての場合において、基材はPETであり、接着剤は、分子量(MWT)が44,000のPDMS−OH 50%、(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシロキサン5%、DBTDA 1%、Cabosil 610 3%を用い、残りはメチルメタクリレートモノマーで補って作った。触媒は、TBBモル当たり1.1又は1.5モルの示されたアミンで錯化されたトリブチルボラン(TBB)であった。接着剤は、触媒錯体を4%含んでいた。結果を表IIにまとめる。重ね剪断試験を25℃の室温(RT)で実施した。全ての場合において、破壊は凝集接着破壊であった。これは、基材表面がいずれも、破壊後に接着剤被膜を有していたことを意味する。
【0133】
【表2】

【0134】
表IIのデータは、本発明の触媒及び開始剤が、本発明の接着剤を用いて、低表面エネルギー基材に対する優れた接着を促進することを示している。これらのデータはまた、触媒が種々の反応開始化学量論下で有効であることを示している。実施例9及び10はまた、これらの触媒が、同様にシラノールとの反応のためのシロキサン官能価も提供し且つ表面エネルギーが非常に低いプラスチック基材への接着を促進するイソシアネート官能基化シロキサンで開始されることができることを示している。
【0135】
実施例17〜21及び比較例A
実施例17〜21を、比較例Aと比較して、少量のシロキサンポリマーが、低表面エネルギーiPP基材への接着に関して、脆いアクリル系配合物の靭性を増大させる効果を示している。全ての実験において、シロキサンポリマーは、総接着剤重量に基づき0.1%のDBTDAで触媒された、250当量のPDMS−OHとTMOSとの重量比4:1の反応生成物であった。遊離基重合は、ICEMANで開始されたH−29の添加によって触媒された。比較例Aは、PDMS/TMOS成分を用いないことを除いては同一の系であった。サンプルの脆性/延性を、ASTM D746に従って測定した。結果を表IIIにまとめる。
【0136】
【表3】

【0137】
実施例17〜21及び比較例Aは、シロキサン官能性ポリマーをアクリル樹脂中に混和すると、表面エネルギーが非常に低い基材に適用される接着剤の室温靭性をかなり増大できることを示している。これらの例はまた、接着剤を、適用前の接着剤内で予め反応させられたシロキサンポリマーと配合できることを示している。「接着剤の位置ずれ(bond displacement)」は、破壊前の接着剤層の降伏距離(yield distance)を意味する。「脆性」は、接着剤が、指定の張力及び伸びにおいて破壊され且つ裂けることを意味する。「延性」は、一軸引張試験における降伏後の伸びである。延性破壊は、破壊前の接着剤の測定可能な不可逆的変形によって示され、複数の開始部位に関して、接着剤層の凝集破壊によって示される。延性脆性破壊の測定は、破壊された接着剤層の検査によって行う。Properties of Polymers,chapter 10,D.W.van Kreulen,Elsevier Publishing、1972を参照されたい。
【0138】
実施例22〜27
実施例22〜27は、接着剤の接着力測定値に対する、シリコーン官能性架橋剤の効果を示した。全ての基材はPETであった。示された分数の量は全て、総接着剤重量に基づく重量分率である。接着剤は全て、50%のMWT44,000(数平均)PDMS−OH、1%のDBTDA、4%のH−29、4%のIPDI及び3%のCabosil 530を用いて作った。残りは、架橋剤で置換されるアクリル樹脂であった。架橋剤は、いずれの場合においても、シロキサン相及びアクリル相を架橋させることができる(アクリルオキシプロピル)トリメトキシシロキサンであった。重ね剪断試験は、各実施例のサンプルについて前述の手法に従って25℃の温度において行った。結果を表IVにまとめる。
【0139】
【表4】

【0140】
表IVのデータは、架橋剤がこれらの配合物の有利な成分であること、架橋剤の好ましい濃度が総接着剤重量の2〜10%であること、及び本発明の配合物がこの低表面エネルギー基材に対して優れた接着を達成できることを示した。
【0141】
実施例28〜32
実施例28〜32は、5%の(アクリルオキシプロピル)トリメトキシシロキサン、1%のDBTDA、4%のH−29、4%のIPDI、3%のCabosil 610を用い、示された量のMWT44,000のPDMS−OHを含むように置換されたアクリル樹脂で残りを補って作った。重ね剪断試験は、PET及びiPP基材を用いて25℃の温度において行った。結果を表V5にまとめる。
【0142】
【表5】

【0143】
表Vは、接着剤の主相がシロキサンである場合には極めて良好な接着性が得られること及び表面エネルギーの非常に低い基材に対する接着性が得られることを示した。
【0144】
実施例33〜42
ポリマーブレンドの相を架橋するための別の方法は、一方の相の末端を他方の相の末端に化学的に結合させることであった。次いで、このようなブロックコポリマーを、相分離動力学とブロックの分子量に応じて化学的に分散させた。(メタクリルオキシプロピル)メチル−シロキサンジメチルシロキサンコポリマーのような材料が、分散が分子ブロック長によって異なる相分離構造を形成できる材料の一例であった。全ての例において、組成物は分子量の44,000のPDMS−OH、粘度が1000〜2000センチストークス(0.001〜0.002M2/s)(RMS−33)又は2000〜3000センチストークス(0.002〜0.003M2/s)(RMS−83)である、示されたアクリレート末端官能基化シロキサンを含んでなり、(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシロキサン(MPTMS)を架橋剤として用い、Cabosil 610表面処理ヒュームドシリカを構造充填剤として用いた。全ての例において。遊離基重合は、TBB:MOPAのモル比1:1.05の錯体(接着剤中2%)の添加によって触媒し、総接着剤重量に基づき2%のIPDIの添加によって開始した。全ての例において、シロキサン重合は総接着剤重量に基づき2%のDBTDAの添加によって触媒した。配合物の残りはメタクリル酸メチルであった。基材に関する重ね剪断試験を、前記方法に従って25℃の温度において実施した。結果を表VIにまとめる。
【0145】
【表6】

【0146】
表VIは、本発明の重合性組成物へのアクリレート官能基化PDMSの混和により、表面エネルギーが非常に低いプラスチック基材への優れた接着力が得られることを示した。全ての破壊はcaであった。
【0147】
実施例43及び比較例B〜D
実施例43は、本発明の配合物を、The Dow Corning Corporationの3種の市販シリコーンRTV−1接着剤と比較した。本発明のRTV−1接着剤は、以下の重量の以下の成分から作る。2gの分子量44,000ヒドロキシ末端PDMS、3gのアクリル樹脂、0.28gのエチルトリアセトキシシロキサン、0.1gのDBTDA及び0.5gのCabosil 530。
【0148】
これらは、基材に1液型接着剤として適用した。比較材料は新しく開けたチューブから適用した。全ての例において、基材はPETであった。示した基材に関する重ね試験試験を、前述の方法に従って25℃の温度において実施した。結果を表VIIにまとめる。
【0149】
【表7】

【0150】
表VIIのデータは、本発明のRTV−1接着剤が低表面エネルギー基材に対して、同じ基材に対して従来のシリコーン接着剤によっては得られない接着力を提供できることを示した。DC−738、DC−739及びDC−832は、Dow Corning Corporation,Midland,Michiganから入手可能な1液型RTVシロキサン接着剤である。「ca」は凝集接着破壊を意味し、「a」は、接着剤が基材から離層するが、基材への接着剤の見掛けの移動はないことを意味した。
【0151】
実施例44〜46
実施例44〜46は、遊離基及びシロキサン重合の化学反応を、湿分硬化化学反応を同時に用いて等しく且つ効果的に実施して、低表面エネルギー基材への優れた室温接着性を提供できる証拠を示すために実施した。RTV−1の実験は、遊離基重合を開始させるためにエチルトリアセトキシシロキサンの加水分解を又はアルキルオキシシロキサン及びヒドロキシシロキサンの湿分硬化を開始するために錫若しくはアルコキシチタン触媒を利用した。実験の接着剤は、5.4gのアクリル樹脂、3gのMWT44,000のPDMS−OH、0.7gのエチルトリアセトキシシロキサン、0.3gの錫(II)触媒又はチタン(IV)及び0.4gのH−29を用いて製造した。接着剤組成物をガラス容器中で混合し、1液型接着剤として適用した。全ての場合において、基材はPETであった。重ね剪断試験を25℃において実施した。結果を表VIIIにまとめる。破壊は全て、凝集接着破壊であった。
【0152】
【表8】

【0153】
表VIIIのデータは、別の触媒を用いた本発明のRTV−1湿分硬化接着剤が、低表面エネルギー基材に対する優れた接着力を提供できることを示した。
【0154】
実施例47〜51
実施例47〜51において。接着剤は、8.8gのアクリル樹脂、0.8gのエチルトリアセトキシシロキサン及び0.4gのH−29の混合物から作った。保存寿命を改善するために、少量の種々の量のケトイミノプロピルトリエトキシシロキサンを添加した。接着剤組成物をガラス容器中で混合し、1液型接着剤として適用した。重ね剪断試験を25℃において実施した。結果を表IXにまとめる。
【0155】
【表9】

【0156】
実施例47〜51は、RTV−1技術を用いて優れた保存寿命を有する1液型接着剤を製造できること及びそれが低表面エネルギー基材への優れた接着力を提供することを示した。表IXのデータは、1液型接着剤が表面前処理が成されていない低表面エネルギー基材に対して室温接着性を提供でき且つ優れた保存寿命を維持できることを示した。第3級アミンのような他の添加剤も同様に保存寿命を延長できた。本明細書中において、[保存寿命」とは、配合された接着剤が加工性を維持すること及び湿分を含まない容器中で室温において静かに放置した後に基材への接着性を示すことを意味する。本明細書中において、「不良な保存寿命」は、接着剤が加工性及び基材への接着能力を失うことを意味した。「加工性」とは、接着剤を常法によって基材表面に適用できることを意味した。
【0157】
実施例52〜56
実施例52〜56は、表面処理ヒュームドシリカを累進的に添加すると、低エネルギー基材に対する本発明の測定された接着力に対して限界までの有益な効果が得られることを示した。全ての接着剤は、50%のMWT44,000のPDMS−OH、5%の(アクリルオキシプロピル)トリメトキシシロキサン、1%のDBTDA、4%のH−29、2%のIPDI及びMMAから作った。これらの実施例では、Cabosil 530ヒュームドシリカを表Xに列挙したような種々のレベルで添加し、これらの添加は、MMAの代えて行った。重ね剪断試験を25℃において行った。結果を、表Xにまとめる。全ての場合において、基材はPETであり、破壊の状態はcaであった。
【0158】
【表10】

【0159】
実施例57〜75
実施例57〜75は、ビニル重合(付加)メカニズムを用いて、本発明の接着剤が低表面エネルギー基材に対して優れた接着力を得ることができることを示した。接着剤は、メチルヒドロシロキサンが26重量%であるMn2600の水素化物末端ポリ(ジメチルシロキサン−コ−メチルヒドロシロキサン)及び1000cP(センチポアズ)(1Pa.s)のジビニル末端ポリジメチルシロキサンからなる。シロキサン重合は、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルシロキサン中において錯化された0.1MのPt(0)を用いて触媒する。遊離基重合は、当量比1:1.1のトリブチルボランとイソホロンジアミンとの錯体(H28-)を用いて実施した。この重合は、ボランアミン触媒とイソホロンジイソシアネートとの反応によって開始する。多くの場合において、接着剤の物理的性質を改善するために、追加のアミン及びイソシアネートを配合物に添加した。配合物中には、VS5500ガラスバルーン及びCabosil 530ヒュームドシリカを充填剤として添加した。いずれの例においても、MMAを遊離基重合用のモノマーとして用いた。全ての重量はgで表した。第1液は以下のものを含んでいた。VS 5500ガラスビーズ;8部のH28-(ただし、実施例70では、H28-は6部であった);PdV;IPDA;及びPDMSH。実施例75においては、2部のCabosil 530ヒュームドシリカをさらに用いた。接着剤組成物の第2液は、以下のものを含んでいた:11部のCabosil 530ヒュームドシリカ(ただし、実施例73は10部含んでいた);IPDI;Pt(0)錯体;メタクリル酸メチル。配合物は約1:1の容量比を提供するように設計した。重ね剪断試験は、iPP及びPET基材上で室温において実施した。表XIは、実施例によって異なる成分の量及び結果を示す。
【0160】
【表11】

【0161】
表XI中の実施例は、本発明の接着剤では、表面エネルギーが非常に低い基材に対して、表面前処理を施さなくても室温において優れた接着性が得られることを示した。
【0162】
実施例76〜78及び比較例E
実施例76〜78及び比較例Eは、本発明の接着剤が、他の添加剤では達成できない低温性能を提供することを示すために実施した。本発明の柔軟性接着剤は、非常に低い延性脆性遷移温度を有し且つ他の接着剤組成物を用いた場合には実現不可能な柔軟性接着を提供することによって特徴づけられた。表XII中の全ての例は、MWT44,000のPDMS−OH、(アクリルオキシプロピル)トリメチルシロキサン、総接着剤重量に基づき1%のDBTDA、3%のCabosil、4%のH−29、2%のIPDIを含み、残りはメタクリル酸メチルで補った。比較のアクリル樹脂配合物は、15重量%のMWT 75,000のPMMA co ブチルアクリレート(ブチル含量5%)、35%のアクリル酸ブチル及び50%の2−エチルヘキシルメタクリレートをからなる。接着剤は前記樹脂を用いて作り、4%のH−29で触媒し、2%のIPDIで開始した。室温においてPET基材上で接着剤の重ね剪断試験を評価した。結果を表XIIにまとめる。全ての例は、低表面エネルギー基材に対して凝集接着破壊を示した。
【0163】
【表12】

【0164】
実施例79〜90並びに比較例F及びG
本発明の配合物は、試験した全ての低表面エネルギー基材に非常に効果的であり、基材自体に対する感受性が最小である。非常に低温まで優れた柔軟性を提供するだけでなく、本発明の接着剤は高温においても効果的であり、これはそれらの架橋化学構造と一致している。実施例80〜91は、本発明が広い適用許容範囲を提供する点で有用であることを示した。表XIIIにおいて、配合物は、示した重量%のMWT44,000のPDMS−OHを含んでいた。全ての例において、遊離基重合は、総接着剤重量の2%のIPDI及び4%のH29で開始し、接着剤の残りはMMAで補った。全てのサンプルは、アクリルオキシプロピルトリメトキシシロキサンの5%の添加によって架橋した。配合物はまた、総接着剤重量に基づき3%のCabosil TS−610ヒュームドシリカ及び2%のDBTDAを含んでいた。接着剤は、4%のH29を用いて開始した。接着剤層は、全ての場合において、ギャップの均一性を保証するためのガラスビーズを用いて0.005インチ(0.127mm)であった。比較サンプルは、市販Dow Corningシリコーン接着剤、DC−832から得た。接着剤の重ね剪断試験は、列挙した基材上で室温において行った。結果を表XIIIにまとめる。接着破壊である比較例のサンプルを除いて、破壊は全てcaであった。
【0165】
【表13】

【0166】
実施例91
実施例91は、本発明が、熱硬化性である少ない方の相を共重合させることによって官能価をさらに加えることができることを示した。少ない方のエポキシ相は、PDMS相及びアクリル相に取り入れた。接着剤は、30%のMWT44,000のPDMS−OH、16%のDER331、3%のSnCl4(エポキシ触媒)、3%のCabosil TS−530、3%のIPDI、4%のH−29、31%のMMA、3%のグリシジルメタクリレート、3%の(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシロキサン及び2%のDBTDAからなった。PET基材を、重ね剪断試験の配置で配合物を用いて接着させ、室温で48時間硬化させた。続いて、サンプルを試験し、凝集接着破壊モードで、362psi(2496kPa)の重ね剪断強さが得られた。この結果は、エポキシ相を前記例中に記載されているアクリル、PDMS及びポリ尿素相と共に混和することが可能であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)有機ボランアミン錯体;
b)遊離基重合によって重合可能なオレフィン性不飽和を有する1種又はそれ以上のモノマー、オリゴマー若しくはポリマー;
c)シロキサン主鎖及び重合可能な反応性部分を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマー;並びに
d)シロキサン主鎖及び重合可能な反応性部分を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマーの重合用触媒
を含んでなる重合性組成物。
【請求項2】
更に、重合開始が望まれるまで、錯体の解離を引き起こす化合物を前記錯体と別々に保持し且つシロキサン主鎖を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマーの重合用触媒を、シロキサン主鎖を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマーと別々に保持するシロキサン主鎖及び重合可能な反応性部分を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマー重合用触媒を含む請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
前記組成物が、b)オレフィン性不飽和を有する1種又はそれ以上のモノマー、オリゴマー又はポリマー及びc)シロキサン主鎖を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマーの両方と反応性である化合物をさらに含む請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
シロキサン主鎖を有する前記の1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマーが、シラノール縮合可能な反応性部分;反応性ビニル部分;水素化物官能価;又はヒドロキシ官能価を更に含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
遊離基重合によって重合可能なオレフィン性不飽和を有する1種又はそれ以上のモノマー、オリゴマー又はポリマーから得られた1種又はそれ以上のポリマー並びにシロキサン主鎖及び重合可能な反応性部分を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマーから得られた1種又はそれ以上の第2の型のポリマーを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物から得られる重合組成物。
【請求項6】
オレフィン不飽和を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーから得られるポリマーの一部が、シロキサン主鎖を有する1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマーから得られるポリマーの一部に、両方の型のポリマーと反応する化合物によって共有結合させられた請求項5に記載の重合組成物。
【請求項7】
アルキル及びシクロアルキルからそれぞれ別個に選ばれた3個の配位子を有するボランとアミノシロキサンを含んでなる錯体。
【請求項8】
前記錯体が、式:
【化1】

[式中、Bは硼素であり;
2は、それぞれ別個に、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキルであるか、又はR2の2つ又はそれ以上が結合して、脂環式環を形成してもよく;
11は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルミルアミノであるか、又は式((CR14H)rO)n−(NR4)−(CH2o−NH2に対応するが、少なくとも(R11)’はこれをそのまま脱離する第1級アミンであり;
12は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アリール、アルコキシであるか、又は1個又はそれ以上の第1級、第2級又は第3級アミンを更に含むことができ;
14は、それぞれ別個に、水素又はアルキルであり;
4は、水素、C1〜C10アルキル、C6〜C10アリール又はC7〜C10アルカリールであり;
aは1〜10の数であり;
bは0〜1の数であり;
mは、それぞれ別個に、1又はそれ以上の自然数であり;
pは、それぞれ別個に、1〜3の整数であり;
qは、それぞれ別個に、1〜2の整数であり、各珪素原子におけるpとqの合計は3であり;
nは、それぞれ別個に、4〜400の整数であり;
oは、それぞれ別個に、1〜9の整数であり;
rは、それぞれ別個に、2〜4の整数である]
の1つに対応する請求項7に記載の錯体。
【請求項9】
a)有機ボランアミン錯体;
b)遊離基重合によって重合可能なオレフィン性不飽和を有する1種又はそれ以上のモノマー、オリゴマー又はポリマー;及び
c)主鎖中にシロキサン基を有し且つ湿分への暴露時に有機ボランアミン錯体を脱錯化可能な酸を形成する部分
を含む化合物を含んでなる重合性組成物。
【請求項10】
化合物c)が有機ボランアミン錯体を脱錯化可能な酸を形成するような条件下で大気中湿分に前記組成物を暴露することを含んでなる、請求項9に記載の組成物を重合する方法。
【請求項11】
有機ボランアミン錯体が解離され且つ反応性化合物、オリゴマー又はプレポリマーの重合を開始する温度に前記組成物を暴露する請求項1に記載の組成物を重合する方法。
【請求項12】
前記組成物の2液を接触させる請求項2に記載の組成物を重合する方法。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物を含んでなる接着剤組成物。
【請求項14】
請求項2に記載の組成物を含んでなる接着剤組成物。
【請求項15】
2つの基材を、これらの間に配置された請求項13に記載の組成物と接触させ且つ接着剤を硬化させることを含んでなる、2つの基材の接着方法。
【請求項16】
2つの基材を、これらの基材間に配置された請求項14に記載の組成物と接触させ且つ接着剤を硬化させることを含んでなる、2つの基材の接着方法。
【請求項17】
A)ヒドロキシを末端基とするシロキサンを、アクリレート樹脂中に分散されたテトラアルコキシシリケートと、有機錫又はチタネート触媒の存在下において、アクリレート中に分散されたシロキサンポリマーが製造されるような条件下で反応させ;
B)アクリレート樹脂中に分散された、シロキサンをベースとするポリマーを、有機ボランアミン錯体と接触させ;
C)工程Bの組成物を、錯体を解離させる化合物の有効量と接触させ;
D)2つの基材を、それらの基材間に配置された、工程Cに係る組成物と接触させ、そして接着剤を硬化させる
ことを含んでなる2つの基材の接着方法。

【公表番号】特表2006−522206(P2006−522206A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508864(P2006−508864)
【出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/005828
【国際公開番号】WO2004/078871
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】