説明

シングルレバー混合水栓

【課題】湯や浄水が無駄に使用されてしまうのを防止でき、また浄水を吐水させる際の操作が行い易く、操作性の良好なシングルレバー混合水栓を提供する。
【解決手段】シングルレバー混合水栓のレバーハンドル16が使用者に正対した位置が水吐水位置となるようにし、そしてレバーハンドル16が水吐水位置から一方に回転した位置が混合水吐水位置,混合水吐水位置よりも更に一方に多く回転した位置が湯吐水位置となるようにし、また水吐水位置から反対方向に回転した位置が浄水吐水位置となるようにシングルレバー混合水栓を構成しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はシングルレバー混合水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シングルレバー混合水栓として、固定弁体と固定弁体上を摺動する可動弁体とを有する弁カートリッジを備え、レバーハンドルの起伏方向の操作により弁開閉を行って吐止水と吐水の流量調節を行い、起伏方向と直角方向の回転操作により流路の切替えを行って水吐水,湯吐水,混合水吐水の切替えを行うようになしたものが広く用いられている。
【0003】
通常、弁カートリッジではレバーハンドルの起伏方向の操作により可動弁体を固定弁体に対して直線状にスライド摺動させて弁開閉を行い、またレバーハンドルの回転操作により可動弁体を固定弁体に対し回転摺動させて流路の切替えを行う。
【0004】
例えば下記特許文献1に、この種形態のシングルレバー混合水栓が開示されている。
図8はその具体例を示しており、図中200は水栓本体で、内部に弁カートリッジ202が組み込まれている。
204は弁カートリッジ202におけるカートリッジケースで、その内部に固定弁体206とその上面を水密摺動する可動弁体208とが設けられている。
ここで固定弁体206,可動弁体208は何れもディスクから成っている。
【0005】
可動弁体208は、その駆動部210及びレバー軸212を介してレバーハンドル214に作動的に連結され、レバーハンドル214の操作によって、可動弁体208が固定弁体206上を摺動するようになっている。
具体的には、レバーハンドル214を図8中上下方向即ち起伏方向に操作すると、可動弁体208が図8中左右方向に直線状に摺動運動し、またこれと直角方向即ち図8の紙面と直角方向に回転操作すると、可動弁体208が固定弁体206上を回転摺動する。
【0006】
図9(B)に示しているように、固定弁体206には水流入口216A,湯流入口216B及び流入した水又は/及び湯(水,湯及び水と湯との混合水)から成る原水を吐水口に向けて流出する原水側流出口218が設けられている。
一方可動弁体208には、水流入口216A又は/及び湯流入口216Bと原水側流出口218とを連通させる連通開口220が設けられている。
【0007】
このシングルレバー混合水栓では、レバーハンドル214を図8において下向きに一杯まで操作すると、図9(B)に示しているように可動弁体208が固定弁体206の水流入口216A,湯流入口216Bのそれぞれを閉じた状態となる。即ち弁閉した状態となって止水を行う。
【0008】
一方レバーハンドル214を図8において上向きに一杯まで操作すると、可動弁体208が図9(B)において左方向に一杯まで移動した状態となって、連通開口220が水流入口216Aと湯流入口216Bとのそれぞれを原水側流出口218に連通させた状態となり、ここにおいて水流入口216Aから流入した水と、湯流入口216Bから流入した湯とが混合状態で原水側流出口218から流出する。このとき吐水口からは混合水が吐水される。
【0009】
またこの状態でレバーハンドル214を図8中紙面と直角方向即ち上記の起伏方向と直角方向に回転操作すると、可動弁体208が固定弁体206上を回転摺動し、水と湯との混合比率を変化させ、吐水の温度を高く或いは低く変化させる。
【0010】
而して可動弁体208をレバーハンドル214にて図9(B)中下方向に一杯まで回転させると水だけが吐水され、また逆方向の図中上方向に一杯まで可動弁体208を回転させると湯のみが吐水される。
【0011】
従来において、シングルレバー混合水栓は水栓本体200の正面を使用者に向けて即ち使用者に正対させて設置される。
またレバーハンドル214は、回転方向の角度範囲内でその中央位置が水栓本体200の正面の中央位置となるように設定され、従ってこの状態でレバーハンドル200は使用者に対し正対した位置且つ混合水吐水領域の丁度中心に位置した状態となる。
【0012】
従って使用者が止水状態で無意識にハンドル操作して吐水させたときに、先ず混合水が吐水される。
使用者が本来水を使用したいと思っていたときには、その状態から使用者がレバーハンドル214を通常は使用者から見て右方向に回転操作して、レバーハンドル214を水吐水位置まで持ち来すこととなる。
この場合、実際には使用者が水を出したいと思っていたにも拘らず、使用者の意思とは無関係に先ず混合水つまり水に加えて湯が吐水されてしまい、湯が無駄に使用されてしまう。
【0013】
ところで、近年では水,湯や混合水等の原水の他に、水道水(原水)を浄化カートリッジに通して浄化した後の浄水もよく使用されるようになっており、従ってシングルレバー混合水栓にあっても、レバーハンドルの操作によって水,湯,混合水の他に浄水の吐水機能も併せて備えておくことが望ましい。
【0014】
このような浄水吐水機能も併せて備えて成るシングルレバー混合水栓については下記特許文献1に開示されている。
しかしながらこの特許文献1に開示のものは、レバーハンドルが使用者に正対した位置が混合水吐水位置となるように、詳しくは混合水吐水領域の丁度中央位置となるように設定してあり、従ってこのシングルレバー混合水栓には上記の問題が内在する他に以下の問題、即ち浄水を吐水させるためにはレバーハンドルを操作し易い回転方向の角度範囲を越えて更に大きく奥側まで回転操作しなければならず、浄水を吐水させる際の操作が面倒で操作性が悪く、使い勝手の点で不十分なものとなる。
【0015】
シングルレバー混合水栓に浄水の吐水機能を備えた場合において、浄水吐水のための操作が行い易く操作性が良好であること、一方で浄水が無駄に使用されてしまわないことが求められる。
浄水が無駄に使用されると浄水カートリッジが直ぐに寿命に達してしまい、浄水カートリッジを頻繁に交換しなければならず、浄水カートリッジに要するコストも高くなってしまう。
【0016】
尚、下記特許文献2には湯が無駄に使用されてしまうのを防ぐことを目的としたシングルレバー混合水栓が開示されている。
しかしながらこの特許文献2に開示のものは浄水吐水機能を有しておらず、従ってそこには如何にして浄水吐水のための操作を行い易くするか、また一方で浄水が無駄に使われてしまわないようにするか等についての課題やその解決手段については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2003−28319号公報
【特許文献2】特開2003−129535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は以上のような事情を背景とし、湯や浄水が無駄に使用されてしまうのを防止でき、また浄水や混合水を吐水させる際の操作が行い易く、操作性の良好なシングルレバー混合水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
而して請求項1のものは、固定弁体と該固定弁体上を摺動する可動弁体とを有し、レバーハンドルの起伏方向の操作により弁開閉を行って吐止水と吐水の流量調節を行い、該起伏方向と直角方向の回転操作により流路の切替えを行って水吐水,湯吐水,混合水吐水及び浄水吐水の切替えを行うシングルレバー混合水栓であって、前記回転方向において、前記レバーハンドルが使用者に正対した位置が水吐水位置となるようにし、該レバーハンドルが該水吐水位置から一方に回転した位置が混合水吐水位置,該混合水吐水位置よりも更に該一方に多く回転した位置が湯吐水位置となるようにし、また前記水吐水位置から前記一方とは反対方向に回転した位置が浄水吐水位置となるように構成してあることを特徴とする。
【0020】
請求項2のものは、請求項1において、レバーハンドルが前記水吐水位置となったときにクリック感を発生させるクリック機構が設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0021】
以上のように本発明は、レバーハンドルが使用者に正対した位置が水吐水位置となるようにし、そしてレバーハンドルが水吐水位置から一方に回転した位置が混合水吐水位置、混合水吐水位置よりも更に一方に多く回転した位置が湯吐水位置となるようにし、また水吐水位置から上記とは逆方向に回転した位置が浄水吐水位置となるようになしたものである。
【0022】
本発明では、止水状態で使用者に正対したレバーハンドルを使用者が無意識にハンドル操作して吐水させたとき、先ず水が吐水される。
従って本発明によれば、使用者が混合水ではなく水を使用したいと思っていたにも拘らず使用者の意図に反して混合水が、即ち水とともに湯が吐水されてしまい、湯が無駄に使用されてしまう問題を解決でき、節湯を図ることができる。
【0023】
同様に使用者が無意識にハンドル操作したときに浄水が誤って吐水されてしまうといったことも防ぐことができ、浄水が無駄に使用されてしまうこと、また浄水が無駄に使用されることで浄水カートリッジが早期に寿命に達してしまうといった問題も併せて解決することができる。
【0024】
本発明では、水吐水位置に対して回転方向の一方に隣接した位置が混合水吐水位置、またその一方とは反対方向に隣接した位置が浄水吐水位置となり、使用者にとって操作し易い回転方向のハンドル角度範囲内に混合水吐水位置,浄水吐水位置を設定することができ、比較的頻繁に使用される混合水や浄水を吐水させる際の操作性が良く、使い勝手に優れている。
【0025】
一方で本発明では、湯吐水位置が通常時にレバーハンドルが位置している水吐水位置から回転方向に大きく離れた位置となる。
この湯吐水位置でレバーハンドルを吐水操作したとき、給湯器からの湯がそのまま水栓の吐水口から吐水される。
湯を使用するケースは例えば鍋で湯を沸すときに予め鍋の中に熱い湯を入れておくといった特殊な用途でしか通常は使用されない。
一方で誤ってこのような湯が吐水されてしまうと使用者が熱湯を浴びる等の問題にも繋がる。
【0026】
本発明では、使用者が湯吐水の明確な意図を持ってレバーハンドルを大きく回転操作しなければならないようにしてあり、これにより意図せず湯が吐水されてしまうといったことを防ぐことができる。
【0027】
本発明では、レバーハンドルが上記水吐水位置となったときにクリック感を発生させるクリック機構を設けておくことが望ましい(請求項2)。
このようなクリック機構を設けておくことで、レバーハンドルが本来の中立位置、即ち水栓本体の正面中央位置に位置したときに、そのことを使用者に知らせることができ、ひいてはレバーハンドルを回転方向において水吐水位置、即ち使用者に正対した水栓本体正面の中央位置に持ち来すことを誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態のシングルレバー混合水栓の全体構成を示した図である。
【図2】図1の弁カートリッジにおける固定弁体と、可動弁体の構成を示した図である。
【図3】同実施形態の各種吐水状態における固定弁体と可動弁体との位置関係をレバーハンドルの回転操作位置とともに示した図である。
【図4】図3に対応した水,湯,浄水の流れの経路の説明図である。
【図5】同実施形態における水栓及びレバーハンドルの設置の具体例を示した図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示した図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【図8】従来のシングルレバー混合水栓の例を示した図である。
【図9】図8の要部を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態のシングルレバー混合水栓(以下単に水栓とする)で、取付基部としての台座部12上に設置されている。
14はシングルレバー混合水栓10における水栓本体で、16はその操作部であるレバーハンドル、18は水栓本体14の内部に組み込まれた弁カートリッジである。
【0030】
20は弁カートリッジ18におけるカートリッジケースで、その内部に固定弁体22とその上面を水密摺動する可動弁体24とが設けられている。
ここで固定弁体22,可動弁体24は何れもディスクから成っており、また可動弁体24はレバー軸26を介してレバーハンドル16に作動的に連結されている。
【0031】
弁カートリッジ18には、給水管28Aと給湯管28Bとが接続され、それらを通じて水と湯とが弁カートリッジ18に供給される。
また弁カートリッジ18からは浄水側配管30が延び出している。
【0032】
32は水栓本体14から延び出した吐水管で、その内部に原水側流路34と浄水側流路36とが設けられている。
これら原水側流路34,浄水側流路36は、それぞれ吐水管32先端の原水吐水口38,浄水吐水口40に到っている。
また浄水側流路36上には浄水カートリッジ42が設けられている。
【0033】
図2に、弁カートリッジ18における固定弁体22と可動弁体24の構成が具体的に示してある。
図2(B)に示しているように、固定弁体22にはこれを貫通する形態で水流入口44A,湯流入口44B,流入した水又は/及び湯(水,湯,水と湯とを所定比率で混合した混合水)等の原水を図1の原水吐水口38に向けて流出させる原水側流出口46が設けられている。
【0034】
この実施形態では、更に、水道水(原水)を図1の浄水カートリッジ42に向けて流出させる浄水側流出口48が、同じく固定弁体22を貫通する形態で設けられている。
ここで浄水側流出口48は、水流入口44A,湯流入口44Bを間に挟んで原水側流出口46とは反対側の位置に配置されている。
ここで原水側流出口46は内周縁,外周縁ともに円弧形状をなしている。同様に浄水側流出口48もまた内周縁,外周縁ともに円弧形状をなしている。
【0035】
固定弁体22において、水流入口44Aと湯流入口44Bとは、固定弁体22の中心線Pに対して図中左右対称形状をなしている。
また原水側流出口46は、中心線Pに対して左右対称形状をなしており、更に浄水側流出口48もまた中心線Pに対して図中左右対称形状をなしている。
【0036】
図2(B)においてQは、水栓本体14の正面を使用者に向けて即ち使用者に正対させ且つレバーハンドル16を水栓本体14の正面中央位置(中立位置)に位置させたときのレバーハンドル16の方向を表している。
従って固定弁体22の中心線PはQに対し角度θをなしている。
【0037】
一方、図2(A)に示しているように可動弁体24には水流入口44A,湯流入口44B,原水側流出口46,浄水側流出口48等を連通させるための連通開口50が設けられている。
ここで連通開口50は可動弁体24を貫通する形態で設けられ、内周縁,外周縁ともに円弧形状をなしている。
可動弁体24は、レバーハンドル16が上記の中立位置(レバーハンドルが水栓本体14の正面中央にある位置)に位置したときに、中心線Pがレバーハンドル16の方向Qと同じ方向を向くように配置される。
【0038】
図3は水吐水,混合水吐水,湯吐水,浄水吐水のときの固定弁体22と可動弁体24との位置関係を、レバーハンドル16の回転操作位置とともに表している。
図3(C)は、レバーハンドル16が水栓本体14の正面中央位置(中立位置)にあって、使用者に正対した位置にあるときの状態を表している。
このとき可動弁体24の中心線Pも、レバーハンドル16と同方向のQを向いた状態にあり、このときには可動弁体24の連通開口50が、固定弁体22の水流入口44Aと原水側流出口46とにまたがって位置し、それら水流入口44Aと原水側流出口46とを連通させた状態にある。
従ってこのときには、レバーハンドル16を図1中上向きに操作して吐水させたときに、原水吐水口38から水のみが吐水される(図4(C)参照)。
即ちこのときにはレバーハンドル16は水を吐水させる位置に位置している。
【0039】
この状態から図3(B)に示しているように図中左方向(使用者から見て左方向)に角度θだけレバーハンドル16を回転操作すると、ここにおいて可動弁体24の連通開口50が、固定弁体22の水流入口44Aと湯流入口44Bとに同じだけかかった状態(同一面積で重複した状態)となり、水流入口44Aと湯流入口44Bとから水と湯とが同量で流入して、それらの混合水が原水側流出口46から原水吐水口38に向けて流出する。
即ち適温の混合水が原水吐水口38から吐水される(図4(B)参照)。
【0040】
図3(B)に示す状態は、水と湯とを等しい比率で混合して吐水する状態であって、レバーハンドル16は混合水吐水領域の丁度中央に位置した状態となる。
従ってレバーハンドル16をその混合水吐水領域内で図中右方向及び左方向に回転操作すると湯と水の混合比率が変化し、吐水の温度が調節される。
尚この混合水吐水領域は、連通開口50が水流入口44Aと湯流入口44Bとにかかった状態、即ちそれらを連通させた状態となる領域で、この混合水吐水領域はレバーハンドル16の回転方向において一定の角度範囲に亘っている。
【0041】
この図3(B)に示す状態から更にレバーハンドル16を左方向に角度θまで大きく回転操作すると、このとき可動弁体24は水流入口44Aを閉じて連通開口50が湯流入口44Bだけを原水側流出口46に連通させた状態となり、従ってこのときには湯流入口44Bから湯のみが流入して原水側流出口46から流出し、原水吐水口38から湯が吐水される(図4(A)参照)。
【0042】
図3(C)に示す状態から今度は逆方向、即ち図中右方向(使用者から見て右方向)に角度θだけレバーハンドル16を回転操作すると、ここにおいてレバーハンドル16が浄水吐水位置に到り、可動弁体24の連通開口50が、固定弁体22の水流入口44Aと浄水側流出口48とだけを連通させた状態となる。
ここにおいて水流入口44Aから流入した水が浄水側流出口48から流出し、その後浄水側配管30を通じて吐水管32の浄水側流路36へと流入し、更に浄水カートリッジ42を通過してそこで浄化される。そして浄化された後の浄水が浄水吐水口40から吐水される(図4(D)参照)。
【0043】
尚、水吐水領域,これに隣接した混合水吐水領域,更にこの混合水吐水領域に隣接した湯吐水領域,更に水吐水領域に隣接した浄水吐水領域は、それぞれ回転方向に一定の角度範囲に亘っており、図3(C),(B),(A),(D)は、それぞれレバーハンドル16が水吐水領域,混合水吐水領域,湯吐水領域,浄水吐水領域のそれぞれの中央に位置したときの状態を表している。
【0044】
この実施形態において、水吐水領域は図3(C)のQを中心として±30度の角度範囲に亘っており、また混合水吐水領域は水吐水領域から湯吐水領域にかけて連続的に吐水温度を変化させる。また湯吐水領域は60〜100度の角度範囲に亘っており、更に浄水吐水領域は30〜100度の角度範囲に亘っている。
【0045】
図5は、図3(C)の水吐水位置にあるレバーハンドル16が使用者に正対する位置となる水栓10の設置状態の例を表している。
図5(A),(B)は吐水管32が水栓本体14の軸線周りに回転可能な可動式の場合の例を示しており、このときには台座部12に対して垂直に交わる方向(台座部12の前面に対して垂直に交わる方向)にレバーハンドル16が向いた位置がレバーハンドル16の上記の中立位置となる。
尚図中52はシンク等の水槽を表している。
【0046】
一方吐水管32が回転できない固定式である場合には、図5(C)に示しているように水槽52の中心Oと水栓本体14の軸心とを結ぶ方向にレバーハンドル16が向く位置がレバーハンドル16の上記の中立位置となる。
【0047】
以上のような本実施形態では、止水状態で使用者に正対したレバーハンドル16を使用者が無意識にハンドル操作して吐水させたときには先ず水が吐水される。
従って使用者が混合水ではなく水を使用したいと思っていたにも拘らず使用者の意図に反して混合水が、即ち水とともに湯が吐水されてしまい、湯が無駄に使用されてしまう問題を解決でき、節湯を図ることができる。
【0048】
同様に使用者が無意識にハンドル操作したときに浄水が誤って吐水されてしまうといったことも防ぐことができ、浄水が無駄に使用されてしまうこと、また浄水が無駄に使用されることで浄水カートリッジが早期に寿命に達してしまうといった問題も併せて解決することができる。
【0049】
本実施形態では、水吐水位置に対して回転方向の一方に隣接した位置が混合水吐水位置、またその一方とは反対方向に隣接した位置が浄水吐水位置となり、使用者にとって操作し易い回転方向のハンドル角度範囲内に混合水吐水位置,浄水吐水位置を設定することができ、比較的頻繁に使用される混合水や浄水を吐水させる際の操作性が良く、使い勝手に優れている。
【0050】
一方で本実施形態では、湯吐水位置が通常時にレバーハンドル16が位置している水吐水位置から回転方向に大きく離れた位置となる。
この湯吐水位置でレバーハンドル16を吐水操作したとき、給湯器からの湯がそのまま水栓の原水吐水口38から吐水される。
湯を使用するケースは例えば鍋で湯を沸すときに予め鍋の中に熱い湯を入れておくといった特殊な用途でしか通常は使用されない。
一方で誤ってこのような湯が吐水されてしまうと使用者が熱湯を浴びる等の問題にも繋がる。
【0051】
本実施形態では、使用者が湯吐水の明確な意図を持ってレバーハンドル16を大きく回転操作しなければならないようにしてあり、これにより意図せず湯が吐水されてしまうといったことを防ぐことができる。
【0052】
上記実施形態では、吐水管32内の浄水側流路36に浄水カートリッジ42を内蔵させているが、図6に示しているように浄水カートリッジ42を吐水管32及び水栓本体14の外部に設置して、これに1次側の浄水用配管30-1,2次側の浄水用配管30-2をそれぞれ接続し、浄水用配管30-1を通じて流出した原水を浄水カートリッジ42に通して浄化した後、2次側の浄水用配管30-2を通じて浄水を浄水吐水口40から吐水させるようになすことも可能である。
【0053】
図7は本発明の更に他の実施形態を示したもので、この例はレバーハンドル16が上記の中立位置、即ち使用者に正対する位置であって水栓本体の正面中央位置に到ったときにクリック感を発生させるクリック機構58を設けた例である。
ここでは図7中部分拡大図(A矢視図)に示すようにレバーハンドル16側、詳しくはレバーハンドル16及びレバー軸26と一体に回転する可動側の回転体90に突起54を、固定側となるカートリッジケース20の側に対応した溝56を設け、突起54を溝56に弾性的に係入させることでクリック感を発生させるようになしている。
尚突起54を固定側に、溝56を可動側に設けることもできるし、或いはクリック機構58を他の様々な形態で、また様々な個所に設けるといったことが可能である。
【0054】
このようなクリック機構58を設けておくことで、レバーハンドル16が本来の中立位置、即ち水栓本体14の正面中央位置に位置したときに、そのことを使用者に知らせることができ、ひいてはレバーハンドル16を回転方向において水吐水位置、即ち使用者に正対した水栓本体正面の中央位置に持ち来すことを誘導することができる。
【0055】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば水栓本体の正面中央位置を示す印、その他の表示を水栓本体表面等に付しておくことも可能であるし、また本発明は上例以外の他の様々な形態のシングルレバー混合水栓に適用することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 シングルレバー混合水栓
16 レバーハンドル
18 弁カートリッジ
22 固定弁体
24 可動弁体
54 突起
56 溝
58 クリック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定弁体と該固定弁体上を摺動する可動弁体とを有し、レバーハンドルの起伏方向の操作により弁開閉を行って吐止水と吐水の流量調節を行い、該起伏方向と直角方向の回転操作により流路の切替えを行って水吐水,湯吐水,混合水吐水及び浄水吐水の切替えを行うシングルレバー混合水栓であって、
前記回転方向において、前記レバーハンドルが使用者に正対した位置が水吐水位置となるようにし、該レバーハンドルが該水吐水位置から一方に回転した位置が混合水吐水位置,該混合水吐水位置よりも更に該一方に多く回転した位置が湯吐水位置となるようにし、また前記水吐水位置から前記一方とは反対方向に回転した位置が浄水吐水位置となるように構成してあることを特徴とするシングルレバー混合水栓。
【請求項2】
請求項1において、レバーハンドルが前記水吐水位置となったときにクリック感を発生させるクリック機構が設けてあることを特徴とするシングルレバー混合水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−196017(P2011−196017A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60533(P2010−60533)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】