説明

シーケンス試験装置及びシーケンス試験方法

【課題】期待値範囲外のログ情報を容易に特定することができるシーケンス試験装置及びシーケンス試験方法を提供する。
【解決手段】シーケンス試験装置40は、基準シナリオを登録する基準シナリオ登録部41と、基準シナリオで定められたシーケンスごとの応答時間に対してしきい値を設定するしきい値設定部43と、ノードA10とノードB20とノードC30との間のログ情報を取得するログ情報取得部45と、基準シナリオに含まれる応答時間に応答時間のしきい値を加えた時間範囲を期待値の範囲とし、ログ情報に含まれる所定のシーケンスの応答時間と期待値の範囲とを比較する比較部47と、比較部47から比較結果のデータを入力し、期待値の範囲内に送信された応答メッセージに関するログ情報と、期待値の範囲外で送信された応答メッセージに関するログ情報とを識別して表示する表示部48と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーケンス試験装置及びシーケンス試験方法に関し、例えば、携帯電話、モバイル端末等の通信端末を所定の通信プロトコルに基づいたシーケンスで試験するシーケンス試験装置及びシーケンス試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の通信端末を新たに開発した場合、この開発した通信端末が実際に使用される環境で正常に動作するか否かを試験する必要がある。しかしながら、この新規に開発された通信端末と既に稼働中の実際の基地局との間で各種の試験用の通信情報を送受信して、この新規に開発された通信端末が正常に動作するか否かを試験することは非常に困難である。
【0003】
そこで、新規に開発された通信端末を、実際の基地局の機能を有する擬似基地局装置に接続して、通信端末と擬似基地局装置との間で各種の通信情報を送受信して、新規に開発された通信端末が正常に動作するか否かの試験を実施する試験装置が知られている。この種の試験装置における機能の1つとして、被試験端末としての通信端末と擬似基地局装置との間で送受信される各種の通信情報のログ情報を取得してトレース情報として表示器に表示するトレース機能がある。このトレース機能を利用して、通信情報の詳細な時系列的な複数のログ情報をトレース情報として表示出力することによって、被試験端末が正常に動作しなかった場合における異常の発生要因の究明が容易になる。
【0004】
一般に、被試験端末に対する試験項目は多岐に亘るので、被試験端末と擬似基地局装置との間で試験用に送受信される通信情報は膨大な数になり、この通信情報のログ情報も膨大な数となる。しかしながら、従来の試験装置では、試験用に送受信される通信情報の膨大なログ情報を時系列的に出力するのみであるので、被試験端末が正常に動作しなかった場合における異常とみなされるログ情報を簡単に特定できないという課題があった。
【0005】
この課題を解決するものとして、例えば、特許文献1に開示された擬似基地局装置が知られている。この擬似基地局装置は、少なくとも一部のログ情報に含まれる抽出情報を指定する抽出情報指定手段と、指定された抽出情報を有するログ情報をトレース情報から抽出するログ情報抽出手段と、表示器に表示されたトレース情報を構成する複数のログ情報のうちログ情報抽出手段で抽出されたログ情報に対してフィルタマーカを付加するフィルタマーカ表示手段と、を備えている。この構成により、従来の擬似基地局装置は、表示器に表示されたトレース情報を構成する複数のログ情報の中から異常のログ情報を容易に特定することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−174173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたものでは、異常のログ情報を容易に特定することができるものの、異常のログ情報とはいえないが、あるメッセージに対する応答時間が予め定められた期待値の範囲外となっていることを示すログ情報(以下「期待値範囲外のログ情報」という。)を容易に特定することはできず、その改善が求められていた。
【0008】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたものであり、期待値範囲外のログ情報を容易に特定することができるシーケンス試験装置及びシーケンス試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係るシーケンス試験装置は、予め定められた通信プロトコルのメッセージを送受信するシーケンスを実行する通信手段(20、30)に対して試験を行うシーケンス試験装置(40)であって、前記通信手段が受信する受信メッセージ及び前記受信メッセージに応答して送信する応答メッセージと、前記通信手段が前記受信メッセージを受信してから前記応答メッセージを送信するまでの応答時間の理想値の情報とを基準シナリオとして登録する基準シナリオ登録手段(41)と、前記応答時間のしきい値を設定するしきい値設定手段(43)と、前記基準シナリオ登録手段によって登録された前記基準シナリオに基づいたメッセージを送受信するシーケンスを前記通信手段に実行させた際の前記応答時間を含むログ情報を取得するログ情報取得手段(45)と、前記基準シナリオ登録手段によって登録された前記応答時間に前記しきい値設定手段によって設定された前記応答時間のしきい値を加えた時間範囲を示す設定応答時間範囲と、前記ログ情報取得手段によって取得された前記ログ情報に含まれる応答時間とを比較する応答時間比較手段(47)と、前記応答時間比較手段の比較結果に基づいて、前記設定応答時間範囲内に送信された応答メッセージに関するログ情報と、前記設定応答時間範囲外で送信された応答メッセージに関するログ情報とを識別して表示する表示手段(48)と、を備えた構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明の請求項1に係るシーケンス試験装置は、応答時間比較手段の比較結果に基づいて、設定応答時間範囲内に送信された応答メッセージに関するログ情報と、設定応答時間範囲外で送信された応答メッセージに関するログ情報とを識別して表示する。したがって、本発明の請求項1に係るシーケンス試験装置は、応答時間のしきい値を予め期待値として定めておくことにより、期待値範囲外のログ情報を容易に特定することができる。
【0011】
本発明の請求項2に係るシーケンス試験方法は、予め定められた通信プロトコルのメッセージを送受信するシーケンスを実行する通信手段に対して試験を行うシーケンス試験方法であって、前記通信手段が受信する受信メッセージ及び前記受信メッセージに応答して送信する応答メッセージと、前記通信手段が前記受信メッセージを受信してから前記応答メッセージを送信するまでの応答時間の理想値の情報とを基準シナリオとして登録する基準シナリオ登録ステップと、前記応答時間のしきい値を設定するしきい値設定ステップと、前記基準シナリオ登録ステップにおいて登録された前記基準シナリオに基づいたメッセージを送受信するシーケンスを前記通信手段に実行させた際の前記応答時間を含むログ情報を取得するログ情報取得ステップと、前記基準シナリオ登録ステップにおいて登録された前記応答時間に前記しきい値設定ステップにおいて設定された前記応答時間のしきい値を加えた時間範囲を示す設定応答時間範囲と、前記ログ情報取得ステップにおいて取得された前記ログ情報に含まれる応答時間とを比較する応答時間比較ステップと、前記応答時間比較ステップにおける比較結果に基づいて、前記設定応答時間範囲内に送信された応答メッセージに関するログ情報と、前記設定応答時間範囲外で送信された応答メッセージに関するログ情報とを識別して表示する表示ステップと、を含む構成を有している。
【0012】
この構成により、本発明の請求項2に係るシーケンス試験方法は、応答時間比較ステップにおける比較結果に基づいて、設定応答時間範囲内に送信された応答メッセージに関するログ情報と、設定応答時間範囲外で送信された応答メッセージに関するログ情報とを識別して表示する。したがって、本発明の請求項2に係るシーケンス試験方法は、応答時間のしきい値を予め期待値として定めておくことにより、期待値範囲外のログ情報を容易に特定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、期待値範囲外のログ情報を容易に特定することができるという効果を有するシーケンス試験装置及びシーケンス試験方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態におけるシーケンス試験システムのブロック構成図である。
【図2】本発明の実施形態における基準シナリオのメッセージ及び期待値例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態における基準シナリオのシーケンスを示す図である。
【図4】本発明の実施形態における基準シナリオに基づいた第1の動作結果例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態における基準シナリオに基づいた第2の動作結果例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態における基準シナリオに基づいた第2の動作結果例の表示例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態における基準シナリオに基づいた第3の動作結果例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態の他の態様におけるシーケンス試験システムのブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明のシーケンス試験装置を、複数のノードを含むシーケンス試験システムに適用した例を挙げて説明する。このシーケンス試験システムは、例えば、携帯電話、モバイル端末等の通信端末を所定の通信プロトコルに基づいたシーケンスで試験する場合、通信端末の位置登録や発信、着信、ハンドオーバ等の呼接続試験を行うことができるものである。本実施形態では、シーケンス試験システムが、有線の通信ネットワークに接続された複数のノードに対して通信プロトコルに基づいたシーケンスで呼接続試験を行うものとして説明する。
【0016】
まず、本実施形態におけるシーケンス試験システムの構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態におけるシーケンス試験システム100は、ノードA10、ノードB20、ノードC30を備えている。なお、ノードA10、ノードB20、ノードC30は、図示を省略したが、各ノード全体の動作を制御するCPU及びこのCPUを機能させるためのプログラムを記憶するROM、RAM等で構成された制御回路を備えている。
【0018】
ノードA10とノードB20との間には、通信ケーブル11が接続されている。ノードB20とノードC30との間には、両者間の通信信号を取り出すタップ60が設けてある。ノードB20とタップ60との間には通信ケーブル12、タップ60とノードC30との間には通信ケーブル13が接続されている。ここで、ノードB20及びノードC30は、本発明に係る通信手段を構成する。
【0019】
ノードA10は、シーケンス試験装置40、通信装置50を備えている。シーケンス試験装置40は、基準シナリオ登録部41、基準シナリオ記憶部42、しきい値設定部43、しきい値記憶部44、ログ情報取得部45、ログ情報記憶部46、比較部47、表示部48を備えている。このシーケンス試験装置40は、ノードB20及びノードC30に対して所定の通信プロトコルに基づいたシーケンス試験を行うものである。
【0020】
基準シナリオ登録部41は、通信試験手順、通信条件、あるノードが所定のシーケンスにおいて受信メッセージを受信してから応答メッセージを送信するまでの応答時間等の情報であってシーケンス試験の基準となるもの(以下「基準シナリオ」という。)をユーザが登録するため操作するものである。この基準シナリオ登録部41は、例えば、基準シナリオを作成して登録するための登録画面を表示するディスプレイや、キーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、これらを制御する制御回路等で構成される。なお、基準シナリオ登録部41は、本発明に係る基準シナリオ登録手段を構成する。
【0021】
基準シナリオ記憶部42は、例えばハードディスクドライブで構成され、ユーザが登録した基準シナリオを記憶するようになっている。
【0022】
しきい値設定部43は、基準シナリオで定められたシーケンスごとの応答時間に対して、実際の応答時間が期待値の範囲に入っているか否かを判断するためのしきい値を設定するためユーザが操作するものである。また、しきい値設定部43は、例えば、しきい値を設定するための設定画面を表示するディスプレイや、キーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、これらを制御する制御回路等で構成される。前述の基準シナリオ登録部41で登録された応答時間と、このしきい値設定部43で設定されたしきい値とで期待値の範囲が定まる。期待値の範囲を定めるためのデータは、試験対象であるノードB20及びノードC30の仕様内容やシミュレーションの結果等に基づいて予め準備されている。なお、しきい値設定部43は、本発明に係るしきい値設定手段を構成する。
【0023】
しきい値記憶部44は、例えばハードディスクドライブで構成され、しきい値設定部43によって設定されたしきい値のデータを記憶するようになっている。
【0024】
ここで、本実施形態において、基準シナリオ登録部41で登録される基準シナリオと、しきい値設定部43で設定されるしきい値について、図2及び図3を用いて具体的に説明する。図2(a)は、基準シナリオの例である。シナリオとは、試験手順や試験のための通信シーケンスが記述されたもので、図2(a)の(イ)の部分が該当する。基準シナリオは、基準となる時間情報である基準時間として、経過時間又は応答時間をシナリオに付加したものであり、図2(a)の(ロ)の部分が経過時間又は応答時間である。この経過時間又は応答時間は、シーケンス試験システム100が理想的に動作した場合の理想値、又は基準シナリオ作成者がシーケンス試験システム100に期待する値である。経過時間については、最初のメッセージの送信時刻を基準として、各メッセージが送信されるべき時刻が、メッセージごとに経過時間として記述されている。応答時間については、あるメッセージが送信されてから次のメッセージが送信されるまでの時間が、メッセージごとに応答時間として記述されている。基準シナリオには、この経過時間か応答時間のいずれかが記述されている。図2(b)は、基準シナリオと前述のしきい値とを結合した概念図であり、基準シナリオの経過時間又は応答時間としきい値とから導かれる期待値が、各メッセージに対して示されている。
【0025】
図2及び図3に示すように、発明を分かりやすく説明するため、本実施形態において、ノード間で送受信されるメッセージ(以下「MSG」と記す。)の数は4つとする。具体的には、ノードA10からノードB20に送信されるMSG1は"Update Location Request"、このMSG1に応答してノードB20からノードC30に送信されるMSG2は"Authentication Information"である。また、このMSG2に応答してノードC30からノードB20に送信されるMSG3は"Authentication Information Acknowledge"、このMSG3に応答してノードB20からノードA10に送信されるMSG4は"Authentication Information Request"である。なお、図3において、"Req"は"Request"を、"Info"は"Information"を、"Ack"は"Acknowledge"をそれぞれ表している。
【0026】
また、図2(b)には2つの期待値が例示されている。期待値の例1は、ノードA10がMSG1をノードB20に送信する時刻を"0"として基準値とし、ノードB20及びノードC30がメッセージを送信する時刻としきい値とを用いて表したものである。具体的には、ノードB20がMSG2をノードC30に送信する時刻を0.100秒±0.05秒、ノードC30がMSG3をノードB20に送信する時刻を0.400秒±0.05秒、ノードB20がMSG4をノードA10に送信する時刻を0.500秒±0.05秒としたものである。なお、図3に示したしきい値5〜7は、この期待値の例1を用いて表したものである。
【0027】
一方、期待値の例2は、各ノード間で要する時間としきい値とを用いて表したものである。具体的には、例えば、ノードB20がMSG1を受信してからMSG2をノードC30に送信するまでの時間を0.100秒±0.05秒としている。
【0028】
なお、説明を簡単にするため、図2(b)に示した期待値の例1及び例2において、送信時刻は受信時刻と等しいものとする。ここで、この基準シナリオに基づく直接的な動作は、通信装置50がMSG1を送信することのみである。前述の通り、試験対象であるノードB20、ノードC30は、通信プロトコルに従って動作する。したがって、基準シナリオに記載されたMSG2〜MSG4は、通信プロトコルに従って当然送信されるべきメッセージとして記載されている。
【0029】
図1に戻り、ログ情報取得部45は、通信装置50を介して、ノードA10とノードB20との間のログ情報を取得するようになっている。このログ情報は、通信装置50又はノードB20が送信時に作成したタイムスタンプ情報を含む。また、ログ情報取得部45は、タップ60を介して、ノードB20とノードC30との間のログ情報を取得するようになっている。このログ情報は、ノードB20又はノードC30が送信時に作成したタイムスタンプ情報を含む。なお、ログ情報取得部45は、本発明に係るログ情報取得手段を構成する。
【0030】
ログ情報記憶部46は、例えばハードディスクドライブで構成され、ログ情報取得部45が取得したログ情報を記憶するようになっている。
【0031】
比較部47は、基準シナリオ記憶部42から基準シナリオを、しきい値記憶部44から応答時間のしきい値の情報を、それぞれ、読み出すようになっている。また、比較部47は、ログ情報記憶部46からログ情報を読み出すようになっている。そして、比較部47は、基準シナリオに含まれる応答時間に応答時間のしきい値を加えた時間範囲を期待値の範囲とし、ログ情報に含まれる所定のシーケンスの応答時間と期待値の範囲とを比較するようになっている。さらに、比較部47は、基準シナリオで設定されたメッセージと、ログ情報記憶部46に記憶されたログ情報に含まれるメッセージとを比較するようになっている。そして、比較部47は、比較結果のデータを表示部48に出力するようになっている。なお、比較部47は、本発明に係る応答時間比較手段を構成する。
【0032】
表示部48は、表示処理回路やディスプレイを備え、比較部47を介して、ログ情報記憶部46が記憶したログ情報を入力して表示するようになっている。また、表示部48は、比較部47から比較結果のデータを入力し、期待値の範囲に入っているログ情報と、期待値の範囲に入っていないログ情報とを識別して表示するようになっている。なお、表示部48は、本発明に係る表示手段を構成する。
【0033】
通信装置50は、基準シナリオ記憶部42が記憶した基準シナリオに基づいてノードB20と通信するようになっている。また、通信装置50は、ノードA10とノードB20との間のログ情報を取得してログ情報取得部45に出力するようになっている。
【0034】
次に、本実施形態におけるシーケンス試験システム100の動作について説明する。
【0035】
基準シナリオ登録部41をユーザが操作することにより、基準シナリオが登録される(基準シナリオ登録ステップ)。基準シナリオ登録部41によって登録された基準シナリオは、基準シナリオ記憶部42によって記憶される。
【0036】
また、しきい値設定部43をユーザが操作することにより、基準シナリオで定められたシーケンスごとの応答時間に対して、実際の応答時間が期待値の範囲に入っているか否かを判断するためのしきい値が設定される(しきい値設定ステップ)。しきい値設定部43によって設定されたしきい値は、しきい値記憶部44によって記憶される。
【0037】
通信装置50を備えたノードA10、ノードB20及びノードC30は、それぞれ、基準シナリオ記憶部42によって記憶された基準シナリオに基づいてメッセージの送受信を行う。このメッセージの送受信中において、通信装置50はノードA10とノードB20との間のログ情報を取得してログ情報取得部45に出力し、タップ60はノードB20とノードC30との間のログ情報を取得してログ情報取得部45に出力する(ログ情報取得ステップ)。
【0038】
ログ情報記憶部46は、ログ情報取得部45が取得したログ情報を記憶する。
【0039】
比較部47は、基準シナリオ記憶部42から基準シナリオを、しきい値記憶部44から応答時間のしきい値の情報を、それぞれ、読み出す。また、比較部47は、ログ情報記憶部46からログ情報を読み出す。そして、比較部47は、基準シナリオに含まれる応答時間に応答時間のしきい値を加えた時間範囲を期待値の範囲とし、ログ情報に含まれる所定のシーケンスの応答時間と期待値の範囲とを比較する(応答時間比較ステップ)。さらに、比較部47は、基準シナリオで設定されたメッセージと、ログ情報記憶部46に記憶されたログ情報に含まれるメッセージとを比較する。そして、比較部47は、比較結果のデータを表示部48に出力する。
【0040】
表示部48は、比較部47を介して、ログ情報記憶部46が記憶したログ情報を入力して表示する。また、表示部48は、比較部47から比較結果のデータを入力し、期待値の範囲に入っているログ情報と、期待値の範囲に入っていないログ情報とを識別して表示する(表示ステップ)。
【0041】
以下、基準シナリオ登録部41によって図2及び図3に示した基準シナリオが登録されたものとし、ノードA10、ノードB20及びノードC30の動作結果を3つ例示して図4〜図7に基づき説明する。
(第1の動作結果例)
第1の動作結果例を図4に示す。図4に示すように、ノードA10は、送信時刻"0.000"において、"Update Location Request"というMSG1をノードB20に送信する。
【0042】
続いて、ノードB20は、受信したMSG1に応答して"Authentication Information"というMSG2をノードC30に送信する。このMSG2を送信した送信時刻は、"0.105"であり、図2(b)及び図3に示した送信時刻の期待値"0.100±0.05"の範囲内である。
【0043】
続いて、ノードC30は、受信したMSG2に応答して"Authentication Information Acknowledge"というMSG3をノードB20に送信する。このMSG3を送信した送信時刻は、"0.440"であり、図2(b)及び図3に示した送信時刻の期待値"0.400±0.05"の範囲内である。
【0044】
続いて、ノードB20は、受信したMSG3に応答して"Authentication Information Request"というMSG4をノードA10に送信する。このMSG4を送信した送信時刻は、"0.460"であり、図2(b)及び図3に示した送信時刻の期待値"0.500±0.05"の範囲内である。
【0045】
以上のように、第1の動作結果例では、各ノードの応答時間は期待値の範囲内にあるので、表示部48は、MSG1からMSG4までに関するログ情報を特に識別することなくディスプレイに表示する。
(第2の動作結果例)
第2の動作結果例を図5に示す。図5に示すように、この例では、第1の動作結果例(図4参照)と比べて、MSG4の送信時刻が異なっている。
【0046】
すなわち、ノードB20は、受信したMSG3に応答してMSG4を送信時刻"0.560"で送信している。この送信時刻は、図2(b)及び図3に示した送信時刻の期待値"0.500±0.05"の範囲外である。
【0047】
したがって、第2の動作結果例では、表示部48は、MSG4に関するログ情報をMSG1〜3に関するログ情報と識別してディスプレイに表示する。具体的には、表示部48は、例えば図6に示すように表示する。図6は、表示部48が、第2の動作結果例での表示を行った状態を示している。図6に示すように、表示部48は、"Authentication Information Request"というMSG4に関するログ情報のみを例えば色付けして示し、MSG4に関するログ情報とMSG1〜3に関するログ情報とをユーザが識別しやすいよう表示している。この表示により、MSG4は、ノードB20がノードC30に向けて送信したメッセージであることと、その送信時刻が"0.560"であって期待値の範囲外であることをユーザは容易に把握することができる。なお、図6において、例えば、送信時刻欄に隣接させて、期待値の範囲も表示する構成としてもよい。
(第3の動作結果例)
第3の動作結果例を図7に示す。図7に示すように、この例では、第1の動作結果例(図4参照)におけるMSG4がMSG8となっている。
【0048】
すなわち、ノードB20は、受信したMSG3に応答して、"Update Location Request"というMSG8を送信時刻"0.460"にノードC30宛に送信している。この送信時刻は、図2(b)及び図3に示した送信時刻の期待値"0.500±0.05"の範囲内ではあるが、メッセージの宛先及び内容が基準シナリオとは異なる。つまり、基準シナリオに記載されたシーケンスが正しいとすれば、基準シナリオと異なる動作を行ったノードB20に不具合が生じた疑いがある。
【0049】
したがって、第3の動作結果例では、表示部48は、MSG4に関するログ情報をMSG1〜3に関するログ情報と識別してディスプレイに表示する。
【0050】
以上のように、本実施形態におけるシーケンス試験システム100は、比較部47の比較結果に基づいて、期待値の範囲内に送信された応答メッセージに関するログ情報と、期待値の範囲外で送信された応答メッセージに関するログ情報とを識別して表示する。したがって、シーケンス試験システム100は、期待値範囲外のログ情報を容易に特定することができる。
【0051】
(他の態様1)
本発明は前述の実施形態に限定されず様々な変形態様が可能である。例えば、前述の実施形態では、有線の通信ネットワークに接続された複数のノードに対してシーケンス試験を行う構成としたが、これに限定されない。例えば、図8に示すような構成でシーケンス試験を行うこともできる。
【0052】
図8に示したシーケンス試験システム200は、ノードA70、ノードB80を備えている。ノードA70は、シーケンス試験装置40、通信装置90を備えている。なお、シーケンス試験装置40の構成説明は既に述べたので省略する。また、ノードB80は、本発明に係る通信手段を構成する。
【0053】
ノードB80と通信装置90とは、互いにRF信号で無線通信する構成を有し、それぞれ、アンテナ81及び91を備えている。なお、アンテナ81、91の代わりに、ノードB80と通信装置90との間を同軸ケーブルで接続し、RF信号をやりとりする構成であってもよい。この構成例の場合、具体的には、通信装置90は、移動体通信システムの基地局を模擬する擬似基地局である。また、試験対象であるノードB80は、移動体通信システムの移動体通信端末であり、例えば、携帯電話やモバイル端末である。
【0054】
前述の構成により、シーケンス試験システム200は、ノードB80に対し、無線通信の通信プロトコルに基づいたシーケンス試験を行って、期待値の範囲内に送信された応答メッセージに関するログ情報と、期待値の範囲外で送信された応答メッセージに関するログ情報とを識別して表示することができる。したがって、シーケンス試験システム200は、期待値範囲外のログ情報を容易に特定することができる。
【0055】
(他の態様2)
また、前述の実施形態では、本発明に係る通信手段としてノードB20及びノードC30を例に挙げたが、本発明はこれに限定されず、所定のシーケンスで動作するものに適用することができる。例えば、本発明は、3GPP(Third Generation Partnership Project)の規格に基づいた多階層のプロトコルスタックの各階層(物理層、媒体アクセス制御層、無線リンク制御層等)を通信手段として、各層間の通信においても適用することができ、前述の実施形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明に係るシーケンス試験装置及びシーケンス試験方法は、期待値範囲外のログ情報を容易に特定することができるという効果を有し、携帯電話、モバイル端末等の通信端末を所定の通信プロトコルに基づいたシーケンスで試験するシーケンス試験装置及びシーケンス試験方法等として有用である。
【符号の説明】
【0057】
10、70 ノードA
11、12、13 通信ケーブル
20、80 ノードB(通信手段)
30 ノードC(通信手段)
40 シーケンス試験装置
41 基準シナリオ登録部(基準シナリオ登録手段)
42 基準シナリオ記憶部
43 しきい値設定部(しきい値設定手段)
44 しきい値記憶部
45 ログ情報取得部(ログ情報取得手段)
46 ログ情報記憶部
47 比較部(応答時間比較手段)
48 表示部(表示手段)
50、90 通信装置
60 タップ
81、91 アンテナ
100、200 シーケンス試験システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた通信プロトコルのメッセージを送受信するシーケンスを実行する通信手段(20、30)に対して試験を行うシーケンス試験装置(40)であって、
前記通信手段が受信する受信メッセージ及び前記受信メッセージに応答して送信する応答メッセージと、前記通信手段が前記受信メッセージを受信してから前記応答メッセージを送信するまでの応答時間の理想値の情報とを基準シナリオとして登録する基準シナリオ登録手段(41)と、
前記応答時間のしきい値を設定するしきい値設定手段(43)と、
前記基準シナリオ登録手段によって登録された前記基準シナリオに基づいたメッセージを送受信するシーケンスを前記通信手段に実行させた際の前記応答時間を含むログ情報を取得するログ情報取得手段(45)と、
前記基準シナリオ登録手段によって登録された前記応答時間に前記しきい値設定手段によって設定された前記応答時間のしきい値を加えた時間範囲を示す設定応答時間範囲と、前記ログ情報取得手段によって取得された前記ログ情報に含まれる応答時間とを比較する応答時間比較手段(47)と、
前記応答時間比較手段の比較結果に基づいて、前記設定応答時間範囲内に送信された応答メッセージに関するログ情報と、前記設定応答時間範囲外で送信された応答メッセージに関するログ情報とを識別して表示する表示手段(48)と、を備えたことを特徴とするシーケンス試験装置。
【請求項2】
予め定められた通信プロトコルのメッセージを送受信するシーケンスを実行する通信手段に対して試験を行うシーケンス試験方法であって、
前記通信手段が受信する受信メッセージ及び前記受信メッセージに応答して送信する応答メッセージと、前記通信手段が前記受信メッセージを受信してから前記応答メッセージを送信するまでの応答時間の理想値の情報とを基準シナリオとして登録する基準シナリオ登録ステップと、
前記応答時間のしきい値を設定するしきい値設定ステップと、
前記基準シナリオ登録ステップにおいて登録された前記基準シナリオに基づいたメッセージを送受信するシーケンスを前記通信手段に実行させた際の前記応答時間を含むログ情報を取得するログ情報取得ステップと、
前記基準シナリオ登録ステップにおいて登録された前記応答時間に前記しきい値設定ステップにおいて設定された前記応答時間のしきい値を加えた時間範囲を示す設定応答時間範囲と、前記ログ情報取得ステップにおいて取得された前記ログ情報に含まれる応答時間とを比較する応答時間比較ステップと、
前記応答時間比較ステップにおける比較結果に基づいて、前記設定応答時間範囲内に送信された応答メッセージに関するログ情報と、前記設定応答時間範囲外で送信された応答メッセージに関するログ情報とを識別して表示する表示ステップと、を含むことを特徴とするシーケンス試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−250104(P2011−250104A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120747(P2010−120747)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】