説明

シートの薄膜形成装置および薄膜付きシートの製造方法

【課題】電気絶縁性シート、特にプラスチックフィルムの薄膜形成工程で発生する、熱負けを軽微にし、かつフィルムのシワやブロッキングの原因となる薄膜未形成面に残る帯電を軽微にする薄膜形成装置ならびに薄膜付きシートの製造方法を提供することである。
【解決手段】回転する円筒状シート案内面の周面に沿って搬送する電気絶縁性シート上に、微粒子発生源から飛来させた微粒子を堆積させ、薄膜を形成する薄膜付きシートの製造方法において、前記シート案内面上の前記シート薄膜形成面に、プラズマ発生源から供給される荷電粒子のうち、いずれかの極性の荷電粒子を主に誘導することにより前記シートを帯電させた後、前記シートに薄膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの薄膜形成装置および薄膜付きシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチックフィルムに例示される電気絶縁性シート上に薄膜を形成することにより、フィルムコンデンサや磁気記録テープ、包装用フィルム等の素材となる金属蒸着フィルムが製造されている。この製造には、例えば真空槽内で巻状物のプラスチックフィルムを巻き出し、薄膜形成した後に再び巻き取る巻取式蒸着装置(例えば非特許文献1)が用いられる。
【0003】
その概要を図10、図11を用いて説明する。図10はプラスチックフィルムなどのシート上に連続的に薄膜を形成する薄膜形成装置の構成要素を示した図である。なお、この図10は主要部のみを示し、構造物を収納する減圧室や中間ロールは省略してある。また図11は、図10の右手から見た装置の概要構成図である。図10において、長尺の電気絶縁性シート1は、原反ロール体2から繰り出され、シートの走行方向に沿って回転する円筒状シート案内面3に中間ローラ4、5によって所要の巻き付け角で巻き付いた状態で搬送され、巻取ロール体6として巻き取られる。電気絶縁性シート1がシート案内面3上に搬送される際に、誘導加熱坩堝7の中にある蒸着材料8より蒸発した蒸気10がシート1上に付着し、図10に示すようにシート1上に薄膜13が形成される。なお蒸発には、例えば誘導加熱や抵抗加熱の原理を利用して蒸着材料を加熱する方式や、電子ビームを蒸着材料に照射して蒸着材料を加熱する方式がある。またシート案内面3は主にシート1をシワなく搬送する役目と、シート1が受けた熱負荷を効率よく逃がす役目を持つ。このため例えば公知の熱媒体の循環による温度制御により、所要の温度に制御される。また特に円筒に限らず、ベルト体の上にシートを搬送する方式も見られる。
【0004】
ところが、シート案内面3上のシート1が受ける熱負荷によりシート1の温度が過度に上昇した部位が大きい場合や、シート1とシート案内面3が接触していない部分がある場合には、シート1が熱変形(熱負け)を起こしてしまうことがある。特にシート案内面3上でシート1にしわが発生した場合、そのシワ発生部分がシート案内面3と接触しなくなり、そのシワの形状の熱変形(熱負け)を起こす場合がある。なおシート1が受ける主な熱負荷とは、この場合誘導加熱坩堝7等から受ける輻射熱や、蒸着された薄膜13から受ける凝縮熱が挙げられる。
【0005】
上記のような熱変形を起こさないようにするために、導電性の薄膜を形成する場合には、蒸着時にシート1の受けた熱を効率よくシート案内面3に逃がすべく、シート1上に形成した薄膜13に接触した中間ローラ5を介して、直流電源14により薄膜13とシート案内面3の間に電位差を与え、薄膜13とシート案内面3との間に働く静電気力でシート1をシート案内面3に強く貼り付かせる技術(例えば特許文献1)が用いられる。このように薄膜13とシート案内面3との間に電位差を設ける場合、図11に示すように、マスク部材11の開口部12の幅は、薄膜13に電位をかけた場合でも、シート案内面3にまで蒸気10が付着して薄膜13とシート案内面3が電気的に短絡しないように、通常、少なくともシート幅よりも小さく設定する。
【0006】
この例ではシート案内面3と薄膜13との間に直流電源14を設け、両者の間に電位差を与えているが、いずれかを接地してもう一方にのみ電圧を印加する場合もある。またこの例ではシート案内面3に対し薄膜13の方が低い電位としているが、逆の場合もある。また図13に、図10の例に示すように薄膜13とシート案内面3との間に電位差を与えた場合の電荷の挙動を示している。薄膜13に中間ローラ5を介して、直流電源14の負極性側を、シート案内面3に直流電源14の正極性側を接続すると、シート案内面3上において、電気絶縁性のシート1を挟んでシート案内面側に正極性の電荷が、薄膜13に負極性の電荷が誘導される。これらの正と負の電荷同士で静電気力が働き、シート1とシート案内面3が密着する。なおこの静電気力は、シート1上で薄膜が形成され始める薄膜形成開始点31から剥離点32までの間で作用し、巻付点33から薄膜形成開始点31までの間や剥離点より下流では、電位差が付与されている薄膜13とシート案内面3との距離が遠くなるため作用しない。
【0007】
しかしながら、このようにシート案内面と薄膜との間に電圧を印加する方法は、薄膜が金属膜のように導電性の膜を形成する場合には有効であるが、半導体や電気絶縁物で形成される薄膜には、薄膜に充分な電荷が誘導されないため、薄膜とシート案内面との間の電位差が生じず、シート案内面にシートを強く貼りつかせることは出来ない。
【0008】
一方、薄膜が金属膜で形成される場合だけでなく半導体や電気絶縁物で形成される場合であってもシートをシート案内面に貼り付けさせることができる方法として、薄膜の形成の前にシートを帯電させ、その帯電により働く静電気力でシートをシート案内面に強く貼り付かせる技術(例えば特許文献2,3)が知られている。この方法について図12に例示して説明する。図12はプラスチックフィルムなどのシート上に連続的に薄膜を形成する薄膜形成装置の構成要素を示した図である。なお、図10と同一または同等の機能を有する構成要素には同一番号を付け、詳細な説明は省略する。図10に記載した例との大きな相違点は、薄膜を形成する前のシート1の表面に、荷電粒子源22により荷電粒子23を照射し、シート1の表面を帯電させている点である。具体的な荷電粒子源22には電子ビーム照射装置やイオンビーム照射装置が適用されている。このようにシート1の表面を帯電させることにより、シート1とシート案内面3との間で静電気力が働き、両者が強く貼りつき、薄膜形成で受けた熱をシート案内面3に逃がす効果がある。また、薄膜が電気導電性である場合や電気絶縁性である場合においても、シート1とシート案内面3との間で静電気力が働き、薄膜形成で受けた熱をシート案内面3に逃がす効果があるとされている。
【0009】
また図14に、図12の例に示すようにシート案内面3上で、薄膜が形成される前に荷電粒子23を照射してシート1の表面を帯電させる方法の場合の電荷の挙動を示している。図14の例では、シート案内面3の巻付点33から薄膜形成開始点31の間で、荷電粒子源22より負極性の荷電粒子23をシート1に向けて照射している。このときシート1の表面および内部には負の荷電粒子が留まりシート1が帯電する。このときシート案内面3の表面には、シート1の負の荷電粒子を補うように正の荷電粒子が誘導される。これらの正と負の電荷同士で静電気力が働き、シート1とシート案内面3が密着する。なお、発明者らの知見によれば、薄膜形成開始点31から剥離点32の間においては、シート1のごく表面の荷電粒子は蒸発粒子がシート1の表面に到来した際に、薄膜13内の存在する自由電子(特に導電性薄膜の場合)や、蒸発粒子群の中に僅かに存在する電子やイオンなどの荷電粒子が帯電電荷を補うように薄膜13が形成され、見かけ上帯電が消された状態になるが、シート1の内部やシート案内面との境界近くに荷電粒子23が入り込んでいるため、その荷電粒子23とシート案内面3に誘導される荷電粒子23との間で静電気力が働き、シート1とシート案内面3が密着している状態が継続している。
【0010】
しかしながら、本発明者らの知見によると、前述の荷電粒子源である電子ビーム照射装置やイオンビーム照射装置は、一般的に数[kV]から数十[kV]の加速電圧を印加して電子またはイオンの荷電粒子をシート薄膜形成面に向けて照射するので、シートの内部にまで荷電粒子が打ち込まれ、薄膜形成後もこの荷電粒子がシート内に残り、シートが強く帯電したまま巻き取られるようになっていた。このようにシートが帯電したままの場合、後工程でシートと搬送ローラ等が静電気力により貼りつきシワを形成したり、巻き取られた状態で、シートの薄膜形成面と未形成面同士が静電気力により密着し、巻き戻した際に薄膜が剥ぎ取られる、いわゆるブロッキングを起こす場合があった。なお、減圧雰囲気下にある薄膜形成装置内で、プラズマ放電を応用したシートの除電方法(例えば特許文献6)が知られている。これは、プラズマにより発生した電子やイオンなどの荷電粒子が、シートに存在する負および正の帯電電荷により形成される電界に誘導され、それぞれの帯電電荷に逆極性の荷電粒子がシート表面に到来することにより帯電が中和する原理による。しかしながら、シート内部に打ち込まれた帯電電荷を除電しようとしても、プラズマからの荷電粒子がシート表面までは到来するが内部までは到達しないため、帯電を中和することはできず、シワやブロッキングを充分抑制できない場合がある。また、導電性や半導電性の薄膜を形成した後の除電では、シート内部より形成される電界に薄膜内の自由電子が誘導され、シートの外部に電界が形成されないため、プラズマの荷電粒子が誘導されない、つまり除電されない場合もある。このように、従来の除電方法ではシート内部に打ち込まれた帯電電荷を除電するには不充分な場合があった。また電子ビーム照射装置を使用する場合は、シートの幅方向に電子を照射するため、シートの幅方向に電子線を数十から数百[Hz]で走査する方式が一般的であるが、本発明者らの知見によれば、シートの速度が特に500[m/分]以上で走行させながら帯電処理する場合は、走査周波数による帯電ムラが、シートの走行方向に10[cm]以上の無視できない間隔で発生し、熱負けのムラを生じさせる場合があった。また、本発明者らの知見によれば、特許文献7には電子ビーム照射装置の加速電圧200[V]で帯電させる例が記載されているが、上記のように電子線を走査する場合は、シートと電子ビーム照射装置との距離を数百[mm]遠ざけることになり、その場合は加速電圧200[V]では電子がシートに十分到達せず、特に50[m/分]以上の高速化でシートを搬送する場合は、帯電が不充分となる場合がある。また電子ビーム照射装置をシートに近づけることや、複数の電子ビーム照射装置をシートの幅方向に並べることで帯電量は増加できるが、電子ビーム照射装置の配置による帯電ムラが生じ、熱負けのムラを生じさせる場合がある。さらに電子ビーム照射装置やイオンビーム照射装置は、いずれかの極性の荷電粒子を主に放射するため、減圧雰囲気内で荷電粒子が拡散し、帯電処理部以外でシートや減圧室内の構造物を帯電させる不具合が生じることもある。
【0011】
また、シート案内面より上流側にあるシートにおいて、薄膜の形成される面とは反対の面の側を帯電させる技術(例えば特許文献4)や、シートの両面にそれぞれ逆極性の帯電を付与する技術(例えば特許文献5)が知られている。これらの技術は、薄膜形成される面とは反対の面が帯電しているため、特にシートがシート案内面上で薄膜が形成される際に、その帯電により働く静電気力でシートをシート案内面に強く貼り付かせるのに有効である。しかしながらこれらの方法においても、薄膜形成後は強い帯電が薄膜形成される面とは反対の面に残っているため、シート案内面より下流でのシート搬送時や巻き取り時にシワが発生したり、ブロッキング等の後加工での問題を起こす場合があった。
【特許文献1】特開昭59−147023号公報
【特許文献2】特開平2−247383号公報
【特許文献3】特開平6−158319号公報
【特許文献4】特開昭63−219570号公報
【特許文献5】特開2004−43569号公報
【特許文献6】特開平8−176822号公報
【特許文献7】特開平2−239428号公報
【非特許文献1】伊保内賢他著、「ポリマーフィルムと機能性膜」、技報堂出版、1991年4月発行、p198〜203
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上説明したように従来技術では、特に電気絶縁性の薄膜を形成する場合に、シート案内面にシートを貼りつかせ、かつ薄膜形成後のシートに帯電を残さず薄膜を形成することが困難であった。そこで本発明の目的は、上記のような従来技術の問題点に鑑み、特に電気絶縁性の薄膜を形成する場合においてシートに帯電を残さず、かつシートに熱変形を発生しにくい薄膜形成装置および薄膜付きシートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明によれば、減圧雰囲気下において、シート案内面に接触しながら搬送方向に搬送されている電気絶縁性シート上に、微粒子発生源から飛来させた微粒子を堆積させ、薄膜を形成する薄膜付きシートの製造方法であって、前記シート案内面上のシート薄膜形成面に、プラズマ発生源から供給される荷電粒子のうちいずれかの極性の荷電粒子を、前記プラズマ発生源と前記シート案内面との間に10[V]以上かつ1000[V]以下の電位差を付与し誘導することにより、前記シート薄膜形成面を帯電させた後、前記シート案内面上の前記シート薄膜形成面に前記薄膜を形成することを特徴とする薄膜付きシートの製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の別の形態によれば、減圧雰囲気下において、シート案内面に接触しながら搬送方向に搬送されている電気絶縁性シート上に、微粒子発生源から飛来させた微粒子を堆積させ、薄膜を形成する薄膜付きシートの製造方法であって、前記シート案内面上のシート薄膜形成面に、プラズマ発生源から供給される荷電粒子のうちいずれかの極性の荷電粒子を、前記シート案内面に対向配置した電極との間に10[V]以上かつ1000[V]以下の電位差を付与し誘導することにより、前記シート薄膜形成面を帯電させた後、前記シート案内面上の前記シート薄膜形成面に前記薄膜を形成することを特徴とする薄膜付きシートの製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記電極として、シート表面非接触式のものを用いる薄膜付きシートの製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記電極として、シート表面接触式のものを用いる薄膜付きシートの製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記シート案内面の電位が前記プラズマ発生源の電位または前記電極の電位よりも高くなるよう前記電位差を付与し、シートの薄膜形成面に負極性の荷電粒子を誘導する薄膜付きシートの製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記シートの厚みは1[μm]以上100[μm]以下であって、シートの厚み1[μm]あたりの前記電位差は10[V/μm]以上かつ100[V/μm]以下である薄膜付きシートの製造方法が提供される。
【0019】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記シート薄膜形成面に形成された前記薄膜の表面抵抗は10[Ω/□]以上かつ1014[Ω/□]以下である薄膜付きシートの製造方法が提供される。
【0020】
また、本発明の別の形態によれば、減圧室と、該減圧室内においてシートと接触しながら前記シートを搬送するシート案内面を有し前記シート案内面の運動に伴って前記シートを搬送するシート搬送手段と、前記シート案内面上の前記シートに向かって微粒子を飛散させて前記シート上に薄膜を形成する微粒子発生源と、前記シート案内面上の前記シートを帯電させる帯電手段とを備えるシートの薄膜形成装置であって、前記帯電手段は、筐体の内部でプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、前記筐体からプラズマで発生した荷電粒子を前記筐体の外部に放出するための放出口と、前記プラズマ発生手段と前記シート案内面との間に10[V]以上かつ1000[V]以下の電位差を付与できる電位差付与手段とで構成され、かつ前記放出口と前記シート案内面が対向して配置してあることを特徴とするシートの薄膜形成装置が提供される。
【0021】
また、本発明の別の形態によれば、減圧室と、該減圧室内においてシートと接触しながら前記シートを搬送するシート案内面を有し前記シート案内面の運動に伴って前記シートを搬送するシート搬送手段と、前記シート案内面上の前記シートに向かって微粒子を飛散させて前記シート上に薄膜を形成する微粒子発生源と、前記シート案内面上の前記シートを帯電させる帯電手段とを備えるシートの薄膜形成装置であって、前記帯電手段は、筐体の内部でプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、前記筐体からプラズマで発生した荷電粒子を前記筐体の外部に放出するための放出口と、前記シート案内面との間に10[V]以上かつ1000[V]以下の電位差を付与する電位差付与電極とを有することを特徴とするシートの薄膜形成装置が提供される。
【0022】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記電位差付与電極が前記シート表面非接触式であるシートの薄膜形成装置が提供される。
【0023】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記電位差付与電極が前記シート表面接触式であるシートの薄膜形成装置が提供される。
【0024】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記プラズマ発生手段は、交流電圧でプラズマを励起するものであるシートの薄膜形成装置が提供される。
【0025】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記放出口が前記筐体の表面積に対して占める割合は、0.1[%]以上かつ3[%]以下であるシートの薄膜形成装置が提供される。
【0026】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記シート案内面と前記放出口との距離は、1[mm]以上かつ100[mm]以下であるシートの薄膜形成装置が提供される。
【0027】
本発明において「減圧雰囲気下」とは、本発明が適用される薄膜形成方法である真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法が好ましく適用される圧力である、1,000[Pa]以下の圧力の環境のことをいう。
【0028】
本発明が好ましく適用される電気絶縁性シートとして、代表的なものには、プラスチックフィルムや紙等のシートや枚葉体がある。特に電気絶縁性の高いプラスチックフィルムが本発明を適用するには好適である。プラスチックフィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類や、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、アラミド、ナイロンなどの高分子プラスチックフィルムが例示できる。また、プラスチックフィルムは単層でもよく、また2層以上の積層体フィルムでもよい。
【0029】
本発明の薄膜形成方法としては、基材の電気絶縁性シートに与える熱負荷の大きい、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法が挙げられる。中でも特に真空蒸着法は、成膜速度が数百[nm/s]と高く、その分シート搬送速度も数百[m/分]と速いため、シートに与える熱負荷やシートの冷却が難しいことなどから、本発明の対象としては好適である。
【0030】
本発明において「微粒子」とは、前述の薄膜形成方法においてシート上に薄膜を形成する際にシート上に飛来し付着する薄膜材料をいう。例えば真空蒸着法においては、微粒子発生源、いわゆる蒸発源である坩堝で加熱され蒸発した薄膜材料の蒸気粒子をいう。真空蒸着法の蒸発源としては、誘導加熱方式の他、抵抗加熱方式、電子ビーム方式などあるが、いずれでも適用可能である。
【0031】
本発明において「シート案内面」とは、前述の薄膜形成方法においてシート上に薄膜を形成する際に、シートの薄膜形成面の反対面に接触しながらシートを搬送する薄膜形成装置の構成要素をいう。この「シート案内面」は主にシートをシワなく搬送する役目と、シートが受けた熱を効率よく逃がす役目を持つ。代表的なものとしては、図10、図11に示すように円筒形状のものでこの軸を中心に回転しながらシートを搬送するものがある。また特に円筒形状に限らず、ベルト体の上にシートを搬送する方式のものも知られているが、本発明においてはいずれのものでも有効である。安定した電位差を薄膜との間に付与するため、シート案内面の表面またはその近傍は、導電性を有しているのが好ましい。また、導電性の基材やドラムに絶縁性材料の薄膜が形成されているものであってもかまわない。
【0032】
本発明において「シート薄膜形成面」とは、シートが前述のシート案内面上で薄膜が形成される側の面をいう。薄膜の形成の有無に関わらず、形成される側の面をこのように呼ぶ。
【0033】
本発明において「シート案内面に対向配置する」とは、シート案内面においてはシートが接触する側で、かつシートにおいてはシート薄膜形成面の側に配置することをいう。
【0034】
本発明において「プラズマ発生源」とは、減圧雰囲気下に存在する気体分子に電界を与え、発光を伴うグロー放電を発生させることにより、該雰囲気下の気体分子の少なくとも一部を電子とイオンに電離した状態にするプロセスのことをいう。また、本発明において「プラズマ発生手段」とは、減圧雰囲気下において、導電性の電極に直流、交流、矩形波などの電圧を印加して、電極の周囲の気体をグロー放電させ、その気体の少なくとも一部を電子とイオンに電離した状態にする装置のことをいい、特に電圧を印加する電極自体は赤熱や発光はせず、電極周囲の気体雰囲気のみをグロー放電させ発光させる原理のものを指す。
【0035】
本発明において「荷電粒子」とは、プラズマ発生手段によって気体の一部の原子や分子、あるいは複数の原子や分子が一体となったクラスタ粒子が電離して生成されたイオンや電子のことをいう。またこれらの電子やイオンが他の原子や分子、クラスタ粒子に衝突することによって2次的に発生する電子やイオンもこれに含まれる。
【0036】
本発明において「プラズマ発生源の電位」とは、そのプラズマ発生源で発生するプラズマの周囲に荷電粒子を放出するための開口部を設けた導電性の筐体で覆われている構造の場合は、その筐体の電位の平均値をいい、そうでない場合はプラズマを発生するための電極に印加されている電圧の平均値のことをいう。前記の電圧の平均値とは、時間平均値のことを指し、少なくとも1秒間以上のタイムスパンにおける平均値とする。プラズマを発生するための電極に接地電位を基準とする周波数が1[Hz]以上の交流電圧が印加されている場合、「プラズマ発生源の電位」は、接地電位のことをいう。
【0037】
本発明において「非接触式」とは、シート案内面に対向配置した電極とシート案内面およびシート案内面上のシートと所定の距離を設けて配置されている構成であることをいう。また、本発明において「接触式」とは、シート案内面に対向配置した電極の一部が、シート案内面またはシート案内面上のシートと接触した状態で、前記電極が配置されている構成であることをいう。例として、前記電極が円筒形のもので円筒の中心を軸として回転可能な構造とし、シート案内面上のシートと前記電極の円筒表面が接触しながら前記電極が回転する構成が挙げられる。
【0038】
本発明において「交流電圧」とは、時間により電圧の大きさが常に変化する電圧のことをいう。時間とともに正弦波状に電圧値が変化するものが一般的であるが、この他にも矩形波状やパルス波状に電圧値が変化するものも例示される。
本発明における薄膜形成材料としては、特に限定されるものではなく、金属または金属アロイ、金属化合物などいずれでもよい。具体的には単体金属としては、Al、Cu、Zn、Co、Fe、Snが例示される。また、金属アロイとしては、Al−Zn、Al−Cu、Co−Cr、などが挙げられ、さらに金属化合物としては、AlOx、CuOx、ZnS、ZnO、SiOx、ITOなどが例示される。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、薄膜形成中に電気絶縁性シートに熱変形(熱負け)を発生しにくく、また薄膜形成後のシート内部の帯電が残ったり、帯電が原因で起こるシワ、ブロッキングなどの後工程の問題が起こりにくい薄膜形成装置および薄膜付きシートの製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の最良の実施形態の例を巻取式蒸着装置に適用した場合を例にとって、図面を参照しながら説明する。
【0041】
図1(a)は本発明を巻取式蒸着装置に適用した第1の実施形態の概略断面図である。この図1(a)は主要部のみを示し、構造物を収納する減圧室や中間ロールは省略してある。なお、従来例と同一または同等の機能を有する構成要素には同一番号を付け、詳細な説明を省略する。
【0042】
図10に記載した先行技術の装置との大きな相違点は、図1(a)に示すように、電荷供給源としての接地電位を基準とする交流電圧を印加してプラズマ放電領域27からプラズマを発生させるプラズマ電極18と、プラズマ電極18およびプラズマ電極の筐体19とシート案内面3との間に電位差を付与するための直流電源14を設け、シート案内面3上のシート1を帯電させる手段を持っている点である。
【0043】
プラズマ電極18は、減圧雰囲気下の気体にプラズマ放電を発生させることにより正および負の荷電粒子を発生させるものである。本実施形態に適した減圧雰囲気下で動作可能なプラズマ発生源の形態としては、ロッド、パイプ、プレート形状の長手の導電性の電極をシート幅方向にシートからほぼ一定間隔になるように配置し、電極の周囲の筐体や接地物体と電極との間に高電圧を印加するものが挙げられる。シート幅が長い場合は、導電性の電極をシート幅方向に分割して配置してもよい。また、電極に磁石を内蔵したマグネトロン方式の電極や、所定の間隔の組合せ電極や所定の穴径のホール電極をシート幅方向に均等配置したホローカソードタイプの電極も、プラズマ放電を安定に持続させる電極として好適である。いずれのプラズマ発生源も、導電性の電極に電圧を印加し、電極の周囲に電界を発生させることにより、電極周囲の気体を電離させグロー放電を発生させる原理であり、このようなプラズマ発生源は、正および負の荷電粒子をほぼバランスよく発生させる特徴がある。中でも、マグネトロン方式のプラズマ電極は、電極をコンパクトにできること、減圧雰囲気下の比較的広い圧力範囲で動作可能であること、電離度の高いプラズマを比較的低い印加電圧で形成できること、などの理由で好適である。また、プラズマ電極はシートに対して非接触であることが一般的だが、接触式であってもよい。従来、このようなプラズマ電極は、今日真空プロセスで一般的に使われている。その一つの用途として、シートの帯電を除電するために使用されることはあったが、シートを帯電することには今まで用いられていなかった。この除電のメカニズムは、プラズマ電極で発生した正および負の荷電粒子が、シートに存在する負および正の帯電電荷により形成される電界に誘導され、それぞれの帯電電荷に逆極性の荷電粒子が到来することにより帯電が中和するものである。本発明者らは、この荷電粒子が電界で誘導される原理を逆に利用し、プラズマ電極から発生する正および負の荷電粒子を、シートの表面に誘導するようにシート薄膜形成面の近傍に強制的に電界を形成し、シートを帯電させることを見出した。なお、前述の強制的な電界を形成した領域以外では、正および負の荷電粒子がほぼ等量に拡散していくため、帯電処理する部分以外で、シートや減圧室内の構造物を帯電させる不具合が生じにくく、この点でもプラズマ電極を使う利点がある。
【0044】
しかしながら、真空蒸着装置の減圧室内の圧力は数十[Pa]以下に保たれていることが多く、そのような減圧雰囲気下でプラズマを発生させた場合、プラズマが減圧室の内部に拡散する。このようなプラズマが拡散した状態で2つの物体の間に電位差を付与しても、プラズマを通して電流が流れてしまうため、安定に電位差が付与できない場合がある。本実施形態の場合においても、電荷をシート薄膜形成面に誘導するための電位差を付与するシート案内面がプラズマに直接曝露されると、電圧が安定に印加できなくなる場合があり、プラズマ放電領域を安定に持続するには接地するなどして所定の電位に保った筐体でプラズマと電位差を付与する物体とを空間的に隔離することが有効である。このような理由から、プラズマ電極近傍とシート薄膜形成面を帯電させる領域から、プラズマが他の領域に漏れないような工夫をした方が好ましい。図1(a)では、プラズマ電極の筐体19と一体となった荷電粒子放射口25をシート1の表面に近づけ、荷電粒子放射口25とシート1との隙間からプラズマ放電領域27が筐体19および荷電粒子放射口25の外部に漏れないようにしている。このときの荷電粒子放射口25とシート1との隙間は1[mm]以上かつ10[mm]以下であることが好ましい。近すぎると荷電粒子放射口25がシート1と接触する可能性があり、その場合、シート1を損傷しかねない。また10[mm]よりも大きくなると、プラズマ放電領域27が筐体19および荷電粒子放射口25の外に漏れる場合がある。
【0045】
また、本実施形態に適したプラズマ電極として、たとえば特許文献6に記載されているように、電極部が接地された筐体で囲まれており、その筐体内でプラズマ放電を発生させ、筐体の一部に設けたスリットやピンホールなどの開口部から荷電粒子を放出するようにした構成のものも挙げられる。図1(b)はプラズマ電極の筐体19の一部にスリットやピンホールによる荷電粒子放射口25を設けた適用例を示した概略断面図である。この図1(b)は主要部のみを示し、構造物を収納する減圧室や中間ロールは省略してある。なお、図1(a)と同一または同等の機能を有する構成要素には同一番号を付け、詳細な説明を省略する。このようなプラズマ発生手段を使用することにより、プラズマ放電領域27がプラズマ電極の筐体19から漏れず、かつ荷電粒子放射口25から正および負の荷電粒子を放出する。そして接地されたプラズマ電極の筐体19と、直流電源14が接続されたシート案内面3との間に付与された電位差により、いずれかの極性の荷電粒子がシート1の表面に誘導され、シート1の表面が帯電し、シート1とシート案内面3とを密着させることができる。プラズマ電極18のシート幅方向(長手方向)の幅は帯電させるシートの幅より広く、また荷電粒子放射口25は帯電させるシートの幅に均一に配置していることが好ましい。これによりシートの幅方向に均一に荷電粒子を放出することができ、シートの幅方向および走行方向に均一に帯電させることができる。
【0046】
また、スリットやピンホールの大きさを変えることで電荷供給量を調整することができる。このスリットやピンホールの開口面積がプラズマ電極の筐体の表面積に対して占める割合は、0.1[%]以上かつ3[%]以下であることが好ましい。プラズマ電極の筐体の表面積とは、筐体外周部の表面積のことをいい、筐体内面(プラズマ放電領域と接する面)およびシート幅方向の両端端面(例えば図1(a)の紙面の法線方向の両端端面)の部材の表面積は含まない。この筐体の表面積が3[%]より大きいと、筐体の中のプラズマが筐体外部の漏れ出て、シート案内面とプラズマ電極の筐体との間に印加している電圧が不安定に変動する場合がある。また、0.1[%]より小さい場合、筐体の外に放出される荷電粒子の量が少なくなり、帯電が不充分となる場合がある。
プラズマ電極の筐体19で、プラズマ放電しやすい圧力環境を維持するために、筐体内にガスを導入して筐体内の圧力を調整することもできる。ガスは、窒素ガス、炭酸ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスや酸素から選択できる。また、これらのガスの混合ガスも使用可能である。ガスの導入量は、プラズマ放電領域27を発生させる雰囲気の圧力、荷電粒子放射口25のコンダクタンス、プラズマ電極18のシート幅方向の長さ、等により最適な範囲は変化するが、プラズマ放電領域の発光を明るくできる条件や、プラズマ電極18に印加する電圧を低く抑えられる条件から、適宜好適な条件を設定できる。プラズマ電極18に印加する電圧は直流、交流いずれでもよいが、安定に放電を持続する点で交流の方が好ましい。また、プラズマ電極18に直流電圧を印加する場合は、その直流電圧による電界が、荷電粒子をシート1の表面に誘導するための電界に影響することがあり、プラズマを発生するための電圧と荷電粒子を誘導するための電位差との機能を分離するために、プラズマ電極18の方には接地電位を基準とする交流電圧を印加する方が好ましい。交流電圧には正弦波状に電圧が変化するものの他、矩形波状やパルス波のように急峻な電圧変化を発生させる、プラズマ用の電源も市販されているが、いずれでもよい。プラズマ電極に印加する交流電圧は、正弦波状の交流電圧を使用する場合は、電圧の振幅100〜1,000[V]、周波数50[Hz]〜50[MHz]の範囲において、帯電させる場所の圧力環境に応じて適宜選択できる。プラズマ電極に流れる電流(交流の場合は2乗平均平方根値)は電極のシート幅方向(長手方向)の幅10[cm]あたり10[mA]以上であることが好ましい。またはプラズマ電極に投入する電力は電極の幅10[cm]あたり2[W]以上であることが好ましい。該電流または該投入電力が低い場合、発生する荷電粒子の量が少なく帯電が不充分になったり、プラズマが時間的に不安定になって帯電にムラができる場合がある。
また、荷電粒子放射口25とシート1との距離は、1〜100[mm]の範囲が適当である。近すぎるとシート1と接触する可能性があり、その場合、シート1を損傷しかねない。また、100[mm]よりも大きくなると荷電粒子がシート1まで十分に供給されなくなる。
シート案内面3とプラズマ電極の筐体19との間に付与する電位差は、極性は正負いずれでもよいが、負の荷電粒子をシート1に誘導する極性にすることがより好ましい。発明者らの知見によれば、減圧雰囲気下では負の荷電粒子は主に電子であり、正の荷電粒子はイオンであるが、イオンよりも電子の方が質量は小さいため、電圧を印加して荷電粒子を移動させるには、電子の方が制御しやすい。そのため、主な負の荷電粒子である電子をシート1の表面に誘導する方が、イオンを誘導するよりも帯電の効率がよく、好適である。このためにはシート案内面の電位がプラズマ電極の筐体の電位よりも高くなるように、シート案内面と対向電極との間に電位差を設ければよい。またシート案内面とプラズマ電極の筐体との間に付与する電位差は10[V]以上かつ1,000[V]以下の範囲が適当である。低すぎると電荷を十分に引き寄せられなくなり、1000[V]よりも高くなるとシートとの間で異常放電を起こす可能性がある。また、1000[V]より高い電圧を印加すると、従来技術の電子ビーム照射装置やイオンビーム照射装置の加速電圧と同様の電圧で荷電粒子をシート1の表面に打ち込むことになり、薄膜形成後もシート内に帯電が残ることがあり、好ましくない。
【0047】
さらにシートの厚みが1[μm]以上100[μm]以下において、シートの厚み1[μm]あたりのシート案内面とプラズマ電極の筐体との間の電位差(すなわちシート案内面とプラズマ電極の筐体との間の電位差をシート厚みで割った値)が10[V/μm]以上100[V/μm]以下であることが好ましい条件である。発明者らの知見によれば、シートがシート案内面に密着する度合は、シート案内面とプラズマ電極の筐体との間の電位差にほぼ比例し、シートの厚みに反比例する。ことのことは後述する式(2)の関係からも類推できる。そのため最適な電位差はシートの厚み1[μm]あたりの電位差で定量化できる。このシート厚みあたりの前記電位差が10[V/μm]より小さい場合は帯電量が不充分になる場合がある。また、100[V/μm]より大きくしても、それ以上帯電量は上がらず、逆に異常放電やシート内部への荷電粒子の打ち込みなどの弊害を起こす確率が高くなる。
【0048】
本実施形態によって得られる金属または金属化合物などの薄膜の厚みは、50[nm]以上500[nm]以下の範囲で特に効果を発揮する。すなわち、薄膜の厚みが50[nm]以下の場合は従来の薄膜形成方法でも熱負けなく成膜できる場合が多いが、従来の方法では、この膜厚を越えるとシートへの熱負荷という点で成膜が難しくなる。また、熱負荷は膜厚が増すほど大きくなり、発明者らの知見では、本実施形態の方式でも500[nm]以上になると、シートの厚みが薄い場合、特にシートの厚みが10[μm]を下回る場合は熱負けに至ってしまう場合がある。
【0049】
図1(b)に示す例では、シート案内面3に直流電源14を接続して、プラズマ電極の筐体19を接地し、シート案内面3とプラズマ電極の筐体19との間に電位差を設ける構成としている。シート案内面3とプラズマ電極の筐体19との間には、シート案内面3に接触しながら走行する電気絶縁性シート1の走行経路が形成されている。そして、シート1がシート搬送方向20の方向に走行しているとき、プラズマ電極18でのプラズマ放電により発生した正の荷電粒子および負の荷電粒子が、シート1上に供給される。図8に図1(b)の荷電粒子の動きを描いた模式図を示す。プラズマ電極18で発生した正および負の荷電粒子は、シート案内面3とプラズマ電極の筐体19との間の電位差により形成される電気力線によって、いずれかの極性の荷電粒子が主にシート1の表面に引き寄せられる。図8ではシート案内面3に正の電圧を印加し、負の荷電粒子をシート1の表面に誘導している様子を示している。このようにしてシート1が負に帯電されることになる。帯電したシート1は、図1(b)に示すように、さらにシート搬送方向20の方向に搬送され、同じシート案内面3上において、蒸発源7から到来する蒸気10がシート1上に堆積し薄膜13が形成される。このとき形成される薄膜13が導電性である場合、薄膜13と接触し、かつ接地された中間ローラ5を介して、薄膜内にシート1の帯電をキャンセルするように正の電荷が薄膜13内に誘導され、シート1の帯電は見かけ上除去されることになる。また、形成される薄膜13が絶縁性である場合でも、本発明者らの知見によれば、蒸気10の中に微量に含まれる蒸発粒子のイオンや電子が、シート1の表面に存在する帯電電荷に誘導され、その帯電は見かけ上除去されることになる。その後、剥離点32でシート1がシート案内面3から剥離した後、中間ローラ5を経て巻取ロール体6に巻き取られる。このときシート1の帯電は見かけ上除去されているので、中間ローラ5や巻取ロール体6でシート同士がまとわりついてシワを発生する弊害は起こりにくい。
【0050】
発明者らの知見によれば、薄膜とシート案内面との間に働く静電気力でシートをシート案内面に貼り付かせる技術を用いない場合には、薄膜形成時の熱変形の多くは、シートがシート案内面上で僅かに滑りながら搬送されることにより、シート案内面とシートとの間で僅かな隙間ができる、またはシートが滑るときに発生するシワの部分で局所的にシートが浮いてしまうことにより、その部分での熱伝達が悪くなり、シートの熱変形に至ることを突き止めた。そこで発明者らは、従来技術のようにシート案内面上の薄膜を形成する部分および形成後の部分で必ずしもシートがシート案内面に貼り付いている必要はなく、薄膜を形成する部分および形成後の部分以外のシートとシート案内面の接触部分で両者を貼り付かせ、シートがシート案内面と同じ速度で搬送することにより、シートの熱変形の多くは抑制できることを見出した。
【0051】
図1(b)では、プラズマ電極の筐体19とシート案内面3との間に電位差を付与しているが、この場合電荷を誘導するための電気力線は、図8に示すように電圧を印加しているシート案内面3と、プラズマ電極の筐体19の他図示していないが真空チャンバなどの周囲の接地された導電性物体との間で発生する。取り付けの都合上、プラズマ電極の筐体19とシート案内面3との距離が遠くなる場合は、荷電粒子23をシート1の表面に効率よく誘導するために、例えば図2に示すように、別の対向電極(電位差付与電極)16をシート案内面3と対向する位置でかつプラズマ電極18の荷電粒子放射口25と近い位置に配置することがより好適である。これにより比較的低い電圧で対向電極16とシート案内面3との間に電位差が付与でき、荷電粒子を誘導する効果が高くなる。なお、図2では対向電極16をプラズマ電極18に対しシート1の走行方向の下流側に配置しているが、これとは反対に上流側に配置しても良い。
【0052】
対向電極の形態としては、ロッド、パイプ、プレート形状の長手の導電性の電極をシート幅方向にシート案内面からほぼ一定間隔になるように配置したものが好ましい。より好ましくは、対向電極のどの位置でも対向するシート案内面と一定の間隔になるように、例えば図2のような円筒状のシート案内面の場合は、円弧状に加工された面をシート案内面にむけた形態のものがさらに好ましい。また、シート幅が長い場合は、導電性の電極をシート幅方向に分割して配置してもよい。
【0053】
なお、シート1を帯電させる場所の圧力にもよるが、圧力がおよそ1[Pa]から100[Pa]の間では、対向電極16に印加する電圧は10[V]以上、500[V]以下が好ましい。印加電圧が10[V]より小さいと帯電が不充分であり、また500[V]より大きい場合には対向電極16自体から火花放電などの異常放電を発生する可能性があり、シート1を均一に帯電できないことがある。また帯電する雰囲気の圧力が1[Pa]以下では、前記のような異常放電は比較的発生しにくくなるものの、1[kV]より大きな印加電圧ではやはり異常放電が発生する可能性がある。また発明者らの知見では、1[kV]より大きな印加電圧で荷電粒子23を加速させた場合、荷電粒子23がシート1の内部に打ち込まれることになり、このようにして形成した帯電は後述する薄膜形成や除電を施しても、シート内に残っていることがあり、後工程でのシワ発生やブロッキングなどの弊害を起こすことがある。従って印加電圧は1[kV]以下であることが好ましい。
【0054】
図1(b)および図2の実施形態では、シート1を帯電させた後に形成する薄膜13が導電性の場合、シート1の表面の帯電は、薄膜形成時に、薄膜内の電荷がシートの帯電電荷をキャンセルするように誘導されるため、見かけ上なくなる。そのため、薄膜形成以降はシート1とシート案内面3とを密着させる力は弱くなるものの、帯電処理部から薄膜形成開始点31までの間は、シート1とシート案内面3が密着しており、両者が同じ速度で搬送されているので、シートにシワは発生しにくい効果は得られる。
図3(a)には本発明の別の実施形態の例を示している。図1(b)と違う点は、シート案内面3を接地し、シート案内面3とは別に対向電極(電位差付与電極)16を配置している点である。シート案内面3は、シート1を冷却しながら搬送したり、蒸着材料の蒸気10がシート1に入射する角度を最適化する機能があり、本実施形態に適用される巻取式蒸着装置の中でも比較的大きな構造物で複雑な構造となる場合があるが、このような場合、シート案内面3を接地から電気的に絶縁し、電圧印加できる構造にすることが困難なことがある。この場合には、シート案内面3を接地したまま、図3(a)のように対向電極16を別に配置した方が好適である。図3(a)の実施形態での荷電粒子の動きを描いた模式図を図9に示す。プラズマ電極18で発生した正および負の荷電粒子は、対向電極16とシート案内面3との間に形成される電気力線によって、いずれかの極性の荷電粒子が主にシート1の表面に引き寄せられる。図9ではシート案内面3を接地し、対向電極に負の電圧を印加しており、シート1の表面に負の荷電粒子を誘導している様子を示している。図3(a)のようにシート案内面3とは別に対向電極16を配置する場合、プラズマ電極18から発生する荷電粒子23を、シート案内面3と対向電極16の間に送り込むように、各構成要素を配置した方がよい。具体的には、プラズマ電極の筐体19の荷電粒子放出口25が、シート案内面3と対向電極16との間に向けられていることが好ましい形態である。たとえプラズマ電極の筐体19の中にガスを導入しない場合においても、減圧雰囲気下では気体分子は拡散し易いため、荷電粒子放出口25から漏れ出た荷電粒子の一部はシート案内面3と対向電極16との間に拡散し、シートの薄膜形成面を帯電させることはできる。プラズマ電極の筐体19の中にガスを導入した方が、筐体内と筐体外との差圧により荷電粒子放出口25の方向に荷電粒子がより多く放出され、シート案内面3と対向電極16との間に導入されるため、より有効である。これとは逆に、プラズマ電極18からの荷電粒子23が、シート案内面3と対向電極16との間以外の場所に放出された場合、対向電極16の印加電圧によって荷電粒子23が、シート1に向かう方向とは別の方向に反発されてしまい、効率よく帯電できないことがある。対向電極16とシート案内面3との間隔はできるだけ近い方がよく、その最短部分の距離が1[mm]以上、100[mm]以下であることが好ましい。1[mm]より近い場合、両者が接触しシート1やシート案内面3の表面を傷つけてしまうことがある。また、100[mm]より距離が長い場合、シート案内面3と対向電極16との間で形成する電界に対し、その他の接地電位である隔壁や真空チャンバと対向電極16との間で形成する電界が無視できなくなり、プラズマ電極18から発生する荷電粒子23がシート1の表面以外の接地電位の物体に誘導される確率が高くなり、シート1の帯電効果が不充分となることがある。帯電効果を強くする場合には、対向電極16とシート案内面3との電界をさらに強くすることが有効であり、そのため両者の間隔は1[mm]以上、20[mm]以下の範囲であることがさらに好ましい。また図9に示す、対向電極16とシート案内面3がシート1の搬送方向に対向している長さ16aは、10[mm]以上、300[mm]以下の範囲が好ましい。10[mm]より短い場合、荷電粒子をシート1の表面に誘導する範囲が小さくなり帯電効果が不充分となる場合がある。また300[mm]より長い場合は、プラズマ電極18から発生する荷電粒子が対向電極16の端部まで届く確率が低くなり、帯電効果の向上は見込めなくなることがある。なお、図3(a)では対向電極16をプラズマ電極18に対しシート1の走行方向の下流側に配置しているが、これとは反対に上流側に配置しても良い。ただ、上流側に配置した場合、対向電極16近傍でシート1が帯電するが、その下流でプラズマ電極18から放出される荷電粒子により、シート1の帯電の一部が中和される場合もあり、どちらかといえば、プラズマ電極18の下流側に対向電極16を配置することが好ましい。また、対向電極に流れる電流は対向電極のシート幅方向(長手方向)の幅10[cm]あたり2[mA]以下であることが好ましい。2[mA]より大きな電流が流れると、対向電極の周囲に発光を伴う放電(本発明でいうプラズマ放電)が発生し、対向電極に電圧が安定に印加できない場合がある。また、対向電極の周囲にプラズマ放電が発生すると、そのプラズマ放電で発生した正負の荷電粒子が周囲に拡散し、帯電処理した直後のシートを除電し、密着効果が不充分となる場合がある。さらにシートの厚みが1[μm]以上100[μm]以下において、シートの厚み1[μm]あたりのシート案内面と対向電極との間の電位差(すなわちシート案内面と対向電極との間の電位差をシート厚みで割った値)が10[V/μm]以上100[V/μm]以下であることが、図1(b)の実施形態と同じ理由で好ましい条件である。
【0055】
図3(a)のように対向電極16をシート1と接触させないのではなく、シート1と接触させても帯電可能な方法もある。その例を図3(b)に示す。図3(b)では円筒形状で回転可能な対向電極16を、シート案内面3上のシート1の表面に接触するように配置し、シート1の搬送とともに対向電極16が回転できる構造となっている。図3(b)の例では、直流電源14の電位が、電気抵抗15を介して対向電極16の円周表面上に印加され、接地されたシート案内面3との間に電界を形成し、プラズマ電極18で発生する荷電粒子23をシート1の表面に誘導する。対向電極16が円筒形状でシート1と接触しているので、両者の間に狭い間隙を作ることができ、強い帯電効果が得られる場合がある。このように円筒形状の対向電極16を使う場合の円筒の直径は、10[mm]以上、300[mm]以下の範囲が好ましい。10[mm]より小さい場合、荷電粒子をシート1の表面に誘導する範囲が小さくなり帯電効果が不充分となる場合がある。また300[mm]より大きい場合は、対向電極16の取り付けに大きなスペースを必要とするため、取り付けや調整が困難になる場合がある。また、シート1と対向電極16の平行度が多少ずれている場合でも、シートの幅方向で均一に接触するように、対向電極16の円周をゴムのように柔らかい材質で被覆してもよい。この場合、被覆する材料は直流電源14の電位を被覆材の表面に印加できるように導電性の材料であることが好ましい。例えばカーボンブラックなどの導電性の粉末を混ぜ込んだ導電性ゴムが例示される。この場合、導電性ゴムの表面抵抗は10[Ω/□]以下であることが好ましい。
【0056】
図3(a)の実施形態に減圧室を含めた薄膜形成装置の模式図を図15に示す。本発明の実施形態の例を適用した巻取式蒸着装置の多くは、隔壁24によりフィルムの巻き出しや巻き取りを行う巻取室41aとフィルムの蒸着を行う蒸着室41cに分かれており、それぞれの室を巻取室用真空ポンプ42aや蒸着室用ポンプ42cのそれぞれのポンプで排気している。本実施形態の帯電処理は巻取室、蒸着室いずれでも実施できる。より好ましくは、その圧力が1[Pa]以下の雰囲気である室で実施する方が、対向電極16とシート案内面3との間に電位差を付与した際に異常放電が起きにくくなるため、好適である。また図15に示すように、帯電処理を行う領域を隔壁24で仕切り、帯電処理室41bを設けた方がさらに好ましい。その場合、帯電処理室41bの圧力を0.01[Pa]以上、1[Pa]以下の範囲になるように、帯電処理用真空ポンプ42bで独自に排気した方が、巻取室41aや蒸着室41cの圧力変化の影響を受けないため好ましい。
また図3(a)の実施形態と同じく、シート案内面3を接地し、シート案内面3とは別に対向電極16を配置する場合、プラズマ電極18の荷電粒子放出口25から放出される荷電粒子23を含むガスが効率よく対向電極16とシート案内面3との間に導入されるように、ガス導入経路29を設けることがさらに好ましい。
図4には、プラズマ電極18と荷電粒子放射口25と対向電極16とを一式の装置として構成した例を示す。図4のように一式の装置とする場合、プラズマ電極の筐体19は接地し、対向電極16には電圧を印加するので、両者を電気的に絶縁するために荷電粒子放射口25は絶縁材料を使用するなどの工夫が必要である。
【0057】
蒸着された薄膜13が導電性の場合、薄膜13とシート案内面3との間に電圧を印加して、シート1とシート案内面3とを密着させる、いわゆる静電密着と本実施形態とを併用して使用することが可能である。図5と図6にその実施形態を示す。図5は図1(a)の実施形態に静電密着の技術を併用した例である。シート案内面3と中間ローラ5との間に電圧を印加し、シート案内面3とシート1との間に密着力を発生させている。この例では、シート1は蒸着される前は本実施形態によるシート1の帯電によりシート案内面と密着し、蒸着後はシート案内面3と中間ローラ5を介して薄膜13との間に印加された電圧による静電気力により、シート1とシート案内面3が密着する。この例では、シート案内面3の上にシート1が広い範囲で密着された状態で搬送されるため、シート1にシワが発生しにくく、シワ状の熱負けが発生しにくい。また図6は図3(a)の実施形態に静電密着の技術を併用した例である。この場合、シート案内面3は接地電位であるので、中間ローラ5に電圧を印加して薄膜13とシート案内面3との間に電位差を設ける必要がある。
一方、蒸着された薄膜13が絶縁性の場合、薄膜13に電圧を印加することが不可能なため前述の静電密着は適用できない。このような場合には、図7に示すように、シート1の表面に薄膜13が形成された後のシート案内面3上のシート1に本実施形態の帯電処理を再度施すことにより、シート案内面3の上にシート1が広い範囲で密着された状態で搬送することができる。但し、帯電処理したシート1をそのまま搬送し続けると、シート1に帯電が残っているため、シート案内面3の剥離点でシート1がシート案内面3にまとわりついたり、巻取ロール体6で、シート同士がまとわりついてシワを発生させてしまうことがある。そのためこの実施形態のように、薄膜形成後に帯電処理する場合は、帯電処理後のシート案内面3上で、シート1が剥離点32を通過する前に、シート1を除電する必要がある。シートの除電方法については、真空中で電気絶縁性シートを除電する方法として公知であるプラズマ放電を用いる方法や強制的にシートに向けてガスを照射する方法が知られているが、いずれでもよい。図7では、剥離点32よりも上流側に除電用プラズマ電極30を配置し、シート1の表面を除電している例を示している。
なお、ここで記した薄膜の導電性および絶縁性については表面抵抗の測定によりおよそ識別できる。前記の静電密着技術は表面抵抗が10[Ω/□]以下の薄膜において有効となる。10[Ω/□]以上の薄膜でシートをシート案内面に貼り付けるには、シートを帯電させる方法が有効となるが、従来技術の帯電方法ではシートの帯電やブロッキングなどの後工程の問題が起こりやすかった。本実施形態の帯電方法はこの後加工での帯電の影響を起こりにくくできる方法であり、10[Ω/□]以上の薄膜の形成において有効と言える。但し表面抵抗が1014[Ω/□]より高い薄膜においては、薄膜形成時にシート薄膜形成面の帯電を見かけ上除去することが困難になる場合があり、薄膜形成後のシワやブロッキングを発生させることがある。
なお薄膜の表面抵抗の測定は、薄膜形成後に巻き取ったシートを取り出して、JIS K7194(1994)およびJIS K6911(1962)に記載の方法で測定できる。表面抵抗の値が10[Ω/□]以下の場合はJIS K7194に記載の四探針法が、10[Ω/□]以上の場合はJIS K6911に記載のリング電極による測定方法が有効である。
発明者らの知見によれば、シートの帯電はその用途にもよるが、その帯電量の絶対値が30[μC/m2]を越える時に巻き取り時のシワや巻取ロールでのブロッキングなどの弊害を起こす可能性が高い。従って薄膜形成後のシートの帯電量を30[μC/m2]以下の状態にして巻き取るのが好ましい。この帯電量は以下のように測定できる。まず、シート厚みがt[m]で、比誘電率εの材質の単層からなるシートの単位面積(1[m2])あたりの静電容量C[F]は、真空誘電率をε0[F/m]とすると、式(1)で表される。
【0058】
C=ε0ε/t [F/m2] ・・・・・・・・・・(1)
また、シートの帯電量を電位計で測定した電位値をV[V]とすると、その電位から算出される帯電量(帯電電荷密度)σ[C/m2])の最大値は、式(2)で表される。
【0059】
σ=CV
=ε0εV/t [C/m2] ・・・・・・・・・・(2)
なおこのときの電位計の測定とは、薄膜形成面が接地した金属板上に密着するようにシートを張り付け、シートの表面(薄膜が形成されていない面)から表面電位計により電位を測定する方法である。発明者らの知見によれば、薄膜形成後のシートのシワやブロッキングは、この帯電量が30[μC/m2]よりも大きい場合に発生しやすい。
【実施例】
【0060】
以下に示す実施例および比較例において、熱負け、特にシワ状に発生する熱負けの有無を比較した。熱負けの検出方法は以下の通りである。
(1)熱負けの検出方法
蒸着を完了したシートが平面光源の前を通過するように数[m/分]の速度で走行させ、シートを通過する平面光源の光を観察しながらシートの色ムラやシワを目視で観察する。シートは100[m]の長さ分を観察する。周囲に対して色の濃い部分(透過率の低い部分)を切り出す。切り出したシート片を静かに机上に置き、色の濃い部分を起点としたシワ状のシート変形があれば、熱負けと判断する。
(2)シートの薄膜未形成面の帯電電荷密度の測定
シートの薄膜未形成面の帯電が、後加工に影響を及ぼすレベルかどうかを確認するために帯電電荷密度を測定した。帯電量が30[μC/m2]以下の場合は、後加工に影響を及ぼさない範囲とした。
【0061】
蒸着を完了した電気絶縁性シートをシート走行方向に10[cm]、シート幅方向は全幅分を短冊状に切り出し、薄膜形成面が接地した金属板上に接触するようにシートを張り付け、その上から微小スポットタイプの表面電位計(モンロー社製モデル244およびモンロー社製プローブ1017、開口部直径1.75[mm])をギャップ3mmで取り付けて電位を測定する。金属板をシート幅方向にずらしながら5mmピッチの間隔で電位を測定しその平均の電位測定値V[V]と式(2)から電荷密度σ[C/m2]を求めた。
(3)プラズマ用高周波電源の電圧振幅の測定
プラズマ用高周波電源の出力ケーブルに高電圧プローブ(テクトロニクス社製P6015A型)を取りつけ、さらにプローブをオシロスコープ(テクトロニクス社製TDS1000B型)に接続し、電圧波形を表示させ、電圧振幅を測定した。
(4)対向電極に流れる電流の測定
例えば図3に示されている、対向電極16と直流電源14の間に接続されている電気抵抗15の両端の電圧をデジタルマルチメータ(フルーク社製114型)で測定し、電圧を電気抵抗15の抵抗値で割り、電流を求めた。
[実施例1]
電気絶縁性シートとして、厚さ4.5[μm]、幅620[mm]のポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製「ルミラー」)の片面に、図1(b)に示す巻取式真空蒸着装置を用い、以下に示す蒸着条件で蒸着した。
(蒸着条件)
蒸発源 :誘導加熱坩堝
蒸発材料 :アルミニウム
蒸発パワー:30[kW]
真空環境 :2×10−2[Pa]
膜厚:60[nm]
蒸着膜の表面抵抗:0.9[Ω/□]
(フィルム搬送条件)
搬送速度 :50[m/分]
(プラズマ電極条件)
図1(b)に示すように、接地した筐体内にマグネトロン電極を内蔵するプラズマ発生源を配置した。各条件は以下の通り。
(1)プラズマ電極のシート幅方向の長さ:700[mm]
(2)プラズマ用高周波電源の電力出力:200[W]
(3)プラズマ用高周波電源の電圧振幅:500[V]
(4)プラズマ用高周波電源の周波数:100[kHz]
(5)プラズマ電極の筐体の荷電粒子放射口:直径2[mm]のピンホールを10[mm]の間隔でシートの幅方向に直線上に均等配置。シート案内面と荷電粒子放射口との間隔が20[mm]となるように配置。
(6)荷電粒子放射口の向き:プラズマ電極であるマグネトロン電極の中心と、荷電粒子放射口の中心を結んだ直線の延長線が円筒形シート案内面の表面にほぼ垂直に入射する向き。
(シート案内面条件)
図1(a)に示すように円筒形のシート案内面を使用した。このシート案内面の内部には、シート案内面の表面の温度を調整するための媒体が循環され、装置外部の冷媒循環装置から一定温度の媒体が導入されている。各条件は以下の通り。
(1)円筒形シート案内面の直径:500[mm]
(2)シート案内面内部に流す媒体温度:−20[℃]
(3)円筒形シート案内面への印加電圧:+200[V]
(4)電気抵抗15の抵抗値:1[kΩ]
蒸着を完了したフィルムを、100[m]の長さでバックライト光源越しに熱負けしていると見られる色の濃い部分の有無を観察した結果、熱負けは見られなかった。また、シートの薄膜未形成面の帯電電荷密度は13[μC/m2]であった。
[実施例2]
使用した電気絶縁性シート、蒸着条件およびフィルム搬送条件は実施例1と同じで、図3(a)に示す巻取式真空蒸着装置を用い、以下に示す蒸着条件で蒸着した。
(プラズマ電極条件)
図3(a)に示すように、接地した筐体内にマグネトロン電極を内蔵するプラズマ発生源を配置した。各条件は以下の通り。
(1)プラズマ電極のシート幅方向の長さ:700[mm]
(2)プラズマ用高周波電源の電力出力:200[W]
(3)プラズマ用高周波電源の電圧振幅:500[V]
(4)プラズマ用高周波電源の周波数:100[kHz]
(5)プラズマ電極の筐体の荷電粒子放射口:直径2[mm]のピンホールを10[mm]の間隔でシートの幅方向に直線上に均等配置。シート案内面と荷電粒子放射口との間隔が50[mm]となるよう配置。
(6)荷電粒子放射口の向き:プラズマ電極であるマグネトロン電極の中心と、荷電粒子放射口の中心を結んだ直線の延長線が円筒形シート案内面と対向電極とのほぼ中間の位置に入射する向き。
(シート案内面条件)
図3(a)に示すように円筒形のシート案内面を使用した。実施例1と同様にこのシート案内面の内部にも媒体が循環され、その媒体は一定温度で温度制御されている。なお本実施例では、シート案内面は電気的に接地している。各条件は以下の通り。
(1)円筒形シート案内面の直径:500[mm]
(2)シート案内面内部に流す媒体温度:−20[℃]
(3)シート案内面への電圧印加:接地(0[V])
(対向電極条件)
図3(a)に示すように円筒形のシート案内面に対抗して、ステンレス製の対向電極を配置している。各条件は以下の通り。
(1)対向電極のシート幅方向の長さ:700[mm]
(2)対向電極のシート走行方向の長さ:50[mm]
(3)対向電極の厚み:3[mm]
(4)印加電圧:−300[V]
(5)電気抵抗15の抵抗値:1[kΩ]
(6)対向電極に流れる電流:0.8[mA]
(7)シート案内面との距離:10[mm]
(8)荷電粒子放射口との最短距離:20[mm]
蒸着を完了したフィルムを、100[m]の長さでバックライト光源越しに熱負けしていると見られる色の濃い部分の有無を観察した結果、熱負けは見られなかった。また、シートの薄膜未形成面の帯電電荷密度は7[μC/m2]であった。
[実施例3]
使用した電気絶縁性シート、フィルム搬送条件は実施例1と同じであるが、図3(a)に示す巻取式真空蒸着装置を用い、蒸発源近傍に酸素を導入しながら酸化アルミ膜をフィルム上に形成した。
(蒸着条件)
蒸発源 :誘導加熱坩堝
蒸発材料 :アルミニウム
蒸発パワー:29[kW]
酸素導入量:2500「cc/分」
真空環境 :4×10−2[Pa]
膜厚:60[nm]
蒸着膜表面抵抗:2×1012[Ω/□]
(プラズマ電極条件)
図3(a)に示すように、接地した筐体内にマグネトロン電極を内蔵するプラズマ発生源を配置した。各条件は以下の通り。
(1)プラズマ電極のシート幅方向の長さ:700[mm]
(2)プラズマ用高周波電源の電力出力:200[W]
(3)プラズマ用高周波電源の電圧振幅:500[V]
(4)プラズマ用高周波電源の周波数:100[kHz]
(5)プラズマ電極の筐体の荷電粒子放射口:直径2[mm]のピンホールを10[mm]の間隔でシートの幅方向に直線上に均等配置。
(6)荷電粒子放射口の向き:プラズマ電極であるマグネトロン電極の中心と、荷電粒子放射口の中心を結んだ直線の延長線が円筒形シート案内面と対向電極とのほぼ中間の位置に入射する向き。
(シート案内面条件)
図3(a)に示すように円筒形のシート案内面を使用した。実施例1と同様にこのシート案内面の内部にも媒体が循環され、その媒体は一定温度で温度制御されている。なお本実施例では、シート案内面は電気的に接地している。各条件は以下の通り。
(1)円筒形シート案内面の直径:500[mm]
(2)シート案内面内部に流す媒体温度:−20[℃]
(3)シート案内面への電圧印加:接地(0[V])
(対向電極条件)
図3(a)に示すように円筒形のシート案内面に対向して、ステンレス製の対向電極を配置している。各条件は以下の通り。
(1)対向電極のシート幅方向の長さ:700[mm]
(2)対向電極のシート走行方向の長さ:50[mm]
(3)対向電極の厚み:3[mm]
(4)印加電圧:−200[V]
(5)電気抵抗15の抵抗値:1[kΩ]
(6)対向電極に流れる電流:0.7[mA]
蒸着を完了したフィルムを、100[m]の長さでバックライト光源越しに熱負けしていると見られる色の濃い部分の有無を観察した結果、熱負けは見られなかった。また、シートの薄膜未形成面の帯電電荷密度は16[μC/m2]であった。
[実施例4]
使用した電気絶縁性シート、フィルム搬送条件は実施例1と同じであるが、図3(a)に示す巻取式真空蒸着装置を用い、蒸発源近傍に酸素を導入しながら酸化アルミ膜をフィルム上に形成した。
(蒸着条件)
蒸発源 :誘導加熱坩堝
蒸発材料 :アルミニウム
蒸発パワー:35[kW]
酸素導入量:5000「cc/分」
真空環境 :5×10−2[Pa]
膜厚:150[nm]
蒸着膜表面抵抗:4×10−8[Ω/□]
(プラズマ電極条件)
図3(a)に示すように、接地した筐体内にマグネトロン電極を内蔵するプラズマ発生源を配置した。各条件は以下の通り。
(1)プラズマ電極のシート幅方向の長さ:700[mm]
(2)プラズマ用高周波電源の電力出力:200[W]
(3)プラズマ用高周波電源の電圧振幅:500[V]
(4)プラズマ用高周波電源の周波数:100[kHz]
(5)プラズマ電極の筐体の荷電粒子放射口:直径2[mm]のピンホールを10[mm]の間隔でシートの幅方向に直線上に均等配置。
(6)荷電粒子放射口の向き:プラズマ電極であるマグネトロン電極の中心と、荷電粒子放射口の中心を結んだ直線の延長線が円筒形シート案内面と対向電極とのほぼ中間の位置に入射する向き。
(シート案内面条件)
図3(a)に示すように円筒形のシート案内面を使用した。実施例1と同様にこのシート案内面の内部にも媒体が循環され、その媒体は一定温度で温度制御されている。なお本実施例では、シート案内面は電気的に接地している。各条件は以下の通り。
(1)円筒形シート案内面の直径:500[mm]
(2)シート案内面内部に流す媒体温度:−20[℃]
(3)シート案内面への電圧印加:接地(0[V])
(対向電極条件)
図4に示すように円筒形のシート案内面に対向して、ステンレス製の対向電極を配置している。各条件は以下の通り。
(1)対向電極のシート幅方向の長さ:700[mm]
(2)対向電極のシート走行方向の長さ:50[mm]
(3)対向電極の厚み:3[mm]
(4)印加電圧:−400[V]
(5)電気抵抗15の抵抗値:1[kΩ]
(6)対向電極に流れる電流:1.0[mA]
蒸着を完了したフィルムを、100[m]の長さでバックライト光源越しに熱負けしていると見られる色の濃い部分の有無を観察した結果、熱負けは見られなかった。また、シートの薄膜未形成面の帯電電荷密度は18[μC/m2]であった。
[比較例1]
使用した電気絶縁性シート、蒸着条件およびフィルム搬送条件は実施例3と同じで、図10に示す巻取式真空蒸着装置を用い蒸着した。
(シート案内面条件)
(1)円筒形シート案内面の直径:500[mm]
(2)シート案内面内部に流す媒体温度:−20[℃]
(3)シート案内面とガイドロールとの間への電圧印加:0[V]
蒸着を完了したフィルムを、100[m]の長さでバックライト光源越しにピンホール観察した結果、23箇所の熱負けが見つけられた。また、シートの薄膜未形成面の帯電電荷密度は6[μC/m2]であった。
[比較例2]
使用した電気絶縁性シート、蒸着条件およびフィルム搬送条件は実施例3と同じで、図12に示す巻取式真空蒸着装置を用い、薄膜形成前のシート案内面上のシート薄膜形成面を電子ビーム照射装置から電子を照射し、シートの表面を帯電させる方法で蒸着した。上記以外は以下に示す蒸着条件で蒸着した。
(電子ビーム照射装置照射条件)
以下の条件で、シート薄膜形成面を帯電処理した。
(1)加速電圧:5[kV]
(2)カソード電流:20[mA]
(3)シート案内面との距離:500[mm]
(4)シートへの電子照射範囲:シート幅方向650[mm]、シート走行方向100[mm]
(シート案内面条件)
図4に示すように円筒形のシート案内面を使用した。実施例1と同様にこのシート案内面の内部にも媒体が循環され、その媒体は一定温度で温度制御されている。なお本実施例では、シート案内面は電気的に接地している。各条件は以下の通り。
(1)円筒形シート案内面の直径:500[mm]
(2)シート案内面内部に流す媒体温度:−20[℃]
(3)シート案内面への電圧印加:接地(0[V])
蒸着を完了したフィルムを、100[m]の長さでバックライト光源越しにピンホール観察した結果、熱負けは見られなかった。しかしながら、巻き取られたフィルムロールにはシワが発生した。得られたシートの薄膜未形成面の帯電電荷密度は70[μC/m]であった。
[比較例3]
使用した電気絶縁性シート、蒸着条件およびフィルム搬送条件は実施例3と同じで、図10に示す巻取式真空蒸着装置を用い、蒸発源近傍に酸素を導入しながら酸化アルミ膜をフィルム上に形成した。上記以外は以下に示す蒸着条件で蒸着した。
(シート案内面条件)
図1(a)に示すように円筒形のシート案内面を使用した。このシート案内面の内部には、シート案内面の表面の温度を調整するための媒体が循環され、装置外部の冷媒循環装置から一定温度の媒体が導入されている。各条件は以下の通り。
(1)円筒形シート案内面の直径:500[mm]
(2)シート案内面内部に流す媒体温度:−20[℃]
(3)円筒形シート案内面への印加電圧:+200[V]
(4)電気抵抗15の抵抗値:1[kΩ]
蒸着を完了したフィルムを、100[m]の長さでバックライト光源越しに熱負けしていると見られる色の濃い部分の有無を観察した結果、11箇所の熱負けが見つけられた。また、シートの薄膜未形成面の帯電電荷密度は22[μC/m2]であった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、電気絶縁性のプラスチックフィルムを対象とする真空蒸着方法ならびに巻取式真空蒸着装置として非常に好適であるが、紙等のウェブの真空蒸着方法などにも応用でき、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1(a)】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図1(b)】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図3(a)】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図3(b)】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図4】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図5】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図6】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図7】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図8】本発明の一実施態様に係る荷電粒子の動きを示した模式図である。
【図9】本発明の一実施態様に係る荷電粒子の動きを示した模式図である。
【図10】従来の巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図11】従来の巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図12】従来の巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【図13】従来の巻取式真空蒸着装置に係る荷電粒子の動きを示した模式図である。
【図14】従来の巻取式真空蒸着装置に係る荷電粒子の動きを示した模式図である。
【図15】本発明の一実施態様に係る巻取式真空蒸着装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0064】
1 シート
2 原反ロール体
3 シート案内面
4 中間ローラ(巻出側)
5 中間ローラ(巻取側)
6 巻取ロール体
7 誘導加熱坩堝
8 蒸着材料
9 電力投入装置
10 蒸気
11 マスク部材
12 開口部
13 薄膜
14 直流電源
15 電気抵抗
16 対向電極
16a 対向電極の走行方向長さ
17 プラズマ用高周波電源
18 プラズマ電極
19 プラズマ電極の筐体
20 シート搬送方向
21 接地
22 荷電粒子源
23 荷電粒子
24 隔壁
25 荷電粒子放射口
27 プラズマ放電領域
29 ガス導入経路
30 除電用プラズマ電極
31 薄膜形成開始点
32 剥離点
33 巻付点
41 減圧室
41a 巻取室
41b 帯電処理室
41c 蒸着室
42 真空ポンプ
42a 巻取室用真空ポンプ
42b 帯電処理室用真空ポンプ
42c 蒸着室用真空ポンプ
43 バルブ
44 ガスボンベ
45 減圧弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧雰囲気下において、シート案内面に接触しながら搬送方向に搬送されている電気絶縁性シート上に、微粒子発生源から飛来させた微粒子を堆積させ、薄膜を形成する薄膜付きシートの製造方法であって、前記シート案内面上のシート薄膜形成面に、プラズマ発生源から供給される荷電粒子のうちいずれかの極性の荷電粒子を、前記プラズマ発生源と前記シート案内面との間に10[V]以上かつ1000[V]以下の電位差を付与し誘導することにより、前記シート薄膜形成面を帯電させた後、前記シート案内面上の前記シート薄膜形成面に前記薄膜を形成することを特徴とする薄膜付きシートの製造方法。
【請求項2】
減圧雰囲気下において、シート案内面に接触しながら搬送方向に搬送されている電気絶縁性シート上に、微粒子発生源から飛来させた微粒子を堆積させ、薄膜を形成する薄膜付きシートの製造方法であって、前記シート案内面上のシート薄膜形成面に、プラズマ発生源から供給される荷電粒子のうちいずれかの極性の荷電粒子を、前記シート案内面に対向配置した電極との間に10[V]以上かつ1000[V]以下の電位差を付与し誘導することにより、前記シート薄膜形成面を帯電させた後、前記シート案内面上の前記シート薄膜形成面に前記薄膜を形成することを特徴とする薄膜付きシートの製造方法。
【請求項3】
前記電極として、シート表面非接触式のものを用いることを特徴とする請求項2に記載の薄膜付きシートの製造方法。
【請求項4】
前記電極として、シート表面接触式のものを用いることを特徴とする請求項2に記載の薄膜付きシートの製造方法。
【請求項5】
前記シート案内面の電位が前記プラズマ発生源の電位または前記電極の電位よりも高くなるよう前記電位差を付与し、シート薄膜形成面に負極性の荷電粒子を誘導することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の薄膜付きシートの製造方法。
【請求項6】
前記シートの厚みは1[μm]以上100[μm]以下であって、シートの厚み1[μm]あたりの前記電位差は10[V/μm]以上かつ100[V/μm]以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の薄膜付きシートの製造方法。
【請求項7】
前記シート薄膜形成面に形成された前記薄膜の表面抵抗は10[Ω/□]以上かつ1014[Ω/□]以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜付きシートの製造方法。
【請求項8】
減圧室と、該減圧室内においてシートと接触しながら前記シートを搬送するシート案内面を有し前記シート案内面の運動に伴って前記シートを搬送するシート搬送手段と、前記シート案内面上の前記シートに向かって微粒子を飛散させて前記シート上に薄膜を形成する微粒子発生源と、前記シート案内面上の前記シートを帯電させる帯電手段とを備えるシートの薄膜形成装置であって、前記帯電手段は、筐体の内部でプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、前記筐体からプラズマで発生した荷電粒子を前記筐体の外部に放出するための放出口と、前記プラズマ発生手段と前記シート案内面との間に10[V]以上かつ1000[V]以下の電位差を付与できる電位差付与手段とで構成され、かつ前記放出口と前記シート案内面が対向して配置してあることを特徴とするシートの薄膜形成装置。
【請求項9】
減圧室と、該減圧室内においてシートと接触しながら前記シートを搬送するシート案内面を有し前記シート案内面の運動に伴って前記シートを搬送するシート搬送手段と、前記シート案内面上の前記シートに向かって微粒子を飛散させて前記シート上に薄膜を形成する微粒子発生源と、前記シート案内面上の前記シートを帯電させる帯電手段とを備えるシートの薄膜形成装置であって、前記帯電手段は、筐体の内部でプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、前記筐体からプラズマで発生した荷電粒子を前記筐体の外部に放出するための放出口と、前記シート案内面との間に10[V]以上かつ1000[V]以下の電位差を付与する電位差付与電極とを有することを特徴とするシートの薄膜形成装置。
【請求項10】
前記電位差付与電極が前記シート表面非接触式であることを特徴とする請求項9に記載のシートの薄膜形成装置。
【請求項11】
前記電位差付与電極が前記シート表面接触式であることを特徴とする請求項9に記載のシートの薄膜形成装置。
【請求項12】
前記プラズマ発生手段は、交流電圧でプラズマを励起するものであることを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載のシートの薄膜形成装置。
【請求項13】
前記放出口が前記筐体の表面積に対して占める割合は、0.1[%]以上かつ3[%]以下であることを特徴とする請求項8から12のいずれかに記載のシートの薄膜形成装置。
【請求項14】
前記シート案内面と前記放出口との距離は、1[mm]以上かつ100[mm]以下であることを特徴とする請求項8から13のいずれかに記載のシートの薄膜形成装置。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−248266(P2008−248266A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87169(P2007−87169)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】