シートパッド補強布の製造方法及び製造装置
【課題】成型が容易でかつ成型後の加工等に手間のかからない、また材料のロスが少ないシートパッド補強布の製造方法及び製造装置を提供すること。
【解決手段】外面から内部空間26に連通する複数の通気孔25を備える型20に、荒裁ちされた不織布シート1Bを固定する。その後、型20に固定された不織布シート1Bをカバー材40によって覆うことで、型20とカバー材40とにより閉塞空間41を形成し、不織布シート1Bを加熱する。不織布シート1Bを加熱した後に、通気孔25を介して閉塞空間41から空気を排気することで、不織布シート1Bを型20の外形に沿った形状に加工する。不織布シート1Bを加工した後に、カバー材40を外し、不織布シート1B(シートパッド補強布1)を型20から取り外す。
【解決手段】外面から内部空間26に連通する複数の通気孔25を備える型20に、荒裁ちされた不織布シート1Bを固定する。その後、型20に固定された不織布シート1Bをカバー材40によって覆うことで、型20とカバー材40とにより閉塞空間41を形成し、不織布シート1Bを加熱する。不織布シート1Bを加熱した後に、通気孔25を介して閉塞空間41から空気を排気することで、不織布シート1Bを型20の外形に沿った形状に加工する。不織布シート1Bを加工した後に、カバー材40を外し、不織布シート1B(シートパッド補強布1)を型20から取り外す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用座席シートのシートパッド補強布の製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用座席シートには、クッション材となるウレタン樹脂等を発泡させたシートパッドが用いられている(特許文献1参照)。また、クッション材としては、発泡させたウレタン樹脂以外にも、ベース繊維としての高融点繊維とバインダー繊維としての低融点繊維とが混合された繊維ウェブを積層した繊維性クッション材も提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
シートパッドは、布や皮革などで被覆されており、表面側が乗員を支持する面となり、裏面側がパイプフレーム、スプリングなどの支持部材に対して装着されることで、車両用座席シートを構成する。シートパッドの裏面は、少なくともその一部において、車両の揺動や乗員等の体の動きによって支持部材と擦れ合うため、シートパッドだけでは損傷しやすい。そこで、従来よりシートパッドの裏面には、補強層としてシートパッド補強布が設けられている。
【0004】
シートパッド補強布は、シートパッドを損傷から保護するものであるので、シートパッドに対してずれたり剥離したりすることがないようにシートパッドと一体不可分に形成されている。このため、シートパッドを製造する発泡成形工程において、あらかじめ型内面に補強布をセットした状態で樹脂を型内に注入発泡し、シートパッドの成型及び補強層の形成を同時に行う方法が採用されている。
【0005】
シートパッドの裏面は複雑な形状(例えば、図9及び図10に示される回り込み部14,15)を有しているので、これに合わせるために、従来は多数の小片を形状に合わせるように縫製などによって形成したものが補強布として用いられていた。しかしながら、裁断や縫製に多大の労力と時間を要するばかりでなく、型内面の形状に精度よく適合する補強布が得られにくいという問題点を有していた(特許文献1参照)。そこで、これらの問題点を解決すべく、不織布を型にて成型し、補強布を製造する方法が提案されている。
【0006】
一方、シートパッド補強布として用いることができる不織布についても、発泡成型における樹脂の滲み出し防止等を目的として、不織布に非通気性プラスチックフィルムを装着したものや、異なる見かけ密度の層を積層したものが提案されている(特許文献3及び4参照)。
【特許文献1】特開平5−130923号
【特許文献2】特開平10−291267号
【特許文献3】特開平5−138782号
【特許文献4】特開2000−62061号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シートパッド補強布を型にて成型する場合、裏面の形状によっては回り込み部が存在する。そこで、オス型およびメス型の金型を用いる特許文献1に記載の成型方法では、1回のプレスによって所望の形状を得ることは不可能であるため、型で成型できる形状にした後に、成型した不織布において回り込み部となる部分を折返す加工を施すことでシートパッド補強布を得ていた。
【0008】
この成型方法は、必要とされる型の形状は比較的単純であり、プレス装置も一般的なものを使用できるが、成型後に回り込み部を加工するための手間が必要であり作業が煩雑となっていた。更に、シートパッドを製造する発泡成形工程において発泡型に取付ける作業時の取り扱いを容易にするため、折返し加工で強度が低下した折返し部分を接着片で補強する手間もかけていた。
【0009】
また、上記の成型方法では、プレスにあたってシートパッド補強布の形状からはみ出した部分となる耳部を必要とするが、使用にあたっては不要であるため切除しなければならなかった。このため、材料となる不織布のロスも発生していた。
【0010】
そこで、本発明は成型が容易でかつ成型後の加工等に手間のかからない、また材料のロスが少ないシートパッド補強布の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のシートパッド補強布の製造方法は、シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備える型に、荒裁ちされたシートを被せて固定するステップと、型に固定されたシートをカバー材によって覆うことで、型とカバー材とにより閉塞空間を形成するステップと、シートを加熱するステップと、通気孔を介して閉塞空間から空気を排気することで、加熱されたシートを型の外形に沿った形状に加工するステップと、カバー材を外し、加工されたシートを型から取り外すステップとを備える。
【0012】
本発明のシートパッド補強布の製造方法によれば、シートパッドと略同一の形状とされた型にシートを被せることによって成型するため、成型されたシートの形状は所望のシートパッド補強布の形状とほぼ同じとなる。そのため、回り込み部等の複雑な形状の成型が容易となるだけでなく、成型後の折返し加工等も不要となり、手間がかからない。また、成型されたシートに耳部は発生しないため、成型後の切除は不要となり材料のロスを少なくできる。
【0013】
また、シートは、樹脂滲み出し防止シートの少なくとも片面に不織布が積層された2層以上の構造とすることが好ましい。このようなシートを用いることで、シートパッド補強布の成型後に、ウレタン樹脂等を用いてシートパッドの成型及び補強層の形成を行うときに、樹脂が滲み出すことを防止できる。
【0014】
また、シートは、不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシート、又は低融点繊維と高融点繊維とを混合させた不織布シートであることが好ましい。このようなシートを用いることで、シートパッド補強布の成型が容易になるだけでなく、成型後のシートパッド補強布が適度な剛性を有することとなり、形状が良好に保持される。
【0015】
また、シートを固定するステップにおいて、シートを磁石によって型に固定することが好ましい。これにより、閉塞空間から空気を排気する時などにシートが外れることを効果的に防止することができる。
【0016】
また、本発明のシートパッド補強布の製造方法は、シートを加熱するステップの前に型の通気孔を介して閉塞空間内の空気を排気するステップを備えることが好ましい。シートの加熱前に閉塞空間内の空気が一度排気されることで、カバー材によりシートを型に密着させることができ、シートを型の外形に合わせて成型しやすくなる。
【0017】
また、シートを加熱するステップにおいて、閉塞空間に加熱空気を供給することが好ましい。このような構成とすることで、シートを型に密着させた場合であっても、加熱空気の流れによってシートが型から剥がれる可能性を低減できる。
【0018】
また、シートを加熱するステップにおいて、内部空間に加熱空気を供給することで、型の通気孔を介して閉塞空間に加熱空気を供給するようにしてもよい。このような構成とすることで、シートの加熱を加熱空気と型からの熱の両方により効率良く行うことができる。
【0019】
また、閉塞空間を形成するステップにおいて、少なくとも型と、カバー材と、型を囲むように形成され、カバー材が固定されたカバー枠と、によって閉塞空間が形成されるようにしてもよい。このように構成することで、カバー枠の移動によって閉塞空間を形成することが可能となるため、閉塞空間を容易に形成できるだけでなく、形成に必要な時間を短縮することができる。
【0020】
本発明のシートパッド補強布の製造装置は、シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備え、荒裁ちされたシートが固定される型と、型を覆うことで閉塞空間を形成するカバー材と、シートを加熱する加熱ユニットと、閉塞空間内の空気を排気する排気ユニットとを備える。
【0021】
本発明のシートパッド補強布の製造装置によれば、シートパッドと略同一の形状とされた型に被せることによってシートを成型するため、成型されたシートの形状は所望のシートパッド補強布の形状とほぼ同じとなる。そのため、回り込み部等の複雑な形状の成型が容易となるだけでなく、成型後の折返し加工等も不要となり、手間がかからない。また、成型されたシートに耳部は発生しないため、成型後の切除は不要となり材料のロスを少なくできる。
【0022】
また、加熱ユニットは、閉塞空間に加熱空気を供給するようにすることが好ましい。このような構成とすることで、シートを型に密着させた場合であっても、加熱空気の流れによってシートが型から剥がれる可能性を低減できる。
【0023】
また、加熱ユニットは、型の内部空間に加熱空気を供給することで、通気孔を介して閉塞空間に加熱空気を供給するようにしてもよい。このような構成とすることで、シートの加熱を加熱空気と型からの熱の両方により効率良く行うことができる。
【0024】
また、上記シートパッド補強布の製造装置は、カバー材が固定されるカバー枠を更に備え、少なくとも前記型と、前記カバー材と、カバー枠と、によって閉塞空間が形成されるように構成することが好ましい。このように構成することで、カバー枠(少なくともカバー枠の一部)の移動によって閉塞空間を形成することができるため、閉塞空間を容易に形成できるだけでなく、形成に必要な時間を短縮することができる。
【0025】
また、カバー枠は、水平方向に分離可能な一対の可動枠を備え、可動枠のそれぞれにカバー材が固定されるように構成することが好ましい。このように構成することで、可動枠を用いずにカバー材として袋状フィルムを用いて型を覆う場合と比べて、閉塞空間を形成するために必要な時間及び加工後にシートを型から取り外すためのスペースを確保するために必要な時間を短縮することができる。
【0026】
更に、可動枠は、閉塞空間の内外を連通させるダクトを備えるようにすることが好ましい。このように構成することで、型の通気孔だけでなく、可動枠のダクトを介して閉塞空間からの空気の排気及び閉塞空間への加熱空気の供給を行うことが可能となるため、シートパッド補強布の製造に必要な時間を短縮することができる。
【0027】
また、カバー材は、閉塞空間内の空気が排気される前の状態においてひだ部を有するようにしてもよい。このように構成することで、シートを型の外形に沿った形状に加工するときにひだ部が伸び代となるため、複雑な形状や大きな回り込み部を有する型に対して、カバー材は高い形状追従性を示すことができる。
【0028】
また、カバー材は、ひだ部の形状を維持するように固定される弾性紐体を備えてもよい。このように構成することで、シートを型の外形に沿った形状に加工する過程で閉塞空間から空気を排気するとき、型のおおよその形(概形)に対応するための大きな変形は弾性紐体の変形によって追従され、型の細部に対応するための小さな変形はひだ部の変形によって追従される。したがって、型のおおよその形に対応するためにカバー材が大きく変形するとき(例えば、排気の初期段階)に、ひだ部が型の一部に片寄ることが防止されるため、複雑な形状や大きな回り込み部を有する型に対して、カバー材は更に高い形状追従性を示すことができる。
【0029】
弾性紐体は、ひだ部と交差するようにカバー材に固定されていることが好ましい。このような構成とすることで、加工前にカバー材の自重等によってひだ部がカバー材の一部に偏るために、加工時に伸び代が不足する部分が発生することを低減できる。
【0030】
カバー材は、気密性を有する主層と、主層よりも高い引張強度を有する補強層とを備え、補強層は、カバー材が型に接する側の面に設けられるように構成してもよい。このように構成することで、主層として薄く伸びやすい材料を用いた場合であっても、補強層によって加工時の伸びに起因する主層の損傷が抑えられるため、カバー材の繰り返し利用に対する耐久性が向上する。
【0031】
補強層は、伸縮可能なニット状素材から構成することが好ましい。このように構成することで、閉塞空間内の空気が排気されて、補強層が型へ接触するとき、ニット状素材の補強層が主層に対する緩衝層の役割を果たす。したがって、カバー材の繰り返し利用に対する耐久性が更に向上する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、成型が容易でかつ成型後の加工等に手間のかからない、また材料のロスが少ないシートパッド補強布の製造方法及び製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、本発明の実施の形態は、車両用座席シートの背もたれ部に用いられるシートパッド補強布を例として取り上げているが、本発明は車両用座席シートの座部やその他のシートパッド補強布を用いる部分に適用することができる。また、シートパッド補強布の製造装置に関する説明では、同一の部分に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0034】
図1は、本発明に係るシートパッド補強布の製造方法もしくは製造装置によって製造されたシートパッド補強布の一例を示す斜視図である。
【0035】
シートパッド補強布1は、荒裁ちされたシートを後述する型20にて成型したものであり、車両用座席シート(図示せず)に対応した形状を有している。具体的には、使用者の背中に面する表面に対応する背部11と、使用者に向かって張り出すことで使用者を左右から保持する形状を有する部分に対応する側部12と、ヘッドレスト等が取付けられる箇所に対応する貫通孔13とを備えている。更に、図9及び図10の断面図に示されるように、成型された補強布1は、回り込み部14,15を備えている。
【0036】
シートパッド補強布1の成型されるシートの材料としては、例えば不織布を用いることができるが、空気に対する通気性を有する材料であれば、特に限定されない。
【0037】
不織布をシートの材料として用いる場合、不織布のみからなるシートを用いることもできるが、それ以外にも、樹脂等の液体が浸透しにくい樹脂滲み出し防止シートの少なくとも片面に不織布が積層された2層以上の構造のシートを用いることができる。なお、ここでいう樹脂滲み出し防止とは、ウレタン樹脂等のシートパッドの成型に用いる樹脂が浸透しづらい性質を意味する。このような材料を用いることで、シートパッド補強布の成型後に、従来と同様の方法によりウレタン樹脂等を用いてシートパッドの成型及び補強層の形成を行うときに、樹脂が滲み出すことを防止できる。このような低浸透性シートの材料としては、例えばポリウレタンフィルムやウレタン樹脂等の浸透が遅い高密度不織布を用いることができる。
【0038】
また、シートパッド補強布1の成型に用いられるシートとしては、不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシートや、低融点繊維と高融点繊維とを混合させた不織布シートを用いることもできる。このような不織布シートを用いた場合、後述する本発明の方法における不織布シートの加熱時には、熱可塑性樹脂又は低融点繊維が溶融し、不織布シートが軟化することで、シートパッド補強布1の成型が容易になる。更に、成型後冷却固化することで、成型後のシートパッド補強布1が適度な剛性を有することとなり、形状が良好に保持される。
【0039】
不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシートの場合、含有させる熱可塑性樹脂としては、粒状ホットメルト接着樹脂(接着剤)を用いることが好ましい。例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニールクロリド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンビニールアクセテート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブチラール樹脂等があり、これらの混合物であってもよい。また、融点は70〜100℃のものが好ましい。粒状ホットメルト接着剤の粒径としては200μm以下が好ましく、必要に応じて粒径分布を変えてもよい。
【0040】
一方、不織布に低融点繊維と高融点繊維とを混合させたシートの場合、次のような材料を用いることができる。
【0041】
低融点繊維としては、高融点繊維よりも融点が低く、特定の軟化点及び溶融粘度を有するものが用いられる。具体的には、高融点繊維と混合して高融点繊維の融点より低い温度に加熱することにより溶融して高融点繊維間を融着することができるホットメルト型の接着性繊維が用いられる。また、使用される繊維の太さは、1.5〜10d(デニール)程度が好ましい。
【0042】
このような低融点繊維としては、例えばポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性繊維があげられる。これらの繊維は単独で用いてもよいし、高融点繊維と組合せることでコンジュゲート型、芯鞘型構造等としたものでもよい。この低融点繊維の繊度、繊維長は特に限定されない。この低融点繊維の融点は、好ましくは100〜160℃程度(もしくは、軟化点が80〜140℃程度)であることが好ましい。また、低融点繊維はスチーム活性を有することが好ましく、後述する本発明の方法における不織布シートを加熱する際に加熱蒸気を用いる場合には、特に好適である。
【0043】
高融点繊維としては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、ナイロン等が用いられる。この高融点繊維の繊度、繊維長も特に限定されない。この高融点繊維の融点は180℃以上(もしくは、軟化点が160℃以上)であればよい。また、低融点繊維と高融点繊維との融点の差(もしくは軟化点の差)が50℃以上あることが好ましい。
【0044】
低融点繊維と高融点繊維との混合率は、低融点繊維20〜70重量%、高融点繊維30〜80重量%が好ましい。低融点繊維の混合率が20重量%より少ないと融着部分が少なくなり所望の剛性が得られないおそれがある。また、低融点繊維の混合率が70重量%より大きいと剛性が顕著に出るため型からの脱型が困難になるだけでなく、成型後のシート表面がプラスチック化して繊維が残らなくなるためにシートパッド補強布として用いた時にこすれ音が発生しやすくなる。
【0045】
なお、本実施の形態では、シートパッド補強布1の成型に用いるシートに不織布を用いたシートを、単に「不織布シート」として説明する。また、原則として、成型前の不織布シートを「不織布シート」とし、成型後の不織布シートを「シートパッド補強布」として説明する。
【0046】
次に、図2,5,9及び10を用いて、本発明に係るシートパッド補強布の製造装置の第1実施形態を説明する。
【0047】
図2は、シートパッド補強布の製造装置2を示す斜視図である。
【0048】
シートパッド補強布の製造装置2は、型20と、型20が固定される基部30と、型20を覆いつつ基部30に固定されることで閉塞空間41を形成するカバー材40(図5等参照)と、閉塞空間41へ空気の給排気を行う給排気ユニット50とを備えている。
【0049】
型20は、外形はシートパッド補強布1と略同一の形状とされ、内部には内部空間26(図9,図10参照)を有している。型20は、前面部21と、側面部22と、筒部23と、後面部24(図9,10参照)と、複数の通気孔25(図9,10参照)とを備える。型20の前面部21はシートパッド補強布1の背部11を成型する部分となり、側面部22はシートパッド補強布1の側部12及び回り込み部15(図10参照)を成型する部分となる。また、型20の筒部23はシートパッド補強布1の貫通孔13の周囲を成型する部分となり、後面部24はシートパッド補強布1の回り込み部14(図9参照)を成型する部分となる。
【0050】
通気孔25は、型20の外面から内部空間26に連通するように形成され、給排気ユニット50によって閉塞空間41へ空気の給排気を行う時に、空気の流路となる。通気孔25は、前面部21、側面部22、筒部23及び後面部24の各所に設けられている。なお、シートパッド補強布1を型20に沿った形状とするために、角部(図9のA部及び図10のB部)には通気孔25を他の箇所よりも多く設けることが好ましい。
【0051】
型20の材質は特に限定されないが、加工性及び熱伝導性の面からアルミニウムを用いることが好ましい。
【0052】
基部30は、基台31と、基台31から立設されると共にそれぞれ型20に取付けられた給気支脚32,排気支脚33とを備えている。給気支脚32と排気支脚33は中空であり、型20の内部空間26と連通されることで、図示しない基台31内部の給気路及び排気路と共に閉塞空間41と給排気ユニット50とをつなぐ空気の流路となる。
【0053】
カバー材40は、不織布が固定された型20を覆うことができるものであれば、特に形状及び大きさは限定されないが、取り扱いやすさを考慮して、例えば袋状フィルムを用いることができる。また、図5において、カバー材40は基台31に対して固定されているが、成型されてシートパッド補強布1となる不織布シート1Bを覆う閉塞空間41を形成するように固定されていれば良く、例えば、給気支脚32,排気支脚33に固定するようにしてもよい。
【0054】
カバー材40の材料は、加熱され、且つ給排気ユニット50の給排気により膨張と不織布シート1B及び型20への密着が繰り返し行われるため、これを満足するような性能を有するものが選定される。
【0055】
図1のような車両用座席シートの背もたれ部に用いられるシートパッド補強布を成型する場合には、伸度が300%以上あるものが好ましく、厚さは30〜100μm程度が好ましい。なお、車両用座席シートにおける座部用のシートパッド補強布のように、比較的形状が単純なものを成型する場合には、カバー材の伸度は300%よりも低いものであってもよい。これらの点を考慮して、カバー材40(袋状フィルム)の材料としては、例えば、伸度300%、厚み50μmのポリウレタンを用いることができる。
【0056】
給排気ユニット50は、給気ユニット(加熱ユニット)51と、給気ユニット51と基部30内部の給気路とを接続する給気管52と、排気ユニット54と、排気ユニット54と基部30内部の排気路とを接続する排気管53とを備えている。
【0057】
給気ユニット(加熱ユニット)51は、給気管52、基部30内部の給気路及び給気支脚32を介して型20の内部空間26に加熱空気を供給することで、型20及び不織布シート1Bを加熱することができる。加熱空気は、型20の内部空間26を経由して、通気孔25を介して閉塞空間41に供給されるため、加熱空気の供給に伴ってカバー材40が膨らむ。なお、加熱空気には、単に加熱された空気だけでなく加熱蒸気も含む。加熱蒸気を用いた場合、不織布シート1B(特に、不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシートや、低融点繊維と高融点繊維とを混合させたシート)が溶融固化する時間、すなわち補強布の成形時間を短時間とすることができる。
【0058】
排気ユニット54は、通気孔25、型20の内部空間26、排気支脚33、基部30内部の排気路(図示せず)及び排気管53を介して閉塞空間41の空気を排気することができる装置であれば特に限定されない。
【0059】
本発明によれば、プレス加工ではないため凹凸両面の型は不要である。更に、図8や図9に示されるような複雑な形状を有する回り込み部14,15の成型にもスライドコア型といった特別な型も不要である。そのため、型製作の費用と時間を節約することができる。
【0060】
次に、図12を用いて、本発明に係るシートパッド補強布の製造装置の第2実施形態を説明する。この第2実施形態では、第1実施形態の場合と異なる経路で加熱空気が閉塞空間に供給される。
【0061】
図12に示されるように、第2実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置102では、基部130の基台131に複数の給気孔135を設けることで、型20の内部空間26を経由させずに閉塞空間41に加熱空気が供給される。図2の製造装置2では、給気支脚32を介して型20の内部空間26へ加熱空気が供給されるが、図12の製造装置102では、給気管52、基部130内部の給気路(図示せず)及び給気孔135を介して閉塞空間41に加熱空気が供給される。そのため、支脚132は、型20を基台131に固定する役割を果たすが、基部130内部の給気路と型20の内部空間26とを接続しないように構成されている。
【0062】
なお、図12の製造装置102において、図2の製造装置2と同一の部分には同一の符号を付すことで重複する説明を省略する。
【0063】
次に、図13を用いて、本発明に係るシートパッド補強布の製造装置の第3実施形態を説明する。この第3実施形態に係る製造装置は、カバー材が固定されるカバー枠を用いて、カバー材が前後及び側方から型に固定されたシートを覆うことで閉塞空間を形成するという点で、カバー材が型に固定されたシート全体を覆うことで閉塞空間を形成する第1実施形態に係る製造装置と異なる。
【0064】
図13は、第3実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置202を示す斜視図である。
【0065】
このシートパッド補強布の製造装置202は、型20と、型20が固定される基部230と、前後及び側方から型20に固定されたシートを覆うことで閉塞空間241を形成するカバー材240と、型20を囲むように形成され、カバー材240が固定されるカバー枠260と、を備えている。また、第1実施形態に係る製造装置2と同様に、製造装置202は、閉塞空間241へ空気の給排気を行う給排気ユニット50を備えている。なお、図13に示されるシートパッド補強布の製造装置202は、閉塞空間241の内部に2つの型20を設けることで、2つのシートパッド補強布1を同時に製造することができる。
【0066】
基部230は、基台231と、基台231を支持する脚部234と、基台231から立設されると共にそれぞれ型20に取付けられた給気支脚32,排気支脚33とを備える。第1実施形態に係る製造装置2と同様に、基部230の給気支脚32と排気支脚33は、型20の内部空間26と連通されることで、基台231内部の給気路及び排気路と共に閉塞空間241と給排気ユニット50とをつなぐ空気の流路となる。
【0067】
カバー材240は、シート状フィルムであり、第1実施形態に係る製造装置2のカバー材40と同様の材料とすることができる。このカバー材240は、型20に固定されたシートを前後及び側面から覆うようにカバー枠260に固定され、カバー枠260及び基部230と協働して閉塞空間241を形成する。なお、第1実施形態に係る製造装置2の場合と異なり、カバー材240はカバー枠260(具体的には、後述する可動枠261及び天板262)の端部には固定されるが、基部230には固定されない。
【0068】
給排気ユニット50は、第1実施形態に係る製造装置2が備える給排気ユニットと同様のものであり、給気支脚32等を介して型20の内部空間26に加熱空気を供給することで、型20及び不織布シート1Bを加熱することができる。また、給排気ユニット50は、排気支脚33等を介して閉塞空間241の空気を排気することができる。
【0069】
カバー枠260は、可動枠261と、可動枠261に対向するように設けられた天板262と、一方の端部が天板262に対して固定され、他方の端部が脚部234に固定された支柱263とを備えている。
【0070】
可動枠261は支柱263が挿通される挿通部261Aを備えており、図示しない駆動装置によって、可動枠261は4本の支柱263に沿って上下方向に移動できるようにされている。上述したカバー材240は、可動枠261と天板262との間に配され、可動枠261と天板262の端部において閉塞空間241に対する空気の流出入が発生しないように固定されている。このように構成することで、可動枠261が天板262に近い位置まで上昇している状態(図13において二点鎖線で示される可動枠261)では、作業者が不織布シート1Bを金型20に固定するために十分な空間が確保され、可動枠261が基台231に接する位置まで下降している状態(図13において実線で示される可動枠261)では、閉塞空間241が形成される。なお、可動枠261と基台231とが接する端面261Eにはパッキン又は粘着テープ等が介在しており、端面261Eを介して閉塞空間241に対する空気の流出入が発生しないようにされている。
【0071】
この第3実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置202では、第1及び第2実施形態の場合と異なり、カバー枠260の可動枠261が移動することによって、閉塞空間241が形成される。したがって、カバー枠260の一部である可動枠261の移動によって閉塞空間241を形成することができるため、閉塞空間241を容易に形成できるだけでなく、形成に必要な時間を短縮することができる。特に、可動枠261を駆動装置により移動できるようにした場合には、本製造装置による一連の製造工程を容易に自動化することができる。
【0072】
次に、図14〜16を用いて、本発明に係るシートパッド補強布の製造装置の第4実施形態を説明する。この第4実施形態に係る製造装置は、カバー材が固定されるカバー枠を備えるという点で第3実施形態に係る製造装置202と一致するが、カバー枠が水平方向に移動する点で異なる。また、カバー枠に設けたダクトを介して閉塞空間の内外を連通させた点で第3実施形態に係る製造装置202と異なる。
【0073】
図14は、第4実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置302を示す斜視図である。また、図15は、製造装置302のカバー枠360を構成する可動枠361A,361Bを示す斜視図である。
【0074】
このシートパッド補強布の製造装置302は、型20と、型20が固定される基部330と、型20を前後から覆うことで閉塞空間341を形成するカバー材340と、型20を囲むように形成され、カバー材340が固定されるカバー枠360と、を備えている。また、第1実施形態に係る製造装置と同様に、製造装置302は、閉塞空間341へ空気の給排気を行う給排気ユニット50を備えている。なお、第3実施形態に係る製造装置と同様に、図14に示されるシートパッド補強布の製造装置302は、閉塞空間341の内部に2つの型20を設けることで、2つのシートパッド補強布1を同時に製造することができる。
【0075】
基部330は、基台331と、基台331を支持する脚部334と、基台331から立設されると共にそれぞれ型20に取付けられた給気支脚32,排気支脚33とを備える。第1実施形態に係る製造装置2と同様に、基部330の給気支脚32と排気支脚33は、型20の内部空間26と連通されることで、基台331内部の給気路及び排気路と共に閉塞空間341と給排気ユニット50とをつなぐ空気の流路となる。なお、上述の第3の実施形態の場合と異なり、この第4実施形態に係る製造装置302では、カバー材340と、カバー枠360と、基部330の給気支脚32及び排気支脚33とによって閉塞空間341が形成され、基台331は閉塞空間341の形成に直接的には関係しない。
【0076】
カバー材340は、シート状フィルムであり、第1実施形態に係る製造装置2のカバー材40と同様の材料とすることができる。このカバー材340は、型20の前後から覆うようにカバー枠360に固定され、閉塞空間341を形成する。なお、第3実施形態に係る製造装置202の場合と異なり、カバー材340はカバー枠360(具体的には、後述する2つの可動枠361A,361B)の端部にのみ固定される。
【0077】
給排気ユニット50は、第1実施形態に係る製造装置2が備える給排気ユニットと同様のものであり、給気支脚32等を介して型20の内部空間26に加熱空気を供給することで、型20及び不織布シート1Bを加熱することができる。また、給排気ユニット50は、排気支脚33等を介して閉塞空間341の空気を排気することができる。
【0078】
カバー枠360は、2つの可動枠361A,361Bと、可動枠361A,361Bの上方に設けられた天板362と、天板362を脚部334に対して固定する支柱363と、可動枠361A,361Bを水平方向に移動させるためのアクチュエータ364と、閉塞空間341の内外を連通させるダクト365とを備える。
【0079】
可動枠361A,361Bは、水平方向に分離可能な一対の可動枠であり、アクチュエータ364の駆動によって、水平方向(基台331及び天板362の表面と平行な方向)に移動できるようにされている。上述したカバー材340は、型20を前後から覆うように可動枠361A,361Bそれぞれの端部において閉塞空間341に対する空気の流出入が発生しないように固定されている。このように構成することで、可動枠361A,361Bが離間した状態では、作業者が不織布シート1Bを金型20に固定するために十分な空間が確保され、可動枠361A,361Bが端面361Eで接している状態(図14及び図15に示される状態)では、閉塞空間341が形成される。また、可動枠361A,361Bが接する端面361Eにはパッキン又は粘着テープ等が介在しており、端面361Eを介して閉塞空間341に対する空気の流出入が発生しないようにされている。
【0080】
可動枠361A,361Bのダクト365は、可動枠361A,361Bの内部を経由して可動枠361A,361Bの外部まで導出され(図示せず)、可動枠361A,361Bの表面に設けられた複数の開口部365A(図15参照)を介して閉塞空間341の内外を連通させるように構成されている。このダクト365は、図示しない吸排気管を経由して給排気ユニット50とそれぞれ接続されており、給排気ユニット50による加熱空気の供給と、閉塞空間341からの空気の排気ができるように構成されている。
【0081】
図16は、図15において可動枠361Bを取り除いた場合の正面図であり、可動枠361Aと基部330との配置関係を示す図である。この第4実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置302では、カバー材340と、カバー枠360と、基部330の給気支脚32及び排気支脚33とによって閉塞空間341が形成される。そのため、図16に示されるように、給気支脚32及び排気支脚33と可動枠361A,361Bとが接する端面361Eにはパッキン又は粘着テープ等が介在しており、端面361Eを介して閉塞空間341に対する空気の流出入が発生しないようにされている。
【0082】
以上、第4実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置302では、カバー枠360の可動枠361A,361Bが移動することによって、閉塞空間341が形成される。したがって、可動枠361A,361Bの移動によって容易に閉塞空間を形成することができるため、袋状フィルムのカバー材を用いて型を覆う場合と比べて、閉塞空間を形成するために必要な時間及び加工後にシートを型から取り外すためのスペースを確保するために必要な時間を短縮することができる。また、可動枠361はアクチュエータ364によって移動させることができるため、本製造装置による一連の製造工程を容易に自動化することができる。
【0083】
さらに、この第4実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置302は、可動枠361A,361Bのダクト365を介して、閉塞空間341の内外を連通させるように構成されている。したがって、型20の内部空間26を介してだけでなく、ダクト365を介して給排気ユニット50による加熱空気の供給と、閉塞空間341からの空気の排気を行うことができる。したがって、装置全体として給排気口が増加するため、加熱空気の供給及び空気の排気に要する時間を短縮することができる。すなわち、型20の通気孔25だけでなく、可動枠361A,361Bのダクトを介して閉塞空間341からの空気の排気及び閉塞空間341への加熱空気の供給を行うことが可能となるため、シートパッド補強布の製造に必要な時間を短縮することができる。
【0084】
引き続き、図17及び図18を用いて、カバー材の変形例を説明する。
【0085】
図17は、カバー材の第1の変形例を示す斜視図である。この第1の変形例に係るカバー材440は、上述の袋状フィルムを用いたカバー材40や,シート状フィルムを用いたカバー材240,340と異なり、閉塞空間内の空気が排気される前の状態において複数のひだ部441を有する。なお、ここでいう「ひだ」とは、例えばカーテンのドレープのように布を垂らしたときにできるゆとりを持たせた部分や、重なりを持たせた部分を意味する。また、ひだ部441は複数が規則的に連続するようにしても、不規則に連続するようにしてもよい。
【0086】
カバー材440の表面には、弾性紐体442がひだ部441の形状を維持するように固定される。この弾性紐体442は、ひだ部441と交差するようにカバー材440に縫製又は接着等によって固定されている。弾性紐体442としては、例えばゴムひもを用いることができる。
【0087】
この変形例に係るカバー材440をカバー材40,240,340の代わりに用いた場合、不織布シート1Bを型20の外形に沿った形状に加工するときにひだ部441が伸び代となる。したがって、複雑な形状や大きな回り込み部を有する型20に対して、カバー材440は高い形状追従性を示すことができる。
【0088】
また、ひだ部441の形状を維持するように固定される弾性紐体442を設けることで、不織布シート1Bを型20の外形に沿った形状に加工する過程で閉塞空間41,241,341から空気を排気するとき、型20のおおよその形(概形)に対応するための大きな変形は弾性紐体442の変形によって追従され、型20の細部に対応するための小さな変形はひだ部441の変形によって追従される。したがって、型20のおおよその形に対応するためにカバー材440が大きく変形するとき(例えば、排気の初期段階)に、ひだ部441が型20の一部に片寄ることが防止されるため、複雑な形状や大きな回り込み部を有する型20に対して、カバー材440は更に高い形状追従性を示すことができる。
【0089】
さらに、弾性紐体442は、ひだ部441と交差するようにカバー材440に固定されている。したがって、加工前にカバー材440の自重等によってひだ部441がカバー材440の一部に偏るために、加工時に伸び代が不足する部分が発生することを低減できる。
【0090】
上述のような特徴を有するこのカバー材440は、大きな伸びに対応しやすいため、第3実施形態における可動枠261及び第4実施形態における可動枠361A,361Bに取り付けられるカバー材として好適に用いることができる。
【0091】
なお、図17ではひだ部441を水平方向に形成させているが、ひだ部441の形成方向はこれに限定されず、垂直方向のみ又は水平方向と垂直方向の両方に形成してもよい。なお、ひだ部を垂直方向に形成した場合、形状を崩すような重力が働かないため、垂直方向のひだ部のために弾性紐体を設けなくとも、ひだ部は形状を維持することができる。
【0092】
図18は、カバー材の第2の変形例を示す断面図である。この第2の変形例に係るカバー材540は、二層構造とされている点で、他のカバー材40,240,340,440と異なる。
【0093】
このカバー材540は、気密性を有する主層541と、前記主層よりも高い引張強度を有する補強層542とを備えている。各層を構成する材料としては、主層541には例えば気密性のあるウレタンフィルムを用いることができる。一方、補強層542には、伸縮可能なニット状素材(すなわち、編目を有する素材)を用いることが好ましく、例えばナイロン、ポリエステル、アクリル等のジャージ生地や天竺を用いることができる。主層541と補強層542とは、接着によって一体とすることが好ましいが、補強層542に対して主層541をコーティングしてもよい。
【0094】
また、主層541及び補強層542の配置は、主層541が閉塞空間41,241,341,441に対して外側となるようにして、補強層542が型20に接する側(閉塞空間41,241,341,441に面する側)の面に設けられて、基部30又は可動枠261,361A,361B等に固定される。
【0095】
この変形例に係るカバー材540は、気密性を有する主層541と、主層541よりも高い引張強度を有する補強層542とを備えることで、主層541として薄く伸びやすい材料を用いた場合であっても、補強層542によって加工時の伸びに起因する主層541の損傷が抑えられる。したがって、カバー材の繰り返し利用に対する耐久性が向上する。
【0096】
また、補強層542は、カバー材540が型20に接する側の面に設けられ、伸縮可能なニット状素材から構成することで、閉塞空間内の空気を排気されて補強層542が型20へ接触するとき、ニット状素材の補強層542が主層541に対する緩衝層の役割を果たす。したがって、カバー材540の繰り返し利用に対する耐久性が更に向上する。
【0097】
次に、図3から図11を用いて、本発明のシートパッド補強布の製造方法を説明する。なお、以下の説明では、第1の第1の実施形態に係る製造装置を用いてシートパッド補強布を製造する場合を説明する。
【0098】
図3に示されるように、本発明に用いられる不織布シート1B(すなわち、成型前のシートパッド補強布1)は、使用される車両用シートパッド補強布の形状を展開した形に予め荒裁ちして供給される。このように裁断することでシートパッド補強布の成型後に不要部分を切除する手間をなくすことができる。
【0099】
裁断された不織布シート1Bは、図4に示されるように型20に被せられた後に、図示しない磁石で固定される。磁石は型の内面に予め取付けられており、型20に被せた不織布シート1Bの上に別の磁石を置くことで、不織布シート1Bを固定する。または、磁石または鉄ねじを型20に埋め込み、不織布シート1Bを外部から抑える部材に磁石を用いて固定するようにしてもよい。このように不織布シート1Bを固定することで、給排気ユニット50による加熱空気の給排気時に不織布シートが外れることを防止できる。なお、図4では、説明のため、不織布シート1Bを透明として示している。
【0100】
不織布シート1Bを型20に固定した後、図5に示されるように、不織布シート1Bをカバー材40によって覆うことで、型20とカバー材40とにより閉塞空間41を形成する。
【0101】
好ましくは、図6に示されるように、不織布シート1Bをカバー材40によって覆った後に(換言すれば、後述する不織布シート1Bを加熱するステップの前に)、型20の通気孔25を介して閉塞空間41内の空気を排気する予備排気を実施するとよい。閉塞空間41内の空気が一旦排気されることで、カバー材40によって不織布シート1Bを型20に密着させることができ、不織布シート1Bを型20の外面の形状に合わせて成型しやすくなる。
【0102】
つづいて、図7に示されるように、型20とカバー材40とにより閉塞空間41を形成した後に(もしくは、上述の予備排気の後に)、給排気ユニット50の給気ユニット(加熱ユニット)51から型20の内部に加熱空気(加熱蒸気を含む)を供給することで、不織布シート1B及び型20を加熱する。このとき、加熱空気は型20の通気孔25を介して閉塞空間41まで供給されるため、カバー材40が膨らむ。このような構成とした場合、加熱空気と型からの熱の両方により不織布シート1Bを加熱することができるので、供給される加熱空気が不織布シート1Bの加熱に有効に利用される。
【0103】
また、図12に示されるシートパッド補強布の製造装置102を用いた場合、加熱空気は閉塞空間41に直接供給されるが、製造装置2を用いた場合と同様に、不織布シート1Bを加熱することできる。製造装置102では、加熱空気が型20の内部空間26から通気孔25を介して閉塞空間41へ供給される態様とされていない。そのため、上述した予備排気を行うことで、不織布シート1Bが型20に密着している場合であっても、加熱空気の流れによって不織布シート1Bが型20から剥がれる可能性を低減できる。
【0104】
不織布シート1Bが低融点繊維と高融点繊維とを混合させた不織布シートである場合には、加熱空気の温度は、低融点繊維の融点より高く、且つ高融点繊維の融点より低い温度とされる。
【0105】
以下は、不織布シート1Bとして、低融点繊維と高融点繊維とを混合させたシートを用いた場合の実施例である。
・低融点繊維(ポリエステル:EE−7[ユニチカファイバー株式会社製]):繊維長41mm、繊維太さ6d(デニール)、融点110℃(軟化点90℃)、混合率40重量%
・高融点繊維(ポリエステル:C300 テトロン(登録商標)[東レ株式会社製]):繊維長64mm、繊維太さ6d(デニール)、融点200℃(軟化点180℃)、混合率60重量%
・不織布シート1Bの目付け:120g/m2
・加熱蒸気温度:103℃
・加熱空気供給時間:12秒
【0106】
不織布シート1Bを加熱した後、排気ユニット54を動作させて、図8に示されるように閉塞空間41の空気を排気する。
【0107】
排気ユニット54が動作することで、閉塞空間41の空気は、図9及び図10に示されるように、通気性を有する不織布シート1B及び型20の通気孔25を介して型20の内部に流入する。そして、型20の内部は、排気支脚33、基台31の排気路、排気管53を介して、排気ユニット54と連通しているため、閉塞空間41の空気を排気することができる。空気の排気によって、膨らんでいたカバー材40は型20に吸い寄せられるように収縮し、加熱されて可塑性が高くなっている不織布シート1Bはカバー材40の収縮にあわせて型20に吸い寄せられるように変形する。これにより、不織布シート1Bは型20に密着し、型20の外形に沿った形状に加工される。
【0108】
不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシートを用いた場合には、熱可塑樹脂が加熱され溶融した状態で閉塞空間41内の空気を排気して、不織布シート1Bが型20に密着される。密着させた後に不織布シート1Bは冷却されて、不織布シート1Bの熱可塑性樹脂は固化する。そのため、不織布シート1Bは型20の外形に沿った形状となるだけでなく、成型されたシートパッド補強布1に適度な剛性を与えることができる。
【0109】
低融点繊維と高融点繊維とを混合させたシートを用いた場合には、低融点繊維が加熱され溶融した状態で閉塞空間41内の空気を排気して、不織布シート1Bが型20に密着される。密着させた後に不織布シート1Bは冷却されて、不織布シート1Bにおいて低融点繊維の高融点繊維への融着固化が起こる。そのため、熱可塑性樹脂を含有させたシートと同様に、不織布シート1Bは型20の外形に沿った形状となるだけでなく、成型されたシートパッド補強布1に適度な剛性を与えることができる。
【0110】
閉塞空間41の空気を排気して、不織布シート1Bが形状を保持する温度まで冷却させた後、図11に示されるように、カバー材40を外し、成型された不織布シート1B(すなわち、シートパッド補強布1)を型20から取り外す。
【0111】
冷却させた不織布シート1Bは、ある程度の剛性を有しているが、型20から外す上での支障となるものではないため、容易に取り外すことができる。
【0112】
なお、図13の第3実施形態に係る製造装置202を用いてシートパッド補強布を製造する場合も、カバー枠260の可動枠261の移動によって閉塞空間241を形成することを除いて、上述した第1実施形態に係る製造装置2を用いる場合と同様の手順によりシートパッド補強布1を製造することができる。
【0113】
また、図14の第4実施形態に係る製造装置302を用いてシートパッド補強布を製造する場合も、カバー枠360の可動枠361A,361Bの移動によって閉塞空間341を形成し、ダクト365を用いて加熱空気の供給及び空気の排気を行うことを除いて、上述した第1実施形態に係る製造装置2を用いる場合と同様の手順によりシートパッド補強布1を製造することができる。
【0114】
すなわち、閉塞空間を形成するステップにおいて、少なくとも型20と、カバー材240(340)と、型20を囲むように形成され、カバー材240(340)が固定されたカバー枠260(360)と、によって閉塞空間241(341)が形成される点を除いて、第1実施形態に係る製造装置2を用いる場合と同様の手順によりシートパッド補強布を製造することができる。なお、第3実施形態に係る製造装置202では、基部230の基台231が閉塞空間241の形成に寄与し、第4実施形態に係る製造装置302では、基部330の給気支脚32と排気支脚33とが閉塞空間341が形成に寄与している。
【0115】
本発明によれば、シートパッドと略同一の形状とされた型に被せることによってシートを成型するため、成型されたシートの形状は所望のシートパッド補強布の形状とほぼ同じとなる。そのため、回り込み部等の複雑な形状の成型が容易となるだけでなく、成型後の折返し加工等も不要となり、手間がかからない。また、成型されたシートに耳部は発生しないため、成型後の切除は不要となり材料のロスを少なくできる。
【0116】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0117】
例えば、上述した実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置2,102,202,302では加熱空気を利用して不織布シート1Bを加熱しているが、型20そのものをヒーター等によって加熱することで不織布シート1Bを加熱してもよい。
【0118】
また、第3実施形態に係る製造装置202において、第2実施形態に係る製造装置102における基部130と同様の構成を用いることで、基部130内部の給気路及び基台231に設けられた複数の給気孔を介して閉塞空間41に加熱空気を供給するように構成してもよい。
【0119】
さらに、図17に示されるカバー材440において、図18に示される二層構造のカバー材を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】シートパッド補強布の斜視図である。
【図2】シートパッド補強布の製造に用いられる製造装置の斜視図である。
【図3】加工前のシートパッド補強布である荒裁ちされた不織布シートを示す図である。
【図4】荒裁ちされた不織布シートを型に固定するステップを説明する図である。
【図5】不織布シートが固定された型をカバー材で覆うステップを説明する図である。
【図6】カバー材で覆った後に、型とカバー材で形成される閉塞空間から空気を排気するステップを説明する図である。
【図7】型の内部空間に加熱空気(加熱蒸気)を供給するステップを説明する図である。
【図8】型とカバー材で形成される閉塞空間から空気を排気することで、不織布シートを型の外形に沿った形状に加工するステップを説明する図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿ったシートパッド補強布及び型の縦断面図である。
【図10】図8のX−X線に沿ったシートパッド補強布及び型の横断面図である。
【図11】カバー材を外し、不織布シートを加工してなるシートパッド補強布を型から取り外すステップを説明する図である。
【図12】第2実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置を示す斜視図である。
【図13】第3実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置を示す斜視図である。
【図14】第4実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置を示す斜視図である。
【図15】図14に示される製造装置のカバー枠を構成する可動枠を示す斜視図である。
【図16】図15において可動枠を取り除いた場合の正面図である。
【図17】カバー材の第1の変形例を示す斜視図である。
【図18】カバー材の第2の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0121】
1…シートパッド補強布、1B…不織布シート、11…背部、12…側部、13…貫通孔、20…型、21…前面部、22…側面部、23…筒部、24…後面部、25…通気孔、26…内部空間、30…基部、31…基台、32…給気支脚、33…排気支脚、40,240,340…カバー材、41,241,341…閉塞空間、50…給排気ユニット、51…給気ユニット(加熱ユニット)、52…給気管、53…排気管、54…排気ユニット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用座席シートのシートパッド補強布の製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用座席シートには、クッション材となるウレタン樹脂等を発泡させたシートパッドが用いられている(特許文献1参照)。また、クッション材としては、発泡させたウレタン樹脂以外にも、ベース繊維としての高融点繊維とバインダー繊維としての低融点繊維とが混合された繊維ウェブを積層した繊維性クッション材も提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
シートパッドは、布や皮革などで被覆されており、表面側が乗員を支持する面となり、裏面側がパイプフレーム、スプリングなどの支持部材に対して装着されることで、車両用座席シートを構成する。シートパッドの裏面は、少なくともその一部において、車両の揺動や乗員等の体の動きによって支持部材と擦れ合うため、シートパッドだけでは損傷しやすい。そこで、従来よりシートパッドの裏面には、補強層としてシートパッド補強布が設けられている。
【0004】
シートパッド補強布は、シートパッドを損傷から保護するものであるので、シートパッドに対してずれたり剥離したりすることがないようにシートパッドと一体不可分に形成されている。このため、シートパッドを製造する発泡成形工程において、あらかじめ型内面に補強布をセットした状態で樹脂を型内に注入発泡し、シートパッドの成型及び補強層の形成を同時に行う方法が採用されている。
【0005】
シートパッドの裏面は複雑な形状(例えば、図9及び図10に示される回り込み部14,15)を有しているので、これに合わせるために、従来は多数の小片を形状に合わせるように縫製などによって形成したものが補強布として用いられていた。しかしながら、裁断や縫製に多大の労力と時間を要するばかりでなく、型内面の形状に精度よく適合する補強布が得られにくいという問題点を有していた(特許文献1参照)。そこで、これらの問題点を解決すべく、不織布を型にて成型し、補強布を製造する方法が提案されている。
【0006】
一方、シートパッド補強布として用いることができる不織布についても、発泡成型における樹脂の滲み出し防止等を目的として、不織布に非通気性プラスチックフィルムを装着したものや、異なる見かけ密度の層を積層したものが提案されている(特許文献3及び4参照)。
【特許文献1】特開平5−130923号
【特許文献2】特開平10−291267号
【特許文献3】特開平5−138782号
【特許文献4】特開2000−62061号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シートパッド補強布を型にて成型する場合、裏面の形状によっては回り込み部が存在する。そこで、オス型およびメス型の金型を用いる特許文献1に記載の成型方法では、1回のプレスによって所望の形状を得ることは不可能であるため、型で成型できる形状にした後に、成型した不織布において回り込み部となる部分を折返す加工を施すことでシートパッド補強布を得ていた。
【0008】
この成型方法は、必要とされる型の形状は比較的単純であり、プレス装置も一般的なものを使用できるが、成型後に回り込み部を加工するための手間が必要であり作業が煩雑となっていた。更に、シートパッドを製造する発泡成形工程において発泡型に取付ける作業時の取り扱いを容易にするため、折返し加工で強度が低下した折返し部分を接着片で補強する手間もかけていた。
【0009】
また、上記の成型方法では、プレスにあたってシートパッド補強布の形状からはみ出した部分となる耳部を必要とするが、使用にあたっては不要であるため切除しなければならなかった。このため、材料となる不織布のロスも発生していた。
【0010】
そこで、本発明は成型が容易でかつ成型後の加工等に手間のかからない、また材料のロスが少ないシートパッド補強布の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のシートパッド補強布の製造方法は、シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備える型に、荒裁ちされたシートを被せて固定するステップと、型に固定されたシートをカバー材によって覆うことで、型とカバー材とにより閉塞空間を形成するステップと、シートを加熱するステップと、通気孔を介して閉塞空間から空気を排気することで、加熱されたシートを型の外形に沿った形状に加工するステップと、カバー材を外し、加工されたシートを型から取り外すステップとを備える。
【0012】
本発明のシートパッド補強布の製造方法によれば、シートパッドと略同一の形状とされた型にシートを被せることによって成型するため、成型されたシートの形状は所望のシートパッド補強布の形状とほぼ同じとなる。そのため、回り込み部等の複雑な形状の成型が容易となるだけでなく、成型後の折返し加工等も不要となり、手間がかからない。また、成型されたシートに耳部は発生しないため、成型後の切除は不要となり材料のロスを少なくできる。
【0013】
また、シートは、樹脂滲み出し防止シートの少なくとも片面に不織布が積層された2層以上の構造とすることが好ましい。このようなシートを用いることで、シートパッド補強布の成型後に、ウレタン樹脂等を用いてシートパッドの成型及び補強層の形成を行うときに、樹脂が滲み出すことを防止できる。
【0014】
また、シートは、不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシート、又は低融点繊維と高融点繊維とを混合させた不織布シートであることが好ましい。このようなシートを用いることで、シートパッド補強布の成型が容易になるだけでなく、成型後のシートパッド補強布が適度な剛性を有することとなり、形状が良好に保持される。
【0015】
また、シートを固定するステップにおいて、シートを磁石によって型に固定することが好ましい。これにより、閉塞空間から空気を排気する時などにシートが外れることを効果的に防止することができる。
【0016】
また、本発明のシートパッド補強布の製造方法は、シートを加熱するステップの前に型の通気孔を介して閉塞空間内の空気を排気するステップを備えることが好ましい。シートの加熱前に閉塞空間内の空気が一度排気されることで、カバー材によりシートを型に密着させることができ、シートを型の外形に合わせて成型しやすくなる。
【0017】
また、シートを加熱するステップにおいて、閉塞空間に加熱空気を供給することが好ましい。このような構成とすることで、シートを型に密着させた場合であっても、加熱空気の流れによってシートが型から剥がれる可能性を低減できる。
【0018】
また、シートを加熱するステップにおいて、内部空間に加熱空気を供給することで、型の通気孔を介して閉塞空間に加熱空気を供給するようにしてもよい。このような構成とすることで、シートの加熱を加熱空気と型からの熱の両方により効率良く行うことができる。
【0019】
また、閉塞空間を形成するステップにおいて、少なくとも型と、カバー材と、型を囲むように形成され、カバー材が固定されたカバー枠と、によって閉塞空間が形成されるようにしてもよい。このように構成することで、カバー枠の移動によって閉塞空間を形成することが可能となるため、閉塞空間を容易に形成できるだけでなく、形成に必要な時間を短縮することができる。
【0020】
本発明のシートパッド補強布の製造装置は、シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備え、荒裁ちされたシートが固定される型と、型を覆うことで閉塞空間を形成するカバー材と、シートを加熱する加熱ユニットと、閉塞空間内の空気を排気する排気ユニットとを備える。
【0021】
本発明のシートパッド補強布の製造装置によれば、シートパッドと略同一の形状とされた型に被せることによってシートを成型するため、成型されたシートの形状は所望のシートパッド補強布の形状とほぼ同じとなる。そのため、回り込み部等の複雑な形状の成型が容易となるだけでなく、成型後の折返し加工等も不要となり、手間がかからない。また、成型されたシートに耳部は発生しないため、成型後の切除は不要となり材料のロスを少なくできる。
【0022】
また、加熱ユニットは、閉塞空間に加熱空気を供給するようにすることが好ましい。このような構成とすることで、シートを型に密着させた場合であっても、加熱空気の流れによってシートが型から剥がれる可能性を低減できる。
【0023】
また、加熱ユニットは、型の内部空間に加熱空気を供給することで、通気孔を介して閉塞空間に加熱空気を供給するようにしてもよい。このような構成とすることで、シートの加熱を加熱空気と型からの熱の両方により効率良く行うことができる。
【0024】
また、上記シートパッド補強布の製造装置は、カバー材が固定されるカバー枠を更に備え、少なくとも前記型と、前記カバー材と、カバー枠と、によって閉塞空間が形成されるように構成することが好ましい。このように構成することで、カバー枠(少なくともカバー枠の一部)の移動によって閉塞空間を形成することができるため、閉塞空間を容易に形成できるだけでなく、形成に必要な時間を短縮することができる。
【0025】
また、カバー枠は、水平方向に分離可能な一対の可動枠を備え、可動枠のそれぞれにカバー材が固定されるように構成することが好ましい。このように構成することで、可動枠を用いずにカバー材として袋状フィルムを用いて型を覆う場合と比べて、閉塞空間を形成するために必要な時間及び加工後にシートを型から取り外すためのスペースを確保するために必要な時間を短縮することができる。
【0026】
更に、可動枠は、閉塞空間の内外を連通させるダクトを備えるようにすることが好ましい。このように構成することで、型の通気孔だけでなく、可動枠のダクトを介して閉塞空間からの空気の排気及び閉塞空間への加熱空気の供給を行うことが可能となるため、シートパッド補強布の製造に必要な時間を短縮することができる。
【0027】
また、カバー材は、閉塞空間内の空気が排気される前の状態においてひだ部を有するようにしてもよい。このように構成することで、シートを型の外形に沿った形状に加工するときにひだ部が伸び代となるため、複雑な形状や大きな回り込み部を有する型に対して、カバー材は高い形状追従性を示すことができる。
【0028】
また、カバー材は、ひだ部の形状を維持するように固定される弾性紐体を備えてもよい。このように構成することで、シートを型の外形に沿った形状に加工する過程で閉塞空間から空気を排気するとき、型のおおよその形(概形)に対応するための大きな変形は弾性紐体の変形によって追従され、型の細部に対応するための小さな変形はひだ部の変形によって追従される。したがって、型のおおよその形に対応するためにカバー材が大きく変形するとき(例えば、排気の初期段階)に、ひだ部が型の一部に片寄ることが防止されるため、複雑な形状や大きな回り込み部を有する型に対して、カバー材は更に高い形状追従性を示すことができる。
【0029】
弾性紐体は、ひだ部と交差するようにカバー材に固定されていることが好ましい。このような構成とすることで、加工前にカバー材の自重等によってひだ部がカバー材の一部に偏るために、加工時に伸び代が不足する部分が発生することを低減できる。
【0030】
カバー材は、気密性を有する主層と、主層よりも高い引張強度を有する補強層とを備え、補強層は、カバー材が型に接する側の面に設けられるように構成してもよい。このように構成することで、主層として薄く伸びやすい材料を用いた場合であっても、補強層によって加工時の伸びに起因する主層の損傷が抑えられるため、カバー材の繰り返し利用に対する耐久性が向上する。
【0031】
補強層は、伸縮可能なニット状素材から構成することが好ましい。このように構成することで、閉塞空間内の空気が排気されて、補強層が型へ接触するとき、ニット状素材の補強層が主層に対する緩衝層の役割を果たす。したがって、カバー材の繰り返し利用に対する耐久性が更に向上する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、成型が容易でかつ成型後の加工等に手間のかからない、また材料のロスが少ないシートパッド補強布の製造方法及び製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、本発明の実施の形態は、車両用座席シートの背もたれ部に用いられるシートパッド補強布を例として取り上げているが、本発明は車両用座席シートの座部やその他のシートパッド補強布を用いる部分に適用することができる。また、シートパッド補強布の製造装置に関する説明では、同一の部分に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0034】
図1は、本発明に係るシートパッド補強布の製造方法もしくは製造装置によって製造されたシートパッド補強布の一例を示す斜視図である。
【0035】
シートパッド補強布1は、荒裁ちされたシートを後述する型20にて成型したものであり、車両用座席シート(図示せず)に対応した形状を有している。具体的には、使用者の背中に面する表面に対応する背部11と、使用者に向かって張り出すことで使用者を左右から保持する形状を有する部分に対応する側部12と、ヘッドレスト等が取付けられる箇所に対応する貫通孔13とを備えている。更に、図9及び図10の断面図に示されるように、成型された補強布1は、回り込み部14,15を備えている。
【0036】
シートパッド補強布1の成型されるシートの材料としては、例えば不織布を用いることができるが、空気に対する通気性を有する材料であれば、特に限定されない。
【0037】
不織布をシートの材料として用いる場合、不織布のみからなるシートを用いることもできるが、それ以外にも、樹脂等の液体が浸透しにくい樹脂滲み出し防止シートの少なくとも片面に不織布が積層された2層以上の構造のシートを用いることができる。なお、ここでいう樹脂滲み出し防止とは、ウレタン樹脂等のシートパッドの成型に用いる樹脂が浸透しづらい性質を意味する。このような材料を用いることで、シートパッド補強布の成型後に、従来と同様の方法によりウレタン樹脂等を用いてシートパッドの成型及び補強層の形成を行うときに、樹脂が滲み出すことを防止できる。このような低浸透性シートの材料としては、例えばポリウレタンフィルムやウレタン樹脂等の浸透が遅い高密度不織布を用いることができる。
【0038】
また、シートパッド補強布1の成型に用いられるシートとしては、不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシートや、低融点繊維と高融点繊維とを混合させた不織布シートを用いることもできる。このような不織布シートを用いた場合、後述する本発明の方法における不織布シートの加熱時には、熱可塑性樹脂又は低融点繊維が溶融し、不織布シートが軟化することで、シートパッド補強布1の成型が容易になる。更に、成型後冷却固化することで、成型後のシートパッド補強布1が適度な剛性を有することとなり、形状が良好に保持される。
【0039】
不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシートの場合、含有させる熱可塑性樹脂としては、粒状ホットメルト接着樹脂(接着剤)を用いることが好ましい。例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニールクロリド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンビニールアクセテート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブチラール樹脂等があり、これらの混合物であってもよい。また、融点は70〜100℃のものが好ましい。粒状ホットメルト接着剤の粒径としては200μm以下が好ましく、必要に応じて粒径分布を変えてもよい。
【0040】
一方、不織布に低融点繊維と高融点繊維とを混合させたシートの場合、次のような材料を用いることができる。
【0041】
低融点繊維としては、高融点繊維よりも融点が低く、特定の軟化点及び溶融粘度を有するものが用いられる。具体的には、高融点繊維と混合して高融点繊維の融点より低い温度に加熱することにより溶融して高融点繊維間を融着することができるホットメルト型の接着性繊維が用いられる。また、使用される繊維の太さは、1.5〜10d(デニール)程度が好ましい。
【0042】
このような低融点繊維としては、例えばポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性繊維があげられる。これらの繊維は単独で用いてもよいし、高融点繊維と組合せることでコンジュゲート型、芯鞘型構造等としたものでもよい。この低融点繊維の繊度、繊維長は特に限定されない。この低融点繊維の融点は、好ましくは100〜160℃程度(もしくは、軟化点が80〜140℃程度)であることが好ましい。また、低融点繊維はスチーム活性を有することが好ましく、後述する本発明の方法における不織布シートを加熱する際に加熱蒸気を用いる場合には、特に好適である。
【0043】
高融点繊維としては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、ナイロン等が用いられる。この高融点繊維の繊度、繊維長も特に限定されない。この高融点繊維の融点は180℃以上(もしくは、軟化点が160℃以上)であればよい。また、低融点繊維と高融点繊維との融点の差(もしくは軟化点の差)が50℃以上あることが好ましい。
【0044】
低融点繊維と高融点繊維との混合率は、低融点繊維20〜70重量%、高融点繊維30〜80重量%が好ましい。低融点繊維の混合率が20重量%より少ないと融着部分が少なくなり所望の剛性が得られないおそれがある。また、低融点繊維の混合率が70重量%より大きいと剛性が顕著に出るため型からの脱型が困難になるだけでなく、成型後のシート表面がプラスチック化して繊維が残らなくなるためにシートパッド補強布として用いた時にこすれ音が発生しやすくなる。
【0045】
なお、本実施の形態では、シートパッド補強布1の成型に用いるシートに不織布を用いたシートを、単に「不織布シート」として説明する。また、原則として、成型前の不織布シートを「不織布シート」とし、成型後の不織布シートを「シートパッド補強布」として説明する。
【0046】
次に、図2,5,9及び10を用いて、本発明に係るシートパッド補強布の製造装置の第1実施形態を説明する。
【0047】
図2は、シートパッド補強布の製造装置2を示す斜視図である。
【0048】
シートパッド補強布の製造装置2は、型20と、型20が固定される基部30と、型20を覆いつつ基部30に固定されることで閉塞空間41を形成するカバー材40(図5等参照)と、閉塞空間41へ空気の給排気を行う給排気ユニット50とを備えている。
【0049】
型20は、外形はシートパッド補強布1と略同一の形状とされ、内部には内部空間26(図9,図10参照)を有している。型20は、前面部21と、側面部22と、筒部23と、後面部24(図9,10参照)と、複数の通気孔25(図9,10参照)とを備える。型20の前面部21はシートパッド補強布1の背部11を成型する部分となり、側面部22はシートパッド補強布1の側部12及び回り込み部15(図10参照)を成型する部分となる。また、型20の筒部23はシートパッド補強布1の貫通孔13の周囲を成型する部分となり、後面部24はシートパッド補強布1の回り込み部14(図9参照)を成型する部分となる。
【0050】
通気孔25は、型20の外面から内部空間26に連通するように形成され、給排気ユニット50によって閉塞空間41へ空気の給排気を行う時に、空気の流路となる。通気孔25は、前面部21、側面部22、筒部23及び後面部24の各所に設けられている。なお、シートパッド補強布1を型20に沿った形状とするために、角部(図9のA部及び図10のB部)には通気孔25を他の箇所よりも多く設けることが好ましい。
【0051】
型20の材質は特に限定されないが、加工性及び熱伝導性の面からアルミニウムを用いることが好ましい。
【0052】
基部30は、基台31と、基台31から立設されると共にそれぞれ型20に取付けられた給気支脚32,排気支脚33とを備えている。給気支脚32と排気支脚33は中空であり、型20の内部空間26と連通されることで、図示しない基台31内部の給気路及び排気路と共に閉塞空間41と給排気ユニット50とをつなぐ空気の流路となる。
【0053】
カバー材40は、不織布が固定された型20を覆うことができるものであれば、特に形状及び大きさは限定されないが、取り扱いやすさを考慮して、例えば袋状フィルムを用いることができる。また、図5において、カバー材40は基台31に対して固定されているが、成型されてシートパッド補強布1となる不織布シート1Bを覆う閉塞空間41を形成するように固定されていれば良く、例えば、給気支脚32,排気支脚33に固定するようにしてもよい。
【0054】
カバー材40の材料は、加熱され、且つ給排気ユニット50の給排気により膨張と不織布シート1B及び型20への密着が繰り返し行われるため、これを満足するような性能を有するものが選定される。
【0055】
図1のような車両用座席シートの背もたれ部に用いられるシートパッド補強布を成型する場合には、伸度が300%以上あるものが好ましく、厚さは30〜100μm程度が好ましい。なお、車両用座席シートにおける座部用のシートパッド補強布のように、比較的形状が単純なものを成型する場合には、カバー材の伸度は300%よりも低いものであってもよい。これらの点を考慮して、カバー材40(袋状フィルム)の材料としては、例えば、伸度300%、厚み50μmのポリウレタンを用いることができる。
【0056】
給排気ユニット50は、給気ユニット(加熱ユニット)51と、給気ユニット51と基部30内部の給気路とを接続する給気管52と、排気ユニット54と、排気ユニット54と基部30内部の排気路とを接続する排気管53とを備えている。
【0057】
給気ユニット(加熱ユニット)51は、給気管52、基部30内部の給気路及び給気支脚32を介して型20の内部空間26に加熱空気を供給することで、型20及び不織布シート1Bを加熱することができる。加熱空気は、型20の内部空間26を経由して、通気孔25を介して閉塞空間41に供給されるため、加熱空気の供給に伴ってカバー材40が膨らむ。なお、加熱空気には、単に加熱された空気だけでなく加熱蒸気も含む。加熱蒸気を用いた場合、不織布シート1B(特に、不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシートや、低融点繊維と高融点繊維とを混合させたシート)が溶融固化する時間、すなわち補強布の成形時間を短時間とすることができる。
【0058】
排気ユニット54は、通気孔25、型20の内部空間26、排気支脚33、基部30内部の排気路(図示せず)及び排気管53を介して閉塞空間41の空気を排気することができる装置であれば特に限定されない。
【0059】
本発明によれば、プレス加工ではないため凹凸両面の型は不要である。更に、図8や図9に示されるような複雑な形状を有する回り込み部14,15の成型にもスライドコア型といった特別な型も不要である。そのため、型製作の費用と時間を節約することができる。
【0060】
次に、図12を用いて、本発明に係るシートパッド補強布の製造装置の第2実施形態を説明する。この第2実施形態では、第1実施形態の場合と異なる経路で加熱空気が閉塞空間に供給される。
【0061】
図12に示されるように、第2実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置102では、基部130の基台131に複数の給気孔135を設けることで、型20の内部空間26を経由させずに閉塞空間41に加熱空気が供給される。図2の製造装置2では、給気支脚32を介して型20の内部空間26へ加熱空気が供給されるが、図12の製造装置102では、給気管52、基部130内部の給気路(図示せず)及び給気孔135を介して閉塞空間41に加熱空気が供給される。そのため、支脚132は、型20を基台131に固定する役割を果たすが、基部130内部の給気路と型20の内部空間26とを接続しないように構成されている。
【0062】
なお、図12の製造装置102において、図2の製造装置2と同一の部分には同一の符号を付すことで重複する説明を省略する。
【0063】
次に、図13を用いて、本発明に係るシートパッド補強布の製造装置の第3実施形態を説明する。この第3実施形態に係る製造装置は、カバー材が固定されるカバー枠を用いて、カバー材が前後及び側方から型に固定されたシートを覆うことで閉塞空間を形成するという点で、カバー材が型に固定されたシート全体を覆うことで閉塞空間を形成する第1実施形態に係る製造装置と異なる。
【0064】
図13は、第3実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置202を示す斜視図である。
【0065】
このシートパッド補強布の製造装置202は、型20と、型20が固定される基部230と、前後及び側方から型20に固定されたシートを覆うことで閉塞空間241を形成するカバー材240と、型20を囲むように形成され、カバー材240が固定されるカバー枠260と、を備えている。また、第1実施形態に係る製造装置2と同様に、製造装置202は、閉塞空間241へ空気の給排気を行う給排気ユニット50を備えている。なお、図13に示されるシートパッド補強布の製造装置202は、閉塞空間241の内部に2つの型20を設けることで、2つのシートパッド補強布1を同時に製造することができる。
【0066】
基部230は、基台231と、基台231を支持する脚部234と、基台231から立設されると共にそれぞれ型20に取付けられた給気支脚32,排気支脚33とを備える。第1実施形態に係る製造装置2と同様に、基部230の給気支脚32と排気支脚33は、型20の内部空間26と連通されることで、基台231内部の給気路及び排気路と共に閉塞空間241と給排気ユニット50とをつなぐ空気の流路となる。
【0067】
カバー材240は、シート状フィルムであり、第1実施形態に係る製造装置2のカバー材40と同様の材料とすることができる。このカバー材240は、型20に固定されたシートを前後及び側面から覆うようにカバー枠260に固定され、カバー枠260及び基部230と協働して閉塞空間241を形成する。なお、第1実施形態に係る製造装置2の場合と異なり、カバー材240はカバー枠260(具体的には、後述する可動枠261及び天板262)の端部には固定されるが、基部230には固定されない。
【0068】
給排気ユニット50は、第1実施形態に係る製造装置2が備える給排気ユニットと同様のものであり、給気支脚32等を介して型20の内部空間26に加熱空気を供給することで、型20及び不織布シート1Bを加熱することができる。また、給排気ユニット50は、排気支脚33等を介して閉塞空間241の空気を排気することができる。
【0069】
カバー枠260は、可動枠261と、可動枠261に対向するように設けられた天板262と、一方の端部が天板262に対して固定され、他方の端部が脚部234に固定された支柱263とを備えている。
【0070】
可動枠261は支柱263が挿通される挿通部261Aを備えており、図示しない駆動装置によって、可動枠261は4本の支柱263に沿って上下方向に移動できるようにされている。上述したカバー材240は、可動枠261と天板262との間に配され、可動枠261と天板262の端部において閉塞空間241に対する空気の流出入が発生しないように固定されている。このように構成することで、可動枠261が天板262に近い位置まで上昇している状態(図13において二点鎖線で示される可動枠261)では、作業者が不織布シート1Bを金型20に固定するために十分な空間が確保され、可動枠261が基台231に接する位置まで下降している状態(図13において実線で示される可動枠261)では、閉塞空間241が形成される。なお、可動枠261と基台231とが接する端面261Eにはパッキン又は粘着テープ等が介在しており、端面261Eを介して閉塞空間241に対する空気の流出入が発生しないようにされている。
【0071】
この第3実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置202では、第1及び第2実施形態の場合と異なり、カバー枠260の可動枠261が移動することによって、閉塞空間241が形成される。したがって、カバー枠260の一部である可動枠261の移動によって閉塞空間241を形成することができるため、閉塞空間241を容易に形成できるだけでなく、形成に必要な時間を短縮することができる。特に、可動枠261を駆動装置により移動できるようにした場合には、本製造装置による一連の製造工程を容易に自動化することができる。
【0072】
次に、図14〜16を用いて、本発明に係るシートパッド補強布の製造装置の第4実施形態を説明する。この第4実施形態に係る製造装置は、カバー材が固定されるカバー枠を備えるという点で第3実施形態に係る製造装置202と一致するが、カバー枠が水平方向に移動する点で異なる。また、カバー枠に設けたダクトを介して閉塞空間の内外を連通させた点で第3実施形態に係る製造装置202と異なる。
【0073】
図14は、第4実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置302を示す斜視図である。また、図15は、製造装置302のカバー枠360を構成する可動枠361A,361Bを示す斜視図である。
【0074】
このシートパッド補強布の製造装置302は、型20と、型20が固定される基部330と、型20を前後から覆うことで閉塞空間341を形成するカバー材340と、型20を囲むように形成され、カバー材340が固定されるカバー枠360と、を備えている。また、第1実施形態に係る製造装置と同様に、製造装置302は、閉塞空間341へ空気の給排気を行う給排気ユニット50を備えている。なお、第3実施形態に係る製造装置と同様に、図14に示されるシートパッド補強布の製造装置302は、閉塞空間341の内部に2つの型20を設けることで、2つのシートパッド補強布1を同時に製造することができる。
【0075】
基部330は、基台331と、基台331を支持する脚部334と、基台331から立設されると共にそれぞれ型20に取付けられた給気支脚32,排気支脚33とを備える。第1実施形態に係る製造装置2と同様に、基部330の給気支脚32と排気支脚33は、型20の内部空間26と連通されることで、基台331内部の給気路及び排気路と共に閉塞空間341と給排気ユニット50とをつなぐ空気の流路となる。なお、上述の第3の実施形態の場合と異なり、この第4実施形態に係る製造装置302では、カバー材340と、カバー枠360と、基部330の給気支脚32及び排気支脚33とによって閉塞空間341が形成され、基台331は閉塞空間341の形成に直接的には関係しない。
【0076】
カバー材340は、シート状フィルムであり、第1実施形態に係る製造装置2のカバー材40と同様の材料とすることができる。このカバー材340は、型20の前後から覆うようにカバー枠360に固定され、閉塞空間341を形成する。なお、第3実施形態に係る製造装置202の場合と異なり、カバー材340はカバー枠360(具体的には、後述する2つの可動枠361A,361B)の端部にのみ固定される。
【0077】
給排気ユニット50は、第1実施形態に係る製造装置2が備える給排気ユニットと同様のものであり、給気支脚32等を介して型20の内部空間26に加熱空気を供給することで、型20及び不織布シート1Bを加熱することができる。また、給排気ユニット50は、排気支脚33等を介して閉塞空間341の空気を排気することができる。
【0078】
カバー枠360は、2つの可動枠361A,361Bと、可動枠361A,361Bの上方に設けられた天板362と、天板362を脚部334に対して固定する支柱363と、可動枠361A,361Bを水平方向に移動させるためのアクチュエータ364と、閉塞空間341の内外を連通させるダクト365とを備える。
【0079】
可動枠361A,361Bは、水平方向に分離可能な一対の可動枠であり、アクチュエータ364の駆動によって、水平方向(基台331及び天板362の表面と平行な方向)に移動できるようにされている。上述したカバー材340は、型20を前後から覆うように可動枠361A,361Bそれぞれの端部において閉塞空間341に対する空気の流出入が発生しないように固定されている。このように構成することで、可動枠361A,361Bが離間した状態では、作業者が不織布シート1Bを金型20に固定するために十分な空間が確保され、可動枠361A,361Bが端面361Eで接している状態(図14及び図15に示される状態)では、閉塞空間341が形成される。また、可動枠361A,361Bが接する端面361Eにはパッキン又は粘着テープ等が介在しており、端面361Eを介して閉塞空間341に対する空気の流出入が発生しないようにされている。
【0080】
可動枠361A,361Bのダクト365は、可動枠361A,361Bの内部を経由して可動枠361A,361Bの外部まで導出され(図示せず)、可動枠361A,361Bの表面に設けられた複数の開口部365A(図15参照)を介して閉塞空間341の内外を連通させるように構成されている。このダクト365は、図示しない吸排気管を経由して給排気ユニット50とそれぞれ接続されており、給排気ユニット50による加熱空気の供給と、閉塞空間341からの空気の排気ができるように構成されている。
【0081】
図16は、図15において可動枠361Bを取り除いた場合の正面図であり、可動枠361Aと基部330との配置関係を示す図である。この第4実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置302では、カバー材340と、カバー枠360と、基部330の給気支脚32及び排気支脚33とによって閉塞空間341が形成される。そのため、図16に示されるように、給気支脚32及び排気支脚33と可動枠361A,361Bとが接する端面361Eにはパッキン又は粘着テープ等が介在しており、端面361Eを介して閉塞空間341に対する空気の流出入が発生しないようにされている。
【0082】
以上、第4実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置302では、カバー枠360の可動枠361A,361Bが移動することによって、閉塞空間341が形成される。したがって、可動枠361A,361Bの移動によって容易に閉塞空間を形成することができるため、袋状フィルムのカバー材を用いて型を覆う場合と比べて、閉塞空間を形成するために必要な時間及び加工後にシートを型から取り外すためのスペースを確保するために必要な時間を短縮することができる。また、可動枠361はアクチュエータ364によって移動させることができるため、本製造装置による一連の製造工程を容易に自動化することができる。
【0083】
さらに、この第4実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置302は、可動枠361A,361Bのダクト365を介して、閉塞空間341の内外を連通させるように構成されている。したがって、型20の内部空間26を介してだけでなく、ダクト365を介して給排気ユニット50による加熱空気の供給と、閉塞空間341からの空気の排気を行うことができる。したがって、装置全体として給排気口が増加するため、加熱空気の供給及び空気の排気に要する時間を短縮することができる。すなわち、型20の通気孔25だけでなく、可動枠361A,361Bのダクトを介して閉塞空間341からの空気の排気及び閉塞空間341への加熱空気の供給を行うことが可能となるため、シートパッド補強布の製造に必要な時間を短縮することができる。
【0084】
引き続き、図17及び図18を用いて、カバー材の変形例を説明する。
【0085】
図17は、カバー材の第1の変形例を示す斜視図である。この第1の変形例に係るカバー材440は、上述の袋状フィルムを用いたカバー材40や,シート状フィルムを用いたカバー材240,340と異なり、閉塞空間内の空気が排気される前の状態において複数のひだ部441を有する。なお、ここでいう「ひだ」とは、例えばカーテンのドレープのように布を垂らしたときにできるゆとりを持たせた部分や、重なりを持たせた部分を意味する。また、ひだ部441は複数が規則的に連続するようにしても、不規則に連続するようにしてもよい。
【0086】
カバー材440の表面には、弾性紐体442がひだ部441の形状を維持するように固定される。この弾性紐体442は、ひだ部441と交差するようにカバー材440に縫製又は接着等によって固定されている。弾性紐体442としては、例えばゴムひもを用いることができる。
【0087】
この変形例に係るカバー材440をカバー材40,240,340の代わりに用いた場合、不織布シート1Bを型20の外形に沿った形状に加工するときにひだ部441が伸び代となる。したがって、複雑な形状や大きな回り込み部を有する型20に対して、カバー材440は高い形状追従性を示すことができる。
【0088】
また、ひだ部441の形状を維持するように固定される弾性紐体442を設けることで、不織布シート1Bを型20の外形に沿った形状に加工する過程で閉塞空間41,241,341から空気を排気するとき、型20のおおよその形(概形)に対応するための大きな変形は弾性紐体442の変形によって追従され、型20の細部に対応するための小さな変形はひだ部441の変形によって追従される。したがって、型20のおおよその形に対応するためにカバー材440が大きく変形するとき(例えば、排気の初期段階)に、ひだ部441が型20の一部に片寄ることが防止されるため、複雑な形状や大きな回り込み部を有する型20に対して、カバー材440は更に高い形状追従性を示すことができる。
【0089】
さらに、弾性紐体442は、ひだ部441と交差するようにカバー材440に固定されている。したがって、加工前にカバー材440の自重等によってひだ部441がカバー材440の一部に偏るために、加工時に伸び代が不足する部分が発生することを低減できる。
【0090】
上述のような特徴を有するこのカバー材440は、大きな伸びに対応しやすいため、第3実施形態における可動枠261及び第4実施形態における可動枠361A,361Bに取り付けられるカバー材として好適に用いることができる。
【0091】
なお、図17ではひだ部441を水平方向に形成させているが、ひだ部441の形成方向はこれに限定されず、垂直方向のみ又は水平方向と垂直方向の両方に形成してもよい。なお、ひだ部を垂直方向に形成した場合、形状を崩すような重力が働かないため、垂直方向のひだ部のために弾性紐体を設けなくとも、ひだ部は形状を維持することができる。
【0092】
図18は、カバー材の第2の変形例を示す断面図である。この第2の変形例に係るカバー材540は、二層構造とされている点で、他のカバー材40,240,340,440と異なる。
【0093】
このカバー材540は、気密性を有する主層541と、前記主層よりも高い引張強度を有する補強層542とを備えている。各層を構成する材料としては、主層541には例えば気密性のあるウレタンフィルムを用いることができる。一方、補強層542には、伸縮可能なニット状素材(すなわち、編目を有する素材)を用いることが好ましく、例えばナイロン、ポリエステル、アクリル等のジャージ生地や天竺を用いることができる。主層541と補強層542とは、接着によって一体とすることが好ましいが、補強層542に対して主層541をコーティングしてもよい。
【0094】
また、主層541及び補強層542の配置は、主層541が閉塞空間41,241,341,441に対して外側となるようにして、補強層542が型20に接する側(閉塞空間41,241,341,441に面する側)の面に設けられて、基部30又は可動枠261,361A,361B等に固定される。
【0095】
この変形例に係るカバー材540は、気密性を有する主層541と、主層541よりも高い引張強度を有する補強層542とを備えることで、主層541として薄く伸びやすい材料を用いた場合であっても、補強層542によって加工時の伸びに起因する主層541の損傷が抑えられる。したがって、カバー材の繰り返し利用に対する耐久性が向上する。
【0096】
また、補強層542は、カバー材540が型20に接する側の面に設けられ、伸縮可能なニット状素材から構成することで、閉塞空間内の空気を排気されて補強層542が型20へ接触するとき、ニット状素材の補強層542が主層541に対する緩衝層の役割を果たす。したがって、カバー材540の繰り返し利用に対する耐久性が更に向上する。
【0097】
次に、図3から図11を用いて、本発明のシートパッド補強布の製造方法を説明する。なお、以下の説明では、第1の第1の実施形態に係る製造装置を用いてシートパッド補強布を製造する場合を説明する。
【0098】
図3に示されるように、本発明に用いられる不織布シート1B(すなわち、成型前のシートパッド補強布1)は、使用される車両用シートパッド補強布の形状を展開した形に予め荒裁ちして供給される。このように裁断することでシートパッド補強布の成型後に不要部分を切除する手間をなくすことができる。
【0099】
裁断された不織布シート1Bは、図4に示されるように型20に被せられた後に、図示しない磁石で固定される。磁石は型の内面に予め取付けられており、型20に被せた不織布シート1Bの上に別の磁石を置くことで、不織布シート1Bを固定する。または、磁石または鉄ねじを型20に埋め込み、不織布シート1Bを外部から抑える部材に磁石を用いて固定するようにしてもよい。このように不織布シート1Bを固定することで、給排気ユニット50による加熱空気の給排気時に不織布シートが外れることを防止できる。なお、図4では、説明のため、不織布シート1Bを透明として示している。
【0100】
不織布シート1Bを型20に固定した後、図5に示されるように、不織布シート1Bをカバー材40によって覆うことで、型20とカバー材40とにより閉塞空間41を形成する。
【0101】
好ましくは、図6に示されるように、不織布シート1Bをカバー材40によって覆った後に(換言すれば、後述する不織布シート1Bを加熱するステップの前に)、型20の通気孔25を介して閉塞空間41内の空気を排気する予備排気を実施するとよい。閉塞空間41内の空気が一旦排気されることで、カバー材40によって不織布シート1Bを型20に密着させることができ、不織布シート1Bを型20の外面の形状に合わせて成型しやすくなる。
【0102】
つづいて、図7に示されるように、型20とカバー材40とにより閉塞空間41を形成した後に(もしくは、上述の予備排気の後に)、給排気ユニット50の給気ユニット(加熱ユニット)51から型20の内部に加熱空気(加熱蒸気を含む)を供給することで、不織布シート1B及び型20を加熱する。このとき、加熱空気は型20の通気孔25を介して閉塞空間41まで供給されるため、カバー材40が膨らむ。このような構成とした場合、加熱空気と型からの熱の両方により不織布シート1Bを加熱することができるので、供給される加熱空気が不織布シート1Bの加熱に有効に利用される。
【0103】
また、図12に示されるシートパッド補強布の製造装置102を用いた場合、加熱空気は閉塞空間41に直接供給されるが、製造装置2を用いた場合と同様に、不織布シート1Bを加熱することできる。製造装置102では、加熱空気が型20の内部空間26から通気孔25を介して閉塞空間41へ供給される態様とされていない。そのため、上述した予備排気を行うことで、不織布シート1Bが型20に密着している場合であっても、加熱空気の流れによって不織布シート1Bが型20から剥がれる可能性を低減できる。
【0104】
不織布シート1Bが低融点繊維と高融点繊維とを混合させた不織布シートである場合には、加熱空気の温度は、低融点繊維の融点より高く、且つ高融点繊維の融点より低い温度とされる。
【0105】
以下は、不織布シート1Bとして、低融点繊維と高融点繊維とを混合させたシートを用いた場合の実施例である。
・低融点繊維(ポリエステル:EE−7[ユニチカファイバー株式会社製]):繊維長41mm、繊維太さ6d(デニール)、融点110℃(軟化点90℃)、混合率40重量%
・高融点繊維(ポリエステル:C300 テトロン(登録商標)[東レ株式会社製]):繊維長64mm、繊維太さ6d(デニール)、融点200℃(軟化点180℃)、混合率60重量%
・不織布シート1Bの目付け:120g/m2
・加熱蒸気温度:103℃
・加熱空気供給時間:12秒
【0106】
不織布シート1Bを加熱した後、排気ユニット54を動作させて、図8に示されるように閉塞空間41の空気を排気する。
【0107】
排気ユニット54が動作することで、閉塞空間41の空気は、図9及び図10に示されるように、通気性を有する不織布シート1B及び型20の通気孔25を介して型20の内部に流入する。そして、型20の内部は、排気支脚33、基台31の排気路、排気管53を介して、排気ユニット54と連通しているため、閉塞空間41の空気を排気することができる。空気の排気によって、膨らんでいたカバー材40は型20に吸い寄せられるように収縮し、加熱されて可塑性が高くなっている不織布シート1Bはカバー材40の収縮にあわせて型20に吸い寄せられるように変形する。これにより、不織布シート1Bは型20に密着し、型20の外形に沿った形状に加工される。
【0108】
不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシートを用いた場合には、熱可塑樹脂が加熱され溶融した状態で閉塞空間41内の空気を排気して、不織布シート1Bが型20に密着される。密着させた後に不織布シート1Bは冷却されて、不織布シート1Bの熱可塑性樹脂は固化する。そのため、不織布シート1Bは型20の外形に沿った形状となるだけでなく、成型されたシートパッド補強布1に適度な剛性を与えることができる。
【0109】
低融点繊維と高融点繊維とを混合させたシートを用いた場合には、低融点繊維が加熱され溶融した状態で閉塞空間41内の空気を排気して、不織布シート1Bが型20に密着される。密着させた後に不織布シート1Bは冷却されて、不織布シート1Bにおいて低融点繊維の高融点繊維への融着固化が起こる。そのため、熱可塑性樹脂を含有させたシートと同様に、不織布シート1Bは型20の外形に沿った形状となるだけでなく、成型されたシートパッド補強布1に適度な剛性を与えることができる。
【0110】
閉塞空間41の空気を排気して、不織布シート1Bが形状を保持する温度まで冷却させた後、図11に示されるように、カバー材40を外し、成型された不織布シート1B(すなわち、シートパッド補強布1)を型20から取り外す。
【0111】
冷却させた不織布シート1Bは、ある程度の剛性を有しているが、型20から外す上での支障となるものではないため、容易に取り外すことができる。
【0112】
なお、図13の第3実施形態に係る製造装置202を用いてシートパッド補強布を製造する場合も、カバー枠260の可動枠261の移動によって閉塞空間241を形成することを除いて、上述した第1実施形態に係る製造装置2を用いる場合と同様の手順によりシートパッド補強布1を製造することができる。
【0113】
また、図14の第4実施形態に係る製造装置302を用いてシートパッド補強布を製造する場合も、カバー枠360の可動枠361A,361Bの移動によって閉塞空間341を形成し、ダクト365を用いて加熱空気の供給及び空気の排気を行うことを除いて、上述した第1実施形態に係る製造装置2を用いる場合と同様の手順によりシートパッド補強布1を製造することができる。
【0114】
すなわち、閉塞空間を形成するステップにおいて、少なくとも型20と、カバー材240(340)と、型20を囲むように形成され、カバー材240(340)が固定されたカバー枠260(360)と、によって閉塞空間241(341)が形成される点を除いて、第1実施形態に係る製造装置2を用いる場合と同様の手順によりシートパッド補強布を製造することができる。なお、第3実施形態に係る製造装置202では、基部230の基台231が閉塞空間241の形成に寄与し、第4実施形態に係る製造装置302では、基部330の給気支脚32と排気支脚33とが閉塞空間341が形成に寄与している。
【0115】
本発明によれば、シートパッドと略同一の形状とされた型に被せることによってシートを成型するため、成型されたシートの形状は所望のシートパッド補強布の形状とほぼ同じとなる。そのため、回り込み部等の複雑な形状の成型が容易となるだけでなく、成型後の折返し加工等も不要となり、手間がかからない。また、成型されたシートに耳部は発生しないため、成型後の切除は不要となり材料のロスを少なくできる。
【0116】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0117】
例えば、上述した実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置2,102,202,302では加熱空気を利用して不織布シート1Bを加熱しているが、型20そのものをヒーター等によって加熱することで不織布シート1Bを加熱してもよい。
【0118】
また、第3実施形態に係る製造装置202において、第2実施形態に係る製造装置102における基部130と同様の構成を用いることで、基部130内部の給気路及び基台231に設けられた複数の給気孔を介して閉塞空間41に加熱空気を供給するように構成してもよい。
【0119】
さらに、図17に示されるカバー材440において、図18に示される二層構造のカバー材を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】シートパッド補強布の斜視図である。
【図2】シートパッド補強布の製造に用いられる製造装置の斜視図である。
【図3】加工前のシートパッド補強布である荒裁ちされた不織布シートを示す図である。
【図4】荒裁ちされた不織布シートを型に固定するステップを説明する図である。
【図5】不織布シートが固定された型をカバー材で覆うステップを説明する図である。
【図6】カバー材で覆った後に、型とカバー材で形成される閉塞空間から空気を排気するステップを説明する図である。
【図7】型の内部空間に加熱空気(加熱蒸気)を供給するステップを説明する図である。
【図8】型とカバー材で形成される閉塞空間から空気を排気することで、不織布シートを型の外形に沿った形状に加工するステップを説明する図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿ったシートパッド補強布及び型の縦断面図である。
【図10】図8のX−X線に沿ったシートパッド補強布及び型の横断面図である。
【図11】カバー材を外し、不織布シートを加工してなるシートパッド補強布を型から取り外すステップを説明する図である。
【図12】第2実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置を示す斜視図である。
【図13】第3実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置を示す斜視図である。
【図14】第4実施形態に係るシートパッド補強布の製造装置を示す斜視図である。
【図15】図14に示される製造装置のカバー枠を構成する可動枠を示す斜視図である。
【図16】図15において可動枠を取り除いた場合の正面図である。
【図17】カバー材の第1の変形例を示す斜視図である。
【図18】カバー材の第2の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0121】
1…シートパッド補強布、1B…不織布シート、11…背部、12…側部、13…貫通孔、20…型、21…前面部、22…側面部、23…筒部、24…後面部、25…通気孔、26…内部空間、30…基部、31…基台、32…給気支脚、33…排気支脚、40,240,340…カバー材、41,241,341…閉塞空間、50…給排気ユニット、51…給気ユニット(加熱ユニット)、52…給気管、53…排気管、54…排気ユニット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備える型に、荒裁ちされたシートを被せて固定するステップと、
前記型に固定された前記シートをカバー材によって覆うことで、前記型と前記カバー材とにより閉塞空間を形成するステップと、
前記シートを加熱するステップと、
前記通気孔を介して前記閉塞空間から空気を排気することで、加熱された前記シートを前記型の外形に沿った形状に加工するステップと、
前記カバー材を外し、加工された前記シートを前記型から取り外すステップと、を備えるシートパッド補強布の製造方法。
【請求項2】
前記シートが、樹脂滲み出し防止シートの少なくとも片面に不織布が積層された2層以上の構造であることを特徴とする請求項1に記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項3】
前記シートが、不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシート、又は低融点繊維と高融点繊維とを混合させた不織布シートであることを特徴とする請求項1に記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項4】
前記シートを固定するステップにおいて、前記シートが磁石によって前記型に固定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項5】
更に、前記シートを加熱するステップの前に前記通気孔を介して前記閉塞空間内の空気を排気するステップを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項6】
前記シートを加熱するステップにおいて、前記閉塞空間に加熱空気を供給することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項7】
前記シートを加熱するステップにおいて、前記型の前記内部空間に加熱空気を供給することで、前記通気孔を介して前記閉塞空間に加熱空気を供給することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項8】
前記閉塞空間を形成するステップにおいて、少なくとも前記型と、前記カバー材と、前記型を囲むように形成され、前記カバー材が固定されたカバー枠と、によって前記閉塞空間が形成されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項9】
シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備え、荒裁ちされたシートが固定される型と、
前記型を覆うことで閉塞空間を形成するカバー材と、
前記シートを加熱する加熱ユニットと、
前記閉塞空間内の空気を排気する排気ユニットと、を備えるシートパッド補強布の製造装置。
【請求項10】
前記加熱ユニットは、前記閉塞空間に加熱空気を供給することを特徴とする請求項9に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項11】
前記加熱ユニットは、前記内部空間に加熱空気を供給することで、前記通気孔を介して前記閉塞空間に加熱空気を供給することを特徴とする請求項9に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項12】
前記型を囲むように形成され、前記カバー材が固定されるカバー枠を更に備え、
少なくとも前記型と、前記カバー材と、カバー枠と、によって前記閉塞空間が形成されることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項13】
前記カバー枠は、水平方向に分離可能な一対の可動枠を備え、
前記可動枠のそれぞれに前記カバー材が固定されることを特徴とする請求項12に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項14】
前記可動枠は、前記閉塞空間の内外を連通させるダクトを備えることを特徴とする請求項13に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項15】
前記カバー材は、前記閉塞空間内の空気が排気される前の状態においてひだ部を有することを特徴とする請求項9に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項16】
前記カバー材は、前記ひだ部の形状を維持するように固定される弾性紐体を備えることを特徴とする請求項15に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項17】
前記弾性紐体は、前記ひだ部と交差するように前記カバー材に固定されていることを特徴とする請求項16に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項18】
前記カバー材は、気密性を有する主層と、前記主層よりも高い引張強度を有する補強層とを備え、
前記補強層は、前記カバー材が前記型に接する側の面に設けられることを特徴とする請求項9から請求項17のいずれかに記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項19】
前記補強層は、伸縮可能なニット状素材から構成されることを特徴とする請求項18に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項1】
シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備える型に、荒裁ちされたシートを被せて固定するステップと、
前記型に固定された前記シートをカバー材によって覆うことで、前記型と前記カバー材とにより閉塞空間を形成するステップと、
前記シートを加熱するステップと、
前記通気孔を介して前記閉塞空間から空気を排気することで、加熱された前記シートを前記型の外形に沿った形状に加工するステップと、
前記カバー材を外し、加工された前記シートを前記型から取り外すステップと、を備えるシートパッド補強布の製造方法。
【請求項2】
前記シートが、樹脂滲み出し防止シートの少なくとも片面に不織布が積層された2層以上の構造であることを特徴とする請求項1に記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項3】
前記シートが、不織布に粒状の熱可塑性樹脂を含有させたシート、又は低融点繊維と高融点繊維とを混合させた不織布シートであることを特徴とする請求項1に記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項4】
前記シートを固定するステップにおいて、前記シートが磁石によって前記型に固定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項5】
更に、前記シートを加熱するステップの前に前記通気孔を介して前記閉塞空間内の空気を排気するステップを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項6】
前記シートを加熱するステップにおいて、前記閉塞空間に加熱空気を供給することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項7】
前記シートを加熱するステップにおいて、前記型の前記内部空間に加熱空気を供給することで、前記通気孔を介して前記閉塞空間に加熱空気を供給することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項8】
前記閉塞空間を形成するステップにおいて、少なくとも前記型と、前記カバー材と、前記型を囲むように形成され、前記カバー材が固定されたカバー枠と、によって前記閉塞空間が形成されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のシートパッド補強布の製造方法。
【請求項9】
シートパッド補強布と略同一の外形を有し、外面から内部空間に連通する複数の通気孔を備え、荒裁ちされたシートが固定される型と、
前記型を覆うことで閉塞空間を形成するカバー材と、
前記シートを加熱する加熱ユニットと、
前記閉塞空間内の空気を排気する排気ユニットと、を備えるシートパッド補強布の製造装置。
【請求項10】
前記加熱ユニットは、前記閉塞空間に加熱空気を供給することを特徴とする請求項9に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項11】
前記加熱ユニットは、前記内部空間に加熱空気を供給することで、前記通気孔を介して前記閉塞空間に加熱空気を供給することを特徴とする請求項9に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項12】
前記型を囲むように形成され、前記カバー材が固定されるカバー枠を更に備え、
少なくとも前記型と、前記カバー材と、カバー枠と、によって前記閉塞空間が形成されることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項13】
前記カバー枠は、水平方向に分離可能な一対の可動枠を備え、
前記可動枠のそれぞれに前記カバー材が固定されることを特徴とする請求項12に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項14】
前記可動枠は、前記閉塞空間の内外を連通させるダクトを備えることを特徴とする請求項13に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項15】
前記カバー材は、前記閉塞空間内の空気が排気される前の状態においてひだ部を有することを特徴とする請求項9に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項16】
前記カバー材は、前記ひだ部の形状を維持するように固定される弾性紐体を備えることを特徴とする請求項15に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項17】
前記弾性紐体は、前記ひだ部と交差するように前記カバー材に固定されていることを特徴とする請求項16に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項18】
前記カバー材は、気密性を有する主層と、前記主層よりも高い引張強度を有する補強層とを備え、
前記補強層は、前記カバー材が前記型に接する側の面に設けられることを特徴とする請求項9から請求項17のいずれかに記載のシートパッド補強布の製造装置。
【請求項19】
前記補強層は、伸縮可能なニット状素材から構成されることを特徴とする請求項18に記載のシートパッド補強布の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−281768(P2006−281768A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31487(P2006−31487)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000241485)豊田通商株式会社 (73)
【出願人】(505084044)有限会社型技術事務所モート (3)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000241485)豊田通商株式会社 (73)
【出願人】(505084044)有限会社型技術事務所モート (3)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】
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