説明

シートフィード装置および画像形成装置

【課題】ローターが振動しながら不安定に回転することがあった。そこで、本発明は、モータのローターとステータの相のずれを低減することで、モータが安定して始動するようにする。
【解決手段】本発明では、リフトアップを終了してモータを停止させる際に、ピックアップを行う際のモータの回転方向である第2方向に予め定められた回転量だけ回転するようモータが制御される。これにより、モータのローターとステータの相ずれが低減されるため、モータが安定して始動するようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、部材の搬送制御に係り、とりわけ、画像形成装置における媒体の搬送制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置は、給紙庫の積載板の上に積載された記録シート束をリフトアップし、リフトアップされた記録シート束の最上位の記録シートをピックアップローラによりピックアップして搬送路へ送り出す給紙装置を備えている。給紙装置は、記録シート束のリフトアップを担当するモータと記録シートのピックアップを担当する別のモータとを備えている。しかし、コストダウンのために、ピックアップを行うモータとリフトアップを行うモータを1つのモータで実現することが提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載の発明では、正方向への回転(正回転)と逆方向への回転(逆回転)とを切り替え可能な単一のステッピングモータとワンウェイクラッチを採用している。具体的には、ステッピングモータを正回転させることで記録シートが給紙され、逆回転させることでリフトアップが実行される。ワンウェイクラッチは、逆回転のみをとりだすよう機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−321837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、リフトアップが終了してモータを停止させるためにモータの励磁を切ると、給紙庫内に積載されている紙の重さにより底板が自重により下がる。これは、ワンウェイクラッチに遊びがあるからである。この底板の下降に対してモータ軸が連れ回るため、モータのローターとステータの相が理想状態からずれてしまう。相がずれた状態からモータが始動すると、ローターが振動しながら不安定に回転することがあった。そこで、本発明は、モータのローターとステータの相のずれを低減することで、モータが安定して始動するようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のシートフィード装置は、複数のシートが積載される積載板、リフトアップ手段、ピックアップ手段、検知手段および駆動手段を備える。リフトアップ手段は駆動手段に駆動されて積載板をリフトアップする。ピックアップ手段は駆動手段に駆動されて、積載板に積載された複数のシートのうち最上位に位置するトップシートをピックアップする。検知手段は、トップシートが所定位置に到達しているかどうかを検知する。駆動手段はモータを含む。モータは第1方向に回転することでリフトアップ手段を駆動し、第1方向と反対の第2方向に回転することでピックアップ手段を駆動する。制御手段は、モータの回転方向とモータに供給される電流の値を制御する。とりわけ、制御手段は、トップシートが所定位置に到達したことを検知手段が検知したことでモータの駆動を停止させる際に、第2方向に予め定められた回転量だけ回転するようモータを制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、リフトアップを終了してモータを停止させる際に、ピックアップを行う際のモータの回転方向である第2方向に予め定められた回転量だけ回転するようモータが制御される。これにより、モータのローターとステータの相ずれが低減されるため、モータが安定して始動するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】シートフィード装置を備えた画像形成装置の略断面図である。
【図1B】画像形成装置の斜視図である。
【図2】給紙庫を説明するための図である。
【図3】制御部を示すブロック図である。
【図4】課題を説明するための図である。
【図5】リフトアップおよびピックアップを示すフローチャートである。
【図6】モータ駆動のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1A、図1Bは、画像形成装置の全体構成を示している。画像形成装置100は、印刷装置、プリンタ、複写機、複合機、ファクシミリとして実現可能であるが、ここでは複写機と仮定する。画像形成装置100は、原稿の画像を読み取るリーダ部1Rと、画像を記録媒体に形成するプリンタ部1Pを有する。画像形成装置100は、電子写真方式の多色画像形成装置である。なお、本発明の本質はモータの制御方式にあることから、本発明は電子写真方式の画像形成装置にのみ限定されるわけではない。例えば、画像形成方式は、電子写真方式、静電記録方式、磁気記録方式、インクジェット方式、昇華方式、オフセット印刷方式のいずれであってもよい。プリンタ部1Pは、画像形成部10を備える。画像形成部10は、感光ドラム11a〜dにイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像を形成し、これらを中間転写ベルト31上に重畳的に転写する。
【0009】
給紙ユニット20は、記録媒体である記録シートPを収納するための給紙庫21a、21bおよび手差しトレイ27を備えている。記録シートPは、記録材、記録媒体、用紙、シート、転写材、転写紙、媒体と呼ばれることもある。給紙庫17a、17b21a、21bおよび手差しトレイ27には、記録シートPを一枚ずつピックアップして搬送路を送り出すためのピックアップローラ1822a、1822b、26が設けられている。給紙庫21a、21bに収納されている記録シートもピックアップローラ22a、22bによって、それぞれ搬送路へ送り出される。なお、a、bのサフィックスは、共通の事項を説明する際には省略される。ピックアップローラ1822a、1822b、26から送り出された記録シートPをさらに搬送するために、3つの給紙ローラ23が設けられている。記録シートPは、搬送路の一部を形成する給紙ガイド24を介してレジストローラ25a、25bに至る。画像形成部10が画像の形成を開始するタイミングに合わせてレジストローラ25a、25が回転することで、中間転写ベルト31上に転写されたトナー画像が記録シートPに転写される。記録シートPに転写されたトナー画像は定着器40で定着され、画像形成装置100の外へ排出される。
【0010】
次に、図2および図3を用いて一例として給紙庫21を用いて給紙動作について説明する。図2(A)はシートフィード装置の一例である給紙庫21の断面図であり、図2(B)は給紙庫21の一部を示した平面図である。
【0011】
図3において電源301は、プリンタ制御部302やモータ制御部303などに電力を供給する。プリンタ制御部302やモータ制御部303は、モータの回転方向とモータに供給される電流の値を制御する制御手段として機能する。ユーザーインターフェース部306から画像形成の開始指示がコントローラ部307へ入力されると、コントローラ部307は画像形成ジョブを開始するようにプリンタ制御部302へ指示する。プリンタ制御部302は、この指示に応答して、紙面高さセンサ210からの入力情報を調べる。紙面高さセンサ210は、記録シートの束の最上位に位置している記録シートがピックアップローラ22によってピックアップ可能な位置に到達しているか否かを示す情報を出力する。つまり、入力情報は、リフトアップが必要か不要かを示す情報である。リフトアップが必要であることを入力情報が示していれば、プリンタ制御部302は、モータ制御部303へリフトアップを指示する。一方、リフトアップが不要であることを入力情報が示していれば、プリンタ制御部302は、モータ制御部303へピックアップを指示する。モータ制御部303は、プリンタ制御部302からの駆動指示に応じて、ピックアップまたはリフトアップが実現されるようモータ205を駆動する。モータ205は、ここでは、ステッピングモータと仮定するが、他の方式のモータであってもよい。モータ205は、第1方向に回転することでリフトアップ手段を駆動し、第1方向と反対の第2方向に回転することでピックアップ手段を駆動するモータの一例である。また、モータ205や各種のギア、ワンウェイクラッチなどは駆動手段の一例である。
【0012】
リフトアップが指示されるとモータ205のモータ出力軸212が反時計回りに回転する。積載板201は複数のシートが積載される積載板の一例である。図2(A)に示した積載板201上には記録シートの束が積載されている。積載板201は巻き取りローラ202に対してワイヤ203で接続されている。巻き取りローラ202およびワイヤ203は積載板をリフトアップするリフトアップ手段として機能する。モータ出力軸212が反時計回りに回転することでワンウェイクラッチ付きのギア204が回転する。ワンウェイクラッチ付きのギア206は、時計回りには回転しないので、ピックアップローラ22へモータ205の駆動力は伝達されない。ワンウェイクラッチ付きのギア204を介して回転力が巻き取りローラ202に伝達すると、巻き取りローラ202が回転を開始し、ワイヤ203を巻き取って行く。これにより、ワイヤ203の一端に接続されている積載板201が上昇する。ワンウェイクラッチ付きのギア204は、モータが備えるモータ軸の回転をリフトアップ手段に対して一方向にのみ伝達する第1ワンウェイクラッチの一例である。
【0013】
積載板201に積載された複数の記録シートのうち最上位に位置する記録シート(トップシート)が所定位置に到達するとピックアップローラ22へ当接する。以降、ピックアップローラ22は、トップシートのリフトアップによって、上昇することになる。ピックアップローラ22が上昇するにしたがって、フラグ211が回動軸209を中心に回動する。紙面高さセンサ210は、発光素子と受光素子とを備える。フラグ211によって発光素子から受光素子へ向かう光が遮断されると、紙面高さセンサ210は、光が遮断されたこと(もはやリフトアップが不要であること)を示す情報(※後述のオン/オフとの対応関係がわかるようにしてください)をプリンタ制御部302に出力する。ここでは、トップシートがリフトアップ不要な高さに到達すると、紙面高さセンサ210はオン信号を出力する。一方、トップシートがリフトアップ不要な高さに到達していなければ、紙面高さセンサ210はオフ信号を出力する。紙面高さセンサ210は、トップシートが所定位置に到達しているかどうかを検知する検知手段として機能する。プリンタ制御部302は、光が遮断されたことを示す情報を検出すると、モータ制御部303へ停止指示を送信する。停止指示を受信すると、モータ制御部303は、モータ205の駆動を停止する。
【0014】
ピックアップが指示されるとモータ205の出力軸212は時計回りに回転し、その回転力がワンウェイクラッチ付きのギア206およびギア207を介してピックアップローラ22に伝達する。これにより、ピックアップローラ22が回転を開始し、積載板201の上に記録シートの束のうち最上位に位置している記録シートPが一枚ずつピックアップされて搬送路へ送り出される。このように、ピックアップローラ22は、積載板のリフトアップにしたがってトップシートと当接し、第2ワンウェイクラッチおよびギアを介して伝達されてきた回転力によってトップシートをピックアップするピックアップ手段として機能する。また、ワンウェイクラッチ付きのギア206は、モータが備えるモータ軸の回転をピックアップ手段に対して一方向にのみ伝達する第2ワンウェイクラッチの一例である。ギア207は、第2ワンウェイクラッチの回転をピックアップ手段に伝達するギアの一例である。ワンウェイクラッチ付きギア204は、反時計回りには回転しないので、巻き取りローラ202へモータ205の駆動力は伝達されない。
【0015】
図3において、モータ制御部303は、その内部に電流制御部313を備えている。電流制御部313は、ピックアップを実行するための第1電流設定と、リフトアップを実行するための第2電流設定とを備えており、モータ制御部303からの指示に応じて電流設定を切り替える。第1電流設定は、モータ205が備えるステータの巻線に流れる電流の値を第1電流値に設定するための設定である。第23の電流設定は、モータ205が備えるステータの巻線に流れる電流の値を第2電流値に設定するための設定である。そして、モータ205が駆動することにより、ワンウェイクラッチ付きのギア206、204のいずれか一方が回転する。つまり、モータ205の回転方向が正回転か逆回転かによって、ピックアップローラ22と巻き取りローラ202のいずれ一方が回転する。
【0016】
図4を用いて給紙動作の課題について説明する。リフトアップが終了したことでモータ205の励磁を切ると、積載されている紙の重さにより積載板201が下降する。ワンウェイクラッチ付きのギア204の遊びなどが原因で、巻き取りローラ202と、ワンウェイクラッチ付きのギア204が連れ回りする。さらに、モータ軸212も連れ回りする。よって、モータ軸212とモータ電気軸がずれてしまった状態で給紙動作が終了する。すなわち、モータ軸212に連結しているローターのステータの相が理想状態からずれてしまう。この相がずれた状態からモータが励磁されると、ローターが振動しながら不安定に回転することがあった。
【0017】
図5(A)および図6を用いて、リフトアップおよびピックアップについて説明する。図6が示すように、時刻T0からT7までがイニシャライズ期間であり、時刻T7からT8までがスタンバイ期間であり、時刻T8からT12までがコピー動作期間である。イニシャライズ期間は、給紙庫21を画像形成装置100内に収容した直後や画像形成装置100の電源投入直後の期間であって、イニシャライズ処理を実行する期間である。イニシャライズ処理は、画像の形成に備えて実行されるリフトアップなどである。スタンバイ期間は、画像形成の開始指示を待ち受ける期間である。ここでは、シートフィード装置に電力が投入された直後に実行されるイニシャライズ処理において、第1電流値から第2電流値に切り替え、第2方向に予め定められた回転量だけ回転するようモータを制御することを特徴とする。
【0018】
S501で、プリンタ制御部302は、紙面高さセンサ210からの出力信号がオフ状態かオン状態であるかを判定する。時刻T0において出力信号がオフ状態である。このように紙面高さセンサ210の出力信号がオフ状態であれば、S502に進む。(※図面と対応していないようです)プリンタ制御部302は、カウンタをスタートさせ、カウント値がt1秒(例:2秒)を超えたかどうかを判定する。以降でも、カウンタを用いて時間を計時するものとする。カウント値がt1秒を超えると、S503に進む。図6において、時刻T0からT1までの期間がt1秒となっている。
【0019】
S503で、プリンタ制御部302は、モータ制御部303を通じて電流制御部313に対し、電流設定を第1電流設定に切り替えるよう指示する。電流制御部313は、第1電流設定に切り替え、モータ205へ電流の供給を開始する。これにより、モータ205の励磁がオンとなる。
【0020】
S504で、プリンタ制御部302は、モータ205の励磁をオンにしてからの経過時間がt2秒を超えたかどうかを判定する。図6では、時刻T1からT2までの期間がt2となっている。よって、励磁をオンにしてからの経過時間がt2秒(100m秒)を超えると(時刻T2になると)、S505に進む。
【0021】
S505で、プリンタ制御部302は、リフトアップの指示をモータ制御部303に出力する。モータ制御部303は、リフトアップを実行するためにモータ205を逆回転(反時計回り回転)させる。具体的には、モータ制御部303が、モータ205に対するモータクロックの供給を開始する。
【0022】
S506で、プリンタ制御部302は、紙面高さセンサ210の出力信号がオンしたかどうか(リフトアップが不要になったかどうか)を判定する。図6では、時刻T3において、紙面高さセンサ210の出力信号がオンとなる。紙面高さセンサ210の出力信号がオンになると、S507に進む。
【0023】
S507で、プリンタ制御部302は、紙面高さセンサ210の出力信号がオンになったときからt3秒(例:10m秒)が経過したかどうかを判定する。図6では、時刻T3からT4までの期間がt3秒になっている。紙面高さセンサ210の出力信号がオンとなる。t3秒が経過すると、S508に進む。
【0024】
S508で、プリンタ制御部302は、リフトアップの停止をモータ制御部303に指示する。モータ制御部303は、モータ205に対するモータクロックの供給を停止する。
【0025】
S509で、プリンタ制御部302は、モータ制御部303を通じて電流制御部313に対し、電流設定を第2電流設定に切り替えるよう指示する。電流制御部313は、第2電流設定に切り替える。なお、第2電流設定の電流値は、第1電流設定の電流値よりも少ない。このようにモータ205を駆動するための駆動電流の電流値を減少させることで、消費電力を低下させることができるとともに、モータ205の振動を小さくすることが可能となる。このように、プリンタ制御部302は、モータに供給する電流の値を、リフトアップ手段を駆動するときにモータに供給した電流の値である第1電流値よりも少ない第2電流値に予め切り替えておく。
【0026】
S510で、プリンタ制御部302は、モータ205をピックアップ方向(時計回り方向/正方向)へ予め定められた回転量だけ回転させるようモータ制御部303に指示する。予め定められた回転量は、シートと積載板の重さによる積載板の下降によってモータのローターとステータの相ずれを相殺するように決定された回転量である。ここでは、予め定められた回転量は、クロックのパルスの数に対応している。モータ制御部303は、所定数のパルス分だけクロックをモータ205に供給する。図6によれば、時刻T5からT6の期間にクロックがモータ205に供給されている。この際のクロックのパルス数は、上述した連れ回りによってモータ205がどの程度回転してしまうかに依存する。つまり、連れまわりの起因した回転量(回転角)が相ずれの量に対応しているからである。相ずれの量はメカニカルな構造に依存するための、実験により求めるか、シミュレーションによって求めておくけばよい。そして、この相ずれを相殺できるよう、パルス数を決定しておくすることになる。プリンタ制御部302やモータ制御部303は、トップシートが所定位置に到達したことを検知手段が検知したことでモータを停止させる際に、第2方向に予め定められた回転量だけ回転するようモータを制御してからモータを停止させる制御手段の一例である。
【0027】
S511で、プリンタ制御部302は、モータ205へのクロックの供給を停止してからt4秒(例:200m秒)が経過したかどうかを判定する。図6において、時刻T6からT7までの期間がt4秒となっている。t4秒が経過すると、S512に進む。
【0028】
S512で、プリンタ制御部302は、モータ205の励磁をオンからオフに切り替えるようモータ制御部303に指示する。モータ制御部303は、この指示に従ってモータ205の励磁をオンからオフに切り替える。このように、プリンタ制御部302やモータ制御部303は、第2方向に予め定められた回転量だけ回転するようモータを制御した後で、モータが備えるステータの巻線を励磁していた第2電流値の電流の供給を停止する。
【0029】
図6を用いて、コピー開始後のピックアップとリフトアップについて説明する。図6が示すように、ピックアップの際におけるモータ205の回転方向は正回転である。ピックアップの期間において、最初の一定期間は定速度でモータ205を駆動する区間である。この区間を設けることで、モータ205の回転が安定してから、加速に移行する。加速区間の次に定速度区間があり、最後に、減速区間がある。
【0030】
図5(B)および図6を用いて、N枚(Nは1以上の自然数)のシートをピックアップすることを指定されたジョブが投入され、N枚目のシートのピックアップが終了したときの相ずれ低減処理について説明する。ここでは、プリンタ制御部302は、何枚目のシートをピックアップしたかを監視しているものと仮定する。さらに、プリンタ制御部302は、N枚目のシートのピックアップが終了し、かつ、リフトアップ手段による積載板のリフトアップが終了したかどうかを検知手段の検知結果に基づいて判定する判定手段として機能する。さらに、プリンタ制御部302やモータ制御部303は、N枚目のシートのピックアップが終了し、かつ、積載板のリフトアップが終了すると、第1電流値から第2電流値に切り替え、第2方向に予め定められた回転量だけ回転するようモータを制御する。以下では、最終回(N枚目)のピックアップが終了した時刻T9から説明を始める。
【0031】
S521で、プリンタ制御部302は、紙面高さセンサ210からの出力信号がオフ状態かオン状態であるかを判定する。時刻T9において出力信号がオフ状態である。このように紙面高さセンサ210の出力信号がオフ状態であれば、S522に進む。一方、紙面高さセンサ210の出力信号がオン状態であれば、S528に進む。
【0032】
S522で、プリンタ制御部302は、カウンタをスタートさせ、カウント値がt5秒(例:100m秒)を超えたかどうかを判定する。t5秒が経過すると、S524に進む。ここでは、時刻T9からT10までの期間がt5秒となっている。
【0033】
S523で、プリンタ制御部302は、リフトアップの指示をモータ制御部303に出力する。モータ制御部303は、リフトアップを実行するためにモータ205を逆回転(反時計回り回転)させる。
【0034】
S524で、プリンタ制御部302は、紙面高さセンサ210の出力信号がオンしたかどうか(リフトアップが不要になったかどうか)を判定する。図6では、時刻T11において、紙面高さセンサ210の出力信号がオンとなる。紙面高さセンサ210の出力信号がオンになると、S541に進む。
【0035】
S525で、プリンタ制御部302は、紙面高さセンサ210の出力信号がオンになったときからt6秒が経過したかどうかを判定する。図6では、時刻T11からT12までの期間がt6秒になっている。t6秒が経過すると、S526に進む。
【0036】
S526で、プリンタ制御部302は、リフトアップの停止をモータ制御部303に指示する。モータ制御部303は、モータ205に対するモータクロックの供給を停止する。
【0037】
S527で、プリンタ制御部302は、モータ制御部303を通じて電流制御部313に対し、電流設定を第2電流設定に切り替えるよう指示する。電流制御部313は、第2電流設定に切り替える。このようにモータ205を駆動するための駆動電流の電流値を減少させることで、消費電力を低下させることができるとともに、モータ205の振動を小さくすることが可能となる。なお、図6では、時刻T13において第2電流設定に切り替えられている。
【0038】
S528で、プリンタ制御部302は、モータ205をピックアップ方向(時計回り方向/正方向)へ所定数のパルス分だけ回転させるようモータ制御部303に指示する。モータ制御部303は、クロックを所定数のパルス分だけモータ205に供給する。図6によれば、時刻T14からT15の期間にクロックがモータ205に供給されている。この際のクロックのパルス数は、相ずれを相殺できるよう予め決定された値となる。プリンタ制御部302やモータ制御部303は、トップシートが所定位置に到達したことを検知手段が検知したことでモータを停止させる際に、第2方向に予め定められた回転量だけ回転するようモータを制御してからモータを停止させる制御手段の一例である。
【0039】
S529で、プリンタ制御部302は、モータ205へのクロックの供給を停止してからt7秒(例:200m秒)が経過したかどうかを判定する。図6において、時刻T14からT15までの期間がt7秒となっている。t7秒が経過すると、S530に進む。
【0040】
S530で、プリンタ制御部302は、モータ205の励磁をオンからオフに切り替えるようモータ制御部303に指示する。モータ制御部303は、この指示に従ってモータ205の励磁をオンからオフに切り替える。このように、プリンタ制御部302やモータ制御部303は、第2方向に予め定められた回転量だけ回転するようモータを制御した後で、モータが備えるステータの巻線を励磁していた第2電流値の電流の供給を停止する。
【0041】
このように本実施形態によれば、ピックアップとリフトアップとを単一のモータで実現する際におきる相ずれに起因した各種の問題を解決できる。すなわち、リフトアップを終了してスタンバイに移行する際にピックアップを実行する際の回転方向に所定量だけ予めモータを回転させておくことで、相ずれを緩和できる。すなわち、スタンバイ後にモータを起動する際の回転の振動を小さくでき、安定回転に至るまでの時間も短縮できる。
【0042】
なお、上述したt1ないしt7は、実験やシミュレーションを行って決定される値である。とりわけ、t2、t4、t5、t6は励磁のオンやオフに伴うモータの振動が納まるために必要となる時間である。
【0043】
相ずれを小さくするためにモータを所定量だけ改選させる際に、モータに通電する電流の値を小さくすることで、相ずれ低減処理に伴うモータの消費電力を小さくすることができる。第2電流値は、相ずれ低減処理に必要となるトルクやマージンを考慮して設定される。
【0044】
相ずれ低減処理は、上述したようにリフトアップを終了してモータを停止する際に行われる。例えば、イニシャライズ期間や複数枚の記録シートのうち最終枚目のシートについてピックアップが終了したときに相ずれ低減処理を実行することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシートが積載される積載板と、
前記積載板をリフトアップするリフトアップ手段と、
前記積載板に積載された複数のシートのうち最上位に位置するトップシートをピックアップするピックアップ手段と、
前記トップシートが所定位置に到達しているかどうかを検知する検知手段と、
第1方向に回転することで前記リフトアップ手段を駆動し、前記第1方向と反対の第2方向に回転することで前記ピックアップ手段を駆動するモータを含む駆動手段と、

前記モータの回転方向と前記モータに供給される電流の値を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記トップシートが所定位置に到達したことを前記検知手段が検知したことで前記モータを停止させる際に、前記第2方向に予め定められた回転量だけ回転するよう前記モータを制御してから前記モータを停止させることを特徴とするシートフィード装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2方向に予め定められた回転量だけ回転するよう前記モータを制御する際に、前記モータに供給する電流の値を、前記リフトアップ手段を駆動するときに前記モータに供給した電流の値である第1電流値よりも少ない第2電流値に予め切り替えておくことを特徴とする請求項1に記載のシートフィード装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記シートフィード装置に電力が投入された直後に実行されるイニシャライズ処理において、前記第1電流値から前記第2電流値に切り替え、前記第2方向に前記予め定められた回転量だけ回転するよう前記モータを制御することを特徴とする請求項2に記載のシートフィード装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
N枚(Nは1以上の自然数)のシートをピックアップすることを指定されたジョブが投入されると、N枚目のシートのピックアップが終了し、かつ、前記リフトアップ手段による前記積載板のリフトアップが終了したかどうかを前記検知手段の検知結果に基づいて判定する判定手段を備え、
前記判定手段が、前記N枚目のシートのピックアップが終了し、かつ、前記リフトアップ手段による前記積載板のリフトアップが終了したと判定すると、前記第1電流値から前記第2電流値に切り替え、前記第2方向に前記予め定められた回転量だけ回転するよう前記モータを制御することを特徴とする請求項2または3に記載のシートフィード装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第2方向に予め定められた回転量だけ回転するよう前記モータを制御した後で、前記モータが備えるステータの巻線を励磁していた前記第2電流値の電流の供給を停止することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載のシートフィード装置。
【請求項6】
前記駆動手段は、前記モータが備えるモータ軸の回転を前記リフトアップ手段に対して一方向にのみ伝達する第1ワンウェイクラッチを備え、
前記予め定められた回転量は、前記シートと前記積載板の重さによる前記積載板の下降によって前記モータのローターとステータの相ずれを相殺するように決定された回転量であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のシートフィード装置。
【請求項7】
前記駆動手段は、前記モータが備えるモータ軸の回転を前記ピックアップ手段に対して一方向にのみ伝達する第2ワンウェイクラッチと、
前記第2ワンウェイクラッチの回転を前記ピックアップ手段に伝達するギアと
を備え、
前記ピックアップ手段は、前記積載板のリフトアップにしたがって前記トップシートと当接し、前記第2ワンウェイクラッチおよび前記ギアを介して伝達されてきた回転力によって前記トップシートをピックアップすることを特徴とする請求項6に記載のシートフィード装置。
【請求項8】
画像形成装置であって、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載されたシートフィード装置と、
前記シートフィード装置から供給されたシートに画像を形成するプリンタ部と
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−106812(P2012−106812A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255309(P2010−255309)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】