説明

シートライニング付きセグメントの製造方法

【課題】箱型の鋼殻にコンクリートを充填して表面を樹脂シートで覆い、隣接するセグメント同士の継ぎ目に近接してコンクリートのない連結部材用の空間を設けたセグメントにおいて、完成度の高い製品が得られる製造方法を提供する。
【解決手段】鋼殻2の内部の所定位置に区画部材7を取り付け、鋼殻の開口の全体を1枚の樹脂シート23で覆った状態に固定し、区画部材を除いて樹脂シートに被覆された鋼殻の内部にコンクリートを充填し、コンクリートの硬化後に、樹脂シートを区画部材の外形に沿って切断除去し、区画部材を鋼殻から取外して前記空間を形成する。樹脂シートの開口からのコンクリート漏れ等が発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周状に湾曲した箱体である鋼殻の内部にコンクリートが充填され、硬化したコンクリートの表面は樹脂シートで被覆されたシートライニング付きセグメントに関する。このシートライニング付きセグメントは、施工対象であるトンネル等の壁面上に並べて設置し、互いに連結することにより前記壁面を覆う構造部材である。本発明は、特に該シートライニング付きセグメントの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1、2に開示されるように、トンネル等の構造物の壁体を構築するための構造部材として、周状に湾曲した箱体である鋼殻の内部にコンクリートを充填したセグメントが知られている。このセグメントは、円筒体を周方向及び軸方向の両方向について、それぞれ複数に分割した形状の鋼殻を有しており、この鋼殻は内面側が開口した鋼製の皿状の部材であって、その内部にはコンクリートが充填されている。ここで、この鋼殻の周方向及び軸方向の両方向の各縁辺の所定位置には、コンクリートが充填されていない小さな空間が設けられており、セグメントを周方向又は軸方向に並べると、隣接して配置された2つのセグメントの鋼殻の各空間が対応する位置にくるので、各空間内にそれぞれボルトナット等の締結手段を設けて同方向について互いに連結することができる。
【0003】
かかる形状・構造のセグメントを施工対象であるトンネル等の壁面上に取り付けて壁体を構築するには、まずトンネルの周方向及び長さ方向の各方向に合わせて複数個のセグメントを壁面に並べ、隣接するセグメント同士を前述したそれぞれの空間に締結手段を設けて互いに連結していき、トンネル内に円筒状の壁体を構築していく。その後、各セグメントの連結用の空間はコンクリートで充填しておく。
【0004】
かかるセグメントにおいては、例えば特許文献1に示すように、硬化したコンクリートの表面を樹脂シートで被覆したタイプのものも知られている。かかる樹脂シート被覆タイプのセグメントにも、前述した隣接するセグメントと連結する際の連結部材が設けられる空間が鋼殻の縁辺に沿って設けられており、当該部分にあたる樹脂シートは該空間の開口形状に沿って切り欠かれており、セグメントの内面側から作業員が空間内に手を入れることができるようになっている。
【特許文献1】特開2001−58308号公報
【特許文献2】特開2002−283328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような連結用の空間を有する樹脂シート被覆タイプのセグメントは、実際には製造するのに次のような困難な点があった。すなわち、その製造においては、まず鋼殻内の所定位置にコンクリートが充填されない空間を区画するために、鋼殻内の要所にコンクリートが流れ込まないように箱状の区画部材を取付け、次にこの所定位置に構成される空間の配置に合わせて樹脂シートに切り欠きを形成し、この樹脂シートを鋼殻の内面(開口側の面)に配置し、全体を上下の型枠で挟んで固定する。すなわち、この段階では鋼殻の内面は樹脂シートに覆われているが、後に空間となる区画部材の部分は樹脂シートの切り欠きに対応している。
【0006】
そして、鋼殻の内部にコンクリートを充填して硬化させた後、型枠を取り外し、さらに区画部材を取り外せば、コンクリートがなく樹脂シートの切り欠きに囲まれた連結用の空間を有する樹脂シート被覆タイプのセグメントが得られる。
【0007】
しかし、実際には、樹脂シートに形成した切り欠きの位置と、鋼殻に設けた区画部材の位置が正確に一致せず、両者間に隙間が出来たり、樹脂シートが空間の開口に被ったり、位置合わせの精度に起因する問題が生じる場合があった。そして、樹脂シートと区画部材の間に隙間があると、コンクリートの充填工程において鋼殻内に充填されたコンクリートが区画部材の周囲で樹脂シートの切り欠きとの間から漏れてしまい、区画部材の内部に溜まって硬化し、また区画部材と樹脂シートの切り欠きとの間に付着した状態で硬化してしまい、外観上好ましくないだけでなく、さらに漏れて硬化したコンクリートを除去する等の仕上げ工程が要求され、コストも増大してしまう場合があった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、箱型の鋼殻にコンクリートを充填して表面を樹脂シートで覆ったセグメントであって、隣接するセグメント同士の継ぎ目に近接して鋼殻内にコンクリートと樹脂シートが存在しない連結部材用の空間が設けられたシートライニング付きセグメントの製造方法において、コンクリートのない空間を構成する区画部材と樹脂シートの切り欠きとが高精度で位置合わせされ、両者の間からコンクリートが漏れるおそれもなく、完成度の高い製品が得られる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載されたシートライニング付きセグメントの製造方法は、内面側が開口とされた箱体からなる鋼殻と、前記鋼殻に充填されて硬化したコンクリートと、前記コンクリートの表面を被覆する樹脂シートとを有し、施工対象である壁体上に並べて設置され、互いに連結することにより前記壁体を覆う壁面を構成するシートライニング付きセグメントの製造方法において、
前記鋼殻の内部の所定位置に前記コンクリートが充填されない空間を形成するための区画部材を取外し可能な状態で取り付け、
前記鋼殻の開口の全体を1枚の樹脂シートで覆った状態に固定し、
前記区画部材を除いて前記樹脂シートに被覆された前記鋼殻の内部にコンクリートを充填し、
前記コンクリートの硬化後に、前記樹脂シートのうち前記区画部材に対応する部分を切断除去するとともに、前記区画部材を前記鋼殻から取外すことにより、前記空間を形成することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載されたシートライニング付きセグメントの製造方法は、請求項1記載のシートライニング付きセグメントの製造方法において、
前記空間は、前記鋼殻の縁辺に沿って設けられ、前記壁体上に隣接して並べた他のシートライニング付きセグメントと連結するための連結部材が設けられる連結部材用空間であり、
前記区画部材は、前記鋼殻に形成された連結孔を介して前記鋼殻に取り付けられることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載されたシートライニング付きセグメントの製造方法は、請求項2記載のシートライニング付きセグメントの製造方法において、
前記樹脂シートの前記区画部材に対応する部分及び該区画部材に注入孔を形成しておき、これらの注入孔から前記鋼殻の内部にコンクリートを充填することを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載されたシートライニング付きセグメントの製造方法は、請求項1記載のシートライニング付きセグメントの製造方法において、
前記空間は、前記鋼殻の内方に設けられ、該シートライニング付きセグメントを移動させるために操作手段が把持する把持部材を取り付けるための把持部材固定部に近接して設けられる把持部材用空間であり、
前記区画部材は、前記把持部材固定部に取り付けられるとともに前記樹脂シートに形成した連結孔を介して前記樹脂シートに固定されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載されたシートライニング付きセグメントの製造方法によれば、鋼殻の開口の全体を1枚の樹脂シートで覆って鋼殻の内部にコンクリートを充填し、コンクリートの硬化後に区画部材に沿って樹脂シートを切断除去するので、コンクリートがない空間の開口に対して樹脂シートの切り欠きが正確に合致しており、両者の間からのコンクリート漏れもなく、製品としての完成度が高い。
【0014】
請求項2に記載されたシートライニング付きセグメントの製造方法によれば、上述のように高い精度で製造される樹脂シート切り欠き部分の空間として、鋼殻の縁辺に沿って設けられ、他のシートライニング付きセグメントと連結するための連結部材が設けられる連結部材用空間を構成することができる。
【0015】
請求項3に記載されたシートライニング付きセグメントの製造方法によれば、最終的には除去される樹脂シートの区画部材に対応する部分に注入孔を形成し、ここから区画部材を経て鋼殻内にコンクリートを充填するので、充填後の樹脂シートの復旧が不要である。
【0016】
請求項4に記載されたシートライニング付きセグメントの製造方法によれば、上述のように高い精度で製造される樹脂シート切り欠き部分の空間として、前記鋼殻の内方に設けられ、該シートライニング付きセグメントを移動させるために操作手段が把持する把持部材を取り付けるための把持部材固定部に近接して設けられる把持部材用空間を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本願発明における最良の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本例のシートライニング付きセグメント1(以下、単に「セグメント1」と呼ぶ。)の基体である鋼殻2の正面図、図2は同平面図である。
図3(a)は本例のコンクリート充填工程において使用される区画部材の正断面図、図3(b)は図3同(a)のA−A切断線における断面図、図3(c)は同区画部材の平面図である。
図4は本例のコンクリート充填工程における本例のセグメント1の正面図、図5は図4におけるB−B断面図である。
図6は本例の方法によって製造したセグメントの正面図である。
【0018】
1.セグメント1の基本構造及び鋼殻2の構造
本例のセグメント1は、背景技術で説明した従来のセグメントと同様、所定の厚さを有する円筒体を仮想すると、該円筒体をその周方向及び軸方向の両方向についてそれぞれ複数に等分割したような外形を有する構造部材であり、トンネル等の構造物の壁体を構築するための構成要素として用いられる。その基本構造は、内面側が開口した鋼殻2と呼ばれる箱体内にコンクリートを充填し、そのコンクリートの表面を樹脂シートで被覆したものである。
【0019】
以下、セグメント1の鋼殻2の構造について説明する。
図1及び図2に示すように、本例のセグメント1の基体となる鋼殻2は、所定の厚さを有する円筒体を周方向及び軸方向の両方向についてそれぞれ複数に等分割して得られる周状に湾曲した外形の箱体(皿状)である。鋼殻2の外面側(トンネルに設置する場合は壁面側)及び側周面は連続した平面状の板材でほぼ閉止されているが、内面側(トンネルに設置する場合はトンネル内の空間側)は全面が開口3とされており、該開口3から覗く鋼殻2の内部には縦横に板状の補強用のリブ4等が設けられている。鋼殻2の内部はこれらのリブ4によって完全に分離・分割されて複数の独立した部屋に仕切られている訳ではなく、リブ4の要所には隙間や開口があり、鋼殻2の一部からコンクリートを供給すれば全体に行き渡らせて充填することができる。
【0020】
鋼殻2の内部は完全にコンクリートで充填されるものではなく、部分的にコンクリートが充填されない空間がある。その目的は、第1にセグメント1同士を連結するためのボルトナット等の連結部材を設けるためであり、かかる目的の空間は隣接する鋼殻2と接する鋼殻2の周辺部に設けられ、連結部材用空間と呼ぶ。第2の目的は以下の通りである。すなわち、シートライニング付きセグメント1を工事中に移動させるため、先端に把持爪が設けられた動力で操作される操作手段としてのアーム装置が用いられるが、この操作手段が把持するつまみとなる把持部材(把持ボルト)を取り付けるために把持部材固定部が鋼殻2内のコンクリートに埋め込まれて設けられる。この把持部材固定部に把持ボルトが鋼殻2外に突出するようにねじ込まれて取り付けられるわけであるが、把持部材固定部の近傍には把持ボルトとの接触によるコンクリートの欠損を避けるため、コンクリートのない空間(テーパー状の凹部)を設ける必要がある。これが第2の目的によるコンクリートのない把持部材用空間である。
【0021】
なお、前記連結部材用空間や前記把持部材用空間は、コンクリート充填時にコンクリートを排除する区画部材を鋼殻2内に設けることで構成するが、これら各空間が構成される複数の各位置を、以下においては、その構成の相違に基づいて、第1の位置P1、第2の位置P2及び第3の位置P3と命名して説明することとする。
【0022】
まず、前記形状のセグメント1を前記円筒体の軸線方向に沿って並べて連結する際の連結手段を設ける空間を構成するため、前記軸線と直交する鋼殻2の一対の周状縁枠5,5の近傍には、鋼殻2内に設けられたリブ4によって略矩形の枠状部6が設けられている。枠状部6は、各周状縁枠5の両端と中央の合計3箇所にそれぞれ等間隔で設けられている。図2にも示すように、これらの枠状部6はその内部が鋼殻2内の他の部分に対して閉止されているわけではなく、枠状部6の内外は連通している。
【0023】
一方の周状縁枠5の3つの枠状部6には、連結手段としてのボルトを配置するための前記連結部材用空間をコンクリート内に構成するために、それぞれ略箱型の区画部材7が配置されており、周状縁枠5の各枠状部6に対応する位置には、前記ボルトが挿通する連結孔としてのボルト孔8がそれぞれ形成されている。
ここで、これら区画部材7が配置され、軸方向の連結部材用空間が構成される3つの枠状部6の位置を第1の位置P1と呼ぶ。
【0024】
また、他方の周状縁枠5側の3つの枠状部6には、隣接するセグメント1の前記空間から挿入された前記ボルトがねじ込まれる連結手段としてのナット部材9が、それぞれ周状縁枠5の内面に固定されて周状縁枠5の外側からねじ込めるようになっている。後述するように鋼殻2内にコンクリートが充填された時に、このナット部材にはコンクリートが入り込まないようになっている。
【0025】
図3に示す区画部材7は、3つの第1の位置P1の枠状部6内に設けられるものであり、同図(a)乃至(c)に示すように、半円筒形状の底部7aから連続する側周壁7bの間隔が上面の開口7cに向けて拡大しているとともに、側周壁7bの一方は外方に折れ曲げられており、区画部材7の周囲のコンクリートが硬化した後に区画部材7を取り去る際の抜き勾配を構成している。また、同図(b)乃至(c)に示すように、一対の平面状の前壁7d及び後壁7eのうち、周状縁枠5に接する前壁7dの内面には前記周状縁枠5のボルト孔8に対応する位置にナット部材10が固定されている。さらに前壁7dの周囲と周状縁枠5の内面との間にはパッキン11が設けられており、前壁7dと周状縁枠5の間からボルト孔8にコンクリートが流入しないように構成されている。また、後壁7eは底部7aから上面の開口7cに向けて広がる方向に傾斜しており、区画部材7の周囲のコンクリートが硬化した後に区画部材7を取り去る際の抜き勾配を構成している。さらに、区画部材7の開口7cは、蓋板12によって閉止可能であるが、この蓋板12の内面側にはナット部材13が設けられて、蓋板12の貫通孔を介して外側からボルト14をねじ込むことができるようになっており、後述するコンクリート充填工程では樹脂シート及び上型枠を挿通して該蓋板12のナット部材13にボルト14をねじ込むことにより鋼殻2内の所定位置に配置された区画部材7の開口7cを確実に閉止してコンクリートの流入を防止することができる。
【0026】
この区画部材7は、鋼殻2内の枠状部6内に配置し、鋼殻2の周状縁枠5に設けられたボルト孔8に外側からボルト14を挿入し、このボルト14を前記ナット部材10にねじ込めば、鋼殻2に対して一時的に固定することができる。
【0027】
次に、前記形状のセグメント1を前記円筒体の周方向について連結する連結部材を設ける連結部材用空間を構成するため、前記円筒体の軸線と平行な鋼殻2の一対の矩形縁枠15,15の各両端近傍には、隣接するセグメント1を周方向に連結するための構造が設けられている。
【0028】
すなわち、一対の矩形縁枠15,15の各両端には、連結部材としてのボルトを挿通させるための連結孔としてボルト孔8が形成されている。そして、一方の矩形縁枠15の各ボルト孔8に対応する両端の各内面側には、前記ボルトを配置する前記空間を区画するために、略箱型の区画部材17が配置されている。この区画部材17の構造及び矩形縁枠15に対する着脱可能な取り付け構造は、図示はしないが、前述した第1の位置に設けられた区画部材7と実質的に同一である。
これら区画部材17が配置され、周方向の連結部材用空間が構成される2つの位置を、説明の便宜上、第2の位置P2と呼ぶ。
【0029】
また、他方の矩形縁枠15の各両端の内側には、隣接するセグメント1の前記空間から挿入された前記ボルトをねじ込むことができるナット部材18が、矩形縁枠15の内面に固定されている。後述するように鋼殻2内にコンクリートが充填された時に、このナット部材18にはコンクリートが入り込まないようになっている。
【0030】
図1に示すように、各周状縁枠5側の各3つの枠状部6のうち、中央の2つの枠状部6の中間位置(鋼殻2のほぼ中央位置)には、前記区画部材7とは構造の異なる他の区画部材27(図5参照)を利用して前記把持部材用空間が形成される。
まず、図5に示すように、上端内面にめねじ部が形成された把持部材固定部としての連結管18が鋼殻2の底面に垂直に固定されている。連結管18は、周状縁枠5及び矩形縁枠15よりも低く、鋼殻2内に充填されるコンクリート内に埋没する部材であるが、その上端開口3の部分にはコンクリートのない前記把持部材用空間が形成され、外部からは該空間を介して連結管18に接近することができる。この連結管18の上端の開口3に連続するコンクリートのない空間は、後述する他の区画部材27を型として形成するが、この区画部材27が配置される位置を、説明の便宜上、第3の位置P3と呼ぶ。
【0031】
この連結管18のめねじ部には、セグメント1を移動させる際に機械の腕が掴むための把持部材としての把持ボルトをねじ込むことができる。すなわち、本例のセグメント1の施工にあたっては、これをトンネル内等の現場でアーム装置等の機械力により持ち上げて壁面に据え付ける必要があるが、その時に把持ボルトを連結管18にねじ込んでセグメント1の表面から相当寸法突出した状態とし、これを機械の腕で掴んで操作することができる。
【0032】
2.セグメント1の製造工程
次に、セグメント1の製造工程について説明する。
(1)コンクリートの充填工程
まず、以上説明した鋼殻2の内部にコンクリートを充填する作業について説明する。
図4に示すように、第1の位置P1及び第2の位置P2にそれぞれ区画部材7,17を取り付ける。これらの区画部材7,17は、固定部材としてのボルト14を鋼殻2のボルト孔8に外側から差し込んで区画部材7のナット部材10にねじ込むことにより、鋼殻2に一体に取り付ける。また図5に示すように第3の位置P3に他の区画部材27を取り付ける。他の区画部材27は、連結管18の上端開口3の部分にコンクリートの存在しない空間を構成するため、コンクリートを鋼殻2内に充填する際に、当該部分にコンクリートが流入しないようにする部材であって該連結管18の上端開口3を覆って設けられる。すなわち、この型部材は、連結管18内に挿入される側周面が膨出した円錐台形部19と、その大径の上面に一体化された拡径したフランジ部20とからなる。フランジ部20の上面中央にはねじ孔が形成され、コンクリート充填時に型枠及び樹脂シートと一体化される。
【0033】
図4乃至図5に示すように、鋼殻2を開口3を上にして(すなわち湾曲した鋼殻2を下に凸の状態にして)、鋼殻2と同一の曲率で湾曲している下型枠21の上に置く。鋼殻2の開口3の周囲には所定高さの目地材22を配置して鋼殻2の開口3を取り囲み、その上に鋼殻2の外形と同一形状の矩形の樹脂シート23を置き、さらにその上から鋼殻2と同一の曲率で湾曲している上型枠24を置き、上型枠24と下型枠21をボルト等を利用した締結手段25で一体に固定する。また、上型枠24の上面中央の孔から樹脂シート23の孔を挿通して第3の位置P3にある区画部材27にボルト14をねじ込んで固定する。
【0034】
樹脂シート23は、コンクリート構造物の被覆材として要求される防食性能、平滑性能、耐摩耗性能等を満足するために種々の樹脂材料等が採用可能である。本例では、特に高密度ポリエチレンを採用することにより、前記各性能とともにリサイクルも可能としている。また、樹脂シート23の裏面には、コンクリートに埋設されるリブ部23a(図8参照)が一体に設けられている。リブ部23aは、樹脂シート23の面に対して垂直であり、適当な間隔で互いに平行となるように複数本が列設されるとともに、リブ部23aの先端には断面略円形乃至楕円形の膨出部が一体に設けられており、コンクリートに埋設された際の固着強度を高めている。
【0035】
図4及び図5において第1の位置P1にある3つの区画部材7のうち、中央の区画部材7に相当する樹脂シート23の一部分に孔を設け(詳細は図示しない)、さらにこの位置にある区画部材7の底にも孔を形成しておき、ここからコンクリートを送り込んで鋼殻2内にコンクリートを充填する。コンクリートが充填されたところで、区画部材7の孔を塞いでおく。コンクリート充填のための手段は動力を用いても手動でも良い。なお、この例では区画部材7の部分からコンクリートを充填したが、この区画部材7に相当する樹脂シート7の部分は、最終的には切断除去する部分であるので、コンクリート充填のために形成した孔を充填後に修復する必要はない。これと異なり、区画部材7以外の部分の樹脂シート23に開口を設けて、ここからコンクリートを鋼殻2内に流し込むとすると、最終製品としては樹脂シートの上記開口は修復しなければならないので作業工程が増え、好ましくない。
【0036】
鋼殻2内のコンクリートが硬化した後、上下型枠24,21の締結手段24を解除して上型枠24を下型枠21から分離し、上型枠24及び目地材22をセグメント1の上から取り去る。下型枠21の上には、鋼殻2と、鋼殻2内を充填するとともに鋼殻2の開口3から目地材の高さ分だけ突出した硬化したコンクリートと、このコンクリートの表面を覆う樹脂シート23からなるセグメント1が得られる。
【0037】
(2)樹脂シート23の切断工程
次に、樹脂シート23のうち区画部材7に対応する部分を区画部材7に沿って切断除去するとともに、区画部材7を鋼殻2から取外すことにより、把持部材用空間と連結部材用空間を形成する。樹脂シート23の切断工程には、鋼殻2に所定の位置で固定され、樹脂シート23を前記連結部材用空間や前記把持部材用空間を構成する各区画部材7の形状に合わせて切断する機能を有する専用の切断装置を用いても良いし、又は前記連結部材用空間や前記把持部材用空間の外形に合せて作業員が手作業で樹脂シート23を切断しても良い。
【0038】
(3)完成したセグメント(図6)
以上の工程によって完成した本例のセグメントは、図6に示すように、鋼殻2内を充填するコンクリートが鋼殻2の開口3から前記目地材の高さ分だけ突出して硬化しており、このコンクリートの表面が樹脂シート23に覆われるとともに、前記連結部材用空間の部分は樹脂シート23が該空間の形状に正確に合致した矩形の態様で切断された切断開口30,40とされ、前記把持部材用空間の部分は樹脂シート23が該空間の形状に正確に合致した円形の態様で切断された切断開口50とされている。すなわち、区画部材で空間を確保した状態でコンクリートを硬化させ、樹脂シート23はその後に形成された空間に合せて切り取られるので、コンクリートのないこれらの空間と樹脂シートの切り欠きとは高精度で位置合わせされ、両者の間からコンクリートが漏れることもなく、完成度の高いセグメント製品が得られる。
【0039】
(4)本例のセグメントの製造方法による効果
以上説明したように、本例のシートライニング付きセグメント1の製造方法によれば、要所に区画部材7,17,27を設けた鋼殻2の開口3側の全体を1枚の樹脂シート23で覆った状態で型枠に挟んで固定し、樹脂シート23の区画部材7,17,27に対応する部分に孔を設けてここから鋼殻2の内部にコンクリートを充填した後、コンクリートの硬化後に区画部材7,17,27に沿って樹脂シート23を切断除去するので、コンクリートがない空間の開口に対して樹脂シート23の切り欠きが正確に合致しており、両者の間からのコンクリート漏れもなく、製品としての完成度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は本例のセグメント1の基体である鋼殻2の正面図である。
【図2】図2は本例のセグメント1の基体である鋼殻2の平面図である。
【図3】図3(a)は本例のコンクリート充填工程において使用される区画部材7の正断面図、図3(b)は図3同(a)のA−A切断線における断面図、図3(c)は同区画部材7の平面図である。
【図4】図4は本例のコンクリート充填工程における本例のセグメント1の正面図である。
【図5】図5は図4のB−B切断線における断面図である。
【図6】図6は本例のセグメントの正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 シートライニング付きセグメント(セグメント)
2 鋼殻
3 鋼殻の開口
7,17,27 区画部材
8 連結孔としてのボルト孔
14 区画部材を鋼殻に固定する固定手段としてのボルト
23 樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面側が開口とされた箱体からなる鋼殻と、前記鋼殻に充填されて硬化したコンクリートと、前記コンクリートの表面を被覆する樹脂シートとを有し、施工対象である壁体上に並べて設置され、互いに連結することにより前記壁体を覆う壁面を構成するシートライニング付きセグメントの製造方法において、
前記鋼殻の内部の所定位置に前記コンクリートが充填されない空間を形成するための区画部材を取外し可能な状態で取り付け、
前記鋼殻の開口の全体を1枚の樹脂シートで覆った状態に固定し、
前記区画部材を除いて前記樹脂シートに被覆された前記鋼殻の内部にコンクリートを充填し、
前記コンクリートの硬化後に、前記樹脂シートのうち前記区画部材に対応する部分を切断除去するとともに、前記区画部材を前記鋼殻から取外すことにより、前記空間を形成することを特徴とするシートライニング付きセグメントの製造方法。
【請求項2】
前記空間は、前記鋼殻の縁辺に沿って設けられ、前記壁体上に隣接して並べた他のシートライニング付きセグメントと連結するための連結部材が設けられる連結部材用空間であり、
前記区画部材は、前記鋼殻に形成された連結孔を介して前記鋼殻に取り付けられることを特徴とする請求項1記載のシートライニング付きセグメントの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂シートの前記区画部材に対応する部分及び該区画部材に注入孔を形成しておき、これらの注入孔から前記鋼殻の内部にコンクリートを充填することを特徴とする請求項2記載のシートライニング付きセグメントの製造方法。
【請求項4】
前記空間は、前記鋼殻の内方に設けられ、該シートライニング付きセグメントを移動させるために操作手段が把持する把持部材を取り付けるための把持部材固定部に近接して設けられる把持部材用空間であり、
前記区画部材は、前記把持部材固定部に取り付けられるとともに前記樹脂シートに形成した連結孔を介して前記樹脂シートに固定されることを特徴とする請求項1記載のシートライニング付きセグメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−341503(P2006−341503A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169569(P2005−169569)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(390021197)テイヒュー株式会社 (9)
【Fターム(参考)】