説明

シート体加工方法、表示器用部品製造方法およびシート体加工装置

【課題】製品の商品的価値を低下させる要因となる外観不良の発生を回避する。
【解決手段】シート本体11と、シート本体11の表面に形成されたハードコート層12とを少なくとも有する中間体30aに対して切断処理を実行して中間体30aにおける第1部位を第1部位の周囲の第2部位から切り離すときに、切断処理に際して、第1部位として切り離す領域A1aの端に沿って照射源から中間体30aにレーザービームを照射してレーザービームの照射部位における厚み方向の一部を除去するビーム照射処理を複数回実行する(矢印L1〜L4のようにレーザービームを照射して厚み方向の一部を除去する)ことで照射部位において中間体30aを切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート体を所望の形状に切断処理するシート体加工方法およびシート体加工装置、並びに、加工したシート体を用いて表示器用部品を製造する表示器用部品製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2009−119687号公報には、表面基材、接着剤層および剥離シートをこの順に積層した長尺のシート体(接着シート)に対して打抜き処理(ダイカット)を行うことにより、表面基材および接着剤層にダイカット溝を形成する(表面基材および接着剤層を切断する)ダイカット装置が開示されている。このダイカット装置によるシート体の加工方法では、打抜き処理によってダイカット溝が形成されることにより、表面基材および接着剤層が、ラベル部と連続状カス部とに分離可能な状態に加工される。
【0003】
一方、特開2010−053310号公報には、粘着剤層、難加工性材料層および基材シートがセパレータの上にこの順で積層されたシート体(粘着シート)を対象としてハーフカット加工を行う方法が開示されている。この場合、この公開公報に開示されているシート体の加工方法では、シート体のハーフカット対象部位にレーザービーム(レーザー光)を照射することにより、レーザービームの照射部位において、粘着剤層、難加工性材料層および基材シートを切断する。これにより、粘着剤層、難加工性材料層および基材シートの積層体が、レーザービームの照射部位によって囲まれた内側部位と、その周囲の外側部位とに分離可能な状態に加工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−119687号公報(第2,5頁、第1,4図)
【特許文献2】特開2010−053310号公報(第3−5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記したシート体加工方法には、以下の解決すべき問題点がある。すなわち、ダイカット装置による打抜き処理によってシート体を加工する方法では、打ち抜き刃(トムソン刃やピナクル刃)をシート体に対して押し当てることによって表面基材および接着剤層にダイカット溝を形成する。ここで、発明者らは、シート本体の表面にハードコート層が形成されたシート体を対象として、上記のダイカット装置と同様に構成された加工装置を用いて打抜き処理を実行したときに、打ち抜き刃を押し当てた部位においてハードコート層にクラックが生じると共に、ハードコート層が粉砕されることで生じた粉塵がシート体に付着する現象が生じるのを見いだした。このため、ハードコート層を含むシート体をダイカットによって加工する方法には、打ち抜かれた製品にクラックの発生や粉塵の付着などの外観不良が生じて、その商品的価値が低下するという問題点が存在する。
【0006】
一方、レーザービームの照射によってシート体を加工する方法では、ダイカット装置によるシート体の加工方法とは異なり、シート本体の表面にハードコート層が形成されたシート体を対象として加工しても、ハードコート層にクラックが生じる事態を回避することができると共に、粉塵(粉砕されたハードコート層)の発生についても回避することが可能となっている。しかしながら、レーザービームの照射によるシート体加工方法では、シート体に対するレーザービームの照射に伴ってシート体の構成材料が気化して煙となり、この煙(煙を構成する微粒子)がシート体に付着して汚れが生じることがある。このため、レーザービームの照射によるシート体加工方法には、汚れに起因する外観不良が生じて、製品の商品的価値を低下させるという問題点が存在する。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、製品の商品的価値を低下させる要因となる外観不良の発生を回避し得るシート体加工方法およびシート体加工装置、並びに、そのようなシート体加工方法に従って加工されたシート体を用いて表示器用部品を製造する表示器用部品製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく本発明に係るシート体加工方法は、シート本体と、当該シート本体の表面に形成されたハードコート層とを少なくとも有するシート体に対して切断処理を実行して当該シート体における第1部位を当該第1部位の周囲の第2部位から切り離すシート体加工方法であって、前記切断処理に際して、前記第1部位として切り離す第1領域の端に沿って照射源から前記シート体にレーザービームを照射して当該レーザービームの照射部位における厚み方向の一部を除去するビーム照射処理を複数回実行することで当該照射部位において当該シート体を切断する。
【0009】
また、本発明に係るシート体加工方法は、前記シート本体および前記ハードコート層を含む製品層とセパレータとの間に粘着層が形成された前記シート体に対して当該セパレータの側から前記レーザービームを照射することで、前記第1部位を切離し対象製品とし、かつ前記第2部位を余材として当該第1部位を当該第2部位から切り離すときに、最初の前記ビーム照射処理時に前記レーザービームの照射によって前記製品層に達する深さの溝を前記照射部位に形成すると共に、その後の前記ビーム照射処理時に、前記照射源から前記照射部位までの前記レーザービームのビーム中心線が、前記第1領域を基準として、前記最初のビーム照射処理時における前記レーザービームの前記ビーム中心線よりも外側に位置するように当該レーザービームを照射する。
【0010】
具体的には、ビーム走査によって前記第1領域の端に前記レーザービームを照射することで前記第1部位を前記第2部位から切り離すときには、最初の前記ビーム照射処理時に前記レーザービームの照射によって前記製品層に達する深さの溝を形成し、かつその後の前記ビーム照射処理時における前記レーザービームの照射の向きを前記最初のビーム照射処理時における当該レーザービームの照射の向きよりも外向きに傾けることで当該レーザービームの前記ビーム中心線を外側に位置させる。
【0011】
また、前記照射源および前記シート体の少なくとも一方を他方に対して移動させながら前記第1領域の端に向かって前記レーザービームを照射することで前記第1部位を前記第2部位から切り離すときには、最初の前記ビーム照射処理時に前記レーザービームの照射によって前記製品層に達する深さの溝を形成し、かつその後の前記ビーム照射処理時における前記レーザービームの照射軌跡が前記最初のビーム照射処理時における当該レーザービームの照射軌跡よりも外側に位置するように前記少なくとも一方を前記他方に対して移動させることで当該レーザービームの前記ビーム中心線を外側に位置させる。
【0012】
さらに、本発明に係るシート体加工方法は、複数回の前記ビーム照射処理時に前記第1領域の上方に位置させた前記照射源から当該第1領域の端に向かって前記レーザービームを斜めに照射する。
【0013】
また、本発明に係るシート体加工方法は、前記切断処理において、前記第1部位が切り離されて前記第2部位となる第2領域内に規定した照射開始位置から前記シート体に対する前記レーザービームの照射を開始して、当該レーザービームの照射を中断することなく複数回の前記ビーム照射処理を連続して実行した後に、前記第2領域内に規定した照射終了位置において前記シート体に対する前記レーザービームの照射を終了する。
【0014】
さらに、本発明に係るシート体加工方法は、前記照射開始位置から前記第1領域の端までの間の前記レーザービームの照射軌跡と、前記第1領域の端から前記照射終了位置までの間の前記レーザービームの照射軌跡とが当該第1領域の端から離間した位置において交差するように当該レーザービームを照射する。
【0015】
また、本発明に係るシート体加工方法は、前記照射開始位置から前記第1領域の端までの間の前記レーザービームの照射軌跡と、前記第1領域の端から前記照射終了位置までの間の前記レーザービームの照射軌跡とが当該第1領域の各角部のうちの当該第1領域の外側に向かって突出する当該角部のなかで曲率半径が最も小さい当該角部の近傍において交差するように当該レーザービームを照射する。
【0016】
また、本発明に係る表示器用部品製造方法は、少なくともタッチパネル本体を備えて構成された表示器用部品の製造に際して、請求項1から5のいずれかに記載のシート体加工方法に従って前記切断処理を実行して製造した前記第1部位を前記タッチパネル本体の表面に貼付して前記表示器用部品を製造する。
【0017】
また、本発明に係るシート体加工装置は、シート本体と、当該シート本体の表面に形成されたハードコート層とを少なくとも有するシート体に対して切断処理を実行して当該シート体における第1部位を当該第1部位の周囲の第2部位から切り離すシート体加工装置であって、前記シート体にレーザービームを照射する照射源を備え、前記切断処理に際して、前記第1部位として切り離す第1領域の端に沿って前記照射源から前記シート体に前記レーザービームを照射して当該レーザービームの照射部位における厚み方向の一部を除去するビーム照射処理を複数回実行することで当該照射部位において当該シート体を切断する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るシート体加工方法およびシート体加工装置によれば、ビーム照射処理を複数回実行することで照射部位においてシート体を切断することにより、打ち抜き刃をシート体に対して押し当てて打ち抜く従来のダイカット装置による加工方法とは異なり、シート体に力を加えることなくこれを切断することができるため、シート体に形成されているハードコート層にクラックが発生する事態、および、ハードコート層が粉砕された粉塵の発生を回避することができる。また、1回のレーザービーム(レーザー光)の照射によってシート体を所望の形状に切断する従来の加工方法とは異なり、複数回のビーム照射処理によってシート体を切断することで、各ビーム照射処理時に強いレーザービームをシート体に照射しなくて済むため、単位時間当りにシート体から発生する煙の量を十分に低減することができる。これにより、シート体におけるレーザービームの照射部位の近傍に高濃度の煙が存在する事態を回避できる結果、シート体の表面に付着する煙の量を十分に低減することができると共に、切断面に焦げや熱変形が生じる事態を回避することができる。したがって、このシート体加工方法およびシート体加工装置によれば、外観不良の発生を回避することができる結果、切断処理によって製造された第1部位の商品的価値を十分に向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係るシート体加工方法によれば、最初のビーム照射処理時に製品層に達する深さの溝を形成すると共に、その後のビーム照射処理時に、レーザービームのビーム中心線が、最初のビーム照射処理時におけるレーザービームのビーム中心線よりも外側に位置するようにレーザービームを照射することにより、最初のビーム照射処理によって形成された溝の第1領域側の側面に、その後のビーム照射処理時に有効ビーム径の範囲内のレーザービームが照射されないため、シート本体と比較して薄厚のセパレータにおける切断部位が過度に加熱されて熱変形を招いたり焦げが生じたりする事態を回避することができる。また、最初のビーム照射処理によって溝が形成された部位が、その後のビーム照射処理によってレーザービームの照射部位を除去した部位よりも内側に引っ込んだ状態(奥まった状態)となるため、第1部位からセパレータを剥離してタッチパネル本体等に貼付した際に、粘着層の端がはみ出す事態(粘着層を構成する粘着剤がはみ出す事態)を好適に回避することができると共に、粘着層よりも外側に迫り出しているシート本体やハードコート層の存在によって粘着層の端(粘着剤)に手が触れる事態を回避することができる結果、粘付きが生じる事態を回避することができる。
【0020】
さらに、本発明に係るシート体加工方法によれば、第1領域の端に向かってレーザービームを斜めに照射することにより、製造された第1部位の端面が、セパレータからハードコート層の側に向かって、第1領域を基準として、徐々に外向きに迫り出すように加工されるため、この第1部位からセパレータを剥離してタッチパネル本体等に貼付した際に、粘着層の端がはみ出す事態を好適に回避することができると共に、粘着層よりも外側に迫り出しているシート本体やハードコート層の存在によって粘着層の端に手が触れる事態を回避することができる結果、粘付きが生じる事態を回避することができる。
【0021】
また、本発明に係るシート体加工方法によれば、第2領域内に規定した照射開始位置からレーザービームの照射を開始して、レーザービームの照射を中断することなく複数回のビーム照射処理を連続して実行した後に、第2領域内に規定した照射終了位置においてシート体に対するレーザービームの照射を終了することにより、シート体の構成材料を消失させるエネルギー量が一定に定まっていない状態(不安定な状態)のレーザービーム(照射開始直後のレーザービーム、および照射終了時のレーザービーム)が第1領域の端に照射される事態を回避することができるため、第1部位の端(レーザービームの照射による切断部位)に、不安定なレーザービームの照射によって凹みが生じる事態を回避することができる。これにより、切断処理によって製造された第1部位の商品的価値を十分に向上させることができる。
【0022】
さらに、本発明に係るシート体加工方法によれば、照射開始位置から第1領域の端までの間のレーザービームの照射軌跡と、第1領域の端から照射終了位置までの間のレーザービームの照射軌跡とが第1領域の端から離間した位置において交差するようにレーザービームを照射することにより、第1領域の端において、レーザービームの照射によるシート体の構成材料の消失量(気化して除去される量)が他の照射部位よりも局所的に多くなる部位が生じるのを回避することができるため、第1部位の端(レーザービームの照射による切断部位)に凹みが生じる事態を回避することができる。これにより、切断処理によって製造された第1部位の商品的価値を一層向上させることができる。
【0023】
また、本発明に係るシート体加工方法によれば、照射開始位置から第1領域の端までの間のレーザービームの照射軌跡と、第1領域の端から照射終了位置までの間のレーザービームの照射軌跡とが第1領域の各角部のうちの第1領域の外側に向かって突出する角部のなかで曲率半径が最も小さい角部の近傍において交差するようにレーザービームを照射することにより、仮に、両照射軌跡の交点の近傍に極く小さな凹みが生じたとしても、曲率半径が小さな角部に凹みが生じることとなるため、その凹みを殆ど目立たなくすることができる。これにより、第1部位の商品的価値を一層向上させることができる。
【0024】
また、本発明に係る表示器用部品製造方法によれば、上記の第1部位をタッチパネル本体の表面に貼付して表示器用部品を製造することにより、クラックや汚れの付着に起因する外観不良が生じていない綺麗な第1部位を備えた商品的価値が十分に高い表示器用部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】切断処理装置1の構成図である。
【図2】携帯電話機100の正面図である。
【図3】携帯電話機100におけるタッチパネル140の断面図である。
【図4】カバーシート10(10a)の断面図である。
【図5】カバーシート10を製造するための中間体20の平面図である。
【図6】カバーシート10を製造するための中間体30aの平面図である。
【図7】中間体30aに対するレーザービームLの照射処理について説明するための説明図である。
【図8】中間体30aに対するレーザービームLの照射処理について説明するための他の説明図である。
【図9】1回目のレーザービームLの照射処理が完了した状態の中間体30a(40)の断面図である。
【図10】2回目のレーザービームLの照射処理が完了した状態の中間体30a(40)の断面図である。
【図11】3回目のレーザービームLの照射処理が完了した状態の中間体30a(40)の断面図である。
【図12】4回目のレーザービームLの照射処理が完了した状態の中間体30a(40)の断面図である。
【図13】中間体30aに対するレーザービームLの照射処理について説明するためのさらに他の説明図である。
【図14】照射開始位置PSaから位置P1aまでのレーザービームLの照射軌跡と、位置P2aから照射終了位置PEaまでのレーザービームLの照射軌跡との交点PCaについて説明するための説明図である。
【図15】カバーシート10の平面図である。
【図16】中間体30に対するレーザービームLの照射処理について説明するための説明図である。
【図17】中間体30に対するレーザービームLの照射処理について説明するための他の説明図である。
【図18】中間体30に対するレーザービームLの照射処理について説明するためのさらに他の説明図である。
【図19】照射開始位置PSbから位置P1bまでのレーザービームLの照射軌跡と、位置P2bから照射終了位置PEbまでのレーザービームLの照射軌跡との交点PCbについて説明するための説明図である。
【図20】カバーシート10aの平面図である。
【図21】照射開始位置PScから位置P1cまでのレーザービームLの照射軌跡と、位置P2cから照射終了位置PEcまでのレーザービームLの照射軌跡との交点PCcについて説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、シート体加工方法、表示器用部品製造方法およびシート体加工装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0027】
図1に示す切断処理装置1は、「シート体加工装置」の一例であって、図2に示す携帯電話機100における表示器110の構成部品であるタッチパネル140(「表示器用部品」の一例:図3参照)の製造に際して、「シート体加工方法」に従って「切断処理」を実行して、図4,15に示すカバーシート10を製造可能に構成されている。この場合、図2に示すように、携帯電話機100は、表示器110、スピーカ120およびジョグボタン130aを備えると共に、図示しないマイク、制御基板および二次電池等を備えて構成されている。また、表示器110は、バックライト装置およびLCDパネル(図示せず)と、上記のタッチパネル140とが一体化されて構成されている。
【0028】
さらに、図3に示すように、タッチパネル140は、透明電極部141、粘着層142、カバーガラス143およびカバーシート10を備えて構成されている。この場合、本例では、透明電極部141、粘着層142およびカバーガラス143が相俟って「タッチパネル本体」を構成する。透明電極部141は、一例として、ITO膜等で透明電極が形成された透明電極フィルムの積層体で構成されている。なお、透明電極部141の具体的な構成については周知のため、その層構造についての図示や詳細な説明を省略する。粘着層142は、透明電極部141にカバーガラス143を接着するための粘着剤で構成されている。カバーガラス143は、タッチパネル140の物理的強度を確保するための支持体であって薄厚の強化ガラスで構成されている。
【0029】
カバーシート10は、カバーガラス143の傷付きを阻止するための保護カバーとしての機能、および携帯電話機100の正面パネル(表示器110の前面)に図柄Ma(図5参照:この例では、表示器110における画面表示エリアの周囲に設けられた「外枠」の図柄や「○ボタン」および「×ボタン」の図柄)を付与する機能を有するシート体であって、後述するようにして、切断処理装置1によって表示器110の外形と同形に切断されて、図3に示すように、カバーガラス143の表面(「タッチパネル本体」の表面)に貼付される。
【0030】
一方、図1に示すように、切断処理装置1は、シート体保持部2、レーザー装置3、排煙装置4、カメラ5および制御部6を備え、後述するようにして、中間体30(「シート体」の一例:図5参照)を対象とする切断処理を実行して中間体30a(図6参照)を製造すると共に、中間体30aを対象とする切断処理を実行して上記のカバーシート10を製造する。シート体保持部2は、吸引ポンプに接続された吸着ステージ(図示せず)を備え、加工対象物(この例では、中間体30,30a)を吸着して保持する。
【0031】
レーザー装置3は、「照射源」に相当し、加工対象物を切断するためのレーザービームLを出射可能に構成されている。この場合、本例の切断処理装置1では、一例として、炭酸ガスレーザー装置(PETで形成された対象物の加工に適したレーザービームLを照射可能な装置の一例)でレーザー装置3が構成されている。このレーザー装置3は、レーザービーム発生部において発生させたレーザービームL(一例として、波長9.3μmのレーザービーム)を制御部6の制御に従って偏向することによって、加工対象物の任意の部位にレーザービームLを照射できるように構成されている。
【0032】
排煙装置4は、加工対象物(中間体30,30a)におけるレーザービームLの照射面側に配設されて、レーザー装置3によるレーザービームLの照射によって加工対象物から発生した煙(レーザービームLの照射によって気化した中間体30,30aの構成物)を吸引して、図示しないダクトの排気口から排出する排煙処理を実行する。カメラ5は、レーザー装置3によるレーザービームLの照射位置を位置決めするために加工対象物に付されたマーク(一例として、後述する位置決め用マークMb(図5,6参照)など)を撮像して、その撮像データを制御部6に出力する。
【0033】
制御部6は、切断処理装置1を総括的に制御する。具体的には、制御部6は、図示しない吸引ポンプを制御してシート体保持部2によって加工対象物を保持させる。また、制御部6は、カメラ5を制御して、シート体保持部2によって保持されている加工対象物を撮像させると共に、カメラ5から出力された撮像データに基づき、加工対象物における切断対象部位を特定する。さらに、制御部6は、レーザー装置3を制御して、加工対象物にレーザービームLを照射させることで予め規定された部位を切断させると共に、排煙装置4を制御して排煙処理を実行させる。
【0034】
この場合、図4に示すように、切断処理装置1によって製造されるカバーシート10は、シート本体11の一方の面(同図における下面)にハードコート層12が形成され、かつ、このハードコート層12の表面を覆うようにして保護フィルム13が貼付されると共に、シート本体11の他方の面(同図における上面)に印刷層14、スペーサ層15および粘着層16がこの順で形成され、かつ、粘着層16を覆うようにしてセパレータ17が配設されて、その厚みが280μm程度に形成されている。
【0035】
シート本体11は、一例として、厚み125μm程度のPET(Polyethylene terephthalate)フィルムで構成されている。ハードコート層12は、アクリル樹脂を主成分とするハードコート層形成用の樹脂材料を塗布して硬化させることにより、厚み5μm程度の薄膜状に形成されている。保護フィルム13は、一例として厚み50μm程度のPETフィルム(シート本体11と同じ材料で形成されたフィルム)で構成されている。印刷層14は、前述した図柄Maや、中間体30,30aを対象とする切断処理時に切断する位置を特定するための位置決め用マークMb(図5,6参照)等を付与するための層であって、酸化チタンやカーボンブラック等の顔料を含んだビニルウレタン樹脂等の有色樹脂材料で厚み10μm程度の薄膜状に形成されている。なお、図2,5,15、および後に説明するカバーシート10aについての図20では、この印刷層14が形成されている部位を網線で塗り潰して図示している。
【0036】
スペーサ層15は、印刷層14の存在に起因してシート本体11の一面に生じた段差を埋めるための機能層であって、一例として、紫外線硬化樹脂を塗布して硬化させることにより、印刷層14が存在する部位の厚みが14μm程度で、印刷層14が存在しない部位の厚みが24μm程度となるように形成されている。粘着層16は、アクリル系接着剤層転写フィルムをスペーサ層15の表面に貼合させてアクリル系接着剤層(粘着剤)をスペーサ層15に転写させることにより、厚み25μm程度の薄膜状に形成されている。セパレータ17は、一例として厚み50μm程度のPETフィルム(シート本体11と同じ材料で形成されたフィルム)で構成されている。
【0037】
この場合、このカバーシート10では、最も厚いシート本体11を構成する材料(この例では、PET)と同じ材料によって形成した保護フィルム13およびセパレータ17を採用している。したがって、例えば、シート本体11とは相違する材料(一例として、PE(Polyethylene))で形成した保護フィルムおよびセパレータを採用した構成とは異なり、後述する「切断処理」に際して、シート本体11の切断に適したレーザービームLを中間体30,30aに照射したときに、レーザービームLの照射部位において保護フィルム13やセパレータ17が過度に消失したり、保護フィルム13やセパレータ17に焦げが生じたり、保護フィルム13やセパレータ17の消失の度合いが小さ過ぎて切断が不完全となったりすることを回避することができる。
【0038】
また、図15に示すように、カバーシート10には、携帯電話機100のスピーカ120から出力された音を放音させるための音孔51や、ジョグボタン130を露出させるためのジョグボタン用孔52が開口されている。この場合、後述するように、タッチパネル140の製造に際してカバーガラス143にカバーシート10を貼付する際には、粘着層16からセパレータ17が剥がされる。また、カバーガラス143に対する貼付を完了した状態においては、必要に応じてハードコート層12から保護フィルム13が剥がされる。このため、図3に示すように、カバーガラス143に貼付された状態のカバーシート10では、上記の保護フィルム13やセパレータ17が存在しない状態となる。
【0039】
なお、後述するように、カバーシート10は、中間体30aを対象とする切断処理によって製造され、中間体30aは、中間体30を対象とする切断処理によって製造され、中間体30は、中間体20(図5参照)を対象とする切断処理によって製造される。したがって、中間体20,30,30aの層構造は、上記のカバーシート10の層構造と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0040】
上記のカバーシート10の製造に際しては、まず、中間体20を製造するための原反(図示せず)を製造する。具体的には、長尺の帯状に形成されてロール状に巻回されたシート本体11(PETフィルム)の一方の面にハードコート層形成用の樹脂材料を塗布して硬化させることにより、シート本体11の一面にハードコート層12を形成する。次いで、形成したハードコート層12の傷付きを回避するために、ハードコート層12の表面に保護フィルム13を貼付する。続いて、ハードコート層12の形成および保護フィルム13の貼付が完了したシート本体11を、予め規定された長さ(この例では、中間体20の長さ)に切断する。
【0041】
次いで、切断したシート本体11の他方の面(ハードコート層12を形成した面の裏面)に印刷装置によって図柄Maおよび位置決め用マークMb(図5,6参照)を印刷することにより、印刷層14を形成する。続いて、シート本体11における印刷層14の形成面に紫外線硬化型の樹脂材料を塗布して硬化させることにより、スペーサ層15を形成する。次いで、スペーサ層15の表面にアクリル系接着剤層転写フィルムを貼合させてアクリル系接着剤層(粘着剤)をスペーサ層15に転写させることにより、粘着層16を形成する。この後、粘着層16を覆うようにしてセパレータ17を貼付することにより、図5に示すように、中間体20が完成する。続いて、同図に示す破線の部位において中間体20を切断する。これにより、中間体30が完成する。
【0042】
次いで、中間体30を対象とする「切断処理」を実行して音孔51やジョグボタン用孔52を開口することで中間体30aを製造した後に、この中間体30aを対象とする「切断処理」を実行することでカバーシート10を製造する。なお、中間体30を対象とする「切断処理」(音孔51やジョグボタン用孔52を開口する処理)については後述するものとし、最初に、中間体30aを対象とする「切断処理」について説明する。
【0043】
まず、セパレータ17が配設されている面を上向きとし、かつ保護フィルム13がシート体保持部2に接するようにして中間体30aを切断処理装置1にセットして「切断処理」を実行する。なお、中間体30aを対象とする「切断処理」では、中間体30aが「シート体」に相当し、図6において網線で塗り潰した領域A1a(「切断処理」によって切り離されることでカバーシート10となる領域)が「第1領域」に相当し、領域A1aの周囲の領域A2aが「第2領域」に相当すると共に、スペーサ層15、印刷層14、シート本体11、ハードコート層12および保護フィルム13の積層体が「製品層」に相当する。
【0044】
次いで、制御部6は、シート体保持部2を制御して中間体30aを吸着保持させる。なお、この切断処理装置1では、シート体保持部2によって中間体30aが保持された状態において、レーザー装置3が領域A1aの上方に位置した状態となる。続いて、制御部6は、カメラ5を制御して、シート体保持部2によって保持されている中間体30aを撮像させる。この際に、制御部6は、カメラ5から出力された撮像データを画像解析することによって中間体30aにおける位置決め用マークMbの位置を特定し、特定した位置に基づき、カバーシート10として切り離す領域A1aの端の位置を特定する。
【0045】
次いで、制御部6は、レーザー装置3を制御して中間体30aに対するレーザービームLの照射処理を開始させると共に、排煙装置4を制御して排煙処理を開始させる。この際に、レーザー装置3は、領域A1aの上方に位置させられた状態においてレーザービーム発生部で発生させたレーザービームLを偏向することにより、図7に示すように、上記の領域A2a内に規定された照射開始位置PSaから中間体30aに対するレーザービームLの照射を開始すると共に、領域A1aの端(この例では、位置P1a)に向かって走査しつつ中間体30aにレーザービームLを照射する。また、排煙装置4は、レーザービームLの照射によって中間体30aから発生した煙を吸引して排気口から排出する。
【0046】
次いで、レーザー装置3は、照射を停止することなくレーザービームLの走査することにより、図8に示すように、一例として、領域A1aの端(外周)に沿って反時計回りで位置P1aから位置P1aまで中間体30aにレーザービームLを照射する。この際には、レーザービームLの照射によって中間体30aの構成材料が気化して消失する結果、図9に示すように、レーザービームLの照射部位(この例では、領域A1aの端)における中間体30aの厚み方向の一部がレーザービームLの有効ビーム径(照射部位において構成材料が気化して消失し得る照射エネルギーの範囲:一例として、260μm)の範囲において除去されて、スペーサ層15に達する深さの溝H1(「製品層に達する深さの溝」の一例)が中間体30aに形成される。以上により、中間体30aに対する最初(1回目)の「ビーム照射処理」が完了する。
【0047】
この場合、この中間体30aに対する「切断処理」では、前述したように、領域A1aの上方に位置させられたレーザー装置3から領域A1aの端に向かってレーザービームLが斜めに照射される。したがって、同図に示すように、領域A1aの端に形成された溝H1は、中間体30aに対するレーザービームLの照射の向きに応じて、ハードコート層12側(同図における下側)ほど外側に位置するように斜めに形成される。なお、同図に示す矢印L1は、「最初のビーム照射処理」時に中間体30aに照射するレーザービームLのビーム中心線(レーザー装置3から中間体30aまでの間のビーム中心の軌跡)を表している。
【0048】
次いで、レーザー装置3は、照射を停止することなくレーザービームLの走査することにより、領域A1aの端(外周)に沿って反時計回りで位置P1aから位置P1aまで中間体30aにレーザービームLを再び照射する。この際に、レーザー装置3は、中間体30aに対するレーザービームLの照射の向きを、上記の「最初のビーム照射処理」時におけるレーザービームLの照射の向きよりも外向きに傾けることにより、レーザー装置3から照射部位までのレーザービームLのビーム中心線を、領域A1aを基準として、「最初のビーム照射処理」時におけるレーザービームLのビーム中心線よりも外側に位置させる。
【0049】
したがって、図10に示すように、溝H1における領域A1a側の側面(内側の側面)には、有効ビーム径の範囲内のレーザービームLが照射されることなく、溝H1における領域A2a側の側面(外側の側面)を構成するセパレータ17および粘着層16と、溝H1の下方のスペーサ層15、印刷層14、およびシート本体11におけるスペーサ層15側の一部とがレーザービームLの有効ビーム径の範囲において除去されて、シート本体11における厚み方向の中程に達する深さの溝H2が中間体30aに形成される。以上により、中間体30aに対する2回目の「ビーム照射処理」が完了する。
【0050】
なお、上記したように、2回目の「ビーム照射処理」時におけるレーザービームLのビーム中心線を、最初の「ビーム照射処理」時におけるレーザービームLのビーム中心線よりも外側に位置させたことにより、図10に示すように、中間体30aに形成された溝H2における領域A1a側の側面は、最初の「ビーム照射処理」によって形成された溝H1の底部の一部が残ってスペーサ層15の部位に段差が生じた状態となる。
【0051】
この場合、同図に示す矢印L2は、「2回目のビーム照射処理」時に中間体30aに照射するレーザービームLのビーム中心線(レーザー装置3から中間体30aまでの間のビーム中心の軌跡)を表している。なお、「2回目のビーム照射処理」時におけるレーザービームLのビーム中心線(矢印L2)は、「最初のビーム照射処理」時におけるレーザービームLのビーム中心線(矢印L1)よりも外向き(同図における左向き)に傾いた状態となっており、この例では、中間体30aの表面部位における両ビーム中心線のずれ量Dは、10μm〜100μmの範囲内(有効ビーム径に対する1/2以下:好ましくは、10μm〜30μmの範囲内:一例として、10μm程度)となる。この場合、上記のずれ量Dが大き過ぎると、切断面に形成される段差が視認され易くなり、その外観が悪化すると共にカバーシート10が貼付対象物から剥がれ易くなるおそれがある。また、上記のずれ量Dが小さ過ぎると、段差を設けることで奏される後述の効果が小さくなる。
【0052】
続いて、レーザー装置3は、照射を停止することなくレーザービームLの走査することにより、領域A1aの端(外周)に沿って反時計回りで位置P1aから位置P1aまで中間体30aにレーザービームLを再び照射する。この際に、レーザー装置3は、一例として、中間体30aに対するレーザービームLの照射の向きを、上記の「2回目のビーム照射処理」時におけるレーザービームLの照射の向きと同じ向きに揃えて中間体30aにレーザービームLを照射する。
【0053】
これにより、図11に示すように、溝H2の下方のシート本体11におけるハードコート層12側の一部とハードコート層12とがレーザービームLの有効ビーム径の範囲において除去されて、保護フィルム13に達する深さの溝H3が中間体30aに形成される。以上により、中間体30aに対する3回目の「ビーム照射処理」が完了する。なお、同図に示す矢印L3は、「3回目のビーム照射処理」時に中間体30aに照射するレーザービームLのビーム中心線(レーザー装置3から中間体30aまでの間のビーム中心の軌跡)を表している。
【0054】
次いで、レーザー装置3は、照射を停止することなくレーザービームLの走査することにより、領域A1aの端(外周)に沿って反時計回りで位置P1aから位置P2aまで中間体30aにレーザービームLを照射する。この際に、レーザー装置3は、一例として、中間体30aに対するレーザービームLの照射の向きを、上記の「2回目のビーム照射処理」時、および「3回目のビーム照射処理」時におけるレーザービームLの照射の向きと同じ向きに揃えて中間体30aにレーザービームLを照射する。これにより、図12に示すように、溝H3の下方における保護フィルム13がレーザービームLの有効ビーム径の範囲において除去される。なお、同図に示す矢印L4は、「4回目のビーム照射処理」時に中間体30aに照射するレーザービームLのビーム中心線(レーザー装置3から中間体30aまでの間のビーム中心の軌跡)を表している。
【0055】
続いて、レーザー装置3は、図13に示すように、照射を停止することなく、上記の位置P2a(領域A1aの端)から、領域A2a内に規定された照射終了位置PEaまでレーザービームLを走査して照射終了位置PEaにおいて中間体30aに対するレーザービームLの照射を終了する。以上により、中間体30aに対する4回目の「ビーム照射処理」が完了し、上記の領域A1aがカバーシート10(「第1部位」および「切離し対象製品」の一例)として、その周囲の部位(上記の領域A2aに対応する部位:「第2部位」および「余材」の一例)から切り離される。これにより、中間体30aに対する「切断処理」が完了する。
【0056】
なお、上記の「切断処理」では、照射開始位置PSaから位置P1aまでのレーザービームLの照射軌跡と、位置P2aから照射終了位置PEaまでのレーザービームLの照射軌跡とが交差している。このため、図14に示すように、両照射軌跡の交点PCaにおいては、他の照射部位よりもレーザービームLが同一箇所に1回多く照射されることに起因して、レーザービームLの照射による中間体30aの構成材料の消失量(気化して除去される量)が他の照射部位よりも局所的に多くなる。しかしながら、この切断処理装置1による「切断処理」では、領域A1aの端から外側方向に離間した位置において上記の両照射軌跡が交差するようにレーザービームLを走査している。したがって、交点PCaの近傍において領域A1aの内側に向かって凹むように中間体30aの構成材料が除去されてカバーシート10の端に目立った凹みが生じる事態が回避されて、カバーシート10として切り離す領域A1aの端に沿って中間体30aが切断される。これにより、図15に示すように、カバーシート10が完成する。
【0057】
また、完成したカバーシート10では、図12に示すように、2回目の「ビーム照射処理」時におけるレーザービームLのビーム中心線を、最初の「ビーム照射処理」時におけるレーザービームLのビーム中心線よりも外側に位置させたことにより、その切断面(周面)におけるスペーサ層15の部位に段差が生じた状態となっている。また、完成したカバーシート10では、上記の4回の各「ビーム照射処理」時に、レーザー装置3から領域A1aの端に向かってレーザービームLを斜めに照射したことにより、その端面(切断面)が、切断処理時におけるレーザービームLの進行方向手前側のセパレータ17から進行方向奥側の保護フィルム13に向かって徐々に外向き(同図における左向き)に迫り出すように斜めになっている。これにより、カバーシート10では、粘着層16およびセパレータ17の端面が、印刷層14、シート本体11、ハードコート層12および保護フィルム13の端面よりも内側(同図における右側)に引っ込んだ状態(奥まった状態)となっている。
【0058】
次に、中間体30を対象とする「切断処理」を実行して音孔51やジョグボタン用孔52を中間体30に開口して中間体30aを製造する方法について説明する。なお、音孔51の形成方法についてはジョグボタン用孔52の形成方法と同様のため、以下、音孔51の形成については完了しているものとして、ジョグボタン用孔52の形成方法について説明する。この場合、中間体30に対するジョグボタン用孔52の形成を目的とする「切断処理」においては、中間体30が「シート体」に相当し、「切断処理」によって切り離されることでジョグボタン用孔52が形成される領域(領域A1b:図16〜19参照)が「第1領域」に相当し、領域A1bの周囲の領域A2b(図16〜19参照)が「第2領域」に相当する。
【0059】
ジョグボタン用孔52の形成に際しては、まず、中間体30をシート体保持部2に吸着保持させる。次いで、制御部6は、カメラ5を制御して、シート体保持部2によって保持されている中間体30を撮像させる。この際に、制御部6は、カメラ5から出力された撮像データを画像解析することによって中間体30における位置決め用マークMbの位置を特定し、特定した位置に基づき、ジョグボタン用孔52の形成のために切り離す領域A1bの端を特定する。続いて、制御部6は、レーザー装置3を制御して中間体30に対するレーザービームLの照射処理を開始させる。この際に、レーザー装置3は、図16に示すように、上記の領域A1b内に規定された照射開始位置PSbから中間体30に対するレーザービームLの照射を開始すると共に、領域A1bの端(この例では、位置P1b)に向かって走査しつつ中間体30にレーザービームLを照射する。
【0060】
次いで、レーザー装置3は、照射を停止することなくレーザービームLの走査することにより、図17に示すように、一例として、領域A1bの端(外周)に沿って反時計回りで位置P1bから位置P1bまで中間体30にレーザービームLを照射する。この際には、レーザービームLの照射によって中間体30の構成材料が気化して消失する結果、中間体30のレーザービームLの照射部位(この例では、領域A1bの端)における厚み方向の一部がレーザービームLの有効ビーム径の範囲において除去されて、スペーサ層15に達する深さの溝(図示せず)が中間体30に形成される。以上により、中間体30に対する最初の(1回目)「ビーム照射処理」が完了する。
【0061】
次いで、レーザー装置3は、照射を停止することなくレーザービームLの走査することにより、領域A1bの端(外周)に沿って反時計回りで位置P1bから位置P1bまで中間体30にレーザービームLを再び照射する。この際には、上記の「最初のビーム照射処理」によって形成された溝の下方のスペーサ層15、印刷層14、およびシート本体11におけるスペーサ層15側の一部がレーザービームLの有効ビーム径の範囲において除去されて、シート本体11における厚み方向の中程に達する深さの溝(図示せず)が中間体30に形成される。以上により、中間体30に対する2回目の「ビーム照射処理」が完了する。
【0062】
続いて、レーザー装置3は、照射を停止することなくレーザービームLの走査することにより、領域A1bの端(外周)に沿って反時計回りで位置P1bから位置P1bまで中間体30にレーザービームLを再び照射する。この際には、上記の「2回目のビーム照射処理」によって形成された溝の下方のシート本体11におけるハードコート層12側の一部とハードコート層12とがレーザービームLの有効ビーム径の範囲において除去されて、保護フィルム13に達する深さの溝(図示せず)が中間体30に形成される。以上により、中間体30に対する3回目の「ビーム照射処理」が完了する。
【0063】
次いで、レーザー装置3は、照射を停止することなくレーザービームLの走査することにより、領域A1bの端(外周)に沿って反時計回りで位置P1bから位置P2bまで中間体30にレーザービームLを照射する。上記の「2回目のビーム照射処理」によって形成された溝の下方の保護フィルム13がレーザービームLの有効ビーム径の範囲において除去される。続いて、レーザー装置3は、図18に示すように、照射を停止することなく、上記の位置P2b(領域A1bの端)から、領域A1b内に規定された照射終了位置PEbまでレーザービームLを走査して照射終了位置PEbにおいて中間体30に対するレーザービームLの照射を終了する。以上により、中間体30に対する4回目の「ビーム照射処理」が完了し、上記の領域A1bが、その周囲の領域A2bから切り離されて中間体30にジョグボタン用孔52が形成される。これにより、中間体30に対する「切断処理」が完了し、中間体30aが完成する。
【0064】
なお、上記の「切断処理」では、照射開始位置PSbから位置P1bまでのレーザービームLの照射軌跡と、位置P2bから照射終了位置PEbまでのレーザービームLの照射軌跡とが交差している。このため、図19に示すように、両照射軌跡の交点PCbにおいては、他の照射部位よりもレーザービームLが同一箇所に1回多く照射されることに起因して、レーザービームLの照射による中間体30の構成材料の消失量(気化して除去される量)が他の照射部位よりも多くなる。しかしながら、この切断処理装置1による「切断処理」では、領域A1bの端から内側方向に離間した位置において上記の両照射軌跡が交差するようにレーザービームLを走査している。したがって、交点PCbの近傍において領域A1bの外側に向かって凹むように中間体30の構成材料が除去されてジョグボタン用孔52の口縁部に目立った凹みが生じる事態が回避される。これにより、ジョグボタン用孔52を形成するために切り離す領域A1bの端に沿って中間体30が切断されてジョグボタン用孔52の形成が完了する。この後、前述したように、完成した中間体30aを対象とする「切断処理」を実行することで、カバーシートが製造される。
【0065】
この場合、上記の切断処理装置1におけるレーザー装置3は、線速度80〜90mm/s以下で走査しつつレーザービームLを照射することで、中間体30や中間体30aの所望の部位を1回のビーム照射処理によって切断できる能力を有している。一方、上記の両切断処理時における各ビーム照射処理では、線速度300mm/s程度で走査しつつレーザービームLを照射する「ビーム照射処理」を4回実行することで、中間体30や中間体30aの所望の部位を切断している。したがって、上記の両切断処理では、1回のビーム照射処理によって中間体30,30aの所望の部位を切断する切断処理よりも、各ビーム照射処理の1回当りの中間体30,30aに対するレーザービームLの照射エネルギーが十分に小さくなっている。
【0066】
このため、上記の両切断処理では、ビーム照射処理時に中間体30,30aに生じる熱量が十分に小さくなっている。これにより、1回のビーム照射処理によって切断するのと比較して、単位時間当りに中間体30,30aから発生する煙の量が十分に少なくなるため、中間体30,30aにおける切断処理部位(レーザービームLの照射部位)の近傍に高濃度の煙が存在する事態が回避される結果、煙(煙を構成する微粒子)の中間体30,30aへの付着量が十分に少なくなっている。また、中間体30,30a(レーザービームLの照射による切断部位の近傍)に熱変形が生じたり、中間体30,30aの構成材料が炭化して焦げが生じたりする事態が回避されている。
【0067】
なお、出願人は、3回の「ビーム照射処理」によって中間体30,30aの所望の部位を切断する際には、線速度200mm/s程度で走査しつつレーザービームLを照射し、2回の「ビーム照射処理」によって中間体30,30aの所望の部位を切断する際には、線速度150mm/s程度で走査しつつレーザービームLを照射することにより、線速度300mm/s程度で走査しつつレーザービームLを照射する「ビーム照射処理」を4回実行することで中間体30,30aの所望の部位を切断する上記の「切断処理」と同様の効果を奏することができるのを確認している。
【0068】
また、出願人は、中間体30,30aの切断に際して、レーザービームLの走査速度を線速度300mm/sよりも速くしつつ、5回以上の「ビーム照射処理」を実行した場合においても(5回以上の「ビーム照射処理」によって中間体30,30aを切断した場合においても)、4回の「ビーム照射処理」によって中間体30,30aを切断する上記の「切断処理」と同様の効果を奏することができるのを確認している。しかしながら、厚み280μm程度の中間体30,30aの切断に際して、「ビーム照射処理」の実行回数を過剰に多くしたときには、「最初のビーム照射処理」や「2回目のビーム照射処理」に際して形成した溝H1,H2などの側面部分に対して、その後に実行される「ビーム照射処理」において、有効ビーム径よりも外側のレーザービームLが幾度も照射されることとなる。この結果、中間体30,30aにおけるレーザービームLの入射面側(この例では、セパレータ17の側)において、切断面が毛羽立つように小さく変形した状態を招くことがあるため、所望の部位を切断する際に実行する「ビーム照射処理」については過剰に多数回とするのは好ましくない。
【0069】
一方、タッチパネル140の製造に際しては、カバーガラス143の表面(「タッチパネル本体の表面」)にカバーシート10を貼付する。なお、透明電極部141にカバーガラス143を粘着層142によって接着する作業については完了しているものとする。具体的には、まず、カバーシート10からセパレータ17を剥離する。次いで、粘着層16を下向きにしてカバーガラス143の表面にカバーシート10(粘着層16)を載置する。この際には、透明電極部141、粘着層142およびカバーガラス143に形成された音孔やジョグボタン用孔(図示せず)と、カバーシート10のジョグボタン用孔52とを一致させるように位置合わせする。次いで、カバーシート10をカバーガラス143に向けて押し付ける。これにより、スペーサ層15、印刷層14シート本体11、シート本体11およびハードコート層12の積層体が粘着層16によってカバーガラス143の表面に接着される。
【0070】
この場合、前述したように、切断処理装置1による切断処理によって製造されたカバーシート10では、その端面におけるスペーサ層15の部位に段差が形成されると共に、セパレータ17から保護フィルム13に向かって徐々に外向きに迫り出すように端面が斜めに加工されて、粘着層16およびセパレータ17が印刷層14、シート本体11、ハードコート層12および保護フィルム13よりも内側に引っ込んだ状態となっている。したがって、カバーガラス143にカバーシート10が貼付された状態では、カバーガラス143とスペーサ層15との間から粘着層16の端がはみ出す事態(粘着層16を構成する粘着剤がはみ出す事態)が回避されて、これにより、粘着層16の端に異物が付着したり、粘着層16(粘着剤)に手が触れて粘付きが生じたりする事態が回避される。この後、必要に応じて保護フィルム13を剥離することにより、タッチパネル140が完成する。
【0071】
なお、出願人は、カバーシート10の端面について、厚み方向に対して16°以上の角度を有する斜めの面(傾斜面)とすることで、粘着層16の端がはみ出す事態や粘着層16の端に異物が付着したり、粘着層16に手が触れて粘付きが生じたりする事態を好適に回避できるのを確認している。また、カバーシート10の端面について、厚み方向に対して35°を超える角度を有する斜めの面(傾斜面)にしようとして「切断処理」を実行したときには、シート本体11と比較して薄厚の保護フィルム13がレーザービームLの照射時によって過度に溶けて、ハードコート層12の端部が保護フィルム13から露出してしまうおそれがある。また、厚み方向に対して35°を超える角度を有する斜めの面としたときには、カバーシート10が貼付対象物から剥がれ易くなるおそれもある。したがって、カバーシート10の端面については、厚み方向に対して16°以上35°以下の範囲内の角度を有する斜めの面とするのが好ましい。この場合、上記のカバーシート10では、その端面が、一例として、厚み方向に対して25°程度の角度を有する斜めの面となっている。
【0072】
このように、この切断処理装置1、および切断処理装置1による「シート体加工方法」によれば、領域A1aの端に沿ってレーザービームLを照射してレーザービームLの照射部位における厚み方向の一部を除去する「ビーム照射処理」を複数回(本例では、4回)実行することで照射部位において中間体30aを切断することにより、打ち抜き刃をシート体に対して押し当てて打ち抜く従来のダイカット装置による加工方法とは異なり、中間体30a等に力を加えることなくこれを切断することができるため、中間体30aに形成されているハードコート層12にクラックが発生する事態、および、ハードコート層12が粉砕された粉塵の発生を回避することができる。また、1回のレーザービーム(レーザー光)の照射によってシート体を所望の形状に切断する従来の加工方法とは異なり、複数回のビーム照射処理によって中間体30a等を切断することで、各ビーム照射処理時に強いレーザービームLを中間体30aに照射しなくて済むため、単位時間当りに中間体30aから発生する煙の量を十分に低減することができる。これにより、中間体30aにおけるレーザービームLの照射部位の近傍に高濃度の煙が存在する事態を回避できる結果、中間体30aの表面に付着する煙の量を十分に低減することができると共に、切断面に焦げや熱変形が生じる事態を回避することができる。したがって、この切断処理装置1、切断処理装置1による「シート体加工方法」によれば、外観不良の発生を回避することができる結果、カバーシート10の商品的価値を十分に向上させることができる。
【0073】
また、この切断処理装置1、切断処理装置1による「シート体加工方法」によれば、最初の「ビーム照射処理」時にレーザービームLの照射によってスペーサ層15に達する深さの溝H1を照射部位に形成すると共に、その後の「ビーム照射処理時」に、レーザービームLのビーム中心線が、領域A1aを基準として、最初の「ビーム照射処理」時におけるレーザービームLのビーム中心線よりも外側に位置するようにレーザービームLを照射することにより、最初の「ビーム照射処理」によって形成された溝H1の領域A1a側の側面に、その後の「ビーム照射処理」時に有効ビーム径の範囲内のレーザービームLが照射されないため、シート本体11と比較して薄厚のセパレータ17における切断部位が過度に加熱されて熱変形を招いたり焦げが生じたりする事態を回避することができる。また、最初の「ビーム照射処理」によって溝H1が形成された部位(この例では、セパレータ17、粘着層16、およびスペーサ層15における粘着層16側の一部)が、その後の「ビーム照射処理」によってレーザービームLの照射部位を除去した部位(この例では、スペーサ層15における印刷層14側の部位、印刷層14、シート本体11、ハードコート層12および保護フィルム13)よりも内側に引っ込んだ状態(奥まった状態)となるため、このカバーシート10からセパレータ17を剥離してカバーガラス143等に貼付した際に、粘着層16の端がはみ出す事態(粘着層16を構成する粘着剤がはみ出す事態)を好適に回避することができると共に、粘着層16よりも外側に迫り出しているスペーサ層15、印刷層14、シート本体11およびハードコート層12の存在によって粘着層16の端(粘着剤)に手が触れる事態を回避することができる結果、粘付きが生じる事態を回避することができる。
【0074】
さらに、この切断処理装置1、切断処理装置1による「シート体加工方法」によれば、領域A1aの上方に位置させたレーザー装置3から領域A1aの端に向かってレーザービームLを斜めに照射することにより、製造されたカバーシート10における端面が、セパレータ17から保護フィルム13に向かって、領域A1aを基準として、徐々に外向きに迫り出すように加工されるため、このカバーシート10からセパレータ17を剥離してカバーガラス143等に貼付した際に、粘着層16の端がはみ出す事態を好適に回避することができると共に、粘着層16よりも外側に迫り出しているスペーサ層15、印刷層14、シート本体11およびハードコート層12の存在によって粘着層16の端に手が触れる事態を回避することができる結果、粘付きが生じる事態を回避することができる。
【0075】
また、この切断処理装置1、切断処理装置1による「シート体加工方法」によれば、領域A2a内に規定した照射開始位置PSaからレーザービームLの照射を開始して、レーザービームLの照射を中断することなく複数回の「ビーム照射処理」を連続して実行した後に、領域A2a内に規定した照射終了位置PEaにおいて中間体30aに対するレーザービームLの照射を終了することにより、中間体30a等の構成材料を消失させるエネルギー量が一定に定まっていない状態(不安定な状態)のレーザービームL(照射開始直後のレーザービームL、および照射終了時のレーザービームL)が領域A1aの端に照射される事態を回避することができるため、カバーシート10の端(レーザービームLの照射による切断部位)に、不安定なレーザービームLの照射によって凹みが生じる事態を回避することができる。これにより、カバーシート10の商品的価値を十分に向上させることができる。
【0076】
さらに、この切断処理装置1、切断処理装置1による「シート体加工方法」によれば、照射開始位置PSaから領域A1aの端(この例では、位置P1a)までの間のレーザービームLの照射軌跡と、領域A1aの端(この例では、位置P2a)から照射終了位置PEaまでの間のレーザービームLの照射軌跡とが領域A1aの端から離間した位置(この例では、交点PCa)において交差するようにレーザービームLを照射することにより、領域A1aの端において、レーザービームLの照射による中間体30aの構成材料の消失量(気化して除去される量)が他の照射部位よりも局所的に多くなる部位が生じるのを回避することができるため、カバーシート10の端(レーザービームLの照射による切断部位)に凹みが生じる事態を回避することができる。これにより、カバーシート10の商品的価値を一層向上させることができる。
【0077】
また、このタッチパネル140の製造方法によれば、上記の「シート体加工方法(カバーシート10の製造方法)」に従って「切断処理」を実行して製造したカバーシート10をカバーガラス143の表面に貼付してタッチパネル140を製造することにより、クラックや汚れの付着に起因する外観不良が生じていない綺麗なカバーシート10を備えた商品的価値が十分に高いタッチパネル140を提供することができる。
【0078】
なお、「シート体加工方法」および「表示器用部品製造方法」や、「シート体加工装置」の構成は、上記の例に限定されない。例えば、中間体30を対象とする切断処理を実行して音孔51やジョグボタン用孔52を開口することで中間体30aを製造した後に、中間体30aを対象とする切断処理を実行してカバーシート10を製造する方法・構成に代えて、中間体30を対象とする切断処理を実行して、上記の例における領域A1aの端に沿ってレーザービームLを照射することで照射部位を切断し、その後に、音孔51やジョグボタン用孔52を開口することでカバーシート10を製造する方法・構成を採用することもできる。このような方法・構成を採用した場合においても、上記の方法・構成と同様の効果を奏することができる。
【0079】
また、レーザービーム発生部において発生させたレーザービームLを偏向することによって、中間体30,30aなどの加工対象物の任意の部位にレーザービームLを照射するレーザー装置3を備えた切断処理装置1によって中間体30aやカバーシート10を製造する方法・構成を例に挙げて説明したが、例えば、加工対象体に対して垂直方向にレーザービームLを照射するレーザー装置、および加工対象体の少なくとも一方を他方に対して移動させるタイプの切断処理装置(図示せず)を用いて「第1領域の端」を切断することもできる。このようなタイプの切断処理装置を使用する場合においても、複数回のビーム照射処理によって所望の部位を切断することにより、上記の切断処理装置1による「切断処理」によって所望の部位を切断したときと同様の効果を奏することができる。
【0080】
また、各ビーム照射処理毎のレーザービームLの照射エネルギーを小さくするために、1回のレーザービームLの照射によって所望の部位を切断するときよりもレーザービームLの走査速度を速くする例について説明したが、レーザー装置3におけるレーザービーム発生部に対して供給する電力の電圧または電流を小さくすることで、レーザービーム発生部において発生させるレーザービームLのエネルギー量自体を小さくして、各ビーム照射処理毎のレーザービームLの照射エネルギーを小さくすることもできる。
【0081】
さらに、加工対象の「シート体」については、上記の中間体30,30aのような層構造の「シート体」に限定されず、「シート本体」および「ハードコート層」を有する各種の「シート体」(例えば、各種表示器の傷付きを回避するための保護シート:一例として、シート本体の一方の面にハードコート層が形成され、かつ、他方の面に粘着層が形成されると共に、ハードコート層の傷付きを回避するための保護フィルムがハードコート層に貼付され、かつ、セパレータが粘着層に貼付されたシート体)を対象として切断処理する際に、上記の「シート加工方法」に従って加工することができる。
【0082】
また、略矩形に規定された領域を切断加工によって切断する例について説明したが、「第1領域」の形状(つまり、「第1部位」の形状)は矩形に限定されず、任意に規定することができる。さらに、音孔51やジョグボタン用孔52を設けない加工を行うこともできる。具体的には、一例として、図20に示すカバーシート10aの製造を目的とする「切断処理」時に、上記のカバーシート10の製造時における「中間体30aを対象とする切断処理」と同様の手順で「切断処理」を実行することで、このカバーシート10aにおいても、カバーシート10と同様の効果を奏することができる。
【0083】
この場合、カバーシート10aは、「第1部位」および「切離し対象製品」の他の一例であって、比較的大きな曲率半径の4つの角部R1a〜R1dを有すると共に、図示しない携帯電話のスピーカ等を避けるようにして、上側の一辺に切り欠きが設けられている。また、切り欠きの部位の角部R2a,R2bおよび角部R3a,R3bは、上記の4つの角部R1a〜R1dよりも小さな曲率半径となっている。
【0084】
このカバーシート10aの製造に際しては、前述したカバーシート10を製造するための中間体30の製造手順と同様の手順で、カバーシート10a用の中間体40(図21参照)を製造する。この中間体40は、「シート体」の他の一例であって、領域A1cが「第1領域」に相当し、領域A2cが「第2領域」に相当し、領域A1cの外側に向かって突出する角部R2a,R2bが「第1領域の各角部のうちの第1領域の外側に向かって突出する角部のなかで曲率半径が最も小さい角部」に相当する。
【0085】
この中間体40を対象とする「切断処理」に際しては、レーザー装置3が、領域A1cの上方に位置させられた状態においてレーザービームLを偏向することにより、図21に示すように、領域A2c内に規定された図外の照射開始位置PScから中間体40に対するレーザービームLの照射を開始すると共に、領域A1cの端(この例では、位置P1c)に向かって走査しつつ中間体40にレーザービームLを照射する。次いで、照射を停止することなくレーザービームLの走査することにより、領域A1cの端(外周)に沿って反時計回りで位置P1cから位置P1cまで中間体40にレーザービームLを照射する「ビーム照射処理」を3回連続して実行する。なお、中間体40に対する1回目から3回目までの各「ビーム照射処理」は、前述したカバーシート10の製造時における中間体30aを対象とする1回目から3回目までの各「ビーム照射処理」と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0086】
次いで、レーザー装置3は、照射を停止することなくレーザービームLの走査することにより、位置P1cから位置P2cまで中間体40にレーザービームLを照射した後に(4回目の「ビーム照射処理」の完了)、位置P2c(領域A1cの端)から、領域A2c内に規定された照射終了位置PEcまでレーザービームLを走査して照射終了位置PEcにおいて中間体40に対するレーザービームLの照射を終了する。以上により、中間体40に対する4回目の「ビーム照射処理」が完了し、上記の領域A1cがカバーシート10aとして、その周囲の部位(上記の領域A2cに対応する部位:「第2部位」および「余材」の一例)から切り離される。これにより、中間体40に対する「切断処理」が完了し、カバーシート10aが完成する。
【0087】
この場合、上記の「切断処理」では、照射開始位置PScから位置P1cまでのレーザービームLの照射軌跡と、位置P2cから照射終了位置PEcまでのレーザービームLの照射軌跡とが交差している。このため、両照射軌跡の交点PCcにおいては、他の照射部位よりもレーザービームLが同一箇所に1回多く照射されることに起因して、レーザービームLの照射による中間体40の構成材料の消失量(気化して除去される量)が他の照射部位よりも局所的に多くなる。
【0088】
しかしながら、中間体40を対象とする上記の「切断処理」では、領域A1cの端から外側方向に離間した位置において上記の両照射軌跡が交差するようにレーザービームLを走査すると共に、交点PCcが、領域A1cの各角部R1a〜R1d,R2a,R2b,R3a,R3bのうちの領域A1cの外側に向かって突出する角部R1a〜R1d,R2a,R2bのなかで曲率半径が最も小さい角部R2a,R2bの一方(この例では、角部R2b)の近傍に位置するようにレーザービームLを照射している。したがって、中間体40を対象とする上記の「切断処理」によれば、仮に、極く小さな凹みが生じたとしても、曲率半径が小さな角部R2a,R2bのいずれか(この例では、角部R2b)にレーザービームLの照射軌跡が交差したことによる凹みが生じることとなるため、その凹みを殆ど目立たなくすることができる。これにより、カバーシート10aの商品的価値を一層向上させることができる。
【0089】
また、「表示器用部品」に関しても、タッチパネル140に限定されず、一例として、表示器本体の前面側にタッチパネル(例えば、透明電極部141の一面に粘着層142を介してカバーガラス143が貼付されたもの)が配設されて構成された部品に対して「シート加工方法」に従って加工したシート体を貼付して製造した「表示器用部品」などの製造に際して上記の「表示器用部品製造方法」を実施することができる。さらに、「タッチパネル本体」に関しても、上記のタッチパネル140のようにカバーガラス143が配設された「タッチパネル本体」に限定されず、カバーガラス143等が存在しない各種の「タッチパネル本体」に、上記の「シート加工方法」に従って加工した「シート体」を貼付して「表示器用部品」を製造することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 切断処理装置
2 シート体保持部
3 レーザー装置
4 排煙装置
5 カメラ
6 制御部
10,10a カバーシート
11 シート本体
12 ハードコート層
13 保護フィルム
14 印刷層
15 スペーサ層
16 粘着層
17 セパレータ
20,30,30a,40 中間体
51 音孔
52 ジョグボタン用孔
100 携帯電話機
110 表示器
140 タッチパネル
141 透明電極部
142 粘着層
143 カバーガラス
A1a,A1b,A1c,A2a,A2b,A2c 領域
D ずれ量
L レーザービーム
P1a,P2a,P1b,P2b,P1c,P2c 位置
PCa,PCb,PCc 交点
PEa,PEb,PEc 照射終了位置
PSa,PSb,PSc 照射開始位置
R1a〜R1d,R2a,R2b,R3a,R3b 角部
H1〜H3 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体と、当該シート本体の表面に形成されたハードコート層とを少なくとも有するシート体に対して切断処理を実行して当該シート体における第1部位を当該第1部位の周囲の第2部位から切り離すシート体加工方法であって、
前記切断処理に際して、前記第1部位として切り離す第1領域の端に沿って照射源から前記シート体にレーザービームを照射して当該レーザービームの照射部位における厚み方向の一部を除去するビーム照射処理を複数回実行することで当該照射部位において当該シート体を切断するシート体加工方法。
【請求項2】
前記シート本体および前記ハードコート層を含む製品層とセパレータとの間に粘着層が形成された前記シート体に対して当該セパレータの側から前記レーザービームを照射することで、前記第1部位を切離し対象製品とし、かつ前記第2部位を余材として当該第1部位を当該第2部位から切り離すときに、最初の前記ビーム照射処理時に前記レーザービームの照射によって前記製品層に達する深さの溝を前記照射部位に形成すると共に、その後の前記ビーム照射処理時に、前記照射源から前記照射部位までの前記レーザービームのビーム中心線が、前記第1領域を基準として、前記最初のビーム照射処理時における前記レーザービームの前記ビーム中心線よりも外側に位置するように当該レーザービームを照射する請求項1記載のシート体加工方法。
【請求項3】
複数回の前記ビーム照射処理時に前記第1領域の上方に位置させた前記照射源から当該第1領域の端に向かって前記レーザービームを斜めに照射する請求項1または2記載のシート体加工方法。
【請求項4】
前記切断処理において、前記第1部位が切り離されて前記第2部位となる第2領域内に規定した照射開始位置から前記シート体に対する前記レーザービームの照射を開始して、当該レーザービームの照射を中断することなく複数回の前記ビーム照射処理を連続して実行した後に、前記第2領域内に規定した照射終了位置において前記シート体に対する前記レーザービームの照射を終了する請求項請求項1から3のいずれかに記載のシート体加工方法。
【請求項5】
前記照射開始位置から前記第1領域の端までの間の前記レーザービームの照射軌跡と、前記第1領域の端から前記照射終了位置までの間の前記レーザービームの照射軌跡とが当該第1領域の端から離間した位置において交差するように当該レーザービームを照射する請求項4記載のシート体加工方法。
【請求項6】
前記照射開始位置から前記第1領域の端までの間の前記レーザービームの照射軌跡と、前記第1領域の端から前記照射終了位置までの間の前記レーザービームの照射軌跡とが当該第1領域の各角部のうちの当該第1領域の外側に向かって突出する当該角部のなかで曲率半径が最も小さい当該角部の近傍において交差するように当該レーザービームを照射する請求項4記載のシート体加工方法。
【請求項7】
少なくともタッチパネル本体を備えて構成された表示器用部品の製造に際して、請求項1から6のいずれかに記載のシート体加工方法に従って前記切断処理を実行して製造した前記第1部位を前記タッチパネル本体の表面に貼付して前記表示器用部品を製造する表示器用部品製造方法。
【請求項8】
シート本体と、当該シート本体の表面に形成されたハードコート層とを少なくとも有するシート体に対して切断処理を実行して当該シート体における第1部位を当該第1部位の周囲の第2部位から切り離すシート体加工装置であって、
前記シート体にレーザービームを照射する照射源を備え、
前記切断処理に際して、前記第1部位として切り離す第1領域の端に沿って前記照射源から前記シート体に前記レーザービームを照射して当該レーザービームの照射部位における厚み方向の一部を除去するビーム照射処理を複数回実行することで当該照射部位において当該シート体を切断するシート体加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−86160(P2013−86160A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231225(P2011−231225)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ピナクル
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】