説明

シート剥離装置及び剥離方法

【課題】接着シートの初期段階の剥離を行い易くすることができるようにすること。
【解決手段】シート剥離装置10は、ウエハWに貼付されたエネルギー線硬化型の接着シートSにエネルギー線を照射する照射手段12と、接着シートSを部分的に被覆し、当該接着シートSに照射手段12からのエネルギー線が照射されないマスク領域MAを形成可能なマスク手段13と、剥離用テープPTを接着シートSに接着する接着手段19と、接着シートSに接着された剥離用テープPTをウエハWに対して相対移動させて接着シートSを剥離する単軸ロボット18とを備えて構成されている。マスク領域MAは、マスク手段13により、ウエハWの外縁側領域であって剥離用テープPTが接着される領域に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート剥離装置及び剥離方法に係り、更に詳しくは、被着体に貼付された接着シートに剥離用テープを接着し、当該剥離用テープを介して接着シートを剥離することができるシート剥離装置及び剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と称する)の処理工程では、ウエハはその回路面に保護用の接着シートが貼付された後、裏面研削等、種々の処理が行われ、ダイシング前にこの接着シートは剥離される。このような接着シートの剥離装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。同文献では、剥離用テープを接着シートの外縁側に貼付した後、当該剥離用テープと、ウエハを支持するテーブルとを相対移動させることにより、ウエハから接着シートを剥離するようになっている。
【0003】
ところで、前記接着シートとしては、基材シートの一方の面に、紫外線等のエネルギー線硬化型の接着剤を設けたものが知られており、所定処理が行われた後、エネルギー線照射装置により前記接着剤を硬化させることによって、接着力を弱めて被着体から簡単に剥離ができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−100728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記接着シートにエネルギー線を照射すると、接着剤が硬くなってしまう。これに起因して、図6に示されるように、接着シートSの初期剥離段階で広域に亘って同時に当該接着シートSがウエハWから剥がれようとする、いわゆる面剥離状態となり、その剥離力が大きくなってしまう。この剥離力に比べ、接着シートSへの剥離用テープPTの接着力が小さくなると、接着シートSから剥離用テープPTが不用意に剥がれ、ウエハWに対する接着シートSの剥離不良が発生する、という不都合がある。つまり、エネルギー線硬化によって接着シートSの単位面積当たりの剥離力が低下するものの、初期剥離領域が広域化されることで、却って接着シートSの剥離力が大きくなって剥離を行い難くなる、という不都合を招来する。
【0006】
ここで、図7に示されるように、前記面剥離を回避すべく、エッジ部材Eにより剥離位置の接着シートSを押圧する方法もあるが、この場合、エッジ部材Eの押圧力FによりウエハWにストレスが与えられ、ひいては、ウエハWを損傷させてしまう、という不都合を生じる。かかる不都合は、近時、極薄に研削されるウエハにおいて、特に顕出することとなる。
【0007】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、エネルギー線硬化型の接着シートの初期段階の剥離を行い易くすることができるシート剥離装置及び剥離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、被着体に貼付されたエネルギー線硬化型の接着シートに剥離用テープを接着し、当該剥離用テープを介して前記接着シートを被着体から剥離するシート剥離装置において、
前記接着シートにエネルギー線を照射する照射手段と、前記接着シートを部分的に被覆し、当該接着シートに照射手段からのエネルギー線が照射されないマスク領域を形成可能なマスク手段と、前記剥離用テープを接着シートに接着する接着手段と、前記接着シートに接着された剥離用テープを前記被着体に対して相対移動させて接着シートを剥離する移動手段とを備え、
前記マスク手段は、前記接着シートの外縁側領域であって前記剥離用テープが接着される領域に、前記マスク領域を形成可能に設けられる、という構成を採っている。
【0009】
本発明において、前記マスク手段は、前記マスク領域の広さを調整可能に設けられる、という構成を採ることが好ましい。
【0010】
また、前記マスク領域を加熱する加熱手段を更に備える、という構成も好ましくは採用される。
【0011】
また、本発明の剥離方法は、被着体に貼付されたエネルギー線硬化型の接着シートに剥離用テープを接着し、当該剥離用テープを介して前記接着シートを被着体から剥離するシート剥離方法において、
前記接着シートの外縁側領域をマスク手段により部分的に被覆する工程と、
前記接着シートにエネルギー線を照射するとともに、マスク手段により接着シートに照射手段からのエネルギー線が照射されないマスク領域を形成する工程と、
前記剥離用テープを接着シートの前記マスク領域に接着する工程と、
前記接着シートに接着された剥離用テープと前記被着体とを相対移動させて接着シートを剥離する工程とを行う、という方法を採っている。
【0012】
更に、本発明の剥離方法において、前記マスク領域の形成後、接着シートの剥離前に、前記マスク領域を加熱する工程を行うとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接着シートの外縁側領域にエネルギー線が照射されないマスク領域を形成し、このマスク領域に剥離用テープを接着して接着シートを被着体から剥離するので、接着シートの初期剥離領域が硬化されなくなり、前述した面剥離状態となることを抑制することができる。これにより、接着シートから剥離用テープが剥がれることを防止することができ、被着体からの接着シートの剥離を安定して良好に行うことが可能となる。また、前述のようにエッジ部材を利用する必要をなくすことができ、被着体が極薄のウエハ等であっても、割れや損傷が生じることを回避することができる。
【0014】
また、マスク手段によりマスク領域の広さを調整可能とした場合、前記面剥離が生じ易い領域を考慮してマスク領域の広さを設定することができ、接着シートの剥離を効率良く行うことが可能となる。
【0015】
更に、マスク領域を加熱する加熱手段を設けた場合、加熱により接着シートや剥離用テープを構成する基材シートや接着剤等の弾性率や硬度といった所謂コシを小さくすことができるので、より一層面剥離状態となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係るシート剥離装置の概略平面図。
【図2】照射手段及びその周辺の図1中b矢視図。
【図3】マスク領域の説明図。
【図4】接着手段、テーブル及びその周辺の図1中b矢視図。
【図5】接着シートの剥離中の動作説明図。
【図6】従来例に係る剥離装置による接着シートの初期剥離の説明図。
【図7】他の従来例に係る剥離装置による接着シートの初期剥離の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1、図2において、シート剥離装置10は、被着体としてのウエハWを収容するウエハストッカ11と、ウエハWの一方の面に貼付された接着シートSにエネルギー線を照射する照射手段12と、この照射手段12に隣接して設けられたマスク手段13と、照射手段12の図2中上方に設けられてウエハWを支持可能な支持手段15と、図1中左側に配置されてウエハWを吸着保持可能なテーブル17と、このテーブル17を図1中上下方向に移動させる移動手段としての単軸ロボット18と、テーブル17上に保持されたウエハに剥離用テープPT(図4参照)を接着する接着手段19と、先端の搬送アーム21を介してウエハWを移載可能な多関節ロボット22とを備えて構成されている。なお、本実施形態における接着シートSは、基材シートの一方の面に紫外線硬化型の接着剤層を有し、この接着剤層を介してウエハWに貼付されている。
【0019】
前記照射手段12は、エネルギー線としての紫外線を発光可能な紫外線ランプからなり、この紫外線ランプで発光された紫外線は、反射板12Aによって図2中上方に向けて集光され、紙面直交方向に延びるライン光を形成するとともに、下部に設けられた単軸ロボット24を介して同図中左右方向に移動可能に支持されている。
【0020】
前記マスク手段13は、直動モータ26と、この直動モータ26の出力軸26Aに取り付けられたマスク板27とを備えて構成されている。マスク板27は、直動モータ26の作動により、単軸ロボット24による照射手段12の移動方向、すなわち、図2中左右方向に移動可能に設けられている。マスク板27は、紫外線が透過不能な素材を用いて構成されている。これにより、マスク手段13は、照射手段12とマスク板27とが図2中上下に重なった領域において、接着シートSに向かって照射される紫外線を遮蔽し、接着シートSに紫外線が照射されないマスク領域MA(図3参照)を形成可能に設けられている。
【0021】
前記支持手段15は、図示しない減圧手段に接続されており、接着シートSを図2中下向きとした状態でウエハWを吸着保持可能に設けられている。なお、支持手段15は、図示しないフレームにより、照射手段12及びマスク手段13の上方に支持されるようになっている。
【0022】
前記テーブル17は、その上面がウエハWを吸着する吸着面として形成されている。テーブル17の下部には、単軸ロボット18と平行に延びるレール29が設けられている。ここで、図4に示されるように、テーブル17には、ヒータ等からなる加熱手段30が内蔵されている。この加熱手段30は、テーブル17上にウエハWを載置したときにマスク領域MAに重なる位置に設けられている。
【0023】
前記接着手段19は、帯状の剥離用テープPTがロール状に券回された原反Rを支持する支持ローラ32と、モータM1、M2によって回転する左右一対の駆動ローラ33、34と、各駆動ローラ33、34との間に剥離用テープPTを挟み込むピンチローラ35、36と、各駆動ローラ33、34と同期回転して剥離シートRLを巻き取り可能な巻取ローラ38と、各駆動ローラ33、34の間に設けられるとともに、直動モータ39によって昇降可能に設けられた押圧ヘッド40とを備えて構成されている。なお、接着手段19は、図示しないフレームに支持されるようになっている。
【0024】
次に、前記シート剥離装置10による接着シートSの剥離方法について説明する。
【0025】
先ず、ウエハストッカ11に収容されているウエハWが多関節ロボット22を介して支持手段15の下面に搬送されて吸着保持される(図2参照)。次いで、マスク手段13の直動モータ26を作動してマスク板27を図2中右方向に移動させ、当該マスク板27の先端側領域をウエハWの同図中左方の外縁側領域に重なるように位置させる。このとき、直動モータ26によるマスク板27の移動量を制御することで、マスク領域MAの図3中左右及び上下幅が決定され、マスク領域MAの広さが調整可能となっている。
【0026】
その後、単軸ロボット24を作動して照射手段12を図2中右方向に移動させつつ当該照射手段12により紫外線を接着シートSに照射させる。この紫外線照射において、接着シートSにおけるマスク領域MA以外の領域では、接着剤層が紫外線硬化されることで接着力が弱められる。
【0027】
照射手段12による紫外線照射後、多関節ロボット22によって、支持手段15に保持されたウエハWをテーブル17上に反転しつつ移載して吸着保持させる(図4参照)。このとき、マスク領域MAが加熱手段30の図4中上方に位置するように多関節ロボット22を制御してウエハWを移載させる。その後、接着手段19の直動モータ39を作動して押圧ヘッド40を下降させ、剥離用テープPTを接着シートSのマスク領域MAに接着させる。なお、加熱手段30によりマスク領域MAは加熱され、当該マスク領域MAにおける接着シートSや剥離用テープPTが加熱される。
【0028】
そして、図5に示されるように、剥離用テープPTとウエハWとが同図中左右方向に相対移動するように、単軸ロボット18を介してテーブル17を左方向に移動させる。これにより、接着シートSがウエハW上で折り返されるようになり、同図中左側の外縁から接着シートSが剥離される。その後、駆動ローラ33、34がテーブル17の移動に同期して駆動し、支持ローラ32から剥離用テープPTを繰り出すとともに、駆動ローラ34と巻取ローラ38とが剥離シートRL及び接着シートSを巻き取ることで、ウエハWから接着シートSが剥離される。そして、接着シートSが剥離されたウエハWは、多関節ロボット22によってウエハストッカ11に収容され、以降上記同様の動作が行われる。
【0029】
従って、このような実施形態によれば、マスク領域MAでの接着シートSの接着剤層は紫外線硬化しないので、マスク領域MAで前述した面剥離状態となることを防止することができる。また、マスク領域MAが加熱されることで、接着シートSや剥離用テープPTの所謂コシが小さくなることにより、接着シートSの剥離初期段階における剥離力を弱めることができ、接着シートSの剥離不良を回避することが可能となる。また、マスク板27を直動モータ26により移動可能としたので、種々のサイズのウエハWや剥離用テープPTへの対応容易化を図ることができる他、マスク領域MAの広さを調整可能として面剥離が生じ得る領域だけをマスク領域MAとして簡単に形成可能となる。
【0030】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0031】
例えば、剥離用テープPTは、感圧接着性の接着テープや感熱接着性の接着テープを使用することができる。なお、感熱接着性の接着テープを使用するときは、押圧ヘッド40にヒータ等の加熱手段を設けるようにすればよい。
【0032】
また、照射手段12は、接着シートSを硬化させて接着力を弱めることができる限りにおいて、紫外線以外のエネルギー線を照射してもよい。
【0033】
更に、各直動モータ26、39や各単軸ロボット18、24は、エアシリンダ、油圧シリンダ等の駆動手段に代えてもよい。
【0034】
また、本発明における被着体としては、半導体ウエハに限定されるものではなく、ガラス板、鋼板、または、樹脂板等、その他の被着体も対象とすることができ、半導体ウエハは、シリコンウエハや化合物ウエハであってもよい。
【0035】
更に、単軸ロボット等の移動手段18を接着手段19側に取り付け、当該接着手段19に保持された剥離用テープPTとウエハWとを相対移動させて接着シートSの剥離を行ってもよいし、接着手段19とテーブル17との両方を移動させて接着シートSの剥離を行ってもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 シート剥離装置
12 照射手段
13 マスク手段
18 単軸ロボット(移動手段)
19 接着手段
30 加熱手段
MA マスク領域
PT 剥離用テープ
S 接着シート
W 半導体ウエハ(被着体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に貼付されたエネルギー線硬化型の接着シートに剥離用テープを接着し、当該剥離用テープを介して前記接着シートを被着体から剥離するシート剥離装置において、
前記接着シートにエネルギー線を照射する照射手段と、前記接着シートを部分的に被覆し、当該接着シートに照射手段からのエネルギー線が照射されないマスク領域を形成可能なマスク手段と、前記剥離用テープを接着シートに接着する接着手段と、前記接着シートに接着された剥離用テープを前記被着体に対して相対移動させて接着シートを剥離する移動手段とを備え、
前記マスク手段は、前記接着シートの外縁側領域であって前記剥離用テープが接着される領域に、前記マスク領域を形成可能に設けられていることを特徴とするシート剥離装置。
【請求項2】
前記マスク手段は、前記マスク領域の広さを調整可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載のシート剥離装置。
【請求項3】
前記マスク領域を加熱する加熱手段を更に備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート剥離装置。
【請求項4】
被着体に貼付されたエネルギー線硬化型の接着シートに剥離用テープを接着し、当該剥離用テープを介して前記接着シートを被着体から剥離するシート剥離方法において、
前記接着シートの外縁側領域をマスク手段により部分的に被覆する工程と、
前記接着シートにエネルギー線を照射するとともに、マスク手段により接着シートに照射手段からのエネルギー線が照射されないマスク領域を形成する工程と、
前記剥離用テープを接着シートの前記マスク領域に接着する工程と、
前記接着シートに接着された剥離用テープと前記被着体とを相対移動させて接着シートを剥離する工程とを行うことを特徴とするシート剥離方法。
【請求項5】
前記マスク領域の形成後、接着シートの剥離前に、前記マスク領域を加熱する工程を行うことを特徴とする請求項4記載のシート剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−199466(P2010−199466A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45088(P2009−45088)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】