説明

シート圧着方法及びシート圧着装置

【課題】シートを圧着する場合に、シート間に隙間が発生しにくいシート圧着方法及びシート圧着装置を提供する。
【解決手段】第1工程にて、容器11内にて第1のシートと第2のシート9とを積層し、弾性部材内部空間19(ゴム部材51内)と容器内部空間とを真空状態とする。その後、第2工程にて、弾性部材内部空間19の真空度を容器内部空間の真空度よりも低下させることにより、ゴム部材51の中央部を下降させて、両シートの中央部の表面に接触させる。その後、第3工程にて、ゴム部材51内に加圧空気を供給する。これにより、ゴム部材51が第2のシート9の表面を押圧する面積が増加し、第2のシート9の表面全体を押圧して両シートを圧着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガスセンサの板状のセンサ素子などを製造する場合に用いることができるシート圧着方法及びシート圧着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、2枚のシートを圧着する技術として、例えば下記特許文献1の技術が知られている。
この技術とは、DVD等の光記録媒体を製造する際に、光記録媒体基板(シート)を重ね合わせて配置するとともに、その圧着側に面する主面側に接着剤を塗布し、更に、両光記録媒体基板の上方に袋状のゴム部材を配置し、この状態でゴム部材の内部に空気を供給して膨らませることにより、膨張したゴム部材によって両光記録媒体基板を押圧して接合する(圧着する)というものである。
【0003】
また、これとは別に、例えばセラミックス製の積層型ガスセンサ素子を製造する際に、未焼成のセラミックシート(グリーンシート)を圧着する技術として、例えば特許文献2の技術が知られている。
【0004】
この技術は、ガスセンサ素子を構成する部品として、所定の平面形状に加工された複数のグリーンシートを積層して用いるものであり、これらのグリーンシートの主面側に接着剤を塗布し、グリーンシート同士を押圧して密着させて接合する(圧着する)というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−304773号公報
【特許文献2】特開2003−294698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、特許文献2ともに、大気中において、両シートを押圧して接合する(圧着する)というものであるため、圧着条件等によっては、両シート間に気体(空気:エアー)が残存し隙間が生じてしまい、製品に不具合が生じる虞がある。
【0007】
これに対し、本願発明者等により、図7に示す様に、より好適にグリーンシートを圧着する技術の研究がなされている。
この方法とは、図7(a)に示す様に、密閉された容器101内に、下側シート103と上側シート105を離した状態で配置するとともに、両シート103、105の上方にゴム部材107を配置して、容器101内及びゴム部材107内を高真空状態にし、その後、図7(b)に示す様に、加圧エアーによってゴム部材107の内部の気圧を一気に高圧にして、両シート103、105を圧着するというものである。
【0008】
これにより、高真空状態において、両シート103、105を押圧して接合する(圧着する)というものであるため、両シート103、105間に隙間が生じることを抑制できる。
【0009】
しかしながら、上述した図7に示す技術の場合であっても、両シート103、105の間に隙間ができる場合があり、それによって製品に不具合が生じる虞があるという問題があった。
【0010】
つまり、上述した技術では、高真空状態にしているものの、完全に真空にすることは装置、性能的にかなり困難であり、極微量のエアーは容器101内に残存することとなる。 また、加圧エアーによって、ゴム部材107内を高真空状態から一気に高圧にして膨らますので、ゴム部材107は一気に上側シート105の全面に接触する。そのため、両シート103、105間(特に中央付近など)から全てのエアーを周囲に排出できず、エアーが両シート103、105間に留まってしまい、その結果、両シート103、105間に隙間が発生するという問題があった。
【0011】
特に、シート103、105の表面にスクリーン印刷が複数工程実施されて、シート103、105の表面が平坦でない場合には、シート103、105の圧着時に、シート103、105の表面の段差部分(凹部となっている部分)には圧力が伝わりにくく、シート103、105を十分に抑えきれないため、シート103、105間に隙間が発生し易いという問題があった。
【0012】
そして、シート103、105間に間隙が発生した場合には、製品の品質が低下するという問題があった。例えば、シート材料がセラミックの場合の様に、両シート103、105の圧着体を焼成して焼結体を製造する場合には、焼結体の強度が低下する等の問題があった。
【0013】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シートを圧着する場合に、シート間に隙間が発生しにくいシート圧着方法及びシート圧着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明は、請求項1に記載の様に、容器内に、第1のシートと第2のシートとを積層した両シートを配置し、該容器内に配置された弾性部材内へ気体を供給することによって、弾性部材を袋状に膨らませて前記両シートの表面を押圧することで、前記両シートを圧着するシート圧着方法において、前記容器は、自身の内部空間が気密可能で、且つ該容器の内側の上面に、前記弾性部材を固定した箱状構造を有し、前記容器の内部空間内に、前記第1のシートと第2のシートとを積層した前記両シートを配置するとともに、前記弾性部材内と前記容器の内部空間とを真空状態とする第1工程と、前記第1工程の後に、前記弾性部材内の真空度を前記容器の内部空間の真空度よりも低下させることにより、前記弾性部材の中央部を下降させて、該中央部を前記両シートの周縁部より内側の表面に接触させる第2工程と、前記第2工程の後に、前記弾性部材内へ供給する気体を徐々に増加させることにより、該弾性部材が前記両シートの表面を押圧する面積を増加させて、該弾性部材で前記両シートの表面全体を押圧して前記両シートを圧着する第3工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明では、第1工程にて、容器内に第1のシートと第2のシートとを積層した両シートを配置し、弾性部材内と容器の内部空間とを真空状態(高真空状態)とする。その後、第2工程にて、弾性部材内の真空度を容器の内部空間の真空度よりも低下させることにより、弾性部材の中央部を下降させて、中央部を両シートの周縁部より内側(中央に近い側:中央部)の表面に接触させる。その後、第3工程にて、弾性部材内へ供給する気体を徐々に増加させる。これにより、弾性部材が両シートの表面を押圧する面積が増加し、両シートの表面全体を押圧して両シートを圧着する。
【0016】
つまり、本発明では、弾性部材の外側(容器内部空間)と内側(弾性部材内部空間)の圧力の調整によって、まず、弾性部材を膨らませてその中央部が両シートの中央部に接触し、その後、接触部分が周囲に広がってゆくようして、両シートを押圧するので、両シートの内側から外側に向かってエアーを排除することができ、両シートの間にエアーが残留し難く、よって両シートの間に間隙が発生し難いという効果がある。
【0017】
特に、シートがセラミックグリーンシートの場合には、後に焼成によって焼結するが、シート間に間隙があると、焼結体の強度が低下するので、間隙を無くすることは重要である。
【0018】
(2)本発明では、請求項2に記載の様に、前記第1工程において、前記第1のシートと第2のシートとを分離した状態で前記容器の内部空間内に配置し、前記容器の内部空間を真空状態とした後、前記第1のシートと第2のシートとを積層して前記両シートを前記内部空間に配置することが望ましい。
【0019】
このように、真空状態(高真空状態)とした容器内にて、第1のシートと第2のシートとを分離した状態で保持することにより、両シートの表面からエアーを離脱し易くなり、両シートを積層させた場合に、両シート間のエアーを減少させることができる。その結果、圧着後の両シートの間にエアーがより残留し難く、よって両シートの間に間隙がより発生し難いという効果がある。
【0020】
これにより、両シートの表面から空気を離脱し易くなり、両シートを密着させた場合に、両シート間に空気が残留し難いという利点がある。
(3)本発明は、請求項3に記載の様に、容器内に、第1のシートと第2のシートとを積層した両シートを配置し、該容器内に配置された弾性部材内へ気体を供給することによって、弾性部材を袋状に膨らませて前記両シートの表面を押圧することで、前記両シートを圧着するシート圧着装置において、前記容器として、自身の内部空間が気密可能で、且つ該容器の内側の上面に、前記弾性部材を固定した箱状構造を有する容器を用い、前記容器の内部空間内に、前記第1のシートと第2のシートとを積層した前記両シートを配置した状態で、前記弾性部材内と前記容器の内部空間とを真空状態とする第1手段と、前記弾性部材内の真空度を前記容器の内部空間の真空度よりも低下させることにより、前記弾性部材の中央部を下降させて、該中央部を前記両シートの周縁部より内側の表面に接触させる第2手段と、前記弾性部材内へ供給する気体を徐々に増加させることにより、該弾性部材が前記両シートの表面を押圧する面積を増加させて、該弾性部材で前記両シートの表面全体を押圧して前記両シートを圧着する第3手段と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明では、前記請求項1の発明と同様に、弾性部材の外側(容器内部空間)と内側(弾性部材内部空間)の圧力の調整によって、まず、弾性部材を膨らませてその中央部が両シートの中央部に接触し、その後、接触部分が周囲に広がってゆくようして、両シートを押圧するので、両シートの内側から外側に向かってエアーを排除することができ、両シートの間にエアーが残留し難く、よって両シートの間に間隙が発生し難いという効果がある。
【0022】
(4)本発明では、請求項4に記載の様に、前記第1のシートと第2のシートとを積層する前に、前記真空状態とした前記容器内にて、前記第1のシートと第2のシートとを分離した状態で保持する保持機構を備えることが望ましい。
【0023】
つまり、保持機構によって、真空状態(高真空状態)とした容器内にて、第1のシートと第2のシートとを分離した状態で保持することができる。これにより、両シートの表面から空気を離脱し易くなり、両シートを積層させた場合に、両シート間のエアーを減少させることができる。その結果、圧着後の両シートの間にエアーがより残留し難く、よって両シートの間に間隙がより発生し難いという効果がある。
【0024】
なお、上述した本発明の構成において、真空状態(高真空状態)とは、例えば−98kpa以下の状態を示すものである。
また、前記真空状態から真空度を低下させる程度としては、−90〜−92kpa程度に低下させることが好ましい。
【0025】
更に、シートの圧着の面積が、100mm×100mm以上の場合には、シート間に間隙が発生し易いので、本発明は、その圧着の面積以上の場合に適用すると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は空燃比センサの断面図、(b)はセンサ素子の平面図である。
【図2】シート圧着装置において、両シートが平行に対置された状態を示す説明図である。
【図3】両シートの構成を示す斜視図である。
【図4】シート圧着装置において、両シートが積層された状態を示す説明図である。
【図5】シート圧着装置において、ゴム部材の中央部がシートに当接した状態を示す説明図である。
【図6】シート圧着装置において、ゴム部材がシートの全面に当接した状態を示す説明図である。
【図7】従来技術の説明図である
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明が適用される実施例について図面を用いて説明する。
【実施例】
【0028】
a)まず、本実施例のシート圧着方法に用いるシート圧着装置について、図1〜図3に基づいて説明する。
ここでは、図1(a)に示す様に、例えば空燃比センサ1の内部に格納されるガスセンサ素子(以下単にセンサ素子と記す)3を例に挙げて説明する。つまり、図1(b)に示す様な板状のセラミックス製の積層型ガスセンサ素子3を製造する際に用いられるセラミックグリーンシート(以下単にシートと記す)の圧着方法及びシート圧着装置を例に挙げて説明する。
【0029】
図2に示す様に、本実施例のシート圧着装置5は、圧着対象の一対のシート7、9を収容する気密性を有する円柱形状の容器11と、容器11内における後述する容器内部空間13と第1の真空源15と連通する第1の管路17と、同様に、容器11内における後述する弾性部材内部空間19と第2の真空源21と連通する第2の管路23と、第2の管路23から分岐し、弾性部材内部空間19と加圧源25とを連通する第3の管路27とを備えている。
【0030】
このうち、前記容器11は、内部にヒータ(図示しない)を備えた平面形状が円形の金属製(例えばステンレス製)の底部29と、底部29の外側に嵌められた枠状のゴム製のパッキン31と、底部29の外周側に嵌合する平面形状が円形で下方が開放された金属製(例えばステンレス)の箱体33とを備えている。つまり、この容器11は、パッキン31を介して、底部29の外側に箱体33が嵌合することによって、容器11の内部が気密状態に保持される。
【0031】
更に、容器11の内部には、底部29の上面に、長方形の金属製(例えばステンレス製)の基台35が固定され、この基台35の上に長方形の第1のシート7が載置されている。また、第1のシート7の周囲には、複数(例えば図2の奥側及び手前側及び左右側に3本ずつの合計12本:図2では奥側のみ図示)の支柱37が立設される。この支柱37は、第1のシート7と第2のシート9との位置合わせを行うものである。
また、第1のシート7の周囲には、複数(例えば図2の左右2個ずつの合計4個:図2では2個のみ図示)の支持部(保持機構)39が設けられている。更に、この支持部39によって支持されるように、第2のシート9が第1のシート7と平行に配置されている。
【0032】
詳しくは、図3に示す様に、第1のシート7の周囲は、四角枠状の金属板41の上に載置され、この金属板41の下面と、金属板41の中央部の長方形の開口43から露出する第1のシート7の中央部の下面が、基台35の上面と接触している。
【0033】
一方、第2のシート9も、第1のシート7と同様に、その周囲が四角枠状の金属板45の上に載置されており、この金属板45の下面が支持部39によって支持されることによって、第1のシート7の上方に所定の間隔を保って第2のシート9が平行に配置されている。
【0034】
また、両シート7、9の周囲には、円形の開口部47が設けられており、この開口部47に支柱37が通されることによって、両シート7、9が平面方向において位置決めされるとともに、上下方向にスライド可能となっている。
【0035】
なお、両シート7、9は、複数のセンサ素子3を一度に製造するためのものであり、同図における一点鎖線は、各センサ素子3の形状に応じて切断されるラインを示している。
図2に戻り、前記容器11の上部(天板)49の下面には、平面形状が長方形のシート状のゴム部材(弾性部材)51が取り付けられている。つまり、ゴム部材51の周囲の下面側には、ゴム部材51を隙間無く押圧するために、例えばステンレス等の金属製の枠体53が、ボルト(図示しない)等によって固定されている。これにより、ゴム部材51の上側の僅かな弾性部材内空間19(同図では線で表現される間隙)と下側の容器内部空間13とは、それぞれ気密された状態で完全に分離されている。
【0036】
また、前記第1の管路17は、容器内部空間13を真空状態に設定するために、容器内部空間13と第1の真空源15とを接続する管路であり、この第1の管路17には、管路17を開閉する第1の電磁弁(開閉の2位置で動作する電磁弁)55が配置されている。
【0037】
従って、この第1の電磁弁55が開いている場合には、第1の真空源15によって、容器内部空間13内を(例えば−98kpa以下の)真空状態(高真空状態である第1の真空度)とすることができる。一方、この第1の電磁弁55に通電して第1の管路17を閉じる場合には、容器内部空間13の真空状態を維持することができる。
【0038】
更に、前記第2の管路23は、弾性部材内部空間19の真空度を調節するために、弾性部材内部空間19と第2の真空源21とを接続する管路であり、この第2の管路23には、管路23を開閉する第2の電磁弁(開閉の2位置で動作する電磁弁)57と、真空電空レギュレータ59が配置されている。
【0039】
この真空電空レギュレータ59とは、常時は第2の管路23を開いており、印加する電圧によって外気との連通路(図示せず)の開度を制御して、外気を第2の配管23に導入できる電磁弁である。即ち、弾性部材内部空間19の真空度を調節できる制御弁である。
【0040】
この構成により、第2の電磁弁57が開いており、真空電空レギュレータ59で外気が導入されていない場合には、第2の真空源21によって、弾性部材内部空間19内を(例えば−98kpa以下の)真空状態(前記容器内部空間13の高真空状態と同様な第1の真空度)とすることができる。また、この状態で、第2の電磁弁57に通電して第2の管路23を閉じる場合には、弾性部材内部空間19の真空状態を維持することができる。更に、第2の電磁弁57が開いており、真空電空レギュレータ59で外気が導入されている場合には、弾性部材内部空間19内の真空度を前記第1の真空度よりも低い真空状態、即ち、前記第1の真空度より低真空状態である第2の真空度(例えば、−90〜−92kpa)とすることができる。
【0041】
また、前記第3の管路27は、第2の管路23における真空電空レギュレータ59と弾性部材内部空間19との間の管路から分岐して加圧源25と連通する管路であり、即ち、弾性部材内部空間19と加圧源25とを連通する管路であり、この第3の管路27には、管路27を開閉する第3の電磁弁(開閉の2位置で動作する電磁弁)61が配置されている。
【0042】
従って、この第3の電磁弁61が閉じている場合には、第2の管路23の第2の電磁弁57及び真空電空レギュレータ59の動作によって設定される(弾性部材内部空間19の)真空状態を保持することができる。一方、第3の電磁弁61に通電して第3の管路27を開く場合には、加圧源25によって、加圧空気を一挙に供給して、弾性部材内部空間19内を(例えば0.5Mpa以上の)加圧状態とすることができる。
【0043】
b)次に、前記シート圧着装置5を用いて行われる本実施例のシート圧着方法について、図2、図4〜図6に基づいて説明する。
・まず、容器11内において、ヒータによって底部29を所定温度(例えば55℃)に加熱した状態で、上述した様に、一対のシート7、9を所定の間隔を保って上下に配置する。即ち、第1のシート7を基台35の上面に載置し、第2のシート9を支持部39で支持することによって、第1のシート7の上方に平行に配置する。なお、ヒータの加熱によって、その後の圧着に好適な様に、第1のシート7が柔らかくなる。
【0044】
このシート7、9は、後に焼成されてセンサ素子3の一部を構成するものである。このシートの材料としては、例えば焼成されて絶縁性セラミックスとなるものが挙げられる。
その形成方法は特に限定されないが、例えば、セラミック原料粉末(例えば、アルミナ、ムライト、スピネル、ステアタイト及び窒化アルミニウム等のうちの1種又は2種以上からなる粉末又はこれらを主成分とする粉末)、バインダ、溶剤及び可塑剤等から調合されたスラリーを、ドクターブレード法等によりシート状に成形した後、乾燥させて得られるグリーンシートを所望の大きさに切り出すことにより得ることができる。
【0045】
また、前記以外に、シート7、9として、例えば固体電解質を材料とするシートを用いることもできる。この種のシート7、9の形成方法は特に限定されないが、例えば、セラミック原料粉末(例えば、ジルコニア粉末及びイットリア粉末等からなる粉末又はこれらを主成分とする粉末)、バインダ、溶剤及び可塑剤等から調合されたスラリーを、ドクターブレード法により成形した後、乾燥させて得られるグリーンシートを所定の大きさに切り出して得ることができる。
【0046】
なお、シート7、9の互いに向かい合う面の一方又は両方には、両シート7、9の接合のために、接着剤を塗布しておくが、この接着剤としては、セラミック原料粉末(例えば、ジルコニア粉末及びアルミナ粉末等からなる粉末又はこれらを主成分とする粉末)、バインダ及び溶剤等から調合されたペーストを用いることができる。
【0047】
また、上述したシート7、9しては、一層のシートでもよく或いは複数層のシートを積層したものでもよく、更に、シート7、9の内部や表面に、導電層を形成するために、導電材料のペーストを印刷したものでもよい。
【0048】
・次に、図2に示す様に、第3の電磁弁61によって第3の管路27を閉じた状態で、且つ、真空電空レギュレータ59は通電オンで外気を導入しない状態で、第2の電磁弁57によって第2の管路23を開いた状態として、第2の真空源21によって、弾性部材内部空間19を高真空状態(第1の真空度:例えば−98Kpa)に設定する。
【0049】
それとともに、第1の電磁弁55によって第1の管路17が開いた状態、第1の真空源15によって、容器内部空間13を高真空状態(同様な第1の真空度)に設定する。(第1の工程)
これによって、弾性部材内部空間19と容器内部空間13とは、共に同様な高真空状態に保たれるので、シート状のゴム部材51は、膨張せずに平面状のシート状態を保っている。
【0050】
そして、この状態で所定時間(例えば10秒間)待機する、いわゆる真空引き待機を行う。
なお、この待機によって、第1のシート7が予熱されるのでシートが十分に柔らかくなり、その後の圧着によって、両シート7、9を確実に密着させることができる。
次に、図4に示す様に、支持部39を引き下げて、第2のシート9を下方に降下させて、第1のシート7の上面に積層する。
【0051】
この状態で所定時間(例えば20秒)待機し、第1のシート7を介して第2のシート9も予熱する。
なお、第1のシート7及び第2のシート9を容器11内に配置する工程、弾性部材内部空間19と容器内部空間13とを真空状態にする工程、及び第1シート7及び第2シート9を積層し、両シート7、9を積層する工程が、特許請求の範囲の第1工程に相当する
・次に、図5に示す様に、真空電空レギュレータ59に所定の電圧を印加することによって、第2の管路23に僅かに外気を導入する。
【0052】
これによって、弾性部材内部空間19の真空度を、やや低真空状態(第2の真空度:例えば−90kpa)に設定することができる。
そして、この様に弾性部材内部空間19の真空度を低下させると、即ち、弾性部材内部空間19の気圧が上昇すると、ゴム部材51は容器内部空間13と弾性部材内部空間19との圧力の差によって袋状に膨らみ、その中央部が下方に突出して、その先端が第2のシート9の中央部に当接する。
【0053】
ここで、第2のシート9の中央部とは、周囲の縁部でなければよいが、できる限り中心(例えば面積中心)に近い位置が好適である。例えば、第2のシート9を面積中心を中心にして相似形に縮小した形状で中央部と外側とを区分した場合、面積中心の側の面積が全体の1/4の領域に、ゴム部材51の中央部が当接すると好適である。
【0054】
なお、第1の真空度と第2の真空度との差があまりに小さすぎると、ゴム部材51の下方の突出が十分ではなく(従って第2のシート9に当接せず)、逆にあまりに大きすぎるとゴム部材51が一挙に膨張して、下面全体が第2のシート9の上面全体に当接するので、その真空度の差は、3〜10kpaの範囲が好適である。
【0055】
なお、弾性部材内部空間19の真空度を容器内部空間13の真空度よりも低下させて、ゴム部材51のその中央部を下方に突出するように膨らませ、第2のシート9の中央部に当接させる工程が、特許請求の範囲の第2工程に相当する。
【0056】
・次に、図6に示す様に、第2の電磁弁57によって第2の管路23を閉じるとともに、真空電空レギュレータ59をオフして外気を導入を停止する。それとともに、第3の電磁弁61を開いて、加圧源25から高圧の空気を弾性部材内部空間19に供給し、弾性部材内部空間19内の気圧を例えば0.5Mpaに上昇させる。
【0057】
この高圧の空気の供給によって、ゴム部材51は急速に膨らんで、第2のシート9の当接した位置からその周囲に接触する部分が速やかに広がって、最終的に第2のシート9の上面全体に接触する。そして、この状態で約40秒加圧状態を継続して、両シート7、9の圧着を完了する。
【0058】
なお、その後、両シート7、9の圧着体が容器11から取り出され、前記図3に示す一点鎖線に沿って切断されて、個々のセンサ素子3に対応した(圧着された)積層体が作製される。その後、その積層体が焼成されて各センサ素子3が完成する。
【0059】
なお、高圧の空気を弾性部材内部空間19に供給し、弾性部材内部空間19内の気圧を上昇させ、両シート7、9を圧着させる工程が、特許請求の範囲の第3工程に相当する。
c)この様に、本実施例では、第1工程にて、容器11内にて第1のシート7と第2のシート9とを積層した両シート7、9を配置し、弾性部材内部空間19と容器内部空間13とを真空状態(高真空状態)とする。その後、第2工程にて、弾性部材内部空間19の真空度を容器内部空間13の真空度よりも低下させることにより、ゴム部材51の中央部を下降させて、両シート7、9の中央部の表面に接触させる。その後、第3工程にて、ゴム部材51内に加圧空気を供給する。これにより、ゴム部材51が第2のシート9の表面を押圧する面積が増加し、第2のシート9の表面全体を押圧して両シート7、9を圧着する。
【0060】
つまり、本実施例では、ゴム部材51の外側(容器内部空間13)と内側(弾性部材内部空間19)の圧力の調整によって、まず、ゴム部材51を膨らませてその中央部が第2のシート9の中央部に接触し、その後、接触部分が周囲広がってゆくようして、両シート7、9を押圧するので、両シート7、9の内側から外側に向かってエアーを排除することができ、両シート7、9の間にエアーが残留し難く、よって両シート7、9の間に間隙が発生し難いという効果がある。
【0061】
特に、このシート7、9は、セラミックグリーンシートであるので、その後、シート7、9の圧着体を焼成して焼結体を製造するが、本実施例の場合には、シート7、9に隙間が無いので、製品である焼結体の強度が高いという効果がある。
【0062】
また、本実施例では、第1のシート7と第2のシート9とを分離した状態で容器内部空間13内に配置し、容器内部空間13を真空状態とした後、第1のシート7と第2のシート9とを積層するので、両シート7、9の表面からエアーを離脱し易くなり、両シート7、9を積層させた場合に、両シート7、9間のエアーを減少させることができる。その結果、圧着後の両シート7、9の間にエアーがより残留し難く、よって両シートの7、9間に間隙がより発生し難いという効果がある。
【0063】
更に、本実施例では、両シート7、9を重ね合わせた状態で予熱するので、両シート7、9を十分に柔らかくすることができ、よって、両シート7、9を圧着する際に、両シート9、9を隙間無く確実に接合することができる。
【0064】
なお、本発明は、前記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
(1)本発明は、例えばセンサ素子のセラミックグリーンシートの圧着以外に、半導体基板等のシートの圧着に適用できる。
【0065】
(2)本発明は、単シート同士のシートの圧着以外に、単シートと複数シートの積層体(圧着体)との圧着や、複数シートの積層体(圧着体)同士の圧着に適用できる。
(3)本実施例は、円柱形状の容器を用いたが、これに限らず直方体形状の容器を用いてもよい。
【符号の説明】
【0066】
3…センサ素子
5…シート圧着装置
7…第1のシート
9…第2のシート
11…容器
13…容器内部空間
19…弾性部材内部空間
17…第1の管路
23…第2の管路
27…第3の管路
39…支持部
51…ゴム部材
55…第1の電磁弁
57…第2の電磁弁
59…真空電空レギュレータ
61…第3の電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に、第1のシートと第2のシートとを積層した両シートを配置し、該容器内に配置された弾性部材内へ気体を供給することによって、弾性部材を袋状に膨らませて前記両シートの表面を押圧することで、前記両シートを圧着するシート圧着方法において、
前記容器は、自身の内部空間が気密可能で、且つ該容器の内側の上面に、前記弾性部材を固定した箱状構造を有し、
前記容器の内部空間内に、前記第1のシートと第2のシートとを積層した前記両シートを配置するとともに、前記弾性部材内と前記容器の内部空間とを真空状態とする第1工程と、
前記第1工程の後に、前記弾性部材内の真空度を前記容器の内部空間の真空度よりも低下させることにより、前記弾性部材の中央部を下降させて、該中央部を前記両シートの周縁部より内側の表面に接触させる第2工程と、
前記第2工程の後に、前記弾性部材内へ供給する気体を徐々に増加させることにより、該弾性部材が前記両シートの表面を押圧する面積を増加させて、該弾性部材で前記両シートの表面全体を押圧して前記両シートを圧着する第3工程と、
を有することを特徴とするシート圧着方法。
【請求項2】
前記第1工程において、前記第1のシートと第2のシートとを分離した状態で前記容器の内部空間内に配置し、前記容器の内部空間を真空状態とした後、前記第1のシートと第2のシートとを積層して前記両シートを前記内部空間に配置することを特徴とする請求項1に記載のシート圧着方法。
【請求項3】
容器内に、第1のシートと第2のシートとを積層した両シートを配置し、該容器内に配置された弾性部材内へ気体を供給することによって、弾性部材を袋状に膨らませて前記両シートの表面を押圧することで、前記両シートを圧着するシート圧着装置において、
前記容器として、自身の内部空間が気密可能で、且つ該容器の内側の上面に、前記弾性部材を固定した箱状構造を有する容器を用い、
前記容器の内部空間内に、前記第1のシートと第2のシートとを積層した前記両シートを配置した状態で、前記弾性部材内と前記容器の内部空間とを真空状態とする第1手段と、
前記弾性部材内の真空度を前記容器の内部空間の真空度よりも低下させることにより、前記弾性部材の中央部を下降させて、該中央部を前記両シートの周縁部より内側の表面に接触させる第2手段と、
前記弾性部材内へ供給する気体を徐々に増加させることにより、該弾性部材が前記両シートの表面を押圧する面積を増加させて、該弾性部材で前記両シートの表面全体を押圧して前記両シートを圧着する第3手段と、
を備えたことを特徴とするシート圧着装置。
【請求項4】
前記第1のシートと第2のシートとを積層する前に、前記真空状態とした前記容器内にて、前記第1のシートと第2のシートとを分離した状態で保持する保持機構を備えたことを特徴とする請求項3に記載のシート圧着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−111075(P2012−111075A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260279(P2010−260279)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】