説明

シート型収納装置

【課題】収納部分に乗員が着座するのを防止可能なシート型収納装置を提供する。
【解決手段】リヤフロア21に沿うように横に延びるとともに大収納凹部13Aを有するリヤトレイ13と、このリヤトレイ13の端部から縦に延びるバックボード14とが設けられたシート型収納装置12において、バックボード14から大収納凹部13Aの上方に向けて突出する突出部14Cが設けられ、乗員が大収納凹部13Aに着座しようとしたときに、突出部14Cが邪魔リブになって着座を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられるシート型収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシート型収納装置として、通常は乗員の座席として使用される部分を取外すことでシート型収納装置を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の第6図を以下の図8で説明する。なお、符号は振り直した。
図8に示されるように、自動車の後部シート100を構成するシートクッション101及びシートバック102を取外し、シートクッション101が取り外された部分に出来る凹部103,103(一方の符号103のみ示す。)にそれぞれ開閉蓋104を取付けることで収納空間が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−220936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記収納のための凹部103には、乗員が座席として着座してしまうことが考えられ、着座しないように対策を施す必要がある。
本発明の目的は、収納部分に乗員が着座するのを防止可能なシート型収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、フロアに沿うように横に延びるとともに収納凹部を有する横壁部と、この横壁部の端部から縦に延びる縦壁部とが設けられたシート型収納装置において、縦壁部から収納凹部の上方に向けて突出する突出部が設けられることを特徴とする。
突出部が縦壁部から収納凹部の上方に向けて突出することで、乗員が収納凹部に着座しようとしたときに突出部が着座の邪魔になる。
【0007】
請求項2に係る発明は、突出部が、収納凹部の幅方向に亘って設けられることを特徴とする。
乗員が収納凹部の幅方向のどの位置に着座しようとしても、突出部が乗員の着座の邪魔になる。
【0008】
請求項3に係る発明は、縦壁部における収納凹部側の面に収納ポケットが設けられることを特徴とする。
シートのシートバックに相当する縦壁部に収納ポケットが設けられるため、収納凹部が設けられた横壁部と縦壁部とをシートと間違うことが少なくなり、着座しにくくなる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、縦壁部から収納凹部の上方に向けて突出する突出部が設けられるので、突出部が邪魔リブとなり、乗員が収納凹部に着座するのを防止することができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、突出部が、収納凹部の幅方向に亘って設けられるので、収納凹部のどの位置でも着座するのを防止することができる。
【0011】
請求項3に係る発明では、縦壁部における収納凹部側の面に収納ポケットが設けられるので、シートと間違って着座するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るシート型収納装置(実施例1)を示す車室後部の斜視図である。
【図2】本発明に係るシート型収納装置(実施例1)を示す車室後部の側面図である。
【図3】本発明に係るシート型収納装置(実施例2)を示す車室後部及び荷室の斜視図である。
【図4】本発明に係るシート型収納装置(実施例2)の他の形態を示す車室後部及び荷室の斜視図である。
【図5】本発明に係るシート型収納装置(実施例2)を示す斜視図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】図5の7−7線断面図である。
【図8】従来のシート型収納装置を示す車室後部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中の左、右、前、後は車両に乗車した運転者又は他の乗員を基準にした向きを示している。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1を説明する。
図1に示すように、自動車10の車室11の後部にシート型収納装置12が設けられている。
シート型収納装置12は、フロアとしてのリヤフロア21に沿うように横に延びるとともに収納凹部としての大収納凹部13A,13Bに物品を載せる横壁部としてのリヤトレイ13と、このリヤトレイ13の後端部の上方に配置されてリヤトレイ13に載せた物品の後部を支持する縦壁部としてのバックボード14とからなる。
【0015】
リヤトレイ13は、大きな物品が載る下方に窪んだ左右一対の大収納凹部13A,13Bと、これらの大収納凹部13A,13B間に小さな物品が載る下方に窪んだ小収納凹部13Cとを備える。
【0016】
バックボード14は、大収納凹部13A,13Bの上方の後方に物品の後部を支持する後方に窪んだ左右一対の大収納凹部14A,14Bと、これらの大収納凹部14A,14Bの下縁からリヤトレイ13の大収納凹部13A,13Bの上方に向けてそれぞれ突出する突出部14C,14Cとを備える。突出部14C,14Cは大収納凹部13A,13Bの後壁よりも前側まで延びる。なお、符号16は車室11の内壁、17はバックボード14の後方に設けられた荷室の積荷を覆うトノカバーである。
【0017】
図2に示すように、リヤトレイ13は、アンダボディ20を構成するリヤフロア21の上部にリヤフロア21に沿うように取付けられ、バックボード14は、リヤトレイ13の後端部に前後スイング可能に且つ所定角度でロック可能に取付けられている。なお、符号23は前部シート、24はフロントフロア、26は前部ドア開口部である。
【0018】
バックボード14には、リヤトレイ13の大収納凹部13A,13B(手前側の符号13Aのみ示す。)の上方に突出する突出部14Cが設けられているため、例えば、子供28が大収納凹部13A,13Bに座ろうとしても、突出部14Cが背中に当たって邪魔になり、座ることができなくなる。
【実施例2】
【0019】
次に本発明の実施例2を説明する。実施例1の構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図3に示すように、シート型収納装置30は、物品を載せるとともに左右の収納室31A,31B内に収納物を収納可能な横壁部としてのリヤトレイ31と、このリヤトレイ31の後端部の上方に配置されてリヤトレイ31に載せた物品の後部を支持するとともに左右の収納ポケット32A,32Bに収納物を収納可能な縦壁部としてのバックボード32とからなる。なお、符号34はバックボード32の後方に設けられた荷室である。
バックボード32は、車体に前後スイング可能に取付けられ、図では起立状態にロックされた状態を示している。
【0020】
図4は、図3の状態からバックボード32を前方に倒し、リヤトレイ31上の重ねた状態を示している。バックボード32の背面32cは荷室34の床34aと連続するように平坦になるため、荷室34が拡大され、より大きな荷物を積載することができる。
【0021】
図5に示すように、シート式収納装置30のリヤトレイ31は、左右一対の収納室31A,31Bと、これらの収納室31A,31Bの前方に配置された収納凹部31C,31Dとを備える。
【0022】
収納室31Aは、収納凹部31C,31Dが形成されたリヤトレイ本体31eに着脱自在に且つ施錠機構36で施錠可能に設けられた左カバー37を備える。
左カバー37の上面37aは、リヤトレイ本体30eの上面30fと連続するように平坦に形成されている。
【0023】
収納室31Bは、リヤトレイ本体30eに着脱自在に且つ係止可能に設けられた右カバー38を備える。
右カバー38の上面38aは、リヤトレイ本体30eの上面31fと連続するように平坦に形成されている。
【0024】
上記の収納室31Aは、施錠機構36によって施錠可能であるから、貴重品や重要な収納物等を収納し、収納室31Bは容易に開けられる構造であるから、汚れた収納物や濡れた衣類、雨合羽等を収納するのに適している。
【0025】
収納凹部31C,31Dは、それぞれ車幅方向に長く形成されているため、小物や細長い収納物を収納するのに適している。
【0026】
バックボード32は、左右一対の収納ポケット32A,32Bと、これらの収納ポケット32A,32Bの下方からリヤトレイ31の収納室31A,31Bの上方に向けて突出する左右一対の突出部32D,32Dとを備える。突出部32D,32Dは収納室31A,31Bの後壁よりも前側まで延びる。
【0027】
収納ポケット32A,32Bは、バックボード本体32eと、このバックボード本体32eの前方に配置されるとともにバックボード本体32eの上端部32fよりも上縁部32g,32hが低く形成されたポケット用パネル32kとから形成され、上縁部32g,32hの内側にそれぞれ上方に開口する開口部32m,32nを備える。
【0028】
図6に示すように、バックボード本体32eは、前パネル32Fと、この前パネル32Fの後部に取付けられた後パネル32Gと、これらの前パネル32F及び後パネル32Gのそれぞれの下端に取付けられた下パネル32Hとからなり、前パネル32Fと後パネル32Gとの間の空間40に前パネル32F及び後パネル32Gのそれぞれの間に渡された支持部材41,42が配置されている。
【0029】
前パネル32Fの前面32pに、前パネル32Fの上端部及び側端部に対して窪んだバックボード凹部32qが形成され、バックボード本体32eとは別体にもうけられたポケット用パネル32kの上下方向の中間部に窓部32sが開けられている。
窓部32sは、収納ポケット32A,32B内に収納された収納物が外部から見えるようにするための部分である。
【0030】
突出部32Dは、下パネル32Hの前部、詳しくは、ポケット用パネル32kの下縁が載っている部分に隣接して前方に突出するように下パネル32Hに一体に設けられている。
【0031】
図7に示すように、リヤトレイ31は、リヤトレイ本体31eに左右一対の大収納凹部31G,31Hが形成され、これらの大収納凹部31G,31Hの上部開口を塞ぐように左カバー37及び右カバー38が設けられている。
【0032】
施錠機構36は、大収納凹部31Gの側壁に隣接する位置で大収納凹部31Gの車幅方向内側に配置され、左カバー37に設けられた内側垂下壁37bに係合可能な係合部36aを備え、この係合部36aが内側垂下壁37bに係合することで左カバー37が開かないように施錠される。
【0033】
左カバー37は、上下二重構造の天板37cと、この天板37cの内側端部から下方に延ばされた内側垂下壁37aとを備え、天板27cの周縁に、大収納凹部31Gの上縁段部31hに係止される複数の係止部(不図示)を備える。
左カバー37は、二重構造にされることで、外部からの衝撃に対して強度・剛性が増し、収納室31A内の収納物の盗難防止効果を高めることができる。
【0034】
右カバー38は、一枚構造の部材であり、隅部にノブ44を備え、このノブ44を上方に引くことで、右カバー38とリヤトレイ本体31eとの係止状態が解除され、右カバー38を開けることができる。
【0035】
上記の図1、図2に示したように、フロアとしてのリヤフロア21に沿うように横に延びるとともに収納凹部としての大収納凹部13A,13Bを有する横壁部としてのリヤトレイ13と、このリヤトレイ13の端部から縦に延びる縦壁部としてのバックボード14とが設けられたシート型収納装置12において、バックボード14から大収納凹部13A,13Bの上方に向けて突出する突出部14C,14Cが設けられるので、突出部14Cが邪魔リブとなり、乗員が大収納凹部13A,13Bに着座するのを防止することができる。
【0036】
また、突出部14Cが、大収納凹部13A,13Bの幅方向に亘って設けられるので、大収納凹部13A,13Bのどの位置でも着座するのを防止することができる。
【0037】
上記の図5〜図7に示したように、バックボード32における収納凹部としての大収納凹部31G,31H側の面に収納ポケット32A,32Bが設けられるので、シート型収納装置30をシートと間違って着座するのを防止することができる。
【0038】
尚、本実施形態では、図6に示したように、突出部32Dを、バックボード本体32eの下部に設けたが、これに限らず、ポケット用パネル32kの下部に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のシート型収納装置は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0040】
12,30…シート型収納装置、13,31…横壁部(リヤトレイ)、13A,13B…収納凹部(大収納凹部)、13C…収納凹部(小収納凹部)、14,32…縦壁部(バックボード)、14C,32D…突出部、21…フロア(リヤフロア)、31C,31D…収納凹部、31G,31H…収納凹部(大収納凹部)、32A,32B…収納ポケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアに沿うように横に延びるとともに収納凹部を有する横壁部と、この横壁部の端部から縦に延びる縦壁部とが設けられたシート型収納装置において、
前記縦壁部から前記収納凹部の上方に向けて突出する突出部が設けられることを特徴とするシート型収納装置。
【請求項2】
前記突出部は、前記収納凹部の幅方向に亘って設けられることを特徴とする請求項1記載のシート型収納装置。
【請求項3】
前記縦壁部における前記収納凹部側の面に収納ポケットが設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のシート型収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−179738(P2010−179738A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23889(P2009−23889)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】