説明

シート排出装置及び画像形成装置

【課題】シート積載量の検知機能を安定して発揮することができると共に、小型化及び低コスト化を図る。
【解決手段】シートを排出する排出手段19a,19bと、当該排出手段19a,19bによって排出されたシートを積載する積載部20と、積載部20に積載されたシートの積載量を検知する積載量検知手段29とを備えたシート排出装置におけるものである。積載部20に積載された最上位のシートP0を排出手段19a,19bによって積載量検知手段29側へ搬送し、当該最上位のシートP0を積載量検知手段29によって検知するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート排出装置、及びシート排出装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置においては、装置の小型化と共に、操作性の向上も求められている。画像形成装置における操作性を向上させる機能の1つに、排紙トレイ等の積載部に排出された用紙が満載となったことを検知する満載検知機能がある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているように、用紙の満載状態を検知する手段としては、積載部に積載された用紙(用紙束)の上面に接触して用紙の積載量を検知するフィラーなどがある。しかしながら、この構成では、積載されている用紙の上部にフィラーがあるため、ユーザーが積載された用紙を扱うときにフィラーが邪魔になるなどの問題がある。
【0004】
そこで、従来、特許文献2に、フィラーを用いないで用紙の満載状態を検知可能な用紙積載装置が提案されている。
図7に示すように、特許文献2に記載の用紙積載装置は、傾斜した載置面を有する排紙トレイ200と、排紙トレイ200に排出された用紙Pの後端を規制する用紙後端規制部材300と、用紙Pを検知する検知手段としての透過型のフォトインタラプタ400等を備えている。この用紙積載装置において、一対の排紙ローラ500a,500bによって排紙トレイ200上に排出された用紙Pは、傾斜する排紙トレイ200の下方へ向かって移動し、用紙後端規制部材300によって用紙Pの後端が支持される。しかし、積載された用紙Pの高さが用紙後端規制部材300の上端位置を超えると、最上位の用紙がフォトインタラプタ400側へ移動し、その用紙によってフォトインタラプタ400が遮光される。これにより、用紙が満載状態となったことが検知されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載の用紙積載装置は、以下に挙げるような課題がある。
【0006】
特許文献2に記載の用紙積載装置は、排紙トレイの積載面を傾斜させることにより、用紙に生じる自重を、用紙をフォトインタラプタ側へ移動させるための搬送力として利用しているため、積載面はある程度の傾斜角度を有していなければならない。このため、装置サイズが大きくなると言った問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の用紙積載装置では、用紙の種類、用紙の大きさ(用紙同士の接触面積)、用紙の含水分率などにより、用紙間の摩擦による抵抗力が大きくなると、積載面が傾斜していても用紙が静止してしまい、用紙をフォトインタラプタ側へ搬送できなくなる虞がある。また、用紙が画像転写装置を通過する際に受けた帯電による影響で、積載された用紙間に吸着力が生じた場合も、その吸着力によって用紙をフォトインタラプタ側へ搬送できなくなる虞がある。また、仮に、用紙の自重による搬送力が用紙間の摩擦や帯電による吸着力に勝り、用紙をフォトインタラプタ側へ搬送することができたとしても、その搬送に要する時間が長くなって、満載状態を安定したタイミングで検知できない可能性もある。
【0008】
さらに、用紙の自重で搬送力を得る構成では、大きな搬送力を得ることができないため、用紙と接触することによって当該用紙を検知するフィラーとフォトインタラプタ、あるいはスイッチセンサなどの、汎用的な接触式の検知手段を用いることができず、製造コストが高くなる可能性がある。また、用紙の搬送力を十分に得るために、搬送ローラ等の搬送手段を別途設けることも提案できるが、この場合は、前記搬送手段や、その搬送手段を駆動させる駆動手段、あるいは既存の駆動手段からの駆動力を搬送手段に伝達するギア等の伝達部材を設ける必要があり、部品点数が多くなって、低コスト化、小型化を図りにくくなる。
【0009】
そこで、本発明は、斯かる事情に鑑み、シート積載量の検知機能を安定して発揮することができると共に、小型化及び低コスト化を図ることが可能なシート排出装置、及びそのシート排出装置を備えた画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、シートを排出する排出手段と、当該排出手段によって排出されたシートを積載する積載部と、当該積載部に積載されたシートの積載量を検知する積載量検知手段とを備えたシート排出装置において、前記積載部に積載された最上位のシートを前記排出手段によって前記積載量検知手段側へ搬送し、当該最上位のシートを積載量検知手段によって検知するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るシート排出装置よれば、積載部に積載された最上位のシートを、排出手段によって積載量検知手段側へ搬送することで、シートの積載量を検知することができる。このように、本発明によれば、最上位のシートを積載量検知手段側へ搬送する際の搬送力を、排出手段によって得ているので、十分な搬送力が得られる。これにより、シートの種類等に起因するシート間の摩擦力の増大や、シート間での帯電による吸着などが生じても、それらに関係なく、最上位のシートを積載量検知手段側へ確実に搬送することができ、安定した積載量検知機能を発揮することができる。
【0012】
また、最上位のシートを搬送する手段として排出手段を用いるので、最上位のシートを搬送するための専用の搬送手段や駆動手段などを別途備える必要がない。このため、部品点数の増加を抑制することができ、低コスト化及び小型化を図ることが可能である。
【0013】
また、本発明に係るシート排出装置によれば、最上位のシートの搬送力を得るために積載部の載置面を傾斜させる必要はないので、装置の小型化に寄与できる。
【0014】
また、本発明に係るシート排出装置によれば、十分な搬送力が得られるので、積載量検知手段として、汎用的な接触式の検知手段を用いることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】前記画像形成装置に搭載された排紙装置の概略構成図である。
【図3】前記排紙装置の拡大図である。
【図4】前記排紙装置の他の実施形態の概略構成図である。
【図5】前記排紙装置のさらに別の実施形態の概略構成図である。
【図6】前記排紙装置が、用紙のカールを抑制する抑え部材を備える実施形態の概略構成図である。
【図7】従来の排紙装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の実施形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0017】
まず、図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置は、カラーレーザープリンタであり、その装置本体100には、画像形成ユニットとしての4つのプロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkが着脱可能に装着されている。各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。なお、現像剤としては、トナーから成る一成分現像剤を用いてもよいし、トナーとキャリアから成る二成分現像剤を用いても構わない。
【0018】
具体的には、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、潜像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電ローラ3等を備えた帯電装置と、感光体2の表面にトナーを供給する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするためのクリーニングブレード5等を備えたクリーニング装置などを備える。なお、図1では、イエローのプロセスユニット1Yが備える感光体2、帯電ローラ3、現像装置4、クリーニングブレード5のみに符号を付しており、その他のプロセスユニット1M,1C,1Bkにおいては符号を省略している。
【0019】
図1において、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkの上方には、感光体2の表面を露光する露光手段としての露光装置6が配設されている。露光装置6は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体2の表面へレーザー光を照射するようになっている。
【0020】
また、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkの下方には、転写装置7が配設されている。転写装置7は、転写体としての無端状のベルトから構成される中間転写ベルト8を有する。中間転写ベルト8は、支持部材としての駆動ローラ9と従動ローラ10に張架されており、駆動ローラ9が図の反時計回りに回転することによって、中間転写ベルト8は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するように構成されている。
【0021】
4つの感光体2に対向した位置に、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ11a〜11dが配設されている。各一次転写ローラ11a〜11dはそれぞれの位置で中間転写ベルト8の内周面を押圧しており、中間転写ベルト8の押圧された部分と各感光体2とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。また、各一次転写ローラ11a〜11dは、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ11a〜11dに印加されるようになっている。
【0022】
また、駆動ローラ9に対向した位置に、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配設されている。この二次転写ローラ12は中間転写ベルト8の外周面を押圧しており、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。また、二次転写ローラ12は、一次転写ローラ11a〜11dと同様に、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ12に印加されるようになっている。
【0023】
また、中間転写ベルト8の図の右端側の外周面には、中間転写ベルト8の表面をクリーニングするベルトクリーニング装置13が配設されている。このベルトクリーニング装置13から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、転写装置7の下方に配設された廃トナー収容器14の入り口部に接続されている。
【0024】
装置本体100の下部には、シート供給装置としての給紙装置15が配設されている。給紙装置15は、画像を記録するシート(記録媒体)としての用紙Pを収容する給紙カセット16と、給紙カセット16に収容されている用紙Pを送り出す給紙ローラ17とを有する。なお、上記用紙Pには、厚紙、はがき、封筒、普通紙、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等を含む。さらに、本実施形態に係る給紙装置15は、用紙以外のシートとして、OHPシートもしくはOHPフィルム等も供給可能に構成されている。
【0025】
一方、装置本体100の上部には、シート排出装置としての排紙装置18が配設されている。排紙装置18は、用紙を排出する排出手段としての排出回転体対である一対の排紙ローラ19a,19bと、排紙ローラ19a,19bによって排出された用紙を積載する積載部20等を有する。
【0026】
また、装置本体100内には、用紙Pを給紙カセット16から二次転写ニップを通って排紙ローラ19a,19bへ搬送するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ12の位置よりも用紙搬送方向上流側には、二次転写ニップへ用紙Pを給送する給送手段としての一対のレジストローラ21a,21bが配設されている。また、二次転写ローラ12の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置22が配設されている。この定着装置22は、加熱源によって加熱される定着部材としての定着ローラ23と、その定着ローラ23を加圧する加圧部材としての加圧ローラ24とを有する。定着ローラ23と加圧ローラ24とが互いに圧接した箇所には定着部としての定着ニップが形成されている。
【0027】
上記画像形成装置は以下のように動作する。
作像動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2が図1の時計回りに回転駆動され、帯電ローラ3によって各感光体2の表面が所定の極性に一様に帯電される。次いで、図示しない読取装置によって読み取られた原稿の画像情報に基づいて、露光装置6から各感光体2の帯電面にレーザー光が照射されて、各感光体2の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体2に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体2上に形成された静電潜像に、各現像装置4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0028】
続いて、中間転写ベルト8を張架する駆動ローラ9が回転駆動し、中間転写ベルト8を図の矢印の方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ11a〜11dに、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ11a〜11dと各感光体2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各感光体2上の各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト8はその表面にフルカラーのトナー画像を担持する。
【0029】
また、中間転写ベルト8に転写しきれなかった各感光体2上のトナーは、それぞれ、クリーニングブレード5によって除去される。次いで、各感光体2の表面が図示していない除電装置によって除電作用を受け、その表面電位が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0030】
一方、給紙装置15では、給紙ローラ17が回転して、給紙カセット16から用紙Pが搬送路Rへ送り出される。送り出された用紙Pは、レジストローラ21a,21bによってタイミングを計られて、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8との間の二次転写ニップに給送される。このとき二次転写ローラ12には、中間転写ベルト8上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。あるいは、駆動ローラ9に対しトナーの帯電極性と同極性の転写電圧を印加することにより、中間転写ベルト8上のトナー画像を用紙Pに転写するようにしてもよい。
【0031】
また、用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト8上の残留するトナーは、ベルトクリーニング装置13によって除去される。そして、除去されたトナーは、図示しない廃トナー移送ホースを介して廃トナー収容器14へ搬送され回収される。
【0032】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着手段22へと搬送され、定着ローラ23と加圧ローラ24によって用紙Pが加熱及び加圧されてトナー画像が定着される。その後、用紙Pは一対の排紙ローラ19a,19bの間へと搬送され、排紙ローラ19a,19bが用紙Pを挟持して回転することにより用紙Pが積載部20へ排出される。
【0033】
以上の説明は、記録媒体にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0034】
次に、図2を参照して、上記排紙装置の構成について詳しく説明する。
図2に示すように、積載部20は、排出された用紙Pの下面を支持する載置面25と、排出された用紙Pの排出方向(図の矢印Aの方向)の後端を支持する後端支持面26とを有する。一対の排紙ローラ19a,19bは、この積載部20の後端時紙面26側の上方に載置面25から所定の高さで配設されている。また、後端支持面26の上部であって、一対の排紙ローラ19a,19bのうちの下側の排紙ローラ19aの下部近傍には、特定の用紙P0の後端を侵入可能な凹部27が形成されている。また、この凹部27の近傍には、発光部と受光部とを有する透過型の光学センサ29が配設されており、その発光部から発する光が凹部27内を通過して受光部で受光されるようになっている。
【0035】
上記のように構成された排紙装置は以下のように動作する。
図2の矢印の方向に回転する一対の排紙ローラ19a,19bによって用紙Pが機外に順次排出されると、排出された用紙Pは積載部20の載置面25上に積載されていく。その後、用紙Pの積載量が次第に増加していくと、積載された用紙Pのうちの最上位の用紙P0が下側の排紙ローラ19aに接触するに至る。この状態で、一対の排紙ローラ19a,19bが用紙Pを排出する際の回転方向と同方向(図2の矢印の方向)に回転することにより、図3に示すように、最上位の用紙P0は、回転する下側の排紙ローラ19aによって、凹部27内へと搬送される。そして、凹部27内へ送られた最上位の用紙P0は、凹部27の奥側の突き当て部28に突き当たって静止する。このように、最上位の用紙P0が凹部27内で静止した状態では、光学センサ29の発光部から発する光が用紙P0によって遮断され受光部で受光されなくなる。これによって、積載された用紙Pが満載状態となったことが検知される。
【0036】
上記光学センサ29によって満載状態が検知された場合は、その旨をユーザー等に報知し、その後の用紙の排出を停止することで、用紙が積載部20からあふれるのを防止することができる。あるいは、満載状態を検知した際、装置内に、印刷途中の用紙など、排出される予定の用紙がある場合は、少なくともそれらを装置外に排出するまで排紙ローラ19a,19bの駆動を継続するように構成してもよい。この場合は、装置の駆動再開時に、装置内に残っている用紙が詰まることによるジャム等の不具合の発生を回避することができる。
【0037】
なお、図2に示す実施形態では、用紙の積載量(満載状態)を検知する積載量検知手段として、透過型の光学センサを用いているが、反射型の光学センサを用いることも可能である。反射型の光学センサを用いた場合は、凹部27で照射される発光部からの光が、凹部27内に侵入した最上位の用紙P0によって反射されることで、その反射光を受光部が受光し、満載状態が検知される。また、積載量検知手段として、上記光学センサ等の非接触式の検知手段に代えて、用紙と接触することによって当該用紙を検知する汎用的な接触式の検知手段を用いることも可能である。接触式の検知手段には、例えば、用紙と接触することによって当該用紙を検知するフィラーとフォトインタラプタやスイッチセンサなどがある。
【0038】
以下、図3を参照して、下側の排紙ローラ19aが最上位の用紙P0を搬送する際の搬送力について説明する。
積載部20での用紙Pの積載量が増加し、最上位の用紙P0が下側の排紙ローラ19aに接触すると、最上位の用紙P0と下側の排紙ローラ19aとの間には、図3に示す接触力(反発力)Nが作用する。この接触力Nが大きいほど、すなわち、最上位の用紙P0と下側の排紙ローラ19aとが強く接触するほど、下側の排紙ローラ19aが最上位の用紙P0に与える搬送力Fは大きくなる。また、この搬送力Fは、最上位の用紙P0と下側の排紙ローラ19aとの間の摩擦係数μ1が大きくなることによっても増大する。従って、最上位の用紙P0に与えられる搬送力Fを、上記接触力Nと上記摩擦係数μ1とを用いて表すと、下記式(1)となる。
【0039】
F=μ1×N・・・式(1)
【0040】
しかし、実際は、最上位の用紙P0に与えられる搬送力Fに対して、最上位の用紙P0とその下方の用紙P1との間で生じる摩擦力が抵抗力Rとなって作用する。このため、搬送力Fを、上記接触力Nと上記摩擦係数μ1に加え、さらに最上位の用紙P0とその下方の用紙P1との間の摩擦係数μ2を用いて表すと、下記式(2)となる。
【0041】
F=(μ1−μ2)×N・・・式(2)
【0042】
上記式(2)より、搬送力Fを得るには、最上位の用紙P0と下側の排紙ローラ19aとの間の摩擦係数μ1は、最上位の用紙P0とその下方の用紙P1との間の摩擦係数μ2よりも、大きく設定する必要がある。そのため、下側の排紙ローラ19aの表面材料には、摩擦係数の高いゴムなどの部材を用いることが好ましい。また、下側の排紙ローラ19aの表面材料に摩擦係数の高い材料を用いることで、最上位の用紙P0をスリップさせずに確実に搬送することが可能となる。
【0043】
ただし、用紙の画像形成面が下側の排紙ローラ19aに接触することがある場合は、画像が排紙ローラ19aに転写されないようにするために、画像を形成するトナー又はインク等の現像剤の含有成分と親和性の低い材料を、ローラの表面材料として選択するのがよい。よって、下側の排紙ローラ19aの表面材料には、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、ウレタン、シリコン、スポンジ等の汎用的に排紙ローラに使用される材料の中から、コスト、製品寿命等を考慮して適宜選択すればよい。
【0044】
また、図3に示すように、最上位の用紙P0が突き当て部28に当接した際、最上位の用紙P0は突き当て部28から上記搬送力Fとは逆向きで同じ大きさの静止力Qを受ける。ここで、用紙P0が搬送力Fと静止力Qを受けても、用紙P0が変形しない剛性を有していることにより、用紙P0が折れ曲がったりジャム化したりすることなく、下側の排紙ローラ19aとの間で用紙P0をスリップさせることができる。
【0045】
また、本実施形態の突き当て部28は、凹部27内へ最上位の用紙P0を搬送する搬送方向に対して直交して配設された固い壁面で構成されているが、用紙P0を突き当てた際の用紙P0の後端のダメージを防止するために、突き当て部28をスポンジ等の柔らかい部材で構成してもよい。
【0046】
また、両排紙ローラ19a,19bを、用紙を排出する際の回転方向(図2に示す矢印の方向)とは逆方向にも回転可能に構成した場合は、満載状態が検知された後、各排紙ローラ19a,19bを前記逆方向に回転させることにより、最上位の用紙P0を積載部20側へ戻すことができる。この場合、最上位の用紙P0を積載部20側へ戻すことで、ユーザー等が積載部20から用紙Pを回収する際に、最上位の用紙P0が凹部27に引っ掛かることがないので、用紙P0へのダメージを回避することができると共に作業性が向上する。
【0047】
また、図4は、上記排紙装置の他の実施形態の概略構成図である。
図4に示す実施形態に係る排紙装置18は、3つの排紙ローラ19a,19b,19cを有している点で、図2に示す上記実施形態の構成と異なる。図4において、上側の排紙ローラ19cと下側の排紙ローラ19aは、それぞれ中間の排紙ローラ19bと接触しており、いずれのローラの接触部からも用紙を排出することが可能となっている。また、各排紙ローラ19a,19b,19cは、正逆回転可能に構成されている。それ以外は、基本的に図2に示す実施形態の構成と同様となっている。
【0048】
以下、図4に示す排紙装置18の動作について説明する。
ここで、便宜的に、3つの排紙ローラ19a,19b,19cを、図の下方から順に第1の排紙ローラ19a、第2の排紙ローラ19b、第3の排紙ローラ19cと呼ぶことにする。
【0049】
通常、装置内の用紙を排出する場合は、用紙が、第1と第2の排紙ローラ19a,19bの間に搬送され、各排紙ローラ19a,19b,19cが図4の矢印の方向とは逆方向(図2の矢印の回転方向と同方向)に回転することにより、第1と第2の排紙ローラ19a,19bの間から用紙が積載部20へ排出される。その後、用紙Pの積載量が増加し、最上位の用紙P0が下側の排紙ローラ19aに接触した状態、すなわち満載状態になると、上記実施形態と同様に、回転する第1の(下側の)排紙ローラ19aによって、最上位の用紙P0が凹部27内へと搬送され、光学センサ29によって満載状態が検知される。
【0050】
その後、この排紙装置18では、各排紙ローラ19a,19b,19cを上記回転方向とは逆方向(図4の矢印の方向)に回転させ、最上位の用紙P0を積載部20側へ戻す。また、満載状態を検知したとき、装置内に排出される予定の用紙P2がある場合は、少なくともそれを装置外に排出するまで駆動を継続する。しかしながら、最上位の用紙P0の戻し動作中は、第1の排紙ローラ19aと第2の排紙ローラ19bとの間では、用紙を排出する際の回転方向とは逆方向(図4の矢印の方向)にローラ表面が回転しているので、第1の排紙ローラ19aと第2の排紙ローラ19bとの間から装置内の用紙P2を排出することはできない。
【0051】
そこで、最上位の用紙P0の戻し動作中は、装置内の用紙P2を、第3の排紙ローラ19cと第2の排紙ローラ19bとの間に搬送する。このとき、第3の排紙ローラ19cと第2の排紙ローラ19bとの間では、用紙を排出可能な回転方向にローラ表面が回転しているので、第3の排紙ローラ19cと第2の排紙ローラ19bとの間から用紙P2を排出することができる。
【0052】
このように、図4に示す排紙装置18では、最上位の用紙P0を積載部20側へ戻しつつ、装置内の用紙P2を排出することができるので、最上位の用紙P0の戻し動作を終えるまで装置内の用紙P2の排出動作を一旦停止させるなどの制御を行う必要がない。このため、装置内の用紙P2の排出を円滑に行うことができ、その後の用紙のジャム等の不具合を回避することが可能である。
【0053】
また、図4に示す排紙装置18では、最上位の用紙P0を積載部20側に戻すようにしているので、上記と同様に、ユーザー等が積載部20から用紙Pを回収する際に、最上位の用紙P0が凹部27に引っ掛かるのを防止でき、用紙P0へのダメージを回避することができると共に作業性を向上させることが可能である。
【0054】
図5は、さらに別の実施形態の構成を示す図である。
図5に示す排紙装置18は、2つの積載部20,30を備える。図の上側の積載部20は、上記各実施形態と同様に画像定着後に排出される用紙を積載する第1の積載部20であり、図の下側の積載部30は、第1の積載部20が満載状態となった場合にその後に排出される用紙を積載する第2の積載部30である。
【0055】
この排紙装置18は、第1の積載部20から第2の積載部30へ用紙を搬送する搬送手段を備えている。具体的に、搬送手段は、第1の積載部20から第2の積載部30へと連通した搬送路31と、その搬送路31に配設された複数の搬送ローラ対32a,32b及び33a,33bとを有する。また、搬送路31の用紙搬送方向の下流端には、第2の積載部30へ用紙を排出する一対の排紙ローラ34a,34bが配設されている。また、搬送路31の用紙搬送方向の上流側には、上記実施形態と同様の光学センサ29を配設している。なお、図5に示す実施形態において、上記説明した構成以外は、図2に示す実施形態の構成と同様となっているが、図4に示す実施形態と同様に(第1の)積載部20に3つの排紙ローラ19a,19b,19cを配設する構成とすることも可能である。
【0056】
以下、図5に示す排紙装置18の動作について説明する。
まず、第1の積載部20が満載状態になるまでは、一対の排紙ローラ19a,19bによって用紙が第1の積載部20へ排出される。その後、用紙Pの積載量が増加し、最上位の用紙P0が下側の排紙ローラ19aに接触した満載状態になると、回転する排紙ローラ19aによって、最上位の用紙P0が搬送路31内に侵入し、光学センサ29によって満載状態が検知される。
【0057】
その後、最上位の用紙P0は、搬送路31内を通って第2の積載部30へと排出される。また、それ以降に第1の積載部20へ排出された用紙も、同様に搬送路31を通って第2の積載部30へと排出される。
【0058】
このように、図5に示す排紙装置18は第2の積載部30を備えることにより、用紙をストックする量に余裕ができるので、第1の積載部20が満載状態となった後も、その後の用紙の排出を継続することができる。一般に、画像形成装置においては、積載部が満載状態となると、その旨をユーザー等に報知し、ユーザー等が用紙束を回収するまで印刷動作が停止した状態となるが、この構成を採用することで、満載後に印刷動作を停止しなくてもよくなるため、生産性を損なうことがない。また、この構成を採用することで、排出予定の用紙を装置内に残したまま駆動を停止する状態となるのを回避することができる。これにより、駆動再開後に、装置内に残っている用紙が詰まってジャム等の不具合が生じるのを防止することが可能である。
【0059】
また、一般的に、汎用的なプリンタや複合機等の画像形成装置では、その装置本体の外装部が直方体のケースで構成されているため、装置本体内に搭載される各種装置同士の間に空きスペースが存在することが多い。従って、このような空きスペースに、第2の積載部30を配設することで、装置の大型化を抑制しつつ、用紙の積載限界量を増大させることが可能である。特に、ローエンドプリンタ分野において、こうした空きスペースを有効活用することで、装置の小型化を期待できる。
【0060】
なお、満載後に使用する積載部は、1つ(第2の積載部30)に限定されるものではない。装置の構成や使用状況などに応じて、満載後に使用する積載部を2つ以上設けてもよい。
【0061】
図6は、上記排紙装置が、用紙のカールを抑制する抑え部材を備える実施形態の概略構成図である。
図6に示すように、この実施形態では、用紙のカールを抑制する抑え部材35が図の上側の排紙ローラ19bに設けられている。詳しくは、抑え部材35は、上側の排紙ローラ19bの回転支点に回転可能に取り付けられた取付部36と、取付部36から用紙の排出方向へ延伸する抑え部37とを有する。それ以外は、図2に示す上記実施形態の構成と同様の構成である。なお、図4や図5に示す上記実施形態の構成においても、同様に、抑え部材35を設けてもよい。
【0062】
この場合、一対の排紙ローラ19a,19bによって用紙を排出する際、排出される用紙の先端が抑え部37に接触することにより、抑え部37は取付部36を中心に上方へ回転する(図6の実線で示す状態)。このように、抑え部37が上方へ回転することで、用紙の排出を妨げないようになっている。そして、用紙が完全に排出され積載部20に積載されると、抑え部37は自重により取付部36を中心に下方へ回転する(図6の二点鎖線で示す状態)。
【0063】
その後、用紙Pの積載量が増加し、最上位の用紙P0が下側の排紙ローラ19aに接触した満載状態になると、上記実施形態と同様に、回転する排紙ローラ19aによって、最上位の用紙P0が光学センサ29側へ搬送される。このとき、抑え部37が最上位の用紙P0の後端を抑えているので、排出時に定着装置の熱などの影響によって用紙P0の後端が大きくカールしていたとしても、カールが抑制された状態で凹部27へ搬送することができる。これにより、最上位の用紙P0を凹部27内に侵入させやすくなると共に、大きくカールした用紙P0の後端が凹部27の開口縁に当接することによる用紙の折れ曲がりやジャム等の発生を防止することができる。
【0064】
以上のように、上記本発明の各実施形態に係る排紙装置によれば、積載部が満載状態となったとき、最上位の用紙を、回転する排紙ローラによって光学センサ側へ搬送することが可能である。このように、各実施形態に係る排紙装置によれば、最上位の用紙を光学センサ側へ搬送する際の搬送力を、排紙ローラの回転によって得ているので、十分な搬送力が得られる。これにより、用紙の種類等に起因する用紙間の摩擦力の増大や、用紙間での帯電による吸着などが生じても、それらに関係なく、最上位の用紙を光学センサ側へ確実に搬送することができ、安定した満載検知機能を発揮することができる。
【0065】
また、最上位の用紙を搬送する手段として排紙ローラを用いるので、最上位の用紙を搬送するための専用の搬送手段や駆動手段を別途備える必要がない。このため、部品点数の増加を抑制することができ、低コスト化及び小型化を図ることが可能である。
【0066】
また、各実施形態に係る排紙装置によれば、最上位の用紙の搬送力を得るために積載部の載置面を傾斜させる必要はないので、装置の小型化に寄与できる。
【0067】
また、各実施形態に係る排紙装置によれば、十分な搬送力が得られるので、積載量検知手段として、汎用的な接触式の検知手段を用いることも可能である。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。また、本発明に係る排紙装置は、図1に示すカラーレーザープリンタに限らず、モノクロプリンタやインクジェットプリンタ、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等に搭載することも可能である。
【符号の説明】
【0069】
18 排紙装置(シート排出装置)
19a 排紙ローラ(第1の排出回転体)
19b 排紙ローラ(第2の排出回転体)
19c 排紙ローラ(第3の排出回転体)
20 積載部(第1の積載部)
28 突き当て部
29 光学センサ(積載量検知手段)
30 積載部(第2の積載部)
35 抑え部材
F 搬送力
Q 静止力
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【特許文献1】特開2003−81525号公報
【特許文献2】特開2002−128389号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを排出する排出手段と、当該排出手段によって排出されたシートを積載する積載部と、当該積載部に積載されたシートの積載量を検知する積載量検知手段とを備えたシート排出装置において、
前記積載部に積載された最上位のシートを前記排出手段によって前記積載量検知手段側へ搬送し、当該最上位のシートを積載量検知手段によって検知するように構成したことを特徴とするシート排出装置。
【請求項2】
前記排出手段は、上下に配設されると共に、シートを挟持して回転することによりそのシートを排出する第1及び第2の排出回転体を有し、
前記第1及び第2の排出回転体を前記積載部の上方に所定の高さで配設し、
前記積載部にシートが積載され、最上位のシートが下側の第1の排出回転体に接触した状態で、第1及び第2の排出回転体がシートを排出する際の回転方向と同方向に回転することにより、最上位のシートを前記積載量検知手段側へ搬送するように構成した請求項1に記載のシート排出装置。
【請求項3】
前記第1の排出回転体を、シートを排出する際の回転方向とは逆方向にも回転可能に構成し、
前記最上位のシートが前記積載量検知手段によって検知された後、第1の排出回転体を前記逆方向に回転させて最上位のシートを前記積載部側へ戻すように構成した請求項2に記載のシート排出装置。
【請求項4】
前記第2の排出回転体に接触するように第3の排出回転体を設け、
前記最上位シートを排出した後に排出されるシートを、第2の排出回転体と第3の排出回転体との間に搬送し、回転する第2及び第3の排出回転体によってシートを挟持して排出するように構成した請求項3に記載のシート排出装置。
【請求項5】
前記積載部から前記積載量検知手段側へ搬送された前記最上位のシート、及び当該最上位シートの後に前記積載部に排出されるシートを、他の積載部に搬送する搬送手段を備えた請求項1から4のいずれか1項に記載のシート排出装置。
【請求項6】
前記第1の排出回転体の表面材料を、前記最上位のシートとその下方のシートとの間の摩擦係数よりも、最上位のシートと第1の排出回転体との間の摩擦係数が大きくなるような材料で構成した請求項2に記載のシート排出装置。
【請求項7】
前記排出手段によって排出されたシートのカールを抑制するために当該シートを抑える抑え部材を備えた請求項1から6のいずれか1項に記載のシート排出装置。
【請求項8】
前記積載部から前記積載量検知手段側へ搬送される前記最上位のシートを突き当てて、その最上位のシートを前記積載量検知手段が検知可能な位置で静止させる突き当て部を備え、最上位のシートが前記排出手段による搬送力と前記突き当て部による静止力を受けても、当該シートが変形しない剛性を有する請求項1から7のいずれか1項に記載のシート排出装置。
【請求項9】
前記積載量検知手段によって前記最上位のシートを検知したときに、
装置内に排出される予定のシートがある場合は、少なくともそれらを装置外に排出するまで前記排出手段の駆動を継続するように構成した請求項1から8のいずれか1項に記載のシート排出装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のシート排出装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−254873(P2012−254873A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129456(P2011−129456)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】