説明

シート搬送装置、及び画像記録装置

【課題】回動可能なアームの先端側に回転可能に設けられたローラによりシートを搬送するシート搬送装置において、シートの給送に失敗した後の再給送動作時における給送エラーの再発を防止できる手段を提供する。
【解決手段】給紙ローラ25は、回動可能に構成されたアーム26の先端に設けられているので、給紙トレイ20上の記録用紙50に対して適切な圧力で当接している。この給紙ローラ25が回転することによって、給紙トレイ20から搬送路23へ記録用紙が供給される。静止中の給紙ローラ25が加速度α1で加速されてから速度V1で回転されることにより、給紙トレイ20上の最上位置の記録用紙が給紙トレイ20から搬送路23へ送り込まれる。給紙ローラ25による給送が失敗した後に記録用紙を再給送する場合は、給紙ローラ25が加速度α1よりも大きい加速度α2で加速される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動可能なアームの先端に設けられたローラをシートに当接させた状態で回転させることによって当該シートを搬送するシート搬送装置、及びこのシート搬送装置が搭載された画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタなどの画像記録装置は、給紙トレイに収容されている記録用紙をローラの回転力によって搬送路へ供給するシート搬送装置を備えている。ローラが給紙トレイ上の記録用紙に当接した状態で回転することにより、ローラの回転力が記録用紙に伝達され、給紙トレイから搬送路へ記録用紙が繰り出される。この種のシート搬送装置では、ローラの摩耗やローラに付着した汚れなどが原因で、給紙トレイ上の記録用紙に対してローラがスリップし、それが原因で給紙トレイから搬送路へ記録用紙が供給されないといった給紙エラーが生じることがある。このような給紙エラーの発生を防止する技術が、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の給紙装置は、給紙トレイから搬送路へ記録用紙を供給するピックアップローラを備えている。ピックアップローラは、その断面形状が円形の一部を直線によって切り欠いたような半月状に形成されている。ピックアップローラは、給紙トレイの上側に回転可能に配置されている。給紙トレイの内部にはスプリングによって上方に付勢されてる回転板が設けられている。この回転板に記録用紙が載置されている。記録用紙の給紙動作が開始されると、モータからの駆動力がピックアップローラに伝達され、ピックアップローラが回転する。ピックアップローラの円弧部分が回転軸の下側に位置する際にピックアップローラが給紙トレイ上の記録用紙に圧接される。そして、ピックアップローラの回転力が給紙トレイ上の最上位置の記録用紙に伝達される。これにより、給紙トレイから搬送路へ記録用紙が供給される。搬送路の所定位置には、記録用紙の有無を検知するためのセンサが配置されている。この給紙装置では、ピックアップローラによる給紙動作が開始されてから所定時間を経過するまでに記録用紙がセンサによって検知されなかった場合に、記録用紙に対してピックアップローラがスリップして記録用紙の給紙エラーが発生したと判断される。そして、記録用紙の再給紙動作が実行される。具体的には、給紙エラーが発生する前よりも遅い回転速度でピックアップローラが回転される。これにより、給紙トレイ上の記録用紙に対するピックアップローラの周面の接触時間が長くなり、ピックアップローラが記録用紙を繰り出す力が大きくなる。その結果、給紙トレイから記録用紙を繰り出すことができる確率が上がり、再給紙動作において給紙エラーが発生することが防止される。
【0004】
また、特許文献2には、給紙エラー発生後の記録用紙の再給紙動作において、ローラを回転させるパルスモータの回転速度を変更することが記載されている。特許文献2の第1実施例の記録装置では、ローラのスリップなどに起因する給紙エラーが繰り返し発生しないようにすることを目的として、給紙エラー後の再給紙動作(リトライ)が行われる際に、パルスモータの回転速度が通常よりも小さく設定される。一方、特許文献2の第2実施例の記録装置では、給紙動作が開始されてから記録用紙に対する画像記録が完了するまでの時間をできるだけ短くすることを目的として、再給紙動作(リトライ)が行われる際に、上記第1実施例とは反対に、パルスモータの回転速度が通常よりも大きく設定される。
【0005】
【特許文献1】特開2003−312867号公報
【特許文献2】特開平8−169632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、給紙トレイに対して接離する方向へ回動可能なアームの先端側にローラが回転可能に設けられているシート搬送装置において、再給紙動作の際にローラの回転速度を通常よりも小さくすると、ローラの垂直抗力が低下する。そのため、記録用紙とローラとの最大静止摩擦力が低下して、記録用紙に対してローラが食い付きにくくなる。したがって、当該シート搬送装置では、再給紙動作の際にローラの回転速度を通常よりも小さくすると、却ってローラがスリップし易くなり、給紙エラーが再発するという問題が生じる。一方、当該シート搬送装置において、仮に、再給紙動作の際にローラの回転速度を通常よりも大きくしたとしても、設定速度に到達するまでの加速度が同じであれば、記録用紙に対してローラがスリップすることになる。一旦、記録用紙に対してローラがスリップすると、たとえローラが通常速度よりも大きい速度に到達しても、ローラと記録用紙との間に生じる摩擦力は最大静止摩擦力よりも小さい動摩擦力であるため、ローラが記録用紙に食い付くことなない。そのため、再給紙動作の際にローラの回転速度を通常よりも大きくしても、記録用紙に対してローラがスリップするため、給紙エラーが再発するという問題が生じる。なお、上記各問題は、上記アームでローラが支持される機構を有する自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)やこの自動原稿搬送装置を備えた画像読取装置(スキャナ)においても同様に生じ得る。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、回動可能なアームの先端側に回転可能に設けられたローラによりシートを搬送するシート搬送装置において、シートの給送に失敗した後の再給送動作時における給送エラーの再発を防止できる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 上記目的を達成するため、本発明は、載置部と、アームと、ローラと、制御手段と、判定手段とを備えたシート搬送装置として構成されている。載置部は、少なくとも一のシートが載置されるものである。アームは、上記載置部の上方に配置されている。このアームは、上記載置部と接離する方向へ回動可能に構成されている。ローラは、上記アームの先端側に回転可能に設けられている。このローラは、上記載置部から搬送路へシートを供給するものである。制御手段は、静止状態にある上記ローラを加速させてから予め設定された目標速度で上記ローラを回転させる。判定手段は、上記制御手段による制御中に上記ローラが上記載置部上のシートの給送に失敗したか否かを判定するものである。この判定手段は、例えば、搬送路などに設けられたセンサの出力信号などに基づいてシートの給送に失敗したかどうかを判定する。本発明のシート搬送装置においては、上記制御手段は、上記ローラがシートの給送に失敗したと上記判定手段によって判定されるまでは、上記ローラを第1加速度で加速させる第1制御モードで上記ローラの回転を制御する。そして、上記ローラがシートの給送に失敗したと上記判定手段によって判定されたことを条件に上記ローラを上記第1加速度よりも大きい第2加速度で加速させる第2制御モードで上記ローラの回転を制御する。
【0009】
アームは、例えばシート搬送装置のフレームに回動可能に設けられている。ローラは、このアームの先端側に回転可能に支持されている。アームは、自重によって或いはバネ等による弾性力を受けて載置部側へ付勢されている。このため、ローラは、載置部における最上位置のシートに適切な圧力で当接する。制御手段は、ローラに連結されたモータ等を駆動させることにより、ローラの回転を制御する。制御手段によってローラが回転されると、載置部に載置された最上位置のシートは、このローラの回転力を受けて載置部から送り出され、搬送路へ供給される。
【0010】
上記ローラがシートの給送に失敗したと上記判定手段によって判定されるまでは、上記制御手段は、上記ローラを第1加速度で加速させる第1制御モードで制御する。そして、上記ローラがシートの給送に失敗したと上記判定手段によって判定されたことを条件に、上記制御手段は、上記ローラを上記第1加速度よりも大きい第2加速度で加速させる第2制御モードで制御する。
【0011】
これにより、第1制御モードでローラが制御される場合に比べて、第2制御モードでローラが制御される場合の方が、ローラの加速度が大きいため、ローラと上記最上位置のシートとの静止摩擦力が大きくなる。そのため、第1制御モードによるローラの回転制御では、ローラの加速が不足したために上記最上位置のシートに対して食い付きが悪くなり、シートに対してローラがスリップするなどして給送が失敗したとしても、第2制御モードによるローラの回転制御では、ローラの加速度が大きくなるため、上記最上位置のシートに対するローラの食い付きが良くなり、ローラがスリップするという不具合が解消される。
【0012】
(2) 上記制御手段は、上記ローラの加速制御が開始されてから予め設定された設定時間経過後に上記ローラを上記目標速度まで加速させるものである。この場合、当該制御手段は、上記目標速度の設定値を第1速度から該第1速度よりも大きい第2速度に変更することにより、上記第1制御モードから上記第2制御モードに切り換える。
【0013】
このように構成されているため、目標速度の設定値を変更するという簡単な手法で制御手段による制御を第1制御モードから第2制御モードに変更することができる。また、第1制御モード及び第2制御モードのいずれの制御モードであっても、ローラの加速に要する時間として一定の上記設定時間が確保される。つまり、いずれの制御モードであっても、ローラがシートに食い付こうとする一定の時間が確保される。
【0014】
(3) 上記制御手段は、上記ローラの加速制御が開始されてから予め設定された設定時間経過後に上記ローラを上記目標速度まで加速させるものであり、上記設定時間の設定値を第1設定時間から該第1設定時間よりも短い第2設定時間に変更することにより、上記第1制御モードから上記第2制御モードに切り換えるものであってもよい。
【0015】
このように構成されているため、設定時間の設定値を変更するという簡単な手法で制御手段による制御を第1制御モードから第2制御モードに変更することができる。また、第1制御モード及び第2制御モードのいずれの制御モードであっても、一定の目標速度でローラを制御することが可能である。また、第2制御モードでは、加速度が大きくなり、シートに対する食い付きが向上するとともに、目標速度に到達するまでの時間を短縮することができる。
【0016】
(4) 本発明のシート搬送装置は、上記載置部に載置されるシートの種類を認識する認識手段を備える。この場合、上記制御手段は、上記ローラがシートの給送に失敗したと上記判定手段によって判定され且つ上記載置部のシートが上記認識手段によって所定厚さの第1シートであると認識されたことを条件に上記ローラを上記第2制御モードで上記ローラの回転を制御する。そして、上記ローラがシートの給送に失敗したと上記判定手段によって判定され且つ上記載置部のシートが上記認識手段によって上記第1シートよりも厚い第2シートであると認識されたことを条件に上記ローラを上記第2加速度よりも大きい第3加速度で加速させる第3制御モードで上記ローラの回転を制御する。
【0017】
シートに対してローラが食い付こうとする力(以下「食付力」という。)は、シートの種類のよって異なる。例えば、シートがトレーシングペーパーの如く極めて薄い場合は、上記食付力を上げるために加速度を大きくし過ぎるとシートがローラから受ける回転力によって傷付けられるおそれがある。一方、光沢紙などのように比較的厚いシートの場合は、多少加速度を大きくしてもシートがローラから受ける回転力によって傷付けられることはない。したがって、本発明のシート搬送装置では、シートの給送が失敗した後に、第2シートよりも薄い第1シートを再び給送する場合は、第1シートに適した加速度(例えば第2加速度)に設定された第2制御モードでローラが制御され、第1シートよりも厚い第2シートを再び給送する場合は、第2シートに適した加速度(例えば第3加速度)に設定された第3制御モードでローラが制御される。これにより、シートは、その種類に最適な加速度で給送される。
【0018】
(5) 本発明のシート搬送装置は、上記搬送路の所定位置におけるシートの存在を検知する検知手段と、上記制御手段によって上記ローラの加速制御が開始されてからの経過時間を計時する計時手段と、を備える。この場合、上記判定手段は、上記検知手段によってシートの存在が検知されることなく上記計時手段によって計時された経過時間が所定の閾値以上になったことを条件に、上記ローラがシートの給送に失敗したと判定する。
【0019】
ローラがシートの給送に失敗しなかった場合、ローラが回転し始めてから該シートの先端が検知手段によって検知されるまでの時間は、概ね一定である。上記閾値は、シートの給送に成功した場合に上記検知手段によってシートの先端が検知されるまでに要する時間よりも長く設定されている。ローラがシートに対してスリップするなどしてシートの給送に失敗した場合は、検知手段に検知されるまでに要する時間は上記閾値を超える。したがって、上記計時手段により計時された経過時間が上記閾値以上であるかどうかを判断することによって、上記ローラがシートの給送に失敗したかどうかを判定することができる。
【0020】
(6) 本発明のシート搬送装置は、上記載置部に載置されているシートよりも該シートの搬送方向の下流側に設けられ、該載置部に積載されているシートを分離する分離部材を備える。上記制御手段は、上記載置部上のシートの上記下流側の端部が上記分離部材を通過するまでは上記目標速度を第1目標速度に設定して上記ローラを回転させ、上記下流側の端部が上記分離部材を通過した後に上記目標速度を上記第1目標速度よりも大きい第2目標速度に設定して上記ローラを回転させる第4制御モードで上記ローラの回転を制御することが好ましい。
【0021】
載置部における最上位置のシートの先端が分離部材を通過すると、分離部材によってシートの先端が捌かれて、最上位置のシートとその直下のシートとが分離している。したがって、最上位置のシートがその直下のシートから受ける摩擦力は、シートの先端が分離部材を通過する前の状態に比べて低下している。そのため、シートの先端が分離部材を通過した後は、分離部材以降の搬送路において適した搬送制御を行えばよい。上述したように、シートの先端が分離部材を通過した後はシートに付加される摩擦力が低下する。そのため、シートに対するローラの食付力を抑制し、代わりにシートの給送速度を大きくしてシート搬送に要する時間を短縮させることが好ましい。本シート搬送装置では、上記制御手段は、上述の如く第4制御モードで上記ローラの回転を制御する。したがって、シートの先端が分離部材を通過した後は、第1目標速度よりも大きい第2目標速度となるようにローラが回転される。これにより、分離部材を通過した後のシートの搬送速度が上がり、シートの搬送に要する時間が短縮される。
【0022】
(7) また、本発明に係る画像記録装置は、上述したシート搬送装置と、上記ローラによって上記搬送路へ供給されたシートに画像を記録する記録手段と、を備える。このような画像記録装置であっても、上述したシート搬送装置と同様の効果が奏される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、回動可能なアームの先端側に回転可能に設けられたローラによりシートを搬送するシート搬送装置において、シートの給送に失敗した後の再給送動作時における給送エラーの再発を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、適宜図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更され得る。
【0025】
[図面の説明]
図1は、本発明の実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。図2は、プリンタ部11の内部構造を示す模式図である。図3は、制御部100の構成を例示するブロック図である。図4〜図6は、プリンタ部11において記録用紙を給送する際に制御部100によって行われる回転制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。図7及び図8は、給紙ローラ25の回転速度の変化を例示するグラフである。図9は、本実施形態の変形例における給紙ローラ25の加速時の回転速度の変化を例示するグラフである。なお、図2においては、給紙トレイ20の一部及び排紙トレイ21の一部が省略されている。
【0026】
[複合機10の概略構成]
図1に示されるように、複合機10は、高さ方向121よりも幅方向122及び奥行き方向123に長い幅広薄型の概ね直方体形状に構成されている。複合機10は、プリンタ部11とスキャナ部12とを一体的に備え、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。プリンタ部11が本発明に係る画像記録装置に相当する。なお、複合機10は、必ずしもスキャナ部12を有している必要はなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明に係る画像記録装置が実施されてもよい。
【0027】
複合機10の下部にプリンタ部11が設けられている。プリンタ部11は、主にコンピュータなどの外部情報機器(不図示)と接続されている。プリンタ部11は、外部情報機器から受信した記録データやスキャナ部12で読み取られた原稿の画像データを基に生成された記録データに基づいて、記録用紙50(本発明のシートの一例、図2参照)に画像を記録するものである。
【0028】
複合機10の上部にスキャナ部12が設けられている。スキャナ部12は、原稿台19に対して原稿カバー15が背面側の蝶番(不図示)を介して開閉可能に構成されている。原稿台19は、いわゆるフラットベッドスキャナとして機能するものである。図には示されていないが、原稿台19の上面にコンタクトガラスが設けられている。コンタクトガラスは、原稿が載置される透明な板状部材である。原稿台19の内部には、奥行き方向123へ延出されたラインセンサ(不図示)が配置されている。このラインセンサは、幅方向122へ往復移動が可能に構成されている。コンタクトガラスに載置された原稿は、このラインセンサによって画像が読み取られる。
【0029】
原稿カバー15は、複合機10の天板として機能するものである。原稿カバー15にはADF29が設けられている。ADF29は、原稿トレイ30に載置された原稿を搬送パス(不図示)を経て原稿排出トレイ31へ搬送するものである。ADF29による原稿の搬送過程において、原稿がコンタクトガラス(不図示)上を通過する。その際、コンタクトガラスの下方に配置された上記ラインセンサによって原稿の画像が読み取られる。画像が読み取られた原稿は、原稿排出トレイ31にその両側が担持され、原稿トレイ30上の原稿と分離した状態で保持される。
【0030】
図1に示されるように、プリンタ部11の内部に給紙カセット33が配置されている。給紙カセット33は、給紙トレイ20(本発明の載置部の一例)及び排紙トレイ21を備えている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、排紙トレイ21を給紙トレイ20の上側として上下二段に配置されている。プリンタ部11の正面側には、開口13が形成されている。給紙カセット33は、プリンタ部11に対して、この開口13を通じて挿抜される。給紙トレイ20には、画像記録に使用される記録用紙50(以下、単に「記録用紙」という。)が積載状態で収容される(図2参照)。給紙トレイ20内の記録用紙は、プリンタ部11の内部へ1枚ずつ供給される。この記録用紙は、プリンタ部11の内部に設けられた記録部24(本発明の記録手段の一例、図2参照)によって画像が記録された後に、排紙トレイ21上に排出される。
【0031】
複合機10の正面上部に操作パネル14が設けられている。操作パネル14には、各種情報を表示するディスプレイや情報の入力を受け付けるボタンが設けられている。複合機10は、操作パネル14から入力された指示情報に基づいて動作する。本実施形態では、給紙トレイ20に載置された記録用紙の種類情報が操作パネル14を介して入力可能となっている。入力された種類情報は、後述する制御部100のRAM103に記憶される。なお、複合機10が外部情報機器と接続されている場合には、複合機10は、外部情報機器からプリンタドライバやスキャナドライバなどを通じて送信される指示情報などに基づいても動作する。もちろん、外部情報機器から上記種類情報が入力されてもよい。
【0032】
[プリンタ部11]
図2に示されるように、プリンタ部11は、大別して、給紙トレイ20、供給部32、搬送路23(本発明の搬送路の一例)、レジストセンサ71(本発明の検知手段の一部)、搬送ローラ対59、排出ローラ対64、及び排紙トレイ21を備えている。本実施形態では、給紙トレイ20、供給部32、搬送路23、レジストセンサ71、搬送ローラ対59、排出ローラ対64、及び後述する制御部100(図3参照)によって本発明のシート搬送装置が構成されている。
【0033】
[給紙トレイ20]
給紙トレイ20は、その内部に定形サイズの矩形の記録用紙が載置される。給紙トレイ20は、例えばA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙を収容可能である。給紙トレイ20に収容される記録用紙の種類としては、普通紙(本発明の第1シートの一例)、光沢紙(本発明の第2シートの一例)、インクジェット紙(本発明の第2シートの一例)などが挙げられる。なお、本発明の第1シート及び第2シートは、第2シートが第1シートよりも厚ければ前述のものに限定されない。例えば、本発明の第1シートがインクジェット紙であり、本発明の第2シートがインクジェット紙よりも厚い光沢紙であってもよい。
【0034】
排紙トレイ21は、給紙トレイ20に比べて奥行き方向123に短い板状のものである。この排紙トレイ21は、複合機10の正面側に設けられている。このため、給紙トレイ20は、複合機10の正面側が排紙トレイ21で覆われており、複合機10の背面側の一部が開口されている。この給紙トレイ21の開口部分に、後述する供給部32が配置されている。
【0035】
搬送路23は、給紙トレイ20から供給された記録用紙が搬送される経路である。図2に示されるように、搬送路23は、後述する傾斜板22から上方へ向かった後、複合機10の正面側へと曲げられ、記録部24を経て排紙トレイ21まで直線的に延設されている。なお、搬送路23は、記録部24が配置されている箇所以外は、所定間隔で対向するガイド部材(不図示)によって区画されている。
【0036】
搬送路23は、第1区間L1、第2区間L2、及び第3区間L3の3つの区間に分けることができる。第1区間L1は、給紙トレイ20の傾斜板22から該傾斜板22の直上に設定された位置P0までの範囲である。第2区間L2は、位置P0からレジストセンサ71が配置された位置P1までの範囲である。第3区間L3は、位置P1から搬送ローラ対59までの範囲である。なお、位置P0は、記録用紙の先端45が後述する分離片35(本発明の分離部材の一例)によってその下層の記録用紙から確実に分離されているであろうと推測される位置である。この位置P0は、例えば、給紙ローラ25による記録用紙の給送動作を繰り返し実験することにより同定することが可能である。また、位置P1は、搬送ローラ対59よりも搬送方向の上流側に設定された位置である。この位置P1は、搬送ローラ対59に近接した位置に配置されている。
【0037】
傾斜板22は、給紙トレイ20の奥側(図2における右側)に設けられている。傾斜板22は、装置背面側(図2における右側)へ倒れるように傾斜している。給紙トレイ20がプリンタ部11に装着されると、傾斜板22が搬送路23の下方に配置される。換言すれば、傾斜板22は、給紙トレイ20に載置されている記録用紙と、搬送路23との間に配置される。すなわち、傾斜板22は、給紙トレイ20上の記録用紙よりも、該記録用紙の搬送方向の下流側に設けられている。この傾斜板22には、後述する給紙ローラ25(本発明のローラの一例)と協働して記録用紙を1枚ずつ分離する分離片35が配設されている。分離片35は、傾斜板22の内面から突出する複数の歯からなり、傾斜板22の内面において搬送方向に沿って縦並びに配置されている。後述する給紙ローラ25によって重送された記録用紙の束が分離片35に当接すると、分離片35によって記録用紙が捌かれる。これにより、記録用紙が分離される。
【0038】
[アーム26、給紙ローラ25]
供給部32は、給紙トレイ20の上側に配置されている。供給部32は、給紙トレイ20から搬送路23へ記録用紙を供給するものである。この供給部32は、給紙ローラ25、アーム26(本発明のアームの一例)、及び軸28を備えている。軸28は、給紙トレイ20の上側において、プリンタ部11のフレーム(不図示)に支持されている。アーム26の基端部は、この軸28に回転可能に支持されている。このため、アーム26は、軸28を中心として給紙トレイ20と接離する方向へ回動可能である。給紙ローラ25は、このアーム26の先端側に回転可能に設けられている。アーム26は、自重によって或いはバネ等による弾性力を受けて給紙トレイ20側へ回動付勢されている。このため、給紙カセット33がプリンタ部11に装着された状態では、給紙ローラ25が給紙トレイ20における最上位置の記録用紙に適切な圧力で当接する。
【0039】
アーム26には、ASF(Auto Sheet Feed)モータ84(図3参照)の駆動力を給紙ローラ25へ伝達するための動力伝達機構(不図示)が設けられている。ASFモータ84が後述する制御部100(図3参照)によって駆動制御されることによって回転され、その駆動力が軸28、及びアーム26の動力伝達機構を介して給紙ローラ25に伝達される。これにより、給紙ローラ25が制御部100の回転制御に応じた回転数で回転する。なお、本実施形態では、搬送路23における記録用紙の先端45の位置に応じて、給紙ローラ25の回転速度(回転数)が異なるように、給紙ローラ25の回転が制御部100によって制御される。かかる制御の詳細については後段で詳述するが、給紙ローラ25は、記録用紙の先端45が第1区間L1にあるときに速度V1、V3又はV4で回転され、記録用紙の先端45が第2区間L2にあるときは速度V2又V5で回転され、記録用紙の先端45が第3区間L3に有るときは速度V2又はV6で回転される。
【0040】
給紙ローラ25が回転すると、給紙ローラ25のローラ面と給紙トレイ20上の最上位置の記録用紙との摩擦力によって、最上位置の記録用紙が傾斜板22へ向けて送り出される。記録用紙は、その先端45が傾斜板22に当接して上方へ、つまり搬送路23側へ案内される。このように、給紙ローラ25の回転力によって給紙トレイ20から搬送路23へ記録用紙が供給される。最上位置の記録用紙が給紙トレイ20から搬送路23へ供給される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって最上位置の記録用紙と共に送り出される場合がある。しかし、重送された複数の記録用紙の先端45が傾斜板22に当接すると、搬送方向へ進もうとする搬送力と相俟って、記録用紙が分離片35によって分離される。このように、分離片35は、給紙ローラ25と協働して、給紙トレイ20に積載されている記録用紙を分離して、最上位置の記録用紙のみを搬送路23へ案内する。
【0041】
図2に示されるように、搬送ローラ対59と排出ローラ対64との間にプラテン42が設けられている。このプラテン42は、搬送路23の下側に設けられており、搬送路23に沿って搬送される記録用紙を下から支持する。記録部24は、このプラテン42の上側に設けられている。記録部24は、プラテン42と所定間隔を隔てて対向配置されている。記録部24は、インクジェット記録方式の記録ヘッド39と、この記録ヘッド39を搭載するキャリッジ38とを備えている。キャリッジ38は、複合機10の幅方向122(図2の紙面に垂直な方向)へ往復移動が可能に構成されている。記録ヘッド39は、そのノズルがキャリッジ38の底面から下方へ露出されている。
【0042】
プリンタ部11の内部に配置されたインクカートリッジ(不図示)から記録ヘッド39に対してインクが供給される。キャリッジ38が移動される間に、記録ヘッド39のノズルから微小なインク滴がプラテン42へ向けて選択的に噴出される。これにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像が記録される。
【0043】
搬送ローラ対59は、搬送路23における記録部24よりも記録用紙の搬送方向(以下、単に「搬送方向」ともいう。)の上流側に設けられている。搬送ローラ対59は、搬送ローラ60及びピンチローラ61からなる。搬送ローラ60は、搬送路23の上側に回転可能に配置されている。搬送ローラ60は、LF(Line Feed)モータ85(図3参照)の駆動力を受けて回転する。ピンチローラ61は、搬送ローラ60の下側に回転自在に配置されており、搬送ローラ60へ向けてバネによって付勢されている。
【0044】
排出ローラ対64は、記録部24よりも搬送方向の下流側に設けられている。排出ローラ対64は、排紙ローラ62及び拍車63からなる。排紙ローラ62は、搬送路23の下側に回転可能に配置されている。排紙ローラ62は、LFモータ85の駆動力を受けて回転する。拍車63は、排紙ローラ62の上側に回転自在に配置されており、排紙ローラ62へ向けてバネによって付勢されている。
【0045】
搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、LFモータ85から伝達される駆動力によって同期回転する。このため、排紙ローラ62及び拍車63は、搬送ローラ60及びピンチローラ61と同時に回転する。搬送路23に供給された記録用紙は、給紙ローラ25の回転力を受けて搬送ローラ60とピンチローラ61との間に送り込まれる。この記録用紙は、搬送ローラ60とピンチローラ61とに挟持された状態で、搬送ローラ60の回転力を受けてプラテン42上へ送られる。記録用紙は、プラテン42上を通過する際に、記録部24によって画像記録される。記録用紙の先端45が排紙ローラ62及び拍車63の間に到達すると、その記録用紙は、排紙ローラ62と拍車63とに挟持された状態で、排紙ローラ62の回転力を受けて排紙トレイ21の上方へ送り出される。
【0046】
レジストセンサ71は、搬送ローラ対59よりも搬送方向の上流側に設定された位置P1に設けられている。レジストセンサ71は、この位置P1において、記録用紙の存在を検知するためのものである。詳細には、給紙トレイ20から搬送路23へ供給された記録用紙の先端45を位置P1において検知するためのものである。本実施形態では、レジストセンサ71は、所謂メカニカルセンサとして構成されている。具体的には、レジストセンサ71は、フォトインタラプタと、回動可能に軸支されたフィーラ(検出子)とにより構成されている。フォトインタラプタは、受光部へ向けて光を出射する発光部、及び発光部から出射された光を受光する受光部を有する。受光部で光が受光されると、受光した光の輝度に応じたレベルのセンサ信号(例えば、輝度に応じた電気信号)が生成される。給紙トレイ20から搬送路23へ供給された記録用紙が位置P1に到達すると、記録用紙がフィーラに当接して、フィーラが回動される。これにより、レジストセンサ71で生成されるセンサ信号のレベルが変化する。レジストセンサ71で生成されたセンサ信号は、制御部100(図3参照)へ出力される。制御部100では、上記センサ信号の信号レベルの変化に基づいて、位置P1における記録用紙の存在が検知される。
【0047】
[制御部100]
制御部100は、複合機10の全体動作を統括的に制御するものである。図3に示されるように、制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、EEPROM104、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)109を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。制御部100により、ASFモータ84,LFモータ85、プリンタ部11、及びスキャナ部12の各駆動機器などが制御される。本実施形態では、この制御部100によって本発明の制御手段、判定手段、認識手段及び計時手段が具体的に実現される。
【0048】
ROM102には、CPU101が複合機10を制御するためのプログラムや、時間をカウント(計時)するためのソフトカウンタなどが格納されている。また、ASFモータ84を回転駆動させるためのドライバプログラムもROM102に格納されている。制御部100のCPU101が上記ドライバプログラムをROM102から読み出して実行することにより、後述するフローチャートに沿った手順にしたがってASFモータ84の駆動制御、及び給紙ローラ25の回転制御が行われる。
【0049】
また、ROM102には、上記プログラムの実行時に使用される種々の情報が記憶されている。本実施形態では、上記ドライバプログラムの実行時に必要な速度情報(速度V1〜V6)や閾値情報(閾値T、第1設定量、第2設定量等)などがROM102に記憶されてる。速度情報としては、記録用紙の先端45が第1区間L1に位置している間の給紙ローラ25の回転速度として、速度V1、速度V3、及び速度V4がROM102に格納されている。なお、速度V1は、本発明の第1速度に相当する。また、速度V3は、本発明の第2速度に相当する。また、記録用紙の先端45が第2区間L2に位置している間の給紙ローラ25の回転速度として、速度V2及び速度V5がROM102に格納されている。
【0050】
また、ROM102には、予め所定の時間に設定された設定時間Xが記憶されている。この設定時間Xは、静止状態の給紙ローラ25の回転速度を所定の目標速度まで加速させるための時間であり、後述する給紙ローラ25の回転制御に用いられる。
【0051】
RAM103は、CPU101が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又はデータ処理などの作業領域として使用される。また、上記プログラムの実行時に参照される設定値を記録する領域としても使用される。上記ソフトカウンタによってカウントされたカウント値Cを記憶する領域としても使用される。EEPROM104には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0052】
ASIC109には、駆動回路80、ロータリーエンコーダ83、レジストセンサ71、及び駆動回路81が接続されている。本実施形態では、駆動回路80及び制御部100によって本発明の制御手段が具体的に実現されている。なお、図3では省略されているが、ASIC109には、記録ヘッド39を制御するヘッド制御回路、操作パネル14、スキャナ部12なども接続されている。
【0053】
駆動回路80は、ASFモータ84を駆動させるものである。この駆動回路80は、ASIC109及びASFモータ84と接続されている。ASIC109は、CPU101からの指令に従い、ASFモータ84に通電するための駆動信号としてのPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成して駆動回路80へ出力する。駆動回路80は、ASIC109から入力された駆動信号のデューティ比に応じた電流をASFモータ84へ出力する。上記デューティ比とは、駆動信号(PWM信号)における周期時間に占めるON時間の割合のことをいう。このように、駆動回路80を介して駆動信号がASFモータ84に通電されることにより、制御部100によるASFモータ84の駆動が制御される。
【0054】
ロータリーエンコーダ83は、ASFモータ84の回転量を検出するものである。このロータリーエンコーダ83は、不図示の回転ディスク及び光センサを備えている。回転ディスクは、放射状のマークが周方向に所定ピッチで記された円盤状のものである。回転ディスクは、ASFモータ84の回転軸に固定されており、ASFモータ84の回転軸と一体に回転する。光センサは、発光素子及び受光素子が所定の間隔を隔てて対向配置されたものである。この光センサは、発光素子と受光素子との間の空間に回転ディスクの周縁が位置するように配置されている。
【0055】
ロータリーエンコーダ83は、回転ディスクのマークを光センサの検知結果に基づいてカウントすることにより、回転ディスクの回転量を検出する。光センサによって回転ディスクのマークが検知される毎に、光センサからパルス信号が出力される。ロータリーエンコーダ83は、この光センサから出力されるパルス信号をカウントすることによって、ASFモータ84の回転量を検出する。ロータリーエンコーダ83によって検出されたASFモータ84の回転量は、制御部100へ出力される。制御部100は、このロータリーエンコーダ83によって検出された回転量に基づいて、記録用紙の搬送量を判断することができる。また、制御部100は、単位時間にロータリーエンコーダ83から出力される回転量に基づいて、ASFモータ84の回転速度を求めることができる。制御部100は、このようにして求めた回転速度に応じて駆動回路80へ付与する駆動信号を変化させることによって、ASFモータ84の回転速度、つまり給紙ローラ25の回転速度を制御する。
【0056】
制御部100は、レジストセンサ71から出力されるセンサ信号に基づいて、位置P1(図2参照)における記録用紙の有無(存在)を検知する。言い換えると、制御部100は、レジストセンサ71から出力されるセンサ信号に基づいて、給紙トレイ20から供給された記録用紙の先端45が位置P1に到達したか否かを判断する。本実施形態では、レジストセンサ71及び制御部100によって本発明の検知手段が具体的に実現されている。
【0057】
駆動回路81は、LFモータ85を駆動させるものである。ASIC109は、CPU101からの指令に従い、LFモータ85に通電するための駆動信号としてのPWM信号を生成して駆動回路81へ出力する。駆動回路81は、ASIC109から入力された駆動信号のデューティ比に応じた電流をLFモータ85へ出力する。このように、駆動回路81を介して駆動信号がLFモータ85に通電されることにより、LFモータ85の駆動が制御される。LFモータ85には、不図示の駆動伝達機構を介して搬送ローラ60(図2参照)の軸及び排紙ローラ62(図2参照)の軸が連結されている。このLFモータ85の駆動力は、駆動伝達機構を介して搬送ローラ60の軸と排紙ローラ62の軸との両方へ伝達される。これにより、搬送ローラ60及び排紙ローラ62が同期回転する。
【0058】
なお、プリンタ部11には、搬送ローラ60の回転量を検出するためのロータリーエンコーダ(不図示)が設けられている。このロータリーエンコーダは、ロータリーエンコーダ83と同様に、回転ディスク及び光センサを備えるものである。この回転ディスクは、搬送ローラ60の軸に固定されており、搬送ローラ60と一体に回転する。光センサは、この回転ディスクの周縁を所定の間隔を隔てて対向配置された発光素子及び受光素子で挟むように配置されている。制御部100は、このロータリーエンコーダの検出結果に基づいて、LFモータ85の駆動を制御する。
【0059】
[給紙ローラ25の回転制御]
以下、図4〜図6のフローチャートを参照して、プリンタ部11において記録用紙を給送する際に、制御部100によって行われる給紙ローラ25の回転制御の処理手順の一例について説明する。なお、図4〜図6のフローチャートに基づいて説明する各処理は、ROM102に記憶されているプログラムにしたがって制御部100によって実行される。当該回転制御は、ステップS1から開始される。
【0060】
まず、ステップSにおいて、制御部100は、記録開始命令が入力されたか否かを判断する。具体的には、制御部100は、外部装置から記録開始を指示するコマンド及び記録データを受信したか否かを判断する。なお、操作パネル14から記録開始を指示する操作入力が行われた場合は、上記操作入力時に生成された指示信号の有無に基づいて記録開始命令が入力されたかどうかが判断される。ここで、記録開始命令が入力されていないと制御部100が判断した場合(S1:NO)、待機状態となる。一方、制御部100は、記録開始命令が入力されたと判断した場合(S1:YES)、RAM103内に記憶されたカウント値Cをリセットする(S2)。具体的には、制御部100は、カウント値Cを記憶する領域としてRAM103に確保された記憶領域を消去する。
【0061】
次に、制御部100は、ROM102内のソフトカウンタを起動して時間のカウントを開始する(S3)。このステップS3の処理は、給紙ローラ25が回転され始めてからの経過時間をカウントするために行われる。ステップS3の処理は、給紙ローラ25が起動されるのとほぼ同時に行われる。すなわち、制御部100は、ステップS3の処理を実行することによって、給紙ローラ25が回転され始めてからの経過時間をカウントすることができる。
【0062】
制御部100は、ステップS3の処理とほぼ同時に、静止中の給紙ローラ25を速度V1で回転させるようにASFモータ84を駆動させる(S4)。具体的には、制御部100は、ROM102から速度V1及び設定時間Xを読み出す。読み出された速度V1及び設定時間Xは、RAM103内の設定値記憶領域に格納される。そして、CPU101によってドライバプログラムが起動されると、上記設定値記憶領域内の設定情報(速度V1及び設定時間X)に基づいてASFモータ84を駆動制御する。このステップS4では、制御部100は、停止中のASFモータ84の回転速度を上昇させ、ASFモータ84の駆動開始から設定時間Xを経過したときに給紙ローラ25の回転速度が速度V1となるように、ロータリーエンコーダ83の検出結果に基づいて駆動回路80に付与する駆動信号を制御する。このようにASFモータ84の駆動が制御されることにより、図7に示されるように、静止状態にある給紙ローラ25が加速度α1(=V1/X)で加速され、設定時間X後には給紙ローラ25の回転速度が速度V1に達し、その後、速度V1で等速回転する。なお、上記加速度α1が本発明の第1加速度に相当する。このように、給紙ローラ25を加速度α1で加速する制御が本発明の第1制御モードによる制御に相当する。
【0063】
本実施形態では、速度V1は、2[IPS(inch per second)]に設定されている。
【0064】
ステップS4の処理に続いて、制御部100は、ASFモータ84の回転量が第1設定量以上になったか否かを判断する(S5)。具体的には、制御部100は、ASFモータ84が回転し始めてからロータリーエンコーダ83によって検出されたASFモータ84の総回転量が、第1設定量以上になったか否かを判断する。この第1設定量は、本実施形態では、給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に失敗することなくASFモータ84が第1設定量だけ回転した場合に、少なくともその記録用紙の先端45が位置P0を通過して第1区間L1から第2区間L2へ進入しているように設定されている。すなわち、ステップS5の判断処理によって、記録用紙の先端45が第1区間L1から第2区間L2へ進入したか否かを判断することができる。ASFモータ84の回転量が第1設定量未満であると制御部100が判断した場合(S5:NO)、処理がステップS5へ戻される。なお、本実施形態では、給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に対してスリップした場合に、記録用紙の給送が失敗したと判断する。したがって、上記第1設定量は、給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に対してスリップすることなくASFモータ84が第1設定量だけ回転した場合に、少なくともその記録用紙の先端45が位置P0を通過して第1区間L1から第2区間L2へ進入しているように設定されている。
【0065】
制御部100は、ASFモータ84の回転量が第1設定量以上になったと判断した場合(S5:YES)、速度V1で回転中の給紙ローラ25を速度V2で回転させるべく、ASFモータ84を制御する(S6)。具体的には、制御部100は、ROM102から速度V2を読み出す。読み出された速度V2及び設定時間Xは、RAM103内の設定値記憶領域に格納される。言い換えれば、上記設定値記憶領域に格納された速度情報が速度V2に変更される。そして、制御部100はドライバプログラムにしたがって、上記設定値記録領域内の設定情報(速度V2及び設定時間X)に基づきASFモータ84を駆動制御する。このステップS6では、制御部100は、速度V1で回転中の給紙ローラ25の回転速度が速度V2となるように、ロータリーエンコーダ83の検出結果に基づいて駆動回路80に付与する駆動信号を制御する。ステップS6の処理が行われることにより、図7に示されるように、第2区間L2では、給紙ローラ25が速度V2で回転される。つまり、第1区間L1で速度V1(2[IPS])で回転していた給紙ローラ25の回転速度が、第2区間L2では速度V2に変更される。
【0066】
本実施形態では、速度V2は、速度V1よりも大きい速度に設定されている。具体的には、速度V2は6[IPS]に設定されている。給紙トレイ20における最上位置の記録用紙の先端45が傾斜板22を通過すると、最上位置の記録用紙がその直下の記録用紙から受ける摩擦力が低下することは上述した通りである。つまり、記録用紙が傾斜板22を通過すると、最上位置の記録用紙に対して給紙ローラ25がスリップしなくなり、記録用紙の給送エラーが生じ難くなる。したがって、本実施形態では、記録用紙の先端45が位置P0を通過して第2区間L2へ進入した後は、記録用紙の搬送時間を短縮させるべく、給紙ローラ25の回転速度を大きくしている。このように、記録用紙の先端45が第1区間L1から第2区間L2へ進入するまでは速度V1で給紙ローラ25を回転させ、記録用紙の先端45が第1区間L1から第2区間L2へ進した後に上記設定値記憶領域に格納された速度情報を速度V2に変更して速度V2で給紙ローラ25を回転させる制御(S4〜S6)が、本発明の第4制御モードによる制御に相当する。なお、このときの速度V1が本発明の第1目標速度に相当し、速度V2が本発明の第2目標速度に相当する。
【0067】
ステップS6の処理に続いて、制御部100は、カウント値Cが閾値T以上になったか否かを判断する(S7)。具体的には、制御部100は、ROM102に格納されている閾値Tを読み出し、カウント値Cと閾値Tとを比較することによって、カウント値Cが閾値T以上になったか否かを判断する。カウント値Cが閾値T以上になったと制御部100によって判断された場合(S7:YES)、処理が後述するステップS21へ進められる。
【0068】
制御部100は、カウント値Cが閾値T未満であると判断した場合(S7:NO)、レジストセンサ71から出力されるセンサ信号に基づいて、位置P1に記録用紙が存在するか否かを判断する(S8)。記録用紙が位置P1にまだ到達しておらず、位置P1に記録用紙が存在しないと制御部100が判断した場合(S8:NO)、処理がステップS7へ戻される。ここで、閾値Tは、給紙トレイ20における最上位置の記録用紙に対して給紙ローラ25がスリップすることなく最上位置の記録用紙が正常に供給された場合に、給紙ローラ25が回転し始めてから記録用紙の先端45がレジストセンサ71によって検知されるまでの時間Aよりも若干長く設定されている。このため、制御部100は、ステップS8で「NO」と判断し且つステップS7で「YES」と判断した場合に、給紙トレイ20上の記録用紙に対して給紙ローラ25がスリップしたと判定することができる。換言すれば、制御部100は、位置P1に記録用紙が存在していない状態で、カウント値Cが閾値T以上になったことを条件として、給紙トレイ20上の記録用紙に対して給紙ローラ25がスリップしたと判定することができる。このように閾値Tが設定されることによって、給紙ローラ25が最上位置の記録用紙に対してスリップしたかを簡単且つ確実に判定することができる。なお、時間Aは、例えば、傾斜板22から搬送路23における位置P1までの記録用紙の搬送経路の長さと、給紙ローラ25の外径寸法、給紙ローラ25の回転速度等に基づいて求められる。
【0069】
制御部100は、カウント値Cが閾値T未満であって(S7:NO)、且つ、位置P1において記録用紙が存在すると判断した場合(S8:YES)、記録用紙の先端45が第2区間L2から第3区間L3へ進入したと判断することができる。この場合、制御部100は、その記録用紙が第1シートであるか又は第2シートであるかを判断する(S9)。掛かる判断は、予め外部情報機器或いは操作パネル14から入力されて、RAM103に記憶された種類情報に基づいて行われる。記録用紙が第1シート(本実施形態では普通紙)であると制御部100が判断した場合(S9:第1シート)、給紙ローラ25の回転速度が速度V2に維持されたまま、処理がステップS11へ進められる。つまり、第3区間L3において、給紙ローラ25は、引き続き速度V2(6[IPS])で回転される(図7参照)。
【0070】
制御部100は、記録用紙が第2シート(本実施形態ではインクジェット紙又は光沢紙)であると判断した場合(S9:第2シート)、給紙ローラ25の回転速度を減速させる(S10)。具体的には、制御部100は、RAM103内の上記設定値記憶領域に格納された速度情報(速度V2)を速度V2よりも1[IPS]小さい速度に変更する。そして、制御部100は、上記設定値記憶領域の設定情報に基づいて駆動回路80に付与する駆動信号を制御することにより、ASFモータ84の回転速度が変更される。これにより、給紙ローラ25の回転速度が速度V2よりも1[IPS]小さい速度に変更する。本実施形態では、図7の破線で示されるように、第3区間L3において、給紙ローラ25の回転速度が速度V2(6[IPS])から5[IPS]に変更される。
【0071】
記録用紙が普通紙に比べて撓みにくいインクジェット紙や光沢紙である場合、記録用紙の先端45が第3区間L3に位置している間の給紙ローラ25の回転速度が速すぎると、記録用紙が搬送ローラ対59の圧接部分に勢い余って入り込み、記録用紙が静止中の搬送ローラ対59に挟持されるおそれがある。仮に、プリンタ部11において、搬送ローラ対59に到達した記録用紙の先端を静止中の搬送ローラ対59に当接させて記録用紙の先端を整えて斜行を正す処理(所謂「レジスト処理」と呼ばれる。)を行う場合は、上述のごとく記録用紙が搬送ローラ対59に挟持されると、記録用紙の先端が整えられなくなる。この状態で記録用紙が搬送ローラ対59によって搬送されると、斜行した記録用紙に画像記録が行われることになる。本実施形態では、上述のように、記録用紙が第2シートである場合に給紙ローラ25の回転速度を低下させることで、このような問題を防止している。
【0072】
制御部100は、ステップS9で「第1シート」と判断した後、又はステップS10の処理を行った後、記録用紙の先端45が位置P1を通過してからのASFモータ84の回転量が第2設定量以上になったか否かを判断する(S11)。ここで、第2設定量は、ASFモータ84を第2設定量だけ回転させた場合に給紙ローラ25が記録用紙を搬送する距離が、記録用紙の搬送経路において位置P1から搬送ローラ60とピンチローラ61との圧接位置までの距離よりも若干大きくなるような値に設定されている。このため、制御部100は、このステップS11の判断処理によって、記録用紙の先端45が搬送ローラ60とピンチローラ61との圧接位置に到達したか否かを判断することができる。ASFモータ84の回転量が第2設定量未満であると制御部100が判断した場合(S11:NO)、処理がステップS11へ戻される。
【0073】
制御部100は、ASFモータ84の回転量が第2設定量以上になったと判断した場合(S11:YES)、図5に示されるように、駆動回路80に付与する駆動信号を制御してASFモータ84を停止させる(S15)。続いて、制御部100は、搬送動作を実行する(S16)。具体的には、制御部100は、駆動回路81に付与する駆動信号を制御してLFモータ85を駆動させる。これにより、LFモータ85の駆動力が搬送ローラ60及び排紙ローラ62に伝達され、記録用紙が排紙トレイ21へ向けて搬送される。この記録用紙は、プラテン42上を通過する際に記録部24によって画像が記録される。
【0074】
制御部100は、記録用紙が搬送ローラ60又は排紙ローラ62の回転力を受けて排紙トレイ21へ排出されたか否かを判断する(S17)。具体的には、制御部100は、ステップS16の処理が開始されてからの搬送ローラ60の総回転量が所定量以上になったかを、ロータリーエンコーダ(不図示)の検出結果に基づいて判断する。記録用紙が排紙トレイ21へ排出されていない、すなわち搬送ローラ60の総回転量が所定量未満であると制御部100が判断した場合(S17:NO)、処理がステップS17へ戻される。
【0075】
制御部100は、記録用紙が排紙トレイ21へ排出されたと判断した場合、すなわち搬送ローラ60の総回転量が所定量以上になったと判断した場合(S17:YES)、次ページの記録データがあるか否かを判断する(S18)。すなわち、制御部100は、次ページの記録データがRAM103に格納されているか否かを判断する。次ページの記録データがあると制御部100が判断した場合(S18:YES)、処理がステップS2へ戻される。次ページの記録データがないと制御部100が判断した場合(S18:NO)、一連の処理が完了する。
【0076】
図4のステップS7において、制御部100は、カウント値Cが閾値T以上になったと判断した場合(S7:YES)、すなわち、給紙ローラ25がスリップしたと判定した場合、図6に示されるように、ASFモータ84を停止させる(S21)。このステップS21の処理は、制御部100が駆動回路80に付与する駆動信号を制御することによって行われる。
【0077】
次に、制御部100は、カウント値Cをリセットする(S22)。具体的には、制御部100は、カウント値Cを記憶する領域としてRAM103に確保された記憶領域を消去する。そして、制御部100は、記録用紙が第1シートであるか又は第2シートであるかを判断する(S23)。このステップS23の処理は、ステップS9の処理と同様に行われる。
【0078】
制御部100は、記録用紙が第1シートであると判断した場合(S23:第1シート)、静止中の給紙ローラ25を速度V3で回転させるようにASFモータ84を駆動させる(S24)。具体的には、制御部100は、ROM102から速度V3及び設定時間Xを読み出す。読み出された速度V3及び設定時間Xは、RAM103内の設定値記憶領域に格納される。言い換えれば、上記設定値記憶領域に格納された速度情報が速度V3に変更される。そして、制御部100はドライバプログラムにしたがって、上記設定値記録領域内の設定情報(速度V3及び設定時間X)に基づきASFモータ84を駆動制御する。このステップS24では、制御部100は、停止中のASFモータ84の回転速度を上昇させ、ASFモータ84の駆動開始から設定時間Xを経過したときに給紙ローラ25の回転速度が速度V3となるように、ロータリーエンコーダ83の検出結果に基づいて駆動回路80に付与する駆動信号を制御する。このようにASFモータ84の駆動が制御されることにより、図8に示されるように、静止状態にある給紙ローラ25が加速度α2(=V3/X)で加速され、設定時間X後には給紙ローラ25の回転速度が速度V3に達し、その後、速度V3で等速回転する。なお、上記加速度α2が本発明の第2加速度に相当する。このように、給紙ローラ25を加速度α2で加速する制御が本発明の第2制御モードによる制御に相当する。
【0079】
本実施形態では、速度V3は、速度V1よりも大きい速度に設定されている。具体的には、速度V3は5[IPS]に設定されている。
【0080】
このように、制御部100は、給紙ローラ25がスリップしたと判定し且つ搬送されるシートが第1シートであると判定したことを条件として、給紙ローラ25の回転速度を第1速度から第2速度に設定変更する。これにより、給紙ローラ25の起動時の加速度が加速度α1から加速度α2に変更される。
【0081】
制御部100は、記録用紙が第2シートであると判断した場合(S23:第2シート)、静止中の給紙ローラ25を速度V4で回転させるようにASFモータ84を駆動させる(S25)。具体的には、制御部100は、ROM102から速度V4及び設定時間Xを読み出す。読み出された速度V4及び設定時間Xは、RAM103内の設定値記憶領域に格納される。言い換えれば、上記設定値記憶領域に格納された速度情報が速度V4に変更される。そして、制御部100はドライバプログラムにしたがって、上記設定値記録領域内の設定情報(速度V4及び設定時間X)に基づきASFモータ84を駆動制御する。このステップS25では、制御部100は、停止中のASFモータ84の回転速度を上昇させ、ASFモータ84の駆動開始から設定時間Xを経過したときに給紙ローラ25の回転速度が速度V4となるように、ロータリーエンコーダ83の検出結果に基づいて駆動回路80に付与する駆動信号を制御する。このようにASFモータ84の駆動が制御されることにより、図8に示されるように、静止状態にある給紙ローラ25が加速度α3(=V4/X)で加速され、設定時間X後には給紙ローラ25の回転速度が速度V4に達し、その後、速度V4で等速回転する。なお、上記加速度α3が本発明の第3加速度に相当する。このように、給紙ローラ25を加速度α3で加速する制御が本発明の第3制御モードによる制御に相当する。
【0082】
本実施形態では、速度V4は、速度V1及び速度V3よりも大きい速度に設定されている。具体的には、速度V4は6[IPS]に設定されている。
【0083】
ここで、給紙トレイ20に載置されている記録用紙が第1シート(本実施形態では普通紙)である場合、給紙ローラ25の起動時の加速度が高すぎると、給紙トレイ20における最上位置の記録用紙が給紙ローラ25の回転力を受けて傷付けられるおそれがある。逆に、給紙トレイ20に載置されている記録用紙が第2シート(本実施形態ではインクジェット紙又は光沢紙)である場合、第2シートは、搬送路23へ供給される際に第1シートよりも大きな搬送抵抗を受ける。このため、給紙ローラ25の起動時の加速度が低すぎると、第2シートを搬送路23へ正常に供給できないおそれがある。このため、ステップS23〜ステップS25について説明したように、記録用紙が第2シートである場合の給紙ローラ25の加速度α3が、記録用紙が第1シートである場合の給紙ローラ25の加速度α2よりも大きくなるように、ASFモータ84の駆動が制御される。
【0084】
制御部100は、ステップS24又はステップS25の処理によってASFモータ84が起動されるとほぼ同時に、カウント値Cのカウントを開始する(S26)。そして、制御部100は、ASFモータ84の回転量が第1設定量以上になったか否かを判断する(S27)。ASFモータ84の回転量が第1設定量未満であると制御部100が判断した場合(S27:NO)、処理がステップS27へ戻される。制御部100は、ASFモータ84の回転量が第1設定量以上になったと判断した場合(S27:YES)、給紙ローラ25の回転速度が速度V5となるように、ASFモータ84を駆動させる(S28)。具体的には、制御部100は、ROM102から速度V5及び設定時間Xを読み出す。そして、上記設定値記憶領域に格納された速度情報を速度V5に変更する。その後、制御部100はドライバプログラムにしたがって、上記設定値記録領域内の設定情報(速度V5及び設定時間X)に基づきASFモータ84を駆動制御する。このステップS28では、制御部100は、給紙ローラ25の回転速度が速度V5となるように、ロータリーエンコーダ83の検出結果に基づいて駆動回路80に付与する駆動信号を制御する。このようにASFモータ84の駆動が制御されることにより、図8に示されるように、給紙ローラ25が速度V5で回転する。
【0085】
本実施形態では、速度V5は、速度V3と同じ速度、つまり、5[IPS]に設定されている。
【0086】
[本実施形態の作用効果]
以上説明したように、給紙トレイ20上の最上位置の記録用紙に対して給紙ローラ25がスリップしたと制御部100が判定した場合、給紙ローラ25が一旦停止され、その後、記録用紙を再給紙するために給紙ローラ25を再度回転させる際に、給紙ローラ25が加速度α1よりも大きい加速度α2又は加速度α3で加速される。給紙ローラ25の加速度が加速度α1から加速度α2又は加速度α3に変更されることにより、給紙ローラ25と最上位置の記録用紙との静止摩擦力が大きくなる。これにより、最上位置の記録用紙に対してスリップした給紙ローラ25が再給紙のために再度回転された場合に、記録用紙に対する給紙ローラ25の食い付きが良くなり、記録用紙に対する給紙ローラ25のスリップが防止される。なお、給紙ローラ25がスリップする原因は、例えば、給紙ローラ25のローラ面の摩耗や紙粉等による摩擦力の低下などが挙げられる。したがって、給紙ローラ25がスリップする状態では、給紙ローラ25による記録用紙の搬送力は著しく低下している。このため、給紙ローラ25の加速度が加速度α1から加速度α2又は加速度α3に変更されたとしても、給紙トレイ25上の記録用紙に給紙ローラ25が過度に食い付くことない。したがって、加速度を変更しても、給紙ローラ25が正常な状態のときに比べて記録用紙が搬送路23へ重送され易くなるということはない。
【0087】
また、本実施形態では、給紙ローラ25がスリップしたと制御部100によって判定された場合に、設定時間Xはそのままで、給紙ローラ25の回転速度が速度V1よりも大きい速度V3又は速度V4に変更される。このため、例えば給紙ローラ25が加速するための設定時間Xを短くして給紙ローラ25の起動時の加速度を大きくする場合に比べて、給紙ローラ25が給紙トレイ20上の最上位置の記録用紙に食い付くためにより長い時間が確保される。したがって、給紙ローラ25のスリップが効果的に防止される。
【0088】
[変形例]
なお、図9に示されるように、給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に対してスリップしたか否かに拘わらず、記録用紙の先端が第1区間L1に位置している間の給紙ローラ25の回転速度の設定値を一定値(本実施形態では速度V1(=2[IPS]))とすることが考えられる。この場合、静止状態の給紙ローラ25の回転速度を目標速度である速度V1まで加速させるための時間として、設定時間X1(本発明の第1設定時間に相当)及び設定時間X2(本発明の第2設定時間に相当)を設定値としてROM102に記憶させておく。なお、設定時間X2は設定時間X1よりも短い時間である。また、設定時間X1及び設定時間X2は、要求する給紙ローラ25の加速度に応じて任意に設定され得る要素である。
【0089】
本変形例では、設定時間X1及び設定時間X2を給紙ローラ25の加速制御に適用する。具体的には、上述のS4(図4参照)の処理に代えて、以下の処理を実行する。すなわち、制御部100は、ROM102から速度V1及び設定時間X1を読み出し、読み出された速度V1及び設定時間X1をRAM103内の設定値記憶領域に格納する。その後、CPU101によってドライバプログラムが起動されると、上記設定値記憶領域内の設定情報(速度V1及び設定時間X1)に基づいてASFモータ84を駆動制御する。詳細には、制御部100は、停止中のASFモータ84の回転速度を上昇させ、ASFモータ84の駆動開始から設定時間X1を経過したときに給紙ローラ25の回転速度が速度V1となるように、ロータリーエンコーダ83の検出結果に基づいて駆動回路80に付与する駆動信号を制御する。このようにASFモータ84の駆動が制御されることにより、静止状態にある給紙ローラ25が加速度α1(=V1/X1)で加速され、設定時間X1後には給紙ローラ25の回転速度が速度V1に達し、その後、速度V1で等速回転する。
【0090】
また、上述のS24(図5参照)の処理に代えて、以下の処理を実行する。すなわち、制御部100は、ROM102から速度V3及び設定時間X2を読み出し、読み出された速度V3及び設定時間X2をRAM103内の設定値記憶領域に格納する。言い換えれば、上記設定値記憶領域に格納された設定時間情報が設定時間X2に変更される。その後、制御部100はドライバプログラムにしたがって、上記設定値記録領域内の設定情報(速度V3及び設定時間X2)に基づきASFモータ84を駆動制御する。詳細には、制御部100は、停止中のASFモータ84の回転速度を上昇させ、ASFモータ84の駆動開始から設定時間X2を経過したときに給紙ローラ25の回転速度が速度V3となるように、ロータリーエンコーダ83の検出結果に基づいて駆動回路80に付与する駆動信号を制御する。このようにASFモータ84の駆動が制御されることにより、静止状態にある給紙ローラ25が加速度α2(=V3/X2)で加速され、設定時間X2後には給紙ローラ25の回転速度が速度V3に達し、その後、速度V3で等速回転する。なお、ステップS25の処理についても、これに代えて上述した処理と同様の処理を実行する。
【0091】
また、本実施形態では、第1区間L1〜第3区間L3で給紙ローラ25(ASFモータ84)の回転速度が変更される形態について説明したが、給紙ローラ25(ASFモータ84)の回転速度は、第1区間L1〜第3区間L3の間において一定であってもよい。
【0092】
また、本実施形態では、記録用紙の種類に応じて給紙ローラ25の起動時の加速度が変更される形態について説明したが、給紙ローラ25がスリップしたと判定された場合に、記録用紙が第1シートであるか第2シートであるかに拘わらず、静止中の給紙ローラ25を加速度α2で加速させるようにしてもよい。
【0093】
また、本実施形態では、レジストセンサ71によって記録用紙が検知されることなくカウント値Cが閾値T以上になったことを条件として、給紙ローラ25がスリップしたと判定される形態について説明した。これに代えて、例えば、ロータリーエンコーダ83によって検出されたASFモータ84の回転量が予め定められた回転量に到達したにも拘わらず記録用紙がレジストセンサ71によって検知されなかった場合に、給紙ローラ25がスリップしたと判定してもよい。
【0094】
また、本実施形態では、本発明のシート搬送装置がプリンタ部11に適用された場合について説明したが、シート搬送装置は、スキャナ部12のADF29に適用されてもよい。この場合、原稿トレイ30上の原稿に対してローラがスリップして、ローラが搬送されないといった不具合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の内部構造を示す模式図である。
【図3】図3は、制御部100の構成を例示するブロック図である。
【図4】図4は、プリンタ部11において記録用紙を給送する際に制御部100によって行われる回転制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、プリンタ部11において記録用紙を給送する際に制御部100によって行われる回転制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、プリンタ部11において記録用紙を給送する際に制御部100によって行われる回転制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、給紙ローラ25の回転速度の変化を例示するグラフである。
【図8】図8は、給紙ローラ25の回転速度の変化を例示するグラフである。
【図9】図9は、本実施形態の変形例における給紙ローラ25の加速時の回転速度の変化を例示するグラフである。
【符号の説明】
【0096】
11・・・プリンタ部(本発明の画像記録装置の一例)
14・・・操作パネル(本発明の受付手段の一部)
20・・・給紙トレイ(本発明の載置部の一例)
35・・・分離片(本発明の分離部材の一例)
23・・・搬送路(本発明の搬送路の一例)
24・・・記録部(本発明の記録手段の一例)
25・・・給紙ローラ(本発明のローラの一例)
26・・・アーム(本発明のアームの一例)
50・・・記録用紙(本発明のシートの一例)
71・・・レジストセンサ(本発明の検知手段の一部)
80・・・駆動回路(本発明の制御手段の一部)
83・・・ロータリーエンコーダ(本発明の制御手段の一部)
84・・・ASFモータ
100・・・制御部(本発明の判定手段の一例、本発明の制御手段の一部、本発明の認識手段の一部、本発明の検知手段の一部、本発明の計時手段の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一のシートが載置される載置部と、
上記載置部の上方に配置され、上記載置部と接離する方向へ回動可能なアームと、
上記アームの先端側に回転可能に設けられ、上記載置部から搬送路へシートを供給するローラと、
静止状態にある上記ローラを加速させてから予め設定された目標速度で回転させる制御手段と、
上記制御手段による制御中に上記ローラが上記載置部上のシートの給送に失敗したか否かを判定する判定手段とを備え、
上記制御手段は、
上記ローラがシートの給送に失敗したと上記判定手段によって判定されるまでは、上記ローラを第1加速度で加速させる第1制御モードで上記ローラの回転を制御し、上記ローラがシートの給送に失敗したと上記判定手段によって判定されたことを条件に上記ローラを上記第1加速度よりも大きい第2加速度で加速させる第2制御モードで上記ローラの回転を制御するシート搬送装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記ローラの加速制御が開始されてから予め設定された設定時間経過後に上記ローラを上記目標速度まで加速させるものであり、上記目標速度の設定値を第1速度から該第1速度よりも大きい第2速度に変更することにより、上記第1制御モードから上記第2制御モードに切り換える請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
上記制御手段は、上記ローラの加速制御が開始されてから予め設定された設定時間経過後に上記ローラを上記目標速度まで加速させるものであり、上記設定時間の設定値を第1設定時間から該第1設定時間よりも短い第2設定時間に変更することにより、上記第1制御モードから上記第2制御モードに切り換える請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
上記載置部に載置されるシートの種類を認識する認識手段を備え、
上記制御手段は、上記ローラがシートの給送に失敗したと上記判定手段によって判定され且つ上記載置部のシートが上記認識手段によって所定厚さの第1シートであると認識されたことを条件に上記ローラを上記第2制御モードで上記ローラの回転を制御し、上記ローラがシートの給送に失敗したと上記判定手段によって判定され且つ上記載置部のシートが上記認識手段によって上記第1シートよりも厚い第2シートであると認識されたことを条件に上記ローラを上記第2加速度よりも大きい第3加速度で加速させる第3制御モードで上記ローラの回転を制御する請求項1から3のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項5】
上記搬送路の所定位置におけるシートの存在を検知する検知手段と、
上記制御手段によって上記ローラの加速制御が開始されてからの経過時間を計時する計時手段と、を備え、
上記判定手段は、上記検知手段によってシートの存在が検知されることなく上記計時手段によって計時された経過時間が所定の閾値以上になったことを条件に、上記ローラがシートの給送に失敗したと判定する請求項1から4のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項6】
上記載置部に載置されているシートよりも該シートの搬送方向の下流側に設けられ、該載置部に積載されているシートを分離する分離部材を備え、
上記制御手段は、上記載置部上のシートの上記下流側の端部が上記分離部材を通過するまでは上記目標速度を第1目標速度に設定して上記ローラを回転させ、上記下流側の端部が上記分離部材を通過した後に上記目標速度を上記第1目標速度よりも大きい第2目標速度に設定して上記ローラを回転させる第4制御モードで上記ローラの回転を制御する請求項1から5のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のシート搬送装置と、
上記ローラによって上記搬送路へ供給されたシートに画像を記録する記録手段と、を備える画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−286618(P2009−286618A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143873(P2008−143873)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】