説明

シート搬送装置及び画像形成装置

【課題】シート搬送量を計測する回転体の偏心を原因とするシート搬送距離の計測誤差を低減することが可能なシート搬送装置を提供する。
【解決手段】シートSを搬送する駆動ローラ14及び従動ローラ13と、駆動ローラ及び従動ローラの上流側でシートを検知する上流側検知手段12と、駆動ローラ及び従動ローラの下流側でシートを検知する下流側検知手段11と、駆動ローラ又は従動ローラによるシート搬送量を計測する搬送量計測手段と、上流側検知手段及び下流側検知手段による検知結果と搬送量計測手段による計測結果により、駆動ローラ及び従動ローラによるシートの搬送距離を算出する搬送距離算出手段とを備え、下流側検知手段によってシートが検知されてから、上流側検知手段によってシートが検知されるまでの間に、駆動ローラ及び従動ローラによって搬送されるシート搬送長が、駆動ローラ又は従動ローラの周長の略整数倍であるシート搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置及びこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商業印刷業界では、小ロット・多品種・バリアブルデータの印刷には、従来のオフセット印刷から電子写真方式を用いた画像形成装置によるPOD(Print on Demand)への移行が進んでいる。電子写真方式を用いた画像形成装置では、この様なニーズに対応するため、オフセット印刷機に匹敵する表裏見当精度が要求される様になってきている。
【0003】
表裏見当ずれの要因としては、縦方向・横方向のレジストレーション誤差と、用紙/画像のスキュー誤差とに大別できるが、熱定着装置を有する画像形成装置では、用紙が伸縮することによる画像倍率誤差が加わる。
【0004】
自動的に用紙表裏の画像倍率誤差を補正するためには、用紙サイズを精度良く自動的に計測する技術が必要となる。そこで、搬送される用紙の先端と後端が通過することをセンサで検知して、その通過時間から用紙長を計測する技術や、用紙搬送ローラ軸上のロータリーエンコーダのパルス計数から用紙長を計測する技術が考案されている。また、エンコーダパルス計数と用紙の速度計測とを併用して、用紙長の計測精度を向上させる技術も知られている。
【0005】
例えば特許文献1から3には、搬送される被転写体やシートに従動して回転する測長ロールの回転量を計測する回転量計測手段と、測長ロールの前後にシートの端部が通過することを検出するエッジセンサ等を設け、測長ロールの回転量とエッジセンサの出力等からシートの搬送方向の長さを測定する被転写体長計測手段及びシート搬送装置により、被転写体やシートの長さを精度良く測定する技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、測長ロールが偏心している場合において、シート長の計測開始時と計測終了時とで測長ロールの位相が異なると、シート長計測結果に誤差が生じる場合がある。
【0007】
そこで、例えば特許文献4には、測長ロールと、第1上流側エッジセンサと、第2上流側エッジセンサと、下流側エッジセンサとを備える測長装置であって、第1上流側エッジセンサ及び下流側エッジセンサの第1検出期間に測定した用紙長と、第2上流側エッジセンサ及び下流側エッジセンサの第2検出期間に測定した用紙長とのうち、用紙長が測長ロールの周長の整数倍に近い方を選択して用紙の搬送方向の長さを算出する測長装置が提案されている。
【0008】
特許文献4に係る測長装置によれば、測長ロールを用いて測定したシート長に含まれる測長ロールの偏心に起因する測定誤差を低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献4に係る測長装置では、第1上流側エッジセンサ及び下流側エッジセンサの第1検出期間に測定した用紙長と、第2上流側エッジセンサ及び下流側エッジセンサの第2検出期間に測定した用紙長とが、必ずしも測長ロールの整数倍にはならないため、測長ロールの偏心による用紙長測定誤差を低減できない場合がある。
【0010】
そこで、本発明では、シート搬送量を計測する回転体が偏心していることを原因とするシート搬送距離の計測誤差を低減することが可能なシート搬送装置を提供することを目的とする。また、シート搬送距離の計測精度を高めることにより、表裏の画像倍率誤差を高精度に補正し、表裏見当精度が高い画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様のシート搬送装置によれば、シートを搬送経路に沿って挟持搬送する駆動ローラ及び従動ローラと、前記駆動ローラ及び前記従動ローラの前記搬送経路の上流側で、前記シートを検知する上流側検知手段と、前記駆動ローラ及び前記従動ローラの前記搬送経路の下流側で、前記シートを検知する下流側検知手段と、前記駆動ローラ又は前記従動ローラによる前記シートの搬送量を計測する搬送量計測手段と、前記上流側検知手段及び前記下流側検知手段による検知結果と前記搬送量計測手段による計測結果とに基づいて、前記駆動ローラ及び前記従動ローラによる前記シートの搬送距離を算出する搬送距離算出手段とを備え、前記下流側検知手段によって前記シートが検知されてから、前記上流側検知手段によって前記シートが検知されるまでの間に、前記駆動ローラ及び前記従動ローラによって挟持搬送される前記シートの搬送長さが、前記搬送量計測手段によって前記搬送量が計測される前記駆動ローラ又は前記従動ローラの周長の略整数倍である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、シート搬送量を計測する駆動ローラ又は従動ローラがシート長の計測開始時と計測終了時において同位相になるため、駆動ローラ又は従動ローラの偏心によるシート搬送距離の計測誤差を低減することが可能なシート搬送装置を提供できる。また、シート搬送距離の計測精度が向上することにより、表裏画像位置合わせ精度の高い画像形成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係るシート搬送装置の上面概略図である。
【図2】第1の実施形態に係るシート搬送装置の断面概略図である。
【図3】実施形態に係るシート搬送装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態に係るスタートトリガセンサ、ストップトリガセンサ及びロータリーエンコーダの出力例を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係るシート搬送装置においてパルス計数されるシート範囲を説明する図である。
【図6】第1の実施形態に係る従動ローラの偏心とシート搬送距離計測誤差を説明する図である。
【図7】第1の実施形態におけるシートの搬送方向長さとセンサ間距離に基づく従動ローラ周長の設定例を示す図である。
【図8】第1の実施形態における許容計測誤差と従動ローラの位相との関係を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係るシート搬送装置の断面概略図である。
【図10】第2の実施形態に係るシート搬送装置の上面概略図である。
【図11】第3の実施形態に係るシート搬送装置の断面概略図である。
【図12】第3の実施形態に係るシート搬送装置の他の構成例を示す図である。
【図13】第4の実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す図(1)である。
【図14】第4の実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す図(2)である。
【図15】第4の実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す図(3)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下「実施形態」という)について、図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
<シート搬送装置の構成>
図1及び図2に、第1の実施形態に係るシート搬送装置100の概略構成を示す。図1はシート搬送装置100の上面概略図であり、図2はシート搬送装置100の断面概略図である。
【0016】
例えば用紙やOHP等のシートSの搬送経路上には、図示しない駆動手段(例えばモータ等)と駆動力伝達手段(例えばギヤ、ベルト等)により回転駆動する駆動ローラ14と、駆動ローラ14との間でシートSを挟持して従動回転する従動ローラ13が設けられている。
【0017】
駆動ローラ14は、シートSとの間で充分な摩擦力を発生させるために表面にゴム層を有して構成され、従動ローラ13との間でシートSを挟持して搬送する。
【0018】
従動ローラ13は、図示しない付勢手段(例えばバネ等)により、駆動ローラ14に加圧して当接する様に配設されており、駆動ローラ14が回転してシートSを搬送する際には、シートSとの間に生じる摩擦力により従動回転する。
【0019】
従動ローラ13のシートSの搬送方向に直交する幅方向の長さWrは、シート搬送装置100が対応するシートSの最小幅Wsよりも小さく構成されている。したがって、シートSの搬送時には駆動ローラ14に接触することが無いため、シートSとの間に生じる摩擦のみで従動回転することとなる。そのため、駆動ローラ14の影響を受けることなく、シートSの搬送距離をより正確に行うことが可能になる。
【0020】
本実施形態に係るシート搬送装置100の従動ローラ13の回転軸上には、ロータリーエンコーダ15が設けられている。シートの搬送量を計測する搬送量計測手段の一例としてのパルス計数手段が、回転するエンコーダディスク15aと、エンコーダセンサ15bとで発生するパルス信号を計数し、シートの搬送量として従動ローラ13の回転量を計測する。
【0021】
なお、第1の実施形態では従動ローラ13の回転軸上にロータリーエンコーダ15を設けたが、駆動ローラ14の回転軸上に設けることもできる。また、従動ローラ13と駆動ローラ14の位置関係を逆にすることもできる。
【0022】
ここで、ロータリーエンコーダ15を取り付けるローラの径は小径である程、シート搬送に伴う回転数が増加してカウントするパルス量が多くなり、シートSの搬送距離の高精度な計測が可能になるため好ましい。
【0023】
また、ロータリーエンコーダ15を取り付ける従動ローラ13又は駆動ローラ14は、軸フレ精度を確保するために金属製のローラで構成することが好ましい。回転軸のフレを抑えることで、後述するシートSの搬送距離の計測を高精度に行うことが可能となる。
【0024】
シートSの搬送経路において、従動ローラ13及び駆動ローラ14の上流側及び下流側近傍には、センサ11,12が設けられている。センサ11,12は、搬送されるシートSの端部が通過するのを検知することができる。センサ11,12には、例えばシート端部の検知精度が高い透過型又は反射型の光センサを用いることができ、第1の実施形態では反射型光センサを用いている。
【0025】
従動ローラ13及び駆動ローラ14のシートSの搬送方向下流側のセンサ11は、シートSの先端部通過を検知する下流側検知手段としてのスタートトリガセンサ11である。また、従動ローラ13及び駆動ローラ14のシートSの搬送方向上流側のセンサ12は、シートSの後端部通過を検知する上流側検知手段としてのストップトリガセンサ12である。
【0026】
スタートトリガセンサ11及びストップトリガセンサ12は、シートSの搬送方向に直交する幅方向位置が略同一に設けられている。この様に設けることで、シートSの搬送姿勢(搬送方向に対するスキュー)の影響を最小にし、より正確にシートSの搬送距離の計測を行うことが可能になる。
【0027】
また、第1の実施形態では2つのセンサ11,12を、シートSの搬送方向に直交する幅方向の中央位置に配置しているが、シートSが通過する領域内であれば、中央位置から幅方向のいずれかの方向にずらして配置することもできる。
【0028】
図1に示した距離Aは、スタートトリガセンサ11と従動ローラ13及び駆動ローラ14との間の距離であり、距離Bはストップトリガセンサ12と従動ローラ13及び駆動ローラ14との間の距離である。距離A,Bは、後述するパルスカウント範囲が大きくなるため、可能な範囲で小さくすることが好ましい。
【0029】
また、シートSが従動ローラ13と駆動ローラ14との間に突入後の一定時間は、従動ローラ13の固有周波数で振動が生じ、計測誤差の要因となる。したがって、スタートトリガセンサ11と従動ローラ13及び駆動ローラ14との距離Aは、シートS突入時の従動ローラ13の振動が収束するのに必要な距離よりも大きくする必要がある。
【0030】
駆動ローラ14は図2に示す矢印方向に回転しており、従動ローラ13は、シートSを搬送していない場合(空転時)には駆動ローラ14に従動回転し、シートSを搬送する場合には、シートSにより従動回転する。従動ローラ13が回転すると、回転軸上に設けられたロータリーエンコーダ15からパルスが発生する。
【0031】
シートSが矢印X方向に搬送され、先端部が通過したことをスタートトリガセンサ11が検知すると、パルス計数手段16がロータリーエンコーダ15のパルス計数を開始し、シートSの後端部が通過したことをストップトリガセンサ12が検知した時にパルス計数を終了する。
【0032】
図3は、本実施形態に係るシート搬送装置100の機能構成例を示すブロック図である。
【0033】
図3に示す様に、シート搬送装置100は、シート搬送手段としての従動ローラ3及び駆動ローラ4、エンコーダ15、スタートトリガセンサ11、ストップトリガセンサ12、パルス計数手段16、搬送距離算出手段17を有する。
【0034】
パルス計数手段16は、上記した様に、従動ローラ3に設けられるエンコーダ15の回転するエンコーダディスク15aと、エンコーダセンサ15bとで発生するパルス信号を計数し、シートの搬送量として従動ローラ13の回転量を計測する。
【0035】
搬送距離算出手段17は、スタートトリガセンサ11及びストップトリガセンサ12によるシートSの検知結果と、パルス計数手段16によって計測される従動ローラ13の回転量とに基づいて、シート搬送手段によるシートSの搬送距離を算出する。
<シート搬送距離の計測方法>
図4に、第1の実施形態にかかるスタートトリガセンサ11、ストップトリガセンサ12及びロータリーエンコーダ15の出力例を示す。
【0036】
上述した様に、従動ローラ13が回転すると、従動ローラ13の回転軸上に設けられたロータリーエンコーダ15からパルスが発生する。
【0037】
シートSが搬送され、時間t1にてシートSの先端部が通過したことをストップトリガセンサ12が検知した後、時間t2にてシートSの先端部が通過したことをスタートトリガセンサ11が検知する。
【0038】
続いて、時間t3にてシートSの後端部が通過したことをストップトリガセンサ12が検知した後、時間t4にてシートSの後端部が通過したことをスタートトリガセンサ11が検知する。
【0039】
この時、時間t2にてシートSの先端部が通過したことをスタートトリガセンサ11が検知してから、時間t3にてシートSの後端部が通過したことをストップトリガセンサ12が検知するまでの間に、パルス計数手段16がロータリーエンコーダ15のパルス計数を行う。
【0040】
ロータリーエンコーダ15が設けられた従動ローラ13の半径をrとし、従動ローラ13の1周分のエンコーダパルス数をN、パルスカウント時間に計数されたパルス数をnとする。このとき、シートSの搬送距離Lは、下式(1)により求めることができる。
【0041】
L = (n/N)×2πr ・・・(1)
n:計数されたパルス数
N:従動ローラ13の1周分のエンコーダパルス数[/r]
r:従動ローラ13の半径[mm]
一般的にシート搬送速度は、シートSを搬送するローラ(特に駆動ローラ)の外形精度、芯フレ精度等の機械精度や、モータ等の回転精度、ギヤ、ベルト等の動力伝達機構の精度によって変動する。また、駆動ローラ14とシートSとの間のスリップ現象、上流側及び下流側の搬送手段のシート搬送力あるいはシート搬送速度の違いによる弛み現象等によっても変動するため、ロータリーエンコーダ15のパルス周期やパルス幅は常に変動するが、パルス数は変化することが無い。
【0042】
したがって、シート搬送装置100に設けられる搬送距離算出手段17は、式(1)により、シート搬送速度に依存することなく、シート搬送手段としての従動ローラ13及び駆動ローラ14によるシートSの搬送距離Lを高精度に求めることができる。
【0043】
また、搬送距離算出手段17は、例えばシートSのページ間の比や、表裏の比等の相対比を求めることもできる。
【0044】
搬送距離算出手段17は、例えば、電子写真方式による熱定着前後のシート搬送距離の相対比から、伸縮率Rを下式(2)により求めることができる。
【0045】
R = [(n2/N)×2πr]/[(n1/N)×2πr]・・・(2)
n1:熱定着前のシートSの搬送時に計数されたパルス数
n2:熱定着後のシートSの搬送時に計数されたパルス数
ここで、第1の実施形態において試算した例を以下で説明する。
【0046】
本実施形態では、N=2800[/r]、r=9[mm]であり、A3サイズのシートSが縦搬送された際に計数されたパルス数がn1=18816だった場合のシートSの搬送距離L1は、
L1 = (18816/2800)×2π×9 = 380.00[mm]
となる。
【0047】
また、このシートSの熱定着後に再度計数されたパルス数が、n2=18759[/r]だった場合のシートSの搬送距離L2は、
L2 = (18759/2800)×2π×9 = 378.86[mm]
となり、シートSの搬送距離の表裏差は、
ΔL = 380.00 − 378.86 = 1.14[mm]
であり、搬送距離の表裏差から、シートSの伸縮率R(シートSの表裏長さの相対比)を、
R = 378.86/380.00 = 99.70[%]
として求めることができる。
【0048】
したがって、この場合にはシートSの搬送方向の長さが熱定着によって約1mm収縮したために、シートS表裏の画像長を同一にすると約1mmの表裏見当ずれが発生することになる。そこで、算出される伸縮率Rに基づいて、シートSの裏面に印刷する画像長を補正することで、表裏見当精度を向上させることが可能になる。
【0049】
なお、上記した例では、熱定着前後の搬送手段によるシートSの搬送距離L1,L2を算出して伸縮率Rを求めているが、例えば熱定着前後のシートSの搬送時に計数されたパルス数n,nの比を伸縮率Rとして求める伸縮率算出手段を設けても良い。
【0050】
例えば、上記した例において、熱定着前のシートSの搬送時に計数されたパルス数n=18816、熱定着後のシートSの搬送時に計数されたパルス数n=18759の時に、伸縮率Rは以下の様に求めることができる。
【0051】
R = n/n = 18759/18816 = 99.70[%]
なお、式(1)で求められるシート搬送手段によるシート搬送距離Lに、図2に示すスタートトリガセンサ11とストップトリガセンサ12との間の距離aを加えると、シートSの搬送方向の長さLとなる。
【0052】
= (n/N)×2πr+a ・・・(3)
a:スタートトリガセンサ11とストップトリガセンサ12との間の距離
この様に、シート搬送装置100の搬送距離算出手段17は、上式(1)によって求められるシート搬送手段によるシートSの搬送距離Lに、センサ間の距離aを加えた式(3)により、シートSの搬送方向の長さを求めることができる。
【0053】
また、搬送距離算出手段17は、電子写真方式による熱定着前後のシートSの搬送方向の長さLの相対比から、伸縮率Rを下式(4)により求めることができる。
【0054】
R = [(n2/N)×2πr+a]/[(n1/N)×2πr+a]・・・(4)
この様に、シート搬送装置100の搬送距離算出手段17は、高精度にシートSの搬送方向の長さLを求め、伸縮率Rを算出することもできる。
<従動ローラの周長とシートの計測長さとの関係>
図5に、第1の実施形態に係るシート搬送装置100においてパルス計数されるシートSのパルスカウント範囲を説明する図を示す。
【0055】
まず、図5(a)に示した様に、シートSの先端がスタートトリガセンサ11に検知された時点で、従動ローラ13に設けられたロータリーエンコーダ15にてパルス計数が開始される。
【0056】
シートSが従動ローラ13及び駆動ローラ14により搬送され、図5(b)に示した位置でシートSの後端がストップトリガセンサ12により検知された時点で、ロータリーエンコーダ15によるパルス計数が終了する。
【0057】
パルス計数が開始されてから終了するまでにシートSが搬送される距離であるパルスカウント範囲は、スタートトリガセンサ11によってシートSが検知されてから、ストップトリガセンサ12によってシートSが検知されるまでの間に、従動ローラ13及び駆動ローラ13によって挟持搬送されるシートSの搬送長さである。具体的には、シートSの搬送方向の長さLから、スタートトリガセンサ11から従動ローラ13までの距離Aと、従動ローラ13からストップトリガセンサ12までの距離Bとを引いた範囲となる。すなわち、シートSの長さLからスタートトリガセンサ11とストップトリガセンサ12との距離aを引いた範囲(L−a)が、パルス計数される長さとなる。
【0058】
ここで、図6に第1の実施形態に係る従動ローラ13の偏心とシート長計測誤差を説明する図を示す。
【0059】
例えば、図6(a)に示した様に、ロータリーエンコーダ15が取り付けられた従動ローラ13が外周円の中心Oからzだけ偏心している場合に、従動ローラ15の位相をθsとすると、シートSの搬送距離の計測誤差Cは下式により求めることができる。
【0060】
C = sinθs×z ・・・(3)
z=−0.1mmの場合の計測誤差Cを図6(b)に示す。パルスカウント範囲である計測長さ(L−a)において、パルス計数開始時の位相とパルス計数終了時の位相とで差異が発生する場合には、偏心量z=−0.1mmにおいて最大で±0.1mmの計測誤差が生じることを表している。
【0061】
そこで、本実施形態では、パルス計数されるシートSの長さ(L−a)を、下式(4)に示す様に従動ローラ13の周長の整数倍とする。この様にすることで、パルス計数開始時の位相とパルス計数終了時の位相とが同位相になり、偏心の影響による計測誤差を低減することができる。
【0062】
L−a = 2πr×k ・・・(4)
k:正の整数
図7に、第1の実施形態におけるシートSの搬送方向の長さLとセンサ間距離aに基づく従動ローラ13の周長設定例を示す。
【0063】
例えば、日本国内で使用量が多いA4ヨコ(210mm)とA3タテ(420mm)サイズのシートSを使用する場合にセンサ間距離aを70mmとすると、パルス計数を行うシートSの測定長さ(L−a)は、A4ヨコで140mm、A3タテで350mmとなる。
【0064】
そこで、従動ローラ13の周長2πrを、シートSの測定長さ(L−a)の公約数である2mm、4mm、5mm、7mm、10mm、14mm、20mm、28mm、35mm、70mmの中から現実的に実装可能なものを選択する(例えば、周長70mmの場合には直径約11.14mm)ことで、何れのシートSにおいても測定長さ(L−a)が従動ローラ13の周長の整数倍となるため、偏心に起因する計測誤差を低減させることができる。
【0065】
なお、シートSの測定長さ(L−a)は、ロータリーエンコーダ15によりパルス計数される従動ローラ13の周長の整数倍であることが好ましいが、後述する許容される計測誤差に応じて、従動ローラ13の周長の整数倍から所定の公差範囲内に設けても良い。
【0066】
この様に、予め設定されるシートSの搬送方向の長さLから、スタートトリガセンサ11とストップトリガセンサ12との距離aを引いた値(L−a)が、ロータリーエンコーダ15によりパルス計数される従動ローラ13の周長の略整数倍となる様に設けることで、従動ローラ13の偏心による影響を低減し、精度良くシートSの搬送方向の長さを計測することができる。言い換えれば、スタートトリガセンサ11によってシートSの先端が検知されてから、ストップトリガセンサ12によってシートSの後端が検知されるまでの間に、駆動ローラ14及び従動ローラ13によって挟持搬送されるシートSの搬送長さ(搬送距離)L'(=L−a)が、ロータリーエンコーダ15によってシートSの搬送量が計測されるローラ(本実施形態では従動ローラ13)の周長Cの略整数倍(L'=nC(n:自然数))となるようにする。
【0067】
なお、第1の実施形態ではロータリーエンコーダ15を従動ローラ13に取り付けた場合について説明したが、ロータリーエンコーダ15を駆動ローラ14に取り付けて構成することもできる。この場合には、シートSの測定長さ(L−a)が、駆動ローラ14の周長の略整数倍になる様に構成することで、駆動ローラ14の偏心による計測誤差を低減することができる。
【0068】
また、センサ間距離aについて、本実施形態では70mmとしたが、これに限るものではなく、従動ローラ13の外径、センサ11,12の大きさ、装置本体内の空きスペースとの関係から適宜設定することができる。
【0069】
ここで、従動ローラ13の偏心量zが0.1mmである場合に、シートSの搬送方向の長さの計測誤差Cを±0.02mm以下に抑えるためには、まず、式(3)から計測誤差Cが±0.02mmになる従動ローラ13の位相を以下の様に求める。
【0070】
±C = sinθs×z
sinθs = ±C/z = ±0.02/0.1
θs = ±11.54
図8に、第1の実施形態における計測誤差Cと従動ローラの位相θsとの関係を示す。
この様に、計測誤差Cが±0.02mmとなるのは、パルス計測開始時と終了時における従動ローラ13の位相が±11.54°の範囲で回転する場合である。
【0071】
従動ローラ13が±11.54°回転すると、従動ローラ13の周長が70mmである場合のシートSの搬送距離は、以下の通り±2.244mmと求めることができる。
【0072】
2πr×(θs/360) = 70×(±11.54/360)
= 2.244[mm]
ここで、式(4)により求められるシートSの測定長さ(L−a)に上記で求めた距離を加え、測定するシートの搬送方向の長さLをA4ヨコの210mmとし、k=2とした場合にセンサ間距離aを求めると以下の通りとなる。
【0073】
L−a = (2πr×k)±2πr(θs/360)
a = L−(2πr×k)±2πr(θs/360)
= 210−(70×2)±2.244
= 70±2.244
したがって、周長が70mmで偏心量0.1mm以下の従動ローラ13を使用し、k=2である場合に許容計測誤差Cを±0.02mm以下とするには、センサ間距離a及びその誤差範囲を70±2.244mmにする必要がある。
【0074】
この様に、許容できる計測誤差の範囲から、センサ間距離aを一定範囲に設定することで、計測結果に含まれる誤差を一定の範囲以下にすることができる。
【0075】
[第2の実施形態]
上記した様に、例えばシート長を計測するシートSのサイズがA4ヨコ(210mm)やA3タテ(420mm)である場合には、図7に示した様に、これらの予め設定されたシート長の公約数からセンサ間の距離aや従動ローラ13の周長を定めることができる。したがって、この場合にはシートSの計測長さ(L−a)を従動ローラ13の周長の略整数倍とすることで、A4ヨコやA3タテといったシートSの搬送方向の長さを高精度に計測することができる。
【0076】
また、使用するシートSの搬送方向の長さの公約数が従動ローラ13の周長の略整数倍にならない場合には、スタートトリガセンサ及びストップトリガセンサのうち少なくとも一方を複数備える構成にすることができる。
【0077】
図9に、第2の実施形態に係るシート搬送装置101の断面概略図を示す。
【0078】
第2の実施形態に係るシート搬送装置101では、例えば、シートSのサイズがA4ヨコ(210mm)とA3タテ(420mm)の他に、北米等で使用量が多いLETTERヨコ(216mm)サイズに対応できる様に、LETTERヨコの搬送方向の長さLからセンサ間距離aを引いた計測長さ(L−a)が、従動ローラ13の周長の略整数倍となる位置にストップトリガセンサ22を設けている。
【0079】
A4ヨコ、A3タテ及びLETTERヨコの様に、シートSの搬送方向の長さLの公約数が整数にならない場合でも、スタートトリガセンサ11からの距離が異なる位置にストップトリガセンサ12,22を複数設けることにより、多様なシート種に対応することが可能になる。
【0080】
また、第2の実施形態では、ストップトリガセンサを2つ設ける構成としたが、スタートトリガセンサを複数設けても良く、スタートトリガセンサ及びストップトリガセンサをそれぞれ複数設ける構成にすることもできる。
【0081】
上記した構成において、予め設定されるシートSの搬送方向の長さに応じて、シート搬送距離又は搬送方向の長さの計測を行うストップトリガセンサ12,22を選択し、上記した方法によりシートSの搬送距離又は搬送方向の長さの計測を行う。従動ローラ13の偏心による計測誤差を低減し、多様なシート種の搬送距離又は搬送方向の長さ高精度に計測することが可能になる。
【0082】
また、図10に第2の実施形態に係るシート搬送装置101の上面概略図を示す。
【0083】
スタートトリガセンサ11及びストップトリガセンサ12,22は、シートSの搬送方向において一直線上に配置しても良いが、センサ同士の干渉を避けるために、例えばシートSの搬送範囲内でシート搬送方向に直交する幅方向にずらして配置することも可能である。
【0084】
[第3の実施形態]
第2の実施形態に係るシート搬送装置101では、2つのストップトリガセンサ12,22を設けたが、スタートトリガセンサ11又はストップトリガセンサ12の少なくとも一方をシートSの搬送方向に移動可能に設けることで、多様なシート種に対応することも可能である。
【0085】
図11に、第3の実施形態に係るシート搬送装置102の断面概略図を示す。
【0086】
第3の実施形態に係るシート搬送装置102において、ストップトリガセンサ12はブラケット31に取り付けられた状態でセンサ固定部材30に固定されている。
【0087】
センサ固定部材30にはシートSの測定長さ(L−a')が従動ローラ13の周長の略整数倍となる位置に複数の位置決め穴34と長穴35が形成されている。ブラケット31は、2つの突起32が位置決め穴34と長穴35に嵌り、ノブ付きネジ33によりセンサ固定部材30に固定されている。
【0088】
この様な構成において、シートSの搬送距離又は搬送方向の長さ計測する際には、予め設定されたシートSの搬送方向の長さLに基づいて、シートSの測定長さ(L−a')が従動ローラ13の周長の略整数倍となる様にストップトリガセンサ12の位置を手動で変更する。
【0089】
センサ間距離a'を可変にすることで、多様なサイズのシートSに対して測定長さ(L−a')を従動ローラ13の周長の略整数倍にすることができ、従動ローラ13の偏心による計測誤差を低減し、シートSの搬送方向の長さを高精度に計測することが可能になる。
【0090】
図12に、第3の実施形態に係るシート搬送装置102の他の構成例を示す。
【0091】
図12に示した構成例では、ストップトリガセンサ12はキャリッジ41に設けられている。キャリッジ41は、複数のプーリ46に架け渡される無端状のベルト45に固定されており、プーリ46の駆動に伴って回転するベルト45によりガイドレール42に沿ってシートSの搬送方向に移動することができる。
【0092】
キャリッジ41は、移動する際にキャリッジ41に設けられたセンサ用突起43がキャリッジ位置センサ44に到達した時に停止し、その位置がキャリッジ41の初期位置になるように制御される。
【0093】
プーリ46の位相を制御する、例えばステッピングモータ等を用いてプーリ46を回転駆動することで、キャリッジ41の初期位置からの移動量を正確に把握し、ストップトリガセンサ12の位置を制御することができる。
【0094】
したがって、予め設定されるシートSのサイズに応じて、シートSの測定長さ(L−a')が従動ローラ13の周長の略整数倍となる様にストップトリガセンサ12の位置を制御することで、従動ローラ13の偏心に起因する計測誤差を低減して高精度に搬送距離又は搬送方向の長さを計測できる。
【0095】
なお、第3の実施形態ではストップトリガセンサ12をシートSの搬送方向に移動させる移動手段を設けて構成したが、スタートトリガセンサ11に移動手段を設けても良く、スタートトリガセンサ11及びストップトリガセンサ12の両方を移動可能に設けても良い。
【0096】
[第4の実施形態]
図13及び14に、第4の実施形態に係るシート搬送装置100を備える画像形成装置105,104の構成例を示す。図13はモノクロ画像形成装置105の例を、図14はタンデム型のカラー画像形成装置104の例を示している。
【0097】
図13に示したモノクロ画像形成装置105において、搬送されるシートSに画像を印刷する場合には、まず一様に帯電されて回転する感光体ドラム1の表面に不図示の光書き込み手段により静電潜像が形成され、次に図示しない現像手段によりトナー像として顕像化が行われる。続いて、シートSが感光体ドラム1と転写手段5との間で感光体ドラム1上のトナー像がシートS上に転写され、その後シートSが加熱ローラ2及び加圧ローラ3の間を通過する間にトナー像がシートSに溶融定着することで印刷画像が形成される。
【0098】
図14に示したタンデムカラー画像形成装置104は、ブラック(K)、シアン(C)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)の色ごとに設けられた感光体ドラム1上に形成されたトナー像が、中間転写ベルト4上に重ねて一次転写された後、中間転写ベルト4と転写手段5との間を搬送されるシートSに二次転写される。カラートナー像を載せたシートSは、引き続き搬送されて加熱ローラ2及び加圧ローラ3の間を通過し、シートS上に印刷画像が形成される。
【0099】
図13及び図14に示した画像形成装置105,104では、シートSの搬送経路において転写手段5の直前にシート搬送装置100を設けている。他の構成による画像形成装置においても同様に転写手段の直前にシート搬送装置100を設置することで、転写直前のシートSの搬送距離又は搬送方向の長さを計測することができる。
【0100】
画像形成装置105,104では、まずシート搬送装置100においてシートSの搬送距離又は搬送方向の長さを計測した後、転写手段によりシートSにトナー像が転写され、加熱ローラ2及び加圧ローラ3の間を通過することで、シートSの一方の面に印刷画像が形成される。
【0101】
両面印刷時には、不図示の反転機構により表裏反転された状態で再び図中に示した矢印方向に搬送される。この場合、シートSは一旦加熱されることによって、一般的には収縮して用紙サイズが変化した状態で搬送され、再度シート搬送装置100により搬送距離又は搬送方向の長さが計測された後、裏面にトナー画像が転写、定着される。
【0102】
裏面のトナー画像は、計測されたシートSの搬送距離又は搬送方向の長さの表裏比に基づいて画像長が補正(画像倍率補正)された状態でシートSに転写されるため、シートSに形成される画像は表裏の画像長が一致し、表裏見当精度を向上させることができる。
【0103】
定着後におけるシートSの収縮は、時間と共に回復する方向に変化するため、転写手段5の直前でシートSの搬送距離又は搬送方向の長さを計測することで、より正確にシートSの搬送距離又は搬送方向の長さの表裏比を求め、表裏見当精度を高めることができる。
【0104】
この様に、本実施形態に係るシート搬送装置100を備える画像形成装置105,104によれば、シートSに表裏見当精度の高い印刷を行うことが可能となる。なお、第1の実施形態に係るシート搬送装置100を備える構成について例示したが、第2及び第3の実施形態に係るシート搬送装置101,102を備える画像形成装置においても、同様にシートSの搬送方向の長さを高精度に計測することにより、表裏見当精度の高い印刷を行うことが可能である。
<まとめ>
以上で説明した様に、本実施形態に係るシート搬送装置によれば、シートSの測定長さ(L−a)を搬送量を計測する従動ローラ13の周長の略整数倍にすることで、シート搬送距離計測開始時と終了時において従動ローラ13が同位相になり、従動ローラ13の偏心を原因とする計測誤差を低減し、シートSの搬送距離又は搬送方向の長さを高精度に計測することができる。
【0105】
本実施形態に係るシート搬送装置を備える画像形成装置105,104によれば、シートSの搬送距離又は搬送方向の長さを高精度に行うことができるため、表裏見当精度が高い印刷を行うことが可能となる。
【0106】
また、図15に、本実施形態に係る画像形成装置105の構成例を示す。
【0107】
画像形成装置105は、中央付近に無端ベルト状の中間転写ベルト52を有する。中間転写ベルト52は、複数の支持ローラに掛け回して図中時計回りに回転搬送可能とする。中間転写ベルト52上には、その搬送方向に沿って、複数の画像形成手段53を横に並べて配置してタンデム画像形成装置54を構成する。そして、そのタンデム画像形成装置54の上には、露光装置55が設けられている。
【0108】
タンデム画像形成装置54の各画像形成手段53は、各色トナー像を担持する像担持体としての感光体ドラム56を有している。
【0109】
また、感光体ドラム56から中間転写ベルト52にトナー像を転写する一次転写位置には、中間転写ベルト52を間に挟んで各感光体ドラム56に対向するように一次転写手段の構成要素としての一次転写ローラ57が設けられている。また、支持ローラ58は中間転写ベルトを回転駆動する駆動ローラである。
【0110】
中間転写ベルト52を挟んでタンデム画像形成装置54と反対側(中間転写ベルト52搬送方向下流側)には、2次転写装置59を備える。2次転写装置59は、2次転写対向ローラ60に2次転写ローラ61を押し当てて転写電界を印加することで中間転写体52上の画像をシートSに転写する。2次転写装置59では、転写条件のパラメータである、2次転写ローラ61の転写電流をシートSに応じて変化させる。
【0111】
2次転写装置59のシートS搬送方向上流側にはシート搬送装置100を設け、下流側にはシートS上の転写画像(トナー像)を熱溶融溶着させる定着装置32を設ける。シート搬送装置100では両面印刷時における定着装置52通過前後のシート搬送距離又はシート搬送方向の長さを計測し、画像形成装置105は計測結果から算出した伸縮率に基づいてシートS裏面の画像の倍率補正を行う。なお、本実施形態では、シート搬送装置100は、2次転写装置59の搬送方向直上流で、且つ、レジストローラ75の下流側に配置している。
【0112】
定着装置32は熱源としてハロゲンランプ30を具備し、無端ベルトである定着ベルト31に加圧ローラ29を押し当てた構成としている。定着装置32は、定着条件のパラメータである、定着ベルト31及び加圧ローラ29の温度、定着ベルト31と加圧ローラ29間のニップ幅、加圧ローラ29の速度をシートSに応じて変化させる。搬送ベルト62により、画像転写後のシートSをこの定着装置32へと搬送する。
【0113】
画像形成装置105に画像データが送られ、作像開始の信号を受けると、不図示の駆動モータで支持ローラ58を回転駆動して他の複数の支持ローラを従動回転し、中間転写ベルト52を回転搬送する。同時に、個々の画像形成手段53で各感光体ドラム56上にそれぞれの単色画像を形成する。そして、中間転写ベルト52の搬送とともに、それらの単色画像を転写部57で順次転写して中間転写体52上に合成カラー画像を形成する。
【0114】
また、給紙テーブル71の給紙ローラ72の1つを選択回転し、給紙カセット73の1つからシートSを繰り出し、搬送ローラ74で搬送して、レジストローラ75に突き当てて止め、中間転写ベルト52上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ75を回転し、2次転写装置59で転写してシートS上にカラー画像を記録する。画像転写後のシートSは、2次転写装置59で搬送して定着装置32へと送り込まれ、熱と圧力とを加えて転写画像を溶融溶着した後、両面印刷の場合、分岐爪21およびフリップローラ22により、シート反転路23および両面搬送路24にシートSを搬送し、上記した方法にて、シートSの裏側に合成カラー画像を記録する。
【0115】
また、シートSを反転させる場合は、分岐爪21により、シート反転路23にシートSを搬送し、フリップローラ22により、排紙ローラ25側にシートSを搬送することにより、シートSの表面と裏面を反転させる。
【0116】
片面印刷およびシート反転なしの場合は、分岐爪21により、排紙ローラ25にシートSを搬送する。
【0117】
その後、排出ローラ25により、デカーラユニット26へシートSを搬送し、デカーラユニット26では、デカーラ量をシートSに応じて変化させる。デカーラ量はデカーラローラ27の圧力を変えることで調整し、デカーラローラ27により、シートSを排出する。パージトレイ40は反転排紙ユニットの下方に配置する。
【0118】
<シート搬送距離に基づく画像倍率補正>
シート搬送装置100では、シートSの搬送距離又は搬送方向長さを上記した方法により計測する。また、シートSの搬送方向に直交する幅方向の長さ(幅)は、シートSの手前側エッジと奥側エッジの位置(それぞれシート幅方向の端部)を、CIS(コンタクトイメージセンサ)で計測することで取得できる。
【0119】
シートSは、シート搬送装置100やCISにより搬送距離又は搬送方向長さ、シート幅といったシートサイズが計測されたのち、2次転写装置59にてトナー画像が転写される。トナー画像が転写されたシートSは、定着装置32に搬送されてトナー画像が定着される。シートSは、定着装置32の通過時に加熱されて収縮する場合がある。
【0120】
その後、シートSはシート反転路23によって表裏反転された状態で、再びシート搬送装置100へ搬送されてシートサイズが測定された後、裏面にトナー画像が転写、定着される。
【0121】
後続するシートSのトナー画像は、計測されたシートサイズの表裏比に基づいて、その画像サイズ及び画像位置が補正(画像倍率補正)される。この結果、シートSの表裏に印刷される画像サイズが一致し、表裏見当精度が向上する。
【0122】
上記した定着後のシートSの収縮は、時間とともに回復方向に変化する。このため、トナー像が転写される直前でシート搬送距離又はシート搬送方向の長さを測長して、より正確に表裏のシート長比を得る方が、表裏見当精度を高める点で有利である。
【0123】
次に、シート搬送装置100にて計測されたシートサイズに基づく画像倍率補正の処理手順を説明する。前述したように、本実施形態では、シート搬送装置100は2次転写装置59の直前(シートS搬送方向における直上流)に設置されているため、計測したシートサイズの露光データサイズや露光タイミングへの反映は、シートサイズが計測されたシートS自身ではなく、後続のシートSに対して反映させる。
【0124】
露光装置55は、メモリ等で構成される入力画像データをバッファするデータバッファ部と、画像形成するための画像データを生成する画像データ生成部と、シートサイズ情報からシート搬送方向の画像倍率補正を行う画像倍率補正部と、書込みクロックを生成するクロック生成部と、感光体ドラム56に光を照射して画像を形成する発光デバイスとを有する。
【0125】
前記データバッファ部は、コントローラなどのホスト装置(図示せず)から送られてくる入力画像データを転送クロックでバッファする。
【0126】
前記画像データ生成部は、クロック生成部からの書込みクロックと画像倍率補正部からの画素挿抜情報を基にして画像データを生成する。そして画像データ生成部から出力されたドライブデータは書込みクロックの1周期分の長さを、画像形成する1画素として、発光デバイスをON/OFF制御する。
【0127】
前記画像倍率補正部は、シート搬送装置100にて計測されるシートサイズ情報から、画像倍率切替をするための画像倍率切替信号を生成する。
【0128】
前記クロック生成手段は、クロック周期を変えられるように、さらには公知技術であるパルス幅変調といった画像補正を実施するために、書込みクロックの数倍の高周波で動作しており、基本的に装置速度に応じた周波数で書込みクロックを生成する。
【0129】
前記発光デバイスは、半導体レーザ、半導体レーザアレイ、面発光レーザなどの何れか又は複数で構成されており、ドライブデータに従い感光体ドラム56に光を照射して静電潜像を形成する。
【0130】
シートS上に形成されたトナー像からなる定着前画像は、定着装置32内で加熱および加圧されてシートS上に定着される。その際の加熱、加圧によりシートSには変形が起こり、シートSの搬送方向長さが伸縮により変化する場合がある。この結果、シートSの裏面への画像形成位置と表面に形成されている画像位置とに差異が生じ、出力画像の画質、見当精度(表面が変形しすぎて裏面とずれる)に影響する。なお、定着装置32は、本実施例として記載した加熱・加圧定着に代えて、加熱と加圧を別に行う形式でも良いし、又はフラッシュ定着等の構成であっても良い。
【0131】
このため、計測されたシートサイズに応じて画像倍率を補正し、さらに書出し位置を変えることで、定着装置32によるシートSの変形を打ち消すように画像を形成する。そのことで結果的にはシートSは変形するものの、シートSには裏表検討精度の高い画像を印刷することができる。
【0132】
シートSの変形を含むシートサイズは、シート搬送装置100から取得することができる。また、シートSの変形の仕方によっては、拡大のみ、縮小のみ、だけではなく、拡大および縮小を組み合わせた補正も可能である。
【0133】
両面印刷時、まずシートSの一端を先にして表面側にトナー像を定着する時に、シートSが変形する。その後、シートSは画像形成装置105内のシート反転路23により表裏面が反転され、このとき定着装置32に入るシートSの先端が表面印刷時とは他方の端部に変わる。このとき、画像位置補正を実施しない場合には、定着装置32から出てきたシートSをそのまま上側(裏面)から見た定着後出力画像の後端は、先に形成した表面の定着後出力画像の後端とずれるため、見当精度が悪くなるという現象が生じてしまう。
【0134】
これに対してシートSの裏面への画像形成時に上記した画像倍率及び画像形成位置の補正を実施することで、シートSの表裏の見当精度が向上する。
【0135】
<2次転写装置及びシート搬送装置の各ローラ周速の関係>
次に、2次転写装置59の2次転写対向ローラ60及び2次転写ローラ61、シート搬送装置100の従動ローラ13及び駆動ローラ14の各ローラの周速の関係について説明する。
【0136】
シート搬送部100は、従動ローラ13、駆動ローラ14、駆動ローラ14の駆動手段としてのモータ、駆動ローラ14とモータとの間に設けられる一方向クラッチを有する。
【0137】
駆動ローラ14は、駆動機構を介してモータの駆動力を受けて回転駆動し、従動ローラ13は駆動ローラ14との間でシートPを挟持して従動回転する。
【0138】
駆動ローラ14とモータとの間に設けられる一方向クラッチは、駆動ローラ14がシートSを搬送する回転方向にはモータが出力する駆動力を伝達し、シートSの搬送方向が逆になる方向には空転して駆動ローラ14への駆動力を遮断する。
【0139】
シート搬送装置100は、レジストローラ75からシートSを受け取り、所定のタイミングでシートSの先端が2次転写装置59に突入する様に、駆動ローラ14が所定の周速で回転して従動ローラ13と共にシートSを所定の搬送速度で挟持搬送する。
【0140】
2次転写装置59は、シート搬送装置100からシートSを受け取ってさらに搬送する。2次転写装置59は、シートS表面にトナー画像を転写する。2次転写装置59は、中間転写ベルト52、2次転写ローラ61、中間転写ベルト52及び2次転写ローラ61をそれぞれ個別に駆動させるモータ、2次転写ローラ61とモータとの間に設けられるトルクリミッタを有する。
【0141】
2次転写ローラ61とモータとの間に設けられるトルクリミッタは、制限された負荷トルクの範囲内で、モータの駆動力を2次転写ローラ61に伝達し、負荷トルクが一定値を超えるとスリップしてモータから2次転写ローラ61への駆動力を遮断する。
【0142】
2次転写装置59は、シートS搬送時以外に従動ローラ13と駆動ローラ14とが離間する様に接離機構を設けても良く、搬送するシートとシートの間等の非搬送時に離間させ、シートSを搬送する直前に従動ローラ13と駆動ローラ14を当接させる様に設けても良い。
【0143】
シート搬送装置100では、駆動ローラ12に接続するモータを周速Vaで回転駆動させるための駆動力を出力する。シートSをシート搬送装置100のみで搬送している間は、一方向クラッチは駆動ローラ14にモータの駆動力を伝達し、駆動ローラ14が周速Vaで観点することにより、シートSは速度Vaで搬送される。
【0144】
2次転写装置59では、中間転写ベルト52が周速Vb(≧Va)で回転し、2次転写ローラ61に接続するモータが、2次転写ローラ61を周速Vc(≧Vb)で回転駆動させるための駆動力を出力する。
【0145】
ここで、2次転写ローラ61とモータとの間に設けられているトルクリミッタのスリップトルクTsは、中間転写ベルト52と2次転写ローラ61との離間時の負荷トルクToと、中間転写ベルト52と2次転写ローラ61との当接時の負荷トルクTcとの間の値Ts(To<Ts<Tc)に設定されている。
【0146】
したがって、2次転写ローラ61が中間転写ベルト52に離間した状態では、トルクリミッタの負荷トルクToはスリップトルクTs未満であるため、トルクリミッタ42はモータの駆動力を2次転写ローラ61に伝達し、2次転写ローラ61は周速Vcで回転駆動する。また、2次転写ローラ61が中間転写ベルト52に当接した状態では、トルクリミッタの負荷トルクTcがスリップトルクTsを超えるため、トルクリミッタ42がモータ33からの駆動力を遮断し、2次転写ローラ61は中間転写ベルト52に従動して周速Vbで回転駆動する。
【0147】
この様な設定において、シート搬送装置100及び2次転写装置59の両方でシートSが搬送されている状態では、シートSは中間転写ベルト52の周速Vbで搬送され、シート搬送装置100の一方向クラッチが空転してモータから駆動ローラ14への駆動力が遮断される。したがって、この状態では駆動ローラ14は従動ローラ13と共に速度Vbで搬送されるシートSに従動して回転する。
【0148】
この様な構成により、シート搬送装置100から2次転写装置59にシートSが受け渡され、シートSにトナー画像が転写される間は、シートSは中間転写ベルト52の周速Vbに従って一定の速度Vbで搬送されることとなる。したがって、トナー転写時のシート搬送速度が一定に保たれることにより、バンディング等の異常画像の発生を防止し、画像形成装置105は均一な画像を形成することが可能になる。
【0149】
なお、シート搬送装置100の駆動ローラ14の周速Va、中間転写ベルト52の周速Vb、2次転写ローラ61の周速Vcが、以下の式(5)を満たすことにより、上記した効果を得ることができる。
【0150】
Va≦Vb≦Vc ・・・(5)
ただし、周速VaとVb、周速VbとVcとの差が大きいと、シート搬送時における一方向クラッチやトルクリミッタのスリップ量が大きくなり、発熱や磨耗等によって一方向クラッチ及びトルクリミッタの寿命が低下する。したがって、これらの周速差は小さい方が好ましく、同一の周速に設定することがさらに好ましい。しかし、温湿度等の環境変動によって駆動ローラ14、中間転写ベルト52及び2次転写ローラ61の各周速が変動し、上式(5)の関係を満たさなくなると、トナー画像転写時にシートSの搬送速度が変動してシートS上の画像伸縮が発生する虞がある。したがって、周速VaとVb、周速VbとVcとの間にはそれぞれ一定のマージンを設けることが好ましい。
【0151】
そこで、周速Va,Vb及びVcは、以下の式(6)、(7)を満たすことが好ましい。
【0152】
0.90Vb≦Va≦0.99Vb ・・・(6)
1.001Vb≦Vc≦1.05Vb ・・・(7)
さらに、一方向クラッチやトルクリミッタの寿命低下を防止すると共に、環境変動等を考慮して上記した効果を安定して得るために、周速Va,Vb及びVcは、以下の式(8)、(9)を満たすことが好ましい。
【0153】
0.95Vb≦Va≦0.99Vb ・・・(8)
1.001Vb≦Vc≦1.02Vb ・・・(9)
以上で説明した構成により、シートSへのトナー画像転写時のシート搬送速度を一定に保つことが可能であり、画像形成装置105はバンディング等の異常画像の発生を防止して均一な画像をシートSに形成して出力することが可能になる。
【0154】
なお、例えば感光体ドラムからシートSにトナー画像を直接転写する構成の画像形成装置であっても、本実施形態と同様にトナー画像転写時のシート搬送速度を一定に保つことができる。この場合には、本実施形態における中間転写ベルト52を感光体ドラム、2次転写ローラ61を感光体ドラムとの間でシートSに画像を転写させる転写ローラに置き換えた構成により、同様の効果を得ることができる。
【0155】
また、シート搬送装置100の駆動ローラ14とモータとの間の一方向クラッチの代わりに、シート搬送装置100と中間転写ベルト52等の両方での搬送時に駆動ローラ14がシートSに従動して回転する様にスリップトルクが設定されたトルクリミッタを設けても良い。
【0156】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0157】
11 スタートトリガセンサ(下流側検知手段)
12 ストップトリガセンサ(上流側検知手段)
13 従動ローラ
14 駆動ローラ
16 パルス計数手段(搬送量計測手段)
17 搬送距離算出手段
100,101,102 シート搬送装置
103,104,105 画像形成装置
S シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0158】
【特許文献1】特開2010−241600号公報
【特許文献2】特開2011−006202号公報
【特許文献3】特開2011−020842号公報
【特許文献4】特開2011−079662号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送経路に沿って挟持搬送する駆動ローラ及び従動ローラと、
前記駆動ローラ及び前記従動ローラの前記搬送経路の上流側で、前記シートを検知する上流側検知手段と、
前記駆動ローラ及び前記従動ローラの前記搬送経路の下流側で、前記シートを検知する下流側検知手段と、
前記駆動ローラ又は前記従動ローラによる前記シートの搬送量を計測する搬送量計測手段と、
前記上流側検知手段及び前記下流側検知手段による検知結果と前記搬送量計測手段による計測結果とに基づいて、前記駆動ローラ及び前記従動ローラによる前記シートの搬送距離を算出する搬送距離算出手段とを備え、
前記下流側検知手段によって前記シートが検知されてから、前記上流側検知手段によって前記シートが検知されるまでの間に、前記駆動ローラ及び前記従動ローラによって挟持搬送される前記シートの搬送長さが、前記搬送量計測手段によって前記搬送量が計測される前記駆動ローラ又は前記従動ローラの周長の略整数倍である
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記上流側検知手段及び前記下流側検知手段の少なくとも一方を、前記シートの搬送方向において異なる位置に複数備える
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記搬送距離算出手段は、
予め設定される前記シートの搬送方向の長さに基づいて、搬送時における前記シートの搬送方向の長さの計測に使用する前記上流側検知手段及び前記下流側検知手段を選択することを特徴とする請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記上流側検知手段及び前記下流側検知手段の少なくとも一方を、前記シートの搬送方向に移動可能に設ける
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
予め設定される前記シートの搬送方向の長さに基づいて、前記上流側検知手段及び前記下流側検知手段の少なくとも一方を前記シートの搬送方向に移動する
ことを特徴とする請求項4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記搬送距離算出手段は、算出する前記シートの搬送距離に、前記上流側検知手段と前記下流側検知手段との間の距離を加えることで、前記シートの搬送方向の長さを算出する
ことを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載のシート搬送装置を備える
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−60300(P2013−60300A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−123112(P2012−123112)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】