説明

シート材、排気ガス処理装置およびその製造方法

【課題】必要な強度と反発力をともに備えるシート材を提供すること、およびこのようなシート材を有する排気ガス処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明では、無機繊維を含み、表面または裏面の少なくとも一方にニードリング処理によって形成された複数の交絡点を有するシート材であって、前記交絡点の密度ρは、0.5個/cm≦ρ<20個/cmの範囲にあることを特徴とするシート材が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維を含むシート材およびそのようなシート材を保持シール材として使用した排気ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の台数は、今世紀に入って飛躍的に増加しており、それに比例して、自動車の内燃機関から排出される排気ガスの量も急激な増大の一途を辿っている。特にディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる種々の物質は、汚染を引き起こす原因となるため、現在では、世界環境にとって深刻な影響を与えつつある。
【0003】
このような事情の下、従来より各種排気ガス処理装置が提案され、実用化されている。一般的な排気ガス処理装置は、エンジンの排気ガスマニホールドに連結された排気管の途上にケーシング(例えば、金属シェル)を設け、その中に微細な孔を多数有する排気ガス処理体を配置した構造となっている。排気ガス処理体の一例としては、触媒担持体(触媒コンバータ)やディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)がある。例えばDPFの場合、上述の構造により、排気ガスが排気ガス処理体を通過する際に、その孔の周囲の壁に微粒子がトラップされ、排気ガス中から微粒子を除去することができる。排気ガス処理体の構成材料は、金属や合金の他、セラミック等である。セラミックからなる排気ガス処理体の代表例としては、コーディエライト製のハニカムフィルタが知られている。最近では、耐熱性、機械的強度、化学的安定性等の観点から、多孔質炭化珪素焼結体が排気ガス処理体の材料として用いられている。
【0004】
このような排気ガス処理体とケーシングの間には、通常保持シール材が設置される。保持シール材は、車両走行時等における排気ガス処理体とケーシングの当接による破損を防ぐとともにケーシングと排気ガス処理体との隙間から排気ガスがリークすることを防止するために用いられる。また、保持シール材は、排気ガスの排圧により排気ガス処理体が脱落することを防止する役割を有する。さらに排気ガス処理体は、反応性を維持するため高温に保持する必要があり、保持シール材には断熱性能も要求される。これらの要件を満たす部材としては、アルミナ系ファイバー等の無機繊維からなるシート材がある。
【0005】
このシート材は、排気ガス処理体の開口面を除く外周面の少なくとも一部に巻き付けられ、テーピング等によって排気ガス処理体と一体固定化される。その後、この一体品は、例えば、圧入方式により、ケーシング内に圧入、装着されて、排気ガス処理装置が構成される。
【0006】
一般に前述のシート材は、ニードリング処理によって製作される。ニードリング処理とは、シート材にニードルを抜き差しして、シート材の肉薄化を行う処理である。この処理により、交絡点(ニードルが抜き差しされた箇所)では、シート材の厚さ方向に繊維が編みこまれてシート材の厚さが薄くなるため、シート材の嵩高さが抑えられ、ハンドリング性の容易なシート材を得ることが可能となる。
【0007】
しかしながら、前述のシート材を保持シール材としてケーシング内に圧入する場合、保持シール材は、ケーシング内壁との摩擦によって大きな剪断力を受けるため、ケーシング内に圧入後の保持シール材には、位置ずれや隙間が生じたり、あるいは亀裂および/または剥離が生じる場合がある。このような位置ずれや隙間等が生じると、保持シール材のシール性が損なわれるとともに、前述の保持シール材の機能が発揮できなくなってしまう。そこでこのような問題を解決するため、シート材の交絡点の分布パターンを制御することにより、保持シール材のケーシングへの圧入を容易にする技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−65337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般にシート材の単位面積に含まれる交絡点数が多くなると、シート材の緻密性が高くなるため、強度は向上するが、シート材に柔軟性がなくなるため、シート材の反発力は低下する。また逆に、シート材の単位面積に含まれる交絡点数が少なくなると、シート材の柔軟性が増すため、シート材の反発力は向上するが、シート材の緻密性が低くなるため、強度は低下する。従って、シート材を排気ガス処理装置の保持シール材として使用する場合には、シート材の強度と反発力の相反する両特性を満足させるように、交絡点数および交絡点パターンを定める必要がある。しかしながら、前述の文献では、シート材をケーシング内に圧入し易くするための交絡点配置についてしか検討されておらず、このような検討のみでは、前述の両特性を最適化したシート材を得ることはできない。
【0009】
また、排気ガス処理体と保持シール材との一体品をケーシング内に装着するための方法は、前述のような圧入方式に限られるものではなく、例えばサイジング方式等の他の方法も存在する。サイジング方式は、前述の一体品を、この外径よりも大きな内径を有するケーシング内に抵抗なく、または小さな抵抗下で挿入した後、外周側からケーシングを圧縮して、ケーシングの内径を縮径させ、一体品とケーシング内壁の間の隙間を塞ぎ、ケーシング内に一体品を装着させる方法である。サイジング方式では、一体品の装着時に圧入方式のような剪断力が生じないため、シート材の特性としては、強度に比べて反発力の重要性が相対的に高くなる。このようにシート材の両特性(強度と反発力)の最適範囲は、装着方式によっても異なる場合がある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、強度と反発力の両特性が、各種装着方式に応じて最適化されたシート材を提供すること、またこのようなシート材を有する排気ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、無機繊維を含み、表面または裏面の少なくとも一方にニードリング処理によって形成された複数の交絡点を有するシート材であって、
前記交絡点の密度ρは、0.5個/cm≦ρ<20個/cmの範囲にあることを特徴とするシート材が提供される。
【0012】
ここで、前記交絡点は、前記表面または裏面の少なくとも一方において、全面分散的にまたは全面にわたって列状のパターンで形成されても良い。なお、「全面分散的」とは、交絡点が、例えば全面均一に、または不均一に、特定の周期パターンを形成せずにランダムに配置されていることを意味する(例えば、以降の「均一分散パターン配置」が該当する)。
【0013】
このような交絡点密度ρを有するシート材は、必要な強度と高い反発力の両特性を兼ね備えており、例えば、シート材を排気ガス処理装置の保持シール材として使用した場合、シート材の巻回時の亀裂および/または剥離の発生が抑制されるとともに、排気ガス処理体に対して良好な保持能力を発揮させることが可能となる。
【0014】
ここで、「シート材の反発力」とは、シート材に押圧が加わった際に、これを打ち消す方向に生じる抗力である。前述のように排気ガス処理装置においては、保持シール材は、ケーシングの内壁と排気ガス処理体の間に設置され、両側から押圧を受けるため、この反発力が大きい程、シート材を保持シール材として使用した場合に、排気ガス処理体に対する保持能力が高くなる。
【0015】
また、シート材は、さらに結合材を含有しても良い。結合材を含有することで、繊維同士の接着性が向上し、シート材のハンドリング時に繊維が飛散することを防止することが可能となる。
【0016】
さらに、シート材に含まれる無機繊維は、アルミナとシリカの混合物であっても良い。これにより断熱性能が向上する。
【0017】
また、本発明では、
排気ガス処理体と、
該排気ガス処理体の外周面の少なくとも一部に巻き付けて使用される保持シール材と、
該保持シール材が巻き付けられた前記排気ガス処理体を収容するケーシングと、
を備える排気ガス処理装置であって、
前記保持シール材は、無機繊維を含み、表面または裏面の少なくとも一方にニードリング処理によって形成された複数の交絡点を有するシート材で構成され、
前記交絡点の密度ρは、0.5個/cm2≦ρ<20個/cm2の範囲にあることを特徴とする排気ガス処理装置が提供される。このような排気ガス処理装置では、保持シール材の巻回の際に必要な強度を確保したまま、排気ガス処理体に対する保持能力を向上させることができる。
【0018】
ここで、前記交絡点は、前記シート材の表面または裏面の少なくとも一方において、全面分散的にまたは全面にわたって列状のパターンで形成されても良い。
【0019】
また、前記排気ガス処理体は、触媒担持体または排気ガスフィルタであっても良く、この場合、ガスシール性および触媒担持体または排気ガスフィルタに対する保持能力に優れた排気ガス処理装置が提供される。
【0020】
ここで、前記保持シール材が巻き付けられた排気ガス処理体は、クラムシェル方式、巻き締め方式およびサイジング方式のうちのいずれかの方式によって、前記ケーシング内に収容されても良い。
【0021】
あるいは、前記交絡点の密度ρは、5個/cm2≦ρ<20個/cm2の範囲にあり、
前記保持シール材が巻き付けられた排気ガス処理体は、圧入方式によって、前記ケーシング内に収容されても良い。
【0022】
また本発明では、排気ガス処理体と、保持シール材と、前記排気ガス処理体および保持シール材を内部に収容するケーシングと、によって構成される排気ガス処理装置の製造方法であって、
保持シール材を提供するステップと、
前記排気ガス処理体の外周面の少なくとも一部に、前記保持シール材を巻き付けるステップと、
前記保持シール材が巻き付けられた排気ガス処理体を、クラムシェル方式、巻き締め方式およびサイジング方式のうちのいずれかの方式によって、前記ケーシング内に収容するステップと、
を有し、
前記保持シール材は、無機繊維を含み、表面または裏面の少なくとも一方にニードリング処理によって形成された複数の交絡点を有するシート材で構成され、
前記交絡点の密度ρは、0.5個/cm≦ρ<20個/cmの範囲にあることを特徴とする排気ガス処理装置の製造方法が提供される。
【0023】
ここで、前記交絡点の密度ρは、0.5個/cm≦ρ<15個/cmの範囲にあることが好ましい。
【0024】
さらに本発明では、
排気ガス処理体と、保持シール材と、前記排気ガス処理体および保持シール材を内部に収容するケーシングと、によって構成される排気ガス処理装置の製造方法であって、
保持シール材を提供するステップと、
前記排気ガス処理体の外周面の少なくとも一部に、前記保持シール材を巻き付けるステップと、
前記保持シール材が巻き付けられた排気ガス処理体を、圧入方式によって、前記ケーシング内に収容するステップと、
を有し、
前記保持シール材は、無機繊維を含み、表面または裏面の少なくとも一方にニードリング処理によって形成された複数の交絡点を有するシート材で構成され、
前記交絡点の密度ρは、5個/cm≦ρ<20個/cmの範囲にあることを特徴とする排気ガス処理装置の製造方法が提供される。
【0025】
ここで、前記交絡点の密度ρは、5個/cm≦ρ<15個/cmの範囲にあることが好ましい。
【0026】
また、これらの製造方法において、前記交絡点は、前記表面または裏面の少なくとも一方において、全面分散的にまたは全面にわたって列状のパターンで形成されても良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、強度と反発力の両特性が、各種装着方式に応じて最適化されたシート材を提供することが可能となる。また各シート材に適した装着方式を用いて排気ガス処理装置を製作することにより、使用時に排気ガス処理体の位置ずれや脱落等がなく、良好なシール性を有する排気ガス処理装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
【0029】
図1には、本発明によるシート材24の一形態を示す。ただし本発明のシート材は、図1の形状に限られるものではない。また図2には、図1の形状の本発明のシート材24を排気ガス処理体20の保持シール材15として使用して、排気ガス処理装置10を製作する際の組み立て図の一例を示す。
【0030】
本発明によるシート材24は、図1に示すように、巻回方向(X方向)と垂直な両端面70、71に1組の嵌合凸部50と嵌合凹部60を有しており、このシート材24が保持シール材15として使用され、触媒担持体(触媒コンバータ)等の排気ガス処理体20に巻き付けられた際には、図2に示すように、嵌合凸部50と嵌合凹部60が嵌合され、保持シール材15が、排気ガス処理体20に固定される。その後、保持シール材15が巻き回された排気ガス処理体20(以下、「被覆排気ガス処理体」210と称する)は、例えば図2のように、圧入方式により金属等で構成された筒状のケーシング12内に圧入され、装着される(この方法は、以下に詳しく説明する)。
【0031】
なお、被覆排気ガス処理体210をケーシング12内に装着する方法は、圧入方式に限られない。例えば、クラムシェル方式、巻き締め方式およびサイジング方式(以下、これらの方式をまとめて「非圧入方式」と称する)によって、被覆排気ガス処理体210をケーシング12内に収容して、排気ガス処理装置10を製作することも可能である。
【0032】
以下、各装着方式を図面を用いて詳しく説明する。図3、図4、図5および図6は、それぞれ、圧入方式、クラムシェル方式、巻き締め方式およびサイジング方式により、被覆排気ガス処理体210をケーシング内に装着する方法を模式的に示したものである。
【0033】
圧入方式は、前述のように、被覆排気ガス処理体210を、ケーシング221の開口面の一方から押し込むことにより、被覆排気ガス処理体210を所定の位置に装着して、排ガス処理装置10を構成する方法である。被覆排気ガス処理体210のケーシング221への挿入を容易にするため、図3に示すように、内孔径が一方から他方に向かって小さくなるように定形され、最小内孔径が、ケーシング221の内径とほぼ同等の寸法になるように調整された圧入冶具230が使用される場合もある。この場合、被覆排気ガス処理体210は、前記圧入冶具230の広内孔径側から挿入され、最小内孔径側を通ってケーシング221内に装着される。
【0034】
また、クラムシェル方式では、図4に示すように、相互に向かい合わせた際に、一対のケーシングが完成されるように分割された(例えば、図の例では2分割された)ケーシング部材(222A、222B)が使用される。これらのケーシング部材の一つに被覆排気ガス処理体210を設置してから、残りのケーシング部材を組み合わせ、さらにこれらの部材同士を、例えば、フランジ部220(220A、220B)で溶接してケーシング222を構成することにより、被覆排気ガス処理体210が所定の位置に装着されたガス処理装置10を得ることができる。
【0035】
また、巻き締め方式は、図5に示すように、被覆排気ガス処理体210の周囲に、ケーシング部材となる金属板223を巻き付けた後、この金属板223をワイヤロープ等を用いて締め付けて、金属板223を被覆排気ガス処理体210の周囲に所定の面圧で当接させる方式である。最後に金属板223の一方の端部を、他方の端部または下側の金属板223の表面と溶接することにより、被覆排気ガス処理体210がケーシング223内部に装着された排ガス処理装置10が得られる。
【0036】
さらに、サイジング方式は、図6に示すように、被覆排気ガス処理体210を、その外径よりも大きな内径の金属ケーシング224の中に抵抗なく、または小さな抵抗下で挿入した後、プレス機等により、金属ケーシング224を外周側から均一に圧縮(サイジング(JIS―z2500―4002))する方式である。サイジング処理により、金属ケーシング224の内径が所望の寸法に正確に調整されるとともに、被覆排気ガス処理体210を所定の位置に設置することができる。サイジング方式では、処理の際に、排気ガス処理体20に大きな圧縮応力が瞬間的に負荷される。
【0037】
なお、これらの装着方式に使用されるケーシングの材質の一例には、例えばステンレス鋼等の耐熱合金がある。
【0038】
次に、再度図1を参照して、本発明の特徴について説明する。本発明のシート材24は、後述のように、ニードリング処理によって製作される。またシート材24の表面には、ニードリング処理によって形成された多数の交絡点30が存在する。また、この交絡点30の密度ρは、0.5個/cm≦ρ<20個/cmの範囲にある。
【0039】
一般に、シート材24の強度と反発力は相反する関係にある。例えば、シート材24の強度は、シート材24の圧縮度を高める(例えば、ニードリング処理による交絡点30の密度を大きくする)ことによって向上するが、著しく圧縮度を高めたシート材24では、緻密性が高くなりすぎて、柔軟性が極端に低くなるため、反発力が低下する。逆に、シート材24の圧縮度を小さくする(例えば、ニードリング処理による交絡点30の密度を小さくする)と、柔軟性が高くなりシート材24の反発力は大きくなるが、強度が低下し、小さな応力を受けただけでも、容易に亀裂が生じたり、剥離したりしてしまう。例えば、シート材24を排気ガス処理体20に装着する際には、シート材24の両端部70、71に張力が生じるようにしながら、シート材24を排気ガス処理体20に巻き回す。このため、シート材24の強度が不足すると、シート材24を排気ガス処理体20に装着する際に、シート材24に亀裂や剥離が生じる場合がある。
【0040】
従って、シート材24を排気ガス処理装置の保持シール材15として使用する場合には、シート材24の強度と反発力の両特性を最適化させる必要がある。
【0041】
しかしながら、前述のように、被覆排気ガス処理体210をケーシング内に装着する方式は、複数存在する。このうち、少なくとも圧入方式と非圧入方式では、シート材24に要求される両特性(強度と反発力)の最適範囲は異なることが予想され、特に、非圧入方式では、圧入方式に比べて必要な強度は小さくなると予想される。なぜなら、圧入方式では、被覆排気ガス処理体210のケーシング内への圧入時に、ケーシング内面と被覆排気ガス処理体210の摩擦により、シート材24には大きな剪断力が生じるのに対して、非圧入方式では、そのような剪断応力が生じないからである。
【0042】
そこで、本願発明者は、シート材の交絡点密度ρと強度および反発力との関係を鋭意研究した。その結果、本願発明者は、圧入方式と非圧入方式のそれぞれの方式に使用されるシート材において、固有の交絡点密度ρの最適範囲が存在することを見出した。
【0043】
その結果によれば、非圧入方式で装着される被覆排気ガス処理体210に使用されるシート材の交絡点密度ρの範囲は、0.5個/cm≦ρ<20個/cmであることが好ましく、0.5個/cm≦ρ<15個/cmであることがより好ましく、0.5個/cm≦ρ<10個/cmであることがさらに好ましい。すなわち、シート材の交絡点密度ρを上記範囲とすることにより、必要最小限の強度を維持したまま、高い反発力を有するシート材を得ることができる。また、圧入方式で装着される被覆排気ガス処理体210に使用されるシート材の場合、交絡点密度ρの最適範囲は、5個/cm≦ρ<20個/cmであって、5個/cm≦ρ<15個/cmであることがより好ましい。すなわち、交絡点密度ρを上記範囲とすることにより、圧入時の剪断力によって亀裂および/または剥離が生じないように、高い強度を維持したまま、高い反発力を有するシート材を得ることができる。なお、圧入方式および非圧入方式の両方式で装着される被覆排気ガス処理体210に使用されるシート材の交絡点数ρを、ρ<15個/cmの範囲とした場合、後述のように、従来のシート材に比べて、有意に大きな反発力を有するシート材を提供することができる。
【0044】
本発明のシート材24では、シート材の装着方式に応じて、交絡点30の密度ρが前述のように設定されており、シート材24に十分な強度が得られる。従って、いずれの装着方式でシート材24を装着させる場合であっても、排気ガス処理体への巻回時およびケーシングへの装着時に、前述のような亀裂の問題が生じることはない。さらに、一旦シート材24が装置に装着されると、シート材24は、十分な反発力を有するため、排気ガス処理体20に対して良好な保持能力を示し、排気ガス処理体20が装置内部でずれたり、排気ガスが漏れたりすることも生じにくくなるという効果が得られる。
【0045】
ここで本願では、交絡点30の密度ρは、以下のように測定した。まず、製作が完了したシート材を、切断機等を使用して、50mm×50mmの寸法に切り抜いて、測定用サンプルを調製する。次に、測定用サンプルの厚みが略1/2となるように、カッターナイフ等で、測定用サンプルを厚み方向と略垂直な方向に切断する。このようにして得られた測定用サンプルの新生面を表面Aと呼ぶ。次に表面Aの交絡点に残留している繊維を除去し、表面Aに交絡点を出現させる。このような操作によって、表面Aに出現した交絡点数を数え、単位面積当たりの個数を算出する。このような測定をシート材の異なる場所で合計5回行い、得られた値の平均値を交絡点30の密度ρ(個/cm)とした。
【0046】
なお、図1に示した例では、シート材表面には、ほぼ均一に交絡点30が形成されている(以下このような交絡点配置を「均一分散パターン」という)。しかしながら、本発明の態様は、交絡点がこのような均一分散パターンで形成されているシート材に限られるものではない。例えば、交絡点パターンは、図7に示すような「縦型配置パターン」、図8に示すような「横型配置パターン」、図9に示すような「傾斜配置パターン」またはさらに別のパターンとしても良い。縦型配置パターンでは、交絡点は、シート材24の長手方向に対して垂直な方向に形成された多数の交絡点列で構成され、各交絡点列は、等しいピッチで配置されても良い。横型配置パターンでは、交絡点は、シート材24の長手方向に対して平行な方向に形成された多数の交絡点行で構成され、各交絡点行は、等しいピッチで配置されても良い。傾斜配置パターンでは、交絡点は、シート材24の長手方向に対して一定の角度αを有するように形成された多数の交絡点列で構成され、各交絡点列は、等しいピッチで配置されても良い。
【0047】
ここで、等しいピッチで配置された縦型配置パターンの場合、交絡点の各列のピッチPは、通常約1mm〜約15mmであり、特に約3mm〜6mmであることが好ましい。また、等しいピッチで配置された横型配置パターンの場合、交絡点の各行のピッチPは、通常約1mm〜約15mmであり、特に約3mm〜6mmであることが好ましい。さらに、等しいピッチで配置された傾斜配置パターンの場合は、交絡点の各列のピッチPは、通常約1mm〜約15mmであり、特に約3mm〜6mmであることが好ましい。またシート材の長手方向に対する交絡点列の傾きαは、通常1゜から179゜であり、特に、30゜〜45゜であることが好ましい。
【0048】
なお、シート材の交絡点30が「均一分散パターン」以外のパターンで構成されている場合、シート材からの測定用サンプル(50mm×50mm)の採取の仕方によって、交絡点密度ρが大きく変動してしまう。そこで本願では、縦型配置パターン、横型配置パターンおよび傾斜配置パターン等、均一分散パターン以外のパターンで交絡点が形成されているシート材については、以下に示す方法で交絡点密度測定用サンプルを採取した。図10は、交絡点が縦型配置パターンで形成されたシート材24の表面の部分拡大図である。この場合、測定用サンプルは、一つの切断辺100が、いずれかの交絡点列(図の例ではC1列)と一致するようにして切断される。同様に、横型配置パターンの場合は、測定用サンプルの一つの切断辺100が、いずれかの交絡点行と一致するようにして、測定用サンプルが切断される。さらに傾斜配置パターンの場合は、測定用サンプルの一つの切断辺100が、いずれかの傾斜した交絡点列と一致するようにして切断される。なお、均一分散パターンの場合は、測定用サンプルをシート材の任意の箇所から任意の方向で採取した。
【0049】
このようなシート材24を保持シール材15として使用し、以下のように排気ガス処理装置10を製作することができる。図11および図12には、本発明による排気ガス処理装置10の製造フローを概略的に示す。なお図11は、圧入方式により、また図12は非圧入方式により、排気ガス処理装置10を製作する場合に対応する。
【0050】
図11に示すように、圧入方式により排気ガス処理装置10を製作する場合、まず、ステップS100では、保持シール材15として使用される、交絡点密度ρが5個/cm≦ρ<20個/cmの範囲に制御されたシート材24が提供される。次に、ステップS110では、排気ガス処理体20の外周面に、このシート材24(すなわち保持シール材15)が巻き付けられ、シート材24の端部を嵌合、固定することにより、シート材24と排気ガス処理体20とが一体化される。次に、ステップS120では、この保持シール材15が巻き付けられた排気ガス処理体20が、前述の圧入方式によって、ケーシング12内に収容され、排気ガス処理装置10が構成される。
【0051】
一方、非圧入方式により排気ガス処理装置10を製作する場合は、図12に示すように、ステップS200では、交絡点密度ρが0.5個/cm≦ρ<20個/cmの範囲に制御されたシート材24が提供される。次に、ステップS210では、排気ガス処理体20の外周面に、このシート材24(すなわち保持シール材15)が巻き付けられ、シート材24の端部を嵌合、固定することにより、シート材24と排気ガス処理体20とが一体化される。次に、ステップS220では、この保持シール材15が巻き付けられた排気ガス処理体20が、前述のサイジング方式等の非圧入方式によって、ケーシング12内に収容され、排気ガス処理装置10が構成される。
【0052】
本発明によるシート材24を保持シール材15として利用した排気ガス処理装置10の一例を図13に示す。図において、排気ガス処理装置10は、排気ガス処理体20と、保持シール材15と、ケーシング12とで構成される。この図の例では、排気ガス処理体20は、排気ガス流と平行な方向に多数の貫通孔を有する略円筒状の触媒担持体として示されている。また排気ガス処理体20の外周面には、前述の方法で、保持シール材15が巻回し固定されている。さらに排気ガス処理体20と保持シール材15は、圧入方式または非圧入方式でケーシング12内に装着されている。ここで、保持シール材15を圧入方式で装着する場合には、保持シール材15に使用されるシート材の交絡点密度ρは、5個/cm≦ρ≦20個/cmの範囲とされる。また、非圧入方式で装着する場合には、保持シール材15に使用されるシート材の交絡点密度ρは、0.5個/cm≦ρ≦20個/cmの範囲とされる。
【0053】
なお、この図では、排気ガス処理体20は、ガス流と平行な方向に多数の貫通孔を有する触媒担持体として示したが、本発明の排気ガス処理装置10は、このような構成に限られるものではない。例えば、排気ガス処理体20を貫通孔の一部が目封じされたDPFとすることもできる。このような排気ガス処理装置10の構成では、本発明のシート材の良好な反発力のため、ケーシング内での保持シール材の位置が安定するとともに、保持シール材の排気ガス処理体に対する保持能力が向上する。
【0054】
以下、本発明のシート材の製作方法の一例を説明する。
【0055】
まず、無機繊維からなる積層状シートを製作する。なお以下の説明では、無機繊維としてアルミナとシリカの混合物を用いるが、無機繊維材料は、これに限られるものではなく、例えばアルミナまたはシリカのみで構成されても良い。アルミニウム含有量70g/l、Al/Cl=1.8(原子比)の塩基性塩化アルミニウム水溶液に、例えばアルミナ−シリカ組成比が60〜80:40〜20となるようにシリカゾルを添加し、無機繊維の前駆体を調製する。特にアルミナ−シリカ組成比は、70〜74:30〜26程度であることがより好ましい。アルミナ組成比が60%以下では、アルミナとシリカから生成されるムライトの組成比率が低くなるため、完成後のシート材の熱伝導度が高くなり、十分な断熱性能が得られないからである。
【0056】
次にこのアルミナ系繊維の前駆体にポリビニルアルコール等の有機重合体を加える。その後この液体を濃縮し、紡糸液を調製する。さらにこの紡糸液を使用して、ブローイング法により紡糸する。
【0057】
ブローイング法とは、エアーノズルから吹き出される空気流と紡糸液供給ノズルから押し出される紡糸液流とによって、紡糸を行う方法である。エアーノズルからのスリットあたりのガス流速は、通常40〜200m/sである。また紡糸ノズルの直径は通常0.1〜0.5mmであり、紡糸液供給ノズル1本あたりの液量は、通常1〜120ml/h程度であるが、3〜50ml/h程度であることが好ましい。このような条件では、紡糸液供給ノズルから押し出される紡糸液は、スプレー状(霧状)となることなく十分に延伸され、繊維相互で溶着されにくいので、紡糸条件を最適化することにより、繊維径分布の狭い均一なアルミナ繊維前駆体を得ることができる。
【0058】
ここで、製作されるアルミナ系繊維の平均繊維長は、250μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましい。平均繊維長が250μm未満では、繊維同士が十分に絡み合わず、十分な強度が得られないからである。また無機繊維の平均直径は、特に限られないが、約3μmから約8μmの範囲にあることが好ましく、約5μmから約7μmの範囲にあることがより好ましい。
【0059】
紡糸が完了した前駆体を積層して、積層状シートを製作する。さらに積層状シートに対してニードリング処理を行う。ニードリング処理とは、ニードルを積層状シートに抜き差しして、シートの肉薄化を行う処理である。ニードリング処理には、通常ニードリング装置が用いられる。
【0060】
通常、ニードリング装置は、突き刺し方向(通常は上下方向)に往復移動可能なニードルボードと、積層状シートの表面および裏面の両面側に設置された一対の支持板とで構成される。ニードルボードには、積層状シートに突き刺すための多数のニードルが、例えば約25〜5000個/100cmの密度で取り付けられている。また各支持板には、ニードル用の多数の貫通孔が設けられている。従って、一対の支持板によって積層状シートを両面から押さえつけた状態で、ニードルボードを積層状シートの方に近づけたり遠ざけたりすることにより、ニードルが積層状シートに抜き差しされ、繊維の交絡された多数の交絡点が形成される。ここで、ニードリング装置には、さらに積層状シートを一定の送り速度(例えば、約20mm/秒)で一定の方向(積層状シートの表裏面と略平行な方向)に搬送する搬送手段が設けられても良い。この場合、積層状シートを一定速度で移動させた状態で、ニードリング処理を行うことが可能となるため、ニードルボードを1回圧接する度に、積層状シートを移動させるという操作が不要となる。また、送り速度とニードルボードの圧接周期を連動させることにより、前述の縦型配置パターン、横型配置パターンまたは傾斜配置パターン等の特殊な交絡点パターンを簡単に形成することが可能となる。
【0061】
また、別の構成として、ニードリング装置は、2組のニードルボードを備えても良い。各ニードルボードは、それぞれの支持板を有する。2組のニードルボードを、それぞれ、積層状シートの表面および裏面に配設して、各支持板で積層状シートを両面から固定する。ここで、一方のニードルボードには、ニードリング処理時に他方のニードルボードのニードル群と位置が重ならないように、ニードルが配置されている。また、それぞれの支持板には、両方のニードルボードのニードル配置を考慮して、積層状シートの両面側からのニードリング処理時に、ニードルが支持板に当接しないように、多数の貫通孔が設けられている。このような装置を用いて、2組の支持板で積層状シートを両面側から挟み、2組のニードリングボードで積層状シートの両側からニードリング処理が行われても良い。このような方法でニードリング処理を行うことにより、処理時間が短縮される。また、ニードルボードに設置することができるニードル数には限度があるが、この方法では、1台のニードルボードに設置するニードル数を削減することができるため有意である。
【0062】
このようなニードリング処理によって生じた交絡点では、複雑に絡み合った繊維が積層方向に配向されており、積層状シートの積層方向の強化を図ることができる。これにより、積層上シートの強度が向上する。また、ニードリング処理では、本発明のような交絡点密度ρが所定の範囲に制御されたシート材を容易に得ることができる。
【0063】
次に、このようにニードリング処理の施された積層状シートを常温から加熱し、最高温度1250℃程度で連続焼成することで、所定の目付け量(単位面積当たりの重量)のシート材が得られる。
【0064】
ハンドリングの容易化のため、このようにして得られたシート材は、所定の寸法に裁断される。
【0065】
次に、裁断されたシート材には、樹脂のような有機系結合材が含浸されることが好ましい。これにより、シート材の嵩高さを抑制することができる。また、シート材のハンドリング性が向上する。さらに、使用中の排気ガス処理装置に高温排気ガスが導入されると、保持シール材に含浸された有機結合材は熱により消失するため、圧縮されていた保持シール材が復元され、ケーシングと排気ガス処理体の間に存在する可能性のあるわずかの隙間も塞がれることとなり、保持シート材の保持能力および、シール性が向上する。
【0066】
有機系結合材の含有量は、1.0〜10.0重量%の範囲であることが好ましい。1.0重量%未満では、十分に無機繊維の離脱を防止することができないからである。また10.0重量%よりも多くなると、排気ガス処理装置の使用時に排出される有機成分の量が増加する。
【0067】
なお有機系結合材としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ゴム系樹脂、スチレン系樹脂などが使用できる。例えばアクリル系(ACM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)樹脂等を用いることが好ましい。
【0068】
このような有機系結合材と水とで調製した水分散液を用いて、スプレー塗布により、シート材に樹脂を含浸させる。なおシート材中に含まれる余分な添着固形分および水分は、次工程で除去される。
【0069】
次に、余分な固形分の除去および乾燥処理を行う。余分な固形分の除去は、吸引法で行われる。また余分な水分の除去は、加熱圧縮乾燥法によって行われる。この方法では、シート材に押圧を付加するため、余分な水分が除去されると共に、シート材が肉薄化される。乾燥は、95〜155℃程度の温度で行われる。95℃よりも温度が低いと、乾燥時間が長くなり生産効率が低下する。また155℃を超える乾燥温度では、有機系結合材自身の分解が開始され、有機系結合材による接着性が損なわれる。
【0070】
最後に、シート材は、所定の形状に裁断される(例えば図1に示す形状)。
【0071】
このようにして得られたシート材は、例えば、図13に示すように、排気ガス処理装置10の排気ガス処理体20の保持シール材15として使用される。この場合、保持シール材15を排気ガス処理体20に巻回し、接合される端部の嵌合凸部50と嵌合凹部60とを嵌合、固定する。次にこのような状態で、保持シール材15と排気ガス処理体20の一体品を、ステンレス鋼等で構成されるケーシング12内に装着する。
【0072】
前述のように、本発明のシート材は、各装着方式に対応した良好な強度を有するため、いずれの方式でケーシング12内に被覆排気ガス処理体210を装着する場合であっても、シート材に剥離や亀裂が生じることが回避される。さらに、保持シール材(シート材)をケーシング12内に装着した後には、本発明のシート材の良好な反発力のため、ケーシング内での保持シール材の位置が安定するとともに、保持シール材の排気ガス処理体に対する保持能力が向上する。
【0073】
以下、本発明の効果を実施例により説明する。なお、以下の実施例では、被覆排気ガス処理体を圧入方式によりケーシング内に装着する場合、およびサイジング方式等の非圧入方式によりケーシング内に装着する場合のそれぞれのケースを想定した各種試験により、各シート材の特性を評価した。
【実施例】
【0074】
[圧入方式による装着を想定したシート材の評価]
シート材は、以下の手順により製作した。
【0075】
[シート材の製作]
アルミニウム含有量70g/l、Al/Cl=1.8(原子比)の塩基性塩化アルミニウム水溶液に、アルミナ系繊維の組成がAl:SiO=72:28となるように、シリカゾルを配合し、アルミナ系繊維の前駆体を形成した。
【0076】
次にアルミナ系繊維の前駆体に、ポリビニルアルコール等の有機重合体を添加した。さらに、この液を濃縮して紡糸液とし、この紡糸液を用いてブローイング法にて紡糸した。その後アルミナ系繊維の前駆体を折りたたんだものを積層して、アルミナ系繊維の積層状シートを製作した。
【0077】
次にこの積層状シートに対して、ニードリング処理を行った。ニードリング処理は、それぞれ50個/100cmのニードルが設置された2組のニードルボードを積層状シートの両面側に配設し、積層状シートの両側から行った。積層状シートの送り速度は、1mm/秒とした。本実施例では、ニードリング処理後に積層状シートに形成される交絡点パターンは、前述の「縦型配置パターン」であった(図7参照)。また交絡点列間のピッチPは、一定で3mmであった。
【0078】
このようなニードリング処理によって、約7個/cmの交絡点密度ρを有するシート材が得られた。その後、得られたシート材を常温から最高温度1250℃で連続焼成し、目付け量1160g/cmのアルミナ系繊維のシート材を得た。アルミナ系繊維の平均直径は5.8μmであり、最小直径は3.2μmであった。
【0079】
なお繊維の平均直径は、以下の方法により測定した。まず、アルミナ系繊維をシリンダーに入れ、20.6MPaで加圧粉砕する。次にこの試料をふるい網に載せ、ふるいを通過した試料を電子顕微鏡観察用試験体とする。この試験体の表面に金等を蒸着させた後、倍率約1500倍程度の電子顕微鏡写真を撮影する。得られた写真から少なくとも40本の繊維の径を測定する。この操作を5試料について繰り返し、測定値の平均を繊維の平均直径とした。
【0080】
上記工程で作製されたシート材を、図1に示す形状となるように裁断した(X方向の最大長さ約460mm、Y方向の最大長さ約135mm)。
【0081】
このような工程を経て得られたシート材を、実施例1とする。なお、本発明の実施例では、以降に示す各評価試験において、シート材自身の反発力を正確に評価するため、シート材に有機バインダを含浸させていない。
【0082】
次に、ニードリング処理の際の積層状シートの送り速度を変えることによって、交絡点密度が3個/cm〜17個/cmとなるようにした以外は、上述の実施例1と同じ処理により、実施例2〜6のシート材を作製した。また、上述の実施例1と同様の処理により、シート材の表面に形成された交絡点密度が0.5個/cmとなるように、実施例7のシート材を作製した。ただしこのシート材では、ニードリング処理の際に、50個/100cmのニードルが設置された1台のニードルボードのみを使用し、積層状シートの片側のみからニードルボードを圧接させた。さらに、シート材の表面に形成された交絡点密度が21個/cm〜33個/cmとなるようにした以外は、上述の実施例1と同じ処理により、比較例1〜5のシート材を作製した。なお実施例7を除く実施例2〜6および比較例1〜5に係るシート材の交絡点パターンは、いずれも「縦型配置パターン」であり、ピッチは一定で3mmであった。これに対して、実施例7に係るシート材では、交絡点配置は、「均一分散パターン」であった。さらに、前述の実施例1と同様の方法で、アルミナ系繊維の前駆体を形成し、この前駆体に、ポリビニルアルコール等の有機重合体を添加し、さらに、この液を濃縮して紡糸液とし、この紡糸液を用いてブローイング法にて紡糸した。その後アルミナ系繊維の前駆体を折りたたんだものを積層して、アルミナ系繊維の積層状シートを製作した。これを比較例6のシート材とする。なお、比較例6では、ニードリング処理を一切行っておらず、交絡点密度ρは、ゼロである。
【0083】
このようにして製作された実施例1〜7および比較例1〜6のシート材における交絡点密度を表1に示す。
【0084】
【表1】

次に得られた各シート材またはこのシート材から切り出した試料を用いて、以下の評価試験を行った。
【0085】
[圧入試験]
前述の方法で製作した各シート材の強度を確認するため、圧入試験を行った。この試験は以下のように行った。まず、実施例1〜7、および比較例1〜6の各シート材を略円筒状の触媒担持体(外径143.8mm、長さ150mm)の外周面に巻き回して、端部を嵌合し一体化させた。次に、この一体品をステンレス製のケーシング(内径150.4mm、長さ150mm)内に圧入する。その後、ケーシングをカッター等で軸方向に略2等分されるように切断し、一体品を取り出し、シート材表面の亀裂の有無を観察した。
【0086】
各シート材で得られた結果を表1に示す。実施例1、3〜6および比較例1〜5のシート材を使用した場合、試験後のシート材端部には特に亀裂および剥離は見られず、良好な状態であった。これに対して、実施例7のシート材を使用した試験では、シート材を触媒担持体に巻き回し、端部を嵌合し一体化させる際に、シート材の端部に剥離が生じた(従って、本シート材では、その後の圧入試験を実施していない)。また、実施例2のシート材を使用した試験では、圧入試験後に、シート材の端部嵌合部に剥離が生じていることが確認された。なお、比較例6のシート材では、触媒担持体に巻き回すことができなかった。
【0087】
[面圧評価試験]
次に、前述の方法で製作した各シート材から採取したサンプルを用いて面圧評価試験を行った。図14には、面圧評価試験に使用した装置110を示す。装置110は、略水平な試料保持台120を備える門型の支柱130で構成される。この装置110の中央(試料保持台120の上部)には、荷重計測機能を備え、上下に昇降するクロスヘッド140が設けられており、このクロスヘッド140の下面側には、直径約100mmの上部円盤プレート150が設置されている。この上部円盤プレート150には、変位計160が取り付けられている。また試料保持台120上には、直径約100mmの下部円盤プレート170が設置されており、この下部円盤プレート170は、前記上部円盤プレート150の垂直軸と同一の軸上にあり、両プレートは、対向するように設置されている。試験の際には、下部円盤プレート170上には、重量が既知の各シート材のサンプル180(50mm×50mm)が設置される。
【0088】
このような装置110を用いて以下の方法により、面圧測定を行う。まずクロスヘッド140は、サンプル180と上部円盤プレート150との間に見かけ上隙間が生じなくなくなるレベルまで、予め下降させておく。この状態で、クロスヘッド140を1mm/分の速度で下降させ、サンプル180を圧縮し、サンプル180の嵩密度が0.3g/cmとなったときにサンプル180に生じる荷重を測定する。なおサンプル180の嵩密度は、サンプル180の重量/サンプル180の面積/上部円盤プレート150と下部円盤プレート170の間隔で求められる。得られた荷重をサンプル面積で除して、面圧(kPa)を求めた。
【0089】
各シート材に対して得られた面圧測定結果を表1に示す。また図15には、面圧測定結果をグラフにして示す。図15の横軸は、シート材の交絡点密度であり、縦軸は、測定面圧である。前述のように、シート材の交絡点の密度が大きくなると、面圧は低下する傾向にあるが、交絡点数が著しく増大すると、面圧はもはや変化せず一定となる。これは、交絡点数が著しく大きくなると、シート材の緻密性がそれ以上変化しなくなり、反発力に差異が生じなくなるためであると考えられる。なお、20個/cm以下の場合、図15に示すように、面圧が顕著に高くなり、俳句ガス処理体の保持能力を大きく改善できる。また、0.5個/cm以上とすることで、シート材の繊維の厚み方向の絡み合いが強くなり、ハンドリング時のシート材の厚さ方向の剥離を抑制することができる。20個/cm以下とすることで面圧が高くなる理由は明確ではないが、次のように推定される。
【0090】
無機繊維の集合体が圧縮されたときに発生する反発力は、無機繊維の曲げ応力の総和に依存する。従って、個々の無機繊維の曲げ応力が大きい程、シート材の反発力は、大きくなると考えられる。また、通常の場合、無機繊維は、湾曲形状を有し、この湾曲度合いが大きい程、曲げ応力は大きくなる。次に、シート材にニードリング処理を行った場合を考えると、ニードリング処理による交絡点の密度が少ないシート材では、湾曲度合いの大きな無機繊維が三次元的に配向した状態となっていることが予想される。これに対して、ニードリング処理による交絡点の密度が大きなシート材では、無機繊維が二次元的に配向し易くなる。従って、両方のシート材を同一の条件で圧縮させた場合、前者の方が、反発力は大きくなると考えられる。
【0091】
前述のように、交絡点数が3個/cm以下のシート材(実施例2、7)ではハンドリング時の剥離は見られなかったものの、巻き付け時、圧入後に端部に剥離が見られ、強度は不十分であった。一方、交絡点数が20個/cmを超えると(比較例1〜5)、面圧の低下が激しくなる。従って、先の圧入試験結果とこの結果から、前述の圧入方式での使用を想定した場合、良好な強度と反発力をともに有するシート材を得るには、シート材の交絡点数は、5個/cm≦ρ<20個/cmの間にあることが好ましいといえる。
【0092】
排気ガス処理装置の保持シール材として一般に使用されているシート材では、通常交絡点密度は、約19〜21個/cm程度である場合が多い。このようなシート材の面圧は、図15から、約180kPa程度であると算定される。一方、交絡点密度が〜14個/cmの範囲にあるシート材では、面圧は、190kPa以上となっており、従来のシート材よりも反発力(面圧)の大きなシート材を得ることができることがわかる。さらに図15の結果を詳しく解析すると、交絡点密度が15個/cm前後(14〜17個/cmの間)の位置で、交絡点密度に対する面圧の変化傾向が異なる(変化が不連続となる)こと、すなわち、この位置に、面圧変化の変曲点が存在することがわかる。この傾向に従えば、交絡点密度が約15個/cmよりも大きくなると、面圧が急激に低下し、逆に、交絡点密度が約15個/cmより小さくなると、面圧を高い範囲に維持することができることになる。従って、面圧を高く維持するという観点からは、圧入方式で使用する場合のシート材の交絡点密度の上限は、ρ<15個/cmとすることがより好ましいと言える。
[非圧入方式による装着を想定したシート材の評価]
[シート材の製作]
シート材は、前述の[圧入方式による装着を想定したシート材の評価]において示した手順と同様の手順により製作した。製作された実施例8〜10および比較例7、8のシート材における交絡点密度を表2に示す。
【0093】
【表2】

なお比較例7では、ニードリング処理を一切行っておらず、交絡点密度ρは、ゼロである。また、実施例8〜10および比較例8に係るシート材の交絡点パターンは、いずれも「縦型配置パターン」であり、ピッチは一定で3mmであった。さらに、前述の場合と同様、いずれのシート材にも有機バインダは含浸されていない。
【0094】
このようにして得られた各シート材から切り出した試料を用いて、以下の評価試験を行った。
【0095】
[圧縮復元繰り返し試験]
前述の各シート材から採取したサンプルを用いて圧縮復元繰り返し試験を行った。この試験は、シート材の圧縮と復元を最大1000回繰り返し、シート材の面圧変化を測定するものである。
【0096】
排気ガス処理装置を実際に車両等に装着して使用した場合、(エンジンのオンオフに対応する)排気ガスの流通/停止による装置温度の上昇/下降に伴って、ケーシングおよび排気ガス処理体は、寸法が変化する。従って、両者の間に介在されているシート材は、装置内で圧縮と復元による繰り返し応力負荷を受ける。この試験では、圧縮と復元の繰り返しサイクルによって、このようなシート材の状態を再現することができるため、長期間使用後のシート材の保持能力を模擬評価することができる。
【0097】
また、サイジング方式で被覆排気ガス処理体をケーシング内に装着する場合、ケーシングには、「オーバーシュート」と呼ばれる現象が生じる。これは、金属ケーシングを使用した場合に生じる現象であり、ケーシングを縮径加工した直後に、金属自体の形状回復力(反発力)により、ケーシングの内径が幾分広がる現象である。従って実際には、シート材は、最初にケーシングの縮径により大きな圧縮力を受けた後、このオーバーシュートのため、復元力を受ける。本試験では、短サイクル側で、このような実際のサイジング方式による装着の際にシート材が受ける応力挙動を模擬することができる。
【0098】
試験には、前述の面圧評価試験に使用した装置110(図14)を流用した。すなわち、装置110の下部円盤プレート170上に、重量が既知の各シート材のサンプル180(50mm×50mm)を設置して、以下の手順で試験を実施した。
【0099】
まずクロスヘッド140は、サンプル180と上部円盤プレート150との間に見かけ上隙間が生じなくなくなるレベルまで、予め下降させておく。この状態で、クロスヘッド140を1mm/分の速度で下降させ、サンプル180を圧縮し、サンプル180の嵩密度が0.3g/cmとなったときにサンプル180に生じる荷重を測定する。なおサンプル180の嵩密度は、サンプル180の重量/サンプル180の面積/上部円盤プレート150と下部円盤プレート170の間隔で求められる。得られた荷重をサンプル面積で除して、圧縮面圧(kPa)を算定する。
【0100】
次に、クロスヘッド140を1mm/分の速度で上昇させ、サンプル180を復元し、サンプル180の嵩密度が0.275g/cmとなったときにサンプル180に生じる荷重を測定し、これを前述の方法により面圧に換算し、復元面圧(kPa)を算定する。この操作を1000サイクル繰り返し、シート材の圧縮面圧および復元面圧の変化を測定する。なお、クロスヘッドの上昇/下降速度は、1mm/分とした。また、各サンプルについて同様の測定を3回行い、それらの平均値を以降の結果として使用した。
【0101】
各サンプルについて得られた結果の一例を図16および図17に示す。両図において横軸は、サンプルの交絡点密度ρ(個/cm)であり、縦軸は、復元面圧(kPa)である。また、図16は、1サイクル後の復元面圧を示し、図17は、1000サイクル後の復元面圧を示している。
【0102】
両図から、1サイクル後および1000サイクル後のいずれにおいても、交絡点密度ρが約4個/cmのときに、復元面圧が最大となることがわかる。また、交絡点密度ρが0≦ρ<10個/cmのときに、極めて良好な復元面圧が得られることがわかる。さらに、交絡点密度が約20個/cmを超えると、復元面圧は、交絡点密度ρに対してあまり変化しなくなった。
【0103】
この結果と、前述の面圧評価試験の結果(図15)から、非圧入方式によりシート材をケーシング内に装着する場合、シート材の最適な交絡点密度ρの下限を、圧入方式の場合(5個/ccm≦ρ)に比べて、より拡張することが可能であることがわかる。圧入方式とは異なり、非圧入方式では、被覆排気ガス処理体のケーシングへの装着時に、ケーシング内面とシート材外表面との間に、摩擦による剪断力が生じることはないからである。しかしながら実際には、非圧入方式においても、シート材を排気ガス処理体の外周面に巻き回して固定化する操作は、依然として必要であるため、この操作の際に、シート材に亀裂等が生じることは好ましくない。従って、比較例1に係るシート材の交絡点密度(0.5個/cm)が、非圧入方式に使用されるシート材の交絡点密度の下限となる。一方、図15〜17の結果から、非圧入方式によりシート材をケーシング内に装着する場合、シート材の最適な交絡点密度ρの上限は、圧入方式の場合と同様の値となる(すなわちρ≦20個/cmであり、特にρ≦15個/cmであることが好ましい)。
【0104】
以上のことから、非圧入方式によってケーシング内に装着されるシート材の交絡点密度ρの適性範囲は、0.5個/cm2≦ρ≦20個/cm2であり、0.5個/cm2≦ρ≦15個/cm2であることがより好ましく、0.5個/cm2≦ρ≦10個/cm2であることがさらに好ましいと言える。なおこれらの適性範囲は、シート材に有機結合材が含まれていない場合の試験結果に基づくものであり、シート材に有機結合材を含浸させた場合、適正交絡点密度の下限は、さらに低下し得ると予想される。
【0105】
図18には、シート材を圧縮する際の圧縮速度と圧縮面圧(0サイクル目)の関係を示す。この図は、前述の面圧評価試験装置(図14)を用いた以下の試験により得られた結果である:まず、シート材サンプル(前述の実施例1、3および比較例3、8のシート材のいずれか)を、図14の面圧評価試験装置110の下部円盤プレート170上に載せる。次に、前述の面圧評価試験と同様の手順により、クロスヘッド140を下降させて、サンプルを嵩密度が0.2g/cmになるまで圧縮し、そのときの圧縮面圧を測定する。同様の測定を、クロスヘッド140の下降速度(すなわち圧縮速度)を1mm/分から100mm/分まで変化させて実施する。このような試験を、各種交絡点密度ρを有するシート材サンプルで実施する。
【0106】
この図から、シート材の交絡点密度によらず、圧縮速度の増大によって、シート材の面圧は高くなる傾向にあることがわかる。特に、交絡点密度ρが7個/cmおよび14個/cmのシート材(前述の実施例1および5に相当する)では、相関直線の勾配が極めて大きくなっている。これらの相関直線から、例えば、交絡点密度ρが7個/cmのシート材では、圧縮速度が約1mm/分から約50mm/分に増加した場合、圧縮面圧は、約45から約52kPaに増大し(16%の増加)、また交絡点密度ρが14個/cmのシート材では、圧縮面圧が約40から約47kPaに増大することがわかる(18%の増加)。
【0107】
前述のようにサイジング方式では、被覆排気ガス処理体210をケーシングに装着し、ケーシングの外周を縮径する際に、シート材は、大きな圧縮速度(例えば、約50mm/分)で圧縮される。すなわち、図18の相関直線から、シート材の交絡点密度ρが7個/cmおよび14個/cmの場合、サイジング方式による装着によってシート材が受ける面圧は、圧縮速度が1mm/分の場合に比べて、それぞれ、16%および18%増大することが予想される。このように、シート材の交絡点密度ρが同程度であっても、サイジング方式では、完成後の排気ガス処理装置において、装着されたシート材の面圧を他の非圧縮方式よりも大きくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の保持シール材および排気ガス処理装置は、車両用の排気ガス処理装置等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明のシート材の一形態を示す図である。
【図2】本発明のシート材を保持シール材として使用して、排気ガス処理装置を構成するときの構成図である。
【図3】圧入方式により、被覆排気ガス処理体をケーシング内に設置する方法を模式的に示した図である。
【図4】クラムシェル方式により、被覆排気ガス処理体をケーシング内に設置する方法を模式的に示した図である。
【図5】巻き締め方式により、被覆排気ガス処理体をケーシング内に設置する方法を模式的に示した図である。
【図6】サイジング方式により、被覆排気ガス処理体をケーシング内に設置する方法を模式的に示した図である。
【図7】別のパターンで交絡点が形成された、本発明のシート材を示す図である。
【図8】さらに別のパターンで交絡点が形成された、本発明のシート材を示す図である。
【図9】さらに別のパターンで交絡点が形成された、本発明のシート材を示す図である。
【図10】「縦型配置パターン」で交絡点が形成されたシート材から、交絡点密度測定用サンプルを採取する方法を模式的に示した図である。
【図11】圧入方式により、本発明による排ガス処理装置を製作する方法を示すフロー図である。
【図12】非圧入方式により、本発明による排ガス処理装置を製作する方法を示すフロー図である。
【図13】本発明の排気ガス処理装置の一構成例を示す図である。
【図14】面圧測定試験装置の概略図である。
【図15】シート材の交絡点密度と面圧の関係を示すグラフである。
【図16】交絡点密度と1サイクル後の復元面圧の関係を示すグラフである。
【図17】交絡点密度と1000サイクル後の復元面圧の関係を示すグラフである。
【図18】各交絡点密度のシート材に対して得られた、圧縮速度と圧縮面圧の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0110】
2 導入管
4 排気管
10 排気ガス処理装置
12 ケーシング
15 保持シール材
20 排気ガス処理体
24 シート材
30 交絡点
50 嵌合凸部
60 嵌合凹部
110 面圧測定装置
120 試料保持台
130 門型支柱
140 クロスヘッド
150 上部円盤プレート
160 変位計
170 下部円盤プレート
180 シート材のサンプル
210 被覆排気ガス処理体
221、222、223、224 ケーシング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維を含み、表面または裏面の少なくとも一方にニードリング処理によって形成された複数の交絡点を有するシート材であって、
前記交絡点の密度ρは、0.5個/cm≦ρ<20個/cmの範囲にあることを特徴とするシート材。
【請求項2】
前記交絡点は、前記表面または裏面の少なくとも一方において、全面分散的にまたは全面にわたって列状のパターンで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート材。
【請求項3】
結合材が含有されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシート材。
【請求項4】
前記無機繊維は、アルミナとシリカの混合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシート材。
【請求項5】
排気ガス処理体と、
該排気ガス処理体の外周面の少なくとも一部に巻き付けて使用される保持シール材と、
該保持シール材が巻き付けられた前記排気ガス処理体を収容するケーシングと、
を備える排気ガス処理装置であって、
前記保持シール材は、無機繊維を含み、表面または裏面の少なくとも一方にニードリング処理によって形成された複数の交絡点を有するシート材で構成され、
前記交絡点の密度ρは、0.5個/cm2≦ρ<20個/cm2の範囲にあることを特徴とする排気ガス処理装置。
【請求項6】
前記交絡点は、前記シート材の表面または裏面の少なくとも一方において、全面分散的にまたは全面にわたって列状のパターンで形成されていることを特徴とする請求項5に記載の排気ガス処理装置。
【請求項7】
前記排気ガス処理体は、触媒担持体または排気ガスフィルタであることを特徴とする請求項5または6に記載の排気ガス処理装置。
【請求項8】
前記保持シール材が巻き付けられた排気ガス処理体は、クラムシェル方式、巻き締め方式およびサイジング方式のうちのいずれかの方式によって、前記ケーシング内に収容されることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の排気ガス処理装置。
【請求項9】
前記交絡点の密度ρは、5個/cm2≦ρ<20個/cm2の範囲にあり、
前記保持シール材が巻き付けられた排気ガス処理体は、圧入方式によって、前記ケーシング内に収容されることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の排気ガス処理装置。
【請求項10】
排気ガス処理体と、保持シール材と、前記排気ガス処理体および保持シール材を内部に収容するケーシングと、によって構成される排気ガス処理装置の製造方法であって、
保持シール材を提供するステップと、
前記排気ガス処理体の外周面の少なくとも一部に、前記保持シール材を巻き付けるステップと、
前記保持シール材が巻き付けられた排気ガス処理体を、クラムシェル方式、巻き締め方式およびサイジング方式のうちのいずれかの方式によって、前記ケーシング内に収容するステップと、
を有し、
前記保持シール材は、無機繊維を含み、表面または裏面の少なくとも一方にニードリング処理によって形成された複数の交絡点を有するシート材で構成され、
前記交絡点の密度ρは、0.5個/cm≦ρ<20個/cmの範囲にあることを特徴とする排気ガス処理装置の製造方法。
【請求項11】
前記交絡点の密度ρは、0.5個/cm≦ρ<15個/cmの範囲にあることを特徴とする請求項10に記載の排気ガス処理装置の製造方法。
【請求項12】
排気ガス処理体と、保持シール材と、前記排気ガス処理体および保持シール材を内部に収容するケーシングと、によって構成される排気ガス処理装置の製造方法であって、
保持シール材を提供するステップと、
前記排気ガス処理体の外周面の少なくとも一部に、前記保持シール材を巻き付けるステップと、
前記保持シール材が巻き付けられた排気ガス処理体を、圧入方式によって、前記ケーシング内に収容するステップと、
を有し、
前記保持シール材は、無機繊維を含み、表面または裏面の少なくとも一方にニードリング処理によって形成された複数の交絡点を有するシート材で構成され、
前記交絡点の密度ρは、5個/cm≦ρ<20個/cmの範囲にあることを特徴とする排気ガス処理装置の製造方法。
【請求項13】
前記交絡点の密度ρは、5個/cm≦ρ<15個/cmの範囲にあることを特徴とする請求項12に記載の排気ガス処理装置の製造方法。
【請求項14】
前記交絡点は、前記表面または裏面の少なくとも一方において、全面分散的にまたは全面にわたって列状のパターンで形成されていることを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の排気ガス処理装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−292040(P2007−292040A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265432(P2006−265432)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】