説明

シート状積層体の製造方法およびシート状積層体

【課題】接着剤層を用いずにシート状基材表面に繊維状樹脂層を設けることにより、低コストで、目付量の小さな繊維状樹脂層を有するシート状積層体を製造することができるシート状積層体の製造方法を提供することにある。また、かかる方法で製造されたシート状積層体を提供する。
【解決手段】シート状積層体1の製造方法は、シート状基材2の少なくとも一方の最外面に、オレフィン系樹脂を含む溶融樹脂を、繊維状にスプレー塗布して、該樹脂からなる繊維状樹脂層3を設けるシート状積層体の製造方法であって、該繊維状樹脂層が目付量0.5〜10g/m2となるように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状積層体の製造方法および該シート状積層体に関する。更に詳しくは、スプレーコーティングによる、シート状基材の最外層に繊維状樹脂層を有するシート状積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、お茶や清涼飲料水等の飲料用容器としては、軽量性、リサイクル性の観点などから、PETボトルなどのプラスチック製の容器が広く用いられている。これらの容器には、多くの場合、内容物を表示しかつ装飾性、耐スクラッチ性、滑り性などの各種機能性を付与する目的で、インキやコーティング剤等の樹脂組成物が塗工されたプラスチックフィルムからなるラベル(シュリンクラベルなど)が装着されている。これらの中には、和紙調の風合いを与えるなどの装飾的観点や、断熱性や滑り防止などの機能的観点から、不織布や和紙を積層させたプラスチックラベルが知られている(特許文献1〜3参照)。なお、本発明において、「和紙調」、「和紙風」とは、広く「繊維状の表面装飾が施された形態」を含むものとする。
【0003】
しかし、これらのプラスチックフィルムと不織布や和紙を貼り合わせたラベルは、製造工程が多くコストアップとなる、最外層として用いた場合には使用時に「毛羽立ち」が生じて意匠性が低下するなどの問題が生じていた。また、積層に接着剤を用いているため、目付量を小さくすると不織布や和紙表面に接着剤がしみ出す、シート端部まで接着剤を塗布できず、端部に不織布の「浮き」が生じるなどの問題も生じていた。さらに、目付量の小さな和紙の場合、工程で破れが生じて生産性が低下するおそれがあった。不織布の場合には、不織布を別に製造するため、目付量がある程度大きくなり、不織布層を通して下の印刷を見せるなどの装飾ができないという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−67189号公報
【特許文献2】特開2005−4017号公報
【特許文献3】特開2006−215245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、接着剤層を用いずにシート状基材表面に繊維状樹脂層を設けることにより、低コストで、目付量の小さな繊維状樹脂層を有するシート状積層体を製造することができるシート状積層体の製造方法を提供することにある。また、かかる方法で製造されたシート状積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の溶融樹脂をシート状基材に直接スプレーコートすることにより、シート状基材上に目付量の小さな繊維状樹脂層を形成でき、なおかつ、該繊維状樹脂層が剥離等を起こしにくく、さらに表面タック性なども生じない優れたシート状積層体を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、シート状基材の少なくとも一方の最外面に、オレフィン系樹脂を含む溶融樹脂を、繊維状にスプレー塗布して、該樹脂からなる繊維状樹脂層を設けるシート状積層体の製造方法であって、該繊維状樹脂層が目付量0.5〜10g/m2となるように設けることを特徴とするシート状積層体の製造方法を提供する。
【0008】
さらに、本発明は、120〜180℃の溶融温度で溶融樹脂をスプレー塗布するとともに、スプレー装置のノズル先端とシート状基材間の距離が30〜100mmである前記のシート状積層体の製造方法を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、スプレー装置のノズルの樹脂吐出口面積が吐出口1個あたり0.01〜0.3mm2、ノズルの幅1mあたりの樹脂吐出口の数が300〜5000個であり、スプレー装置に供給される熱風流量が、ノズルの幅1mあたり50〜2000L/分である前記のシート状積層体の製造方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、シート状基材がシュリンクフィルムである前記のシート状積層体の製造方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、シート状基材の少なくとも一方の最外層に、オレフィン系樹脂を含む樹脂からなる繊維状樹脂層を有するシート状積層体であって、該繊維状樹脂層の目付量が0.5〜10g/m2であることを特徴とするシート状積層体を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、繊維状樹脂層を形成する繊維状樹脂の平均繊維径が10〜70μmである前記のシート状積層体を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、オレフィン系樹脂を含む樹脂が、オレフィン系樹脂とスチレン系エラストマーから構成される混合樹脂である前記のシート状積層体を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、スチレン系エラストマーがスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であり、オレフィン系樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体である前記のシート状積層体を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、混合樹脂中における、スチレン系エラストマーの含有量が0.5〜50重量%であり、オレフィン系樹脂の含有量が50〜99.5重量%である前記のシート状積層体を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、シート状基材がシュリンクフィルムである前記のシート状積層体を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、プラスチックラベル用途である前記のシート状積層体を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシート状積層体の製造方法は、繊維状樹脂層を接着剤層を用いずに、シート状基材上に直接塗工するため、当該繊維状樹脂層の目付量を小さくすることが可能で、なおかつ、得られたシート状積層体は、繊維状層の目付量が小さくても、接着剤の浸みだしの問題が生じない。また、オレフィン系樹脂を含む溶融樹脂をシート状基材へ直接スプレー塗布することにより、基材にダメージを与えることなく、繊維状樹脂層とシート状基材との接着性が良好で剥離が生じにくく、なおかつ、生産性、コスト面でも優れている。従って、本発明で得られたシート状積層体は、PETボトルなどに用いられるラベルとして特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明のシート状積層体の一例を示す概略断面図である。図1に示されるシート状積層体1は、シート状基材2(プラスチックフィルムなど)の少なくとも片面に、繊維状樹脂層3が設けられている。繊維状樹脂層3の他にも、例えば、デザイン印刷層4や抑え印刷層5が設けられていてもよい。プラスチックラベル(シュリンクラベル)として用いる場合は、例えば、図1に示すように、シート状基材(プラスチックフィルム)2の一方の面に繊維状樹脂層3が設けられ、他方の面にデザイン印刷層4が設けられ、さらにその上に抑え印刷層5が設けられた構成が好ましく用いられる。
【0020】
図2は本発明のシート状積層体の製造方法(繊維状樹脂層の形成工程)の一例を示す概略図である。ロール6から巻き出されたシート状基材7の少なくとも一方の最外面に、メルター9で溶融されたオレフィン系樹脂を含む溶融樹脂を、スプレー装置8を用いて、スプレー塗布(スプレーコーティング)することにより、シート状基材7の表面上に該樹脂からなる繊維状樹脂層を形成する。
【0021】
[シート状基材]
本発明のシート状積層体の製造に用いられるシート状基材としては、プラスチックフィルム(プラスチックシート)または合成紙、原紙表面に樹脂がコーティングされた樹脂コーティング紙などを用いることができる。繊維状樹脂層を形成する樹脂がスプレー塗布される表面が樹脂層でない場合(例えば、普通紙などの場合)には、塗工された繊維状の樹脂と表面との密着性が低く、繊維状樹脂層が剥離し易いため好ましくない。中でも、本発明のシート状積層体をシュリンクラベルとして用いる場合には、シート状基材としては、シュリンクフィルムが好ましく用いられる。
【0022】
上記プラスチックフィルムとしては、用途などに応じて、適宜選択することが可能であり、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、アラミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アクリル等の樹脂からなるフィルムを用いることができる。中でも、ポリオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリスチレン系フィルムが好ましく、最も好ましくはポリエステル系フィルムである。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)系やポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)系などを用いることができ、中でも好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)系である。
【0023】
上記プラスチックフィルムは、単層フィルムであってもよいし、要求物性、用途などに応じて、複数のフィルム層を積層した積層フィルムであってもよい。また、積層フィルムの場合、異なる樹脂からなるフィルム層を積層していてもよい。例えば、中心層と表層部からなる3層積層フィルムで、中心層がスチレン系樹脂またはオレフィン系樹脂からなり、表層がポリエステル系樹脂からなるフィルムなどが挙げられる。
【0024】
上記プラスチックフィルムは、用途に応じて、未延伸フィルムでも、1軸又は2軸以上に延伸されたフィルムでもよい。例えば、シュリンクフィルムの場合には、シュリンク特性を発揮する観点から、1軸、2軸または多軸に配向したフィルムであることが好ましい。シュリンクフィルムが積層フィルムの場合には、積層フィルム中の少なくとも1層のフィルム層が配向していることが好ましい。全てのフィルム層が無配向の場合には、十分なシュリンク特性と発揮できない場合がある。シュリンクフィルムとしては、特に1軸または2軸配向フィルムが用いられることが多く、中でも、フィルム幅方向(ラベル周方向となる方向)に強く配向しているフィルム(実質的に幅方向に1軸延伸されたフィルム)がシュリンクラベルとしては、一般的に用いられる。
【0025】
上記プラスチックフィルムは、溶融製膜または溶液製膜などの慣用の方法によって作製することができる。また、市販品を用いることも可能である。プラスチックフィルムの表面には、必要に応じて、コロナ放電処理やプライマー処理等の慣用の表面処理が施されていてもよい。積層フィルムの場合、積層の方法としては、慣用の方法、例えば、共押出法、ドライラミネート法などを用いることが可能である。プラスチックフィルムに配向を施す方法としては、長手方向(縦方向;MD方向)および幅方向(横方向;TD方向)の2軸延伸、長手、または、幅方向の1軸延伸を用いる。延伸方式は、ロール方式、テンター方式、チューブ方式の何れの方式を用いてもよい。延伸条件は用途や要求物性によっても異なり、特に限定されないが、例えばシュリンクラベル用のシュリンクフィルムでは、70〜100℃程度の温度で、必要に応じて長手方向に例えば1.01〜1.5倍、好ましくは1.05〜1.3倍程度に延伸した後、幅方向に3〜6倍、好ましくは4〜5.5倍程度延伸することにより行う場合が多い。
【0026】
上記プラスチックフィルムの熱収縮率(90℃、10秒)は、特に限定されないが、例えば、筒状シュリンクラベル用途の場合には、シュリンク加工性等の観点から、長手方向が−3〜15%、幅方向が20〜90%が好ましい。また、巻き付けシュリンクラベル用途の場合には、長手方向が20〜80%、幅方向が−3〜20%が好ましい。
【0027】
シート状基材に透明性が求められる場合(基材を通して裏面に印刷されたデザインを見せる場合など)には、シート状基材として用いられるプラスチックフィルムの透明度(ヘイズ値(%):JIS K 7105)は、10未満が好ましく、より好ましくは5.0未満、さらに好ましくは2.0未満である。ヘイズ値が10以上の場合には、フィルムを通して印刷を見せる場合に、印刷が曇り、装飾性が低下することがある。
【0028】
上記シート状基材の厚みは、用途、基材の材質によっても異なり、特に限定されないが、プラスチックフィルムの場合には10〜200μmが好ましい。中でも、シート状基材がシュリンクフィルムの場合には、10〜100μmが好ましく、より好ましくは20〜80μmである。
【0029】
上記シート状基材としては、市販品を用いることも可能であり、例えば、シュリンクフィルムの場合、ポリエステル系シュリンクフィルムでは、三菱樹脂(株)製「ヒシペット」、東洋紡績(株)製「スペースクリーン」等が挙げられる。また、表層がポリエステル系樹脂、中心層がポリスチレン系樹脂である積層シュリンクフィルムでは、三菱樹脂(株)「DL」、グンゼ(株)「HGS」等が挙げられる。
【0030】
[繊維状樹脂層を形成する樹脂]
本発明のシート状積層体において、繊維状樹脂層を形成する樹脂は、少なくとも、オレフィン系樹脂を必須成分として含む。繊維状樹脂層を形成する樹脂としてオレフィン系樹脂を用いることにより、樹脂が低温で融解するため、シート状基材へのダメージが少なく、塗工後の滑りがよくなる。
【0031】
また、繊維状樹脂層を形成する樹脂としては、上記オレフィン系樹脂に加えて、スチレン系エラストマーを用いる(即ち、オレフィン系樹脂とスチレン系エラストマーから構成される混合樹脂を用いる)ことが好ましい。スチレン系エラストマーを用いることによって、粘弾性付与により、密着性や特にシュリンク加工時の収縮追従性の効果が発揮される。
【0032】
本発明における繊維状樹脂層を形成する樹脂に用いられるスチレン系エラストマーとしては、構成モノマーとしてスチレン系単量体を1種又は2種以上含む共重合体エラストマーが好ましく、例えば、スチレン系単量体とブタジエンやイソプレン等のジエン系単量体(共役ジエン)からなる共重合体(特に、ブロック共重合体)であるスチレン−共役ジエン共重合体;スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体などの共重合体であるスチレン−重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体;スチレン−共役ジエン−重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体などが例示される。
【0033】
上記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。
【0034】
上記スチレン−共役ジエン共重合体に用いられる共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、クロロプレンなどが挙げられる。中でも、特に好ましくは、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを用いたスチレン−ブタジエン共重合体である。また、共重合の形態としては、特に限定されないが、ブロック共重合体が好ましく、スチレンブロック(S)−共役ジエンブロック(D)型、S−D−S型、D−S−D型、S−D−S−D型等が挙げられる。また、スチレン−共役ジエン共重合体において、スチレン含有量は55〜95重量%(共役ジエン含有量:5〜45重量%)程度が好ましい。
【0035】
上記スチレン−共役ジエン共重合体としては、中でも、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体、それらの水素添加物ポリマーなどのスチレン系エラストマーが好ましく、特に好ましくは、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)である。
【0036】
上記スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体において、スチレン含有量は、65〜90重量%(ブタジエン含有量:10〜35重量%)が好ましく、より好ましくは75〜88重量%(ブタジエン含有量:12〜25重量%)である。
【0037】
上記スチレン−重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体に用いられる重合性不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル(特に、(メタ)アクリル酸C1-10アルキルエステル);フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチルなどのフマル酸モノ又はジエステル;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸モノ又はジエステル;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチルなどのイタコン酸モノ又はジエステルなどが挙げられる。これらの重合性不飽和カルボン酸エステルは単独で又は2種以上を混合して使用できる。スチレン−重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体中のスチレン含有量は50〜98重量%が好ましい。より好ましくは60〜95重量%、更に好ましくは70〜90重量%である。なお、ここでいう「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」をさす。
【0038】
上記スチレン−共役ジエン−重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体に用いられる共役ジエン、重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体は前記の化合物が挙げられる。スチレン−共役ジエン−重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体中の、スチレン含有量は50〜98重量%、共役ジエン含有量は1〜45重量%、重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体含有量は1〜45重量%が好ましい。より好ましくはスチレン含有量が60〜90重量%、共役ジエン含有量が5〜35重量%、重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体含有量5〜35重量%であり、更に好ましくはスチレン含有量が65〜80重量%、共役ジエン含有が5〜25重量%、重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体含有量が5〜25重量%である。
【0039】
本発明における繊維状樹脂層を形成する樹脂に用いられるオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体(エラストマーも含む)などであってもよいが、特に、エチレンと極性モノマーの共重合体が好ましい。極性モノマーを有することにより、ポリエステル系フィルム等の極性を有するシート状基材、特にラベル用のシート状基材に対する密着性が向上する。上記極性モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸;これらの不飽和カルボン酸の金属塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルやマレイン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸エステルなどが挙げられる。なお、上記「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」は「アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステル」を意味する。他も同様である。
【0040】
オレフィン系樹脂としては、上記の中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルを必須のモノマー成分とする共重合体であり、必要に応じて、更にその他の共重合モノマー成分を共重合してもよい。共重合モノマー成分としては、例えば、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合モノマー成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0041】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体の、エチレン成分含有量は、該共重合体を形成するモノマー成分全量に対して、65〜99重量%が好ましく、より好ましくは80〜98重量%である。酢酸ビニル成分含有量は、1〜35重量%が好ましく、より好ましくは2〜20重量%である。なお、2種以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体を混合して用いる場合には、エチレン−酢酸ビニル共重合体混合物中の全エチレン成分の合計量及び全共重合モノマー成分の合計量が上記範囲を満たしていることが好ましい。エチレン成分含有量が上記範囲を外れる場合には、ブロッキングが発生する場合がある。
【0042】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体がその他の共重合モノマー成分を含む場合には、共重合モノマー成分含有量は、モノマー成分全量に対して、10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下である。最も好ましくは、その他の共重合モノマー成分は用いずにエチレンと酢酸ビニルのみをモノマー成分とする場合である。
【0043】
本発明における繊維状樹脂層を形成する樹脂中、スチレン系エラストマーの含有量は、0.5〜50重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。スチレン系エラストマーの含有量が50重量%を超えるとオレフィン系樹脂の含有量が低下して、塗工表面の滑り性が低下する(表面にタックが生じる)場合がある。
【0044】
一方、繊維状樹脂層を形成する樹脂中のオレフィン系樹脂の含有量は、50〜99.5重量%が好ましく、より好ましくは60〜90重量%である。オレフィン系樹脂の含有量が50重量%未満の場合には、塗工表面の滑り性が低下する場合がある。
【0045】
また繊維状樹脂層を形成する樹脂中には、その他の添加剤を含んでよく、例えば、シリカ、ポリエチレンワックス等の滑剤を添加して、さらに滑り性を向上させることもできる。
【0046】
本発明における繊維状樹脂層を形成する樹脂の軟化点(環球法:JIS K6863)は、80〜150℃が好ましく、より好ましくは90〜110℃である。軟化点が80℃未満の場合には、耐熱性が不足し、例えば、シュリンクラベルに用いた場合、シュリンク加工の際に再溶融する場合がある。また、150℃を超えると、高温で溶融して塗布する必要が生じるため、シート状基材(特にシュリンクフィルム)が熱変形を起こす場合がある。なお、繊維状樹脂層を形成する樹脂が混合樹脂である場合には、上記軟化点は、混合樹脂の軟化点である。
【0047】
本発明における繊維状樹脂層を形成する樹脂の溶融粘度(B型回転粘度計、140℃)は3000〜30000mPa・sが好ましく、より好ましくは、15000〜25000mPa・sである。
【0048】
上記樹脂は、和紙調の風合いを発現する観点から、白色であることが好ましい。これは、例えば、上記樹脂を混合樹脂により形成する場合に、樹脂同士(例えば、スチレン系エラストマーとオレフィン系樹脂)が非相溶であることにより、白色を呈する場合であってもよい。なお、用途に応じて、上記樹脂は透明であってもよいし、着色剤(染料、顔料など)によって着色されていてもよい。
【0049】
[繊維状樹脂層の形成(スプレーコーティング)]
本発明のシート状積層体において、シート状基材上への繊維状樹脂層の形成は、上記樹脂のスプレー塗布(スプレーコーティング)により行う。上記スプレー塗布は、公知慣用のスプレー塗布機を用いて行うことができる。具体的には、繊維状樹脂層を形成する樹脂をメルターに供給し加熱溶融させた後、空気(通常、加熱、加圧した空気である。以下、「熱風」と称する)とともにスプレー装置(スプレーガン)に供給し、ノズル部分に配置された樹脂吐出口(ノズル口と称する)から噴射し、走行する基材シート表面上に吹き付け、塗布する(図1)。なお、上記スプレー塗布は、シート状基材を冷却ロールに巻き付け、冷却しながら、ロールと反対面にスプレーすることが好ましい。
【0050】
上記、スプレー塗布は、シート状基材上に形成される繊維状樹脂層の目付量が0.5〜10g/m2となるように行う。好ましくは、2〜7g/m2、より好ましくは3〜5g/m2である。繊維状樹脂層の目付量が10g/m2を超えると、繊維状樹脂同士の重なりあいが多くなって、シート状基材との密着性が低下し、繊維状樹脂層が剥離しやすくなる。また、プラスチックラベルとして用いた時には、隠蔽性が高くなり、繊維状樹脂層を通してより下層に施されたデザインを見せる構成であればデザインが見にくくなる。さらに、樹脂の冷却が不十分となり、シート状基材が熱変形する場合がある。特に、シュリンクラベル用途では、基材が熱収縮してしまいラベルの収縮特性が変化し、シュリンク加工に対する追従性が低下するおそれがある。また、筒状シュリンクラベルに用いた時には、基材が熱収縮してラベル周方向の寸法が変化してしまい、容器等に外嵌できないおそれがある。一方、目付量が0.5g/m2未満では、繊維状樹脂層を設けた効果(和紙調の風合い、手触り、滑り防止、断熱など)が得られない。また、繊維径が細くなりすぎて、シート状基材との接触面積が低下し、密着性が低下する。
【0051】
また、繊維状樹脂層を形成する繊維状樹脂の平均繊維径は、10〜70μmが好ましく、より好ましくは20〜50μmである。平均繊維径が10μm未満では、シート状基材との接触面積が少なくなり密着性が低下する場合があり、70μmを超えると繊維状樹脂が重なり合った部分が特に剥離しやすくなり密着性が低下する場合がある。
【0052】
上記スプレー塗布における、繊維状樹脂層を形成する樹脂の溶融温度は、樹脂の種類、樹脂組成(混合樹脂の場合には、スチレン系エラストマーとオレフィン系樹脂の混合比率など)によっても異なり、特に限定されないが、120〜180℃が好ましく、より好ましくは150〜170℃である。溶融温度が180℃を超えると、溶融樹脂の粘度が低下してスプレー塗布の際に樹脂が飛散しすぎる問題や、シュリンクフィルム等の熱変形しやすいシート状基材の場合、基材の熱変形等の問題が生じるおそれがある。一方、120℃未満では、溶融樹脂の粘度増大により、スプレー塗布性低下、樹脂と基材の密着性低下等の問題が生じるおそれがある。
【0053】
また、上記スプレー塗布において、上記溶融樹脂とともに、スプレー装置(スプレーガン)に供給される熱風の流量(熱風流量)は、繊維状樹脂層の目付量などを調節する観点から、スプレー装置のノズルの幅1mあたり50〜2000L/分が好ましく、より好ましくは100〜1500L/分である。また、熱風の温度(熱風温度)は150〜220℃が好ましく、より好ましくは180〜200℃である。なお、熱風の加熱はスプレー装置で行われてもよい。
【0054】
上記スプレー塗布はノズル部の複数のノズル口から、溶融樹脂を繊維状に押し出すことによって行われる。ノズル部分においてノズル口は、通常、ノズル幅方向(製造ライン方向と直交方向)に並んで配置され、ノズル口の個数はノズルの幅の1mあたりに300〜5000個が好ましい。また、ノズル口同士の間隔(中心間距離)は0.5〜3.0mm程度が好ましい。溶融樹脂を吐出するノズル口の面積(ノズル口1個あたりの面積)は、繊維状樹脂層の目付量、繊維径などを調節する観点から、0.01〜0.3mm2が好ましい。上記ノズル口の形状は特に限定されず、四角形、円形、楕円形などが挙げられる。なお、本発明において、「ノズルの幅(ノズル幅)」とは、ノズル口が設けられた部分の幅をいうものとする。
【0055】
上記スプレー塗布において、スプレー装置のノズル先端(ノズル口の部分)とシート状基材の距離(垂直距離)は、繊維状樹脂層を形成する樹脂の種類、溶融温度、目付量、繊維径によっても異なり、特に限定されないが、30〜100mmが好ましく、より好ましくは30〜50mmである。上記距離が30mm未満では、スプレー塗布された樹脂がシート状基材に接触する時点での樹脂温度が高いため、シート状基材にシュリンクフィルムを用いる場合などには、フィルムが収縮を起こす場合がある。また、樹脂が繊維状とならない場合がある。一方、距離が100mmを超えると、ノズルより噴射した樹脂が飛散して、上記の目付量の繊維状樹脂層が得られない場合や、樹脂がシート状基材に接触する時点で冷却されすぎており、シート状基材との密着性が低下する場合がある。
【0056】
上記スプレー塗布において、シート状基材の走行速度(工程速度)は、特に限定されないが、40〜250mm/分が好ましく、より好ましくは60〜100mm/分である。
【0057】
上記スプレー塗布を行う面は、特に限定されず、シート状基材のいずれか一方の面であってもよいし、両面であってもよい。また、シート状基材が印刷工程で印刷層が設けられたプラスチックフィルム(シュリンクフィルム)である場合、印刷層が設けられた側と反対側の表面にスプレー塗布を行い繊維状樹脂層を設けてもよいし、印刷層が設けられた側の表面上に塗布してもよい。
【0058】
また、上記スプレー塗布による繊維状樹脂層は本発明のシート状積層体の全面に設けられていてもよいが、部分的に設けられていてもよく、例えば、二次元コードやバーコードなどの上には繊維状樹脂層を設けないことが好ましい。
【0059】
[その他の層]
本発明のシート状積層体のシート状基材には、上記繊維状樹脂層以外にも、風合いを損なわない範囲で、印刷層、保護層、接着層、紫外線吸収層、アンカーコート層、オーバーラミネート層などの他の層を設けてもよい。特に、ラベル用途などに用いられる場合には、印刷層を設けることが好ましい。
【0060】
上記印刷層は、商品名やイラスト、デザイン、取り扱い注意事項等を表示するデザイン印刷層や白色の抑え印刷層などである。印刷層はバインダー樹脂、顔料、および、必要に応じて溶剤を構成成分として含有する印刷インキを塗布して形成される(必要に応じて、乾燥及び/又は硬化を行う)。印刷層の形成方法としては、公知慣用のコーティング手法を用いることが可能で特に限定されないが、グラビア印刷やフレキソ印刷などが好ましい。なお、上記印刷工程は、特に限定されないが、スプレー塗布工程よりも前に行われることが好ましい。
[その他の加工]
【0061】
本発明のシート状積層体は、所定の幅にスリットして、ロール状に巻回し、ロール状物として保存されることが一般的である。
【0062】
本発明のシート状積層体が筒状シュリンクラベルとして用いられる場合、本発明のシート状積層体は、主配向方向(通常、シート幅方向)がラベルの円周方向となるように円筒状に成形される。具体的には、長尺状のシート状積層体を筒状に形成した後、一方の側縁部に、長手方向に帯状に約2〜4mm幅で、テトラヒドロフラン(THF)などの溶剤や接着剤(以下溶剤等)を内面に塗布し、該溶剤等塗布部を、他方の側縁部から5〜10mmの位置に重ね合わせて外面に接着(センターシール)し、長尺筒状シートの連続体を得る。なお、シート状積層体の上記の溶剤などを塗工する部分(センターシール部)には、繊維状樹脂層や印刷層が施されず、シート状基材(プラスチックフィルム)同士が接着されていることが好ましく、例えば、溶融樹脂はセンターシール部を遮蔽板等で覆ってスプレー塗布されることが好ましい。これにより、シート状基材同士が接着されて筒状となることが好ましい。
【0063】
また、本発明のシート状積層体に、ラベル切除用のミシン目を設ける場合は、所定の長さ及びピッチのミシン目を長手方向に形成する。ミシン目は慣用の方法(例えば、周囲に切断部と非切断部とが繰り返し形成された円板状の刃物を押し当てる方法やレーザーを用いる方法等)により施すことができる。ミシン目を施す工程段階は、印刷工程の後や、筒状加工工程の前後など、適宜選択ことができる。なお、ミシン目は繊維状樹脂層が積層されていないシート状基材部分に設けることが好ましい。
【0064】
[シート状積層体]
本発明のシート状積層体は、上記の製造方法により製造される。本発明のシート状積層体は、上記のシート状基材の少なくとも一方の最外層に、上記樹脂からなる繊維状樹脂層を有した積層構成である。具体的な積層構成としては、特に限定されないが、例えば、抑え印刷層(白色印刷層)/デザイン印刷層/透明プラスチックフィルム(シュリンクフィルムなど)/繊維状樹脂層などが挙げられる。
【0065】
本発明のシート状積層体は、プラスチック容器などに装着されるラベル用途、パウチ用途等に用いることができる。中でも、シート状基材としてプラスチックフィルムを用いたプラスチックラベル(例えば、和紙風プラスチックラベルなど)であることが特に好ましい。プラスチックラベルの種類としては、特に限定されないが、シュリンクラベル、タックラベル、インモールドラベル、感熱ラベルなどが好ましく、中でも、シュリンク加工に対する追従性が優れるなどの観点から、特にシュリンクラベル(例えば、和紙風シュリンクラベルなど)(筒状ラベル、巻き付けラベル)であることが好ましい。
【0066】
上記プラスチックラベル(シュリンクラベル)として用いられる場合、ラベルの外側(容器に装着される場合に容器と反対側)に繊維状樹脂層が設けられ、内側(容器側)に印刷層が施されている場合(外側から繊維状樹脂層を通して印刷層を見る場合)に、和紙調の風合い(手触りや外観など)が得られるため好ましい。ただし、上記形態に限定されず、ラベルの内側に印刷層および繊維状樹脂層が設けられている場合であっても、装飾効果や断熱効果を発揮することができる。
【0067】
また、外面に繊維状樹脂層が設けられ、印刷層が設けられていない本発明のシート状積層体からなるシュリンクラベルを、タックラベル等の他のラベルが装着された容器等の物品の上から、他のラベルを包んでシュリンクさせて装着することで、タックラベルのデザインに繊維の風合いを加味することもできる。
【0068】
本発明の製造方法によるシート状積層体は、シート状基材に直接溶融樹脂がスプレー塗布されるため、不織布をラミネートする場合などと比較して、低コストである。また、接着剤を使用しないため、繊維状樹脂層の目付量が小さい場合であっても、接着剤の浸みだしによるトラブルがない。さらに、不織布をラミネートする場合には、貼り合わせ端部には接着剤を用いることができないため、端部の「浮き」が問題であったが、本発明の製造方法によれば当該問題も生じない。加えて、本発明によれば、繊維状樹脂層の目付量を小さくすることができるため、例えば、繊維状樹脂層を通して、下層に施されたデザイン印刷を見せることが可能である。また、繊維状樹脂層の毛羽立ちによる装飾性低下の問題も生じない。
【0069】
[ラベル付き容器]
本発明のシート状積層体がラベルとして用いられる場合、当該ラベルを、容器に装着することにより、ラベル付き容器が得られる。該ラベル付き容器に用いられる容器には、例えば、PETボトルなどのソフトドリンク用ボトル、宅配用牛乳瓶、調味料などの食品用容器、アルコール飲料用ボトル、医薬品容器、洗剤、スプレーなどの化学製品の容器などが含まれる。容器の材質は、特に限定されないが、PETなどのプラスチック、紙などが好ましい。容器の形状は、特に限定されないが、円筒状や角形のボトルタイプが好ましい。
【0070】
上記容器への装着方法としては、特に限定されないが、例えば、本発明のシート状積層体が筒状シュリンクラベルの場合、長尺筒状シュリンクラベルを切断後、所定の容器に装着し、加熱処理によって、ラベルを収縮、容器に追従密着させることによってラベル付き容器を作製する。具体的には、長尺筒状シュリンクラベルを、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、必要な長さに切断した後、内容物を充填した容器に外嵌し、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネルを通過させたり、赤外線等の輻射熱で加熱して熱収縮させ、容器に密着させて、ラベル付き容器を得る。上記加熱処理としては、例えば、70〜100℃のスチームで処理することなどが例示される。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0072】
実施例1
(シート状基材)
シート状基材としては、厚み40μmの透明ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム(東洋紡績(株)製、「スペースクリーン S7042」、幅400mm)を用いた。上記フィルムの一方の表面上には、センターシール部を除いて、グラビア印刷によりデザイン印刷層を設けた。
(繊維状樹脂層を形成する樹脂)
繊維状樹脂層を形成する樹脂としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック状重合体エラストマー25重量%とエチレン−酢酸ビニル共重合体75重量%の混合樹脂(日本エヌエスシー(株)製、「デュロタック PZ910」)を用いた。上記混合樹脂をメルター((株)サンツール製、「VHシリーズ VH−30」)に投入し、180℃で溶融させて、スプレー塗布に用いた。
(繊維状樹脂層の形成)
上記シート状基材の印刷層を施した側と反対側の表面に、上記溶融樹脂からなる繊維状樹脂層をセンターシール部を除いて形成した。シート状基材を、印刷層を施した側の表面を下面として、工程速度40m/分で走行させ、シート上面側から、スプレーガン((株)サンツール製、「カーテンスプレーノズルヘッド」(くし状ノズル)、ノズル口(正方形):0.3mm×0.3mm、ノズル口数:320個(400mm幅)、ノズル口間隔(中心間距離):1.25mm)を用いて、溶融樹脂をスプレー塗布して、繊維状樹脂層を形成した。スプレーガンのノズル先端とシート状基材表面との距離は50mm、熱風温度200℃、熱風流量220L/分(400mm幅あたり)であった。
得られたシート状積層体(和紙風シュリンクラベル)の、繊維状樹脂層の目付量は5g/m2であり、平均繊維径27μmであった。
【0073】
上記で得られたシート状積層体を、印刷層が内側、繊維状樹脂層が外側となり、且つ、シートの幅方向が円周方向となるように筒状に丸めて、テトラヒドロフラン(THF)で接着し、センタシール部を設けることで、長尺筒状シュリンクラベルを得た。最後に、上記長尺筒状シュリンクラベルを、自動ラベル装着装置(フジアステック社製STS−1936)に供給し、各ラベルに切断しながら、容器(東洋製罐(株)製500ml耐熱角形PETボトル)に装着し、雰囲気温度90℃のスチームトンネルで加熱収縮して、ラベル付き容器を得た。得られたラベル付き容器は、外側から見て、和紙調の風合いを有しており、また繊維状樹脂層を通して下層のデザインが視認できる、優れた仕上がりであった。
【0074】
[評価方法]
本発明のシート状積層体の評価方法は以下の通りである。
(1)目付量
繊維状樹脂層を塗工する前後のフィルム重量(フィルム面積:10cm×10cm)を電子天秤で測定し、塗工後の重量から塗工前の重量を引いた量を、m2換算して目付量を算出した。
【0075】
(2)繊維状樹脂層の平均繊維径
(株)キーエンス製、超深度形状測定顕微鏡「VK−8550」を用いて測定した。
なお、繊維状樹脂層の上面から観察を行い、測定点における1本の樹脂繊維の幅を繊維径とした。1サンプルにつき無作為で100点の測定を行い平均値をもって平均繊維径とした。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明のシート状積層体の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のシート状積層体の製造方法(繊維状樹脂層の形成工程)の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0077】
1 シート状積層体
2 シート状基材
3 繊維状樹脂層
4 デザイン印刷層
5 抑え印刷層
6 シート状基材の巻回体(ロール)
7 シート状基材
8 スプレー装置(スプレーガン)
9 メルター
10 噴射された溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材の少なくとも一方の最外面に、オレフィン系樹脂を含む溶融樹脂を、繊維状にスプレー塗布して、該樹脂からなる繊維状樹脂層を設けるシート状積層体の製造方法であって、該繊維状樹脂層が目付量0.5〜10g/m2となるように設けることを特徴とするシート状積層体の製造方法。
【請求項2】
120〜180℃の溶融温度で溶融樹脂をスプレー塗布するとともに、スプレー装置のノズル先端とシート状基材間の距離が30〜100mmである請求項1に記載のシート状積層体の製造方法。
【請求項3】
スプレー装置のノズルの樹脂吐出口面積が吐出口1個あたり0.01〜0.3mm2、ノズルの幅1mあたりの樹脂吐出口の数が300〜5000個であり、スプレー装置に供給される熱風流量が、ノズルの幅1mあたり50〜2000L/分である請求項1または2に記載のシート状積層体の製造方法。
【請求項4】
シート状基材がシュリンクフィルムである請求項1〜3のいずれかの項に記載のシート状積層体の製造方法。
【請求項5】
シート状基材の少なくとも一方の最外層に、オレフィン系樹脂を含む樹脂からなる繊維状樹脂層を有するシート状積層体であって、該繊維状樹脂層の目付量が0.5〜10g/m2であることを特徴とするシート状積層体。
【請求項6】
繊維状樹脂層を形成する繊維状樹脂の平均繊維径が10〜70μmである請求項5に記載のシート状積層体。
【請求項7】
オレフィン系樹脂を含む樹脂が、オレフィン系樹脂とスチレン系エラストマーから構成される混合樹脂である請求項5又は6に記載のシート状積層体。
【請求項8】
スチレン系エラストマーがスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体であり、オレフィン系樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項7に記載のシート状積層体。
【請求項9】
混合樹脂中における、スチレン系エラストマーの含有量が0.5〜50重量%であり、オレフィン系樹脂の含有量が50〜99.5重量%である請求項7または8に記載のシート状積層体。
【請求項10】
シート状基材がシュリンクフィルムである請求項5〜9のいずれかの項に記載のシート状積層体。
【請求項11】
プラスチックラベル用途である請求項5〜10のいずれかの項に記載のシート状積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−212761(P2008−212761A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49192(P2007−49192)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】