説明

シート装置

【課題】座部をスムーズに案内できるようにする。
【解決手段】車両用シート装置1が、座部フレーム2bと、座部フレーム2bに設けられ、ガイド溝137を有したガイド部材131と、フロア99に設けられ、ガイド溝137に挿入され、ガイド部材131に対して相対的にガイド溝137に沿って摺動可能とされた支持部材130と、座部フレーム2bに設けられるとともに、ガイド部材131に連結された補強部材2eと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート装置に関し、特に、座部が案内されるシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車室の有効活用を図るべく、使用しない後列座席や中列座席を格納することによって、後列座席や中列座席が設置されていたスペースを荷室に利用することができるようにしたものがある。
例えば、特許文献1に記載された座席では、リンク(10)の一端部が座部(2)の前部に連結され、リンクの他端部がフロアに連結され、リンクが前に倒れることによって、座部が前に起こし上げられ、リンクが後ろに振れ上がることによって、座部が後ろに倒れる。また、ガイド部材(14)が座部の後部に設けられ、前後に長尺なガイド溝(15)がそのガイド部材に形成され、フロアに設けられたピン(16)がそのガイド溝に係合することによって、座部の後端部を前後に案内するようにしている。具体的には、リンクが前に倒れると、座部がピン及びガイド溝によって前に案内され、その後、ピンがガイド溝から外れると、座部が前に起こし上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平3−22336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ガイド部材の剛性が低いと、座部をスムーズに案内することが出来ない。
そこで、本発明の課題は、座部をスムーズに案内できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明によれば、シート装置が、座部フレームと、前記座部フレームに設けられ、ガイド溝を有したガイド部材と、フロアに設けられ、前記ガイド溝に挿入され、前記ガイド部材に対して相対的に前記ガイド溝に沿って摺動可能とされた支持部材と、前記座部フレームに設けられるとともに、前記ガイド部材に連結された補強部材と、を備えることとした。
【0006】
好ましくは、前記シート装置が、前記補強部材及び前記ガイド部材を前記座部フレームに共締めする締結部材を更に備えることとした。
【0007】
好ましくは、前記締結部材が前記ガイド部材に対する前記支持部材の摺動軌跡から避けた位置で前記ガイド部材を前記座部フレームに締結することとした。
【0008】
好ましくは、前記ガイド部材が前記座部フレームのうち前記ガイド溝に沿う面に当接することとした。
【0009】
好ましくは、前記シート装置が、フフロアに連結されるとともに、前記フロアとの第一連結部を中心にして後ろに倒れた状態から前に倒れた状態に回転可能に設けられたアームを更に備え、前記座部フレームは、前記アームが後ろに倒れた状態の前記第一連結部の位置よりも後ろ側で前記アームに連結されるとともに、前記アームに対して前記アームとの第二連結部を中心にして左右方向の軸回りに回転可能に設けられ、前記ガイド部材が前記第二連結部よりも後方において前記座部フレームに設けられ、前記ガイド溝が前後に延在し、前記ガイド溝の後端が開口していることとした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、補強部材がガイド部材に連結されているから、ガイド部材の剛性が向上する。そのため、支持部材がガイド部材に対してスムーズに摺動し、座部フレームを安定して前後に案内することができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、補強部材及びガイド部材を締結部材によって座部フレームに共締めされているから、ガイド部材の剛性がより一層向上し、座部フレームを安定して前後に案内することができる。
また、補強部材がガイド部材をフレームに固定するための部材も兼ねるので、部品点数の削減を図ることができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、締結部材が支持部材の摺動軌跡から避けたにあるので、締結部材の締結・緩めの作業性が向上するとともに、締結部材が案内時の邪魔にもならない。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、ガイド部材が座部フレームのうちガイド溝に沿う面に当接するから、ガイド部材を座部フレームによって補強することができるとともに、ガイド溝の歪み等が生じることを防止することができる。そのため、座部フレームをスムーズに案内することができる。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、アームが後ろに倒れた状態から前に倒れた状態に回転すると、座部フレームの後部がガイド溝と支持部材によって前に案内され、その後、支持部材がガイド溝の後端開口から外れると、座部フレームが前に起こし上げられる。一方、アームが前に倒れた状態から後ろ倒れた状態に回転すると、座部フレームが後ろに倒れ、その後、支持部材がガイド溝に挿入され、更に座部フレームの後部がガイド溝と支持部材によって後ろに案内される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態のシート装置を示した側面図である。
【図2】同実施形態のシート装置を示した斜視図である。
【図3】同実施形態のシート装置の一部を示した側面図である。
【図4】図3に示されたIV−IVに沿った面の矢視断面図である。
【図5】同実施形態のシート装置のフレームとガイド部材の分解斜視図である。
【図6】同実施形態のシート装置を示した側面図である。
【図7】同実施形態のシート装置を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0017】
図1〜図7を参照して、車両用シート装置1について説明する。
図1に示すように、ヘッドレスト4が、背もたれ3の上端部に設けられている。
背もたれ3の下端部は、リクライニング機構を介して車室のフロア99に連結されている。車両用シート装置1の使用時には、背もたれ3の傾きがリクライニング機構によって調整可能となっており、背もたれ3を後ろに倒したり、背もたれ3を前に起こしたり、背もたれ3の傾斜角を維持したりすることができる。また、車両用シート装置1の格納時には、背もたれ3がリクライニング機構によって前に倒伏され、背もたれ3を前に寝かした状態とすることができる。
【0018】
図2、図4に示すように、車両のフロア99には、左右一対のブラケット23が敷設されている。これらブラケット23は、背もたれ3の左右両側に配置されている。ブラケット23は、背もたれ3の下側からその前方にかけて前後方向に延びている。このブラケット23の前部がボルト24aによってフロア99に固定され、ブラケット23の後部がボルト24bによってフロア99に固定されている。
【0019】
各ブラケット23の後端部には、L字棒状の支持部材130が溶接されている。左の支持部材130の基端側の部分130aが背もたれ3の下方において左のブラケット23の後部に立てた状態に設けられ、その支持部材130の先端側の部分130bが基端側の部分130aの上端から右に折り曲げられている。右の支持部材130は右のブラケット23に設けられているとともに、左に向けて折り曲げられている。支持部材130の先端側の部分130bは、水平に設けられている。
各ブラケット23の前端部には、軸受部23aが設けられている。軸受部23aは、ブラケット23の前端部において立てた状態に設けられている。
【0020】
図1、図2に示すように、アーム21の一端部が第一連結軸22及び軸受部23aを介して車室のフロア99に連結され、これらアーム21がフロア99に対して第一連結軸22回りに回転可能に設けられている。ここで、第一連結軸22が、左の軸受部23aから右の軸受部23aに架け渡されて、左右方向に設けられている。第一連結軸22の左右両端部が左右の軸受部23aにそれぞれ連結され、第一連結軸22がその軸心を中心にして軸受部23aに対して回転可能に設けられている。第一連結軸22の左右両端部には、アーム21の一端部がそれぞれ連結されている。アーム21は、第一連結軸22に対して垂直に設けられている。アーム21と第一連結軸22は固定されている。なお、アーム21と第一連結軸22が固定されずに、第一連結軸22がアーム21に対してその軸心回りに回転可能に設けられていてもよい。
【0021】
アーム21と軸受部23aとの間の隙間には、トーションスプリング25が挿入され、そのトーションスプリング25が第一連結軸22に巻装されている。トーションスプリング25の一端部がアーム21に引っ掛かり、トーションスプリング25の他端部がブラケット23に引っ掛かっている。トーションスプリング25は、図1に示す方向に見てアーム21を反時計回り、つまり、アーム21を後ろ側から前側に振り上げる向きに付勢する。
【0022】
アーム21の他端部が、座部2(具体的には、後述するフレーム2b)に対して第二連結軸20回りに回転可能に設けられている。ここで、第二連結軸20は、座部2の左端部から右端部にかけて左右方向に延びた状態となって、座部2に連結されている。第二連結軸20は、その軸心を中心にして座部2に対して回転可能に設けられている。第二連結軸20と座部2との連結位置は、座部2の前端部と後端部の間の中間部であって、座部2の下部である。第二連結軸20の左右両端部には、アーム21の一端部がそれぞれ固定されている。これらアーム21は、第二連結軸20に対して垂直に設けられている。なお、アーム21と第二連結軸20が固定されずに、第二連結軸20がアーム21に対してその軸心回りに回転可能に設けられていてもよい。
【0023】
アーム21の第二連結軸20側の突端部には、係合凸部26が凸設されている。
座部2の左右の側面の前端部と後端部の間の中間部には、弾性ストッパ10が取り付けられている。弾性ストッパ10は板ばねであり、弾性ストッパ10の前端部が座部2の側面に固定され、弾性ストッパ10がその固定した部分から後ろに延び出ており、その弾性ストッパ10が片持ち梁状に支持されている。弾性ストッパ10には、座面2a側に凹んだ係合凹部10aが形成されている。この係合凹部10aは、係合凸部26が係合可能なように形成されている。
【0024】
図4、図5に示すように、座部2は、フレーム2b、パッド2c、表皮2d及び補強梁2eを有する。パッド2cは発泡ウレタン製である。このパッド2cがフレーム2bの上に設けられ、フレーム2bの側面から上面にかけてパッド2cによって覆われている。表皮2dがパッド2cを覆い、パッド2c及びフレーム2bが表皮2dによって包み込まれている。
【0025】
座部2のフレーム2bは、補強梁2eによって補強されている。補強梁2eは、フレーム2bの右の側板から左の側板にかけて架け渡すように設けられている。補強梁2eはフレーム2bの底板上に設けられ、補強梁2eがパッド2cによって覆われている。
補強梁2eの両端面には雌ねじが形成され、補強梁2eの両端面がフレーム2bの左右の側板にそれぞれ当接している。そして、締結部材としてのビス2fがフレーム2bの外側からフレーム2bの側板に通されて、ビス2fが補強梁2eの端面に螺合している。このようにして、補強梁2eがビス2fによってフレーム2bに固定されている。
【0026】
また、補強梁2eは座部2のフレーム2bの後部に配置されている。具体的には、補強梁2eは、第二連結軸20よりも後ろに配置されている。補強梁2eがフレーム2bの後部に配置されていることによって、座部2の重心Pが座部2の後端側に寄っている。座部2の重心Pは、第二連結軸20と座部2との連結位置よりも後方に寄っている。なお、第二連結軸20は、座部2のうちフレーム2bに連結されている。
【0027】
図3、図4、図5に示すように、座部2の後部の左右両側面には、ガイド部材131がビス2fによって取り付けられている。ガイド部材131は、樹脂からなる。ガイド部材131は、ベース板132、フランジ133、下受け部134、止め部135及び上受け部136を有する。
【0028】
フランジ133はベース板132の下縁に沿って設けられている。フランジ133は、ベース板132の下縁からフレーム2bの下面の下側へ突出している。フランジ133は、フレーム2bの下面に対向して、その下面に当接している。
【0029】
上受け部136は、ベース板132の上縁に沿って設けられている。上受け部136は、ベース板132の上縁からフランジ133の反対方向へ突出している。上受け部136は、座部2の後端から前方に延びている。
下受け部134は、ベース板132の下縁に沿って設けられている。下受け部134は、ベース板132の下縁からフランジ133の反対方向へ突出している。下受け部134が上受け部136の下側で上受け部136に対向し、下受け部134と上受け部136が互いに平行に設けられている。下受け部134と上受け部136の側方側が開放されており、下受け部134と上受け部136の間にガイド溝137が形成されている。また、下受け部134の前後長は上受け部136の前後長よりも短く、上受け部136が下受け部134の後端よりも後方に延出し、上受け部136の後端が下受け部134の後端よりも後方に位置する。
止め部135は、ベース板132の後縁に設けられている。止め部135は、ベース板132の後縁からフランジ133の反対方向へ突出している。止め部135は、下受け部134の前端と上受け部136の前端との間に連接されている。ガイド溝137の前端が止め部135によって閉じられ、ガイド溝137の後端は開いている。
【0030】
図4、図5に示すように、フレーム2bの側面2hの後部には、凹部2gが形成されている。側面視して、凹部2gの形状がベース板132の形状に合致している。その凹部2gにガイド部材131のベース板132、ベース板132、下受け部134、止め部135及び上受け部136が嵌め込まれるようにして、ガイド部材131がフレーム2bに取り付けられている。そのため、ガイド部材131がフレーム2bによって補強される。
ここで、凹部2gの内面のうち上面2jがガイド部材131の上から上受け部136に当接し、その上面2jがガイド溝137に沿っている。そのため、上受け部136がフレーム2bによって補強される。また、凹部2gの内面のうち下面2kがガイド部材131の下から下受け部134に当接し、その下面2kがガイド溝137に沿っている。そのため、下受け部136がフレーム2bによって補強される。また、凹部2gの内面のうち前面2mがガイド部材131の前から止め部135に当接している。そのため、止め部135がフレーム2bによって補強される。このように、ガイド溝137の歪み等をフレーム2bによって防止することができ、座部2をスムーズに前後に案内することができる。
【0031】
ガイド部材131が凹部2gに嵌め込まれた状態では、ベース板132がフレーム2bの側板に対向している。ビス2fがフレーム2bの側板及びベース板132に通されて、ビス2fが補強梁2eの端面に螺合している。このようにして、補強梁2e及びガイド部材131がビス2fによってフレーム2bに共締めされている。これにより、ガイド部材131の剛性がより一層向上し、座部2を安定して前後に案内することができる。
【0032】
補強梁2eが、フレーム2bを補強するための部材と、ガイド部材131をフレーム2bに固定するための部材とを兼ねている。そのため、部品点数の削減を図ることができる。また、ベース板132が補強梁2eの端面に対向するように設けられているから、ガイド部材131は補強梁2eの端面に向かう押付荷重に対する耐久性・耐荷重性が向上する。このように、ガイド部材131の剛性が向上するから、支持部材130がガイド部材131に対してスムーズに摺動し、座部2を安定して前後に案内することができる。
【0033】
図3に示すように、ビス2fの締結位置はガイド溝137内ではなく、下受け部134の後ろ斜め下である。
【0034】
図1に示すように、アーム21が第一連結軸22を支点にして後ろに振り下げられた状態では、そのアーム21が後ろに倒伏し、座部2が後ろに倒伏している。その状態では、第二連結軸20が第一連結軸22よりも後方に位置し、支持部材130が第二連結軸20よりも後方に位置している。アーム21が後ろに倒伏した状態では、座部2がフロアの上に配置され、座部2の座面2aが上を向き、座部2の後端部が背もたれ3の下端の下に潜りこんでいる。その状態では、ガイド部材131が第二連結軸20よりも後方に位置している。更にその状態では、支持部材130が上受け部136と下受け部134の間のガイド溝137に挿入されているとともに、受け部134,136の前端に位置している。
【0035】
座部2が後ろに倒伏した状態では、座部2のうち第二連結軸20よりも後ろ側の部分が下方に沈み込むこむことが支持部材130及び上受け部136によって規制されているから、支持部材130及び上受け部136が下方移動規制部として機能する。一方、座部2のうち第二連結軸20よりも後ろ側の部分が振り上がることが支持部材130及び下受け部134によって規制されているから、支持部材130及び下受け部134が上方移動規制部として機能する。また、上受け部136の前後長が下受け部134の前後長よりも長いので、下方移動規制部によって座部2の後部の沈み込みが規制される範囲は、上方移動規制部によって座部2の後部の振り上げが規制される範囲よりも大きい。支持部材130、上受け部136及び下受け部134がフロアよりも高い位置に設けられているから、下方移動規制部及び上方移動規制部がフロアよりも高い位置に設けられている。
【0036】
座部2の両側面の後部には、ロック機構(図示略)が設けられている。ロック機構がガイド溝137に挿入された支持部材130に引っ掛かることによって、座部2が後ろに倒伏した状態に保持される。
【0037】
そのような状態から、ロック機構のロックを解除すると、アーム21がトーションスプリング25の荷重によって第一連結軸22を支点にして回転して振れ上がる。この際、座部2の重心Pが第二連結軸20よりも後ろにあるから、座部2の後端部が振り上げられない。更に、下受け部134が支持部材130に当接しているから、座部2の後ろ側が振り上げられない。そうすると、座部2の前側が支持部材130を中心にして振り上げられるとともに、座部2とアーム21は第二連結軸20を中心にして相対的に回転する。座部2の後端部が振り上げられないので、座部2の後端部が背もたれ3の下端に当たることもなく、座部2の動きが背もたれ3によって干渉されることもない。また、アーム21の振り上げに伴って、下受け部134及び上受け部136の前側が高くなるよう下受け部134及び上受け部136が傾く。それに伴って、座部2がアーム21によって上斜め前に引かれ、下受け部134及び上受け部136が支持部材130に当接した状態で上斜め前に移動し、支持部材130が下受け部134及び上受け部136に対して相対的に下斜め後ろに摺動する。そのため、座部2の後端部が沈み込まない。ここで、座部2の重心Pが第二連結軸20よりも後ろにあるから、下受け部134と支持部材130の接触荷重が軽減し、支持部材130が下受け部134に対してスムーズに摺動する。一方、トーションスプリング25の荷重によって、上受け部136と支持部材130の接触荷重が軽減し、支持部材130が上受け部136に対してスムーズに摺動する。
【0038】
引き続き、アーム21がトーションスプリング25の荷重によって第一連結軸22を支点にして振れ上がると、係合凸部26が係合凹部10aに係合する。係合凸部26が係合凹部10aに係合した時には、支持部材130が下受け部134の後端寄りに位置している。
【0039】
引き続き、アーム21がトーションスプリング25の荷重によって第一連結軸22を支点にして回転すると、下受け部134が支持部材130よりも前方に離れ、支持部材130がガイド溝137から解放される(図6参照)。そうすると、引き続きアーム21がトーションスプリング25の荷重によって第一連結軸22を支点にして回転することによって、上受け部136が支持部材130から上に離れる。
こうして、アーム21が前に倒れると、座部2が第一連結軸22を中心にして前に旋回する。この際、係合凸部26が係合凹部10aに係合して、アーム21の突端部が弾性ストッパ10に受けられているので、アーム21と座部2の相対的な回転が止められ、アーム21に対する座部2の角度が一定に保たれた状態で、座部2が前に旋回する。座部2が前に旋回されると、座部2がその前端部を下にして立てた状態になる(図7参照)。
【0040】
その後、背もたれ3をその下端部を支点にして前に倒伏させる(図7参照)。
以上によって、車両用シート装置1を格納することができる。
【0041】
車両用シート装置1を座席として使用する場合には、まず、背もたれ3をその下端部を支点にして後ろに起こし上げる。続いて、トーションスプリング25の荷重に抗して、座部2を後ろに旋回する。そうすると、アーム21が第一連結軸22を支点にして後ろに振り上げられる。この際、係合凸部26が係合凹部10aに係合して、アーム21の突端部が弾性ストッパ10に受けられているので、アーム21に対する座部2の角度が一定に保たれた状態で、座部2を後ろに旋回することができる。
【0042】
座部2の重心Pが第二連結軸20よりも後ろにあるから、アーム21が垂直になった状態から座部2を後ろに旋回する際には、座部2の後部が確実に下がる。そのため、座部2を後ろに容易に旋回することができる。
また、アーム21に対する座部2の角度が一定に保たれているので、座部2を後ろに旋回すると、上受け部136の後部が支持部材130に確実に当接する。そして、上受け部136が支持部材130に当接した状態で下斜め後ろに移動する。つまり、支持部材130が、上受け部136に対して相対的に上斜め前に摺動し、支持部材130が上受け部136と下受け部134との間のガイド溝137に挿入される。
【0043】
その後、座部2を下に押し付けると、座部2の前側が支持部材130を支点にして振り下げられる。それに伴って、下受け部134及び上受け部136の前側が低くなるよう下受け部134及び上受け部136が傾く。それに伴って、座部2がアーム21によって下斜め後ろに押され、下受け部134及び上受け部136が支持部材130に当接した状態で後ろに移動し、支持部材130が下受け部134及び上受け部136に対して相対的に前に摺動する。こうして、座部2の後端部が背もたれ3の下端の下に潜り込んでいく。座部2の後端部が背もたれ3の下端の下に潜りこんでいく際に、弾性ストッパ10が弾性変形して、係合凸部26が係合凹部10aから外れる。
【0044】
そして、支持部材130が上受け部136及び下受け部134の前端に位置すると、ロック機構によってロックがなされる。
以上によって、車両用シート装置1を組み立てて、車両用シート装置1を座席として使用することができる。
【0045】
以上のように本実施形態によれば、支持部材130がガイド溝137に挿入された状態では、補強梁2eがその支持部材130の近傍に位置しているから、フレーム2bを効率よく補強することができる。
また、ビス2fの締結位置が、ガイド部材131に対する支持部材130の摺動軌跡から避けた位置であるから、ビス2fの締結・緩めの作業性が向上するとともに、ビス2fが案内時の邪魔にもならない。
また、車両用シート装置1を格納する際には、座部2の後端部がガイド部材131及び支持部材130によって支持されるから、図6に示すように、座部2の前側が振り上げられつつ、座部2の後端部が前に移動する。そのため、座部2の後端部が背もたれ2の下端部の下から前に抜ける。そうすると、その後、座部2が前に旋回する際には、座部2の後端部と背もたれ2の下端部が干渉しない。従って、座部2を前に起こし上げる操作が容易になる。
また、座部2の重心Pが第二連結軸20よりも後ろ側にあるから、座部2の前側が振り上げられつつ、座部2の後端部が前に移動する動作が滑らかになる。つまり、支持部材130とガイド部材131との間の摩擦が軽減するから、支持部材130やガイド部材131の長寿命化を図ることができる。
また、ガイド部材131が樹脂材料からなるので、支持部材130が金属材料であっても、ガイド部材131と支持部材130との間の摩擦が軽減する。そのため、支持部材130がガイド部材131に対してスムーズにスライドするともに、支持部材130やガイド部材131の長寿命化を図ることができる。
また、座部2の後端部が背もたれ2の下端部に干渉しないから、トーションスプリング25の荷重だけで、座部2が図1の状態から図7の状態に移動する。つまり、ロック機構のロック解除という操作をするだけで、座部2を図7に示すように起こし上げることができる。このように、トーションスプリング25以外のばねを用いずとも、座部2を容易に起こし上げることができるから、部品点数の削減を図ることができる。
また、座部2の後端部が背もたれ3の下端の下から前に抜ける際には、支持部材130が上受け部136に当接しているから、座部2の後端部が下に大きく沈み込むことがない。
また、座部2の後端部が背もたれ3の下端の下から前に抜ける際に、座部2の後端部の大きな沈み込みが起きないから、座部2の後端部の下方にスペースがなくとも、座部2の後端部が背もたれ3の下端の下から前に抜けることができる。そのため、車両用シート装置1を車室等に設置する際に際して、車室の大きさ、デザイン等の自由度が向上する。
【0046】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では本発明に係るシート装置を自動車の座席に適用した場合について説明したが、その他の乗物(例えば、航空機、船舶、鉄道の車両等)の座席に適用してもよい。
また、上記実施形態では、図1に示す向きに見て、第一連結軸22を支点にしてアーム21を反時計回りに回転させるのに、トーションスプリング25の荷重を利用したが、モータ等の駆動部を用いてアーム21を反時計回りに回転させてもよい。同様に、手動ではなく、モータ等の駆動部を用いてアーム21を時計回りに回転させてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、アーム21によって座部2が前に起こし上げられるようになっているが、座部2がガイド溝137及び支持部材130によって単に前後に案内されるだけであってもよい。この場合、ガイド溝137の後端が開口しておらず、支持部材130がガイド溝137から抜けないことが好ましい。更に好ましくは、座部フレーム2bの左右両側面の前部にも第2のガイド部材をそれぞれ設け、第2のガイド部材には前後に長尺な第2のガイド溝が形成され、フロアに固定された第2の支持部材が第2のガイド溝に挿入され、座部フレーム2bの前部も第2のガイド溝及び第2の支持部材によって前後に案内される。第2のガイド部材も、ガイド部材131と同様に、座部フレーム2bの前部に設けられた第2の補強部材によって補強されている。
【0048】
また、補強梁2eがフレーム2bの側面よりも側方に延長させてもよい。この場合、フロアにガイド部材を設け、補強梁2eの先端部がそのガイド部材のガイド溝によって前後に案内されるようにし、補強梁2eの先端部がガイド溝から前に外れるようにする。
【符号の説明】
【0049】
1 車両用シート装置
2 座部
2a 座面
2b フレーム(座部フレーム)
2e 補強梁
2f ビス(締結部材)
10 弾性受け部
10a 係合凹部
20 第一連結軸
21 アーム
22 第二連結軸
130 支持部材
131 ガイド部材
137 ガイド溝
P 重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部フレームと、
前記座部フレームに設けられ、ガイド溝を有したガイド部材と、
フロアに設けられ、前記ガイド溝に挿入され、前記ガイド部材に対して相対的に前記ガイド溝に沿って摺動可能とされた支持部材と、
前記座部フレームに設けられるとともに、前記ガイド部材に連結された補強部材と、を備えることを特徴とするシート装置。
【請求項2】
前記補強部材及び前記ガイド部材を前記座部フレームに共締めする締結部材を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のシート装置。
【請求項3】
前記締結部材が前記ガイド部材に対する前記支持部材の摺動軌跡から避けた位置で前記ガイド部材を前記座部フレームに締結することを特徴とする請求項2に記載のシート装置。
【請求項4】
前記ガイド部材が前記座部フレームのうち前記ガイド溝に沿う面に当接することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のシート装置。
【請求項5】
フロアに連結されるとともに、前記フロアとの第一連結部を中心にして後ろに倒れた状態から前に倒れた状態に回転可能に設けられたアームを更に備え、
前記座部フレームは、前記アームが後ろに倒れた状態の前記第一連結部の位置よりも後ろ側で前記アームに連結されるとともに、前記アームに対して前記アームとの第二連結部を中心にして左右方向の軸回りに回転可能に設けられ、
前記ガイド部材が前記第二連結部よりも後方において前記座部フレームに設けられ、前記ガイド溝が前後に延在し、前記ガイド溝の後端が開口していることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のシート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−46322(P2011−46322A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197683(P2009−197683)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】