説明

シームレスベルトの製造方法およびシームレスベルト

【課題】簡便、安価な、耐熱性、屈曲性および機械強度に優れるシームレスベルトの製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明のシームレスベルトの製造法は、特定のエステル系ポリマーを有機溶媒に溶解させ、塗布液を調製する工程と、該塗布液を基材に塗布し、乾燥させる工程とを含む。好ましい実施形態においては、前記基材が円筒状金型であり、上記製造方法は該円筒状金型の内面に前記塗布液を塗布することを含む。好ましい実施形態においては、前記塗布液を乾燥させる際の乾燥温度が、80℃〜200℃である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シームレスベルトの製造方法およびシームレスベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリなどの画像形成装置においては、記録材上に形成させた未定着トナー画像を加熱、加圧して定着する定着方法がとられている。近年では、薄肉のシームレス(定着ベルト)を介して、ヒーターの熱により転写紙上のトナーを加熱するエンドレスベルト方式が多用されている。ここで用いられるシームレスベルトは、未定着トナー像を加熱、加圧しながら記録材を搬送するため、ロール間の張設に耐え得る強度、ロールの加熱温度に耐え得る耐熱性、ベルト端部で寄りを制御する際に座屈を起こさないような剛性、過剰トナーを分離させるために必要なフレキブル性が要求される。
【0003】
これらの要求を満足するシームレスベルトとしてポリイミド系樹脂で形成されるシームレスベルトが知られている。このシームレスベルトは、例えば、円筒状金型内面にポリアミド酸溶液を塗布した後、ポリアミド酸をイミド化させて得られる(特許文献1)。しかしながら、このような製造方法では、イミド化の際に、高温(例えば、380℃以上)での加熱を必要とする。そのため、ポリイミド系樹脂で形成されるシームレスベルトは、生産性が悪く、生産コストが高くなるという問題がある。
【0004】
また、熱可塑性樹脂とゴムまたは熱可塑性エラストマーとで構成されるシームレスベルトも知られている(特許文献2)。熱可塑性樹脂として、ポリアリレート系樹脂が用いられ得るが、公知のポリアリレート系樹脂は汎用有機溶媒に対する溶解性が低く、溶液として取り扱うことが困難である。一方、ポリアリレート系樹脂を射出成形により成形しようとすると、高温(例えば、340℃)での加熱を必要とする。また、溶液として取り扱うことが困難なポリアリレート系樹脂は、ペレット状または粉末状のフィラーを分散させ難いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7‐186162号公報
【特許文献2】特開2000‐172088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、簡便、安価に、耐熱性、屈曲性および機械強度に優れるシームレスベルトを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシームレスベルトの製造法は、エステル系ポリマーを有機溶媒に溶解させ、塗布液を調製する工程と、該塗布液を基材に塗布し、乾燥させる工程とを含み、該エステル系ポリマーが、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する:
【化1】


式(I)中、AおよびBは、それぞれベンゼン環の炭素原子に結合する原子または置換基であり、各ベンゼン環に4個存在し、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基または置換もしくは非置換のアリール基であり;Dは、共有結合、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zはハロゲンである)、CO基、酸素原子、硫黄原子、SO基、Si(CHCH基またはN(CH)基であり;R1は炭素数1〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基であり;R2は、炭素数2〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基であり;R3〜R6はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基または置換もしくは非置換のアリール基であり;p1は1〜3の整数を表し;p2は0〜3の整数を表し;nは2以上の整数を表す。
好ましい実施形態においては、上記基材が円筒状金型であり、上記製造方法は該円筒状金型の内面に上記塗布液を塗布することを含む。
好ましい実施形態においては、上記塗布液を乾燥させる際の乾燥温度が、80℃〜200℃である。
本発明の別の局面によれば、シームレスベルトが提供される。このシームレスベルトは上記製造方法により製造される。
好ましい実施形態においては、上記シームレスベルトの周方向の破断強度が50MPa以上である。
好ましい実施形態においては、上記シームレスベルトの25℃における周方向の弾性率が1200MPa以上である。
好ましい実施形態においては、上記シームレスベルトのJIS P8115に準拠したMIT試験による周方向の耐折回数が1000回以上である。
本発明のさらに別の局面によれば、定着ベルトが提供される。この定着ベルトは、上記シームレスベルトと、弾性層および/または離型層とを有する。
好ましい実施形態においては、上記定着ベルトは、熱伝導フィラーをさらに含み、熱伝導率が0.5W/mK以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定のエステル系ポリマーを用いることにより、簡便、安価に、耐熱性、屈曲性および機械強度に優れるシームレスベルトを得ることができる。より具体的には、本発明の製造方法は、汎用有機溶媒が使用でき、かつ、高温加熱の工程を要さないため、生産性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.シームレスベルトの製造方法
本発明の製造方法は、エステル系ポリマーを有機溶媒に溶解させ、塗布液を調製する工程Aと、該塗布液を基材に塗布し、乾燥させる工程Bとを含む。
【0010】
A−1.エステル系ポリマー
上記エステル系ポリマーは、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する。
【化2】


式(I)中、AおよびBは、それぞれベンゼン環の炭素原子に結合する原子または置換基であり、それぞれ各ベンゼン環に4個存在し、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基または置換もしくは非置換のアリール基である。Dは、共有結合、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zはハロゲンである)、CO基、酸素原子、硫黄原子、SO基、Si(CHCH基またはN(CH)基である。R1は炭素数1〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基である。R2は、炭素数2〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基である。R3〜R6は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基または置換もしくは非置換のアリール基である。p1は1〜3の整数を表す。p2は0〜3の整数を表す。nは2以上の整数を表す。
【0011】
ベンゼン環に結合するAまたはBは、4個すべてが同じ原子または置換基であってもよく、4個それぞれが異なっていてもよい。好ましくは、上記AおよびBは、それぞれ4個すべてが、水素原子である。このような構造であれば、溶解性に優れるエステル系ポリマーが得られ、また、耐熱性に優れるシームレスベルトを得ることができる。
【0012】
上記A、BまたはR1〜R6が非置換のアリール基である場合、当該非置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、ビナフチル基、トリフェニルフェニル基等が挙げられる。
【0013】
上記A、BまたはR1〜R6が置換のアリール基である場合、当該置換のアリール基としては、例えば、上記非置換のアリール基の水素原子のうち1つ以上が、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、シリル基、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基またはフェニル基に置換されたアリール基が挙げられる。
【0014】
上記DがC(CZ基である場合のZで表されるハロゲンおよび上記R3〜R6がハロゲンである場合のハロゲンとしては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0015】
上記エステル系ポリマーは、環境負荷低減の観点から、ハロゲンを有さないことが好ましい。本発明に用いられるエステル系ポリマーは、R1およびR2に特定の置換基を有することで、ハロゲンを含まずとも、溶媒に対する高い溶解性を示し得る。
【0016】
上記R1は、上記のとおり炭素数1〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基であり、好ましくは炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。また、上記R2は、上記のとおり炭素数2〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基であり、好ましくは炭素数2〜4の直鎖若しくは分枝のアルキル基であり、より好ましくはエチル基またはイソブチル基である。このようなR1およびR2を有するエステル系ポリマーは溶解性に優れるので、生産性よくシームレスベルトを得ることができる。また、上記エステル系ポリマーがこのようなR1およびR2を有していれば、耐熱性に優れるシームレスベルトを得ることができる。
【0017】
上記R3〜R6は、上記のとおり、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基または置換もしくは非置換のアリール基であり、好ましくはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基であり、より好ましくはそれぞれ独立して炭素数1〜4の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。R3〜R6のすべてが炭素数1〜4の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基であることが特に好ましく、R3〜R6のすべてがメチル基であることが最も好ましい。なお、上記のとおり、R3〜R6のうち、少なくともいずれか1つは水素原子ではない。上記エステル系ポリマーは、置換基としてR3〜R6を有することによって、溶媒に対する高い溶解性を示す。このように溶解性の高いエステル系ポリマーが得られるのは、置換基(R3〜R6)の立体障害により、芳香族環同士のスタッキングが生じにくいためと推定される。
【0018】
上記R3〜R6が炭素数5〜10のシクロアルキル基である場合、当該シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。なかでも好ましくはシクロヘキシル基である。当該シクロアルキル基は環上に炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基を有していてもよい。当該シクロアルキル基が有する炭素数1〜5の直鎖状または分枝状のアルキル基としては、例えば、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0019】
上記エステル系ポリマーは、1種類の上記一般式(I)で表される繰り返し単位を有していてもよく、2種以上の上記一般式(I)で表される繰り返し単位を有していてもよい。すなわち、上記エステル系ポリマーは、単重合体であってもよく、共重合体であってもよい。また、共重合体である場合、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0020】
2種以上の上記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するエステル系ポリマーとして、好ましくは、下記一般式(II)および(III)で表される繰り返し単位を有するエステル系ポリマーが挙げられる。
【化3】


式(II)中、AおよびR1〜R6は、上記一般式(I)において説明したとおりである。式(III)中、A’は上記一般式(I)において説明したAと同様である。R7は上記一般式(I)において説明したR1と、R8は上記一般式(I)において説明したR2と、R9〜R12は上記一般式(I)において説明したR3〜R6と同様である。
【0021】
上記一般式(II)および(III)で表される繰り返し単位を有するエステル系ポリマーにおける、上記一般式(II)で表される繰り返し単位の数は、上記一般式(II)で表される繰り返し単位および上記一般式(III)で表される繰り返し単位の合計数に対して、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上である、さらに好ましくは60%以上であり、特に好ましくは60%〜90%である。このような範囲であれば、耐熱性と溶解性とが両立したエステル系ポリマーを得ることができる。
【0022】
上記エステル系ポリマーは、その他の繰り返し単位をさらに有していてもよい。上記エステル系ポリマー中、上記一般式(I)で表される繰り返し単位の含有割合は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは80モル%以上である。
【0023】
上記エステル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3,000以上であり、より好ましくは80,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは100,000〜1,000,000であり、特に好ましくは300,000〜500,000である。このような範囲であれば、強度に優れるシームレスベルトを得ることができる。また、上記範囲の重量平均分子量(Mw)を有するエステル系ポリマーは溶解性に優れる。なお、重量平均分子量(Mw)は、エステル系ポリマーをテトラヒドロフランなどの適切な溶媒に溶かして調製したサンプルについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定を行って求めることができる、ポリスチレン換算の値をいう。
【0024】
上記エステル系ポリマーのガラス転移温度の下限値は、好ましくは100℃であり、より好ましくは120℃であり、特に好ましくは150℃である。このようなガラス転移温度を有するエステル系ポリマーを用いれば、耐熱性に優れるシームレスベルトを得ることができる。また、加工性の観点から、上記エステル系ポリマーのガラス転移温度の上限値は、好ましくは300℃であり、より好ましくは250℃である。
【0025】
A−1−1.エステル系ポリマーの製造方法
上記エステル系ポリマーの製造方法は、任意の適切な製造方法を採用し得る。上記エステル系ポリマーは、ビスフェノール系化合物とジカルボン酸化合物もしくはその誘導体から重縮合させて得られる。重縮合方法としては、(1)脱酢酸による溶融重縮合法、(2)脱塩酸均一重合法、(3)界面重縮合法、(4)ビスフェノール系化合物とジカルボン酸化合物を用い、縮合剤を用いて反応系中で活性中間体を生成させる直接重縮合法等が挙げられる。なかでも、透明性や耐熱性、高分子量化の観点から、界面重縮合法、または脱塩酸均一重合法により重合することが好ましい。
【0026】
(界面重縮合法)
上記界面重縮合法において、上記エステル系ポリマーは、触媒の存在下、有機溶媒およびアルカリ水溶液の2相系で、ジカルボン酸クロライドとビスフェノール系化合物とを重合させて得ることができる。より詳細には、重合反応は、例えば、ビスフェノール系化合物を溶解させたアルカリ水溶液に、触媒存在下、カルボン酸ジクロライドを溶解させた有機溶媒を添加して進行させることができる。また、重合反応は、カルボン酸ジクロライドを溶解させた有機溶媒に、ビスフェノール系化合物および触媒を溶解させたアルカリ水溶液を添加して進行させてもよい。
【0027】
上記ジカルボン酸クロライドとしては、例えば、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、フタル酸クロライド、4,4’−ジフェニルジカルボン酸クロライド等の無置換芳香族酸ジクロライド、およびこれらのベンゼン環に上記一般式(I)において説明したAが置換した化合物等が挙げられる。
【0028】
上記ビスフェノール系化合物としては、例えば、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル-4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロへキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0029】
上記ジカルボン酸クロライドおよび上記ビスフェノール系化合物の合計仕込み量(すなわち、モノマー仕込み量)は、重合反応後のエステル系ポリマー量が、総液量(アルカリ水溶液および有機溶媒の合計量)に対して、1重量%となるように調整することが好ましく、3重量%以上となるように調整することがより好ましく、5重量%以上となるように調整することが特に好ましい。重合時の濃度が高い方が生産性に優れるからである。
【0030】
上記重合反応に用いる有機溶媒としては、水との混和性が低く、かつ、エステル系ポリマーを溶解する有機溶媒が好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン;シクロヘキサノン;アニソール;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明に用いるエステル系ポリマーは、溶解性に優れるため、重合反応に用い得る有機溶媒の種類が広範囲である。例えば、上記エステル系ポリマーは、非ハロゲン系の有機溶媒を用いても重合し得る。
【0031】
上記アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。アルカリの添加量は、一般に、ビスフェノール系化合物の2〜5モル倍(1〜2.5モル当量)である。
【0032】
上記触媒としては、相間移動触媒を用いることが好ましい。上記触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩、テトラフェニルホスホニウムクロライド、トリフェニルメチルホスホニウムクロライドなどの第4級ホスニウム塩、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6等のポリエチレンオキサイド化合物等が挙げられる。なかでも、反応後の触媒の除去等の取り扱い易さの点でテトラアルキルアンモニウムハライド類が好ましい。
【0033】
上記触媒の添加量は、上記アルカリ水溶液に対して、0.001重量%〜1重量%である。
【0034】
上記界面重縮合法重合時には、必要に応じて、任意の適切なその他の添加剤を添加してもよい。その他の添加剤としては、酸化防止剤、分子量調整剤等が挙げられる。分子量調整剤としては、例えば、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメートなどの一価酸クロライド類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどの一価のアルコール類等が挙げられる。
【0035】
上記重合反応において、ビスフェノール系化合物とカルボン酸ジクロライドとは、徐々に混合することが好ましい。例えば、ビスフェノール系化合物を溶解させたアルカリ水溶液とカルボン酸ジクロライドを溶解させた有機溶媒とを、10分〜120分かけて混合することが好ましく、15分〜90分かけて混合することがより好ましい。重合反応に伴う発熱を抑え、副反応を抑制することができるからである。また、酸化着色を抑制する目的で、窒素などの不活性ガス雰囲気下で反応を進行させることが好ましい。
【0036】
重合反応温度は、好ましくは−5℃〜50℃であり、より好ましくは5℃〜35℃であり、特に好ましくは10℃〜30℃である。重合反応温度がこのような範囲であれば、重合反応中の粘度および温度のコントロールがしやすく、また、加水分解や酸価着色などの副反応を抑制することもできる。
【0037】
上記ジカルボン酸クロライド、ビスフェノール系化合物、有機溶媒、アルカリ水溶液、触媒およびその他の添加剤をすべて混合させた後の反応時間は、ジカルボン酸クロライドおよびビスフェノール系化合物の種類および使用量、アルカリ水溶液の濃度に応じて、任意の適切な時間に設定し得る。代表的には、10分〜10時間である。
【0038】
上記重合反応後、さらに一価酸クロライドを反応させることにより、末端フェノールの封止を行うことができる。末端封止を行うことでフェノールの酸化着色を抑制し得る。
【0039】
上記重合反応後の水相およびエステル系ポリマーを含む有機溶媒相について、複数回の分液操作を行い水相を除去し、さらに水洗することにより、水溶性不純物(触媒、残存モノマー等)を除去することができる。このような操作の後得られたエステル系ポリマーを含む有機溶媒は、そのまま、または必要に応じて濃度調整をした後、次工程Bに供することができる。また、必要に応じて、上記水洗後、アセトン、メタノール等のエステル系ポリマーの貧溶媒を用いて、再沈殿を行ってもよい。再沈殿を行うことで脱水、脱溶媒を行い、エステル系ポリマーを粉体として取り出すことができ、また、疎水性不純物を低減させることもできる。エステル系ポリマーの貧溶媒としては、例えば、アセトン、シクロヘキサン、イソホロン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0040】
(脱塩酸均一重合法)
上記脱塩酸均一重合法において、上記エステル系ポリマーは、アミン化合物の存在下、有機溶媒中で、ジカルボン酸クロライドとビスフェノール系化合物とを重合させて得ることができる。
【0041】
ジカルボン酸クロライドおよびビスフェノール系化合物としては、上記界面重縮合法において説明した化合物を用いることができる。上記ジカルボン酸クロライドおよび上記ビスフェノール系化合物の合計仕込み量(すなわち、モノマー仕込み量)は、界面重縮合法において説明した量に調整することが好ましい。
【0042】
有機溶媒としては、上記界面重縮合法において説明した有機溶媒を用いることができる。また、上記エステル系ポリマーを溶解し得る限りにおいて、水と混和する有機溶媒(例えば、ケトン系溶媒)を用いることもできる。好ましくは、非ハロゲン系の有機溶媒が用いられる。環境負荷が少ないからである。本発明に用いるエステル系ポリマーは、溶解性に優れるため、非ハロゲン系の有機溶媒を用いて重合することが可能である。
【0043】
上記アミン化合物は酸受容体として反応を促進する目的で用いられる。アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリドデシルアミン、N、N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、3−メチルピリジン等のピリジン誘導体;キノリン、ジメチルアニリン等の第三級アミン等が挙げられる。
【0044】
上記アミン化合物の添加割合は、有機溶媒に対して、好ましくは1重量%〜10重量%である。
【0045】
重合反応温度および重合時間は、上記界面重縮合法において説明した条件を採用し得る。また、重合反応後は、界面重縮合法において説明した再沈殿により、精製して、エステル系ポリマーを得ることができる。
【0046】
A−2.塗布液の調製
上記工程Aにおいては、上記エステル系ポリマーを有機溶媒に溶解させて、塗布液を調製する。工程Aで用いられる有機溶媒としては、上記エステル系ポリマーを溶解し得る限り、任意の適切な有機溶媒が用いられ得る。当該有機溶媒としては、例えば、トルエン;シクロヘキサノン;アニソール;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明に用いるエステル系ポリマーは、溶解性に優れる。そのため、本発明の製造方法においては、塗布液の調製に用い得る有機溶媒の種類が広範囲である。例えば、非ハロゲン系の有機溶媒を用いても塗布液を調製することができるので、環境負荷が少なく、シームレスベルトを得ることができる。
【0047】
上記塗布液中のエステル系ポリマーの濃度は、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは10重量%〜15重量%である。
【0048】
上記塗布液は、さらに、各種フィラーを含み得る。フィラーとしては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、炭化珪素、珪素、シリカ、グラファイト等の熱伝導性フィラー;カーボンブラック等の導電性フィラー等が挙げられる。フィラーの種類および使用量は、目的に応じて適切に選択され得る。例えば、シームレスベルトを定着ベルトに適用する場合、熱伝導性フィラーを上記塗布液中に、5重量%〜80重量%の濃度で含有させることが好ましい。
【0049】
A−3.塗布液の塗布および乾燥
上記工程Bにおいては、まず、上記工程Aで調製した塗布液を、基材に塗布する。上記基材を構成する材料は、上記塗布液に対して安定であり、かつ、乾燥温度で変形しない材料が用いられ得る。上記基材を構成する材料としては、例えば、ステンレス、アルミニウム等の金属;ポリエステル系ポリマー、アクリル系ポリマースチレン系ポリマー等のポリマー材料等が挙げられる。
【0050】
1つの実施形態においては、上記基材は、円筒状であり、より具体的には円筒状金型である。基材として円筒状金型を用いる場合、当該円筒状金型の内面に上記塗布液を塗布して、乾燥させることにより、シームレスベルトを得ることができる。
【0051】
円筒状金型の内面に上記塗布液を塗布する方法としては、例えば、
(1)塗布液中に円筒状金型を浸漬させた後、引き上げる方法、
(2)円筒状金型の片側端部から塗布液を供給した後、弾丸状または球状の走行体を円筒状金型の内側に走行させる方法、
(3)塗布液を、回転する円筒状金型の内面にスパイラル状に供給する方法、
(4)塗布液を、円筒状金型の内面に供給し、円筒状金型を回転させてその遠心力により展開させる方法等が挙げられる。
【0052】
上記(2)の方法において、上記走行体は、円筒状金型の内面との間に、一定のギャップを有する。このような走行体を円筒状金型の内側に走行させることによって、均一に塗布厚みを調整することができる。上記ギャップの量は、所望とするシームレスベルトの厚みに応じて、適切に設定され得る。上記走行体を構成する材料は、例えば、金属、硬質プラスチック、硬質ガラス等である。走行体を走行させる方法としては、例えば、圧縮空気圧、ガス爆発力を利用して走行体を走行付勢させる方法、ワイヤー等で走行体を牽引する方法、円筒状金型を垂直に立て自重走行させる方法等が挙げられる。
【0053】
上記(1)〜(4)の方法は、適宜、組み合わせてもよい。例えば、上記(1)の方法により塗布した後、上記(2)の方法で行うように弾丸状または球状の走行体を走行させてもよい。また、上記(3)の方法により塗布液を供給した後、上記(2)の方法で行うように弾丸状または球状の走行体を走行させてもよい。
【0054】
別の実施形態においは、上記基材の形状はシート状である。シート状の基材を用いた場合、塗布液を塗布し、乾燥させた後、さらに、シート状成形物の両端部を有機溶媒で溶解させて端部同士をつなぎ合わせることにより、シームレスベルトを得ることができる。シート状の基材に上記塗布液を塗布する方法としては、例えば、任意の適切なコーターを用いる方法が挙げられる。コーターとしては、例えば、コンマロールコーター、ダイロールコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどが挙げられる。
【0055】
上記塗布液を基材に塗布した後、塗布液を乾燥させる。乾燥は加熱により行われることが好ましい。加熱温度は、好ましくは80℃〜200℃であり、より好ましくは100℃〜150℃である。このような範囲であれば、弾性率が高く、かつ、折り曲げ強さが強いシームレスベルトを得ることができる。加熱は段階的に昇温しながら行うことが好ましい。加熱時間は、好ましくは20分〜80分であり、より好ましくは30分〜60分であり、特に好ましくは50分〜60分である。このような範囲であれば、弾性率が高く、かつ、破断強度および折り曲げ強さが強いシームレスベルトを得ることができる。上記のように円筒状金型の内面に上記塗布液を塗布した場合の加熱方法は、好ましくは、金型を回転させながら加熱する方法、高精度の熱風循環を用いる方法、低温で投入し昇温速度を小さくする方法およびこれらの方法の組み合わせが挙げられる。また、上記乾燥は、塗布液の供給と並行して行われてもよい。
【0056】
上記乾燥においては、塗布液の塗布後、室温(例えば、20℃〜40℃)下で保持した後に、上記のように加熱してもよい。室温下で保持する場合、保持時間は、好ましくは5分〜60分であり、より好ましくは20分〜40分である。このように室温下で保持すれば、弾性率が高く、かつ、折り曲げ強さが強いシームレスベルトを得ることができる。室温下で保持した場合、その後の加熱における加熱温度は好ましくは100℃〜150℃であり、加熱時間は好ましくは20分〜60分であり、より好ましくは20分〜50分である。室温下で保持した後、このような条件で加熱すれば、弾性率と折り曲げ強さとのバランスに優れるシームレスベルトを得ることができる。1つの実施形態においては、上記エステル系ポリマーの重量平均分子量が100,000以上の場合、当該加熱時間は20分〜50分とすることが好ましい。
【0057】
上記基材が円筒状である場合、上記乾燥後、シームレスベルトが得られる。また、基材がシート状である場合、上記乾燥後に得られたシート状成形物を基材から剥離して、さらに、シート状成形物の両端部を有機溶媒で溶解させて端部同士をつなぎ合わせることにより、シームレスベルトが得られる。
【0058】
上記のように、本発明の製造方法は、エステル系ポリマー溶液を塗布し、乾燥させることにより、シームレスベルトを得ることができ、他に複雑な工程を必要としない。また、本発明の製造方法における加熱は、有機溶媒を乾燥させるのに必要な温度で足りる。さらに、上記エステル系ポリマーは溶解性に優れるため、汎用溶媒、特には環境負荷の少ない溶媒を用いても、シームレスベルトを得ることができる。
【0059】
B.シームレスベルト
本発明のシームレスベルトは上記製造方法により得られる。シームレスベルトの厚みは、好ましくは10μm〜300μmであり、より好ましくは30μm〜200μmであり、特に好ましくは50μm〜100μmである。
【0060】
上記シームレスベルトの周方向(以下、MD方向ともいう)の破断強度は、好ましくは50MPa以上であり、より好ましくは50MPa〜300MPaであり、特に好ましくは50MPa〜100MPaである。上記シームレスベルトのMD方向の破断強度と周方向に直交する方向(以下、TD方向ともいう)の破断強度との比(MD/TD)は、好ましくは0.8〜1.5であり、より好ましくは0.9〜1.3である。本発明の製造法によれば、円筒状の基材を用いても、MD/TDの強度比が小さいシームレスベルトを得ることができる。
【0061】
上記シームレスベルトの25℃におけるMD方向の弾性率は、好ましくは1200MPa以上であり、より好ましくは1400MPa〜2500MPaであり、特に好ましくは1500MPa〜2000MPaである。上記シームレスベルトの25℃におけるTD方向の弾性率は、好ましくは1200MPa以上であり、より好ましくは1400MPa〜2500MPaであり、特に好ましくは1500MPa〜2000MPaである。
【0062】
上記シームレスベルトのJIS P8115に準拠したMIT試験によるMD方向の耐折回数は、好ましくは1000回以上であり、より好ましくは10000回以上であり、特に好ましくは20000回以上である。
【0063】
C.シームレスベルトの用途
本発明のシームレスベルトは、例えば、電子写真方式の複写機、レーザープリンタやファクシミリ等の電子写真画像形成装置の定着ベルト、転写ベルト、中間転写ベルト、搬送ベルト、感光体ベルト等に使用することができる。
【0064】
上記定着ベルトは、好ましくは、上記シームレスベルトと、弾性層および/または離型層とを有する。弾性層および/または離型層は、好ましくはシームレスベルトの外面に形成される。より好ましくは、上記定着ベルトは、シームレスベルト、弾性層および離型層をこの順に有する。また、各層の結合のため、各層間に任意の適切なプライマー層を設けてもよい。
【0065】
上記弾性層を構成する材料としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム等のゴム;熱可塑性エラストマー;スパンデックス、ポリカーボネート弾性繊維等の弾性繊維;スポンジゴム、フォームラバー等の弾性発泡体等が挙げられる。
【0066】
上記離型層を構成する材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂が挙げられる。
【0067】
上記定着ベルトの熱伝導率は、好ましくは0.5W/mK以上である。定着ベルトに熱伝導性フィラーを含有させることにより、このように熱伝導性に優れる定着ベルトを得ることができる。シームレスベルト中に熱伝導性フィラーを含有させることが好ましい。熱伝導性フィラーの具体例および使用量としては、上記A−2項で説明したとおりである。
【0068】
上記転写ベルトとしては、カーボンブラック等の導電性フィラーを含有させたシームレスベルトが用いられ得る。上記転写ベルトの体積抵抗率は、好ましくは10Ω・cm〜1012Ω・cmである
【実施例】
【0069】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。
【0070】
(1)弾性率および破断強度の測定
得られたシームレスベルトのMD方向の弾性率および破断強度を以下のように測定した。
試験片の形状をダンベル状3号形試験片(JIS K 6251)とし、精密万能試験機オートグラフ(AG−10NX:(株)島津製作所製)を使用して測定した。試験条件は、チャック間距離を3cm、引っ張り速度を20mm/minとした。また、実施例1については、TD方向も同様に測定した。
(2)MIT試験
得られたシームレスベルトのMD方向の折り曲げ強さについて、JIS P8115に準拠して、折り曲げ角度135±2度、折り曲げ速度175±10回/分において、試験片(幅15mm×長さ110mm)が破断するまでの耐折回数を測定した。
【0071】
<実施例1>
(エステル系ポリマーAの作製)
攪拌装置を備えた反応容器中で、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン1.50g、およびベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.06gを、1Mの水酸化カリウム水溶液30mlに溶解させた。
この溶液に、テレフタル酸クロライド0.71gおよびイソフタル酸クロライド0.24gをクロロホルム15mLに溶解させた溶液を、撹拌しながら一気に加えた後、室温(23℃)で90分間撹拌してエステル系ポリマー重合した。その後、この溶液を静置して、有機溶媒相(クロロホルム相)と水相とを分離した後、重合物を含むクロロホルム溶液を取り出した。次に、このクロロホルム溶液を酢酸水で洗浄し、さらにイオン交換水で洗浄した後、このクロロホルム溶液をメタノールに投入することにより、重合物を析出させた。
析出した重合物をろ過し、減圧下で乾燥することにより、重量平均分子量が88000のエステル系ポリマーAを得た。得られたエステル系ポリマーAは下記式(IV)および(V)で示される繰り返し単位を有する(モル比((IV):(V))=75:25)。
【化4】


(シームレスベルトの作製)
トルエンに上記エステル系ポリマーAを溶解させて塗布液を調製した(濃度:15重量%)。
回転させた円筒状金型(直径99mmφ)の内面に、当該塗布液を、当該円筒状金型の一方端から他方端まで供給した。その後、円筒状金型内面からのギャップ量が0.7mmの走行体を円筒状金型の内側で自重落下させて、塗布液を塗布した。
次いで、円筒状金型を60rpmで回転させながら、120℃で28分間加熱し、溶媒を乾燥させて、シームレスベルトを得た。
得られたシームレスベルトは、長さ:550mm、直径:99mmφ、厚さ:88μmであった。このシームレスベルトを上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
<実施例2>
加熱時間を60分とした以外は、実施例1と同様にしてシームレスベルト(長さ:550mm、直径:99mmφ、厚さ:45μm)を得た。このシームレスベルトを上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0074】
<比較例1>
エステル系ポリマーAに代えて、エステル系ポリマー(ユニチカ社製、商品名「U100」)を準備した。エステル系ポリマー(ユニチカ社製、商品名「U100」)はトルエンに不溶であり、シームレスベルトを得ることができなかった。なお、上記エステル系ポリマー(ユニチカ社製、商品名「U100」)は、下記式(VI)で表される繰り返し単位を有し、上記式(I)で表される繰り返し単位は有さない。
【化5】

【0075】
<比較例2>
エステル系ポリマーAに代えて、ポリスチレン(東洋スチレン社製、商品名「トーヨースチロールGP」、グレード:MW1C.D)を用い、加熱時間を60分とした以外は、実施例1と同様にしてシームレスベルトを得た。このシームレスベルトを上記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0076】
実施例から明らかなように、本発明の製造方法によれば、汎用溶媒を用いて、低温での加熱によりシームレスベルトを得ることができ、得られたシームレスベルトは優れた機械強度を有する。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のシームレスベルトは、電子写真方式の複写機、レーザープリンタやファクシミリ等の電子写真画像形成装置の定着ベルト、転写ベルト、中間転写ベルト、搬送ベルト、感光体ベルト等に使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル系ポリマーを有機溶媒に溶解させ、塗布液を調製する工程と、
該塗布液を基材に塗布し、乾燥させる工程とを含み、
該エステル系ポリマーが、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する、
シームレスベルトの製造方法:
【化1】


式(I)中、AおよびBは、それぞれベンゼン環の炭素原子に結合する原子または置換基であり、各ベンゼン環に4個存在し、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基または置換もしくは非置換のアリール基であり;Dは、共有結合、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zはハロゲンである)、CO基、酸素原子、硫黄原子、SO基、Si(CHCH基またはN(CH)基であり;R1は炭素数1〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基であり;R2は、炭素数2〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基であり;R3〜R6はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基または置換もしくは非置換のアリール基であり;p1は1〜3の整数を表し;p2は0〜3の整数を表し;nは2以上の整数を表す。
【請求項2】
前記基材が円筒状金型であり、該円筒状金型の内面に前記塗布液を塗布することを含む、請求項1に記載のシームレスベルトの製造方法。
【請求項3】
前記塗布液を乾燥させる際の乾燥温度が、80℃〜200℃である、請求項1または2に記載のシームレスベルトの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法で得られる、シームレスベルト。
【請求項5】
周方向の破断強度が50MPa以上である、請求項4に記載のシームレスベルト。
【請求項6】
25℃における周方向の弾性率が1200MPa以上である、請求項4または5に記載のシームレスベルト。
【請求項7】
JIS P8115に準拠したMIT試験による周方向の耐折回数が1000回以上である、請求項4から6のいずれかに記載のシームレスベルト。
【請求項8】
請求項4から7のいずれかに記載のシームレスベルトと、弾性層および/または離型層とを有する、定着ベルト。
【請求項9】
熱伝導フィラーをさらに含み、熱伝導率が0.5W/mK以上である、請求項8に記載の定着ベルト。

【公開番号】特開2013−10813(P2013−10813A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142682(P2011−142682)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】