説明

シールド付フレキシブルプリント配線板、その製造方法、および電子機器

【課題】 高いシールド性能を得た上で、インピーダンス整合を行っても信号線の断面を確保でき、簡単な構造を有する、シールド型フレキシブルプリント配線板、その製造方法、および電子機器を提供する。
【解決手段】 絶縁基材層1上に位置する信号線Cと、信号線Cの層とシールド部Sの層との間に位置するカバーレイ5と、カバーレイ5とシールド部Sとの間に位置する補強層7とを備えることを特徴とする、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド付フレキシブルプリント配線板、その製造方法、および電子機器に関し、より具体的には、高いシールド性能を得た上で、インピーダンス整合を行っても信号線の断面積を確保できる、シールド付フレキシブルプリント配線板、その製造方法、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波信号、デジタル信号を扱う電子機器におけるノイズ防止やクロストーク防止のために、静電シールド、磁気シールド、電磁シールドなどの対策がとられる。フレキシブルプリント配線板においても、クロストークおよび電磁波雑音放射を共に防止するために、シールド層を構成する金属薄膜と、グランド配線とを導電性ペーストで接続する構造が提案されている(特許文献1)。
また、回路基板の厚みを抑制しながら、高いインピーダンス特性を得るために高周波信号配線と通常信号配線とを同じ高さの配線層に配置して、シールド層を高周波信号配線用と通常信号配線用とで分けて距離を変えた回路基板の提案がなされている(特許文献2)。この構成では、高周波信号配線上のシールド層を、通常信号配線上のシールド層よりも、遠くに位置させる。これによって、ベース基材の厚さを大きく変えることなく高周波信号配線のインピーダンスを高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−283579号公報
【特許文献2】特開2009−212328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の、シールド付フレキシブルプリント配線板は、アース付き導電層の被覆によって、クロストークを防止することはできる。しかし、特許文献1に示された構成では、信号線と金属薄膜との間隔が小さくインピーダンス整合をとることが難しい。無理にインピーダンス整合をとると信号線を細くしなければならず伝送ロスが増大する。また、特許文献2に示された構造は、高周波信号配線のインピーダンス整合をとることはできるが、構造が複雑になりすぎる。フレキシブルプリント配線板は電気産業とくにIT産業全般の基礎になる重要部品であり、大量に使用される趨勢にあるため、製造においては能率良く製造できるように簡単な構造であることが求められる。また、シールド性能が不十分である。特許文献2に示されたシールド構造では、シールド層に段差がつき、段差の部分では導電層がなくあいているので、外部からのノイズ電波の侵入、および当該配線板の信号から発せられる電波の外部への放射を、十分にシールドすることはできない。
【0005】
本発明は、高いシールド性能を得た上で、インピーダンス整合を行っても信号線の断面積を確保でき、簡単な構造を有する、シールド付フレキシブルプリント配線板、その製造方法、および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシールド付フレキシブルプリント配線板は、シールド層を構成する導電層を備える。このシールド付フレキシブルプリント配線板は、絶縁基材層上に位置する配線回路と、配線回路とシールド層を構成する導電層との間に位置する第1絶縁樹脂層と、第1絶縁樹脂層と導電層との間に位置する第2絶縁樹脂層とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、フレキシブルプリント配線板に導電層を配置してシールドをとることでノイズ電波の放射や侵入、およびクロストーク等を確実に防ぎながら、配線回路とシールド層との間隔を大きくすることができる。このため、配線回路の信号線の線幅または断面積を小さくすることなく、インピーダンス整合をとることができる。このため、信号の伝送ロスを抑制することができる。また、上記の構造は非常に簡単であり、少ない工程の追加によって製造することができる。また、設計の自由度を拡げることができる。設計の自由度とは、たとえば、信号線の線幅を大きくとって伝送ロスを減少させること、絶縁樹脂層の材料を、比誘電率よりも、柔軟な可撓性を重視して、第1絶縁樹脂層および/または第2絶縁樹脂層に硬さの低い樹脂材料を用いること、などの選択肢の増大をいう。
なお、上記のフレキシブルプリント配線板は、絶縁基材層の片面側にシールド層等が設けられた片面基板であってもよいし、絶縁基材層の両面側にシールド層等が設けられた両面基板であってもよい。
【0008】
上記の第2の絶縁樹脂層を複数の層からなるようにできる。これによって、特別の厚い絶縁樹脂層を用いることなく、シールド層と配線回路との間隔を、入手容易な既存の絶縁樹脂フィルムを用いて、任意の大きさにすることができる。また、柔軟な可撓性が求められるフレキシブルプリント配線板では、同じ厚みで比べたとき、複数の層に分けたほうが剛性が低くなり、より小さい力で撓らせることができる。
【0009】
上記の配線回路の配線の上面と導電層の下面との間の距離が、配線回路の配線の上面と第1絶縁樹脂層の上面との間の距離の1.5倍以上あるようにするのがよい。
ここで、上面は、一つの層を画定する両面において、絶縁基材層から遠いほうの面をさし、トップ面、外側の面、またはおもて面とも呼ぶ。下面は、逆に絶縁基材層から近いほうの面をさし、底面または裏面とも呼ぶ。絶縁基材層自体の両面については、配線回路が片面側に設けられる場合は、配線回路側の面をおもて面と呼び、逆側の面を裏面と呼ぶ。
また、ある一つの層の面を指定するのではなく、絶縁基材層を基準に、一方の側の積層構造を指定する場合に、おもて面側または裏面側と呼ぶ場合がある。以後の説明では、重複を厭わず繰り返して説明する。
導電層によってシールド特性を確保しながら、配線と導電層との間の誘電体占有場所の距離を、配線と第1絶縁樹脂層の上面との間の距離の1.5倍以上に大きくすることで、配線の断面積を小さくすることなくインピーダンス整合をとりやすくできる。絶縁基材層の両面にシールドの導電層を設ける場合は、両面ともに、上記の距離関係を満たすのがよい。配線回路の配線と第1絶縁樹脂層の上面との間の距離は、配線回路側のおもて面の場合は、配線トップ面−第1絶縁樹脂層トップ面(絶縁基材層から遠い面)、の面間距離であり、裏面側の場合は、配線の底面−第1絶縁樹脂層における絶縁基材層から遠い面、の面間距離である。配線回路の配線とシールド層を形成する導電層との間の距離は、配線回路側のおもて面の場合は、配線トップ面−導電層の底面(絶縁基材層に近い側の面)、の面間距離であり、裏面側の場合は、配線の底面−導電層における絶縁基材層に近い面、の面間距離である。
【0010】
上記の第2絶縁樹脂層を、第1絶縁樹脂層と同じ材料で形成することができる。これによって、多くのフレキシブルプリント配線板に多用されている第1絶縁樹脂層の樹脂材料を用いて、配線−導電層との間の距離を、容易に大きくすることができる。第1絶縁樹脂層および第2絶縁樹脂層には、高周波信号の洩れ等のロスを減らすために、柔軟な可撓性の点で許容できる範囲で、比誘電率および誘電正接の小さい材料を用いるのがよい。
【0011】
または、第2の絶縁樹脂層を、第1絶縁樹脂層よりも硬さが低い材料で形成することができる。硬さがより低い絶縁樹脂を用いた場合、フレキシブルプリント配線板の全体厚みをある程度厚くしながら、フレキシブルプリント配線板において重要視される、軟らかくしなやかな可撓性を維持することができる。この場合も、第1絶縁樹脂層および第2絶縁樹脂層における、比誘電率および誘電正接は小さいほうが好ましい。
【0012】
本発明のシールド付フレキシブルプリント配線板の製造方法は、シールド層を構成する導電層を備えるフレキシブルプリント配線板を製造する。この製造方法は、絶縁基材層上に配線回路を形成する工程と、絶縁基材層上に第1絶縁樹脂層を積層する工程と、第1絶縁樹脂層上に第2絶縁樹脂層を積層する工程と、第2絶縁樹脂層上にシールド層を構成する導電層を積層する工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
上記の方法によって、シールド性能に優れ、他の配線とのインピーダンス整合を、容易にとることができるフレキシブルプリント配線板を、簡単な製造工程で製造することができる。これによって、電磁ノイズやクロストークを確実に防止することができる。第1絶縁樹脂層および/または第2絶縁樹脂層は絶縁樹脂フィルムを接着剤で貼ってもよいし、溶媒に溶解させた粘着状の絶縁樹脂を塗布して乾燥させたものであってもよい。
【0014】
本発明の電子機器は、上記のいずれかのシールド付フレキシブルプリント配線板または上記の製造方法で製造されたシールド付フレキシブルプリント配線板を備えることを特徴とする。これによって、シールド作用を発揮する導電層をフレキシブルプリント配線板に配置することでノイズ電波の放射や侵入、およびクロストーク等を確実に防ぎ、かつ伝送ロスを防止しながら、電子機器内の各配線回路の間のインピーダンス整合をとることができる。電子機器としては、各種の薄型テレビ受像器、携帯端末、PCなどを挙げることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高いシールド性能を得た上で、インピーダンス整合を行っても信号線の断面積を確保でき、簡単な構造を有する、シールド型フレキシブルプリント配線板等を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1におけるシールド付フレキシブルプリント配線板を示し、(a)は図2のIA−IA線に沿う断面図、(b)は図2のIB−IB線に沿う断面図である。
【図2】図1のシールド付フレキシブルプリント配線板の端子部を除いた配線部(信号線およびグランド部)を示す平面図である。
【図3】図1に示すシールド付フレキシブルプリント配線板の製造において、両面銅張積層板を準備した状態を示し、(a)は断面(a)、(b)は断面(b)に対応する位置の断面図である。
【図4】スルーホールをあけた状態を示し、(a)は断面(a)、(b)は断面(b)に対応する位置の断面図である。
【図5】スルーホールめっき層を形成した状態を示し、(a)は断面(a)、(b)は断面(b)に対応する位置の断面図である。
【図6】エッチングによって信号線を形成した状態を示し、(a)は断面(a)、(b)は断面(b)に対応する位置の断面図である。
【図7】第1絶縁接着層によってカバーレイを積層した状態を示し、(a)は断面(a)、(b)は断面(b)に対応する位置の断面図である。
【図8】第2絶縁接着層によって補強層を積層し、開口部を設けた状態を示し、(a)は断面(a)、(b)は断面(b)に対応する位置の断面図である。
【図9】導電接着層によってシールドフィルムを積層した状態を示し、(a)は断面(a)、(b)は断面(b)に対応する位置の断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2におけるシールド付フレキシブルプリント配線板を示し、(a)は断面(a)、(b)は断面(b)に対応する位置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるシールド付フレキシブルプリント配線板10を示す断面図であり、図2は、そのシールド付フレキシブルプリント配線板10の端子部を除いた配線回路または配線部(信号線およびグランド部)を示す平面図である。図1(a)は、図2のIA−IA線に沿う断面図であり、図1(b)は、IB−IB線に沿う断面図である。このシールド付フレキシブルプリント配線板10は、両面にシールド層9が配置された両面シールドタイプである。
図2に示すように、IA−IA線に沿う断面(以後、断面位置(a)または単に断面(a)と記す)は、配線3cとめっき層31cとで構成される高速伝送の信号線Cの2本を横断する断面である。また、IB−IBに沿う断面(断面(b))は、信号線Cの領域を外れたグランド部Gを横断する断面である。
【0018】
このシールド付フレキシブルプリント配線板10の信号線Cの部分では、図1(a)に示すように、おもて面側(配線回路面側)は、絶縁基材層1と、信号線Cおよびグランド部Gと、これら信号線C、グランド部Gを形成する銅層の隙間を埋めながら被覆する絶縁性の第1接着剤層4と、その第1接着剤層4に接着される第1絶縁樹脂層5とを備える。信号線Cでは、スルーホールめっき層31cが配線3c上にめっきされており、グランド部Gでは、同じくスルーホールめっき層31gがグランド層3g上にめっきされている。第1絶縁樹脂層5は、一般にカバーレイ5と呼ばれる絶縁層である。そのカバーレイ5の上には絶縁性の第2接着剤層6を介在させて第2絶縁樹脂層7が配置されている。第2絶縁樹脂層7は、本説明では、補強層7と呼ぶことがある。補強層7の上には、導電接着剤層8を介在させて導電性のシールドフィルム9が配置されている。導電接着剤層8とシールドフィルム9とは、両方で導電層からなるシールド部Sを形成している。導電接着剤層8は、絶縁基材層の表裏面のグランド部Gと導通をとるために、導電性でなければならない。またその導電性のために、金属箔等のシールドフィルム9と共にシールド部Sを形成する。
他の第1接着剤層4および第2接着剤層6は、ともに絶縁性であり、その比誘電率は、カバーレイ5および補強層7と同様に、インピーダンスを高め、高周波信号の洩れ等を防止するために、高いほうが好ましい。
まとめると、絶縁基材層1のおもて面側(信号線Cの側)は、信号線Cの領域で次の積層構造を有する。:(絶縁基材層1/信号線C,グランド部G/第1接着剤層4を含むカバーレイ5/第2接着剤層6を含む補強層7/導電接着剤層8を含むシールドフィルム9)
また、絶縁基材層1の裏面側(信号線Cと反対側)は、信号線Cの領域で次の積層構造を有する。:(絶縁基材層1/第1接着剤層4を含むカバーレイ5/第2接着剤層6を含む補強層7/導電接着剤層8を含むシールドフィルム9)裏面側には、配線部3が設けられていない。
なお、図1(a)、(b)に示す積層構造と異なり、信号線Cおよびグランド部Gと絶縁基材層1との間に配線を形成する銅箔を接着するベース接着剤層が設けられている接着剤タイプのものであってもよい。
【0019】
グランド部Gの領域では、図1(b)に示すように、開口部15が設けられている。絶縁基材層1の両面側に配置されたシールド層9は、接着剤層4,6を含むカバーレイ5、補強層7に設けられた開口部15の壁面15hを伝って、導電接着剤層8を介在させてグランド部G(3g,31g)に導電接続されている。開口部15では、カバーレイ5および補強層7と、付随する第1および第2接着材層4,6とが、貫通されている。このシールド部Sとグランド部Gとの導電接続によって、電磁ノイズの放射や侵入を確実に防ぐことができ、また、クロストークの防止にも有効に作用する。また、スルーホール1hの壁面を伝うスルーホールめっき層31gによって、両面側に位置するシールド部S同士は導通をとって同電位(グランド電位)とされる。
【0020】
本実施の形態では、開口部15以外の領域で、シールド部Sとカバーレイ5との間に、絶縁樹脂層の補強層7を挿入した点に特徴を有する。これによって、信号線Cとシールド部Sとの間の、誘電体(絶縁体)占有部の距離dを大きくすることができる。このため、インピーダンスを大きくすることができ、信号線Cの断面積を小さくすることなく、他の回路とのインピーダンス整合を容易にとることができる。シールド層9は導電接着剤層8で下層に接続されているので、おもて面側(信号線Cの側)では、インピーダンスに実質的に影響するのは、信号線Cのトップ面(スルーホールめっき層31cのトップ面)と導電接着剤層8(または補強層7のトップ面)との間の距離dである。また、裏面側では、裏面側の導電接着剤層8の底面と信号線Cにおける配線3cの底面との間の距離dが、インピーダンスに実質的に影響する。
従来は、信号線Cのトップ面とカバーレイ5のトップ面との間の距離fが、シールド部と信号線Cとの距離を構成していた。図1(a)では、おもて面側の上記距離をf、裏面側の上記距離をfと記している。本実施の形態では、(d/f)および(d/f)が、ともに、1.5以上となるように、補強層7、カバーレイ5と、その接着をする第1,第2接着剤層4,6の厚みを設定するのがよい。裏面側では絶縁基材層1の厚みも影響する。
なお、カバーレイ5を接着する第1接着剤層は、信号線Cの隙間を充填するので、信号線Cとカバーレイ5との部分(信号線Cを覆う部分)は、薄くなっており、場合によっては非常に薄くなっている。そのような場合でも、上記のfは、信号線Cのトップ面とカバーレイ5のトップ面との間の距離として測定するものとする。信号線Cのトップ面と導電接着剤層8の底面(または補強層7のトップ面)との間の距離dについても同様である。
上記のように、補強層7だけでなく付随する第2接着剤層6も、信号線Cとシールド部Sとの間の、誘電体(絶縁体)占有部の厚みを大きくすることに寄与する。図1では、補強層7を樹脂フィルムで構成して、第2接着剤層6で接着する例を示したが、補強層7および第2接着剤層6とを合わせて、1つの接着剤層で構成してもよい。また、シールド部Sについても、シールドフィルム9を導電接着剤層8で接着する構成を示したが、シールドフィルム9と導電接着剤層8とを合わせて、1つの導電接着剤層で構成してもよい。
【0021】
上記のように、(d/f)および(d/f)を、ともに、1.5以上とすることで、信号線Cとシールド部Sとの間の距離を従来よりも確実に大きくして、実用上、上記した作用を得ることができる。すなわちフレキシブルプリント配線板10にシールド部Sを設けることで確実なシールド性能を確保しながら、他の回路とインピーダンス整合をとるために信号線Cの幅を小さくし、または断面積を縮小する必要がなくなり、信号の伝送ロスを増大させることがない。
【0022】
図3〜図9により、上記のフレキシブルプリント配線板10の製造方法を説明する。図3〜図9では、図2に示す断面(a)に対応する図を各図(a)に、断面(b)に対応する図を各図(b)に示す。まず、図3(a),(b)に示すように、両面に銅箔3を張った両面銅張積層板を準備する。次いで、図4に示すように、断面(b)の所定位置にスルーホール1hをあけ、銅めっきによりスルーホールめっき層31を銅箔3上に形成する(図5参照)。このスルーホールめっき層31によって、絶縁基材層1のおもて面側のグランド部Gと、裏面側のグランド部Gとを導通させて同電位にすることができる。このあと、図6(a)に示すように、銅箔3およびスルーホールめっき層31をエッチングすることで、信号線Cを形成する。このとき、断面(a)の領域では、裏面側の銅箔3およびスルーホールめっき層31をエッチングで除去する。また、このとき、断面(b)の領域では、銅箔3およびスルーホールめっき層31は、エッチングしないでそのままグランド部G(3g,31g)とする。
【0023】
次いで、図7に示すように、第1接着剤層4によってカバーレイ5を、接着する。断面(a)のおもて面側では、第1接着剤層4は信号線Cの間隙を充填しながら層を形成する。断面(b)では、おもて面側と裏面側とで大きな相違はなく、おもて面側と裏面側とは対称的といってよい。また、断面(b)の所定箇所に開口部15を設ける。開口部15は、シールド部Sをグランド部Gに導電接続するために設ける。次いで、両面側ともに、カバーレイ5上に補強層7を第2接着剤層6によって接着する。断面(b)の領域では、すでに設けた開口部15を塞がないようにする。図7および図8の断面(b)から分かるように、カバーレイ5および補強層7を、開口部15を設けることなく、積層しておいて、その後で、接着剤層4,6を含めて、カバーレイ5と補強層7とに、同じ機会に開口部15を設けてもよい。
このあと、補強層7上に、導電接着剤層8を介在させてシールドフィルム9を積層する。断面(b)では、両面ともに、開口部15の壁面に沿って、導電接着剤層8/シールドフィルム9、を配置して、グランド部Gにシールド部Sを導電接続する。
【0024】
次に各部分の材料について説明する。
(1)カバーレイ5
カバーレイ5には、柔軟な撓りが可能な絶縁樹脂を用いるのがよい。また、接着工程における150℃程度の加熱に対する耐熱性を兼ね備えるのがよい。さらに、高周波信号の洩れを防止するために、比誘電率および誘電正接が小さい樹脂であれば、より好ましい。たとえば、比誘電率(1MHz)5以下、かつ誘電正接(1MHz)0.010以下の樹脂を用いるのがよいが、より好ましくは比誘電率(1MHz)3以下、かつ誘電正接(1MHz)0.005以下の樹脂とする。
たとえばとくにポリイミド系の樹脂を挙げることができる。そのほか、ポリオレフィン系の、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどをあげることができる。また、液晶ポリマーを好適に用いることができる。さらに環状オレフィンポリマー、非極性ポリオレフィン、シクロヘキサンジエン系ポリマーなどがある。各種のポリフェニレンエーテルを用いてもよい。カバーレイ5の厚みは、2μm〜100μm程度とするのがよい。
(2)第1接着剤層4
第1接着剤には、比誘電率(1MHz)5以下、かつ誘電正接(1MHz)0.010以下の樹脂を用いるのがよいが、より好ましくは比誘電率(1MHz)3以下、かつ誘電正接(1MHz)0.005以下の樹脂とする。
このような接着剤として、たとえばポリスチレン系、ポリエチレン系などのホットメルト系接着剤を用いるのがよい。これによって、製造能率の向上と、高周波成分の損失抑制とを共に得ることができる。また、ポリエステル系やポリアミド系の、ホットメルト系接着剤、エポキシ樹脂は、比誘電率(1MHz)が比較的大きいものが多いが、その他の多くの利点を有するので、広くは用いてもよい。第1接着剤層4の厚みは、1.5μm〜60μm程度とするのがよい。
(3)補強層7
第2絶縁樹脂層である補強層7は、カバーレイ5と同様に、ポリイミド系の樹脂、ポリオレフィン系の、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどをあげることができる。また、液晶ポリマーを好適に用いることができる。さらに環状オレフィンポリマー、非極性ポリオレフィン、シクロヘキサンジエン系ポリマーなどがある。各種のポリフェニレンエーテルを用いてもよい。補強層7の厚みは、2μm〜100μm程度とするのがよい。
(4)第2接着剤層6
第2接着剤層には、比誘電率(1MHz)5以下、かつ誘電正接(1MHz)0.010以下の樹脂を用いるのがよいが、より好ましくは比誘電率(1MHz)3以下、かつ誘電正接(1MHz)0.005以下の樹脂とする。
このような接着剤として、たとえばポリスチレン系、ポリエチレン系などのホットメルト系接着剤を用いるのがよい。これによって、製造能率の向上と、高周波成分の損失抑制とを共に得ることができる。また、ポリエステル系やポリアミド系の、ホットメルト系接着剤、エポキシ樹脂は、比誘電率(1MHz)が比較的大きいものが多いが、その他の多くの利点を有するので、広くは用いてもよい。第2接着剤層6の厚みは、1.5μm〜60μm程度とするのがよい。
(5)配線3cおよびグランド層3g
配線3cおよびグランド層3gは、市販の銅張積層板の場合は、エッチングされた銅箔である。また、銅、アルミニウム、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金を用いることができる。これらは金属めっきによって形成する場合が多いが、金属めっきの下地には、銅、銅を主成分とする合金、たとえば銅薄膜、クロム薄膜等を形成するのがよい。銅箔など、下地層を含めて配線3cおよびグランド層3gの厚みは、1μm〜50μmとするのがよい。
(6)絶縁基材層1
−通常の場合−:高い耐熱性および柔軟性を重視して、絶縁基材層1には、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂を用いる。また、ベース接着剤を用いる場合には、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂等を主成分に含むものを用いることができる。絶縁基材層1の厚みは、5μm〜200μm程度、またベース接着剤層は、0.5μm〜30μm程度とするのがよい。
−低誘電率重視の場合−:絶縁基材層1には、カバーレイ5の説明で挙げた樹脂を用いるのがよい。ベース接着剤2についても、第1接着剤層4に挙げた接着剤を用いるのがよい。
(7)シールド部S
(i)シールドフィルム9
銀箔を用いるのが好ましいが、銅、アルミニウム、亜鉛めっき軟鉄の箔を用いてもよい。厚みは、厚いほうが好ましいが、小型化、軽量化より、たとえば0.3μm〜20μmとするのがよい。
(ii)導電接着剤8
金属粒子等の導電性フィラーをバインダー樹脂中に分散したものを用いるのがよい。金属粒子としては、たとえば銀、白金、金、銅、ニッケル、パラジウム等を用いることができる。とくに銀粉末、銀で被覆した銅粉末は導電性が高いので、好ましい。バインダー樹脂には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を使用するのがよい。とくに、これらのうち、耐熱性向上のために、熱硬化性樹脂を用いるのが好ましい。エポキシ樹脂を用いる場合には、たとえばビスフェノールA型、F型、S型、AD型、またはビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合型のエポキシ樹脂や、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、高分子エポキシ樹脂のフェノキシ樹脂等を用いるのがよい。上記のバインダー樹脂は、スクリーン印刷など行う場合、溶剤に溶解して使用することができる。導電接着剤6の、第1カバー絶縁層5上の厚みは、2μm〜100μm程度とするのがよい。
【0025】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2におけるフレキシブルプリント配線板を示し、(a)は、図2の断面(a)に対応する位置、における断面図であり、(b)は、図2の断面(b)に対応する位置、における断面図である。本実施の形態では、片面側にのみシールド部S(8,9)があり、その片面側のシールド部Sとカバーレイ5との間に、第2絶縁樹脂層である補強層7が挿入されている点に特徴を有する。
上記の構成によれば、フレキシブルプリント配線板にシールド部Sを配置することでノイズ電波の放射や侵入、およびクロストーク等を確実に防ぎながら、信号線Cとシールド部Sとの間隔を大きくすることができる。シールド部Sの底面または補強層7のトップ面と、信号線Cのトップ面との間の距離dは、信号線Cのトップ面とカバーレイ5のトップ面との間の距離fの1.5倍以上である。すなわち、補強層7を第2接着剤層6を用いて挿入することで、信号線Cとシールド部Sとの間の距離を大きくすることができる。この結果、シールド部Sの良好なシールド性能を得ながら、信号線Cの幅を小さくすることなく、他の回路とインピーダンス整合を容易にとることができる。
【0026】
(その他の実施の形態)
1.(補強層7/第2接着剤層6)は、一つの接着剤層によって置き換えることができる。その場合、絶縁性樹脂ペーストをスクリーン印刷等により形成することができる。
シールド部Sを構成する(シールドフィルム9/導電接着剤層8)も、一つの導電接着剤層によって置き換えることができる。この場合も、導電性樹脂ペーストをスクリーン印刷等によって形成するのがよい。
【0027】
上記において、本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態および実施例は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明により、フレキシブルプリント配線板に導電層を配置してシールドをとることでノイズ電波の放射や侵入、およびクロストーク等を確実に防ぎながら、配線回路とシールド層との間隔を大きくすることができ、配線回路の線幅または断面積を小さくすることなく、インピーダンス整合をとることができる。また、上記の構造は非常に簡単であり、少ない工程の追加によって製造することができる。また、設計の自由度を拡げることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 絶縁基材層、1h スルーホール、3c 配線、3g グランド層、4 第1絶縁接着層、5 カバーレイ(第1絶縁樹脂層)、6 第2絶縁接着層、7 補強層(第2絶縁樹脂層)、8 導電接着層、9 シールドフィルム、10 シールド付フレキシブルプリント配線板、15 開口部、15h 開口部の壁面、31 スルーホールめっき層、31c 配線上のスルーホールめっき層、31g グランド層上のスルーホールめっき層、d おもて面側の信号線Cのトップ面と導電接着剤層(または補強層のトップ面)との間の距離、d 裏面側の導電接着剤層と信号線における配線底面との間の距離、f おもて面側の信号線トップ面とカバーレイトップ面との間の距離、fと裏面側の信号線底面とカバーレイトップ面との間の距離、C 信号線、G グランド部、S シールド部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド層を構成する導電層を備えるシールド付フレキシブルプリント配線板であって、
絶縁基材層と、
前記絶縁基材層上に位置する配線回路と、
前記配線回路と前記シールド層を構成する導電層との間に位置する第1絶縁樹脂層と、
前記第1絶縁樹脂層と前記導電層との間に位置する第2絶縁樹脂層とを備えることを特徴とする、シールド付フレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記第2絶縁樹脂層が複数の層からなることを特徴とする、請求項1に記載のシールド付フレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記配線回路の配線の上面と前記導電層の下面との間の距離が、前記配線回路の配線の上面と前記第1絶縁樹脂層の上面との間の距離の1.5倍以上あることを特徴とする、請求項1または2に記載のシールド付フレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記第2の絶縁樹脂層が、第1絶縁樹脂層と同じ材料で形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシールド付フレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
前記第2の絶縁樹脂層が、第1絶縁樹脂層よりも硬さが低い材料で形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシールド付フレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
シールド層を構成する導電層を備えるシールド付フレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
絶縁基材層上に配線回路を形成する工程と、
前記絶縁基材層上に第1絶縁樹脂層を積層する工程と、
前記第1絶縁樹脂層上に第2絶縁樹脂層を積層する工程と、
前記第2絶縁樹脂層上に前記シールド層を構成する導電層を積層する工程とを備えることを特徴とする、シールド付フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のシールド付フレキシブルプリント配線板または請求項6に記載の製造方法で製造されたシールド付フレキシブルプリント配線板を備えることを特徴とする、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−159879(P2011−159879A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21574(P2010−21574)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】