説明

シールド掘進機の伸縮スポーク装置

【課題】固定スポークの大径化を招くことなく、可動スポークの軸心廻りの回転を規制する。
【解決手段】切羽に対して回転されるカッタ2に固定スポーク21を設けると共に、固定スポーク21に、カッタ2の径方向に移動自在に可動スポーク22を収容したシールド掘進機の伸縮スポーク装置において、可動スポーク22の外周部に、可動スポーク22の径方向外側に且つ固定スポーク21の外周面を越えて延出する廻り止め部材51を設けると共に、廻り止め部材51を周方向から挟み込んで可動スポーク22の軸心廻りの回転を規制するための規制部材52を固定スポーク21の外周部に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切羽に対して回転されるカッタに設けられた固定スポークと、固定スポークに収容され、カッタの径方向に移動自在な可動スポークとを備えたシールド掘進機の伸縮スポーク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は、シールド本体の前方に設けられたカッタで地山を掘削して、その後方でセグメントを順次組立てることにより、トンネルを構築していくものである。カッタの前端には複数のビットが配置されており、カッタを回転させてビットにより地山を掘削するようになっている。
【0003】
また、二台のシールド掘進機を互いに対向させて掘進させ、これらを突合わせた状態でカッタのカッタスポークを縮退させ、各シールド掘進機のシールド本体にフードを嵌入させて接合するようにしたシールド掘進機が知られている。
【0004】
例えば図9及び図10に示すように、カッタスポークを伸縮させるための伸縮スポーク装置は、切羽に対して回転されるカッタに設けられた筒状の固定スポーク61と、固定スポーク61に収容され、カッタの径方向に移動自在な可動スポーク62とを備えている。可動スポーク62における切羽側の面には、ビット63が設けられる。
【0005】
図9及び図10に示す伸縮スポーク装置では、可動スポーク62の外周部の両側に、可動スポーク62の長手方向に沿って平面部64をそれぞれ設け、各平面部64に摺接するピン65を溶接等により固定スポーク61に取り付け、これら平面部64とピン65とで、ビット63によって切羽からうける反力により可動スポーク62がその軸心廻りに回転しないように規制している。
【0006】
このような伸縮スポーク装置は、特許文献1〜3等にも記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−297596号公報
【特許文献2】特許第2607227号公報
【特許文献3】特許第3377655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、引用文献1〜3ではいずれも、可動スポークの軸心廻りの回転を規制するための機構を固定スポーク内に設けていたため、その機構を設けることにより固定スポークの大径化を招くという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、固定スポークの大径化を招くことなく、可動スポークの軸心廻りの回転を規制することができるシールド掘進機の伸縮スポーク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、切羽に対して回転されるカッタに固定スポークを設けると共に、該固定スポークに、上記カッタの径方向に移動自在に可動スポークを収容したシールド掘進機の伸縮スポーク装置において、上記可動スポークの外周部に、上記可動スポークの径方向外側に且つ上記固定スポークの外周面を越えて延出する廻り止め部材を設けると共に、該廻り止め部材を周方向から挟み込んで上記可動スポークの軸心廻りの回転を規制するための規制部材を上記固定スポークの外周部に設けたものである。
【0011】
ここで、上記可動スポークにおける上記切羽側の面にビットを設けても良い。
【0012】
また、上記廻り止め部材が、板状に形成されると共に、上記カッタにより掘削した土砂を取り込むチャンバ内に位置され、その廻り止め部材が上記チャンバ内に取り込んだ土砂を撹拌するための撹拌翼を兼ねるようにしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固定スポークの大径化を招くことなく、可動スポークの軸心廻りの回転を確実に規制することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る伸縮スポーク装置を適用したシールド掘進機の側断面図である。図2は、図1のII−II線矢視図である。図3は、図1のIII部拡大図である。図4は、図3のIV−IV線矢視断面図である。図5は、図1のV部拡大図であり、第一カッタスポークを縮退させた状態を示す。図6は、図1のVI部拡大図である。図7は、図6のVII−VII線矢視断面図である。図8は、図1のVIII部拡大図であり、第二カッタスポークを縮退させた状態を示す。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態のシールド掘進機1は、掘進方向前方(図1中の左側)にカッタ2を有するシールド本体3を備えている。シールド本体3の後部には、カッタ2により掘削した孔内にセグメントを組立ててトンネルを構築するエレクタ(図示せず)と、シールド本体3の内周に沿って複数設けられ、セグメントに反力を取ってシールド本体3を推進させるためのシールドジャッキ(図示せず)とが設けられている。
【0017】
カッタ2は、シールド本体3の前端部近傍に設けられたバルクヘッド4に回転自在に設けられている。カッタ2は、その回転中心から径方向外側に延出するカッタ本体5を有している。カッタ本体5前面には、その径方向中央にセンタビット6が配置され、そのセンタビット6よりも外周側に複数のビット7、8が配置されている。
【0018】
カッタ本体5とバルクヘッド4との間には、カッタ2により掘削した土砂(掘削土砂)を取込むチャンバ9が形成される。バルクヘッド4の上部には、これを貫通してチャンバ9に開口する送泥管10が設けられる。バルクヘッド4の下部には、これを貫通してチャンバ9に開口するスクリュコンベア11が設けられる。
【0019】
カッタ本体5は、カッタ2の回転シャフトに取り付けられた中心部材12と、中心部材12に放射状に取り付けられた複数(図示例では四本)のカッタスポーク13、14とを有している。
【0020】
ここで、本実施形態のカッタスポークは、第一カッタスポーク13及び第二カッタスポーク14との二種類から構成されている。本実施形態では、四本のカッタスポークのうち一本を第一カッタスポーク13とし、他の三本を第二カッタスポーク14としている。
【0021】
まず、第一カッタスポーク13について説明する。
【0022】
図3及び図4に示すように、第一カッタスポーク13は、中心部材12に取り付けられた固定スポーク21と、固定スポーク21に収容され、カッタ2の径方向に移動自在な可動スポーク22とを有している。本実施形態の固定スポーク21は、筒状に形成されている。本実施形態では固定スポーク21は、内周が断面円形状に形成され、外周が断面四角形状に形成されている(図4参照)。また、本実施形態の可動スポーク22は、筒状に形成されている。本実施形態では可動スポーク22は、内周及び外周が共に断面円形状に形成されている(図4参照)。
【0023】
固定スポーク21における切羽側の面(図3中の左側)には、ビット7が設けられる。また、可動スポーク22における切羽側の面(図3中の左側)であって、可動スポーク22の先端には、ビット8が設けられる。
【0024】
可動スポーク22は、ブッシュ23を介して固定スポーク21内に摺動自在に収容される。可動スポーク22の外周面と固定スポーク21の内周面との間には、固定スポーク21内に土砂等が侵入するのを防止するためのシール部材24が設けられる。
【0025】
固定スポーク21と可動スポーク22とは、可動スポーク22をカッタ2の径方向に進退移動するための進退手段としての油圧シリンダ25を介して連結されている。油圧シリンダ25は、シリンダ26が中心部材12に設けられたピン27に取り付けられ、ロッド28が可動スポーク22に固定されている(図1参照)。
【0026】
第一カッタスポーク13を縮退させる際には、油圧シリンダ25を縮退させることで可動スポーク22がカッタ2の径方向内側に移動される(図5参照)。一方、第一カッタスポーク13を伸長させる際には、油圧シリンダ25を伸長させることで可動スポーク22がカッタ2の径方向外側に移動される(図3参照)。
【0027】
可動スポーク22には、コピーカッタ29がカッタ2の径方向に出没自在に設けられている。本実施形態のコピーカッタ29は、油圧シリンダ30を有している。本実施形態の油圧シリンダ30はロッド31に対しシリンダ32が摺動するようになっており、ロッド31が可動スポーク22に設けられたピン33に取り付けられている。シリンダ32の先端には、ビット34が設けられる。本実施形態の油圧シリンダ30のシリンダ32は、外周が断面円形状に形成されている(図4参照)。
【0028】
油圧シリンダ30のシリンダ32は、ブッシュ35を介して可動スポーク22内に摺動自在に収容される。シリンダ32の外周面と可動スポーク22の内周面との間には、可動スポーク22内に土砂等が侵入するのを防止するためのシール部材36が設けられている。
【0029】
コピーカッタ29のビット34を可動スポーク22外へ突出させる際には、油圧シリンダ30を伸長させることでビット34がカッタ2の径方向外側に移動される。一方、コピーカッタ29のビット34を可動スポーク22内に没入させる際には、油圧シリンダ30を縮退させることでビット34がカッタ2の径方向内側に移動される。
【0030】
次に、第二カッタスポーク14について説明する。
【0031】
図6及び図7に示すように、第二カッタスポーク14は、中心部材12に取り付けられた固定スポーク41と、固定スポーク41に収容され、カッタ2の径方向に移動自在な可動スポーク42とを有している。本実施形態の固定スポーク41は、筒状に形成されている。本実施形態では固定スポーク41は、内周が断面円形状に形成され、外周が断面四角形状に形成されている(図7参照)。
【0032】
固定スポーク41における切羽側の面(図6中の左側)には、ビット7が設けられる。また、可動スポーク42における切羽側の面(図6中の左側)であって、可動スポーク42の先端には、ビット8が設けられる。
【0033】
本実施形態では、可動スポーク42は、進退手段としての油圧シリンダ43のシリンダ44からなる。本実施形態のシリンダ44(可動スポーク42)は、外周が断面円形状に形成されている(図7参照)。
【0034】
油圧シリンダ43のシリンダ44は、ブッシュ45を介して固定スポーク41内に摺動自在に収容される。シリンダ44の外周面と固定スポーク41の内周面との間には、固定スポーク41内に土砂等が侵入するのを防止するためのシール部材46が設けられる。
【0035】
油圧シリンダ43のロッド47は、中心部材12に設けられたピン27に取り付けられている。
【0036】
第二カッタスポーク14を縮退させる際には、油圧シリンダ43を縮退させることで可動スポーク42がカッタ2の径方向内側に移動される(図8参照)。一方、第二カッタスポーク14を伸長させる際には、油圧シリンダ43を伸長させることで可動スポーク42がカッタ2の径方向外側に移動される(図6参照)。
【0037】
次に、可動スポーク22、42の軸心廻りの回転を規制するための機構について説明する。
【0038】
図3、図4、図6及び図7に示すように、第一及び第二カッタスポーク13、14の可動スポーク22、42の外周部には、可動スポーク22、42の径方向外側に延出し、且つ、固定スポーク21、41の外周面を越えて延出する廻り止め部材51が設けられている。本実施形態では、廻り止め部材51は、板状に形成されると共に、バルクヘッド4側に延出させてチャンバ9内に位置されるようになっている。つまり本実施形態の廻り止め部材51は、切羽とは反対側の面(図3及び図6中の右側)に設けられている。このようにすることで、廻り止め部材51がチャンバ9内に取り込んだ土砂を撹拌するための撹拌翼を兼ねるようにしている。
【0039】
第一及び第二カッタスポーク13、14の固定スポーク21、41の外周部には、廻り止め部材51を周方向から挟み込んで可動スポーク22、42の軸心廻りの回転を規制するための規制部材52が設けられている。本実施形態の規制部材52は、固定スポーク21、41の周方向に所定間隔を隔てて設けられる一対の規制板53からなる。本実施形態では、一対の規制板53の間隔は、廻り止め部材51の厚さよりもわずかに大きく形成されている。
【0040】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0041】
切羽を掘削する際には、カッタ本体5を回転させることで、切羽に当接するビット6、7、8により切羽を掘削する。その際、図4及び図7に示すビット8により切羽からうける反力(切削反力)によって可動スポーク22、42に生じるモーメントは、廻り止め部材51及び一対の規制板53で支持することができるため、可動スポーク22、42の回転が規制される。
【0042】
ここで本実施形態では、可動スポーク22、42の外周部に、可動スポーク22、42の径方向外側に延出し、且つ、固定スポーク21、41の外周面を越えて延出する廻り止め部材51を設けると共に、廻り止め部材51を周方向から挟み込んで可動スポーク22、42の軸心廻りの回転を規制するための規制部材52を固定スポーク21、41の外周部に設けるようにしたため、固定スポーク21、41の大径化を招くことなく、可動スポーク22、42の軸心廻りの回転を規制することができる。
【0043】
また、ビット8先端と可動スポーク22、42の軸心との距離(切削反力によるモーメントの腕の長さ)に対して、廻り止め部材51及び一対の規制板53と可動スポーク22、42の軸心との距離(切削反力を支持するモーメントの腕の長さ)を十分に長くすることができ(図4及び図7参照)、可動スポーク22、42の軸心廻りの回転を確実に規制することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、廻り止め部材51が、板状に形成されると共に、カッタ2により掘削した土砂を取り込むチャンバ9内に位置され、その廻り止め部材51がチャンバ9内に取り込んだ土砂を撹拌するための撹拌翼を兼ねるようにしたため、別途撹拌翼を設ける必要がなく、小径のシールド掘進機であっても問題なく採用することができる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る伸縮スポーク装置を適用したシールド掘進機の側断面図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII部拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図1のV部拡大図であり、第一カッタスポークを縮退させた状態を示す。
【図6】図1のVI部拡大図である。
【図7】図6のVII−VII線矢視断面図である。
【図8】図1のVIII部拡大図であり、第二カッタスポークを縮退させた状態を示す。
【図9】従来の伸縮スポーク装置の側断面図である。
【図10】図10のX−X線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0047】
2 カッタ
8 ビット
9 チャンバ
21、41 固定スポーク
22、42 可動スポーク
51 廻り止め部材
52 規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切羽に対して回転されるカッタに固定スポークを設けると共に、該固定スポークに、上記カッタの径方向に移動自在に可動スポークを収容したシールド掘進機の伸縮スポーク装置において、上記可動スポークの外周部に、上記可動スポークの径方向外側に且つ上記固定スポークの外周面を越えて延出する廻り止め部材を設けると共に、該廻り止め部材を周方向から挟み込んで上記可動スポークの軸心廻りの回転を規制するための規制部材を上記固定スポークの外周部に設けたことを特徴とするシールド掘進機の伸縮スポーク装置。
【請求項2】
上記可動スポークにおける上記切羽側の面にビットを設けた請求項1記載のシールド掘進機の伸縮スポーク装置。
【請求項3】
上記廻り止め部材が、板状に形成されると共に、上記カッタにより掘削した土砂を取り込むチャンバ内に位置され、その廻り止め部材が上記チャンバ内に取り込んだ土砂を撹拌するための撹拌翼を兼ねるようにした請求項1又は2記載のシールド掘進機の伸縮スポーク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−132045(P2007−132045A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324821(P2005−324821)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】